ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和4(行ケ)10123 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和5年12月21日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 対象物 | レーザ加工方法及びレーザ加工装置 |
| 法令 |
特許権 |
| キーワード | 審決28回 分割16回 進歩性13回 実施9回 無効8回 無効審判3回 特許権2回 刊行物1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 被告は、平成16年1月9日、発明の名称を「レーザ加工方法及びレーザ 加工装置」とする発明について特許出願をし、平成22年10月8日、本件 特許に係る特許権の設定登録を受けた(請求項の数20)。 (2) 原告は、令和3年6月25日、本件特許の請求項13、15、16に係る15 発明についての特許の本件無効審判を請求し、特許庁は、同請求を無効20 21-800051号事件として審理を行った。 特許庁は、令和4年10月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」 との本件審決をし、その謄本は同年11月4日原告に送達された。 (3) 原告は、令和4年12月2日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起20 した。 |
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令和5年12月21日判決言渡
令和4年(行ケ)第10123号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和5年11月20日
判 決
原 告 株 式 会 社 東 京 精 密
同訴訟代理人弁護士 服 部 誠
同 中 村 閑
同 柿 本 祐 依
同訴訟代理人弁理士 加 藤 志 麻 子
同 相 田 義 明
同 山 下 崇
被 告 浜松ホトニクス株式会社
同訴訟代理人弁護士 設 樂 隆 一
同 尾 関 孝 彰
同 河 合 哲 志
同 松 本 直 樹
同 大 澤 恒 夫
同訴訟代理人弁理士 長 谷 川 芳 樹
同 柴 田 昌 聰
同 小 曳 満 昭
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
【略語】
5 本判決で用いる略語は、別紙1「略語一覧」のとおりである。なお、本件審決中で使用されている略語は、本判決でもそのまま踏襲している。
第1 請求
特許庁が無効2021-800051号事件について令和4年10月18日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
(1) 被告は、平成16年1月9日、発明の名称を「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」とする発明について特許出願をし、平成22年10月8日、本件特許に係る特許権の設定登録を受けた(請求項の数20)。
(2) 原告は、令和3年6月25日、本件特許の請求項13、15、16に係る発明についての特許の本件無効審判を請求し、特許庁は、同請求を無効2021-800051号事件として審理を行った。特許庁は、令和4年10月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は同年11月4日原告に送達された。
(3) 原告は、令和4年12月2日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 発明の内容
(1) 本件特許の特許請求の範囲に記載された発明のうち、無効審判請求の対象となる請求項13、15、16の記載を分説すると、以下のとおりである。【請求項13】(本件発明1)(I) 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、(J) 前記第1のレーザ光及び前記加工対象物の主面の変位を測定するための第二のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、
5 (K) 前記第二のレーザ光の照射に応じて前記主面で反射される反射光を検出して前記主面の変位を取得する変位取得手段と、(L) 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、(M) 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、(N) 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、(O) 前記第二のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得し、(P) 前記第一のレーザ光を照射し、前記制御手段は前記変位取得手段が取得した変位に基づいて前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成し、(Q) 前記制御手段は前記第二のレーザ光の集光点が前記加工対象物に対する所定の位置に合うように設定された測定初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、(R) 当該レンズを測定初期位置に保持した状態で前記第二のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記主面で反射される前記第二のレーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除するように前記保持手段を制御し、(S) 当該解除後に、前記制御手段は前記主面で反射される前記第二のレ
5 ーザ光の反射光を検出しながら前記レンズと前記主面との距離を調整するように前記保持手段を制御し、前記変位取得手段は前記切段予定ラインに沿った前記主面の変位を取得する、レーザ加工装置。【請求項15】(本件発明2)(2I) 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、(2J) 前記第1のレーザ光及び前記加工対象物の主面の変位を測定するための第二のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、(2K) 前記第二のレーザ光の照射に応じて前記主面で反射される反射光を検出して前記主面の変位を取得する変位取得手段と、(2L) 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、(2M) 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、(2N) 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、(2O) 前記第二のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得し、(2P) 前記第一のレーザ光を照射し、前記制御手段は前記変位取得手段が取得した変位に基づいて前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成し、
5 (2Q) 前記制御手段は前記変位取得手段が取得した前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位に基づいて前記主面に対して前記レンズを保持する加工初期位置を設定し、当該設定した加工初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、(2R) 当該レンズを加工初期位置に保持した状態で前記第一のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成し、(2S) 当該一端部における改質領域の形成後に、前記制御手段は、前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除し、前記変位取得手段が取得した前記主面の変位に基づいて前記レンズと前記加工対象物との間隔を調整するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成する、レーザ加工装置。【請求項16】(本件発明3)(3I) 前記変位取得手段が前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得する際に併せて前記第一のレーザ光を照射し、前記切断予定ラインに沿って前記改質領域を形成する、(3J) 請求項10~15のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
(2) 本件明細書の記載事項及び図面の抜粋を別紙2に掲げる。これによれば、本件明細書には、本件発明について次のような開示があることが認められる。ア 本件発明は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する(【0001】)。イ 従来のレーザ加工技術には、加工対象物を加工するためのレーザ光を集光する集光レンズに対し、加工対象物の主面高さを測定する測定手段を所
5 定の間隔をもって並設させたものがあり、加工対象物の主面に沿ってレーザ光でスキャンする際に、測定手段により加工対象物の主面高さを測定し、その測定点が集光レンズの直下に到達したときに、その主面高さの測定値に基づいて集光レンズと加工対象物の主面との距離が一定となるように集光レンズをその光軸方向に駆動するものであるが、加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていくことになるため、測定によって得られた主面高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があるという問題があった(【0002】、【0004】)。ウ また、主面が凸凹している加工対象物を加工する技術としては、加工準備として、加工を施す部分全ての平面度を平面度測定手段によって測定した後、その平面度測定手段をブレードに取り替えて、測定した平面度に基づいて加工対象物を加工するものがあったが、測定時と加工時とでそれぞれに用いる手段を交換するので、交換の手間がかかると共に交換に伴うずれが生じる恐れがあるという問題があった 【0003】 【0005】 。( 、 )本件発明では、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする(【0006】)。エ そこで、本件発明は、前記(1)の構成を採用した。これにより、切断予定ラインに沿って主面の変位を取得し、その取得した変位に基づいてレンズと主面との間隔を調整しながら改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改質領域を形成することができる。また、加工用の第一のレーザ光を集光するレンズで測定用の第二のレーザ光を集光するので、より的確に主面の変位を取得できる。加工初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、その後レンズを保持した状態を解除して主面の変異に追従させ
