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令和5(行ケ)10091特許取消決定取消請求事件

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裁判所 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年4月22日
事件種別 民事
当事者 原告大日本印刷株式会社
被告特許庁長官
対象物 バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器
法令 特許権
キーワード 実施42回
進歩性11回
特許権2回
優先権1回
主文 1 特許庁が異議2022-700021号事件について令和5年7月7日にした
2 訴訟費用は被告の負担とする。25
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告は、発明の名称を「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒー トシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」とする 発明について、令和2年9月29日に国際出願をし(優先権主張日は令和元10 年9月30日)、令和3年6月23日に本件特許に係る特許権の設定登録を 受け(請求項の数11)、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。 (2) 本件特許(全請求項に係るもの)について、令和4年1月13日に特許異 議の申立てがされ、特許庁は、同申立てを異議2022-700021号事 件として審理を行った。15 (3) 原告は、令和4年10月14日付けで取消理由通知(決定の予告)を受け たことから、その意見書提出期間内である同年12月27日、本件特許の特 許請求の範囲(請求項1~11)を下記2(1)のとおりに訂正(本件訂正)す る旨の訂正請求をした(訂正後の請求項の数16)。 (4) 特許庁は、令和5年7月7日、本件訂正を認めた上で、「特許第690220 231号の請求項1ないし16に係る特許を取り消す。」との本件決定をし、

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判決文

令和6年4月22日判決言渡

令和5年(行ケ)第10091号 特許取消決定取消請求事件

口頭弁論終結日 令和6年2月19日

判 決

原 告 大 日 本 印 刷 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 柏 延 之

同 二 枝 翔 司

同訴訟代理人弁理士 岡 村 和 郎

同 藤 枡 裕 実

同 中 村 直 人

同 豊 本 泰 央

同 大 井 香 澄

被 告 特 許 庁 長 官

同 指定 代 理 人 藤 井 眞 吾

同 藤 原 直 欣

同 金 丸 治 之

同 小 暮 道 明

同 須 田 亮 一

主 文

1 特許庁が異議2022-700021号事件について令和5年7月7日にした

決定を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

【略語】本判決で用いる略語は、別紙1「略語一覧」のとおりである。なお、本件決定中で使用されている略語は、本判決でもそのまま踏襲している。

第1 請求

5 主文と同旨

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)

(1) 原告は、発明の名称を「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」とする発明について、令和2年9月29日に国際出願をし(優先権主張日は令和元年9月30日)、令和3年6月23日に本件特許に係る特許権の設定登録を受け(請求項の数11)、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。

(2) 本件特許(全請求項に係るもの)について、令和4年1月13日に特許異議の申立てがされ、特許庁は、同申立てを異議2022-700021号事件として審理を行った。

(3) 原告は、令和4年10月14日付けで取消理由通知(決定の予告)を受けたことから、その意見書提出期間内である同年12月27日、本件特許の特許請求の範囲(請求項1~11)を下記2(1)のとおりに訂正(本件訂正)する旨の訂正請求をした(訂正後の請求項の数16)。

(4) 特許庁は、令和5年7月7日、本件訂正を認めた上で、「特許第6902231号の請求項1ないし16に係る特許を取り消す。 との本件決定をし、」その謄本は同月19日原告に送達された。

(5) 原告は、令和5年8月17日、本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 発明の内容

(1) 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項1記載(本件訂正後のもの)は、以下のとおりである(請求項2以下については別紙2に記載)。【請求項1】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを

5 備えるバリア性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下であることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用バリア性積層体。

(2) 本件明細書の記載事項及び図面の抜粋を別紙3に掲げる(表は便宜上90度回転させている。)。これによれば、本件明細書には、本件発明について次のような開示があることが認められる。ア 本発明は、バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器に関する(【0001】)。イ 従前、包装容器の作製に使用される積層体を構成する基材として、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなるフィルム(ポリエステルフィルム)が使用され、内容物との関係でガスバリア性が要求される場合には、ポリエステルフィルム表面に、アルミナやシリカなどを含む蒸着膜を形成していた(【0002】、【0003】)。

5 ウ ポリエステルフィルム基材に代えて、ポリプロピレンの延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)を使用することを検討したところ、延伸ポリプロピレンフィルムの表面に蒸着膜を形成しても、満足するガスバリア性を得ることができず、それは、延伸ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間で剥離が生じていることによるものであった 【0006】 【0( 、007】)。エ 本発明は、蒸着膜との層間の密着性に優れる多層基材を備え、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供することを課題とする(【0009】)。オ そこで、本発明は、請求項記載の構成を採用した(【0011】~【0022】)。カ 本発明によれば、ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間の密着性に優れ、高いラミネート強度を有する包装容器を作製でき、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供でき、さらに、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体、該ヒートシール性積層体を備える包装容器を提供できる(【0023】)。キ 本発明のバリア性積層体10は、図2に示すように、多層基材11と、蒸着膜12と、蒸着膜12上にバリアコート層15をさらに備え、該多層基材11は、延伸処理が施されたポリプロピレン樹脂層13と、表面コート層14とを少なくとも備える(【0025】、【0027】、【0029】、【図2】)。多層基材が、ポリプロピレンにより構成される層を備えることにより、該多層基材を使用して作製される包装容器の耐油性を向上できる(【0028】)。延伸倍率を2倍以上とすることにより、ポリプロピレン樹脂層の強度及び耐熱性をより向上でき、ポリプロピレン樹脂層への印刷適性を向上できる(【0029】)。

5 多層基材は、ポリプロピレン樹脂層上に、極性基を有する樹脂材料を含む表面コート層を備え、該表面コート層上には高い密着性を有する蒸着膜を形成でき、ガスバリア性を向上できる。表面コート層を備えるバリア性積層体を使用して作製される包装容器は高いラミネート強度を有する(【0036】)。ク 本発明のバリア性積層体は、表面コート層上に無機酸化物から構成される蒸着膜を備えることにより、バリア性積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。また、本発明のバリア性積層体を用いて作製した包装容器は、包装容器内に充填された内容物の質量減少を抑えることができる。無機酸化物には、酸化珪素(シリカ)が含まれる(【0045】、【0046】)。ケ 本発明のバリア性積層体は、蒸着膜上にバリアコート層をさらに備えることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。バリアコート層は、下記一般式で表される金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止でき、金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、例えば珪素などの金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。)(【0061】、【0067】~【0069】、【0071】)コ ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)を、1.60以下とすること

5 により、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制でき、0.50以上とすることにより、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。珪素原子と炭素原子の比の上記範囲は、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を適宜調整することにより達成できる。 90以上1.0. 35以下であることがさらに好ましい 【0076】 。( )サ Si/Cが0.92、1.11、1.26、又は1.45であり本件発明の範囲に含まれる実施例5-2から同5-5まで、同6-2から同6-5まで、同7-2から同7-5までのバリア性積層体のボイル後及びレトルト後のガスバリア性評価は、Si/Cが0.83又は1.69であり本件発明の範囲にその点でのみ含まれない実施例5-1、同5-6、同6-1、同6-6、同7-1、同7-6のバリア性積層体のボイル後及びレトルト後のガスバリア性評価よりも、酸素透過度及び水蒸気透過度ともに明らかに低く抑えられた結果となっている(【0076】、【表5】~【表7】)。3 本件決定の理由の要旨

(1) 本件訂正を認める。

(2) 本件発明1~16は、いずれも、甲3発明(又は甲3発明の2)、甲4記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである(詳細は別紙4「本件決定の理由」を参照。)。4 取消事由

(1) 甲3発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り(取消事由1)

(2) 取消事由1を前提とした甲3発明又は甲3発明の2に基づく本件発明2~16の進歩性の判断の誤り(取消事由2~16)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(甲3発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り)について

【

(原告の主張)

】

5 (1) 甲3発明及び本件発明1と甲3発明の相違点の認定の誤り

ア 甲3発明の認定の誤り(ア) 最初の取消理由通知(甲7)における甲3発明の認定では、高分子フィルム基材1として厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることや、有機無機ハイブリッドバリア層5における炭素及び珪素の組成割合など、本件発明との対比で重要となる事項が具体的に特定されていた。(イ) これに対し、本件決定においては、請求項1、3、5、6という4つもの請求項と一般記載の組み合わせにより、極めて抽象的な認定がなされている。このような甲3発明の認定は本件発明との相違点を小さく見せるために、後知恵により、本件発明と対比すべき構成を過度に抽象化するものであり、妥当ではない。特に、「食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルム」との構成の認定は不当である。甲3のガスバリア性フィルムは、【0001】、【0002】の記載から明らかなとおり、食品、医薬品、精密電子部品の包装に共通して用いられるガスバリア性フィルムに関するものであって、そのような用途限定を離れた食品に使用可能なバリア性フィルムなど、どこにも記載されていないからである。また、甲3発明は、明らかにその技術的課題を解決できない比較例2の態様をカバーしており(換言すれば、所望の作用効果を奏するための必須の構成が含まれていない) その意味においても、、 このような引用発明の認定には誤りがある。(ウ) 以上のとおりであって、本件決定には、決定の結論に影響を及ぼす甲3発明の認定の誤りがある。イ 相違点の認定の誤り(ア) 正しく認定された甲3発明を前提にした、本件発明1と甲1発明の

5 相違点は以下のとおりとなる(下線部が訂正部分)。

[相違点1’-1]「樹脂層」に関して、本件発明1のものは「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明のものは「2軸延伸ポリエチレンテレフタレート」である点。[相違点1’-2]本件発明1は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下である」のに対して、甲3発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ25%、50%、20%の割合で存在し、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が0.80である」点。[相違点1’-3]本件発明1は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明は「食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として用いられる」ものである点。(イ) 甲3には、食品に特有の用途に用いるべき示唆となるような記載は存在せず、また、仮に食品に特有の用途として用いることまでは開示されているとしても、「ボイルまたはレトルト用」とすることの開示はなく、そのような性能を備えているか定かでないばかりか、そのような用途に用いる積極的な動機づけも何ら見出せない。甲3発明をもとに相違点1’-3に想到するには、まず、①食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料に共通の用途から、食品に特有の用途に変更することに想到し、次に、②食品特有の用途として「ボイルまたはレトルト用」という用途に想到するという、2段階を経る必要がある。

5 よって、本件決定における相違点認定の誤りは、決定の結論に影響

を及ぼす。

(2) 相違点についての判断の誤り

本件決定の認定する相違点を前提としても、本件決定の相違点についての判断には誤りがある。ア まず、根本的には、本件決定が相違点1-1から同1-3までを関連付けずに判断している点が誤りである。本件発明1に係るバリア性積層体は、相違点1-1から同1-3までに係る各構成が相互に関連し合って、従来のポリエステルフィルムに代わる樹脂材料を用いつつも、ボイル後、レトルト後においても層間の密着性を維持し、ガスバリア性能が低下しない高いガスバリア性を有するバリア性積層体を提供することが可能となるものであって、それらの構成の相互の関係を考慮しながら本件発明1の容易想到性を検討すべきである。甲3においては、ボイル、レトルトといった用途の記載すらなく、延伸ポリプロピレン樹脂層を備え、ガスバリア性塗布膜の表面の珪素原子と炭素原子の比(Si/C)を0.90以上1.60以下に設定した具体例は一切記載されていないことはもちろん、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)というパラメータに着目することを示唆するような記載すら存在しない。仮に、個別に相違点を判断する方法によるとしても、下記イ~エのとおり容易想到とはいえない。イ 相違点1-3甲3には耐熱性、耐湿性に関する記載はあるが、食品、医薬品、精密電子部品等と並列して記載されており、これらの包装材料に共通し保存環境の変化における温度、湿度の変化を踏まえたものであり、ボイル、レトルト処理といった食品用途に特化した過酷条件を想定したものではない。耐

5 水性に関しては、水蒸気に対するガスバリア性と関連するものであるし、

食品や医薬品などの内容物が液体状である(ないし液体状のものを含む)ことは当然に想定されるのであるから、この点もボイル・レトルト用に結び付ける根拠にはならない。甲3の【0012】の記載は、せいぜい温度40℃、湿度90%という条件における流通先の高温多湿な環境下を想定してものであって、本件明細書に記載の121℃で30分間の殺菌処理(レトルト処理)、95℃で30分間の殺菌処理(ボイル処理)という過酷条件下での耐熱性、耐湿性を想定したものではないことは明らかである。甲3からは、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料に共通の用途から、「ボイルまたはレトルト用」等の食品に特有の用途に変更する動機づけは何ら見出せない。食品に特有の用途といっても、求められる耐熱性、耐湿性のレベルは様々であり、ボイル又はレトルト用よりも低い用途も多数ある。その上、甲3発明のバリア性フィルムを「ボイルまたはレトルト用」として用いることには、以下のとおり、阻害要因がある。甲3発明は、23℃-65%RH条件(通常の室温条件)や40℃-90%RH(流通先などで想定される高温多湿条件)という条件においてすら、満足なガスバリア性が得られない態様を含んでおり(比較例2)、121℃で30分間の殺菌処理(レトルト処理の場合)、95℃で30分間の殺菌処理(ボイル処理の場合)という過酷条件下で十分なガスバリア性を発揮できるといえる根拠はない。また、実施例・比較例は、いずれも高分子フィルム基材として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いたものであるところ(【0080】)、一般にポリプロピレン(PP)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と比較して、融点及びガラス転移温度が非常に低いため、耐熱性が低く、ガスバリア性が明らかに劣ると考え

