知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和4(ワ)13396 民事訴訟 不正競争

この記事をはてなブックマークに追加

令和4(ワ)13396民事訴訟 不正競争

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 一部認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年1月17日
事件種別 民事
当事者 原告AA
被告株式会社くじらITサポートサービス
法令 不正競争
民法709条1回
民事訴訟法248条1回
キーワード 侵害4回
損害賠償3回
ライセンス2回
差止1回
主文 1 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する令和4年5月30日から支
2 被告は、別紙投稿目録記載の投稿を削除せよ。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。15
4 訴訟費用は、これを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告に対し、被告が原告に発注した業務に関してインター25 ネット上で行った別紙投稿目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)が、① 競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不 正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の不正競争に該当 し、かつ、②被告の業務がより低価格で質が優れていると誤認させるような表 示をするもので、同項20号所定の不正競争に該当し、仮にそれらに該当しな いとしても、③民法上の不法行為に該当するものであって、この被告の行為に5 より、原告に無形損害及び逸失利益に係る損害が生じたと主張して、不競法4 条(主位的)及び民法709条(予備的)に基づき、損害金合計100万円 (上記①及び②の双方が認容された場合の損害金も同額)及びこれに対する不 法行為後の日である令和4年5月30日から支払済みまで民法所定年3パーセ ントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、不競法3条に基づき、10 本件投稿の削除を求める事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 不正競争に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和6年1月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和4年(ワ)第13396号 投稿削除及び損害賠償の請求事件
口頭弁論終結日 令和5年11月1日
判 決
原 告 AA
被 告 株式会社くじらITサポートサービス
10 同訴訟代理人弁護士 篠 原 一 廣
主 文
1 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する令和4年5月30日から支
払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、別紙投稿目録記載の投稿を削除せよ。
15 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、これを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担
とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
20 1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和4年5月30日から
支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 主文第2項と同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
25 本件は、原告が、被告に対し、被告が原告に発注した業務に関してインター
ネット上で行った別紙投稿目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)が、①
競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するもので、不
正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の不正競争に該当
し、かつ、②被告の業務がより低価格で質が優れていると誤認させるような表
示をするもので、同項20号所定の不正競争に該当し、仮にそれらに該当しな
5 いとしても、③民法上の不法行為に該当するものであって、この被告の行為に
より、原告に無形損害及び逸失利益に係る損害が生じたと主張して、不競法4
条(主位的)及び民法709条(予備的)に基づき、損害金合計100万円
(上記①及び②の双方が認容された場合の損害金も同額)及びこれに対する不
法行為後の日である令和4年5月30日から支払済みまで民法所定年3パーセ
10 ントの割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、不競法3条に基づき、
本件投稿の削除を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(特記しない限り枝
番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1) 当事者
15 ア 原告は、ソフトウェア・ITシステムの開発及び保守業務を営む個人事
業主である。
イ 被告は、ソフトウェア・ITシステムの開発及び保守業務を営む株式会
社である。
(2) 原告と被告との間の開発業務に係る請負契約の締結
20 原告は、ランサーズ株式会社(以下「ランサーズ社」という。)がインター
ネット上で提供している個人間又は個人と法人との間での請負業務に係るマ
ッチングサイト「ランサーズ」(以下「本件サイト」という。)を通じ、被告
から、次の各開発業務を請け負った(甲3、15)。
① クラウドネットワークアナライザーのシステム開発(以下「本件アナ
25 ライザー案件」という。) 請負代金44万9999円(消費税及びシス
テム利用手数料込み)
② サイネージ管理開発(以下「本件サイネージ案件」という。) 請負代
金38万円(消費税及びシステム利用手数料込み)
(3) 本件アナライザー案件における原告と被告との間のやりとり
ア 本件アナライザー案件における成果物の開発に当たり、開発中に生じた
5 課題等の管理並びに原告及び被告間の相互の連絡は、「課題管理表」及びS
lack(チャット機能等を有するコミュニケーションツール)により行
われた。
イ 原告は、令和3年11月29日、被告に対し、前記アの「課題管理表」
の項番13において、「提供いただいている資料「クラウドネットワークア
10 ナライザー要件定義.xlsx など」と対象機 rtx830 で仕様の衝突が発生した
場合、どちらを優先させますか?」、当該「資料にある youtube などでは
「https 通信」のため検知ができず、上記課題管理表#9 でご連絡いただいた
本プロジェクトのゴールにも掛かると思われます」と指摘した(甲10)。
ウ 原告と被告担当者は、その後、前記イの指摘を踏まえ、Slackにお
15 いて、概ね、以下のやりとりをした(乙1、5の1)。
被告担当者 「「youtube 等 https を使っているサイトのトラフィック
が検知できない」という点に関して確認したいのですが、
トラフィックの中身がとれないのはもちろん理解できるの
ですが、接続先のサイトが youtube のアドレスであることす
20 ら検知できないと仰っていますでしょうか?」
原告 「a)ご質問は、IP ヘッダ部分は暗号化していないので
は?という内容かと存じますが、ペイロードのみならず、
ヘッダを含むパケットの解析には復号化が必要になります。
b)ペイロードが取れないということはトラフィック量が取
25 れない可能性があり、課題管理表#9でご連絡の目的の実現
ができかねるかと存じます。…今回当方へのご依頼は管理
画面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の
評価は含まれていないという認識です。」
被告担当者 「https サイトの場合「トラフィック量はとれない(と思
われる)が、通信の回数やパケットサイズならルータの標
5 準機能で取得可能」でしょうか?(そうしたいというわけ
ではなく、こちらが理解不足なのでご指摘の内容を正しく
確認したい意図です)」

