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令和4(ワ)18332特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年1月29日
事件種別 民事
当事者 原告パンテックコーポレーション
被告ASUSJAPAN株式会社
法令 特許権
特許法29条2項1回
特許法100条1項1回
キーワード 特許権14回
ライセンス12回
無効6回
差止5回
侵害5回
実施3回
間接侵害2回
損害賠償1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を輸入し、譲渡し、貸渡し、譲渡若し
2 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和4年7月29日か5
1 本件は、別紙特許権目録記載1及び2の各特許(以下、「本件第1特許」及
2条3項に基づく損害賠償の一部請求として、1000万円及びこれに対する
3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、証拠を
1の伝送電力と前記調整された第2の伝送電力とによって前記アップリ
1-A 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であっ25
1-B 送受信ポイントから、それぞれが510とおりの9ビット情報
1-C 前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セル
1-D 前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値?????
2-1A 多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるア
2-1B 第1のサービングセル(serving cell)上で伝送されるアップ20
2-1C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始
2-1D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされ25
2-1E 前記推定余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先
2-2A 多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク
2-2B 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップ
2-2C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始
2-2D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされ
2-2E 前記推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合、前記調整
2)(以下、併せて「LTE規格」という。)並びにTS36.213 V12.0.0(甲15
8の1)及びTS36.213 V15.0.0(甲8の2)(以下、併せて「規格213」
3 争点
1 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピ15
1-Aないし1-Dを充足する。20
1-a:無線通信システムにおける参照信号を送信する通信端末
1-b:基地局から、それぞれが510とおりの9ビット情報である
1-c⑴:前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した???
1-c⑵:前記受信した???
1-c⑶:前記決定された疑似ランダムシーケンス初期値?????と前記決定
1-c⑷:前記生成された参照信号の送信をする処理部5
1-d:疑似ランダムシーケンス初期値 ????? を 、 ???
1-Dを充足しない旨主張する。15
2 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、
2-1Eを充足する。
2-1a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末による
2-1b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/P5
2-1c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の
2-1d:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電10
2-1e:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づきPUSCH/
2-2a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末による20
2-2b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/P
2-2c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の
2-2d⑴:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送にかかる伝
2-2d⑵:推定差分電力を0と比較する処理部
2-2d⑶:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づいて、P
2-2e:推定差分電力が0より小さい場合、調整された伝送電力により
1Dを充足する。
1Eを充足する。
2-1b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で
2-1d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送
2-1e(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力と
2-2b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で伝
2-2d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電
2-2e (i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力と
3 争点2(本件第1発明の無効理由の有無)について
0とおりの9ビット情報である」との構成を容易に想到し得たものである。
3メモと同様、510とおりの9ビット情報とすることを否定した記載は
4 争点3(差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か)について
5 争点4(被告の行為及び損害額)について
1 本件第1発明の内容
008】)
2 本件第2発明の内容
1つまたはそれ以上のキャリアを使用することにより、狭帯域と広帯域を同
007】)25
053】)
2の余剰電力は数式2により計算される。」(【0082】)15
3 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピ
4 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、15
1のサービングセル上で伝送されるアップリング信号による第1の伝送電力
5 まとめ
1. Smartphone for Snapdragon Insiders5
2. ROG Phone 5s Pro
3. ROG Phone 5s 512GB
4. ROG Phone 5s 256GB
5. ROG Phone 5 Ultimate
6. ROG Phone 3 12GB+512GB15
7. ROG Phone 3 16GB+512GB
8. Zenfone 8 16GB+256GB
9. Zenfone 8 8GB+256GB
10. Zenfone 8 8GB+128GB
11. Zenfone 8 Flip 256GB25
12. Zenfone 8 Flip 128GB
13. ZenFone 7 Pro 8GB+256GB
14. ZenFone 7 8GB+128GB5
15. ZenFone 6 8GB+256GB
16. ZenFone 6 6GB+128GB
1 特許番号 第6200944号
2 特許番号 第5763845号
事件の概要 1 本件は、別紙特許権目録記載1及び2の各特許(以下、「本件第1特許」及 び「本件第2特許」といい、併せて「本件特許」という。また、本件特許に係 る特許権を「本件第1特許権」及び「本件第2特許権」といい、併せて「本件10 特許権」という。)を有する原告が、別紙物件目録記載の各製品(以下、併せ て「被告製品」という。)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張 して、被告製品を輸入、譲渡等している被告に対し、当該行為は、本件特許権 の侵害及び本件第2特許権の間接侵害を構成するとして、特許法100条1項 及び2項に基づき、被告製品の輸入、譲渡、貸渡し、譲渡又は貸渡しの申出等15 の差止め及び被告製品の廃棄を求めるとともに、民法709条及び特許法10 2条3項に基づく損害賠償の一部請求として、1000万円及びこれに対する 訴状送達の日の翌日である令和4年7月29日から支払済みまで民法所定の年 3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和6年1月29日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和4年(ワ)第18332号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和5年10月12日
判 決
原 告 パンテックコーポレーション
同訴訟代理人弁護士 岩 瀬 吉 和
同 後 藤 未 来
10 同 小 松 侑 太
同 伊 藤 雄 太
同訴訟代理人弁理士 綾 聡 平
被 告 ASUS JAPAN株式会社
同訴訟代理人弁護士 服 部 誠
同 中 村 閑
同 米 山 朋 宏
同 岩 間 智 女
20 同 杉 森 康 平
同補佐人弁理士 相 田 義 明
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
25 事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨
1 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を輸入し、譲渡し、貸渡し、譲渡若し
くは貸渡しの申出をし、又は譲渡若しくは貸渡しのための展示をしてはならな
い。
2 被告は、別紙物件目録記載の通信機器を廃棄せよ。
5 3 被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和4年7月29日か
ら支払済みに至るまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、別紙特許権目録記載1及び2の各特許(以下、「本件第1特許」及
び「本件第2特許」といい、併せて「本件特許」という。また、本件特許に係
10 る特許権を「本件第1特許権」及び「本件第2特許権」といい、併せて「本件
特許権」という。)を有する原告が、別紙物件目録記載の各製品(以下、併せ
て「被告製品」という。)は本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張
して、被告製品を輸入、譲渡等している被告に対し、当該行為は、本件特許権
の侵害及び本件第2特許権の間接侵害を構成するとして、特許法100条1項
15 及び2項に基づき、被告製品の輸入、譲渡、貸渡し、譲渡又は貸渡しの申出等
の差止め及び被告製品の廃棄を求めるとともに、民法709条及び特許法10
2条3項に基づく損害賠償の一部請求として、1000万円及びこれに対する
訴状送達の日の翌日である令和4年7月29日から支払済みまで民法所定の年
3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
20 なお、原告は、本件第2特許権について、令和5年4月7日、訴えの追加的
変更申立書を提出したが、事前に技術説明会まで定めていた本件審理の経過等
(令和5年2月16日付け書面による準備手続調書参照)に鑑み、当該申立書
は一旦陳述せず、また、それに伴い、本件第2特許権に係る無効論については、
一旦審理せず、技術説明会(ただし当該無効論に係る争点を除くもの)の結果
25 を踏まえ、心証開示を行うこととされた。その後、裁判所の検討結果によれば、
原告提出に係る上記の追加的変更部分は、本件の結論を左右しないものとされ
たところ、レビュー期日における心証開示後に和解が決裂したため、弁論が終
結された。
2 前提事実(証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。なお、証拠を
摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)
5 ⑴ 当事者
ア 原告は、大韓民国ソウル市に本社を置く、知的財産権の保有や通信分野
技術の開発等を目的とする会社であり、本件特許を有している。(弁論の
全趣旨)
イ 被告は、日本において、自らのグループ会社の製品であるスマートフォ
10 ン等を輸入販売する会社であり、被告製品を輸入及び販売していた。
⑵ 本件特許に係る特許請求の範囲
ア 本件第1発明
本件第1特許の特許請求の範囲の請求項9(以下、同項に係る発明を
「本件第1発明」という。)の記載は、次のとおりである。
15 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であって、
送受信ポイントから、それぞれが510とおりの9ビット情報である循
???
