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令和5(行ケ)10046審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和5年12月21日
事件種別 民事
当事者 原告
被告株式会社ユーグレナ
対象物 角栓除去用液状クレンジング剤
法令 特許権
特許法39条2項2回
特許法29条2項1回
キーワード 審決30回
実施28回
進歩性21回
無効19回
新規性5回
分割4回
無効審判3回
特許権2回
刊行物2回
拒絶査定不服審判1回
訂正審判1回
優先権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、証拠により明ら か) (1) 原告は、平成26年11月25日を出願日とする特許出願(特願20125 4-237308号。優先権主張は平成25年12月3日及び平成26年4 月11日)の一部を平成27年5月24日に新たな特許出願とした特願20

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判決文

令和5年12月21日判決言渡
令和5年(行ケ)第10046号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和5年11月7日
判 決
原 告 X
被 告 株 式 会 社 ユ ー グ レ ナ
10 同訴訟代理人弁理士 秋 山 敦
同 福 士 智 恵 子
同 角 渕 由 英
同訴訟代理人弁護士 志 甫 治 宣
同 市 川 浩 行
15 主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
20 特許庁が無効2020-800119号事件について令和5年3月27日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、証拠により明ら
か)
25 (1) 原告は、平成26年11月25日を出願日とする特許出願(特願201
4-237308号。優先権主張は平成25年12月3日及び平成26年4
月11日)の一部を平成27年5月24日に新たな特許出願とした特願20
15-105028号の一部を更に分割し、発明の名称を「角栓除去用液状
クレンジング剤」とする発明について、平成29年4月2日に新たな特許出
願(特願2017-73338号)をし、平成30年1月12日、特許権の
5 設定登録を受けた(以下「本件特許」という。特許第6271790号。請
求項の数1)。
(2) 原告は、平成31年1月26日、本件特許に係る明細書について訂正を
求める訂正審判の請求(訂正2019-390011号)をし、同年4月8
日、同請求のとおり訂正を認める審決がされた(甲27)。
10 (3) 被告は、令和2年12月11日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1
に記載された発明についての特許を無効とすることを求めて本件無効審判を
請求した。特許庁は、これを無効2020-800119号事件として審理
を行い、令和3年12月27日、審決の予告をしたところ、原告は、令和4
年1月10日、明細書及び特許請求の範囲の訂正請求(甲28)をし、同年
15 2月21日に手続補正書(訂正請求書の補正)(甲29)を提出した(以下、
当該訂正を「本件訂正」という。訂正後の請求項の数1)。
特許庁は、令和5年3月27日、本件訂正を認めた上、本件特許を無効
とする旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は令和5年4
月20日原告に送達された。
20 (4) 原告は、令和5年5月2日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2 本件発明の概要
(1) 特許請求の範囲の記載
本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、以下のと
25 おりである(下線は本件訂正による訂正箇所。以下、この記載事項により特
定される発明を「本件発明」という。甲28、甲29)。
「 水と、
オクチルドデカノールと、
水への溶解度より多い量のリモネン、スクアレン、及びスクアランから
なる群から選ばれる1種類以上の炭化水素と、
5 界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるも
のを除く。)と、
を含む角栓除去用液状クレンジング剤。」
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明の要旨
本件特許に係る明細書(本件訂正後のもの。以下「本件明細書」という。
10 甲29)及び図面の抜粋を、別紙「本件明細書の記載等(抜粋)」に掲げる。
これによれば、本件発明について次のとおりの事項が開示されているものと
認められる。
ア 本発明は、液状化粧品、詳しくは、皮膚に付着したタンパク質洗浄用の
液状化粧品に関するものである(【0001】 。皮膚の汚れにはタンパク

15 質等が含まれている。この汚れを落とすには、タンパク質を皮膚表面か
ら抽出する作用を有する化粧品等が使用される。このような化粧品とし
て、例えば、溶液中から少なくともタンパク質を抽出する作用を有する
液状化粧品が挙げられる。 【0002】 。
( )
イ 本発明は、タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的と
20 する(【0006】 。本発明者は、所定の高級アルコールと、脂肪酸又は

炭化水素とを少なくとも含むタンパク質抽出剤によれば上記課題を解決
できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は下
