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令和5(行ケ)10069審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年3月25日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社アンド
被告株式会社パラット
対象物 半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、およ5び製品の製造方法
法令 特許権
特許法29条2項6回
特許法181条2項1回
民事訴訟法114条1回
キーワード 審決85回
無効29回
進歩性24回
無効審判15回
抵触3回
特許権1回
新規性1回
実施1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1 特許庁における手続の経緯等(争いのない事実及び当裁判所に顕著な事実以
17)を「本件明細書」という。)。
2)。)について特許無効審判の請求をし、特許庁は、無効2019-80009
4号事件として審理した。15
4-7〕について訂正することを認める。特許第6138324号の請求項1、2、
5ないし7に係る発明についての特許を無効とする。特許第6138324号の請
2)。
0136号)及び原告の訴えに係る事件(同第10138号)を併合審理した上、
2 本件特許に係る本件訂正後の発明の要旨(甲17、21から25まで)
3 本件審決の理由の要旨(原告は、本件審決において、特許の無効理由として
5つの事由(新規性欠如、進歩性欠如、拡大先願、サポート要件違反、明確性要件
95938号公報)に記載された発明(以下「甲1引用発明」という。)を主引用
9(日本金属学会誌65巻1号(平成13年)の21~28頁に掲載された「溶融20
98号公報)及び甲13(特開2015-221449号公報)に図示されるよう
6に加え、以下の相違点7を有する。5
6に加え、以下の相違点8を有する。
6に加え、以下の相違点9を有する。
1 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
59】)。15
4】、【0037】)において好適であるとされている条件の半田片(直径0.6
6又は7の構成に容易に想到し得たとはいえない旨の本件審決の判断は誤りである。
2 取消事由2(相違点4についての判断の誤り)について
7の構成に容易に想到し得たとはいえない旨の本件審決の判断は誤りである。
3 取消事由3(相違点5についての判断の誤り)について
4の「当接位置規制手段」に相当するから、甲1発明の「半田鏝の先端部の貫通孔
1発明の「半田鏝の先端部の貫通孔の内径」を局所的に拡大すれば、相違点5に係20
4 第一次判決(審決取消判決)の拘束力について
1 第一次判決(審決取消判決)の拘束力について25
2 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について25
3 取消事由2(相違点4についての判断の誤り)について10
4 取消事由3(相違点5についての判断の誤り)について
1発明において、甲11から13までに記載されたように先端部の内径を局所的に20
1引用発明に基づく本件発明4の進歩性欠如を主張することができず、したがって、
1 認定事実
3のとおりであるが、結局、次のとおり要約することができる。
2 本件発明1等に係る本件特許について(審決取消判決の拘束力)
28日第三小法廷判決参照)。
3 本件発明4に係る本件特許について(請求棄却判決の既判力)
28号)民集30巻2号79頁の趣旨を踏まえると、特許発明の進歩性判断が問題
4 結論25
事件の概要 本件は、特許無効審判請求に係る不成立審決の取消訴訟である。争点は、①後記 第一次判決の効力により特許発明の進歩性に係る原告の主張が許されないか否か、 ②特許発明の進歩性の有無である。

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判決文

令和6年3月25日判決言渡
令和5年(行ケ)第10069号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年1月24日
判 決
原 告 株 式 会 社 ア ン ド
同訴訟代理人弁護士 飯 島 歩
藤 田 知 美
10 三 品 明 生
同訴訟代理人弁理士 山 田 茂 樹
被 告 株 式 会 社 パ ラ ッ ト
15 同訴訟代理人弁理士 西 原 広 徳
野 呂 亮 仁
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2019-800094号事件について令和5年5月22日にした
審決中、特許第6138324号の請求項1、2及び4から7までに係る発明につ
いての審判請求は成り立たないとした部分を取り消す。
25 第2 事案の概要
本件は、特許無効審判請求に係る不成立審決の取消訴訟である。争点は、①後記
第一次判決の効力により特許発明の進歩性に係る原告の主張が許されないか否か、
②特許発明の進歩性の有無である。
1 特許庁における手続の経緯等(争いのない事実及び当裁判所に顕著な事実以
外の事実については、後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定した。)
5 被告は、名称を「半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、およ
び製品の製造方法」とする発明についての特許(特許第6138324号。以下
「本件特許」という。)の特許権者である。
本件特許については、平成28年7月30日(以下「本件出願日」という。)、
特願2016-150884号として特許出願がされ、平成29年5月12日、設
10 定登録がされた(甲17。以下、本件特許に係る設定登録時の明細書及び図面(甲
17)を「本件明細書」という。)。
原告は、令和元年11月12日、本件特許(請求項の数は6。なお、設定登録時
の請求項の数は7であったが、その後、請求項3が削除された(甲17、21、2
2)。)について特許無効審判の請求をし、特許庁は、無効2019-80009
15 4号事件として審理した。
被告は、令和3年5月6日、本件特許の請求項1、2及び4から7までについて
訂正請求をし(甲23、24)、同月21日、手続補正書(方式)(甲25)によ
って同訂正請求を補正した(以下、この補正後の訂正請求による訂正を「本件訂正」
という。なお、本件訂正において、本件明細書の変更はない。)。
20 特許庁は、令和3年10月8日、「特許第6138324号の特許請求の範囲を
訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、
4-7〕について訂正することを認める。特許第6138324号の請求項1、2、
5ないし7に係る発明についての特許を無効とする。特許第6138324号の請
求項4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決(以下「第一
25 次審決」という。)をした(甲39)。
被告は、令和3年11月13日、第一次審決のうち請求項1、2及び5から7ま
でに係る発明についての本件特許を無効とした部分の取消しを求める訴えを提起し、
原告は、同月16日、第一次審決のうち請求項4に係る発明についての本件特許に
対する審判請求は成り立たないとした部分の取消しを求める訴えを提起した(乙2
2)。
5 知的財産高等裁判所は、被告の訴えに係る事件(同裁判所令和3年(行ケ)第1
0136号)及び原告の訴えに係る事件(同第10138号)を併合審理した上、
令和4年8月31日、被告の請求を認容し、原告の請求を棄却する旨の判決(以下
「第一次判決」という。)を言い渡し、第一次判決は、その後確定した(甲39、
乙22)。
10 特許庁は、本件特許に係る原告の特許無効審判請求につき再審理した上、令和5
年5月22日、「特許第6138324号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付さ
れた訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4-7〕について訂
正することを認める。特許第6138324号の請求項1、2、4ないし7に係る
発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」とい
