令和3(ネ)10086特許権侵害差止等請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
令和6年4月25日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条1項2号12回 特許法29条2項11回 特許法29条1項3号5回 特許法79条3回 特許法101条2号3回 特許法102条3項2回 特許法100条1項2回 特許法36条4項1号1回 特許法2条1項1回 特許法134条の21回 特許法36条6項1号1回 特許法102条2項1回 特許法36条6項2号1回 特許法29条1項1回
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キーワード |
実施285回 特許権202回 無効188回 侵害69回 新規性51回 無効審判37回 進歩性33回 差止15回 分割12回 損害賠償10回 間接侵害10回 刊行物9回 訂正審判7回 優先権7回 審決6回
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主文 |
1 控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴人パナソニックの控訴に係る控訴費用は控訴人パナ |
事件の概要 |
1 事案の要旨
本件は、別紙4特許権・対象被控訴人製品目録記載の本件特許権1及び5を有す
る控訴人PIPM並びに同目録記載の本件特許権2~4、6及び7を有する控訴人5
パナソニックが、被控訴人の製造、販売に係る別紙2物件目録記載の各製品(以下、
目録の番号順に「被控訴人製品1」などという。)は、別紙4特許権・対象被控訴人
製品目録記載のとおり本件各発明の技術的範囲にそれぞれ属するとして、被控訴人
に対し、以下の各請求をする事案である。 |
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判決文
令和6年4月25日判決言渡
令和3年(ネ)第10086号 特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成29年(ワ)第1390号)
口頭弁論終結日 令和5年11月1日
5 判 決
当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり
主 文
1 控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴人パナソニックの控訴に係る控訴費用は控訴人パナ
10 ソニックの負担とし、控訴人PIPMの控訴に係る控訴
費用は控訴人PIPMの負担とする。
事実及び理由
本判決の事実及び理由の記載においては、当審における当事者の主張及び裁判所
の判断を追加するほか、補正の上、原判決を引用することとし、同引用部分を含め
15 て記載する(なお、原判決の引用部分における英数字等の全角・半角表示について
は、原判決の表示のままとしたものがある。)。
第1 控訴人らの控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、別紙2物件目録記載の各製品を製造し、販売し、又は販売の申
20 出をしてはならない。
3 被控訴人は、前項記載の各製品、その半製品(別紙3物件説明書記載の各構
造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)及び前項記載の各製品の
製造に供する金型を廃棄せよ。
4 被控訴人は、控訴人パナソニックに対し、9億円及びこれに対する平成29
25 年3月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
5 被控訴人は、控訴人PIPMに対し、1億円及びこれに対する平成29年3
月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は、別紙4特許権・対象被控訴人製品目録記載の本件特許権1及び5を有す
5 る控訴人PIPM並びに同目録記載の本件特許権2~4、6及び7を有する控訴人
パナソニックが、被控訴人の製造、販売に係る別紙2物件目録記載の各製品(以下、
目録の番号順に「被控訴人製品1」などという。)は、別紙4特許権・対象被控訴人
製品目録記載のとおり本件各発明の技術的範囲にそれぞれ属するとして、被控訴人
に対し、以下の各請求をする事案である。
10 (1) 控訴人PIPMの請求
ア 差止及び廃棄請求
(ア) 本件特許権1に基づく請求
・ 被控訴人製品1~5及び7~16の製造等の差止(特許法100条1項)
・ 上記各製品、その半製品及びこれらの製造に供する金型の廃棄(同条2項)
15 (イ) 本件特許権5に基づく請求
・ 被控訴人製品6の製造等の差止(同条1項)
・ 上記製品、その半製品及びこれらの製造に供する金型の廃棄(同条2項)
イ 損害賠償請求
被控訴人による被控訴人各製品の製造等につき、本件特許権1及び5それぞれの
20 侵害の不法行為(民法709条、特許法102条3項)に基づく1億円の損害賠償
(一部請求)及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成29年3月1日)から支
払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前の民法」と
いう。)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払
(2) 控訴人パナソニックの請求
25 ア 差止及び廃棄請求
(ア) 本件特許権2に基づく請求
・ 被控訴人製品4及び5の製造等の差止(特許法100条1項)
・ 上記各製品、その半製品及びこれらの製造に供する金型の廃棄(同条2項)
(イ) 本件特許権3、4、6及び7に基づく請求
・ 被控訴人製品6の製造等の差止(同条1項)
5 ・ 上記製品、その半製品及びこれらの製造に供する金型の廃棄(同条2項)
イ 損害賠償及び不当利得返還請求
