ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和4(行ケ)10057等 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和6年4月25日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 対象物 | ランプ及び照明装置 |
| 法令 |
特許権 特許法131条の22回 特許法36条6項1号1回 特許法2条3項1号1回 特許法131条1項1回 |
| キーワード | 審決79回 無効66回 実施38回 進歩性22回 新規性9回 無効審判4回 特許権2回 優先権1回 |
| 主文 | 1 特許庁が無効2018-800036号事件につい 658831号の請求項4に係る部分を取り消す。 2 原告のその余の請求及び被告の請求をいずれも棄却 3 訴訟費用は、第1事件及び第2事件の両事件を通じ |
| 事件の概要 | 第1事件は、特許無効審判請求の請求人である原告が同請求に対する審決のうち 審判請求は成り立たないとした部分の一部の取消しを求める事案であり、第2事件 は、特許権者である被告が同審決のうち特許を無効とした部分の取消しを求める事 案である。争点は、無効理由の補正不許可に係る裁量権の踰越・濫用、サポート要20 件、実施可能要件、新規性及び進歩性についての各認定判断の誤りの有無である。 |
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令和6年4月25日判決言渡
令和4年(行ケ)第10057号 審決取消請求事件(第1事件)
令和4年(行ケ)第10054号 審決取消請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日 令和5年11月1日
判 決
第1事件原告兼第2事件被告 株 式 会 社 遠 藤 照 明
(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 小 池 眞 一
同訴訟代理人弁理士 小 倉 啓 七
第1事件被告兼第2事件原告 パナソニックIPマネジ
メント株式会社
(以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎
原 悠 介
千 葉 あ す か
同訴訟代理人弁理士 新 居 広 守
道 坂 伸 一
大 山 丈 二
主 文
1 特許庁が無効2018-800036号事件につい
て令和4年5月10日にした審決のうち、特許第5
658831号の請求項4に係る部分を取り消す。
2 原告のその余の請求及び被告の請求をいずれも棄却
する。
3 訴訟費用は、第1事件及び第2事件の両事件を通じ
て、これを5分し、その2を原告の負担とし、その余
5 は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 原告の請求(第1事件)特許庁が無効2018-800036号事件について令和4年5月10日にした審決のうち、特許第5658831号の請求項1、2、4、14、16、18、19、21に係る部分を取り消す。2 被告の請求(第2事件)特許庁が無効2018-800036号事件について令和4年5月10日にした審決のうち、特許第5658831号の請求項3、5、7、17、20、22、23に係る部分を取り消す。
第2 事案の概要
第1事件は、特許無効審判請求の請求人である原告が同請求に対する審決のうち
審判請求は成り立たないとした部分の一部の取消しを求める事案であり、第2事件は、特許権者である被告が同審決のうち特許を無効とした部分の取消しを求める事案である。争点は、無効理由の補正不許可に係る裁量権の踰越・濫用、サポート要件、実施可能要件、新規性及び進歩性についての各認定判断の誤りの有無である。1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は、発明の名称を「ランプ及び照明装置」とする発明についての特許(特許第5658831号。請求項の数17。以下「本件特許」という。)の特許権者である。(甲87、88)本件特許は、平成25年3月5日を国際出願日(平成24年4月25日優先日(以下「本件優先日」という。 。優先権主張国は日本。) )とし、平成26年12月5日に設定登録がされた。出願時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面は、別紙1(本件特許に係る特許公報。甲87)に記載のとおりである(ただし、特許請求の範囲は設定登録時のもの。以下、この明細書と図面を併せて「本件明細書」
5 といい、この設定登録時の特許請求の範囲の請求項を「登録時請求項」という。また、以下、本件明細書における発明の詳細な説明の段落番号や図面番号を引用する際に【】の記号を用いる。 。)
(2) 原告は、平成30年4月6日付けで、本件特許1~8、14、16、17について特許無効審判(無効2018-800036号)を請求した(甲88)。被告は、令和元年12月16日付けで、本件特許の特許請求の範囲を訂正する旨の訂正請求をし、令和3年7月30日付けで上記訂正請求書を補正した(以下、補正後の訂正請求を「本件訂正」という。本件訂正において本件明細書の訂正はない。乙26の1・2、28の6・7)。本件訂正は、請求項9~13を削除し、請求項18~23を増項するものである。原告は、本件訂正を踏まえて、無効理由を補正し、証拠や根拠条文の一部追加を行った。特許庁は、令和4年5月10日、本件訂正を認め、無効理由の補正の一部を不許可とした上、「本件特許の請求項3、5、7、17、20、22、23に係る発明についての特許を無効とする。本件特許の請求項1、2、4、6、8、14、16、18、19、21に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月20日、原告及び被告に送達された。
(3) 被告は、令和4年6月10日、本件審決のうち請求項3、5、7、17、20、22、23に係る部分の取消しを求める本件訴訟を提起し、原告は、同月16日、本件審決のうち本件特許の請求項1、2、4、14、16、18、19、21に係る部分の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
(1) 本件訂正後の特許請求の範囲の各請求項(請求項1~8、14、16~23)の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号に応じて「本件発明1」「本件発明2」などといい、これらを併せて「本件各発明」という。、
5 甲87、乙26の1・2、28の6・7)。【請求項1】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、ランプ。【請求項2】さらに、y≧1.21xである、請求項1に記載のランプ。【請求項3】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、を備えたランプで
5 あって、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.21x≦y≦1.49xの関係を満たす、ランプ。【請求項4】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、一対の第1壁部及び第2壁部を有し、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記基板は、前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記基板の短手方向の動きが規制された状態で前記基台に配置され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y>1.49xの関係を満たす、ランプ。【請求項5】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、を備えたランプであって、
5 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.21x≦y≦1.49xの関係と、x≧8の関係とを満たす、ランプ。【請求項6】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y≧1.21xの関係を満たし、さらに、x<8である、ランプ。【請求項7】さらに、x≧8である、請求項3に記載のランプ。【請求項8】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.21x≦y≦1.49xの関係を満たし、
5 さらに、x<8である、ランプ。【請求項14】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、前記筐体内に配置された長尺状の基台と、前記基台の上に実装された複数の容器と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、ランプ。【請求項16】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得
5 られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たし、前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管である、ランプ。【請求項17】ランプを備える照明装置であって、前記ランプは、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記LEDチップを発光させるための電力として、商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける口金と、を備え、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、照明装置。【請求項18】ランプを備える照明装置であって、前記ランプは、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基台と、前記基台の上に実装された複数の容器と、前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の口金と、を備え、
5 前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させるための電力を受け、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、照明装置。【請求項19】ランプを備える照明装置であって、前記ランプは、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、一対の第1壁部及び第2壁部を有し、前記基板を保持する金属製の基台と、を備え、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記基板は、前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記基板の短手方向の動きが規制された状態で前記基台に配置され、前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管であり、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、照明装置。
5 【請求項20】光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基台と、前記基台の上に実装された複数の容器と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管であり、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす、ランプ。【請求項21】さらに、前記筐体内に配置された長尺状の基台と、前記基台の上に実装された複数の容器とを備え、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装されている、請求項2、6~12のいずれか1項に記載のランプ。【請求項22】前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管である、請求項2、6~13のいずれか1項に記載のランプ。【請求項23】請求項2、6~13、15のいずれか1項に記載のランプを備える、照明装置。
(2) 本件発明1、4、17、18及び20につき、構成要件に分説すると以下のように分説できる。なお、下線部は本件訂正による訂正箇所である。
