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令和5(行ケ)10119審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年3月28日
事件種別 民事
当事者 原告オーデマピゲホールディングソシエテアノニム
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法3条2項16回
商標法3条1項3号10回
キーワード 審決50回
拒絶査定不服審判1回
差止1回
実施1回
商標権1回
侵害1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。20
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和2年2月26日、以下の構成からなり、指定商品を第14類 「時計」とする商標(以下「本願商標」という。)について、商標登録出願を5 した(商願2020-020319号、甲261)。 (本願商標) ⑵ 原告は、令和2年8月27日付け拒絶理由通知書(甲262)を受け、令 和3年3月2日付けで意見書(甲263)を提出したが、同年6月30日付10 け拒絶査定(甲264。以下「本件拒絶査定」という。)を受けたので、同年

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判決文

令和6年3月28日判決言渡

令和5年(行ケ)第10119号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和6年2月15日

判 決

原 告 オーデマ ピゲ ホールディング ソシエテ アノニム

同訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾

同 丸 山 悠

同訴訟代理人弁理士 山 﨑 和 香 子

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 馬 場 秀 敏

同 豊 田 純 一

同 冨 澤 武 志

同 清 川 恵 子

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期

間を30日と定める。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 特許庁が不服2021-13234号事件について令和5年6月8日にした審決を取り消す。2 訴訟費用は、被告の負担とする。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 原告は、令和2年2月26日、以下の構成からなり、指定商品を第14類「時計」とする商標(以下「本願商標」という。)について、商標登録出願をした(商願2020-020319号、甲261)。(本願商標)

⑵ 原告は、令和2年8月27日付け拒絶理由通知書(甲262)を受け、令和3年3月2日付けで意見書(甲263)を提出したが、同年6月30日付け拒絶査定(甲264。以下「本件拒絶査定」という。)を受けたので、同年10月1日、拒絶査定不服審判を請求した(不服2021-13234号、甲265)。

⑶ 特許庁は、令和5年6月8日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年6月22日に原告に送達された。

⑷ 原告は、令和5年10月20日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)のとおりであり、要するに、本願商標は、ラグ、ケース、風防、インデックスの記載がある文字盤、リューズ及びベゼル等より構成される腕時計バンド及び針を除く部分の図形を表したものと認定したうえで、これをその指定商品中、「腕時計」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っていると認めることはできないから、商標法3条1項3号に該当し、かつ、同条2項の要件を具備するものではない、というものである。3 取消事由

⑴ 取消事由1商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り

⑵ 取消事由2商標法3条2項に該当しないとした判断の誤り

第3 当事者の主張

1 取消事由1(商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)について

〔

(原告の主張)

〕

⑴ 本件審決は、本願商標は単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示す

る標章のみからなるものであり、商標法3条1項3号に該当するとしたが、本件審決において掲げられた33個の事例のうち、本件審決の別掲2(以下「別掲2」という。内容は、別紙審決書(写し)参照。)の1(1)、2(1)、

(2)(3)(6)及び(12)に掲げられた6個の製品は、原告が昭和4

、 、7年(1972年)に発売した「Royal Oak(ロイヤルオーク)(以」下「本件製品」という。)の模倣品であることが明らかであるし、その余の27個の製品については、原告が本願商標の特徴として主張する、①八角形のベゼルを有していること、②八角形のベゼルのそれぞれの角に六角形のネジを配置していること、③文字盤の表面に立体的な格子模様を施していること(以下「形状の3特徴」という場合がある。)を全て備えているものはないのであるから、その判断には重大な過誤がある。原告は、令和5年(2023年)12月7日、これら模倣品のうちAmazonのプラットフォーム上で販売されているもの全てについてAmazonに権利侵害を申告し、その結果、これらの模倣品の販売ページは全てAmazonによって削除されている(甲273の1∼4、甲274の1∼4)。また、その余の27個の製品については、形状の3特徴を全て備える商品はない。そればかりか、形状の3特徴を全く備えないものまで含まれており、この点でも特許庁による引用は、結論ありきの判断を支える極めて杜撰なものといわざるを得ない。本件審決が是認されることになれば、昭和47年(1972年)に世界に先駆けてステンレススチールのラグジュアリー・スポーツ・ウオッチという新たな価値を創造した(甲275、276)顕著な識別力を有する本願商標の強い顧客吸引力にフリーライドしようとする模倣品業者を保護し、その活動を奨励するに等しい不合理な結果になりかねない。以上のとおり、本件審決には模倣品を掲げて形状の3特徴を備える事例があると認定する点、形状の3特徴の全部又は一部を備えない製品を掲げて形状の3特徴を備える事例があると認定する点において明白な過誤がある。そして、形状の3特徴を全て備える本願商標の形状そのものに生来的に自他商品識別力が認められることは明らかであるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものではない。したがって、本願商標は商標法3条1項3号に該当しない。

⑵ 被告は、本件審決に引用しなかった乙4を文字盤に立体的な格子模様を備

える腕時計の例として挙げるが、乙4の事例は形状の3特徴のうちの二つを備えておらず、不適当である。〔被告の反論〕

⑴ 本願商標の構成について

本願商標は、前記第2の1⑴のとおりの構成よりなるところ、これは、一見して、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したといえるものである。このことは、下記⑵の事例のとおり、腕時計を取り扱う業界において、腕時計からバンド及び針(時針等)を除いた部分は、ラグ、ケース、風防、インデックスの記載がある文字盤、リューズ及びベゼル等(乙1、2)より構成されていることからも確認できる。

⑵ 「腕時計」を取り扱う業界における取引の実情

原告は、本願商標につき形状の3特徴を主張するが、これらはいずれも、原告以外の者が取り扱う腕時計にも使用されている実情が見受けられる。ア 「メンズ腕時計の通販はau PAY マーケット - shocora」に係るウェブサイトにおいて、「メンズ 腕時計 八角形ベゼルグランド タペストリー 文字盤 メンズ腕時計」の記載とともに、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267〔証拠調べ通知書〕の1

(1)。

)イ 「amazon」のウェブサイトにおいて、[テクノス]TECHNO「Sグランドポート ゴールド/ブルー T9539GN」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2

(1)、甲268〔意見書〕(13葉)、甲273の3)。

ウ 「amazon」のウェブサイトにおいて、「メンズ ファッション シルバー スポーツウォッチ クロノグラフ カレンダー 八角形 ステンレススチール リストウォッチ メンズ 3Dグリッドとサブダイアル Silver Case and Black Dial」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(2)。)エ 「amazon」のウェブサイトにおいて、「ラグジュアリー スイス REP AP Homage ロイヤルオーク 八角形ベゼル タピスリーダイヤルサファイアガラス スチール ブレスレット Noob Factory 自動巻き腕時計 15400 ブルースティール」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(3)、甲268(22葉)。)オ 「PRTIMES」のウェブサイトにおいて、「SONNE×HAORIPRODUCED(ゾンネ×ハオリプロデュースド)から、30シリーズ目の集大成として、日本製機械式ムーブメントを搭載した、八角形(=オクタゴン)の最新作を10月20日に発売」の見出しの下、【「『N030』のラインナップ】 との記載の下に、」 八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(5)、乙3)。カ 「amazon」のウェブサイトにおいて、「Cadisen 八角形自動巻き腕時計 メンズ フルステンレススチール 防水腕時計 日本製ムーブメントスポーツウォッチ シルバーブルー」の記載の左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(6)。)キ 「amazon」のウェブサイトにおいて、「FEICE 腕時計 メンズ自動巻き うで時計 男性 機械式 手巻付き アナログ ウォッチ 防水 夜光日付表示 ラグジュアリービジネス カジュアル時計 クリスマスーFM019」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(12)、甲273の2)。ク 「WIRED」のウェブサイトにおいて、「AGAT448」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ4本及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(8)。)ケ 「CITIZEN」のウェブサイトにおいて、「Eco-Drive One」の見出しの下に、ベゼルを固定するためのネジ4本と文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(乙4)。コ 「World Watch Shop」のウェブサイトにおいて、「アクアマスター 腕時計 W325BIPR ホワイトダイヤモンド ブラックレザー」の見出しの下、「人気のクロノグラフモデル!」との記載の下に、八角形のベゼルとベゼルに固定するための六角形のネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(4)、乙5)。サ 「GUESS」のウェブサイトにおいて、「GUESS WATCHES(GW0256L1) の見出しの左に、」 八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2

