ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和5(行ケ)10141 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和6年4月10日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告Ⅹ1
X2 被告特許庁長官 |
| 法令 |
商標権 商標法3条2項10回 商標法3条1項3号7回 商標法3条1回 |
| キーワード | 刊行物42回 審決16回 特許権2回 意匠権2回 拒絶査定不服審判1回 商標権1回 |
| 主文 | 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) 2 本件審決の理由の要旨 0%ものシェアを占めている旨主張するが、裏付けとなる証拠の提出はな25 3 本件審決の取消事由 1 原告らの主張 1号1136頁、学説(網野誠・商標〔第6版〕〔甲37〕)及び特許庁 2)、約10%に当たり、相当程度多いといえる。 22日時点で3870人であり(甲48の2)、本件チャンネルはわず 8万回に達する一般向けコンテンツ(甲48の2)をも含む特許庁公式 2倍いるとしても、チャンネル登録者数は需要者全体の約3%に及び、10 2 被告の主張 1~5)において、「知的財産に関する実務」ほどの意味合いを認識させ 3条1項3号に該当する。 22年6月29日判決参照)。 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について 1~5、16,18,20~25、27~29)と、②「オンライン」の前 2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について20 4年(2022年)知的財産活動調査結果の概要」(甲32)として公表 3 結論 1 国語辞典ONLINE ウェブサイト ㈱ジテンオン 2 電卓オンライン ウェブサイト 不明 3 漢字辞典ONLINE ウェブサイト ㈱ジテンオン 4 小児科オンライン ウェブサイト ㈱KidsPublic 5 メディカルオンライン ウェブサイト ㈱メテオ 6 慶應オンライン ウェブサイト 慶応義塾大学 7 読売新聞オンライン ウェブサイト 8 東洋経済ONLINE ウェブサイト 12 ジッセン!オンライン ウェブサイト 13 月刊総務オンライン ウェブサイト ㈱月刊総務 14 朝カルオンライン ウェブサイト 15 よみカルONLINE ウェブサイト 16 神社仏閣オンライン 18 地政学オンライン 24 スタディーオンライン ウェブサイト 不明 26 政府広報オンライン ウェブサイト 内閣府 27 文化遺産オンライン ウェブサイト 文化庁 2020特許・情報 33 隠れん坊 オンライン ウェブサイト Google |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告らは、令和2年6月3日、本願商標について商標登録出願をした。 |
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令和6年4月10日判決言渡
令和5年(行ケ)第10141号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年3月11日
判 決
原 告 Ⅹ1
同訴訟代理人弁理士 押 谷 昌 宗
原 告 X2
同訴訟代理人弁理士 加 島 広 基
上記両名訴訟代理人弁護士 河 部 康 弘
同 藤 沼 光 太
同弁理士 中 村 祥 二
同 岡 村 太 一
被 告 特 許 庁 長 官
同 指定 代 理人 浦 崎 直 之
同 大 橋 良 成
同 須 田 亮 一
主 文
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
【略語】本判決においては、以下の略語を用いる。(略語) (意味)・本願商標:原告らの商標登録出願(商願2020-68749)に係る「知財実務オンライン」の文字を標準文字で表してなる商標
5 ・本願指定商品役務:別紙1「本願の指定商品及び指定役務」記載の指定商品及び指定役務(個別の指定商品及び指定役務については、同別紙記載の番号に従い「指定商品①」、「指定役務⑦」のように表記する。)・本願映像提供役務:指定役務⑩及び指定役務⑪のうち映像の提供に係る役務・本件チャンネル:原告らが開設した「知財実務オンライン」との名称のYouTubeチャンネル・本件動画:原告らが作成し、本件チャンネルにおいて表示、配信される動画(番組)
第1 請求
特許庁が不服2022-8817号事件について令和5年10月19日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
(1) 原告らは、令和2年6月3日、本願商標について商標登録出願をした。なお、別紙1「本願の指定商品及び指定役務」の指定商品及び指定役務は、令和3年8月26日付け補正書による補正後のものである。
(2) 原告らは、令和4年3月4日付けで拒絶査定を受けたため、同年6月8日、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は、上記請求を不服2022-8817号事件として審理を行い、令和5年10月19日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(本件審決)をし、その謄本は同月31日原告らに送達された。
(3) 原告らは、同年11月28日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 本件審決の理由の要旨
(1) 商標法3条1項3号該当性についてア 本願商標が商標法3条1項3号に該当するというためには、審決時にお
