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令和3(ワ)22564等損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年3月22日
事件種別 民事
法令 特許権
特許法104条の35回
不正競争防止法2条1項21号3回
特許法29条2項2回
特許法29条1項3号2回
不正競争防止法2条1項1回
民法709条1回
特許法104条1回
特許法36条6項2号1回
特許法29条1回
特許法36条4項1号1回
特許法36条6項1号1回
不正競争防止法1条1回
キーワード 無効32回
特許権31回
進歩性24回
実施23回
侵害19回
無効審判12回
新規性11回
審決6回
損害賠償5回
訂正審判2回
許諾2回
刊行物1回
分割1回
優先権1回
ライセンス1回
主文 1 原告の本訴に係る請求をいずれも棄却する。
2 被告らの反訴に係る請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを2分し、その1を原告の負担と
事件の概要 本訴事件は、原告が、岡三証券株式会社(以下「岡三証券」という。)を主 幹事会社として、東証マザーズ市場(以下「マザーズ市場」という。)への上20 場を控えていたところ、被告らが、岡三証券に対し、原告の製造又は販売する 製品は被告モビリティが当時有していた特許第4789092号の特許(以下 「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害し ている旨の通知書を送付した行為(以下「本件通知行為」という。)が、故意 若しくは過失による不正競争行為(不正競争防止法2条1項21号)、不法行25 為又は取締役がその職務を行うについて悪意若しくは重過失による取締役の任 務懈怠に該当し、同行為により原告に損害が生じたとして、被告モビリティに 対し、主位的に不正競争防止法4条、予備的に民法709条に基づいて、被告 Aiに対して、主位的に不正競争防止法4条、予備的に会社法429条1項、 更に予備的に民法709条に基づいて、4503万7856円(なお、原告は、 損害額に係る主張を訂正したが、これを請求に反映していないため、請求の趣5 旨における金額と請求原因における金額とは一致しない。)及びこれに対する 訴状送達の日の翌日(被告モビリティにつき令和3年9月25日、被告Aiに

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判決文

令和6年3月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(ワ)第22564号 損害賠償請求事件(本訴)
令和4年(ワ)第16085号 損害賠償請求事件(反訴)
口頭弁論終結日 令和6年1月12日
5 判 決
原告(反訴被告) 株式会社ジィ・シィ企画
(以下「原告」という。)
10 同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
木 村 広 行
井 深 大
被告(反訴原告) 株 式 会 社 モ ビ リ テ ィ
15 (以下「被告モビリティ」という。)
被告(反訴原告) Ai
(以下「被告Ai」という。)
20 上記2名訴訟代理人弁護士 寒 河 江 孝 允
主 文
1 原告の本訴に係る請求をいずれも棄却する。
2 被告らの反訴に係る請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを2分し、その1を原告の負担と
25 し、その余を被告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 本訴
(1) 被告モビリティは、原告に対し、4503万7856円及びこれに対する
令和3年9月25日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員(た
5 だし、被告Aiと4503万7856円及びこれに対する令和3年10月1
9日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の限度で連帯して)
を支払え。
(2) 被告Aiは、原告に対し、被告モビリティと連帯して、4503万785
6円及びこれに対する令和3年10月19日から支払済みまで年3パーセン
10 トの割合による金員を支払え。
2 反訴
(1) 原告は、被告Aiに対し、2000万円及びこれに対する令和4年7月6
日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え、もしくはこ
れに代えて謝罪せよ。
15 (2) 原告は、被告モビリティに対し、3000万円及びこれに対する令和4年
7月6日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え、もし
くはこれに代えて謝罪せよ。
第2 事案の概要
本訴事件は、原告が、岡三証券株式会社(以下「岡三証券」という。)を主
20 幹事会社として、東証マザーズ市場(以下「マザーズ市場」という。)への上
場を控えていたところ、被告らが、岡三証券に対し、原告の製造又は販売する
製品は被告モビリティが当時有していた特許第4789092号の特許(以下
「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害し
ている旨の通知書を送付した行為(以下「本件通知行為」という。)が、故意
25 若しくは過失による不正競争行為(不正競争防止法2条1項21号)、不法行
為又は取締役がその職務を行うについて悪意若しくは重過失による取締役の任
務懈怠に該当し、同行為により原告に損害が生じたとして、被告モビリティに
対し、主位的に不正競争防止法4条、予備的に民法709条に基づいて、被告
Aiに対して、主位的に不正競争防止法4条、予備的に会社法429条1項、
更に予備的に民法709条に基づいて、4503万7856円(なお、原告は、
5 損害額に係る主張を訂正したが、これを請求に反映していないため、請求の趣
旨における金額と請求原因における金額とは一致しない。)及びこれに対する
訴状送達の日の翌日(被告モビリティにつき令和3年9月25日、被告Aiに
つき同年10月19日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合に
よる遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
10 反訴事件は、被告らが、本件通知行為は、被告らによる正当な義務の履行と
してされたものであり、原告による本訴提起は、故意又は過失によって被告ら
の権利又は法律上保護される利益を侵害し、被告らは、これにより有形及び無
形の損害を被ったとして、被告Aiが、原告に対し、民法709条に基づき2
000万円及び令和4年7月6日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで
15 年3パーセントの割合による遅延損害金の支払又は民法723条に基づき被告
Aiに対する謝罪を求め、被告モビリティが、原告に対し、民法709条に基
づき3000万円及び前記同様の遅延損害金の支払又は民法723条に基づき
被告モビリティに対する謝罪を求める(選択的併合)事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特
20 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者(甲1、2、16、弁論の全趣旨)
ア 原告は、電気通信事業、コンピュータシステムの企画・開発・設計・販
売・使用許諾・実施許諾・運用等を業とする株式会社である。
イ 被告モビリティは、情報処理に関する研究、開発及びソフトウェア、ハ
25 ードウェアの開発、制作及び販売等を業とする株式会社であり、令和4年
4月17日まで本件特許権を有していた者である。
ウ 被告Aiは、被告モビリティの代表者代表取締役である。
(2) 本件特許
ア 被告モビリティは、平成14年4月17日(優先日平成13年4月17
日(以下「本件優先日」という。、優先権主張国日本)を国際出願日とす

5 る特許出願(特願2002-584251号)の一部を分割して、平成2
0年5月7日、本件特許の特許出願をし、平成23年7月29日、本件特
許権の設定登録(請求項の数6)を受けた(甲1、2)。
イ 被告モビリティは、平成30年12月6日、本件特許の特許請求の範囲
及び明細書の訂正を求める訂正審判請求(訂正2018-390195)
10 をし、特許庁は、平成31年1月29日付けで訂正を認める旨の審決をし、
同審決は確定した(甲1、3、弁論の全趣旨)。
また、被告モビリティは、令和2年3月6日、本件特許の特許請求の
範囲及び明細書の訂正を求める訂正審判請求(訂正2020-3900
21)をし、特許庁は、同年6月30日付けで訂正を認める旨の審決を
15 し、同審決は確定した(甲1、4、弁論の全趣旨)。
ウ 本件特許の特許請求の範囲
本件特許に係る前記イの各審決による訂正後の特許請求の範囲の請求
項1、3、4及び5の記載は、次のとおりである(以下、同請求項5に
係る発明を「本件発明」といい、本件特許に係る前記イの各審決による
20 訂正後の明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。また、本件明
細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと記載し、図
を「図1」などという。。

【請求項1】
RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、当該携帯電話の
25 スイッチを押すことで生成されるトリガ信号又はリーダライタから送信
されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用
を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求と
して受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、RFIDイン
ターフェースを有するRバッジに対してRバッジを一意に識別できる識
別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記Rバッジより識
5 別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録
してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較
結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または
禁止するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手段は、当該比
較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、
10 前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保
護情報へのアクセスを許可することを特徴とする携帯電話。
【請求項3】
請求項1記載の携帯電話であって、アプリケーションプログラムやデバ
イスドライバをインターネットを経由してダウンロードして新たな機能
15 を追加および/または更新する手段を有することを特徴とする携帯電話。
【請求項4】
前記新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカー
ド、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー、アミューズメン
ト施設のチケット、公共施設のチケットのうち少なくとも1つであるこ
20 とを特徴とする請求項3記載の携帯電話。
【請求項5】
請求項4記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフ
ェースを有し、個別情報の発信要求を前記携帯電話に発信する発信手段
と、前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否
25 かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で受信した判断情報が、
前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間
で処理を行うことを特徴とする受信装置。
エ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3及び4に係る発明並びに本件
発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、分説した構成
要件を符号に対応させて、「構成要件A」などという。。

5 【請求項1】
A RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、
B 当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号又はリー
ダライタから送信されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三
者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に
10 対するアクセス要求として受け付ける受付手段と
C 前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバ
ッジに対してRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信
号を送信する送信手段と、
D 前記Rバッジより識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当
15 該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、
E 前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記
アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、
F 前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可す
るという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されて
20 から所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可す

G ことを特徴とする携帯電話。
【請求項3】
H 請求項1記載の携帯電話であって、アプリケーションプログラムやデ
25 バイスドライバをインターネットを経由してダウンロードして新たな
機能を追加および/または更新する手段を有することを特徴とする携
帯電話。
【請求項4】
I 前記新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカ
ード、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー、アミューズ
5 メント施設のチケット、公共施設のチケットのうち少なくとも1つで
あることを特徴とする請求項3記載の携帯電話。
【請求項5】
J 請求項4記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインター
フェースを有し、
10 K 個別情報の発信要求を前記携帯電話に発信する発信手段と、
L 前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否か
を判断する判断手段とを有し、
M 前記判断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別情報であると
判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行う
15 N ことを特徴とする受信装置。
(3) 原告の行為等
ア 原告は、業として、別紙原告製品目録記載の製品(以下「原告各製品」
という。)を製造及び譲渡している。
イ 原告各製品は、構成要件Jを充足する。
20 (4) 先行文献等
本件優先日前に頒布された刊行物として、次のものがある(甲27、29、
30、32)。
ア 特開2000-20767号公報(以下「甲27文献」という。)
イ 特開平10-162176号公報(以下「甲32文献」という。)
25 ウ 特開2000-222176号公報(以下「甲29文献」という。)
エ Klaus Finkenzeller「RFIDハンドブック-非接
触ICカードの原理と応用」日刊工業新聞社(以下「甲30文献」とい
う。)
(5) 本件通知行為に係る経緯等
ア 原告は、岡三証券を主幹事会社として、令和3年7月7日付けでマザー
5 ズ市場に新規上場することが決定した。同上場予定の事実は、岡三証券、
株式会社東京証券取引所、原告等により広く周知されていた。(弁論の全
趣旨)
イ 被告モビリティは、令和3年6月9日、原告に対し、原告各製品は、本
件発明の技術的範囲に属するものであり、被告モビリティの被った損害は
10 少なくとも5億円を下らないこと、被告モビリティは、原告の上場予定日
である同年7月7日以前に、しかるべき関係の監督官庁当局、機関・団体
宛てに、特許権侵害の事実を告知する予定であることを通知した。
ウ 原告は、当時の原告代理人弁護士を通じて、被告ら代理人弁護士と、電
話及びファクシミリで前記イの件に関してやりとりをし、原告は、被告モ
15 ビリティに対して令和3年6月23日付け「回答書」(甲8)を送付し、
原告各製品が本件発明の技術的範囲に属するとする論拠を十分説明してほ
しい旨通知した(甲6ないし8、弁論の全趣旨)。
エ 被告モビリティは、令和3年6月23日、東京地方裁判所に対し、原告
を被告とする特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟(請求額4億9388
20 万円。以下「別件訴訟」という。)を提起した。ただし、被告モビリティ
は、訴状に収入印紙を貼付しておらず、同年7月8日に別件訴訟を取り下
げるまで、収入印紙を追完することはなかった。(甲11、23)
オ 被告モビリティは、岡三証券に対し、令和3年6月24日付け「特許裁
判に関する通知書」と題する書面(甲9。以下「本件通知書」という。)
25 を送付した。本件通知書には、次の内容が記載されていた。
「当職は、株式会社モビリティ…の代理人として、2021年6月23日
(水)付けにて、東京地方裁判所に、株式会社ジィ・シィ企画を被告とし
て、特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟を提訴したことを通知いたしま
す。
なお、通知人は株式会社ジィ・シィ企画(以下、被告という)に対して、
5 被告製品が通知人会社保有の特許権を侵害していることを指摘し、被告に
対し、その事実を認めること及び正当な対価を支払うことを請求し、その
ための誠意ある協議を求めて、数回に渡り内容証明書などで通知している
にも拘わらず、何らの回答も無いまま現在に至っております。
…被告は、2021年7月7日にマザーズ市場に上場予定の企業であり、
10 日本取引所グループの上場審査基準である「投資者保護の観点から当取引
所が必要と認める事項」(有価証券上場規程)及び「公益又は投資者保護
の観点で適当と認められること」(上場審査等に関するガイドライン)に
定められている「新規上場申請者の企業グループが、経営活動や業績に重
大な影響を与える係争又は紛争等を抱えていないこと。」に該当するもの
15 …であり、かかる紛争の事実は、被告の上場の適格性に影響を及ぼすもの
と思料し、被告の「新規上場」の承認については慎重に再審査されるべき
であると思料します。…