5 ながら改質領域を形成することにより、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して変位を取得できる。主面の変位の取得に合わせて改質領域も形成するので、一度のスキャンで測定と加工とを行うことができる(【0015】、【0016】、【0018】~【0020】)。オ 本件発明のレーザ加工装置によれば、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができる(【0023】)。3 甲1発明及び周知の技術事項1、2について
(1) 本件無効審判において、請求人である原告は、無効理由として本件発明の進歩性の欠如を主張し、本願出願日前に頒布された刊行物である甲1(国際公開第02/22301号)を主引用文献として、同じく甲3(特開昭53-145564号公報)、甲4(特開平10-189496号公報)、甲5(特開2000-306865号公報)、甲6(特公平6-100711号公報)及び甲7(特開平10-288734号公報)を周知文献として提出した。
(2) 甲1には、別紙3「甲1の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があり、本件審決は、そこには、下記の甲1発明が記載されていると認定した。【甲1発明】レーザ光Lを加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて照射し、前記加工対象物1の切断予定ライン5に沿って前記加工対象物1の内部に改質領域7を形成するレーザ加工装置100であって、前記レーザ光L及び観察用光源117で発生した可視光を前記加工対象物1に向けて集光する集光用レンズ105と、前記可視光の照射に応じて前記加工対象物1の表面3で反射される反射光を検出して、撮像データを作成する撮像素子121と、撮像素子121から出力された撮像データが入力され、当該撮像データを基にして前記可視光の焦点を表面3上に合わせるための焦点データを演算する撮像デ
5 ータ処理部125と、前記加工対象物1と前記集光用レンズ105とを前記加工対象物1の表面3に沿って移動させるX、Y軸ステージ109、111と、前記集光用レンズ105をレーザ光Lの光軸方向に移動させることによるフォーカス調整の手段と、前記X、Y軸ステージ109、111、及び、前記フォーカス調整の手段それぞれの挙動を制御する全体制御部127と、を備え、載置台107に載置された加工対象物1に前記可視光を照射し、前記可視光が照射された切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3を撮像した撮像データに基づいて、焦点データを演算し、前記レーザ光Lの照射前に、前記全体制御部127は前記焦点データに基づいて前記集光用レンズ105と前記表面3との間隔を調整して所定位置に保持するように前記フォーカス調整の手段を制御し、前記レーザ光Lを照射し、前記集光用レンズ105と前記加工対象物1とを前記表面3に沿って相対的に移動させるようにX、Y軸ステージ109、111を制御して前記改質領域7を形成する、レーザ加工装置100。
(3) 本件審決は甲3~5から把握される周知の技術的事項として下記「周知の技術的事項1」 甲6.を、 7から把握される周知の技術的事項として下記「周知の技術的事項2」を、それぞれ認定した。【周知の技術的事項1】半導体ウェーハをレーザ加工する技術分野において、半導体ウェーハに反りがあると加工位置に対して加工用レーザ光の焦点がずれることから、測距用レーザ光を半導体ウェーハに照射し、半導体ウェーハの切断予定ラインに沿った表面(主面)の変位を取得して、取得した主面の変位に基づき、加工
5 用レーザ光のレンズと半導体ウェーハの主面との間隔を調整することで、加工用レーザ光の焦点の位置を調整し、半導体ウェーハの表面を加工すること。【周知の技術的事項2】対象物であるシリコンウェハについて、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になることから、そのような部分において合焦動作を一時的に停止させて焦点を固定し、そのような部分を外れると合焦動作を再開することにより、光の合焦動作を改善すること。4 本件審決の理由の要旨本件審決は、本件発明は甲1発明及び周知の技術的事項1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないと判断した(詳細は別紙4「本件審決の理由」を参照。)5 取消事由
(1) 甲1発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り(取消事由1)
(2) 取消事由1を前提とした甲1発明に基づく本件発明2及び本件発明3の進歩性の判断の誤り(取消事由2、3)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(甲1発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り)
(1)
(原告の主張)
本件審決には、一括して検討された相違点2~4の容易想到性の判断に誤りがある。ア 甲1発明への周知の技術的事項1の適用について(ア) 本件審決は、甲1発明は、加工対象物の内部を加工するものであるから、加工対象物の表面を加工するものである周知の技術的事項1を適用する動機付けがない旨判断した。しかし、レーザ加工において、加工中の集光点のAF制御が必要に
5 なるのが、振動などの外的要因により、集光が不安定になるためであ
ることは、当業者の技術常識であり、焦点の位置が加工対象の表面か、内部であるかにかかわりないから、甲1発明において、AF制御が明示的に記載されていないとしても、当業者であれば記載されているに等しいと理解する。そうすると、そのような相違点(相違点2~4中の周知の技術的事項1に対応する部分)は、実質的な相違点ではないか、当業者が技術常識に基づいて容易に想到しうるものである。(イ) 本件審決は、甲1は加工対象物に反りがあることを想定したものでないから、甲1発明に、加工対象物に反りがあることを課題とする周知の技術的事項1を適用する動機付けは見いだせない旨判断した。しかし、甲1に、表面に電極パターンや電子デバイスが形成されており、一般的に反りの生じやすいウェハが加工対象物として明確に記載されている以上、甲1発明においても、反りのあるシリコンウェハが加工対象になることは、当業者であれば十分に予想する。(ウ) 本件審決は、甲1発明は、焦点位置がZ軸方向にずれても、ずれた位置でレーザ光が収束して加工自体は可能であり、位置の誤差に許容範囲を有するとして、周知の技術的事項1のように表面の加工を行うものとは、集光点のZ軸方向の位置の誤差の許容幅が異なると判断した。しかし、当業者が、「レーザの照射自体が可能」であることをもって、加工中の集光点のAF制御が不要と考えるとはいえない。すなわち、甲1発明の加工対象であるウェハについて、本件出願日の時点において、厚さ30μmまでの薄型シリコンウェハも直接切断が可能であることが知られており(甲38、39)、このような薄いウェハの場合、加工中の集光点をウェハ内に収めるべく、集光点のAF制御が必要であると当業者は理解する。
5 また、ステルスダイシング技術において、比較的厚いウェハであっ
ても、表面に近すぎる箇所にクラック領域を形成すると、クラック領域が表面に形成され、クラック領域そのもののランダムな形状が加工対象物の表面に現れ、表面のチッピングの原因となり、割断精度が悪くなることから、改質領域のZ方向の位置が割断精度に影響を与えるとされる(甲1の105頁15~23行)。さらに、切り残し部分が半分程度のセミフルカットのダイシングでさえ、切断深度のバラツキに起因して、クラックが生じるなどの要因によりチップ分割に支障を来す(甲33)とされていることからすれば、セミフルカットよりはるかに分割の契機となる改質領域が少なく、逆に、改質領域以外の部分が大きいステルスダイシングにおいて、改質領域の深度がばらつけば、チップ分割に支障を来すであろうことを当業者は当然に認識する。イ 甲1発明への周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2の適用について(ア) 本件審決は、甲1発明に周知の技術的事項2を組み合わせることができない理由として、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分に起因して光の合焦動作が困難になるとの課題は、甲1に記載されておらず、これに内在しているということもできない旨判断した。しかし、当業者であれば、甲1において、反りが生じやすいウェハが加工対象物として記載されていると理解することは前記ア(イ)のとおりである以上、平坦部でない(反りのある)部分を有するシリコンウェハが加工対象となりうることや、これに起因して、フォーカス調整やレーザ加工に対して悪影響を及ぼすことを、周知の技術的事項2から理解するから、本件審決の判断は誤りである。(イ) 本件審決は、甲1発明に周知の技術的事項1を適用し、さらに周
5 知の技術的事項2を適用することは、多段階の改変に相当するから、
容易になし得たとはいえない旨判断するが、前記ア(ア)のとおり、甲1発明において、周知の技術的事項1(AF制御)が明示的に記載されていないとしても、当業者であれば記載されているに等しいと考えるものであるから、本件における相違点は、実質的に、端部に対して集光点のAF制御をしないという点に尽きる。甲1に明示的な記載がないことに基づき認定された、集光点のAF制御に係る相違点を、周知技術により容易想到としたとしても、当該部分は、いわば「当たり前」とも評価しうるものであるから、さらに端部に対して集光点のAF制御をしない点について、別途の周知技術に基づいて容易想到としたとしても、多段階の改変(いわゆる容易の容易)には該当しない。
(2)
