知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和5(ワ)70056 差止等請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和5(ワ)70056差止等請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年11月30日
事件種別 民事
当事者 原告A
被告株式会社エンリケ空間 株式会社エンリケスタイル 株式会社エンリケスタッフ
法令 その他
キーワード 侵害16回
差止8回
許諾2回
損害賠償1回
主文 1 被告らは、その営業上の施設又は活動に、別紙原告の肖像を使用して
2 被告らは、その営業上の施設又は活動に、「エンリケ」、「ENRI
3 被告らは、「(URLは省略)」、「(URLは省略)」、「(UR20
4 被告らは、「enrikekukan.com」、「enrike.
5 被告株式会社エンリケ空間は、東京法務局令和1年6月6日設立の商
6 被告株式会社エンリケスタイルは、東京法務局渋谷出張所令和2年7
7 被告株式会社エンリケスタッフは、東京法務局令和3年2月22日設
8 訴訟費用は被告らの負担とする。10
9 この判決は、仮に執行することができる。
事件の概要 1 原告は、「エンリケ」(アルファベット表記「ENRIKE」)という芸名の いわゆるキャバクラ嬢であった者であり、他方、被告らは、いずれも訴外B(以 下「訴外B」という。)が経営に関与する株式会社である。そして、原告と訴外 Bは、平成31年から婚姻関係にあったものの、令和4年10月26日に離婚し、 また、原告は、被告エンリケ空間が設立された令和元年6月6日、被告エンリケ20 空間の代表取締役に就任したものの、令和4年10月14日に辞任し、訴外Bが 代表取締役に就任した。

▶ その他に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和5年11月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70056号 差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和5年9月25日

判 決

原 告 A

同訴訟代理人弁護士 榎 木 智 浩

被 告 株式会社エンリケ空間

(以下「被告エンリケ空間」という。)

被 告 株式会社エンリケスタイ ル

(以下「被告エンリケスタイル」という。)

被 告 株式会社エンリケスタッ フ

(以下「被告エンリケスタッフ」という。)

被告ら訴訟代理人弁護士 高 下 謹 壱

同 植 田 浩

主 文

1 被告らは、その営業上の施設又は活動に、別紙原告の肖像を使用して

はならない。

2 被告らは、その営業上の施設又は活動に、「エンリケ」、「ENRI

KE」及び「enrike」を含む商号、標章を使用してはならない。

3 被告らは、「(URLは省略)」、「(URLは省略)」、「(UR

Lは省略)」及び「(URLは省略)」をトップページとするウェブペ

ージから、別紙原告の肖像、「エンリケ」、「ENRIKE」及び「e

nrike」の文字をいずれも削除せよ。

4 被告らは、「enrikekukan.com」、「enrike.

jp」、「instagram.com/enrikekukan」、

「enrikestyle.com」、「enrike-card」及

び「enrike-mall」のドメイン名をいずれも削除せよ。

5 被告株式会社エンリケ空間は、東京法務局令和1年6月6日設立の商

業登記中、

「株式会社エンリケ空間」の商号登記の抹消登記手続をせよ。

6 被告株式会社エンリケスタイルは、東京法務局渋谷出張所令和2年7

5 月22日設立の商業登記中、「株式会社エンリケスタイル」の商号登記

の抹消登記手続をせよ。

7 被告株式会社エンリケスタッフは、東京法務局令和3年2月22日設

立の商業登記中、「株式会社エンリケスタッフ」の商号登記の抹消登記

手続をせよ。

8 訴訟費用は被告らの負担とする。

9 この判決は、仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

1 原告は、「エンリケ」(アルファベット表記「ENRIKE」)という芸名のいわゆるキャバクラ嬢であった者であり、他方、被告らは、いずれも訴外B(以下「訴外B」という。)が経営に関与する株式会社である。そして、原告と訴外Bは、平成31年から婚姻関係にあったものの、令和4年10月26日に離婚し、また、原告は、被告エンリケ空間が設立された令和元年6月6日、被告エンリケ空間の代表取締役に就任したものの、令和4年10月14日に辞任し、訴外Bが代表取締役に就任した。本件は、原告が、被告らに対し、別紙原告の肖像(以下「原告肖像」という。)のほか、「エンリケ」、「ENRIKE」及び「enrike」との名称(以下、併せて「原告名称」という。)を被告らにおいて使用する行為が、原告のパブリシティ権を侵害すると主張し、パブリシティ権に基づき、①原告肖像の使用の差止め、②原告名称を含む商号、標章及びドメイン名の使用の差止め、③ウェブページからの原告名称及び原告肖像の削除、④原告名称を含むドメイン名の削除、

