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令和5(ネ)10046発信者情報開示請求控訴事件

判決文PDF

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年1月18日
事件種別 民事
当事者 被控訴人GoogleLLC
法令 著作権
著作権法41条13回
著作権法32条1回
著作権法113条1回
民事訴訟法157条1項1回
キーワード 侵害21回
損害賠償2回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、原判決別紙発信者情報目録記載の各情報を開示
1 本件は、原判決別紙著作物目録掲載の写真(以下「本件写真」という。)の著
2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記
3のとおり当審における当事者の主な補充主張を付加するほかは、原判決の「事
3 当審における当事者の主な補充主張
7)との記載があるとおり、被控訴人のシステムから意図せず本件写真が
32条の引用利用も成立しないから、このような利用態様は、控訴人にと
57以下)は、そもそも原審において提出することが可能であった証拠で
6)。ネット広告は、ウェブサイトの検索傾向により、ユーザーごとに表示
1 当裁判所も控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、
2 当審における当事者の主な補充主張に対する判断
26)。さらに、インターネット広告は、ウェブサイトの検索傾向により、ユ
3 控訴人はその他縷々主張するが、いずれも前記認定及び判断を左右しない。
4 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求はい
事件の概要 1 本件は、原判決別紙著作物目録掲載の写真(以下「本件写真」という。)の著 作権を有する控訴人が、同別紙発信者目録記載の各発信者(以下、同目録記載 の発信者1を「本件発信者1」と、同目録記載の発信者2を「本件発信者2」 と、それぞれいい、本件発信者1と本件発信者2を、併せて「本件発信者ら」と いう。)が本件写真をそれぞれウェブサイト(以下「本件各ウェブサイト」とい う。)に投稿(以下「本件各投稿」という。)したことによって、控訴人の本件写5 真に係る複製権、送信可能化権及び自動公衆送信権が侵害されたと主張して、 本件各ウェブサイトを管理する被控訴人に対し、特定電気通信役務提供者の損 害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任 制限法」という。)5条1項に基づき、原判決別紙発信者情報目録記載の各情報 の開示を求める事案である。10 原審における争点整理の結果、本件の権利侵害の明白性に係る争点は、著作 権法41条(時事の事件の報道のための利用)の適用の可否のみであるとされ た(令和5年2月6日に行われた原審第6回口頭弁論調書。)。 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、これを不服とする控訴人が控

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判決文

令和6年1月18日判決言渡
令和5年(ネ)第10046号 発信者情報開示請求控訴事件(原審 東京地方裁
判所 令和4年(ワ)第2237号)
口頭弁論終結の日 令和5年11月6日
5 判 決
控 訴 人 X
同訴訟代理人弁護士 齋 藤 理 央
被 控 訴 人 Google LLC
日本における代表者 グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社
同訴訟代理人弁護士 赤 川 圭
15 同 山 内 真 之
同 早 川 晃 司
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
20 事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、原判決別紙発信者情報目録記載の各情報を開示
せよ。
25 第2 事案の概要
1 本件は、原判決別紙著作物目録掲載の写真(以下「本件写真」という。)の著
作権を有する控訴人が、同別紙発信者目録記載の各発信者(以下、同目録記載