記のものを提供する(【0007】 【0008】 。
、 )
[1]
25 オクチルドデカノールと、
リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種
類以上の炭化水素と、
を含む角栓除去用液状クレンジング剤。
[2]
界面活性剤をさらに含む請求項1に記載のクレンジング剤。
5 ウ 本発明によれば、タンパク質を抽出できる液状化粧品が提供される
(【0009】 。

3 本件審決の理由の要旨
(1) 本件無効審判において、請求人(本訴被告)は、以下の無効理由を主張
し、無効理由1、2の主引用例として甲1~3(以下、それぞれに記載の発
10 明を「甲1発明」ないし「甲3発明」という。)を、公知・周知文献として
甲5の1~3等を提出した。
ア 無効理由1:新規性欠如
イ 無効理由2:進歩性欠如
ウ 無効理由3:サポート要件違反
15 (2) 甲1発明関係の無効理由についての本件審決の判断
ア 本件審決は、甲 1 発明を以下のとおり認定し、本件発明とは以下の一致
点及び相違点があると判断した(なお、原告は本訴において甲 1 発明の認
定自体は争っていない。 。

【甲1発明の認定】
20 「 以下の成分からなる、角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れも
すっきりするクレンジングオイル
ミネラルオイル、オリーブ油、ポリソルベート85、トリオレイン酸
ソルビタン、オクチルドデカノール、スクワラン、ゴマ油、ユーカリシ
トリオドラ油、ライム油、ウイキョウ油、レモン油、アンマロク果実エ
25 キス、ニンニクエキス、マスタード油、ヒトオリゴペプチド-1、マン
ニトール、ビタミンA油、トコフェロール、水。」
【一致点】
「 水と、
オクチルドデカノールと、
水への溶解度より多い量のスクアランと、
5 界面活性剤と、
を含む角栓除去用液状クレンジング剤」
【相違点】
本件発明は、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して
0~10体積%であるものを除く。 」と特定しているのに対し、甲1発

10 明ではこのような特定はない点。
イ 本件発明と甲1発明は上記相違点が存在するから、本件発明は、甲1に
記載された発明ではなく、新規性に関する無効理由1はその理由がない。
ウ 進歩性欠如について
(ア) 上記相違点について検討するに、甲5の1~3によれば、水を含む
15 液状クレンジング剤における界面活性剤の割合として、体積%ではな
く質量%の単位ではあるが10質量%を超える例が多々あることが理
解できるから、このような技術常識からみて、界面活性剤の配合量を
「全量に対して0~10体積%ではない」量とすることは、当業者で
あれば容易に想到し得たことである。
20 (イ) 本件発明の効果は、皮膚等に付着したタンパク質を抽出洗浄すると
いうものであるところ、本件明細書には、界面活性剤が全量に対して
0~10体積%の実施例しかないことから、界面活性剤を全量に対し
て0~10体積%であるものを除いた量で配合することにより、格別
顕著な効果が奏されるものとは認められない。
25 (ウ) よって、本件発明は、甲1発明及び甲5の1~3等に記載された事
項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) その他の無効理由についての本件審決の判断
本件発明は、甲2発明及び甲3発明との間でそれぞれ相違点が認められ
るから、新規性欠如は認められないものの、各相違点については、それぞれ
当業者であれば容易に想到し得たことであって、本件発明の効果(角栓の除
5 去)についても格別顕著な効果が奏されるものとは認められないから、進歩
性欠如(無効理由2)が認められる。
結局、無効理由3(サポート要件違反)について判断するまでもなく、
本件特許は無効とすべきものである。
4 審決の取消事由
10 (1) 取消事由1(甲1発明を引用発明とする進歩性の判断の誤り)
(2) 取消事由2(甲2発明を引用発明とする進歩性の判断の誤り)
(3) 取消事由3(甲3発明を引用発明とする進歩性の判断の誤り)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(甲1発明を引用発明とする進歩性の判断の誤り)に係る原告
15 の主張
本件審決が、甲1を主引用文献とし、甲5の1~3を副引用文献として無
効理由(進歩性欠如)を認めた判断には、以下の誤りがある。
(1) 本件発明の界面活性剤の量の特定について
本件審決は、本件発明において角栓除去用液状クレンジング剤に含まれ
20 る界面活性剤が「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%である
ものを除く。)」と特定されていることについて、これは特許権の設定登録
前の拒絶査定不服審判(不服2017-12650)における特許法39条
2項に基づく拒絶理由通知を受けて、分割出願である本件特許の出願の原出
願の特許第6120423号における特許請求の範囲に記載された請求項1
25 に係る発明と同一の発明にならないことを目的として特定したとし、このよ
うな補正は技術的に意味がなく、進歩性が否定されるとの判断をする。
しかし、これは本件審決の勝手な憶測である。特許法29条2項にいう
進歩性の判断は本件特許の請求項自体について判断すべきであり、補正の意
味合いを述べて進歩性を判断する本件審決はその前提において誤っている。
(2) 甲5の1~3が「・・・0~10体積%であるものを含む」ものであるこ
5 とを看過した論理的な思考における誤り
本件発明には「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であ
