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令和5(ネ)10083特許権侵害差止請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年2月26日
事件種別 民事
法令 特許権
特許法100条1項1回
キーワード 侵害5回
特許権4回
差止4回
実施1回
主文 1 本件控訴を棄却する。20
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 控訴人の請求 (1) 被控訴人は、被控訴人製品を製造し、販売し、貸し渡し又は販売若しくは 貸渡しのための展示その他の販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 (2) 被控訴人は、被控訴人製品及びその半製品を廃棄せよ。 【請求の法的根拠】15 (1)について 特許法100条1項に基づく差止請求 (2)について 同条2項に基づく廃棄請求 2 原審の判断及び控訴の提起20 原審は、被控訴人製品は均等論の第1要件を満たすとはいえず、本件発明と 均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできないとして(文言 侵害が成立しないことについて争いはない。)、控訴人の上記1の請求をいず れも棄却する判決をしたところ、控訴人がこれを不服として以下のとおり控訴 した。25

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判決文

令和6年2月26日判決言渡

令和5年(ネ)第10083号 特許権侵害差止請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第33996号)

口頭弁論終結日 令和6年1月17日

判 決

控訴人(第1審原告)

株式会社ワールドウイングエンタープライズ

同訴訟代理人弁護士 渡 邉 遼 太 郎

同訴訟復代理人弁理士 津 田 恵

同補佐人弁理士 小 牧 佳 緒 里

同 鬼 頭 優 希

被控訴人(第1審被告) 4D-Stretch株式会社

同訴訟代理人弁護士 甲 本 晃 啓

同 大 江 弘 之

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

【略語】本判決で用いる主な略語は、以下のとおりである。(略語) (意味)・本件特許 :控訴人を特許権者とする特許第4063821号・本件発明 :本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明・本件明細書 :本件特許に係る明細書(甲4)・被控訴人製品 :被控訴人が製造、販売する「トータルショルダージョイント」との名称のトレーニングマシン

5 第1 事案の要旨本件は、発明の名称を「トレーニング器具」とする本件特許(特許第4063821号、請求項の数3)の特許権者である控訴人が、被控訴人による被控訴人製品の製造、販売等が特許権の侵害に当たると主張して、被控訴人に対し、その差止め等を求める事案である。

第2 当事者の求めた裁判

1 控訴人の請求

(1) 被控訴人は、被控訴人製品を製造し、販売し、貸し渡し又は販売若しくは貸渡しのための展示その他の販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。

(2) 被控訴人は、被控訴人製品及びその半製品を廃棄せよ。【請求の法的根拠】

(1)について特許法100条1項に基づく差止請求

(2)について同条2項に基づく廃棄請求2 原審の判断及び控訴の提起原審は、被控訴人製品は均等論の第1要件を満たすとはいえず、本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできないとして(文言侵害が成立しないことについて争いはない。)、控訴人の上記1の請求をいずれも棄却する判決をしたところ、控訴人がこれを不服として以下のとおり控訴した。【控訴の趣旨】

(1) 原判決を取り消す。

(2) 上記1と同旨

第3 前提事実等

1 前提事実

5 前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の1(2頁~)に記載のとおりで

あるから、これを引用する。ただし、同第2の1(3)の被控訴人製品の構成の分説中、構成fの「嵌合」及び「一端側」に争いのある構成であることを示す下線を付しているのは誤りであり、構成dの「一端側」及び「嵌合」が争いのある構成であるから、そのとおり訂正する。

2 本件発明の概要

(1) 構成要件の分説

A 着座部と、B 負荷の大きさが調整自在の負荷付与部と、C 前記着座部がその中央位置となるように所定の間隔をあけて鉛直方向に延びる2本の案内支柱と、D 該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、E 該2つの昇降揺動部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部と、F 一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、G 前記昇降揺動部材内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部と、H を具備したトレーニング器具。

5 (2) 本件発明の技術的特徴

本件明細書の記載は原判決「事実及び理由」第4の1(1)(14頁~)のとおりであり、この記載事項によれば、本件発明につき、次のような開示があることが認められる。ア 本件発明は、肩部や背部の筋肉等に対してトレーニングを行う際に用いるトレーニング器具に関する(【0001】)。イ 従来のプルダウンと呼ばれるトレーニング器具を用い、肩部や背部の筋肉等に対して最後まで負荷を付与し、筋肉の強い緊張(硬化)を伴いながら筋肉を肥大化させるトレーニング(終動負荷トレーニング)により獲得した筋肉は、柔軟性や弾力性に劣るため、実際の競技等に必要な身体動作をロスさせる要因となっている上、身体動作に違和感を生じたり、筋肉痛や疲労など身体への負担が大きくなる問題があり、さらに、筋肉の硬化が故障の大きな原因となるという問題があった(【0002】、【0003】)。ウ 本件発明は、上記イの問題を解決するため、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供することを目的とし、このような目的を達成するために、構成要件A~Gの構成を具備したことを特徴としている(【0004】、【0005】)。エ 本件発明のトレーニング器具によれば、弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、更に共縮が防止されることにより、筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができる(【0009】)。