5 られる。高分子フィルム基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)

を用いた場合においてすら、十分な耐熱性など、ボイル又はレトルト用として用いた場合に所望のガスバリア性を発揮できないのであるから、これよりも耐熱性が低くガスバリア性が劣ると考えられるポリプロピレン(PP)を基材として用いた場合には、ガスバリア性がさらに悪化することが合理的に危惧される。ウ 相違点1-1本件決定は、当業者において、甲3の【0023】の記載及び周知技術1を参考にして、「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」を選択することに格別の困難性はないとする。しかし、甲3の【0023】に関して言えば、単に包装材料などの分野において一般的に用いられる樹脂材料を列記し、延伸か無延伸かの別を含めて極めて多くの選択肢が記載されているところ、この中から具体的にどれが優れているとか、どの材料を積極的ないし優先的に用いるべきなどの技術的思想は全く読み取れない。また、周知技術1の根拠とされているのは、同一の出願者に係る特許公報2つ(甲2、5)にすぎず、これをもって高分子フィルム基材として、延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用いることが周知であることの認定をすることはできない。また、甲2、5とも、ボイル、レトルト処理といった食品に特有の用途を想定したものではなく、ボイル又はレトルト用途でこれを用いることを示唆又は動機付けるような記載はない。エ 相違点1-2本件決定は、甲3発明において、甲4記載事項を参考にして、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとする。

5 しかし、甲3には、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)というパラメ

ータに関する記載は全く存在しないため、この比率に着目して調整を行うべき動機付けは存在せず、ましてやその数値範囲に関する技術的意味について何ら読み取ることはできない。その上、その実施例1~3では、本件発明1の「珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下」をいずれも充足していない。また、甲4は、真空断熱材用の外包材に関するものであり、甲3で想定されている食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料とは技術分野が異なる。また、本件決定は、甲4の「オーバーコート層」(【0115】表1において、珪素、炭素、酸素の各原子比率並びにSi/C比率が記載されている)を引用するが、甲4において規定する真空断熱材用外包材10Bの積層構造は、【0106】及び図4に示すとおり、第1樹脂基材5と金属酸化物リン酸層6からなる金属酸化物リン酸層付きフィルム1と熱溶着可能なフィルム4に挟まれたオーバーコート層付きフィルム13において、無機層8cの樹脂基板14とは反対の面側に配置されている。甲4に係る真空断熱材用外包材は、あくまでも真空断熱材の芯材を覆って保護しその芯材の真空度(真空度を保つ材料)を保持するための包材であり、当該断熱BOXに一時的に収納される商品の品質を保つための包材ではなく、甲3発明とはその用途が本質的に異なる。求められる用途についてみると、甲3発明では包装材料を透過する酸素、水蒸気等を遮断し、食品、医薬品、精密電子部品等の品質の劣化を防止することである(【0002】、【0003】)のに対し、甲4では、外部からの気体の対流を遮断することで、真空断熱材の高い断熱性能を発揮し、真空断熱材の断熱性能を長期間維持することによって、設備機器及び建物等の省エネルギー化並びに電気製品等の機器の消費エネルギー削減を達成することを目的とするもので(【0002】、【0003】)、用途、

5 使用環境、求められる性質が大きく異なっており、これらを組み合わせる

動機付けは見出せない。甲3発明と甲4では積層構造も大きく異なっており、これを捨象して、甲4の真空断熱材用外包材の一部であるオーバーコート層の組成のみ切り出して甲3発明に適用したところで、それと同じ効果が達成できるとは到底考えられない。珪素や炭素の割合に関する技術的意味についても、甲3の【0044】において、炭素の割合が少ないほど膜が脆くなることが読み取れるのに対し、甲4の【0111】において、逆に、炭素原子の割合が大きいほど脆性が大きくなることが記載されている。このように、両発明の技術的事項は明らかに相反しており、このような相反する技術を組み合わせることは到底考えられない。以上のことから、甲3発明に甲4記載事項を適用する動機付けは見出せないから、本件決定の判断は誤りである。

(3) 顕著な作用効果についての判断の誤り

ア 本件決定は、その構成が容易想到でありさえすれば、顕著な作用効果は検討する必要がないと述べているに等しいものであり、顕著な作用効果に基づいて進歩性が認められることはおおよそあり得ないということになるが、そのような判断手法が最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号・令和元年8月27日第三小法廷判決・裁判集民事262号51頁の趣旨に反することは明らかである。イ 本件発明に係るバリア性積層体は、①ボイル又はレトルト用という用途限定、②延伸ポリプロピレン樹脂層を備えた多層基材を用いること、それらを前提に、③ガスバリア性塗布膜の表面の珪素原子と炭素原子の比(Si/C)を0.90以上1.60以下とすることにより、従来のポリエステルフィルムに代わる樹脂材料を用いつつも、ボイル後、レトルト後においても層間の密着性を維持し、ガスバリア性が低下しない高いガスバリア性を有するバリア性積層体を提供することが可能となるものである。

5 珪素原子と炭素原子の比(Si/C)を0.90以上1.60以下とす

ることにより、ボイル後、レトルト後のガスバリア性が、上記の数値範囲外の場合と比較して顕著に優れており、ゲルボフレックス試験の結果においても良好な結果を示すという傾向は、実施例5(CVD法により炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した例)、実施例6(PVD法によりシリカ蒸着膜を形成した例)、実施例7(PVD法によりアルミナ蒸着膜を形成した例)いずれにおいても同様に見られるものである。このように珪素原子と炭素原子の比(Si/C)を所定の範囲に設定することにより、ボイル後、レトルト後のガスバリア性やゲルボフレックス試験後のガスバリア性に優れるという効果は、異議申立の手続において提出されたどの文献においても、開示も示唆もされていない。特に、ボイル後、レトルト後の優れたガスバリア性とゲルボフレックス試験の結果(物理的耐久性)を両立できるという作用効果は、甲3発明など公知発明において比較すべき対象が存在しない異質な効果である。よって、本件発明1は、相違点1-1から同1-3までに係る構成により、当業者が予測できない顕著な作用効果(異質な効果)を奏するのであるから、この観点からも進歩性が認められるべきである。【

(被告の主張)

】

(1) 甲3発明及び本件発明1と甲3発明の相違点の認定の誤りがあるとの点

についてア 甲3発明の認定に誤りがないことについて甲3には【技術分野】として、【0001】に「本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として用いられるガスバリア性フィルムに関する」と記載されているのであるから、甲3発明の認定としては、「食品等」としても、「医薬品等」としても、「精密電子部品等」としても、更には「食品、医薬品、精密電子部品等」のいずれの場合であっても、甲

5 3発明の認定として用いることに誤りはない。

原告は、甲3発明は、明らかにその技術的課題を解決できない態様をカバーしており、本件決定の引用発明の認定には誤りがある旨主張するが、

(原告の主張)

するところは、甲3に係る特許出願が仮に審査された際のサポート要件を満たしているかどうかに関係するものにすぎず、引用発明の認定の当否を左右するものではない。イ 本件決定における本件発明1と甲3発明の相違点の認定に誤りがないことについて本件決定における甲3発明の認定に誤りがないことは前記アのとおりであるから、本件決定における本件発明1と甲3発明の相違点の認定にも誤りはない。

(2) 相違点の判断に誤りがないことについて

ア 相違点1-3積層体の技術分野の技術者にとって、食品、医薬品、精密電子部品等に用いられる包装材料であっても、ボイル、レトルト処理への耐性を念頭に置くことは、例えば、乙2の[0113]、乙6の【0090】に示されるように特別なことではなく、甲3発明が、これら用途と同様の用途に用いられ得ることに加えて、甲3発明は、耐熱性や耐水性を課題としている(【0012】)ことを考慮すると、甲3発明を「ボイルまたはレトルト用」とすることに格別の困難性はない。原告は、ボイル又はレトルトについて、両者が「及び」で特定しているように主張するが、本件発明で特定する事項は「ボイル」 「レトルト」又は用の択一的な記載である。乙4によれば、ボイル用とは、90~100℃程度で、短時間というべき5~10分程度の処理を含むといえ、そのようなボイル処理で二軸延伸ポリプロピレン(OPP)に不都合が生じることはなく、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を用いることに阻害事由はな

5 い。

イ 相違点1-1甲3の【0023】には、「高分子フィルム基材」の材料として「ポリプロピレン」を用いることに加えて「延伸」処理も示されているところ、「包装用バリア性積層体における高分子フィルム基材として、延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用いること」が周知技術(周知技術1)であることからすると、「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」を選択することに格別の困難性はない。原告は、周知技術1の根拠とされているのは、同一の出願者に係る特許公報2つ(甲2、5)にすぎないとするが、「アンカーコート層中のヒドロキシル基とOPP基材表面との間で水素結合が生じ、密着性向上に寄与する。その結果、OPP基材1と酸化アルミニウム薄膜2と密着性をさらに向上させ、ボイル、レトルト処理においても、OPP基材1と酸化アルミニウム薄膜2との間で剥離することのない耐性が得られる。」との、乙2の[0046]の説明は、甲3のアンカーコート層における当業者の通常の理解を示したものといえる。すなわち、蒸着フィルムの樹脂に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)を採用することは文献を示すまでもなく周知技術で、当業者であれば当然に知っておくべき技術的事項であるから、周知例の数を問題視する

(原告の主張)

は適切でない。食品包装便覧(乙1)において、PETではコーティング処理に関する記載がないのに対し、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)では密着強度を高めるためのコーティング処理に関する記載があることを考慮すると、本件決定がアンカーコート層を備える甲3発明に適用すべき樹脂を二軸延伸ポリプロピレン(OPP)としたことは、むしろ、当業者の認識に合致するものである。ウ 相違点1-2

5 本件発明のバリアコート層に係る特定事項は、「バリアコート層が、金

属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜」と、択一的な記載となっている。この点、本件明細書の【0083】には、「蒸着膜上に、上記従来公知の方法により、該組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシドおよび水溶性高分子(組成物が、シランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。 と記載されており、」 バリアコート層について、「シランカップリング剤」を用いた場合には、それを用いない場合とは別異の複合ポリマー層として理解されるものである。また、「シランカップリング剤」はSiを含有するものであり、Si/Cの数値にも影響するものでもある。本件発明の「ボイルまたはレトルト」の効果に係る【表4】~【表7】の結果、及びSi/Cの数値範囲の効果に係る【表5】~【表7】の結果は、「シランカップリング剤」を用いた実施例を前提とするものであるところ(本件明細書【0106】、【0116】、【0155】、【0166】等)、シランカップリング剤を用いない態様の本件発明、すなわち、択一的な記載の他方の「バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜」を前提とすると、本件発明のSi/Cが「0.90以上1.60以下」(本件発明1)及び「0.92以上1.45以下」(本件発明2、12~16)とすることは、「ボイルまたはレトルト用」であることを含め、本件明細書に記載された実験等により効果が確認されたものではなく、特段の技術的意義はないといえる。

5 本件発明の数値範囲は、甲3から簡単な計算により算出できる範囲に包

含されるものである。すなわち、甲3発明の「X線光電子分光分析法」の分析における「炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在すること」から、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)は、0.1(炭素と酸素と珪素の割合が、それぞれ50%、45%、5%)以上、2(同じく15%、55%、30%)以下と算出することができ、この0.1~2の数値範囲は、本件発明の数値範囲である「0.90以上1.60以下」(本件発明1)及び「0.92以上1.45以下」(本件発明2、12~16)を包含するものである。また、蒸着膜上に設けられたバリアコート層が金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜蒸着膜という点で、甲3発明と技術が共通する甲4にも、Si/Cの比として上記の数値範囲である1.25、1.03のものが例示されている。このように、Si/Cの数値範囲に特段の技術的意義はないこと、上記の数値範囲が甲3から簡単に算出できるものであること、甲4(表1)にも同数値範囲内のものが例示されていること、層構成に係る共通の技術について「Si/C」を用いて数値範囲を検討することが甲4にあるとおり公知であることを併せると、甲3発明において甲4記載事項を参考にして、相違点1-2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。原告は、甲3に記載された発明と甲4に記載された発明の技術的事項は明らかに相反しており、両者を組み合わせることは考えられない旨の主張をするが、本件決定は相違点1-2について、甲3発明に甲4記載事項をそのまま導入して容易と判断しているのではなく、甲4記載事項における「Si/C」という公知の着眼点を参考にして容易と判断しているのである。甲3で示されているのは、炭素と酸素と珪素のうちの炭素の割合であ