るものを除く。)」と記載されているから、この範囲が容易に発明できるか
否かを厳密に判断すべきである。甲5の1~3は、いずれも「・・・0~10
体積%であるものを含む」ものでしかなく、「・・・0~10体積%であるも
10 のを除く」ことの証拠となるものはない。
(3) 化粧品の包装容器、広告等に記載された成分について
本件審決では、原告(被請求人)の主張に対し、甲1発明では液状クレン
ジング剤に配合される「成分の全てが・・・必須のものとして特定されており」
と判断したが、化粧品の包装容器、広告等に記載された成分は、いわゆる
15 「全成分表示」と言われるものであり、厚生労働省が発表した「今後の化粧
品規制の在り方について-最終とりまとめ-」(https://www.mhlw.go.jp/
www1/houdou/1007/h0723-1.html)に基づいて、成分の全部を記載したもの
であり、審判官合議体の「必須の成分を記載したもの」という性質のもので
はない。
20 (4) 証拠の取扱いの誤り
本件審決では、「甲1と甲15(審判乙2) とは・・・各々の証拠により得
られる情報も異なるから、・・・判断が必ずしも同じとならないことは特段不
合理ではない。」などと述べているが、両者は同じ製品(商品名「セルソア
ン クレンジングオイル」)について記載するものであり、審判官合議体及
25 び被告は、具体的に記載がどのように異なっていて、どのような論旨によっ
て進歩性が否定されるのかは、全く示していない。
2 取消事由2、3(甲2発明及び甲3発明を引用発明とする進歩性の判断の
誤り)に係る原告の主張
本件審決における甲2発明及び甲3発明を引用発明とする進歩性欠如の判断
も、上記1と同様の理由により、誤りである。
5 3 被告の主張
「第4 当裁判所の判断」の2(1)~(4)、3と同趣旨である。
第4 当裁判所の判断
1 「界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く」構成を巡
る出願経過及びその技術的意義について
10 (1) 個別の取消事由の判断に入る前提として、本件においては、本件特許の
特許請求の範囲の「界面活性剤(但し、界面活性剤が全量に対して0~10
体積%であるものを除く。 」の括弧書きの構成(以下「本件除く構成」とい

う。)が主に問題となっているので、本件除く構成を巡る出願経過及びその
技術的意義を確認しておく。
15 (2) 証拠(甲27、乙4、5、8)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実
が認められる。
本件特許に係る出願(特願2017-73338号。以下「本願」とい
う。)に対しては、審査において拒絶査定がされ、原告が不服 審判を請求
(不服2017-12650号)した。この時点での特許請求の範囲には、
20 本件除く構成を含め、界面活性剤の配合量を特定する構成はなかったところ、
平成29年11月2日付けの拒絶理由通知で、本願に係る発明は、出願日が
同日の「出願1」(特願2016-142877号〔特許第6120423
号〕)に係る発明と同一であって、特許法39条2項により特許を受けるこ
とができない旨が原告に通知された。なお、上記「出願1」は、本願と共に
25 同じ原出願から分割された出願であり、その特許請求の範囲には、「全量に
対して0~10体積%の界面活性剤」を含む旨の記載があるものであった。
原告は、上記拒絶理由通知を受けて、同月7日付けの意見書をもって、本
願の請求項1に本件除く構成を加える補正(以下「本件補正」という。)を
行ったので、拒絶理由は解消したと思料する旨の意見を提出した。
特許庁は、本件補正により特許請求の範囲の減縮がされたことを前提に、
5 特許審決をし、平成30年1月12日に本件特許の設定登録がされた。
以上の結果、上記「出願1」に係る発明と本件発明は、同じ原出願から分
割されたものであるが、界面活性剤の配合量につき、前者は「全量に対して
0~10体積%の界面活性剤」とされ、後者は「界面活性剤が全量に対して
0~10体積%であるものを除く」とされるに至った。
10 (3) 本件明細書(甲29)には、界面活性剤を「全量に対して0~10体
積%であるものを除く」量で配合した実施例は存在せず、本件除く構成を採
用することの技術的意義を説明する明示的記載はない。
2 取消事由1(甲1発明を引用発明とする進歩性の判断の誤り)について
(1) 原告は、本件審決が本件補正の意味合いを述べて進歩性を否定した判断
15 をしたのは、その前提において誤っている旨主張する(上記第3の1(1))。
しかし、本件審決は、本件発明と甲1発明の相違点が本件除く構成に係る
ものであることを踏まえ、本件除く構成が上記1で認定した経緯で特許請求
の範囲に記載されることになったという事実を客観的に述べているにとどま
り、原告が主張するように「本件補正は技術的意味がなく、進歩性が否定さ
20 れる」などという判断をしたものでないことは明らかである。
原告の上記主張は、本件審決の説示を殊更に曲解して非難するものにすぎ
ず、採用の余地はない。
(2) 次に、原告は、甲5の1~3が「…0~10体積%であるものを含む」
ものであることを看過した論理的な思考における誤りがある旨主張(上記第
25 3の1(2))するので、以下検討する。
ア まず、甲5の1~3には、以下の記載があることが認められる(界面活
性剤の配合量を開示する部分に下線を付す。 。

(ア) 甲5の1には、常温液状油分50~95質量%及び水0.1~5質
量%とともに、所定の界面活性剤を5~40質量%、好ましくは10
~20質量%配合し、角栓除去効果に優れたメイク落しとして使用で
5 きる角栓除去用組成物が記載されており、界面活性剤が5質量%以下
では、水で洗い流すことが難しく、また組成物の安定性が悪くなるこ