(9)。

)シ 「江口洋品店・江口時計店」のウェブサイトにおいて、「カルティエ/サントスオクタゴンLMデイト/ホワイトローマンダイヤル/Cartier/Santos Octagon Date/White RomanDial」の見出しの下に、八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(10) 乙6)、 。ス 「Rakuten Rakuma」のウェブサイトにおいて、「【新品即納】ヴェルサス ヴェルサーチ 高級 メンズ腕時計 45mm 八角形 防水」の見出しの左に、八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(11)。)セ 「BUYMA」のウェブサイトにおいて、「★即納★VERSUS VERSACE オクタベゼル メンズ 3Dクロノグラフ」の見出しの下に、八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(13)。)ソ 「tense」のウェブサイトにおいて、「オクタゴンシェイプに八個のシルバースタッドを打ち込んだ精悍で迫力あるビッグケース。文字盤の秒針はスモールサークルで駆動する外観。趣きあるウォールナットと深みあるブルーカラーが気品を漂わせています。 の記載の左に、」 八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ8本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(14)、乙7)。タ 「ヨドバシ.com」に係るウェブサイトにおいて、「カシオ CASIO EDIFICE エディフィス ECB-10YPB-1AJF [八角形ベゼルモデル]」の見出しの下、「先進の高機能メタルクロノグラフとして進化を続けるEDIFICEから、八角形のベゼルが特徴的な常時接続のスマートフォンリンクモデルが登場します。 の記載とともに、」 八角形のベゼルとベゼルに固定するためのネジ4本を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の1(2)、乙8)。チ 「YOSHIDA」のウェブサイトにおいて、「GIRARD-PERREGAUX」の見出しの左に、八角形のベゼル及び文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(7)、乙9)。ツ 「TiCTAC」のウェブサイトにおいて、【RIKI】AKQK45「5八角クラシック レディース」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(15)。)テ 「PIERRE LANNIER」のウェブサイトにおいて、「ピエールラニエ 八角形ウォッチ」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(16)。)ト 「LE FLANEUR」のウェブサイトにおいて、「フラヌール 八角形レディース 腕時計 白蝶貝 シェル メタルベルト シルバー ピンクゴールドミニ 小さめ 小ぶり スモール」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(17)、乙10)。ナ 「YAHOO!ショッピング」における、「HYBRID:STYLE」のウェブサイトにおいて、「ヴィヴィアン ウエストウッド 腕時計 Vivienne Westwood 時計 ビビアン 女性 向け レディース VV244DBLSL オクタゴン 八角形 ブルー シルバー」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(18)、乙11)。ニ 「Jewelry Connection」のウェブサイトにおいて、「ディーワンミラノ オーシャン - OCEAN」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(19) 乙12)、 。ヌ 「WEAR」のウェブサイトにおいて、「オクタゴンフェイスジュエリーウォッチ 【AGETEF1YG時計】」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(20)、乙13)。ネ 「YOSHIDA」のウェブサイトにおいて、「BVLGARI」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(21) 、乙14)。ノ 「CREDOR」のウェブサイトにおいて、「GTAW040」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(22)、乙15)。ハ 「CASIO」のウェブサイトにおいて、「EFS-S570YD-1AJF」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(23)、乙16)。ヒ 「RECLO」のウェブサイトにおいて、「Christian Diorスウィング オクタゴン レディース 腕時計 クオーツ GP ゴールドホワイト文字盤」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(24)、乙17)。フ 「時計Search」のウェブサイトにおいて、「トゥールビヨン ジュエリーウォッチ」の見出しの下に、文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(25)、乙18)。へ 「ANTIWATCHMAN」のウェブサイトにおいて、「ティソ TISSOT ヴィンテージ パワーマチック80 デイト 18KPG メンズウォッチ BOX・ギャランティ付き・HA-5862」の見出しの下に、文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(26)、乙19)。ホ 「VICTORINOX」のウェブサイトにおいて、「I.N.O.X.Carbon Mechanical」の見出しの下に、文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(27)、乙20)。マ 「Grand Seiko」のウェブサイトにおいて、「深く鮮やかなブルーに見惚れる。 の見出しの左に、」 文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載がある(甲267の2(28)。)ミ 「TBSショッピング」に係るウェブサイトにおいて、「日曜劇場『半沢直樹』オリジナル限定メカニカルウオッチ」の見出しの下、「東京中央銀行の【T】マークやNaoki Hanzawaの名前をさりげなくデザイン。東京中央銀行からインスピレーションを受け描き起こした格子柄が、シルバーの文字盤に浮かび上がり、シンプルな中にも上品さを演出します。 の」記載とともに、文字盤に格子模様が施された腕時計の写真の掲載がある(甲267の1(4)、乙21)。ム 「Yahoo!ショッピング」に係るウェブサイトにおいて、「セイコーSEIKO ドルチェ 8J41-0AF0 クオーツ 格子 オフホワイト文字盤 3針式 メンズ 腕時計」の記載とともに、文字盤に格子模様が施された腕時計の写真の掲載がある(甲267の1(3)、乙22)。

⑶ 小括

上記⑵のとおり、原告以外の者による製品においても、

(原告の主張)

する形状の3特徴である、「八角形のベゼル」、「八角形のベゼルのそれぞれの角に六角形のネジ」 「文字盤の立体的な格子模様」及び 又はこれらと同様の特徴を、全てあるいは一部に有する商品が多数取引されている実情がある。かかる取引の実情からすると、本願商標における形状の3特徴を表した図形部分は、腕時計において商品の機能をより効果的に発揮させたり美感をより向上させる目的で同種商品が一般的に採用し得るもの、又はそのような理由による形状の選択と予測し得る範囲のものにすぎないといえる。そうすると、取引者、需要者において、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分を図形で表した本願商標の構成上の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるとはいえず、本願商標は、自他商品識別力を欠くものといえる。よって、本願商標は、これをその指定商品中、「腕時計」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというべきである。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の認定、判断に誤りはない。

⑷

(原告の主張)

に対する反論ア 原告は、本件審決において提示した六つの製品が模倣品であると主張するのみで、それを客観的に判断し得る証拠は提出していない。また、原告が模倣品であると申告して削除された商品は四つの製品(甲274)にすぎない。さらに、原告が模倣品と主張して掲載中止又は販売停止された商品が存在するとしても、本件審決時において、本願商標における、原告が主張する形状の3特徴の全て又はいずれか若しくはこれらと同様の特徴を有する腕時計は、本件審決後においても乙4ないし乙22の商品が実際に取引されているから、原告以外の者において原告が主張する形状の3特徴が使用されている証拠があるといえる。イ 商品の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであるところ、「腕時計」を取り扱う業界において、原告以外の者による原告主張の形状の3特徴等の使用の事実があることは上記のとおりであるから、形状の3特徴の一部を有するものであっても、「腕時計」の機能をより効果的に発揮させたり美感をより向上させる目的で一般的に採択されるものとしての証拠となり得るといえる。そうすると、原告が主張する形状の3特徴は、いずれもが一般の需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものになるとはいえず、三つの特徴を全て備えたとしても、商品の出所を識別する標識として認識されるものになるものということはできない。また、原告が主張する形状の3特徴を備えることによって、直ちに本願商標に生来的な自他商品識別力が認められるといい得る根拠も見つけられない。さらに、原告が、 形状の3特徴を全く備えないもの」「 と主張する事例は、それぞれ、文字盤の格子模様の特徴を有するもの、八角形のベゼルの特徴を有するものやベゼルを固定するネジの特徴を有するものであることから、これらの事例も「形状の3特徴を全く備えないもの」とはいえない。

2 取消事由2(商標法3条2項に該当しないとした判断の誤り)について

〔

(原告の主張)