⑤原告名称を含む商号登記の抹消登記手続を、それぞれ求める事案である。2 当裁判所は、被告らの応答がなかったため、令和5年6月29日に弁論を終結

5 したものの、被告らが、「エンリケ」は普通名称であり顧客吸引力がないため本件請求を争うと主張して、同年7月11日に弁論の再開の申立てをしたため、弁論を再開した。なお、当裁判所は、被告らに対し、最高裁平成21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁(以下「ピンク・レディー判決」という。)を踏まえ、パブリシティ権侵害の成否につき反論を尽くすよう求めたものの、被告らは、ピンク・レディー判決にいう3類型該当性については具体的な反論をしていない。また、被告らは、原告名称に係るパブリシティ権侵害の成否については反論をするものの、原告肖像に係るパブリシティ権侵害の成否については具体的な反論をしていない。3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。)

⑴ 被告らの商号被告らの商号は、「株式会社エンリケ空間」 「株式会社エンリケスタイル」、及び「株式会社エンリケスタッフ」であり、いずれも原告の芸名である「エンリケ」を含むものである。

⑵ 被告エンリケ空間の公式ホームページ①(ドメイン名を「enrikekukan.com」とするもの。以下同じ。)被告エンリケ空間公式ホームページ①は、その中に「enrike-card」や「enrike-mall」のドメイン名を含むページも存在するところ、同ホームページにおける原告名称及び原告肖像の使用態様は、以下のとおりである。ア トップページには、トップ部分に原告の写真4枚と「ENRIKE」(ただし、最後のEが左右反転しているもの。)を組み合わせたデザインが掲載されている。その下には、被告エンリケ空間が提供し又は提供に関与してい

5 る複数のサービスが、1サービスにつき1枚の写真、標章及び1行ないし3行の説明文によって紹介されている。これらのサービス紹介に係る写真は、それぞれ背景や構図は異なるものの、全て原告一人が写されたものであり、標章は、下記イないしクのとおり、全て原告名称を含んでいる。これらのサービス紹介と並んで、フランチャイズ事業加盟店の募集がされており、この募集については、原告一人が写された写真のほか、「エンリケブランドを一緒に盛り上げませんか?」などとして、原告名称を含む説明文が付されている。また、被告エンリケ空間のYouTubeチャンネル、原告のインスタグラム、原告のTwitterが紹介されており、いずれも原告の写真が使用されている。さらに、同ページには被告エンリケ空間の商号も記載されている。(甲14-1)イ 店舗プロデュースサービスに関するページには、トップ部分に「日本一売上を誇る伝説のキャバクラ嬢 失敗しない店舗づくりをエンリケがプロデュース エンリケがあなたの店舗内装をプロデュースします!」との文章と重なるように原告の写真が掲載されているほか、原告の写真が3枚掲載されており、「エンリケから特別特典プレゼント」、「失敗しない店舗づくりをエンリケが伝授」などとして、原告名称を含む文章が掲載されている。(甲14-2。ただし、同ページの原告の写真については本件請求の対象とはされていない。)ウ セルフエステサービスに関するページには、トップ部分に原告が一人で写った写真が2枚掲載されているほか、「セルフエステエンリケ」との標章が使用されている。(甲14-3)エ バスクチーズケーキサービスに関するページには、「ENRIKE BASQUE CHEESE CAKE」又は「バスクチーズケーキエンリケ」との原告名称を含む標章が使用されている。(甲14-4)オ クレジットカードサービスに関するページには、トップ部分に原告が一人