環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? および仮想セルIDパラメータの
受信をするパラメータ情報受信部と、
前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDパラメ
20 ータに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメ
???
ータ? ???? に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値? ???? の決定をし、前
記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値? ???? と前記決定した前記参
照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生
成された参照信号の送信をする参照信号処理部と、
25 を含む装置であって、
前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値? ???? を、前記
???
受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(? ???? )に基づいて
により決定をする、装置。
イ 本件第2発明
5 本件第2特許の特許請求の範囲の請求項1及び請求項10(以下、各項
に係る発明をそれぞれ「本件第2発明1」及び「本件第2発明2」とい
い、併せて「本件第2発明」という。)の記載は、次のとおりである。
本件第2発明1
多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるアップリン
10 ク伝送電力の制御方法であって、
第1のサービングセル(serving cell)上で伝送されるアップリンク信
号を生成するステップと、
第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令す
るランダムアクセス開始情報を基地局から受信するステップと、
15 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の
伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ラ
ンダムアクセスチャネル(physical random access channel:PRACH)の
伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定
余剰電力(estimated power headroom)を計算するステップと、
20 前記推定余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先順位に基
づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整して、前記
アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電
力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのう
ちいずれか1つを選択的に伝送するステップと、
25 を含むことを特徴とするアップリンク伝送電力の制御方法。
本件第2発明2
多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送電力
を制御する端末であって、
第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップリンク信
5 号を生成する信号生成部と、
第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始を命令す
るランダムアクセス開始情報を基地局から受信する受信部と、
前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされた第1の
伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピングされる物理ラ
10 ンダムアクセスチャネル(physical random access channel:PRACH)の伝
送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とに基づいて推定余
剰電力(estimated power headroom)を計算し、前記推定余剰電力と臨界
電力とを比較し、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力と前
記第2の伝送電力とを調整する電力調整部と、
15 前記推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合、前記調整された第
1の伝送電力と前記調整された第2の伝送電力とによって前記アップリ
ンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、または、前記電力割当優
先順位に基づいて前記アップリンク信号及び前記PRACHのうちいずれ
か1つを選択的に伝送する伝送部と、
20 を備えることを特徴とする端末。
⑶ 本件発明の構成要件
本件第1発明及び本件第2発明(以下、併せて「本件発明」という。)を
構成要件に分説すると、次のとおりである。
ア 本件第1発明
25 1-A 無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であっ
て、
1-B 送受信ポイントから、それぞれが510とおりの9ビット情報
???
である循環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? および仮想セ
ルIDパラメータの受信をするパラメータ情報受信部と、
1-C 前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セル
5 IDパラメータに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッ
???
ピング初期値パラメータ? ???? に基づいて実際の循環遅延ホッピ
ング初期値? ???? の決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッ
ピング初期値? ???? と前記決定した前記参照信号のベースシーケン
スとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参照信
10 号の送信をする参照信号処理部と、
を含む装置であって、
1-D 前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング初期値? ????
を、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ
???
(? ???? )に基づいて
により決定をする、装置。
イ 本件第2発明1
2-1A 多重コンポーネントキャリアシステムにおける端末によるア
ップリンク伝送電力の制御方法であって、
20 2-1B 第1のサービングセル(serving cell)上で伝送されるアップ
リンク信号を生成するステップと、
2-1C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始
を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信するス
テップと、
25 2-1D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされ
た第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピ
ングされる物理ランダムアクセスチャネル(physical random
access channel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングさ
れた第 2 の伝送電力とに基づいて推定余剰電力( estimated
5 power headroom)を計算するステップと、
2-1E 前記推定余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先
順位に基づいて前記第1の伝送電力または前記第2の伝送電力
を調整して、前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に
伝送する、または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アッ
10 プリンク信号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に
伝送するステップと、
を含むことを特徴とするアップリンク伝送電力の制御方法。
ウ 本件第2発明2
2-2A 多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク
15 伝送電力を制御する端末であって、
2-2B 第1のサービングセル(servingcell)上で伝送されるアップ
リンク信号を生成する信号生成部と、
2-2C 第2のサービングセルに対するランダムアクセス手順の開始
を命令するランダムアクセス開始情報を基地局から受信する受
20 信部と、
2-2D 前記アップリンク信号の伝送のためにスケジューリングされ
た第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピ
ングされる物理ランダムアクセスチャネル(physical random
access channel:PRACH)の伝送のためにスケジューリングさ
25 れた第 2 の伝送電力とに基づいて推定余剰電力( estimated
power headroom)を計算し、前記推定余剰電力と臨界電力とを
比較し、電力割当優先順位に基づいて前記第1の伝送電力と前
記第2の伝送電力とを調整する電力調整部と、
2-2E 前記推定余剰電力が前記臨界電力より小さい場合、前記調整
された第1の伝送電力と前記調整された第2の伝送電力とによ
5 って前記アップリンク信号及び前記PRACHを同時に伝送する、
または、前記電力割当優先順位に基づいて前記アップリンク信
号及び前記PRACHのうちいずれか1つを選択的に伝送する伝
送部と、
を備えることを特徴とする端末。
10 ⑷ 被告製品の構成
被告製品は、LTE通信が可能な通信端末であり、LTE通信は、国際標
準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)が定めた標準規格に
準拠している。そして、被告製品は、当該規格の具体的内容が記載された規
格書である、TS36.211 V11.0.0(甲5の1)及びTS36.331 V11.3.0(甲5の
15 2)(以下、併せて「LTE規格」という。)並びにTS36.213 V12.0.0(甲
8の1)及びTS36.213 V15.0.0(甲8の2)(以下、併せて「規格213」
という。)に準拠している。(甲4、5、8、弁論の全趣旨)
⑸ 先行文献
本件第1特許の優先日(2012年5月11日)より前に、以下の公刊物
20 が存在した。(甲2の1)
ア 「Summary of COMP UL Session」と題する3GPP技術仕様グループの
会合(3GPP TSG RAN WGI Meeting)の議事録(乙2。以下「乙2議事録」
といい、同議事録に記載された発明を「乙2発明」という。)
イ 「UL-DMRS enhancements for uplink CoMP」と題する、上記乙2に係る
25 会合に先立ってLG Electronicsが提出したメモ(乙3。以下「乙3メモ」
といい、同メモに記載された発明を「乙3発明」という。)
3 争点
⑴ 被告製品の構成要件充足性(争点1)
ア 本件第1発明について
被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピング初期
???