(被告の主張)
ア 甲1発明への周知の技術的事項1の適用について(ア) 甲1発明や本件発明のような加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工に関しては、「振動等の外的要因による品質低下が生じうるため、レーザ光の集光点を安定させるべく、加工時におけるAF制御が必要となる」という事項は、本件出願時に当業者が認識し得たものではない。(イ) 原告は、前記(1)ア(ウ)のとおり、厚さ30μmまでの薄型シリコンウェハを切断対象とする場合、加工中の集光点をウェハ内に収めるべく、集光点のAF制御が必要である旨主張するが、甲38、39に加工中における集光点のAF制御を示唆する記載は一切なく、たとえ当業者がそれらの記事に接したとしても、甲1発明において加工中における集光点のAF制御の採用が動機付けられることはあり得ない。また、原告は、前記(1)ア(ウ)のとおり、①ステルスダイシングにおいてもチップ分割が精度よく行われるかどうかを考慮する必要があ
5 ること、②甲1の105頁15~23行に、比較的厚いウェハの場合
にも、改質領域のZ方向の位置が割断精度に影響を与える旨の記載があること、③セミフルカットでも改質領域の切断深度のばらつきによりクラック等の問題が生じることを指摘する。しかし、①に関し、AF制御がチップ分割の精度を改善し得ることは、本件特許の出願前には全く知られていなかったことであるから、原告がいう「ステルスダイシングにおいてもチップ分割が精度よく行われるかどうかを考慮する必要があること」は、本件特許の出願前に「甲1発明においてAF制御(加工中における集光点のAF制御)を採用すること」が動機付けられたことの理由にはならない。②に関し、甲1の上記記載も、改質領域を形成する深さ方向の位置が加工対象物の表面から遠すぎても近すぎても問題が生じ得る、という事項を表したものにすぎず、AF追従制御の必要性を示唆するものではない。③に関し、セミフルカットのダイシングによりウェハが切断されるメカニズムと、甲1発明のようなステルスダイシングによりウェハが切断されるメカニズムとは全く相違するものである。そうすると、原告の主張はいずれも失当である。イ 甲1発明の周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2の適用について原告は、前記(1)イ(イ)のとおり、集光点のAF制御に係る相違点を、周知技術により容易想到としたとしても、当該部分は、いわば「当たり前」とも評価しうるものであるから、さらに端部に対して集光点のAF制御をしない点について、別途の周知技術に基づいて容易想到としたとしても、多段階の改変には該当しない旨主張する。しかし、たとえ甲1発明が「反り」のあるウェハをも加工対象とするものであるとしても、周知の技術的事項1(加工中のAF制御)を採用しな
5 い甲1発明においては、「シリコンウェハの一端部に存在する平坦では
ない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難になる」との課題は問題になり得ないから、周知の技術事項2に係る解決手段を採用することは、当業者が容易になし得るものではない。
2 取消事由2、3(取消事由1を前提とした甲1発明に基づく本件発明2及び
本件発明3の進歩性の判断の誤り)について
(1)
(原告の主張)
ア 本件発明1と本件発明2は技術的に同一のことを規定しているから、本件発明1が甲1及び周知の技術的事項1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本件発明2も甲1及び周知の技術的事項1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。イ また、本件発明3は、本件発明1又は2を引用し、「主面の変位を取得する際に併せて前記第一のレーザ光を照射」することをさらに限定するものであるが、甲3~5にも、主面の変位を取得しつつ、加工用レーザ光の照射をすることが記載されているから、この点自体は、周知技術に基づいて当業者が容易になしうるものである。ウ よって、本件審決の判断には誤りがある。
(2)
(被告の主張)
ア 本件発明2と甲1発明との間には、相違点1~3に加えて相違点5があるが、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することは、容易になし得たものとはいえないことは前記1(2)のとおりであり、相違点2、相違点3及び相違点5に係る本件発明2は、甲1発明、周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。イ 本件発明3は、本件発明1又は2の構成を含んでさらに限定したものに
5 当たるから、甲1発明に基づく本件発明1又は2の進歩性についての本件
審決の判断に誤りがない以上、甲1発明に基づく本件発明3の進歩性についての本件審決の判断にも誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(甲1発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
(1) 別紙3「甲1の記載事項(抜粋) によれば、」 甲1には以下の開示があり、本件審決が認定するとおりの甲1発明を認めることができ、また、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点も本件審決が認定するとおりであると認める。ア 甲1発明は、半導体材料基板、圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する(1頁5~6行)。イ レーザーにより、加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物を切断する従来の方法では、加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融され、加工対象物が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの表面に形成された半導体素子のうち、上記領域付近に位置するものが溶融する恐れがある。加工対象物の表面の溶融を防止する方法として、加工対象物の切断する箇所をレーザ光により加熱し、加工対象物を冷却することにより、加工対象物の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて加工対象物を切断する方法もあったが、加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面に、不必要な割れが発生するという問題があった(1頁8行~2頁5行)。ウ 甲1発明の目的は、加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供することである(2頁6~7行)。エ 甲1発明は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に多光子吸収に
5 よる改質領域を形成する工程を備えることを特徴とする。加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、改質領域を形成し、これを起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより、比較的小さな力で加工対象物を切断することができるので、加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることがない。また、加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので、加工対象物の表面が溶融することはない(2頁9~24行、35頁19~23行)。オ 甲1発明によれば、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断することができるので、加工対象物を切断することにより作製される製品の歩留まりや生産性を向上させることができる(110頁7~12行)。
(2) 相違点の容易相当性について検討する。相違点2~4は密接に関連するものであるから、事案に鑑みこれを一括し、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用して、相違点2~4に係る本件発明1とすることが容易になし得るかについてまず検討する。ア 甲1発明への周知の技術的事項1の適用について(ア) 周知の技術的事項1は、半導体ウェーハの表面を加工する際の焦点の位置を調節するものであり、甲3~5には、半導体ウェーハの表面以外の部位を加工する際の課題や解決手段についての記載はない。また、周知の技術的事項1は、加工対象物に反りがあることを課題とする解決手段である。一方、甲1発明は、前記(1)オのとおり、加工対象物の内部に集光点を合わせて改質領域を形成し、切断予定ラインに沿って加工対象物を割るというものである。また、甲1には、加工対象物の反りについての記載はない。加えて、甲1には、溶融処理領域を切断予定ラインに沿うよう
5 に加工対象物の内部に形成する工程において、レーザ光の集光点についてZ軸方向の制御をすることについての記載もない。そうすると、甲1発明に周知の技術的事項1を適用すべき動機付けは認められないというべきである。(イ) 原告は、前記第3の1(1)ア(ア)(イ)のとおり、焦点の位置が加工対象の表面か、内部であるかにかかわりなく、振動などの外的要因により、集光が不安定になることから、加工中の集光点のAF制御が必要になるのは、当業者の技術常識であり、甲1において、周知の技術的事項1(AF制御)が明示的に記載されていないとしても、当業者であれば記載されているに等しいと認識し、また、シリコンウェハは一般に反るものであり、当業者は反ったシリコンウェハが加工対象となることも認識する旨主張する。しかし、甲1発明は、加工対象物の内部に集光点を合わせて改質領域を形成し、切断予定ラインに沿って加工対象物を割るというものであり、その目的や機序からして、加工対象物の表面からレーザ加工する従来技術と本質的に異なるのであるから、甲1に半導体ウェーハの表面の加工の際の技術である周知の技術事項1が記載されているに等しいとはいえないし、甲1にはシリコンウェハの反りについて何らの言及もないのであって、原告の主張は採用できない。(ウ) 原告は、前記第3の1(1)ア(ウ)のとおり、本件審決が、甲1発明における集光点のZ軸方向のずれの許容幅の大きさを指摘し、これを根拠に周知の技術的事項1の適用を否定する判断をしたのは誤りであるとし、その理由として、①本件出願日の時点において、厚さ30μmまでの薄型シリコンウェハも甲1発明の加工対象となり得るところ、加工中の集光点をウェハ内に収める必要があること、②甲1の105頁15~23行に、比較的厚いウェハの場合にも、改質領域のZ方向の位置が割断精
