令和5(行ケ)10117審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和6年4月9日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告医療法人社団ベスリ会 被告特許庁長官
|
法令 |
商標権
商標法4条1項11号7回 商標法4条1項1回
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キーワード |
審決21回 拒絶査定不服審判1回 実施1回
|
主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)
1 特許庁における手続の経緯等
2 本件審決の理由の要旨
1 本願商標の要部の認定の誤り
3、4:医学書、甲14、15:医学論文、甲16、17:他の医療機関のウェブ15
5)、「TMSクリニック」との語に識別力がないことは明らかである。
48174号)を含んでいる。また、「ベスリ会」は、原告の法人名である。医療役
2 本願商標と引用商標の類否判断の誤り
1号に当たらないから、本件審決は誤りであり、取り消されるべきである。
1 本願商標の要部の認定の誤りとの点について
5)、このような場合、取引の実際においては、「○○会」の部分が省略されて称さ5
2 本願商標と引用商標との類否判断の誤りとの点について
1 商標法4条1項該当性の判断について
5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第1
03号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、前掲最高裁10
2 本願商標について
5:広辞苑第七版)。また、「TMS」は、「経頭蓋磁気刺激[transcranial magnetic
1~5、14、15、21)。もっとも、東京都保健医療局が提供する東京都医療機
5年12月頃時点において、東京都内でTMS治療を提供する医療機関は11か所
18、23~46、丙5~7)。
8、9)。
3 引用商標について
4 本願商標と引用商標の類否について
5 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
6 原告の主張について
7 結論 |
事件の概要 |
本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取
消訴訟である。争点は、商標法4条1項11号該当性である。5 |
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判決文
令和6年4月9日判決言渡
令和5年(行ケ)第10117号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年1月30日
判 決
原 告 医療法人社団ベスリ会
同訴訟代理人弁護士 高 橋 隆 二
川 瀬 茂 裕
被 告 特 許 庁 長 官
同指定代理人 浦 崎 直 之
大 橋 良 成
須 田 亮 一
被告補助参加人 医療法人社団こころみ
同訴訟代理人弁理士 山 田 朋 彦
20 土 橋 編
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)
は原告の負担とする。
25 事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2022-17296号事件について令和5年9月6日にした審決
を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取
5 消訴訟である。争点は、商標法4条1項11号該当性である。
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 原告は、令和3年10月11日、次の構成からなる商標(以下「本願商標」
という。)について、第44類「医業、医療情報の提供、健康診断、調剤、栄養の指
導」を指定役務として商標登録出願(以下「本願」という。)をした。(乙1)
(2) 原告は、令和4年8月1日付けで、本願商標が商標法4条1項11号に該当
することを理由とする拒絶査定を受けたため、同年10月28日、拒絶査定不服審
判を請求するとともに(不服2022-17296号)同日付け手続補正書により、
、
指定役務を第44類「精神療法及び物理療法による治療、磁気刺激療法による精神
15 治療、磁気刺激療法に関する医療情報の提供」に補正した(乙2。以下、本願商標
の指定役務の記載については、当該補正後のものについていう。。
)
特許庁は、令和5年9月6日、
「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以
下「本件審決」という。)をし、その謄本は同月20日に原告に送達された。
(3) 原告は、令和5年10月18日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
20 した。
2 本件審決の理由の要旨
(1) 本願商標について
ア 本願商標は、
「ベスリ会」及び「東京TMSクリニック」の各文字を上下二段
に書してなるところ、上段部分と下段部分は、視覚上、分離して観察される。