と、逆に40質量%以上配合しても、それ以上洗浄性を高めることは
できず、また界面活性剤が皮膚に負担を与えるので好ましくないこと
が記載されている(請求項1、3、4、【0001】 【0018】
、 、実
10 施例1~4)。
(イ) 甲5の2には、クレンジング料における角栓除去作用を向上させる
技術を提供するとして、水、N-アシルアミノ酸のエステル及び所定
の界面活性剤を10~20質量%、より好ましくは12~15質量%
含有し、水相が油相に可溶化した剤形であって、25℃で透明で流動
15 性のある性状(実施例1では透明なオイル状)を呈し、使用後に洗い
流す態様で使用される角栓除去用の化粧料組成物が記載されており、
界面活性剤の量が多すぎるとクレンジング機能を損なう場合が存し、
少なすぎると、クレンジング機能、ウォッシュオフ機能、角栓除去機
能を損なう場合が存することが記載されている(請求項1、2、【00
20 09】 【0012】
、 、実施例1)。
(ウ) 甲5の3には、粘度が5~80mPa・s/25℃の油分を50質
量%以上含有することを特徴とする角栓除去用化粧料が記載されてお
り、界面活性剤及び水等の通常化粧料に用いられる成分を適量配合で
きることが記載され、実施例6には、界面活性剤を合計 15質量%配
25 合したクレンジングオイルが記載されている(請求項1、【0001】、
【0003】 【0011】
、 、実施例6)。
イ 以上の甲5の1~3の記載を総合すれば、角栓除去用クレンジング組成
物において、クレンジング機能(洗浄性)、ウォッシュオフ機能(水での
洗い流し性)、角栓除去機能、皮膚への負担を考慮して、界面活性剤を1
0~20質量%程度、すなわち10体積%を超える量で配合することは、
5 本件優先日前における当業者の技術常識であったと認められる。
他方、甲5の1には「5~10質量%」、甲5の2には「10質量%」
の界面活性剤を含むクレンジング剤等が記載されていること自体は、原
告の主張するとおりであるが、本件除く構成における「0~10体積%
であるものを除く」との特定は、「0体積%~100体積%」から「0~
10 10体積%であるものを除く」範囲のものであるため、結局、「10体
積%超」の範囲である(「10体積%より多く配合する」)ことを意味す
るものにほかならない。そうすると、構成の容易想到性を判断するに当
たっては、甲1発明において、界面活性剤の配合量を「10体積%超」
とする(「10体積%より多く配合する」)ことを、当業者が容易に想到
15 できたことの論理付けができるかを検討すれば足りる。甲5の1~3が
「0~10体積%」の界面活性剤を配合したものを含むとしても、その
ことが本件発明と甲1発明との相違点に係る容易想到性を判断する上で、
どのような意味を有するのか、原告の主張によっても明らかでない。
ウ また、本件除く構成の数値限定が顕著な効果を有するものであれば格別、
20 本件発明はそのようなものとも認められない。
すなわち、本件明細書によれば、本件発明の効果は、「タンパク質を簡
便に抽出できるため、皮膚に付着したタンパク質を抽出洗浄することが
可能な液状化粧品(「タンパク質洗浄用の液状化粧品」)として好適に使
用できる」というものであり(【0064】 、
) 「また、本発明のタンパク
25 質抽出剤は、界面活性剤等を含まなくとも、優れたタンパク質抽出効果
を奏する」ことから、「本発明のタンパク質抽出剤によれば、皮膚への負
担を低減しつつ、所望の洗浄効果が得られる」というものである(【00
65】 。

しかしながら、界面活性剤配合量に関しては、本件明細書の実施例1
6、18及び20が界面活性剤(Tween 80、Span 80)を含む組成の溶液
5 であるが、「全量に対して0~10体積%であるものを除く」量で配合し
たものが存在しないことは前記のとおりである上、試験管内でタンパク
質抽出作用を確認しただけで、皮膚に対する洗浄効果は確認されていな
い。角栓の除去については、実施例13において角栓のある皮膚に対す
る洗浄効果を確認する唯一の実施例が記載されているものの、第2のタ
10 ンパク質抽出剤Aを含むタンパク質抽出剤を使用した結果、石けんと比
較して「高い洗浄効果を示した」こと、「本発明のタンパク質抽出剤は、
クレンジング剤として好ましく使用できる」ことが示されているのみで
(【0149】 、その組成は界面活性剤を含まないものである(
) 【007
3】 【0138】~【0141】 【0149】 。そうすると、本件発明
、 、 )
15 において界面活性剤を「全量に対して0~10体積%であるものを除く」
量で配合することにより、「角栓除去用液状クレンジング剤」が具体的に
どのような顕著な効果を奏するのかは不明であるといわざるを得ない。
以上に加え、甲1には「角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚
れもすっきり。」との角栓の除去機能についての記載があることからする
20 と、本件発明による上記程度の効果は、当業者が予測し得たものにすぎ
ない。
エ よって、原告の上記第3の1(2)の主張は採用できない。
(3) 原告は、甲1発明で液状クレンジング剤に配合される成分は全成分表示
にすぎないのに、これを必須成分の記載であるとした本件審決は誤りである
25 と主張する(前記第3の1(3))。
しかしながら、原告の上記主張は、本件発明の進歩性の判断にどのように
影響を及ぼすのか明らかではなく、本件審決の判断を左右するものとはいえ
ない。成分組成について、本件発明と甲1発明とは、所定の4種類の成分
(甲1における「ポリソルベート85及びトリオレイン酸ソルビタン」 「オ

クチルドデカノール」 「スクワラン」並びに「水」の4種類の成分と、本件

5 発明における「水」 「オクチルドデカノール」 「水への溶解度より多い量の
、 、
リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上
の炭化水素」並びに「界面活性剤」の4種類の成分)を含む点で何ら相違し
ない。
(4) 原告が前記第3の1(4)で主張する「証拠の取扱いの誤り」について検
10 討するに、証拠(甲1、15)及び弁論の全趣旨によれば、①本願に係る拒
絶査定不服審判(上記1参照)において、特許庁は、引用刊行物である審判
乙2(本訴甲15)によっても、本願に係る発明は新規性及び進歩性を否定
されるものではないと判断して、特許審決をしたこと、②上記引用刊行物
(審判乙2)は、甲1と同じ製品(商品名「セルソアン クレンジングオイ
15 ル」)に関する文献であること、③原告は、本件無効審判において、上記①、
②から、本件発明は甲1に対して新規性、進歩性を有する旨の主張をしたが、
本件審決は、甲1と審判乙2は証拠としては異なり、得られる情報も異なる
から、それぞれの証拠に基づいた判断が同じとならなくても不合理でない旨
の説示をして、原告の上記主張を排斥したことが認められる。
20 本件審決の上記③の判断はもとより正当であり、その誤りをいう原告の主
張は採用できない。
(5) 小括
以上のとおり、本件発明は、甲1発明及び甲5の1~3等に記載された事
項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件審決
25 の判断に誤りはない。上記第3の1(1)~(4)の原告の主張はいずれも採用
できず、取消事由1は理由がない。
3 取消事由2、3(甲2発明及び甲3発明を引用発明とする進歩性の判断の
誤り)について
上記2のとおり、本件発明は、甲1発明により進歩性が認められないから、
取消事由2及び3については判断する必要がない。
5 4 結論
以上のとおり、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。よって、
原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
10 裁判長裁判官
宮 坂 昌 利
裁判官
岩 井 直 幸
裁判官
頼 晋 一
別紙
本件明細書の記載等(抜粋)
下線部分は本件訂正によるものである。
【技術分野】
5 【0001】
本発明は、液状化粧品に関する。詳しくは、皮膚に付着したタンパク質洗浄用
の液状化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
10 皮膚の汚れにはタンパク質等が含まれている。この汚れを落とすには、タンパ
ク質を皮膚表面から抽出する作用を有する化粧品等が使用される。このような化粧
品として、例えば、溶液中から少なくともタンパク質を抽出する作用を有する液状
化粧品が挙げられる。溶液中の対象物質(例えば、タンパク質等)を分離又は抽出
等するための方法としてはエマルションを利用した方法が挙げられる。
15 【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
20 本発明者は、所定の高級アルコールと、脂肪酸又は炭化水素とを少なくとも含
むタンパク質抽出剤によれば上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成する
に至った。具体的に、本発明は下記のものを提供する。
【0008】
[1]
25 オクチルドデカノールと、
リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の
炭化水素と、
を含む角栓除去用液状クレンジング剤。
[2]
界面活性剤をさらに含む請求項1に記載のクレンジング剤。
5 【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンパク質を抽出できる液状化粧品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
10 以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に
限定されない。
また、本発明において「タンパク質を抽出できる液状化粧品」とは、タンパク
質を抽出する作用を有する液状化粧品を指す。本発明に係る液状化粧品は、下記有
効成分を所定量にて含有してなるタンパク質抽出剤の一態様を指すものである。本
15 明細書においては、本発明に係る液状化粧品を、「タンパク質抽出剤」という場合
がある。
本発明において「タンパク質抽出剤」とは、本発明に係る有効成分を含有して
なる組成物を指すものである。
また、本発明において、「タンパク質を抽出する」とは、抽出対象物(つまり、
20 タンパク質)を、皮膚等から分離することを指す。具体的に、「タンパク質の抽出」
には、皮膚等からのタンパク質の洗浄(抽出対象物であるタンパク質を皮膚等から
抽出して、タンパク質抽出剤と共に水等で洗い流すこと)、及び/又は、皮膚等か
らのタンパク質の除去という意味が含まれる。
また、本発明において「液状化粧品」とは、室温(19℃~25℃)において
25 液状である化粧品を指す。
【0012】
1.第1のタンパク質抽出剤
本発明の第1のタンパク質抽出剤は、少なくとも第1の高級アルコールと、脂
肪酸と、を、タンパク質抽出作用の有効成分として含んでなるものである。
【0013】
5 本発明の第1のタンパク質抽出剤は、界面活性剤を含まなくともよい。また、
本発明の第1のタンパク質抽出剤には、従来使用されてきた対象物質の分離等のた
めのエマルション等に含まれる界面活性剤よりも少ない量(例えば、タンパク質抽
出剤の体積全体に対して0.1%~10%)の界面活性剤が含まれていてもよい。
具体的には、タンパク質抽出剤(液状化粧品)全量に対して10体積%以下、