5 度に影響を与える旨の記載があること、③セミフルカットでも改質領域の深度のばらつきによりクラック等の問題が生じることからすれば、セミフルカットより改質領域以外の部分が大きいステルスダイシングにおいて、改質領域の深度がばらつけば、チップ分割に支障を来すであろうことから、当業者がAF制御の必要性を理解する旨を主張する。しかし、①に関し、甲38、39は、薄型シリコンウェハがステルスダイシングの加工対象となることを示すものであるが、それが直ちに甲1発明においてZ方向のAF制御の必要性を導くものではない。また、原告が②において引用する甲1の記載は、「クラック領域9と表面3の距離が比較的長いと、表面3側においてクラック91の成長方向のずれが大きくなる。これにより、クラック91が電子デバイス等の形成領域に到達することがあり、この到達により電子デバイス等が損傷する。クラック領域9を表面3付近に形成すると、クラック領域9と表面3の距離が比較的短いので、クラック91の成長方向のずれを小さくできる。よって、電子デバイス等を損傷させることなく切断が可能となる。但し、表面3に近すぎる箇所にクラック領域9を形成すると、クラック領域9が表面3に形成される。このため、クラック領域9そのもののランダムな形状が加工対象物の表面に現れ、表面3のチッピングの原因となり、割断精度が悪くなる。」というものであるが、これは、改質領域を形成する深さ方向の位置は加工対象物の表面に近いことが望ましいが、近すぎてもいけないという程度のことを述べるにすぎず、形成位置を特定したり、それが一定でなければならないとするものではなく、まして、AF制御の必要性を示すものでもない。また、甲1には、「図98に示すクラック領域9は、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より表面(入射面)3に近い位置に調節して形成されたものである。クラック領域9は加工対象物1の
5 内部中の表面3側に形成される。」(105頁1~4行)、「なお、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より表面3に遠い位置に調節してクラック領域9を形成することもできる。この場合、クラック領域9は加工対象物1の内部中の裏面21側に形成される。」(105頁24行~106頁1行)等の記載もあり、甲1発明においては、シリコンウェハ内部の改質領域の位置はシリコンウェハの厚み方向において厚みの半分の位置より表面に近い位置の近くから、厚みの半分の位置より表面に遠い位置まで、ある程度の幅をもって設定され得ると理解できるのであり、当業者が、甲1発明において、X、Y軸ステージの振動やウェハの反りにより、レーザ光の集光点がずれること、すなわち改質領域の位置がずれることが、直ちにシリコンウェハの割れに影響を及ぼすと理解することはないというべきである。そして、③に関し、セミフルカットとステルスダイシングは切断の原理、機序が異なるのであり、前者で改質領域の深度のばらつきにより問題が生じるからといって、後者においても同様であると当業者が認識するとはいえない。(エ) 以上のとおりであって、原告の主張するところを踏まえても、甲1発明に周知の技術的事項1を適用することが当業者にとって容易になし得たとはいえない。イ 甲1発明への周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2の適用について甲1発明に、周知の技術的事項1を適用することが当業者にとって容易になし得たといえないことは前記アのとおりである。また、周知の技術的事項2は、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分(段差部や研磨ダレ部分等)に起因して光の合焦動作が困難
5 になるという課題に対応するためのものであるが、甲1には、シリコンウェハの一端部を加工することを前提とした記載自体がないから、周知の技術的事項2を適用する動機もない。したがって、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することが当業者にとって容易になし得たとはいえない。ウ 小括以上のとおりであって、当業者が、相違点2~4に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたとはいえない。
(3) そうすると、相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りはなく、取消事由1は理由がない。
2 取消事由2、3(取消事由1を前提とした甲1発明に基づく本件発明2及び本件発明3の進歩性の判断の誤り)について(1) 取消事由2について本件発明2と甲1発明との間には、相違点1~3に加えて相違点5があるが、甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することで相違点2、3を克服することを容易になし得たものとはいえないことは前記 1 のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明、周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。(2) 取消事由3について本件発明3は、本件発明1又は2の構成を含んでさらに限定したものに当たるから、甲1発明に基づく本件発明1及び2の進歩性についての本件審決の判断に誤りがない以上、甲1発明に基づく本件発明3の進歩性についての本件審決の判断にも誤りはない。
3 結論
5 以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決について取り消されるべき違法は認められない。したがって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
宮 坂 昌 利
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
岩 井 直 幸
別紙1 略語一覧
(略語) (意味)・本件特許:被告を特許権者とする特許第4601965号
5 ・本件発明:本件特許の請求項13、15、16に係る発明の総称個別にはそれぞれ「本件発明1」「本件発明2」「本件発明3」という。・本件明細書:本件特許に係る明細書・甲1発明:甲1(国際公開第02/22301号)記載の発明・Z軸方向:レーザ光Lの光軸方向
別紙2 本件明細書の記載事項及び図面(抜粋)
【技術分野】【0001】本発明は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレーザ加工方5 法及びレーザ加工装置に関する。【背景技術】【0002】従来のレーザ加工技術には、加工対象物を加工するためのレーザ光を集光する集光レンズに対し、加工対象物の主面高さを測定する測定手段(接触式変位計や超音波距離計等)を所定の間隔をもって並設させたものがある(例えば、下記特許文献1の図6~図10参照。)。このようなレーザ加工技術では、加工対象物の主面に沿ってレーザ光でスキャンする際に、測定手段により加工対象物の主面高さを測定し、その測定点が集光レンズの直下に到達したときに、その主面高さの測定値に基づいて集光レンズと加工対象物の主面との距離が一定となるように集光レンズをその光軸方向に駆動する。【0003】また、主面が凸凹している加工対象物を加工する技術としては、加工準備として、加工を施す部分全ての平面度を平面度測定手段(投光器と反射光受光器とを有する平面度測定器)によって測定した後、その平面度測定手段をブレードに取り替えて、測定した平面度に基づいて加工対象物を加工するものがある(例えば、下記特許文献2参照。)。【特許文献1】 特開2002-219591号公報【特許文献2】 特開平11-345785号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0004】しかしながら、上記特許文献1に記載のレーザ加工技術においては、次のような解決すべき課題がある。すなわち、加工対象物の外側の位置からレーザ光の照射を開始してレーザ光と加工対象物とをその主面に沿って移動させて加工を行う場合に、測定手段は加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っ5 ていくことになる。そして、この測定によって得られた主面高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合がある。【0005】また、上記特許文献2に記載の技術を用いた場合には、加工対象物の主面の平面度を正確に把握できるのものの、測定時と加工時とでそれぞれに用いる手段を交換するので、交換の手間がかかると共に交換に伴うずれが生じる恐れがある。【0006】そこで本発明では、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0015】本発明のレーザ加工装置は、第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、第1のレーザ光及び加工対象物の主面の変位を測定するための第二のレーザ光を加工対象物に向けて集光するレンズと、第二のレーザ光の照射に応じて主面で反射される反射光を検出して主面の変位を取得する変位取得手段と、加工対象物とレンズとを加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、レンズを主面に対して進退自在に保持する保持手段と、移動手段及び保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、第二のレーザ光を照射しながら、制御手段は加工対象物とレンズとを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御し、変位取得手段は切断予定ラインに沿った主面の変位を取得し、第一のレーザ光を照射し、制御手段は変位取得手段が取得した変位に基づいてレンズと主面との間隔を調整しながら保持するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御して前記改質領域5 を形成する。【0016】本発明のレーザ加工装置によれば、切断予定ラインに沿って主面の変位を取得し、その取得した変位に基づいてレンズと主面との間隔を調整しながら改質領域を形成するので、加工対象物内部の所定の位置に改質領域を形成することができる。