上段の「ベスリ会」の文字は、特定の観念を有しない一種の造語として認識され
る。下段の「東京TMSクリニック」の文字につき、
「東京」は我が国の首都を、
「T
MS」は経頭蓋磁気刺激を、「クリニック」は診療所をそれぞれ意味する語である。
本願商標の役務を取り扱う医療業界において、「クリニック」の語は、「○○クリニ
5 ック」のように前の語と組み合わせて使用されて特定のクリニック(診療所)の名
称として認識、把握されることが多いといえるから、下段部分の文字全体として、
特定のクリニックの名称を表したものと理解される。
そうすると、上段部分の文字と下段部分の文字との間に観念的な関連性も見いだ
せないから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど
10 不可分的に結合しているとはいえず、それぞれが独立して自他役務の識別標識とし
ての機能を果たす要部となり得る。
したがって、本願商標から「東京TMSクリニック」の文字部分を抽出し、他人
の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
イ 以上によると、本願商標は、その構成中「東京TMSクリニック」の文字に
15 相応して「トーキョーテイエムエスクリニック」の称呼を生じ、
「特定のクリニック
(診療所)の名称」との観念が生じる。
(2) 引用商標について
登録第6481795号商標(以下「引用商標」という。)は、「東京TMSクリ
ニック」の文字を標準文字で書してなり、令和3年1月7日登録出願、第44類「医
20 業、医療情報の提供、訪問診療、健康診断、調剤、医療及び健康に関する情報の提
供、栄養の指導」を指定役務として、同年12月7日に設定登録され、現に有効に
存続している。
引用商標は、その構成文字に相応して「トーキョーテイエムエスクリニック」の
称呼を生じ、「特定のクリニック(診療所)の名称」との観念が生じる。
25 (3) 本願商標と引用商標との類否について
本願商標と引用商標を比較すると、外観について、本願商標の要部である「東京
TMSクリニック」の文字部分と引用商標の「東京TMSクリニック」の文字は、
同じつづりであり、両者は外観上類似している。称呼について、両者は「トーキョ
ーテイエムエスクリニック」の称呼を共通にする。観念について、両者は「特定の
クリニック(診療所)の名称」との観念を共通にする。
5 したがって、本願商標と引用商標とは、外観上類似し、称呼及び観念を共通にす
るから、これらを総合して全体的に考察すると、類似の商標というべきである。
(4) 指定役務の類否について
本願商標の指定役務である第44類「精神療法及び物理療法による治療、磁気刺
激療法による精神治療、磁気刺激療法に関する医療情報の提供」は、引用商標の指
10 定役務中、第44類「医業、医療情報の提供、訪問診療、健康診断、調剤、医療及
び健康に関する情報の提供」と同一又は類似の役務である。
(5) 小括
以上によると、本願商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、その指定役
務も引用商標に係る指定役務と類似の役務であるから、商標法4条1項11号に該
15 当する。
第3 原告主張の審決取消事由(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)
1 本願商標の要部の認定の誤り
(1) 結合商標の類否判断について
商標の類否判断は、全体観察によるのが原則であり、結合商標の一部を抽出して
20 この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その
部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象
を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、
観念が生じないと認められる場合などを除き、許されない(最高裁平成19年(行
ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。
25 本件審決は、次のとおり、本願商標の構成中、最も強く支配的な印象を有する「ベ
スリ会」の文字部分を根拠なく捨象し、他方、出所識別標識としての機能を有しな
い「東京TMSクリニック」の文字部分は要部となり得るとして、当該部分から出
所識別標識としての称呼、観念が生じるかを商標の全体観察という観点から検討し
ないまま要部を抽出、認定したが、要部の認定手法や認定自体が誤りである。
(2) 「東京TMSクリニック」の文字部分が、出所識別標識としての機能を有さ
5 ず、強く支配的な印象を与えるものとはいえないこと
「東京TMSクリニック」の文字部分中、「東京」の語は地名にすぎず、「クリニ
ック」の語は医療機関又は医療サービスを提供する者を示すにすぎないから、いず
れも出所識別標識としての機能を有しない。そして、
「TMS」の語は、鬱病に対す
る治療方法である「TMS治療」を意味する一般的な語である。TMS治療は、我
10 が国でも令和元年に保険適用が認められており(甲21) 本願商標の指定役務であ
、
る「精神療法及び物理療法による治療、磁気刺激療法による精神治療、磁気刺激療