原告 「本件で当方は仕様書を評価する立場ではありませんた
め、詳細な仕様書類の評価報告はしかねる状況でございま
10 す。」
被告担当者 「意図が伝わっていないようで恐れ入ります。仕様書の
評価をご依頼したのではなく、AAさんのご指摘に対して、
以下の私の解釈があっているかをお聞きしました。「
」「トラ
フィック量はとれない(と思われる)が、通信の回数やパ
15 ケットサイズならルータの標準機能で取得可能」でしょう
か?」
原告 「論点がすり替わっていると感じられる文脈となり申し
訳ありませんが、本件のテーマは課題管理表#13 に記載の通
り、実機と仕様書類で衝突が発生した場合に、どちらを優
20 先させますか?になります」
(4) 被告による本件投稿
ア 被告は、令和4年4月27日、本件サイトに設けられた原告の「実績・
評価」画面において、本件アナライザー案件に関し、本件投稿をした。
イ 本件投稿は、次の事実を摘示するものである。
25 (ア) 「こちらの質問には明確に答えず、何回もラリーが続く。弊社の別の
担当者からの質問には、「どんな権限の方」と言われ「システム担当者」
と返答すると「なんで答える必要あるの?」と。結局、回答はもらえず。」
の部分(以下「本件投稿部分1」という。)
「何度やりとりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答
しない」との事実を摘示するものである。
5 (イ) 「XDでモックを作成したのに、違うものが出来上がり、XDに合わ
せるには別料金が必要ですと。それが明らかに金額が高く、引くに引け
ない状況で、この高額見積もりは、守銭奴ビジネスとしては正解なのか
もしれないが、人としてはどうなのかと思いました。」の部分(以下「本
件投稿部分2」という。)
10 第1文全体と第2文の冒頭「それが明らかに金額が高く」までが、「X
Dでモックを作成したのに、違うものが出来上がり、XDに合わせるに
は別料金が必要で、それが明らかに金額が高い」との事実を摘示するも
のである。
(ウ) 「最終、ゴミを納品され、捨てました。いい勉強になりました。」の部
15 分(以下「本件投稿部分3」という。)
第1文は、「原告が納品した成果物は、仕様を満たさず、使用に耐えな
いものであった」との事実を摘示するものである。
3 争点
(1) 不競法2条1項21号の不正競争の成否(争点1)
20 (2) 不競法2条1項20号の不正競争の成否(争点2)
(3) 故意又は過失の有無(争点3)
(4) 不法行為の成否(争点4)
(5) 原告に生じた損害の有無及びその額(争点5)
(6) 本件投稿の削除の必要性(争点6)
25 4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(不競法2条1項21号の不正競争の成否)について
(原告の主張)
ア 本件投稿が摘示する事実は原告の営業上の信用を害する虚偽のものであ
ること
(ア) 本件投稿部分1が摘示する事実は虚偽であること
5 原告が被告担当者からの質問に明確に回答しないとの点は、次のとお
り、虚偽の事実である。
原告が被告から依頼されたいずれの案件においても、設計工程の成果
物である仕様書の作成までの工程を被告が、その後の目的物プログラム
作成、テスト及び被告の指定する環境への納品といった工程を原告が、
10 それぞれ担当することとなっていた。
被告担当者の質問に対する回答の内容は、仕様書の内容及びルーター
機器の機種といった条件次第で変わるから、その質問に対しては、仕様
書の作成及びルーター機器の選定を行った被告のみが回答し得るもので
ある。また、当時、仕様及びルーター機器も確定していなかったから、
15 なおさら原告は被告の疑問を解決することができない。
このような状況下で、原告は、無責任な回答ができないと考え、契約
範囲外のため回答できないとの趣旨の回答をしたのである。
なお、原告は、回答ができないことを説明したのであって、「なんで答
える必要あるの?」と回答したことはない。また、「どんな権限の方」と
20 いった、被告及び被告の関係者に対して敬意を払っていないと解釈され
る投稿をしたことはない。
(イ) 本件投稿部分2及び3が摘示する事実は虚偽であること
a 本件サイネージ案件に係る成果物は仕様に合致していたこと
原告は、本件サイネージ案件に係る見積もりを提出した際、被告に
25 対し、被告作成の仕様書に記載されていたアドビ社のXDというツー
ル(以下、単に「XD」という。)を用いて作成されたモック(外観等
のイメージ)とは異なる外観のカレンダーのイメージを伝え、被告は、
これを了承した上で、本件サイネージ案件を原告に発注した。そして、
原告は、当該イメージのとおりの成果物を納品した。
また、被告は、令和4年2月16日、本件サイネージ案件について、
5 成果物が仕様に合致することを確認する「検収」をしている。
このように、原告は、被告と合意した仕様に合致する成果物を納品
している。
b 原告が提示した改修代金は明らかに高額なものではないこと
被告が希望する時間などの目盛りを表示するカレンダーの実装には、
10 第三者へのライセンス料の支払が必要となり、原告が被告に提示した
改修代金にはこのライセンス料480米ドルが含まれている。
また、原告が被告に示した改修見積もりは、改修案Aと改修案Bを
併記したもので、被告は希望するものをどちらか選択すればよいので
あるから、改修に要する代金は最大でも30万1556円にとどまる。
15 両者を合算し、改修に要する代金は当初発注額の38万円を超えると
の被告の主張は誤りである。
そもそも、システム開発において、工程を巻き戻す際に発生するコ
ストは指数関数的に増大するから、改修内容によってその代金が当初
の発注額を超過することは何ら異常ではない。
20 このように、原告が提示した改修代金は、明らかに高額なものでは
ない。
(ウ) まとめ