また、加工用の第一のレーザ光を集光するレンズで測定用の第二のレーザ光を集光するので、より的確に主面の変位を取得できる。【0018】また本発明のレーザ加工装置では、制御手段は第二のレーザ光の集光点が加工対象物に対する所定の位置に合うように設定された測定初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、当該レンズを測定初期位置に保持した状態で第二のレーザ光の照射を開始し、制御手段はレンズと加工対象物とを主面に沿って相対的に移動させるように移動手段を制御し、主面で反射される第二のレーザ光の反射光に応じて、レンズを測定初期位置に保持した状態を解除するように保持手段を制御し、当該解除後に、制御手段は主面で反射される第二のレーザ光の反射光を検出しながらレンズと主面との距離を調整するように保持手段を制御し、変位取得手段は切段予定ラインに沿った主面の変位を取得することも好ましい。測定初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部に第二のレーザ光を照射した後、すなわちレンズと加工対象物とが相対的に移動してレンズが加工対象物に差し掛かった後に、レンズを保持した状態を解除して主面の変位を取得するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して変位を取得できる。また、反射光の光量は反射する面との距離に応じて変化するので、例えば、反射光の光量が所定の変化をする部分を加工対象物の主面の外縁に相当するものと想定してレンズを保持した状態を解除できる。【0019】また本発明のレーザ加工装置では、制御手段は変位取得手段が取得した切断予定5 ラインに沿った主面の変位に基づいて主面に対してレンズを保持する加工初期位置を設定し、当該設定した加工初期位置にレンズを保持するように保持手段を制御し、当該レンズを加工初期位置に保持した状態で第一のレーザ光の照射を開始し、制御手段はレンズと加工対象物とを相対的に移動させるように移動手段を制御して切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、当該一端部における改質領域の形成後に、制御手段は、レンズを加工初期位置に保持した状態を解除し、変位取得手段が取得した主面の変位に基づいてレンズと加工対象物との間隔を調整するように保持手段を制御し、レンズと加工対象物とを相対的に移動させるように移動手段を制御して改質領域を形成することも好ましい。加工初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、その後レンズを保持した状態を解除して主面の変異に追従させながら改質領域を形成するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して改質領域を形成できる。【0020】また本発明のレーザ加工装置では、変位取得手段が切断予定ラインに沿った主面の変位を取得する際に併せて第一のレーザ光を照射し、切断予定ラインに沿って改質領域を形成することも好ましい。主面の変位の取得に合わせて改質領域も形成するので、一度のスキャンで測定と加工とを行うことができる。【発明の効果】【0023】本発明のレーザ加工方法及びレーザ加工装置によれば、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことができる。【発明を実施するための最良の形態】【0040】まず、この説明に用いるウエハ状の加工対象物Sについて図3を参照しながら説明する。加工対象物Sには2n本の切断予定ラインC1~C2nが設定されている。この切断予定ラインC1~C2nは、二本を一組としてレーザ加工が施される。例えば、5 切断予定ラインC1~C2であれば、切断予定ラインC1の延長上の点X1から点X2に向かって切断予定ラインC1の変位を取得し、続いて切断予定ラインC2の延長上の点X3から点X4に向かって切断予定ラインC2の変位を取得する。このように変位を取得すれば、点X1から点X2方向に向かって加工用対物レンズ42(図1参照)が移動するようにステージ2(図1参照)を移動させ、その後逆の点X3から点X4方向に向かって加工用対物レンズ42が移動するようにステージ2を移動させるので、ステージ2の移動が効率的に行える。切断予定ラインC1~C2について変位を取得すると、その取得した変位に基づいてアクチュエータ43の移動量を再生しながら切断予定ラインC 1の延長上の点X 1から点X 2に向かって切断予定ラインC 1に沿って改質領域を形成し、続いて切断予定ラインC2の延長上の点X3から点X4に向かって切断予定ラインC2に沿って改質領域を形成する。【0041】(変位取得工程) 引き続いて、ウエハ状の加工対象物Sの切断予定ラインC1~Cnに沿った表面S1の変位を取得する変位取得行程について説明する。【0042】図4(A)~図4(C)を参照しながら説明する。図4(A)~図4(C)は、図3の II-II 断面を示す図である。 理解を容易にするために図4尚、 (A)~図4(C)においては断面を示すハッチングを省略する。図4(A)に示すように、加工対象物Sはダイシングフィルム2aを介してステージ2に吸着されて固定されている。ダイシングフィルム2aはダイシングリング(図示しない)で固定されている。【0043】図4(A)に示すように、加工対象物2の切断予定ラインC1上の一点Q1に対応する位置に加工用対物レンズ42が配置されるようにステージ2が移動する。加工用対物レンズ42を保持しているアクチュエータ43は最も縮んだ状態から25μm伸びた状態になる。この伸び量25μmは、アクチュエータ43の最大伸び量50μmの半分の量として設定されている。この状態で観察用可視光の反射光のピン5 トが合うようにステージ2を上下させる。このピントが合った状態で測距用レーザ光L2を照射し、その反射光に基づいて非点収差信号を得て、この非点収差信号の値を基準値とする。【0044】続いて、図4(B)に示すように、図4(A)の状態におけるアクチュエータ43の伸び量を保持したまま、加工用対物レンズ42切断予定ラインC1の延長上の点X1に対応する位置に配置されるようにステージ2が移動する。図4(B)に示す鉛直方向における加工対象物Sに対する加工用対物レンズ42の位置が初期位置(測定初期位置)となる。その後、図4(B)中の矢印Fの方向に加工用対物レンズ42が移動するようにステージ2が移動する(測定準備ステップ)。【0045】測距用レーザ光L2はダイシングフィルム2aにおいては反射率が低く反射される全光量は少ないが、加工対象物Sにおいては反射される全光量が増大する。すなわち、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が多くなるので、反射光の全光量が予め定められた閾値を超えた場合に加工対象物Sの切断予定ラインC1と加工用対物レンズ42が交差する位置にあるものと判断できる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して非点収差信号が基準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を開始する(第一測定ステップ)。【0046】従って、加工用対物レンズ42が図4(B)中の矢印F方向に移動すると図4(C)に示す状態になる。図4(C)に示すように、区間G1(一端部)においては加工用対物レンズ42を保持している状態から加工用対象物Sの表面S1の変位に追従させるまでの移行区間となるので、この部分においてはアクチュエータ43の移動量5 が表面S1の変位とは対応していない。その後、アクチュエータ43の伸び量の保持を解除して非点収差信号が基準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を行う区間G2においては、アクチュエータ43の移動量が表面S1の変位と対応している。従って、アクチュエータ43の伸び量変化の軌跡Gは表面S1の変位と対応することになる。その後、図4(C)に示すように加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1の他端に差し掛かると、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が少なくなる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも小さくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして、その時点でのアクチュエータの伸び量を保持すると共に、軌跡Gの記録を終了する。この軌跡Gの情報は変位格納部707に格納される(第二測定ステップ)。【0057】(加工工程) 引き続いて、加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2を照射して改質領域を形成する加工工程について説明する。【0058】図4(A)~図4(C)と同様に図3の II-II 断面を示す図8(A)~図8(C)を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするために図6(A)~図6(C)においては断面を示すハッチングを省略する。図8(A)は、切断予定ラインC1において加工用対物レンズ42が改質領域の形成を開始した状態を示している。 (A)図8に至る前に、ステージ2が更に所定の距離(以下、加工高さ)上昇して、加工対象物Sの表面S1と加工用対物レンズ42との距離が加工高さ分だけ近づくように設定される。ここで、可視域のピント位置とレーザ光の集光位置とが一致するものとすれば、加工用レーザ光L1は、加工対象物Sの内部であって、その表面S1から加工高さと加工対象物Sのレーザ波長における屈折率との積の値に相当する位置に集光されることになる。例えば、加工対象物Sがシリコンウェハであってその屈折率が5 3.6(波長1.06μm)であり、加工高さが10μmであれば、3.6×10=36μmの位置に集光されることになる。【0059】アクチュエータ43は図4(C)で設定された伸び量で固定されており、加工用対物レンズ42は初期位置(加工用初期位置)に配置されている。図4(C)から図8(A)の状態に差し掛かる前に加工用レーザ光L1及び測距用レーザ光L2が照射される。加工用対物レンズ42が図中矢印Hの方向に移動するようにステージ2が移動する(加工準備ステップ)。【0060】測距用レーザ光L2はダイシングフィルム2aにおいては反射率が低く反射される全光量は少ないが、加工対象物Sにおいては反射される全光量が増大する。