15 う。)をし、その謄本は、同年6月3日、原告に送達された。
原告は、令和5年6月29日、本件審決のうち審判請求を不成立とした部分の取
消しを求めて本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
2 本件特許に係る本件訂正後の発明の要旨(甲17、21から25まで)
本件特許に係る本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、別紙「本件特許の請求項」
20 記載のとおりである(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号に対応させて「本
件発明1」などといい、本件発明1、2及び4から7までを併せて「本件各発明」
という。)。
3 本件審決の理由の要旨(原告は、本件審決において、特許の無効理由として
5つの事由(新規性欠如、進歩性欠如、拡大先願、サポート要件違反、明確性要件
25 違反)を主張したが、このうち、原告が本件訴訟において本件審決に判断の誤りが
あり、取消事由となる旨主張する取消事由1から3まで(甲1(特開2009-1
95938号公報)に記載された発明(以下「甲1引用発明」という。)を主引用
発明とする進歩性欠如の無効理由における本件各発明と甲1引用発明との各相違点
のうち、本件発明1との相違点2、本件発明2との相違点4及び本件発明4との相
違点5について、本件審決が相違点の認定若しくは評価を誤り、又は容易想到性を
5 否定する判断をしたこと)に係る部分に限る。)
(1) 甲1引用発明の認定
甲1引用発明は、次の発明(以下、順に「甲1発明」及び「甲1発明2」とい
う。)である。
(甲1発明)
10 金属ピンとランドとの接合を行う半田付け装置であって、
軸方向に貫通孔があり、両端が開口し、ランドの上に立てる筒状の半田鏝と、
切り刃及び受け刃からなり半田保持孔に挿入された糸半田を切り取るカッターユ
ニット、糸半田が所定の長さに切断された半田片を半田保持孔から押し出し半田鏝
の貫通孔内に落下させるプッシャーと、
15 半田を溶融させるための加熱手段として半田鏝の外周面にコイル状に巻かれたシ
ーズヒーターを有し、
配線基板のランドに金属ピンを挿入し、半田付けすべきランドを半田鏝(先端部
の開口部)の真下に位置するように移動させ、半田鏝の下端面がランドに接触する
ところまで下げ、
20 半田鏝は先端部の開口部の径(d)と後端部の貫通孔の径(D)が異なり先端部
に長さ(L)の貫通孔を有し、この貫通孔内に半田片が落下し溶融できるように半
田鏝筒内のテーパが構成され、
半田鏝の先端部の開口部の径(d)が1.0mm、先端部の貫通孔の長さ(L)
が5mm、後端部の貫通孔の径(D)が2.5mmであり、
25 半田片は径が0.8mm、長さが1.2mmであり、
半田付けの対象部品はランド及び金属ピンであり、ランド径1.5mm、金属ピ
ン径0.6mmである
半田付け装置。
(甲1発明2)
金属ピンとランドとの接合を行う半田付け装置であって、
5 軸方向に貫通孔があり、両端が開口し、ランドの上に立てる筒状の半田鏝と、
切り刃及び受け刃からなり半田保持孔に挿入された糸半田を切り取るカッターユ
ニット、糸半田が所定の長さに切断された半田片を半田保持孔から押し出し半田鏝
の貫通孔内に落下させるプッシャーと、
半田を溶融させるための加熱手段として半田鏝の外周面にコイル状に巻かれたシ
10 ーズヒーターを有し、
配線基板のランドに金属ピンを挿入し、半田付けすべきランドを半田鏝(先端部
の開口部)の真下に位置するように移動させ、半田鏝の下端面がランドに接触する
ところまで下げ、
半田鏝は先端部の開口部の径(d)と後端部の貫通孔の径(D)が異なり先端部
15 に長さ(L)の貫通孔を有し、この貫通孔内に半田片が落下し溶融できるように半
田鏝筒内のテーパが構成され、
半田鏝の先端部の開口部の径(d)が1.0mm、先端部の貫通孔の長さ(L)
が5mm、後端部の貫通孔の径(D)が2.5mmであり、
半田片は径が0.8mm、長さが1.2mmであり、
20 半田付けの対象部品はランド及び金属ピンであり、ランド径1.5mm、金属ピ
ン径0.6mmである
半田付け装置を用いて、
配線基板のランドに金属ピンを挿入し、半田付けすべきランドを半田鏝(先端部
の開口部)の真下に位置するように移動させ、半田鏝の下端面がランドに接触する
25 ところまで下げ、
半田片を半田鏝の貫通孔内に落下させ、溶融させ、
半田片の全部をピンとランドに付着させる
半田付け方法。
(2) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
5 本件発明1と甲1発明は、次の一致点において一致し、相違点1及び2において
相違する。
(一致点)
端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であ
って、
10 前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段
と、
15 当接位置規制手段を備え、
前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノ
ズルの内壁、
により構成される
20 半田付け装置。
(相違点1)

(相違点2)
本件発明1は「前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノ
25 ズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片が前記端子の先端
に当接した状態で当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球
状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球
になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せ
ずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を
当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前
5 記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対して、
甲1発明はその旨特定されていない点
イ 相違点2に係る本件発明1の構成についての容易想到性の判断
相違点2に係る本件発明1の構成のうち「溶融前の前記半田片が前記端子の先端
に当接した状態で当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球
10 状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球
になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せ
ずに停止」するとの点について検討する。
(ア) 甲1には、半田鏝の貫通孔内に落下した半田片が溶融し金属ピンとランド
とを接合するまでの間の溶融した半田片の挙動に係る何らの記載も示唆も見当たら
15 ない。また、甲4(特開2017-74619号公報)、甲5(原告従業員作成の
実験成績証明書)、甲6(原告従業員作成の実験成績証明書)、甲7(エレクトロ
ニクス実装学会誌5巻3号(平成14年)の304~309頁に掲載された「はん
だ付けの基礎」(大澤直著))、甲8(「HYBRIDS」8巻2号(平成4年)
の21~27頁に掲載された「はんだのぬれ性について」(佐々木信博著))、甲
20 9(日本金属学会誌65巻1号(平成13年)の21~28頁に掲載された「溶融
スズの表面張力の温度、酸素分圧依存性」(袁章福ら著))及び甲10(日本工業
標準調査会作成の「日本工業規格 やに入りはんだ」(平成18年))は、いずれ
も、甲1発明が「溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズ
ルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前記端子の上
25 に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止」するとの構成を備
えることを裏付ける証拠であるとはいえない。
(イ) ここで、例えば、フラックスの含有量が2wt%程度の半田は、本件出願