〕

⑴ 原告の販売店舗について

本件審決は「我が国における請求人の直営店は3店舗、正規代理店も7店舗にすぎず、決して多数の店舗数とはいえない。 (7頁15行目~同頁16」行目)「本件製品が販売される請求人の店舗の数は、国内で11店舗にすぎ、ず、その店舗数は決して多数とはいえない」(9頁15行目~同頁16行目)とした。しかし、本件製品を含む原告の製品は、1本100万円を超える高級腕時計に属する価格帯の商品であるところ、高級腕時計に属する商品を販売する店舗は、富裕層を主なターゲットとしているため、一般の消費者を主なターゲットとする商品を販売する店舗よりも、一般的にその店舗数は少ないことは自明である。かかる事情の下にありながら、原告の直営店及び正規代理店は、令和5年(2023年)11月現在、我が国に計10店舗あるほか、本件製品を含む原告の製品を再販売する事業者は日本全国に多数存在しており、少なくとも50店舗以上見受けられる(甲277、278の1∼110)。さらに、本件製品の定価はエントリーモデルでも約300万円する極めて高価な高級時計であるにもかかわらず、正規販売価格の倍額以上の価格で買取も行われている(甲279)。このような本件製品の国内市場における高い人気ぶりに鑑みれば、単に直営店及び正規代理店の数が多いとはいえないという事情から本願商標の自他商品識別力を否定することは、重要な前提事実を見誤っており、考慮不尽であると言わざるを得ない。本件製品は高級腕時計に属する価格帯の商品ではあるが、実際に本件製品を購入する者のみが本願商標に係る形状の特徴を看取できるわけではない。本願商標の形状の3特徴を備えた本件製品は種々の雑誌・ウェブメディア等に写真付きで掲載されており(甲1~245、269~272)、昭和47年(1972年)から現在に至るまで、時計雑誌、ファッション誌のみならず週刊誌・全国紙を含む多種の新聞・雑誌に少なくとも160回以上その広告又は紹介記事が掲載されており、一般の消費者であっても本件製品を目にした者は、形状の3特徴の組み合わせからなる独創的な形状に強く印象づけられ、本願商標に係る形状の特徴から原告の商品と認識することができる。また、本件製品は極めて高価な高級時計であるにもかかわらず、その形状(本願商標)を模倣した製品が税関において数多く差止めされているが、その輸入者には本件製品を購入できる富裕層のみならず、学生や生活保護を受けている者までが幅広く含まれる(甲280の1∼3)。このように、本願商標の自他商品識別力が極めて高いことは明白であり、店舗数の多寡に依拠して自他商品識別力を判断した特許庁の認定は明らかに失当である。

⑵ 本件製品について

本件審決は「本件商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状であるところ、請求人が本件製品と主張する商品は、バンド及び針(時針等)を含む腕時計であり、バンド及び針(時針等)を除く部分のみで取引されていることは請求人提出の全証拠からは確認することができない。(7」頁21行目~同頁24行目)、「本願商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を含まないものであるが、本件商標のようなバンド及び針(時針等)を含まない商品が実際に販売された事実を証明する資料は何ら提出されていない。」(8頁8行目~同頁10行目)と判断した。しかし、登録された商標の形状のみで製品が取引されていない事例などは無数にあり、そのことだけをもって本願商標の自他商品識別力を否定するのは極めて不合理である。商標法3条2項により商標登録を受けることができると判断された裁判例においては、実際販売されている製品には自社製品であることを示す装飾やラベルが付されており、商標登録された商標の形状のみで取引されているわけではないが、自他商品・役務識別力があるとして、商標登録を受けている。まして、商標登録された商標の形状のみで取引されていない事実が自他商品・役務識別力を否定する事情とは一切評価されていない。したがって、本件審決は、立体的形状に係る商標法3条2項に関する裁判例と明らかに相反しており、取消しを免れない。そして、本願商標の形状が昭和47年(1972年)の発売開始以来永年にわたって一貫して使用されてきた事実、現在までの大量の販売実績、多大な宣伝広告等の態様及びその事実並びに多額の宣伝広告費の支出等の事実からすれば、本願商標の形状について蓄積された自他商品識別力は極めて強いことは明白である。また、原告は、本願商標に係る形状の重要性に鑑み、本願商標に係る形状を構成する要素である八角形のベゼルのそれぞれの角に六角形のネジを配置してなる図形商標(国際登録第594072号)を日本及び米国を始めとした複数の国々において商標登録しており、この事実からも本願商標に係る形状、とりわけ八角形のベゼルとそれぞれの角に配置された六角形のネジという組み合わせが自他商品等識別標識として十分な識別力を備えていることは明らかである。したがって、本願商標は商標法3条2項により商標登録を受けることができるというべきである。

⑶ 販売数量及び販売高について

本件審決は「甲247号証は、請求人自身が作成し、売上げの数字のみが記載されているにすぎず、これを裏付ける証拠は何ら提出されていない。」(8頁2行目~同頁4行目)「請求人が主張する本件製品の売上げ規模が、、『腕時計』を取り扱う業界においてどの程度の市場占有率であるのかが明らかではなく、他社の同種製品との比較もできない。(8頁5行目~同頁7行」目)と判断した。しかし、まず売上げについては、当該売上げを管理する者、すなわち原告でなければ知る由がない。まして、原告は本件製品以外にも複数の製品を販売しているのであるから、各製品の売上高の内訳を抽出することができるのは原告において他にない。しかるに、当該売上げを裏づける証拠が提出されていないことを理由に、自他商品識別力があることを立証するために有力な売上げに係る証拠を排除することは許されず、特許庁の判断は不意打ち以外の何物でもない。そもそも、甲247のような売上げに係る資料を原告自身が作成し、それを証拠として提出することは、裁判所においても認められる一般的な立証方法である。この立証方法が認められないならば、原告以外に本件製品の売上げを正確に把握している者はいないであるから、売上げの立証は不可能であるというほかない。また、売上げの証憑の提出まで求められるとすれば、過去の売上げについて、各販売実績をひとつひとつ追わなければならず、原告の立証責任が不当に過剰であるばかりか、立証は事実上不可能といわざるを得ない。以上の点からして特許庁が甲247の証拠方法を排除したことは不合理極まりない。また、市場占有率については、業界における統計情報が利用できるのであれば証拠方法として採用しうるが、そのような情報が存在することは稀であり、当然に立証を要する事項ではない。また、他社の同種製品の売上げについても、通常は開示されていないのであるから、それとの対比ができないことは自他商品識別力を否定する根拠にはならない。

⑷ 宣伝広告費について

本件審決は「他社の宣伝・広告費との比較ができないため、請求人の宣伝・広告費の多寡を確認することができない。(8頁25行目~27行目)と判」断した。しかし、他社の売上げと同様に、他社の宣伝・広告費は通常開示されていないのであるから、当然に立証を要する事項ではない。また、それとの対比ができないことをもって甲248の証拠方法を排除することが不合理であることは、上記⑶と同様である。なお、特許庁は甲247の売上げについてはその証憑が提出されていないと指摘する一方で、甲248の宣伝・広告費についてはその証憑を要求しておらず、その判断には一貫性がない。

⑸ 宣伝広告の態様について

本件審決は、「これらの紹介記事には、『Royal Oak』や『ロイヤルオーク』の文字、ややデザイン化された『AP』の文字や請求人の名称の一部である『AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)』の文字が記載されていることが確認でき、本願商標のみが、実際に宣伝広告されていることは確認することができない。(8頁16行目~同頁」20行目)「1972年ないし2020年に発行された出版物やインターネ、ット記事等による本件製品の紹介記事は、『Royal Oak』や『ロイヤルオーク』の文字、ややデザイン化された『AP』の文字や請求人の名称の一部である『AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet) の文字等とともに紹介されていることからすると、』 本願商標の形状のみが独立した識別標識として認識され、その機能を果たしているものとは認められない。(8頁32行目~同頁38行目)と判断した。」しかし、これまでの裁判例の商標法3条2項により商標登録を受けることができると判断された事例においても、実際の製品には装飾やラベルが付されており、出願商標に係る立体的形状のみで取引されているわけではない。さらにいえば、立体的形状のみで取引されている事例は、極めて稀である。つまり、ブランド名や製品名等が一切表示されていない出願商標に係る立体的形状のみで取引されている事例があるとすれば、それは当該形状がブランド名や製品名等から独立して自他商品・役務識別力を有していることの証となりうるが、たとえ出願商標に係る立体的形状に装飾やラベルを付して販売されているとしても、それは当該形状の自他商品・役務識別力を否定するものではない。本件製品である「ロイヤルオーク」の文字盤に表示されている「AP」、「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet) の文字」は極めて小さく、相当の注意を払わなければ看取することは困難である一方で、本願商標は、本件製品に接した需要者であれば必ず目にする形状の3特徴を有するものであるから、形状の3特徴は、文字盤に小さく表された文字よりもはるかに看者の目をひき、形状のみで十分に出所識別標識として機能する。したがって、本件製品に「AP」「AUDEMARS、 PIGUET(Audemars Piguet)」の文字が付されているとしてもなお、本願商標は需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであるといえ、その立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っていることは明らかである。