5 で写った写真が1枚掲載され、下部にも原告の写真が1枚掲載されているほか、「ENRIKE CARD」又は「エンリケカード」との標章が複数回掲載され、「エンリケポイント」、「エンリケブランド」、「エンリケのこだわり」などといった文言が掲載されている。(甲14-5)カ フランチャイズ募集に関するページには、トップ部分に原告が一人で写った写真が掲載されているほか、「代表取締役 エンリケ」という名称とともに挨拶文が掲載され、「セルフエステエンリケ」の標章や、「エンンリケブランド」の文言も掲載されている。(甲14-6。なお、同ページの原告の写真については本件請求の対象とはされていない。)キ オンラインショッピングサービスに関するページには、トップ部分に原告が一人で写った写真が掲載されるとともに、「ENRIKE MALL」又は「エンリケモール」との原告名称を含む標章が使用されている。(甲14-7)ク トレンド情報サービスに関するページには、トップ部分に原告が一人で写った写真が掲載されるとともに、「エンリケトレンド」との原告名称を含む標章が使用されている。(甲14-8)

⑶ 被告エンリケ空間公式ホームページ②(トップページのホームページアドレスが「(URLは省略)」のものをいう。以下同じ。甲4)被告エンリケ空間公式ホームページ②は、「enrike.jp」のドメイン名を有しており、トップ部分に原告の写真が複数枚掲載されているほか、被告エンリケ空間の商号が掲載されている。

⑷ 被告エンリケ空間の公式インスタグラム(甲14の9)について被告エンリケ空間の公式インスタグラムのトップページのホームページアドレスは、「(URLは省略)」であり、被告エンリケ空間の商号のアルファベット表記をドメイン名に含んでいる。同トップページには、いわゆるアイコンとして原告の容ぼうを含む上半身が写された円形の写真が掲載されている

5 ほか、被告エンリケ空間の商号が日本語又はアルファベット表記で掲載されている。また、投稿欄には、複数のサービスないしフランチャイズ募集の広告が投稿されており、各投稿にはそれぞれ原告肖像が一つずつ使用されているほか、そのうち七つには「ネイルサロンエンリケ」、「Relaku SalonENRIKE」、「セルフエステエンリケ」といった原告名称を含んだ標章が使用されている。

⑸ 被告エンリケスタイルの公式ホームページ(甲14の10)について被告エンリケスタイルの公式ホームページのトップページのホームページアドレスは、「(URLは省略)」であり、被告エンリケスタイルの商号のアルファベット表記をドメイン名に含んでいる。同トップページには、トップ部分に原告の写真が掲載されているほか、被告エンリケスタイルの商号が日本語又はアルファベット表記で掲載されている。4 争点

⑴ パブリシティ権侵害の成否(争点1)

⑵ 原告の同意の有無(争点2)

⑶ 権利濫用の成否(争点3)

⑷ 差止め及び廃棄請求の可否(争点4)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(パブリシティ権侵害の成否)について

(原告の主張)

⑴ 顧客吸引力の有無

原告は、「エンリケ」の芸名でキャバクラ嬢として活動している者であり、令和元年には5億円の売上げを達成するなどした。そして、①原告が多数のテレビ番組に出演していること、②原告のインスタグラムのフォロワー数が66万人を超えていること、③原告の活動歴等を紹介する書籍が販売されていること、④同書籍について新聞の報道があり、発売2週間で3刷もされていること、

5 ⑤原告がC元首相に招待されたことがあり、その事実が報道されていること、

⑥原告のことを報道する新聞等が多数あること等からすると、原告が著名であ

り、原告名称及び原告肖像が広く認知されていることは明らかである。このような著名性からすれば、原告名称及び原告肖像にはサービス・商品の販売等を促進する顧客吸引力があり、これについてパブリシティ権が認められることは明らかである。これに対し、被告らは、原告名称や原告肖像にパブリシティ権が発生していることを否定するものの、これらに顧客吸引力がなければ、被告らにおいても原告名称や原告肖像を使用するはずがない。また、被告らは、被告らの事業活動によって「エンリケ」の名称が飛躍的に著名になった旨主張するが、原告はもともとナンバーワンキャバクラ嬢として著名であったのであり、被告らによって著名になった事実はない。