5 ア 本件発明11-1A 光拡散部を有する長尺状の筐体と、1-1B 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、1-1C 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、1-1D 前記筐体内に配置された長尺状の基板と、1-1E 前記基板の上に実装された複数の容器と、1-1F 前記基板を保持する金属製の基台と、1-1G を備えたランプであって、1-1H 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、1-1I 前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、1-1J 前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており、1-1K 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、1-1L ランプ。イ 本件発明41-4A 光拡散部を有する長尺状の筐体と、1-4B 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、1-4C 前記筐体内に配置された長尺状の基板と、1-4D 前記基板の上に実装された複数の容器と、
5 1-4E 一対の第1壁部及び第2壁部を有し、前記基板を保持する金属製の基台と、1-4F を備えたランプであって、1-4G 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、1-4H 前記基板は、前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記基板の短手方向の動きが規制された状態で前記基台に配置され、1-4I 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y>1.49xの関係を満たす、1-4J ランプ。ウ 本件発明171-17A ランプを備える照明装置であって、1-17B 前記ランプは、1-17C 光拡散部を有する長尺状の筐体と、1-17D 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、1-17E 前記LEDチップを発光させるための電力として、商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける口金と、を備え、1-17F 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、1-17G 照明装置。エ 本件発明18
5 1-18A ランプを備える照明装置であって、1-18B 前記ランプは、1-18C 光拡散部を有する長尺状の筐体と、1-18D 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、1-18E 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、1-18F 前記基台の上に実装された複数の容器と、1-18G 前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の口金と、を備え、1-18H 前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させるための電力を受け、1-18I 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、1-18J 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、1-18K 照明装置。オ 本件発明201-20A 光拡散部を有する長尺状の筐体と、1-20B 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、1-20C 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、1-20D 前記基台の上に実装された複数の容器と、を備えたランプであって、1-20E 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装
5 され、1-20F 前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管であり、1-20G 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす、1-20H ランプ。3 本件審決の理由の要旨
(1) 無効理由(なお、本件審決において、記号「E」はサポート要件、「F」は実施可能要件、「6」は進歩性、「7」は新規性、「A」は主引用例を検甲2、「B」は主引用例を検甲4、「C」は主引用例を検甲7とすることを表し、ハイフン「-」の後は、対象となる請求項を表しているため、そのまま表記する。)本件審決の理由は、別紙2審決書(写し)記載のとおりである。その理由の要旨は、本件訂正を認めた上で、無効理由E-1~8、14、16~23(サポート要件)、無効理由F-1~8、14、16~23(実施可能要件)、無効理由6A-4(検甲2に係る発明を主引用発明とし、甲69の技術的事項又は甲70の技術的事項を適用する進歩性の欠如)、無効理由6B-1~3、5、7、16、17、22、23(検甲4に係る発明を主引用発明とし、検甲2の慣用技術又は甲74の周知技術、甲69の技術的事項、甲70の技術的事項又は検甲5、甲72、甲73の周知慣用技術を適用するなどによる進歩性の欠如) 無効理由6C-20、 (検甲7に係る発明を主引用発明とし、甲71の技術的事項又は甲73の技術的事項を適用する進歩性の欠如) 無効理由7C-20、 (検甲7に係る発明を主引用発明とする新規性の欠如)のうち、請求項3、5、7、17、20、22、23は進歩性の欠如(請求項20は新規性の欠如も含む)により原告の請求に理由があるものとして請求成立審決(特許を無効)をし、請求項1、2、4、6、8、14、16、18、19、21は原告の請求に理由がないとして請求不成立審決をした。
5 (2) 検甲2、4、7の認定本件審決が引用した検甲2、4、7は、次のとおりである。検甲2 原告製の製品「RAD-402W」(以下「402W製品」ということがある。検甲2において実施されている発明を「検甲2発明」という。)(ロット番号「HUM120331」)検甲4 株式会社リコー(以下「リコー」という。)製の製品「CLARTEPI40N/23」(以下、検甲4を「リコー製品A」ということがある。検甲4において実施されている発明を「検甲4発明」という。)(ロット番号「11081726992607717-1」)検甲7 リコー製の製品「CLARTEPG40N/23A」(以下、検甲7を「リコー製品B」ということがある。検甲7において実施されている発明を「検甲7発明」という。)(ロット番号「12031531992311143」)【検甲2発明】「光拡散性の長尺状の樹脂製カバー部材と、当該カバー部材が取り付けられる長尺状の基台を有するLEDランプであって、前記基台は、金属製であり、カバー部材側に長手方向に沿った平板状部材と、平板状部材に一体成形される断面半円状の外殻部材を有し、前記平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテープを介して載置された長尺状のLED基板を有し、前記LED基板の上に複数のLEDが配置され、前記LEDは、容器と、容器に実装されたLEDチップと、容器に充填された透光性の樹脂とからなっており、複数の前記LEDチップの光を反射する絶縁性を有する光反射シートを有し、前記基台は、一対の第1突部と第2突部を有し、前記第1突部と前記第2突部と
5 の間にクリップが嵌まり、前記クリップは短手方向に動かないものであり、商用電源からの交流電流を受ける口金を有しており、輝度均斉度関連において、金属製スケールの画像の左端の目盛は3. (mm) 右端の目盛は300. (m5 、 2m)であり、また、水平方向の画素数は1280であり、輝度CSVデータの各々4点抽出した極大値は25388、24816、24051、24322(cd/m 2)、極小値は24386、23533、23272、23286(cd/m 2)であり、LEDチップの発光中心間隔関連において、LED33個が配置された状態の金属スケールの始点は0.4(mm)、終点は295.0(mm)であり、半値幅関連において、LED1個の最大輝度は10353(cd/m 2 )であり、最大輝度の半分の輝度5177(cd/m 2)を示す水平ラインの画素の位置の始点は651、終点は719である(ただし、平成31年2月22日付け手続補正書(指示説明書第8頁の「12)」の「水平ラインにCSVデータのプロットが存在しない場合」に該当し、それぞれ水平ラインとグラフの線が交差する箇所の左方直近の画素の位置である。 、)LEDランプ。」【検甲4発明】「光拡散性の長尺状の樹脂製カバー部材と、当該カバー部材が取り付けられる長尺状の基台を有するLEDランプであって、前記基台は、金属製であり、カバー部材側に長手方向に沿った平板状部材と、平板状部材に一体成形される断面半円状の外殻部材を有し、前記平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテープを介して載置され
5 た長尺状のLED基板を有し、前記LED基板の上に複数のLEDが配置され、前記LEDは、容器と、容器に実装されたLEDチップと、容器に充填された透光性の樹脂とからなっており、前記基板の上に複数のLEDチップの光を反射する塗布膜を有し、前記塗布膜は反射部材を有し、塗布膜の最外面は絶縁性を有するものであり、前記基台は、平板状部材の短手方向の両端部に壁部を有していないものであり、蛍光灯用のインバータ用電子安定器からの高周波電力を受ける口金を有しており、輝度均斉度関連において、金属製スケールの画像の左端の目盛は2. (mm) 右端の目盛は299. (m2 、 4m)であり、また、水平方向の画素数は1280であり、輝度CSVデータの各々4点抽出した極大値は38178、38054、37980、38193(cd/m 2)、極小値は35302、35080、35233、35396(cd/m 2)であり、LEDチップの発光中心間隔関連において、LED35個が配置された状態の金属スケールの始点は1.2(mm)、終点は293.5(mm)であり、半値幅関連において、LED1個の最大輝度は21545(cd/m 2 )であり、最大輝度の半分の輝度10773(cd/m 2 )を示す水平ラインの画素の位置の始点は583、終点は628である(ただし、平成31年2月22日付け手続補正書(指示説明書第8頁の「12)」の「水平ラインにCSVデータのプロットが存在しない場合」に該当し、それぞれ水平ラインとグラフの線が交差する箇所の左方直近の画素の位置である。 、)LEDランプ。」【検甲7発明】
5 「光拡散性の長尺状の樹脂製カバー部材と、当該カバー部材が取り付けられる長尺状の基台を有するLEDランプであって、前記基台は、カバー部材側に長手方向に沿った平板状部材と、平板状部材に一体になっている断面半円状(弓状)の外殻部材を有し、前記平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテープを介して載置された長尺状のLED基板を有し、前記LED基板の上に複数のLEDが配置され、前記LEDは、平面視矩形状の部材と、平面視矩形状の部材に実装されたLEDチップと、平面視矩形状の部材に充填された透光性の樹脂とからなっており、蛍光灯用安定器経由の交流電源を受ける口金を有しており、輝度均斉度関連において、金属製スケールの画像の左端の目盛は4. (mm) 右端の目盛は298. (m0 、 5m)であり、その差分は294.5mmであり、また、水平方向の画素数は1280であり、輝度CSVデータの各々4点抽出した極大値は17242、17037、16796、16922(cd/m 2)、極小値は15831、15585、15565、15653(cd/m 2)であり、LEDチップの発光中心間隔関連において、LED34個が配置された状態の金属スケールの始点は2.0(mm)、終点は294.5(mm)であり、半値幅関連において、LED1個の最大輝度は9304.82(cd/m 2)であり、最大輝度の半分の輝度4652.41(cd/m 2)を示す水平ラインの画素の位置の始点は左方直近が641、右方直近が642、終点は左方直近が686、右方直近が687である(ただし、令和2年2月3日付け指示説明書の8頁の「水平ラインにCSVデータのプロットがない場合」に該当し、それぞれ水平ラインとグラ
5 フの線が交差する箇所の左方、右方直近の画素の位置である。 、)始点の輝度値は左方直近が4644.207、右方直近が4923.187(cd/m2)、終点の輝度値は左方直近が4708.482、右方直近が4402.15(cd/m2)である、LEDランプ。」