10 好ましくは8体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは4体
積%以下の界面活性剤が含まれていてもよい。下限としては、特に制限はないが、
例えば、0.1体積%以上を挙げることができる。
なお、本発明において「界面活性剤」とは、溶媒中でミセル構造をとり得る両
親媒性分子を指す。第1のタンパク質抽出剤としては、疎水性の性質が強い界面活
15 性剤、親水性の性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても、界面活性剤とし
ての配合使用が許容される。
【0037】
2.第2のタンパク質抽出剤
本発明の第2のタンパク質抽出剤は、上記第1の高級アルコールとは異なる第
20 2の高級アルコールと、炭化水素と、をタンパク質抽出作用の有効成分として含ん
でなるものである。
【0038】
本発明の第2のタンパク質抽出剤は、界面活性剤を含まなくともよい。また、
本発明の第2のタンパク質抽出剤には、界面活性剤が含まれていてもよい。
25 第2のタンパク質抽出剤としては、疎水性の性質が強い界面活性剤、親水性の
性質が強い界面活性剤のいずれのものであっても、界面活性剤としての配合使用が
許容される。
【0039】
第2のタンパク質抽出剤は、抽出対象液に直接添加して単独で用いることが可
能であるが、好ましくは、第1の抽出工程後に得られたタンパク質含有層(以下、
5 「第1のタンパク質含有層」ともいい、この層には、タンパク質、水性溶媒、炭素
数15以上の高級アルコール、及び脂肪酸が含まれ得る)に添加して用いることが
好適である。この場合、第1のタンパク質含有層に含まれ得る夾雑物(細胞膜等)
を分離できるので、タンパク質をより効率的に抽出できる。
(※なお、第2のタンパク質抽出剤は、第1の抽出工程を行っていない抽出対象液
10 に直接接触させて、抽出工程を行うことも可能である。以下、本明細書では、「第
1のタンパク質含有層」を「抽出対象液」と読み替えて、第2のタンパク質抽出剤
を使用することも可能である。)
【0050】
第2の高級アルコールとしては、オクチルドデカノールが好ましい。第2の高級
15 アルコールは1種であってもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
第2のタンパク質抽出剤中の第2の高級アルコール及び炭化水素の組み合わせと
しては、第1のタンパク質含有層を少なくとも2層に分離しやすいという点でオク
チルドデカノール及びリモネンが特に好ましい。
20 【0054】
第2のタンパク質抽出剤には、本発明の目的を害さない限り、公知の添加剤
(界面活性剤、炭素数18未満の高級アルコール等)を添加してもよい。添加剤の
添加量は得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。また、有効成分以外の他成
分として、リノール酸のように炭素骨格中に2以上の不飽和結合を有する脂肪酸を
25 含むものであっても良い。
【0058】
第2のタンパク質抽出剤の使用方法としては、第1のタンパク質含有層に添加
する前に第2のタンパク質抽出剤を構成する成分を予め混合してから添加してもよ
いが、第2の高級アルコール又は炭化水素のいずれか一方を先に第1のタンパク質
含有層に添加した後に、さらに残りを順次混合してもよい。炭化水素によって、第
5 1のタンパク質含有層の分散状態を崩し、第2の高級アルコールと結合したタンパ
ク質を引き寄せるという本発明の効果が奏されやすい点で、炭化水素を第2の高級
アルコールよりも先に添加することが好ましい。
【0059】
少なくとも2層に分離した第1のタンパク質含有層において、タンパク質がい
10 ずれの層に存在するかは、界面検出センサー等によって特定される。通常、タンパ
ク質は、少なくとも2層に分離したうちの下層に抽出される。また、タンパク質は、
クロマトグラフィー、遠心分離等の方法を使用して、第2のタンパク質含有層から
取り出し、抽出することができる。
【0061】
15 第2のタンパク質抽出剤を液状化粧品として使用する場合、水を含有する態様
及び水を含有しない態様という、2つの態様がある。以下に、各態様について説明
する。
なお、ここで、第2タンパク質抽出剤を液状化粧品に使用した場合の各成分の
含量としては、液状化粧品の製品形態とした場合に好適な量を示すものであり、実
20 際の使用態様において、これより薄い濃度にて使用することを許容するものである。
・水を含有する態様
水を含有する態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において、炭化水
素の配合量は、水への溶解度以上の量である。第2の高級アルコールの配合量は、
炭化水素の体積に対し、1体積%以上から炭化水素の体積の2倍以下(200体
25 積%以下)の範囲内の量である。第2のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高
級アルコール以外の成分を配合する場合には、上記の炭化水素及び第2の高級アル
コールの配合量の条件を満たし、かつ、該成分の配合量に相当する分だけ、炭化水
素の体積を減らすように調整する。
・水を含有しない態様
水を含有しない態様の第2のタンパク質抽出剤(液状化粧品)において、炭化
5 水素の配合量は、第2のタンパク質抽出剤全体に対して3体積%以上99体積%以
下である。第2の高級アルコールの配合量は、炭化水素の体積に対し、1体積%以
上から炭化水素の体積の2倍以下(200体積%以下)の範囲内の量である。第2
のタンパク質抽出剤に炭化水素及び第2の高級アルコール以外の成分を配合する場
合には、上記の炭化水素及び第2の高級アルコールの配合量の条件を満たし、かつ、
10 該成分の配合量に相当する分だけ、炭化水素の体積を減らすように調整する。上記
