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令和5(ワ)70001特許専用実施権侵害差止請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年4月17日
事件種別 民事
当事者 原告エンバイロ・ビジョン株式会社
被告ABBiT株式会社
法令 特許権
特許法100条1項1回
キーワード 特許権7回
実施6回
差止3回
侵害2回
進歩性1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は、原告が、被告に対し、被告は別紙物件目録記載のシステムについて譲渡 の申出をしており、将来、原告の有する特許権の専用実施権を侵害し又は侵害する おそれがあると主張して、前記専用実施権による差止請求権(特許法100条1項) に基づき、前記システムの生産、使用、譲渡等の差止めを求めるとともに、廃棄等5 請求権(同条2項)に基づき、前記システムに用いる「マイクロ・ナノバブル発生 装置」と称する装置及び「活性炭含有担体」と称する担体の廃棄並びに前記システ ムに関するウェブページの削除及びパンフレットの廃棄を求める事案である。

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判決文

令和6年4月17日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70001号 特許専用実施権侵害差止請求事件

口頭弁論終結日 令和6年1月24日

判 決

原 告 エンバイロ・ビジョン株式会社

同訴訟代理人弁護士 沼 井 英 明

同訴訟代理人弁理士 日 一 樹

被 告 A B B i T 株 式 会 社

同 訴 訟 代 理 人 弁 護士 横 井 康 真

同 上 田 陽 太

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は、別紙物件目録記載の排水処理システムの生産、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入並びに譲渡及び貸渡しの申出(譲渡及び貸渡しのための展示を含む)をしてはならない。2 被告は、別紙物件目録記載の排水処理システムに用いる「マイクロ・ナノバブル発生装置」「活性炭含有担体」を廃棄せよ。、3 被告は、別紙物件目録記載の排水処理システムに係るウェブページを削除せよ。4 被告は、別紙物件目録記載の排水処理システムに係るパンフレットを廃棄せよ。

第2 事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、被告は別紙物件目録記載のシステムについて譲渡の申出をしており、将来、原告の有する特許権の専用実施権を侵害し又は侵害するおそれがあると主張して、前記専用実施権による差止請求権(特許法100条1項)

5 に基づき、前記システムの生産、使用、譲渡等の差止めを求めるとともに、廃棄等請求権(同条2項)に基づき、前記システムに用いる「マイクロ・ナノバブル発生装置」と称する装置及び「活性炭含有担体」と称する担体の廃棄並びに前記システムに関するウェブページの削除及びパンフレットの廃棄を求める事案である。1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実等。証拠等は括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)

⑴ 当事者原告は、環境機械器具の製造、販売、卸売り及びエンジニアリング等を目的とする株式会社である(甲1)。被告(旧商号はエンバイロ・ソリューション株式会社)は、環境機器の企画、製造、販売とそれに付随するコンサルティング業務等を目的とする株式会社である(甲2、裁判所に顕著な事実)。

⑵ 原告が専用実施権を有する特許権について(甲3、4)原告は、令和4年11月8日、以下の特許権(以下「本件特許権」という。)について、特許権者である原告代表者から、地域を日本全国、期間を本件特許権の存続期間満了まで、内容を特許請求の範囲・全請求項とする範囲で、専用実施権の設定を受けた。ア 登録番号 第7061473号イ 発明の名称 廃水処理装置ウ 出 願 日 平成30年2月5日エ 登 録 日 令和4年4月20日

⑶ 特許請求の範囲について(甲4)本件特許権に係る特許(以下「本件特許」といい、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)の請求項1及び請求項7の特許請求の範囲は、以下のとおりである(以下、同請求項1に記載された発

5 明を「本件発明1」、同請求項7に記載された発明を「本件発明2」といい、これらを併せて「本件各発明」という。)。ア 請求項1「処理対象となる被処理水を収容する第1の収容槽と、該第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段と、前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する第2の収容槽と、該第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段と、前記第2の収容槽内に収容され、微小径の粉末状に生成され個々の粉末にオゾン分子を集めるポーラスを有する活性炭が担持される、多数の空孔が形成された複数の担体と、から少なくとも構成されており、前記担体の空孔は、前記マイクロナノバブルよりも大径に形成され、前記空孔内に好気性微生物及び通性嫌気性微生物のいずれもが担持されていることを特徴とする廃水処理装置。」イ 請求項7「前記担体は長辺と短辺とを備えた略直方体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の廃水処理装置。」