⑹ 需要者の認識について

本件審決は「本件製品に関する需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠は提出されておらず、本件製品に関する需要者の認識度を客観的に評価することができない。 8頁29行目~同頁31行目)(」 と判断した。アンケート調査については調査対象者の選定、質問方法、質問内容などについて公平性や中立性を損なうものとなっていないかを十分に考慮しなければその証拠価値が否定されることになり、実際に証拠価値が認められず、証拠採用されなかった裁判例も数多く存在する(東京高裁平成12年4月13日判決、同平成15年8月29日判決など) そもそも特許庁の審決において。は、アンケート調査の信用性を担保する実施方法についての規範を定立した事案もなく、特許庁自身が明確な判断規範をもっていないにもかかわらず審査段階からアンケート調査結果を重用する傾向にあるが、そのような状況で証拠としてのアンケート調査結果の提出を求めること事態が不合理で、事実認定の客観性に欠けると言わざるを得ない。したがって、本件製品に関する需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠が提出されていないことは、本願商標の自他商品識別力を否定する根拠にはならない。

⑺ 類似する同種製品について

本件審決は「請求人が主張する形状の3特徴は、請求人以外の者においても、腕時計の機能や美感を向上させる目的で採用されているといえ、形状の3特徴を有する腕時計は、本件製品以外にも存在する。(9頁1行目~同頁」3行目)と判断した。しかし、本件審決が別掲2として掲げる計33個の事例のうち、別掲2の1(1)、2(1)(2)(3)(6)及び(12)に掲げられた6個の製品、 、 、は、識別力を有する本願商標の強い顧客吸引力にフリーライドする明らかな模倣品であり、その余の27個の製品については形状の3特徴を全て備えているものですらなく、そもそも引例として不適切である。形状の3特徴を全て備える本願商標に触れた場合、取引者、需要者は腕時計に付されているロゴを確認するまでもなく、その形状のみから著名な原告の代表的な製品である「ロイヤルオーク」(本件製品)を識別することが合理的な疑いを挟む余地がないほどに明らかであるから、本件審決の判断には全く理由がない。

⑻ 使用実績について

本件審決は「請求人が提出した証拠は、本願商標を商品『腕時計』について使用している事実のみを証明するものであって、本願商標が、腕時計以外の時計に使用されたことは確認することができない。(9頁5行目~同頁7」行目)と判断する。しかし、「腕時計」と「腕時計以外の時計」は単に時計の種別が異なるに過ぎず、「腕時計以外の時計」は「腕時計」と極めて密接な関係にある商品といえる。そして、本願商標について「腕時計」における自他商品識別力が認められることは、すでに詳述したとおりである。したがって、「腕時計以外の時計」についても、自他商品識別力を獲得したといえ、商標法3条2項により商標登録を受けることができるというべきである。以上によれば、本件審決の判断は違法なものであり、直ちに取り消されるべきである。〔被告の反論〕

⑴ 商標法3条2項について

ア 商標法3条2項が、同条1項3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される。イ また、商標法は全国一律に適用されるものであって、商標権が全国に効力の及ぶ更新登録可能な排他的な権利であることからすると、出願商標について、商標法3条2項により商標登録が認められるためには、同条1項3号に該当する商標が、現実に使用された結果、指定商品又は指定役務の需要者の間で、特定の者の出所表示として我が国において全国的に認識されるに至ったことが必要であるといえる。ウ さらに、商標法3条2項の適用に当たっては、当該形状が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、当該形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。

⑵ 本願商標の出所識別標識としての使用について

ア 本願商標は、需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものとはいえないこと本願商標は、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状と認められ、また、本願商標は、八角形のベゼルやベゼルに固定するための六角形のネジ及び文字盤の立体的形状の格子模様を有するところ、原告以外の者が取り扱う「腕時計」においても、原告が主張する形状の3特徴の全て又はいずれか若しくはこれらと同様の特徴を有する商品が実際に多数取引されている。そうすると、本願商標を構成する形状や模様は、腕時計において、採用し得る機能又は美感の範囲を超えて、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえないから、特段、需要者の目につきやすく、強い印象を与えるようなものとはいえない。イ 本願の指定商品「時計」の需要者等について時計は、「時刻を知り、また時間を計るのに使う器機」(乙23)であるところ、本願の指定商品「時計」は、普通一般に取引される腕時計や、一般の家庭を含むあらゆる場所で、日常的に多用される置き時計、掛け時計等を含むものであるから、その需要者は、高級腕時計の需要者に限定されるものではなく、一般の需要者であるといえる。そして、一般の需要者の取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえないものであるから、原告が主張する形状の3特徴を、一般の需要者が一見して視覚的に看取し、その特徴のみから、本願商標を出所識別標識として捉えることは困難であるというべきである。ウ 原告が取り扱う腕時計について(ア) 原告に関する事実原告は、明治8年(1875年)にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲによって創業されたスイス連邦の腕時計メーカーであり、我が国及び米国を含む世界の高級腕時計市場において自社製品を販売し、我が国では、東京、名古屋及び大阪に直営店である「オーデマ ピゲブティック」を構える他、東京に2か所、札幌、神戸、岡山、高松及び福岡に各1か所ある正規代理店を通じてロイヤルオークというブランドの製品をはじめとする自社製品を販売している(甲263)とするが、我が国における原告の直営店は3店舗、正規代理店も7店舗にすぎず、決して多数の店舗数とはいえない。(イ) ロイヤルオークというブランドの製品原告が昭和47年(1972年)に発売した腕時計「Royal Oak」は、ステンレススチールを採用したスポーツウォッチであり、高級腕時計の価格帯の商品であることが確認できる(甲4)。なお、原告提出の証拠によれば、原告のロイヤルオークというブランドの製品(本件製品)にも原告が主張する形状の3特徴の全てを備えていない腕時計、例えば、文字盤に立体的な格子模様がないもの、「ロイヤルオーク オフショア アリンギ アメリカズカップ2003優勝記念モデル」(甲72)、「レディ ロイヤルオーク」(甲84、97)「ロイヤルオーク スケル、トン オートマティック」(甲128)「ROYAL OAK OFFSH、ORE GINZA 7 FORGED CARBON」(甲133) 「コ、レクション ロイヤルオーク トゥールビヨン・クロノグラフ」(甲181(7葉目)「コレクション ロイヤルオーク クロノグラフ」) (甲181(9葉目))等が多数見受けられ、形状の3特徴の全てが、原告の本件製品に統一的に採択されているとはいえない。(ウ) 使用開始時期・使用期間及び使用地域、販売数量並びに売上高本件製品は、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」の名称で昭和47年(1972年)に最初のモデルが発売され(甲219~221)、令和元年(2019年)頃には、「ロイヤルオーク パーペチュアルカレンダー ウルトラシン」(甲222)「ロイヤルオーク クロノグラフ」、(甲224)「ロイヤルオーク オートマチック」、 (甲225)等があるところ、原告は、本件製品の平成27年(2015年)ないし令和2年(2020年)の売上げが、平成27年(2015年)が4536万0186スイスフラン(約52億8718万3280円) 平成28年、 (2016年)が6129万4671スイスフラン(約71億4450万6851円)、平成29年(2017年)が7294万4995スイスフラン(約85億0246万8617円)、平成30年(2018年)が9412万3405スイスフラン(約109億7102万4086円)、令和元年(2019年)が1億0964万6028スイスフラン(約127億8034万1023円)及び令和2年(2020年)が4964万9051スイスフラン(約57億8709万3384円)の売上げがある(甲247)旨主張する。しかしながら、原告が主張するとおりの売上げがあるとしても、本件製品の定価はエントリーモデルで約300万円ということであるから、例えば、平成27年(2015年)の約52億8718万3280円の売上げから、エントリーモデルの価格でその販売個数を計算すると約1760個、令和2年(2020年)の約57億8709万3384円の売上げであれば、約1920個である。日本経済新聞社の「NIKKEI COMPASS」の「時計の市場動向」には、「日本時計協会によると、令和5年(2023年)の日本企業のウオッチ出荷の内訳は、(略)国内向けは数量が1%増の600万個」(乙24)との記載から考慮すれば、本件製品の年間の販売個数は多いとはいえない。(エ) 宣伝広告原告が提出した証拠によると、「Royal Oak(ロイヤルオーク)」の名称の製品が、昭和47年(1972年)ないし令和2年(2020年)に発行された出版物やインターネット記事等で紹介されていることは確認できる(甲1~245)。しかしながら、これらの紹介記事には、その記事内に「Royal Oak」 「ロイヤルオーク」の文字の記載や (甲2~7、9~20、22、24~32、34~37)があり、ややデザイン化された「AP」の文字や原告の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の文字は、誌面等において大きく表されているばかりでなく(甲1、2、4、5、7~38、40~49)、誌面等に掲載された写真の腕時計にも目を引きやすい位置である、中央上部の12時の位置程にも配されていることが確認でき(甲73~76、78、80~82、84~86)これらの文字部分が、需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものといえる。そして、これらの証拠は、「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet)」の商品又は「Royal Oak(ロイヤルオーク)」という商品の宣伝広告となっているにすぎず、紙面等に腕時計の写真が掲載されているとしても、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の形状である本願商標を示された時に、原告の商品であることを理解させる宣伝広告となっているとはいえない。また、原告は、本件製品についての我が国における宣伝・広告費は、平成27年(2015年)に4億6628万9341円、平成28年(2016年)に6億0782万4104円、平成29年(2017年)に6億0950万0679円、平成30年(2018年)に5億4181万2520円、令和元年(2019年)に4億0675万4000円、令和2年(2020年)に3億5733万6750円である(甲248)と主張するが、甲248は、その表題として「Audemars Piguet宣伝広告費(2015年~2020年)」と記載されており、原告の全ての商品の宣伝・広告費と解され、原告のホームページ(乙25)によれば、本件製品以外の商品(「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ」)も販売されているから、本件製品の宣伝・広告費について立証したものとはいえない。(オ) 原告以外の者の同種商品の存否原告が主張する形状の3特徴は、上記のとおり、原告以外の者においても、腕時計の機能や美感を向上させる目的で採用されているといえ、形状の3特徴の全て又はいずれか若しくはこれらと同様の特徴を有する「腕時計」は、本件製品以外にも多数存在するから、当該形状が「腕時計」において採用し得る機能又は美感の範囲を超えて、商品の出所を識別する標識として認識させるとはいえず、本願商標は、自他商品識別力を欠くものである。(カ) 腕時計以外の時計に関する使用事実原告が提出した証拠は、本願商標を商品「腕時計」について使用している事実のみを証明するものであって、本願商標が、腕時計以外の時計に使用されたことは確認することができない。(キ) 小括以上のとおり、原告は、明治8年(1875年)に創業されたスイス連邦の腕時計メーカーで、昭和47年(1972年)に発売した本件製品は、ステンレススチールを採用したスポーツウォッチであり、国内10店舗で、本件製品をはじめとする自社製品を販売していること、本件製品は、昭和47年(1972年)ないし令和2年(2020年)に発行された出版物やインターネット記事等で紹介されていることは確認できる。しかしながら、本件製品が販売される原告の店舗の数は、原告の直営店は3店舗及び正規代理店は7店舗と国内で10店舗にすぎず、その店舗数は決して多数とはいえないこと、本件製品の売上げは、