法に関する医療情報の提供」の取引者、需要者(精神病を患っている患者のほか、
病院、医師、薬局、医療機器販売者、精神病研究者等)において周知の治療方法で
ある(甲1、5:被告補助参加人のウェブサイト、甲2:原告のウェブサイト、甲
15 3、4:医学書、甲14、15:医学論文、甲16、17:他の医療機関のウェブ
サイト、甲18:グーグルの検索結果、甲19:大宅壮一文庫の雑誌記事検索結果、
甲20:NHKクローズアップ現代のウェブサイト。なお、書証番号の掲記に際し
て枝番号の記載を省略した。以下同じ。 。したがって、
) 「TMS」の語は、鬱病に対
する治療方法を想起させ、単に役務提供の方法を示すものにすぎないから、出所識
20 別標識としての機能を有しない。
次に、
「東京TMSクリニック」という一連の文字としてみても、本願商標の指定
役務の取引者、需要者は、
「東京(都内にある)TMS(治療を提供する)クリニッ
ク(医療機関)」という意味以上のことを理解できないから、やはり出所識別標識と
しての機能を有しない。
25 本件審決は、医療業界において、
「クリニック」の語が「○○クリニック」のよう
に前の語と組み合わせて使用されて特定のクリニック(診療所)の名称と認識、把
握されることが多いなどとするが、
「○○」の部分が独自に識別力を有していれば格
別、識別力がない場合(例えば「銀座産科クリニック」)には、そのようなことはい
えないはずである。
加えていえば、現実に、被告補助参加人がウェブサイトにてTMS治療を提供す
5 る複数の医院を「TMSクリニック」として紹介している上、それによると東京都
内に少なくとも6か所以上の「TMSクリニック」が存在しているのであるから(甲
5)「TMSクリニック」との語に識別力がないことは明らかである。
、
以上によると、
「東京TMSクリニック」の文字部分は、出所識別標識としての機
能を有しないといえ、少なくとも「取引者、需要者に対し…役務の出所識別標識と
10 して強く支配的な印象を与えるもの」とはいえない。
(3) 「ベスリ会」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものであり、同部分か
ら出所識別標識としての称呼、観念が生じないということはないこと
「ベスリ会」の文字部分は、
「ベスリ」という造語からなる登録商標(登録第65
48174号)を含んでいる。また、
「ベスリ会」は、原告の法人名である。医療役
15 務の提供において、
「○○会」という言葉を使用する場合、それは医療役務の提供主
体である医療法人を示すことが多く(甲12)、商標に法人名が含まれる場合、当該
法人名部分は極めて顕著な出所識別力を有するといえる。
そうすると、
「ベスリ会」の文字部分は、本願商標の構成中、最も強く支配的な印
象を与えるものであり、少なくとも「出所識別標識としての称呼、観念が生じない」
20 とはいえない。
(4) 本件審決は、
「東京TMSクリニック」の文字部分から出所識別標識としての
称呼、観念が生じるかにつき、商標の全体観察という観点から検討を行っていない
こと
本件審決は、本願商標の各構成部分を分離して観察することが取引上不自然であ
25 ると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難いと認定し、そこから直
ちに「東京TMSクリニック」の文字部分を要部として抽出したが、当該部分から、
商標の全体観察という観点からみても出所識別標識としての称呼、観念が生じるか
という検討を行っていないから、要部の認定手法を誤っているというべきである。
(5) 小括
以上のとおり、本件審決が、本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文
5 字部分を要部として抽出したことは誤りである。
2 本願商標と引用商標の類否判断の誤り
本願商標と引用商標を比較すると、外観について、本願商標は、
「ベスリ会」及び
「東京TMSクリニック」の文字を上下二段に記載したものであるのに対し、引用
商標は「東京TMSクリニック」を標準文字にて書してなるものであるから、両商
10 標の外観は、「ベスリ会」の文字部分の有無という点で相違している。
観念について、本願商標からは「ベスリ会(という医療法人社団が運営する)東
京(都内にある)TMS(治療を提供する)クリニック(医療機関)」との観念が生
じるのに対し、引用商標からは「東京(都内にある)TMS(治療を提供する)ク
リニック(医療機関)」との観念が生じるから、両商標の観念は、運営主体が「ベス
15 リ会」であるという観念を含むか否かという点で相違している。
称呼について、本願商標からは「ベスリカイ トーキョーテイエムエスクリニッ
ク」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは「トーキョーテイエムエスクリニッ
ク」の称呼が生じるから、両商標の称呼は、
「ベスリカイ」の有無という点で相違し
ている。
20 以上に加え、前記1(2)のとおり、「東京TMSクリニック」の文字部分は出所識
別標識としての機能を有しない従たる構成部分というべきところ、このような部分
において外観、観念及び称呼が共通するとしても、出所識別標識としての機能を有
する「ベスリ会」の文字部分において外観、観念及び称呼を異にするのであるから、
両商標に接した取引者、需要者において、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそ
25 れはないというべきである。
したがって、本願商標は、引用商標と類似する商標ではなく、商標法4条1項1
1号に当たらないから、本件審決は誤りであり、取り消されるべきである。
第4 被告及び被告補助参加人の反論
1 本願商標の要部の認定の誤りとの点について
(1) 「東京TMSクリニック」の文字部分について
5 「TMS」という語は「経頭蓋磁気刺激」を意味する略語であり、鬱病の治療法
として「脳に直接アプローチしてシナプスの働きを整える革新的な治療方法」など
と紹介されるTMS治療のうち「TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)」
の部分を指し示すものである。しかし、TMS治療は、ごく最近である令和元年に
保険適用が認められた治療方法であって、東京都においてさえTMS治療を取り扱
10 う精神科は少数であり(乙7、8:東京都医療機関案内サービスひまわりの検索結
果)「TMS」の文字を有する医療機関等の名称を用いている者は原告及び被告補
、
助参加人に限られている(乙9~12:グーグルの検索結果)。本願商標の指定役務
の主たる取引者、需要者は、疾患等を抱える者(患者)というべきところ、これら
の者は必ずしも医学・医療用語に精通していない。そうすると、本願商標に接した
15 取引者、需要者が、その構成中の「TMS」の文字から、
「経頭蓋磁気刺激」の意味
を直ちに認識するとはいえない。
また、
「内科」等の一般的な診療科目ではなく、保険適用が認められている一治療
方法の略語(CBT、HBO、HPN等)をクリニックの名称の一部として用いる
ことが広く行われている実情はなく(乙13~21)、他方で、識別力を有する欧文
20 字3文字をクリニックの名称として用いる例がみられる(乙22~24) 「地名」
。 、
「医療役務において一般的に使用される語」及び「クリニック」の語を組み合わせ
た登録商標は多数みられ(丙5) このような商標であっても全体として出所識別標
、
識としての機能を果たし得るといえる。
以上によると、
「東京TMSクリニック」の文字部分は、全体として一種の造語と
25 認識されるものであり、
「特定のクリニックの名称(東京TMS又は東京のTMSと
いうクリニック) を表したものと理解され、
」 出所識別標識としての機能を果たし得
るものである。
(2) 「ベスリ会」の文字部分について
医療業界において、
「○○会」の文字は、医療法人の名称を示すものとして、クリ
ニック等の医療機関の名称と組み合わせて一般的に使用されており(乙25~3
5 5)、このような場合、取引の実際においては、「○○会」の部分が省略されて称さ
れることがある(乙36~46)。本願商標の指定役務の取引者、需要者である患者
において、自身が通う医療機関を設置している医療法人の名称まで把握している者
は少ないと考えられ、医療機関の名称を大きく、医療法人の名称を小さく書してな
る登録商標や標章が多い実情がこれを裏付けている(丙8、9)。
10 このような取引の実情を考慮すると、本願商標に接した取引者、需要者は、その
構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分に着目して取引に当たることも少な
くないというべきである。
(3) 本件審決が全体観察の観点から検討を行っていないとの点について
本願商標の構成中の「ベスリ会」の文字部分と「東京TMSクリニック」の文字
15 部分とは、視覚上分離、独立して看取され得るものであることに加え、これらを常
に一体不可分のものとしてのみ認識、把握すべき観念上その他の格別の理由は見い
だし難いこと、
「ベスリカイトーキョーテイエムエスクリニック」の称呼は冗長であ
ること、いずれも本願商標の指定役務との関係で役務の質等を具体的に表すもので
はないこと等に照らすと、これらの文字部分は、それぞれが独立して出所識別標識
20 としての機能を果たし得るものといえる。
そして、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然である
と思われるほど不可分的に結合していると認められない商標の類否の判断に当たっ
ては、その一部を要部として取り出して引用商標と比較し、その類否を判断するこ
とが許されるところ、前記(2)のとおり、医療機関の名称と組み合わせて使用される
25 「○○会」
(医療法人の名称)が、しばしば省略されて称されることがあることに照
らすと、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中、特に「東京TMSクリ
ニック」の文字部分に着目して取引に当たることも少なくないといえる。
本件審決は、以上の理解に基づき、
「東京TMSクリニック」の文字部分から「ト
ーキョーテイエムエスクリニック」の称呼を生じ、
「特定のクリニック(診療所)の
名称」の観念が生じるとして、同部分を要部として抽出したのであって、その判断
5 手法に誤りはない。
2 本願商標と引用商標との類否判断の誤りとの点について
前記1のとおり、本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分を要
部として抽出し、これを引用商標と対比して商標全体の類否を判断することは許さ
れるところ、本願商標の要部と引用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念
10 を同一にするから、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を
総合して全体的に考察すると、本願商標と引用商標とは、役務の出所について誤認
混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というべきである。
本件審決は、同様の判断手法により本願商標が商標法4条1項11号に該当する
と判断したものであって、その判断手法及び結論に誤りはない。
15 第5 当裁判所の判断
1 商標法4条1項該当性の判断について
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場
合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決
すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、
20 観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体
的に考察すべきであり、しかも、その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る
限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39
年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399
頁参照)。
25 また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標は、その構成部分全体によって他
人の商標と識別されるものとして考案されているものであるから、その構成部分の
一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断す
ることは原則として許されない。しかし、商標の構成部分の一部が取引者、需要者
に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる
場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めら
5 れる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であ
ると思われるほど不可分的に結合していると認められない場合には、その構成部分
の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断すること
も許されると解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月
5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第1
10 03号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、前掲最高裁
平成20年9月8日第二小法廷判決参照)。
2 本願商標について
(1) 本願商標の構成等
ア 本願商標は、前記第2の1(1)のとおり、「ベスリ会」及び「東京TMSクリ
15 ニック」の各文字を明朝体風の同書体、同じ大きさ及び等間隔にて上下二段に書し
てなる結合商標である。
「ベスリ会」の文字部分と「東京TMSクリニック」の文字
部分は、重なることなく配置されており、視覚上分離、独立して看取され得るもの
である。
イ 「ベスリ会」の文字部分は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の観
20 念を生じない一種の造語として把握されるものである。
「東京TMSクリニック」の文字部分のうち、
「東京」は我が国の首都を意味する
語、「クリニック」は診療所を意味する語として広くなじみのある語である(乙4、
5:広辞苑第七版)。また、
「TMS」は、
「経頭蓋磁気刺激[transcranial magnetic
stimulation]」のアルファベット略語であり(乙6:広辞苑第七版付録)「前頭葉
、
25 にコイルを当て、磁気による刺激を行う。鬱病に関わる脳部位をダイレクトに刺激
し、神経調整を行う医療技術。」というものである(甲1~4、15)。
ウ 本願商標の指定役務は、第44類「精神療法及び物理療法による治療、磁気
刺激療法による精神治療、磁気刺激療法に関する医療情報の提供」であり、その取
引者、需要者には、医療従事者及び医療関連事業者のほか、精神疾患等を有する患
者やその関係者等も広く含まれるというべきである。
5 (2) 「東京TMSクリニック」の文字部分について
本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分は、前記(1)ア、イのと
おり、我が国の首都を意味する「東京」、経頭蓋磁気刺激のアルファベット略語であ
る「TMS」及び診療所を意味する「クリニック」の語を明朝体風の同書体、同じ
大きさ及び等間隔にて一連に書してなるものである。
10 ここで、
「TMS」
(経頭蓋磁気刺激)による治療(経頭蓋磁気刺激療法。以下「T
MS治療」という。)は、成人の鬱病への新たな治療方法として、我が国において、
平成29年に適応が承認され、令和元年には保険適用が認められたものである(甲
1~5、14、15、21)。もっとも、東京都保健医療局が提供する東京都医療機
関案内サービス「ひまわり」の検索結果(令和5年11月7日及び同月10日実施)
15 によると、
「精神科」の検索ワードにより該当する医療機関が2470件であったの
に対し、
「精神科」及び「TMS」の検索ワード(and検索)により該当する医療
機関は4件にとどまった(乙7、8)。また、原告が提出する証拠によっても、令和
5年12月頃時点において、東京都内でTMS治療を提供する医療機関は11か所
程度しか認められない(甲16。原告と被告補助参加人がそれぞれ設置する医療機
20 関を除く。。そうすると、TMS治療が平成15年から令和5年にかけて合計23
)
本の雑誌記事で掲載、紹介されたことや、令和元年7月にNHKクローズアップ現
代で特集、紹介されたこと等、TMS治療について原告が主張する事情を考慮して
も、本願商標の指定役務の取引者、需要者のうち、少なくとも精神疾患等を有する
患者やその関係者等は、本件出願日のみならず現在においても、
「TMS」の語から、
25 直ちに「経頭蓋磁気刺激」や、鬱病の治療方法としての「TMS治療」を想起する
とは認められない。むしろ、精神疾患等を有する患者やその関係者等が必ずしも医
学・医療用語に精通していないと推認されることや、
「TMS」が日本語ではなく欧
文字(アルファベット)の並びであることからすると、これを何らかの造語と認識
する可能性が高いと認められる。
さらに、医療役務の提供に当たり、「クリニック」の語は、「中目黒○○クリニッ
5 ク」のように、地名、医師の姓、主たる診療科目等の文字と組み合わせて使用され
ることにより、一連の文字列として特定のクリニック(診療所)の名称を表すもの
として使用されている実情が認められる(甲12、16~18、乙7~10、16、
18、23~46、丙5~7)。
以上のとおり、本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分は、こ
10 れを構成する文字が同書体、同じ大きさ及び等間隔で一連に書されていること、本
願商標の指定役務の取引者、需要者の一部(精神疾患等を有する患者及びその関係
者等)は「TMS」の語から直ちに「経頭蓋磁気刺激」や「TMS治療」を想起す
るとは認められず、むしろ何らかの造語と認識する可能性が高いこと、「クリニッ
ク」の語が他の語と組み合わされて特定の診療所の名称を表す取引の実情が認めら
15 れること等に照らすと、単に提供される役務の場所や方法、内容等を示すにすぎな
いものとはいえず、それ自体が一連となって、役務の提供主体としての診療所の名
称を表すものとして、出所識別標識としての機能を果たすものといえる。
(3) 「ベスリ会」の文字部分について
医療業界において、
「ベスリ会」のような「○○会」の文字は、特定の医療法人の
20 名称を示すものとして広く使用されており(甲12)「○○会△△病院」のように、
、
病院又は診療所の名称と組み合わせて、特定の医療法人が設置する特定の医療機関
の名称を表すことが、広く行われていると認められる(乙7、8、25~35、丙
8、9)。
また、医療法人の名称を示す「○○会」の文字が医療機関の名称と組み合わせて
25 使用される場合において、例えば、ウェブサイトでは「医療法人社団 新生会 大
阪なんばクリニック」と表示されている診療所で勤務する医師が新聞記事等で紹介
される際には「大阪なんばクリニック」の医師と記載される等、しばしば、
「○○会」
の部分が記載されない実情が認められる(乙25~46)。さらに、医療法人の名称
を示す「○○会」の文字が医療機関の名称と組み合わせて使用される場合のロゴデ
ザインとして、登録商標においても、現実に用いられている標章においても、
「○○
5 会」の文字部分を小さく書し、医療機関の名称を示す文字部分を大きく書するデザ
インが広く採用されている実情が認められる(丙8、9)。
これらの実情からすると、
「○○会△△病院」のように医療法人の名称を示す文字
と医療機関の名称を示す文字とが組み合わされた商標又は標章に接した医療役務の
取引者、需要者、とりわけ患者及びその関係者等は、医療法人の名称を示す「○○
10 会」の文字部分を捨象して、医療機関の名称を示す「△△病院」の文字部分に着目
することも少なくないと認められ、このことは、本願商標の指定役務(精神療法及
び物理療法による治療、磁気刺激療法による精神治療、磁気刺激療法に関する医療
情報の提供)の取引者、需要者であっても異なるところはないといえる。
そうすると、本願商標の構成中の「ベスリ会」の文字部分は、医療法人の名称を
15 示すものとして出所識別標識としての機能を有しないものではないが、「東京TM
Sクリニック」の文字部分と組み合わされてなる本願商標の構成全体の中にあって
は、その機能は相対的に弱いものといわざるを得ないというべきである。
(4) 小括
以上の観点から本願商標について改めて検討する。
20 ア 本願商標からは、
「ベスリカイトーキョーティーエムエスクリニック」の称呼
を生じ、「ベスリ会という医療法人が営む東京TMSクリニックという特定のクリ
ニックの名称」との観念を生じる。
イ 他方、前記(1)~(3)のとおり、①「ベスリ会」の文字部分と「東京TMSク
リニック」の文字部分とは視覚上分離、独立して看取され得るものであり、観念上
25 のつながりその他の理由により両部分を常に一体不可分のものとして認識すべき理
由もないこと、②本願商標の構成全体から生じる「ベスリカイトーキョーティーエ
ムエスクリニック」の称呼は冗長であること、③「東京TMSクリニック」の文字
部分は一連となって診療所の名称を示し、出所識別標識としての機能を果たすもの
といえること、④本願商標の取引者、需要者は、医療法人の名称を示す「○○会」
の文字部分を捨象してこれと組み合わされる医療機関の名称を示す文字部分のみに
5 着目することも少なくないといえ、
「ベスリ会」の文字部分の出所識別標識としての
機能は相対的に弱くなること等を総合すると、
「東京TMSクリニック」の文字部分
は、本願商標の指定役務の取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支
配的な印象を与えるものと認められる。
以上によると、取引の実際において、当該部分を分離して観察することが取引上
10 不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められないから、本願
商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分(以下「本願商標の要部」又
は単に「要部」ということがある。)を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較し
て商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
そうすると、本願商標からは、「ベスリカイトーキョーティーエムエスクリニッ
15 ク」の称呼及び「ベスリ会という医療法人が営む東京TMSクリニックという特定
のクリニックの名称」との観念のほかに、要部の構成文字に相応して「トーキョー
ティーエムエスクリニック」の称呼及び「東京TMSクリニックという特定のクリ
ニックの名称」との観念も生じるといえる。
3 引用商標について
20 引用商標は、
「東京TMSクリニック」の文字を標準文字で書してなり、その構成
文字に相応して「トーキョーティーエムエスクリニック」の称呼及び「東京TMS
クリニックという特定のクリニックの名称」との観念を生じる。
4 本願商標と引用商標の類否について
以上を前提として、本願商標と引用商標とを比較しその類否を検討する。
25 (1) 外観について
本願商標は「ベスリ会」及び「東京TMSクリニック」の各文字を明朝体風の同
書体、同じ大きさ及び等間隔にて上下二段に書してなる結合商標であるのに対し、
引用商標は「東京TMSクリニック」の文字を標準文字で書してなるものであって、
本願商標と引用商標の外観は全体としては異なるものといえる。
しかし、本願商標の要部は、
「東京TMSクリニック」の各文字を明朝体風の同書
5 体、同じ大きさ及び等間隔にて一連に書してなるものであって、
「東京TMSクリニ
ック」の文字を標準文字で書してなる引用商標と類似しているといえる。
(2) 称呼について
本願商標からは「ベスリカイトーキョーティーエムエスクリニック」の称呼のほ
か、要部の構成文字に相応して「トーキョーティーエムエスクリニック」の称呼も
10 生じるのに対し、引用商標からは「トーキョーティーエムエスクリニック」の称呼
を生じるのであるから、本願商標と引用商標から生じる称呼には同一のものが含ま
れているといえる。
(3) 観念について
本願商標からは「ベスリ会という医療法人が営む東京TMSクリニックという特
15 定のクリニックの名称」との観念のほか、要部の構成文字に相応して「東京TMS
クリニックという特定のクリニックの名称」との観念も生じるのに対し、引用商標
からは「東京TMSクリニックという特定のクリニックの名称」との観念が生じる
のであるから、本願商標と引用商標から生じる観念には同一のものが含まれている
といえる。
20 (4) 小括
以上のとおり、本願商標と引用商標とは、全体の外観は異なるものの、本願商標
の要部と引用商標は外観上類似している上、本願商標の要部から生じる称呼及び観
念と引用商標から生じる称呼及び観念は同一である。しかるところ、これらによっ
て取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、既に認定した本願商標の
25 指定役務に係る取引の実情も考慮して全体的に考察すると、本願商標と引用商標が
同一又は類似の役務に使用された場合には、その役務の出所につき誤認混同を生ず
るおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、引用商標と類似する商標と認められる。
5 本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
本願商標の指定役務である第44類「精神療法及び物理療法による治療、磁気刺
5 激療法による精神治療、磁気刺激療法に関する医療情報の提供」は、引用商標の指
定役務中の第44類「医業、医療情報の提供、医療及び健康に関する情報の提供」
に含まれ、また、本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務中の第44類「訪問
診療、健康診断、調剤」と類似する。
6 原告の主張について
10 (1) 原告は、本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分につき、
①「TMS」の語が鬱病に対する治療方法を想起させ、役務提供の方法を示すにす
ぎないから、一連の文字としてみても、本願商標の取引者、需要者は、
「東京(都内
にある)TMS(治療を提供する)クリニック(医療機関)」という意味以上のこと
を理解できず、出所識別標識としての機能を有しない、②「クリニック」の語が前
15 の語と組み合わせて使用されても、当該組み合わされる語が独自に識別力を有して
いなければ、特定の診療所の名称として識別力を有するものではないなどとして、
役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないと主張す
る。
しかし、①について、
「TMS」の語から直ちに「経頭蓋磁気刺激」や、鬱病の治
20 療方法としての「TMS治療」を想起するとは認められず、
「東京TMSクリニック」
の文字部分が一連となって、役務の提供主体である診療所の名称を表すものとして、
出所識別標識としての機能を果たすものといえることは、前記2(2)のとおりであ
る。②について、独自には識別力を有しない特定の語と「クリニック」の語とが組
み合わされた場合であっても、全体として診療所の名称として出所識別標識として
25 の機能を発揮する場合はあり得るから、原告の主張は採用できない。
(2) 原告は、本願商標の構成中の「ベスリ会」の文字部分につき、医療役務の提
供主体である医療法人の名称を示すものであり、一般に商標に法人名が含まれる場
合には当該法人名部分は極めて顕著な出所識別力を有するなどとして、少なくとも
出所識別標識としての称呼、観念が生じないということはないと主張する。
しかし、前記2(3)及び(4)のとおり、
「ベスリ会」の文字部分は、医療法人の名称
5 を示すものとして、出所識別標識としての機能を有しないものではないが、医療法
人の名称と医療機関の名称とが組み合わされて使用される場合の取引の実情に鑑み
ると、
「東京TMSクリニック」との文字部分と組み合わせてなる本願商標全体の中
にあっては、
「ベスリ会」の文字部分の出所識別標識としての機能は相対的に弱いも
のになるといわざるを得ない。そして、結合商標のうち複数の部分から出所識別標
10 識としての称呼、観念が生じる場合であっても、前記1のとおり、特定の部分が取
引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合等に
は、当該特定の部分を要部として抽出することが許されると解すべきであるから、
「ベスリ会」の文字部分が出所識別標識としての機能を有するとしても、本願商標
の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分を要部として抽出することは妨げ
15 られないというべきである。
(3) 原告は、本件審決が、本願商標の各構成部分が不可分的に結合しているとは
認められないことから直ちにその構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分を
要部として抽出し、その部分に、商標の全体観察という観点からみて出所識別標識
としての称呼、観念が生じるかという検討を行っていない点で誤っていると主張す
20 る。
しかし、本件審決は、本願商標の構成上の分離可能性のみを理由として要部を抽
出したものではなく、各構成部分が独立して出所識別標識としての機能を果たすか
を個別に検討している。そして、前記2(4)のとおり、本願商標については、視覚上、
観念上の結合度、称呼の冗長性、医療役務における「クリニック」や「○○会」の
25 文字の使用等に関する取引の実情等を考慮すると、その構成中の「東京TMSクリ
ニック」の文字部分が、本願商標の指定役務の取引者、需要者に対し役務の出所識
別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって、同部分を
要部として抽出して引用商標と比較した本件審決に誤りはないというべきである。
7 結論
以上によると、本願商標は、引用商標に類似し、その指定役務が同一又は類似す
5 るものであるから、商標法4条1項11号に該当する商標であると認められる。し
たがって、本件審決に誤りはなく、原告の請求には理由がない。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
本 多 知 成
裁判官
20 遠 山 敦 士
25 裁判官
天 野 研 司
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