東京地方裁判所令和3年(ワ)第16255号
20 ①東京地方裁判所 民事第47部(知財部)
②原告 株式会社モビリティ 代表取締役 Ai
③被告 株式会社ジィ・シィ企画 代表取締役 Bi
④訴訟金額 金4億9388万円
以上」
25 カ 原告は、本件通知書を受け、岡三証券と協議をし、投資家に迷惑をかけ
ることがないようにすることを優先して、予定された令和3年7月7日の
新規上場を中止した(弁論の全趣旨)。
キ 被告モビリティは、令和3年7月8日、前記エの訴訟を取り下げた(甲
11)。
2 争点
5 (1) 本件特許権侵害についての虚偽告知の有無(争点1)
ア 充足論(争点1-1)
(ア) 構成要件Kの非充足性(争点1-1-1)
(イ) 構成要件Lの非充足性(争点1-1-2)
(ウ) 構成要件Mの非充足性(争点1-1-3)
10 (エ) 構成要件Nの非充足性(争点1-1-4)
イ 無効論(争点1-2)
(ア) 明確性要件違反(争点1-2-1)
(イ) サポート要件違反(争点1-2-2)
(ウ) 実施可能要件違反(争点1-2-3)
15 (エ) 甲27文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如(争点1-2-4)
(オ) 甲32文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如(争点1-2-5)
(カ) 甲29文献を主引用例とする進歩性欠如(争点1-2-6)
(キ) 甲30文献を主引用例とする進歩性欠如(争点1-2-7)
(ク) ソニー株式会社(以下「ソニー」という。)がFeliCaカードの
20 ユーザーに提供した「FeliCaカード ユーザーズマニュアル V
ersion 2.02」と題する書面(甲36。以下「甲36文献」
という。)又は甲36文献に記載された発明の公然実施品(以下「甲3
6製品」という。)を主引用例とする進歩性欠如(争点1-2-8)
ウ 被告らによる虚偽告知の内容(争点1-3)
25 (2) 被告らと原告との間の競争関係の有無(争点2)
(3) 被告らの故意又は過失の有無(争点3)
(4) 被告Aiの悪意又は重過失による任務懈怠の有無(争点4)
(5) 原告の損害発生の有無及び損害額(争点5)
(6) 本訴提起による不法行為の成否(争点6)
(7) 被告らの損害発生の有無及び損害額(争点7)
5 第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1-1-1(構成要件Kの非充足性)について
(原告の主張)
(1) 請求項5に係る本件発明と請求項1、3及び4に係る各発明との関係
本件発明に係る「受信装置」は、「請求項4記載の携帯電話との間で送受
10 信するためのRFIDインターフェースを有し」(構成要件J)という構成
を有するものであり、本件特許の請求項4は請求項3に従属し、請求項3は
請求項1に従属する。そうすると、請求項4に記載の「キャッシュカード、
デビッドカード、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー」等の機
能を搭載した携帯電話の不正取得者の不正利用を防止するためには、請求項
15 1に係る発明の構成に従って、携帯電話と対をなして使用されるRバッジと
の「識別情報」の比較をして、これが一致するとの比較結果が得られた場合
にのみ、被保護情報(電子マネー情報など)へのアクセスを許可して決済を
させることが必要であり、本件発明に係る「受信装置」もそれに対応するべ
きである。
20 例えば、本件明細書には、請求項1に係る発明の実施例として、モバイル
Suica搭載のスマートフォンで自動改札を通過する場合、正当なスマー
トフォン保有者はRバッジを保有しているので、改札の前にスマートフォン
をRバッジに近接させて情報のやり取りをさせて両者の「識別番号」(携帯
電話やRバッジに一意に割り振られる番号)を比較して、これが、アクセス
25 制御手段により、アクセス要求を許可するといった比較結果が得られた場合
にのみ、「被保護情報」である電子マネー情報にアクセスを許可するとして
いる。請求項1に係る上記の実施例の記載に照らすと、本件発明に係る「受
信装置」も同様の効果を有する必要があるといえる。
以上によれば、本件発明に係る「受信装置」は、携帯端末に定期券・乗車
券・クレジットカード・鍵などの機能を内蔵させ、その機能を受信装置で受
5 け取る場合に、まず、携帯端末の使用者が正当な使用者かをRバッジで確認
できるような「受信装置」であるべきと解される。
(2) 「個別情報」の文言解釈
前記(1)の解釈を前提として、本件明細書の「携帯端末10は、図13に
示すように、メモリ30上のデータ格納部34に個別情報340を記憶する。
10 ここでは、個別情報340としてカード情報を記憶している例について説明
する。 (
」 【0088】 、
) 「さらに、個別情報340は、携帯端末10の固体そ
れぞれを識別する識別情報を利用することもできる。 【0097】
」 )等の記
載に照らすと、「個別情報」とは、「カード情報」や「識別情報」、すなわち、
携帯端末に一意に割り振られる情報や、Rバッジを一意に識別できる識別情
15 報を含むものであると解される。
(3) 原告各製品の構成及びあてはめについて
原告各製品は、携帯端末とは別にRバッジを設けて両者間で「識別情報」
のやり取りをする構成、すなわち、「個別情報の発信要求を前記携帯電話に
発信する発信手段」を全く備えていない。
20 (4) 小括
よって、原告各製品は、構成要件Kを充足しない。
(被告らの主張)
本件明細書には、「携帯端末10は、図13に示すように、メモリ30上の
データ格納部34に個別情報340を記憶する。ここでは、個別情報340
25 としてカード情報を記憶している例について説明する。(
」【0088】、
)「個別
情報340には、複数のカード情報(例えば、図13のA、B、C)を記憶す
ることも可能でその中から利用するカードを選択する機能を備える。 (
」 【00
89】、
)「以下、個別情報340をカード情報と置き換えて説明する。 (
」【00
90】)などと記載されていることに照らすと、「個別情報」が被告のいう「R
バッジを一意に識別できる識別情報」に限定されないことは明らかである。
5 原告各製品は、携帯端末に製造ID(IDm)を要求するから、「個別情報
の発信要求を前記携帯電話に発信する発信手段」を備えており、構成要件Kを
充足する。
2 争点1-1-2(構成要件Lの非充足性)について
(原告の主張)
10 (1) 「判断手段」の意義
前記1(原告の主張)(1)の本件発明に係る「受信装置」の解釈並びに同
「受信装置」が構成要件L及びMの構成を備えることが必要であることに照
らすと、本件発明の「受信装置」は、個別情報であるか否かの「判断」を行
う手段を有するものであると解される。また、当然の前提として、「前記判
15 断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別情報であると判断」するた
めには、「受信装置」が「個別情報」をあらかじめ受信装置内に保有してい
ることが必須である。
そして、前記1(原告の主張)(2)のとおり、「個別情報」とは、携帯端末
に一意に割り振られる情報又はRバッジを一意に識別できる識別情報である
20 と解される。
(2) 原告各製品の構成及びあてはめについて
原告各製品は、「個別情報」に該当する携帯端末に一意に割り振られる情
報又はRバッジを一意に識別できる識別情報をあらかじめ保有していないた
め、「前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否か
25 を判断する」ことはできない。
(3) 小括
よって、原告各製品は、構成要件Lを充足しない。
(被告らの主張)
原告各製品は、携帯端末に製造ID(IDm)を要求し、これを受信して、
製造ID(IDm)の製造者コードで個別情報(原告各製品に店員が設定した、
5 客に伝えられた電子マネー・クレジットカード等)が判断できなければ、その
後の処理を継続し、得られた情報が、要求した個別情報かを判断する。
したがって、原告各製品は、「前記携帯電話から受信した個別情報が要求し
た個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し」ているといえ、構成要
件Lを充足する。
10 3 争点1-1-3(構成要件Mの非充足性)について
(原告の主張)
前記2(原告の主張)のとおり、原告各製品は、構成要件Lの「前記携帯電
話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する」判断手
段を備えておらず、「前記判断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別
15 情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行う」こともで
きない。
よって、原告各製品は、構成要件Mを充足しない。
(被告らの主張)
前記1(被告らの主張)のとおり、原告各製品は、携帯端末から得られた情
20 報が要求した個別情報かを判断し、要求した個別情報であれば処理を継続する
から、「前記判断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別情報であると
判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行う」といえる。
したがって、原告各製品は構成要件Mを充足する。
4 争点1-1-4(構成要件Nの非充足性)について
25 (原告の主張)
原告各製品は、構成要件KないしMをいずれも充足しないから、構成要件K
ないしMの特徴を備える「受信装置」とはいえない。
よって、原告各製品は、構成要件Nを充足しない。
(被告らの主張)
原告各製品は、構成要件JないしMの特徴を備える「受信装置」であるから、
5 構成要件Nを充足する。
5 争点1-2-1(明確性要件違反)について
(原告の主張)
本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、明確性要件(特許法36条6項2
号)に違反し、本件発明に係る本件特許は、特許無効審判により無効とされる
10 べきものと認められ(同法123条1項4号)、特許法104条の3第1項に
より本件発明に係る本件特許権の行使は認められない。
すなわち、本件発明に係る特許請求の範囲には、「前記判断手段で受信した
判断情報が、前記要求した個別情報であると判断されたときに、」と記載され
ているところ、「受信した判断情報」の意義について本件明細書には何らの説
15 明もなく、その意義が不明である。
また、「判断情報」自体の意義も不明であることから、「前記判断手段で受信
した判断情報…判断されたときに」との記載が、「前記判断手段で受信した」
と読むのか、「前記判断手段で判断されたとき」と読むのかを一義的に理解す
ることができない。
20 したがって、本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利
益を及ぼすほどに不明確であるから、明確性要件に違反する。
(被告らの主張)
争う。
6 争点1-2-2(サポート要件違反)について
25 (原告の主張)
(1) 本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件(特許法36条6
項1号)に違反し、本件発明に係る本件特許は、特許無効審判により無効
とされるべきものと認められ(同法123条1項4号)、特許法104条の
3第1項により本件発明に係る本件特許権の行使は認められない。
すなわち、前記5(原告の主張)のとおり、本件明細書には「受信した判
5 断情報」 について一切開示がないから、そもそも、本件発明は発明の詳細
な説明に記載された発明ではない。
また、本件明細書の「本発明は…その目的とするところは、個人情報や金
銭的価値のある情報を統合して管理する場合に当該情報の第三者による不正
使用を確実に防止するための情報保護システムを提供することにある。」
10 (【0009】)及び「本発明の他の目的は、かかる情報保護システムを実現
するための情報保護方法を提供することにある。(
」【0010】)という記載
に照らすと、本件発明が解決しようとする課題は、個人情報や金銭的価値の
ある情報を統合して管理する場合に当該情報の第三者による不正使用を確実
に防止する点にあるものと解される。しかし、前記5(原告の主張)のとお
15 り、本件発明における「受信した判断情報」の意義や、「前記判断手段で受
信した判断情報が…判断されたとき」の意義を理解することができないから、
当業者は、本件発明により上記課題を解決できると認識することができない。
したがって、本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件に違
反する。
20 (2) 仮に、「受信した判断情報」とは、「受信した個別情報」であると理解で
き、「前記判断手段で受信した判断情報が…判断されたとき」とは、「前記
判断手段で受信した個別情報が前記要求した個別情報であると判断された
とき」を意味すると理解できるとしても、本件発明に係る特許請求の範囲
の記載は、サポート要件に違反する。
25 すなわち、本件発明はサブコンビネーション発明であるところ、構成要件
Jの「請求項4記載の」は、本件発明の受信装置の構造及び機能を何ら特定
していないから、本件発明の要旨は、「請求項4記載の」の部分を除外して
特定されるべきであり、その結果、本件発明に係る受信装置は、携帯端末に
個別情報を要求し、受信した個別情報が要求した個別情報であると判断され
た場合に前記携帯端末と処理を行うだけのものとなる。そうすると、当業者
5 は、本件発明により「第三者による不正使用を確実に防止する」との課題を
解決できると認識することができない。
したがって、本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件に違
反する。
(被告らの主張)
10 構成要件Jの「請求項4記載の」は、本件発明の受信装置の構造及び機能
を特定しており、当業者は、本件発明により「第三者による不正使用を確実に
防止する」との課題を解決できると認識することができる。
したがって、原告の主張は理由がない。
7 争点1-2-3(実施可能要件違反)について
15 (原告の主張)
本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、実施可能要件(特許法36条4項
1号)に違反し、本件発明に係る本件特許は、特許無効審判により無効とされ
るべきものと認められ(同法123条1項4号)、特許法104条の3第1項
により本件発明に係る本件特許権の行使は認められない。
20 すなわち、前記6(原告の主張)(1)のとおり、本件明細書には「受信した
判断情報」について一切開示がなく、その意義が不明であり、これにより、
「前記判断手段で受信した判断情報が…判断されたとき」の意義も不明となる
から、当業者は、本件発明に係る受信装置を作ることができない。
また、前記6(原告の主張)のとおり、仮に、「受信した判断情報」とは、
25 「受信した個別情報」であると理解でき、「前記判断手段で受信した判断情報
が…判断されたとき」とは、「前記判断手段で受信した個別情報が前記要求し
た個別情報であると判断されたとき」を意味すると理解できたとしても、当業
者は、本件発明により「第三者による不正使用を確実に防止する」との課題を
解決できると認識することができないから、本件発明の課題を解決するために
は、少なくとも過度の試行錯誤を必要とする。
5 したがって、本件明細書の記載は実施可能要件に違反するといえる。
(被告らの主張)
争う。
8 争点1-2-4(甲27文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)につ
いて
10 (原告の主張)
本件発明は、次のとおり、甲27文献に記載された発明と同一であるか、同
発明に基づき本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ
って、特許法29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができな
いものである。したがって、本件発明に係る本件特許は、特許無効審判により
15 無効とされるべきものと認められ(同法123条1項2号)、特許法104条
の3第1項により本件発明に係る本件特許権の行使は認められない。
(1) 本件発明の要旨認定について
本件発明は、二つ以上の装置を組み合わせて成る全体装置の発明に対し、
それに組み合わされる情報処理装置(受信装置)の発明であるから、サブコ
20 ンビネーション発明と解される。
仮に、構成要件Jの「請求項4記載の」という事項が、本件発明の特許請
求の範囲の請求項中に記載された「他の装置」(携帯電話)に関する事項で
あり、当該「他の装置」(携帯電話)のみを特定する事項であって、当該請
求項に係る発明(受信装置)の構造、機能等を何ら特定してないとすれば、
25 本件発明については、構成要件Jの「請求項4記載の」という事項を除外し
て発明の要旨を認定すべきである。
(2) 甲27文献に記載された発明の認定について
ア 甲27文献には次の構成を有する発明(以下「甲27発明」という。)
が記載されていると認められる(以下、甲27発明の構成を「甲27j」
などという。。