(3) 本件審決が認定した一致点・相違点(なお、本件審決において、一致点、相違点の最初の数字は対応する請求項の番号とし、複数相違点がある場合は、ハイフン「-」の後にその番号を表しているため、そのまま表記する。)ア 無効理由6A-4関係本件審決が認定した本件発明4と検甲2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点4)「光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、一対の第1凸状部及び第2凸状部を有し、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記基板は、前記基板の短手方向の動きが規制された状態で前記基台に配置され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y>1.49xの関係を満たすランプ。」である点。
5 (相違点4)
第1凸状部、第2凸状部、基板の短手方向の動きの規制に関して、本件発明4で
は、「第1壁部」、「第2壁部」であり、基板は「前記第1壁部と前記第2壁部とによ」り基板の短手方向の動きが規制されるのに対し、検甲2発明では、「第1突部」 「第と2突部」であり、LED基板は「前記平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテープを介して載置された」ものであり、「前記第1突部と前記第2突部との間にクリップが嵌まり、前記クリップは短手方向に動かないものであ」って、換言すると、第1突部と第2突部とクリップにより基板の短手方向の動きが規制されるものである点。イ 無効理由6B-1関係本件審決が認定した本件発明1と検甲4発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点1)「光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射要素と、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、ランプ。」である点。(相違点1-1)
5 絶縁反射要素について、本件発明1では、「絶縁反射シート」であるのに対し、検甲4発明では、「反射部材を有し、」「最外面は絶縁性を有する」「塗布膜」である点。(相違点1-2)基台について、本件発明1では、「前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており」という事項を有するのに対し、検甲4発明では、「前記基台は、平板状部材の短手方向の両端部に壁部を有していないものであ」る点。ウ 無効理由6B-2関係本件審決が認定した本件発明2と検甲4発明の一致点及び相違点は、上記イの一致点1及び相違点1-1・2と同様である。エ 無効理由6B-3関係本件審決が認定した本件発明3と検甲4発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点3)「光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射要素と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、ランプ。」(相違点3)
5 絶縁反射要素について、本件発明3(判決注:本件審決99頁には本件発明4とあるが、本件発明3の誤記と認める。)では、「絶縁反射シート」であるのに対し、検甲4発明では、「反射部材を有し、 「最外面は絶縁性を有する」」 「塗布膜」である点。オ 無効理由6B-5関係本件審決が認定した本件発明5と検甲4発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点5)「光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射要素と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係と、x≧8の関係とを満たす、ランプ。」(相違点5)絶縁反射要素について、本件発明5では、「絶縁反射シート」であるのに対し、検甲4発明では、「反射部材を有し、」「最外面は絶縁性を有する」「塗布膜」である点。カ 無効理由6B-7関係本件審決が認定した本件発明7と検甲4発明の一致点及び相違点は、上記エの一致点3及び相違点3と同様である。キ 無効理由6B-16関係本件審決が認定した本件発明16と検甲4発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
5 (一致点16)「ランプは、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基板と、前記基板の上に実装された複数の容器と、前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす。」(相違点16-1)基台について、本件発明16では、「前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており」という事項を有するのに対し、検甲4発明では、前記基台は、「 平板状部材の短手方向の両端部に壁部を有していないものであ」る点。(相違点16-2)筐体について、本件発明16では、「ポリカーボネートからなる直管である」であるのに対し、検甲4発明では、そのような特定がない点。ク 無効理由6B-17関係本件審決が認定した本件発明17と検甲4発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点17)
5 「ランプは、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記LEDチップを発光させるための電力を受ける口金と、を備え、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす。」(相違点17-1)本件発明17が、「ランプを備える照明装置」であるのに対し、検甲4発明は、「LEDランプ」である点。(相違点17-2)口金について、本件発明17では、「商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける」ものであるのに対し、検甲4発明では、「蛍光灯用のインバータ用電子安定器からの高周波電力を受ける」ものである点。ケ 無効理由6B-22関係本件審決が認定した本件発明22と検甲4発明の一致点及び相違点は、前記エの一致点3及び相違点3と同様であるほか、次のとおりである。(相違点22)筐体について、本件発明22では、「ポリカーボネートからなる直管である」であるのに対し、検甲4発明では、そのような特定がない点。コ 無効理由6B-23関係本件審決が認定した本件発明23と検甲4発明の一致点及び相違点は、前記エの一致点3及び相違点3と同様であるほか、次のとおりである。(相違点23)本件発明23が、「ランプを備える、照明装置」であるのに対し、検甲4発明は、
5 「LEDランプ」である点。サ 無効理由6C-20、7C-20関係本件審決が認定した本件発明20と検甲7発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。(一致点20)「光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、前記筐体内に配置された長尺状の基台と、前記基台の上に実装された複数のLEDチップ実装部材と、を備えたランプであって、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数のLEDチップ実装部材の各々に実装され、前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす、ランプ。」(相違点20-1)LEDチップ実装部材について、本件発明20では、「容器」であるのに対し、検甲7発明では、「平面視矩形状の部材」である点。(相違点20-2)筐体について、本件発明20では、「ポリカーボネートからなる直管であ」るのに対し、検甲7発明では、そのような特定がない点。
第3 当事者の主張
1 第1事件の取消事由1(無効理由の補正不許可に係る裁量権の踰越・濫用)
(1)
(原告の主張)
5 本件において本件訂正請求によって追加された発明特定事項に対応し、無効審判
請求の補正を許可することは、審判請求人に対する手続保障の観点からは必須不可欠なものである。特に、本件のように、補正不許決定がされた無効理由について、別途の無効審判請求(甲111)を提起しても、直ちに手続中止決定(甲113)がされる。そうすると、審判長が法の趣旨に反して特許法131条の2第2項の裁量権の踰越・濫用による補正不許決定を行ったというべきものであって、違法性は重大である。各請求項の無効理由6Aの補正不許決定は、y≦1.49xとの事項が登録時請求項3にあった以上、審判請求時から検甲2発明を主引用発明とする進歩性欠如の無効理由が主張できていたはずという理由によるが、請求項またぎで、一部の相違点についての審判請求時の主張可能性をもってする無効理由の排斥は、審判請求人の手続保障を害するものとして、厳しく非難されるべき事項である。また、本件審決が補正不許可とした理由は、登録時請求項14に対し、検甲2発明及び検甲4発明との間に「基台の上に実装された複数の容器」との相違点があるとして進歩性欠如の無効理由を主張していなかったというものであるが、一致点であるか相違点であるかが不明瞭な発明特定事項に対して、いずれか一方の主張のみを一貫させなくてはならない、という法に規定のない責任を審判長の裁量で追加することは許されない。
(2)
(被告の主張)
争う。
2 第1事件の取消事由2(サポート要件、実施可能要件)
(1)
(原告の主張)
ア サポート要件本件審決は、本件各発明の発明特定事項によって所望の輝度均斉度を得ることができたとするが、本件発明1、14、18に係る「複数の容器」の「1.09x≦y≦1.49x」との発明特定事項については、下限値としてのy=1.09xの
5 意義を考えた場合、試料仮番号10及び13では、y=1.09xの段階では輝度
均斉度85%に到達しておらず、上限値としてのy=1.49xの意義を考えた場合、試料仮番号12及び14では、 y=1.49xの段階では、既に輝度均斉度が95%を超えている。以上のとおり、発明の課題の解決とするところであったはずの所望の輝度均斉度を得ながら、過度な拡散性を防止するとの効果を得ることと矛盾する実験結果であり、当該実験結果から当業者が課題を解決できると理解できないから、本件各発明は、サポート要件に違反している。イ 実施可能要件LED1個の特定の輝度分布(形状)を前提として、足し合わせの結果として所望の輝度均斉度(課題の解決)の数値を得ることができる(甲11、甲32、甲33)のであるから、所望の輝度均斉度(課題の解決)の数値を得るためには、LED1個当たりの特定の輝度分布を得ることが必要であり、また、カバー部材の透過率、拡散性、LEDチップからの所望の配光特性等を最適化することが必要である以上、過度な試行錯誤を経なくては、発明の課題とする所望の輝度均斉度を得ると当業者が理解することもできないから、本件明細書は、実施可能要件に違反している。
(2)
(被告の主張)
争う。
3 第1事件の取消事由3(無効理由6A-4進歩性欠如の判断の誤り)
(1)
(原告の主張)
検甲2発明における「第1突部及び第2突部」が「クリップ」を介して「LED基板の短手方向の動きを規制する」ことは、何らの相違点にならないから、本件審決が、相違点4を認定したことは誤りである。
(2)
(被告の主張)
争う。
5 4 第1事件の取消事由4(無効理由6B-1、 16の進歩性の判断の誤り)
2、
(1)
(原告の主張)
本件審決は、相違点1-2及び相違点16-1について当業者が容易に発明をすることができないと判断するが、本件各発明において、「衝立状に形成」された「第1壁部及び第2壁部」の高さを規定する特定はなく、LEDランプとして横方向やそれより取り付け対象側への光を遮ることになるとの本件審決の前提が誤りである。検甲4発明において、衝立状の壁部の高さとLED容器の厚みとの関係によっては、LED(LED容器の発光面)からの横方向の光を放射することはなく、また、そのような光を遮ることがない場合が存在することは明らかである。よって、甲69発明や甲70発明の適用は動機づけられる。
(2)
(被告の主張)
進歩性の判断は、具体的な主引用発明の構成を出発点としなければならないところ、
(原告の主張)
は、検甲4発明という具体的発明を離れ、本件発明4の構成を認識した上での後知恵から、本件発明4の容易想到性を議論しようとするものにほかならず、理由がない。
5 第2事件の取消事由1(公然実施性の認定の誤り)
(1)
(被告の主張)
特許庁は検甲2、4、7発明の公然実施の事実を認定したが、相当ではない。すなわち、本件審決は、見本品手配申請書(甲2の3) 見本品引取書、 (甲2の4)に基づき、株式会社カナデンテクノエンジニアリング(以下「カナデンテクノ」という。 が平成24年4月17日に402W製品を4本受領していたと推認し、) 検甲2発明の公然実施を認定したが、見本品手配申請書には、作成年が記載されておらず不明であるし、原告とカナデンテクノとの間には守秘義務が存在していた。また、検甲4発明(リコー製品A)の公然実施につき、本件審決は、弁護士法23条の2