以上のとおり、本件投稿が摘示する事実は、いずれも虚偽である。
また、本件投稿が摘示する事実が、いずれも原告の営業上の信用を害
25 するものであることは明らかである。
イ 本件投稿が事実を流布するものであること
本件サイトは、インターネット上に開設されており、不特定多数人が
閲覧できるものであるから、被告は、本件サイトにおける本件投稿により、
摘示されている各事実を流布したといえる。
ウ 小括
5 したがって、本件投稿は、不競法2条1項21号所定の不正競争に当た
る。
(被告の主張)
ア 本件投稿が摘示する事実は主要な部分において真実であること
(ア) 本件投稿部分1について
10 a 「こちらの質問には明確に答えず、何回もラリーが続く」との部分
について
被告担当者が、原告に対し、原告が「課題管理表」の項番13で指
摘した事項の趣旨を確認したところ、原告は、「本件で当方は仕様書を
評価する立場ではありませんため、詳細な仕様書類の評価報告はしか
15 ねる状況でございます。」と、被告が理解できない回答をした。そのた
め、被告担当者は、被告が「はい」か「いいえ」で回答できるように
改めて質問したにもかかわらず、原告は、やはり明確に回答しなかっ
た。その後も、被告担当者からの質問に対し、原告から明確な回答が
得られないやりとりが続いた。
20 確かに、本件アナライザー案件についての仕様の確定は、被告で行
うべきとされていた。しかし、原告の上記指摘がそのとおりなのであ
れば、ネットワークアナライザーが機能しない可能性があり、上記指
摘は、仕様を確定させる上で重要なものであった。そのため、被告は、
原告に上記指摘の趣旨を確認する必要があり、被告担当者から何度も
25 質問したにもかかわらず、原告は回答を拒絶したものである。
b 「なんで答える必要あるの?」の部分について
原告から「なんで答える必要があるの?」との表現で回答がされた
事実はないものの、それは、「今回当方へのご依頼は管理画面の開発で、
くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれていないとい
う認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現にとどまるもので
5 ある。
c 「どんな権限の方」と言われたとの部分について
被告担当者が、原告に対し、Slackにおいて最初に質問をした
際、原告は、被告担当者が「本プロジェクトでどのような役割なのか
が不明なため、回答に不適切な内容を含む可能性があります」と投稿
10 しており、これは、「どんな権限の方」と言われたのと同様である。
d まとめ
以上のとおり、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、
原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、主
要な部分において真実である。
15 (イ) 本件投稿部分2及び3について
a 「XDでモックを作成したのに、違うものが出来上がり」の部分に
ついて
被告は、原告に本件サイネージ案件を依頼するのに先立ち、原告と
オンラインで面談し、原告との間で仕様について合意していた。すな
20 わち、被告は、原告に対し、XDで作成した管理画面のモックを示す
とともに、広く流通しているGoogleカレンダーのように、同様
の予定の「繰返し」を入力できる機能や、同じ時間帯に二つ以上の予
定を入れられる機能が必要である旨を伝えたところ、原告は、これを
了解した。
25 しかし、原告が納品した成果物には、上記モックに記載されていた
時刻の目盛りが設けられていなかった上、同じ時間帯に二つ以上の予
定を入れられる機能が備わっていなかった。また、予定の「繰返し」
入力機能については、入力自体は可能であったものの、その始期を指
定することができなかったため、過去にさかのぼって当該予定が入力
されてしまい、実際の過去の記録とは異なるものに変更されてしまう
5 という状態であった。
このように、原告が納品した本件サイネージ案件に係る成果物は、
合意した仕様に合致していないものであった。
b 「XDに合わせるには別料金が必要ですと。それが明らかに金額が
高く」の部分について
10 被告は、原告が納品した成果物が仕様に合致していなかったため、
原告に対し、合意した仕様に沿うように修正することを求めたところ、
原告から別途の見積もりが示され、修正に要する代金は、当初発注額
の38万円を超える40万9223円とされていた。
c 「最終、ゴミを納品され、捨てました。いい勉強になりました。」の
15 部分について
被告は、本件サイネージ案件について、改めて別の業者に依頼し、
一から改修して完成させた。そのため、被告において、原告の納品し
た成果物を使用する可能性は全くなく、単に原告に代金を支払っただ
けに等しい結果となってしまった。
20 d まとめ
以上のとおり、本件投稿部分2が摘示する「XDでモックを作成し
たのに、違うものが出来上がり、XDに合わせるには別料金が必要で、
それが明らかに金額が高い」及び本件投稿部分3が摘示する「原告が
納品した成果物は、仕様を満たさず、使用に耐えないものであった」
25 との各事実は、いずれも真実である。
イ 小括
したがって、本件投稿は虚偽の事実を摘示するものではないから、不競
法2条1項21号所定の不正競争に当たらない。
(2) 争点2(不競法2条1項20号の不正競争の成否)について
(原告の主張)
5 ア 本件サイトを利用する発注者は、一般的に、請負業務を発注する前に相
見積もりにより多数の提案を受け、その中から当該発注者の意に沿う提案
を選定することになる。そして、当該発注者は、提案者と直接対面するこ
となく、オンライン上のやりとりのみで発注することになる上、原告が従
前請け負っていた業務は、その請負代金が10万円ないし100万円程度
10 と、一般的な電子商取引関係の案件としては高額な部類に入ることから、