第4 争点及び当事者の主張

1 争点

(1) 構成要件Dの充足性(争点1)

5 (2) 均等侵害の成否(争点2)

(3) 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点3)

2 争点に関する当事者の主張

上記争点に関する当事者の主張は、後記3のとおり当審における控訴人の補充的主張を加えるほか、原判決「事実及び理由」第3(5頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。

3 当審における控訴人の補充的主張(争点2〔均等侵害の成否〕関係)

被控訴人製品は、均等論の第1要件(特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分が特許発明の本質的部分ではないこと)を満たすものであり、構成要件Gの不充足(相違点B)をもって第1要件を満たさないとした原判決は誤りである。

(1) 構成要件Gは本件発明の本質的部分ではないこと

ア 本件発明の本質的部分は、原判決(23頁)判示のとおり、①把持部を水平方向に軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構成を採用することにより、使用者が、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることができ、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができることを可能にするとともに、②両腕を屈曲させて把持部を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力が減少する構成を採用することにより、筋の「共縮」を防ぐことを可能にし、もって、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供し、従来技術の課題を解決する点にある。イ 本件発明は、昇降揺動部材と引張部材の接続点(力点)に生じる力により案内支柱(支点)を軸として内側回転方向に復元力が働き(作用点)、

5 昇降揺動部材を回転させて開く際に回転規制力が生じる(換言すれば、

昇降揺動部材を外側に回転させることにより負荷付与部の負荷が引き上げられる)という「てこの原理」の構成を有している。また、被控訴人製品も、ウェイトに連結されたワイヤーの他端側が昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも一端側に連結されており ( 構 成f)、この「てこの原理」の構成を有している。ウ 本件発明は、一見すると、上記ア①は構成要件Gにより、②は「てこの原理」の構成により実現するかのようにみえる。しかし、被控訴人製品においては、ハンドル(把持部)の回転はフリーであるが、「てこの原理」の構成により、昇降揺動部材の回転が負荷を引き上げ、「各把持部を回転させることにより、負荷付与部の負荷の一部に抗することになり、両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する」ことが可能である。そして、人の関節の構造上、上腕を外側に捻ろうとすると昇降揺動部材も外側に回旋し、かつ上記ア②の両腕を外側に開くことへの意識も高まっていることから、把持部の回転と昇降揺動部材の外側への回転は同時に起こり得るものである。すなわち、上記ア①、②は、いずれも「てこの原理」の構成のみによって実現可能である。エ そうすると、本件発明の本質的部分は、「各筋肉群が『弛緩-伸張-短縮』のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができることを可能にするとともに、両腕を屈曲させて把持部を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力が減少する構成」である。本件発明を従来技術と比較した場合の貢献度が大きいものであることからも(本質的部分が上記ア①、②のとおり2つあり、従来技術とは相当異なる。)、本質的部分を上記のように抽象化して認定すべきである。そして、被控訴人製品は、上記の課題を実現する「てこの原理」の構

5 成を有しており、本件発明と同一の原理に属する、あるいは本件発明の

構成の技術的思想と共通の思想を備えるものであるから、相違点Bは本件発明の本質的部分ではない。

(2) 被控訴人製品の構成について

ア 被控訴人製品は、以下の構成g又は構成g′を含む構成を有している(別紙「被控訴人製品のクランク機構のイメージ図」参照)。g ウェイトによりハンドルを回転させながら昇降揺動部材を揺動可能で、この揺動運動を伝達する回転伝達部と、回転伝達部により伝達された回転運動をワイヤーの上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部であって、回転伝達部は2つの車輪を有し、当該2つの車輪のうちの1つの車輪が案内支柱と連結され、クランク機構部は1つの車輪を有し、当該1つの車輪の一端が案内支柱と連結され、他端がワイヤーに連結されている、負荷伝達部g′前記昇降揺動部材と前記引張部材の他端部と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部は、外向き内向きのいずれにも回転でき、また、前記昇降揺動部材の回転運動に伝達する回転伝達部と(把持部と昇降揺動部の連結機構及び3つの車輪)、前記回転運動により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部(突起部と上方の円盤)と、を具備する負荷伝達部イ したがって、本件発明と被控訴人製品との相違点B(被控訴人製品は構成要件Gの構成を備えない)は、正しくは「被控訴人製品の負荷伝達部はクランク機構部が引張部材と嵌合する摺動軸を備えず、車輪がワイヤーに接続されることに置き換えられていること」とすべきである。そして、このような相違点があったとしても、被控訴人製品は把持部の水平方向の回転運動を引張部材の上下方向の運動に変換することが可能