第2項に基づく弁護士照会(甲4の9)及びリコーの回答結果(甲4の10)を根
拠として、リコー製品Aが平成23年8月に製造されたものであると認定し、さら
5 に、商品カタログ(甲4の6)から平成24年1月には販売されていたと認定する。
しかしながら、リコーは、同製品の販売時期や出荷時期について、特定できません」「と回答しているのであり(甲4の10)、証拠上、リコー製品Aが、いつ第三者に販売され、流通過程に置かれたものであるかについての立証もされていないし、本件審決の販売日の根拠とする証拠(甲4の6)は、リコーの多数の製品がまとめて掲載されたカタログの一部の記載であって、同月においてリコー製品Aという特定の製品が既に発売済みであるという明確な情報も記載されていないから、リコー製品Aの販売日を認定できない。加えて、検甲7発明(リコー製品B)の公然実施に関し、本件審決は、検甲7発明が本件特許の優先日前に公然実施されたかは明らかではないとしつつ、リコー製品Aと同様の理由により、一般的な製品としてのリコー製品Bが本件優先日前である平成24年1月に販売されていたとして、公然実施を認定しているが相当ではない。
(2)
(原告の主張)
争う。客観的な書証及び第三者であるリコーからの回答をもって裏付けのある平成24年1月発売のリコー製品A及びBが、本件特許の優先日の4月25日までに1台も販売されていないとする憶測には合理的な根拠はなく、検甲7の入手についての被告の調査結果を一般化することはできない。
6 第2事件の取消事由2(無効理由6B-3、5、7、22、23)
(1)
(被告の主張)
ア 無効理由6B-3について本件審決は、「絶縁反射シートの採用についても、メリットデメリットを勘案し、当業者が適宜選択できる程度のこと」であると判断するが、検甲4は基板表面を白色塗布膜により覆うという具体的構成及び技術的思想を採用することによって、既に「蛍光灯とほぼ同じ明るさ」を実現しているのであるにもかかわらず、本件審決の判断は、コストの低減と蛍光灯と同等の明るさ等の両立を図ることを実現した検
5 甲4の具体的構成から離れ、抽象的なLEDランプを前提として、設計変更や周知
技術の適用を議論するもので、誤りがあって違法である。イ 無効理由6B-5及び7について本件発明5に対する無効理由6B-5と本件発明7に対する無効理由6B-7に係る本件審決の判断は、無効理由6B-3を引用するものにすぎず、上記と同様、本件審決には判断の誤りがあって違法である。ウ 無効理由6B-22及び23について本件発明7における無効理由6B-7に理由があることが前提とされているが、上記イのとおり、その判断は誤りであり、請求項7を引用する本件発明22、23も当然に進歩性が肯定されることになる。
(2)
(原告の主張)
いずれも争う。
7 第2事件の取消事由3(無効理由6B-17)
(1)
(被告の主張)
検甲4発明の具体的構成を出発点として、相違点17-2に係る本件発明17の構成に至るためには、検甲4発明の構成とは別に、ランプの外部にLED点灯用電源を設けたり、別途商用電源からの交流電力などを受けるロ金やその他これに付随する装置を設けたりする等の必要が生じる。そして、その際には、専門業者が、蛍光灯用の照明器具本体を一旦、天井から取り外して、分解し、配線工事をしたり、新しい口金等の部品の準備や設置に伴う器具本体の改造等も不可避的に生じることとなる。しかしながら、検甲4は、従来から設置されている蛍光灯用照明器具の本体を、そのままの形で維持し、工事することなくLEDランプを設置するという具体的課題の下で、その構成を採用しているのであるから、天井や照明器具本体に配線やその他改造の工事を加え、LEDランプ以外に何らかの新たな部品を設置する必要等が生じるような構成への変更は、そもそも検甲4の具体的課題や技術的思想に反す
5 る。したがって、検甲4発明の口金について、本件発明17が採用する「商用電源
からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける」ものへと変更することについては、動機付けが存在しないか、むしろ阻害要因が存在する。
(2)
(原告の主張)
争う。
8 第2事件の取消事由4(無効理由6C-20、7C-20)
(1)
(被告の主張)
被告は、相違点20-1及び相違点20-2が実質的な相違点ではないという本件審決の判断を争うものではないが、本件発明20と検甲7発明には、これらの相違点のほかに、パラメータに関する相違点である「複数のLEDチップの各々の光がランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合うLEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、本件発明20は「1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす」のに対し、検甲7発明はx及びyの値が不明であること。 (以下、」 「被告主張相違点20―3」という。)が存在する以上、少なくとも、本件発明20は、検甲7発明と同一の発明ではなく、無効理由7C-20は成り立たない。この点、本件審決には、検甲7の使用時間等に関する前提事実の認定に誤りがあり、具体的には、原告が購入した製品についての調査の結果(乙30調査報告書)によると、リコー製品Bは、本件特許の優先日(平成24年4月25日)後の平成25年7月又は平成26年2月17日に第三者である九州教具がリコーから購入したものであった。そして、本件審決は、オークション出品者の説明に依拠してリコー製品Bの使用期問が2年弱であるとしているが、実際には、6年以上経過しており、定格寿命4万時間の7割近い約2万6000時間が使用されており、乙1の見解書によると、「光学特性値において、・・・優先日当時の特性が同等と判断できない」のである。また、リコー製品Bは、「電気工事屋さんが取り外しざっくりと拭き上げた状態」
5 で出品したものであるから、ランプ表面に傷がつき、樹脂カバーの光学特性(透光
性、光拡散性能)が変化、すなわち本件各発明における「半値幅」である「y」値が変化してしまうのである。このように、検甲7は、本件審決の認定よりも極めて長期間にわたって使用されたものであって、これにより劣化が進んだものである。本件審決はこのような劣化が進んだランプを前提として、検甲7についてy≒1.208xの関係にある等と認定しているが、その値は初期値を示すものではなく、値は不明であると言わざるを得ない。なお、劣化が進んだランプであるほど、y/xの値は、小さい値に変化していることが推認できることからすると、検甲7の初期値は、本件発明20のx値及びy値を満さないものであったと考えられる。したがって、本件発明20と検甲7の相違点についてはパラメータに関する上記の相違点が存在する。
(2)
(原告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
1 第1事件の取消事由1(無効理由の補正不許可に係る裁量権の踰越・濫用)について
(1) 本件において、特許庁が令和元年10月10日付けで審決の予告をし(甲101の2)、被告が同年12月16日付けで訂正請求をし(乙26の1・2)、原告が令和2年3月19日付けで弁駁書を提出した(甲105の2)。そして、当初の無効審判の請求の理由が検甲2及び検甲4に基づく新規性欠如であったのに対して、原告は、本件訂正に応じた無効理由として、検甲2及び検甲4に基づく進歩性欠如を追加し、また、検甲7に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を追加主張したものである。
(2) まず、検甲2及び検甲4に基づく進歩性欠如を追加している点は、新たな無
5 効理由の根拠法条を追加するものである。また、検甲7に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を追加している点は、新たな無効理由を追加し、検甲7という新たな主引用例を追加するものであるから、上記無効理由の補正は、特許法131条1項の規定により提出した請求書の要旨を変更する補正といえる。そして、特許法131条の2第1項の規定によると、このような請求書の要旨を変更する補正は原則許容されず、同条2項の規定により審理を不当に遅延させないこと及び訂正請求によって請求の理由を補正する必要が生じた場合(同項1号)には、審判長は、決定をもって補正を許可することができるものと解される。ここで、本件についてみると、原告が主張する本件訂正前における検甲2(y/x=1.89)による無効理由は新規性欠如のみであり、進歩性欠如についての主張はしていなかった。しかるところ、本件訂正前の請求項3のy≦1.49xの数値限定に対して進歩性欠如の無効理由が主張できたものであるから、補正の許可がされた部分を除き、訂正請求によって請求の理由を変更する必要が生じた場合に該当しない。また、新たな証拠である検甲7(y/x=1.208)に基づく無効理由の追加も、補正の許可がされた部分を除き、y≦1.49の訂正請求によって請求の理由の要旨を変更する補正の必要が生じたものとはいえない。さらに、従属項を独立項に改める訂正後の請求項についての検甲4(y/x=1.23)に基づく進歩性の無効理由の追加も、補正の許可がされた部分を除き、訂正請求によって請求の理由を変更する必要が生じたものとはいえない。そうすると、このような請求の理由の要旨を変更する補正の許可は、審判長の裁量権に服するものであり、また、本件において補正を許可しないことが裁量権の逸脱・濫用ともいえない。
(3) 以上によると、原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 本件各発明について(1) 本件明細書の記載事項について
5 本件明細書(甲87)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図6A、6B及び図7A、7Bについては別紙1を参照)。【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、ランプ及び照明装置に関し、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いた直管形のLEDランプ及びこれを備えた照明装置に関する。【背景技術】【0002】LEDは、高効率及び長寿命であることから、従来から知られる蛍光灯や白熱電球等の各種ランプにおける新しい光源として期待されており、LEDを用いたランプ(LEDランプ)の研究開発が進められている。【0003】LEDランプとしては、両端部に電極コイルを有する直管形蛍光灯に代替する直管形のLEDランプ(直管形LEDランプ)、あるいは、ガラスバルブの両端部に電極コイルを有する発光管を備えた電球形蛍光灯及びフィラメントコイルを用いた白熱電球に代替する電球形のLEDランプ(電球形LEDランプ)等がある。例えば、特許文献1には、従来に係る直管形LEDランプが開示されている。また、特許文献2には、従来に係る電球形LEDランプが開示されている。【0004】LEDランプにおいて、LEDは、LEDモジュールとして構成されている。LEDモジュールには、表面実装型(SMD:Surface Mount Device)又はCOB型(Chip On Board)等がある。SMD型のLEDモジュールは、樹脂成形された非透光性容器(キャビティ)の中に実装されたLEDチップが蛍光体含有樹脂によって封止されたパッケージ型のLED素子を用い
5 たものであり、当該LED素子を基板の上に複数実装することで作製できる。一方、COB型のLEDモジュールは、基板上に複数のLEDチップ(ベアチップ)を直接実装して蛍光体含有樹脂によって封止することで作製できる。【先行技術文献】【特許文献】【0005】【特許文献1】 特開2009-043447号公報【特許文献2】 特開2009-037995号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】LEDランプでは、LEDモジュールが筐体内に収納されている。LEDモジュールは、一定間隔で並べられた複数のLED(LED素子やベアチップ)を有する。この場合、LEDの並び方向に沿って発光輝度の高い領域(LEDが実装された部分)と発光輝度の低い領域(LEDが実装されていない部分)とが繰り返して現れるので、LEDランプの光(照明光)には輝度差が生じる。特に、光源がLEDである場合、LEDはランバーシアン配光であって放射角が比較的に狭いという特質を有するので、上記の輝度差が大きくなる。このように、従来のLEDランプでは、筐体を透過するLEDの光に輝度差が生じるので、ユーザに光の粒々感(以下、「粒々感」と記載する)を与えるという問題がある。【0007】特に、直管形LEDランプでは、筐体として長尺状の直管が用いられているので、ユーザは一層粒々感を感じる傾向にある。さらに、LEDモジュールとしてSMD型のものを用いる場合、LEDチップが非透光性容器内に実装されて側方への光が遮断された構成のLED素子を複数配置するので、LED素子が配置された部分とLED素子が配置されない部分とで上記の輝度差が非常に大きくなり、ユーザはさ