の発信者1を「本件発信者1」と、同目録記載の発信者2を「本件発信者2」
と、それぞれいい、本件発信者1と本件発信者2を、併せて「本件発信者ら」と
いう。)が本件写真をそれぞれウェブサイト(以下「本件各ウェブサイト」とい
5 う。)に投稿(以下「本件各投稿」という。)したことによって、控訴人の本件写
真に係る複製権、送信可能化権及び自動公衆送信権が侵害されたと主張して、
本件各ウェブサイトを管理する被控訴人に対し、特定電気通信役務提供者の損
害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任
制限法」という。)5条1項に基づき、原判決別紙発信者情報目録記載の各情報
10 の開示を求める事案である。
原審における争点整理の結果、本件の権利侵害の明白性に係る争点は、著作
権法41条(時事の事件の報道のための利用)の適用の可否のみであるとされ
た(令和5年2月6日に行われた原審第6回口頭弁論調書。。

原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、これを不服とする控訴人が控
15 訴した。
2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記
3のとおり当審における当事者の主な補充主張を付加するほかは、原判決の「事
実及び理由」(以下「事実及び理由」との記載を省略する。)の第2の2、3及
び第3(原判決2頁12行目から5頁9行目まで)に記載のとおりであるから、
20 これを引用する(なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番
を含むものとする。。

⑴ 原判決3頁4行目の「提起した」の次に「本件写真の著作権侵害幇助に係
る」を、同頁5行目の「ブログ記事」の次に「(甲55。以下「控訴人ブログ」
という。」をそれぞれ加え、同頁11行目の「別件訴訟の判決内容」を「別

25 件訴訟の判決(以下「別件訴訟判決」という。)の内容」と、同頁11行目か
ら同頁12行目及び同頁13行目の各「当該判決内容」をいずれも「別件訴
訟判決の内容」とそれぞれ改める。
⑵ 同4頁3行目の「投稿(」の次に「甲17。」を加え、同頁9行目の「当該
判決」を「別件訴訟判決」と改める。
⑶ 同5頁3行目の「情報は、」の次に「プロバイダ責任制限法5条1項に定め
5 る」を加える。
3 当審における当事者の主な補充主張
〔控訴人の主張〕
⑴ 本件投稿1の著作権法41条の適用について
ア 原審でも主張したとおり、本件元投稿は、控訴人ブログを受けたもので
10 あるところ、本件元投稿も、これを受けた本件投稿1も、
「まとめサイト」
でのインラインリンクに著作権侵害幇助の判決についての概要や要点を
報道しようとするものではなく、控訴人ブログによる報道記事の存在とU
RLを紹介しようとするものであるから、著作権法41条に定める「時事
の事件の報道」にはあたらない。
15 すなわち、本件元投稿は、簡単な「インラインリンクは著作権の幇助侵
害にあたるという判決が出たそうです」というコメントと共に、控訴人の
元記事へのURLを貼付(いわゆるハイパーリンク)するものである。こ
のハイパーリンクによって、本件元投稿は読者を控訴人ブログに誘導して
いることから、控訴人ブログへのリンクによる誘導を目的とする投稿とい
20 うことができ、本件元投稿の趣旨は、
「時事の事件の報道」というより、時
事の事件を報道する「控訴人のブログ記事の存在の公衆への紹介、伝達」
である。そして、本件元投稿を受けた本件投稿1も、同様に「インライン
リンクは著作権の幇助侵害にあたるという判決」の内容の報道や紹介では
なく、判決の内容、意味を報道する控訴人のブログの存在とそのファイル
25 の場所の紹介を趣旨とするものである。
イ 本件元投稿は本件写真を利用することを意図するものではなく、 怖いか

らGoogle先生が勝手に出しているサムネイル消しておこう」(甲1
7)との記載があるとおり、被控訴人のシステムから意図せず本件写真が
添付されてしまい、慌てて削除したという経緯がある。このように、UR
L及びURL紹介の趣旨さえ示せば、本件元投稿及びこれを受けた本件投
5 稿1の目的は達せられるのであって、本件写真に係る事件の内容や詳細を
報道する趣旨でない本件投稿1において、事件を構成する本件写真を添付