5 値パラメータ? ???? 」を使用して参照信号を生成・送信(構成要件1-C
及び1-D)しているか否か(争点1-1)
イ 本件第2発明について
被告製品が「推定余剰電力を計算」(構成要件2-1D)、「推定余剰
電力が臨界電力より小さい場合」(構成要件2-1E)を充足するか否か
10 (争点1-2)
⑵ 本件第1発明の無効理由の有無(争点2)
⑶ 差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か(争点3)
⑷ 被告の行為及び損害額(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
15 1 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピ
???
ング初期値パラメータ? ???? 」を使用して参照信号を生成・送信〔構成要件1
-C及び1-D〕しているか否か)について
(原告の主張)
⑴ 被告製品は、以下の構成1-aないし1-dを有しているから、構成要件
20 1-Aないし1-Dを充足する。
1-a:無線通信システムにおける参照信号を送信する通信端末
1-b:基地局から、それぞれが510とおりの9ビット情報である
??ℎ_???? ?????
? ?? と? ?? の受信をするパラメータ情報受信部
?????
1-c⑴:前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した? ?? に基
25 づいて決定する処理部
??ℎ_????
1-c⑵:前記受信した? ?? に基づいて疑似ランダムシーケンス初
期値?init の決定をする処理部
1-c⑶:前記決定された疑似ランダムシーケンス初期値? ???? と前記決定
した前記参照信号のベースシーケンスとに基づいて前記参照信
号の生成をする処理部
5 1-c⑷:前記生成された参照信号の送信をする処理部
??ℎ_????
1-d:疑似ランダムシーケンス初期値 ? ???? を 、 ? ?? に基づいて
??ℎ_???? ??ℎ_????
? ???? = ⌊? ?? /30⌋ × 25 + (? ?? ???30)により決定する
処理部
⑵ 被告は、被告製品に組み込まれたチップセット(以下「本件チップセット」
10 という。)はアップリンクCoMP(UL Coordinated Multi-Point transmission
and reception〔アップリンクの多地点協調〕。以下「CoMP」という。)
??ℎ_????
を サ ポ ー ト し て お ら ず 、 L T E 規 格 に 規 定 さ れ た 「 ? ?? 」及び
?????
「? ?? 」の2つのパラメータ(以下、併せて「本件パラメータ」という。)
を使用して参照信号を生成しないことから、被告製品は構成要件1-C及び
15 1-Dを充足しない旨主張する。
しかしながら、「CoMPをサポートしていない」からといって、「本件
パラメータを使用して参照信号を生成・送信しない」とはいえない。そもそ
も、LTE規格の記載に基づけば、LTE規格に準拠している製品であれば、
構成1-c⑴ないし1-dを備えるはずである。また、原告が本件チップセ
20 ットの仕様の根拠として提出する乙50及び51は、乙49の引用部分の記
載を引き写しただけであって、本件チップセットの仕様を客観的に規定した
ものとはいえない。さらに、本件チップセットについて「領域をFALSE
に設定」しているとの陳述書(乙52)も、被告と利害を共 にする
Qualcomm Technologies, Inc.(以下「クアルコム」という。)の技術者が、本
25 件チップセットの客観的な仕様書等に基づくことなく、主観的に陳述したも
のであるから、これをもって本件チップセットの構成が立証されたとはいえ
ない。
(被告の主張)
以下で述べるとおり、被告製品は、構成1-c及び1-dを有していないか
ら、構成要件1-C及び1-Dを充足しない。
5 本件第1発明は、CoMPシステムにおいてUE(端末をいう。以下同じ。)
がアップリンク参照信号を生成する時に使用するパラメータ、すなわち、Co
MPをサポートする上で必要とされるパラメータを用いた参照信号送信装置を
提供することを目的とするものである。そして、本件第1発明において、Co
MPをサポートする上で必要とされるパラメータとして規定されているのは、
???
10 循環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? 及び仮想セルIDパラメータの2つ
のパラメータである。この点、原告は、被告製品の構成において、LTE規格
??ℎ_???? ?????
に規定された「? ?? 」及び「? ?? 」の2つのパラメータ(本件パラメ
???
ータ)が、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? 」及び「仮想セルID
パラメータ」にそれぞれ相当すると主張する。
15 しかしながら、①3GPP規格上、CoMPはUEの必須の構成とされてい
ないこと、②被告製品に組み込まれたチップセット(本件チップセット)はC
oMPをサポートしていないこと、③本件チップセットは、CoMPをサポー
トする上で必要とされるパラメータである本件パラメータを使用して参照信号
を生成しないことから、本件チップセットが組み込まれた被告製品は、本件パ
20 ラメータを使用して参照信号を生成し、送信することを内容とする構成要件1
-C及び1-Dを充足しない。
2 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、
「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」〔構成要件2-1E〕を充足する
か否か)について
25 (原告の主張)
⑴ 被告製品が採用する通信方法(以下「被告通信方法」という。)は、以下
の構成2-1aないし2-1eを有しているから、構成要件2-1Aないし
2-1Eを充足する。
2-1a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末による
アップリンク伝送電力の制御方法
5 2-1b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/P
UCCHのアップリンク信号を生成するステップ
2-1c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の
開始を命令するPDCCH命令を上位レイヤから命令されるステ
ップ
10 2-1d:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電
力とPRACHの伝送に係る伝送電力との合計とPCMAXとの差分の
推定値である推定差分電力を計算するステップ
2-1e:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づきPUSCH/
PUCCHのアップリンク信号の伝送電力を調整してPUSCH/PUC
15 CH及びPRACHを同時に伝送する、または、優先順位に基づき
SRSのアップリンク信号とPRACHのうちPRACHを選択的に伝
送するステップ
⑵ 被告製品は、以下の構成2-2aないし2-2eを有しているから、構成
要件2-2Aないし2-2Eを充足する。
20 2-2a:多重コンポーネントキャリアシステムにおける移動端末による
アップリンク伝送電力を制御する移動端末
2-2b:プライマリーサービングセル上で伝送されるSRS又はPUSCH/P
UCCHのアップリンク信号を生成する信号生成部
2-2c:セカンダリーサービングセルに対するランダムアクセス手順の
25 開始を命令するPDCCH命令を上位レイヤから受信する受信部
2-2d⑴:SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送にかかる伝
送電力とPRACHの伝送のための伝送電力との合計とPCMAXと
の差分の推定値である推定差分電力を計算する処理部
2-2d⑵:推定差分電力を0と比較する処理部
2-2d⑶:推定差分電力が0より小さい場合、優先順位に基づいて、P
5 USCH/PUCCHの伝送電力を調整する処理部
2-2e:推定差分電力が0より小さい場合、調整された伝送電力により
PUSCH/PUCCH及びPRACHを同時に伝送する、または、優先
順位に基づいて、SRSとPRACHのうちPRACHを選択的に伝送
する伝送部
10 ⑶ 被告は、被告通信方法においては、「推定余剰電力を計算」していないか
ら、構成要件2-1Dを充足しないと主張する。
しかしながら、被告が自認するように、被告通信方法において「合計値が
PCMAXの値を超えないようにPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る
伝送電力を調整する」ためには、「PUSCH/PUCCHのアップリンク信号に係
15 る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値」と「PCMAX」との差に相当
する電力(構成要件2-1Eの「推定余剰電力」に相当する。)が所定値を
下回る場合に、伝送電力を調整するのが自然かつ合理的な方法であり、それ
以外の方法が実際上想定し難い。したがって、被告通信方法は構成要件2-
1Dを充足する。
20 ⑷ 被告は、被告通信方法においては、「推定余剰電力が臨界電力より小さい」
か否かを判定していないから、構成要件2-1Eを充足しないと主張する。
しかしながら、構成要件2-1Eは、「推定余剰電力が臨界電力より小さ
い場合」と規定しており、判定する処理自体を規定するものではないから、