5 いて、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるのであって、必ずしも本願商標が現実に当該指定商品又は指定役務に使用されていることを要しないと解される。そして、本願商標の取引者、需要者によって当該指定商品又は指定役務に使用された場合に商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品又は指定役務に関する取引の事情を考慮して判断すべきである。イ 本願商標の構成中「知財」と「実務」の文字を結合してなる「知財実務」の文字は、「知的財産に関する実務」ほどの意味合いを容易に理解させるものであり、実際にその意味合いで使用されていると認められる。また、別紙2「『オンライン』を末尾に付す標章一覧表」記載の事例1~15のとおり、商品、役務名又はブランド名の語尾に「オンライン」(「ONLINE」等の英語表記を含む。以下同じ。)の文字を配すことは、オンラインで提供される様々な商品又は役務において、取引上一般的に行われていることが認められる。そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務である「知的財産(権)に関する商品及び役務」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、直ちに「オンラインで提供される知的財産(権)に関する実務についての商品及び役務」、すなわち単に商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識するというべきである。したがって、本願商標は、商品の品質又は役務の質を普通に用いられる
5 方法で表示する標章のみからなる商標というべきあるから、商標法3条1項3号に該当する。ウ 原告らは、定期刊行物の題号については、その内容を認識させると同時にその出所をも表示するものであるから識別力が認められるのであって、題号と関わりのない内容の記事を含むために識別力が認められるのではないから、本願商標についても、定期刊行物の題号に係る審査基準(商標審査基準五3(1)(オ))と同様の基準が妥当し、識別力を有する旨主張する。しかし、例えば新聞のような定期刊行物は、その題号と関わりなく様々な内容からなる記事を編集して定期的に発行されるものであり、必ずしも題号が定期刊行物の内容を表示するものではないが、本願の指定商品及び指定役務はいずれも知的財産(権)に関するものであるから、本願商標が商品又は役務の内容、すなわち商品の品質又は役務の質を表していることが明らかであり、そのため、新聞のような定期刊行物と同様に判断することは適切ではない。上記以外の原告らの主張も、上記イの判断を左右するものではない。
(2) 商標法3条2項該当性原告らは、本願商標をその指定商品及び指定役務中「知的財産に関する映像の提供」に使用をしていることがうかがえるが、本願商標の使用期間は3年ほどと短く、チャンネル登録者数も格別多いものとはいえない(原告らは、知財系YouTubeチャンネルの登録者数のシェアでは2位に位置し、20%ものシェアを占めている旨主張するが、裏付けとなる証拠の提出はない。)。そうすると、本願商標は、「知的財産に関する映像の提供」について、我が国の需要者の間において、原告らの業務に係る役務を表示する標章として、広く認識されるに至っているものとは認めることはできない。さらに、「知的財産に関する映像の提供」以外の指定商品及び指定役務に
5 ついては、使用をされていることすら認められない。したがって、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができるに至ったものとはいえず、商標法3条2項の要件を具備しない。3 本件審決の取消事由
(1) 商標法3条1項3号該当性の判断の誤り(取消事由1)
(2) 商標法3条2項該当性の判断の誤り(取消事由2)
第3 当事者の主張
1 原告らの主張
(1) 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について
ア 第三者による使用の有無
第三者による本願商標の使用事実の有無は、本願商標が商品又は役務の
特性を表示したものと一般に認識されるか否かに影響するから、取引の事情として考慮すべきである。特に、本件は、「知財実務」という需要者たる知財関係者にとって一般的な用語と「オンライン」という一般的な用語を組み合わせることによって、識別力を獲得できるか否かが判断される事案であり、知財関係者である4万3774人(甲32)が、日常的に用いる「知財実務」及び「オンライン」という用語を誰一人として組み合わせて使おうとしなかったという事情は、両者の組合せによって新たな識別力が生まれていると評価する十分な根拠になり得る。イ 商品又は役務の特徴等を間接的に表示するものであること「知財実務」と「オンライン」を組み合わせた本願商標は、役務の内容を直ちに理解されることはなく、他の用語や一定の文脈を介して様々な意味に理解できる遠回しな表現である。例えば、本願商標が知的財産に関するセミナー関連の役務について使用
5 された場合、需要者は「オンラインを活用した知的財産の実務(例:オン
ライン出願ソフトの使い方やオンラインを利用した商標登録出願サービス)をテーマとするセミナー(オフライン形式でのセミナーを含む)」又は「オンライン形式で提供されるセミナーでテーマが知的財産の実務であるもの」のように、漠然とした意味として本願商標を認識することになる。加えて、本願商標は、「オンライン英会話」のようにオンラインによる映像の提供において一般的に使用される「オンライン○○」という語順ではなく、「○○オンライン」という語順を採用していることからみても、役務の特徴等を間接的に表示しているにすぎない。したがって、本願商標は、役務の特徴等を間接的に表示しているにすぎないから、役務の特徴等を表示するものではないと判断すべきである(商標審査基準五1(2)参照)。ウ 本願商標が造語であること本願商標は、上記イのとおり複数の意味合いが生じるものであるから、需要者は造語であると理解し、商品の品質又は役務の質を表示したものとは認識しない。エ 本件審決が挙げる使用例について「オンライン英会話」、「オンライン授業」等の用語は一般的な用語であるのに対し、本件審決が「商品、役務名又はブランド名の語尾に『オンライン』の文字を配すことは、オンラインで提供される様々な商品又は役務において、取引上、一般的に行われている」として挙げた別紙2「『オンライン』を末尾に付す標章の一覧表」記載の事例1~15は、いずれも特定主体のウェブサイトを示す用語として使用されていることから、出所識別標識として使用されている。そのほかにも、YouTubeにおいては、同事例16~20のとおり、動画の内容表示と「オンライン」の文字とを結合した語から成るチャンネ
5 ル名が多数存在し、需要者においても、動画を選択するための目印すなわ