日当時、やに入り半田の市場において普通に流通していたものであり(第一次判
決)、また、甲1発明は、フラックスを含有する半田を用いることを前提とするも
のであるから(第一次判決)、甲1発明においては、フラックスの含有量が2wt
5 %程度の半田を採用することが想定される。
(ウ) 原告は、実験成績証明書(甲40)に基づいて、「甲1発明は、日本工業
規格において記号「F2」として定められる半田(以下「F2規格の半田」とい
う。)の許容上限を超えるフラックス含有量2.5wt%の半田片を用いた場合で
あっても、溶融した半田片は貫通孔内において貫通孔の内壁とピンの先端に規制さ
10 れ、溶融半田片は真球になれないとの構成を具備する」旨主張する。
しかし、半田が溶融した際に形成される球の直径を求める場合、糸半田の直径の
製造誤差、切断した半田片の切断長誤差、ノズル内径の製造誤差等の誤差を考慮す
ると、F2規格の半田の半田片が「必ず真球にならない」とは限らない(甲40の
実験において用いられた半田片(フラックス含有量が2.49wt%であるもの)
15 を原告が主張する計算方法(甲41の6~7頁)に当てはめて計算すると、溶融し
た半田片は、内径1mmのノズルの中で真球になる。)。そして、原告が主張する
計算方法のみにより、溶融した半田片の真球の直径が求められることを裏付ける証
拠も提出されていない。さらに、原告が主張する計算方法により、溶融した半田片
の真球の直径が半田鏝の先端部の貫通孔内壁より大きいという結果が得られた場合
20 に、甲1発明において半田片を溶融させると「必ず真球になれない」ことを実証す
る実験・分析結果等も提出されていない。
したがって、原告が主張する溶融した半田片の真球の直径を求める方法(甲1発
明におけるもの)は妥当なものとはいえず、原告の主張は採用できない。
(エ) 以上によると、F2規格の半田であるフラックス含有量2.0wt%の半
25 田(甲10の2頁参照)を甲1発明に用いたとしても、半田が溶融した際に必ず真
球にならないとの構成が得られるとは限らないというべきである。なお、フラック
ス含有量が3wt%又は4wt%の半田を甲1発明に用いた場合についても、半田
が溶融した際に必ず真球にならないとの構成が得られることは立証されていない。
そうすると、「溶融した半田が必ず真球にならないまま停止すること」について
の記載や示唆がない甲1に接した当業者は、甲1発明にフラックス含有量が2wt
5 %程度の半田(F2規格の半田)をあえて採用し、溶融した半田片が必ず真球にな
らないとの構成に容易に想到し得たとはいえない。
(オ) 小括
したがって、相違点2の「溶融前の前記半田片が前記端子の先端に当接した状態
で当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとす
10 るが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま
前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止」する
との構成以外の構成について検討するまでもなく、相違点2に係る本件発明1の構
成を得ることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ まとめ
15 以上によると、本件発明1は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をするこ
とができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたもの
とはいえない。
(3) 本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明との対比
20 本件発明2と甲1発明は、次の一致点において一致し、相違点3及び4において
相違する。
(一致点)
端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置であ
って、
25 前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段
とを備える
半田付け装置。
5 (相違点3)

(相違点4)
本件発明2は「前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノ
ズルを介して熱伝達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片が前記端子の先端
10 に当接した状態で当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球
状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球
になれないまま前記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せ
ずに停止し、この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を
当該溶融した半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前
15 記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である」のに対して、
甲1発明はその旨特定されていない点
イ 相違点4に係る本件発明2の構成についての容易想到性の判断
相違点4に係る本件発明2の構成は、相違点2に係る本件発明1の構成と同一で
あるから、前記(2)イにおいて検討したのと同様に、相違点4に係る本件発明2の
20 構成を得ることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ まとめ
以上によると、本件発明2は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をするこ
とができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたもの
とはいえない。
25 (4) 本件発明4について
ア 本件発明4と甲1発明との対比
(ア) 本件発明4と甲1発明は、前記(2)アの一致点又は前記(3)アの一致点にお
いて一致する。
(イ) 本件発明4と甲1発明は、相違点1及び2又は相違点3及び4に加え、以
下の相違点5及び6を有する。
5 (相違点5)
本件発明4の「前記当接位置規制手段は、溶融前の前記半田片を前記溶融前の前
記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する位置に所定の姿勢で案内
し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片の移動範囲を規制する」ために「前記
ノズル先端部の内径は、ノズル後端部の内径よりも大きい」のに対して、甲1発明
10 はその旨特定されていない点
(相違点6)

イ 相違点5に係る本件発明4の構成についての容易想到性の判断
相違点2又は4に係る本件発明4の構成を得ることは、前記(2)イ及び前記(3)イ
15 において検討したとおり、当業者が容易になし得たものではない。
なお、半田鏝先端部の内径を半田鏝後端部の内径より大きくするとの構成自体は、
甲11(特開2015-166096号公報)、甲12(特開2015-1660
98号公報)及び甲13(特開2015-221449号公報)に図示されるよう
に周知の技術事項であるところ、甲1発明は、半田片を落下させるために半田鏝後
20 端部の内径を半田鏝先端部の内径より大きくしたものであるから、半田鏝後端部の
内径を小さくすることにより、半田鏝先端部の内径を半田鏝後端部の内径より大き
くすることには阻害要因がある。したがって、周知の技術事項により相違点5に係
る本件発明4の構成を導くことはできない。
ウ まとめ
25 以上によると、本件発明4は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をするこ
とができたものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたもの
とはいえない。
(5) 本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明2との対比
本件発明5と甲1発明2は、相違点1及び2、相違点3及び4又は相違点5及び
5 6に加え、以下の相違点7を有する。
(相違点7)

イ 相違点2又は4に係る本件発明5の構成についての容易想到性の判断
相違点2又は4に係る本件発明5の構成を得ることは、前記(2)イ及び前記(3)イ
10 において検討したのと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
ウ まとめ
以上によると、本件発明1又は2を引用する本件発明5は、相違点7について検
討するまでもなく、当業者が甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができた
ものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえな
15 い。
(6) 本件発明6について
ア 本件発明6と甲1発明2との対比
本件発明6と甲1発明2は、相違点1及び2、相違点3及び4又は相違点5及び
6に加え、以下の相違点8を有する。
20 (相違点8)

イ 相違点2又は4に係る本件発明6の構成についての容易想到性の判断
相違点2又は4に係る本件発明6の構成を得ることは、前記(2)イ及び前記(3)イ
において検討したのと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
25 ウ まとめ
以上によると、本件発明1又は2を引用する本件発明6は、相違点8について検
討するまでもなく、当業者が甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができた
ものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえな
い。
(7) 本件発明7について
5 ア 本件発明7と甲1発明2との対比
本件発明7と甲1発明2は、相違点1及び2、相違点3及び4又は相違点5及び
6に加え、以下の相違点9を有する。
(相違点9)

10 イ 相違点2又は4に係る本件発明7の構成についての容易想到性の判断
相違点2又は4に係る本件発明7の構成を得ることは、前記(2)イ及び前記(3)イ
において検討したのと同様に、当業者が容易になし得たものではない。
ウ まとめ
以上によると、本件発明1又は2を引用する本件発明7は、相違点9について検
15 討するまでもなく、当業者が甲1発明2に基づいて容易に発明をすることができた
ものではないから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえな
い。
(8) むすび
以上のとおり、甲1引用発明を主引用発明とする進歩性欠如の主張及び原告が提
20 出した証拠方法によっては、本件各発明に係る本件特許を無効とすることはできな
い。
第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
(1) 相違点2に係る本件発明1の構成のうち「溶融した前記半田片が…前記ノ
25 ズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま…停止」す
るとの部分(以下「本件構成」という。)の本件発明1の発明特定事項における位
置付けについて
溶融した半田片が「必ず真球になれない」か否かは、半田片に含まれる金属成分
の絶対量及び半田付け装置のノズルの内径により決まる。
半田片に含まれる金属成分の絶対量は、糸半田の種類(材質、太さ、フラックス
5 含有量等)及びノズル内に供給される半田片の長さにより決まるところ、これらは、
半田付け装置の利用者が任意に選択するものであり、半田付け装置の構造や特性に
よって決まるものではない。本件明細書の記載(段落【0014】、【0037】)
においても、糸半田の径及びノズル内に供給される半田片の長さは、利用者におい
て任意に決定することが想定されており、本件明細書には、これらの要素を一定の
10 ものに規制するための構造等に関する記載はない。また、本件明細書には、本件発
明1において用いられる糸半田に関し、フラックス含有量を始めとする糸半田の組
成について特定する記載は一切ない。
他方、溶融した半田片との関係におけるノズルの内径については、本件明細書に
は、「糸半田溶融球形の直径以下」との記載がされているにとどまる(段落【00
15 59】)。
以上によると、溶融した半田片が「必ず真球になれない」か否かは、実際に半田
付け装置が使用されるまで確定されないことになり、その時点まで、当該装置が本
件発明1の技術的範囲に属するか否かが決まらないことになるところ、本件発明1
の発明特定事項に関し、そのような結果を招くような解釈をするのは相当でない。
20 したがって、本件構成は、本件発明1が想定する実施品の利用態様に係る事項(用
法を特定する事項)であるとしか解されず、発明に係る物の構造や特性を限定し得
るような発明特定事項とはいい難いものである。現に、本件明細書(段落【001
4】、【0037】)において好適であるとされている条件の半田片(直径0.6
mm、長さ2mm)を内径1.6mm(同様に好適であるとされている直径1.6
25 mmの半田片を投入することができるもの)のノズル内に供給した場合、当該半田
片が溶融して得られる略球状の物体の直径は、最大でも1.02mmとなり、ノズ
ル内で真球となるところ、このように、明細書において好適であるとされている条
件によっても達成することができない事項(本件構成)が物の発明の構成を限定す
る発明特定事項であるはずがない。
以上によると、本件構成は、本件発明1を特定する上で意味を持たない事項(単
5 に本件発明1の用法を特定する事項)にすぎず、したがって、相違点2に係る本件
発明1の構成のうち本件構成に係る部分は、本件発明1と甲1発明の相違点ではな
いと解するのが相当である。
(2) 甲1発明における溶融した半田片が「必ず真球になれない」ことについて
ア ノズル内に供給された半田片が溶融した場合に生じる略球状の物体の直径
10 (ノズルの内壁及び端子の先端により規制されないとした場合の直径をいう(以下
同じ)。以下、この直径を「本件直径」という。)を算出するに当たっては、半田
片に含有されているフラックスの流出量等を考慮しないのが相当である。
すなわち、本件明細書には、本件直径の算出に当たりフラックスの流出量等を考
慮する旨の記載又は示唆はなく、また、本件直径の算出に当たりフラックスの流出
15 量等を考慮することは、本件出願日当時の当業者の技術常識でもない。かえって、
本件明細書には、「当接位置APで溶融し質量変化せずに真球状に変化したと仮定
した場合の当該真球状の半田片2aの大円の直径(糸半田溶融球形の直径)」との
記載(段落【0059】)があるのであるから、これに従い、フラックスの流出量
等を考慮せずに本件直径を算出するのが相当である。
20 イ 前記アの計算方法によった場合、甲1発明における本件直径は、約1.05
mm(半田片の直径を0.8mm、半田片の長さを1.2mmとした場合の方程式
(π×0.42×1.2=4/3×π×r 3 )の解の2倍)となるところ、半田鏝
の先端部の開口部の径は1.0mmであるから、甲1発明においては、溶融した半
田片は、「必ず真球になれない」ものである。
25 ウ したがって、相違点2に係る本件発明1の構成のうち本件構成に係る部分は、
この点においても本件発明1と甲1発明の相違点ではない。
(3) 小括
以上のとおりであるから、当業者において相違点2に係る本件発明1、4、5、
6又は7の構成に容易に想到し得たとはいえない旨の本件審決の判断は誤りである。
2 取消事由2(相違点4についての判断の誤り)について
5 (1) 相違点4に係る本件発明2の構成と相違点2に係る本件発明1の構成は、
実質的に同一のものであるところ、相違点2の構成に係る本件発明1の構成のうち
本件構成に係る部分が本件発明1と甲1発明の相違点でないことは、前記1のとお
りであるから、相違点4に係る本件発明2の構成のうち本件構成に係る部分も、本
件発明2と甲1発明の相違点でない。
10 (2) したがって、当業者において相違点4に係る本件発明2、4、5、6又は
7の構成に容易に想到し得たとはいえない旨の本件審決の判断は誤りである。
3 取消事由3(相違点5についての判断の誤り)について
(1) 本件審決は、本件訂正に係る訂正事項にいう「ノズル後端部」を「当接位
置規制手段」の一部であると解釈して本件訂正を認めたのであるから、本件発明4
15 の「ノズル後端部」については、そのように解釈されなければならない。
他方、甲1発明の「半田鏝の先端部の長さ(L)の貫通孔の内壁」は、本件発明
4の「当接位置規制手段」に相当するから、甲1発明の「半田鏝の先端部の貫通孔
の内壁」は、本件発明4の「ノズル後端部」に相当する。
そして、甲11から13までにより認められる後記(2)の周知技術を適用し、甲
20 1発明の「半田鏝の先端部の貫通孔の内径」を局所的に拡大すれば、相違点5に係
る本件発明4の構成が得られる。
(2) 甲11から13までの各図によると、これらによって認定することができ
る周知技術は、「半田鏝の先端部において、ピン(端子)が挿入される部分の内径
を局所的に大きくすること」であるといえる。
25 そして、甲1発明において、ピン(端子)が挿入される部分の内径だけを局所的
に大きくすることには、特段の不都合はなく、何らの阻害要因もない。
(3) 以上によると、本件出願日当時の当業者は、甲1発明に前記の周知技術を
適用し、相違点5に係る本件発明4の構成に容易に想到し得たものといえる。した
がって、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
4 第一次判決(審決取消判決)の拘束力について
5 審決取消判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律
判断について生じるものであり、その具体的効力として、審決取消判決の拘束力の
及ぶ判決理由中の認定判断につき、これを誤りであるとして従前と同様の主張を繰
り返すことや、当該主張を裏付けるための新たな立証をすることが禁じられること
になる(最高裁平成4年4月28日第三小法廷判決(昭和63年(行ツ)第10号)
10 民集46巻4号245頁)。
これを本件についてみるに、第一次判決は、①本件構成が本件各発明に係る発明
特定事項であり、相違点2及び4が本件各発明と甲1発明又は甲1発明2の相違点
であることを前提に、②当業者がわざわざフラックスの含有量を1wt%とする半
田を用いることはないとの事実認定をした上、③相違点2及び4に係る本件各発明
15 の構成の容易想到性を肯定するとの法律判断をしたものである。これに対し、本件
訴訟における審決取消事由(取消事由1及び2)は、本件構成が本件各発明に係る
発明特定事項であるといえないこと(本件構成が本件各発明と甲1発明又は甲1発
明2の相違点とならないこと)であり、本件各発明の進歩性につき第一次判決が判
断していない事項についての本件審決の判断の誤りを指摘するものであるから、原
20 告は、第一次判決の理由中の認定判断につき、これを誤りであるとして従前と同様
の主張を繰り返すものではなく、また、当該主張を裏付けるための新たな立証をす
るものでもない。
したがって、本件訴訟における原告の主張は、第一次判決の拘束力に反しない。
第4 被告の主張
25 1 第一次判決(審決取消判決)の拘束力について
特許無効審判請求について審決がされた場合において、当該審決を取り消す旨の
判決が確定したときは、当該判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な
事実認定及び法律判断の全てに及び、当該判決の確定後に改めて審理がされること
になった特許無効審判請求における審理の範囲及び当該特許無効審判請求について
された再度の審決に係る再度の取消請求訴訟における審理の範囲は、当該拘束力に
5 より遮断されていない主張立証に限られる。したがって、当該再度の特許無効審判
請求の当事者及び当該再度の取消請求訴訟の当事者は、当該拘束力に抵触する主張
立証をすることは許されない。
これを本件についてみるに、第一次審決は、本件発明4を除く本件各発明(以下
「本件発明1等」という。)につき、甲1発明又は甲1発明2に基づいて当業者が
10 容易に発明をすることができた旨の判断をしたが、第一次判決は、本件各発明につ
き、甲1発明又は甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと
はいえない旨の判断をして、第一次審決のうち本件発明1等に係る本件特許を無効
とした部分を取り消すなどし、その後確定した。したがって、第一次判決の確定に
より特許無効審判請求について再度の審理をする審判合議体において、第一次判決
15 の結論と異なる結論を導く判断をする余地はないから、第一次判決の判断に沿う認
定判断をし、本件発明1等につき甲1発明又は甲1発明2に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたとはいえない旨の判断をした本件審決は、その限りにお
いて適法である。よって、原告において、本件審決(本件発明1等に係る本件特許
に対する審判請求を不成立とした部分)につき、その違法を主張することはできな
20 い。
しかしながら、原告は、第一次判決の拘束力に従ってした本件審決(本件発明1
等に係る本件特許に対する審判請求を不成立とした部分)の認定判断につき、これ
を誤りであるとして非難するものであるから、原告の主張は、第一次判決の拘束力
に抵触するものとして失当である。
25 2 取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
(1) 本件構成の本件発明1における位置付けについて
本件発明1の半田付け装置において、ノズルは必須の構成要素であり、半田片や
ノズル等に係る条件は、不良が発生しないような適切な半田付けをする上で重要な
要素であるから、本件構成は、発明に係る物の構造や特性を限定し得る発明特定事
項である。
5 なお、半田付け装置の実際の取引において、連続して適切な半田付けを行うため
の半田片の構成、ノズルの構成等の詳細な条件は、半田付け装置のメーカーにおい
て提示するものであり、半田付け装置の条件設定について精通しない利用者に対し、
当該条件を任意に選択するよう求めることは通常考えられない。本件明細書には、
半田片の径や長さが一定の範囲をもって記載されているが、これは、これらの条件
10 が半田付けの対象等によって変化するからであり、当該条件が利用者によって決定
されるからではない。その他、本件明細書には、利用者においてこれらの条件を決
定する旨の記載はない。
また、溶融した半田片が「必ず真球になれない」か否かにつき、実際に半田付け
装置が使用されるまでその確定がされないことがあるとしても、そのことは、本件
15 構成が発明に係る物の構造や特性を限定し得るような発明特定事項であることを否
定する事情ではない。
さらに、本件明細書において好適であるとされる半田片の径及び長さは、半田付
けの対象として様々なものが存在するために記載されたものにすぎず、「必ず真球
になれない」との条件を満たすための好適な条件として記載されたものではない。
20 その他、本件明細書には、好適な半田片の径等が「必ず真球になれない」との条件
を満たすためのものであるとの記載はない。
以上のとおりであるから、本件構成が本件発明1に係る発明特定事項でないとし
て、相違点2が本件発明1と甲1発明の相違点でないということはできない。
(2) 甲1発明における溶融した半田片が「必ず真球になれない」とはいえない
25 ことについて
溶融した半田片が「必ず真球になれない」か否かは、実際に実験をしてみるとい
う簡単な方法によっても確認することができるものであって、必ずしも厳密な計算
を必要とするものではない(本件審決においてされたのを始めとする厳密な計算は、
原告が主張する「必ず真球になれない」との事実を検証するためのものである。)。
したがって、甲1発明における溶融した半田片が「必ず真球になれない」という
5 ことはできず、この点においても、相違点2は、本件発明1と甲1発明の相違点で
ある。
(3) 小括
以上のとおりであるから、相違点2が本件発明1と甲1発明の相違点でない旨を
いう原告の主張は、理由がない。
10 3 取消事由2(相違点4についての判断の誤り)について
前記2のとおりであるから、相違点4は、相違点2の場合と同様、本件発明2と
甲1発明の相違点である。これと異なる原告の主張は、理由がない。
4 取消事由3(相違点5についての判断の誤り)について
(1) 甲11から13までに記載されたノズルは、半田片がヒーターから真っす
15 ぐ落下することを想定したものであり、先端部以外の部分の内径が変化しないもの
である。
他方、甲1発明のノズルは、先端に向かって内径が小さくなるものであり、先端
の部分の内径を更に大きくするとの考えになじまないものである。また、甲1発明
のノズルは、先端に行くほどノズルの側面の厚みが薄くなっている。このような甲
20 1発明において、甲11から13までに記載されたように先端部の内径を局所的に
大きくすることは、ノズルの形状からみて困難である。
さらに、半田付けにおいては、その対象物が低温のままでは不良(不完全な電気
的接続)が生じるところ、ノズルの先端の厚みが薄くなると、対象物であるランド
に対する熱伝達力が減少し、ランドの加熱が不十分になって、当該不良の生じる可
25 能性が高まる。
加えて、甲11から13までに記載された半田付け装置においては、ランドの外
径が半田鏝の先端の外径よりも相当に大きいところ、甲1発明においては、ランド
の径が非常に小さいから、甲1発明のノズルの先端部の内径を大きくすると、半田
鏝の先端部がランドに接触しなくなる。
仮に、甲1発明において、半田鏝の先端部の内径を任意に調整することができる
5 としても、半田鏝の先端部を確実にランドに接触させ得る範囲で当該内径を大きく
するのには限度があり、その限度内での広げ方では、当該内径を大きくする意味が
ない。
以上のとおりであるから、甲1発明のノズルにおいて、甲11から13までに記
載されたように内径を局所的に大きくすることには、技術的な阻害要因があるとい
10 うべきである。
なお、甲11から13までに記載された半田付け装置は、同一の出願人が同一の
サイズのものとして記載したにすぎず、甲11から13までに記載された技術事項
が周知技術であるとまでいうことはできない。
(2) 小括
15 以上のとおりであるから、当業者において、甲1発明に甲11から13までに記
載された周知技術を適用し、相違点5に係る本件発明4の構成に容易に想到し得た
旨をいう原告の主張は、理由がない。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は、①本件審決のうち本件発明1等に係る本件特許に対する無効審判請
20 求は成り立たないとした部分は、第一次判決の拘束力に従ってされたものであるか
ら、原告は、本件審決の甲1引用発明に基づく本件発明1等の進歩性判断の違法を
主張することができず、また、②本件審決のうち本件発明4に係る本件特許に対す
る審判請求は成り立たないとした部分は、第一次判決の既判力により、原告は、甲
1引用発明に基づく本件発明4の進歩性欠如を主張することができず、したがって、
25 原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。
1 認定事実
前記第2の1(特許庁における手続の経緯等)並びに証拠(甲39、乙22)及
び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(1) 原告は、令和元年11月12日、本件各発明に係る本件特許について特許
無効審判の請求をした。
5 (2) 特許庁は、令和3年10月8日、本件訂正を認めた上、本件発明1等に係
る本件特許を無効とし、本件発明4に係る本件特許に対する審判請求は成り立たな
い旨の第一次審決をした。第一次審決においては、次の点がその理由とされた。
ア 本件発明1等は、いずれも本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて
容易に発明をすることができたものである。
10 イ 本件発明4は、本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて容易に発明
をすることができたものとはいえない。
(3) 被告は、令和3年11月13日、第一次審決のうち本件発明1等に係る本
件特許を無効とした部分の取消しを求める訴えを提起し、原告は、同月16日、第
一次審決のうち本件発明4に係る本件特許に対する審判請求は成り立たないとした
15 部分の取消しを求める訴えを提起した。
(4) 知的財産高等裁判所は、被告の訴えに係る事件及び原告の訴えに係る事件
を併合審理した上、令和4年8月31日、被告の請求を認容し、第一次審決のうち
本件発明1等に係る本件特許を無効とした部分を取り消すとともに、原告の請求を
棄却する旨の第一次判決を言い渡し、第一次判決は、その後確定した。第一次判決
20 においては、次の点がその理由とされた。
ア 本件発明1等は、いずれも本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて
容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明4は、本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて容易に発明
をすることができたものとはいえない。
25 (5) 特許庁は、令和5年5月22日、本件訂正を認めた上、本件各発明に係る
本件特許についての審判請求は成り立たない旨の本件審決をした。本件審決におい
ては、次の点がその理由とされた。
ア 本件発明1等は、いずれも本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて
容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明4は、本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて容易に発明
5 をすることができたものとはいえない。
(6) 原告は、令和5年6月29日、本件審決のうち審判請求を不成立とした部
分の取消しを求めて本件訴えを提起した。本件訴訟における原告の主張は、前記第
3のとおりであるが、結局、次のとおり要約することができる。
ア 本件発明1等と甲1引用発明との間に本件構成に係る相違点2及び相違点4
10 は存在しないというべきである。しかるところ、本件審決は、このような相違点が
あることを前提に、本件発明1等に係る本件構成は、いずれも本件出願日前に当業
者が甲1引用発明に基づいて容易に想到し得たとはいえないと判断した点において
判断を誤っている。
イ 本件発明4は、本件出願日前に当業者が甲1引用発明に基づいて容易に発明
15 をすることができたものであるから、その進歩性を認めた判断は誤りである。
2 本件発明1等に係る本件特許について(審決取消判決の拘束力)
(1) 特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が
確定したときは、審判官は、特許法181条2項の規定に従い、当該審判事件につ
いて更に審理を行って審決をすることとなるが、審決取消訴訟は、行政事件訴訟法
20 の適用を受けるから、再度の審理又は審決には、同法33条1項の規定により、当
該取消判決の拘束力が及ぶ。そして、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに
必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、審判官は、取消判決の当該
認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって、再度の審判手
続において、審判官は、取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につき、こ
25 れを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと、あるいは、当該主張を裏
付けるための新たな立証をすることを許すべきではなく、審判官が取消判決の拘束
力に従ってした審決は、その限りにおいて適法であり、再度の審決取消訴訟におい
てこれを違法とすることができないのは当然である。
このように、再度の審決取消訴訟においては、審判官が当該取消判決の主文のよ
って来る理由を含めて拘束力を受けるものである以上、その拘束力に従ってされた
5 再度の審決に対し関係当事者がこれを違法として非難することは、確定した取消判
決の判断自体を違法として非難することにほかならず、再度の審決の違法(取消)
事由たり得ない。
以上を特許発明の進歩性判断が問題となる特許無効審判事件の審決の取消訴訟に
ついて具体的に考察すると、特許無効審判の対象とされた特許発明が、特許出願前
10 に当業者において特定の引用例に記載された発明に基づき容易に発明をすることが
できたとはいえないとの理由により、当該特許発明に係る特許を無効とした審決の
認定判断が誤りであるとして当該審決を取り消す旨の判決がされ、これが確定した
ときは、再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果、審判官は、同一の引用例
に記載された発明に基づく進歩性の判断に当たり、当該判決と異なる認定判断をす
15 ることは許されない。したがって、再度の審決に係る審決取消訴訟において、関係
当事者が、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断が誤りである
(当該特許発明は特許出願前に当業者において同一の引用例に記載された発明に基
づき容易に発明をすることができた)として、これを裏付けるための新たな立証を
し、また、裁判所が、これを採用して取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決
20 を違法とすることは許されないと解するのが相当である(前掲最高裁平成4年4月
28日第三小法廷判決参照)。
(2) これを本件についてみるに、前記認定のとおり、第一次審決(本件発明1
等に係る本件特許を無効とした部分。以下、この(2)及び後記(3)において同じ。)
は、本件発明1等につき、これらがいずれも本件出願日前に当業者において甲1引
25 用発明に基づき容易に発明をすることができたものであると判断して、本件発明1
等に係る本件特許を無効としたところ、第一次判決(第一次審決を取り消した部分。
以下、この(2)及び後記(3)において同じ。)は、本件発明1等につき、これらがい
ずれも本件出願日前に当業者において甲1引用発明に基づき容易に発明をすること
ができたものとはいえないと判断して、第一次審決を取り消したものである。また、
第一次判決の確定後にされた本件審決(本件発明1等に係る本件特許に対する審判
5 請求は成り立たないとした部分。以下、この(2)及び後記(3)において同じ。)は、
本件発明1等に係る甲1引用発明に基づく進歩性について、第一次判決と同様の判
断をして、本件発明1等に係る本件特許に対する審判請求は成り立たないとしたも
のである。
ここで、前記(1)によると、再度の審判請求において、本件発明1等が本件出願
10 日前に当業者において第一次判決が認定判断した同一の引用例(甲1)に記載され
た発明に基づき容易に発明をすることができたか否かにつき、審判官が第一次判決
とは別異の事実を認定して異なる判断を加えることは、第一次判決の拘束力により
許されないのであるから、本件審決は、第一次判決の拘束力に従ってされた限りに
おいて適法であるとされなければならない。
15 そして、前記(1)によると、第一次判決の拘束力に従ってされた本件審決の取消
訴訟(本件訴訟)において、第一次判決の認定判断(本件発明1等が本件出願日前
に当業者において甲1引用発明に基づき容易に発明をすることができたものとはい
えないとの認定判断)を否定する関係当事者の主張立証は許されないことになるか
ら、原告は、本件訴訟において、このような主張立証(本件発明1等の甲1引用発
20 明に基づく進歩性欠如の主張立証)をすることができないというべきである。
したがって、甲1引用発明に基づいて本件発明1等が進歩性を欠く旨原告が主張
することは許されない。
(3) 原告は、本件訴訟における原告の主張(取消事由1及び2)につき、これ
は「相違点2又は4に係る本件発明1等の構成のうち本件構成に係る部分は、本件
25 発明1等と甲1引用発明との相違点ではない」との第一次判決が判断していない事
項についての本件審決の判断の誤りを指摘するものであるから、本件訴訟において
取消事由1及び2を提出することは第一次判決の拘束力に反しないと主張する。
確かに、乙22によると、第一次判決においては、原告が本件訴訟において取消
事由1及び2として指摘する事項(相違点2又は4に係る本件発明1等の構成のう
ち本件構成に係る部分の実質的相違点性)についての判断がされなかったものと認
5 められる。しかしながら、本件発明1等に係る甲1引用発明に基づく進歩性の判断
は、本件発明1等及び甲1引用発明の各認定並びにこれを前提とする一致点及び相
違点の認定を踏まえて行われる法律判断である。前記のとおり、拘束力は、判決主
文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、甲1
引用発明に基づく進歩性欠如を否定した第一次判決の法律判断の前提となった本件
10 発明1等と甲1引用発明との間の相違点に係る事実認定についても、第一次判決の
拘束力は及ぶというべきである。したがって、本件審決の審判官が、同じ甲1引用
発明に基づく進歩性の判断に当たり、第一次判決とは別異の事実を認定して異なる
判断を加えることは、第一次判決の拘束力により許されず、第一次判決の拘束力に
従ってされた本件審決は適法なものである。原告の主張は、第一次判決の拘束力が
15 及ぶ事実認定及び法律判断部分について、本件審決が誤りである旨主張し、本件審
決の取消事由とするものにほかならず、前掲最高裁平成4年4月28日第三小法廷
判決に照らし、採用することはできない。
3 本件発明4に係る本件特許について(請求棄却判決の既判力)
行政処分の取消訴訟については、請求棄却判決が確定すると、処分に違法性がな
20 いことについて既判力(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法114条)が生じるから、
審決取消訴訟についても、請求棄却判決が確定すると、審決に違法性がないことに
ついて既判力が生じる。
しかるところ、最高裁昭和51年3月10日大法廷判決(昭和42年(行ツ)第
28号)民集30巻2号79頁の趣旨を踏まえると、特許発明の進歩性判断が問題
25 となる特許無効審判事件の審決の取消訴訟における請求棄却判決の既判力は、審決
に違法性一般がないことではなく、特許無効審判事件において審理された特定の引
用例に記載された発明(公知技術)に基づく進歩性の有無について判断した審決に
違法性がないことに関して生じるものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、前記認定のとおり、第一次判決(原告の請求を棄却
した部分。以下同じ。)は、本件発明4につき、これが本件出願日前に当業者にお
5 いて甲1引用発明に基づき容易に発明をすることができたものとはいえないと判断
して、これと同じ判断をした第一次審決を是認し、原告の請求を棄却したものであ
る。そして、第一次判決は、その後確定したのであるから、甲1引用発明に基づき、
本件発明4が進歩性を欠くとはいえないとした第一次審決に違法性がないことは、
既判力をもって確定されているというべきである。
10 本件で問題となっているのは、本件審決の違法性であって、第一次審決の違法性
ではないが、原告が、本件訴訟において、甲1引用発明に基づき、本件発明4が進
歩性を欠く旨主張(取消事由3)し、進歩性欠如を否定した本件審決の判断部分が
違法である旨主張することは、実質的にみれば、第一次審決の違法性に関し既判力
が生じている部分(同じ引用発明に基づき進歩性がないとはいえないとの判断)に
15 ついて、これと異なる判断を求めるものとして、許されないというべきである。
仮にこの点を措くとしても、甲1発明の半田鏝は、先端部の開口部の径が1.0
mmであり、後端部の貫通孔の径が2.5mmであり、この貫通孔内に半田片が落
下し溶融できるように半田鏝筒内のテーパが構成され、これにより、半田片は、途
中で引っかかって溶融してしまうことなく、そのまま先端まで落下して溶融するも
20 のである(甲1の段落【0006】、【0031】、【0034】)。そうすると、
甲1発明の半田鏝については、甲11から13までに記載されたように半田鏝先端
部の内径を半田鏝後端部の内径より大きくすることには、阻害要因があるというべ
きである。したがって、いずれにせよ、本件発明4について、甲1引用発明に基づ
いて進歩性を欠くとは認められない旨の本件審決の判断に誤りはない。
25 4 結論
以上の次第であるから、原告の請求は理由がない。
知的財産高等裁判所第2部
5 裁判長裁判官
清 水 響
10 裁判官
浅 井 憲
15 裁判官
勝 又 来 未 子
別紙
本件特許の請求項
【請求項1】
5 端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置で
あって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
10 前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段
と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先
端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル
内に留めるように規制する当接位置規制手段を備え、
15 前記当接位置規制手段は、
前記端子の側面との間隔が溶融前の前記半田片の最小幅より短く形成された前記ノ
ズルの内壁、
または、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先
20 端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片
の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁、
により構成され、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝
達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片が前記端子の先端に当接した状態で
25 当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとする
が前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前
記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この
停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田
片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱され
た後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
5 半田付け装置。
【請求項2】
端子と当該端子に電気的に接続される接続対象とを半田付けする半田付け装置で
あって、
前記端子の少なくとも先端を挿入または近接する筒状のノズルと、
10 前記ノズルの内側へ半田片を供給する半田片供給手段と、
前記半田片を加熱溶融する加熱手段と、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる相対距離変化手段
と、
前記ノズル内に供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を前記端子の先
15 端に必ず当接させ、当該溶融前の半田片を前記接続対象に接触させずに前記ノズル
内で前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先端に当接する当接位置に留める
ように規制する当接位置規制手段とを備え、
前記加熱手段は、前記端子の先端に当接した前記半田片に前記ノズルを介して熱伝
達させる位置に設けられ、溶融前の前記半田片が前記端子の先端に当接した状態で
20 当該熱伝達を受けて溶融し、溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとする
が前記ノズルの内壁と前記端子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前
記端子の上に載った状態で前記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、この
停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した半田
片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、この加熱によって前記端子が加熱され
25 た後に前記溶融した半田片が流れ出す構成である
半田付け装置。
【請求項4】
前記当接位置規制手段は、
溶融前の前記半田片を前記溶融前の前記半田片の前記端子側の端部が前記端子の先
端に当接する位置に所定の姿勢で案内し且つ案内方向に垂直な方向への前記半田片
5 の移動範囲を規制する前記ノズルのノズル先端部よりも狭い前記ノズルの内壁によ
り構成され、
前記ノズルは、前記端子の先端に当接した当接位置で溶融して略球状となるべき前
記半田片が前記ノズルの内壁と当接する筒状の溶融部を有し、
前記溶融部の前記ノズルの内径は、前記当接位置で前記半田片を溶融し1つの真球
10 状に変形したと仮定した場合の当該真球の直径より小さく、
前記ノズル先端部の内径は、ノズル後端部の内径よりも大きい
請求項1または2記載の半田付け装置。
【請求項5】
請求項1、2または4記載の半田付け装置を用いて、
15 前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化
手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の端部を当接位置規制手段により前記端子の先端に
必ず当接させ、
20 当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して、
前記加熱手段により、前記規制された状態の溶融前の前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端
子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前
記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
25 この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した
半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出す
半田付け方法。
【請求項6】
請求項1、2、または4記載の半田付け装置を用いて、
5 前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化
手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記
端子の先端に必ず当接させ、
10 当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が移動しないように規制して、
前記加熱手段により、前記規制された状態の溶融前の前記半田片を加熱溶融し、
溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端
子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前
記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
15 この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した
半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記電子部品の端子をプリント基板のランドに半田付け
する
20 プリント基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1、2、または4記載の半田付け装置を用いて、
前記端子と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させる前記相対距離変化
手段により前記ノズルに前記端子の少なくとも先端を挿入または近接し、
25 前記ノズルの内側に前記半田片供給手段により半田片を供給し、
供給された溶融前の前記半田片の前記端子側の端部を当接位置規制手段により前記
端子の先端に必ず当接させ、当該当接によって前記端子側へ溶融前の前記半田片が
移動しないように規制して、前記加熱手段により、前記規制された状態の溶融前の
前記半田片を加熱溶融し、
5 溶融した前記半田片が丸まって略球状になろうとするが前記ノズルの内壁と前記端
子の先端に規制されるため必ず真球になれないまま前記端子の上に載った状態で前
記半田片が供給された方向へ移動せずに停止し、
この停止した状態で前記ノズルから前記溶融した半田片に伝わる熱を当該溶融した
半田片から前記端子に伝えて前記端子を加熱し、
10 この加熱によって前記端子が加熱された後に前記溶融した半田片が流れ出し、
前記溶融した半田片により前記端子と前記接続対象を半田付けする
製品の製造方法。
以 上

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