⑷ 本件各発明の分説について本件各発明を分説すると、以下のとおりとなる(以下、各構成を分説後の符号に従い、「構成要件A」などという。)。ア 本件発明1についてA 処理対象となる被処理水を収容する第1の収容槽と、B 該第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段と、C 前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する第2の収容槽と、D 該第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段と、E 前記第2の収容槽内に収容され、微小径の粉末状に生成され個々の粉末

5 にオゾン分子を集めるポーラスを有する活性炭が担持される、多数の空孔が形成された複数の担体と、から少なくとも構成されており、F 前記担体の空孔は、前記マイクロナノバブルよりも大径に形成され、前記空孔内に好気性微生物及び通性嫌気性微生物のいずれもが担持されている、G ことを特徴とする廃水処理装置。イ 本件発明2についてH 前記担体は長辺と短辺とを備えた略直方体に形成されているI ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の廃水処理装置。

⑸ 被告の行為について(甲13から15まで、争いがない事実)被告は、遅くとも令和4年4月から現在まで、別紙物件目録記載のシステム(以下「被告システム」という。)について、業として販売の申出をし、被告のウェブサイト(https://www.enviro-solution.co.jp/)に「被告システムの特徴」と題する被告システムの紹介ページを設置し、かつ、被告システムの内容を宣伝するパンフレットを作成している。

⑹ 被告システムについて(甲15、16、19から23まで、争いがない事実)被告システムは、概要、以下の構成を有する。なお、被告システムが、本件各発明の構成要件AからC、G及びHを充足することについて、当事者間に争いはない。a 原水を収容する調整槽と、b 該調整槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するマイクロ・ナノバブル発生装置と、c 前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する曝気槽と、d 該曝気槽内に酸素及びオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するマイクロ・ナノバブル発生装置(以下「被告装置」という。)と、

5 e 前記曝気槽内に収容され、微小径の粉末状に生成され個々の粉末にオゾン分子を集めるポーラスを有する活性炭が含有される、多数のマイクロポーラスが形成された複数のスポンジからなる活性炭含有担体(以下「被告担体」という。)と、から少なくとも構成されており、f 被告担体に通性嫌気性微生物が存するほか、被告担体のマイクロポーラスは、前記マイクロナノバブルよりも大径に形成され、少なくとも前記マイクロポーラス内の被告担体表層に好気性微生物が担持される、g 排水処理システムであり、h 被告担体は長辺と短辺とを備えた略直方体に形成されている。2 争点本件の争点は、被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するかであるが、被告システムが本件発明2の構成要件Hを充足することは当事者間に争いがなく、本件発明1の各構成要件を充足する場合に本件発明2の構成要件Iが充足される関係にあるから、実質的な争点は、本件発明1の以下の構成要件の充足性の有無である。

⑴ 構成要件Dの充足性(争点1)

⑵ 構成要件Eの充足性(争点2)

⑶ 構成要件Fの充足性(争点3)3 争点に対する当事者の主張

⑴ 争点1(構成要件Dの充足性)について(原告の主張)被告装置で発生するマイクロナノバブルには、オゾンだけでなく酸素又は空気が含まれているので、被告システムの構成dの被告装置は、構成要件Dの「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」に該当する。被告装置は、空気中から酸素を分離し、当該酸素の一部を放電によりオゾンに変えるものであり、被告装置を最高出力で稼働させても、発生させるマイク