する必要はない。加えて、本件投稿1との分量比からしても、主従関係、
明瞭区分性は認められず、本件投稿1の本件写真の利用態様には著作権法
32条の引用利用も成立しないから、このような利用態様は、控訴人にと
10 って不利益が大きい。
職業写真家である控訴人においては、仮に当該判決を報道する場合、利
用料を払って本件写真を利用してもらうという商業的な意図もあって控
訴人ブログを掲載している。そのような本件写真を、本件投稿1のように
アイキャッチ的な利用として認めてしまえば、本来的な商業利用の市場と
15 正面から衝突し、控訴人に不利益というべきである。
本件写真について、本件投稿1に利用することを著作権法41条で適法
化できる利益状態にないから、同条は適用されるべきではない。
⑵ 本件投稿2の著作権法41条の適用について
ア 本件投稿2は、本件発信者2によるスパム記事の投稿(甲5等)に本件
20 写真を利用するものである。本件投稿2に係るブログは、本件投稿2のよ
うな自動生成記事を大量に投稿している(甲58)。本件投稿2は、同ブロ
グが自動で生成した11ページからなる記事の、3ページ目の記事である。
ページ毎の無断掲載写真(画像検索サイトなどから自動収集したと考えら
れる画像及び文章)は約10点であり、それが11ページにわたっている
25 ことから、約100点以上の無断掲載画像が一つの記事を形成しているも
のと思料される。
このようなスパムブログの狙いは、自動生成した記事から検索流入した
ユーザーをアダルトサイトやオンラインカジノサイト等に誘導してアフ
ィリエイト収入を得ること、及び悪意あるサイトに誘導してユーザーのク
ライアントコンピュータをスパイウェア、マルウェアやウイルスに感染さ
5 せたり個人情報やクレジットカード情報を取得する点にあると解される。
このように、スパムブログの記事たる本件投稿2は、自動で生成された何
らの意図や情報伝達の目的を持たない投稿である。すなわち、ページの内
容としては明確な意図や伝達したい事実などはなく、検索流入により悪意
あるサイトや広告に誘導してアフィリエイト収入を得られればよいので
10 あり、挿入されている画像なども記事の自動生成ツールで機械的に選別さ
れたものでしかない。
上記のとおり、本件投稿2は自動生成ツールで生成されたスパム記事で
あり、機械的に取集された文章、画像の羅列に過ぎず、発信者に何らの事
実の伝達の意図はないから、時事の事件の報道には当たらず、本件投稿2
15 における本件写真の利用態様は、リダイレクトによるアダルト広告へのリ
ンクやフェイクアラートによる悪意あるウェブサイトへの遷移を企図し
たものであるから、本件写真の掲載は正当な利用の範囲とはいえない。
イ 本件投稿2に係るブログは、フェイクアラートをポップアップ表示して
いるところ(甲79)、フェイクアラートは、ウェブサイトに表示されるポ
20 ップアップ式の警告であり、その狙いは悪意のあるウェブサイトに飛ばし
たり、怪しいアプリをインストールさせる点にあるとされる(甲66)。同
ブログは、ブラウザのJAVASCRIPTが作用しない状態にしないと、
勝手にフェイクアラートサイト(甲62)などに遷移する状態となり閲覧
さえままならなかった(甲79)。同ブログは、閲覧すると同時にフェイク
25 アラートサイトに飛ばされるなど、極めて怪しく、ウイルス感染の恐れも
疑われるようなサイトであった(甲79)。
以上のとおり、本件投稿2に係るブログは、自動生成ツールで生成され
たスパム記事であり、本件投稿2は報道としての価値を有さない悪意ある
サイトなどへの誘導を企図した有害なものである。そのような本件投稿2
に本件写真を利用することは、控訴人に与える悪影響が大きく、控訴人の
5 著作権を不当に侵害するものであり、明白に違法である。
リダイレクトによるアダルト広告へのリンクや、フェイクアラートによ
る悪意あるウェブサイトへの遷移を企図したウェブサイトに控訴人の本
件写真を掲載することは、控訴人の名誉声望を傷つけ(著作権法113条
違反) 控訴人の写真のブランド価値を極めて深刻に侵襲する。
、 このような
10 本件投稿2に著作権法41条の適用はない。
⑶ AdSenseアカウントの開示について
本件投稿2に係るAdSenseアカウントは、発信者の氏名、住所など
として開示の対象となるというべきである。この点につき、
「侵害情報の発信
者情報」を、侵害情報が投稿されたログイン時のIPアドレスから把握され