5 らに粒々感を感じる。【0008】本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することのできるランプ及び照明装置を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0009】上記課題を解決するために、本発明に係るランプの一態様は、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の発光素子と、を備えたランプであって、前記複数の発光素子の各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≧1.09xの関係を満たすことを特徴とする。【発明の効果】【0021】本発明によれば、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することのできるランプ及び照明装置を実現することができる。【発明を実施するための形態】【0023】(本発明に至った経緯)上述のとおり、長尺状の筐体を用いたLEDランプでは、粒々感を感じるという課題がある。この課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消することは自明のことである。しかしながら、単に拡散性を高めただけでは、その副作用として光束が低下してしまい、ランプ照度が低下してしまう。【0024】したがって、光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制することが重要となる
5 が、従来、このような課題に対する技術的な解決手段は見出されていなかった。その理由として、(1)粒々感の定義があいまいで数値化されておらず、ランプ設計にフィードバックすることが非常に困難であったということ、(2)粒々感に影響を与えるランプの構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは、光源素子から筐体までの距離等が多種多様であるということ、が挙げられる。すなわち、従来は、粒々感に影響を及ぼしうるパラメータが非常に多い中で、光束低下を必要最小限に抑えて粒々感を抑制することが極めて困難であった。【0025】そこで、本願発明者は、鋭意検討した結果、光束低下を最小限に抑えて効果的に粒々感を抑制することのできる画一的な領域を見出すとともに、その領域を数値化することに成功した。すなわち、本発明は、ランプ最外郭から発せられる光源1つの輝度分布をパラメータとして採用することで、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化することができるという知見を得ることができた。本発明は、このようにして成し遂げたものであり、これにより、上記(1)及び(2)の課題を解決することができた。【0053】[基台]
第1基台50及び第2基台54は、いずれも金属製であり、LEDモジュール1
0で発生する熱を放熱するヒートシンクとして機能するとともに、LEDモジュール10を載置及び固定するための基台として機能する。【0054】
第1基台50は、ヒートシンクの外郭を構成する部材であり、図2に示すように、
筐体20の全長とほぼ同じ長さの長尺状に構成されている。第1基台50は、例えば、亜鉛めっき鋼板等の金属板を折り曲げ加工等することによって形成することができる。【0055】
5 第1基台50は、長尺状の底部(底板部)と、底部における第1基台50の短手方向(基板11の幅方向)の両端部に形成された第1壁部51及び第2壁部52とを有する。第1壁部51及び第2壁部52は、第1基台50を構成する金属板を折り曲げ加工することによって衝立状に形成されている。図3Bに示すように、LEDモジュール10の基板11は第1壁部51と第2壁部52とによって挟持されており、LEDモジュール10は、第1壁部51と第2壁部52とによって基板11の短手方向の動きが規制された状態で第1基台50に配置される。【0080】図6Aに示すように、LED1個からの光が拡散部材を透過したときの透過光の輝度分布は、最大輝度(約15,000cd/m 2)を中心として全方位に連続的に広がる正規分布となっている。最大輝度を示す位置は、LEDの発光中心である。なお、図6Aの例は、測定対象物である拡散部材から輝度測定装置(HiLand製RISA)を130cm離し、測定画面の横軸幅を30cmに調整して測定したときの結果を示している。【0083】さらに、本発明者らは、実験を重ねた結果、LED1個の輝度分布における半値幅(図6A)と、複数のLEDを配列したときにおける隣り合うLEDの発光中心間隔(図6B)と、輝度均斉度とには、相関関係があるということを突き止めた。なお、半値幅は、FWHM(Full Width at Half Maximum)である。また、発光中心間隔は、隣り合うLEDにおいて、各々のLEDの輝度分布の中心(最大輝度)同士の間隔である。【0086】図7Aの結果をもとに検討した結果、複数のLEDの各々の光が拡散部材を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合うLEDの発光中心間隔をx(mm)とすると、一列に並べられたLEDの輝度の均斉度は、y=αxとして直線近似できることが分かった。また、LEDの光を拡散させる拡散部材
5 の材料がガラス及びポリカーボネートのいずれであっても直線近似できることが分かった。また、LEDモジュールがSMD型及びCOB型のいずれであっても直線近似できることが分かった。すなわち、拡散部材やLEDモジュールの種類によらず、一列に並べられたLEDにおける輝度均斉度は直線近似できることが分かった。【0087】具体的には、図7Bに示すように、85%の輝度均斉度は、y=1.09xとして直線近似できることが分かった。また、90%の輝度均斉度は、y=1.21xとして直線近似できることが分かった。さらに、95%の輝度均斉度は、y=1.49xとして直線近似できることが分かった。【0088】また、各直線における相関係数R 2 は、0.99又は1.00であることから、輝度分布の半値幅yとLEDの発光中心間隔xと輝度均斉度とには高い相関関係があることも確認できている。なお、LEDランプの実用上、発光中心間隔xは3mm以上30mm以下とすることが好ましいが、少なくともこの範囲においては高い相関関係があることが確認できている。【0089】ここで、図7Bの結果をもとにして、上記のようにy=αxとして直線近似したときにおける直線傾きαと輝度の均斉度との関係を図7Cに示す。【0090】本実験における拡散部材は、本実施の形態における直管形LEDランプ1の最外郭に相当すると考えることができる。したがって、図7B及び図7Cに示すように、直管形LEDランプ1において、筐体20と、筐体20の管軸方向(長尺方向)に沿って並べられた複数のLED12とが、y≧1.09xの関係を満たすように構成することにより、輝度均斉度を85%以上とすることができる。これにより、複数のLED12の並び方向において現れる高輝度領域と低輝度領域輝度との輝度差を抑制することができるので、ユーザに粒々感をほとんど感じさせないようにする
5 ことができる。なお、本実施の形態において、ランプの最外郭は筐体20としているが、これに限らない。(2) 上記(1)の記載事項によると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各発明に関し、次のような開示があることが認められる。ア 技術分野本件各発明は、発光ダイオード(LED)を用いた直管形のLEDランプ及びこれを備えた照明装置に関する(【0001】 。)イ 解決しようとする課題LEDランプでは、LEDモジュールが筐体内に収納され、当該LEDモジュールは、一定間隔で並べられた複数のLED(LED素子やベアチップ)を有するところ、従来、LEDの並び方向に沿って発光輝度の高い領域(LEDが実装された部分)と発光輝度の低い領域(LEDが実装されていない部分)とが繰り返して現れ、筐体を透過するLEDの光に輝度差が生じるので、特に、直管形LEDランプではユーザに光の粒々感を与えるという問題がある(【0006】 【0007】 。、 )この課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消することは自明であるが、その副作用として光束が低下してしまい、ランプ照度が低下してしまう。そのため、光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制することが重要となるが、従来、(1)粒々感の定義があいまいで数値化されておらず、ランプ設計にフィードバックすることが非常に困難であったこと、(2)粒々感に影響を与えるランプの構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは、光源素子から筐体までの距離等が多種多様であること、すなわち、粒々感に影響を及ぼしうるパラメータが非常に多い中で、光束低下を必要最小限に抑えて粒々感を抑制することが極めて困難であった(【0023】【0024】 。)ウ 課題を解決するための手段本件各発明は、ランプ最外郭(拡散部材)から発せられる光源1つの輝度分布をパラメータとして採用することで、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化すること
5 ができるという知見、具体的には、【図7A】の結果から、LED1個の輝度分布における半値幅y(図6A)(mm)と、隣り合うLEDの発光中心間隔(図6B)x(mm)と、一列に並べられたLEDの輝度均斉度とには、相関関係があり、拡散部材の材料がガラス及びポリカーボネートのいずれであっても、y=αx(85%の輝度均斉度はy=1.09x、90%の輝度均斉度はy=1.21x、95%の輝度均斉度はy=1.49x)として直線近似できるという知見を得てできたもので(【0025】【0083】【0086】【0087】【0090】 、光拡散部を有する)長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の発光素子と、を備えたランプであって、前記複数の発光素子の各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≧1.09xの関係を満たすランプ(【0009】、登録時請求項1ほか)である。エ 本件各発明の効果本件各発明によると、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することのできるランプ及び照明装置を実現することができる(【0021】 。)オ 本件各発明の要旨(ア) 直線近似式について本件明細書では、輝度均斉度が目標とする85%、90%、95%が得られる場合のLED1個の輝度分布における半値幅y(mm)(図6A)と隣り合うLEDの発光中心間隔x(mm)(図6B)を実測し、その結果(図7A)から、y=αxとの直線近似を行った(回帰式を得た)もの( 以下 「 本 件パ ラ メ ータ 」 と いう 。 )であって(【0086】~【0089】 、このように、二つの測定データから、直線)近似式(回帰式)を得ることは周知の技術的事項であるといえる(乙33)。(イ) 本件パラメータの要旨本件各 発明は、「ランプ」又は「照明装置」に係る発明であって、「物」の発明である。そして、「物」の発明である本件 各発明において、近似式y=α
5 xから成る本件パラメータにおいて、αがとり得る値の範囲を特定するものである。そうすると、新規性又は進歩性の判断に際しての発明の要旨認定の場面では、y値及びx値(の測定結果)が、各請求項で特定されているy=αxの関係におけるαの範囲内である 物を全て含み、これは y値又はx値の具体的な数値の如何やy値又はx値の設計方法 を問わないもの と解するのが相当である。なお、被告は、所望の輝度 均斉度を得るために、y/xに着目するとカッ トアンドトライを要せず簡易的に検証可能である(例えば、乙33 )とし、物の発明において、物の製造方法で特定しているかのような主張をしているが、仮に物の製造方法で特定している としても、物の発明を製造方法に限定して解釈する必然性はなく、これと製造方法は異なるが物としては同一であるものも当該特許発明に包含されると解するのが相当である。(ウ) 直線近似式の意義と輝度均斉度の精度本件パラメータは、統計的に推定された近似式であり、かかる式から導出される数値は予測値であること、また、予測値と実測データと垂直方向の差は「残差」と呼ばれ、決定 係数(本件の「相関係数」)が、1に近いほど分析の精度(予測値の精度)が高いものであることは、技術常識である。この点、本件明細書【0088】にて「各直線における相関係数R 2 は、0.99又は1.00である」とする。ただし、近似式は、あくまでも統計的に推定されたものであるから、高い相関性がある本件パラメータ(近似式)を満たす場合でも、目標とす る輝度均斉度が厳密に達成できるものではない 。例えば、輝度均斉度が85%が見込まれるy=1.09xを満たすy値とx値を備えるランプであっても、実際の輝度均斉度は、85%を下回ることもあれば、上回ることもある。このように、近似式には、その統計的性質から一定の微差を生じることが織り込まれているものである 。