被控訴人による被控訴人製品4及び5の製造等については本件特許権2の、被控
訴人製品6の製造等については本件特許権4、6及び7それぞれの侵害の不法行為
(民法709条、特許法102条2項)に基づき、また、被控訴人製品6の製造等
10 については本件特許権3の侵害を理由とする不当利得(民法704条)に基づき、
9億円の損害賠償ないし不当利得返還(一部請求)及びこれに対する平成29年3
月1日から支払済みまで改正前の民法所定の年5%の割合による遅延損害金ないし
遅延利息の支払
(3) 原判決は、本件特許権1に基づく請求につき、被控訴人の無効の抗弁に対す
15 る訂正の再抗弁の主張に係る訂正後の請求項1に係る発明への非充足、訂正後の請
求項20の公然実施発明に基づく新規性の欠如を理由とする無効の抗弁、請求項1、
3、14、16、17及び訂正後の請求項17、18につき、先使用の抗弁の成立
を認め、本件特許権2に基づく請求につき、公然実施発明に基づく新規性の欠如を
理由とする無効の抗弁の成立を認め、本件特許権3に基づく請求につき、公然実施
20 発明に基づく新規性の欠如を理由とする無効の抗弁の成立を認め、本件特許権4に
基づく請求につき、公然実施発明に基づく新規性の欠如を理由とする無効の抗弁の
成立を認め、本件特許権5に基づく請求につき、請求項1に係る発明への非充足と
し、本件特許権6に基づく請求につき、公然実施発明に基づく新規性の欠如を理由
とする無効の抗弁の成立を認め、本件特許権7に基づく請求につき、公然実施発明
25 に基づく新規性の欠如を理由とする無効の抗弁の成立を認め、控訴人らの請求をい
ずれも棄却した。
(4) これに対し、控訴人らは、本件控訴を提起した。
(5) 当裁判所は、本件につき、侵害論の成否の審理を先行させた上、事案に鑑み、
その成否について裁判をするために弁論を終結した。
2 前提事実(全体に関係するもの。いずれも当事者に争いがないか、弁論の全
5 趣旨により容易に認定できる。)
控訴人パナソニックは、総合エレクトロニクスメーカーとして、電子機器、電化
製品、情報通信機器及び住宅関連機器並びにこれらの部品等の製造、販売及びサー
ビス等を業とする株式会社であったところ、令和3年5月31日付けの吸収分割契
約に基づき、これらの事業を営む会社等の経営管理を行うこと等を目的とする株式
10 会社となったが、特許権等の産業財産権は吸収分割承継会社に承継せずに保有し続
けている。なお、控訴人パナソニックは、令和4年4月1日、「パナソニック株式
会社」から「パナソニックホールディング株式会社」に商号変更した。
控訴人PIPMは、特許権等の信託を受け、知的財産の出願、維持及び管理等を
業とする株式会社である。
15 被控訴人は、照明器具やインテリア家具等の企画、デザイン、設計、製造及び販
売を業とする株式会社である。
第3 当裁判所の判断
1 本件特許権1関係
本件特許権1関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
20 別紙5「本件特許権1関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
2 本件特許権2関係
本件特許権2関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙6「本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
3 本件特許権3関係
25 本件特許権3関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙7「本件特許権3関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
4 本件特許権4関係
本件特許権4関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙8「本件特許権4関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
5 本件特許権5関係
5 本件特許権5関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙9「本件特許権5関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
6 本件特許権6関係
本件特許権6関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙10「本件特許権6関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
10 7 本件特許権7関係
本件特許権7関係の請求に関する前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、
別紙11「本件特許権7関係の請求に関する事実及び理由」記載のとおり。
第4 結論
以上によると、控訴人らの請求はいずれも理由がないから、終局判決をすること
15 として、控訴人らの本件控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
20 裁判長裁判官
本 多 知 成
25 裁判官
遠 山 敦 士
裁判官
5 天 野 研 司
(別紙1)
当 事 者 目 録
5 旧商号 パナソニック株式会社
控 訴 人 パナソニックホールディン
グス株式会社
(以下「控訴人パナソニック」という。)
控 訴 人 パナソニックIPマネジ
メント株式会社
(以下「控訴人PIPM」という。)
15 上記両名訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎
川 端 さ と み
藤 野 睦 子
大 住 洋
原 悠 介
20 千 葉 あ す か
被 控 訴 人 株 式 会 社 遠 藤 照 明
(以下「被控訴人」という。)
25 同訴訟代理人弁護士 小 池 眞 一
同訴訟代理人弁理士 小 倉 啓 七
(別紙2) 物件目録
1 被控訴人製品1