当該発注者においては、失敗を避けるため、提案内容のみならず、提案者
の過去の実績や評価に問題がないかを十分確認しようとするとの動機を有
するものであると推測できる。
また、本件サイトの仕様上、本件サイトの会員は、自身のマイページに
15 おいて、いつでも自身の立場を発注者又は受注者に切り替えることができ
る。そして、被告は、本件サイトの自身のプロフィール画面において、原
告と競合するシステム/ソフトウェア開発サービス「各種WEBアプリ、
スマホアプリ、ラズパイ」を提供し、その受注が可能であることを明記し
ている。さらに、本件サイトの「実績・評価」画面に設けられたアイコン
20 をクリックすることで、当該画面の閲覧者は、評価を投稿した発注者のプ
ロフィール画面を確認することができる。
本件サイトのこれらの仕様により、本件投稿の閲覧者は、「実績・評価」
画面の本件投稿に設けられたアイコンをクリックするだけで、被告のプロ
フィール画面に遷移でき、その内容を確認してそのまま被告に仕事を発注
25 することが可能である。すなわち、被告は、原告の請負業務に係る評価画
面に本件投稿をすることを通じて、同様の業務の提供を希望する見込顧客
である閲覧者に対する広告を配信しているといえる。
このように、本件投稿は、被告を基準として原告を比較する比較広告の
性質を有する。
イ そして、本件投稿の内容は、原告の見込顧客を含む不特定多数人に対し、
5 原告の請負業務(役務)が高額であり、同業を営む競争関係にある被告の
業務(役務)がより低価格で質が優れていると誤認させるようなものであ
る。
ウ したがって、本件投稿は、不競法2条1項20号所定の不正競争に当た
る。
10 (被告の主張)
不競法2条1項20号は、虚偽等の事実を指摘して自己の商品や役務を優
位に販売しようとする行為を規制するものであるから、同号所定の「商品若
しくは役務」とは、これらを提供している当事者自身のものを意味し、他人
の商品や役務は含まれない。
15 本件投稿は、被告が他人である原告の役務に関する意見を記載したもので、
自己の役務について言及したものではないから、同号が適用される余地は一
切ない。
(3) 争点3(故意又は過失の有無)について
(原告の主張)
20 本件投稿は、一部の事実を切り取って大きく歪曲した表現となっている上、
本件訴訟における被告の主張と本件投稿の内容とがほとんど一致していない
ことからも、本件投稿が被告の故意又は過失によってされたものであること
は明らかである。
(被告の主張)
25 争う。
(4) 争点4(不法行為の成否)について
(原告の主張)
仮に、本件投稿が、不競法2条1項21号及び20号所定の不正競争に該
当しないとしても、前記(1)ないし(3)の各(原告の主張)のとおり、被告の
故意又は過失によって、原告の権利又は法律上保護される利益を侵害するも
5 のであるから、不法行為に該当する。
(被告の主張)
争う。
(5) 争点5(原告に生じた損害の有無及びその額)について
(原告の主張)
10 ア 無形損害
本件投稿は、原告の営業上の信用を著しく低下させるものであり、これ
により原告は甚大な無形の損害を被った。これを金銭に評価すると、その
額は100万円以上である。
損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとしても、民事
15 訴訟法248条に基づき、相当な損害額が認定されるべきである。
イ 逸失利益に係る損害
本件サイトを通じた令和4年における原告の新規受注額は、令和3年に
おける原告の新規受注額と比較して147万9904円減少した。この額
からランサーズ社に支払う手数料15パーセントを控除した125万79
20 18円が、原告の逸失利益に係る損害額となる。
ウ 小括
したがって、本件投稿によって原告に生じた損害は、合計100万円
(不競法2条1項21号の不正競争を理由とする損害賠償請求及び同項2
0号の不正競争を理由とする損害賠償請求の双方が認容された場合の損害
25 も同額と主張するものである。)を下らない。
(被告の主張)
ア 無形損害について
否認する。
イ 逸失利益に係る損害について
本件サイトにおける原告の評価として、被告によって「残念」との評価
5 が1件付けられているものの、他のすべての利用者は「満足」と評価し、
原告の技術や能力を評価する投稿が多数されている。
インターネット上で提供されている商品やサービスの購入を検討してい
る者は、これらの商品やサービスに対する評価が投稿されている場合、多
数の投稿者による様々な評価を閲覧、吟味して、実際に購入、申込みをす
10 るかどうかを決定するのが一般的であるから、その中に否定的な評価が1
件あるからといって、当然にその購入や申込みを見送るということはあり
得ない。
したがって、仮に本件投稿後に原告の売上げが減少したとしても、本件
投稿が決定的な原因であったとは到底いえないから、本件投稿と原告の新
15 規受注額の減少との間に相当因果関係があるとはいえない。
(6) 争点6(本件投稿の削除の必要性)について
(原告の主張)
本件投稿は、不正競争によって原告の営業上の利益を侵害するものである
から、原告は、被告に対し、不競法3条に基づき、その削除を求める。
20 (被告の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(不競法2条1項21号の不正競争の成否)について
(1) 本件投稿の摘示する事実が虚偽のものであるか否かについて
25 ア 本件投稿部分1について
(ア) 本件アナライザー案件に係る原告と被告のやりとりについて、以下の
事実を認めることができる。
a 原告は、令和3年10月頃、被告から、「クラウドネットワークアナ
ライザーのシステム開発」業務を受注した。本件アナライザー案件に
おいては、原告と被告との間で、被告が仕様を確定すべきと合意され
5 ていた(当事者間に争いがない。。