5 ロナノバブル内にはオゾンよりも多くの酸素が残存して含まれている。その上、マイクロナノバブル内のオゾン自体も活性炭により化学変化させて酸素となることにより、好気性微生物及び通性嫌気性微生物を活性化させており、オゾンが含まれていても十分効果的である。そして、オゾンは微量であるが、本来大気中にも存在するし、「オゾン発生装置」で生成されたオゾンは自然に消滅して酸素に置き換わるものなので、本件各発明の「第2収容槽内においてはオゾンの量を早期に低減」させることは、2次的な効果を期待するにすぎない。したがって、構成要件Dの「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」には、オゾンを生じさせる酸素供給手段は排除されず、被告装置から生じさせる酸素を含むマイクロナノバブル内に「オゾン」が含まれていたとしても、被告装置は、構成要件Dの「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」に該当する。(被告の主張)本件各発明の課題は「廃水処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供すること」であり、第2の処理槽において「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」を設けた趣旨は、第2の処理槽(生物処理工程)において酸素を含むマイクロナノバブルを供給することで、この酸素で活性化した好気性微生物及び通性嫌気性微生物による被処理水の生物処理を効果的に行うとともに、残オゾンに付加された酸素により水酸基ラジカル及び酸素に積極的に化学変化させることで、この残オゾンを早期に低減させることにある。そうすると、構成要件Dにおける「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」とは、残オゾンの化学変化を促進させることができるように、「酸素を主成分として含むマイクロナノバブルを供給するもの」と解すべきである。被告装置は、「オゾン」を主としたマイクロナノバブルを発生させる装置で

5 あり、本件各発明が予定するように、酸素のマイクロナノバブルを放出して曝気槽に残存したオゾンを早期に低減させることはできないし、そうした意図もない。したがって、被告システムは、構成要件Dを充足しない。

⑵ 争点2(構成要件Eの充足性)について(原告の主張)被告担体は、曝気槽内に収容され、オゾン分子を集めるポーラスを有する活性炭が含有される、多数のマイクロポーラスが形成された複数のスポンジであり、活性炭は被告担体であるスポンジのマイクロポーラス内に存することより、微小径の粉末状であることが分かることから、構成要件Eの「前記第2の収容槽内に収容され、微小径の粉末状に生成され個々の粉末にオゾン分子を集めるポーラスを有する活性炭が担持される、多数の空孔が形成された複数の担体」に該当する。「担持」とは、「部材を担ぐように支持すること」又は「付着した状態で持っていること」を意味するが、仮に、活性炭が樹脂担体内に含まれているとしても、活性炭が樹脂担体表面にその一部が露出している状態は、担体という土台に担いで保持する状態であるので、活性炭はかかる樹脂担体に「担持」されているといえる。被告は、被告システムの活性炭が被告担体であるポリウレタンフォームを構成する樹脂中に混入するとしているが、被告の主張によれば、活性炭は樹脂表面直下にも分布し、当該活性炭の空孔内に通性嫌気性微生物が侵入可能としているのであるから、活性炭は被告担体表面にその一部が露出しているはずである。したがって、被告担体は、「活性炭が担持される」担体に当たり、構成要件Eを充足する。(被告の主張)

5 「担持」とは、「部材を担ぐように支持すること」又は「付着した状態で持っていること」を意味する。また、本件各発明の技術的意義の1つとして、「担体内部に形成された空孔表面に活性炭の粉末が保持され、更にこれら活性炭の個々の粉末にポーラスが形成されているという、空孔とポーラスの二重構造になっており、かかる二重構造により、残オゾンのオゾン分子を効率的に集めることができ、酸素分子への積極的な化学変化を促進することができる」というものがあり、かかる技術的意義からすれば、本件各発明において用いられる担体は、当該担体に空孔を設け、その表面にポーラスを有する活性炭を保持させるという二重構造にする必要がある。したがって、構成要件Eにおける「ポーラスを有する活性炭が担持される、多数の空孔が形成された複数の担体」とは、担体に形成されている多数の空孔の表面にポーラスを有する活性炭が保持されているものを意味すると解するべきである。被告担体においては、活性炭は被告担体を構成するスポンジ状素材に含み持たれており、かつ、当該スポンジ状素材の表面には好気性微生物を付着させる特殊素材がコーティングされているのであるから、本件各発明の特徴たる、担体に形成される空孔の表面にポーラスを有する活性炭が保持されるという二重構造を有していない。したがって、被告システムは、構成要件Eを充足しない。