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 6000lmタイプ 消費電力40.0W
型番 RAD-529DA、RAD-529NA、RAD-529WA
RAD-529WWA
2 被控訴人製品2
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 3000lmタイプ 消費電力20.7W
型番 RAD-530DA、RAD-530NA、RAD-530WA
RAD-530WWA、RAD-530LA
RAD-530LLA
3 被控訴人製品3
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 1500lmタイプ 消費電力11.6W
型番 RAD-537NA、RAD-537WA、RAD-537WWA
RAD-537LA、RAD-537LLA
4 被控訴人製品4
品名 直管形LEDモジュール
ホワイトチューブモジュール
明るさタイプ 6000lmタイプ 消費電力39.1W
型番 RA-652N、RA-652W、RA-652WW
5 被控訴人製品5
品名 直管形LEDモジュール
ホワイトチューブモジュール
明るさタイプ 3000lmタイプ 消費電力20.9W
型番 RA-653N、RA-653W、RA-653WW
6-① 直接侵害の場合
被控訴人製品6
LEDZ SOLID TUBE Lite series
以下に記載の各タイプであって、「器具本体型番かつ専用ユ
ニット型番」を組み合わせたいずれかに該当する製品
(1) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9585W(逆富士形 W:230)
ERK9640W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9560W(トラフ形)
ERK9562W(下面開放形 W:250)
RAD-533NA、RAD-533WA、RAD-562N、RAD-562NA、RAD-562W、
RAD-562WA、RAD-563N、RAD-563W、RAD-572DA、RAD-572NA、
RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、RAD-594W、RAD-600N、
専用ユニット
RAD-600W、RAD-600WW、RAD-601N、RAD-601W、RAD-602N、
型番
RAD-602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、
RAD-636W、RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、
RAD-701W、RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9819W(反射笠付形)
器具本体型番
ERK9826W(下面開放形 W:300)
RAD-533NA 、 RAD-533WA 、 RAD-562NA 、 RAD-562WA 、 RAD-
572DA、RAD-572NA、RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、
専用ユニット RAD-594W、RAD-600N、RAD-600W、RAD-600WW、RAD-602N、
型番 RAD-602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、
RAD-636W、RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、
RAD-701W、RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9584W(逆富士形 W:230)
ERK9635W(逆富士形 W:150)
ERK9636W(トラフ形)
ERK9820W(反射笠付形)
器具本体型番
ERK9637W(下面開放形 W:300)
ERK9845W(逆富士形 W:230)
ERK9846W(逆富士形 W:150)
ERK9847W(反射笠付形)
RAD-494NA、RAD-494WA、RAD-494WWA、RAD-496NA、RAD-
496WA、RAD-553D、RAD-553N、RAD-553W、RAD-553WW、RAD-
564N、RAD-564W、RAD-564WW、RAD-595D、RAD-595L、RAD-
595N、RAD-595W、RAD-595WW、RAD-596N、RAD-596W、RAD-
専用ユニット
603L、RAD-603N、RAD-603W、RAD-603WW、RAD-605N、RAD-
型番
605W、RAD-637L、RAD-637N、RAD-637W、RAD-637WW、RAD-
646W、RAD-646WW、RAD-647W、RAD-647WW、RAD-648W、RAD-
648WW、RAD-661N、RAD-661W、RAD-661WW、RAD-702N、RAD-
702W、RAD-705N、RAD-705W
(4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9563W(下面開放形 W:250)
ERK9638W(下面開放形 W:220)
器具本体型番
ERK9639W(下面開放形 W:150)
ERK9567W(白ルーバ形)
RAD-498NA、RAD-498WA、RAD-498WWA、RAD-500NA、RAD-
500WA、RAD-554N、RAD-554W、RAD-554WW、RAD-566N、
RAD-566W、RAD-566WW、RAD-597N、RAD-597W、RAD-597WW、
専用ユニット RAD-598N、RAD-598W、RAD-604N、RAD-604W、RAD-604WW、
型番 RAD-606N、RAD-606W、RAD-650N、RAD-650W、RAD-650WW、
RAD-657W、RAD-657WW、RAD-658W、RAD-658WW、RAD-659W、