b 原告は、令和3年11月29日、被告に対し、「課題管理表」の項番
13において、「提供いただいている資料「クラウドネットワークアナ
ライザー要件定義.xlsx など」と対象機 rtx830 で仕様の衝突が発生し
た場合、どちらを優先させますか?」、当該「資料にある youtube など
10 では「https 通信」のため検知ができず、上記課題管理表#9 でご連絡い
ただいた本プロジェクトのゴールにも掛かると思われます」と指摘し
た(前提事実(3)イ)。
c 原告と被告担当者は、その後、前記bの指摘を踏まえ、Slack
において、概ね、以下のやりとりをした(前提事実(3)ウ)。
15 被告担当者 「「youtube 等 https を使っているサイトのトラフィッ
クが検知できない」という点に関して確認したいのです
が、トラフィックの中身がとれないのはもちろん理解で
きるのですが、接続先のサイトが youtube のアドレスであ
ることすら検知できないと仰っていますでしょうか?」
20 原告 「a)ご質問は、IP ヘッダ部分は暗号化していないので
は?という内容かと存じますが、ペイロードのみならず、
ヘッダを含むパケットの解析には復号化が必要になりま
す。b)ペイロードが取れないということはトラフィック
量が取れない可能性があり、課題管理表#9でご連絡の目
25 的の実現ができかねるかと存じます。…今回当方へのご
依頼は管理画面の開発で、くじら IT サービス様でご用意
される資料の評価は含まれていないという認識です。」
被告担当者 「https サイトの場合「トラフィック量はとれない(と
思われる)が、通信の回数やパケットサイズならルータ
の標準機能で取得可能」でしょうか?(そうしたいとい
5 うわけではなく、こちらが理解不足なのでご指摘の内容
を正しく確認したい意図です)」