5 であるから、当該相違点は本質的部分とはならない。

第5 当裁判所の判断

1 当裁判所も、被控訴人製品は均等論の第1要件を満たすものではなく、本件

発明の技術的範囲に属するものとは認められないと判断する。その理由は、後記2のとおり当審における控訴人の補充的主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第4の2(21頁~24頁)のとおりであるから、これを引用する。ただし、当該引用部分の後ろから2番目の段落の「被告製品が構成要件Gに相当する構成を備えていないこと(相違点B)に争いがなく」(24頁11行目~12行目)を「被控訴人製品は構成要件Gに相当する構成を備えていないと認められ」に改める。

2 当審における控訴人の補充的主張に対する判断

(1) 構成要件Gは本件発明の本質的部分ではないとの主張について

ア 控訴人は、本件発明の作用効果のうち「使用者が『弛緩』と『伸張』の動作を加えながら適切な『短縮』のタイミングを出現させることができ、各筋肉群が『弛緩-伸張-短縮』のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができること」については、構成要件Gの「把持部を水平方向に軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上 げる構成」がなくとも、「昇降揺動部材を外側に広げる動作に対し負荷付与部による(反対方向の)回転付勢力が働く構成」すなわち「昇降揺動部材を外側に開く動作により負荷付与部の負荷が引き上げられる構成」(控訴人主張の「てこの原理」の構成)のみにより奏することができるから、構成要件Gは本件発明の本質的部分ではない旨主張する。イ しかし、本件明細書には、把持部を水平方向に軸回転させる動作(以下「軸回転動作」という。)及び昇降揺動部材を外側に広げる動作(以下「外広げ動作」という。)について、以下の記載がある(波線は着目すべき点として当裁判所が付したものである。)。

5 「 請求項1に記載のトレーニング器具によれば、着座部に着座した使用

者が上方に伸ばした手で各把持部をそれぞれ把持して上腕を外側に捻ると、使用者の肩や腕が「弛緩」してリラックスした状態になるとともに、引張部材を介した負荷付与部の負荷によって把持部が上方向に付勢されているので、肩甲帯付近等の筋肉が「伸張」される。次に、使用者は、適度に「伸張」された肩甲帯付近等の筋肉が「反射」を引き起こすように、さらに上腕を外側に捻る「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、負荷付与部の負荷に抗して両腕を屈曲し筋肉を「短縮」させて把持部を引き下げる。上腕を外側に捻り各把持部を回転することにより、負荷付与部の負荷の一部に抗することになり、両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する。このように、両腕を屈曲して把持部を引き下げて筋肉を「短縮」させるとき、さらに上腕を外側に捻ることによって、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることが可能となり、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。又、昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置より他端側に引張部材の他端が連結されているので、引張部材を介した負荷付与部の負荷によって昇降揺動部は回転付勢される。使用者は、この回転付勢力に抗して、各昇降揺動部がそれぞれ漸次外側を向くように両腕を外側に広げながら、両腕を屈曲して把持部を引き下げる。このとき、両腕を屈曲させて把持部を引き下げるに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力となる回転付勢力が減少する。そのため、使用者は両腕を屈曲させて把持部を引き下げるとき、両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させることにより、把持部を引き下げながら漸次両腕を外側に広げる動作を滑らかに行うことができるので、筋の共縮を防ぐことが可能となる。以上により、弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、さらに共縮が防止されることによって、神経と