15 る発信者情報に限定して解釈するのではなく、当該侵害情報を送信した者の
情報であると認められるのであれば、侵害情報を送信した後のログイン時の
IPアドレスから把握される発信者情報や、侵害情報の送信の直前のログイ
ンよりも前のログイン時のIPアドレスから把握される発信者情報も、プロ
バイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たり
20 得ると判示する下級審裁判例の存在に照らしても、控訴人の主張は認められ
るべきである。
本件においてAdSenseアカウントを付与されて本件投稿2に係るブ
ログを収益化した者は、たとえ本件投稿2の発信者ではないとしても、ブロ
グの収益化に力を貸し、侵害情報の送信に動機付けを与え、あるいは収益の
25 分配などを行っていたおそれさえ高いのであり、その情報の開示を甘受すべ
き立場にあるといえる。また、本件においては、グーグルアカウントに住所
が登録されておらず、氏名も実際の氏名か判然としないのであるから、Ad
Senseアカウントを開示しなければ発信者の特定に至らないのであり、
当該情報を開示すべき要請も極めて強い。
以上から、本件投稿2に係るAdSenseアカウントに係る氏名、住所
5 などは開示の対象となるというべきである。
⑷ 網羅的アクセスログの開示について
本件で控訴人が開示を請求する、原判決別紙発信者情報目録第1ログイン
情報1記載の、最新アクセスログを含めた網羅的アクセスログは、全て侵害
に係る送信と「相当の関連性」
(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制
10 限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則5条柱書)を有する通信に該
当し、プロバイダ責任制限法5条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」
に該当し、開示の対象となる。
本件では、被控訴人のようなコンテンツプロバイダに対する開示請求は、
アクセスログの内容について不明である中で、どの範囲のアクセスログを開
15 示できるかが問題となる。プロバイダ責任制限法においては、アクセスプロ
バイダに対する開示請求とコンテンツプロバイダに対する開示請求の場面の
違いを意識できていない点に問題があり、被害者の権利の救済を軽視し、バ
ランスを欠いていることから、前記のとおりの「相当の関連性」に関する適
正な法解釈によって、被害者の保護が図られるべきである。
20 〔被控訴人の主張〕
⑴ 本件投稿1の著作権法41条の適用について
本件投稿1は報道についての著作権法41条の要件を満たしており、控訴
人の主張は独自の解釈である。甲17に「怖いからGoogle先生が勝手
に出しているサムネイル消しておこう」との記載があることは認めるが、か
25 かる記載によれば、本件発信者1に著作権侵害の故意・過失がなかったこと
は明らかである。また、控訴人は、本件で問題となる著作権法41条の議論
と、同法32条の議論を混同している。
⑵ 本件投稿2の著作権法41条の適用について
ア 本件投稿2についても報道についての著作権法41条の要件を満たして
おり、控訴人の主張は独自の解釈である。本件投稿2に係るブログが自動
5 的に記事を生成していることについては控訴人の主張立証によっても明
らかとはいえないが、仮に自動的に記事を作成するものであったとしても、
何らかの選定基準により「発信者情報裁判Line上告棄却 敗訴確定ニ
ュース・・・」という記載を選択しているのであれば、報道目的は十分に
窺われる。
10 イ 本件投稿2に係るブログが、控訴人の主張するようなスパムブログであ
ることが証拠上明らかであるとはいえない。
これに係る証拠として控訴人が当審において新たに提出した各証拠(甲
57以下)は、そもそも原審において提出することが可能であった証拠で
あり、控訴人の主張は後付けの主張であることが明らかである。控訴人に
15 よるこれら証拠の提出時点においては、本件投稿2に係るブログは既に削
除されて閲覧できない状態であり、控訴人の主張内容を正確に検証するこ
とは不可能である。
実際、被控訴人代理人において、本件投稿2に係るブログを表示した際
には、控訴人の提出した甲5と同様に、フェイクアラートが表示されたり、
20 別サイトへとリダイレクトされることはなかった(乙25)。