RAD-659WW、RAD-660N、RAD-660W、RAD-660WW、RAD-703N、
RAD-703W、RAD-706N、RAD-706W
(5) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9566W(逆富士形 W:230)
ERK9642W(下面開放形 W:150)
器具本体型番
ERK9641W(逆富士形 W:150)
ERK9561W(トラフ形)
専用ユニッ RAD-599N、RAD-599W、RAD-607N、RAD-607W、RAD-634N、
ト型番 RAD-634W
(6) ウォールウォッシャーライト 110Wタイプ
器具本体型番 ERK9817W
RAD-533NA、RAD-533WA、RAD-562N、RAD-562NA、RAD-562W、
RAD-562WA、RAD-563N、RAD-563W、RAD-572DA、RAD-572NA、
RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、RAD-594W、RAD-600N、
専用ユニッ
RAD-600W、RAD-600WW、RAD-601N、RAD-601W、RAD-602N、RAD-
ト型番
602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、RAD-636W、
RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、RAD-701W、
RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(7) ウォールウォッシャーライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9818W
RAD-498NA、RAD-498WA、RAD-498WWA、RAD-500NA、RAD-500WA、
RAD-554N、RAD-554W、RAD-554WW、RAD-566N、RAD-566W、RAD-
566WW、RAD-597N、RAD-597W、RAD-597WW、RAD-598N、RAD-
専用ユニット 598W、RAD-604N、RAD-604W、RAD-604WW、RAD-606N、RAD-606W、
型番 RAD-650N、RAD-650W、RAD-650WW、RAD-657W、RAD-657WW、
RAD-658W、RAD-658WW、RAD-659W、RAD-659WW、RAD-660N、
RAD-660W、RAD-660WW、RAD-703N、RAD-703W、RAD-706N、RAD-
706W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9393W(逆富士形 W:230)
器具本体型番
ERK9396W(逆富士形 W:150)
専 用 ユ ニ ッ ト RAD-527N、RAD-527W、RAD-528N、RAD-528W、RAD-533N、RAD-
型番 533W、RAD-534N、RAD-534W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9306W(逆富士形 W:230)
器具本体型番
ERK9309W(下面開放型)
専用ユニッ RAD-493N、RAD-493W、RAD-493WW、RAD-494N、RAD-494W、
ト型番 RAD-494WW、RAD-502N、RAD-502W、RAD-502WW
(10) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9307W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9308W(トラフ形)
RAD-493N、RAD-493W、RAD-493WW、RAD-494N、RAD-494W、RAD-
専用ユニッ
494WW、RAD-495N、RAD-495W、RAD-496N、RAD-496W、RAD-502N、
ト型番
RAD-502W、RAD-502WW、RAD-503N、RAD-503W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9310W(下面開放形 W:220)
専 用 ユ ニ ッ ト RAD-497N、RAD-497W、RAD-497WW、RAD-498N、RAD-498W、
型番 RAD-498WW、RAD-504N、RAD-504W、RAD-504WW
(12) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9311W(空調ダクト回避型)
RAD-497N、RAD-497W、RAD-497WW、RAD-498N、RAD-498W、
専用ユニット
RAD-498WW、RAD-499N、RAD-499W、RAD-500N、RAD-500W、
型番
RAD-504N、RAD-504W、RAD-504WW、RAD-505N、RAD-505W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9474W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9475W(空調ダクト回避型)
専用ユニッ
RAD-542N、RAD-542W
ト型番
(14) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番
( LED ユ ニ ッ ERK9491W(トラフ形)、ERK9488W(下面開放形)
ト付き)
6-② 特許法第101条第2号(間接侵害)に基づく差止請求の場合
被控訴人製品6
LEDZ SOLID TUBE Lite series
以下に記載の各タイプであって、器具本体型番または専用ユニ
ット型番のいずれかに該当する製品
(1) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9585W(逆富士形 W:230)