⑶ 争点3(構成要件Fの充足性)について(原告の主張)通性嫌気性微生物は、酸素を必ずしも必要としない微生物であり、酸素が存在する場合、好気性微生物と同様に好気的に呼吸するものであり、被処理水と接する箇所であれば、活性炭のポーラス内に限らず、スポンジ状素材の表面や空孔内等、被告担体のどこにでも付着して存在している。したがって、被告システムにおいても、通性嫌気性微生物は、好気性微生物と同様に、被告担体の表面に付着して保存されている状態にある。

5 よって、被告システムの構成f「前記活性炭含有担体のマイクロポーラスは、前記マイクロナノバブルよりも大径に形成され、前記マイクロポーラス内に担体表層の好気性微生物及び担体内部の通性嫌気性微生物のいずれもが担持されている、」は、本件各発明の構成要件Fを充足する。(被告の主張)「担持」とは、「部材を担ぐように支持すること」ないしは「付着した状態で持っていること」を意味し、同じ特許請求の範囲に記載された文言については、当然、同一の意味内容を有するはずであるから、構成要件Fについても、「好気性微生物」と「通性嫌気性微生物」は、担体の空孔表面に担がれるように又は付着した状態で保持されているものと理解すべきである。被告担体においては、好気性微生物は被告担体の表層に担持されているものの、通性嫌気性微生物については、被告担体を構成するスポンジ状素材に含有される活性炭に形成されているポーラス内に存在しており、被告担体の空孔表面に担持されていない。したがって、被告システムは、構成要件Fを充足しない。

第3 当裁判所の判断

1 本件各発明及びその意義について

⑴ 本件明細書には、以下の記載等がある。

ア 発明の詳細な説明技術分野【0001】本発明は、協同事業系の複合建物、食品・化学・製紙・自動車工場等から排出される有機系廃水を含む廃水を処理する廃水処理装置及び廃水処理方法に関する。背景技術【0002】従来の廃水処理装置には、処理対象となる汚水を収容する処理槽内にオゾンを供給することで、その強力な酸化作用によって、汚水に

5 含まれる細菌類の殺菌、脱臭及び有機物や油脂分を分解し除去する等の効

果を得るようにしたものがある。【0003】このようなオゾンは、バブル発生器等により微小径に泡沫化することで、汚水と効果的に混合し汚水内の有機物分解を促進したのち、多数のオゾン泡沫の大部分が時間経過とともに圧壊、消滅することが知られている。【0004】また、廃水処理装置には、処理槽内に微生物を担持する担体を収容することで、微生物による生物処理を一定時間かけて行い、汚水に含まれる有機分を分解し浄化するようにしたものがある。イ 発明の概要発明が解決しようとする課題【0006】しかしながら、特許文献1にあっては、汚水との混合効率の促進、そして殺菌効果や有機物分解等の廃水処理効果の促進のためには、オゾンを含有するバブルの径をマイクロレベル、更にはナノレベルと微小化することが望まれる一方、バブルの径を微小化するに伴い、これらのバブルは容易に圧壊することなく長時間にわたり処理後の廃水に含まれた状態で滞留するため、これらのバブルに超音波を照射する等の別段の手段を講じて圧壊させる必要が生じ、処理装置の規模が肥大化するという問題がある。【0007】また、特許文献2にあっては、処理槽内に収容した担体が処理対象となる被処理水と十分に接触することができない可能性があることから、生物処理による所期の有機物の分解を達成するために長い時間を要し、廃水処理が非効率的となる虞がある。【0008】本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、廃水処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供す