また、本件投稿2に係るブログに限らず、ブログにはネット広告が設定
されることがあり、かかるネット広告にはフェイクアラートのプログラム
が仕込まれることがあるが、そのようなネット広告には広告が表示される
ウェブサイトが意図的に表示しているものではないことも少なくない。そ
25 のため、ウェブサイトの作成者には何ら表示の意図がなくても、ネット広
告のスペースを設置しただけで、投稿者の意図によらずに、ウェブサイト
の閲覧者に対してフェイクアラートが表示されてしまう場合もある(乙2
6)。ネット広告は、ウェブサイトの検索傾向により、ユーザーごとに表示
される広告が異なる仕組みになっている(乙27)。したがって、控訴人が
主張するように仮に本件投稿2に係るブログを閲覧した際にフェイクア
5 ラートが表示され、それをクリックした場合に悪意のあるサイトに飛ばさ
れたことがあるとしても、当該フェイクアラートは本件投稿2に係るブロ
グの作成者によって設置されたものとはいえず、かかる事情のみから本件
投稿2に係るブログ自体がスパムブログであるとか、報道の要件を満たさ
ないものであるとすることはできない。
10 ⑶ 控訴人のその他の主張について
原審の第6回口頭弁論期日において、侵害論に係る争点は著作権法41条
のみであって他に主張立証がないことが確認され、AdSenseアカウン
トについても主張立証が尽くされたことを確認した上で口頭弁論が終結され
た。したがって、これら以外についての控訴人の主張はいずれも時機に後れ
15 た攻撃防御方法に当たるものとして却下されるべきである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、
次のとおり補正し、後記2のとおり、当審における当事者の主な補充主張に対
する判断を付加するほかは、原判決第4の1(原判決5頁11行目から8頁3
20 行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決5頁17行目の「上記にいう著作権侵害幇助の判決(以下「別件訴
訟判決」という。」 「上記にいう著作権侵害幇助についての別件訴訟判決」
)を
と、同頁24行目の「にいう事件を構成する著作物」を「にいう『当該事件
を構成』する著作物(以下「事件を構成する著作物」という。」と改める。

25 ⑵ 同6頁15行目ないし16行目の「時事の事件の主題となった著作物であ
る」を「時事の事件の主題となった、事件を構成する著作物である」と、同
頁25行目、同26行目、同7頁2行目及び同頁3行目の各「判決」をいず
れも「決定」と改める。
⑶ 同7頁4行目の「侵害の有無」を「著作権侵害の成否」と、同頁19行目
の「判決」を「決定」と改め、同頁4行目から5行目の「当該事件の主題と
5 なった著作物である」及び同頁19行目から同頁20行目の「時事の事件の
主題となった著作物である」をいずれも「時事の事件の主題となった、事件
を構成する著作物である」と改める。
2 当審における当事者の主な補充主張に対する判断
⑴ 控訴人の前記第2の3⑴の主張について
10 控訴人は、本件投稿1は、報道目的はなく、著作権法41条に該当しない
旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第4の1⑴のとおり、本件写真は、別
件訴訟判決という時事の事件の主題となった、事件を構成する著作物であり、
本件投稿1に係る本件写真の掲載は、社会的な意義のある事件を客観的かつ
15 正確に伝えるものとして、著作権法41条にいう時事の事件の報道に係る著
作物の掲載として適法であるものと認められる。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑵ 控訴人の前記第2の3⑵の主張について
控訴人は、本件投稿2は自動生成に係るもので、違法なスパムブログにユ
20 ーザーを誘導するものであり、著作権法41条にいう報道には当たらない旨
を主張する。
しかし、控訴人が本件投稿2に係る証拠として提出した甲5において、そ
もそも控訴人が主張するようなフェイクアラート等の存在を認めることがで
きない。被控訴人代理人も、控訴人代理人から提供を受けた訴状記載の正確
25 なURLから本件投稿2に係るブログを閲覧したが、問題なく当該ブログを
閲覧することができ、一定時間が経過してもリダイレクトされることはなく、
フェイクアラートが表示されることもないまま、問題なく前記甲5と同様の