5 筋肉の機能や協調性を高め、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、

筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができる。又、強制的な心拍数や血圧の上昇が少なく有酸素的に代謝を促進させることによって、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防や靭帯損傷、骨折等の治癒促進に有効であるとともに、神経・筋肉・関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができる。また、請求項1に記載のトレーニング器具によれば、把持部の軸を中心とする回転運動が回転伝達部とクランク機構部とを介して、引張部材の他端側と連結している摺動軸に上下動として伝達されるので、負荷付与部により把持部の軸を中心とする回転に負荷を与えることができる。」(【発明の効果】【0009】)ウ 本件明細書の上記記載によれば、本件発明のトレーニング器具において、把持部の軸回転動作は、肩と腕の「弛緩」、肩甲帯付近等の筋肉の「伸張」に加え、軸回転動作に負荷を与える構成要件Gの構成による両腕を引き下げる初動作(両腕の筋肉の「短縮」)における負荷の減少という効果を奏し、これにより「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることが可能となり、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができるものと認められる。これ に対し 、昇降揺動部材の 外広げ動作 について は、「筋の 共縮 を防ぐ」ことは説明されているが、「各筋肉群が『弛緩-伸張-短縮』のタイミングを得て連動性よく動作を行うこと」につながる効果の説明はなく、両腕を引き下げる「初動作」における負荷の減少についての説明もない。むしろ、外広げ動作は「両腕を屈曲させて把持部を引き下げるに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力となる回転付勢力が減少」し、「把持部を引き下げながら漸次両腕を外側に広げる動作を滑らかに

5 行うことができる」ものとして説明されている。

本件発明の実施態様を説明する【0025】、【0027】、本件発明に係るトレーニング器具を用いたトレーニング方法を説明する【0030】~【0032】の記載内容も、上記【0009】と同様であり、【0025】では「ところで、前記のように、引張部材80は溝付きローラ71によって位置Pを通るように規制されるので、位置Pと摺動軸57との距離が短い場合、例えば、図1に示す初期状態の場合には、昇降揺動部材50はその回転が規制され実質的に回転不可能である。一方、位置Pと摺動軸57との距離が離れている場合、例えば、図2に示すように初期状態より昇降揺動部材50が下方に位置する場合には、昇降揺動部材50が正面方向を向くように回転付勢させる力に抗して、使用者が昇降揺動部材50を所定角度まで回転させることが可能となる。」と記載されており、「両腕を引き下げる初動作」において、昇降揺動部材の外広げ動作は少なくとも著しく困難であることが示されている。エ そうすると、「昇降揺動部材を外側に開く動作により負荷付与部の負荷が引き上げ られる構成」 は、控訴人も 認める 本件発明の本質的部分 の「把持部を水平方向に軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構成」と同じ作用効果を奏するものとは認められないし、「各筋肉群が『弛緩-伸張-短縮』のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができることを可能にする」構成であると認めることもできない。控訴人は、人の関節の構造等の理由から、把持部の軸回転動作は昇降揺動部材の外広げ動作と同時に起こる旨主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はないし、仮にそのような現象が生じ得るとしても、上記の本件明細書の記載に照らすと、負荷付与部の負荷が軸回転動作に与えられている構造と、軸回転動作ではなく外広げ動作に与えられてい

5 る構造とにおいて、同じ作用効果を奏すると認めることはできない。

したがって、「昇降揺動部材を外側に開く動作により負荷付与部の負荷が引き上げられる構成」のみが本件発明の本質的部分であり、把持部の軸回転動作に負荷を与える構成要件Gの構成が本件発明の本質的部分ではないとする控訴人の主張は、採用できない。

(2) 被控訴人製品の構成に関する主張について

控訴人は、被控訴人製品は構成要件Gの構成を一切備えていないのではなく、構成要件Gに対応する構成g又は構成g′(前記第4の3(2)ア)を備えており、このような相違点があるとしても、被控訴人製品は把持部の水平方向の回転運動(軸回転動作)を引張部材の上下方向の運動に変換することが可能であるから、当該相違点は本件発明の本質的部分ではない旨主張する。しかし、控訴人の主張する被控訴人製品の構成は、結局のところ、昇降揺動部材の外開き動作に対してウェイトの負荷が与えられる構成であって、把持部の軸回転動作にウェイトの負荷がかかっている構成とは認められないから、被控訴人製品が本件発明の構成要件Gに対応する構成を有しているとは認められない。なお、被控訴人製品が、構成g′として「前記昇降揺動部材と前記引張部材の他端部と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ」る構成を有すると主張するが、これを裏付ける証拠はない。したがって、控訴人が原審の訴状段階から被控訴人製品が構成要件Gの構成を一切備えないと主張していたことを措くとしても、被控訴人製品が構成要件Gに対応する構成を有していると認めることはできず、控訴人の主張は理由がない。

3 結論

以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

5 知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官宮 坂 昌 利裁判官本 吉 弘 行裁判官頼 晋 一

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