⑵ 被告らの行為

原告名称及び原告肖像に係る被告らの使用についてみると、被告らが自身のウェブページで、原告肖像を全面に押し出すとともに原告名称を使用した標章を掲載していることからすれば、被告らが、原告肖像等を専ら商品等の広告として使用していたことは明らかであるし、専ら商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付したものであることも明らかである。ドメイン名についても、同様に原告肖像を全面に押し出したウェブページで使用されており、被告らが顧客吸引力のフリーライド、出所識別機能を目的として使用しているのは明白であるから、専ら商品等の広告又は商品等の差別化を図る目的で商品等にドメイン名を付したということができる。また、被告らは、それぞれ「エンリケ」を含む商号を使用しているところ、ドメイン名、原告肖像、標章等を専ら広告又は差別化を図る目的で使用していた経緯に鑑みれば、商号もその使用の一環であると推認することができるし、被告らがウェブページに原告肖像と共に商号を使っていることに鑑みれば、商

5 号についても、専ら商品等の広告又は商品等の差別化を図る目的で使用してい

たといえる。これに対して、被告らは、原告以外の者が使用する「エンリケ」から着想し、「エンリケ」等の名称を使用しているため、「エンリケ」は原告を指すものではない旨主張するが、ウェブサイト等で原告肖像と共に原告名称を使用していることからすれば、原告を指して原告名称を使用していることは明らかである。

⑶ 小括

以上によれば、被告らが原告名称及び原告肖像を使用する行為は、原告のパブリシティ権を侵害する。(被告らの主張)

⑴ 顧客吸引力の有無

「エンリケ」がスペイン語、ポルトガル語の男性名に用いられる一般的な名称であることや、著名なベーシストにも同一名の人物がいることからすれば、「エンリケ」の名称を聞いた者が原告を認識するとは限らず、これを原告が専有すべき法律上の理由はない。また、原告が著名であるとしても、もともとキャバクラのホステスという狭い世界で一定の著名性を有しているにすぎなかったものを、訴外Bが被告らを設立し、様々な事業活動を展開することで、原告の著名性を飛躍的に高めたものである。これらの事情によれば、被告らの名称にこそ、パブリシティ権が発生しているというべきである。

⑵ 被告らの行為

被告らは、一般名称としての「エンリケ」や著名なベーシストといったイメージを利用して「エンリケ」等の名称を使用しているのであり、原告を指して「エンリケ」を使用しているわけではない。したがって、専ら原告名称が有する顧客吸引力の利用を目的としているわけではなく、パブリシティ権侵害は認められない。

⑶ 小括

5 以上によれば、被告らが原告のパブリシティ権を侵害したとはいえない。

2 争点2(原告の同意の有無)について

(被告らの主張)被告エンリケ空間は、被告エンリケ空間の最初の代表者であった原告の同意の下で、社名に「エンリケ」を使用したものであるし、被告エンリケスタイル、被告エンリケスタッフについても同様に、原告から「エンリケ」の使用について同意を得ている。そして、商号の決定又は使用は、一般的には恒久的な使用を前提とするものであるから、原告は、これを一方的に取り消すことはできない。したがって、被告らは原告名称を使用する権利を有する。もっとも、訴外Bが原告と離婚する際に原告の名称を使用しない旨を述べたことがあったが、これはその時点の一つの考え方を述べたにすぎず、確定的な合意をしたものではない。

(原告の主張)

原告が被告エンリケ空間の代表者であった時に、被告エンリケ空間について「エンリケ」の名称を使わせていた事実は認める。しかしながら、原告は、被告エンリケ空間との間で「エンリケ」の名称・肖像等の使用について何らの契約を交わしていない。そして、原告は、被告エンリケ空間の代表者を原告から訴外Bに交代する際には、訴外Bとの間で「エンリケ」等の名称を使用しないことを話している。そもそも、原告の同意は抗弁であるところ、被告らは、いつの時点で、誰と誰との間で、どのような合意(期間、使用方法等)をしたかも明らかにしておらず、その主張自体失当である。