仮に、被告通信方法において「推定余剰電力が臨界電力より小さい」か否か
25 を判定する処理自体を含んでいないとしても、構成要件2-1Eを充足しな
い理由とはならない。
また、仮に、被告通信方法の構成2-1eが被告の主張する内容であった
としても、「PUSCH/PUCCHのアップリンク信号に係る伝送電力とPRACH
に係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合」とは、「PUSCH
/PUCCHのアップリンク信号に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合
5 計値」と「PCMAX」との差分(構成要件2-1Eの「推定余剰電力」に相当
する。)が「0」(構成要件2-1Eの「臨界電力」に相当する。)よりも
小さい場合に相当するから、いずれにしても被告通信方法は、構成要件2-
1Eを充足する。
(被告の主張)
10 ⑴ 被告通信方法の構成のうち、2-1b、2-1d及び2-1eは、以下の
とおり認定されるべきである。
ア 2-1bについて
原告は、SRS又はPUSCH/PUCCHの信号を伝送するセルである「異なる
サービングセル」を「プライマリーサービングセル」と称しているが、こ
15 れは誤りであるから、2-1bは、以下のとおり認定されるべきである。
2-1b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で
伝送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生
成するステップ
イ 2-1dについて
20 被告通信方法においては、SRSに係る伝送電力とPRACHに係る伝送電
力の合計が、PCMAXを超える場合に、SRSをドロップするところ、被告通
信方法では、伝送電力の合計値とPCMAXの値を対比しているにすぎず、伝
送電力の合計値とPCMAXの値との差分を推定するとのステップを備えてい
ない。
25 同様に、被告通信方法においては、異なるTAGに属する異なるサービ
ングセルのPUSCH/PUCCHと並行してPRACHを伝送することを上位レイ
ヤから命令されたとき、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部
分における伝送電力の合計がPCMAXを超えないようにしているところ、被
告通信方法では、伝送電力の合計値とPCMAXの値とを対比しているにすぎ
ず、伝送電力の合計値とPCMAXの値との差分を推定するとのステップを備
5 えていない。
したがって、2-1dは、次のとおり認定されるべきである。
2-1d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送
電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対
比するステップ
10 ウ 2-1eについて
上記のとおり、被告通信方法においては、SRS 又は PUSCH/PUCCH の
アップリンク信号伝送に係る伝送電力と PRACH に係る伝送電力との合計
値と PCMAX の値を対比して、伝送電力の合計値が PCMAX の値を超えるか否
かを判断しているにすぎず、「推定差分電力が0より小さい」との判定は
15 していないから、原告による「推定差分電力が0より小さい場合」に所定
の動作をするとの認定は誤りである。
したがって、2-1eは、次のとおり認定されるべきである。
2-1e(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力と
PRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大き
20 い場合、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部
分における伝送電力の合計がPCMAXの値を超えないように
し、また、
(ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに
係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、
25 SRSをドロップするステップ
⑵ 被告製品についても、被告通信方法について述べたことが同様に当てはま
るから、被告製品の構成のうち、2-2b、2-2d及び2-2eは、以下
のとおり認定されるべきである。
2-2b セカンダリーサービングセルとは異なるサービングセル上で伝
送されるSRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号を生成す
5 る信号生成部と
2-2d SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電
力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を対比し、
(i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力と
PRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大き
10 い場合、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部
分における伝送電力の合計がPCMAXの値を超えないように
し、また、
(ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに
係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、
15 SRSをドロップする調整部と、
2-2e (i) PUSCH/PUCCHのアップリンク信号伝送に係る伝送電力と
PRACHに係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大き
い場合、調整された伝送電力により、PUSCH/PUCCH及び
PRACHを同時に伝送する、また、
20 (ii) SRSのアップリンク信号伝送に係る伝送電力とPRACHに
係る伝送電力との合計値が、PCMAXの値より大きい場合、
SRSをドロップしてPRACHを伝送する伝送部と
⑶ 被告通信方法は、以下のとおり、少なくとも、構成要件2-1D及び構成
要件2-1Eを充足しない。
25 ア 構成要件2-1Dについて
被告通信方法においては、SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号
伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を
対比しているにすぎず、「推定余剰電力を計算」していないから、構成要
件2-1Dを充足しない。
イ 構成要件2-1Eについて
5 被告通信方法においては、SRS又はPUSCH/PUCCHのアップリンク信号
伝送に係る伝送電力とPRACHに係る伝送電力との合計値と、PCMAXの値を
対比しているにすぎず、「推定余剰電力が臨界電力より小さい」か否かを
判定していないから、構成要件2-1Eを充足しない。
⑷ 被告製品についても、被告通信方法において述べたとおり、「推定余剰電
10 力」の計算及び推定余剰電力と臨界電力との比較を行わないから、被告製品
は構成要件2-2D及び2-2Eを充足しない。
3 争点2(本件第1発明の無効理由の有無)について
(被告の主張)
以下に述べるとおり、本件第1発明は、乙2議事録(主引例)に記載された
15 発明(乙2発明)に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができ
たものであるから、特許法29条2項により無効とされるべきものである。
⑴ 乙2発明の内容
乙2議事録には、次の発明(乙2発明)が開示されている。
LTEにおけるDMRSの送信のためのユーザ端末であって、
???
20 基地局から、? ???? 及び仮想セルIDの受信をするパラメータ情報受信部と、
前記DMRSのベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDに基づい
???
て決定をし、前記受信した? ???? に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期
値?init の決定をし、前記決定された実際の循環遅延ホッピング初期値?init と
前記決定した前記DMRSのベースシーケンスとに基づいて前記DMRSの
25 生成をし、前記生成されたDMRSの送信をする参照信号処理部と、
を含むユーザ端末。
⑵ 一致点
上記のとおり、乙2発明は、本件第1発明と、次の点で一致する。
無線通信システムにおける参照信号の送信のための装置であって、
???
送受信ポイントから、循環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? 及び仮
5 想セルIDパラメータの受信をするパラメータ情報受信部と、
前記参照信号のベースシーケンスを、前記受信した仮想セルIDパラメー
タに基づいて決定をし、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ
???
? ???? に基づいて実際の循環遅延ホッピング初期値?init の決定をし、前記決定
された実際の循環遅延ホッピング初期値?init と前記決定した前記参照信号の
10 ベースシーケンスとに基づいて前記参照信号の生成をし、前記生成された参
照信号の送信をする参照信号処理部と、
を含む装置である点。
⑶ 相違点
上記のとおり、乙2発明は、本件第1発明と、次の2点で相違する。
15 ア 相違点1
???