画面が表示され続けていたとしている(乙25)。
加えて、ブログにおけるインターネット広告には、広告が表示されるウェ
ブサイトが意図的に表示しているものではないことも少なくなく、ウェブサ
5 イトの作成者には何ら表示の意図がなくても、インターネット広告のスペー
スを設置しただけで、投稿者の意図によらずに、ウェブサイトの閲覧者に対
してフェイクアラートが表示されてしまう場合もあることが認められる(乙
26)。さらに、インターネット広告は、ウェブサイトの検索傾向により、ユ
ーザーごとに表示される広告が異なる仕組みになっていることも認められる
10 (乙27)。
そうすると、控訴人が、当審において本件投稿2に係るブログがスパムブ
ログであることに係る具体的な証拠として提出した甲57、甲58、本件投
稿2に係るブログのフェイクアラートとする甲59ないし62等の存在を考
慮しても、本件投稿2に係るブログが控訴人の主張するスパムブログである
15 と直ちに認めることはできない上に、本件投稿2に係るブログに控訴人の指
摘するようなフェイクアラート等が表示されることがあったとしても、前記
認定の事実に照らせば、本件投稿2自体が、ユーザーをスパムブログに誘導
するものであると直ちに認めることもできないというべきである。
また、控訴人は、本件投稿2に係るブログにつき、
「諸般の状況から」本件
20 発信者2が「記事を自ら書いているのではなく、自動的に生成していること
は明白と思料されます」とし、スパムブログが世に多く存在し、本件投稿2
に係るブログはそれにつき指摘される特徴が当てはまるから、本件投稿2に
係るブログが記事を自動生成していることは明らかであるとする(甲79)。
しかし、これらは一般的に自動生成に係るスパムブログが備えるとする特
25 徴を示すものにすぎず、既に述べたとおり、本件投稿2に係るブログがスパ
ムブログであると直ちにいうことはできず、本件投稿2が自動生成に係るも
のであることを直ちに示すものともいえないというべきである。
そうすると、これら控訴人の主張は、補正の上で引用した原判決第4の1
⑵のとおりの本件投稿2に係る本件写真の掲載の適法性について、その認定
及び判断を左右するものではない。
5 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑶ 被控訴人の前記第2の3⑶の主張について
被控訴人は、控訴人による前記第2の3の⑶、⑷及びその他主張は時機に
後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張する。
しかし、控訴人の前記第2の3⑶、⑷及びその他主張等の提出は、当事者
10 双方の主張立証を経て令和5年11月6日に行われた当審第2回口頭弁論期
日で弁論を終結するに至った本件訴訟の経過に照らすと、直ちに本件訴訟の
完結を遅延させるものということはできない。
したがって、上記被控訴人の主張する、民事訴訟法157条1項に基づく
時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てには理由がないから、上記申立て
15 は却下することとする。
⑷ 控訴人の前記第2の3⑶及び⑷の主張について
控訴人は、AdSenseアカウント(本件投稿2に関し)及び網羅的ア
クセスログを開示すべきである旨を主張する。
しかし、既に述べたとおり、本件各投稿はいずれも著作権法41条により
20 適法であるから、被控訴人に対し、前記情報の開示を命ずることはできない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
3 控訴人はその他縷々主張するが、いずれも前記認定及び判断を左右しない。
4 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の請求はい
ずれも棄却すべきであって、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴
25 は理由がない。
よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
5 裁判長裁判官
東 海 林 保
10 裁判官
今 井 弘 晃
15 裁判官
水 野 正 則

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