5 ることを目的とする。

課題を解決するための手段【0009】前記課題を解決するために、本発明の廃水処理装置は、処理対象となる被処理水を収容する第1の収容槽と、該第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段と、前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する第2の収容槽と、該第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段と、前記第2の収容槽内に収容され、少なくとも好気性微生物が担持される複数の担体と、から少なくとも構成されていることを特徴としている。この特徴によれば、第1の収容槽にてオゾンによって殺菌処理された被処理水と残オゾンを、好気性微生物を担持した複数の担体を有する第2の収容槽に収容することで、被処理水中を漂う残オゾンのバブルを担体に吸着させる結果、オゾン分子同士を積極的に酸素分子に化学変化させて残オゾンを低減できると同時に、水酸基ラジカルを豊富に生成させることで有機物の分解を促進し、当該酸素分子及び同じく担体に吸着した酸素バブルにより生物処理を活性化させることができる。すなわち担体をオゾン分解及び生物処理の反応の場として利用できる。【0010】前記担体に通性嫌気性微生物が担持されていることを特徴としている。この特徴によれば、微小径の気泡からなるマイクロナノバブルによって水の抵抗が減って浸透性が高まり、担体の内部まで水が浸入し易くなるため、内部に存在する通性嫌気性微生物が刺激されて活性化する。この結果、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の両方が活性化し、食物連鎖(微生物同士の共食いを含む)が促進されるため、余剰な汚泥を発生させることなく、早期且つ高度な生物処理を達成することができる。【0011】前記担体に活性炭が担持されていることを特徴としている。

5 この特徴によれば、担体に担持された活性炭により、残オゾンを積極的

に生物処理に有効な酸素に分解できる。また、活性炭の遠赤外線効果により、例えば水温10℃以下という悪条件下でも微生物の活性化が維持できる。【0012】前記担体に酵素が担持されていることを特徴としている。この特徴によれば、好気性微生物の活動を活発化させる酵素が担持されているので、酵素の働きにより好気性微生物の繁殖が促進される。【0013】前記第2の収容槽の上部に、前記第1の収容槽内で処理された被処理水を導入する導入部を備えるとともに、前記第2の収容槽の下部に、該第2の収容槽内で処理された被処理水を排出する排出部を備えることを特徴としている。この特徴によれば、第2の収容槽内の被処理水を、該第2の収容槽の上部に位置する導入部から下部に位置する排出部に至るまでの流動の過程で確実に生物処理できる。【0014】前記第2の収容槽の下部に、該第2の収容槽の周方向に沿って酸素を含むマイクロナノバブルを吐出するバブル吐出口が形成されていることを特徴としている。この特徴によれば、第2の収容槽の下部にて吐出された酸素のマイクロナノバブルが、その浮力によって第2の収容槽の被処理水及び担体を伴い内周壁に沿って回転しながら上昇する回転上昇流を生成できるため、第2の収容槽内の流動性が高まると同時に、マイクロナノバブルの圧壊作用による水酸基ラジカル効果により、浮遊物質(SS)の分解が促進されるため、余剰汚泥がほとんど発生しない装置を提供することができる。【0015】前記導入部が、前記第2の収容槽の内周壁近傍に設けられていることを特徴としている。この特徴によれば、第2の収容槽の内周壁近傍に導入される被処理水と、

5 この内周壁に沿う回転上昇流が生成された酸素(空気)のマイクロナノバ

ブルとを効率よく混合させることができる。【0016】前記担体は長辺と短辺とを備えた略直方体に形成されていることを特徴としている。この特徴によれば、被処理水内にて漂う担体の流動性を高めることができるばかりか、流動に伴う担体の欠けの発生を抑制できる。【0017】本発明の廃水処理方法は、処理対象となる被処理水を収容する第1の収容槽にて、オゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給工程と、前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する第2の収容槽にて、酸素を含むマイクロナノバブルを供給するとともに、少なくとも好気性微生物が担持される複数の担体によって生物処理を行う生物処理工程と、から少なくとも構成されていることを特徴としている。この特徴によれば、第1の収容槽にて、オゾン供給工程でオゾンによって殺菌処理された被処理水と残オゾンに対し、好気性微生物を担持した担体を収容した第2の収容槽にて、生物処理工程で酸素を含むマイクロナノバブルを供給することで、この酸素で活性化した好気性微生物による被処理水の生物処理を効果的に行うとともに、残オゾンに付加された酸素により水酸基ラジカル及び酸素に積極的に化学変化させることで、この残オゾンを早期に低減させることができる。【0018】前記担体に通性嫌気性微生物が担持されることを特徴としている。この特徴によれば、微小径の気泡からなるマイクロナノバブルによって水の抵抗が減って浸透性が高まり、担体の内部まで水が浸入し易くなるため、内部に存在する通性嫌気性微生物が刺激されて活性化する。この結果、好気性微生物及び通性嫌気性微生物の両方が活性化し、食物連鎖(微生物

5 同士の共食いを含む)が促進されるため、余剰な汚泥を発生させることな

く、早期且つ高度な生物処理を達成することができる。

⑵ 本件各発明の技術的意義

本件明細書によれば、本件各発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。ア 本件各発明は、協同事業系の複合建物、食品・化学・製紙・自動車工場等から排出される有機系廃水を含む廃水を処理する廃水処理装置及び廃水処理方法に関するものである(【0001】。)イ 従来の廃水処理装置には、処理対象となる汚水を収容する処理槽内にオゾンを供給し、その強力な酸化作用によって、汚水に含まれる細菌類の殺菌、脱臭及び有機物や油脂分を分解し除去する等の効果を得るようにしたものがある。このようなオゾンは、バブル発生器等により微小径に泡沫化することで、汚水と効果的に混合し汚水内の有機物分解を促進したのち、多数のオゾン泡沫の大部分が時間経過とともに圧壊、消滅することが知られており、また、廃水処理装置には、処理槽内に微生物を担持する担体を収容することで、微生物による生物処理を一定時間かけて行い、汚水に含まれる有機分を分解し浄化するようにしたものがある(【0002】~【0004】。)ウ しかしながら、殺菌効果や有機物分解等の廃水処理効果の促進のためには、オゾンを含有するバブルの径をマイクロレベル、ナノレベルと微小化することが望まれる一方、バブルの径を微小化すると容易に圧壊することなく長時間にわたり処理後の廃水に含まれた状態で滞留するため、これらのバブルに超音波を照射する等の別段の手段を講じて圧壊させる必要が生じ、処理装置の規模が肥大化するという問題がある。また、処理槽内に収容した担体が処理対象となる被処理水と十分に接触することができない可能性があることから、生物処理による所期の有機物の分解を達成するために長い時間を要し、廃水処理が非効率的となるおそれがある(【0006】【0007】。本件各、 )

5 発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、本件各発明の構成

をとることによって、廃水処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的とするものである(【0008】 。)

2 争点1(構成要件Dの充足性)について

前記1⑵のとおり、本件明細書によれば、従来の廃水処理装置には、オゾンの強力な酸化作用によって、処理槽内の汚水に含まれる細菌類の殺菌、脱臭及び有機物や油脂分を分解し除去する等の効果を得るようにしたものがあるが、その効果を高めるためにバブルの径の微小化を目指した結果、オゾンを含有するバブルが容易に圧壊することなく長時間にわたり処理後の廃水に含まれた状態で滞留する問題があった。なお、オゾンを含有するバブルが滞留する問題に関し、本件特許の特許出願手続において先行発明に基づき進歩性欠如の理由があるとしてされた拒絶理由通知に対して原告が作成して提出した意見書(乙1。以下「本件意見書」という。)には、従来の技術に関して「本件各発明と異なり残オゾンを効果的に酸素に化学変化させることができずに、結果として微生物を滅菌させてしまい、生物処理能力を低減させる原因とな」る旨記載されており、残オゾンが効果的に酸素に変化しないと、微生物を滅菌させてしまい、生物処理能力を低減させる原因となることが記載されている。そして、本件各発明は、前記1⑵のとおり、廃水処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的としたものであり、本件各発明の廃水処理装置は、その特許請求の範囲の記載からも、処理対象となる被処理水を収容する第1の収容槽と、該第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段と、前記オゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容する第2の収容槽と、該第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段と、前記第2の収容槽内に

5 収容され、多数の空孔が形成された複数の担体とから少なくとも構成されてい

ることを特徴とする。本件明細書には、第2の収容槽内に本件各発明の担体を収容することに関して「被処理水中を漂う残オゾンのバブルを担体に吸着させる結果、オゾン分子同士を積極的に酸素分子に化学変化させて残オゾンを低減できると同時に、水酸基ラジカルを豊富に生成させることで有機物の分解を促進し、当該酸素分子及び同じく担体に吸着した酸素バブルにより生物処理を活性化させることができる」【0009】( )ことが記載され、第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段を有することに関して「第1の収容槽にて、オゾン供給工程でオゾンによって殺菌処理された被処理水と残オゾンに対し、好気性微生物を担持した担体を収容した第2の収容槽にて、生物処理工程で酸素を含むマイクロナノバブルを供給することで、この酸素で活性化した好気性微生物による被処理水の生物処理を効果的に行うとともに、残オゾンに付加された酸素により水酸基ラジカル及び酸素に積極的に化学変化させることで、この残オゾンを早期に低減させることができる。 (」 【0017】)ことが記載されている。すなわち、【0017】では、本件各発明においては、第1の収容槽での工程に基づく「残オゾン」について、第2の収容槽において、酸素を含むマイクロナノバブルを供給することで、この「残オゾン」を早期に低減させることが記載されている。そして、本件各発明は、第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段を有するところ、そのマイクロナノバブルの供給について、本件明細書には、上記【0017】のとおりの記載があるほか、その実施例においては、そのマイクロナノバブルについて「酸素(空気)マイクロナノバブル」(【0033】 、等) その発生装置について「酸素(空気)バブル発生装置」(【0040】)などと説明されることがあり、また、大気中から吸気された酸素を含む空気を用いる構成(【0042】)や、「外気(空気)が酸素(空気)バ

5 ブル発生装置40により超微細な気泡として液体中に混合されるため、この空

気を汚水中に長時間滞留させることができるようになり、酸素(空気)バブル発生装置40にて混合された空気(溶存酸素)を汚水中にとどまらせて、・・」(【0054】)などの記載がある。これらでは、第2の収容槽内に、酸素を含む空気のマイクロナノバブルが供給されることがあることが記載されている。他方、本件明細書には、第2の収容槽内に供給されるマイクロナノバブルとなる「酸素」又は「酸素を含む空気」について、オゾン発生装置に通して、オゾンを発生(酸素の一部をオゾンに変換)させた後、得られたオゾンを含む酸素(空気)をマイクロナノバブル発生ノズルの枝管から圧縮部内に吸引させてもよい旨の記載や示唆は一切ない。また、本件意見書には、「本発明に係る排水処理装置は、オゾン処理を行った後の被処理水を収容した第2の収容槽内に、好気性微生物、通性嫌気性微生物、及び微小な粉末状の活性炭をいずれも担持した複数の担体が収容されており、更に第2の収容槽にマイクロナノバブルに含まれる酸素に加え、オゾン処理に用いたオゾンを除くマイクロナノバブルに含まれる残オゾンが供給されております。この第2の収容槽に収容された複数の担体にて生じる作用について説明しますと、各担体の表面に形成された空孔内に、この空孔の径よりも微小なマイクロナノバブルに含まれる酸素が付着し、同様に担体の空孔内に付着した残オゾンが活性炭の触媒機能により積極的に酸素に化学変化させることで、これら豊富な酸素によって、好気微生物を活発化させて有機物分解を促進するばかりか、残オゾンを早期に低減させるという効果を奏します。」との記載がある。ここでも、原告は、本件各発明について、第2の収容槽においては、第1の収容槽でのオゾン処理によるものである「残オゾン」があるところ、第2の収容槽においてその低減が実現されること、その実現のための構成として、第2の収容槽に、所定の担体が収容されることに併せ、酸素を含むマイクロナノバブルが供給されることを説明しているといえる。

5 ⑵ 以上のような本件明細書等から認められる本件各発明の目的、課題の解決手

段からすれば、本件各発明は、オゾンによる殺菌等を行った処理後の被処理水に含まれる残オゾンの低減と、被処理水の生物処理の促進とを両立させることができる廃水処理装置及び廃水処理方法を提供することを目的としており、その解決手段としては、第1の収容槽内にオゾンを含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段を有するとともに、第1の収容槽とは別に、被処理水の生物処理を行う第2の収容槽を設けることとした上で、そこに第1の収容槽においてオゾンによって処理された被処理水を残オゾンとともに収容し、生物処理能力を低減させる原因となる残オゾンを積極的に酸素分子に化学変化させるために、第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段と、所定の担体を有するというものである。したがって、本件各発明においては、オゾンによる殺菌等を行った後の被処理水に含まれる残オゾンの低減をも目的として第2の収容槽とそれに関する構成を設けているのであり、残オゾンを低減させるための構成ともいえる第2の収容槽内に、少なくとも積極的にオゾンを供給することは、課題の解決に至らず、本件各発明において第2の収容槽とそれに関する構成を有することとしたことと相容れないものといえる。そして、オゾン発生装置で製造されるオゾンは、純度100%のオゾンガスが製造されるものでないことは技術常識である上、本件明細書【0031】において、オゾン発生装置29によって発生し、このオゾン発生装置29に接続され吸気管を介し吸気されたオゾンは、複数分岐した枝管24を通って圧縮部22内に噴出されるようになっていて、この圧縮部22内に噴出された気泡がオゾンを含むマイクロナノバブルとされていることからしても、第1収容槽内に供給される「オゾンを含むマイクロナノバブル」については、当然に酸素(空気)を含むものも想定されていたといえる。以上に照らせば、本件各発明の特許請求の範囲の「第1の収容槽内にオゾン

5 を含むマイクロナノバブルを供給するオゾン供給手段」と、

「第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」の記載は、特にオゾン供給の有無という点において上記課題の解決のための対照的なマイクロナノバブルの供給手段として記載されているものと解するのが相当であり、「第2の収容槽内に酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」は、第1の収容槽への供給手段と異なり、そのマイクロナノバブルにはオゾンが積極的に加えられているものではなく、その供給手段には、オゾンが積極的に加えられたマイクロナノバブルを供給する供給手段を含まないというべきである。したがって、第2の収容槽内にオゾンが積極的に加えられたマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段を有する装置は、構成要件Dを充足しないと解される。

⑶ 被告システムは、前記第2の1⑹のとおり、構成要件Dの第2の収容槽に当

たる曝気槽内に、酸素及びオゾンを含むマイクロナノバブルを供給する被告装置を有しており、そのマイクロナノバブルには、オゾン発生装置から得られたオゾンガス、すなわちオゾンと酸素の混合ガスが用いられていて、オゾンが意図的、積極的に加えられていると認められるから(甲16、18、21、弁論の全趣旨)、構成要件Dを充足しない。

⑷ 原告は、被告装置は、オゾンよりも多くの酸素が残存して含まれている上、

当該オゾン自体も活性炭により化学変化させて酸素となることにより、好気性微生物及び通性嫌気性微生物を活性化させており、十分効果的である旨主張する。しかし、本件明細書に記載された本件各発明の目的、課題の解決手段等からすれば、本件各発明における「酸素を含むマイクロナノバブルを供給する酸素供給手段」は、前記⑵のとおり解するのが相当である。また、原告は、オゾンは微量であるが、大気中に存在するし、「オゾン発生装置」で生成されたオゾンは自然に消滅して酸素に置き換わるものなので、「第2収容槽内においてはオゾンの量を早期に低減」させることは、2次的な効果に

5 すぎない旨主張するが、前記⑴及び⑵で述べたところによれば、残オゾンを早

期に低減させることが本件各発明の2次的な効果にすぎないといえない。

⑸ 以上によれば、被告システムは構成要件Dを充足せず、本件発明1の技術的

範囲に属しない。

3 本件発明2について

被告システムは、構成要件Dを充足しない以上、本件発明2の構成要件Iを充足せず、本件発明2の技術的範囲に属しない。

第4 結論

以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 杉 田 時 基裁判官 仲 田 憲 史(別紙)物件目録「マイクロ・ナノバブル発生装置」と称する装置及び「活性炭含有担体」と称する担体を用いた「ABBIT排水処理システム」と称する排水処理システム

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