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令和4(ワ)23648民事訴訟 著作権

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年3月25日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社グルーヴ・ラボ
法令 著作権
キーワード 侵害13回
損害賠償2回
許諾1回
主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。15
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要

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判決文

令和 6 年 3 月 25 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和 4 年(ワ)第 23648 号 発信者情報開示請求事件

口頭弁論終結日 令和 6 年 2 月 15 日

判 決

原 告 株式会社グルーヴ・ラボ

同訴訟代理人弁護士 杉 山 央

被告エヌ・ティ・ティレゾナント株式会社訴訟承継人

株 式 会 社 NTT ド コ モ

同訴訟代理人弁護士 五 島 丈 裕

主 文

1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

本件は、別紙侵害著作物目録記載の各動画(以下、同目録の番号順に「本件動画 1」などといい、これらを併せて「本件各動画」という。)の著作権を有するとする原告が、被告が提供するインターネット接続サービスを介してファイル共有ネットワークに本件各動画に係るファイルがアップロードされたことにより、本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。 条 1 項に基づき、)5別紙発信者情報目録記載の各発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。

1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は、当事者間に争いがないか弁論の全趣

5 旨により容易に認められる事実。なお、枝番号の記載を省略したものは、枝番号を含む。以下同じ。)

(1) 当事者等ア 原告は、ビデオソフト、DVD ビデオソフトの制作及び販売、インターネットを利用した情報の収集及び提供等を目的とする株式会社である。なお、原告は、平成 28 年 1 月 1 日、商号を「株式会社 DOC」から現商号に変更した(甲 9)。イ 被告は、インターネット接続サービスの提供を含む電気通信事業を営む株式会社であり、本件発信者情報を保有している。

(2) 「BitTorrent」の仕組み等「BitTorrent」(ビットトレント)とは、いわゆる P2P 形式のネットワークである。ビットトレントにおいては、ユーザがファイルをダウンロードする際には、ファイルの情報が記載された「torrent ファイル」(以下「トレントファイル」という。)をダウンロードし、これをビットトレントに対応したクライアントソフトで読み込んだ上で、インターネット上にあるファイルをダウンロードすることが必要となる。また、ビットトレントを利用してダウンロードするファイルは、完成した一つのファイルではなく、当該ファイルが断片化(ピース化)されたファイル(以下「ピース」という。)であり、ビットトレントにおいて各ピースをダウンロードすることにより当該ファイルが完成する。ユーザは、ある特定のファイルをダウンロードする際、トレントファイルをダウンロードし、取得したいピースを有する他のユーザ(以下「ピア」という。)から、当該ピースをダウンロードする。当該ユーザは、当該ピースのダウンロードを開始すると同時に、当該ピースのダウンロードが終了する前から当該ピースのアップロードを行うことになる。あるファイルのピースのダウンロードが全て行われると、当該ユーザは当該ファイル全部のデータを

5 有することになり、それ以降はピースのアップロードのみを行うこととなる。(以上につき、甲 4~6)

(3) 原告による本件各動画のビットトレント上のアップロード調査原告は、本件訴訟提起に先立ち、調査会社(以下「本件調査会社」という。)に対し、ビットトレントにおける本件各動画に係るファイルのアップロードの有無につき調査(以下「本件調査」という。 を委託した。) 本件調査会社は、「μtorrent」と称するクライアントソフト(以下「本件クライアントソフト」という。)を使用して本件調査を行い、原告に対し、その調査結果として、本件各動画に係るファイル(ピース)をダウンロードしつつアップロードしているユーザにおいて、別紙発信者情報目録記載の各日時(以下、これらを併せて「本件日時」という。)に同記載の各 IP アドレス(以下、これらを併せて「本件 IP アドレス」といい、本件日時、本件 IP アドレス等により特定される氏名不詳者による通信を「本件通信」という。)が使用されていることを報告した(甲 1、2、4~6、8)。

2 争点

(1) 本件各動画に係る原告の著作権の有無(争点 1)

(2) 権利侵害の明白性(争点 2)

(3) 「特定電気通信」該当性(争点 3)

3 争点に関する当事者の主張

(1) 争点 1(本件各動画に係る原告の著作権の有無)(原告の主張)本件動画 1、3、4、16 及び 20 のパッケージには、原告の旧商号が表示されている。また、原告は、本件動画 13 及び 15 について、第三者認証機関の審査を終了している。第三者認証機関の審査は、本件各動画の販売に必須のものである。以上から、原告は、本件各動画の著作権者といえる。

5 (被告の主張)不知。本件動画 13 及び 15 については、第三者認証機関による審査終了の意味合いは不明であり、また、仮にこれが発売前における倫理審査であったとしても、その審査を受ける者が著作権者であると当然に推定されるものではない。

(2) 争点 2(権利侵害の明白性)(原告の主張)本件調査会社は、調査対象となる本件各動画をインデックスサイトで検索して、トレントファイルをダウンロードし、本件クライアントソフトを起動して、本件各動画に係るファイルのダウンロードを行った。本件クライアントソフトは、ビットトレントを使用しているピアの IP アドレス等の情報を表示する機能を有するところ、別紙発信者情報目録記載の日時に上記ダウンロードに対応するアップロードを行ったピアが接続した IP アドレスは、別紙発信者情報目録記載のとおりであった。このことは、ダウンロード中の時点である上記日時における本件クライアントソフトの実行画面のスクリーンショット(以下「本件実行画面」という。 「ダウンロード中」との文字や IP)に、アドレスが表示されていることからうかがわれる。また、上記によりダウンロードされた動画は、本件各動画と同一内容であった。そうすると、本件通信を行った氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は、ビットトレントを用いて自ら又は他のユーザと共同して、別紙発信者情報目録記載の日時に、本件調査会社に対して本件各動画に係るファイル(ピース)を自動公衆送信したものといえる。したがって、原告の本件各動画に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。(被告の主張)ア 別紙発信者情報目録記載の通信(本件通信)は、以下の点で、本件各動

5 画に係るファイルのダウンロード時の通信とはいえない。すなわち、本件クライアントソフトはフリーソフトウェアに過ぎず、信頼性が認められるシステムとして認定されたものでも P2P ネットワークの監視を目的としたものでもない。また、原告の主張はプログラムの理解を踏まえた主張でもない。本件実行画面には本件発信者が接続したとされるIP アドレスが表示されているが、これは、本件クライアントソフトのプログラムの動作の過程で表示される IP アドレスの正確性や通信の意味合いを立証するものではない。加えて、いわゆる P2P 方式でファイルを共有するネットワークでは、ファイルのダウンロードに至るまでには、ピア間の通信だけを取り上げても、通信相手がピアであることを確認する通信(HANDSHAKE)等の複数の通信がされる。本件実行画面は、ダウンロード中とされる適当な時刻におけるものに過ぎないから、これをもってダウンロード時の通信に係るものということはできない。さらに、本件実行画面を見ても、ファイルのダウンロードやアップロードの進行を示す表示(「下り速度」「上り速度」、 )すら示されていないことから、その表示をもってダウンロード時の通信に係るものであるかはわからない。以上のとおり、本件通信は、本件調査会社がビットトレントを介して本件各動画に係るファイルをダウンロードした時の通信とはいえない。イ 仮に本件通信が本件各動画に係るファイル(ピース)をダウンロードする通信であるとしても、これにより送信されたピースについて、本件各動画の表現の本質的特徴が感得できる程度のものであることの的確な主張立証はない。ファイルを細分化したピースを転送し合うというビットトレントの仕組みを踏まえれば、本件通信により送られた 1 つのピースからは、本件各動画の表現の本質的特徴を直接感得できる映像を再生できない可能

5 性は十分にある。したがって、仮に本件通信がピースを送信したものであるとしても、これにより自動公衆送信権が侵害されたとはいえない。

(3) 争点 3(「特定電気通信」該当性)について(原告の主張)本件通信は、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信であるから、「特定電気通信」(法2条1号)に該当する。(被告の主張)本件調査会社が本件各動画に係るファイルをダウンロードしたとされる通信(本件通信)は、トラッカーとの通信といえ、そうであれば一対一で行われる通信と評価できる。このため、本件通信は、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信とはいえず、「特定電気通信」に当たらない。

第3 当裁判所の判断

1 争点 1(本件各動画に係る原告の著作権の有無)について前提事実のほか、証拠(甲 2 の 1~2 の 4、2 の 16、2 の 20、10)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、ビデオソフト、DVD ビデオソフトの制作及び販売等を行う株式会社であるところ、本件動画 1、3、4、16 及び 20 のパッケージには原告の旧商号(株式会社 DOC)が表示されていること、本件動画 13 及び 15 について第三者認証機関である一般社団法人東日本コンテンツ・ソフトの審査を自らの名義により終了したことが認められる。これらの事情に鑑みると、原告は、本件各動画の著作者としてその著作権を有するものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。

2 争点 2(権利侵害の明白性)について

(1) 前提事実、証拠(甲 1、2、4~6、8、11〜14、17、20、21、26、27)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

5 ア 本件クライアントソフトは、ビットトレントの制作会社により開発され、維持されており、ビットトレントのプロトコル定義で設定されたガイドラインを遵守し、これに準拠している。本件クライアントソフトは、ビットトレントを利用しやすくするために、トレントファイルを読み込み、ピースをダウンロードすると共に、ダウンロードに対応するアップロードをするピアの IP アドレス等の情報を表示する機能を有する。イ 本件調査会社は、調査対象となる本件各動画の品番を確認し、これをインデックスサイトの検索フォームに入力して検索し、本件各動画に係るトレントファイルをダウンロードした。その上で、本件クライアントソフトを起動して上記トレントファイルを読み込み、本件各動画に係るピースを有するピアからピースのダウンロードを開始した。その際、本件クライアントソフトの実行画面には、ダウンロードに対応するアップロードを行ったピアの IP アドレスが表示された。ダウンロードされたピースに係る映像は全てのピース(完全な状態のファイル)がダウンロードされる前においても再生できるところ、本件調査会社は、そのダウンロード中において、ダウンロードしたピースに係る映像が再生できることを確認した。その後、本件調査会社は、ダウンロード進行中の時点である別紙発信者情報目録記載の日時に、本件クライアントソフトの実行画面のスクリーンショット(甲1。本件実行画面)を撮影し、上記 IP アドレスを保全した。上記アップロードを行ったピアの IP アドレスは別紙発信者情報目録記載のとおりであった。また、こうしてダウンロードされた完全な状態のファイルと本件各動画とは、同一の内容であった。

(2) 検討本件調査会社による調査及びこれに使用した本件クライアントソフトそれ自体の信頼性については、その点に疑義を抱くべき具体的な事情が見当たらないことなどに鑑みると、十分に信頼し得るものといってよい。

5 そうすると、前記前提事実及び認定事実によれば、別紙発信者情報目録記載の日時に同目録記載の IP アドレスを割り当てられた本件発信者は、ビットトレントを通じ、本件調査会社の求めるところにより、本件各動画に係るファイル(ピース)をアップロードしたということができる。したがって、本件発信者は、本件各動画に係るファイルの全部又は一部を公衆からの求めに応じ自動公衆送信したものと認められる。また、弁論の全趣旨によれば、原告はこれを許諾していないものとみられると共に、その他の違法性阻却事由の存在もうかがわれない。したがって、本件発信者の上記行為により、本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかといってよい。

(3) 被告の主張についてア 被告は、本件実行画面に表示された IP アドレスの正確性に疑問があることや、本件実行画面に表示された通信がダウンロード時の通信に係るものかどうかは不明であることなどを指摘して、本件通信をファイルのダウンロード時の通信とみることはできないと主張する。しかし、本件クライアントソフトがフリーソフトウェアであるとしても、ビットトレントの仕組みに照らすと、正確な IP アドレスを取り込むものでなければビットトレントを利用しやすくするためのソフトとして成り立たないものと考えられる上、本件実行画面に表示された IP アドレスが不正確であることをうかがわせる証拠は見当たらない。したがって、被告の指摘する事情は本件調査の信頼性に合理的な疑いを抱かせるものではない。また、証拠(甲 1 の 1、1 の 3、1 の 4、1 の 11、1 の 13、1 の 14、1 の18)によれば、本件実行画面には、ダウンロードに至る前の通信とみられる「ピアに接続中」ではなく、ダウンロード時の通信とみられる「ダウンロード中」のステータスが表示されている。さらに、本件実行画面にはダウンロードやアップロードの進行を示す「下り速度」や「上り速度」の表

5 示はないものの、一般にこれらの表示がなくてもダウンロードは進むものとみられるし、実際に本件各動画に係るファイルのダウンロードは完了している。そのほか、本件通信がダウンロード時の通信でないことをうかがわせる証拠はない。そうすると、本件実行画面に表示された通信すなわち本件通信は、本件調査会社が本件発信者から本件各動画に係るファイル(ピース)をダウンロードした時の通信と認められる。イ 被告は、本件通信により送信されたピースについて、本件各動画の表現の本質的特徴が感得できる程度のものであることの的確な主張立証はなく、自動公衆送信権が侵害されたとはいえないと主張する。しかし、前記前提事実及び認定事実によれば、本件発信者は、本件通信及びこの前後において継続的に行った本件各動画に係るファイル(ピース)をアップロードする通信により、自ら又は他のユーザと共同して、本件調査会社に対し、本件各動画の表現の本質的特徴を直接感得し得る映像を再生可能なファイルを送信したものといえる。そうである以上、本件発信者は、原告の本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害する通信を行ったものと認められる。ウ 以上より、この点に関する被告の主張はいずれも採用できない。

3 争点 3(「特定電気通信」該当性)について

(1) 「特定電気通信」とは、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信をいうところ(法 2 条 1 号)、同条の文理に加え、著作権侵害等の加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図る同条の趣旨に鑑みると、最終的に不特定の者に受信されることを目的とする情報の流通行為に必要不可欠な電気通信の送信はこれに該当すると解するのが相当である。本件通信は、本件発信者と本件調査会社との一対一対応の通信であるとしても、不特定の者に受信されることを目的とする情報の流通行為にとって必要不可欠な電気通信の送信といえる。したがって、これをもって「特定電気

5 通信」に該当するというべきである。

(2) 被告は、本件通信につき、トラッカーとの通信といえるとした上で、そうであれば一対一で行われる通信であり、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信とはいえないなどと主張する。しかし、本件通信はピア間の通信であって、トラッカーとピアとの通信ではない。すなわち、この点に関する被告の主張は、その前提において失当である。その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。

4 その他の要件について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者に対して、本件各動画に係る著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求等をする準備をしていると認められることから、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(法 5 条

1 項 2 号)があるといえる。

5 まとめ以上より、原告は、法 5 条 1 項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。

第4 結論

よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第 47 部裁判長裁判官杉 浦 正 樹裁判官小 口 五 大裁判官吉 野 弘 子(別紙侵害著作物目録省略)別紙発信者情報目録以下の日時に以下のIPアドレス及び送信(発信)元ポート番号を割り当てられていた契約者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス(以下省略)

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