5 甲27j 携帯電話端末1との間で送受信するための無線通信部3aを
有し、
甲27k 駅識別番号及び端末識別番号を要求するパターン波形を前記
携帯電話端末1に発信する発信手段と、
甲27l 前記携帯電話端末1から受信した駅識別番号及び端末識別番
10 号が要求した駅識別番号及び端末識別番号であるか否かを検
査する識別番号検出部3bとを有し、
甲27m 前記識別番号検出部3bで受信した駅識別番号及び端末識別
番号が、前記要求した駅識別番号及び端末識別番号であると
判断されたときに、前記携帯電話端末1との間で精算した運
15 賃を送信するなどの処理を行う
甲27n ことを特徴とする出口機3
イ 甲27文献には、甲27発明の他、次の構成を有する発明(以下「甲2
7′発明」という。)も記載されている(以下、甲27′発明の構成を
「甲27′j」などという。。

20 甲27′j 携帯電話端末1との間で送受信するための無線通信部3
aを有する
甲27′n ことを特徴とする出口機3
(3) 本件発明との対比について
ア 構成要件Jについて
25 甲27j及び甲27′jの「携帯電話端末1」は、構成要件Jの「携帯
電話」に相当する。
また、本件明細書において、「RFID」は、「非接触自動識別システム」
と表現されていること(【0025】 、
) 「RFIDにはさまざまな変調方式
や周波数、通信プロトコルを利用したものがあるが、本発明は特定の方式
に限定されるものではなく、どのような方式を利用してもよい。 (
」 【00
5 27】)と記載されていることに照らすと、構成要件Jの「RFID」と
は、少なくとも非接触自動識別システムを含むものといえる。
他方、甲27文献の記載(【0022】ないし【0025】等)によれ
ば、甲27発明の「出口機3」は、駅識別番号及び端末識別番号などを非
接触で自動的に識別するシステムであるから、「RFID」を構成するも
10 のであり、「無線通信部3a」は、そのインターフェース(機器や装置が
他の機器や装置などと交信し、制御を行う接続部分)であるから、構成要
件Jの「RFIDインターフェース」に相当する。
よって、本件発明と甲27発明及び甲27′発明とは、構成要件Jに係
る構成を備える点において一致する。
15 イ 構成要件KないしMについて
本件明細書の記載(【0086】ないし【0099】)によれば、構成要
件Kの「個別情報」に特段の限定はないものと解される。
したがって、甲27発明の「駅識別番号及び端末識別番号を要求するパ
ターン波形」(甲27k) 「駅識別番号及び端末識別番号」
、 (甲27kな
20 いし甲27m)及び「識別番号検出部3b」(甲27l)は、それぞれ、
本件発明の「個別情報の発信要求」(構成要件K) 「個別情報」
、 (判断情
報)(構成要件KないしM)及び「判断手段」(構成要件L)に相当する
ことが明らかである。
よって、本件発明と甲27発明とは、構成要件KないしMに係る構成を
25 備える点において一致する。
ウ 構成要件Nについて
甲27発明及び甲27′発明の「出口機3」は、構成要件Nの「受信
装置」に相当するから、本件発明と甲27発明及び甲27′発明とは、
構成要件Nに係る構成を備える点において一致する。
(4) 一致点及び相違点について
5 本件発明と甲27発明及び甲27′発明を対比すると、甲27発明は、
本件発明の各構成を備えるから本件発明と同一であり、甲27′発明は、構
成要件J及びNの構成を備える点において本件発明の構成と一致するが、構
成要件KないしMの構成を備えない点において本件発明の構成と相違する。
(5) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについて
10 ア 甲27発明
仮に、甲27発明と本件発明との間に何らかの相違点があるとしても、
当業者が適宜設計することができる程度のものであって、本件発明は、甲
27発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、進歩性
が欠如している。
15 イ 甲27′発明
当業者は、甲27′発明に、甲29文献に記載された技術(以下「甲2
9技術」という。)を組み合わせることによって、本件発明を容易に発明
することができる(以下、甲29技術の構成を「甲29″j」などとい
う。。

20 (ア) 甲29文献の記載
甲29文献には、次の甲29技術が記載されている。
甲29″j 通信対象との間で送受信するためのアンテナ401及び
送受信回路402を有し、
甲29″k 乱数Aを要求する乱数aを前記通信対象に発信する発信
25 手段と、
甲29″l 前記通信対象から受信した乱数Aが要求した乱数Aであ
るか否かを判断する判断手段とを有し、
甲29″m 前記判断手段で受信した乱数Aが、前記要求した乱数A
であると判断されたときに、前記通信対象との間で乱数
Bを返信するなどの処理を行う
5 甲29″n ことを特徴とするリーダ/ライタ400
甲29技術のリーダ/ライタ400は、所定のレスポンス信号や乱数
を非接触で自動的に識別するシステムであるから、本件発明の「RFI
D」を構成するものであり、甲29″jの「アンテナ401及び送受信
回路402」はそのインターフェースであるといえる。
10 そうすると、甲29技術の「アンテナ401及び送受信回路402」、
「乱数Aを要求する乱数a」 「乱数A」及び「リーダ/ライタ400」

は、それぞれ、本件発明の「RFIDインターフェース」 「個別情報の

発信要求」 「個別情報」
、 (判断情報)及び「受信装置」に相当すること
が明らかであり、本件発明と、少なくとも構成要件K、L及びMの構成
15 の点で一致している。
(イ) 容易想到性
甲27文献に触れた当業者は、周知技術であるセキュリティの観点か
らの甲29技術に開示された相互認証処理の導入を当然に動機付けられ
るから、甲27′発明に、同発明と同一技術分野にある甲29技術を適
20 用し、本件発明を容易に発明することができる。
(6) 小括
よって、本件発明の構成は甲27発明の構成と同一であって、本件発明は
新規性を欠いている。仮に、本件発明と甲27発明との間に相違点が認め
られるとしても、その相違点は設計事項にすぎないから、当業者にとって、
25 甲27発明に基づいて本件発明を発明することは容易であり、また、当業
者にとって甲27′発明に甲29技術を組み合わせることにより本件発明
を発明することは容易であるから、本件発明は進歩性を欠いている。
(被告らの主張)
(1) 「請求項4記載の」との文言について
原告は、本件発明はサブコンビネーション発明であるとして、構成要件J
5 の「請求項4記載の」との文言は、本件発明の受信装置の構造及び機能を何
ら特定していないと主張するが、「請求項4記載の」との文言は、本件発明
の受信装置の構造及び機能を特定している。
したがって、請求項4による特定を度外視した原告の無効主張に理由はな
い。
10 (2) 「RFIDインターフェース」について
本件発明は、「RFIDインターフェースを利用した情報保護技術に関す
る」【0001】
( )ものである。
本件明細書において、「RFID」とは、「Radio Frequenc
y Identifycation」の略称であって、無線通信に含まれる
15 と定義されているから(【0025】 、
)「RFID」は、無線通信の範疇の中
の特定の一部であることが明示されているといえ、単なる「無線通信」とは
異なるものである。
他方で、甲27文献の「無線通信部」は、構成要件Jの「RFIDインタ
ーフェース」に関する技術内容に関して何ら開示も示唆もしていない。
20 したがって、甲27発明及び甲27′発明は、「RFIDインターフェー
ス」の構成を有していない。
(3) 「個別情報」について
本件明細書の「…個別情報340としてカード情報を記憶している例につ
いて説明する。 (
」【0088】 、
)「個別情報340には、複数のカード情報…
25 を記憶することも可能で…」 【0089】
( )及び「個別情報340をカード
情報と置き換えて説明する。 (
」 【0090】)との記載に照らすと、構成要件
K、L及びMの「個別情報」とは、具体的には「カード情報」であるといえ
る。これに対し、甲27発明の「駅識別番号及び端末識別番号」すなわち
「入口機を通過するたびに書換えられる駅識別番号」及び「端末識別番号」
は、カード情報ではないから、構成要件K、L及びMの「個別情報」に該当
5 しない。
(4) 「判断手段」について
構成要件Lの「受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断
する判断手段」は、要求した特定のデータと他のデータを比較して一致して
いるかどうかを判断する手段である必要がある。
10 しかし、甲27発明において、「出口機3」の「識別番号検出部3b」は、
単に、「駅識別番号及び端末識別番号」を検出しているだけであり、受信し
た「駅識別番号及び端末識別番号」が要求した「駅識別番号及び端末識別番
号」であるか否かを比較して一致しているかを判断してはいない。
したがって、甲27発明の「識別番号検出部3b」は、「判断手段」(構成
15 要件L)に該当しない。
(5) 甲27′発明と甲29技術との組合せについて
甲29技術は、乱数発生に関する発明であり、甲27′発明と技術分野
が異なる。
また、甲27′発明及び甲29技術には、本件発明の「個別情報」に相
20 当するものも存在しない。
したがって、甲27′発明に甲29技術を組み合わせても、本件発明と
同一の構成にはならず、また、技術分野が異なるから組合せの動機付けも
ない。
(6) 小括
25 以上によれば、本件発明には新規性又は進歩性が欠如しているとの原告の
主張に理由はない。
9 争点1-2-5(甲32文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)につ
いて
(原告の主張)
本件発明は、次のとおり、甲32文献に記載された発明と同一であるか、同
5 発明に基づき、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたもので
あって、特許法29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができ
ないものである。したがって、本件特許は、特許無効審判により無効とされる
べきものと認められ(同法123条1項2号)、特許法104条の3第1項に
より本件特許権の行使は認められない。
10 (1) 甲32文献に記載された発明の認定について
ア 甲32文献には次の構成を有する発明(以下「甲32発明」という。)
が記載されていると認められる(以下、甲32発明の構成を「甲32j」
などという。。

甲32j 携帯通信端末11との間で送受信するための無線送受信部
15 132を有し、
甲32k 正当性のあるチケットデータの発信要求を前記携帯通信端末
11に発信する発信手段と、
甲32l 前記携帯通信端末11から受信したチケットデータが正当性
のあるチケットデータであるか否かを判断する判断手段とを
20 有し、
甲32m 前記判断手段で受信したチケットデータが、正当性のあるチ
ケットデータであると判断されたときに、前記携帯通信端末
11との間で「確認済みチケットデータ」を送信するなどの
処理を行う
25 甲32n ことを特徴とする自動改札機13
イ 甲32文献には、次の構成を有する発明(以下「甲32′発明」とい
う。)も記載されている(以下、甲32′発明の構成を「甲32′j」な
どという。。

甲32′j 携帯通信端末11との間で送受信するための無線送受信部
132を有する
5 甲32′n ことを特徴とする自動改札機13
(2) 本件発明との対比について
ア 構成要件Jについて
甲32j及び甲32′jの「携帯通信端末11」は、電話番号にダイヤ
ルインすることで通話料金等が課金されるものであるから、構成要件Jの
10 「携帯電話」に相当する。
また、前記8(原告の主張)(3)ア記載のとおり、構成要件Jの「RF
ID」とは、少なくとも非接触自動識別システムを含むものといえる。そ
して、「自動改札機13」(甲32n及び甲32′n)は、チケットデータ
を非接触で自動的に識別するシステムであるから、「RFID」に相当す
15 るものであり、「無線送受信部132」(甲32j及び甲32′j)は、そ
のインターフェースであるから、構成要件Jの「RFIDインターフェー
ス」に相当する。
イ 構成要件KないしMについて
前記8(原告の主張)(3)イ記載のとおり、構成要件Kの「個別情報」
20 の内容に特段の限定はないものと解される。したがって、甲32発明の
「チケットデータ」(甲32kないし甲32m)及び「正当性のあるチケ
ットデータ」(甲32l)は、それぞれ、本件発明の「個別情報」(判断情
報)(構成要件KないしM)及び「要求した個別情報」(構成要件L)に相
当し、「前記携帯通信端末11から受信したチケットデータが正当性のあ
25 るチケットデータであるか否かを判断する判断手段」(甲32l)は、「判
断手段」(構成要件L)に相当する。
ウ 構成要件Nについて
甲32発明及び甲32′発明の「自動改札機13」(甲32n及び甲3
2′n)は、構成要件Nの「受信装置」に相当する。
(3) 一致点及び相違点について
5 本件発明と甲32発明及び甲32′発明を対比すると、甲32発明は、
本件発明の各構成を備えるから本件発明と同一であり、甲32′発明は、
構成要件J及びNの構成を備える点において本件発明の構成と一致するが、
構成要件KないしMの構成を備えない点において本件発明の構成と相違す
る。
10 (4) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについ

ア 甲32発明
仮に、甲32発明が、単にチケットデータを要求するものであって、正
当性のあるチケットデータを要求するものではないために、甲32発明の
15 「正当性のあるチケットデータ」が本件発明の「要求した個別情報」に相
当せず、甲32発明の「チケットデータ」が本件発明の「要求した個別情
報」に相当する結果、本件発明が「要求した個別情報であるか否かを判断
する判断手段とを有し」 「…前記要求した個別情報であると判断されたと

きに、前記携帯電話との間で処理を行う」ものであるのに対して、甲32
20 発明は、「正当性のあるチケットデータであるか否かを判断する判断手段
とを有し」 「…正当性のあるチケットデータであると判断されたときに、

前記携帯通信端末11との間で…処理を行う」点で、両者が形式的に相違
するとしても、これは実質的な相違点ではないか、当業者が適宜設計する
事項にすぎない。
25 すなわち、甲32発明では、「正当性のあるチケットデータであるか否
かを判断」するのであるから、かかる判断において携帯通信端末11から
受信したものがチケットデータであるか否かの判断も行われているといえ
る。したがって、甲32発明において、自動改札機13が、単に「チケッ
トデータ」を要求するにすぎないとしても、携帯通信端末11から受信し
たものが「チケットデータ」であるか否かを判断しているといえるし、そ
5 のように解すことができないとしても、「正当性のあるチケットデータで
あるか否かを判断」する前提として、そもそも、「チケットデータである
か否かを判断する」構成を採用することは、当業者が適宜設計する事項に
すぎない。
イ 甲32′発明
10 甲32′発明と本件発明は、構成要件KないしMの点で相違するが、当
業者は、甲32′発明に、甲29技術を組み合わせることによって、本件
発明を容易に発明することができる。
すなわち、甲32文献に触れた当業者は、周知技術であるセキュリティ
の観点からの認証処理の導入を当然に動機付けられ、基本的構成が同一で
15 あり、同一技術分野にある甲29技術を適用し、本件発明を容易に発明す
ることができる。
(5) 小括
よって、本件発明の構成は甲32発明の構成と同一であって、本件発明は
新規性を欠いている。仮に、本件発明と甲32発明との間に相違点が認めら
20 れるとしても、実質的な相違点とはならないか、設計事項にすぎないから、
当業者にとって、甲32発明から本件発明を発明することは容易であり、ま
た、当業者にとって、甲32′発明に甲29技術を組み合わせることにより
本件発明を発明することは容易であるから、本件発明は進歩性を欠いている。
(被告らの主張)
25 (1) 「請求項4記載の」との文言について
前記8(被告らの主張)(1)のとおり、「請求項4記載の」との文言は、本
件発明の受信装置の構造及び機能を特定している。
したがって、請求項4による特定を度外視した原告の無効主張に理由はな
い。
(2) 「RFIDインターフェース」について
5 前記8(被告らの主張)(2)のとおり、「RFID」は、無線通信の中の特
定の一部であることが明示されているといえ、単なる「無線通信」とは異な
るものである。
甲32発明及び甲32′発明の携帯通信端末11と自動改札機13は、携
帯電話と基地局との間の当時における一般的な通信方式に使用する電波の強
10 度を変えて(弱い電波)で行っているにすぎず、その通信は、携帯電話と基
地局との間の当時における一般的な通信方式であって、単なる「無線通信」
といえるから、構成要件Jの「RFIDインターフェース」の構成を有して
いない。
(3) 「判断手段」について
15 前記8(被告らの主張)(4)のとおり、構成要件Lの「受信した個別情報
が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段」は、要求した特定の
データと他のデータを比較して一致しているかどうかを判断する手段である
必要があるから、特定の利用者の1つのチケットデータの発信を要求し、受
信したチケットデータが要求した特定の1つのチケットデータであるか否か
20 を判断するものである。
しかし、甲32発明は、特定の利用者の特定の1つのチケットデータの発
信を要求するものではなく、単にチケットであることを示すチケットデータ
の送信を要求するものである。
また、甲32文献には、受信したチケットデータが要求した特定の1つの
25 チケットデータであるか否かを判断する判断手段については、何ら開示も示
唆もしていない。
よって、甲32発明は、構成要件Lの「受信した個別情報が要求した個別
情報であるか否かを判断する判断手段」の構成を備えていない。
(4) 甲32′発明と甲29技術との組合せについて
前記8(被告らの主張)(5)のとおり、甲29技術は、乱数発生に関する
5 発明であり、甲32′発明と技術分野が異なる。また、甲32′発明及び
甲29技術には、本件発明の「個別情報」に相当するものもない。
したがって、甲32′発明に甲29技術を組み合わせても、本件発明と
同一の構成にはならず、また、技術分野が異なるから組合せの動機付けも
ない。
10 (5) 小括
以上によれば、本件発明には新規性又は進歩性が欠如しているとの原告の
主張に理由はない。
10 争点1-2-6(甲29文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(原告の主張)
15 本件発明は、次のとおり、甲29文献に記載された発明に基づき、本件優先
日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2
項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件発
明に係る本件特許は、特許無効審判により無効とされるべきものと認められ
(同法123条1項2号)、特許法104条の3第1項により本件発明に係る
20 本件特許権の行使は認められない。
(1) 甲29文献に記載された発明の認定について
ア 甲29文献には次の構成を有する発明(以下「甲29発明」という。)
が記載されていると認められる(以下、甲29発明の構成を「甲29j」
などという。。

25 甲29j 非接触ICカード100との間で送受信するためのアンテ
ナ401及び送受信回路402を有し、
甲29k 所定のレスポンス信号を要求するポーリング信号を前記非
接触ICカード100に発信する発信手段と、
甲29l 前記非接触ICカード100から受信した所定のレスポン
ス信号が要求した所定のレスポンス信号であるか否かを判
5 断する判断手段とを有し、
甲29m 前記判断手段で受信した所定のレスポンス信号が、前記要
求した所定のレスポンス信号であると判断されたときに、
前記非接触ICカード100との間で相互認証の処理を行

10 甲29n ことを特徴とするリーダ/ライタ400
イ 甲29文献には、次の構成を有する発明(以下「甲29′発明」とい
う。)も記載されている(以下、甲29′発明の構成を「甲29′j」な
どという。。

甲29′j 非接触ICカード100との間で送受信するためのアンテ
15 ナ401及び送受信回路402を有し、
甲29′k 乱数Aを要求する乱数aを前記非接触ICカード100に
発信する発信手段と、
甲29′l 前記非接触ICカード100から受信した乱数Aが要求し
た乱数Aであるか否かを判断する判断手段とを有し、
20 甲29′m 前記判断手段で受信した乱数Aが、前記要求した乱数Aで
あると判断されたときに、前記非接触ICカード100と
の間で乱数Bを返信するなどの処理を行う
甲29′n ことを特徴とするリーダ/ライタ400
(2) 本件発明との対比について
25 ア 甲29発明
甲29発明のリーダ/ライタ400は、所定のレスポンス信号や乱数を
非接触で自動的に識別するシステムであるから、本件発明の「RFID」
を構成するものであり、甲29jの「アンテナ401及び送受信回路40
2」はそのインターフェースであるといえる。
そうすると、甲29発明の「アンテナ401及び送受信回路402」
5 (甲29j) 「所定のレスポンス信号を要求するポーリング信号」
、 (甲2
9k) 「所定のレスポンス信号」
、 (甲29kないし甲29m)及び「リー
ダ/ライタ400」(甲29n)は、それぞれ、本件発明の「RFIDイ
ンターフェース」(構成要件J) 「個別情報の発信要求」
、 (構成要件K)、
「個別情報」(判断情報)(構成要件KないしM)及び「受信装置」(構成
10 要件N)に相当する。
イ 甲29′発明
甲29′発明の「アンテナ401及び送受信回路402」 「乱数Aを要

求する乱数a」 「乱数A」及び「リーダ/ライタ400」は、それぞれ、

本件発明の「RFIDインターフェース」(構成要件J) 「個別情報の発

15 信要求」(構成要件K) 「個別情報」
、 (判断情報)(構成要件KないしM)
及び「受信装置」(構成要件N)に相当することが明らかである。
(3) 一致点及び相違点について
本件発明と甲29発明及び甲29′発明とを対比すると、本件発明では、
受信装置と送受信等を行うのが「携帯電話」であるのに対して、甲29発明
20 及び甲29′発明では「非接触ICカード100」である点で両者は相違す
るが、前記(2)のとおり、その余の構成は一致する。
(4) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについ

ア 周知技術
25 次の文献並びに甲27文献及び甲32文献の記載内容に照らすと、本件
優先日当時において、受信装置に相当する機器が非接触ICカードと非接
触の送受信を行う従来技術に代えて、受信装置に相当する機器が携帯電話
と非接触の送受信を行うものとすることが広く行われており、受信装置を
携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースを備えるも
のとすることが周知技術になっていることが明らかである。
5 (ア) 特開平9-81811号公報(平成9年3月28日公開。以下「甲
33文献」という。)
甲33文献には、ICカードと入場の可否を判断する機器が接触又
は非接触(無線交信)により送受信を行う従来技術とともに、携帯電
話に相当する携帯電話機と受信装置に相当する端末装置が無線で送受
10 信を行う構成並びに受信装置に相当する端末装置が携帯電話との間で
送受信するためのRFIDインターフェースに相当する近距離送受信
制御部及び近距離アンテナを備える構成が開示されている。
(イ) 特開2001-52213号公報(平成13年2月23日公開。以下
「甲34文献」という。)
15 甲34文献には、ICカードと自動改札機とが非接触(無線通信)
により送受信を行う従来技術とともに、携帯電話に相当する携帯電話
器と受信装置に相当する非接触式自動改札機が非接触で送受信を行う
構成が開示されており、受信装置に相当する非接触式自動改札機が携
帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースに相当す
20 るトランスミッタ及びアンテナを備えることが開示されている。
(ウ) 実用新案登録第3064207号公報(平成12年1月7日公開。
以下「甲35文献」という。)
甲35文献には、非接触型ICカードと改札システムとが非接触に
より送受信を行う従来技術が実質的に開示されるとともに、非接触型
25 ICカードに代えて、非接触型ICチップを備えた携帯電話と受信装
置に相当する改札口等のゲート側とがアンテナを介して非接触で送受
信を行う構成が開示されており、受信装置に相当する改札口等のゲー
ト側が携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェース
に相当するアンテナ等を備えることが実質的に開示されている。
イ 容易想到性
5 甲29文献に触れた当業者は、前記アの周知技術に動機付けられ、甲2
9発明又は甲29′発明に当該周知技術を適用するか、甲27、甲32、
甲33、甲34又は甲35の各文献に開示された構成を適用することで、
本件発明を容易に想到することができる。
(5) 小括
10 よって、当業者にとって、甲29発明又は甲29′発明に周知技術を組み
合わせることにより、本件発明を発明することは容易であるといえ、本件発
明は進歩性を欠いている。
(被告らの主張)
(1) 「請求項4記載の」との文言について
15 前記8(被告らの主張)(1)のとおり、「請求項4記載の」との文言は、本
件発明の受信装置の構造及び機能を特定している。
したがって、請求項4による特定を度外視した原告の無効主張に理由はな
い。
(2) 「RFIDインターフェース」について
20 原告は、甲29発明のリーダ/ライタ400は、所定のレスポンス信号や
乱数を非接触で自動的に識別するシステムであるなどと主張するが、甲29
文献には、甲29発明のリーダ/ライタ400が所定のレスポンス信号や乱
数を非接触で「自動的に識別」するとの記載がない。
したがって、原告の主張は前提を誤るものであり、甲29発明及び甲2
25 9′発明は、「RFIDインターフェース」の構成を有していない。
(3) 「個別情報」について
構成要件KないしMの「個別情報」とは、具体的には「カード情報」であ
るところ、甲29文献には、「レスポンス信号」は、乱数生成回路により生
成される「認証用乱数b」であり、使用する毎に常に変動する乱数であると
記載されており、構成要件KないしMの「個別情報」とは明らかに異なって
5 いる。
したがって、甲29発明及び甲29′発明は、構成要件KないしMの「個
別情報」の構成を有していない。
(4) 甲29発明又は甲29′発明と周知技術との組合せについて
甲27、甲32ないし甲35各文献は、いずれも、「RFIDインターフ
10 ェース」の構成を開示していない。
したがって、受信装置が携帯電話との間で送受信するための「RFID
インターフェース」を備えることが、本件優先日前に、周知技術となって
いたとはいえない。
(5) 小括
15 以上によれば、本件発明には進歩性が欠如しているとの原告の主張に理由
はない。
11 争点1-2-7(甲30文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(原告の主張)
本件発明は、次のとおり、甲30文献に記載された発明に基づき、本件優先
20 日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2
項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件発
明に係る本件特許は、特許無効審判により無効とされるべきものと認められ
(同法123条1項2号)、特許法104条の3第1項により本件発明に係る
本件特許権の行使は認められない。
25 (1) 甲30文献に記載された発明の認定について
ア 甲30文献には次の構成を有する発明(以下「甲30発明」という。)
が記載されていると認められる(以下、甲30発明の構成を「甲30j」
などという。。