3 争点3(権利濫用の成否)について

(被告らの主張)被告らは、原告の同意により、「エンリケ」等の名称を商号として使用して独自の社会活動、営業活動をしており、多くの企業とのフランチャイズ契約も締結している。そして、「エンリケ」という名称は、被告の資金力や活動実績により

5 著名性を拡大してきたのであるから、被告らは名称使用を継続することに独自の

利益を有する。他方、被告らが「エンリケ」の名称を使用できなくなると、フランチャイズ企業からの損害賠償請求、従業員の勤労意欲の低下等が生ずるおそれがあり、ひいては企業経営が左右されるなど、不利益や損害は極めて大きい。これらの事情を考慮すると、原告による本件請求は、正当な理由がなく権利の濫用である。

(原告の主張)

争う。

4 争点4(差止め及び廃棄請求の可否)について

(原告の主張)

被告らは、その商号に原告名称を使用するほか、ウェブページに原告名称及び原告肖像を使用し、ドメイン名にも原告名称を使用している。このように、現に被告らは原告のパブリシティ権を侵害しているし、

(原告の主張)

を争っていることからすれば、今後の侵害のおそれもある。したがって、差止請求はもとより、廃棄請求も全て認められるべきである。(被告らの主張)争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(パブリシティ権侵害の成否)について

⑴ 被告らは、「エンリケ」という用語はスペイン語又はポルトガル語の男性名に使用される一般用語であり、原告が著名であるとしてもキャバクラのホステスという狭い世界で著名性を有するにすぎないため、原告の名称には顧客吸引力がない旨主張する。しかしながら、前記前提事実並びに証拠(甲1、16ないし18,21、22)及び弁論の全趣旨によれば、①原告は、キャバクラでホステスの仕事をしていたところ、次第に売上げを稼ぐことができるようになり、平成29年には

5 2日間で1億円以上、平成30年には3日間で2億5000万円以上、令和元年には引退式4日間で5億円を、それぞれ売り上げた旨周知されたこと、②原告は、平成30年には「日本一売り上げるキャバ嬢の指名され続ける力」という書籍を、平成31年には「日本一売り上げるキャバ嬢の億稼ぐ技術」という書籍を、令和2年には「結局、賢く生きるより素直なバカが成功する 凡人が、14年間の実践で身につけた億稼ぐ接客術」という書籍を、次々に出版し、令和3年には著書累計15万部を突破したこと、③さらに、原告は、あらゆる職業に役立つコミック実用書として、令和3年には、上記「日本一売り上げるキャバ嬢の億稼ぐ技術」をコミック実用書として出版し、全ての仕事に通じる稼ぐ技術を広く紹介したこと、④原告は、伝説のキャバクラ嬢として、テレビのバラエティ番組にも出演するようになり、平成21年から令和4年にかけて20本以上のテレビ番組に出演したこと、⑤原告のインスタグラムでは、令和5年2月4日時点におけるフォロワー数が66万人を超えていること、以上の事実が認められる。上記認定事実によれば、原告は、被告らの主張するような一キャバクラ嬢にとどまらず、書籍を多数出版しテレビにも多数出演しフォロワー数も極めて多く、日本一稼いだ伝説のキャバクラ嬢として、世の中に広く認知されていることが認められる。これらの事情を踏まえると、原告名称又は原告肖像には、商品の販売等を促進する顧客吸引力があるものと認めるのが相当である。したがって、被告らの主張は、いずれも採用することができない。