本件第1発明は、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? 及び仮
想セルIDパラメータ」の「それぞれが510とおりの9ビット情報であ
る」との構成を有するのに対し、乙2発明は当該構成を有するかが明らか
でない点。
20 イ 相違点2
本件第1発明は、「前記参照信号処理部は、実際の循環遅延ホッピング
???
初期値?init を、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメータ(? ???? )
に基づいて?init = [? ???? = 0 ]×25+(? ???? = d30 )により決定をする、装
???
/ ???
o
置」との構成を有するのに対し、乙2発明は当該構成を有するかが明らか
25 でない点。
⑷ 相違点の容易想到性
ア 乙3発明の内容
乙3メモには、次の発明(乙3発明)が開示されている。
DMRSのベースシーケンスを、510とおりの9ビット情報である仮
想セルIDに基づいて決定すること、
5 及び、
?init を、510とおりの9ビット情報である仮想セルID(VCI)に基づ
 VCI 
いて cinit   ・25= +(VCI=od3=0 )により決定すること。
 30 
イ 乙2発明に、乙3発明を適用する動機付けがあること
乙2議事録及び乙3メモは、2012年3月26日から同月30日にか
10 けて開催された3GPP技術仕様グループの会合(3GPP TSG RAN WGI
Meeting)に向けた提案メモ(乙3)と、同提案メモを踏まえて行われた
同会合の議事録(乙2)である。具体的には、LTE Release 10の下でのユ
ーザ端末は、自身が所在する物理セルをカバーする1つの基地局と通信し
ていたところ、ユーザ端末が複数の基地局と通信するCoMPを達成する
15 に当たり、DMRSのベースシーケンスと循環シフトホッピングをユーザ
端末固有の構成とする必要があるとの共通理解の下、これを達成する手段
を議論したものである。
このように、乙2議事録及び乙3メモの記載内容の技術分野は同一であ
り、技術的課題も同一であり、作用・機能も同一であるから、乙2発明に
20 乙3発明を適用する動機付けが認められる。
ウ 相違点1について
上記のとおり、乙2発明に乙3発明を適用する動機付けが認められるか
ら、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、乙3発明の構成のうち、
DMRSのベースシーケンスを決定するためのパラメータである「510
25 とおりの9ビット情報である仮想セルID」との構成を、乙2発明のうち、
同じくDMRSのベースシーケンスを決定するためのパラメータである
「仮想セルIDパラメータ」との構成に適用することにより、相違点1に
係る本件第1発明の構成のうち、「仮想セルIDパラメータ・・・が51
0とおりの9ビット情報である」との構成を容易に想到し得たものである。
5 また、乙2議事録には、?init を決定するためのパラメータについて、乙
3メモと同様、510とおりの9ビット情報とすることを否定した記載は
???
ない。そうすると、当業者であれば、仮想セルIDとは別個に? ???? を設定
する乙2発明の構成において、乙3メモに明記された510とおりの9ビ
???
ット情報である仮想セルIDとの構成を当該乙2発明の構成における? ????
???
10 に適用し、510とおりの9ビット情報である? ???? とした構成を容易に
想到し得たといえる。
したがって、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、相違点1に係
る本件第1発明の構成のうち、「循環遅延ホッピング初期値パラメータ
???
? ???? ・・・が510とおりの9ビット情報である」との構成を容易に想
15 到し得たといえる。
エ 相違点2について
乙2議事録には、乙3メモと同様の510とおりの9ビット情報により
?init を算出することを否定した記載はない。また、上記のとおり、当業者
???
であれば、仮想セルIDとは別個に? ???? を設定する乙2発明の構成におい
20 て、乙3メモに明記された510とおりの9ビット情報である仮想セル
???
IDの構成を、乙2発明の構成における? ???? に適用し、510とおりの9
???
ビット情報である? ???? とした構成を容易に想到し得たといえる。
そうすると、当業者であれば、乙3メモに明記された510とおりの9
???
ビット情報である仮想セルIDとの構成を乙2発明の構成における? ???? に
???
25 適用し、510とおりの9ビット情報である? ???? とした構成において、
???
乙3に明記された?init の算出式中の仮想セルID(VCI)を? ???? に置換した
構成を容易に想到し得たといえる。
したがって、乙2議事録及び乙3メモに接した当業者は、相違点2に係
る本件第1発明の構成のうち、「前記参照信号処理部は、実際の循環遅延
ホッピング初期値?init を、前記受信した循環遅延ホッピング初期値パラメ
5 ータ(? ???? )に基づいて?init = [? ???? = 0 ]×25= +(? ???? = d30 )により決
??? ???
/ ???
o
定をする、装置」との構成を容易に想到し得たといえる。
(原告の主張)
⑴ 被告は、乙2議事録記載の選択肢3は、乙4記載の発明に以下の操作を加
えるものであるとし、それを前提に乙2発明が導かれると主張する。
10 操作① DMRSのベースシーケンスを決定する際に用いられていた物
理セルに紐付いたパラメータであるNIDcellを、ユーザ端末固有のパ
ラメータである仮想セルIDに置換する
操作② Cinitを求める算出式において、物理セルに紐付いたパラメータで
あるΔSSをゼロにし、ユーザ端末固有のパラメータであるCCSH= を代
init
15 入する
操作③ ベースシーケンスを決定するためのパラメータである仮想セルI
Dとは別個に、Cinitを決定するためのパラメータであるCCSHを設定す
= init

しかしながら、上記選択肢3には、上記操作①~③が記載されていないか
20 ら、選択肢3に係る記載から、乙2発明を導くことはできない。
⑵ また、乙3メモを踏まえて議論した結果、乙2議事録の内容で決着したの
であるから、乙2発明に更に乙3発明を組み合わせる動機付けがあったとは
いえず、むしろこれを阻害する要因があったというべきである。
さらに、被告は、乙4に乙2議事録を組み合わせて「乙2発明」を導いた
25 上で、この「乙2発明」に更に乙3発明を組み合わせることで本件第1発明
を容易想到だと論じているが、かかる論法はいわゆる「容易の容易」に該当