すなわち、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が多くなるので、反射光の全光量が予め定められた閾値を超えた場合に加工対象物Sの切断予定ラインC1と加工用対物レンズ42が交差する位置にあるものと判断できる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして(図8(A)に相当する状態になってものとして)、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除してアクチュエータ43の伸び量制御を開始する。この伸び量は、図4(A)~図4(C)を参照しながら説明したように取得されたアクチュエータ43の伸び量の軌跡Gに基づいて制御される。より具体的には、変位取得再生部706が変位格納部707に格納されている軌跡Gの情報に従って再生情報を生成し、変位取得再生部706からアクチュエータ制御部703に出力される再生情報に従ってアクチュエータ制御部703が制御信号をアクチュエータ43に出力する。従って、加工用対物レンズ42が図6(A)中の矢印H方向に移動すると図8(B)に示す状態になる。図8(B)に示すように、区間J(一端部)においては一定の加工高さで5 改質領域Rが形成されることになる。この区間Jにおいて一定の加工高さで改質領域Rが形成されると、その後、加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1に沿って移動し、加工用レーザ光L1によって改質領域Rを形成する(第一加工ステップ)。【0061】図8(B)に示す状態から更に加工用対物レンズ42が図8(A)中矢印Hの方向に移動すると、図8(C)に示すように加工用対物レンズ42は切断予定ラインC1の他端に差し掛かる。加工用対物レンズ42が加工対象物Sから外れた位置に至ると、図8(A)を参照しながら説明したのとは逆の状態となり、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が少なくなる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定められた閾値よりも小さくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして(図8(C)に相当する状態になってものとして) その時点でのアクチュエータの伸び量を保持する。、 アクチュエータ43の伸び量を保持したまま加工用対物レンズ42が図8(C)中のX2の位置に至るようにステージ2が移動し、次の切断予定ラインC2の加工に備える(第二加工ステップ)。【図1】 【図3】【図4】【図8】
別紙3 甲1の記載事項(抜粋)
技術分野本発明は、半導体材料基板、圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。(1頁4~6行)背景技術レーザ応用の一つに切断があり、レーザによる一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウェハやガラス基板のような加工対象物の切断する箇所に、加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射し、レーザ光の吸収により切断する箇所において加工対象物の表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物を切断する。しかし、この方法では加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よって、加工対象物が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの表面に形成された半導体素子のうち、上記領域付近に位置する半導体素子が溶融する恐れがある。加工対象物の表面の溶融を防止する方法として、例えば、特開2000-219528号公報や特開2000-15467号公報に開示されたレーザによる切断方法がある。これらの公報の切断方法では、加工対象物の切断する箇所をレーザ光により加熱し、そして加工対象物を冷却することにより、加工対象物の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて加工対象物を切断する。(1頁8~21行)発明の開示しかし、これらの公報の切断方法では、加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面に、切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射していない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生することがある。よって、これらの切断方法では精密切断をすることができない。特に、加工対象物が半導体ウェハ、液晶表示装置が形成されたガラス基板や電極パ夕一ンが形成されたガラス基板の場合、この不必要な割れにより半導体チップ、液晶表示装置や電極パターンが損傷することがある。また、これらの切断方法では平均入力エネルギーが大きいので、半導体チップ等に与える熱的ダメージも大きい。本発明の目的は、加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することである。5 (1)本発明に係るレーザ加工方法は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、加工対象物の切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に多光子吸収による改質領域を形成する工程を備えることを特徴とする。本発明に係るレーザ加工方法によれば、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射しかつ多光子吸収という現象を利用することにより、加工対象物の内部に改質領域を形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。本発明に係るレーザ加工方法によれば、改質領域を起点として切断予定ラインに沿って加工対象物が割れることにより、加工対象物を切断することができる。よって、比較的小さな力で加工対象物を切断することができるので、加工対象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。また、本発明に係るレーザ加工方法によれば、加工対象物の内部に局所的に多光子吸収を発生させて改質領域を形成している。よって、加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないので、加工対象物の表面が溶融することはない。なお、集光点とはレーザ光が集光した箇所のことである。切断予定ラインは加工対象物の表面や内部に実際に引かれた線でもよいし、仮想の線でもよい。以上説明した(1)のことは、後で説明する(2)~(6)にも言えることである。(1頁23行~2頁26行)これらの本発明に係るレーザ加工装置によれば、上記本発明に係るレーザ加工方法と同様の理由により、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた不必要な割れを発生させることのないレーザ加工や、加工対象物の内部において加工対象物の厚み方向におけるパルスレーザ光の集光点の位置を制御したレーザ加工が可能となる。(35頁19~23行)図1及び図2に示すように、加工対象物1の表面3には切断予定ライン5がある。5 切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレーザ加工は、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射して改質領域7を形成する。なお、集光点とはレーザ光Lが集光した箇所のことである。レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち矢印Α方向に沿って)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3~図5に示すように改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。加工対象物1の切断において、切断する箇所に起点があると加工対象物1はその起点から割れるので、図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切断が可能となる。(44頁5~22行)次に、本実施形態の具体例を説明する。[第1例]本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法について説明する。図14はこの方法に使用できるレーザ加工装置100の概略構成図である。レーザ加工装置100は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光Lの反射機能を有しかつレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミラー103で反射されたレーザ光L5 を集光する集光用レンズ105と、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1が載置される載置台107と、載置台107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動させるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ステージ113と、これら三つのステージ109、111、113の移動を制御するステージ制御部115と、を備える。Z軸方向は加工対象物1の表面3と直交する方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また、この集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が移動手段の一例となる。・・・第1例では加工対象物1の加工にパルスレーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることができるなら連続波レーザ光でもよい。なお、本発明においてレーザ光はレーザビームを含む意味である。集光用レンズ105は集光手段の一例である。Z軸ステージ113はレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせる手段の一例である。