ERK9640W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9560W(トラフ形)
ERK9562W(下面開放形 W:250)
RAD-533NA、RAD-533WA、RAD-562N、RAD-562NA、RAD-562W、
RAD-562WA、RAD-563N、RAD-563W、RAD-572DA、RAD-572NA、
RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、RAD-594W、RAD-600N、
専用ユニット
RAD-600W、RAD-600WW、RAD-601N、RAD-601W、RAD-602N、
型番
RAD-602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、
RAD-636W、RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、
RAD-701W、RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9819W(反射笠付形)
器具本体型番
ERK9826W(下面開放形 W:300)
RAD-533NA 、 RAD-533WA 、 RAD-562NA 、 RAD-562WA 、 RAD-
572DA、RAD-572NA、RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、
専用ユニット RAD-594W、RAD-600N、RAD-600W、RAD-600WW、RAD-602N、
型番 RAD-602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、
RAD-636W、RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、
RAD-701W、RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9584W(逆富士形 W:230)
ERK9635W(逆富士形 W:150)
ERK9636W(トラフ形)
ERK9820W(反射笠付形)
器具本体型番
ERK9637W(下面開放形 W:300)
ERK9845W(逆富士形 W:230)
ERK9846W(逆富士形 W:150)
ERK9847W(反射笠付形)
RAD-494NA、RAD-494WA、RAD-494WWA、RAD-496NA、RAD-
496WA、RAD-553D、RAD-553N、RAD-553W、RAD-553WW、RAD-
564N、RAD-564W、RAD-564WW、RAD-595D、RAD-595L、RAD-
595N、RAD-595W、RAD-595WW、RAD-596N、RAD-596W、RAD-
専用ユニット
603L、RAD-603N、RAD-603W、RAD-603WW、RAD-605N、RAD-
型番
605W、RAD-637L、RAD-637N、RAD-637W、RAD-637WW、RAD-
646W、RAD-646WW、RAD-647W、RAD-647WW、RAD-648W、RAD-
648WW、RAD-661N、RAD-661W、RAD-661WW、RAD-702N、RAD-
702W、RAD-705N、RAD-705W
(4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9563W(下面開放形 W:250)
ERK9638W(下面開放形 W:220)
器具本体型番
ERK9639W(下面開放形 W:150)
ERK9567W(白ルーバ形)
RAD-498NA、RAD-498WA、RAD-498WWA、RAD-500NA、RAD-
500WA、RAD-554N、RAD-554W、RAD-554WW、RAD-566N、
RAD-566W、RAD-566WW、RAD-597N、RAD-597W、RAD-597WW、
専用ユニット RAD-598N、RAD-598W、RAD-604N、RAD-604W、RAD-604WW、
型番 RAD-606N、RAD-606W、RAD-650N、RAD-650W、RAD-650WW、
RAD-657W、RAD-657WW、RAD-658W、RAD-658WW、RAD-659W、
RAD-659WW、RAD-660N、RAD-660W、RAD-660WW、RAD-703N、
RAD-703W、RAD-706N、RAD-706W
(5) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9566W(逆富士形 W:230)
ERK9642W(下面開放形 W:150)
器具本体型番
ERK9641W(逆富士形 W:150)
ERK9561W(トラフ形)
専用ユニッ RAD-599N、RAD-599W、RAD-607N、RAD-607W、RAD-634N、
ト型番 RAD-634W
(6) ウォールウォッシャーライト 110Wタイプ
器具本体型番 ERK9817W
RAD-533NA、RAD-533WA、RAD-562N、RAD-562NA、RAD-562W、
RAD-562WA、RAD-563N、RAD-563W、RAD-572DA、RAD-572NA、
RAD-572WA、RAD-572WWA、RAD-594N、RAD-594W、RAD-600N、
専用ユニッ
RAD-600W、RAD-600WW、RAD-601N、RAD-601W、RAD-602N、RAD-
ト型番
602W、RAD-630N、RAD-630W、RAD-630WW、RAD-636N、RAD-636W、
RAD-636WW、RAD-645W、RAD-645WW、RAD-701N、RAD-701W、
RAD-710N、RAD-710W、RAD-711N、RAD-711W
(7) ウォールウォッシャーライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9818W