(原告の主張)

どおりであったとしてもその販売個数は決して多いとはいえないこと、本件製品には、形状の3特徴を備えていないものが多数見受けられ、統一的に採択されている特徴といえないこと、出版物やインターネット記事における本件製品の紹介記事には、「Royal Oak」や「ロイヤルオーク」の文字が記載されており、ややデザイン化された「AP」の文字や原告の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet) の文字は紙面等において大きく記載さ」れているばかりでなく、本件製品の腕時計の文字盤にも目立つ位置に配されていることから、需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであること、甲248の宣伝・広告費は、本件製品の宣伝・広告費を立証しているとはいえないこと、本願商標が腕時計以外の時計に使用されていることが確認できないこと、本願の指定商品である「時計」の需要者は、一般の需要者であるから、本願商標から、原告が主張する形状の3特徴を、一般の需要者が一見して視覚的に看取し、その特徴のみから、本願商標を出所識別標識として捉えることは困難であること等からすると、本願商標が、原告により本願の指定商品「時計」に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとはいえない。したがって、本願商標は、商標法3条2項の要件を具備しないとした本件審決の認定、判断に誤りはない。

⑶

(原告の主張)

に対する個別の反論ア 店舗数の多寡、宣伝広告の内容、需要者等については、いずれも、本願商標に商標法3条2項を適用できるか否かについての一つの指標であり、その判断にあたっては、本件審決は、その他の事情も含めて総合考慮して判断しているのであるから、本件審決の判断手法に誤りはなく、原告の主張は、その前提において失当である。そして、本願の指定商品「時計」の需要者は、本件製品のような高級腕時計のみでなく、普通一般の腕時計を含む「時計」の需要者であって、本件製品のような富裕層を主なターゲットとする店舗展開や宣伝広告の方法は、広く一般の需要者層に浸透させる方法とはいい難いといえる。また、原告が主張する形状の3特徴は、腕時計において、採用し得る機能又は美感の範囲を超えて、商品の出所を識別する標識として認識させるとはいえないから、本願商標に接する需要者は、腕時計のバンドや針(時針等)を除く部分と認識するにとどまり、原告が主張する形状の3特徴を一見して視覚的に看取し、その特徴のみから、本願商標の形状を出所識別標識として捉え、商品の出所が原告であると認識し得るというのは困難であるというべきである。加えて、原告が主張する形状の3特徴のうち一部の特徴を有する他社製品の存在は、原告による当該特徴を備える製品の独占的使用の事実を否定する根拠となり得るものであるから、本件審決が引用した使用例は妥当である。イ 本件製品が販売される原告の店舗の数は、決して多数とはいえないこと、売り上げについては、

(原告の主張)

のとおりであるとしてもその販売個数は決して多いとはいえないこと、本件製品には、形状の3特徴を備えていないものが多数見受けられ、原告により統一的に採択されている特徴といえないこと、本件製品の紹介記事には、「Royal Oak」や「ロイヤルオーク」の文字の記載や「AP」の文字や原告の名称の一部である「AUDEMARS PIGUET(Audemars Piguet) の文字が」顕著に記載されていること、宣伝・広告費(甲248)は、本件製品の宣伝・広告費を立証しているとはいえないこと等からすると、本願商標が、原告により指定商品「時計」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとはいえない。そして、本件審決は、甲247の証拠方法を排除したのではく、裏付けがないことを述べたにすぎない。さらに、宣伝広告費については、原告が提出した甲248には、「Audemars Piguet宣伝広告費(2015年~2020年)」と記載されており、原告の全ての商品の宣伝広告費と解されるから、本件製品の宣伝広告費について立証したものとはいえない。加えて、本願商標に商標法3条2項を適用できるか否かについて、総合判断を行うに当たっての証拠の種類については、売上高の多寡や市場占有率の高さ、宣伝広告費等の事情も含めて総合的に考慮して商標法3条2項を適用できるか否かについて判断を行うものであるから、審決の判断手法に誤りはないといえる。ウ 本願商標は、本願の指定商品「時計」の需要者が、それに接する場合、腕時計のバンド及び針(時針等)を除く部分の図形を表したものと認識するにとどまり、出所表示識別標識と認識するものではなく、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認識するにすぎないものというべきであるから、商標法3条1項3号に該当するものであり、また、原告による使用実績を踏まえたとしても、本願商標は、商標法3条2項の要件を具備するものということはできないというべきであるから、本件審決の判断に違法はない。