原告 「本件で当方は仕様書を評価する立場ではありません
ため、詳細な仕様書類の評価報告はしかねる状況でござ
います。」
10 被告担当者 「意図が伝わっていないようで恐れ入ります。仕様書
の評価をご依頼したのではなく、AAさんのご指摘に対
して、以下の私の解釈があっているかをお聞きしました。」
「「トラフィック量はとれない(と思われる)が、通信の
回数やパケットサイズならルータの標準機能で取得可能」
15 でしょうか?」
原告 「論点がすり替わっていると感じられる文脈となり申
し訳ありませんが、本件のテーマは課題管理表#13 に記載
の通り、実機と仕様書類で衝突が発生した場合に、どち
らを優先させますか?になります」
20 (イ) 前記(ア)の各事実を前提として、本件投稿部分1が摘示する「何度やり
とりしても、原告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との
事実が客観的真実に反するものであるか否かについて検討する。
a 前記(ア)aのとおり、本件アナライザー案件において、被告が仕様の
確定を行うべきとされていたことについては、当事者間に争いがない。
25 また、本件全証拠によっても、原告が、被告の作成した仕様を評価す
る立場にあったと認めることはできない。
そして、前記(ア)cの原告と被告担当者とのやりとりの内容に照らせ
ば、原告は、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告が「課題
管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件
アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評
5 価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を明確に
回答していると認めるのが相当である。
b また、原告が、被告担当者に対し、「なんで答える必要あるの?」と
の文言どおりの回答をしていないことも当事者間に争いがない。
この点に関し、被告は、当該回答は、「今回当方へのご依頼は管理画
10 面の開発で、くじら IT サービス様でご用意される資料の評価は含まれ
ていないという認識です。」との原告の回答を簡潔にまとめた表現であ
ると主張する。
そこで検討すると、不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内
容は、その相手方の普通の注意と読み方・聞き方を基準として判断す
15 べきと解されるところ、本件サイトは、ソフトウェアやITシステム
の開発業務を営んでいる者や、このような開発業務を依頼しようとす
る者が専ら閲覧していると考えられる。そして、これらの者の普通の
注意と読み方を基準とすると、「なんで答える必要あるの?」との表現
は、理由を一切説明することなく、回答を拒否したとの意味に理解で
20 きるものである。これに対し、被告が指摘する原告の上記回答は、原
告が受注した業務の内容について説明した上、被告が用意する資料の
評価にわたる事項については回答することができないとの趣旨を回答
するものといえる。
したがって、「なんで答える必要あるの?」との表現は、原告の上記
25 回答を要約したものとはいえず、被告の上記主張を採用することはで
きない。
(ウ) 以上によれば、本件投稿部分1が摘示する「何度やりとりしても、原
告は、被告担当者からの質問に明確に回答しない」との事実は、客観的
真実に反するもの、すなわち虚偽のものと認められる。
イ 本件投稿部分2及び3について
5 (ア) 証拠(甲11ないし13)及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、原
告に本件サイネージ案件を発注するに際し、XDで作成したモックを提
示し、これには時刻の目盛りが設けられていたこと(甲11)、②原告は、
令和3年11月12日、被告に対し、当該モックとは異なり、時刻の目
盛りが設けられていない外観のイメージを示したこと(甲12、13)、
10 ③原告は、被告に対し、成果物として時刻の目盛りが設けられていない
外観を備えるものを納品したことが認められる。
他方で、本件サイネージ案件に関し、原告と被告との間で、外観の点
を含めいかなる仕様が合意されていたのかを認めるに足りる証拠はない。
確かに、被告は、令和4年2月16日、本件サイネージ案件について、
15 本件サイト上において完了報告をした上、代金の支払をしたことが認め
られるものの(甲15)、このような事実のみによって、原告の納品した
成果物が被告と合意した仕様に合致したものであったと推認することは
できない。
したがって、原告の納品した成果物が被告と合意した仕様に合致する
20 ものであったことについて、立証がされているとはいえない。
(イ) また、証拠(甲21)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告から
の本件サイネージ案件に係る改修依頼に対し、次の内容の見積もりを提
示したことが認められる。
タイトル 金額
25 ①カレンダー 10万8889円
②地震配信改修 8万5000円
③スケジュール登録画面改修A 10万7667円
④スケジュール登録画面改修B 10万7667円
しかし、前記(ア)のとおり、本件サイネージ案件に関し、原告と被告と
の間で、外観の点を含めいかなる仕様が合意されていたのかを認めるに
5 は足りない。また、原告が被告に提示した改修に係る見積もり記載の各
事項について、いかなる作業が予定されていたのかを認めるに足りる証
拠もない。
したがって、原告が提示した改修代金が明らかに高額なものではない
ことについて、立証がされているとはいえない。
10 (ウ) 以上によれば、本件投稿部分2及び3が摘示する「XDでモックを作
成したのに、違うものが出来上がり、XDに合わせるには別料金が必要
で、それが明らかに金額が高い」 「原告が納品した成果物は、仕様を満