の処方により化粧品を調整すると、該化粧品の性状は常温で液体となる。
【0064】
本発明のタンパク質抽出剤は、タンパク質を簡便に抽出できるため、皮膚に付
着したタンパク質を抽出洗浄することが可能な液状化粧品(「タンパク質洗浄用の
15 液状化粧品」)として好適に使用できる。
本発明に係るタンパク質抽出剤は、具体的には、トイレタリー製品等の液状化
粧品(クレンジング剤、シャンプー、ボディーソープ、ハンドソープ、マッサージ
オイル、先顔剤、等)として好適に使用できる。特に好ましくは、クレンジング用
の液状化粧品として好適に使用できる。
20 【0065】
また、本発明のタンパク質抽出剤は、界面活性剤等を含まなくとも、優れたタ
ンパク質抽出効果を奏する。したがって、本発明のタンパク質抽出剤によれば、皮
膚への負担を低減しつつ、所望の洗浄効果が得られる。本発明のタンパク質抽出剤
には、液状化粧品に配合される公知の添加剤(界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、
25 エンモリメント成分等)が含まれていてもよい。添加剤の種類や量は、本発明の目
的を阻害しない範囲で適宜選択できる。
【0071】
本発明のタンパク質抽出剤をクレンジング剤として使用する場合、例えば、下
記の方法を実施することが好ましい。まず、皮膚等において、タンパク質を抽出し
たい部位(汚れを洗浄したい部位)に本発明のタンパク質抽出剤を塗布し、軽く揉
5 む等してマッサージする。塗布前に、該部位は水で濡らしてもよいが、濡らさなく
ともよい。マッサージ後、該部位を水で濡らし、さらにマッサージした後、水で本
発明のタンパク質抽出剤を洗い流す。洗い流す際に、本発明のタンパク質抽出剤に
よって皮膚等の表面のタンパク質が抽出され、かつ、皮膚等から除去される。水に
よる洗浄後、石けんや洗顔剤等によって皮膚等をさらに洗浄してもよい。
10 【0072】
第1のタンパク質抽出剤及び第2のタンパク質抽出剤を併用する場合、第1の
タンパク質抽出剤を塗布後に洗い流す前に、第2のタンパク質抽出剤を第1のタン
パク質抽出剤が塗布された部位に塗布してマッサージした後、洗い流すことが望ま
しい。
15 【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。なお、下記の試験はいずれも室温(19℃以上25℃以下)
で行った。また、下記表中において、「wt%」は質量%を、「vоl%」は体積%
20 をそれぞれ示す。
【0138】
[実施例12] 第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤による抽出
-1
本発明の第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤を使用して、以
25 下の通り、抽出対象液から抽出対象物(タンパク質)を抽出した。
【0139】
1.抽出対象液の構成
卵白0.5mlをリン酸バッファ5ml中に溶かし、抽出対象液を得た。
【0140】
2.第1のタンパク質抽出剤の調製
5 (第1のタンパク質抽出剤A)
第1のタンパク質抽出剤(オレイン酸:オレイルアルコール=2:1(体積比))
9ml
リン酸バッファ 0.5ml
グルタミン酸 0.1g
10 (第1のタンパク質抽出剤B)
第1のタンパク質抽出剤(イソステアリン酸:イソステアリルアルコール=
2:1(体積比)) 9ml
リン酸バッファ 0.5ml
アスパラギン酸 0.1g
15 上記を試験管内で混合及び撹拌して第1のタンパク質抽出剤A又はBを調製し
た。
【0141】
3.第2のタンパク質抽出剤の調製
(第2のタンパク質抽出剤A)
20 第2のタンパク質抽出剤(スクワラン:オクチルドデカノール=2:1(体積
比)) 9ml
リン酸バッファ 0.5ml
グルタミン酸 0.1g
(第2のタンパク質抽出剤B)
25 第2のタンパク質抽出剤(流動パラフィン:オクチルドデカノール=2:1
(体積比)) 9ml
リン酸バッファ 0.5ml
アスパラギン酸 0.1g
上記を試験管内で混合及び撹拌して第2のタンパク質抽出剤A又はBを調製し
た。
5 【0149】
[実施例13] 第1のタンパク質抽出剤又は第2のタンパク質抽出剤による抽出
-2
実施例12において調製した第1のタンパク質抽出剤A及びB、第2のタンパ
ク質抽出剤A及びB、並びに市販の石けんを使用し、角栓のある皮膚に対する洗浄
10 効果を比較した。
その結果、石けんと比較して、本発明のタンパク質抽出剤はいずれも高い洗浄
効果を示した。そのなかでも、第1のタンパク質抽出剤Aによる洗浄効果が最も高
く、次いで、第1のタンパク質抽出剤Bによる洗浄効果が高かった。
第1のタンパク質抽出剤と第2のタンパク質抽出剤とを併せて使用する場合、
15 第1のタンパク質抽出剤Aを用いてマッサージし、その後第2のタンパク質抽出剤
Aを用いてマッサージする組み合わせが、他の組み合わせより洗浄力が高かった。
したがって、本発明のタンパク質抽出剤は、クレンジング剤として好ましく使
用できる。上記のタンパク質抽出剤の洗浄効果は、グルタミン酸やアスパラギン酸
等の、タンパク質の凝集抑制剤の作用によって、タンパク質が抽出剤中に分散しや
20 すくなり、タンパク質凝集体の生成や、該凝集体の洗浄部位への付着を抑制できた
ことによるものと推察された。
【0150】
[実施例14] 第1の高級アルコール及び第2の高級アルコールの作用
本発明に係るタンパク質抽出剤の抽出工程のメカニズムを探るため、第1のタ
25 ンパク質抽出剤における第1の高級アルコールの作用を確認した。また、第2のタ
ンパク質抽出剤における第2の高級アルコールの作用を確認した。
【0151】
1.抽出対象液の構成
豆乳(株式会社紀文食品製、豆乳中にはタンパク質(不溶性)が含まれる) 0.