5 このように、本件パラメータは、その特定されるy/x値を満たす場合であっても、輝度均斉度の目標値に近い値を達成できる(目標値を下回ることもあれば、上回ることもある)ということを意味するに すぎない。より具体的には、本件明細書(【0087】)から、1.09≦y/x≦1.21の数値範囲において85%から90%程度の輝度均斉度が、1.21≦y/x≦1.49の数値範囲において90%から95%程度の輝度均斉度が、1.49≦y/xの数値範囲において95%程度の輝度均斉度がおおよそ得られることが期待できるものである。そもそも各輝度均斉度の目標値についても、この目標値の前後において、「粒々感」に係る光学的な効果が大きく変化するような臨界的な意義を持つものでもなく、本件パラメータによって、目標とする輝度均斉度がおおよそ得られることが期待できれ ば十分であると理解できる。カ 本件発明1、2、16における「衝立状」に係る要旨認定(第1事件の取消事由4の判断)本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている用語について、通常の意味を確認すると、 「衝立 」とは、「衝 立障子 (ついたてそ うじ ) の略。」であ り、「衝立障子」とは、「屏障具へいしょうぐの一つ。 1 枚の襖障子または板障子に、移動しやすいように 台をつけたもの。」(広辞苑第 六版)を意味する。そのほか、「玄関または室内に置き見通しをさえぎるのに用いる装飾を兼ねた家具。面を直立させ下部に台を付け、移動できるようにしたもので、古くは衝立障子といった。」(百科事典マイペディア)との説明もある。このことを踏まえると、「衝立」とは、一般的には台から直立する障子や家具を意味するものであり、「状」が「①すがた。ありさま。」(広辞苑 第六版 )を意味するこ とも踏 まえると、「 衝立状 」とは、「1 枚の障 子」の「すが た、ありさま」であるとか「台から直立するすがた、ありさま」を意味すると解される。
5 また、構成要件1-1Jの記載を踏まえると、「衝立状」とは、「第1壁部」及び「第2壁部」の「すがた、ありさま」を特定するもので、構成要件1-1Iから「第1壁部」及び「第2壁部」は、基台の底部の短手方向の一方の端部、他方の端部に設けられたものである。このように「衝立状」の意味及び同用語が特定しようとする対象を踏まえると、本件訂正後の 特許請求の範囲の記載から、「衝立状」とは、基台の底部の短手方向の一方の端部、他方の端部に設けられた「第1壁部」及び「第2壁部」が、基台の底部から直立するすがた、ありさまを特定するものである と解することができる。他方、第1壁部及び第2壁部に相当すると見られる部位が、基台の底部から基板側に略直 立とい ってよい形状 に延出 している部分 がある 場合であって も、これと一体のものとして 、基板とほぼ同じ高さで基台の底部に平行に形成された部分もあり、全体としては「コの字」又は「 T字」と表現すべき形状に形成されているものは、基台の底部から直立する 態様以外のものであるといえ 、基台の底部から直立するすがた、ありさまとした形状に形成されているとはいえない。なお、本件訂正後の 特許請求の範囲に記載された「衝立状」という用語の意義を解釈するため、本件訂正(乙26の1・2)における訂正事項1(「第1壁部及び第2壁部」及びこれらが「衝立状に形成」されること)の訂正の根拠で ある明細書 の記載 【0053】 ~【0 055】及び 【図3 B 】等を見て も、本件訂正後の特許請求の範囲の「衝立状」を、通常とは相違する意味であることの記載や定義は見 いだせない。かえって、「衝立状」を上記のとおりの通常の意味で理解 するこ とと、【図3 B】に おいて「第1 壁部」 及び「第2壁 部」が立直する壁部として記載されていることは整合的である。仮に、「第1壁部」又は「第2壁部」の傾斜の角度や姿を問わないのであれば、「衝立状」との特定をしなければよく、例えば、本件訂正により訂正された請求項4 の構成要件
5 1-4E及び1-4H では、「第1壁部」及び「第2壁部」が特定されているものの、「衝 立状」 の特定はない ところ 、このような 請求項 との対比から も、「衝立状」との特定によって、鉛直方向に 直立 する態様以外の「第1壁部」及び「第2壁部」を排除 している ものといえる。この点、本件審決は、「衝立状」の解釈を明示しているわけではないものの、検甲4を主たる証拠とする無効理由6B-1(請求項1)の判断において「検甲5…斜め方向に立ち上がる形状であるなら「衝立状」とはいえない」 「甲73技術…平坦、なストリップ28から立ち上がる溝16を設けた一対の部分」が「筐体」の一部に相当するものであることをおいたとしても、当該部分は「衝立状」ともいえない」と判断していることに照らすと、本件審決においても上記と同様に解釈しているものと認められる。したがって、この点に関する本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。キ 本件発明4における「基板の短手方向の動きが規制された状態」に係る要旨認定(第1事件の取消事由 3の判断)「規制」とは、「おきて。きまり。また、規律を立てて制限すること。」(広辞苑第六版)を意味する用語であるか ら、「規制された」とは、制限されていることを意味すると理解できる 。そして、構成要件1-4 Eでは、基台が一対の第1壁部及び第2壁部を有することが特定され、構成要件1-4Hでは、一対の第1壁部及び第2壁部によって、基板は、短手方向の動きが規制、すなわち動きが 制限された状態で基台に配置されることが特定されていることから 、短手方向に 一対の第1壁部及び第2壁部が存在し、このような一対の壁部によって、基板は、短手 方向の動きが制限された状態で基台に配置されるものといえる 。ここで、本件明細書をみても「規制」を通常の用語と異なる意味で用いる旨の説明は見いだせない。そうすると、上記構成要件における「規制」は、上記のとおり構成要件1-4 H により、一対の壁部によって基板が短手方向の動き
5 を制限されていることが特定されていると解 するのが相当である。他方、一対の壁部によって基板が 短手方向の動きを制限されていることについて、具体的にどのように 制限するかについては、構成要件1-4 Hその他の構成要件において特段の特定はないから、一対の壁部は基板の短手方向の動きを制限することに関与すれば足りる と解するのが相当である 。なお、第1 壁部及び 第2壁部に 係る本件 明細書【0 055】 及び 【図3 B 】には、実施の形態として、第1壁部51と第2壁部52は、反射部材70を介在して、基板11を挟持する形態で、一対の壁部が基板の短手方向の動きを制限することに関与していることが理解できる。この点、本件審決は、「本件特許明細書の段落【0055】・・・【0063】・・・【0064】・・・これらの記載と本件図面の【図3B】の記載を総合すると、本件発明4の「前記基板は、前記第1壁部と前記第2壁部とによって前記基板の短手方向の動きが規制された状態で前記基台に配置され」るという事項は、薄い反射部材70を介することはあっても、第1壁部と第2壁部自体によって、基板の短手方向の動きを規制することを意味していると解される。」と認定・判断するが、上記のとおり、本件発明4の発明特定事項からは、一対の壁部は、基板の短手方向の動き を制限することに関与すれば足りるのであるから、「第1壁部と第2壁部自体によって、基板の短手方向の動きを規制することを意味していると解される。」と 本件審決が認定したことは誤りである。
3 第1事件の取消事由2(サポート要件、実施可能要件)について(1) サポート要件違反についてア 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、ま
5 た、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するものと解するのが相当である。本件明細書における本件各発明の課題及び解決手段は、前記2(2)のとおりである。ここで、前記2(2)のとおり、本件パラメータは、直線近似式であるところ、その統計的な性質上、予測値にすぎないものであることは、当業者の技術常識の範ちゅうであるといえる。かかる技術常識に照らして、当業者は、本件パラメータが規定する関係を満たす場合には、1.09≦y/x≦1.21の数値範囲において85%から90%程度の輝度均斉度が、 21≦y/x≦1.1. 49の数値範囲において90%から95%程度の輝度均斉度が、1.49≦y/xの数値範囲において95%程度の輝度均斉度がおおよそ得られることが期待できることが本件明細書に記載されていると理解するものであるといえる。また、輝度均斉度が、おおむね85%程度を超えていると、粒々感は、解消できることも周知の技術であるといえる(甲10【0001】【0024】【0074】 。)そうすると、本件明細書に接した当業者は、上記技術常識も踏まえて、本件パラメータが1.09<y/xであれば、粒々感を抑制するという課題を解決できると認識するものである。他方、本件訂正後の特許請求の範囲に特定された本件各発明における本件パラメータについてみると、1.09<y/xの範囲で、y/xの下限や上限を適宜特定し、さらには、x値(請求項5~8)の範囲を特定するものであるから、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された発明は、輝度均斉度がおおよそ85%以上となる範囲を特定するものであることを理解できる。以上を踏まえて、本件訂正後の特許請求の範囲の記載と本件明細書の記載とを対比すると、同特許請求の範囲に記載された本件各発明が、本件明細書に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により、当業者は、同特許請求の範囲に特
5 定された全数値範囲で、粒々感を抑制するという課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号のサポート要件を満たすものであるといえる。イ この点、原告は、本件明細書の実験結果【図7A】には、y=1.09xの段階で輝度均斉度が85%に達していない試料(上段から10番目及び13番目)が記載されていること等から、実験結果から当業者が課題を解決できると認識できないなどと主張するが、前記2(2)オのとおり、当業者は、直線近似式と実測データには残差が存在するという出願時の技術常識を踏まえて、本件各発明を理解するところ、原告が指摘する試料番号10、13等についても、このような技術常識を踏まえて、おおよそ所望の輝度均斉度が得られ、本件各発明の課題を解決できると理解できるものである。よって、原告の上記主張には理由がない。したがって、サポート要件に違反しないとした本件審決の判断に誤りはない。(2) 実施可能要件について物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるかどうかで判断するのが相当である。前記2(2)オのとおり、本件パラメータは、直線近似式であって、発光中心間隔xと半値幅yが、本件パラメータの数式の範囲内にあれば、おおよそ所望の輝度均斉度が得られるとしたものである。ここで、粒々感を解消した直管形LEDを得ることは、本願出願前に周知の技術的課題であるし(甲1の3、甲47、甲52)、この課題を解決して粒々感を抑制するためには、輝度均斉度がおおよそ85%程度以上であればよいことは技術常識である(甲10)。さらに、直管形LEDにおいて、LED素子を選定し、コストの関係でLEDの
5 個数を適宜決定し(x値を変えること)、その上で、拡散カバーを適宜選択すること(y値を変えること)で、粒々感を解消することが、本件特許の出願当時の技術常識であったこと、また、x値やy値の計測やy/x値の計算(【0080】)も格別困難なものではないことに照らすと、当業者は、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を経ることなく、使用するLED素子、拡散部材、又は素子と拡散部材の距離などにつき、粒々感を抑制し得るような組合せを適宜選択して、本件各発明に係る本件パラメータを充足するy値及びx値を備えるランプを実施することができるというべきである。この点、原告は、過度な試行錯誤を経なくては、発明の課題とする所望の輝度均斉度を得ると当業者が理解できないと主張するが、上記判断に照らし、原告の主張は採用できない。したがって、実施可能要件に違反しないとした本件審決の判断に誤りはない。