5 り、甲4で示されているのは、金属原子数を炭素原子数で算術的に除した

もの、すなわち炭素原子に対する金属原子の比率であり、単に炭素原子の多寡を示しているものではない。そして、炭素の割合について甲3で求められる数値範囲を採るとともに、炭素原子に対する金属原子の比率について甲4で求められる数値範囲を採ることは可能であり、甲3と甲4の技術的事項は相反しない。

(3) 顕著な作用効果についての判断に誤りがないことについて

ア 本件発明1の効果は、「表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含」むことにより、「ポリプロピレンフィルムと蒸着層の層間の密着性に優れ、高いラミネート強度を有する包装容器を作製でき、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供できる」(【0023】)ことであるところ、ラミネート強度、ガスバリア性は、包装容器において常に求められる作用効果であるから、上記効果についても甲3発明から予測可能である。イ なお、本件決定で容易想到とした積層体は、「バリアコート層」が「シランカップリング剤」を用いない「金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜」に関するものであって、その効果が確認されていない積層体であるから、ボイル後、レトルト後の優れたガスバリア性とゲルボフレックス試験の結果(物理的耐久性)を両立できるという作用効果に関する

(原告の主張)

は本件明細書の記載に基づくものではない。

2 取消事由2~16(取消事由1を前提とした甲3発明又は甲3発明の2に基

づく本件発明2~16の進歩性の判断の誤り)【

(原告の主張)

】

(1) 本件発明2では、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、「0.92以

上1.45以下」と規定されており、本件発明1よりもより狭い範囲を規定するものであるし、本件発明12~16は、本件発明2の構成を実質的に全

5 て含むものであり、本件発明3~11に関しては、本件発明1を直接又は間

接的に引用することから、相違点の容易想到性に関しても、顕著な作用効果に関しても、前記1【

(原告の主張)

】において主張したことがそのままあてはまり、甲3発明又は甲3発明の2に対して進歩性を有する。

(2) 本件発明10は、シーラント層を備え、かつ該シーラント層がポリプロピ

レンであるから、甲3発明との相違点(相違点1-4)として、「本件発明10では、シーラント層を備え、かつ該シーラント層が、ポリプロピレン樹脂層と同一の材料であるポリプロピレンであることを規定するのに対し、甲3発明ではそのような構成を有していない点。」が認定されるべきである。本件決定は、上記の相違点を独立の相違点として認定していないが、「包装用の積層体において、バリア性フィルムとシーラント層を備え、バリア性フィルムの高分子フィルムとして延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用い、シーラント層をポリプロピレンにより構成すること」は、本件特許に係る優先日前(本件決定24頁に「本件特許に係る出願前」とあるのは誤記と認める。裁判所注記)に周知の技術であるとしている。しかし、この周知技術の根拠として引用されているのは公報一つ(甲2)にすぎず、これで周知技術を認定できるはずがない。その上、甲2において、バリア性フィルムとシーラント層を備え、バリア性フィルムの高分子フィルムとして延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用い、シーラント層をポリプロピレンにより構成していることを、具体的な技術思想として開示する記載はなく、まして、本件明細書の【0089】にあるように、基材とシーラント層をポリプロピレンにすることによりリサイクル適正を向上させ、さらに耐油性の向上も図れるという技術的意味に関しては具体的な技術思想として開示されていない。加えて、甲3発明は「高分子フィルム基材」であるのに対し、本件発明1は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」である点において

5 両発明は異なっているところ、これに加えて、上記相違点1-4の構成を採

用することは、いわゆる「容易の容易」に該当し、当業者といえども格別の創意工夫を要するものと考えられるため、この意味においても容易想到とは認められない。上記の点は、本件発明13~16にも同様に妥当する。

(3) 本件明細書の【0089】にあるような、基材とシーラント層をポリプロ

ピレンにすることによりリサイクル適正を向上させ、さらに耐油性の向上も図れるという技術的意味に関しては、甲2を含め、異議申立ての手続において提出されたどの文献においても、開示も示唆もされていない。したがって、本件発明10の効果が、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえることは明らかである。上記の点は、本件発明13~16にも同様に妥当する。【

(被告の主張)

】

(1) 本件発明2で珪素原子と炭素原子の比(Si/C) 「0.

が、 92以上1.45以下」であることは技術的意味を持たない。本件発明12~16についても同様である。また、原告は、本件発明1が進歩性を有することを前提として、本件発明3~11が進歩性を有することを主張するが、その前提に誤りがあることは前記1【

(被告の主張)

】から明らかである。

(2) 原告は、周知技術の根拠として甲2しか挙げられていないことを問題とす

るが、周知例は一つでも、又は特に例示しなくても、その認定に誤りがなければ問題はない。甲2には、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面にプライマーを積層し(【0075】~【0077】)、プライマー層上に無機化合物からなるガスバリア性の薄膜層を積層し(【0080】)、ドライラミネートにより未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した(【0083】)ものが記載され

5 ていることに加えて、乙7には、基材フィルムとして二軸延伸されたポリプ

ロピレンフィルムを用い(【0165】)、シーラントフィルムとしてポリプロピレンフィルムを用いて(【0175】)ドライラミネート法により貼り合わせた(【0162】、【0163】)ものが記載されていることから、本件決定において、上記周知技術を認定したことに誤りはない。また、同一の材料を用いることでリサイクル性に優れたものとなることは自明であり、甲2の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムを用いた層構成とすることで、リサイクル性に優れたものとなることは明らかである。同一の材料を用いることでリサイクル性に優れたものとなることは自明であったから、甲3発明においてシーラント層を備えるようにする際に、その材料は、甲3発明の「高分子フィルム基材」に応じて適宜決め得ることであるといえ、また、包装用の積層体において、バリア性フィルムとシーラントフィルム層のいずれをもポリプロピレンにより構成することも周知の技術であったから、甲3発明において、「高分子フィルム基材」と「シーラント層」をいずれもポリプロピレンとすることに格別の困難性があるわけはなく、

(原告の主張)

するようないわゆる「容易の容易」などというものではない。

(3) 耐油性についても、一般的なポリプロピレンが有している性質であり、予

測可能なものにすぎない。

第4 当裁判所の判断

1 個別の取消事由の検討に入る前提として、主引例である甲3の記載事項を検討しておく。甲3には、別紙5「甲3の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があり、これによれば、甲3には(1)以下の開示があることが認められる。

(1) 甲3発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として用いられるガスバリア性フィルムに関する(【0001】)。

(2) 食品、医薬品、精密電子部品等の包装に用いられる包装材料は、包装材料

5 を透過する酸素、水蒸気等を遮断し、例えば食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制して、食品の風味や鮮度を保持するためにガスバリア性を備えることが求められている(【0002】)。

(3) ガスバリア性包装材料としては、塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレンフィルム(KOP) 又はポリエチレンテレフタレートフィルム、 (KPET)等のガスバリア性の比較的高い高分子樹脂組成物を用いた包装フィルムや、アルミニウム箔などの金属箔、あるいは、単独では高いガスバリア性を有していない高分子樹脂組成物にアルミニウムなどの金属を蒸着した金属蒸着フィルムが一般的に使用されてきた。高分子樹脂組成物を用いた包装フィルムは、金属箔や金属蒸着フィルムに比べるとガスバリア性に劣り、温度及び湿度の影響を受けやすく、その変化によってはさらにガスバリア性が劣化することがある。一方、金属箔や金属蒸着フィルムは、包装体の内容物を透視して確認することができないという欠点を有していた 【0004】(~【0006】)。この欠点に対応するために、金属酸化物、珪素酸化物等のセラミック薄膜を、透明性の高分子材料からなる基材上に、蒸着などの形成手段により形成した蒸着フィルムが上市されているが、セラミック薄膜が可撓性に欠けており、揉みや折り曲げに弱く、また基材との密着性が悪いため、印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、クラックを発生しガスバリア性が著しく低下するという問題があった(【0007】、【0008】)。基材に金属アルコキシドの被膜を形成してなるガスバリア材は絶対的なガスバリア性を有するとはいえず(【0009】)、基材に酸化珪素(SiOx)の蒸着薄膜を形成し、その蒸着薄膜上にSiO2 粒子と水溶性樹脂あるいは水性エマルジョンの混合溶液をコーティングした後、乾燥する方法は、蒸着薄膜の保護層程度の意味しかなかった(【0010】、【0011】)。

(4) 甲3発明は、可撓性を有するとともに酸素、水蒸気などに対するガスバリ

5 ア性に優れ、耐熱性、耐湿性、耐水性を有し、かつ製造が容易なガスバリア性フィルムを提供することを目的とする(【0012】)。

(5) 甲3発明は、請求項1、3、5、6記載の構成を採ることにより、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として使用可能な、高いガスバリア性、耐熱性、耐湿性、耐水性並びに変形に耐えられる可撓性を有する透明ガスバリア性フィルムが、安価なコストで得られる(【0021】)。

(6) バリア性フィルムを、高分子フィルム基材の表面にアンカーコート層を設け、その上に金属酸化物蒸着層と有機無機ハイブリッドバリア層が順次設けられた構造(【図2】)のものとし、アンカーコート層2を設けることにより、高分子フィルム基材と金属酸化物蒸着層との接着性を高め、バリア性フィルムの揉みや折り曲げに対する耐性を高め、ガスバリア性を安定的に発揮させ(【0052】)、酸化アルミニウム蒸着層中のアルミニウムと酸素の比率を測定して、1:1.5~1:3.0の範囲内とすることで透明性やガスバリア性を損なうことがないこととし(【0049】)、有機無機ハイブリッドバリア層を、コスト的に安価な液相コーティング(【0009】)で形成し、金属酸化物蒸着層に生じるマイクロクラックの広がりを抑え、クラック部位を保護する(【0010】)役割を期待するとともに、X線光電子分光分析法による炭素と酸素と珪素の割合が所定の範囲の組成とすることで、温度・湿度の影響や膜質の緻密さ・脆さも考慮しつつ、ガスバリア性が悪くなる(【0044】)のを防ぐことができる。

2 取消事由1(甲3発明に基づく本件発明1の進歩性の判断の誤り)について(1) 原告は、本件決定には甲3発明の認定の誤りがあり、その結果、本件発明1と甲3発明の相違点の認定にも誤りがあると主張するが、上記1によれば、基本的には本件決定が認定するとおりの甲3発明を認めることができ、相違点も、本件決定の認定するとおりと認める。この点に関する原告の主張は、以下のとおり、いずれも採用できない。

5 ア 原告は、最初の取消理由通知(甲7)における甲3発明の認定のように、高分子フィルム基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることや有機無機ハイブリッドバリア層5における炭素並びに珪素の組成割合を特定すべきである旨主張する。しかし、上記1の甲3の記載事項からは、透明性も確保しつつガスバリア性を向上するひとまとまりの構成及び技術思想としての甲3発明を認定することができ、原告の主張するように個別具体的な数値等まで特定しなればならないものではない。イ 原告は、甲3は、【0001】、【0002】の記載から、食品、医薬品、精密電子部品の包装に共通して用いられるガスバリア性フィルムに関するものであるから、「食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルム」との認定をするのが不当である旨主張するが、用途として食品、医薬品、精密電子部品が例示される甲3から、食品包装の用途を抽出してはならない理由はなく、【0002】、【0003】も、食品、医薬品、精密部品それぞれについてガスバリア性包装材の効用を個別に論じているところである。ウ 原告は、本件決定で認定した甲3発明は、技術的課題を解決できない比較例2の態様を含むから不当である旨主張するが、甲3に記載された比較例2は、【0089】に「ベース樹脂のEVOH樹脂が溶媒中に十分に溶解できなかった」と説明されるものであって、有機無機ハイブリッドバリア層を形成するにあたり「水酸基を有する水溶性高分子」を用いていないと理解される点において、甲3発明に含まれるものではないから、原告主張は前提を欠くものであり、採用できない。エ 以上のとおりであって、本件決定の甲3発明の認定には誤りはなく、また、この点に誤りがあることを前提とする本件発明1と甲3発明の相違点

5 の認定の誤りに関する原告の主張も理由がない。(2) 相違点の容易想到性についての判断の誤りについてア 原告は、本件決定が相違点1-1から同1-3までを関連付けずに判断