ち出所識別標識として認識される態様で使用されている(甲3、4)。オ 定期刊行物との共通性定期刊行物については、大審院昭和7年6月16日判決・民集11巻11号1136頁、学説(網野誠・商標〔第6版〕〔甲37〕)及び特許庁の審査実務において、題号がその内容を認識させると同時にその出所をも表示するものであることから、単に品質内容を表示する題号であったとしても識別性を認めるという、一般的な商品・役務とは異なる実務が電子媒体を含め確立している。そして、本願指定商品役務のうち指定商品⑤、⑧は、「電子定期刊行物」若しくは「電子定期刊行物の提供」の範疇に属し、定期刊行物と同様、本願商標がその内容を認識させると同時にその出所をも表示するといえる。また、指定役務⑩、⑪のうち映像の提供に係る役務(本願映像提供役務)は、特定の題号等の下で毎回異なるコンテンツを提供する点で定期刊行物と共通しており、提供の形式の差異は需要者にとって形式的な差異にすぎないから、「定期刊行物」と同様に考えるべきである。なお、現行の商標審査基準改訂前の議論においても、定期刊行物の題号と番組名とを同様に考えるべきことが指摘されており(甲13)、「番組の制作」における番組名については、当該役務を1回か連続かに明確に分けるのが困難なため「定期刊行物」と同様にできなかった事情が窺える。そうすると、定期刊行物と同じく「各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されること」が明確になっている番組に関する商品・役務、すなわち本願映像提供役務については「定期刊行物」と同様に解することができる。本願映像提供役務以外の本願指定指定商品役務についても、指定役務⑦、
⑫は原告らによる本件動画と同時に提供されていること、指定商品①~⑥
5 は映像を提供する方法(オンラインか、ダウンロード又は記憶媒体か)が
相違するにすぎないことから、需要者にとって本願映像提供役務と実質的に異なるものではない。したがって、本願指定商品役務について、本願商標は自他商品役務識別力を有するというべきである。
(2) 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)
本願商標は、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものといえるため、商標法3条2項により登録が認められるべきである。ア 本願商標の使用態様原告らは、本件動画を、令和2年6月から、毎週木曜日に異なるゲストを迎え、ゲスト毎に異なる内容で制作及び配信している。その配信に際しては、「知財実務オンライン」を番組名として使用し(甲2、44)、本件審決日(令和5年10月19日)までの約3年4か月の間、計191回にわたり、定期的に異なる内容の作品(本件動画)が制作されている。一般に、YouTubeの視聴者は特定のチャンネル名(=番組名)を見て他のチャンネル名と区別するため、チャンネル名の使用は当該チャンネルで提供される役務の識別標識としての使用であると解されるから、本願商標は出所識別標識として使用されているといえる。イ 使用期間について商標法3条2項による識別力を取得するために必要な期間は、必ずしも長期間である必要はない。本願映像提供役務の分野においては、約3年4か月の使用期間は短いとはいえない。インターネットの世界はビジネスが迅速であり、動画配信サービス自体歴史が浅く、世界で最も利用されている「YouTube」のサービス期間は約18年である。
5 また、知的財産分野における登録者数上位のYouTubeチャンネル
のチャンネル名の使用期間は、平均して約6年4か月である。ウ 本件チャンネルの登録者数(ア) 本願商標を付した本件チャンネルの登録者数は、令和5年12月22日時点で4204人であり、知財系YouTubeチャンネルでは第1位であって(甲50の1)、4100人であった本件審決日も大きく変わらないと推認される。4204人という数字は、令和3(2021)年度の知財業界の人口が4万3774人であったことからすると(甲32)、約10%に当たり、相当程度多いといえる。YouTubeでは登録を要せずクリック一つで視聴できるから、チャンネル登録者は「知財実務オンライン」に何回もアクセスするヘビーユーザーだけであり、実際の視聴者の数ははるかに多い。また、平成26年6月5日に開設された特許庁の公式YouTubeチャンネル「JPO Channel」の登録者数は、令和5年12月22日時点で3870人であり(甲48の2)、本件チャンネルはわずか3年余りでチャンネル登録者数を上回っている。動画の内容が知財に関するものに限られ、そのほとんどが1時間を優に超える配信時間となっている「知財実務オンライン」が、「商標拳」のような視聴回数168万回に達する一般向けコンテンツ(甲48の2)をも含む特許庁公式チャンネルのチャンネル登録者数を超えていることを考えれば、本願商標の知名度は、需要者である知財関係者の間では非常に高いといえる。(イ) 被告は、本願指定商品役務の需要者は、知財業界の需要者(専門家)に限らず、知的財産の勉強をしている学生や社会人等を含む、広く知的財産に多少なりとも関心のある者である旨主張する。しかし、本願商標は「知財実務オンライン」であるから、アニメーションを内容とするからといって「小学生、中学生、高校生を含む知的財
5 産を学ぶ者」を需要者とすることはない。本件動画は、知財実務を業務
として行う知財業界の者が主たる視聴者層となっており、知的財産の勉強をしている学生や社会人等には理解困難な内容のものが多く、そのような視聴者はあったとしてもごくわずかである。仮に、知財関係者4万3774人以外に
(被告の主張)
する需要者がその2倍いるとしても、チャンネル登録者数は需要者全体の約3%に及び、自動車の例でいえば、スバルやレクサスの市場シェアを上回るから、十分な知名度を有しているといえる。エ 著名人や有名機関所属者の出演本件動画の出演者には、国内外の弁理士や知財を扱う弁護士、著名企業の知財部所属者、内閣府、特許庁職員及びWIPO日本事務所所長が含まれ、知財高裁の元判事や元所長を含む著名な弁護士、学者も含まれている(甲53)。この事実は、本件動画が知財に関する動画の視聴等を希望する需要者によって注目されており、知名度や信頼性があることが裏付けられる。オ 以上に加え、第三者に本願商標と同一の標章は使用されておらず、模倣行為に敏感な知財業界であるからこそ知名度のある「知財実務オンライン」の名称を利用できないことも考えられること、本件動画は毎回内容が異なりかつ継続的に提供されるものであるため需要者の記憶に残りやすいことを考慮すれば、本願商標は知財業界の需要者の間で自他商品役務識別力を有するというべきである。カ 本件動画では、指定役務⑦、⑫も同時に提供されていると評価し得るから、これらの指定役務についても使用されているといえる。2
(被告の主張)
(1) 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について
ア 本願商標について
5 本願商標の構成中、「知財」の文字は「「知的財産」の略。」(乙1)
の意味を、「実務」の文字は「実際の具体的な仕事。」(乙2)の意味を、「オンライン」の文字は、「コンピューターの入出力装置などが、中央処理装置と直結している状態。また、通信回線などによって、人手を介さず情報を転送できる状態。」(乙3)の意味を有し、いずれも容易に意味が理解できる広く一般に親しまれた語であるから、本願商標は、「知財」、「実務」及び「オンライン」の文字を組み合わせてなるものと容易に看取、理解されるものである。また、本願商標の構成中「知財」と「実務」の文字を組み合わせてなる「知財実務」の文字は、上記の語義からすれば、「知的財産に関する実務」ほどの意味合いを容易に理解させるものである。加えて、「オンライン」の文字は、我が国において高校生が学習用に使う基礎的な英和辞典に掲載され、「オンラインの。インターネットに接続した。オンラインで。インターネットで(に接続して)。」(乙4)の意味を有する広く一般に親しまれた平易な英単語である「online」の片仮名表記としても理解されるものである。そうすると、本願商標は、全体として「オンラインでの知的財産に関する実務」ほどの意味合いを認識させるものである。仮に、原告らが主張するような複数の意味で認識され得るとしても、いずれの意味であっても、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識されることに変わりはない。イ 本願指定商品役務の取引の実情について「知財実務」の文字は、企業や弁理士法人等のウェブサイト(甲28の1~5)において、「知的財産に関する実務」ほどの意味合いを認識させる語として一般に使用されている。また、本願指定商品役務を取り扱う業界を含む幅広い業界において、「オンライン」の文字は、「○○オンライン」の形で、「オンラインで利
5 用可能な」又は「オンラインで提供される」ほどの意味合いを認識させる
語として一般に使用されている事実があり、その中には、別紙2「『オンライン』を末尾に付す標章一覧表」記載の事例1~3、21~35のとおり、「オンライン」の文字に商品又は役務の内容を冠し、商品の品質又は役務の質を端的に表したものが一般に使用されている。原告らが挙げる同事例16~20については、「○○オンライン」がチャンネル名として使用されているとしても、同時に当該チャンネルで配信されている動画の内容を示すものと認識されるというべきである。ウ 定期刊行物と本願指定商品役務について原告らは、本願指定商品役務が「定期刊行物」と共通性を有することから、本願商標は識別力を有する旨主張するとともに、「電子定期刊行物」又は「電子定期刊行物の提供」の範疇に属するから「定期刊行物」と同様に本願商標がその内容を認識させると同時にその出所をも表示するといえる旨主張する。しかし、本願指定商品役務は、いずれも雑誌等の「定期刊行物」と同一の指定商品及び指定役務ではなく、性質等も異なる。例えば、指定商品①はあくまで「情報の閲覧のために用いられる電子計算機用プログラム」自体が主体となる商品であり、指定商品③はコンテンツを収録した「ビデオディスク及びビデオテープ」であって、定期的又は逐次的に提供された動画等を複数回分まとめて収録した全集のような商品も含まれ得るのだから、「定期刊行物」とは明らかに性質を異にする商品である。このように、指定商品及び指定役務に「定期的に発行される知的財産に関する電子出版物の閲覧のための」や「(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供された動画を内容とするものに限る。)」等の文言が付け加えられれば、直ちに「定期刊行物」
5 と同様に判断されることにはならない。
また、スマートフォン等を用いて比較的簡便に動画を配信することも可能である動画配信プラットフォームにおいて「映像の提供」が定期的に行われたとしても、主に出版社等が発行している雑誌等の「定期刊行物」と同様に、内容を表示するとともに出所識別標識として機能している取引の実情があるとはいえない。その他、本願指定商品役務の取引の実情が、雑誌等の「定期刊行物」と同様であることの具体的な主張立証はない。「定期刊行物」は、その題号と関わりなく様々な内容からなる記事を編集して定期的に発行されるものであり、必ずしも題号が品質(内容)を表示するものではないが、本願指定商品役務は、いずれも知的財産に関するものであるから、本願商標が商品又は役務の内容すなわち質を表していることが明らかであり、「定期刊行物」と同様に判断することは適切ではない。したがって、本願指定商品役務は、いずれも「定期刊行物」ではなく、これと同様の取引の実情の下にあるともいえない。エ まとめ以上からすれば、本願商標を本願指定商品役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、直ちに「オンラインで利用可能な又はオンラインで提供される知的財産に関する実務を内容とする商品」又は「オンラインで利用可能な又はオンラインで提供される知的財産に関する実務についての役務」であること、すなわち、単に商品の品質又は役務の質を表示したものと理解するにとどまる。そうすると、本願商標は、商品の品質又は役務の質を表示するものとして取引に際し必要適切な表示として何人も使用を欲するものであり、本願商標が上記商品又は役務に使用された場合、取引者、需要者によって、将
5 来を含め、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識されると
いうべきであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品役務の識別力を欠くというべきであり、商標法3条1項3号に該当する。
(2) 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について
ア 商標法3条2項は、同条1項3号ないし5号に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できるに至った場合、すなわち、使用により自他商品及び自他役務の識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができるものと規定するところ、当該商標が同項に該当するか否かについては、使用に係る商標ないし商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である(その場合、使用に係る商標ないし商品等は、原則として、出願に係る商標及び指定商品と同一であることを要する。)。また、上記「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できるに至った場合」に該当するというためには、永年使用されることにより、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(すなわち特別顕著性が認められる)ことを要するものと解するのが相当である(「morimoto事件」知財高裁平成29年(行ケ)第10110号同年3月29日判決参照)。そして、出願に係る商標の商標法3条2項の要件の充足性は、審決時を判断時とすべきである(「生のり事件」知財高裁平成21年(行ケ)第10388号同22年6月29日判決参照)。イ 本願指定商品役務の需要者について本願指定商品役務の中には、例えば指定商品④のように、その需要者に小学生、中学生、高校生を含む知的財産を学ぶ者も含まれるものも存在す
5 る。
そうすると、本願指定商品役務の需要者は、原告らのいう知財業界の需要者(専門家)に限らず、知的財産を学ぶ学生・社会人、知的財産に関する学術的な研究者、特許権を取得したい発明家や研究者、登録商標を得たい事業主、意匠権を取得したいデザイナー、企業等の知的財産部に所属していないが知的財産に関わる業務を行っている者(例えば商品企画担当者等)等、広く知的財産に多少なりとも関心のある需要者というべきである。原告らは、「令和4年(2022年)知的財産活動調査結果の概要」(甲32)を挙げて知財業界の人口に触れているが、本願指定商品役務の需要者は、同調査で対象となった企業における知的財産部門に属する担当者に限られない。ウ 本願商標の使用実績等について原告らの主張によっても、「知財実務オンライン」の文字からなる商標の使用期間は3年ほどと短く、また、考慮すべき需要者は上記イのとおり広く知的財産に多少なりとも関心のある需要者というべきであるから、本件動画の合計配信回数、各回の視聴回数及びチャンネル登録者数、並びにSNSにおいて「知財実務オンライン」に言及している数も格別多いとはいえない上、本件動画にゲスト出演している者も原告らのいう知財業界の需要者(専門家)のうちのごく一部の者である。その他、上記使用によって本願商標が上記需要者の目にどの程度触れ、原告らの業務に係る商品及び役務を表示するものとしてどの程度認識されるに至っているのかを示す客観的な証拠はない。本願指定商品についての使用に関しては、そのような事実があるか否かを含め、主張立証はない。エ 以上によれば、原告らの使用によって、「知財実務オンライン」の文字からなる商標が、需要者の間において、原告らの業務に係る商品及び役務
5 を表示する標章として広く認識されるに至ったものとは到底いえず、本願
商標は商標法3条2項の要件を具備しない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について
(1) 商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。…)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨規定しているが、これは、同号掲記の標章は、指定商品又は指定役務との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示、記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は自他役務の識別力を欠くものであることから、登録を許さないとしたものである。
(2) 原告らは、本願商標について、①第三者に使用されていない、②商品又は役務の特徴等を間接的に表示するものである、③一定の意味を有しない造語である、④商品、役務名又はブランド名の語尾に「オンライン」の文字を付した標章は、ウェブサイトやYouTubeのチャンネルにおいて出所識別標識として認識される態様で使用されている、⑤本願指定商品役務の性質及び取引の実情は定期刊行物と共通するから、定期刊行物の題号と同様に本願商標の自他商品役務識別力を認めるべきであるとして、本願商標は商標法3条1項3号に該当しない旨主張するので、以下検討する。
(3) 本願商標の構成中の「知財実務」の文字は「知的財産に関する実務」を意
5 味する一般的な用語であり、また、「オンライン」の文字は「コンピューターの入出力装置などが、中央処理装置と直結している状態。また、通信回線などによって、人手を介さず情報を転送できる状態。」を意味する用語であり(大辞泉第2版)、英語の「online」とともに、「インターネットに接続した状態」、「インターネットを利用した」等を意味する用語として一般的に用いられていると認められる(乙1~4、弁論の全趣旨)。さらに、「〇〇オンライン」と「オンライン」の文字を末尾に配する標章(「〇〇オンライン」標章)の一般的な実情をみると、当事者が主張において挙げるものに限っても、別紙2「『オンライン』を末尾に付す標章の一覧表」に記載の用例がある。これらの用例を大別すると、①「オンライン」の前の文字が、提供される商品又は役務の一般的名称と理解されるもの(事例1~5、16,18,20~25、27~29)と、②「オンライン」の前の文字が、それ自体としても識別力を有する標章として機能すると同時に、「オンライン」の文字と組み合わされて全体として一つの標章ともなっているもの(事例6~11、14,15、26、30、34、35)に分けられる(分類の部妙なものは例示から除いた。)。このような標章に接した需要者の一般的な認識としては、上記①の事例であれば、「オンライン」の前の一般的な名称に係る商品又は役務をオンラインで提供するものと認識し、上記②の事例であれば、「オンライン」の文字の前に示される識別標識に係る商品又は役務をオンラインで提供するものと認識するものと認めるのが相当であり、いずれにおいても、「〇〇オンライン」標章中の「オンライン」の文字が果たす意味合いは本質的に同じといってよい。そうすると、「オンライン」の前に「知的財産に関する実務」を意味する一般的な用語である「知財実務」を結合させた本願商標は、上記の一般的な取引の実情からみて、「知的財産に関する実務の情報をオンラインで提供す
5 るもの」、すなわち商品の品質又は役務の質を表示したものと認識されるとともに、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであると認められる。そして、本願指定商品役務の取引の分野において、これと異なる取引の実情があることを窺わせる証拠はない。
(4) 上記認定と異なる原告らの主張は、以下の理由により、いずれも採用できない。ア 原告らは、本願商標が第三者に使用されていない事実を取引の実情として考慮すべきであると主張する。しかし、上記のとおり、本願商標は「知財実務」と「オンライン」の文字の意義及び「オンライン」の文字を末尾に付する標章の一般的な実情からみて、商品の品質又は役務の質を表示したものと認識されると認められ、この認定は、第三者が使用する事実があれば更に裏付けられるということはできても、第三者が使用する事実がないからといって左右されるものではない。イ 原告らは、本願商標は商品又は役務の特徴等を間接的に表示するものである、あるいは一定の意味を有しない造語であると主張する。しかし、本願商標は「知的財産に関する実務の情報をオンラインで提供するもの」として需要者に認識され、その内容に一定の幅があるとしても、いずれにせよ商品の品質又は役務の質を表示したものと理解されることに変わりはなく、一定の意味を有しない造語であるとはいえない。ウ 原告らは、商品、役務名又はブランド名の語尾に「オンライン」の文字を付した標章は、ウェブサイトやYouTubeのチャンネルにおいて出所識別標識として認識される態様で使用されていると主張する。しかし、別紙2の各事例は、「オンライン」の前の文字がそれ自体として出所識別標識として機能しているものを除き、「オンライン」の文字を付すことによって出所識別標識として認識される態様で使用されていると
5 は認められない。事例16の「神社仏閣オンライン」に係る甲3のSNSの投稿は、この認定を左右するものではない。エ 原告らは、本願指定商品役務の性質及び取引の実情は定期刊行物と共通するから、本願商標については定期刊行物の題号と同様に自他商品役務識別力を認めるべきである旨主張する。しかし、新聞、雑誌等の定期刊行物の商品については、個人の著作物である書籍と異なり、主として特定の新聞社・出版社が継続的に編集・発行するものであって、その内容は新聞社・出版社ごとに異なり(題号と関わりの薄い記事が掲載されることも含まれる。)、その題号が品質・内容を示すものであっても出所識別標識としての機能を果たし得るという、他の商品と異なる取引の実情が認められるものである(原告らの引用する大審院昭和7年6月16日判決も、これと同旨と解される。)。そして、このような定期刊行物を電子化した電子定期刊行物についてはともかく、本願指定商品役務について、定期刊行物と同様の取引の実情があると認めるに足りる証拠はない。例えば、オンラインによる映像等の提供を内容とする指定役務⑩、⑪についていえば、YouTubeなどに代表されるインターネット上の動画投稿・共有サービスは原則として誰もが簡便に動画を投稿できるものであるから、「知的財産に関する」、「各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供される」といった限定が付されたからといって、新聞、雑誌等の定期刊行物と同様の取引の実情があると認めることはできない。原告らは、商標審査基準改訂における放送番組の番組名に係る議論に言及して、「番組」に関する商品・役務のうち「各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されること」が明確になっているものは定期刊行物と同様であると主張するが、そもそもオンラインによる映像等の提供については、映像等の内容、性質に多様なものが含まれることからすれば、
5 「放送番組」の一部がオンラインでも提供されている現状を考慮しても、放送番組そのものと同様の取引の実情があるとは認められない。また、知的財産に関する定期的に発行される電子出版物(指定商品⑤)についても、このうち個人の著作する書籍に相当するものについては、直ちに新聞、雑誌等の定期刊行物と同視することはできない。なお、近年の電子技術や通信技術の発達に伴い、情報コンテンツ及びその伝達手段が拡大・多様化しており、新聞社・出版社による「定期刊行物」、テレビ局・ラジオ局による「放送番組」といった従来からの商品役務とそれ以外のオンラインにより伝達される情報コンテンツとの境界も変容しつつあることは事実であるが、そうであるからといって、従来からの取引において長年にわたり形成された「定期刊行物」に係る取引の実情が、オンラインによる映像等の提供について直ちに認められることにはならない。
(5) 以上のとおり、本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはなく、原告らの取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について(1) 原告らは、本願商標は、本件チャンネル及び本件動画において使用されたことにより、本願指定商品役務に関し自他商品役務の識別力を獲得している旨主張する。(2) 証拠(甲2、7、18、44、47の1~7、48の1~7、49、50の1・2、53)及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、平成2年6月以降、YouTubeにおいて、そのほとんどの動画名に「知財実務オンライン」の文字を付した本件動画を毎週木曜日に継続して投稿し配信していること、各動画は各回ごとに異なるゲストが出演し、知財実務に関する様々な情報を提供する内容で、1回の再生時間は概ね1時間半~2時間程度であり、本件審決日(令和5年10月19日)までの約3年4か月間において191の動
5 画が投稿されていること、ゲスト出演者は国内外の弁理士、知的財産権を扱う弁護士、企業の知財部所属者のほか、内閣府、特許庁の担当職員、WIPO日本事務所所長、知的財産権の分野で著名な弁護士(元知財高裁所長を含む。)、学者も含まれていること、本件動画を表示、配信する本件チャンネルの名称は「知財実務オンライン」であり、上記同日におけるチャンネル登録者数は4100人であって、特許庁のチャンネルを含め知財実務に関する同種の動画を配信するYouTubeチャンネルの中で最も多いことが認められる。(3) 上記認定によれば、原告らによる本件動画の提供は、指定役務⑦、⑨~⑫に当たるものと認められるから、原告らは、これらの指定役務について本願商標を使用し、一定の認知を得るなど、この指定役務に関する限り、知財分野で一定の地歩を築いているということはできる。他方、指定商品①~⑥及び指定役務⑧については、原告らが本願商標を使用した事実は認められない。(4) そこで進んで、指定役務⑦、⑨~⑫に関して、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるもの(自他役務識別力を獲得している)といえるかについて検討する。ア 3年4か月という使用期間について、原告らは、自他役務識別力を獲得するために必ずしも長期間は必要でなく、動画配信サービス自体歴史が浅いこと、知的財産分野におけるYouTubeチャンネルの中では短いものではないことを主張する。この点、もちろん、商標法3条2項の適用に当たって一定の年月以上の使用が必要条件となるものではないが、長期間にわたり使用された事実は、使用の頻度、需要者への露出の多さなどの要素と相まって、自他役務識別力の獲得を認める方向での重要な要素となるところ、3年4か月という使用期間はさほど長期間とはいえない。原告らの挙げる同種のYouTub
5 eチャンネル(甲47の1~7、48の1~7)との比較における使用期間の長短に、特段の意味は認め難い。イ 原告らは、令和3(2021)年度の知財業界の人口は4万3774人であり、本件チャンネルの登録者数はその約10%を占めるから、知的財産分野におけるYouTubeチャンネルの中で登録者数が第1位であることと併せ、本願商標の自他役務識別力の獲得を裏付ける旨主張する。しかし、原告らが知財業界の人口として挙げる数字は、特許庁が「令和4年(2022年)知的財産活動調査結果の概要」(甲32)として公表した、建設業、食品製造業等の各業種の企業と「教育・TLO・好適研究機関・公務」の各機関(合計4854)及び「個人・その他」における知的財産担当者数であるのに対し、指定役務⑨に係る「知的財産権に関する知識の教授」、指定役務⑩、⑪に係る「知的財産に関する映像等の提供」といった役務の需要者は、上記調査の対象とならなかった企業等の担当者、対象となった企業等及び対象とならなかった企業等において知的財産を過去担当し、将来担当を希望し、あるいは関連する業務を担当し知的財産権に関心を有する者、知的財産権を学術的に研究等する研究者や学生、将来において特許権、商標権、意匠権の取得を希望する者を含むと認められる。なお、指定役務⑦、⑨~⑫の需要者は、例えば継続的に提供される映像等をすべて視聴する者に限られるものではなく、その中の特定の映像等の需要者も含まれるから、「動画配信プラットフォームを通じて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供される」という役務の限定によりその範囲が有意に限定されるとは認め難いし、原告らが現在提供している本件動画の需要者に限定されるものでもない。そうすると、原告らが主張する本件チャンネルの登録者数(約4100~4200人)は、需要者のごく一部をカバーしているにすぎないと解される。チャンネル登録者数よりも実際の視聴者数の方が多いであろうこと
5 を考慮したとしても、実際の視聴者数は明らかでなく、上記需要者全体に広く浸透していたと認めるに足りる証拠はない。また、同種のYouTubeチャンネルとの比較に特段の意味が認められないことは、上記アで述べたところと同様である。ウ 原告らは、本件動画に著名な弁護士、学者を含む多数の知的財産関係者や公的機関の担当者等が出演していることは、本願商標の自他役務識別力の獲得を裏付ける旨主張する。しかし、これらの事実は、これまで配信された本件動画のクオリティの高さを示すとしても、これに接する機会のない大多数の需要者において、出所を認識させる理由となるものではない。エ 原告らは、第三者が本願商標を使用していない事実は模倣行為に敏感な知財業界における知名度を裏付けると主張するが、そのように解すべき根拠は希薄といわざるを得ない。オ 以上を総合すると、本願商標は、指定商品①~⑥及び指定役務⑧との関係で使用の事実が認められないだけでなく、指定役務⑦、⑨~⑫との関係においても、需要者の一部から一定の認知を得ているとしても、自他役務識別力を獲得しているとまでは認められない。(5) したがって、本願商標は、本願指定商品役務との関係において、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものということはできないから、本願商標が商標法3条2項に該当しないとした本件審決の判断に誤りはなく、原告らの取消事由2の主張は理由がない。
3 結論以上によれば、原告ら主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって、原告らの請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
宮 坂 昌 利
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
頼 晋 一
別紙1 本願の指定商品及び指定役務
(注:便宜上、改行の上、①~⑫の番号を付した。)
第9類5 ① 定期的に発行される知的財産に関する電子出版物の閲覧のための電子計算機用プログラム、② 定期的に発行される知的財産に関する電子出版物の閲覧のためのコンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)、③ 知的財産に関する録画済みビデオディスク及びビデオテープ(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供された動画を内容とするものに限る。)、④ 知的財産に関するアニメーションを内容とする記録済み媒体及び動画ファイル(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供された動画を内容とするものに限る。)、⑤ 知的財産に関する定期的に発行される電子出版物、⑥ 知的財産に関するセミナー・研修又は講演を内容とする記録済みCD-ROM(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供された動画又は音声を内容とするものに限る。)第41類⑦ 知的財産に関するセミナーの企画・運営又は開催(動画配信プラットフォームを通じて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されるものに限る。)、⑧ 知的財産に関する定期的に発行される電子出版物の提供、⑨ 知的財産権に関する知識の教授(動画配信プラットフォームを通じて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されるものに限る。)、⑩ 知的財産に関するオンラインによる音楽・音声・映像・画像・文字情報の提供(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容のものが定期的又は逐次的に提供されるものに限る。)、⑪ 知的財産に関するオンラインによる音楽・音声・映像・画像・文字情報の提5 供(動画配信プラットフォームにおいてシリーズものとして定期的又は逐次的に提供されるものに限る。)」第45類⑫ 知的財産権に関する情報の提供(動画配信プラットフォームにおいて各回異なる内容ものが定期的又は逐次的に提供されるものに限る。)以 上
別紙2 「オンライン」を末尾に付す標章の一覧表
事例 名称 種類 開設者等 内容(説明) 証拠等言葉の読み方や意味を調べることができる辞書 甲29の1国語辞典ONLINE ウェブサイト ㈱ジテンオンサイトです。 乙15基本的な計算から高度な計算をオンラインで行う必要がある人のための認定プラットフォーム 甲29の2電卓オンライン ウェブサイト 不明です。100%無料のオンライン電卓を提供しまし 乙17た。漢字の部首・画数・読み方・筆順・意味などを 甲29の3漢字辞典ONLINE ウェブサイト ㈱ジテンオン調べることができる漢字辞典サイトです。 乙16子どもたち及び子どもたちを守る大人が誰一人小児科オンライン ウェブサイト ㈱KidsPublic 孤立しない社会の実現を目指し立ち上がった遠 甲29の4隔健康医療相談サービスです。医学文献の検索全文閲覧をはじめ医薬品・医療メディカルオンライン ウェブサイト ㈱メテオ 機器・医療関連サービスの情報を幅広く提供す 甲29の5る、会員制の医学・医療の総合サイトです。慶應義塾大学の卒業生(塾員)限定のインター慶應オンライン ウェブサイト 慶応義塾大学 甲29の6ネットサービスです読売新聞社グ 読売新聞ご購読の皆様のためのデジタルサービ 甲29の7読売新聞オンライン ウェブサイトループ スです。 乙46独自に取材した経済関連ニュースを中心とした情報配信プラットフォームです。東洋経済の業㈱東洋経済新報東洋経済ONLINE ウェブサイト 界担当記者のほか、多くのジャーナリスト、ラ 甲29の8社イター、組織との連携のもとで運営しています。プレジデント社が運営する総合情報サイトです。プレジデントオンライン編集部の独自記事PRESIDENT ㈱プレジデントウェブサイト と、雑誌「プレジデント」(月2回刊)からの 甲29の9Online 社転載記事を中心に、さまざまな情報をお届けしています。…雑誌『クロワッサン』が運営するオンラインメディア。健康、料理、ファッション、コスクロワッサンONLI ㈱マガジンハウ 甲29の10ウェブサイト メ、インテリア、収納、お金などのテーマを扱NE ス 乙47う40代~50代女性をメインターゲットとするライフスタイルメディアです。株式会社ファンケルまたはその代理人が運営すFANCL ONLIるWebサイトです。美容と健康に役立つ便利NE(ファンケルオン ウェブサイト ㈱ファンケル 甲29の11でお得な情報が満載で、ファンケルの取扱商品ライン)をその場でご注文いただけます。デジタルマーケティングの最先端で活躍する講SO 師陣から「実践的」な知識とノウハウを学べるジッセン!オンライン ウェブサイト 甲29の12Technologies㈱ ため、社内研修や勉強会等ですぐにご活用いただけます。…戦略的な視点が求められている総務部門の方々に向けて、実務情報や組織運営に役立つ情 甲29の13月刊総務オンライン ウェブサイト ㈱月刊総務報の提供を中心に、さまざまなサービスを提供 乙48するプラットフォームです。事例 名称 種類 開設者等 内容(説明) 証拠等ご自宅からPCやスマートフォン、タブレット端末を使って受講できる講座を行っています。朝日カルチャー朝カルオンライン ウェブサイト 受講される方は、招待メールに記載されている 乙32センターURLをクリックすることで、比較的簡単にご参加いただけます。㈱読売・日本テ インターネット環境とパソコン・スマホ・タブよみカルONLINE ウェブサイト レビ文化セン レット端末などがあれば、お好きなところで受 甲29の14ター 講できます。YouTube 神社・お寺・日本文化をもっと身近にする!神社仏閣オンライン 不明 甲35の1チャンネル ①禅語ライブ(毎朝7:45~)…などなど!もっと企業のIRに注目して欲しいという想い湘南投資勉強会オンラ YouTube不明 で、決算資料を読む動画を中心にアップしてい 甲35の2イン チャンネルます。YouTube地政学オンライン 不明 不明 甲35の3チャンネル毎年行う妊活セミナーなどを今年はオンラインひろしま助産師オンラ YouTube 一般社団法人セミナーに変更し、1種類→4種類に増やしま 甲35の4イン チャンネル 広島県助産師会した!期間限定で配信します!総合型選抜対策オンラ YouTube不明 不明 甲35の5イン チャンネルマンスリー・マジック・レッスン・オンラ ウェブサイト 不明 不明 乙5インFashion Biz Study オン Fashion Biz Study は、ファッションビジネスにウェブサイト 不明 乙6ライン 必要なスキルを学ぶ場です。オンライン講座適正取引講習会オンラ 適正価格で取引する方法を実験的に学べる適正ウェブサイト 中小企業庁 乙7イン 取引講習会 実践ライブ配信セミナーインターネットを通じて映像授業を受けることスタディーオンライン ウェブサイト 不明 ができるサービスです。自宅に居ながら塾さな 乙8がらの授業を受けることができ…シンポジウム…など、森美術館はさまざまな形MORI ARTラーニングONLIN 式で…ラーニング・プログラムを開催していまウェブサイト MUSEUM 森 乙9E す。「MAMデジタル」ではこれらをウェブサイ美術館ト…などでお届けします。政府の施策や知りたい情報をあなたの暮らしに政府広報オンライン ウェブサイト 内閣府 乙10お届けします。文化庁が運営する我が国の文化遺産についての文化遺産オンライン ウェブサイト 文化庁 乙11ポータルサイトです。一般財団法人 数値地図(国土基本情報)を2次元メッシュ単数値地図(国土基本情ウェブサイト 日本地図セン 位…で、インターネットを利用したオンライン 乙12報)オンラインター 提供を行っています。Educational Videoウェブサイト 丸善出版㈱ 医学・看護の映像教材配信サービスです。 乙13Online参加する子どもたちは自宅で「MESH」と、一緒おうちdeチャレンに貸し出すタブレットを使ってプログラミングジ!MESH™発明ワー ウェブサイト ソニー㈱ 乙14や作品づくりを体験…するワークショップでクショップ オンラインす。事例 名称 種類 開設者等 内容(説明) 証拠等新型コロナウィルス感染症の収束の見通しが立2020特許・情報 一般社団法人たない状況から…科学技術館で予定しておりまフェア&コンファレン ウェブサイト 発明推進協会 乙18したリアルの開催から、オンライン展示会に交スOnline ほか流の場を移します。地方自治情報化推進 地方公共団体情 情報システムオンライン展示会(出展者セミウェブサイト 乙19フェアオンライン 報システム機構 ナーも含む)このゲームについて:リアルタイムのオンライ隠れん坊 オンライン ウェブサイト Google 乙20ンかくれんぼ塾での学習や、模擬試験の結果の参照、オンラ早稲田アカデミーOn ㈱早稲田アカデウェブサイト イン学習システムの利用など…様々な機能をご 乙21line ミー利用いただくことができます。Ken Hirai Films Vol.16「Ken’s Bar 2021 DVD オンライン開催された音楽ライブの映像作品 乙22-ONLINE-」
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