4 第2事件の取消事由1(公然実施性の認定の誤り)(1) 検甲2発明の公然実施の有無ア 証拠(以下の文中(ア)~(ウ)に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。(ア) 原告は、遅くとも平成24年2月頃から402W製品の製造準備を開始し、韓国において製造した402W製品につき、少なくとも、同年3月6日頃に260セット、同年4月10日頃に2497セット、同月13日頃に600セットを輸入した(甲2の6・7・15、甲37、甲221)。(イ) 原告は、同年2月10日、「処理方法」を「渡し切りサンプル(点灯試験・分解テスト)」として見本品手配申請書(甲2の3。以下「本件申請書」という。)を作成し、402W製品4本を含む4種類の直管形LEDランプ合計16本をカナデンテクノに対して納品する社内手続を行い、同年4月16日を納期としてその処理を完了し、同月17日、これをカナデンテクノに納品した。カナデンテクノに納品された402W製品は同社の倉庫に保管されていたとこ
5 ろ、原告は、平成29年9月頃、同社からこれを入手した。当該製品には、製造ロット番号として「HUM120331」が表示されているところ、これは、当該製品の製造年月日が平成24年3月31日であることを意味するものといえる。(以上につき、上記のほか、甲2の1・4・5・8~10・13)(ウ) 原告は、チラシ(平成24年1月発行。以下「本件チラシ」という。)に、平成24年3月初旬発売予定の商品として402W製品を掲載した(甲1の8) また、。原告は、カタログ(同年2月発行。以下「本件カタログ」という。)にも402W製品を掲載したところ、他の掲載商品には発売予定時期を明記したものも見られるにもかかわらず、402W製品にはそのような記載はない(甲1の3)。イ 上記各認定事実を総合的に考慮すると、402W製品は、遅くとも原告からカナデンテクノに納品された平成24年4月17日頃には、同社に譲渡されたことによりその構造が解析可能な状態に至ったものと認められる。ウ これに対し、被告は、平成24年4月17日頃に原告からカナデンテクノに対して402W製品が納品されたと認められず、仮にその頃に納品されたとしても、原告とカナデンテクノとの間に秘密を保持することが暗黙のうちに求められていたため、公然実施されたとはいえないなどと主張する。しかし、本件申請書は、その書面の体裁等に鑑みると、原告において内部的に定形化された書式に基づき作成されたものと見られ、日常的な業務の一環として作成されたものであることがうかがわれる。また、その記載内容並びに「申請者印」欄及び「完了印」欄の押印は、平成24年4月16日付け「見本品引取書」(甲2の4)及び同月17日付け「判取票」(甲2の5)の記載又は押印と一致ないし整合することから、本件申請書の作成日は、上記認定のとおり、同年2月10日と認められる(なお、同様の理由及び筆跡の字体そのものから、判取票の作成日付は、2012年9月17日ではなく同年4月17日であることも認められる。 。) さらに、 「判上記取票」には、カナデンテクノ担当者(甲2の13)の姓を示す印影が存在することも、平成24年4月17日に同社に402W製品が納品されたことを裏付けるもの
5 と認められる。また、本件申請書には、「処理方法」の「渡し切りサンプル(点灯試験・分解テスト)」欄にチェックがされているものの、カナデンテクノは、電気工事業等の建設業許可を得ている事業会社であり(甲2の2)、また、原告による402W製品の商品開発に共同研究その他の形で関与していたことをうかがわせる事情も見当たらない。これらの事情に加え、本件チラシ及び本件カタログの記載からは、カナデンテクノに納品された平成24年4月頃又はこれに極めて近接した時点で、402W製品は既に一般向けに販売されていたことがうかがわれることを照らし合わせると、カナデンテクノに対する402W製品の納品が、その構成等につき同社に守秘義務を負わせることを前提として行われたものであるとは考え難い。その他原告が主張する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。以上によると、402W発明は、本件優先日前に日本国内において公然実施された発明といえる。したがって、「検甲2の構成により特定される発明は、本件特許の優先日である平成24年4月25日前に公然実施されたものといえる。」と判断した本件審決の判断に誤りはない。(2) 検甲7発明の公然実施の有無についてア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。(ア) リコーは、平成23年7月7日、直管形LEDランプである「クラーテ P シリーズ40形」を同月末発売予定である旨をプレスリリースした(甲4の8) また、。リコーは、平成24年1月時点の製品を掲載したカタログ「<クラーテ>P シリーズ」(甲4の6)にリコー製品Bを掲載しているところ、同カタログ掲載の仕様は、上記プレスリリースに係る製品の仕様とおおむね同一である。さらに、同社は、遅くとも同月には、リコー製品Bを含むシリーズ製品を販売していた。甲4の4 5、( ・
5 甲80)(イ) 被告は、令和元年9月12日終了のオークションにより、リコー製品Bの14本(被告リコー製品B)を入手したところ、これらの被告リコー製品Bには、いずれも、製造ロット番号として「1203」が表示されている。これは、当該製品の製造年月が平成24年3月であることを意味するものといえる。(甲4の4・9・10、甲55)イ 上記各認定事実を総合的に考慮すると、リコー製品Bは、遅くとも平成24年1月頃には、リコーから販売されたことによりその構造が第三者に解析可能な状態に至ったものと認められる。ウ これに対し、被告は、リコー製品Bの上市時期が明らかでないこと、仮に被告リコー製品Bの製造日が平成24年3月であっても、製品製造後すぐ市場に出回るとは考えがたいことなどを主張する。しかし、上記のとおり、リコーがリコー製品Bを平成24年1月には販売していたことが認められるのであって、それから約3か月が経過した本件優先日時点では、リコー製品Bが実際に市場に出回っていたものと見るのが合理的かつ相当である。したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。また、被告は、原告測定値のばらつきや経年変化等の事情を指摘して、リコー製品Bについての原告測定値がリコー製品Bの初期値と等しいとはいえない旨を主張する。この点、被告リコー製品Bについては、オークションの出品者による説明として、中古品であること、商品の状態として「やや傷や汚れ」があること、使用期間が2年弱であること、電気工事業者による取り外し作業の際に「ざっくりと中性洗剤で管だけ拭きあげた状態」で丁寧な梱包により発送すること、「RICOH ロゴマークあたり」が黒ずんで見えるものの、LEDは使用が進んでも黒ずむことはないため元々の仕様であることなどが記載されている(甲55)。ところで、リコー製品Bは、光束が70%まで低下するまでの定格寿命が4万時
5 間とされている(甲4の2・6)ところ、リコー製品Bにつき、2年間の使用時間として仮に4万時間の25%に相当する1万時間使用された事実があったとしても、配光特性に影響を与えるとは必ずしもいえず、現に、被告リコー製品Bのうち2本の配光特性はいずれも117度である(甲84) 口金ピンやランプマーク側の管端。部の黒ずみについても、その存在から直ちに他の部位にも同様の黒ずみが存在し、配光特性に影響を与えるとはいえない。また、リコー製品Bについては、光触媒の膜が剥がれて本来の効果が得られなくなる場合があるとして、製品の表面を強く擦らないようにとの注意喚起がされているものの(甲4の5) 「ざっくりと中性洗剤、で」「拭き上げ」るといった態様がこれに含まれるとは考えられない。さらに、リコー製品A(甲4の3、甲26の1・2、甲27によると、未使用品と認められる。)と被告リコー製品Bのカバー部材を交換した測定によっても、両者の半値幅等に有意な差異はない(甲83)。これらの事情等を踏まえると、リコー製品Bにつき、経年変化等によりパラメータの値に変化が生じているとは考えられず、上記認定に係るリコー製品Bの原告測定値及び本件審判の検証手続における測定値は、リコー製品Bの初期値とおおむね等しいものと見られる。したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。エ 小括よって、検甲7発明は、本件優先日より前に日本国内において公然実施をされた発明といえる。(3) 検甲4発明の公然実施の有無についてア リコー製品Aとリコー製品Bは、「クラーテPシリーズ40形」のシリーズ品であって、上記(2)で判断したとおり、リコーは、遅くとも平成24年1月には、リコー製品Bを含むシリーズ製品を販売していたといえること(甲4の2・4・6)や、検甲4のシリアルナンバー「1108」から把握できる製造年月が平成23年8月を意味すること(甲4の7・9・10)から、リコー製品Aについても、リコー
5 製品Bと同様、平成24年1月時点において販売されていたものと推認される。イ 被告は、リコーは、同製品の販売時期や出荷時期について、「特定できません」と回答しているのであり(甲4の10) 証拠上、、 検甲4が、いつ第三者に販売され、流通過程に置かれたものであることについての立証もされていないし、本件審決の販売日の根拠とする証拠(甲4の6)は、リコーの多数の製品がまとめて掲載されたカタログの一部の記載であって、同月においてリコー製品Aという特定の製品が既に発売済みであるという明確な情報も記載されていないから、リコー製品Aの販売日を認定できないと主張する。しかしながら、カタログは、冊子形式の商品目録や営業案内であり、商品などの特性、機能、価格などの判断基準となる事項を記載したものであって、現に販売されている商品を掲載するものであるから、平成24年1月現在のものとして記載される製品カタログ(甲4の6)に具体的なスペックや価格とともに掲載されているリコー製品Aは、平成24年1月時点で販売されていた可能性が高いこと、前記アのとおり、検甲4のシリアルアンバー「1108」から把握できる製造年月は平成23年8月であって、これは、リコーのニュースリリース(甲4の8)とも整合的であることからすると、平成24年1月時点においてリコー製品Aが販売されていたものと推認できる。したがって、被告の上記主張は採用できない。ウ また、被告は、検甲4の測定値が本件特許の優先日時点の測定値を示すものでないと主張し、丙特命教授作成の見解書(乙1)を提出する。しかしながら、一般に半値幅に影響を与える主な因子は、個々のLEDの配光特性、LED素子とカバー部材との距離、カバー部材の拡散性である(甲84)ところ、リコー製品Aの測定結果(甲28)における全光束や効率は、カタログ値や計算値に比して特段劣化を示すような値が示されているとはいえない。また、検甲4は、ほぼ未使用品と理解されること(甲4の3)から、個々のLED特性に変化はなく、拡散性の劣化もないといえる。そうすると、経年変化を前提とする被告の主
5 張には理由はない。その他、被告は、検甲4の器具消費電力、発光効率の著しい低下の存在、保管状態等が不明なこと、リコー製品Aのマイナーチェンジの可能性についても主張するが、いずれも採用できない。エ 小括よって、検甲4発明は、本件優先日より前に日本国内において公然実施をされた発明といえる。
(4) 以上によると、第2事件の取消事由1は理由がないから、この点について本件審決に誤りはない。
5 第1事件の取消事由3(無効理由6A-4進歩性の判断の誤り)(1) 本件審決は、本件発明4の構成要件1-4Hについて「第1壁部と第2壁部自体によって、基板の短手方向の動きを規制することを意味していると解される。」と認定するが、前記2(2)キの本件発明4において判断したとおり、本件発明4は、構成要件1-4Hにより、一対の壁部によって、基板は、短手方向の動きが制限されていることが特定されていると解され、一対の壁部は、基板の短手方向の動きを制限することに関与すれば足りることを踏まえると、本件審決の上記認定は誤りである。そして、検甲2発明は、前記第2の3(2)の本件審決の認定のとおり、「前記基台は、一対の第1突部と第2突部を有し、前記第1突部と前記第2突部との間にクリップが嵌まり、前記クリップは短手方向に動かないものであ」ることが認められ、さらに、第1突部と第2突部は、LEDをまたぐようにしてLED基板の上下方向及び水平方向における動きを規制する透明樹脂のクリップを挿通する溝部を有するように構成されていること(甲62)に照らせば、検甲2では、第1突部及び第2突部(の溝部)がなければ、LED基板の水平方向の動きを規制できないのであるから、検甲2のLED基板は、クリップを介して、第1突部及び第2突部により、短手方向(水平方向)の動きが規制されていると認められる。そうすると、検甲2発明の一対の第1突部と第2突部に係る構成は、本件発明4の構成要件1-4Hを充
5 足するものであるといえるから、これを相違点4と認定した本件審決は誤りである。被告は、本件審決が、本件発明4の発明特定事項について、本件明細書【0055】等の記載を具体的に参酌して解釈した理解は正当であると主張するが、発明の要旨認定の判断において、発明特定事項を実施例に限定して解釈することは許されないし、そもそも実施例においても、反射部材70を介在して、一対の壁部が基板の短手方向の動きを規制しているといえるから、被告の上記主張は、採用できない。(2) そうすると、相違点4を認定し、かかる相違点4に依拠して本件発明4の容易想到性を否定した本件審決は、進歩性の判断において、結論に影響を及ぼす誤りがあったものといえる。