第4 当裁判所の判断

1 取消事由1(商標法3条1項3号に該当するとした判断の誤り)について

⑴ 商標法3条1項3号の解釈商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。、生産若しくは使用の方法若しくは時期そ)の他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定する。その趣旨は、同号に該当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。そして、商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させることや、商品等の美感をより優れたものとすること等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能又は自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、それが平面上に表されたものであっても、文字、図形、記号等、それ自体平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。また、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは、公益上適当でない。そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状(形状を表した図形を含む。)は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当すると解される。

⑵ 本願商標の商標法3条1項3号該当性ア 本願商標は、前記第2の1⑴のとおりの構成からなる商標である。腕時計においては、文字盤に刻まれた目盛りや数字をインデックスなどというところ(乙1)、本願商標は、腕時計からベルト及び針(時針等)を除いた、ラグ(時計本体とベルトを固定する部分、乙1)、ケース、風防、インデックスの記載がある文字盤、リューズ及びベゼル等より構成され、これらの形状を文字盤の上部方向から平面視して表した図形である。しかも、上記図形は、ベゼル、ラグ、リューズ、文字盤の格子状模様等の全てにおいて陰影が施され、立体的な形状として表現されている。したがって、本願商標は、上記時計の構成部分を平面視した図形として表されてはいるものの、時計の一部の形状を出所識別標識とすべく登録出願されたものと認められる。これを前提に、本願商標の構成を検討すると、以下のとおりである。本願商標のラグには、腕時計において金属ベルトを繋ぐ位置に上下二つの凹部がある。ラグの中央には、外側が八角形で内側が円形のベゼルがあり、そのベゼルのそれぞれの角に六角形のマイナスネジが配置されており、全体の色は銀色である。文字盤内のインデックスは、数字ではなく、格子模様から隆起して見える目盛りからなり、各定時においては1本線であり、上部中央においては2本線である。文字盤にはリューズ近くの位置に腕時計において通常日付けが表示されている位置に空白があり、中央上部にブランド名を示す部分があるほかは、文字盤の全面にわたり立体的に見えるように陰影を施した格子模様が示されている。イ 本願商標の指定商品は「時計」であるから、腕時計のほか、置時計や掛け時計等も含まれるものであり、その需要者は一般の消費者であると認められる。本願商標は、腕時計からベルト、針を除いたものであるとの形状に係る上記アの各事情は、需要者がこれを容易に認識することができるといえる。ウ 腕時計においては、別掲2の1(1)ないし(4)、2(1)ないし(29)及び乙4のとおり、腕時計のバンド及び針(時針等)を除いた部分の形状として、ラグ、ケース、風防、インデックスのある文字盤、リューズ及びベゼル等から構成され、八角形のベゼルやビス、文字盤の格子模様などを、それぞれ備えるものが相当数存することが認められる。エ 上記アないしウの事情を総合すれば、本願商標の形状は、客観的に見て、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであり、かつ、本願商標の需要者である一般の消費者において、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであると認められる。そうすると、本願商標に係る形状は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。

⑶ 原告の主張に対する判断ア 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑴のとおり、本願商標は形状の3特徴を備えるなど自他商品識別力を備えることができる程度の形状的特徴を有しているところ、本件審決は本件製品の模倣品をもって本願商標の識別力を否定しており、その判断は誤りである旨を主張する。なるほど、これら商品の中には「八角ベゼル・・・オーデマピゲ風」(甲255)「オーデマ・ピゲのロイヤルオークそっくりの外見です」、 (甲257)「スイス、 REP AP Homage ロイヤルオーク 八角形ベゼル」(甲259)、などの記載があるものもあり、これらの一部である別掲2の2(1)(6)(12)につき、Amazonにより販売ページが、 、削除された事実が認められる(甲273の1∼3、甲274の1∼3)が、削除の理由は明らかではないほか、原告においてもこれらに該当すると主張しない別掲2の2(7)、同(10)及び同(22)等からも明らかなとおり、本願商標に表された形状は、他の腕時計の文字盤等の形状と比較して特に斬新な形状といえるような特段の事情もなく、商品の特性上普通に求められる形状の範囲内のものであり、仮に斬新な形状であるといえるとしても、これらの形状は、腕時計として用いることに適合する形状で作られるものであり、商品の機能上の観点から選択されたものにすぎないと認められ、機能上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。イ 原告は、前記第3の1〔原告の主張〕⑵のとおり、審決で示されていない乙4については、本願商標の形状の3特徴を備えておらず、これを勘案して本願商標の識別力を否定しており、その判断は誤りである旨を主張する。しかし、そもそも、本願商標の構成から当然に原告が主張する形状の3特徴が認識されるとは限らず、また、商標法3条1項3号該当性の判断において、上記形状の3特徴を備えていれば、なにゆえ時計の形状として出所識別標識となるのか、その理由は明らかでないから、上記形状の3特徴を全て備えた他社製品が存在しなければならないとする原告の主張は理由がない。上記三つの特徴それぞれを検討して、それぞれの特徴が時計の形状の一部として特徴のある形状であるか否か、それらの特徴を組み合わせた時計が市場において存在するのか否かを検討すれば足りるというべきである。そして、「CITIZEN」のウェブサイトである乙4には、「Eco-Drive One」の見出しの下に、「セラミックベゼルモデル」として、ビス4本によりベゼルが固定され、文字盤の全面にわたり立体的な格子模様が示された腕時計の写真の掲載があり、原告の主張する本願商標と類似する構成を備えるものであるから、前記⑵ウのとおり考慮の対象とすることができるというべきである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。