している点が誤りであると主張するところ、当裁判所は、相違点1-1は

ともかく、少なくとも相違点1-2と相違点1-3は一体として検討する

必要があると判断する。その理由は、以下のとおりである。

本件発明の内容は前記第2の2のとおりであって、ポリプロピレンフィ

ルムと蒸着膜との間に、密着性に優れた極性基を有する樹脂材料を含む表

面コート層を備えることにより、層間の剥離を防止し、また、シランカッ

プリング剤とともに用いられる場合も含め金属アルコキシドと水溶性高

分子との樹脂組成物からなるバリアコート層を蒸着膜上に設けることで、

蒸着膜のクラック発生をも防止し、さらには、ボイル又はレトルト処理が

行われる場合であってもガスバリア性の低下の抑制が図られるように、バ

リアコート層表面の珪素原子と炭素原子との割合を特定の範囲にしたも

のであって、高いガスバリア性を有するボイル又はレトルト用バリア性積

層体を提供するという技術的意義を有するといえる。そして、本件明細書

によれば、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)の上限は、バリア性積層

体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できるという観点から定め

られ、下限は、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制で

きるという観点から定められているのであるから(【0076】、表5~

表7)、ボイル又はレトルト用であるか否かに係る相違点1-3と、珪素

原子と炭素原子の比の数値範囲に係る相違点1-2は、一体として検討さ

れるべきものである。

イ 以上を前提に、相違点1-2と相違点1-3に係る容易想到性につき一

括して判断するに、まず、本件決定が副引用例とする甲4には、別紙6の

記載があり、ここから本件決定の認定に係る甲4記載事項(別紙4の1(2))

を認定できることについては争いがない。

甲4は、電気製品等の機器の消費エネルギーを削減するための真空断熱

材用外包材等に関するもので、外包材により形成された袋体内に芯材を配

置し、上記芯材が配置された袋体の内部を減圧して真空状態とし、上記袋

体の端部を熱溶着して密封し、上記袋体内部を真空状態とすることにより、

気体の対流が遮断されるため、真空断熱材は高い断熱性能を発揮すること

ができるというものである(【0001】~【0003】)。

甲4記載事項は、第1フィルム(金属酸化物リン酸層付きフィルム。第

樹脂基材と金属酸化物リン酸層から成る。)、オーバーコート層付きフ

ィルム(樹脂基板、無機層、オーバーコート層から成る。)、熱溶着可能

なフィルムから構成される真空断熱材用外包材のうち、オーバーコート層

付きフィルムの中のオーバーコート層及び無機層をもとに抽出されたも

のである。

ウ 本件決定は、甲3発明に、甲4記載事項のオーバーコート層における炭

素原子に対する珪素原子の比率を適用するものである。

しかし、甲4記載事項は、前提とする積層構造が、甲3発明と異なる上、

以下のとおり、甲4は、甲3発明とは技術分野が共通するものとはいい難

く、さらに、相違点1-3に係る構成(ボイル又はレトルト用)を開示又

は示唆するものでもない。すなわち、甲4は、高温高湿な環境においても

長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材用外包材等の提供を

目的とするものであるが(【0008】)、高温多湿な「環境」を想定す

るにとどまり、物を入れて積極的に加熱殺菌処理をする行為であるレトル

トやボイル(一例として、優先日前の公知文献である特開2007-13

号公報〔乙4〕では、レトルト処理について110℃~130℃

位、圧力、1~3Kgf/cm ・G位で約20~60分間程度の加熱加

圧殺菌処理、ボイルについて90℃位で30分間位の加熱殺菌処理〔【0

002】 等が挙げられている。 を想定しているとはおよそ考えられず、

〕 )

実際、甲4には、レトルトやボイルを前提とする記載はない。

その上、甲3の【0044】には、「炭素の割合が50%より多い場合、

バリア性が温度、湿度の影響を受け易く、15%より少ない場合、バリア

性が悪くなり、膜質が脆くなる。」として、炭素が少なすぎると膜質が脆

くなることが示唆されているのに対し、甲4の【0111】には、「オー

バーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率

(金属原子数/炭素原子数)は、0.1以上、2以下の範囲内であり、中

でも0.5以上、1.9以下の範囲内、特には0.8以上、1.6以下の

範囲内であることが好ましい。」という炭素原子に対する金属原子の比率

(金属原子数/炭素原子数)を示す記載に引き続いて、「比率が上記範囲

に満たないと、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバー

コート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、比率が上

記範囲を超えると、得られるオーバーコート層のガスバリア性が低下する

場合がある。」として、金属原子に対して炭素原子の数が過剰に多くなる

とオーバーコート層の脆性が大きくなって、ガスバリア性の低下につなが

る旨の記載があるところ、これは、上記甲3の【0044】の記載と正反

対の内容である。

そうすると、当業者において、甲3発明の食品包装材料についてボイル

又はレトルト用途とすることを想起したとしても、甲4におけるオーバー

コート層を構成する原子における金属原子の比率は加熱によってもガス

バリア性が維持されるかどうかとは関わりのないものであること、甲4に

は、炭素原子と金属原子の比率と、膜質の脆性について、甲3と正反対の

記載があることに鑑みても、甲3発明とは技術分野も積層構造も異なる真

空断熱材用外包材に関する甲4の積層体の中から、オーバーコート層付き

フィルムの中のオーバーコート層及び無機層に関する記載に着目した上、

オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数

/炭素原子数)を参酌して、甲3発明に適用する動機付けを導くには無理

があるというほかなく、本件決定の判断には誤りがある。

エ 被告は、Si/Cの数値範囲に特段の技術的意義はなく、層構成に係る

共通の技術について「Si/C」を用いて数値範囲を検討することが甲4

にあるとおり公知であることを併せると、甲3発明において甲4記載事項

を参考にして、相違点1-2に係る本件発明の構成とすることは、当業者

が容易に想到し得た旨主張する。

被告が、Si/Cの数値範囲に特段の技術的意義はないと主張する根拠

は、①本件発明1の発明特定事項が「バリアコート層が、金属アルコキシ

ドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜で

あるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリ

ング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜」と択一的なも

のになっており、シランカップリング剤には珪素が含まれるにもかかわら

ず、本件明細書上効果が確認されているのはシランカップリング剤を含む

バリアコート層だけであるという点、②本件発明1の数値範囲は甲3から

簡単に算出でき、甲4にも同数値範囲内のものが例示されているという点

にある。

しかし、上記①についていえば、シランカップリング剤が珪素を含むと

いうような一般論だけで、シランカップを含むものであるバリアコート層

の効果に係る【表4】~【表7】の結果、及びSi/Cの数値範囲の効果

に係る【表5】~【表7】が、シランカップ剤を含まないバリアコート層

について技術的意義がないとは直ちにいえないし、そもそも、技術的意義

が裏付けられているかどうかと、構成が容易想到といえるかどうかの問題

は直結するものではない。

また、上記②についていえば、甲3発明の「X線光電子分光分析法」の分

析における「炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、

~30%の割合で存在すること」から、珪素原子と炭素原子の比(Si/

C)は、0.1以上、2以下と算出することができ、この数値範囲は、本件

発明1の数値範囲である「0.90以上1.60以下」を包含するからとい

って、炭素と酸素と珪素の数値範囲で一定の技術的意義を示している甲3

の記載から、炭素と珪素だけを抽出すべき合理的な理由、技術的な必然性

は認められない。

甲4の表1には、30質量部(Si/C比率1.58)、38.5質量部

(同比率1.25)及び50質量部(同比率1.03)という、本件発明1

の数値範囲内のものが開示されているが、同表では膜特性は示されておら

ず、このSi/C比率で、本件発明1の数値範囲外の他の質量部より優れ

ていることが示されているわけでもないから、当業者が当該数値に着目す

るともいえない。

そして、甲3とは「層構成に係る発明である」という程度の共通性しかな

い甲4に「Si/C」を用いて数値範囲を検討することが記載されていた

からといって、当業者において甲4記載事項を参考にして相違点1-2、

相違点1-3に係る構成とすることが容易に想到できるとはいえない。

(3) 結論

以上によれば、相違点1-1の容易想到性及び顕著な作用効果について判

断するまでもなく、本件発明1は甲3発明に基づいて容易に発明することが

できたとはいえないから、取消事由1には理由がある。

取消事由2~16(取消事由1を前提とした甲3発明又は甲3発明の2に基

づく本件発明2~16の進歩性の判断の誤り)について

(1) 本件発明2~16の構成について

本件発明2は、珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、「0.92以上

.45以下」と規定されており、本件発明1よりも狭い範囲を規定する点

以外は、本件発明1と同じ発明特定事項を備えている。

本件発明3~11は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用し、本

件発明1の発明特定事項を全て含むものである。

本件発明12~16は、いずれも本件発明2の発明特定事項を実質的に全

て含むものである。

そして、本件発明2~16は、X線光電子分光法(XPS)により測定さ

れるガスバリア性塗布膜の表面の珪素原子と炭素原子の比(Si/C)の範

囲が特定され、かつ用途が「ボイルまたはレトルト用」に特定される点にお

いて本件発明1と共通する。

(2) 相違点の容易想到性の判断の誤りについて

いずれも積層体の発明である本件発明2~10、12、13、15を、主

引用発明である甲3発明と対比すると、本件発明1における相違点1-2に

係る構成と相違点1-3に係る構成との関係同様、ボイル又はレトルト用と

するために、特定の珪素原子と炭素原子の比を採用するかどうかという一体

的に検討すべき相違点を生ずるが、甲3発明に甲4記載事項を適用する動機

付けが認められないことは、前記2のとおりである。

いずれも「包装容器」に関する発明である本件発明11、14、16を、

主引用発明である甲3発明の2と対比すると、本件発明1における相違点1

-2に係る構成と相違点1-3に係る構成との関係同様、ボイル又はレトル

ト用とするために、特定の珪素原子と炭素原子の比を採用するかどうかとい

う一体的に検討すべき相違点を生ずるが、甲3発明に甲4記載事項を適用す

る動機付けが認められないことは、前記2のとおりであり、甲3発明と実質

同じ特徴を有する甲3発明の2に、甲4記載事項を適用する動機付けがある

ともいえない。

(3) 結論

以上によれば、その余の相違点の容易想到性及び顕著な作用効果について

判断するまでもなく、本件発明2~16は甲3発明又は甲3発明の2に基づ

いて容易に発明することができたとはいえないから、取消事由2~16には

理由がある。

結論

以上のとおり、取消事由1~16はいずれも理由があるから、本件決定を取

り消すこととし、主文のとおり判断する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

宮 坂 昌 利

裁判官

本 吉 弘 行

裁判官

岩 井 直 幸

別紙1 略語一覧

(略語) (意味)・本件特許:原告を特許権者とする特許第6902231号・本件決定:本件特許に係る異議2022-700021号事件について特許庁が令和5年7月7日にした特許取消決定(本件訴訟の対象)・本件訂正:原告の令和4年12月27日付け訂正請求に係る本件特許の特許請求の範囲の訂正・本件発明:本件特許の請求項1~16に係る発明の総称(本件訂正後のもの)請求項の番号に応じ、「本件発明1」等という。・本件明細書:本件特許に係る明細書・甲3発明:甲3(特開2009-154449号公報)に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙4の1(1))・甲3発明の2:甲3発明を包装材料として用いた包装の発明・甲4記載事項:甲4(特開2017-211082号公報)に記載された事項として本件決定が認定した内容(別紙4の1(2))・周知技術1:甲2(特開平10-264292号公報)及び甲5の2(特表2021-503037号公報)に係る国際公開である甲5(国際公開第2019/088265号)から認められる「包装用バリア性積層体における高分子フィルム基材として、延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用いること」という本件特許に係る優先日前に周知の技術・周知技術3:甲2から認められる「包装用の積層体において、バリア性フィルムとシーラント層を備え、バリア性フィルムの高分子フィルムとして延伸処理が施されているポリプロピレン樹脂フィルムを用い、シーラント層をポリプロピレンにより構成すること」という本件特許に係る優先日前に周知の技術

別紙2 本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項2以下)

【請求項2】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項3】前記多層基材の総厚さに対する、前記表面コート層の厚さの割合が、0.08%以上20%以下である、請求項1に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項4】前記表面コート層の厚さが、0.02μm以上10μm以下である、請求項1または3に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項5】前記樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH) ポリビニルアルコール、 (PVA)、ポリエステル、ポリエチレンイミン、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロン、アモルファスナイロンおよびポリウレタンから選択される1以上の樹脂材料である、請求項1,3,4のいずれか一項に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項6】前記表面コート層は、水系エマルジョンまたは溶剤系エマルジョンを用いて形成された層である、請求項1,3~5のいずれか一項に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項7】包装容器用途に用いられる、請求項1、3~6のいずれか一項に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項8】前記無機酸化物が、シリカ、酸化炭化珪素またはアルミナである、請求項1,3~7のいずれか一項に記載のボイルまたはレトルト用バリア性積層体。【請求項9】請求項1,3~8のいずれか一項に記載のバリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用ヒートシール性積層体。【請求項10】前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、前記同一材料は、ポリプロピレンである、請求項9に記載のボイルまたはレトルト用ヒートシール性積層体。【請求項11】請求項9または10に記載のヒートシール性積層体を備えることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用包装容器。【請求項12】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする、ヒートシール性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とする、ボイルまたはレトルト用ヒートシール性積層体。【請求項13】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする、ヒートシール性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とし、前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、前記同一材料は、ポリプロピレンである、ボイルまたはレトルト用ヒートシール性積層体。【請求項14】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体と、シーラント層とを備えるヒートシール性積層体を備えることを特徴とする、包装容器であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とし、前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、前記同一材料は、ポリプロピレンである、ボイルまたはレトルト用包装容器。【請求項15】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備え、包装容器用途に用いられるバリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする、ヒートシール性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とし、前記シーラント層が、ポリプロピレンにより構成される、ボイルまたはレトルト用ヒートシール性積層体。【請求項16】多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体と、シーラント層とを備えるヒートシール性積層体を備えることを特徴とする、包装容器であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下であることを特徴とし、前記シーラント層が、ポリプロピレンにより構成される、ボイルまたはレトルト用包装容器。