6 第1事件の取消事由4(無効理由6B-1、2、16の進歩性欠如の判断の誤り(1) 本件発明1と検甲4発明との間には、前記第2の3の(3)イの本件審決の認定のとおりの一致点1、相違点1-1及び相違点1-2が認められる。(2) 事案に鑑み、相違点1-2(基台について、本件発明1では、「前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており」という事項を有するのに対し、検甲4発明では、「前記基台は、平板状部材の短手方向の両端部に壁部を有していないものであ」る点。)について検討する。ア 検甲4発明は、「前記基台は、平板状部材の短手方向の両端部に壁部を有していないものであ」る。そして、そのような構成は検甲4の他の構成からみて、「LED基板」の配置に関し、そのような壁部を必要としていなかったからと解される。そうすると、検甲4の構成から何らかの不都合が生じることについて、公然実施発明である検甲4発明から直ちには把握できないし、既に成立している検甲4発明から、あえて基板の配置に関する構成を変更しようとする動機付けがあるとはいえ
5 ない。イ したがって、このような検甲4発明において、基板の配置に関する構成を変更して第1突壁部及び第2突壁部を備えるようにするとの動機付けは見いだせない。この点についての本件審決の判断に誤りはない。(3) 本件発明1、2及び16の「衝立状」についてア 「衝立状」の要旨認定について前記2(2)カのとおり、本件各発明における「衝立状」とは、基台の底部の短手方向の一方の端部、他方の端部に設けられた「第1壁部」及び「第2壁部」が、基台の底部から直立するすがた、ありさまを特定するものであると解することができ、全体としては「コの字」又は「T字」と表現すべき形状に形成されているものは、基台の底部から直立するすがた、ありさまとした形状に形成されているとはいえない。イ 副引用例又は周知例からの相違点1-2の容易想到性について(ア) 検甲4を主引用発明として、甲69、甲70、検甲5、甲73の技術的事項の組合せによる容易想到性について検討する。甲69には、「直管形状のカバー部材203を有するLEDランプ201において、基板基体208の平行な一対の基板レール210に長尺状のLED基板209を差し込んで保持する」という技術的事項が記載されていると認められる。甲70には、「直管型LEDランプ1において、基台30の一方の面(表面)には、平面状の平坦部で構成された、LEDモジュール20を載置するためのLEDモジュール載置面31が形成され、基台30の表側には、LEDモジュール20における長尺板状の実装基板21(LED実装基板)21の長辺端部(幅方向の端部)の一方を固定するための係止部32が形成され、係止部32は、実装基板21の側面と表面とを係止するように構成され、実装基板21の長辺端部の他方については、固定部材60によって固定され、固定部材60は、実装基板21の表面を上方から押さえるための押さえ樹脂部材61と、押さえ樹脂部材61をさらに上方から押さ
5 えるための板バネからなる押止板62とを備える」という技術的事項が記載されていると認められる。検甲5には、「LEDランプにおいて、基台は、長尺状の底部と、底部の短手方向の一方の端部に設けられた第1側部と、底部の短手方向の他方の端部に設けられた
第2側部とを有し、第1側部及び第2側部の断面は、底部の基板側に先に向かって
拡がる斜め方向に立ち上がる形状に形成されている」という技術的事項が記載されていると認められる。甲73には、「LED照明ユニット10であって、ハウジング12は、2つの離間した長手方向溝16を有する細長いヒートシンク14を含み、ヒートシンク14は、その長さ方向に走る平坦なストリップ28と、平坦なストリップ28から立ち上がる溝16を設けた一対の部分を有し、平坦なストリップ28は、基板20を実装するための領域を提供する」という技術的事項が記載されていると認められる。そして、上記アを踏まえると、無効理由6B-1、2、16において、副引用例又は周知例とされる甲69、甲70、検甲5、甲73をみても、直立していない又は全体としては「コの字」などと表現すべき形状であるから、本件発明1、2、16が特定する「衝立状」とはいえない。そうすると、動機づけ等を検討するまでもなく、これらの証拠に記載された事項を検甲4発明に適用しても、相違点1-2、相違点16-1に係る本件各発明の構成には至らないから、容易に発明できたとはいえない。(イ) 次に、検甲4を主引用例として、甲72の技術的事項の組合せによる容易想到性について検討する。甲72には、直管型LEDランプにおいて、LED基板4が取り付けられた筐体5は、副回転ビス12により上記支持体2と平行な方向の仮想的な軸の回りに回転自在となるようにアングル8に対して支持される、アングル8と支持体2に対する照明用基板3の回転角度を調整することができる照射方向可変のLED照明灯100」という技術的事項が記載されていると認められる。
5 そして、甲72は、「筐体5」に「衝立状」の側壁に相当する部位を有するともいえる。ここで、甲72は、既存の長尺型蛍光灯器具のソケットに簡単に装着して使用可能な照明方向可変照明装置および該照明方向可変照明装置を備えた自動販売機に関するもので(【0001】)、照明分野において、発光ダイオード(LED)が光源として注目されており、白熱球型または蛍光灯型のLED照明器具が開発されている(【0003】 、一方、LEDは、点光源で発光して指向性があり、LEDは照明)方向を一旦設定してしまうと変更することが事実上不可能であるため 【0004】 、( )LEDを使用した照明器具は、照明角度を任意に調整できるような技術が開示されている(【0005】~【0008】)が、従来のものは、機器破損/不点灯を引き起こす可能性、角度調整機構が複雑、複数の対象物を同時に効率良く照射する用途には不向きという問題があるところ 【0009】( 【0010】 、) 簡単な構造で、個々のLED照明用基板の照射角度を任意に調整し、かつ、充分な強度を確保するとともに、LED照明用基板の回転を従来の長尺型蛍光灯の外形内に抑えて従来の蛍光灯器具に直接置き換え可能とする照明方向可変照明装置を提供することを目的とする(【0011】)ものである。そして、甲72は、このような課題を解決するために、上記甲72の技術的事項を採用したもの(【0012】【0026】)であって、甲72における「衝立状」に相当するといいうる部位(「筐体5」の立ち上がり部分)の機能や作用に関する記載はない。そうすると、そもそも突壁部を有さない検甲4において、「衝立状」に相当する部分を採用する動機付けが希薄であることは上記(2)のとおりであり、さらに、「衝立状」に相当するといいうる部位について示唆等が一切ない甲72の技術的事項によって、相違点1-2及び相違点16-1に係る本件各発明の構成を想到することはできないというべきである。(4) 以上によると、第1事件の取消事由4はいずれも理由がなく、本件審決の判
5 断に誤りはない。
7 第2事件の取消事由2(無効理由6B-3、5、7、22、23)(1) 本件発明3、5、7、22及び23と検甲4発明との間には、それぞれ前記
第2の3(3)エ~カ、ケ、コのとおりの一致点、相違点が認められる。
(2) 本件発明3、5、7、22及び23につき、検甲4を主引用例として、検甲2及び甲74の技術的事項の組合せによる容易想到性について検討する。検甲2及び甲74に照らすと、「複数の前記LEDチップの光を反射する絶縁性を有する光反射シートを有」するものであり、複数のLEDチップを用いたランプにおいて、絶縁反射要素として絶縁反射シートを用いることは、本件特許の優先日時点の慣用技術といえる。そして、相違点3及び5につき、検甲4発明において、「反射部材を有し、「最外」面は絶縁性を有する」「塗布膜」を、周知の「絶縁反射シート」に置換することは、一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択、又は一定の課題を解決するための均等物による置換であり、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮(設計変更)にすぎない。そうすると、本件発明3、5、本件発明3を引用する本件発明7、本件発明7を引用する本件発明22及び23の進歩性についての本件審決の判断に誤りはない。
8 第2事件の取消事由3(無効理由6B-17)について(1) 本件発明17と検甲4発明の一致点及び相違点は、前記第2の3(3)クの本件審決が認定した一致点17、相違点17―1及び相違点17―2のとおりと認められる。(2) このうち被告主張の取消事由に係る相違点17―2については、口金には、①「商用電源からの交流電力」、②「LED点灯用電源からの直流電力」、又は③「蛍光灯用のインバータ用電子安定器からの高周波電力」を受けるものが、本件優先日前に慣用されており(甲1の3、甲4の6)、直管LEDが備える口金がどのような電力を受けるかは、当該直管LEDを取り付ける器具本体がどのような電力を供給
5 するかによって適宜選択されるものである。そうすると、相違点17―2につき、検甲4発明においてどのような口金とするかは、供給される電力を適切に受けるという一定の課題を解決するための均等物による置換にすぎないから、検甲4発明において相違点2に係る本件発明17の構成(「商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける」もの)とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮(設計変更)にすぎない。(3) 以上によると、第2事件の取消事由3は理由がなく、本件審決の判断に誤りはない。
9 第2事件の取消事由4(無効理由6C-20、7C-20)について(1) 本件発明20と検甲7発明の一致点及び相違点は、前記第2の3(3)サの本件審決が認定した一致点20、相違点20―1及び相違点20―2のとおりと認められる。(2) 被告が主張するパラメータに関する相違点(被告主張相違点20―3)について検討する。半値幅に影響を与える主な因子は、個々のLEDの配光特性、LED素子とカバー部材との距離、カバー部材の拡散性である(甲84)。被告は、経年劣化による個々のLED素子の配光角や拡散部材の拡散性の変化によるy値の変化の可能性を指摘するが、個々のLEDの配光特性についてみると、甲4の12の報告書(リコー製品Aの内部構造)及び甲56の報告書(リコー製品Bの内部構造)のとおり、インバータ用クラーテ製品(リコー製品A)とグロー管タイプのクラーテ製品(リコー製品B)は、同一と理解できるLED容器を採用しており、ほぼ未使用と理解されるインバータ用クラーテ製品(リコー製品A)のLED容器と同一の配光特性を有することが確認できる。そして、ほぼ未使品と理解される検甲4の「11081726992607717-1」インバータ用クラーテ製品(リコー製品A)で計測された「50%ビーム開き角」は、甲26の1の報告書の32個目のLEDでは「116deg」であり、また、甲26の2の報告書の67個目のLEDでは「117de
5 g」であるところ、甲84の報告書のとおり、シリアル番号「12031531992311143」のグロー管用のクラーテ製品(リコー製品B)は、117degであって、いずれも配光角に劣化がみられない。また、甲83の報告書のとおり、ほぼ未使用と理解される検甲4のカバーと検甲7のカバーを交換して計測した均斉度やy/x値から、拡散性の劣化が、y値に影響を与えているものとも認められない。これらの事情等を踏まえると、リコー製品Bにつき、経年変化等によりパラメータの値に変化が生じているとは考えられず、認定に係るリコー製品Bの測定値は、リコー製品Bの初期値とおおむね等しいものと見られる。以上を踏まえると、検甲7についてy≒1.208xの関係にある等と認定する本件審決に誤りはない。(3) 被告は、劣化が進んだランプであるほど、y/xの値は、小さい値に変化していることが推認できることからすると、検甲7(リコー製品B)の初期値は、本件発明20のx値及びy値を満さないものであるとの主張を前提に、本件発明20と検甲7の相違点については、本件審決が認定する相違点20―1及び相違点20―2のほか、パラメータに関する被告主張相違点20―3も存在すると主張するが、上記で検討したとおり、当該主張は、その前提を欠くものであり、理由がない。よって、相違点1及び相違点2を認定し、これらは実質的な相違点ではないとした本件審決の認定判断に誤りはない。
第5 結論
以上のとおり、原告が主張する取消事由3には理由があるから、本件審決のうち本件発明4に係る部分を取り消すべきであるが、原告主張のその他の取消事由及び被告主張の取消事由にはいずれも理由がない。よって、本件審決のうち請求項4に係る部分を取り消すこととし、その余の請求はいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
本 多 知 成
裁判官
遠 山 敦 士
裁判官
天 野 研 司
(別紙1)●(省略)●
(別紙2)●(省略)●
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