たさず、使用に耐えないものであった」との各事実が客観的真実に反す
るもの、すなわち虚偽のものであると認めることはできない。
15 (2) 本件投稿部分1の摘示する事実が原告の営業上の信用を害するものである
か否かについて
ソフトウェアやITシステムの開発においては、その過程で様々な課題が
生ずる可能性があるところ、このような課題を解決していくためには、発注
者と受注者との間で質疑応答等を重ねて対応する必要があるから、受注者が、
20 このような質疑応答に適切に対応できる資質や能力を備えているか否かは、
受注の可否にも直結する重要な事柄であるといえる。
そして、ソフトウェアやITシステムの開発に係る受注者において、発注
者からの質問に対して、何度やりとりしても明確に回答しないとの事実は、
このような業務に携わる者に必要な資質や能力を欠くとの印象を与えるもの
25 であり、需要者の視点から見た評価を低下させ、又は低下させるおそれがあ
るものというべきである。
したがって、本件投稿部分1の摘示する事実は、原告の営業上の信用を害
するものであると認められる。
(3) 小括
前提事実(1)のとおり、原告と被告とは競争関係にあると認められる。
5 また、前提事実(2)及び(4)のとおり、本件サイトは、インターネット上に
開設されており、本件投稿は、不特定多数人が閲覧できるものであるから、
被告は、本件投稿により、本件投稿部分1の摘示する事実を流布したと認め
られる。
よって、被告による本件投稿は、不競法2条1項21号所定の不正競争に
10 当たる。
2 争点2(不競法2条1項20号の不正競争の成否)について
原告は、本件サイトにおいては、それを閲覧する者が、「実績・評価」画面に
設けられたアイコンをクリックすることで、評価を投稿した発注者である被告
を選択して、被告に仕事を発注することが可能であることなどを指摘して、本
15 件投稿が不競法2条1項20号所定の不正競争に当たると主張する。
そこで検討すると、同号は、商品や役務に、その品質を誤認させる表示をす
ることにより、需要者の需要を不当に喚起するとともに競争上不当に優位に立
とうとすることを防止する趣旨の規定であるといえる。これを本件についてみ
ると、本件投稿には、被告が提供する役務の質に係る記載は何ら存在しないし、
20 投稿内容全体を見ても、需要者に対して被告が提供する役務の質を誤って認識、
理解させるようなものと認めることはできない。
そうすると、本件投稿の内容によって、需要者の需要が不当に喚起され、被
告が不当に競争上優位に立つことになるとは考え難いから、被告の役務の質を
誤認させるような表示に当たると認めることはできない。
25 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件投稿が不競法2
条1項20号所定の不正競争に当たるとの原告の主張を採用することはできな
い。
3 争点3(故意又は過失の有無)について
ソフトウェアやITシステムの開発に係る受注者の資質や能力に関する事項
を公開することは、以後当該受注者が業務を受注できるか否かにかかわるもの
5 であるから、そのような事項を公開しようとする者は、虚偽の事実を記載して
当該受注者の営業上の信用を害することがないよう注意すべき義務を負うとい
うべきである。
本件についてみると、前記1のとおり、被告は、本件投稿部分1に関し、本
件アナライザー案件において、原告が、被告の作成した仕様を評価する立場に
10 あったとはいえないことから、被告担当者からの質問に対し、一貫して、原告
が「課題管理表」の項番13において指摘した事項の趣旨を説明しつつ、本件
アナライザー案件において原告が受注していない業務である仕様の評価にわた
る事項については回答することができないとの趣旨を明確に回答しているにも
かかわらず、原告は被告担当者からの質問に明確に回答しないとの虚偽の事実
15 を記載したことが認められる。原告と被告とのやりとりは、Slack上に記
録されており(乙1、6)、被告が当該やりとりを確認することは容易であった
といえる上、前記1(1)ア(イ)のとおり、要約したものとはいえない記載をして
いることを考慮すると、本件投稿をするに当たり、虚偽の事実を記載すること
にならないようにその内容を慎重に検討することを怠っていたと認めるのが相
20 当である。
したがって、少なくとも被告において上記注意義務に違反する過失があった
というべきである。
4 争点4(不法行為の成否)について
(1) 前記1及び3のとおり、本件投稿は、主位的請求に係る不競法2条1項2
25 1号所定の不正競争に当たるから、競争関係にある原告の営業上の信用を害
する虚偽の事実を流布したことを理由とする予備的請求に係る不法行為の成
否については、判断を要しない。
(2) これに対し、不競法2条1項20号所定の不正競争に基づく主位的請求に
対応する予備的請求、すなわち、被告の業務がより低価格で質が優れている
と誤認させるような表示をしたことを理由とする不法行為に基づく請求につ
5 いては、前記2のとおり、本件投稿が被告の役務の質を誤認させるような表
示に当たると認めることはできない上、この観点から法的に保護されるべき
原告の権利又は利益が侵害されたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、本件投稿について、上記を理由とする不法行為が成立すると