⑵ 被告らは、当裁判所の釈明にかかわらず、ピンク・レディー判決にいう3類

型該当性につき反論しないものの、念のため、以下検討する。

前記前提事実及び前記認定事実によれば、原告名称及び原告肖像には、商品

の販売等を促進する顧客吸引力があるところ、原告名称及び原告肖像の掲載態

様等を踏まえると、被告らが提供する全てのサービスに共通してエンリケとい

うブランド価値を全面に押し出していることからすれば、被告らは、エンリケ

空間にあっては内装の設計等の事業につき、エンリケスタイルにあってはエス

テティックサロンの経営等の事業につき、エンリケスタッフにあっては労働者

派遣事業等の事業につき、上記顧客吸引力により他の同種事業に係るサービス

との差別化を図るために、商号、標章、ウェブページ、ドメイン名において原

告名称又は原告肖像を付したものと認めるのが相当である。

したがって、被告らが原告名称又は原告肖像を使用する行為は、ピンク・レ

ディー判決の第2類型に該当するものとして、パブリシティ権を侵害するもの

といえる。

争点2(原告の同意の有無)について

被告らは、原告が被告らによる原告名称の使用に同意していた旨主張する。し

かしながら、被告らは、同意があった旨抽象的に主張するにとどまり、その同意

の時期、内容等を具体的に主張していないのであるから、その主張自体失当とい

うほかなく、被告らの提出に係る全証拠によっても、上記同意を裏付ける客観的

証拠はない。

仮に、少なくとも原告と訴外Bが婚姻中においては、原告名称の使用の合意を

していたとしても、被告らは、原告と訴外Bが離婚し、原告が被告エンリケ空間

の代表取締役を辞任した後でも、なお原告名称に係る使用の同意が継続する事実

を具体的に主張立証するものではない。かえって、被告らの主張によっても、訴

外Bが原告と離婚した際に、原告名称を使用しない旨述べたことがうかがわれる

ことからすれば、被告らの主張を前提としても、現在まで上記同意が継続してい

る事実を認めるに足りないことは明らかである。したがって、被告らの主張は、

いずれも採用することができない。

争点3(権利濫用の成否)について

被告らは、原告名称の使用ができないことによる被告らの不利益や損害の程度

によれば、原告による本件請求は権利濫用である旨主張する。しかしながら、前

記前提事実及び前記認定事実並びに弁論の全趣旨によれば、被告らは、原告名称

及び原告肖像の商業的価値を無断使用しているにもかかわらず、原告のパブリシ

ティ権を侵害している事実を認めようとせず、原告との間で、原告名称及び原告

肖像の今後の使用につき誠実に協議しようとしたこともうかがわれないことか

らすると、被告ら主張に係る上記事情を十分に考慮しても、本件請求は、パブリ

シティ権の正当な行使というほかなく、権利濫用であると認めることはできない。

したがって、被告らの主張は、採用することができない。

争点4(差止め及び廃棄請求の当否)について

前記前提事実及び前記認定事実によれば、被告らがパブリシティ権を侵害し、

エンリケという人物の商業的価値を無断使用し、これを現在まで継続しているの

であるから、主文掲載の差止め及び廃棄を認めるのが相当である。したがって、

被告らの主張は、明らかに採用の限りではない。

その他

その他に、被告ら提出に係る答弁書及び証拠を念のため検討しても、被告らを

実質的に経営する訴外Bは、少なくとも原告と離婚した後にあっては、原告名称

及び原告肖像の使用につき原告からの許諾を得られていないのであるから、被告

らにおいて原告名称及び原告肖像を今後使用するには、パブリシティ権侵害を認

めた上で原告から使用許諾を得るほかない。上記において説示したところによれ

ば、被告らの主張は、パブリシティ権の重要性を正解しないものに帰し、いずれ

も採用することができない。

第5 結論

よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容し、本件訴訟の経

過及び本件事案の性質等に鑑み仮執行宣言を付することとして、主文のとおり判

決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

中 島 基 至

裁判官

古 賀 千 尋

裁判官

尾 池 悠 子

(別紙 省略)

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

来週の知財セミナー (11月2日~11月8日)

11月5日(木) - オンライン

第69回東北大学知財セミナー

11月5日(木) - 東京 港

研究開発戦略と知的財産

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

あいぎ法律事務所

〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅三丁目13番24号 第一はせ川ビル6階 特許・実用新案 意匠 商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

弁理士法人いしい特許事務所

〒541-0046 大阪市中央区平野町2丁目2番9号 ビル皿井2階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

あいぎ特許事務所【名古屋・岐阜】

名古屋本部オフィス 〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅3-13-24 第一はせ川ビル6F http://aigipat.com/ 岐阜オフィス 〒509-0124 岐阜県各務原市鵜沼山崎町3丁目146番地1 PACビル2階(旧横山ビル) http://gifu.aigipat.com/ 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング