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令和5(ワ)3375特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日 令和6年3月21日
事件種別 民事
当事者 原告アルフィン株式会社
被告株式会社ダイケン
対象物 庇
法令 特許権
特許法100条1項1回
キーワード 特許権9回
差止5回
侵害4回
実施3回
損害賠償1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。20
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は、発明の名称を「庇」とする特許(以下「本件特許」という。)に係 る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告が本件特許の特許5 請求の範囲請求項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属す る別紙「物件目録」記載1及び2の製品(以下、順に「イ号製品」「ロ号製品」と いい、これらを総称して「被告製品」という。)を製造し、販売等することは本件 特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基 づき、イ号製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、イ号製品につ10 いては不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償金5億2500万円のうち一 部請求として1億4000万円及びこれに対する令和5年4月26日(訴状送達日 の翌日であり、不法行為よりも後の日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合 による遅延損害金の支払を求め、ロ号製品については不当利得(民法703条)に 基づき、不当利得金2億0225万円のうち一部請求として6000万円及びこれ15 に対する前同様の遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和6年3月21日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官

令和5年(ワ)第3375号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結の日 令和6年1月19日

判 決

原 告 ア ル フ ィ ン 株 式 会 社

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士 山 上 和 則

同 雨 宮 沙 耶 花

同補佐人弁理士 鈴 木 由 充

被 告 株 式 会 社 ダ イ ケ ン

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士 藤 田 典 彦

同訴訟代理人弁理士 豊 岡 大 志

同補佐人弁理士 原 田 洋 平

同 西 畑 芳 高

同 赤 松 秀 樹

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は、別紙「物件目録」記載1の製品を製造し、販売し又は販売のために展示してはならない。2 被告は、前項の製品を廃棄せよ。3 被告は、原告に対し、2億円及びこれに対する令和5年4月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本件は、発明の名称を「庇」とする特許(以下「本件特許」という。)に係

5 る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告が本件特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属する別紙「物件目録」記載1及び2の製品(以下、順に「イ号製品」「ロ号製品」といい、これらを総称して「被告製品」という。)を製造し、販売等することは本件特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、イ号製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、イ号製品については不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償金5億2500万円のうち一部請求として1億4000万円及びこれに対する令和5年4月26日(訴状送達日の翌日であり、不法行為よりも後の日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め、ロ号製品については不当利得(民法703条)に基づき、不当利得金2億0225万円のうち一部請求として6000万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1) 当事者原告は、建具工事業、建築用内・外装材、建具、建具金物の製造・販売等を目的とする株式会社である。被告は、各種金属類・合成樹脂加工業、各種金属類・合成樹脂製品売買業、建具工事業等を目的とする株式会社である。(以上につき、弁論の全趣旨)

(2) 本件特許権原告は、次の本件特許権を有している。本件特許権の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を「本件明細書」という。)の記載は、別紙「特許公報」のとおりである(甲2)。ア 登録番号 特許第5000674号イ 出願日 平成21年3月10日ウ 公開日 平成22年9月24日

5 エ 登録日 平成24年5月25日オ 発明の名称 庇

(3) 構成要件の分説本件発明の構成要件は、別紙「本件発明に関する充足論」の「構成要件」欄のA1ないしC4のとおり分説される。

(4) 被告製品の構成ア イ号製品の構造(形状)の概要は、別紙「イ号製品」の各図面記載のとおりであり、ロ号製品の構造(形状)の概要は、別紙「ロ号製品」の各図面記載のとおりである。イ 被告製品の構成(イ号製品・ロ号製品共通)には争いがあり、原告の主張は、別紙「被告製品の構成」の「原告の主張」欄記載のとおりであり、被告の主張は、同「被告の主張」欄記載のとおりであるが、被告製品が、本件発明の構成要件A1、A2、A4、B1、B3、B4、C2ないしC4を充足することは、被告は争っていない。

(5) 被告の行為被告は、平成25年4月頃から遅くとも令和2年9月頃まで、ロ号製品を製造・販売し、その頃から現在まで、イ号製品を製造・販売している(甲3、4、弁論の全趣旨)。2 争点

(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)

(2) 損害の発生及びその額(争点2)

(3) 差止め等の必要性の有無(争点3)

第3 争点についての当事者の主張

1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)

本件発明に係る構成要件A3、B2及びC1の充足性についての当事者の主張は、別紙「本件発明に関する充足論」の「構成要件充足性」欄の「

(原告の主張)

」欄及び

5 「

(被告の主張)

」欄各記載のとおりである。

2 損害の発生及びその額(争点2)

〔

(原告の主張)

〕

(1) 被告は、遅くとも平成25年4月から令和2年9月までの7年半の間、ロ

号製品を製造・販売し、その販売高は、少なくとも37億5000万円(年間5億円)を下らない。そして、被告は原告に対し、本件発明の実施料を支払う必要があったから、実施料相当額として上記販売高の5%(1億8750万円)及び消費税相当額(平成25年4月から平成26年3月までは5%、同年4月から令和元年9月までは8%、同年10月からは10%で計算した合計1475万円)の合計2億0225万円が被告の不当利得となる。

(2) 被告は、遅くとも令和2年9月からイ号製品を製造・販売しており、その

販売高は、令和5年3月までの2年半で12億5000万円(年間5億円)を下らない。そして、被告の利益率は少なくとも35%であるから、被告は4億3750万円の利益を得ており、原告は、被告による本件特許権の侵害により、少なくとも同金額の損害を被った。さらに、消費税相当額4375万円と、弁護士費用4375万円(上記金額の10%)も原告の損害となるから、合計損害額は5億2500万円である。〔

(被告の主張)

〕争う。

3 差止め等の必要性の有無(争点3)

〔

(原告の主張)

〕被告は、遅くとも令和2年9月から現在に至るまで、イ号製品の製造・販売をしているから、本件特許権侵害の予防のため、前記製造等の行為の差止め及びイ号製品の廃棄を求める必要がある。〔

(被告の主張)

〕争う。

5 第4 当裁判所の判断

1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について

(1) 被告製品が、本件発明の構成要件A1、A2、A4、B1、B3、B4、

C2ないしC4に係る構成を有することは争いがない。そこで、争いのある構成要件A3の充足性(「庇板の開放された前端面を塞ぐように全幅にわたって取り付けられる前縁板」を備えるか)、同B2の充足性(「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている縦板部」を備えるか)及び同C1の充足性(「縦板部の下部内面には、全幅にわたる凹部が形成され」ているか)が問題となるところ、事案に鑑み、同B2の充足性から検討する。

(2) 構成要件B2の充足性(「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水

を下方へ導くガイド面となっている縦板部」を備えるか)についてア(ア) 構成要件B2の「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている縦板部」との文言は、「縦板部」が、①「庇板の開放された前端面に当接され」ていることと、②「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」こととをいずれも備える旨を規定するものであり、このうち①は、「当接」の語の通常の字義(物同士が当たって接していること)に照らすと、「縦板部」が、「庇板の開放された前端面」に当たって接していることを意味すると解される。(イ) また、本件明細書には、以下の内容が示されている(各段落の具体的記載及び図面は、別紙「特許公報」参照。ただし、同公報の【図7】は、別紙「図面」の【本件明細書図7】と同じである。)。すなわち、先行技術文献である特許文献1(特許第3854626号公報)に示されるような従来の庇では、庇板2の前端縁に樋板9が全幅にわたって装着されているところ(【0005】【図9】【図11】)、樋板9の幅wの分だけ庇板2の前方へ余分に突き出るため(【図10】)、庇の全長が必要以上に長くなる、樋板9は、