2 取消事由2(商標法3条2項該当性に関する判断の誤り)について⑴ 商標法3条2項の解釈商標法3条2項は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については、商標登録を受けることができる旨を規定している。同条2項の趣旨は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて自他商品識別力又は自他役務識別力をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には商標登録を受けることができるとしたものと解される。そして、商品の形状を表してなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、宣伝広告のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、その形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、その形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断するのが相当である。⑵ 認定事実前記1⑵アにおいて認定した事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告、本願商標及び本件製品に関し、以下の事実が認められる。ア 原告は、明治8年(1875年)にジュール=ルイ・オーデマ、エドワード・ピゲによって創業された、スイス連邦の腕時計メーカーであり、我が国及び米国を含む世界の腕時計市場において自社製品を販売している。原告は、腕時計の専門誌において、世界3大時計ブランドの一つに並び称されるなどとして紹介されている(甲1~3)。イ 原告は、昭和47年(1972年)に本件製品を販売したところ、当時高価であったステンレススチールを採用した、初めてのスポーツウォッチであり、今日に至るまで販売が継続されている。本願商標に係る形状は、イタリア人時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによってデザインされ、前記のとおり昭和47年に最初のモデルが発売された(甲220、222)。本願商標の使用に係るものとして原告の主張する本件製品(RoyalOak(ロイヤルオーク))は、原告において、そのブランドを代表するモデルであるとされている。本件製品の形状である八角形のベゼルは、英国海軍の戦艦RoyalOak号の八角形の舷窓にちなんで採用されたとも、その他のモチーフによる(潜水服のヘルメット、甲231)ともいわれているものの、いずれにしろ、本件製品の外観上の特徴の一つを成している。前記のとおり、本件製品は、昭和47年に発売されたところ、当時の薄型腕時計では不可能とされた50メートル防水を実現するため、ベゼルとケースの間にパッキンを挟み込み、パッキンをベゼルと共にビスで固定したものである(甲237)。ウ 本件製品を紹介した雑誌記事には、本件製品の写真が併せて掲載され、読者が本件製品の特徴を認識できるような態様で紹介されている。本件製品を紹介した雑誌記事には、「8角形のケースのベゼルに、特別に設計された8本のボールトが埋めこまれていて、同じく8角形のガラスを防水にして密閉して組み立てられている。(甲5)「特徴的な8角形のベゼル」」 、 (甲71)「八角形のベゼル」及び「八本のスクリューでケースにシッカリと、固定された…」(甲77)「元祖八角形ウォッチにして不朽の名作」、 (甲230)「ゴールドに映えるブラック文字盤の『グランドタペストリー』も、特徴のひとつ。(甲225)などのように、本件製品の形状の特徴に言及」したものが見られる。エ このように原告は、本件製品について積極的に宣伝広告を行い、時計雑誌の他に、全国紙、週刊誌、女性向け雑誌やウェブサイト等、多数のメディアに広告を出稿している(甲1~245)とする。しかし、本件製品(ロイヤルオーク)自体、「数多くのバリエーションを持つ」とされ、「ロイヤルオーク オフショアシリーズ」として文字盤の格子模様のないものが雑誌に紹介されているほか(甲3) 原告の宣伝におい、ても、「ロイヤルオーク」として文字盤の格子模様のないものを大きく写真で宣伝しているものもあり(甲51、52、57、165)、本件製品(ロイヤルオーク)において、格子模様とは異なる文字盤の模様となっている製品の紹介もされている(甲84、85、95、97)。原告の正規代理店(下記ク)の宣伝広告においても、「ロイヤルオーク」のほか、「ロイヤル オーク オフショア」「CODE 11.59バイ オ、ーデマ ピゲ」、「ロイヤルオーク コンセプト」等多種の製品が同じように紹介され、取り扱いがされているところ、特に「2019年に発売され瞬く間に代表的コレクションとなった」とされる「CODE 11.59バイオーデマ ピゲ」においては、原告の主張する形状の3特徴を全く備えないモデルとなっているほか、ロイヤルオークとして紹介されている五つの商品の中においてすら、形状の3特徴の全てを備えるのは一つのみとなっているのみならず、これについても、色は全体に黒色であって、文字盤下中央に秒表示があり、日付けを示す穴もないなど、本願商標とは異なるものとなっている(甲278の83)。原告が本件製品(ロイヤルオーク)と共に宣伝広告した「ロイヤルオーク オフショア」は、本願商標と比して明らかに八角形ベゼルが太く、この点で本願商標とは異なる印象を与える上に、同シリーズでは文字盤の格子模様もなく、時刻を示す場所(インデックス)に「1」「2」等のアラ、ビア数字が配されているもの(甲87) 本願商標において時刻を示す場所、として隆起している部分それ自体が存しないもの(甲104)などが存する。「ロイヤルオーク コンセプト」も、文字盤に格子模様が存せず、全面にわたりネジ等の機械機構が見える仕様となっており、インデックスも存しないか極めて短いものとなっている(甲278の83)。原告は、2002年(平成14年)頃にロイヤルオークの30周年記念モデルとして、「ニックファルド限定モデル」(甲68)「アメリカズカッ、プモデル」(甲69~71)を販売したが、いずれもインデックスが数字であり、文字盤の格子模様は文字盤の一部に施されるにすぎず、文字盤も概ね黒色であり(甲68~71)、文字盤に複数の計測針が配されている(甲69~71)。その他にも、原告が本件製品の広告の成果として提出する証拠について、その詳細を見ると、本件製品(ロイヤルオーク)ではあるものの、本願商標とは異なり、①文字盤に立体的な格子模様自体が施されておらず、平面的なもの(甲52、57、97)、②文字盤の立体的な格子模様が一部にしか施されていないもの(甲66~69) ③文字盤に格子模様とは異なる別、の模様等が施されているもの(甲18、39、56、84、95、97、104、117、128、144、165、222、223、226、235)、④インデックスが数字等であるもの(甲66~69、81、83、99、100~103、105、107、108、110~115、118~120、127、131、133、134、136、141、163、168、174、175、236)、⑤インデックスが丸いなど宝飾品様のもの(甲16、18、19、21、23、25、26、28、33、38、47、56、57、72~77、83~85、89、91、97、127)、⑥ベゼルが金色であるもの(甲9、12~15、34、36、37、38、40、47~49) ⑦文字盤以外が金色であるもの、 (甲9(中央の製品)、甲10、11、82、84~86、88~90、92~94、96、98、103、106、108、110~113、164、177~180、183~185、187、188、190、191、193、195~200、203、204、206、209、224、225、227、230)、⑧全体の色が金色等で銀色でないもの(甲16、18、19、21、23、25、26、28、33、36、38~40、42、45、47~49、56、57、168、174、175)、⑨文字盤及びベゼルが黒色で台座部分が金色であるもの(甲79、159、160)、⑩インデックス等を除き全体が黒色のもの(甲223、226)、⑪八角形ベゼルのそれぞれの角にくぼみがあり、六角形の穴を有するビスで止められているもの(甲124、125)など、原告が形状の3特徴とするものや本願商標の構成の一部を備えないものがある。オ また、本件製品の広告には、八角形のベゼルも六角形のビズも備えず、文字盤もほぼ四角形の原告の製品(クォーツ。甲12~15、24)が、本件製品と、一緒に並んで宣伝されているものもある。カ 原告は、昭和47年(1972年)から現在に至るまで、時計雑誌、ファッション誌のみならず週刊誌・全国紙を含む多種の新聞・雑誌に少なくとも160回以上その広告又は紹介記事が掲載されているとするところ、原告による広告の実情について前記エのとおりであるほか、雑誌等の紹介記事においても、本件製品について、ベゼルが黄色で、インデックスが数字であるものなども併せて紹介され(甲3) 原告が形状の3特徴として主、張する文字盤の格子模様についても、これが全くない製品がロイヤルオークとして紹介されるなどしている(甲222)。キ 原告は本願商標に係る形状を構成する要素である八角形のベゼル及びそのそれぞれの角に六角形のネジを配置してなる図形商標(国際登録第594072号)について、日本及び米国等において商標登録を受けているとする(甲263(5頁)、甲266(8頁)。)ク 原告は、東京、名古屋及び大阪に直営店である「オーデマ ピゲ ブティック」を構えるほか、東京に2か所、札幌、神戸、岡山、高松及び福岡に各1か所ある正規代理店を通じて、本件製品をはじめとする自社製品を販売している(甲278の83,84)。本件製品(ロイヤルオーク)について、原告は、我が国において継続的に販売されており、平成27年(2015年)が4536万0186スイスフラン(約52億8718万3280円) 平成28年、 (2016年)が6129万4671スイスフラン(約71億4450万6851円)、平成29年(2017年)が7294万4995スイスフラン(約85億0246万8617円)、平成30年(2018年)が9412万3405スイスフラン(約109億7102万4086円)、令和元年(2019年)が1億0964万6028スイスフラン(約127億8034万1023円)及び令和2年(2020年)が4964万9051スイスフラン(約57億8709万3384円)の売上げがある(甲247)とするが、これらには、本件製品(ロイヤルオーク)のほか、「ロイヤルオーク コンセプト」及び「ロイヤルオーク オフショア」も含まれているところ、上記額の概ね半分強が本件製品(ロイヤルオーク)であり、その余が「ロイヤルオーク コンセプト」及び「ロイヤルオーク オフショア」である(甲247)。ケ また、本件製品をはじめとする原告の製品を宣伝するための展示会への出展、新製品の発表会、顧客を集めてのイベントやゴルフトーナメントのスポンサーシップといったイベントも数多く行っている(甲167、169、170、172、173、176、182、192、201、210、212、213)ほか、著名人にも原告の製品の愛用者が多数存在する(甲189)とする。原告は、本件製品についての我が国における宣伝・広告費が、平成27年(2015年)に4億6628万9341円、平成28年(2016年)に6億0782万4104円、平成29年(2017年)に6億0950万0679円、平成30年(2018年)に5億4181万2520円、令和元年(2019年)に4億0675万4000円、令和2年(2020年)に3億5733万6750円であるとして甲248を提出するところ、その表題は「Audema Piguet 宣伝広告費(2015年~2020年)」とされており、本件製品に係るもののみとは認め難い(甲248)。コ 本件製品及び本願商標について、消費者調査、アンケート調査等はされておらず、本件製品ないし本願商標に係る需要者の認識に関する証拠は何ら提出されていない。サ 原告の正規代理店も取り扱う高級ブランドである「GIRARD-PERREGAUX」の腕時計も、外側八角形ベゼルとビス状のもの(ベゼルにおけるビス等の配列も甲84、85に示された本件製品(レディロイヤルオーク)と類似する)及び文字盤の格子模様を備えている(別掲2の2(7)、甲70、乙9)「GIRARD-PERREGAUX」は、原告と。並んで紹介される高級腕時計メーカーである(甲70)。原告の正規代理店である「YOSHIDA」のウェブサイトにおいて販売されている「BVLGARI」の腕時計には、八角形のベゼルを備えたものがある(別掲2の2(21)、乙14)。また、「カルティエ」からは、「サントスオクタゴン」として、外側八角形ベゼルと八角形の各頂点にビス状のものを備えた腕時計が販売されており、現在は生産は終了しているものの、ウェブサイトで中古品の販売がされている(別掲2の2(10)、乙6)。「CREDOR」のウェブサイトにおいて、「GTAW040」の見出しの左に、八角形のベゼルを備えた腕時計の写真の掲載があり、税込み247万5000円の販売価格であることが示されている(別掲2の2(22)、乙15)。「ANTIWATCHMAN」のウェブサイトにおいては、「ティソ TISSOT ヴィンテージ パワーマチック80 デイト 18KPG メンズウォッチ BOX・ギャランティ付き・HA-5862」の見出しの下に、文字盤に立体的な格子模様を備えた腕時計の写真の掲載があり、同時計は21万8000円で販売されている旨の記載がある(甲267の2(26)、乙19)。シ 上記サのほかにも、別掲2の1(1)ないし(4) 2、 (1)ないし(6)、(8)(9)(11)ないし(20)(23)ないし(29)のとおり、、 、 、八角形のベゼルやビス、文字盤の格子模様などをそれぞれ備えた腕時計が販売されている。⑶ 本願商標の商標法3条2項該当性ア 本願商標の構成は前記第2の1⑴及び前記1⑵アのとおりであり、その形状は、文字盤の一部であり、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであると認められる。しかも、原告以外の者が取り扱う腕時計においても、本願商標と似た形状を有する製品が複数存在し(前記⑵サ,シ)、本願商標の形状と、原告以外の者が取り扱う腕時計の形状とは、一定の差異はあるが、主要な構成要素が共通しており、前記⑵サの腕時計と比較しても、本願商標の形状の斬新性は乏しく、本願商標の形状に類似した他の製品が相当数存在するものと認められる。イ 本件製品は高級腕時計として有名であり、昭和47年の発売当初から、本件製品には本願商標に示された形状が用いられていたことが認められる(前記⑵ア、イ)。しかし、前記⑵エのとおり、本件製品の形状については相当のバリエーションがあり、それらも含めて宣伝広告がされており、その中には、本願商標の形状的特徴として原告が主張する形状の3特徴のうち、一つないし複数を備えないものが多数存在しているほか、全てを備えないものも存する。また、本件製品の宣伝広告には、本件製品と並んで、原告が形状の3特徴として主張する構成を全く備えない腕時計の宣伝がされているものもある(前記⑵オ)。雑誌等の記事においても、本件製品の形状の特徴に言及するものがあるものの(前記⑵ウ) その特徴を備えないものについても本件製品として紹、介するなど(前記⑵カ) 本件製品の形状の特徴の紹介については必ずしも、一定しない。本願商標は、腕時計の形状の一部を平面視したものであるところ、そこに示された状態では当然のことながら販売されておらず、本件製品には、いずれも原告の社名を示す「AP」の文字等が記載されている。本件製品を紹介する広告等には、いずれも原告の社名等が記載されている(前記⑵ウ)。したがって、需要者である一般の消費者は、本願商標の形状からではなく、文字盤に記載された文字、あるいは広告に記載された説明の記載から、本件製品を他の製品と識別すると考えられる。ウ 原告は、直営店及び正規代理店を通じて本件製品を販売しているが、店舗数は極めて限られた数となっている(前記⑵ク)。エ 本願商標ないし本件製品について、アンケート調査等はされていないから、原告による宣伝広告等の結果、本件製品ないし本願商標が需要者である一般消費者にどのように受け取られているか等、その効果を明らかにする証拠は存せず(前記⑵ケ、コ)、本願商標ないし本件製品についての需要者の認識は明らかではない。加えて、本件製品の売上額とするものにも原告が形状の3特徴として主張する構成を備えない製品が含まれているほか(前記⑵エ、ク)、同種他社製品と比較すべき証拠も提出されていないから、原告が形状の3特徴として主張する構成ないし本願商標の構成を備える製品が、市場においてどの程度販売されているのか、本件製品がどの程度の市場占有率を有するのか等についても認めるに足りる証拠はない。オ 上記アからエまでの事情を総合すれば、本件製品が販売開始から約40年が経過していること及び原告自身が有名な高級腕時計製造販売業者であることを考慮しても、本願商標が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったということはできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと認めることはできず、この判断を覆すに足りる事情は認められない。