甲30j B型カードとの間で送受信するためのRFIDインターフ
ェースを有し、
5 甲30k ATQBを要求するREQBコマンドを前記B型カードに
発信する発信手段と、
甲30l 前記B型カードから受信したATQBを誤りなく受信した
か否かを判断する判断手段とを有し、
甲30m 前記判断手段で受信したATQBを誤りなく受信したと判
10 断されたときに、前記B型カードとの間でATTRIBコ
マンドを送信して活性状態にするなどの処理を行う
甲30n ことを特徴とするリーダ
イ 甲30文献には、次の構成を有する発明(以下「甲30′発明」とい
う。)も記載されている(以下、甲30′発明の構成を「甲30′j」な
15 どという。。

甲30′j B型カードとの間で送受信するためのRFIDインターフ
ェースを有する
甲30′n ことを特徴とするリーダ
(2) 本件発明との対比について
20 ア 甲30発明
甲30発明の「RFIDインターフェース」(甲30j)は、本件発明
の「RFIDインターフェース」(構成要件J)に相当する。
また、仮に、本件発明の「判断手段」が、「受信した個別情報が要求し
た個別情報であるか否かを判断する」手段であると広く解釈するのであれ
25 ば、甲30発明の「ATQBを要求するREQBコマンド」(甲30k)、
「ATQB」(甲30kないし甲30m) 「受信したATQBを誤りなく

受信したか否かを判断する判断手段」(甲30l) 「前記判断手段で受信

したATQBを誤りなく受信したと判断されたときに」(甲30m)及び
「リーダ」(甲30n)は、それぞれ、本件発明の「個別情報の発信要求」
(構成要件K)「個別情報」
、 (判断情報)(構成要件KないしM)「受信し

5 た個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段」(構成
要件L)「前記判断手段で受信した判断情報が、前記要求した個別情報で

あると判断されたとき」(構成要件M)及び「受信装置」(構成要件N)に
相当する。
イ 甲30′発明
10 甲30′発明の「RFIDインターフェース」(甲30′j)は、本件
発明の「RFIDインターフェース」(構成要件J)に相当する。
また、甲30′発明の「リーダ」(甲30′n)は、「受信装置」(構成
要件N)に相当する。
(3) 一致点及び相違点について
15 本件発明と甲30発明及び甲30′発明を対比すると、本件発明では受信
装置と送受信等を行うのが「携帯電話」であるのに対して、甲30発明では
「B型カード」である点で、両者は相違するが、その余の構成は一致する。
また、本件発明では受信装置と送受信等を行うのが「携帯電話」であるの
に対して、甲30′発明では「B型カード」である点及び構成要件Lないし
20 Nの構成を備えない点において、両者は相違するが、その余の構成は一致す
る。
(4) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについ

甲30文献に触れた当業者は、前記10(原告の主張)(4)アの周知技術
25 に動機付けられ、甲30発明又は甲30′発明に当該周知技術を適用する
か、甲27、甲32、甲33、甲34又は甲35の各文献に開示された構
成を適用することで、本件発明を容易に想到することができる。
(5) 小括
よって、当業者にとって、甲30発明又は甲30′発明に周知技術を組み
合わせることにより、本件発明を発明することは容易であるといえ、本件発
5 明は進歩性を欠いている。
(被告らの主張)
(1) 「判断手段」について
被告は、甲30発明の、受信装置による受信したATQBを誤りなく受信
したとの判断(甲30l)が、構成要件Lの「受信した個別情報が要求した
10 個別情報であるか否かを判断する判断手段」に相当すると主張する。
しかし、甲30文献には、上記判断の判断基準についての開示も示唆もな
いから、「判断手段」(構成要件L)の構成を有しているとはいえない。
(2) 小括
以上によれば、甲30発明に原告主張の周知技術を適用しても、本件発明
15 と同一の構成に至ることはできないから、本件発明には進歩性が欠如してい
るとの原告の主張に理由はない。
12 争点1-2-8(甲36文献又は甲36製品を主引用例とする進歩性欠如)
について
(原告の主張)
20 本件発明は、次のとおり、甲36文献に記載された発明及び同発明と構 成
を一にする甲36製品により公然実施された発明に基づき、本件優先日前に当
業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定
により特許を受けることができないものである。したがって、本件発明に係る
本件特許は、特許無効審判により無効とされるべきものと認められ(同法12
25 3条1項2号)、特許法104条の3第1項により本件発明に係る本件特許権
の行使は認められない。
(1) 甲36文献に記載された発明の認定について
ア 甲36文献には次の構成を有する発明(以下「甲36発明」という。)
が記載されていると認められる(以下、甲36発明の構成を「甲36j」
などという。。

5 甲36j 非接触ICカードとの間で送受信するためのRFIDイン
ターフェースを有し、
甲36k IDm(PMm)を要求するPollingコマンドを前
記非接触ICカードに発信する発信手段と、
甲36l 前記非接触ICカードから受信したIDm(PMm)が要
10 求したIDm(PMm)であるか否かを判断する判断手段
とを有し、
甲36m 前記判断手段で受信したIDm(PMm)が、前記要求し
たIDm(PMm)であると判断されたときに、前記非接
触ICカードとの間でRequest Serviceコマ
15 ンド、Authentication1コマンドなどの処
理を行う
甲36n ことを特徴とするリーダ/ライタ
イ ソニーは、平成12年10月当時、甲36製品を発売していた。
そして、当業者であれば、甲36製品のカードとリーダ/ライタの送受
20 信(PollingコマンドやIDm(PMm)の送受信や、その後の処
理の送受信)を傍受することで、リーダ/ライタが、非接触ICカードと
の間で送受信するためのRFIDインターフェースを有し、所定のコマン
ドを送信して、非接触ICカードが所定のデータを返信し、その後の処理
が継続される構成を有していることを確認することは容易である。また、
25 当業者であれば、非接触ICカードが所定のデータを返信するタイミング
で、当該所定のデータとは異なるデータを返信させたときのリーダ/ライ
タの反応から、同リーダ/ライタが、前記非接触ICカードから受信した
所定のデータが要求した所定のデータであるか否かを判断する判断手段と
を有し、前記判断手段で受信した所定のデータが、前記要求した所定のデ
ータであると判断されたときに、前記非接触ICカードとの間で処理を行
5 う構成を備えていると容易に確認できる。
以上によれば、次の構成を有する発明(以下「甲36′発明」という。)
が、平成12年10月当時、甲36製品により公然と実施されていたと認
定できる(以下、甲36′発明の構成を「甲36′j」などという。。

甲36′j 非接触ICカードとの間で送受信するためのRFIDイン
10 ターフェースを有し、
甲36′k 所定のデータを要求する所定のコマンドを前記非接触IC
カードに発信する発信手段と、
甲36′l 前記非接触ICカードから受信した所定のデータが要求し
た所定のデータであるか否かを判断する判断手段とを有し、
15 甲36′m 前記判断手段で受信した所定のデータが、前記要求した所
定のデータであると判断されたときに、前記非接触ICカ
ードとの間で処理を行う
甲36′n ことを特徴とするリーダ/ライタ
(2) 本件発明との対比について
20 ア 甲36発明
甲36発明の「RFIDインターフェース」(甲36j)は、本件発明
の「RFIDインターフェース」(構成要件J)に相当する。
また、甲36発明の「IDm(PMm)を要求するPollingコマ
ンド」(甲36k) 「IDm(PMm) (甲36kないし甲36m)及び
、 」
25 「リーダ/ライタ」(甲36n)は、それぞれ、本件発明の「個別情報の
発信要求」(構成要件K)「個別情報」
、 (判断情報)(構成要件KないしM)、
「受信装置」(構成要件N)に相当する。
イ 甲36′発明
甲36′発明の「RFIDインターフェース」(甲36′j)は、本件
発明の「RFIDインターフェース」(構成要件J)に相当する。
5 また、甲36′発明の「所定のデータを要求する所定のコマンド」(甲
36′k) 「所定のデータ」
、 (甲36′kないし甲36′m)及び「リー
ダ/ライタ」(甲36′n)は、それぞれ、本件発明の「個別情報の発信
要求」(構成要件K) 「個別情報」
、 (判断情報)(構成要件KないしM)及
び「受信装置」(構成要件N)に相当する。
10 (3) 一致点及び相違点について
本件発明と甲36発明及び甲36′発明を対比すると、本件発明では、受
信装置と送受信等を行うのが「携帯電話」であるのに対して、甲36発明及
び甲36′発明では「非接触ICカード」である点で、両者は相違するが、
その余の構成は一致する。
15 (4) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについ

甲36文献又は甲36′発明に触れた当業者は、前記10(原告の主張)
(4)アの周知技術に動機付けられ、甲36発明又は甲36′発明に当該周知
技術を適用するか、甲27、甲32、甲33、甲34又は甲35の各文献
20 に開示された構成を適用することで、本件発明を容易に想到することがで
きる。
(5) 小括
よって、当業者にとって、甲36発明及び甲36′発明に周知技術を組み
合わせることにより、本件発明を発明することは容易であるといえ、本件発
25 明は進歩性を欠いている。
(被告らの主張)
(1) 「請求項4記載の」との文言について
前記8(被告らの主張)(1)のとおり、「請求項4記載の」との文言は、本
件発明の受信装置の構造及び機能を特定している。
したがって、請求項4による特定を度外視した原告の無効主張に理由はな
5 い。
(2) 甲36文献は本件優先日前に公知となったものではないこと
原告は、甲36文献が、本件優先日前に秘密保持義務なく公開されたこと
及び甲36′発明が本件優先日前に公然実施されたことの立証をしていない。
したがって、原告の、甲36発明又は甲36′発明に基づく進歩性欠如の
10 主張には理由がない。
(3) 「判断手段」について
前記8(被告らの主張)(4)のとおり、構成要件Lの「受信した個別情報
が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段」は、要求した特定の
データと他のデータを比較して一致しているかどうかを判断する手段である
15 必要がある。
原告は、甲36発明及び甲36′発明の、前記非接触ICカードから受信
したIDm(PMm)が要求したIDm(PMm)であるか否かを判断する
判断手段(甲36l)が、構成要件Lの「受信した個別情報が要求した個別
情報であるか否かを判断する判断手段」に相当すると主張する。
20 しかし、甲36文献には、「リーダ/ライタはカードを捕捉する為に、
Pollingコマンドを常に送信する…。 、
」 「カードはPollingコ
マンドへの応答として、カードの製造ID(IDm)と製造パラメータ(P
Mm)をリーダ/ライタに返送します。 、
」 「…リーダ/ライタはIDmを取
得すると、…このIDmを使ってカードを特定します。…」と記載されてお
25 り、Pollingコマンドは、ICカードを特定するためのコマンドにす
ぎず、特定のIDm(PMm)(所定のデータ)の発信を要求するコマンド
ではない。
したがって、甲36発明及び甲36′発明のリーダ/ライタは、要求した
特定のデータと他のデータを比較して一致しているかどうかを判断する手段
ではないから、「判断手段」(構成要件L)の構成を有しているとはいえない。
5 (4) 小括
以上によれば、甲36発明及び甲36′発明に原告主張の周知技術を適用
しても、本件発明と同一の構成に至ることはできないから、本件発明には進
歩性が欠如しているとの原告の主張に理由はない。
13 争点1-3(被告らによる虚偽告知の内容)について
10 (原告の主張)
前提事実(5)オのとおり、被告らは、原告が被告モビリティの特許権を侵
害したことにより4億9388万円の損害を被ったとして損害賠償請求訴訟
(別件訴訟)を提起した旨を本件通知書に記載し、岡三証券に通知した(本
件通知行為)。
15 しかし、前記1ないし12の(原告の主張)のとおり、原告は被告モビリ
ティの特許権を侵害していないから、被告らによる本件通知行為は、この点
で、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知となる。
また、別件訴訟は、取り下げられたことにより、初めから裁判所に係属し
ていなかったとみなされ(民事訴訟法262条1項)、別件訴訟は提起され
20 なかったことになるから、この点においても、被告らによる本件通知行為は、
原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知となる。
(被告らの主張)
争う。
14 争点2(被告らと原告との間の競争関係の有無)について
25 (原告の主張)
(1) 被告モビリティについて
原告は、コンピュータシステムの企画、開発及び設計、決済システムに関
するハードウェア及びソフトウェアの開発、製造、輸入及び販売並びに保守
サービス、インターネット、その他通信ネットワークを利用した商取引に関
する企画、調査研究及び開発等を目的として設立され、決済に利用される通
5 信端末及びインターネットを利用した決済システムを開発して販売している。
他方、被告モビリティは、情報処理に関する研究及び開発、ソフトウェア
及びハードウェアの開発、制作及び販売並びに情報通信システムの企画、設
計及び管理運営に関する業務等を目的として設立され、両者はそれらの業務
目的を共通するものである。
10 以上によれば、原告が販売している決済に利用される通信端末やシステム
の開発業務は、被告モビリティの目的業務に含まれていることは明らかであ
り、原告と被告モビリティは、具体的な製品を販売していなくとも潜在的な
競争関係にあるといえる。
(2) 被告Aiについて
15 法人の代表者は、法人の機関として活動し、その効果が法人に帰属するも
のであるから、代表者自身が営業者でなくとも法人が競争関係にあれば、代
表者も競争関係にあると解すべきである。
前記(1)のとおり、被告モビリティは原告と競争関係にあるから、被告モ
ビリティの代表者である被告Aiも原告と競争関係にあるといえる。
20 (被告らの主張)
被告モビリティは、平成12年2月22日に設立された会社であり、設立
当初から現在まで、知的財産権を取得し、そのロイヤルティ収入を得ること
を事業目的としている。
したがって、被告モビリティは、原告が業務として行っている「決済端末」
25 の販売及びそれに関連する業務を、設立から現在まで20年間にわたり、一
切行っていない。
よって、原告は、被告らと「競争関係にある他人」に該当しない。
15 争点3(被告らの故意又は過失の有無)について
(原告の主張)
被告らは、上場準備のリスク管理に敏感になっている原告の弱みにつけこ
5 んで、原告から多額の和解金を取得する目的で、原告各製品が本件発明の技
術的範囲に属しないことを知りつつ、本件通知行為に及んだといえ、故意に
より、岡三証券に対し、原告が特許権を侵害したとの虚偽の事実を告知した
といえる。
また、前提事実(5)エ及びキのとおり、被告モビリティが、約150万円
10 相当の収入印紙を貼付せずに別件訴訟を提起し、間もなく同訴訟を取下げて
いることに照らすと、被告らは、真実訴訟を進行させる意図がないにもかか
わらず、形式的に事件番号を取得し、訴訟提起の事実を作出するためだけに
別件訴訟を提起したものと推認でき、故意により、岡三証券に対し、被告モ
ビリティが原告による特許権侵害を理由とする別件訴訟を提起したとの虚偽
15 の事実を告知したといえる。
仮に、被告らに故意がなかったとしても、原告が被告モビリティの特許権
を侵害していると第三者に通知することにより、原告の信用が毀損され、原
告に多額の損害が発生することは容易に想定できるから、被告らは、特許権
侵害の事実の有無について充分検討せずに安易に本件通知書を送ってはなら
20 ないという注意義務を負っていたにもかかわらず、原告各製品の具体的な構
成について何ら検討することなく虚偽の事実を告知したのであるから、過失
があるといえる。
(被告らの主張)
争う。
25 16 争点4(被告Aiの悪意又は重過失による任務懈怠の有無)について
(原告の主張)
被告Aiは、被告モビリティの代表取締役として、第三者に損害を与えな
いよう注意する善管注意義務を負っている(会社法429条1項)。
そして、原告が被告モビリティの特許権を侵害していると第三者に通知す
ることにより、原告の信用が毀損され、原告に多額の損害が発生することは
5 容易に想定できる。
そうすると、被告Aiは、特許権侵害の事実の有無について充分検討せず
に安易に本件通知書を送ってはならないという注意義務を負っていたにもか
かわらず、原告各製品の具体的な構成について何ら検討することなく虚偽の
事実を告知したものであるから、上記注意義務に悪意又は重過失で違反した
10 といえる。
(被告Aiの主張)
争う。
17 争点5(原告の損害発生の有無及び損害額)について
(原告の主張)
15 (1) 追加に必要になった費用について
ア 新たな目論見書等の作成及び印刷費用
原告は、前提事実(5)カのとおり、本件通知行為に起因して、令和3年
7月7日に予定していた上場を取りやめとすることを決定したが、再度、
同年9月24日にマザーズ市場へ上場することとなった。
20 そのため、原告は、上場のために必要な目論見書等の作成及び印刷費用
を二度支払うことになった。
したがって、令和3年9月24日の上場準備のために支払った次の費用
は、原告の損害となる。
(ア) 有価証券届出書、新株式発行並びに株式売出(届出)目論見書等の
25 作成及び印刷費用 278万4430円
(イ) 上記(ア)の書類の訂正届出書等の作成及び印刷費用
72万4680円
(ウ) カード・封筒等の印刷費用 2万4667円
(エ) 小計 353万3777円
イ 監査法人のコンフォートレター作成費用
5 原告は、本件通知行為に起因して、上場のために必要な費用である監査
法人のコンフォートレター作成費用を二度支払うことになった。
原告は、令和3年9月24日の上場準備のため、監査法人及び証券会社
との間において、「監査法人から引受事務幹事会社への書簡」及び「財務
諸表等以外の財務情報に関する調査結果報告書」の作成業務契約を締結し、
10 220万円の報酬を支払った。
したがって、上記220万円の報酬相当額は原告の損害となる。
(2) 募集株式発行による資金調達の遅れによる損害について
原告は、令和3年9月28日、マザーズ市場に上場をし、募集株式発行
に伴い3億4776万円を調達した。本来は、同年7月7日に、同額の資
15 金調達ができていたはずであるにもかかわらず、本件通知行為により、資
金調達が83日遅れたのであるから、その間の利息相当額として、237
万2390円(3億4776万円×0.03×83日/365日=237万
2390円)の損害が生じた。
(3) 無形損害について
20 原告は、本件通知行為により上場を延期されたほか、原告の顧客、取引先、
市場関係者らに対する原告の信用を毀損された。その信用毀損に基づく損害
額は極めて大きく、3000万円を下らない。
(4) 弁護士費用に係る損害について
原告は、被告らに対する訴訟提起を弁護士に依頼した。その弁護士費用に
25 係る損害額は、前記(1)ないし(3)の損害の合計額3810万6167円の
約1割である380万円が相当である。
(5) 小括
以上によれば、原告の損害額は、合計4190万6167円となる。
(被告らの主張)
争う。
5 18 争点6(本訴提起による不法行為の成否)について
(被告らの主張)
本件通知行為は、被告らによる正当な義務の履行としてされたものである。
すなわち、株式会社東京証券取引所の定める有価証券上場規程は、上場申請
会社等を対象とする上場適格性の審査基準を定めているところ、その審査項
10 目の一つとして、「その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と
認める事項」(平成19年当時の有価証券上場規程第214条1項5号)が
規定されており、さらに、「上場審査等に関するガイドラインⅢ.6.(2)」
においては、上記の「事項」を検討する観点として、「新規上場申請者の企
業グループが、経営活動や業績に重大な影響を与える係争又は紛争を抱えて
15 いないこと」が挙げられている。
上記の規程及びガイドラインの定めに照らすと、原告が株式上場をするに
当たり、原告のステークホルダーである被告らが本件通知行為をすることは、
正当な義務の履行であるといえる。
それにもかかわらず、原告が、本件通知行為について不正競争防止法上の
20 不正競争行為に該当すると主張し、本訴を提起したことは、被告らに対する
不法行為を構成する。
(原告の主張)
法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則とし
て正当な行為であり、訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、
25 当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠
を欠くものである上、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容
易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提
起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに
限られる。
しかし、被告らは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相
5 当性を欠くと認められるときに該当する根拠となる具体的な事実の主張をし
ていない。
したがって、本訴提起について不法行為は成立せず、被告らの請求は理由
がない。
19 争点7(被告らの損害発生の有無及び損害額)について
10 (被告らの主張)
被告らは、原告による故意又は過失による本訴の提起により、次の損害を
被った。
(1) 被告モビリティ
ア 社会的信用損失 1000万円
15 イ 投資家から得られたはずの投資金 1500万円
ウ 営業妨害 500万円
(2) 被告Ai
ア 名誉毀損 1000万円
イ 裁判費用 300万円
20 ウ 個人的な調査費用 700万円
(原告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項等
25 (1) 本件明細書(甲2)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する
図14については別紙図面目録1を参照)。
ア 【技術分野】
【0001】
本発明はRFIDインターフェースを利用した情報保護技術に関する
ものである。
5 【背景技術】
【0002】
近年、市場には膨大な数の磁気カードが流通している。一例として、
クレジットカード、キャッシュカード、プリペイドカード、社員証や
学生証、通行証、各種証明書発行用カード、図書館の貸出カード、入
10 退室管理カードなどがあげられる。これらのカードは特定の目的ごと
に提供されているため、場合によっては外出時に何枚ものカードを携
行しなければならない。しかしながら、カードの枚数によっては非常
にかさばる上に、必要なときに必要なカードをすぐに取り出しにくい
などの問題がある。
15 【0007】
そこで、携帯電話、PHS、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン
などの携帯端末に多目的ICカードを統合したり、複数のICカード
の機能を搭載したり、あるいは搭載可能な仕組み(ICカードとして
の機能を実行するためのソフトを所定のサーバ等にダウンロード可能
20 な形態で提供し、そのソフトをダウンロードする、あるいはこのよう
なソフトが搭載された、カード用専用チップを装着する等)を用意す
るなどし、この端末に対してセキュリティ対策を施す方法が検討され
ている。ICカードには大きく分けて接触型と非接触型の2種類があ
り、カードに記録されたデータを利用するには接触型の場合は専用の
25 端末(以下、「リーダライタ」と呼ぶ)にカードを挿入しなければなら
ないが、非接触型ではその必要がなく、リーダライタにかざすだけで
よい。したがって、携帯端末をパスワードで保護し、端末にあらかじ
め記録されたパスワードと所有者が入力するパスワードとが一致した
場合にのみICカードの機能を利用できるようにする方式が考えられ
る。しかしながら、このような方式ではカード機能を利用するたびに
5 端末にパスワードを入力しなければならない煩わしさがあり、リーダ
ライタにかざすだけでよいという非接触型ICカードの利点が半減し
てしまう。また、パスワード自体は所有者個人を特定する手段にはな
らず、何らかの理由でパスワードが漏洩した場合に、悪意の拾得者が
不正入手したパスワードを利用して端末にアクセスする可能性もある。
10 【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこ
ろは、個人情報や金銭的価値のある情報を統合して管理する場合に当
該情報の第三者による不正使用を確実に防止するための情報保護シス
15 テムを提供することにある。
イ 【課題を解決するための手段】
【0015】
…本発明の第2の形態によれば、前記携帯電話との間で送受信するため
のRFIDインターフェースを有し、個別情報の発信要求を前記携帯電
20 話に発信する発信手段と、前記携帯電話から受信した個別情報が要求し
た個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で
受信した判断情報が、前記要求した個別情報であると判断されたときに、
前記携帯電話との間で処理を行うことを特徴とする受信装置が得られる。
ウ 【発明の効果】
25 【0017】
以上詳細に説明したように、本発明では、携帯端末に定期券・クレジ
ットカード・運転免許書などの個人情報を携帯端末に登録することが
できる。
【0018】
また、携帯端末に一意に割り振られる識別情報をもとに携帯端末の利
5 用状況の履歴を取ることが確実に行われ悪用を防ぐことができる。
【0019】
さらに、携帯端末が悪意を持つ第3者に渡っても、対応するレッドバ
ッジ(ICチップ)などがない限り悪用できない。
【0020】
10 また、これにより、利用した覚えのない料金を支払う必要がない。
【0021】
或いは、携帯端末に記憶されている個人データの流出を防ぐことが可
能になる。
エ 【発明を実施するための最良の形態】
15 【0085】
第2の実施の形態では、携帯端末10に(ICカードで行われている)
定期券・乗車券・クレジットカード・鍵などの機能を内蔵させる個別
情報システムについて説明する。ここでは、クレジットカードなどカ
ード機能を携帯端末10に内蔵させる場合を例に説明する。…
20 【0086】
他の実施の形態における個別情報
システム11は、図12に示すように、携帯端末10とRFIDイン
ターフェースの送受信部20’(受信部)を組み込んだ受信装置60と
で概略構成される。
25 【0087】
受信装置60は、送受信部20’と制御部40’が設けられ、携帯端
末10から個別情報を読み取る機能を備えている。この受信装置60
に携帯端末10を近づけて個別情報を読み取るようにするため、送受
信部20’には、近接型を使用することが好ましい。
【0088】
5 携帯端末10は、図13に示すように、メモリ30上のデータ格納部
34に個別情報340を記憶する。ここでは、個別情報340として
カード情報を記憶している例について説明する。
【0089】
個別情報340には、複数のカード情報(例えば、図13のA、B、
10 C)を記憶することも可能でその中から利用するカードを選択する機
能を備える。さらに、カードに応じたアプリケーションプログラム3
3を複数用意し、各カードに応じた機能を持たせることが可能である。
【0090】
以下、個別情報340をカード情報と置き換えて説明する。
15 【0091】
次に、本実施の形態の動作を図14のフローチャートに従って説明す
る。
【0092】
携帯端末10で、利用するカードを選択して(S120)、携帯端末1
20 0を受信装置60に近づける。受信装置60では、例えば、受信装置
60に設けられている読み取りスイッチの押下によって、カード情報
340の読み取り指示を受け取ると、読み取りコマンドを送受信部2
0に送る(S220)。そこで、送受信部20から指定されているカー
ドのカード情報340(個別情報)の発信要求(パワーパルスなど)
25 を携帯端末10に発信する(S221)。
【0093】
携帯端末10では、カード情報340の発信要求を受け取ると選択さ
れているカード情報340を発信する(S122)。受信装置60では、
受信したカード情報340が、要求したカード情報であれば処理を続
行するが(S224)、要求したカード情報でない場合はエラー終了す
5 る(S225)。
【0094】
本実施の形態では、携帯端末10にカード機能を持たせる場合につい
て説明したが、定期券や乗車券の機能を持たせることも可能である。
この場合には、受信装置60の送受信部20には、多少離れた位置か
10 ら読み取り可能なように近接型を利用することが好ましい。
【0095】
また、携帯端末10に鍵の機能を持たせることも可能である。この場
合には、受信装置60の送受信部20には、やや離れた位置から読み
取り可能なように近傍型または近接型を利用することが好ましい。
15 【0096】
また、電子マネー・クレジットカード・会員権・診察券・健康保健
所・身分証明書・アミューズメント施設のチケット類の機能を持たせ
ることも可能である。
【0097】
20 さらに、個別情報340は、携帯端末10の固体それぞれを識別する
識別情報を利用することもできる。
(2) 前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、次のよ
うな開示があることが認められる。
ア 近年、クレジットカード、キャッシュカード、プリペイドカード等の膨
25 大な数の磁気カードが市場に流通しているところ、これらのカードは特定
の目的ごとに提供されているため、場合によっては外出時に何枚ものカー
ドを携行しなければならず、カードの枚数によっては非常にかさばる上
に、必要なときに必要なカードをすぐに取り出しにくいなどの問題がある
(【0002】。そこで、携帯電話などの携帯端末に多目的ICカードを

統合するなどし、この端末に対してセキュリティ対策を施す方法が検討さ
5 れており、ICカードのうちの非接触型では、リーダライタにかざすだけ
でよいことから、携帯端末をパスワードで保護し、端末にあらかじめ記録
されたパスワードと所有者が入力するパスワードとが一致した場合にのみ
ICカードの機能を利用できるようにする方式が考えられるが、このよう
な方式では、カード機能を利用するたびに端末にパスワードを入力しなけ
10 ればならない煩わしさがあり、リーダライタにかざすだけでよいという非
接触型ICカードの利点が半減してしまい、また、パスワード自体は所有
者個人を特定する手段にはならず、何らかの理由でパスワードが漏洩した
場合に、悪意の拾得者が不正入手したパスワードを利用して端末にアクセ
スする可能性もあるといった課題があった(【0007】。

15 イ 「本発明」は、前記アの課題に鑑み、個人情報や金銭的価値のある情報
を統合して管理する場合に当該情報の第三者による不正使用を確実に防止
するための情報保護システムを提供することを目的として、携帯電話との
間で送受信するためのRFIDインターフェースを有し、個別情報の発信
要求を同携帯電話に発信する発信手段と、同携帯電話から受信した個別情
20 報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し、同判断
手段で受信した判断情報が要求した個別情報であると判断されたときに、
同携帯電話との間で処理を行うことを特徴とする受信装置を提供するもの
である(【0009】 【0015】。
、 )「本発明」では、携帯端末に定期券・
クレジットカード・運転免許書などの個人情報を携帯端末に登録すること
25 ができる、また、携帯端末に一意に割り振られる識別情報をもとに携帯端
末の利用状況の履歴を取ることが確実に行われ悪用を防ぐことができる、
さらに、携帯端末が悪意を持つ第3者に渡っても、対応するレッドバッジ
(ICチップ)などがない限り悪用できない、これにより、利用した覚え
のない料金を支払う必要がない、あるいは、携帯端末に記憶されている個
人データの流出を防ぐことが可能になるといった効果を奏する(【001
5 7】ないし【0021】。

2 争点1-2-5(甲32文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)につ
いて
本件の事案に鑑み、争点1-2-5から判断する。
(1) 甲32文献の記載事項について
10 ア 甲32文献には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1、
図2、図3及び図8については別紙図面目録2を参照)。
(ア) 【発明の属する技術分野】
【0001】本発明は、鉄道分野等に広く普及している自動改札に関
し、特に自動改札通過時のチケットの処理を非接触で行う自動改札シ
15 ステムに関する。
(イ) 【発明の実施の形態】…
【0016】図1は本発明に係る自動改札システムの一実施形態の構
成を示すブロック図である。
【0017】この実施形態の自動改札システム1は、携帯通信端末1
20 1と、自動改札機13と、基地局15と、電話回線網17と、チケッ
トセンター19とから構成されている。
【0019】…携帯通信端末11は、ダウンロードされたチケットデ
ータを、自動改札機13から送信要求された場合には、その要求に従
ってこのデータを出力するようになっている。
25 【0020】この携帯通信端末11は、図2に示すように、…自動改
札を通過する際のチケットデータを記憶するチケットデータ記憶部1
13、チケットデータをダウンロードする際の発行依頼の電話番号
(後述する)を基地局15に無線で送信し、この発行依頼により発行
されたチケットセンター19からのチケットデータを基地局15から
無線で受信する対基地局無線送受信部14、自動改札機13と無線で
5 送受信を行う対自動改札無線送受信部115、…で構成されている。
【0022】自動改札機13は、携帯通信端末11から受信したチケ
ットデータに基づき、改札扉の開閉を行うものであって、図3に示す
ように、各構成部分を制御する制御部131、携帯通信端末11に記
憶されているチケットデータの送信要求を送信するとともに、チケッ
10 トデータを受信する無線送受信部132、チケットデータの検査を行
わずに改札口を通過しようとする利用者を検知する人間検知センサ1
33、制御部131の指示に基づき、改札扉を開閉して利用者の改札
口からの通過を制御する通過制御部134および使用済みチケットの
通し番号を記憶するチケットデータベース135から構成されている。
15 【0023】この通し番号は、チケットデータごとに異なる番号が割
振りされており、このデータベース135に登録されているものと同
じ通し番号を有するチケットデータは不正チケットと見なされる。
【0036】この実施形態の受動改札システムに使用されるチケット
データには、…暗号化されたチケット種別および通し番号を有してい
20 る。…
【0056】…入場時の通信手順について自動改札機13は、利用
者がいようといまいと関係なしに、携帯通信端末に対するチケット
データ送信要求を常時定期的に送信している(図8中の①、②、③、
④参照)。
25 【0057】利用者が自動改札機13に近づき、携帯通信端末11
を自動改札機13にかざすと、携帯通信端末13は、自動改札機1
3からのチケットデータ送信要求を受信し、チケットデータを自動
改札機13に送信する(図8中の⑤参照)。
【0059】自動改札機13は、携帯通信端末11からチケットデ
ータを受信すると、このデータを解読し、改札機を通過できる種類
5 のチケットであるか否かを判定するとともに、使用済みチケットデ
ータベース135を検索して同じ通し番号を有するチケットが既に
使われているか否かを判定する。
【0060】自動改札機13は、チケットデータの正当性が確認で
きた場合には、通し番号がそのままで、チケット種別…を確認済み
10 の種別に更新した新しいチケットデータを作成し、これを暗号化し
て「確認済みチケットデータ」として携帯通信端末11に送信する
とともに(図8中の⑥参照)、このチケットデータの通し番号を使用
済みチケットデータベース135に登録する。
【0061】携帯通信端末11は、「確認済みチケットデータ」を受
15 信すると、旧チケットデータを破棄し、この「確認済みチケットデ
ータ」をチケットデータ記憶部113に記憶するとともに、チケッ
トデータを更新完了した旨を自動改札機13に送信する(図8中の
⑦参照)。
【0062】自動改札機13は、携帯通信端末11からチケットデ
20 ータを更新完了した旨を受信すると、再び携帯通信端末11に対し
てチケットデータ送信要求を送信する(図8中の⑧参照)。
【0063】携帯通信端末11は、すると、既に更新されたチケッ
トデータを自動改札機13に出力する(図8中の⑨参照)。
【0064】自動改札機13は、携帯通信端末11から更新された
25 チケットデータを受信すると、上述したようにして再びこのチケッ
トデータの正当性をチェックし、チェックした結果、チケットデー
タが正しければ、利用者の通行を許可する。
イ 前記アの記載事項によれば、前記第3の9(原告の主張)(1)アのと
おり、甲32文献には甲32jないし甲32nの構成を有する甲32発明
が記載されていると認められる。
5 ウ 甲32発明の各構成が本件発明の構成要件JないしNの構成にそれぞれ
相当するかを検討する前提として、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電
話との間で送受信するための」との記載の性質について検討する。
被告らは、構成要件Jの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信す
るための」との記載は、本件発明の受信装置の構造及び機能を特定して
10 いるから、請求項1ないし4の解釈を踏まえて請求項5に係る本件発明
の構成を認定すべきであると主張するものと解される。
そこで検討すると、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の各記
載によれば、本件発明は、受信装置が、携帯電話との間で送受信するた
めのRFIDインターフェースを介して同携帯電話に対して個別情報の
15 発信要求をし、これに対し、同携帯電話が、要求された個別情報を送信
し、受信装置が、同携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報
であるか否かを判断し、受信した判断情報が前記要求した個別情報であ
ると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うという、二つ
以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明に対し、それに組み合わ
20 される受信装置の発明すなわちサブコンビネーション発明であって、本
件発明に係る特許請求の範囲の請求項5には、受信装置とは別の他の装
置すなわち他のサブコンビネーションである携帯電話に関する事項が記
載されているものと理解できる。
そして、サブコンビネーション発明においては、特許請求の範囲の請求
25 項中に記載された他の装置に関する事項が、形状、構造、構成要素、組成、
作用、機能、性質、特性、行為又は動作、用途等の観点から当該請求項に
係る発明の特定にどのような意味を有するかを把握し、発明の技術的範囲
を画する必要があるところ、他の装置に関する事項が、当該他の装置のみ
を特定する事項であって、当該請求項に係る発明の構造、機能等を何ら特
定していない場合には、他の装置に関する事項は当該請求項に係る発明を
5 特定するために意味を有しないことになるから,これを除外して当該請求
項に係る発明の要旨を認定することが相当であるといえる。
本件特許の特許請求の範囲において、構成要件Jの「RFIDインター
フェースを有し、」との記載は、受信装置が「RFIDインターフェース
を有し」ていることを、構成要件Kの記載は、受信装置が「個別情報の発
10 信要求を前記携帯電話に発信する発信手段」を有していることを、構成要
件Lの記載は、受信装置が「前記携帯電話から受信した個別情報が要求し
た個別情報であるか否かを判断する判断手段」を有していることを、構成
要件Mの記載は、受信装置が「前記判断手段で受信した判断情報が、前記
要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理
15 を行う」ことを、それぞれ特定していると認められるのに対し、構成要件
Jの「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するための」との記載は、
上記の構造、機能等を有する受信装置と送受信をする携帯電話の構造、機
能等を請求項4記載の構成に限定するものにすぎず、受信装置の構造、機
能等自体を何ら特定していないから、「請求項4記載の携帯電話」との記
20 載は、受信装置に係る発明を特定するために意味を有するものであると認
めることはできない。
以上によれば、上記の「請求項4記載の携帯電話との間で送受信するた
めの」を除外して請求項5に係る本件発明の要旨を認定することが相当で
あるというべきであって、被告らの上記主張を採用することはできない。
25 エ 甲32発明と本件発明の構成の対比
(ア) 構成要件Jについて
a 本件明細書には、「RFID」の意義について、無線通信に用いら
れる「非接触自動識別システム(RFID:Radio Frequ
ency Identifycation) (
」 【0025】)と記載
されていること、一般的な意義として、「RFID」とは、「ICタグ
5 に同じ。RF信号を用いてID情報をやりとりすることからの名称。」
とされ、「RF」とは、「無線周波数。無線通信や放送に使われる高い
周波数のこと。」と解されていること(広辞苑第7版)に加え、技術
常識に照らせば、「ID」とは、対象の識別に係る情報であると認め
られること(弁論の全趣旨)に照らすと、本件発明の「RFIDイン
10 ターフェース」とは、無線を介して対象の識別に係る情報を送信又は
受信するためのインターフェースであると解するのが相当である。
そして、甲32文献の「この通し番号は、チケットデータごとに
異なる番号が割振りされており、このデータベース135に登録さ
れているものと同じ通し番号を有するチケットデータは不正チケッ
15 トと見なされる。 (
」 【0023】 、
) 「この実施形態の受動改札システ
ムに使用されるチケットデータには、…暗号化されたチケット種別
および通し番号を有している。…」 【0036】 、
( ) 「…携帯通信端末
13は、自動改札機13からのチケットデータ送信要求を受信し、
チケットデータを自動改札機13に送信する。 (なお、
」 「携帯通信端
20 末13」は「携帯通信端末11」の誤記であると認められる。以下
同じ。 (
) 【0057】)及び「自動改札機13は、携帯通信端末11
からチケットデータを受信すると、このデータを解読し、改札機を
通過できる種類のチケットであるか否かを判定するとともに、使用
済みチケットデータベース135を検索して同じ通し番号を有する
25 チケットが既に使われているか否かを判定する。 (
」 【0059】)と
の記載によると、甲32発明において、甲32k、甲32l及び甲
32mの「チケットデータ」に割り振られた「通し番号」及び「チ
ケット種別」は、チケットを識別するための情報として用いられる
ものであると理解できる。
そうすると、甲32発明の「自動改札機13」が備える「無線送
5 受信部132」は、無線を介してチケットを識別するための情報を
取得するインターフェースであるといえるから、構成要件Jの「R
FIDインターフェース」に相当する。
b 被告らは、「RFIDインターフェース」は、単なる「無線通信」
とは異なるものであり、甲32発明の携帯通信端末11と自動改札機
10 13は、携帯電話と基地局との間の当時における一般的な通信方式を
使用するものにすぎないから、「RFIDインターフェース」に相当
しないと主張する。
しかし、前記aのとおり、本件発明の「RFIDインターフェース」
は、無線を介して対象の識別に係る情報を取得するためのものであっ
15 て、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書にも、「RFIDイン
ターフェース」に関し、無線の通信方式を特定の方式に限定したもの
であることをうかがわせる記載はない。
また、「RFIDインターフェース」の文言が、無線の通信方式を
特定の方式に限定したものでないことは、本件明細書の「RFIDに
20 はさまざまな変調方式や周波数、通信プロトコルを利用したものがあ
るが、本発明は特定の方式に限定されるものではなく、どのような方
式を利用してもよい。 (
」 【0027】)との記載からも明らかである。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ) 構成要件Kについて
25 構成要件Kの「個別情報」の意義は、本件特許の特許請求の範囲の記
載からは明らかではないところ、本件明細書の「…携帯端末10に(I
Cカードで行われている)定期券・乗車券・クレジットカード・鍵など
の機能を内蔵させる個別情報システムについて説明する。ここでは、ク
レジットカードなどカード機能を携帯端末10に内蔵させる場合を例に
説明する。 (
」 【0085】、
)「個別情報340には、複数のカード情報…
5 を記憶することも可能で…」 【0089】 、
( ) 「本実施の形態では、携帯
端末10にカード機能を持たせる場合について説明したが、定期券や乗
車券の機能を持たせることも可能である。 (
」 【0094】)及び「また、
電子マネー・クレジットカード・会員権・診察券・健康保健所・身分証
明書・アミューズメント施設のチケット類の機能を持たせることも可能
10 である。 (
」 【0096】)との記載に照らせば、「個別情報」とは、定期
券・乗車券・クレジットカード・鍵などの機能に関する個別の情報であ
ると理解することができる。
一方、甲32文献の「…携帯通信端末13は、自動改札機13からの
チケットデータ送信要求を受信し、チケットデータを自動改札機13に
15 送信する。 (
」 【0057】)及び「自動改札機13は、携帯通信端末11
からチケットデータを受信すると、このデータを解読し、改札機を通過
できる種類のチケットであるか否かを判定すると共に、使用済みチケッ
トデータベース135を検索して同じ通し番号を有するチケットが既に
使われているか否かを判定する。 (
」 【0059】)との記載に照らすと、
20 甲32発明において、甲32kの「チケットデータ」は、個別の乗車券
として機能するための情報であるといえ、「個別情報」(構成要件K)に
相当する。
(ウ) 構成要件Lについて
a 前記(イ)で説示したとおり、本件発明の「チケットデータ」は、個
25 別の乗車券として機能するための情報であるから、「個別情報」に相
当する。
また、甲32文献の「自動改札機13は、携帯通信端末11からチ
ケットデータを受信すると、このデータを解読し、改札機を通過でき
る種類のチケットであるか否かを判定するとともに、使用済みチケッ
トデータベース135を検索して同じ通し番号を有するチケットが既
5 に使われているか否かを判定する。 (
」 【0059】)との記載に照らす
と、甲32発明において、自動改札機13は、携帯通信端末11から
送信されたチケットデータが正当性のあるものであるか、すなわち、
改札機を通過できる種類のチケットであるか否か及び使用済みチケッ
トデータベース135を検索して同じ通し番号を有するチケットが既
10 に使われているか否かを判定するものであると理解できるから、「…
受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手
段」(構成要件L)に相当する。
b 被告らは、構成要件Lの「…受信した個別情報が要求した個別情報
であるか否かを判断する判断手段」は、特定の利用者の1つのチケッ
15 トデータの発信を要求し、受信したチケットデータが要求した特定の
1つのチケットデータであるか否かを判断するものであるところ、甲
32発明の「自動改札機13」は、特定の利用者の特定の1つのチケ
ットデータの発信を要求するものではなく、また、受信したチケット
データが要求した特定の1つのチケットデータであるか否かを判断す
20 る判断手段ではないから、「…受信した個別情報が要求した個別情報
であるか否かを判断する判断手段」に相当するものではないと主張す
る。
しかし、本件特許の特許請求の範囲において、「要求した個別情報」
が「特定の利用者の1つのチケットデータ」であるとの限定はされて
25 おらず、また、本件明細書においても、「受信装置」が受信した「個
別情報」が、特定の利用者の特定の1つのチケットデータに限られる
ことをうかがわせる記載はない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(エ) 構成要件Mについて
前記(イ)及び(ウ)の説示を前提とすると、甲32発明の「自動改札機1
5 3」は、「前記判断手段で受信した判断情報」(構成要件M)である「チ
ケットデータ」が、「前記要求した個別情報」(構成要件M)である「正
当性のあるチケットデータ」であると判断されたときに、「前記携帯通
信端末11との間で「確認済みチケットデータ」を送信するなどの処理
を行う」ものであるから、その構成は、「前記判断手段で受信した判断
10 情報が、前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電
話との間で処理を行う」(構成要件M)構成に相当する。
(オ) 構成要件Nについて
前記(ウ)で説示したとおり、甲32発明の「自動改札機13」は、「チ
ケットデータ」を受信する受信装置であるといえるから、「受信装置」
15 (構成要件N)に相当する。
(2) 小括
以上によれば、本件発明は、甲32発明と同一の構成を有しているから、
新規性を欠いており、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの
と認められ、被告モビリティは原告に対してその権利を行使することができ
20 ない(特許法104条の3第1項、123条1項2号、29条1項3号)。
3 争点1-3(被告らによる虚偽告知の内容)について
前提事実(5)オのとおり、本件通知行為は、原告が被告モビリティの特許権
を侵害しているとの原告の営業上の信用を害する事実を告知するものであると
ころ、前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの
25 であり、原告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実を通知した本
件通知行為は、不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するも
のといえる。
他方で、前提事実(5)オのとおり、本件通知行為により、被告モビリティは、
岡三証券に対し、被告モビリティが別件訴訟を提起した旨も通知したものであ
るが、実際に、本件通知行為の前日である令和3年6月23日、東京地方裁判
5 所に対し、別件訴訟を提起している以上(前提事実(5)エ)、別件訴訟について
の通知内容は、同条の「虚偽の事実を告知」したものとはいえない。
なお、被告らは、原告の前訴訟代理人であった弁護士Ci作成に係る令和3
年7月26日付け意見書について、文書提出命令を申し立てているところ(東
京地方裁判所令和4年(モ)第264号)、本訴のいずれの争点との関係でも
10 取調べの必要性が認められるとはいえないから、上記申立てを却下する。
4 争点2(被告らと原告との間の競争関係の有無)について
事業者間の公正な競争を確保するという不正競争防止法の目的(不正競争防
止法1条)に照らすと、同法2条1項21号の「競争関係」は、現実の市場に
おける競合が存在しなくとも、市場における競合が生じるおそれがあれば認め
15 られると解するのが相当である。
そして、前提事実(2)及び(3)並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、決済
に利用される通信端末及びインターネットを利用した決済システムを開発して
販売していること、被告モビリティは、決済システムに利用され得る本件発明
に係る特許権を有し、同特許権について実施権を許諾してライセンス収入を得
20 ることを業としていることが認められ、被告モビリティ自身が決済端末の開発、
販売をしておらず、現実の市場における競合が存在しないとしても、市場にお
ける競合が生じるおそれはあるといえる。
また、被告Aiは、被告モビリティの代表取締役であり、その職務の執行と
して本件通知行為を行う立場にある以上、原告との間に競争関係が認められる
25 というべきである。
したがって、被告らと原告との間には競争関係があると認められる。
5 争点3(被告らの故意又は過失の有無)及び争点4(被告Aiの悪意又は重
過失による任務懈怠の有無)について
原告は、被告らには本件通知行為に故意があり、仮にこれがなかったとして
も、被告らは、特許権侵害の事実の有無について充分検討せずに安易に本件通
5 知書を送ってはならないという注意義務を負っていたにもかかわらず、これに
違反した過失があると主張し、また、被告Aiには、悪意又は重過失による任
務懈怠があると主張するから、以下場合を分けて検討する。
(1) 不正競争行為に係る故意について
前記2のとおり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもので
10 あるから、本件通知行為は虚偽の事実の告知(不正競争防止法2条1項21
号)に該当することになる。
しかし、被告らにおいて、本件特許が特許無効審判により無効にされるべ
きものであることを知って本件通知行為に及んだと認めるに足りる証拠はな
く、被告らに不正競争行為につき故意があるとの原告の主張は理由がない。
15 (2) 不正競争行為に係る過失について
本件全証拠によっても、被告らにおいて本件通知行為時までに本件特許が
無効となることを具体的に認識し得たことを基礎付ける事情は認められない。
他方で、前提事実(5)のとおり、被告モビリティは、原告がマザーズ市場に
上場する約2週間前に、岡三証券に対して本件通知行為をしたものであると
20 ころ、同時点においては、原告から本件特許が無効である旨の主張は一切さ
れておらず、原告が初めて具体的な引用例を示した上で本件特許の新規性又
は進歩性欠如の主張をするに至ったのは、本件訴訟係属中に前訴訟代理人弁
護士らを解任して現在の訴訟代理人弁護士に本件を委任した後であった。以
上の事情に加え、一般に、特許権は特許庁においていったん特許要件ありと
25 して特許査定を受けた権利であることを考慮すると、本件通知行為時点にお
いて、被告らに本件特許の無効理由を調査する義務まで負わせることが相当
であるとはいい難い。
したがって、被告らに不正競争行為につき過失があるとの原告の主張は理
由がない。
(3) その他の故意、過失等について
5 原告は、被告モビリティに対して、予備的に不法行為責任に基づく請求を
し、被告Aiに対しては、予備的に任務懈怠責任に基づく請求を、更に予備
的に不法行為責任に基づく請求をしているところ、前記(1)及び(2)で説示し
たのと同様の理由により、それらの各請求に係る故意又は悪意及び過失又は
重過失について、いずれも認めることはできない。
10 6 争点6(本訴提起による不法行為の成否)について
法的紛争の当事者が紛争の解決を求めて訴えを提起することは、原則として
正当な行為であり、訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当
該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠
くものである上、提訴者が、そのことを知りながら、又は通常人であれば容易
15 にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が
裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られ
るものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年
1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁、最高裁平成7年(オ)第1
60号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁、最高
20 裁平成21年(受)第1539号同22年7月9日第二小法廷判決・裁判集民
事234号207頁参照)。
本件において、前記1ないし5で説示したとおり、本件通知行為のうち、原
告が被告モビリティの特許権を侵害しているとの事実の告知は、「競争関係に
ある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」の告知(不正競争防止法2条1
25 項21号)に該当し、少なくとも不正競争行為に該当するのであって、原告の
請求は、事実的、法律的根拠を欠くものであるとはいえない。
したがって、原告の本訴提起による不法行為が成立することはない。
第5 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告らに対
する本訴に係る請求及び被告らの原告に対する反訴に係る請求はいずれも理由
5 がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官
間 明 宏 充
裁判官
バ ヒ ス バ ラ ン 薫
(別紙)
原告製品目録
1 原告がCASTLES TECHNOLOGY社から購入したVEGA300
0に、原告がカスタマイズしたアプリ(クレジットアプリ、決済アプリ)等を搭
5 載した製品及びクレジット決済時に使用される、CARD CREW PLUS
2 上記1の製品をカスタマイズした製品
以上
(別紙)
図面目録1
図14
(別紙)
図面目録2
1 図1
2 図2
3 図3
4 図8

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