別紙3 本件明細書の記載事項及び図面(抜粋)

【技術分野】【0001】本発明は、バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器に関する。【背景技術】【0002】ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルからなるフィルム(以下、ポリエステルフィルムともいう) 機械的特性、は、 化学的安定性、耐熱性および透明性に優れると共に、安価である。そのため、従来、ポリエステルフィルムは、包装容器の作製に使用される積層体を構成する基材として使用されている。【0003】包装容器に充填される内容物によっては、包装容器には高い酸素バリア性および水蒸気バリア性などのガスバリア性が要求される。この要求を満たすべく、包装容器は、ポリエステルフィルム表面に、アルミナやシリカなどを含む蒸着膜を形成することが広く行われている(特許文献1)。【0004】近年、ポリエステルフィルムに代わる樹脂材料が模索されており、ポリオレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムを基材に適用することが検討されている。【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明者らは、従来のポリエステルフィルム基材に代えて、ポリプロピレンの延伸フィルム(以下、延伸ポリプロピレンフィルムともいう)を使用することを検討した。検討の結果、本発明者らは、延伸ポリプロピレンフィルムの表面に蒸着膜を形成しても、満足するガスバリア性を得ることができないという新たな課題を見出した。【0007】そして、本発明者らが検討を進めたところ、該延伸ポリプロピレンフィルムに蒸着膜を設けた積層フィルムを使用した包装容器では、ポリエステルフィルム基材を使用する従来の積層フィルムには見られない特有の現象、即ち、延伸ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間で剥離が生じていることを見出し、その現象がガスバリア性を不十分なものとしているとの知見を得た。【0008】そして、本発明者らは、延伸ポリプロピレンフィルム表面に、極性基を有する樹脂材料を含む表面コート層を設けることにより、当該表面コート層上に形成される蒸着膜の密着性が改善されると共に、ガスバリア性も向上するとの知見を得た。【0009】本発明はかかる知見に基づいてなされ、その解決しようとする課題は、蒸着膜との層間の密着性に優れる多層基材を備え、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供することである。【0010】本発明の解決しようとする課題は、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体を提供することである。本発明の解決しようとする課題は、該ヒートシール性積層体を備える包装容器を提供することである。【課題を解決するための手段】【0011】本発明のバリア性積層体は、多層基材と、蒸着膜とを備え、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、かつ前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜が、無機酸化物から構成されることを特徴とする。【0012】上記バリア性積層体は、蒸着膜上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。【0013】上記バリア性積層体は、多層基材と、蒸着膜と、バリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、前記バリア性積層体は、前記蒸着膜上に、バリアコート層を備え、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、1.60以下であってもよい。【0014】上記バリア性積層体において、多層基材の総厚さに対する、表面コート層の厚さの割合が、 08%

0.以上20%以下であってもよい。【0015】上記バリア性積層体において、表面コート層の厚さが、0.02μm以上10μm以下であってもよい。【0016】上記バリア性積層体において、樹脂材料が、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル、ポリエチレンイミン、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、MXDナイロン、アモルファスナイロンおよびポリウレタンから選択される1以上の樹脂材料であってもよい。【0017】上記バリア性積層体において、表面コート層は、水系エマルジョンまたは溶剤系エマルジョンを用いて形成された層あってもよい。【0018】上記バリア性積層体は、包装容器用途に用いられてもよい。【0019】上記バリア性積層体において、無機酸化物が、シリカ、酸化炭化珪素またはアルミナであってもよい。【0020】本発明のヒートシール性積層体は、上記バリア性積層体と、シーラント層とを備えることを特徴とする。【0021】上記ヒートシール性積層体において、シーラント層が、ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、同一材料は、ポリプロピレンである。【0022】本発明の包装容器は、上記ヒートシール性積層体を備えることを特徴とする。【発明の効果】【0023】本発明によれば、ポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間の密着性に優れ、高いラミネート強度を有する包装容器を作製でき、高いガスバリア性を有する、バリア性積層体を提供できる、本発明によれば、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体を提供できる。本発明によれば、該ヒートシール性積層体を備える包装容器を提供できる。【発明を実施するための形態】【0025】(バリア性積層体)本発明のバリア性積層体10は、図1に示すように、多層基材11と、蒸着膜12とを備え、該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、表面コート層14とを少なくとも備える。一実施形態において、本発明のバリア性積層体10は、図2に示すように、蒸着膜12上に、バリアコート層15をさらに備える。以下、本発明のバリア性積層体が備える各層について説明する。【0027】(多層基材)多層基材は、ポリプロピレン樹脂層と、表面コート層とを備える。【0028】(ポリプロピレン樹脂層)ポリプロピレン樹脂層は、ポリプロピレンにより構成される。ポリプロピレン樹脂層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。多層基材が、ポリプロピレンにより構成される層を備えることにより、該多層基材を使用して作製される包装容器の耐油性を向上できる。【0029】ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されたフィルムである。該延伸処理は一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。・・・延伸倍率を2倍以上とすることにより、ポリプロピレン樹脂層の強度および耐熱性をより向上できる。また、ポリプロピレン樹脂層への印刷適性を向上できる。・・・【0036】(表面コート層)多層基材は、ポリプロピレン樹脂層上に、極性基を有する樹脂材料を含む表面コート層を備え、該表面コート層上には高い密着性を有する蒸着膜を形成でき、ガスバリア性を向上できる。後述するように、表面コート層を備えるバリア性積層体を使用して作製される包装容器は高いラミネート強度を有する。【0037】表面コート層は極性基を有する樹脂材料を含む。本発明において、極性基とは、ヘテロ原子を1個以上含む基を指し、例えば、エステル基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸無水物基、スルフォン基、チオール基およびハロゲン基などが挙げられる。これらの中でも、包装容器のラミネート性の観点からは、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、水酸基およびアミノ基が好ましく、カルボキシル基および水酸基がより好ましい。【0038】極性基を有する樹脂材料としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH) ポリビニルアル、コール(PVA) ポリエステル、、 ポリエチレンイミン、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、ナイロン6、ナイロン6, MXDナイロン、

6、 アモルファスナイロン、ポリウレタンなどのポリアミドが好ましく、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体およびポリビニルアルコールがより好ましい。極性基を有する樹脂材料は、加熱後のガスバリア性の観点から、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。このような樹脂材料を使用することにより、表面コート層上に形成される蒸着膜の密着性を顕著に改善でき、そのガスバリア性を効果的に向上できる。【0045】(蒸着膜)本発明のバリア性積層体は、表面コート層上に無機酸化物から構成される蒸着膜を備える。これにより、バリア性積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。また、本発明のバリア性積層体を用いて作製した包装容器は、包装容器内に充填された内容物の質量減少を抑えることができる。【0046】無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ) 酸化珪素、 (シリカ) 酸化マグシウム、、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)などを挙げることができる。上記した中でも、シリカ、酸化炭化珪素およびアルミナが好ましい。一実施形態において、蒸着膜形成後のエージング処理が必要ないため、無機酸化物は、シリカがより好ましい。一実施形態において、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できることから、無機酸化物は、炭素含有酸化珪素がより好ましい。【0061】(バリアコート層)本発明のバリア性積層体は、蒸着膜上にバリアコート層をさらに備えることができる。これにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上できる。【0067】他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。このようなバリアコート層を蒸着膜上に設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止できる。【0068】一実施形態において、金属アルコキシドは、下記一般式で表される。R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、それぞれ、炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。)【0069】金属原子Mとしては、例えば、珪素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムなどを使用できる。R1およびR2で表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基およびi-ブチル基などのアルキル基を挙げることができる。【0071】上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができるが、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましい。エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよび β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。【0074】ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量は、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上500質量部以下であることが好ましい。ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上とすることにより、バリア性積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上できる。ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して500質量部以下とすることにより、ガスバリア性塗布膜の製膜性を向上できる。【0075】ガスバリア性塗布膜において、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比(金属アルコキシド/水溶性高分子)は、質量基準において、4.5以下であることが好ましく、1.0以上4.5以下であることがより好ましく、1.7以上3.5以下であることがさらに好ましい。水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を4.5以下とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を1.0以上とすることにより、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。なお、上記比は、固形分比である。【0076】ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、1.60以下であることが好ましく、0.50以上1.60以下であることがより好ましく、0.90以上1.35以下であることがさらに好ましい。珪素原子と炭素原子の比を1.60以下とすることにより、バリア性積層体を屈曲させてもガスバリア性の低下を抑制できる。珪素原子と炭素原子の比を0.50以上とすることにより、バリア性積層体を加熱してもガスバリア性の低下を抑制できる。珪素原子と炭素原子の比の上記範囲は、水溶性高分子に対する金属アルコキシドの比を適宜調整することにより達成できる。なお、本明細書において、珪素原子と炭素原子の比は、モル基準である。【0085】(ヒートシール性積層体)本発明のヒートシール性積層体20は、・・・図7に示すように、上記バリア性積層体10と、シーラント層21とを備えることを特徴とする。・・・一実施形態において、図7に示すように、ヒートシール性積層体20のバリア性積層体10は、多層基材11と、蒸着膜12と、蒸着膜12上に設けられたバリアコート層15とを備え、該多層基材11は、ポリプロピレン樹脂層13と、表面コート層14とを少なくとも備える。【0088】(シーラント層)一実施形態において、シーラント層は、熱によって相互に融着し得る樹脂材料により形成できる。熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、メチルペンテンポリマーおよび環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィンが挙げられる。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE) 中密度ポリエチレン、 (MDPE) 高密度ポリエチレン、 (HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレンおよびプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体等のエチレン-プロピレン共重合体が挙げられる。熱によって相互に融着し得る樹脂材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィンをアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂なども挙げられる。【0089】従来、基材と、シーラント層とを異種の樹脂材料により構成した積層体が包装容器の作製に使用されている。しかしながら、使用済みの包装容器を回収した後、基材とシーラント層とを分離するのが困難であるため、積極的にはリサイクルされていないという現状がある。基材とシーラント層とを同一材料によって構成することにより、基材とシーラント層とを分離する必要がなく、そのリサイクル適正を向上できる。即ち、上記した樹脂材料の中でも、ヒートシール性積層体を用いて作製した包装容器のリサイクル適性という観点からは、シーラント層は、ポリプロピレンから構成されることが好ましい。シーラント層をポリプロピレンにより構成することにより、ヒートシール性積層体を用いて作製される包装容器の耐油性を向上できる。【実施例】【0103】実施例1-1一方の面がコロナ処理された、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ(株)製、ME-1)のコロナ処理面に、下記組成の表面コート層形成用塗工液を塗布、乾燥して、厚さ0.μmの表面コート層を形成し、多層基材を作製した。(表面コート層形成用塗工液組成)・ポリビニルアルコール 5質量%(日本ビ・ポバール(株)製、VC-10、重合度1000、ケン化度99.3モル%以上)・水 90質量%・イソプロパノール(IPA) 5質量%【0104】上記のように作製した多層基材の表面コート層上に、実機である低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、Roll to Rollにより、多層基材にテンションを与えながら、厚さ12nmの炭素含有酸化珪素蒸着膜を形成した(CVD法)。なお、蒸着膜形成条件は以下の通りとした。(形成条件)・ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)・冷却・電極ドラム供給電力:22kw・ライン速度:100m/min【0105】炭素含有酸化珪素蒸着膜において、炭素の割合C、珪素の割合Si、および酸素の割合Oは、珪素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、それぞれ、32.7%、29.8%、および37.%であった。各元素の割合は、X線光電子分光法(XPS)により、下記の測定条件のナロースキャン分析によって測定した。(測定条件)使用機器:「ESCA-3400」(Kratos製)[1]スペクトル採取条件入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)X線出力:150W(10kV・15mA)X線走査面積(測定領域):約6mmφ光電子取込角度:90度[2]イオンスパッタ条件イオン種:Ar+加速電圧:0.2(kV)エミッション電流:20(mA)etch範囲:10mmφイオンスパッタ時間:30秒で実施し、スペクトルを採取【0106】水385g、イソプロピルアルコール67gおよび0.5N塩酸9.1gを混合し、調製したpH2.の溶液を得た。この溶液に、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン175gと、シランカップリング剤としてグリシドキシプロピルトリメトキシシラン9.2gとを10℃となるように、冷却しながら混合し、溶液Aを得た。水溶性高分子としてケン価度99%以上、重合度2400のポリビニルアルコール14.7g、水3gイソプロピルアルコール17gを混合し、溶液Bを得た。溶液Aと、溶液Bとを、質量基準において、6.5:3.5となるように、混合し、バリアコート剤を得た。【0114】実施例1-5上記2軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、以下のようにして調製した表面コート層形成用塗工液を塗布、乾燥して、厚さ0.5μmの表面コート層を形成し、多層基材を作製した。【0115】水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(数平均分子量25000、ガラス転移温度99℃、水酸基価80mgKOHL/g)を、メチルケトンと酢酸エチルとの混合溶剤(混合比1:1)を用いて、固形分濃度が10質量%となるまで希釈し、主剤を調製した。トリレンジイソシアネートを含有する酢酸エチル溶液(固形分75質量%)を硬化剤として、主剤に添加し、表面コート層形成用塗工液を得た。なお、硬化剤の使用量は、主剤100質量部に対し、10質量部とした。【0116】上記のようにして作製した多層基材を使用した以外は、実施例1-1と同様にして、本発明のバリア性積層体を得た。【0155】実施例4-1実施例1-1で作製したバリア性積層体が備えるバリアコート層上に、厚さ70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤でドライラミネートしてシーラント層を形成し、ヒートシール性積層体を作製した。【0161】<<ガスバリア性評価(ボイル後)>>上記実施例4において得られたヒートシール性積層体を用いて、図10に示すような平状の包装袋を作製した。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。平状の包装袋の内部には、水100mLが充填されている。平状の包装袋を、95℃で30分間ボイル処理した。平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m2・day・atm)および水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。その結果を表4にまとめた。【0162】<<ラミネート強度試験(ボイル後)>>ボイル処理後の平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にしてラミネート強度(N/15mm)を測定した。その結果を表4にまとめた。【0163】<<ガスバリア性評価(レトルト後)>>上記実施例4において得られたヒートシール性積層体を用いて、図10に示すような平状の包装袋を作製した。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。平状の包装袋の内部には、水100mLが充填されている。平状の包装袋を、121℃で30分間レトルト殺菌処理した。平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m2・day・atm)および水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。その結果を表4にまとめた。【0164】<<ラミネート強度試験(レトルト後)>>レトルト殺菌処理後の平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にしてラミネート強度(N/15mm)を測定した。その結果を表4にまとめた。【0165】【表4】【0166】実施例5-1水溶性高分子に対する金属アルコキシドの固形分比(金属アルコキシド/水溶性高分子)が、質量基準において、5.1となるようにバリアコート層を形成したこと以外は、実施例1-5と同様にしてバリア性積層体を作製した。・・・【0184】<<バリアコート層表面の元素分析>>実施例5~7において得られたバリア性積層体について、バリアコート層表面に存在するSi元素とC元素の比を測定した。測定は、X線光電子分光法(XPS)により、下記の測定条件のナロースキャン分析で行った。その結果を表5~7にまとめた。(測定条件)使用機器:「ESCA-3400」(Kratos製)[1]スペクトル採取条件入射X線:MgKα(単色化X線、hν=1253.6eV)X線出力:150W(10kV・15mA)X線走査面積(測定領域):約6mmφ光電子取込角度:90度[2]イオンスパッタ条件イオン種:Ar+加速電圧:0.2(kV)エミッション電流:20(mA)etch範囲:10mmφイオンスパッタ時間:30秒+30秒+60秒(トータル120s)で実施し、スペクトルを採取【0186】<<ガスバリア性評価(ボイル後)>>実施例5~7において得られたヒートシール性積層体を用いて、図10に示すような平状の包装袋を作製した。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。平状の包装袋の内部には、水100mLが充填されている。平状の包装袋を、95℃で30分間ボイル処理した。平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m2・day・atm)および水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。その結果を表5~7にまとめた。なお、表~7では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。【0187】<<ガスバリア性評価(レトルト後)>>実施例5~7において得られたヒートシール性積層体を用いて、図10に示すような平状の包装袋を作製した。平状の包装袋の大きさは、B5サイズ(182mm×257mm)である。平状の包装袋の内部には、水100mLが充填されている。平状の包装袋を、121℃で30分間レトルト殺菌処理した。平状の包装袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m2・day・atm)および水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。その結果を表5~7にまとめた。なお、表5~7では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。【0188】<<ガスバリア性評価(ゲルボフレックス試験後)>>実施例5~7において得られたヒートシール性積層体を用いて、筒状の袋を作製した。この袋を用いて、ASTM F392に準拠したゲルボフレックス試験を10回繰り返した。その後、当該袋からヒートシール性積層体を切り出して、試験片を得た。この試験片を用いて、上記と同様にして、酸素透過度(cc/m2・day・atm)および水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。その結果を表5~7にまとめた。なお、表5~7では、酸素透過度および蒸気透過度の単位を省略する。【0189】【表5】【0190】【表6】【0191】【表7】【符号の説明】【0192】10:バリア性積層体、11:多層基材、12:蒸着膜、13:ポリプロピレン樹脂層、14:表面コート層、15:バリアコート層、20:ヒートシール性積層体、21:シーラント層、30:包装容器、31:胴部(側面シート)、32:底部(底面シート)、33:ガセット、40:試験片、41:多層基材側、42:シーラント層側、43:つかみ具、A:真空容器、B:巻出し部、C:成膜用ドラム、D:巻取り部、E:搬送ロール、F:蒸発源、G:反応ガス供給部、H:防着箱、I:蒸着材料、J:プラズマガン、A1:真空容器、B1:巻出し部、C1:冷却・電極ドラム、D1:巻取り部、E1:搬送ロール、F1:グロー放電プラズマ、G1:反応ガス供給部、H1:原料供給ノズル、I1:原料ガス供給部、J1:マグネット、K1:電源、L1:真空ポンプ【図1】【図2】【図7】【図10】

別紙4 本件決定の理由

甲3(主引用例)及び甲4(副引用例)の記載事項の認定(1) 甲3には、下記の甲3発明が記載されている。「高分子フィルム基材の表面に金属酸化物蒸着層と有機無機ハイブリッドバリア層が順次設けられたバリア性フィルムであって、該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認されるバリア性フィルムであって、前記金属酸化物蒸着層が、酸化アルミニウムからなる蒸着層であり、該蒸着層には、X線光電子分光分析法によってアルミニウムと酸素とが、1:15~1:3.0の割合で含まれていることが確認され、前記高分子フィルム基材の表面にアンカーコート層を設け、前記金属酸化物蒸着層は前記アンカーコート層上に設けられ、前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、及び一般式R’SiR(OR)3(R’はアルキル基、ビニル基、グリシドキシプロピル基、アミノ基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれか1種)であらわされる3官能オルガノシランまたはその加水分解物を含む組成物からなり、有機無機ハイブリッドバリア層は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される、食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルム。(ただし、下線を付した「15」は「1.5」の、」 「SiR」は「Si」の明らかな誤記と認められる。)(2) 甲4には、以下の甲4記載事項が記載されている。「アルミニウム酸化物等の金属酸化物である無機層上に配置されたオーバーコート層が、一般式R1M2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、n金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有するゾルゲル化合物を含む層であり、オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)は0.8以上、1.6以下の範囲内であるもの」本件発明1について(1) 本件発明1と甲3発明の一致点及び相違点について[一致点1]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、バリア性積層体。」[相違点1-1]「樹脂層」に関して、本件発明1のものは「延伸処理が施されて」 「ポリプロピレン樹脂層」いるであるのに対して、甲3発明のものは「高分子フィルム基材」である点。[相違点1-2]本件発明1は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.90以上1.60以下である」のに対して、甲3発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点1-3]本件発明1は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断ア 相違点1-1に関し、甲3発明における「高分子フィルム基材」としてどのようなものを用いるかは、当業者が適宜決め得ることであり、甲3の記載及び周知技術1を参考にして、「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」を選択することに格別の困難性はない。イ 甲3発明と甲4記載事項とは、蒸着膜上に設けられたバリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であり、バリアコート層の脆性、耐候性又はバスバリア性などを考慮してX線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の割合を決めるものであるから、甲3発明において、甲4記載事項を参考にして、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。ウ 相違点1-3に関し、耐熱性や耐水性が要求される食品包装の用途として一般的な「ボイルまたはレトルト用」とすることに格別の困難性はない。エ 原告の主張する本件発明1の奏する効果も甲3発明及び甲4記載事項から当業者が予測可能な範囲内のものである。本件発明2~11についてこれらの発明は、本件発明1と各層の厚さや材料、用途等において異なるものにすぎず、甲3発明(本件発明11については甲3発明の2)、甲4記載事項及び周知技術1等に基づいて当業者が容易に発明できたものである。本件発明12について(1) 本件発明12と甲3発明の一致点及び相違点について[一致点2]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体を備える積層体であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、積層体。」[相違点2-1]「積層体」に関して、本件発明12は「シーラント層を備える」「ヒートシール性積層体」であるのに対して、甲3発明はシーラント層を備えているか不明である点。[相違点2-2]「樹脂層」に関して、本件発明12は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明は「高分子フィルム基材」である点。[相違点2-3]本件発明12は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下である」のに対して、甲3発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点2-4]本件発明12は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断ア 相違点2-1について甲3発明において、周知技術3を参考にして、相違点2-1に係る本件発明12の構成を備えたものとすることに格別の困難性はない。イ 相違点2-2~2-4について相違点1-1から同1-3までについての判断と同様に、甲3発明において、相違点2-2から同2-4までに係る本件発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明13について(1) 本件発明13と甲3発明の一致点及び相違点について[一致点3]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体を備える積層体であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、積層体。」[相違点3-1]「積層体」に関して、本件発明13は「シーラント層を備える」「ヒートシール性積層体」であり、「前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、前記同一材料は、ポリプロピレンである」のに対して、甲3発明はシーラント層を備えているか不明である点。[相違点3-2]「樹脂層」に関して、本件発明13は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明は「高分子フィルム基材」である点。[相違点3-3]本件発明13は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下である」のに対して、甲3発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点3-4]本件発明13は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断ア 相違点3-1、同3-2について甲3発明において、「高分子フィルム基材1」について「特性を考慮して適当な材料が選択される」前提で、「ポリプロピレン」も含めた例示とともに、「延伸、未延伸のどちらでも良く」との記載がある甲3の【0023】及び周知技術3を参考に、相違点3-1及び同3-2に係る本件発明13の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。イ 相違点3-3、同3-4について相違点1-2、同1-3についての判断と同様に、甲3発明において、相違点3-3、同3-4に係る本件発明13の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明14について(1) 本件発明14と甲3発明の2の一致点及び相違点について[一致点4]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体を備える積層体を備える、包装容器であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、包装容器。[相違点4-1]「積層体」に関して、本件発明14は「シーラント層を備える」「ヒートシール性積層体」であり、「前記シーラント層が、前記ポリプロピレン樹脂層と同一の材料により構成され、前記同一材料は、ポリプロピレンである」のに対して、甲3発明の2はシーラント層を備えているか不明である点。[相違点4-2]「樹脂層」に関して、本件発明14は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明の2は「高分子フィルム基材」である点。[相違点4-3]本件発明14は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下である」のに対して、甲3発明の2は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点4-4]本件発明14は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明の2は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断相違点3-1、同3-2、同1-1から同1-3までについての判断と同様に、甲3発明の2において、相違点4-1から同4-4までに係る本件発明14の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明15について(1) 本件発明15と甲3発明の一致点及び相違点について[一致点5]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備え包装用途に用いられるバリア性積層体を備える、積層体であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、バリア性積層体。」[相違点5-1]包装用途に用いられるバリア性積層体に関して、本件発明15は、「包装容器用途に用いられるバリア性積層体」であるのに対して、甲3発明は、「食品等の包装材料として使用可能なバリア性フィルム」である点。[相違点5-2]「積層体」に関して、本件発明15は「シーラント層を備える」「ヒートシール性積層体」であり、「前記シーラント層が、ポリプロピレンにより構成され」るのに対して、甲3発明はシーラント層を備えているか不明である点。[相違点5-3]「樹脂層」に関して、本件発明15は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明は「高分子フィルム基材」である点。[相違点5-4]本件発明15は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下である」のに対して、甲3発明は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点5-5]本件発明15は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断ア 相違点5-1、同5-4、同5-5について相違点5-1に関しては包装材料を包装容器用途に用いることに格別の困難性はなく、相違点5-4、同5-5に関しては、相違点1-2、同1-3についての判断と同様であって、これらの相違点に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。イ 相違点5-2、同5-3について甲3には、高分子フィルム基材1の材料として,ポリプロピレンが選択肢として記載されている。そうすると、甲3発明において、周知技術3を参考にして、相違点5-2、同5-3に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。本件発明16について(1) 本件発明16と甲3発明の2の一致点及び相違点[一致点6]「多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体を備える積層体を備える、包装容器であって、前記多層基材は、少なくとも樹脂層と表面コート層とを備え、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜は、前記多層基材の表面コート層上に設けられており、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、金属アルコキシドと水溶性高分子との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜であるか、または、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、シランカップリング剤との樹脂組成物から構成されるガスバリア性塗布膜である、包装容器。」[相違点6-1]「積層体」に関して、本件発明16は「シーラント層を備える」「ヒートシール性積層体」であり、「前記シーラント層が、ポリプロピレンにより構成され」るのに対して、甲3発明の2は、シーラント層を備えているか不明である点。[相違点6-2]「樹脂層」に関して、本件発明16は「延伸処理が施されて」いる「ポリプロピレン樹脂層」であるのに対して、甲3発明の2は「高分子フィルム基材」である点。[相違点6-3]本件発明16は、「前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、0.92以上1.45以下である」のに対して、甲3発明の2は「該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認される」点。[相違点6-4]本件発明16は、用途が「ボイルまたはレトルト用」であるのに対して、甲3発明の2は「食品等の包装材料として使用可能」なものである点。(2) 相違点の容易想到性に対する判断ア 相違点6-1、同6-2について甲3発明の2において、「高分子フィルム基材1」について「特性を考慮して適当な材料が選択される」前提で、「ポリプロピレン」も含めた例示とともに、「延伸、未延伸のどちらでも良く」との記載がある甲3の【0023】及び周知技術3を参考に、相違点6-1、同6-2に係る本件発明16の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。イ 相違点6-3、同6-4について相違点1-2、同1-3についての判断と同様に、甲3発明の2において、相違点6-3、同6-4に係る本件発明16の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