5 樋溝95a、95bを備えるので、形状が大きくなり構造も複雑化してコスト高と

なる、樋溝に塵芥が堆積し易く、頻繁な保守、点検が必要になるなどの問題があり(【0006】)、本件発明は、かかる問題に着目し、従来の樋板に代えて、樋溝95aに相当する構成のない前縁板を用いることにより、小型化と構造の簡易化とを実現し、安価かつ保守や点検に手数を要さない庇を提供することなどを目的としている(【0007】)。そして、前記問題ないし課題を解決するための手段として、この発明による庇は、上下に対向する板面間に中空部を備える庇板と、建物の外壁面に取り付けられ庇板を前方へ張り出した状態で庇板の後端部を保持する保持枠と、庇板の開放された前端面を塞ぐように全幅にわたって取り付けられる前縁板とを備え、前縁板は、庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている縦板部と、庇板の上面に当接され上面が雨水を縦板部のガイド面へ導 くガイド面となっている横板部とが一体に形成されて成るものとされている(【0008】)。前記縦板部の下部内面には、全幅にわたる凹部が形成され、凹部は開口部分の上部が庇板の中空部と連通するように庇板の開放された前端面と対向し、開口部分の下部が外部と連通するように庇板の下方へ突出している(【0008】)。かかる構成の庇において、庇板の上面に溜まった雨水は、庇板の上面を伝って前縁板まで導かれ、横板部のガイド面を経て縦板部のガイド面へ導かれ、そのガイド面を伝って下方へ流下して縦板部の下端より落下し、庇板の内部に浸入した雨水は、庇板の中空部を前端面に向けて流れ、開放された前端面より縦板部の凹部内に流れ込み、庇板と横板部との隙間より浸入した雨水は、縦板部の内面を伝って下方へ流下して凹部内に流れ込み、いずれも凹部から溢れ出て縦板部の下端より落下する(【0009】)。すなわち、庇板の内部を流れてきた雨水も上面を流れてきた雨水も、前縁板の縦板部の下端より流れ落ち、縦板部の凹部は縦板部の内面の側に開口しているので、塵芥が溜まりにくく、塵芥が付着しても雨水により外部へ洗い流される(【0009】)。この発明の効果は、庇板の全長が必要以上に長くならず、構造の複雑化を招くおそれもない上、上面が開口した樋溝が存在しないので、塵芥が堆積す

5 るおそれがなく、保守、点検を頻繁に行う必要がない等である(【0014】)。

なお、本件明細書の【図1】及び【図2】はこの発明の一実施例の外観を示すものであり、前縁板の構成を示す断面図は(【図7】)である。(ウ) 検討前記(ア)のとおり、構成要件B2は、「縦板部」について、「庇板の開放された前端面に当接され」ていることと「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」こととをいずれも備える旨規定している。当該当接部分と、「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」部分との位置関係については、構成要件B2の文言からは一義的には明らかでないものの、本件明細書において、前記(イ)のように、本件発明が、庇の全長が必要以上に長くなるなどの従来の庇の問題に着目して小型化と構造の簡易化を実現し、保守、点検に手数を要さない庇を提供することを目的としていること、その問題を解決するための手段として、前縁板は、「庇板の開放された前端面に当接され前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている縦板部」と、「庇板の上面に当接され上面が雨水を縦板部のガイド面へ導くガイド面となっている横板部」とが一体に形成されて成り、前記縦板部の下部内面には凹部が形成されるとの構成が示されていること、当該構成において、庇板の上面に溜まった雨水は、庇板の上面を伝って前縁板まで導かれ、横板部のガイド面を経て縦板部のガイド面を伝って縦板部の下端より落下し、庇板と横板部との隙間より浸入した雨水は、縦板部の内面を伝って下方へ流下して凹部内に流れ込み、凹部から溢れ出て縦板部の下端より落下する旨が記載されていることからすれば、構成要件B2の「縦板部」は、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」ことを要するものと解するのが、当業者にとって合理的である。そして、「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」部分と、「庇板の開放された前端面に当接され」た部分とがいずれも備わっているが、両部分が離間して存在し、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ

5 導くガイド面」となっていない構成が「縦板部」に含まれるとの解釈は、本件明細

書に示される本件発明の目的(庇の小型化や構造の簡易化)や作用に整合しないし、本件明細書上、これを許容するような記載や示唆も見当たらない。したがって、少なくとも、かかる構成は構成要件B2の「縦板部」を充足しないものというべきである。イ 被告製品についてみると、被告製品の構造(形状)の概要は、別紙「イ号製品」及び「ロ号製品」の各図面記載のとおりであるところ(前提事実 (4)ア)、両別紙の各【図7】のとおり、庇板102の開放された前端面129に、先端見切104(「前縁板」に相当する。)の当接部145の板部が当たって接している、すなわち当接しているものと認められる。しかしながら、雨水を下方へ導くガイド面140aは、中間に横方向へ延びる張出部142を介して当接部145の板部とは離間して存在しており、当接部145の板部の「前面」が雨水を下方へ導くガイド面となっているとは到底いえない。そうすると、被告製品には、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ導くガイド面となっている」構成が備わっておらず、被告製品は、構成要件B2の「縦板部」を充足しない。ウ これに対し、原告は、被告製品の折れ板部140(別紙「図面」の【原告主張図1】及び【原告主張図2】の橙色部分)は、前端面129に当接する当接部145及び前面が雨水を下方へ導くガイド面140aを備えるから、構成要件B2の「縦板部」に該当する、構成要件B2の「縦板部」は、雨水を縦方向に導くガイド面を備えているから「縦板部」との語が用いられたにすぎず、被告製品が前方へ張り出す張出部142を有するからといって、非充足になるとはいえない旨主張する。しかし、前記アに述べたとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項及び本件明細書の各記載からすると、「庇板の開放された前端面に当接され」た板部の「前面が雨水を下方へ導くガイド面」となっていない構成を、構成要件B2の「縦板部」に含めることはできないというべきであるから、被告製品の折れ板部140が当接

5 部145及びガイド面140aを備えるとしても、当接部145の板部の前面が、

ガイド面140aとは離間し、雨水を下方へ導くガイド面となっていない以上、折れ板部140が構成要件B2の「縦板部」に該当するとは認められない。したがって、被告製品が構成要件B2を充足する旨の

(原告の主張)

は採用できない。

(3) 小括

以上のとおり、その余の構成要件の充足性について判断するまでもなく、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属しない。

2 結論

よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第21民事部裁判長裁判官武 宮 英 子裁判官阿 波 野 右 起裁判官峯 健 一 郎※別紙「特許公報」については掲載省略(別紙)物 件 目 録1(イ号製品)アルミ軽量ひさし「RSバイザー RS-S2型」2(ロ号製品)アルミ軽量ひさし「RSバイザー RS-S型」以 上(別紙)イ 号 製 品図1 イ号製品の外観を示す斜視図図2 イ号製品を分解して示す分解斜視図図3 イ号製品の保持枠の構成を示す縦断面図図5 イ号製品の庇板の組付け状態を示す斜視図図6 庇板に先端見切が取り付けられた状態を拡大して示す斜視図図7 庇板に先端見切が取り付けられた状態を示す縦断面図以 上(別紙)ロ 号 製 品図1 ロ号製品の外観を示す斜視図図2 ロ号製品を分解して示す分解斜視図図3 ロ号製品の保持枠の構成を示す縦断面図図5 ロ号製品の庇体の組付け状態を示す斜視図図6 庇板に先端見切が取り付けられた状態を拡大して示す斜視図図7 庇板に先端見切が取り付けられた状態を示す縦断面図以 上(別紙)図 面【 原 告 主張図1】(イ号製品)【 原 告 主張図2】(ロ号製品)【 被 告 主張図】【 本 件 明細書図7】以 上

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