RAD-498NA、RAD-498WA、RAD-498WWA、RAD-500NA、RAD-500WA、
RAD-554N、RAD-554W、RAD-554WW、RAD-566N、RAD-566W、RAD-
566WW、RAD-597N、RAD-597W、RAD-597WW、RAD-598N、RAD-
専用ユニット 598W、RAD-604N、RAD-604W、RAD-604WW、RAD-606N、RAD-606W、
型番 RAD-650N、RAD-650W、RAD-650WW、RAD-657W、RAD-657WW、
RAD-658W、RAD-658WW、RAD-659W、RAD-659WW、RAD-660N、
RAD-660W、RAD-660WW、RAD-703N、RAD-703W、RAD-706N、RAD-
706W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9393W(逆富士形 W:230)
器具本体型番
ERK9396W(逆富士形 W:150)
専 用 ユ ニ ッ ト RAD-527N、RAD-527W、RAD-528N、RAD-528W、RAD-533N、RAD-
型番 533W、RAD-534N、RAD-534W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9306W(逆富士形 W:230)
器具本体型番
ERK9309W(下面開放型)
専用ユニッ RAD-493N、RAD-493W、RAD-493WW、RAD-494N、RAD-494W、
ト型番 RAD-494WW、RAD-502N、RAD-502W、RAD-502WW
(10) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9307W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9308W(トラフ形)
RAD-493N、RAD-493W、RAD-493WW、RAD-494N、RAD-494W、RAD-
専用ユニッ
494WW、RAD-495N、RAD-495W、RAD-496N、RAD-496W、RAD-502N、
ト型番
RAD-502W、RAD-502WW、RAD-503N、RAD-503W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9310W(下面開放形 W:220)
専 用 ユ ニ ッ ト RAD-497N、RAD-497W、RAD-497WW、RAD-498N、RAD-498W、
型番 RAD-498WW、RAD-504N、RAD-504W、RAD-504WW
(12) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番 ERK9311W(空調ダクト回避型)
RAD-497N、RAD-497W、RAD-497WW、RAD-498N、RAD-498W、
専用ユニット
RAD-498WW、RAD-499N、RAD-499W、RAD-500N、RAD-500W、
型番
RAD-504N、RAD-504W、RAD-504WW、RAD-505N、RAD-505W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9474W(逆富士形 W:150)
器具本体型番
ERK9475W(空調ダクト回避型)
専用ユニッ
RAD-542N、RAD-542W
ト型番
(14) LEDベースライト 40Wタイプ
器具本体型番
( LED ユ ニ ッ ERK9491W(トラフ形)、ERK9488W(下面開放形)
ト付き)
7 被控訴人製品7
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 6000lmタイプ 消費電力39.1W
型番 RAD-455NA、RAD-455WA、RAD-455WWA
8 被控訴人製品8
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 4000lmタイプ 消費電力26.3W
型番 RAD-456NA、RAD-456WA、RAD-456WWA
9 被控訴人製品9
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 3000lmタイプ 消費電力19.6W
型番 RAD-457NA、RAD-457WA、RAD-457WWA
10 被控訴人製品10
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 2000lmタイプ 消費電力13.1W
型番 RAD-458NA、RAD-458WA、RAD-458WWA
RAD-458LA、RAD-458LLA
11 被控訴人製品11
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 1000lmタイプ 消費電力6.7W
型番 RAD-526NA、RAD-526WA、RAD-526LA
RAD-526LLA
12 被控訴人製品12
品名 メンテナンス用直管形LEDユニット
ホワイトチューブユニット
明るさタイプ 7000lmタイプ 消費電力42.5W
型番 RAD-649N、RAD-649W、RAD-649WW
13 被控訴人製品13
品名 直管形LEDモジュール
ホワイトチューブモジュール
明るさタイプ 1500lmタイプ 消費電力20.9W
型番 RA-660N、RA-660W
14 被控訴人製品14
品名 T8管直管形LEDモジュール
ホワイトチューブモジュール
型番 RA-638NA-M、RA-638WA-M
RA-638WWA-M
15 被控訴人製品15
品名 L型口金 TUBE TYPE
ハイパワータイプ
型番 RA-657N、RA-657W、RA-657WW
16 被控訴人製品16
品名 L型口金 TUBE TYPE
ミドルパワータイプ
型番 RA-663N、RA-663W、RA-663WW
以 上
(別紙3) 物件説明書
1 被控訴人製品1
(1) 被控訴人製品1の構成
1-① 被控訴人製品1は、光拡散部を有する長尺状のカバーを有する。
1-② 被控訴人製品1は、カバーの長尺方向に沿ってカバー内に複数の
LEDチップを配置しているランプである。
1-③ 被控訴人製品1は、複数のLEDチップの各々の光がランプの最
外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、
隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y
=12.9、x=9.2の値となる。
(2) 被控訴人製品1の写真
ア 写真1-①:外観
イ 写真1―②:複数のLEDチップの配置とカバー
光拡散部を有する長尺状のカバー
複数の LED チップ
2 被控訴人製品2
(1) 被控訴人製品2の構成
2-① 被控訴人製品2は、光拡散部を有する長尺状のカバーを有する。
2-② 被控訴人製品2は、カバーの長尺方向に沿ってカバー内に複数の
LEDチップを配置しているランプである。
2-③ 被控訴人製品2は、複数のLEDチップの各々の光がランプの最
外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
し、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とする
と、y=12.9、x=9.5の値となる。
(2) 被控訴人製品2の写真
ア 写真2-①:外観
イ 写真2―②:複数のLEDチップの配置とカバー
光拡散部を有する長尺状のカバー
複数の LED チップ
3 被控訴人製品3
(1) 被控訴人製品3の構成
3-① 被控訴人製品3は、光拡散部を有する長尺状のカバーを有する。
3-② 被控訴人製品3は、カバーの長尺方向に沿ってカバー内に複数の
LEDチップを配置しているランプである。
3-③ 被控訴人製品3は、複数のLEDチップの各々の光がランプの最外
郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣
り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y=
12.4、x=8.5の値となる。
(2) 被控訴人製品3の写真
ア 写真3-①:外観
イ 写真3-②:複数のLEDチップの配置とカバー
光拡散部を有する長尺状のカバー
複数の LED チップ
4 被控訴人製品4
(1) 被控訴人製品4の構成
4-① 被控訴人製品4は、光拡散部及び透光性を備える長尺状のカバー
を有する。
4-② 被控訴人製品4は、カバーの長尺方向に沿ってカバー内に複数の
LEDチップを配置しているランプである。
4-③ 被控訴人製品4は、複数のLEDチップの各々の光がランプの最
外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
し、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とする
と、y=13.1、x=9.1の値となる。
4-④ 被控訴人製品4は、カバーに覆われた基台を備える。また、基台の
載置面上には基板を有し、基板の上には、LEDチップと基板を押さ
えるための複数の押さえ部材を備える。
4-⑤ 被控訴人製品4の基台は、基板及び押さえ部材の水平方向の動き
を規制する側壁部と、基板及び押さえ部材の垂直方向の動きを規制
する突出部が備えられている。
4―⑥ 被控訴人製品4の押さえ部材は、カバーと分離された部材であり、
開口部が設けられている。押さえ部材は、基板上のLEDチップが発
する光を遮断しないよう基板を跨ぐように基台の上に配置されてい
る。
(2) 被控訴人製品4の写真
ア 写真4―①:被控訴人製品4の外観
イ 写真4―②:カバーと基板上のLED(構成4-①、同②及び同④)
透光性を有するカバー
複数の LED チップ
ウ 写真4―③:カバーに覆われた基台と基台上の基板(構成4-④)
基板 基台
エ 写真4-④:基板上のLEDチップと押さえ部材(構成4-④、同⑥)
押さえ部材(全8個)
基板(上面に反射シートが貼付)
オ 写真4―⑤:押さえ部材(構成4―⑤、構成4―⑥)
※被控訴人製品4ないし被控訴人製品6で共通
写真4-⑤-1 表面側
開口部
写真4-⑤-2 側面及び裏面側
カ 写真4-⑥:基台の側壁部及び突出部による基板及び押さえ部材の規
制(構成4-⑤)
なお、写真4-⑥-2及び写真4-⑥-3では、基台と押さえ部材
の当接関係の可視性を高めるため、押さえ部材の側面を黒色で着色し
ている。
写真4-⑥―1 写真4-⑥-2
基板 押さえ部材
押さえ部材 基台
写真4-⑥―3(写真4-⑥―2の点線丸枠内拡大)
押さえ部材
突出部
側壁部
5 被控訴人製品5
(1) 被控訴人製品5の構成
5-① 被控訴人製品5は、光拡散部及び透光性を備える長尺状のカバー
を有する。
5-② 被控訴人製品5は、カバーの長尺方向に沿ってカバー内に複数の
LEDチップを配置しているランプである。
5-③ 被控訴人製品5は、複数のLEDチップの各々の光がランプの最
外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
し、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とする
と、y=11.5、x=9.2の値となる。
5-④ 被控訴人製品5は、カバーに覆われた基台を備える。また、基台の
載置面上には基板を有し、基板の上には、LEDチップと基板を押さ
えるための複数の押さえ部材を備える。
5-⑤ 被控訴人製品5の基台は、基板及び押さえ部材の水平方向の動き
を規制する側壁部と、基板及び押さえ部材の垂直方向の動きを規制
する突出部が備えられている。
5―⑥ 被控訴人製品5の押さえ部材は、カバーと分離された部材であり、
開口部が設けられている。押さえ部材は、基板上のLEDチップが発
する光を遮断しないよう基板を跨ぐように基台の上に配置されてい
る。
(2) 被控訴人製品5の写真
ア 写真5ー① 被控訴人製品5の外観
イ 写真5-②:カバーと基板上のLED(構成5-①、同②及び同④)