⑷ 原告の主張に対する判断ア 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴ないし⑻のとおり、原告の販売店舗について(⑴)、本件製品について(⑵)、販売数量及び販売高について(⑶)、宣伝広告費について(⑷)、宣伝広告の態様について(⑸)、需要者の認識について(⑹)、類似する同種商品について(⑺)及び使用実績について(⑻)の本件審決の認定及び判断はそれぞれ誤りであるから、本件審決は取り消されるべきであると主張する。しかし、前記第3の2〔原告の主張〕⑴ないし⑻は、いずれも、商標法3条2項に係る使用の結果自他識別力を備えるに至ったか否かの判断に当たって、考慮要素の一つとされたものであり、それら要素の総合判断により上記識別力の有無は判断されるべきものであるから、仮に本件審決のそれぞれの認定ないし判断に誤りがあったとしても、直ちに本件審決を取り消すべき理由となるものではない。本願商標が商標法3条2項に定める使用による自他識別力を備えるに至っていないことについては前記⑶のとおりであり、原告の主張は前提を欠くというべきである。イ なお、これらを個別にみても、以下のとおり、原告の主張には理由がない。(ア) 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑴のとおり、原告の販売店舗についての本件審決の判断は誤りである旨を主張する。この点については、前記⑵クのとおり認められるところ、前記⑶ウのとおり、店舗数は極めて限られたものといえ、前記⑶エのとおり、原告による宣伝広告等の効果や、本件製品ないし本願商標についての需要者の認識を示す証拠も提出されていないところであり、前記⑶オのとおり、本願商標が自他識別力を獲得しているものとはいえない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。(イ) 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑵のとおり、本件製品についての本件審決の判断は誤りである旨を主張する。この点については、前記⑶エのとおり、本件製品には多種多様なものがあり、その中には、原告が形状の3特徴として主張する構成を備えないものも多種存在し、本願商標とは相当に異なるものも存在するところであって、原告が本件製品の売上高として示す額のうちには、それら原告が形状の3特徴として主張する構成を備えない製品の売上げもその半分弱程度を占めているとみられること(前記⑵ク)などからすれば、前記⑶オのとおり、本願商標が自他識別力を獲得しているものとはいえない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。(ウ) 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑶ないし⑸のとおり、販売数量及び販売高について、宣伝広告費について及び宣伝広告の態様についての本件審決の判断はいずれも誤りである旨を主張する。この点については、前記⑵ク及びケのとおり認められるところ、前記⑶エのとおり、本件製品の販売数量や販売高、宣伝広告の効果について、証拠からは明らかではないから、前記⑶オのとおり、本願商標が自他識別力を獲得しているものとはいえない。したがって、原告の上記主張は採用することができない。(エ) 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕⑹ないし⑻のとおり、需要者の認識について、類似する同種製品について及び使用実績についての本件審決の判断はいずれも誤りである旨を主張する。しかし、前記⑵コのとおり、本件製品ないし本願商標についての需要者の認識を示す証拠は提出されておらず、本願商標の形状は、前記⑵サの製品の文字盤等の形状と比較して、特に斬新な形状といえるようなものではなく(前記⑶ア)、製品の特性上普通に求められる形状の範囲内のものである。また、前記⑵シの製品につき、一部製品の販売サイトがAmazonにより削除されたものがあるとしても、これら原告が形状の3特徴として主張する構成を備える商品が販売されていた事実については、需要者である一般消費者において、本願商標が自他識別力を有するか否かの判断において考慮することは妨げられないというべきである。また、本願商標は時計を指定商品とするところ、原告からは腕時計以外についての証拠の提出は何らされていないのであるから、この観点においても、指定商品について本願商標が自他識別力を獲得しているものとはいえないというべきである。したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。

3 結論以上のとおり、取消事由1及び2は、いずれも理由がない。よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官

東 海 林 保

裁判官

今 井 弘 晃

裁判官

水 野 正 則

(別紙審決書写し省略)

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