集光用レンズ105をZ軸方向に移動させることによっても、レーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせることができる。レーザ加工装置100はさらに、載置台107に載置された加工対象物1を可視光線により照明するために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイク口イツクミラー103及び集光用レンズ105と同じ光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119と、を備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ105との間にダイクロイックミラー103が配置されている。ビームスプリッタ119は、可視光線の約半分を反射し残りの半分を透過する機能を有しかつ可視光線の光軸の向きを90°変えるように配置されている。観察用光源117から発生した可5 視光線はビームスプリッタ119で約半分が反射され、この反射された可視光線がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表面3を照明する。・・・レーザ加工装置100はさらに、撮像素子121から出力された撮像データが入力される撮像データ処理部125と、レーザ加工装置100全体を制御する全体制御部127と、モニタ129と、を備える。撮像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせるための焦点データを演算する。この焦点データを基にしてステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うようにする。よって、撮像データ処理部125はオートフォーカスユニットとして機能する。また、撮像データ処理部125は、撮像データを基にして表面3の拡大画像等の画像データを演算する。この画像データは全体制御部127に送られ、全体制御部で各種処理がなされ、モニタ129に送られる。これにより、モニタ129に拡大画像等が表示される。・・・次に、図14及び図15を用いて、本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法を説明する。図15は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャートである。加工対象物1はシリコンウェハである。まず、加工対象物1の光吸収特性を図示しない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づいて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少ない波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定する(S101)。次に、加工対象物1の厚さを測定する。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にして、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S103)。これは、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置するレーザ光Lの集光点を基準とした加工対象物1のZ軸方向の移動量である。この移動5 量を全体制御部127に入力される。加工対象物1をレーザ加工装置100の載置台107に載置する。そして、観察用光源117から可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S105) 照明さ。れた切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3を撮像素子121により撮像する。この撮像データは撮像データ処理部125に送られる。この撮像デ-夕に基づいて撮像データ処理部125は観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点データを演算する(S107)。この焦点データはステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦点が表面3に位置する。なお、撮像データ処理部125は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工対象物1の表面3の拡大画像データを演算する。この拡大画像データは全体制御部127を介してモニタ129に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5付近の拡大画像が表示される。全体制御部127には予めステップS103で決定された移動量データが入力されており、この移動量データがステージ制御部115に送られる。ステージ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動させる(S111)。次に、レーザ光源101からレーザ光Lを発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ライン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成する(S113)。そして、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って曲げることにより、加工対象物1を切断する(S115)。これにより、加工対象物1をシ5 リコンチップに分割する。第1例の効果を説明する。これによれば、多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライン5に照射している。そして、X軸ステージ109やY軸ステージ111を移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させている。これにより、改質領域(例えばクラック領域、溶融処理領域、屈折率変化領域)を切断予定ライン5に沿うように加工対象物1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で割って切断することができる。よって、改質領域を起点として切断予定ライン5に沿って加工対象物1を割ることにより、比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。これにより、加工対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要な割れを発生させることなく加工対象物1を切断することができる。また、第1例によれば、加工対象物1に多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライン5に照射している。よって、パルスレーザ光Lは加工対象物1を透過し、加工対象物1の表面3ではパルスレーザ光Lがほとんど吸収されないので、改質領域形成が原因で表面3が溶融等のダメージを受けることはない。以上説明したように第1例によれば、加工対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要な割れや溶融が生じることなく、加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1が例えば半導体ウェハの場合、半導体チップに切断予定ラインから外れた不必要な割れや溶融が生じることなく、半導体チップを半導体ウェハから切り出すことができる。表面に電極パターンが形成されている加工対象物や、圧電素子ウェハや液晶等の表示装置が形成されたガラス基板のように表面に電子デバイスが形成されている加工対象物についても同様である。よって、第1例によれば、加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば半導体チップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留まりを向上させることができる。5 ・・・(50頁15行~55頁13行)[第10例]本実施形態の第10例は、加工対象物の厚み方向におけるレーザ光の集光点の位置を調節することにより、加工対象物の厚み方向における改質領域の位置を制御している。この位置制御についてクラック領域を例に説明する。図96は、本実施形態の第10例に係るレーザ加工方法を用いて加工対象物1の内部にクラック領域9が形成された加工対象物1の斜視図である。パルスレーザ光Lの集光点は加工対象物1のパルスレーザ光Lの表面(入射面)3を越して加工対象物1の内部に合わされる。そして、集光点は加工対象物1の厚み方向において厚みの略半分の位置に調節されている。これらの条件の下で切断予定ライン5に沿って加工対象物1にパルスレーザ光Lを照射すると、クラック領域9は切断予定ライン5に沿って加工対象物1の厚みの半分の位置及びその付近に形成される。図97は図96に示す加工対象物1の部分断面図である。クラック領域9形成後、クラック領域9から表面3及び裏面21に向けてクラック91が自然に成長している。クラック領域9を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置及びその付近に形成すると、例えば加工対象物1の厚みが比較的大きい場合、自然に成長するクラック91と表面3(裏面21)との距離を比較的長くすることができる。よって、加工対象物1の切断予定ライン5に沿う切断予定箇所はある程度の強度を保持している。従って、レーザ加工終了後に加工対象物1の切断工程を行う場合、加工対象物のハンドリングが容易となる。図98は図96と同様に本実施形態の第10例に係るレーザ加工方法を用いて形成されたクラック領域9を含む加工対象物1の斜視図である。図98に示すクラック領域9は、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの5 半分の位置より表面(入射面)3に近い位置に調節して形成されたものである。クラック領域9は加工対象物1の内部中の表面3側に形成される。図99は図98に示す加工対象物1の部分断面図である。クラック領域9が表面3側に形成されているので、自然に成長するクラック91は表面3又はその近傍に到達する。よって、切断予定ライン5に沿った割れが表面3に生じやすいので、加工対象物1を容易に切断することができる。特に、加工対象物1の表面3に電子デバイスや電極パターンが形成されている場合、クラック領域9を表面3付近に形成すると、加工対象物1の切断において電子デバイス等の損傷を防ぐことができる。