し、容易想到性を肯定することはできない。
4 争点3(差止請求権の行使が権利濫用に当たるか否か)について
(被告の主張)
本件特許は、FRAND宣言を行ったものであるところ、仮に、被告製品が
5 LTE規格に準拠したことを理由に本件特許の技術的範囲に属し、かつ、本件
特許について無効理由が認められないとすれば、本件特許はFRAND宣言を
行った必須特許ということになる。
そして、本件では、被告の親会社であるASUSTeK Computer Inc.(以下「A
SUS台湾」という。)が原告とのライセンス交渉を行ってきたところ、交渉
10 の経緯において、原告が必要な情報を適時に開示したとはいい難い状況にあっ
たにもかかわらず、ASUS台湾は率先して、ライセンス交渉の進展に必要な
対応を行ってきた。
また、原告がASUS台湾に提示したライセンス条件はFRAND条件では
なかったから、ASUS台湾がこのライセンス条件に応じなかった事実は、A
15 SUS台湾がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認
定の根拠とはならない。これに対し、ASUS台湾が原告に対して提示した対
案となるライセンス条件は、FRAND条件である。
したがって、被告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する
者であるから、原告による本件特許権に基づく差止請求権の行使は、権利の濫
20 用に当たり許されない。
(原告の主張)
⑴ 被告は、LTE規格のクレームチャートに対する回答について、ベンダへ
の確認に時間がかかった旨主張するが、対象製品がLTE規格に準拠してい
る以上、端末内部の機械的構成やソフトウェアの内容等を確認する必要はな
25 いから、被告のLTE規格のクレームチャートに対する回答は不合理に遅い
ものであり、交渉態度は到底誠実とはいえない。また、被告のライセンス条
件の対案の提示は不合理に遅かった上、その内容も明らかに不合理なもので
あったから、被告の交渉態度が誠実なものだとは到底いえない。
他方で、原告は、第1回交渉時からライセンス条件の根拠を示したり、誠
実な交渉態度として本来は求められるものではない5G規格のクレームチャ
5 ートを、被告の要請に応じて提示したりするなど、原告の交渉態度は、終始
誠実なものである。
⑵ 原告の提示した累積ロイヤリティは合理的な値であり、原告が提示したラ
イセンス条件はFRANDである。
他方で、ASUS台湾が原告に提示したライセンス条件は、原告提示のロ
10 イヤリティ料率の5000分の1程度であるところ、上記のとおり、原告提
示のロイヤリティ料率は合理的なもので、FRANDであることに照らせば、
原告提示のロイヤリティ料率に比べて著しく低いASUS台湾提示のロイヤ
リティ料率が、FRANDでないことは明らかである。
5 争点4(被告の行為及び損害額)について
15 (原告の主張)
被告は、被告製品の輸入、譲渡、貸渡し、譲渡又は貸渡しの申出(譲渡又は
貸渡しのための展示を含む。)を行っている。
また、被告製品は本件第2発明1の方法の使用にのみ用いる物で、その課題
の解決に不可欠なものであり、被告は当該発明が特許発明であること及びその
20 物がその発明の実施に用いられることを知っている。被告の上記行為は、本件
第2発明1の方法の使用に用いる物の業としての「輸入」、「譲渡」、「貸渡
し」、「譲渡」又は「貸渡し」の「申出」に該当するものであり、本件第2特
許権の間接侵害に当たる。
さらに、原告は、被告による上記本件第2特許権侵害により生じた損害の賠
25 償を請求する権利を有するところ、被告製品の国内での売上高は累計で100
億円は下らないと試算され、ライセンス交渉に関する被告の不誠実な交渉態度
等に照らせば、原告の損害額は、売上高の0.1%たる1000万円は下らな
い。
(被告の主張)
被告の行為について、被告が被告製品を輸入及び販売していたことは認める
5 が、その余は否認する。また、被告は現在、被告製品を輸入していない。
また、損害額については、否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件第1発明の内容
本件第1特許の願書に添付された明細書及び図面(以下「本件明細書等1」
10 という。甲3の1)には、次のとおりの記載があることが認められる。
⑴ 技術分野
「本発明は無線通信に関し、より詳しくは、無線通信システムにおける参
照信号(Reference Signal)の送受信方法及び装置に関する。また、無線通信
システムにおける参照信号のためのパラメータの構成方法及びそのためのシ
15 グナリング方法に関する。」(【0001】)
⑵ 背景技術
「現在の種々の通信システムでは、アップリンクまたはダウンリンクを通
じて通信環境などに対する情報を相手装置に提供するためにさまざまな参照
信号(Reference Signal)が使われている。」(【0002】)
20 「また、無線通信システムの性能と通信容量を高めるために、多重セルま
たは送受信ポイント協力が導入されている。多重セル協力は、CoMP(co
operative multiple point transmission and reception)ともいう。CoMPには
隣接するセルが協力してセル境界のユーザに干渉を緩和するビーム回避技法
と、隣接するセルが協力して同一なデータを転送するジョイント転送(joint
25 transmission)技法などがある。」(【0003】)
⑶ 発明が解決しようとする課題
「本発明の側面は、参照信号の送受信方法及び装置と、そのための信号シ
グナリング方法を提供することである。」(【0007】)
「本発明の他の側面は、CoMPシステムにおいて、UEが特定のアップ
リンク参照信号を生成する時に使用するパラメータセットを構成する方法と、
5 それを用いた参照信号送受信装置及び方法を提供することである。」(【0
008】)
「本発明の他の側面は、CoMPシステムにおいて、UEがアップリンク
参照信号を転送するに当たって、通信環境によって2つ形態の参照信号のう
ち、参照信号を選択的に生成して転送するように動的スイッチングし、その
10 際、2つ形態の参照信号のためのパラメータセットを構成する方法である。」
(【0009】)
⑷ 課題を解決するための手段
「上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、無線通信システ
ムにおける端末(UE)による参照信号の送信方法であって、送受信ポイン
15 トから2つ形態の参照信号のための2つのパラメータセット(各パラメータ
セットは510個の整数値のうちの1つを表現する9ビット情報である循環
???
遅延ホッピング初期値パラメータ? ???? を含み)のうちの1つ以上の情報を
受信するステップと、上記2つのパラメータセットのうち、上記参照信号生
成に使われるパラメータセットを指示する指示情報を動的に受信し、上記指
20 示情報によって指示されるパラメータセットに基づいて上記参照信号を生成
して送信することを含む参照信号送信方法を提供する。」(【0013】)
2 本件第2発明の内容
本件第2特許の願書に添付された明細書及び図面(以下「本件明細書等2」
という。甲3の2)には、次のとおりの記載があることが認められる。
25 ⑴ 技術分野
「本発明は、無線通信に関し、より詳しくは、多重コンポーネントキャリ
アシステムにおけるアップリンク伝送電力の制御装置及び方法に関する。」
(【0001】)
⑵ 背景技術
「1つの帯域幅と中心周波数を有するキャリアを定義し、複数のキャリア
5 を介して広帯域にデータを送信及び/又は受信できるようにする多重コンポ
ーネントキャリア(Multiple Component Carrier)システムが登場している。
1つまたはそれ以上のキャリアを使用することにより、狭帯域と広帯域を同
時にサポートすることである。例えば、1つのキャリアが5MHzの帯域幅
に対応するならば、4個のキャリアを使用することにより、最大20MHz
10 の帯域幅をサポートすることである。」(【0004】)
「ところが、多重コンポーネントキャリアシステムが導入されるにつれて、
コンポーネントキャリアのアップリンク伝送電力が総合的に考慮されなけれ
ばならないので、端末の電力制御は一層複雑になる。このような複雑性は、
端末の最大送信電力(Maximum Transmission Power)の側面で問題を引き起
15 こす恐れがある。一般に端末は、許容可能な範囲の送信電力である最大送信
電力より低い電力によって動作しなければならない。もし、基地局が最大送
信電力以上の送信電力を要求するスケジューリングをする場合、実際アップ
リンク伝送電力が最大送信電力を超過する問題を引き起こす恐れがある。こ
れは、多重コンポーネントキャリアの電力制御が明確に定義されないか、ま
20 たは端末と基地局との間にアップリンク伝送電力に関する情報が十分に共有
されないためである。」(【0006】)
⑶ 発明が解決しようとする課題
「本発明の技術的課題は、多重コンポーネントキャリアシステムにおける
アップリンク伝送電力の制御装置及び方法を提供することにある。」(【0
25 007】)
⑷ 課題を解決するための手段
「本発明の一態様によれば、多重コンポーネントキャリアシステムにおけ
る端末によるアップリンク伝送電力の制御方法を提供する。前記アップリン
ク伝送電力の制御方法は、第1のサービングセル(serving cell)上で伝送さ
れるアップリンク信号を生成するステップと、第2のサービングセルに対す
5 るランダムアクセス手順の開始を命令するランダムアクセス開始情報を基地
局から受信するステップと、前記アップリンク信号の伝送のためにスケジュ
ーリングされた第1の伝送電力と、ランダムアクセスプリアンブルがマッピ
ングされる物理ランダムアクセスチャネル(physical random access channel:
PRACH)の伝送のためにスケジューリングされた第2の伝送電力とから推
10 定余剰電力(estimated power headroom)を計算するステップと、前記推定
余剰電力が臨界電力より小さい場合、電力割当優先順位に基づいて前記第1
の伝送電力または前記第2の伝送電力を調整するステップとを含む。」
(【0010】)
⑸ 発明の効果
15 「多重コンポーネントキャリアシステムにおいてアップリンク信号を伝送
するとき、電力割当優先順位にしたがって選択的にアップリンク信号を伝送
すれば、アップリンク伝送電力が効率的に配分され得る。また、電力割当が
単純で、かつ明確な規則によってなされるので、システムの複雑度も減らし
つつ、性能が向上し得る。」(【0011】)
20 ⑹ 発明を実施するための形態
「端末が複数のアップリンクチャネルを複数のサービングセル上に伝送す
るためには、複数のアップリンクチャネルを伝送できる電力が必要である。
ところが、端末に構成された最大送信電力(maximum transmission power)
は限定されており、全てのアップリンクチャネルを伝送するのに足りないこ
25 とがある。…このような問題を解決するために端末は、与えられたアップリ
ンク伝送電力を優先順位に基づいて各チャネルに割り当てることができる。
優先順位を電力割当優先順位(power allocation priority)という。」(【0
053】)
「余剰電力PPHは、数式1のように端末に設定された(configured)最
大送信電力PCMAXとアップリンク伝送に関して推定された電力Pestimatedとの
5 間の差異で定義され、dBに表現される。」(【0062】)
(【0063】)
「すなわち、余剰電力は、基地局により設定された端末の最大送信電力か
ら各サービングセルで使用している送信電力の合計であるPestimatedを除い
た残りの値がP PH値となる。一方、最大送信電力は、サービングセル毎に
10 個別的に定義され得るが、例えば、サービングセルcでの最大送信電力は
PCMAX、cのように表示される。」(【0064】)
「端末は、第1のサブフレームで推定される推定余剰電力(estimated-
PH:E-PH)を計算する(S710)。推定余剰電力は、タイプ1の余剰電力
とタイプ2の余剰電力を含む。タイプ1の余剰電力は数式1により、タイプ
15 2の余剰電力は数式2により計算される。」(【0082】)
「端末は、推定余剰電力が臨界電力(P th )より小さいかを判断する
(S715)。臨界電力は0dBでありうる。例えば、端末がPUSCHのみ
を伝送する予定であれば、端末はタイプ1の余剰電力が0dBより小さいか
5 を判断し、端末がPUSCHとPUCCHを共に伝送する予定であれば、端末は、
タイプ0の余剰電力が0dBより小さいかを判断する。端末が、推定余剰電
力が0dBより小さいかを判断することは、PRACHを伝送する第1のサブ
フレームでの推定余剰電力が0dBより小さく設定されるサービングセルが
存在するかを判断することに対応した概念である。」(【0083】)
10 「端末は、推定余剰電力が臨界電力(P th )より小さいかを判断する
(S815)。臨界電力は0dBでありうる。例えば、端末がPUSCHのみ
を伝送する予定であれば、端末はタイプ1の余剰電力が0dBより小さいか
を判断し、端末がPUSCHとPUCCHを共に伝送する予定であれば、端末はタ
イプ0の余剰電力が0dBより小さいかを判断する。端末が、推定余剰電力
15 が0dBより小さいかを判断することは、PRACHを伝送する第1のサブフ
レームでの推定余剰電力が0dBより小さく設定されるサービングセルが存
在するかを判断することに対応した概念である。」(【0092】)
3 争点1-1(被告製品が「仮想セルIDパラメータ」及び「循環遅延ホッピ
???
ング初期値パラメータ? ???? 」を使用して参照信号を生成・送信〔構成要件1
20 -C及び1-D〕しているか否か)について
⑴ 本件第1発明の構成要件1-C及び1-Dによれば、本件発明1は、本件
????? ??ℎ_????
パラメータ(「? ?? 」及び「? ?? 」)を使用して参照信号を生成・
送信しているところ、原告は、被告製品についても、LTE規格に準拠して
いる以上、本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するものである
と主張する。
そこで検討するに、証拠(甲5の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、L
TE規格においては、?init を決定するに際し、本件パラメータの一つである
cshDMRS
? ?? の値が上位層から提供される場合にはこれを使用し、これが上位層
cell
5 から提供されない場合には、?ID を使用していることが認められる。そう
すると、LTE規格は、本件パラメータの使用を必須とするものとはいえな
い。
そして 、 弁論の 全趣 旨によれ ば、 本 件パ ラメータ は、C oM P( UL
Coordinated Multi-Point transmission and reception。以下「CoMP」
10 という。)をサポートする上で必要とされるパラメータであるところ、証拠
(乙49、93)及び弁論の全趣旨によれば、LTE規格に準拠する端末装
置UEは、CoMPを必須の構成とするものと認めることはできない。そう
すると、LTE規格に準拠する端末装置UEは、CoMPをサポートしない
構成も許容されることからすると、被告製品についてもCoMPを必須の構
15 成とするものとはいえず、この場合には、CoMPをサポートする上で必要
とされる本件パラメータを使用するものではない。
そうすると、被告製品がLTE規格に準拠するものであるとしても、LT
E規格は本件パラメータの使用を必須とするものではない上、被告製品は、
CoMPを必須の構成とするものと認めるに足りず、CoMPをサポートす
20 るに必要な本件パラメータを使用して、参照信号を生成・送信するものであ
ると認めるに足りない。
かえって、秘密保持命令の対象とされた証拠(乙50ないし52)及び弁
論の全趣旨によれば、被告製品に組み込まれたチップセット(以下「本件チ
ップセット」という。)は、本件パラメータを使用して参照信号を生成・送
25 信するものではないものと推認され、上記証拠の信用性を疑うに足りる事情
を認めることはできない。その他に、本件チップセットが本件パラメータを
使用して参照信号を生成・送信することを裏付ける客観的な証拠はない。
これらの事情を総合すると、被告製品が本件第1発明の構成要件1-C及
び1-Dを充足するものとは、認めるに足りないというべきである。
これに対し、原告は、被告製品がLTE規格に準拠している以上、被告製
5 品は本件パラメータを使用して参照信号を生成・送信するはずである旨主張
する。
しかしながら、LTE規格が本件パラメータの使用を必須とするものでは
なく、また、被告製品がCoMPを必須の構成とするものではなく、CoM
Pをサポートする上で必要とされる本件パラメータを使用するものとはいえ
10 ないことは、上記において説示したとおりである。
したがって、原告の主張は、構成要件充足性に係る客観的な裏付けを欠く
ものであり、採用することができない。
⑶ 以上によれば、被告製品は、本件第1発明の構成要件1-C及び1-Dを
充足するものとはいえない。
15 4 争点1-2(被告製品が「推定余剰電力を計算」〔構成要件2-1D〕、
「推定余剰電力が臨界電力より小さい場合」〔構成要件2-1E〕を充足する
か否か)について
⑴ 構成要件2-1D及びEの意義
本件明細書等2の記載によれば、本件第2発明は、第1のサービングセル
20 上で伝送されるアップリンク信号と第2のサービングセル上で伝送されるP
RACH(ピーラッチ)の優先順位に基づく伝送制御をする条件として,第
1のサービングセル上で伝送されるアップリング信号による第1の伝送電力
と,第2のサービングセル上で伝送されるPRACH(ピーラッチ)による
第2の伝送電力とに基づき,推定余剰電力を計算し,推定余剰電力が臨界電
25 力(Pth)より小さいか否かを判断するものであり、この場合における臨
界電力は0dBであり得ることが認められる。そして、技術常識及び弁論の
全趣旨によれば、dB(デシベル)とは、ある物理量を基準となる量との比
の常用対数によって表した相対的な計量単位であることからすれば、上記に
いう「臨界電力」とは、電力ゼロとは異なる特定の電力値を意味するものと
解するのが相当である(【0083】、【0092】等)。
5 被告製品の構成
ア 前記前提事実、証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品は、
規格213に準拠しているところ、同規格5.1.1.1には、次のとお
りの記載があることが認められる。
① 複数のTAGが設定されている場合に、UEは、異なるTAGに属す
10 る異なるサービングセルのサブフレーム上のシンボル内のSRS伝送と
並行してセカンダリーサービングセルでPRACHを伝送することを上
位レイヤから命令されたとき、シンボル内の重複部分における伝送電力
の合計がPCMAXを超える場合はSRSをドロップしなければならない。
② 複数のTAGが設定されている場合、UEは、異なるTAGに属する
15 異なるサービングセルのPUSCH/PUCCHと並行してセカンダリ
ーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令さ
れたとき、PUSCH/PUCCHの伝送電力を調整し、その重複部分
における伝送電力の合計がPCMAXを超えないようにしなければならな
い。
20 イ 上記認定事実によれば、規格213に準拠する被告製品は、セカンダリ
ーサービングセルでPRACHを伝送することを上位レイヤから命令され
たとき、伝送電力の合計がPCMAXを超えないように制御するものであり、
その際に、伝送電力の合計がPCMAXを超えるか否かを判断するものであ
ることが認められる。
25 構成要件充足性について
上記 及び によれば、被告製品は、2つのサービングセル上で伝送され
るアップリンク信号の優先順位に基づく伝送制御をする条件として,2つの
サービングセル上で伝送されるアップリング信号に係る伝送電力の合計が,
PCMAXを超えるか否かを判断するにとどまり、本件第2発明のように、伝
送電力の合計がPCMAXに至るまでどの程度電力に余剰(余力)があるかど
5 うかを判断するため、推定余剰電力が特定の電力値である臨界電力よりも小
さいか否かを判断するものではない。
したがって、被告製品は、本件第2発明の構成要件2-1D及びEを充足
するものと認めることはできない。
これに対する原告の主張は、被告製品が上記にいう「臨界電力」により伝
10 送制御を判断するものではない以上、いずれも採用の限りではない。
⑷ 「推定余剰電力を計算」(構成要件2-2D)及び「推定余剰電力が前記
臨界電力より小さい場合」(構成要件2-2E)の充足性
被告製品が本件第2発明の構成要件2-1D及びEを充足しないことは、
上記において説示したとおりであり、その理は、被告製品による本件第2発
15 明の構成要件2-2D及びEの充足性についても同様に当てはまるというべ
きである。したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
5 まとめ
以上によれば、被告製品は、本件発明の各構成要件をいずれも充足しないこ
とからすると、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は、いず
20 れも理由がない。
第5 結論
よって、原告の請求は、いずれも理由がないからこれらをいずれも棄却する
こととして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
中 島 基 至
5 裁判官
小 田 誉 太 郎
裁判官古賀千尋は差支えのため、署名押印することができない。
裁判長裁判官
中 島 基 至
(別紙)
物件目録
以下の製品型番の通信機器。
5 1. Smartphone for Snapdragon Insiders
型番:ZS675KW-BL512R16
2. ROG Phone 5s Pro
型番:ZS676KS-BK512R18
3. ROG Phone 5s 512GB
10 型番:ZS676KS-BK512R16/ZS676KS-WH512R16
4. ROG Phone 5s 256GB
型番:ZS676KS-BK256R12/ZS676KS-WH256R12
5. ROG Phone 5 Ultimate
型番:ZS673KS-WH512R18
15 6. ROG Phone 3 12GB+512GB
型番:ZS661KS-BK512R12
7. ROG Phone 3 16GB+512GB
型番:ZS661KS-BK512R16
8. Zenfone 8 16GB+256GB
20 型番:ZS590KS-BK256S16/ZS590KS-WH256S16/ZS590KS-SL256S16
9. Zenfone 8 8GB+256GB
型番:ZS590KS-BK256S8/ZS590KS-WH256S8/ZS590KS-SL256S8
10. Zenfone 8 8GB+128GB
型番:ZS590KS-BK128S8/ZS590KS-WH128S8/ZS590KS-SL128S8
25 11. Zenfone 8 Flip 256GB
型番:ZS672KS-BK256S8/ZS672KS-SL256S8
12. Zenfone 8 Flip 128GB
型番:ZS672KS-BK128S8/ZS672KS-SL128S8
13. ZenFone 7 Pro 8GB+256GB
型番:ZS671KS-BK256S8/ZS671KS-WH256S8
5 14. ZenFone 7 8GB+128GB
型番:ZS670KS-BK128S8/ZS670KS-WH128S8
15. ZenFone 6 8GB+256GB
型番:ZS630KL-BK256S8/ ZS630KL-SL256S8
16. ZenFone 6 6GB+128GB
10 型番:ZS630KL-BK128S6/ZS630KL-SL128S6
以 上
(別紙)
特許権目録
1 特許番号 第6200944号
5 発明の名称 無線通信システムにおける参照信号の送受信方法及び装置
出 願 日 平成25年5月10日(特願2015-511380)
登 録 日 平成29年9月1日
2 特許番号 第5763845号
10 発明の名称 多重コンポーネントキャリアシステムにおけるアップリンク伝送
電力の制御装置及び方法
出 願 日 平成24年11月2日(特願2014-540937)
登 録 日 平成27年6月19日
以 上

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