は認められない。
10 5 争点5(原告に生じた損害の有無及びその額)について
(1) 無形損害について
前記1(2)のとおり、ソフトウェアやITシステムの開発において、受注者
が、発注者との質疑応答に適切に対応できる資質や能力を備えているか否か
は、受注の可否にも直結する重要な事柄であると考えられるところ、本件投
15 稿部分1が摘示する事実は、これを閲覧した者に対し、原告がそのような資
質や能力を欠くとの印象を与えるといえるから、本件投稿は、原告の営業上
の信用を大きく毀損するものと認められる。
そして、前記1(1)イのとおり、原告の納品した成果物が、被告と合意した
仕様に合致するものであることについての立証がされているとはいえず、本
20 件投稿部分2及び3について不正競争及び不法行為が成立するとは認められ
ないものの、被告は、成果物が仕様に合致していないことを意味する他の表
現を採用することは極めて容易であると考えられるのに、「ゴミを納品され、
捨てました。」と、原告による作業や成果物が有する価値のすべてを否定する
かのような表現を敢えて用い、同業者が多数閲覧する可能性のあるインター
25 ネット上のマッチングサイトの評価画面に本件投稿をしたものであるところ、
不正競争に該当する本件投稿部分1と上記の表現とが一連一体のものとして
本件投稿を構成している以上、無形損害の額を算定するに当たり、この事情
も考慮することができるというべきである。
以上の事情によれば、本件投稿によって原告に生じた無形損害の額につい
ては、50万円と認めるのが相当である。
5 (2) 逸失利益に係る損害について
原告は、令和4年における原告の新規受注額が令和3年における原告の新
規受注額と比較して減少したなどとして、本件投稿により、125万791
8円の逸失利益に係る損害が生じたと主張する。
しかし、原告の新規受注額は、原告に発注しようとする者の有無や、発注
10 できる業務の存否などといった外部要因に大きく左右されるものと考えられ
る。また、本件サイトを通じた原告の売上げは、過去に原告に発注した者か
らの受注を含めると、令和2年が208万6318円、令和3年が187万
1696円、令和4年が201万1867円(いずれもシステム利用手数料
込み。甲27ないし29)と、本件投稿の前後で顕著な変化があるとは認め
15 難い。
そうすると、本件全証拠によっても、本件投稿により原告に逸失利益に係
る損害が生じたと認めることはできないというべきである。
6 争点6(本件投稿の削除の必要性)について
前記1のとおり、被告がした本件投稿は、不競法2条1項21号所定の不正
20 競争に当たり、これにより原告の営業上の利益が侵害されたと認められる。
したがって、原告は、被告に対し、不競法3条1項に基づく差止請求として、
本件投稿の削除を求めることができる。
第4 結論
以上によれば、原告の請求は、不競法2条1項21号所定の不正競争を理由
25 とする同法4条に基づく損害金50万円及び遅延損害金の支払請求並びに同法
3条1項に基づく本件投稿の削除請求の限度で理由があるからこれを認容する
こととし、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官
間 明 宏 充
裁判官
バ ヒ ス バ ラ ン 薫
(別紙)
投稿目録
閲覧用URL:(省略)
投稿日時: 令和4年4月27日
投稿内容:
こちらの質問には明確に答えず、何回もラリーが続く。
弊社の別の担当者からの質問には、「どんな権限の方」と言われ「システム担当者」
と返答すると「なんで答える必要あるの?」と。結局、回答はもらえず。
XD でモックを作成したのに、違うものが出来上がり、XD に合わせるには別料金が
必要ですと。
それが明らかに金額が高く、引くに引けない状況で、この高額見積もりは、守銭
奴ビジネスとしては正解なのかも知れないが、人としてはどうなのかと思いました。
最終、ゴミを納品され、捨てました。いい勉強になりました。
以上

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

特許事務所の求人知財の求人一覧

青山学院大学

神奈川県相模原市中央区淵野辺

今週の知財セミナー (9月16日~9月22日)

来週の知財セミナー (9月23日~9月29日)

9月24日(火) -

韓国の知的財産概況

9月25日(水) - 東京 港

はじめての意匠

9月27日(金) - 神奈川 川崎市

図書館で学ぶ知的財産講座 第1回

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

中井国際特許事務所

大阪府大阪市中央区北浜東1-12 千歳第一ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

福井特許事務所

〒166-0003 東京都杉並区高円寺南2-50-2 YSビル3F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

リード国際特許事務所

〒102-0072  東京都千代田区飯田橋4-1-1 飯田橋ISビル8階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング