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令和5(ワ)70114不当利得返還等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年3月27日
事件種別 民事
当事者 原告A
被告ヤマハ発動機株式会社
対象物 自動二輪車のブレーキ制御装置及び挙動解析装置
法令 特許権
特許法134条1回
特許法102条3項1回
キーワード 進歩性7回
新規性7回
特許権6回
無効3回
損害賠償2回
刊行物2回
無効審判1回
侵害1回
ライセンス1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。20
事件の概要 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「自動二輪車のブレーキ制御装置及び挙動解析装置」と する特許権を有する原告が、被告が販売している自動二輪車の電子制御装置が同 特許権に係る特許発明の技術的範囲に属するとして、被告に対し、特許権侵害に よる損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき、3億1200万円の一部5 として1億円及び不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である令和5年 4月18日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害 金又は利息を請求する事案である。

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判決文

令和6年3月27日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70114号 不当利得返還等請求事件

口頭弁論終結日 令和6年2月21日

判 決

原 告 A

同訴訟代理人弁護士 西 垣 建 剛

同 知 念 竜 之 介

被 告 ヤ マ ハ 発 動 機 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 長 坂 省

同 友 村 明 弘

同 蕪 城 雄 一 郎

同 補 佐 人 弁 理 士 江 口 昭 彦

同 髙 村 和 宗

同 津 田 拓 真

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和5年4月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。2 仮執行宣言

第2 事案の概要等

1 事案の概要本件は、発明の名称を「自動二輪車のブレーキ制御装置及び挙動解析装置」とする特許権を有する原告が、被告が販売している自動二輪車の電子制御装置が同特許権に係る特許発明の技術的範囲に属するとして、被告に対し、特許権侵害に

5 よる損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき、3億1200万円の一部として1億円及び不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である令和5年4月18日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金又は利息を請求する事案である。2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア 原告は、自動車メーカーで研究開発業務に従事する個人である。(弁論の全趣旨)イ 被告は自動二輪車を中心とした輸送用機器の製造、販売、研究開発等の事業を行う株式会社である。(争いなし)原告は、以下の特許権(以下、「本件特許権」という。 を有している。) (甲1、2)特許番号 特許第4960929号発明の名称 自動二輪車のブレーキ制御装置及び挙動解析装置出願日 平成20年7月2日登録日 平成24年3月30日本件特許権に係る請求項1、7の記載は、以下のとおりである(以下、請求項1、7に記載された発明を順に「本件発明1」「本件発明2」といい、これ、らの発明を総称して「本件発明」という。また、本件特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」という。その内容の抜粋は別紙本件明細書のとおりである。。)(甲2)ア 請求項1所謂自動二輪車であり少なくても2つの車輪を有する車両に用いられるブレーキ制御装置であって、該ブレーキ制御装置は、車体速検出装置と、車両挙動検出装置と、ECU(コントロールユニット) と、制動装置と、で構成され、車体速検出装置は、車輪速センサーであって、検出された信号より

5 車両走行速度を得て、車両挙動検出装置は、進行方向に対して左右ロール方向と左右横方向の状態を検出するセンサーであって、該検出された信号により傾斜角速度(Ψ)と横加速度(Gken)を得て、ECUは、検出された信号演算と車両挙動に応じた目標制動力演算及び制動装置へ制動指令を行うものであって、前記信号演算として、横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法を少なくとも有し、制動装置は、前記ECUからの制動指令により車両を減速させる機構であって、エンジンブレーキとブレーキディスクへの加圧減圧の手段を有し、当該車両において、前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せにより、車両挙動が判断され、該車両挙動に応じた目標制動力が決定され、前記車輪で制動がされ、制動によりロール方向の挙動の抑制が図られること、を特徴とする車両のブレーキ制御装置。イ 請求項7所謂自動二輪車であり少なくても2つの車輪を有する車両の車両解析に用いられる装置であって、該車両解析装置は、前記車両の車両挙動から得られた信号演算を行う装置であり、前記車両の車両挙動から得られる検出信号として、進行方向に対して左右横方向加速度を検出する横加速度と、左右ロール方向の状態を検出する傾斜角速度(A)または傾斜角度のどちらか一方もしくは両方と、加速度センサーの車両取り付け高さと、が少なくとも入力されており、信号演算として、前記傾斜角速度(A)または、前記傾斜角度の時間微分で得られる傾斜角速度(B)のいずれかの傾斜角速度を少なくとも用い、前記横加速度の補正演算として、加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法として、前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度(A)または 傾斜角速度(B)のいずれかの積、との差分を求め、該導出

5 された補正後の横G(Ghosei)に基づき車両解析がされること、を特徴とする挙動解析装置。本件発明は、次のとおり分説することができる。(以下、符号に応じて「構成要件A」などという。)ア 本件発明11A 所謂自動二輪車であり少なくても2つの車輪を有する車両に用いられるブレーキ制御装置であって、1B 該ブレーキ制御装置は、車体速検出装置と、車両挙動検出装置と、ECU(コントロールユニット)と、制動装置と、で構成され、1C 車体速検出装置は、車輪速センサーであって、検出された信号より車両走行速度を得て、1D 車両挙動検出装置は、進行方向に対して左右ロール方向と左右横方向の状態を検出するセンサーであって、該検出された信号により傾斜角速度(Ψ)と横加速度(Gken)を得て、1E ECUは、検出された信号演算と車両挙動に応じた目標制動力演算及び制動装置へ制動指令を行うものであって、1F 前記信号演算として、横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法を少なくとも有し、1G1 制動装置は、前記ECUからの制動指令により車両を減速させる機構であって、1G2 エンジンブレーキとブレーキディスクへの加圧減圧の手段を有し、1H 当該車両において、前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合わせにより、車両挙動が判断され、1I 該車両挙動に応じた目標制動力が決定され、前記車輪で制動がされ、制動によりロール方向の挙動の抑制が図られること、を特徴とする車

5 両ブレーキ制御装置。イ 本件発明22A 所謂自動二輪車であり少なくても2つの車輪を有する車両の車両解析に用いられる装置であって、2B 該車両解析装置は、前記車両の車両挙動から得られた信号演算を行う装置であり、2C 前記車両の車両挙動から得られる検出信号として、進行方向に対して左右横方向加速度を検出する横加速度と、左右ロール方向の状態を検出する傾斜角速度(A)または傾斜角度のどちらか一方もしくは両方と、加速度センサーの車両取り付け高さと、が少なくとも入力されており、2D 信号演算として、前記傾斜角速度(A)または、前記傾斜角度の時間微分で得られる傾斜角速度(B)のいずれかの傾斜角速度を少なくとも用い、2E 前記横加速度の補正演算として、加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法として、前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度(A)または 傾斜角速度(B)のいずれかの積、との差分を求め、2G 該導出された補正後の横G(Ghosei)に基づき車両解析がされること、を特徴とする挙動解析装置。原告は、令和5年11月27日付けで、誤記(特許法134条2の第1項2号)を理由に本件特許に係る請求項7等の請求項及び本件明細書の記載の訂正を請求した(以下「本件訂正請求」という。)。同訂正後の請求項7は次のとおりであり、同訂正後の明細書の記載は、別紙対比表記載のとおりである。本件口頭弁論終結時には、本件訂正請求による訂正は確定し

5 ていない。(甲18)請求項7´(下線部が訂正部分)2A、2B同じ2C´前記車両の車両挙動から得られる検出信号として、進行方向に対して左右横方向の加速度を検出する横加速度と、左右ロール方向の状態を検出する傾斜角速度と、加速度センサーの車両取り付け高さと、が少なくとも入力されており、2D´信号演算として、前記傾斜角速度を少なくとも用い、2E´前記横加速度の補正演算として、加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法として、前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度の時間微分で得られる傾斜角加速度の積、との差分を求め、2G同じア 被告は、遅くとも平成27年から、別紙被告自動二輪車目録記載の自動二輪車(以下「被告自動二輪車」という。)の製造及び販売を行っている。被告自動二輪車には、スライドコントロールシステム(後輪の横滑りを検知し、イナーシャルメジャメントユニット(以下「IMU」という。)からの情報に基づきエンジン出力を制御する機能。 「SCS」以下 という。 、)トラクションコントロールシステム(後輪のスリップを検知し、車体の傾斜角に応じてエンジン出力を制御する機能。以下「TCS」という。)及びブレーキコントロールシステム(ブレーキ操作によりホイールがロックされたとき、ブレーキの油圧を調整する機能。以下「BC」という。)の機能を有するものがあり、その対応関係は、同目録記載のとおりである。同目録記載1、2の被告自動二輪車については、自動二輪車の車両挙動を検知する装置(以下「被告製品3」という。)とTCS及びSCSの機能

5 に係る電子制御装置(以下「被告製品2」という。)を搭載しており、同目録記載3~8の被告自動二輪車については、被告製品3とTCS、SCS及びBCの機能に係る電子制御装置(以下「被告製品1」という。)が組み込まれている。(争いなし)イ 被告製品1、2を搭載した被告自動二輪車は、車輪の回転速度から車体速度信号を取得する前後輪車速センサー、ロールレート及び車体横方向加速度を検出するIMUを搭載している。同被告自動二輪車は、車両挙動安定のために、必要に応じてエンジンECUによってエンジン出力を抑制することによって車両を減速させることがあり、その出力制御には、IMUから受領した車体横方向加速度の情報を利用することもある。同被告自動二輪車のうち、被告製品1が搭載された被告自動二輪車には、さらに、ABS ECUが搭載されており、これがブレーキの油圧を制御している。被告製品1、2は、いずれも前後輪車速センサーを有しているため構成要件1Cを充足し、IMUを搭載しているため構成要件1Dを充足し、エンジンECU又はABS ECUからの指令によって車両を減速させる機構を有しているから、構成要件1G1を充足する。他方で、被告製品2は、ABS ECUを有していないため、ECUの指令に基づいてブレーキディスクへの加圧減圧の手段を有しているとはいえず、構成要件1G2を充足しない。(弁論の全趣旨)被告自動二輪車は、いずれも被告製品3を搭載しており、被告製品3は、IMUで検出した車体横方向加速度及びロール方向の角速度とタイヤ設置点からIMUまでの距離の値が入力されて演算しており、構成要件2B、2C、2Dを充足する。(弁論の全趣旨)3 争点被告製品1、2は、文言上又は文言と均等な構成として、本件発明1の技術

5 的範囲に属するか(争点1)ア 被告製品1、2は、「ブレーキ制御装置」であるか(構成要件1A、1B、1G2)(争点1-1)イ 被告製品1、2は、「目標制動力演算」への制動指令を行うか(構成要件1E)(争点1-2)ウ 被告製品1、2は、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行った後の「横G(Ghosei)」を用いて車両挙動を判断しているか(構成要件1F、1H)(争点1-3)エ 被告製品1、2は、「該車両挙動に応じた目標制動力」を決定しているか(構成要件1I)(争点1-4)オ 被告製品2は、「ブレーキディスクへの加圧減圧の手段」と均等な構成を有しているか(構成要件1G2)(争点1-5)被告製品3は、本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2)ア 被告製品3は、「車両解析に用いられる装置」であるか(構成要件2A)(争点2-1)イ 被告製品3は、「加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行い、「該導出された補正後の横G(Ghosei)」に基づき車両解析するか(構成要件2E、2G)(争点2-2)損害(争点3)本件発明に係る特許に無効事由があるか(争点4)ア サポート要件違反があるか(争点4-1)イ 明確性要件違反があるか(争点4-2)ウ 補正要件違反があるか(争点4-3)エ 本件発明は、特開2006-240491号公報(以下「乙9公報」という。)に記載された発明と同一であるか、又は同発明を主引例発明とする進歩性欠如があるか(争点4-4)

5 4 争点に対する当事者の主張被告製品1、2は、「ブレーキ制御装置」であるか(構成要件1A、1B、1G2)(争点1-1)(原告の主張)被告製品1は、自動二輪車に搭載されるエンジン出力及びブレーキの油圧を制御する電子制御装置であり、被告製品2は、自動二輪車に搭載されるエンジン出力を制御する電子制御装置であるから、「ブレーキ制御装置」に当たる。(被告の主張)否認ないし争う。被告製品1、2はエンジン出力を制御するのみであり、エンジンブレーキを有していないから、「ブレーキ制御装置」ではない。被告製品1、2は、「目標制動力演算」への制動指令を行うか(構成要件1E)(争点1-2)(原告の主張)被告製品1、2のエンジンECU及びABS ECUは、IMUから受領した車体横方向加速度等の情報に基づき制御量を演算し、エンジン出力制御装置及びブレーキの油圧を制御するから、車両挙動に応じて目標制動力を決定している。(被告の主張)否認ないし争う。被告製品1、2は、車両挙動に応じて目標制動力を決定していない。被告製品1、2は、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行った後の「横G(Ghosei)」を用いて車両挙動を判断しているか(構成要件1F、1H)(争点1-3)(原告の主張)被告製品1、2では、エンジン出力制御装置の制御量の演算を行うに当たり、

5 IMUが検出した横方向加速度の値に対して、IMUが左右ロール方向に移動することにより重畳された加速度を減算する補正処理を行っているから、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行っている。そして、被告製品1、2は、同補正処理を行った横方向加速度を用い、傾斜角及び横滑り加速度を算出しているから、「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せにより、車両挙動が判断」されている。被告は、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」について、本件明細書によれば、Ghosei=Gken-(Ψ・Rhsen) (以下「式A」という。)であると理解できると主張するが、本件明細書の記載によれば、これが.Ghosei=Gken-(Ψ・Rhsen) (以下「式A´」という。)の誤記であると理解できるから、被告の主張は前提を欠く。(被告の主張)否認ないし争う。本件明細書によれば、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」は式Aであると理解できるところ、式Aは等号の左右で次元の異なる明らかに誤った式であり、被告製品1、2でこのような不合理な演算を行っていないことは明らかである。式Aが式A´の誤記であるとは認められない。被告製品1、2は、「該車両挙動に応じた目標制動力」を決定しているか(構成要件1I)(争点1-4)(原告の主張)被告製品1、2では、傾斜角及び横滑り加速度に応じて制御量を決定している。(被告の主張)否認ないし争う。

5 被告製品1、2は、車両挙動に応じた目標制動力を決定していない。被告製品2は、「ブレーキディスクへの加圧減圧の手段」と均等な構成を有しているか(構成要件1G2)(争点1-5)(原告の主張)被告製品2は、「ブレーキディスクへの加圧減圧の手段」(構成要件1G2)を有しておらず、エンジン出力の抑制によって対応しているところ、当該構成は、次のとおり、「ブレーキディスクへの加圧減圧の手段」と均等である。ア 第1要件本件発明1における従来技術にない技術的思想の特徴的部分は、正確な車両挙動を把握するために傾斜角速度を用いた補正後の横Gを用いることを考案した点にある。被告製品2ではこれを行っており、補正後の横Gを用いた制動がブレーキディスクへの加圧減圧で行うかエンジン出力の抑制で行うかは、非本質的な部分に係る相違であるといえる。イ 第2要件本件発明1の目的ないし作用効果は「走行時の横Gセンサーと角速度センサーを関連づけ」することで、二輪車の挙動を正確に検出ないし判断して、二輪車挙動の変化に応じて車両を制御し、車両を安定化させるというものであり、被告製品2は目的ないし作用効果を共通にするものであるから、置換可能である。ウ 第3要件車両の挙動を制御して、車両を安定化させるためには、挙動の3要素である縦方向速度、横方向速度及びヨーモーメントを制御する必要があるところ、これらを制御する方法としては、油圧ブレーキ(ブレーキディスク)によって車輪の回転を制御して車両を減速させる方式のほか、加速中の駆動力全体を制御する方式、駆動系の一部で駆動力を制御する方式(エンジンの点火遅角を行うものを含む。)などによるトラクションコントロール

5 (TCS)が一般に知られてきた。したがって、当業者であれば、本件発明1のうち、「ブレーキディスクへの加圧減圧の手段」を廃し、「エンジン出力の抑制」のみに置き換えることは容易であったといえる。エ 第4要件本件発明1は、正確な車両挙動を把握するために傾斜角速度を用いた補正後の横Gを用いることを考案した点に特徴があり、これは容易に推考できたものではない。オ 第5要件被告製品2に係る制御装置を意識的に除外したとみられる事情は存在しない。(被告の主張)否認ないし争う。本件発明1の本質的部分は、センサーによって検出された補正前の検出横G(Gken)から、Ψ・Rhsen(センサーによって検出された傾斜角速度と、センサーと路面との間の距離との積)を減算する演算を行うことと解するべきであるところ、被告製品2はそのような構成を有しないから、少なくとも第1要件を具備しない。被告製品3は、「車両解析に用いられる装置」であるか(構成要件2A)(争点2-1)(原告の主張)被告製品3は、自動二輪車に搭載されるエンジン出力を制御する電子制御装置であるから、車両解析に用いられる装置に当たる。(被告の主張)否認ないし争う。被告製品3は、自動二輪車に搭載されて車両の挙動を把握し、自動二輪車を制御する装置であるのに対し、本件発明2は、「車両解析に用いられる装置」であり、自動二輪車に搭載される装置ではないから、構成要件2Aの「車両解析

5 に用いられる装置」を充足しない。被告製品3は、「加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行い、「該導出された補正後の横G(Ghosei)」に基づき車両解析するか(構成要件2E、2G)(争点2-2)(原告の主張)構成要件2Eの「前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度(A)または 傾斜角速度(B)のいずれかの積、との差分を求め」の部分は、本件訂正請求で訂正したとおり、「前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度の時間微分で得られる傾斜角加速度の積、との差分を求め」の誤記である。挙動解析装置である被告製品3は、IMUが検知した横方向加速度に対して、IMUが左右ロール方向に移動することにより重畳された加速度を減算する補正処理を行うにあたって、タイヤ設置点からIMUまでの距離(ℎ)(本件発明2の「加速度センサーの車両取り付け高さ」に当たる。)と傾斜角加速度(?̇ ? )との積とIMUが検知した車体横方向加速度センサ値(? ? )との差分を求める計算(? ? − ℎ?̇ ? )を行っているから、被告製品3は構成要件2E、2Gを充足する。(被告の主張)否認ないし争う。「ロールによる影響を取り除く演算」とは、「前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度(A)または 傾斜角速度(B)のいずれかの積、との差分を求め」るというものであるところ、これは、次元の異なる数量の差分を求める演算であって、物理的な意味を持ちえないものである。このような奇異な式を実際の製品の制御に採用することはあり得ない。原告は誤記を理由に本件訂正請求を行ったが、誤記であるとは認められない。

5 損害(争点3)(原告の主張)被告は、遅くとも平成26年4月15日から現在まで、被告製品を搭載した被告自動二輪車を国内にて製造及び販売をしており、その期間中における被告自動二輪車の販売額は78億円を下らない。特許法102条3項に基づき原告が受けるべき金銭の額は、その4パーセントに当たる3億1200万円を下らない。ライセンス料相当額は同額を下らず、同額について被告は利得を得ており、原告に損失がある。よって、原告は、不法行為による損害賠償又は不当利得返還請求権に基づき、一部請求として1億円及び遅延損害金または利息を請求する。(被告の主張)否認ないし争う。サポート要件違反があるか(争点4-1)(被告の主張)ア 本件発明1について構成要件1Fの関係で、G(Ghosei)の算出方法について言及されているが、これに対応する明細書の記載は、式Aである。しかし、式Aに本件明細書に記載されている、Gken=g・cosΦ・tanρ-Ψ・Rhenの式を代入して整理すると次のとおりとなる。Ghosei=g・cosΦ・tanρ-Ψ・Rhen-Ψ・Rhsenしかし、G(Ghosei)を表す式中には依然として加速度センサーのロールによる影響の項が残っており、むしろその影響が増幅されている。また、同式では、次元の異なる物理量の差が含まれており、得られる数値は物理的な意味をなさない。本件明細書に記載された発明では、Ghensaの値に基づいて、Ψと

5 配分比との対応関係をまず特定し、当該対応関係とΨの値とに基づいて、配分比を決定するものと理解される。このような配分比の決定方法は、傾「斜角速度(Ψ)とGhensaとの組合せ」による車両挙動に応じて「目標制動力」の配分比を決定するものといえる。Ghensaは、「補正後の横G(Ghosei)を用いて算出されるパラメータの1つであるが、」「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せ」による目標制動力の決定を、Ghensaを算出することなく他の方法を用いても行い得ることは、本件明細書の発明の詳細な説明においては一切示されておらず、示唆もされていない。そうすると、本件明細書に記載された発明を構成要件1Hに示される「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せにより」との表現にまで拡張又は一般化することはできない。イ 本件発明2について前記ア と同様に、構成要件2Eの演算では、加速度センサーのロールによる影響の項は残り、むしろ増幅されており、また、結果として得られる数値は物理的な意味を持ち得ない。前記ア で主張したとおり、本件明細書に記載された発明は、「傾斜角速度(Ψ)とGhensaとの組合せ」によって車両挙動を解析するものではあるが、これを、構成要件2Gに示される「該導出された補正後の横G(Ghosei)に基づき」との表現にまで拡張又は一般化することはできない。ウ よって、本件発明は、少なくとも本件明細書に記載されていない発明を含むものであるといえる。(原告の主張)否認ないし争う。ア 被告の主張ア 、イ について

5 別紙対比表記載のとおり本件明細書には誤記があり、誤記訂正後の【0063】等によれば、傾斜走行時に検出される検出横G(Gken)には、ロ.ール速度の変化の影響である加速度成分(Ψ・Rhsen)が重畳されていること、そして、重畳された当該加速度成分は、傾斜角速度センサーの速度.変化である傾斜角加速度(Ψ)を減算することで取り除くことができることが分かる。よって、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法」(構成要件1F)は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている。また、補正後の横G(Ghosei)の導出方法は、加速度センサーのロールによる影響を取り除き、「走行時の傾斜により検出された検出横G(Gken)に車両のロールによる誤差が重畳される」という課題を解決できるものと認識できる。イ 被告の主張ア 、イ について本件明細書の【0050】【0060】によれば、ハイブリットセンサー、20により検出される数値、すなわち、①加速度や傾斜角速度といった数値ないしそれに対応する車両の動きを含む概念として「車両挙動」と表現している。さらに、【0080】によれば、②ニュートラルステアー、オーバーステアー、アンダーステアーといった走行軌跡となる車両の動き(横滑り)を含む概念として「車両挙動」と表現している。さらに、【0083】によれば、補正後の横G(Ghosei)を用いて、規範横G(Gkihan)との差分である偏差G(Ghensa)を導出することで、アンダーステアーやオーバーステアーといった「車両挙動」を判断することが説明されている。以上を前提に、【0084】の記載から、アンダーステアーかオーバーステアーか(すなわち、Ghensaがマイナス符号かプラス符号か)及び角速度(Ψ)が傾斜側又は倒立側にどの程度発生しているかに応じて、配分比を決定することが分かる。このことから、本件明細書には、角速度(Ψ)が傾

5 斜側又は倒立側にどの程度発生しているか、すなわち上記①の「車両挙動」、及びアンダーステアーかオーバーステアーか(Ghensaがマイナス符号かプラス符号か)、すなわち上記②の「車両挙動」により配分比、すなわち目標制動力を決定することが示されている。明確性要件違反があるか(争点4-2)(被告の主張)ア 本件発明1について構成要件1Hについて、本件明細書に記載されているのは、「傾斜角速度(Ψ)とGhensaとの組合せ」によって車両挙動を解析することであって、本件明細書には「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組み合せ」により、車両挙動を判断することについては一切示されていない。その結果、構成要件1Hにおいて、「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組み合わせにより」車両挙動が判断されることの技術的な意義を理解することができず、本件発明1は不明確である。さらに、Ghensaは傾斜角速度の測定値(Ψ)のみの関数となっており、加速度センサーで測定される横Gの値や、補正後の横G(Ghosei)の関数とはなっていない。つまり、本件明細書等に記載の発明では、傾斜角速度の測定値(Ψ)のみの値に基づいてGhensaが算出され、このGhensaに応じて前後ブレーキの配分比が決定される。この点からしても、構成要件1Hにおいて、「前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組み合わせにより」車両挙動が判断されることの技術的な意義を理解することができず、本件発明1は不明確である。イ 本件発明2について構成要件2Eについて、本件明細書には、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法」は一切示されていない。その結果、「ロールによる影響を

5 取り除く演算」を行うことの技術的な意義を当業者が理解することはできず、本件発明2は極めて不明確である。(原告の主張)否認ないし争う。前記 の原告の主張のとおりである。補正要件違反があるか(争点4-3)(被告の主張)ア 平成21年7月27日付け手続補正の補正要件違反新規事項1原告は、以下の図23を新たに追加したところ、これは、新規事項の追加に当たる。新規事項2本件明細書【0090】の記載のうち、少なくとも「U.S.状態にあれば、前輪が80%後輪が20%O.S.状態にあれば、前輪が20%後輪が80%になる事を示している。 との事項、」 及び、「また、このU.S./O.S./N.S.の線の引き方によりGhensaと角速度変化に応じた前後輪へのブレーキ配分の重み付け変更が可能である。引き方は、直線とは限らない。ここで示している配分比は、説明のために用いたもので

5 あり配分比を限定するものではない。 との追加部分は、」 いずれも、当初明細書等には一切記載されていない。新規事項3本件明細書の【0084】のうち、少なくとも「油圧フィードバックは、油圧の圧力検出信号でありPIDコントローラーの出力結果でもあるが油圧系の温度による伝達特性の応答性改善にも使用することができる。」との追加部分は、当初明細書等に一切記載されていない。イ 平成23年10月18日付け手続補正の補正要件違反新規事項4本件明細書の【0063】のうち、少なくとも「しかしながら、センサーの実車への配置が車体中心線から離れると円周上の軌跡とGセンサーの検出方向(接線)とが離れていく事象が生じることから、Rsenとhsenが等しくならず無視できない状況に陥ると傾斜角度による補正などが必要になってくる。よって、センサー配置は重心位置近くであり車体中心線上にあるのが望ましい。」との追加部分は、当初明細書等に一切記載されていない。新規事項5本件明細書の【0069】のうち、少なくとも「傾斜角の範囲全体に渡り理論検出横Gが存在していることが容易にわかる。」との追加部分は、当初明細書等に一切記載されていない。新規事項6本件明細書の【0073】のうち、少なくとも「この様に、式の『Ψ・Rhsen』の項について、ゼロにしたデーターは、定常円旋回時に得られたデーターと呼ばれることがある。 との追加部分、」 及び「これらの理論検出横Gの上記等号式に関わる上記変数には、傾斜角の範囲全体に渡り、傾斜角に応じ検出される車両特有の横加速度の数値が関係として導かれ

5 る。」との追加部分は、当初明細書等に一切記載されていない。新規事項7本件明細書の【0088】の、「よって、Gkihanは、ある傾斜角の時に既に定常円旋回などから得られたデーターを基に数値が導かれている。Ghoseiは、上記のある角度において変化する傾斜変化の補正を行った定義上の傾斜変化ゼロの横Gであるため、リアルタイムに補正されたデーターには外部から加えられた車体のロール因子以外のGが数値として含まれている。偏差横Gは、時々刻々と角度が変化することへの追従されるGとする為の式であり、ある傾斜角における外部から加えられた横加速度であり、重量を掛ければ加えられた外力となる。 との追加部分は、」当初明細書等に一切記載されていない。(原告の主張)否認ないし争う。ア 新規事項1について被告が指摘する事項は、当初明細書の【0090】、図19の記載から自明である。イ 新規事項2について被告が指摘する事項は、当初明細書の【0090】、図19の記載から自明である。ウ 新規事項3について被告が指摘する事項は、当初明細書の図19で言及されているPIDコントローラーを使用する当業者にとっては自明である。エ 新規事項4について被告が指摘する事項は、当初明細書の【0014】【0046】【00、 、61】【0062】【0063】及び図8の記載から自明である。、 、オ 新規事項5について

5 被告が指摘する事項は、当初明細書の【0027】の表1、【0086】及び【0087】の記載から自明である。本件発明は、乙9公報に記載された発明と同一であるか、又は同発明を主引例発明とする進歩性欠如があるか(争点4-4)(被告の主張)別紙新規性、進歩性に係る被告の主張記載のとおり。(原告の主張)ア 新規性について乙9公報に記載された発明は、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導.出方法」を有していないことが明らかである。それゆえ、傾斜角加速度(Ψ)と補正後の横G(Ghosei)の組合せにより判断される「車両挙動」に応じた目標制動力の決定が行われていないことも明らかである。したがって、本件発明と乙9公報に記載の制御装置及び駆動システムとは、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法」(構成要件1F)「当該車両におい、て、前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せにより、車両挙動が判断され」(構成要件1H)及び「該車両挙動に応じた目標制動力が決定され」の有無の点で明確に異なることから、本件発明は何ら新規性を欠くものではない。イ 進歩性について被告のいうように乙6資料に記載された計算式から「 ? − ℎ?̇ ? )の演算(?式」を論理的に導くことが可能であったとしても、そのことから、自動二輪車に搭載された加速度センサーにロールによる加速度が重畳されてしまうこと、傾斜角速度センサーの検出値を微分して得られた傾斜角加速度を減算することで重畳された当該加速度を排除することが可能であること及び

5 「 ? − ℎ?̇ ? )の演算式」自体が、本件発明の出願当時に公知であったとい(?うことは到底できない。よって、当業者において、乙9公報及び乙6資料の記載から当該相違点に係る構成が容易に想到できたとはいえない。

第3 当裁判所の判断

1 本件明細書に記載された本件発明の意義

本件明細書には、別紙本件明細書の記載があり、それによれば、本件発明の意義は次のように説明されている。傾斜走行を伴う自動二輪車等の安全装置である自動ブレーキ装置を実現するため、自動二輪車等の傾斜角を検出する方式が提案されてきた。しかし、これまでの横Gセンサーの計測値から算出した検知方法では、走行中は、遠心力の作用により、横Gセンサーの計測値から傾斜角度を算出することができなかった。また、角速度センサーのみを用いる方法では、誤認識をしてしまう可能性があった。本件発明は、自動二輪車等について、走行時の横Gセンサーと角速度センサーを関連付けることによって、従来は、正確な傾斜角の検出ができなかった諸問題を解決して、車両の走行状態での正確な横G(なお、この「正確な横G」が何を意味するのか(何と比べて横(水平)なのか)の記載は本件明細書にはない。)を検出し、ひいては、横Gセンサーと角速度センサーを関連付けることにより、車両の挙動を把握することが可能になり、車両挙動を安定化するための自動ブレーキ装置の実現を目的とするものである。そして、本件発明により、これまで関連付けがされてこなかった走行時の傾斜角と横Gの関係が明確になり、走行状態での車両挙動が評価できるようになり、傾斜走行時に傾斜角に応じ車両を安定に制御するための基準(規範横G)が計算できることとなり、車両傾斜時のブレーキアシストによる車両の安定制御が可能になる。(以上、【0001】【0003】、 【0008】【0010】【0012】、 、等)。

2 サポート要件違反があるか(争点4-1)について

5 本件発明1について

ア 本件発明1の構成要件1Fは、「前記信号演算として、横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法を少なくとも有し、」というものであり、構成要件1Hは、「当該車両において、前記傾斜角速度(Ψ)と前記補正後の横G(Ghosei)の組合せにより、車両挙動が判断され、・・・」というものであり、本件発明1は、算出された補正後の横G(Ghosei)を利用するECUによって車輪を適切に制動し、これによってロール方向の挙動の抑制を図る車両ブレーキ制御装置(構成要件1I)であるとされている。そして、本件発明1は、前記1のとおり、自動二輪車等の制御装置について、従来は、正確な傾斜角の検出ができなかったという課題を解決して、車両の走行状態での正確な横Gを検出できるようにしたというものである。これらからすると、構成要件1F及び1Hの「横G(Ghosei)」は、従来はできなかった正確な傾斜角の検出を行うなどした上で算出された、車両の傾斜走行状態での正確な横Gであると認められる。ここで、制動指令の前提となる「横G(Ghosei)」は、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った」(構成要件1F)ものであるとされていることから、「横G(Ghosei)」は、横加速度を検出する加速度センサーの検出値を基に、これに補正をかけて得られる値であると理解できる。もっとも、本件発明1の特許請求の範囲には、「横G(Ghosei)」について、単に加速度センサーの値から「ロールによる影響を取り除く演算を行った」(構成要件1F)と記載するのみで、どのような演算をするかは明示されていない。そうすると、特許請求の範囲には、従来の課題を解決するものを用いることのみが記載され、その解決のための構成は記載されていないといえる。イ 本件明細書には本件発明の意義として前記1のとおりの記載があり、車両

5 の正確な傾斜角の検出ができず、正確な横Gを検出できなかったという課題

を解決して、車両の走行状態での正確な横Gを検出できるようにしたというものであるとされている。もっとも、本件明細書には、従前は検出できなかった正確な傾斜角の検出をどのようにするかや、その傾斜角が判明した場合に正確な横Gを算出するためにどのような補正を行うかについての記載はない。他方、本件明細書には、センサーによる検出結果を補正して横Gを算出する方法として、Ghosei = Gken - (Ψ・Rhsen) (式A)との記載がある 【0073】。( ) 本件明細書の【0073】では、「Gken」は、実際の走行傾斜時に検出される検出横Gであるとされ、「Ψ」は傾斜角速度、「Ghosei」はΨを用いたGkenの補正後の横Gであるとされていて(なお、「Rhsen」について、本件明細書には定義がないものの、「hsen」について路面とセンサとの距離であることを示唆する記載があったり(【0050】【0058】【0061】、図8、9)「RはGセンサー、#23の実車取付けの高さ(図8b hsen)(」【0063】)との記載、Ψ・Rhsenについて、Rhsenに1を代入した上で「但し、センサー取り付け高さ Rを1mとする。」との記載(【0074】)があったりすることから、「Rhsen」車体を垂直にしたときのセンサ取り付け位置の高さであることを一応推測できる。、その「Ghosei」は、本件発明の課)題として言及されている「正確な横G」であると理解することができる。そして、式Aは、その体裁から、本件発明の意義(前記1参照)として記載されている、「横Gセンサー」で検出されたGkenと「角速度センサー」で検出されたΨを用いて「正確な横G」を算出する方法を記載した式であると理解できる。しかしながら、「Ψ・Rhsen」からは、傾斜角は算出されないし、式

5 Aから、傾斜角を算出することなく「正確な傾斜角の検出ができなかった諸

問題」が解決されていると理解することもできない。さらに、Ghosei及びGkenは、加速度の次元(長さ/時間2)を有し、Ψ・Rhsenは速度の次元(長さ/時間)の次元を有していることから、式Aは物理学上、明らかに意味を持たない式である(弁論の全趣旨)。そして、本件明細書には、式Aの他に、センサーによる測定値を基に「正確な横G」を算出する方法についての記載はない。ウ 本件明細書によれば、本件発明は、車両制御のためには「正確な横G」の取得が必要であるところ、横加速度を検出する加速度センサーの値をそのまま用いることができないこと、当該値から正確な横Gを算出するためには傾斜角度を取得することが必要だがそれができないことが課題として記載され、本件発明はその課題に対して、車両の傾斜走行状態での正確な横Gを算出したものであるとされており、「横加速度を検出する加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った」という「横G(Ghosei)」についての、当該演算が、本件発明の課題解決の根幹に当たる部分であるといえるといえる。しかしながら、特許請求の範囲には、その演算について、従来の課題を解決するに足りる構成は記載されていない。また、本件明細書の発明の詳細な説明をみても、関係する記載は前記イのとおりである。本件明細書の式A(【0073】)が、一応、上記の演算であると理解することはできるが、他に、関係する記載はない。そして、前記イのとおり、式Aは本件発明の課題とされている傾斜角を算出しない上、そもそも物理学上意味をなさない式であり、当業者はおよそ式Aを用いて車両制御に利用可能な横G(Ghosei)が算出できると理解できるものではない。エ 原告は、本件明細書の記載は、別紙対比表のとおり誤記があり、正しくは同表の「訂正後」欄記載のとおりであると主張する。構成要件1Fの「演

5 算」については、式Aのみが当たり得るところ、式Aは前記イで認定した

とおり、次元の異なる物理量の差し引きをしていることから物理学上意味をなさない式であり、当業者は、式Aに何らかの誤りがあると理解することができるといえる。この点について式Aについて、原告が主張するとおり.Ghosei=Gken-(Ψ・Rhsen) (式A´).(ただし、「Ψ」は傾斜角加速度)の誤記であると理解すれば、減算される物理量の次元が異なるという問題については解消される。しかし、次元を整える目的のみであれば、その訂正の方法は式A´とすることに限られるものではないのであり、他に解消方法を考え得るのであり、その考え得る解消方法が物理法則やそれを踏まえた技術常識等に照らして不合理であることを認めるに足りる証拠はない。そうすると、式Aの記載のみから、どのような誤記であるかのかが一義的に定まるものであるとはいえない。.さらに、原告は、式Aについて「Ψ」を「Ψ」に訂正するに当たって、そのままでは式Aに関する説明が記載されている【0073】のその他の記載と矛盾が生じるため、式Aのみならず、同段落における他の「Ψ」の.記載も「Ψ」に訂正し、1か所の「傾斜角速度」との記載も「傾斜角加速度」に訂正するものとしている。しかし、原告が主張する訂正により、訂正後の【0073】は、「この補正後の横G(Ghosei)は、(0063)式のGkenから傾斜角加速.度(Ψ)を用いた補正であり、

(0067)の式に対して、傾斜角が変化し

.ない状況である。すなわち、式の「Ψ・Rhsen」の項については、ゼロとなることから二つの式を整理し記述すると、・・・」との記載を含むこ.とになるが、傾斜角加速度(Ψ)がゼロであっても、傾斜角速度(Ψ)がゼロでないとき(定速傾斜時)は傾斜角が変化する状況なのだから、傾斜. .

5 角加速度(Ψ)に関する項「Ψ・Rhsen」がゼロであることは直ちに

「傾斜角が変化しない状況」を意味するものではないから、原告が主張する訂正をすると同記載部分の趣旨が理解できなくなってしまう。他方で、.当該箇所について、「Ψ」を「Ψ」に訂正しなければ、その内容は理解可能である。同様に、原告が主張する訂正後の【0073】の「・・・この様に、式.の「Ψ・Rhsen」の項について、ゼロにしたデーターは、定常円旋回時に得られたデーターと呼ばれることがある。・ 」・ ・ との記載についても、定常円旋回時には、傾斜角が一定になるため、「傾斜角速度」が0になるところ、「傾斜角加速度」に関する項が0になっても、「傾斜角」が変化しないとは限らない(傾斜角加速度が0の場合には、定速傾斜の場合も含まれる。)のであるから、訂正すると同記載部分の趣旨が理解できなくなってしまう。この点についても、当該箇所について訂正しなければその内容は理解可能である。さらに、式Aは、測定された加速度(Gken)を角速度(Ψ)の値によって補正する式であるといえるが、これは、「走行時の横Gセンサーと角速度センサーを関連付けることによって、従来は、正確な傾斜角の検出ができなかった諸問題を解決」(前記1)という本件明細書に記載されている課題解決の基本的な方法として明示されている手法に文言上最も沿うものである。他方、式Aを式A´に訂正すると少なくとも直接的にはこれに文言上最も沿うものとはいえない内容になってしまう。また、原告は、誤記を訂正した後の【0063】の記載によれば、傾斜走行時に検出される検出横G(Gken)には、ロール速度の変化の影響.である加速度成分(Ψ・Rhsen)が重畳されていること、重畳された当該加速度成分は、傾斜角速度センサーの速度変化である傾斜角加速度.(Ψ)を減算することで取り除くことができることが分かるなどと主張す

5 る。

しかし、前記イで説示したとおり、本件明細書においてセンサーで取得した加速度の値を修正して得られる制御に用いる加速度として言及されているのは【0073】の横G(Ghosei)のみであり、【0063】には、本件発明1の「横G(Ghosei)」の算出方法は記載されていない。仮に、【0063】に本件発明1に係る「加速度センサーのロール.による影響を取り除く演算」が「Ψ・Rhsen」を減算する趣旨であることを示唆する記載があると評価できるとしても、【0073】の方がより直接的な制御に用いる修正後の加速度を算出する方法に関する記載であると評価できるにもかかわらず、式Aについては、前記イで説示した問題がある。また、【0063】には、Gken=g・cosΦ・tanρ-Ψ・Rhen.(訂正後は「Gken=g・cosΦ・tanρ+Ψ・Rhsen」).という式が記載されており、訂正後の式には「Ψ・Rhsen」という項が含まれているものの、これを減算(訂正後は加算)した「g・cosΦ・tanρ」が物理学上、本件発明で算出することが課題とされている「正確な横G」に当たり、同物理量が判明すれば「正確な傾斜角の検出ができなかった諸問題」を解決できるものと理解できると認めるに足りる証拠はない。そうすると、仮に【0063】の記載が

(原告の主張)

するとおりの誤記であると認定できるとしても、当該式のみからでは、センサーによる検.出値である「Gken」から「Ψ・Rhsen」を減算することが課題解決につながり、構成要件1Fの「ロールによる影響を取り除く演算」に当たるものであると理解できるとはいえない。また、

(原告の主張)

中には、【0063】より前の【0061】【006、2】の記載から【0063】の記載が誤記であることが理解できると主張

5 する部分があるが、

【0061】、【0062】にも多数の誤記があり、「Ψ」.と「Ψ」に関する誤記のみならず「-」と「+」に関する誤記まであり、どの部分が誤記であるのか容易に理解できるとは認め難い。もともと、本件明細書では、その全体にわたって、その説明の当初から基本的に一貫して加速度の次元の物理量から角速度(周速度)の次元の物理量を加算ないし減算するという式を前提とする内容で説明が記載されていて、前記エで説示したとおり、当該式に直接関連しない部分についてもこれと矛盾しない内容になっていた。そのような本件明細書について、当該式を訂正すると別の部分と矛盾が生じる内容になっている。これらからすると、当業者は、本件明細書に記載の誤りがあることを理解するとしても、本件明細書において、本来どのようなことが記載されようとしていたのかや、どの部分がどのような誤記であるかを理解することができるとは認められない。以上のとおり、当業者は、式Aに含まれる項の次元が異なることから何らかの誤りがあることは理解できるものの、次元の違いによる問題を解消する方法は原告が主張する訂正に限られるものではなく、また、式Aの内容等から、次元の違いによる問題を解消するためには、式A´に訂正する以外の方法はないと当業者が理解できると認めるに足りる証拠はない。さらに、式Aの訂正と整合するように、本件明細書の式Aに関する記載部分を訂正していくと、それまで問題なかった明細書の記載の趣旨が理解できなくなったり、整合しなくなってしまうことが認められる。これらの事情からすると、本件明細書の記載から、式Aが式A´の誤記であると理解できるとはいえない。よって、式Aについて式A´の誤記であると理解できることを前提とする

(原告の主張)

はその前提を欠く。オ 本件発明1の意義は前記1のとおりである。そして、本件発明1の構成要件1Fには、従来の課題を解決するものを用いることのみが記載され、

5 その解決のための構成は記載されていないといえるところ、前記ウのと

おり、その課題の解決のための構成について、本件明細書に記載があるとはいえない。また、その記載がないにも関わらず、当該課題について、当業者がそれを解決できると認識できることを認めるに足りない。そうすると、本件発明1は、本件明細書に記載された説明で、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。よって、本件発明1は、本件明細書に記載された発明であるとはいえない。本件発明2についてア 本件発明2は、算出された補正後の横G(Ghosei)を利用する、自動二輪車の車両解析装置であるとされており、横G(Ghosei)の算出方法については、横加速度から加速度センサーの車両取り付け高さと傾斜角速度の積との差分を求めるものとされている。本件明細書においてこれに関する記載としては式Aに関する記載があるが、当該記載は本件明細書に記載された課題を解決する発明であると理解できないものであることについては、前記 で説示したとおりである。他に本件明細書には当該部分に係る記載があるとはいえない。よって、本件発明2は本件明細書に記載されている発明であるとはいえない。イ この点について、原告は、構成要件2Eの補正後の横G(Ghosei)の算出方法について、横加速度から加速度センサーの車両取り付け高さと「傾斜角速度」の積との差分との記載は、横加速度から加速度センサーの車両取り付け高さと「傾斜角加速度」の積との差分の誤記であると主張する。しかし、本件明細書には、補正後の横Gに関する記載は式Aに関する記載しかなく、ここには、「傾斜角加速度」の積との記載はない。原告は、式

5 Aが式A´の誤記であると主張するが、これが誤記であると理解できない

ことについては前記 エで説示したとおりである。そうすると、仮に構成要件2Eが2E´の誤記であると理解できるとしても、本件発明2が本件明細書に記載された発明であるとは認められない。よって、本件発明のいずれについても、本件明細書に記載された発明であるとはいえず、サポート要件を欠くものであると認められる。

第4 結論

以上のとおりであって、本件発明のいずれについてもサポート要件を欠き、これらの発明に係る特許について、特許無効審判により無効にされるべきものといえる。したがって、原告はその権利を行使することができず、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 杉 田 時 基裁判官 仲 田 憲 史別紙 本件明細書(記載省略)別紙 対比表訂正後 訂正前 備考【訂正特許請求の範囲】 【特許請求の範囲】【請求項4】 【請求項4】前記車両のECUにおいて、 前記車両のECUにおいて、前記信号演算として、加速度センサ 前記信号演算として、加速度センサーのロールによる影響を取り除く ーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の横G(Gho 演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法として、前記検 sei)の導出方法として、前記検出された横加速度(Gken)から 出された横加速度(Gken)から加速度センサーの車両取り付け高 加速度センサーの車両取り付け高さ(hsen)と前記検出された傾 さ(hsen)と前記検出された傾斜角速度(Ψ)の時間微分で得られ 斜角速度(Ψ)の積、との差分を求 追加る傾斜角加速度の積、との差分を求 めること、の導出方法を有する事、めること、の導出方法を有する事、 を特徴とする請求項1または請求を特徴とする請求項1または請求 項3に記載のブレーキ制御装置。項3に記載のブレーキ制御装置。【請求項7】 【請求項7】所謂自動二輪車であり少なくても 所謂自動二輪車であり少なくても2つの車輪を有する車両の車両解 2つの車輪を有する車両の車両解析に用いられる装置であって、該車 析に用いられる装置であって、該車両解析装置は、前記車両の車両挙動 両解析装置は、前記車両の車両挙動から得られた信号演算を行う装置 から得られた信号演算を行う装置であり、前記車両の車両挙動から得 であり、前記車両の車両挙動から得られる検出信号として、進行方向に られる検出信号として、進行方向に対して左右横方向の加速度を検出 対して左右横方向の加速度を検出する横加速度と、左右ロール方向の する横加速度と、左右ロール方向の状態を検出する傾斜角速度と、加速 状態を検出する傾斜角速度(A)ま 削除度センサーの車両取り付け高さと、 たは傾斜角度のどちらか一方もしが少なくとも入力されており、 くは両方と、加速度センサーの車両取り付け高さと、が少なくとも入力されており、信号演算として、前記傾斜角速度を 信号演算として、前記傾斜角速度少なくとも用い、 (A)または、前記傾斜角度の時間 削除微分で得られる傾斜角速度(B)のいずれかの傾斜角速度を少なくとも用い、前記横加速度の補正演算として、加 前記横加速度の補正演算として、加速度センサーのロールによる影響 速度センサーのロールによる影響を取り除く演算を行った補正後の を取り除く演算を行った補正後の横G(Ghosei)の導出方法と 横G(Ghosei)の導出方法として、前記横加速度から前記加速度 して、前記横加速度から前記加速度センサーの車両取り付け高さと前 センサーの車両取り付け高さと前記傾斜角速度の時間微分で得られ 記傾斜角速度(A)または傾斜角速 変更る傾斜角加速度の積、との差分を求 度(B)のいずれかの積、との差分め、 を求め、該導出された補正後の横G(Gho該導出された補正後の横G(Gho sei)に基づき車両解析がされるsei)に基づき車両解析がされる こと、を特徴とする挙動解析装置。こと、を特徴とする挙動解析装置。【訂正明細書】 【明細書】【0061】 【0061】走行中のハイブリットセンサー2 走行中のハイブリットセンサー2には、路面との距離hsenがあ 0には、路面との距離hsenがあり車両が左右にロール(ロール速度 り車両が左右にロール(ロール速度は角速度検出値(Ψ))することで は角速度検出値(Ψ))することでセンサーはタイヤを軸とする円周 センサーはタイヤを軸とする円周上の軌跡を通過することになるが 上の軌跡を通過することになるが角速度センサー22の変化は円周 角速度センサー22の変化は円周上の軌跡上の速度変化として発生 上の軌跡上の速度変化として発生する。すなわち、速度変化は加速度 する。すなわち、速度変化は加速度であるから加速度センサー23に であるから加速度センサー23に重畳され検出されるため角加速度 重畳され検出されるため角速度に 追加による補正項を減算する必要があ よる補正項を減算する必要がある。る。 以上のことから、走行傾斜時に検出以上のことから、走行傾斜時に検出 されるべく横G(Gken)の考えされるべく横G(Gken)の考え 方は、方は、 Gken=(ベクトル(C) -) (ベGken=(ベクトル(C) -) (ベ クトル(D’))-(Ψ)となる。 変更.クトル(D’))+(Ψ)となる。 変更【0062】 【0062】それぞれのベクトルを式として表 それぞれのベクトルを式として表せば せばGken=(g・sinΦ) {A’ Gken=- ・ (g・sinΦ) {A’- ・cos(90-Φ+ρ)}・cos cos(90-Φ+ρ)}・cosΦ Φ.+(Ψ・Rhsen) -(Ψ・Rsen) 変更式を整理し 式を整理し 変更Gken=g{sinΦ-tan Gken=g{sinΦ-tan 追加.(Φ-ρ)・cosΦ}+Ψ・Rh (Φ-ρ)・cosΦ}-Ψ・Rs 変更sen enρは、前記したようにΦの一時関数 ρは、前記したようにΦの一時関数とするとき とするときGken=g{sinΦ-tan Gken=g{sinΦ-tan.(Φ・Kp)・cosΦ}+Ψ・R (Φ・Kp)・cosΦ}-Ψ・R 変更hsen sen 追加を導くことができる。 を導くことができる。【0063】 【0063】この式のg{sinΦ-tan(Φ・ この式のg{sinΦ-tan(Φ・Kp)・cosΦ}の部分は、重力 Kp)・cosΦ}の部分は、重力成分と遠心力成分の差分を求める 成分と遠心力成分の差分を求める構成になっているため、直接傾斜の 構成になっているため、直接傾斜の戻り角から求める式に変換すれば、 戻り角から求める式に変換すれば、Gken=g・cosΦ・tanρ Gken=g・cosΦ・tanρ.+Ψ・Rhsen -Ψ・Rhen 変更と変形でき、シンプルな式になる。 と変形でき、シンプルな式になる。ここで、表されるΦは車両の理論バ ここで、表されるΦは車両の理論バンク角度であり理論傾斜角でもあ ンク角度であり理論傾斜角でもある、傾斜角速度センサー22から検 る、傾斜角速度センサー22から検出される角速度Ψ(rad/se 出される角速度Ψ(rad/sec)を時間積分して得られた角度で c)を時間積分して得られた角度であり、ρは傾斜戻り角であり、Rは あり、ρは傾斜戻り角であり、RはGセンサー#23の実車取付けの Gセンサー#23の実車取付けの高さ(図8bhsen)をそれぞれ 高さ(図8bhsen)をそれぞれ示している。 示している。ここでのセンサーの配置と検出に ここでのセンサーの配置と検出について明確にする。 ついて明確にする。センサーの配置については、(00 センサーの配置については、(00)文中にも「・・・路面との距 61)文中にも「・・・路面との距離hsenがあり、センサーはタイ 離hsenがあり、センサーはタイヤを軸とする円周上軌跡を通過す ヤを軸とする円周上軌跡を通過する・・・」ことが(0062)式の る・・・」ことが(0062)式の「・・・(Ψ・Rsen)」で記述 「・・・(Ψ・Rsen)」で記述される。センサーの検出方向として される。センサーの検出方向としての軸は、横方向の加速度であり、(図 の軸は、横方向の加速度であり、(図b))及び(図9)のGkenが 8b))及び(図9)のGkenが示す方向であり、前記の円周との接 示す方向であり、前記の円周との接線といえる。すなわち、車体の倒立 線といえる。すなわち、車体の倒立が鉛直線と一致するとき車体中心 が鉛直線と一致するとき車体中心線は鉛直線と重なり、円周上の半径 線は鉛直線と重なり、円周上の半径hsenで定まる高さのポイント hsenで定まる高さのポイントも前記の接線も一点で合致し横加 も前記の接線も一点で合致し横加速度補正に用いるRsenは理想 速度補正に用いるRsenは理想に近づく。しかしながら、センサー に近づく。しかしながら、センサーの実車への配置が車体中心線から の実車への配置が車体中心線から離れると円周上の軌跡とGセンサ 離れると円周上の軌跡とGセンサーの検出方向(接線)とが離れてい ーの検出方向(接線)とが離れていく事象が生じることから、Rsen く事象が生じることから、Rsenとhsenが等しくならず無視で とhsenが等しくならず無視できない状況に陥ると傾斜角度によ きない状況に陥ると傾斜角度による補正などが必要になってくる。よ る補正などが必要になってくる。よって、センサー配置は重心位置近く って、センサー配置は重心位置近くであり車体中心線上にあるのが望 であり車体中心線上にあるのが望ましい。 ましい。【0064】 【0064】g・cosΦ・tanρを第一項と g・cosΦ・tanρを第一項と.し、Ψ・Rhsenを第二項として し、Ψ・Rhsenを第二項として 変更説明する。 説明する。【0073】 【0073】続いて、制御装置として構築する方 続いて、制御装置として構築する方法に移る。 法に移る。実際の走行傾斜時に検出される検 実際の走行傾斜時に検出される検出横G(Gken)は、傾斜角の時 出横G(Gken)は、傾斜角の時.間的変化である傾斜角加速度(Ψ) 間的変化である傾斜角速度(Ψ)を 追加を用いた補正が必要であることか 用いた補正が必要であることから 変更ら補正後の横G(Ghosei)は 補正後の横G(Ghosei)は.Ghosei=Gken-(Ψ・R Ghosei=Gken-(Ψ・R 変更hsen) hsen)として表される。 として表される。この補正後の横G(Ghosei) この補正後の横G(Ghosei)は、(0063)式のGkenから は、(0063)式のGkenから.傾斜角加速度(Ψ)を用いた補正で 傾斜角速度(Ψ)を用いた補正であ 追加あり、(0067)の式に対して、 り、(0067)の式に対して、傾 変更傾斜角が変化しない状況である。す 斜角が変化しない状況である。すな.なわち、式の「Ψ・Rhsen」の わち、式の「Ψ・Rhsen」の項 変更項については、ゼロとなることから については、ゼロとなることから二二つの式を整理し記述すると、上記 つの式を整理し記述すると、上記ののGhoseiの等号式は、 Ghoseiの等号式は、Ghosei=Gken=g・co Ghosei=Gken=g・cosΦ・tanρ=理論検出横G(G sΦ・tanρ=理論検出横G(Gkihan) kihan).の関係となる。この様に、式の「Ψ・ の関係となる。この様に、式の「Ψ・ 変更Rhsen」の項について、ゼロに Rhsen」の項について、ゼロにしたデーターは、定常円旋回時に得 したデーターは、定常円旋回時に得られたデーターと呼ばれることが られたデーターと呼ばれることがある。 ある。そして、これらの理論検出横Gの上 そして、これらの理論検出横Gの上記等号式に関わる上記変数には、傾 記等号式に関わる上記変数には、傾斜角の範囲全体に渡り、傾斜角に応 斜角の範囲全体に渡り、傾斜角に応じ検出される車両特有の横加速度 じ検出される車両特有の横加速度の数値が関係として導かれる。 の数値が関係として導かれる。【0074】 【0074】.補正項として用いているΨ・Rhs 補正項として用いているΨ・Rhs 変更enの部位の影響度はゆっくりの enの部位の影響度はゆっくりのスラローム走行で発生し得るロー スラローム走行で発生し得るロール速度の変化を1秒間に0→0.2 ル速度の変化を1秒間に0→0.2π「rad/sec」(45de 5π「rad/sec」(45deg/sec)変化だったと想定した g/sec)変化だったと想定した場合発生するG(Grol)は 場合発生するG(Grol)はGrol=0.25*3.14*1 Grol=0.25*3.14*1=0.785「m/s^2」(但し、 =0.785「m/s^2」(但し、センサー取り付け高さRを1mと センサー取り付け高さRを1mとする。) する。)であり、重力加速度9.81「m/ であり、重力加速度9.81「m/s^2」との影響度は0.785/ s^2」との影響度は0.785/.81を算出すると約8%となり 9.81を算出すると約8%となり制御を考える際、無視できない項目 制御を考える際、無視できない項目であることが分かる。 であることが分かる。よって、補正の必要性が裏づけされ よって、補正の必要性が裏づけされる。 る。傾斜時の規範横G(Gkihan) 傾斜時の規範横G(Gkihan)と実際に走行時に発生する補正を と実際に走行時に発生する補正を行った横G(Ghosei)から、 行った横G(Ghosei)から、目標値を得るための制御値を求め 目標値を得るための制御値を求めるには偏差をとればよい。 るには偏差をとればよい。すなわち、スムーズで安定した走行 すなわち、スムーズで安定した走行でいるときには前記したように規 でいるときには前記したように規範Gとなることから補正後の検出 範Gとなることから補正後の検出横Gと規範Gとの差分を下記の式 横Gと規範Gとの差分を下記の式から偏差G(Ghensa)を から偏差G(Ghensa)をGhensa=Ghosei-G Ghensa=Ghosei-Gkihan kihan求めることができる。 求めることができる。【0085】 【0085】「請求項2」に記述される、 「請求項2」に記述される、車両に搭載された車両挙動検出用 車両に搭載された車両挙動検出用センサーとして、進行方向に対して センサーとして、進行方向に対して左右横方向加速度を検出する加速 左右横方向加速度を検出する加速度センサー及び進行方向に対して 度センサー及び進行方向に対して左右ロール方向角速度を検出する 左右ロール方向角速度を検出する角速度センサーを少なくとも搭載 角速度センサーを少なくとも搭載する車両において、 する車両において、「請求項1」の車両傾斜角度の検出 「請求項1」の車両傾斜角度の検出を角速度センサーから検出された を角速度センサーから検出された角速度出力(Ψ)の値を時間積分し 角速度出力(Ψ)の値を時間積分して得られる車体の理論バンク角 て得られる車体の理論バンク角(Φ)及び直進走行時のタイヤ路面 (Φ)及び直進走行時のタイヤ路面接地点と傾斜走行時のタイヤ路面 接地点と傾斜走行時のタイヤ路面接地点の位置移動によって定義さ 接地点の位置移動によって定義される理論バンク角の傾斜戻り角 れる理論バンク角の傾斜戻り角(ρ)より、理論バンク角から傾斜 (ρ)より、理論バンク角から傾斜戻り角を減算した実バンク角(Φ- 戻り角を減算した実バンク角(Φ-ρ)値を算出し、走行時に発生する ρ)値を算出し、走行時に発生する左右横方向加速度を 左右横方向加速度を) 傾斜走行時の理論検出横G、 (G 1) 傾斜走行時の理論検出横G、 (Gkihan)を kihan)をGkihan=g{sinΦ-ta Gkihan=g{sinΦ-tan(Φ-ρ)・cosΦ} n(Φ-ρ)・cosΦ}または またはGkihan=g・cosΦ・ta Gkihan=g・cosΦ・tanρ nρの式を用いた規範G値の算出、を行 の式を用いた規範G値の算出、を行う「請求項1」の具現化した算出方 う「請求項1」の具現化した算出方法 法)、走行時に変化する実際の検出 2)、走行時に変化する実際の検出横G(Gken)を少なくとも傾斜 横G(Gken)を少なくとも傾斜角の時間微分(dΦ/dt)値であ 角の時間微分(dΦ/dt)値であ.る傾斜角加速度(Ψ)を用いた補正 る傾斜角速度(Ψ)を用いた補正を 追加を行い、補正後の横G(Ghose 行い、補正後の横G(Ghosei) 変更i)を を.Ghosei=Gken-(Ψ・R Ghosei=Gken-(Ψ・R 変更hsen) hsen)の式を用いて補正した値の算出G の式を用いて補正した値の算出G値、 値、)、1)から求めた理論検出横G 3)、1)から求めた理論検出横G(Gkihan)と2)から求めた (Gkihan)と2)から求めた補正後の横G(Ghosei)の差 補正後の横G(Ghosei)の差分を算出した偏差横G(Ghens 分を算出した偏差横G(Ghensa)を a)をGhensa=Ghosei-G Ghensa=Ghosei-Gkihan kihanの式を用いて偏差の値の算出G値、 の式を用いて偏差の値の算出G値、上記1)、2)、3)から、3種類 上記1)、2)、3)から、3種類の横G値Gkihan、Ghose の横G値Gkihan、Ghosei、Ghensa、を算出し車両の i、Ghensa、を算出し車両の挙動をGhensaの値から、 挙動をGhensaの値から、Ghensa≒0(ゼロ)ならばニ Ghensa≒0(ゼロ)ならばニュートラルステアー(N.S.) ュートラルステアー(N.S.)Ghensa>0(正)ならばオー Ghensa>0(正)ならばオーバーステアー(O.S.) バーステアー(O.S.)Ghensa<0(負)ならばアン Ghensa<0(負)ならばアンダーステアー(U.S.) ダーステアー(U.S.)と判断され、Ghensaの符号と と判断され、Ghensaの符号と値に基づき演算式又はテーブルに 値に基づき演算式又はテーブルに従って、前輪後輪へのブレーキ配分 従って、前輪後輪へのブレーキ配分が決定される事を特徴とする二輪 が決定される事を特徴とする二輪車のブレーキ装置、 車のブレーキ装置、について説明する。 について説明する。【0086】 【0086】項目1)は、バンク角によって理想 項目1)は、バンク角によって理想的な横Gが存在しており車両が安 的な横Gが存在しており車両が安定して走行している際には表1で 定して走行している際には表1で示したように安定した遠心力の発 示したように安定した遠心力の発生になることから、車両のロールに 生になることから、車両のロールによる角加速度の補正項を取り除い よる角速度の補正項を取り除いた 追加た傾斜と遠心力とのバランス状態 傾斜と遠心力とのバランス状態をを検出することである。よって、セ 検出することである。よって、センンサーからの検出G(Gken)か サーからの検出G(Gken)からら補正項を取り除き記述すれば規 補正項を取り除き記述すれば規範範横Gは、Gkihan=g・co 横Gは、Gkihan=g・cossΦ・tanρの様に表される。 Φ・tanρの様に表される。【0087】 【0087】項目2)は、走行時の傾斜により検 項目2)は、走行時の傾斜により検出された検出G(Gken)は車両 出された検出G(Gken)は車両のロールによる誤差が重畳される のロールによる誤差が重畳されるためロール成分を取り除くために ためロール成分を取り除くために角加速度の補正を行うことが必要 角速度の補正を行うことが必要と 追加となる。すなわち、センサーからの なる。すなわち、センサーからの検検出G(Gken)から規範G成分 出G(Gken)から規範G成分のの部位を実際の検出される横G(G 部位を実際の検出される横G(Gkken)に置換え、角加速度による en)に置換え、角速度による補正 追加補正を行えば規範同様にロールに を行えば規範同様にロールによるよる影響を排除した補正後の制御 影響を排除した補正後の制御で使で使用できるG(hosei)が導 用できるG(hosei)が導け、け、.Ghosei=Gken-(Ψ・R Ghosei=Gken-(Ψ・R 変更hsen)の様に表される。 hsen)の様に表される。ここで補正項として傾斜角加速度 ここで補正項として傾斜角速度を 追加を加味している理由は、前記したよ 加味している理由は、前記したよううに制御上無視できない要素にな に制御上無視できない要素になっっているためである。その他にもセ ているためである。その他にもセンンサー取り付け高さが加速減速に サー取り付け高さが加速減速によよる高さの変化、タイヤ空気圧、タ る高さの変化、タイヤ空気圧、タイイヤ横ずれ量等々により変化する ヤ横ずれ量等々により変化するななど、補正項は考えられるが重要な ど、補正項は考えられるが重要なもものに絞る。 のに絞る。以上別紙 被告自動二輪車目録(記載省略)別紙 新規性、進歩性に係る

(被告の主張)

1 新規性について

(1)本件発明1と乙9公報に記載された発明との対比

ア 構成要件1Aについて

5 乙9公報には以下の記載がある。

「本発明は、自動二輪車の運動状態を制御する自動二輪車の制御装置及び自動二輪車の駆動システムに関し」(段落0001)「出力トルク演算部123は、決定した駆動力Fxを発生させるために必要なモータ14の出力トルク指示値ITmをモータ制御部16に出力する。」(段落0080)乙9公報には、上記のように、自動二輪車の駆動力を調整することについて記載されているが、ブレーキを制御することについて明示的な記載はない。しかし、

(原告の主張)

によれば、本件発明1の「ブレーキ制御装置」は、エンジン出力、すなわち、車両の駆動力を調整する装置をも広く含む概念ということになる。したがって、原告の上記主張を前提とすれば、構成要件1Aは乙9公報に記載されている。イ 構成要件1Bについて乙9公報には以下の記載がある。「センサ部110は、車速センサ111、操舵角センサ112、ヨーレートセンサ113、横加速度センサ114及び傾斜角センサ115によって構成されている。(段落0035)」「車両制御部120は、センサ部110を構成する各センサから出力されたデータに基づいて、自動二輪車10の運動状態を判定し、自動二輪車10をニュートラルステアに近付けるように制御する。(段落0039)」乙9公報の「車速センサ111」は、構成要件1Bの「車体速検出装置」に該当する。乙9公報の「横加速度センサ114及び傾斜角センサ115」は、構成要件1Bの「車両挙動検出装置」に該当する。乙9公報の「車両制御部120」は、構成要件1Bの「ECU(コントロールユニット)」に該当する。

5 また、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件1Bの「制動装置」は、車両の駆動力を調整するための装置を広く包含する概念ということになる。これらによれば、構成要件1Bは乙9公報に記載されている。ウ 構成要件1Cについて乙9公報には以下の記載がある。「車速センサ111は、上述したように、前輪11近傍に装着されており、自動二輪車10の車速Vを検出する。(段落0036)」上記記載は、車速センサ111が、前輪11の回転速度に基づいて車体速度を検出するセンサであることを示すものである。これによれば、構成要件1Cは乙9公報に記載されている。エ 構成要件1Dについて乙9公報には以下の記載がある。「傾斜角センサ115は、自動二輪車10に生じる傾斜角、具体的には、自動二輪車10のバンク角θを検出する。(段落0038)」「横加速度センサ114は、自動二輪車10に生じる横加速度g yを検出する。(段落0037)」傾斜角センサ115が検出する「バンク角θ」は、「左右ロール方向」の状態に該当する。また、横加速度センサ114が検出する「横加速度gy」は、「左右横方向の状態」に該当する。これらによれば、構成要件1Dは乙9公報に記載されている。オ 構成要件1Eについて乙9公報には以下の記載がある。「車両制御部120は、自動二輪車10の運動状態や、モータ14からフィードバックされるモータ実電流値iに基づいて、自動二輪車10がニュートラルステアに近付くような出力トルク指示値ITmを決定する。」(段落0040)

5 上記における「自動二輪車10の運動状態や、モータ14からフィードバ

ックされるモータ実電流値i」は、構成要件1Eの「検出された信号演算と車両挙動」に該当する。また、車両制御部120が行う「出力トルク指示値ITmを決定する」処理は、構成要件1Eの「目標制動力演算及び制動装置へ制動指令」に該当する。以上のとおり、構成要件1Eは乙9公報に記載されている。カ 構成要件1Fについて乙9公報には以下の図4が記載されている。【乙9公報の図4】上記の図4は、横加速度gyと傾斜角θ(バンク角)を含む複数の検出信号に基づいて、横滑り加速度に相当するタイヤ横力Fy’を算出することを示すものである。乙9公報には、「加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」を行うことや、当該演算を行った「補正後の横G(Ghosei)の導出方法」については明示的には記載されていない。しかし、原告は、二輪車において、横加速度の検出値を用いる制御を行う場合には、実用性を確保するために、横加速度の検出値に対する「上記補正」(傾斜角速度の減算補正(? ? − ℎ?̇ ? ))が必ず行われているはずであり、当該補正は、構成要件1Fの「加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」に該当すると主張しており、仮に、原告の上記主張を前提とすれば、乙9公報の図4に示さ

5 れる制御も、横加速度gyをそのまま用いてはおらず、実用性確保のために、

横加速度gyについて傾斜角速度の減算補正(? ? − ℎ?̇ ? )を行っており、当該補正は、構成要件1Fの「加速度センサーのロールによる影響を取り除く演算」に該当するということになる。これらによれば、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件1Fは乙9公報に記載されている。キ 構成要件1G1について乙9公報には以下の記載がある。「モータ制御部16は、車両制御部120によって出力された出力トルク指示値ITmに応じて、インバータ15に供給する出力電流値を制御する。」(段落0041)モータ制御部16が行う制御により、インバータ15に供給する出力電流値が変化すると、車両の速度は変化する。このような速度変化には、減速及び加速の両方が含まれることは明らかである。したがって、構成要件1G1は乙9公報に記載されている。ク 構成要件1G2について乙9公報には以下の記載がある。「本発明は、電気モータに限らず他のパワーユニット(例えば、エンジン)にも適用することができる。(段落0095)」乙9公報に記載の発明を、エンジンを搭載した自動二輪車に適用する場合には、エンジンブレーキによる駆動力の調整が行われることとなる。したがって、構成要件1G2は乙9公報に記載されている。ケ 構成要件1Hについて前記カ(構成要件1Fについて)のとおり、乙9公報には、「補正後の横G(Ghosei)」の導出方法等については明示的には記載されていない。しかしながら、

(原告の主張)

(前記カの主張)を前提とすれば、乙9公報の図

5 4等に示される制御も、

「補正後の横G(Ghosei)」を用いた制御ということになり、補正後の横Gを制御に用いることは、『傾斜角速度(Ψ)「 』及び『補正後の横G(Ghosei)』の『組み合わせ』に相当する。」ということになる。したがって、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件1Hは乙9公報に記載されている。コ 構成要件1Iについて乙9公報には以下の記載がある。「出力トルク演算部123は、補正ヨーモーメントMC、及び上述した(式9)を用いて、補正ヨーモーメントMCに応じたタイヤ横力Fy’(具体的には、Fy’R)を演算する。(段落0078)」「出力トルク演算部123は、補正ヨーモーメントM Cに応じたタイヤ横力Fy’及び摩擦円データDに基づいて、補正ヨーモーメントM Cに応じたタイヤ横力Fy’に対応する駆動力Fx(具体的には、FxR)を決定する。」(段落0079)「出力トルク演算部123は、決定した駆動力Fxを発生させるために必要なモータ14の出力トルク指示値ITmをモータ制御部16に出力する。」(段落0080)前記アの

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件1Bの「制動」は、車両の駆動力を調整することを広く包含する概念ということになる。また、乙9公報の「タイヤ横力Fy’に対応する駆動力Fx」を決定し発生させる処理は、ロール方向の挙動の抑制を図る処理に該当する。以上のように、構成要件1Iは乙9公報に記載されている。サ 小括以上のとおり、仮に、本件発明と被告製品との対比にかかる

(原告の主張)

を前提とすれば、乙9公報には、本件発明1の構成要件1Aないし1Iの全て

5 が記載されていることになる。したがって、本件発明1は、本件特許の出願

前に頒布された刊行物である乙9公報に記載された発明であり、新規性を欠く。

(2)本件発明2と乙9公報に記載された発明との対比

ア 構成要件2Aについて乙9公報には以下の記載がある。「本発明は、自動二輪車の運動状態を制御する自動二輪車の制御装置及び自動二輪車の駆動システムに関し」(段落0001)「車両制御部120は、自動二輪車10の運動状態や、モータ14からフィードバックされるモータ実電流値iに基づいて、自動二輪車10がニュートラルステアに近付くような出力トルク指示値ITmを決定する。」(段落0040)「自動二輪車10がニュートラルステアに近付くような出力トルク指示値ITm」を決定する処理は、自動二輪車10の運動状態等に基づいて行われる処理であるから、車両制御部120が車両の車両解析を行っていることは明らかである。したがって、構成要件2Aは乙9公報に記載されている。イ 構成要件2Bについて乙9公報には以下の記載がある。「車両制御部120は、自動二輪車10の運動状態や、モータ14からフィードバックされるモータ実電流値iに基づいて、自動二輪車10がニュートラルステアに近付くような出力トルク指示値ITmを決定する。」(段落0040)上記の処理は、構成要件2Bの「前記車両の車両挙動から得られた信号演算」を行う処理に該当する。したがって、構成要件2Bは乙9公報に記載されている。

5 ウ 構成要件2Cについて

乙9公報には以下の記載がある。「横加速度センサ114は、自動二輪車10に生じる横加速度g yを検出する。(段落0037)」「傾斜角センサ115は、自動二輪車10に生じる傾斜角、具体的には、自動二輪車10のバンク角θを検出する。(段落0038)」「なお、バンク角演算部121Bには、傾斜角センサ115に代えて、ロールレートセンサを接続してもよい。この場合、バンク角演算部121Bは、ロールレートセンサによって出力されるロールレートrと、(式3)とを用いてバンク角θを演算することができる。(段落0048)」このように、乙9公報には、車両の横加速度、傾斜角速度(ロールレートr) 傾斜角度、 (バンク角θ)のそれぞれを車両挙動として得ることが記載されている。乙9公報には、「加速度センサーの車両取り付け高さ」については明示的には記載されていない。しかし、

(原告の主張)

を前提とすれば、乙9公報の車両制御部120も、 ? − ℎ?̇ ? )(? の演算を行っているはずであるから、車両制御部120には「加速度センサーの車両取り付け高さ」であるhが入力されているということになる。すなわち、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件2Cは乙9公報に記載されている。エ 構成要件2Dについて乙9公報には以下の記載がある。「傾斜角センサ115は、自動二輪車10に生じる傾斜角、具体的には、自動二輪車10のバンク角θを検出する。(段落0038)」「なお、バンク角演算部121Bには、傾斜角センサ115に代えて、ロールレートセンサを接続してもよい。この場合、バンク角演算部121Bは、ロールレートセンサによって出力されるロールレートrと、(式3)とを用

5 いてバンク角θを演算することができる。(段落0048)

」このように、乙9公報には、ロールレートセンサによってロールレートrを検出することが記載されている。ロールレートrは、構成要件2Dにおける「前記傾斜角速度(A)」に該当する。したがって、構成要件2Dは乙9公報に記載されている。オ 構成要件2Eについて乙9公報には、「補正後の横G」やその導出方法については明示的には記載されていない。しかし、上記ウ(構成要件2Cについて)で述べたように、

(原告の主張)

を前提とすれば、乙9公報に示される制御も、実用性を確保するために、ロールによる影響を取り除く補正、具体的には傾斜角速度の減算補正(? ? − ℎ?̇ ? )を必ず行っているということになる。減算補正(? ? − ℎ?̇ ? )は、横加速度から加速度センサーの車両取り付け高さと傾斜角速度(A)との積、との差分を求め、補正後の横G(Ghosei)を導出する処理に他ならない。したがって、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件2Eは乙9公報に記載されている。カ 構成要件2Gについて乙9公報には、「補正後の横G」に基づく車両解析については明示的には記載されていない。しかし、上記ウ(構成要件2Cについて)で述べたように、

(原告の主張)

を前提とすれば、乙9公報に示される制御も、実用性を確保するために、補正後の横G(Ghosei)を導出する処理や、補正後の横G(Ghosei)に基づく車両解析等を行っているということになる。したがって、

(原告の主張)

を前提とすれば、構成要件2Gは乙9公報に記載されている。キ 小括以上のとおり、仮に、本件発明2と被告製品との対比にかかる

(原告の主張)

5 を前提とすれば、乙9公報には、本件発明2の構成要件2AないしGの全て

が記載されていることになる。したがって、本件発明2は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である乙9公報に記載された発明であり、新規性を欠く。

2 進歩性について

前記1のとおり、仮に、

(原告の主張)

を前提とすれば、乙9公報には、本件発明1の構成要件1Aないし1Iの全て、及び、本件発明2の構成要件2Aないし2Gの全てが記載されており、少なくとも、本件発明1及び本件発明2は、いずれも、乙9公報に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た。また、

(原告の主張)

(構成要件1F及び構成要件2Eの「ロールによる影響を取り除く演算」が「 ? − ℎ?̇ ? )の演算」を含むものである。(? )を前提とすれば、これらの構成は、本件特許の出願時に公知であった「二輪車の運動方程式構築の基礎知識」と題する資料(以下「乙6資料」という。)に記載されている。したがって、本件発明1及び本件発明2は、乙9公報に記載された発明及び/又は乙6資料に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであり、進歩性を欠く。以上

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