別紙5 甲3の記載事項(抜粋)

【特許請求の範囲】【請求項1】高分子フィルム基材の表面に金属酸化物蒸着層と有機無機ハイブリッドバリア層が順次設けられたバリア性フィルムであって、該有機無機ハイブリッドバリア層は、X線光電子分光分析法によるアトミックパーセントの分析において、炭素と酸素と珪素が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在することが確認されることを特徴とするバリア性フィルム。【請求項3】前記金属酸化物蒸着層が、酸化アルミニウムからなる蒸着層であり、該蒸着層には、X線光電子分光分析法によってアルミニウムと酸素とが、1:1.5~1:3.0の割合で含まれていることが確認されることを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア性フィルム。【請求項5】高分子フィルム基材の表面にアンカーコート層を設けた事を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。【請求項6】前記アンカーコート層が、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、及び一般式 R'Si(OR)3(R'はアルキル基、ビニル基、グリシドキシプロピル基、アミノ基、イソシアネート基及びメルカプト基のいずれか 1 種)であらわされる3官能オルガノシランまたはその加水分解物を含む組成物からなることを特徴とする請求項5に記載のバリア性フィルム。【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として用いられるガスバリア性フィルムに関する。【背景技術】【0002】食品、医薬品、精密電子部品等の包装に用いられる包装材料は、ガスバリア性を備えることが求められている。ガスバリア性包装材料は、包装材料を透過する酸素、水蒸気等を遮断し、例えば食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制して、食品の風味や鮮度を保持する。【0003】また、医薬品においては、無菌状態を保持し、有効成分の変質を抑制し、効能を長期間にわたって維持する。さらに精密電子部品においては、金属部分の腐食、絶縁不良等を防止する。【0004】ガスバリア性包装材料としては、従来より、塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレンフィルム(KOP)、又はポリエチレンテレフタレートフィルム(KPET)、或いはエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)など一般にガスバリア性が比較的高いといわれる高分子樹脂組成物を用いた包装フィルム(特許文献1)や、アルミニウム箔などの金属箔、あるいは、単独では高いガスバリア性を有していない高分子樹脂組成物にアルミニウムなどの金属を蒸着した金属蒸着フィルムが一般的に使用されてきた。【0005】上述の高分子樹脂組成物を用いた包装フィルムは、アルミニウム箔などの金属箔や、金属または金属化合物の蒸着層を形成した金属蒸着フィルムに比べるとガスバリア性に劣る。また、温度及び湿度の影響を受けやすく、その変化によってはさらにガスバリア性が劣化することがある。【0006】一方、金属箔や金属蒸着フィルムは、温度、湿度などの影響を受けることは少なく、ガスバリア性に優れるが、包装体の内容物を透視して確認することができないという本質的な欠点を有していた。【0007】そこで、ガスバリア性と透明性とを両立した包装材料として、最近では金属酸化物、珪素酸化物等のセラミック薄膜を、透明性の高分子材料からなる基材上に、蒸着などの形成手段により形成した蒸着フィルムが上市されている。【0008】しかしながら、これらの蒸着フィルムは、ガスバリア層に用いられるセラミック薄膜が可撓性に欠けており、揉みや折り曲げに弱く、また基材との密着性が悪いため、取り扱いに注意を要し、とくに印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、クラックを発生しガスバリア性が著しく低下するという問題があった。【0009】そのため、上記問題に対して、特許文献2に記載されたように、基材に金属アルコキシドの被膜を形成してなるガスバリア材が提案されている。このガスバリア材は、ある程度の可撓性を有するとともに、液相コーティング法による製造ができるため、コスト的にも安価とすることができる。しかしながら、前記ガスバリア材は、基材単体の場合に比べて、ガスバリア性が向上するとは言えるが、絶対的なガスバリア性を有するとは言えないものであった。【0010】さらに、特許文献3に記載されるように、ガスバリア性の付与された樹脂成形品の製造方法として、基材に酸化珪素(SiOx)の蒸着薄膜を形成し、その蒸着薄膜上にSiO2粒子と水溶性樹脂あるいは水性エマルジョンの混合溶液をコーティングした後、乾燥する方法が提案されている。この製造方法による樹脂成形品は、外部応力による変形の際に、SiOx蒸着薄膜上にコーティングされたSiO2 粒子と樹脂との混合層がSiOx 蒸着薄膜に生じるマイクロクラックの広がりを抑え、クラック部位を保護することにより、ガスバリア性の低下を抑制することができるものである。【0011】しかしながら、この構成からなる樹脂成形品は、SiOx蒸着薄膜に生じるマイクロクラックの広がりを抑え、ガスバリア性の低下を抑制するのみであり、その効果は単なる蒸着薄膜の保護層としての役割に過ぎない。上記構成の樹脂成形品のガスバリア性は蒸着層の上に形成されるコーティング層が単なるSiO2 粒子と樹脂の混合被膜であるため、基材に単に蒸着薄膜を形成した蒸着フィルムのガスバリア性を示す程度であり、より高いガスバリア性を得ることは不可能であった。【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0012】本発明は、可撓性を有するとともに酸素、水蒸気などに対するガスバリア性に優れ、耐熱性、耐湿性、耐水性を有し、かつ製造が容易なガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。【発明の効果】【0021】本発明によれば、食品、医薬品、精密電子部品等の包装材料として使用可能な、高いガスバリア性、耐熱性、耐湿性、耐水性並びに変形に耐えられる可撓性を有する透明ガスバリア性フィルムが、安価なコストで得られる。【発明を実施するための最良の形態】【0022】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係るバリア性フィルム1の最も基本的な実施形態を示す断面説明図である。図1に示すように高分子フィルム基材1の表面に、金属酸化物蒸着層4、有機無機ハイブリッドバリア層5が設けられている。【0023】高分子フィルム基材1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、用途に応じて機械的強度や寸法安定性等の特性を考慮して適当な材料が選択される。特に二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。またこの高分子フィルム基材1には、周知の種々の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、安定剤、滑剤などが添加されていても良い。【0025】次に、金属酸化物蒸着層4について説明する。金属酸化物蒸着層4の材料としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、錫などの酸化物を挙げることができる。好ましくは、酸化アルミニウムや酸化珪素や酸化マグネシウムなどのような透明な金属酸化物を使用することが好ましい。金属の窒化物、弗化物などが混合していてもかまわない。【0029】次に有機無機ハイブリッドバリア層5は、水酸基を有する水溶性高分子と、1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、及び水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を高分子フィルム基材1の表面に塗布し、加熱乾燥することによって形成される。【0030】上記コーティング剤に用いられる水酸基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にPVAを用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数10%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。【0043】次に有機無機ハイブリッドバリア層5のX線光電子分光分析(以降XPSと称す)について説明する。XPSは、物体表面における元素の構成比率や原子の結合状態等を知る上で、非常に有効な手段であるため、近年広く用いられる分析手法の一つである。本発明に用いる有機無機ハイブリッド層5は、その成分の選択範囲が広いため、単に構成成分を特定するだけでは、十分に記述することができないものである。【0044】そこで、発明者は、種々のサンプルについてその有機無機ハイブリッドバリア層の表面をXPSによって分析し、炭素、酸素、珪素のアトミックパーセントに着目した結果、炭素、酸素、珪素の割合が、それぞれ15~50%、30~65%、5~30%の割合で存在するときに、最も好ましい結果が得られることを見いだした。炭素の割合が50%より多い場合、バリア性が温度、湿度の影響を受け易く、15%より少ない場合、バリア性が悪くなり、膜質が脆くなる。酸素の割合が30~65%より多い場合、少ない場合ともに、また、珪素の割合が5~30%より多い場合、少ない場合ともに、Si-O-Siの架橋構造に欠陥が生じ、緻密な膜質でなくなる結果、バリア性フィルムのガスバリア性が悪くなる。【0049】酸化アルミニウム蒸着層の性質を確認するため、有機無機ハイブリッドバリア層を設ける前の段階で、XPSによる分析を行うことは、必ずしも必要ではなく、有機無機ハイブリッドバリア層を設けたあとの段階で、酸化アルミニウム蒸着層中のアルミニウムと酸素の比率を測定して、1:1.5~1:3.の範囲内であれば問題はない。酸素が少なかった場合には、透明性を損なう結果となり、多すぎる場合には、ガスバリア性を損なう結果となる。【0050】本発明の実施形態の一つとして、高分子フィルム基材上に酸化アルミニウム蒸着層、有機無機ハイブリッドバリア層を順次設け、更にその上に、酸化アルミニウム蒸着層、有機無機ハイブリッドバリア層を同じく順次設けた構成がある。このように、各層が交互に2層ずつ重ねられる結果、1層ずつの場合に比較して、格段にガスバリア性が向上する。【0051】次に、本発明の実施形態の一つとして、図2に示したように、高分子フィルム基材1の表面に、アンカーコート層2を設け、しかる後に金属酸化物蒸着層4、有機無機ハイブリッドバリア層5を順次設けた構成について説明する。【0052】アンカーコート層2を設ける目的は、高分子フィルム基材1と金属酸化物蒸着層4との接着性を高めることにより、バリア性フィルムの揉みや折り曲げに対する耐性を高め、ガスバリア性を安定的に発揮させることにある。【0056】アンカーコート剤の好ましい組成としては、有機官能基を有するシランカップリング剤或いはその加水分解物と、ポリオール及びイソシアネート化合物等の混合物を用いることである。また本発明におけるアンカーコート剤は、シランカップリング剤とポリオールを混合し、溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して調製することもできる。【0059】これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる混合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基またはアルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の極性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。【0062】アクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から100/1の範囲にあることである。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(以下IPAと略す)等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。【0072】<実験条件><アンカーコート層用コーティング剤の配合処方>アクリルポリオール6gにイソシアネートプロピルトリメトキシシラン0.6gを混合攪拌し調整した溶液(固形分20wt%)の7gに対して、硬化剤としてイソシアネート樹脂(TDI、固形分50wt%)1.5gと希釈溶媒(酢酸エチル)を加えて30分攪拌し、固形分2wt%としたもの。【0075】<有機無機ハイブリッドバリア層用コーティング剤の配合処方>(A液):テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4、以下TEOSと称す)17.9gと、メタノール10gに塩酸(0.1N)72.1gを加え、30分間撹拌し、加水分解させた固形分5%(重量比SiO2 換算)の加水分解溶液。(B液):ポリビニルアルコールの5%(重量比)、水/メタノール=95/5(重量比)水溶液。(C液):β-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランのIPA溶液に塩酸(1N)を徐々に加え、30分間撹拌し、加水分解させた後、さらに水/IPA=1/1 溶液で加水分解を行い、固形分%(重量比R2Si(OH)3換算)に調整した加水分解溶液。(D液):1,3,5-トリス(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを、水/IPA=1/溶液で、固形分5%(重量比R2Si(OH)3換算)に希釈、調整した溶液。(E液):エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン共重合比率29%)の5%(重量比)、水/IPA=95/5(重量比)溶液。(F液):シリカ粉末をIPAに加え30分間撹拌した固形分5%の分散液。【0076】準備した有機無機ハイブリッドバリア層用コーティング剤は下記の7種類である。配合比はすべて固形分重量比率である。コーティング剤1・・・A/B =60/40コーティング剤2・・・A/B/C=70/20/10コーティング剤3・・・A/B/D=70/20/10コーティング剤4・・・B =100コーティング剤5・・・A/E =60/40コーティング剤6・・・F/B =60/40コーティング剤7・・・A/E/C=70/20/10。【0077】<XPS分析方法>日本電子社製JPS-90MXVmicroを使用し、ワイドスペクトルにより炭素、酸素、珪素の各アトミックパーセントを測定し、ナロースペクトルにより、C-C結合:C-O結合のピーク強度(高さ)の比から、各結合数の比を定量的に測定する。【0078】<酸素透過度測定方法>MOCON社製OX-TRAN2/20を使用し、23度-65%RH条件で測定する。【0079】<水蒸気透過度測定方法>MOCON社製PERMATRAN2/20を使用し、40℃-90%RH条件で測定する。【実施例1】【0080】高分子フィルム基材1として、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、この片面に、アンカーコート層2として<実験条件>に記載のアンカーコート層用コーティング剤をグラビアコート法により厚さ0.1μm(乾燥膜厚)となるように形成した。次いでアンカーコート層2上に酸化アルミニウム蒸着層4として<実験条件>に記載の真空反応蒸着方式で酸化アルミニウム蒸着層41を、厚さ15nmに形成した。更にその上に有機無機ハイブリッドバリア層5として、<実験条件>に記載のコーティング剤1をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μmの有機無機ハイブリッドバリア層5を形成し、バリア性フィルム10を得た。【0081】得られたバリア性フィルム10の有機無機ハイブリッドバリア層5をXPSのワイドスペクトルでアトミックパーセントを測定し、ナロースペクトルでC-C結合:C-O結合のピーク強度(高さ)の比を測定した。【0083】また、ガスバリア性の評価としては、<実験条件>に記載した方法によって酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。【0089】<比較例2>有機無機ハイブリッドバリア層用コーティング剤として、<実験条件>に記載のコーティング剤5を使用した以外、実施例1と同様にして、バリア性フィルムを得た。比較例2で得られたバリア性フィルムの有機無機ハイブリッドバリア層を、XPSによって分析した結果、C、O,Siの割合が35:40:であり、また、C-C結合とC-O結合の比は、65:35であった。得られたバリア性フィルムは、酸素透過度、水蒸気透過度ともに悪い結果となった。原因としては、ベース樹脂のEVOH樹脂が溶媒中に十分に溶解できなかったために、酸化珪素成分もEVOH樹脂中に均一に分散できず、酸素透過度、水蒸気透過度ともに悪い結果となったものと考えられる。【0092】以上の結果をまとめて表1に示す。【0093】【表1】【0094】表中の略号は、以下の通りである。処理:低温プラズマ処理層AC:アンカーコート層VM:酸化アルミニウム蒸着層OC:有機無機ハイブリッドバリア層に用いたコーティング剤蒸着層O/Al:酸化アルミニウム蒸着層中の酸素/アルミニウムの元素比有機無機ハイブリッドバリア層:炭素(C) 酸素、 (O) 珪素、 (Si)のアトミックパーセントおよび、C-C結合とC-O結合の割合O2TR:酸素透過度(cc/m2/day/atm)WVTR:水蒸気透過度(g/m2/day/atm)【図面の簡単な説明】【0095】【図1】本発明に係るバリア性フィルムの基本的な構成を示す断面説明図。【図2】本発明に係るバリア性フィルムの実施形態の一例を示す断面説明図。【図3】本発明に係るバリア性フィルムの実施形態の一例を示す断面説明図。【符号の説明】【0096】・・・高分子フィルム基材・・・アンカーコート層・・・低温プラズマ処理層・・・金属酸化物蒸着層・・・有機無機ハイブリッドバリア層・・・バリア性フィルム【図1】【図2】

別紙6 甲4の記載事項(抜粋)

【特許請求の範囲】【請求項3】少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、前記第1フィルムは、第1樹脂基材と、前記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する金属酸化物リン酸層とを有し、前記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、前記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、前記無機層の前記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、前記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、前記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用外包材。【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本開示は、真空断熱材用外包材等に関するものである。【背景技術】【0002】近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。中でも、消費電力量低減の観点から、電気製品等への真空断熱材の採用が進められている。電気製品等のように本体内部に発熱部を有する機器や、外部からの熱を利用した保温機能を有する機器においては、真空断熱材を備えることにより機器全体としての断熱性能を向上させることが可能となる。このため、真空断熱材の使用により、電気製品等の機器の消費エネルギー削減の取り組みがなされている。【0003】真空断熱材とは、外包材により形成された袋体内に芯材を配置し、上記芯材が配置された袋体の内部を減圧して真空状態とし、上記袋体の端部を熱溶着して密封することで形成されたものである。上記袋体内部を真空状態とすることにより、気体の対流が遮断されるため、真空断熱材は高い断熱性能を発揮することができる。また、真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、上記外包材を用いて形成された袋体の内部を長期にわたり高い真空状態に保持する必要がある。そのため、真空断熱材用外包材には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性、芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の種々の機能が要求される。これらの機能を果たすための、真空断熱材用外包材の一般的な態様としては、熱溶着可能なフィルム、ガスバリアフィルムおよび保護フィルムが積層されてなるものであり、各フィルム同士は接着剤等を介して貼り合されている・・・態様を挙げることができる。【0004】上述したような真空断熱材用外包材を用いて真空断熱材を形成し、高い初期断熱性能を有する真空断熱材が得られた場合でも、当該真空断熱材が高温高湿な環境に曝されると、上記ガスバリアフィルム等が劣化され、断熱性能が経時的に低下するという問題がある。このような問題に対処するため、特許文献3においては、M-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。)を有する層を有する真空断熱材用外包材を用いることにより、高温高湿な環境で使用されても、優れた信頼性を有する真空断熱材が開示されている。【発明が解決しようとする課題】【0006】特許文献3に開示されているM-O-P結合を有する層は、従来の真空断熱材用外包材に用いられてきた無機蒸着層を有するハイバリアフィルム等と比べると、高温高湿な環境に曝された場合の劣化が少ないものである。しかしながら上記M-O-P結合を有する層は、上記無機蒸着層を有するハイバリアフィルム等と比較した場合に、初期のガスバリア性がそれほど高くないため、時間の経過に伴って真空断熱材内部の真空度が徐々に低下するという問題は、依然として解決されていない。【0007】一方、無機蒸着層は初期のガスバリア性は高いが、一般に高温高湿な環境に曝された場合のガスバリア性の劣化が激しい。そのため、真空断熱材用外包材に無機蒸着層を有するハイバリアフィルムを用いた場合でも、時間の経過に伴って真空断熱材内部の真空度は低下するため、長期間断熱性能を維持することは困難である。【0008】本開示は、 ・・ ・高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供することを主目的とする。【課題を解決するための手段】【0012】本開示の別の態様においては、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。を有する金属酸化物リン酸層とを有し、)上記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、上記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。【0013】本開示の上記態様によれば、上記第1フィルムにより上記オーバーコート層付きフィルムが保護されるため、上記オーバーコート層付きフィルムの劣化が抑制され、高温高湿な環境においても高いガスバリア性を維持することができる外包材とすることができる。したがって、上記外包材を、高温高湿な環境においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能なものとすることができる。【図面の簡単な説明】【0018】・・・【図4】本開示の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。【発明を実施するための形態】【0063】(1)無機層無機層は、第2樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、外側無機層付きフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記無機層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。このようなガスバリア性を有する層としては、例えば、金属層、無機化合物を主成分とする層などを用いることができる。上記金属層としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金から構成される金属蒸着膜等を挙げることができる。【0105】(II)第2態様本開示の第2態様の外包材は、少なくとも第1フィルムと、オーバーコート層付きフィルムと、熱溶着可能なフィルムとをこの順で有する真空断熱材用外包材であって、上記第1フィルムは、第1樹脂基材と、上記第1樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、少なくともM-O-P結合(ここで、Mは金属原子を示し、Oは酸素原子を示し、Pはリン原子を示す。を有する金属酸化物リン酸層とを有し、)上記オーバーコート層付きフィルムは、樹脂基板と、上記樹脂基板の少なくとも一方の面側に配置された無機層と、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置されたオーバーコート層とを有し、上記オーバーコート層は親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が0.1以上、2以下の範囲内であることを特徴とするものである。【0106】本態様の外包材について、図を参照して説明する。図4は、本態様の外包材の一例を示す概略断面図である。図4に例示するように、本態様の外包材10Bは、金属酸化物リン酸層付きフィルム1と、オーバーコート層付きフィルム13と、熱溶着可能なフィルム4とをこの順で有する。上記金属酸化物リン酸層付きフィルム1は、第1樹脂基材5と、上記第1樹脂基材5の少なくとも一方の面側に配置された金属酸化物リン酸層6とを有し、上記オーバーコート層付きフィルム13は、樹脂基板14と、上記樹脂基板14の少なくとも一方の面側に配置された無機層8cと、上記無機層8cの上記樹脂基板14とは反対の面側に配置されたオーバーコート層15とを有する。【0111】(1)オーバーコート層本態様におけるオーバーコート層は、上記無機層の上記樹脂基板とは反対の面側に配置され、親水基含有樹脂を含むものである。上記親水基含有樹脂の有無は、例えば、赤外線吸収スペクトルなどにより判別することができる。また、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)は、0.1以上、2以下の範囲内であり、中でも0.5以上、.9以下の範囲内、特には0.8以上、1.6以下の範囲内であることが好ましい。比率が上記範囲に満たないと、オーバーコート層の脆性が大きくなり、得られるオーバーコート層の耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、比率が上記範囲を超えると、得られるオーバーコート層のガスバリア性が低下する場合がある。【0112】上述したような比率を有するオーバーコート層は、例えば、オーバーコート層形成用組成物における親水基含有樹脂の含有量を、後述するアルコキシドの合計量100質量部に対して5質量部以上、50質量部以下の範囲内、中でも20質量部以上、200質量部以下の範囲内の配合割合とすることにより得ることができる。上記オーバーコート層形成用組成物の一例としては、A液(ポリビニルアルコール(PVA)、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液)に、予め調製したB液(テトラエトキシシラン(TEOS) イソプロピルアルコール、、 塩酸およびイオン交換水からなる加水分解液)を、TEOS100質量部に対してPVAが特定の割合となるように加えて撹拌し、ゾルゲル法により得られる、無色透明のオーバーコート層形成用組成物を挙げることができる。【0113】オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率の測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、X線光電子分光法や、外包材断面からのエネルギー分散型X線分光法(EDX)などにより測定することができる。また、上記X線光電子分光法により測定する際はエッチングを行い、オーバーコート層の内部を評価してもよい。【0114】上述したA液およびB液を用い、TEOS100質量部に対してPVAが5質量部以上、500質量部以下の範囲内となるように調製されたオーバーコート層形成用組成物を用いて作製されたオーバーコート層における、炭素原子に対する金属原子の比率を下記表1に示す。原子比率の測定は、X線光電子分光法により、測定装置としてESCA5600(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて行った。なお、下記表1においては、炭素原子(C)に対する金属原子としての珪素(Si)の比率を示す。【0115】【表1】【0116】このような、親水基含有樹脂を含み、上記オーバーコート層を構成する原子における、炭素原子に対する金属原子の比率が特定の範囲内のものである層としては、一般式R1nM2(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、M2は、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、M2の原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、親水基含有樹脂とを含有するゾルゲル化合物を含む層を用いることができ、中でも上記ゾルゲル化合物を主成分とする層であることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基板等の熱による劣化を抑制することができるからである。【0142】なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との混合組成物を用いて得られたオーバーコート層は、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂単独を主成分とするオーバーコート層を設ける場合にはそのオーバーコート層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するオーバーコート層を積層すると、熱水処理後のガスバリア性を向上させることができる。【0144】(2)無機層本態様におけるオーバーコート層付きフィルムの無機層は、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではない。このような無機層としては、(I)第1態様、2.外「側無機層付きフィルム、(1)無機層」の項において説明されているものと同様のものを用いることができる。本態様においては、初期のガスバリア性や耐劣化性等の観点から、無機化合物を主成分とする層が好適に用いられ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を主成分とする層を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。【符号の説明】【0226】… 第1フィルム(金属酸化物リン酸層付きフィルム)… 第2フィルム(外側無機層付きフィルム)… 第3フィルム(内側無機層付きフィルム)… 熱溶着可能なフィルム… 第1樹脂基材… 金属酸化物リン酸層… 第2樹脂基材a、8b、8c … 無機層… 第3樹脂基材、10A、10B … 真空断熱材用外包材… 芯材… オーバーコート層付きフィルム… 樹脂基板… オーバーコート層… 真空断熱材【図4】

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