5ml
5 リン酸バッファ(SIGMA社製、商品名「Dulbecco’s Phosp
hate Buffered Saline」) 4.5ml
上記を試験管内で混合及び撹拌した後、得られた溶液にクマシーブリリアント
ブルーG250を加え、タンパク質を青色に着色し、抽出対象液を得た。
【0165】
10 [実施例16] 液状化粧品
第2のタンパク質抽出剤を「界面活性剤を含む液状化粧品」(実際の化粧品に準
じた態様)にした場合において、タンパク質抽出作用が発揮されるかを確認した。
1.抽出対象液の構成
実施例14の抽出対象液と同様である。
15 【0166】
2.第1のタンパク質抽出剤の調製
下記の4種類の抽出剤を調製した。なお、抽出剤の調製に用いた各化合物とし
ては、上記実施例に記載のものを用いた。
(第1のタンパク質抽出剤-i )
20 オレイン酸 2ml
オレイルアルコール 1ml
(第1のタンパク質抽出剤-ii)
オレイン酸 2ml
イソステアリルアルコール 1ml
25 (第1のタンパク質抽出剤-iii)
イソステアリン酸 2ml
オレイルアルコール 1ml
(第1のタンパク質抽出剤-iv)
イソステアリン酸 2ml
イソステアリルアルコール 1ml
5 【0167】
3.第1の抽出工程
抽出対象液(3ml)に、第1のタンパク質抽出剤のいずれか1種(各3ml)
を添加した後、溶液を撹拌し、20分間静置した。
【0168】
10 4.液状化粧品の調製
表7~10に記載の組成となるように、各化合物を試験管内で混合及び撹拌し
て液状化粧品を調製した。なお、液状化粧品の調製に用いた高級アルコール、脂肪
酸、炭化水素、エタノール、及び界面活性剤としては、上記実施例に記載のものを
用いた。
15 【0170】
【表7】
【0177】
4.結果
上記のとおり、第2のタンパク質抽出剤を、実際の液状化粧品の組成に準じた
溶液(界面活性剤を含む溶液)とした場合においても、抽出対象液からのタンパク
質の抽出が可能であることが示された。
5 具体的には、親水性の性質が強い界面活性剤(Tween80)又は疎水性の
性質が強い界面活性剤(Span80)のいずれの界面活性剤を液状化粧品に配合
した場合であっても、タンパク質抽出作用は問題なく発揮されることが示された。
特に、疎水性の性質が強い界面活性剤(Span80)は、タンパク質の抽出作用
に影響を与えにくい界面活性剤であることが示された。
10 また、エタノール存在下であっても、第2のタンパク質抽出作用は問題なく発
揮されることが示された。
【0184】
[実施例18] 液状化粧品
第2のタンパク質抽出剤を「2以上の不飽和結合を有する脂肪酸を含む液状化
15 粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において、タンパク質抽出作用
が発揮されるかを確認した。
【0185】
1.液状化粧品の調製
表12に記載の組成となるように、各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液
20 状化粧品を調製した。なお、液状化粧品の調製に用いた高級アルコール、脂肪酸、
炭化水素、エタノール、及び界面活性剤としては、上記実施例に記載のものを用い
た。
【0188】
3.結果
25 上記の通り、第2のタンパク質抽出剤を、2以上の不飽和結合を有する脂肪酸
を含む液状化粧品(リノール酸を含む溶液)とした場合においても、抽出対象液か
らのタンパク質の抽出が可能であることが示された。
また、界面活性剤の配合量としては、疎水性の性質が強い界面活性剤(Spa
n80)と親水性の性質が強い界面活性剤(Tween80)を合わせて合計8体
積%とした場合であっても、タンパク質抽出が可能であることが示された(試料1
5 8-5~試料18-8)。
【0195】
[実施例20] 液状化粧品
第2のタンパク質抽出剤を「脂肪酸及び高級アルコールを様々な濃度で含む液
状化粧品」(実際の化粧品に準じた一態様)にした場合において、タンパク質抽出
10 作用が発揮されるかを確認した。
【0196】
1.液状化粧品の調製
表14に記載の組成となるように、各化合物を試験管内で混合及び撹拌して液
状化粧品を調製した。
15 なお、液状化粧品の調製に用いた高級アルコール、脂肪酸、炭化水素、リン酸
バッファ、及び界面活性剤としては、上記実施例に記載のものを用いた。
【0198】
【表14】
【0199】
5 3.結果
上記の通り、液状化粧品は、全量に対して3体積%以上99体積%以下の2
5℃にて液体である炭化水素と、炭化水素に対して1体積%以上200体積%以下
の炭素数20の第2の高級アルコールと、全量に対して0~10体積%の界面活性
剤と、を含む構成とした場合であっても、タンパク質抽出が可能であることが示さ
10 れた。

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