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令和5(ワ)70469発信者情報開示請求事件

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裁判所 認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年12月20日
事件種別 民事
当事者 原告グラフィティジャパン株式会社
被告株式会社NTTドコモ
法令 著作権
著作権法2条1項9号3回
著作権法2条5項1回
キーワード 侵害11回
損害賠償4回
主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本 件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるB20 itTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワー ク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、別紙作品目録記 載の動画(以下「本件動画」という。)を複製して作成した動画ファイルを、本 件各氏名不詳者が管理する端末にダウンロードし、公衆からの求めに応じ自動 的に送信し得るようにするとともに、当該ファイルを公衆送信したことによっ25 て、本件動画に係る原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであり、本件各 氏名不詳者に対する損害賠償等の請求のため、被告が保有する別紙発信者情報 目録記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正 当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及 び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5 条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。5 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(特記しない限り枝

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判決文

令和5年12月20日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70469号 発信者情報開示請求事件

口頭弁論終結日 令和5年10月18日

判 決

原 告 グラフィティジャパン株式会社

同訴訟代理人弁護士 杉 山 央

被 告 株 式 会 社 N T T ド コ モ

同訴訟代理人弁護士 梛 良 拡

主 文

1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要等

1 事案の要旨本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、別紙作品目録記載の動画(以下「本件動画」という。)を複製して作成した動画ファイルを、本件各氏名不詳者が管理する端末にダウンロードし、公衆からの求めに応じ自動的に送信し得るようにするとともに、当該ファイルを公衆送信したことによって、本件動画に係る原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであり、本件各氏名不詳者に対する損害賠償等の請求のため、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5

5 条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1) 当事者原告は、著作物である本件動画の著作権者である(甲2、18)。被告は、電気通信事業等を目的とする株式会社であり、インターネット接続サービスを提供しているアクセスプロバイダである(弁論の全趣旨)。

(2) ビットトレントの仕組み(甲4ないし6、9、弁論の全趣旨)ア ビットトレントは、P2P方式のファイル共有プロトコルである。ビットトレントを利用したファイル共有は、その特定のファイルに係るデータをピースに細分化した上で、ピア(ビットトレントネットワークに参加している端末。「クライアント」とも呼ばれる。)同士の間でピースを転送又は交換することによって実現される。上記ピアのIPアドレス及びポート番号などは、「トラッカー」と呼ばれるサーバーによって保有されている。共有される特定のファイルに対応して作成される「トレントファイル」には、トラッカーのIPアドレスや当該特定のファイルを構成する全てのピースのハッシュ値(ハッシュ関数を用いて得られた数値)などが記載されている。そして、一つのトレントファイルを共有するピアによって、一つのビットトレントネットワークが形成される。イ ビットトレントを利用して特定のファイルをダウンロードしようとするユーザーは、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にインストールしたクライアント用のソフトウェアに当該トレントファイルを読み込ませると、当該端末はビットトレントネットワークにピアとして参加し、定期的にトラッカーにアクセスして、自身のIPアドレス及びポー

5 ト番号等の情報を提供するとともに、他のピアのIPアドレス及びポート番号等の情報のリストを取得する。このような手順でピアとなった端末は、トラッカーから提供された他のピアに関する情報に基づき、他のピアとの間で、当該他のピアが現在稼働しているか否かや、当該他のピアのピース保有状況を確認するための通信を行い、当該他のピアがこれに応答することを確認した上、当該他のピアが当該ピースを保有していれば、当該他のピアに対して当該ピースの送信を要求し、当該ピースの転送を受ける(ダウンロード)。また、上記のピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)。このように、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、必要なピースを転送又は交換し合うことで、最終的に共有される特定のファイルを構成する全てのピースを取得する。

(3) 株式会社utsuwa(以下「本件調査会社」という。)による調査(甲1、5、9)本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件動画の品番等に基づいて、本件動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した。本件調査会社は、ビットトレントに対応するクライアント用のソフトウェアである「μTorrent」(以下「本件ソフトウェア」という。)に、入手したトレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する動画ファイルをダウンロードし、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレスの情報を、端末のタスクバーに表示された時刻及び時刻表示ソフトウェアを用いて画面の右上に表示させた時刻とともに、スクリーンショットにより撮影した(以下、同スクリーンショットにより撮影された画像(甲1)を「本件各スクリーンショット」という。。)

5 本件調査会社は、ダウンロードした上記各動画ファイル(以下、本件動画に対応する動画ファイルを「本件各ファイル」という。)を再生して表示される映像と、本件動画とを比較して、その同一性を確認した。

(4) 本件各ファイルは本件動画を複製して作成されたものであること本件各ファイルは、本件動画を複製して作成されたものである(甲7、8)。

(5) 本件各発信者情報の保有被告は、本件各発信者情報を保有している。3 争点

(1) 特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)か(争点1)

(2) 本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か(争点2)4 争点に関する当事者の主張

(1) 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)か)について(原告の主張)ア 本件調査会社による調査結果は信用性を有すること本件調査会社は、本件ソフトウェアを利用して、機械的に別紙ピア目録記載の各IPアドレスや本件各ファイルのファイル名を把握しており、そこに恣意が介在する可能性はない。また、把握した各IPアドレスの正確性の検証もされている。イ 本件各氏名不詳者により本件動画が送信可能化されたこと(ア) 本件調査会社が本件ソフトウェアの実行画面を本件各スクリーンショットとして記録した時点において、当該実行画面に表示されたピアは、ビットトレントネットワークを介して、本件動画を複製して作成された本件各ファイルを構成する全部又は一部のデータを保有していた。

5 別紙ピア目録記載の項番に係るピアが保有していたファイルは、別紙作品目録記載の同じ項番に係る動画に対応するものである。(イ) ビットトレントネットワークを形成するピアは、共有されているファイルの送信を受けるのと同時に、公衆たる他の利用者が管理するピアに対し、当該ファイルを送信し得る状態となる。すなわち、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、他のピアからファイルの送信を受けている間、自動公衆送信装置として機能し、その記録媒体は公衆送信用記録媒体となる。そして、他のピアからファイルの送信を受けることは、自動公衆送信装置への情報の入力に当たるとともに、公衆送信用記録媒体への情報の記録に当たる。このビットトレントの仕組みに照らせば、本件調査会社による調査の際、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアにおいて、本件動画が送信可能化されていることは明らかである。したがって、本件調査会社が本件各スクリーンショットとして記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙ピア目録記載の各日時及び各IPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者の管理するピアが、ビットトレントネットワークを介して本件各ファイルの送信を受けることは、本件各氏名不詳者が本件動画を送信可能化する行為(著作権法2条1項9号の5イ)と評価できる。(ウ) また、ビットトレントに対応するクライアント用のソフトウェアがインストールされた端末であって、当該端末の記憶領域内のファイルについて他のピアの求めに応じて自動的に当該ファイルを送信し得るように設定可能な記憶領域に、本件各ファイルを構成する全部又は一部のデータが記録されているものは、公衆送信用記録媒体に情報が記録されている自動公衆送信装置に当たる。そして、当該クライアント用のソフトウェアを操作して①ビットトレントネットワークに接続した上で、本件各

5 ファイルを他のピアの求めに応じて自動的に送信し得るように設定する行為、又は②本件各ファイルを他のピアの求めに応じて自動的に送信し得るように設定した上で、ビットトレントネットワークに接続する行為は、公衆の用に供されている電気通信回線への接続を行うことに当たる。したがって、本件調査会社が本件各スクリーンショットとして記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙ピア目録記載の各日時及び各IPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者が、本件動画を送信可能化(著作権法2条1項9号の5ロ)していることは、明らかである。ウ 本件各氏名不詳者により本件動画が自動公衆送信されたこと(ア) ビットトレントネットワークを形成しているピアは、他のピアから共有される特定のファイルの送信を受けるのと同時に、公衆たる他の利用者が管理しているピアからの求めに応じて自動的に当該ファイルを送信する 。このビットトレントの仕組みに照らせば、本件調査会社による調査の際、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアが、公衆たる他の利用者が管理しているピア又は本件調査会社が管理しているピアからの求めに応じて自動的に本件各ファイルを送信していることは、明らかである。(イ) したがって、本件調査会社が本件各スクリーンショットにより記録した日時及びIPアドレスすなわち別紙ピア目録記載の各日時及び各IPアドレスにより特定される本件各氏名不詳者の管理するピアが、①他の利用者が管理するピアからの求めに応じて、当該ピアに対して本件各ファイルを自動的に送信したこと、②本件調査会社が管理するピアからの求めに応じて、当該ピアに対して本件各ファイルを自動的に送信したことは、いずれも本件各氏名不詳者が本件動画を自動公衆送信する行為(著作権法2条1項9号の4)と評価できる。

5 エ 本件各氏名不詳者による本件動画の送信可能化や自動公衆送信に係る通信は特定電気通信に当たること特定電気通信とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」(プロバイダ責任制限法2条1号)とされているところ、著作権法は、送信可能化及び自動公衆送信をいずれも「公衆送信」すなわち「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信…を行うこと」として評価しているから、上記「送信」には送信可能化や自動公衆送信に係る通信も含まれる。したがって、前記イ及びウの本件各氏名不詳者による本件動画の送信可能化及び自動公衆送信に係る通信は、特定電気通信に当たる。オ 違法性阻却事由の不存在本件各氏名不詳者が本件動画を送信可能化及び自動公衆送信したことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。カ 小括以上によれば、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆送信権)「が侵害されたことは明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)。したがって、別紙ピア目録記載の各日時及び各IPアドレスにより特定される通信から把握できる情報は、プロバイダ責任制限法5条1項柱書所定の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に当たる。(被告の主張)不知ないし争う。

(2) 争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か)(原告の主張)原告は、本件各氏名不詳者に対し、損害賠償等を請求する予定であるが、

5 そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要がある。したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。(被告の主張)不知ないし争う。

第3 当裁判所の判断

1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害された

ことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)か)について

(1) 本件調査会社による調査結果が信用性を有するかについて

前提事実(3)のとおり、本件調査会社は、本件各ファイルに係るトレントファイルをダウンロードした上、本件ソフトウェアに同トレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する本件各ファイルをダウンロードし、実際にダウンロードした当該ファイルを再生して表示される映像と、本件動画とを比較することにより、これらが同一の内容を有していることを確認したものである。そして、本件全証拠によっても、このような本件調査会社による調査結果に不自然、不合理な点は認められない。したがって、本件調査会社による調査結果は信用性を有するといえる。

(2) 自動公衆送信に係る情報の流通による原告の権利侵害の成否について

前提事実(2)のとおり、ビットトレントネットワークを形成するピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合に、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)ように動作する。また、前記(1)のとおり、本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されている本件各ファイルをダウンロードし、当該動画ファイルを再生して表示される映像がそれぞれ本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるものであることを確認したものである。そして、証拠(甲1、4、5、9)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査

5 会社は、本件各ファイルのダウンロード中に、端末で実行している時刻表示

ソフトウェアが表示する時刻及び本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレスの情報に基づいて、別紙ピア目録記載の各日時及び各IPアドレスを特定したことが認められるところ、この本件調査会社による調査は、当該ピアが、本件調査会社の管理するピアに、本件各ファイルを構成するピースを継続的に送信している状態を捉えたものといえる。また、特定のファイルに対応するトレントファイルは、インターネット上で公開されているのが通常であると考えられるところ、そのようなトレントファイルは少なくとも不特定の者において利用することができるから、同じトレントファイルを共有しているピアの管理者も不特定の者となるのが通常である。これに対し、本件全証拠によっても、本件各ファイルが特定かつ少数の者の間でのみ共有されていたとは認められないから、本件各ファイルに係るトレントファイルを取得してビットトレントネットワークに参加した本件調査会社は「公衆」(著作権法2条5項)に当たるといえる。以上によれば、別紙ピア目録記載の各日時において、同各IPアドレスが割り当てられていた端末により、本件動画が、それぞれ自動公衆送信(著作権法2条1項9号の4)されたと認められるところ、これは、特定電気通信である当該自動公衆送信に係る情報の流通によって、原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものというべきである。

(3) 違法性阻却事由の不存在

本件各氏名不詳者の行為について、違法性阻却事由が存在することは全くうかがわれない。

(4) 小括

以上によれば、別紙ピア目録記載の各日時において、同各IPアドレスが割り当てられていたピアを管理する本件各氏名不詳者により、特定電気通信による情報の流通によって本件動画に係る原告の著作権(公衆送信権)「が侵

5 害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)と認め

られる。そして、本件各発信者情報は「当該権利の侵害に係る発信者情報」(同項柱書)に当たると認められる。

2 争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバ

イダ責任制限法5条1項2号)か)について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各氏名不詳者に対し、本件動画に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)と認められる。

第4 結論

以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官國 分 隆 文裁判官間 明 宏 充裁判官バ ヒ ス バ ラ ン 薫(別紙)発信者情報目録別紙ピア目録記載の各日時に、被告から同各IPアドレスを割り当てられていた契約者に関する情報であって、次に掲げるもの氏名又は名称住所電話番号以上(別紙ピア目録 省略)(別紙作品目録 省略)

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