すなわち、クラック領域9からクラック91を加工対象物1の表面3及び裏面21方向に成長させることにより、加工対象物1が切断される。クラック91の自然成長だけで切断できる場合もあるし、クラック91の自然成長に加えて人為的にクラック91を成長させて切断する場合もある。クラック領域9と表面3の距離が比較的長いと、表面3側においてクラック91の成長方向のずれが大きくなる。これにより、クラック91が電子デバイス等の形成領域に到達することがあり、この到達により電子デバィス等が損傷する。クラック領域9を表面3付近に形成すると、クラック領域9と表面3の距離が比較的短いので、クラック91の成長方向のずれを小さくできる。よって、電子デバイス等を損傷させることなく切断が可能となる。但し、表面3に近すぎる箇所にクラック領域9を形成するとクラック領域9が表面3に形成される。このため、クラック領域9そのもののランダムな形状が表面3に現れ、表面3のチッピングの原因となり、割断精度が悪くなる。なお、パルスレーザ光Lの集光点を加工対象物1の厚み方向において厚みの半分の位置より表面3に遠い位置に調節してクラック領域9を形成することもできる。この場合、クラック領域9は加工対象物1の内部中の裏面21側に形成される。(104頁6行~106頁1行)・・・産業上の利用可能性本発明に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置によれば、加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断することができる。よって、加工対象物を切断することにより作製される製品(例えば、半導体チップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留まりや生産性を向上させることができる。(110頁7~12行)
別紙4 本件審決の理由
1 本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点(1) 一致点5 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、前記第1のレーザ光及び測定用の光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、測定用の光の照射に応じて前記加工対象物の主面で反射される反射光を検出して、前記主面の位置に関するデータを取得する取得手段と、前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、前記第一のレーザ光を照射し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成する、レーザ加工装置。(2) 相違点<相違点1>「測定用の光」について、本件発明1では「第二のレーザ光」(構成J)であるのに対し、甲1発明では「可視光」である点。<相違点2>「測定用の光」が、本件発明1では、「加工対象物の主面の変位を測定するための」(構成J)ものであり、「測定用の光の照射に応じて前記加工対象物の主面で反射される反射光を検出して、前記主面の位置に関するデータを取得する取得手段」が、本件発明1では、「前記主面の変位を取得する」(構成K)ものであり、「第二5 のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物とレンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得」(構成O)するのに対し、甲1発明では、「観察用光源117で発生した可視光」(測定用の光)は「前記可視光の焦点を表面3上に合わせるための焦点データ」を演算するものであるが、当該可視光を照射しながら、全体制御部127が加工対象物1と集光用レンズ105とを表面3に沿って相対的に移動させるようにX、Y軸ステージ109、111を制御することはなく、そのため、切断予定ライン5に沿った焦点データの変位を取得することもない点。<相違点3>「前記第一のレーザ光を照射し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成」する際に、本件発明1では、「前記制御手段は前記変位取得手段が取得した変位に基づいて前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御」している(構成P)のに対し、甲1発明では、「前記レーザ光Lの照射前に、前記全体制御部127は前記焦点データに基づいて前記集光用レンズ105と前記表面3との間隔を調整して所定位置に保持するように前記フォーカス調整の手段を制御」するものであり、「前記レーザ光Lを照射し、前記集光用レンズ105と前記加工対象物1とを前記表面3に沿って相対的に移動させるようにX、Y軸ステージ109、111を制御して前記改質領域7を形成」する際には、全体制御部127は、フォーカス調整の手段に対して、集光用レンズ105と表面3との間隔を調整しながら保持するような制御を行っていない点。<相違点4>5 本件発明1では、「レーザ加工装置」が、「前記制御手段は前記第二のレーザ光の集光点が前記加工対象物に対する所定の位置に合うように設定された測定初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御」し(構成Q)、「当該レンズを測定初期位置に保持した状態で前記第二のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記主面で反射される前記第二のレーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除するように前記保持手段を制御」し(構成R)、「当該解除後に、前記制御手段は前記主面で反射される前記第二のレーザ光の反射光を検出しながら前記レンズと前記主面との距離を調整するように前記保持手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得」する(構成S)、という構成を備えているのに対し、甲1発明では、「レーザ加工装置100」がそのような構成を備えていない点。2 本件発明1と甲1発明の相違点の容易想到性についての判断理由の要旨(1) 相違点2~4は技術的に密接に関連していることから、甲1発明に周知の技術的事項1、2を適用して、相違点2~4に係る本件発明1とすることが容易になし得るかについて検討する。(2) 甲1発明への周知の技術的事項1の適用について甲1発明は、加工対象物の内部を加工するものであるから、そもそも半導体ウェーハの表面に集光点を合わせて、表面を加工をするものである周知の技術的事項1を適用する動機付けがない。周知の技術的事項1は加工対象物に反りがあることを課題とした解決手段であるのに対して、甲1は加工対象物に反りがあることを想定したもので5 はなく、甲1発明に周知の技術的事項1を適用する動機付けは見いだせない。甲1発明は、改質領域を加工対象物1の内部にのみ形成するものであり、加工対象物1に厚みを有し、焦点位置がZ軸方向にずれても、ずれた位置でレーザ光が収束して加工自体は可能であり、位置の誤差に許容範囲を有することを考慮すれば、周知の技術的事項1のように表面の加工を行うものとは、集光点のZ軸方向の位置に係る条件(Z軸方向の位置の誤差の許容幅)が異なる。よって、甲1発明に、周知の技術的事項1を適用することが当業者にとって容易になし得たとはいえない。(3) 甲1発明への周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2の適用について甲1には、光の合焦動作がシリコンウェハの一端部に存在する平坦でない部分についても行われることは記載されていないし、加工対象物の平坦でない部分がフォーカス調整やレーザ加工に対して悪影響を及ぼすとの課題についての記載も見当たらない。甲1におけるフォーカス調整は、加工対象物の表面の全体に沿って連続的に行うものではないから、シリコンウェハの一端部に存在する平坦ではない部分に起因して光の合焦動作が困難になるとの課題が甲1に内在しているということもできない。甲1発明に周知の技術的事項1を適用することができたとしても、さらに周知の技術的事項2を適用することは多段階の改変に該当し、そのような多段階の改変を要する本件発明1が、甲1発明に基づいて容易になし得たものということはできない。3 甲1発明に基づく本件発明2の進歩性欠如に関する判断の要旨(1) 本件発明2と甲1発明の一致点・相違点ア 一致点本件発明1と甲1発明の一致点に同じ5 イ 相違点本件発明2では、「レーザ加工装置」が、「前記制御手段は前記変位取得手段が取得した前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位に基づいて前記主面に対して前記レンズを保持する加工初期位置を設定し、当該設定した加工初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御」し(構成2Q)、「当該レンズを加工初期位置に保持した状態で前記第一のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成」し(構成2R)、「当該一端部における改質領域の形成後に、前記制御手段は、前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除し、前記変位取得手段が取得した前記主面の変位に基づいて前記レンズと前記加工対象物との間隔を調整するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成」する(構成2S)、という構成を備えているのに対し、甲1発明では、「レーザ加工装置100」がそのような構成を備えていない点。(2) 相違点の容易想到性について甲1発明に各相違点に係る周知技術を適用して、相違点2、3、5に係る本件発明2とすることが容易になし得るかについて検討する。甲1発明に周知の技術的事項1及び周知の技術的事項2を適用することは、上記2に示したのと同様の理由により、容易になし得たものとはいえない。4 甲1発明に基づく本件発明3の進歩性欠如に関する判断の要旨5 本件発明3は、本件発明1又は2の構成を含んでさらに限定したものに相当し、本件発明3と、甲1発明とは、上記相違点2~5を有するから、本件発明1又は本件発明2と同様の理由により、無効理由1によって本件発明3に係る特許を無効とすることはできない。
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