透光性カバー
基板(上面に反射シートが貼付) 複数の LED チップ
ウ 写真5-③:カバーに覆われた基台と基台上の基板(構成5-④)
基板 基台
エ 写真5-④:基板上のLEDチップと押さえ部材(構成5-④、同⑥)
基板(上面に反射シートが貼付) 押さえ部材(全4個)
オ 写真5-⑤:基台の側壁部及び突出部による基板及び 押さえ部材によ
る規制(構成5-⑤)
なお、写真5-⑤-2及び写真5-⑤-3では、基台と押さえ部材の当
接関係の可視性を高めるため、押さえ部材の側面を黒色で着色している。
写真5-⑤-1 写真5-⑤-2
押さえ部材
基板
押さえ部材 基台
写真5-⑤-3(写真5-⑤―2の点線丸枠内の拡大)
押さえ部材
突出部
側壁部
6 被控訴人製品6
(1) 被控訴人製品6の構成
6-① 被控訴人製品6は、長尺状に形成された器具本体と、同器具本
体 に 取り 付 けら れるL E Dユ ニ ット 及び同 L ED ユ ニッ トから
放射された光を照明空間に向けて反射する反射板を備える。
6-② 被控訴人製品6のLEDユニットと反射板との間には 、照明空
間に向けて凹所が開口されている。
6-③ 被控訴人製品6の器具本体は、天井に設置されたアンカーボルトに
よって天井材に取り付けられ、天井材の反対側には、LEDユニット
を収納する長手方向に沿った収容凹部を備える。また、収容凹部の底
面部には、天井に設置されたアンカーボルトを通すための取付用ボ
ルト穴を備える。
6-④ 被控訴人製品6のLEDユニットは、複数のLEDが実装されたL
ED基板、LED基板を同基板上のLEDが収容凹部の外側を向く
ように取り付けるための取付部材と、複数のLEDに電力を供給す
る電源装置及びLED基板を覆うようにして取付部材に取り付けら
れる乳白色のポリカーボネートからなるカバー部材を備える。
6-⑤ 被控訴人製品6の取付部材の前記器具本体の収容凹部と対向する
部位には、電源装置を収容する収容部を備え、同収容部にアンカーボ
ルトの一部が配置される。これにより、前記LEDユニットを器具本
体に取り付けたとき、電源装置は、収容部内における前記アンカーボ
ルトと干渉しない位置に配置される。
6-⑥ 前記取付部材は、長尺かつ矩形板状に形成されている。
取付部材は、前記器具本体の収容凹部と対向する幅方向の両側に、
一面に前記LEDが取り付けられる底面部を有し、同底面部と反対側
に交差する方向に突出する一対の側面部を備えている。
6-⑦ 被控訴人製品6は、前記器具本体の収容凹部に、外部からの電源線
を接続する電源端子台を備え、電源端子台にはコネクターが接続さ
れている。取付部材の底面部には電源装置が収容されており、同電源
装置に接続された給電用コネクターは、前記電源端子台に接続され
ているコネクターと着脱自在に接続可能である。
6-⑧ 前記電源装置は、取付部材の底面部と前記一対の側面部とで形成さ
れる空間内に配置されている。
6-⑨ 被控訴人製品6のLEDユニットは、器具本体の前記収容凹部内に
少なくとも一部が収容されて取り付けられ、器具本体の収容凹部の
底面部と取付部材底面部とで囲まれる空間を備える。前記給電用接
続コネクターは、前記電源端子台に接続されているコネクターに接
続された状態で、同空間内に収められる。
6-⑩ 被控訴人製品6のカバー部材は、主部と、延出部並びに一対の突壁
部a及び突壁部bを備える。
6-⑪ 突壁部a及び突壁部bは、前記取付部材に取り付けられるものであ
って、主部の幅方向における両端部より互いに並行するように照明
空間と反対側に突出している。
6-⑫ 延出部は、突壁部a及び突壁部bの各々に対し、各突壁部が並ぶ方
向において各突壁部及び取付部材の外側に延出している。
6-⑬ 前記カバー部材の一対の延出部の各々は、前記器具本体に設けら
れた前記収容凹部にLEDユニットを収容した状態では、それぞれ
長手方向及び幅方向と直交する方向において、器具本体の収容凹部
の開口端縁と隙間が生じないように重なる。
6-⑭ また、前記カバー部材の一対の延出部は、前記器具本体と反射板と
の間に存在する前記凹所の開口面と重なる。
6-⑮ 被控訴人製品6の前記凹所のLEDユニット及び開口面と対向す
る内壁面は、白色塗装が施されている照明器具である。
(2) 被控訴人製品6の写真及び図面
ア 写真①:全体写真
イ 図①:器具本体とLEDユニット(構成①、②、③)
ウ 写真②:LEDユニットの構成(カバーを外したもの)(構成③ 、④)
エ 写真③:器具本体の収容凹部等とLEDユニット電源装置(構成③ 、④、
⑤)
オ 写真④:取付部材の底面部及びカバー部材の全体像(構成⑥ 、⑩、⑪、
⑫)
主部
延出部
延出部
突壁部b
突壁部 a
(第2突壁部)
(第1突壁部)
取付部材底面部
側面部
カ 写真⑤:電源装置の配置(構成⑦、⑧、⑨)
側面部
キ 写真⑥ カバー部材の延出部の器具本体の収容凹部と開口端縁との重な
り(構成⑬)
カバー部材
ク 写真⑦ カバー部材の延出部の器具本体と反射板との間の凹所 の開口
面との重なり(構成①、⑬、⑭)
ケ 写真⑧ 凹部内のLEDユニット及び開口面と対向する内面壁(構成
⑬、⑮)
以上
(別紙4)
特許権・対象被控訴人製品目録
控訴人らが 被疑侵害品
出願日
略称 特許番号 特許権者 登録日 主張する請 (被控訴人製
(原出願,優先日) 求項 品)
平成25年3月5日
請求項1,3, 1~5,
本件特許権1 5658831 控訴人PIPM (優先日 平成26年12月5日
平成24年4月25日) 14,16,17 7~16
当審におけ
平成26年4月3日
る訴え変更:
本件特許権2 5584841 控訴人パナソニック (原出願日 平成26年7月25日 4,5
平成25年2月12日) 訂正後の請
求項1
請求項1
当審におけ
本件特許権3 5453503 控訴人パナソニック 平成24年10月11日 平成26年1月10日 6
る追加申立
て:訂正後の
請求項3,4
請求項1,5
平成25年11月15日
本件特許権4 5492344 控訴人パナソニック (原出願日 平成26年3月7日 当審におけ 6
平成24年10月11日) る追加申立
て:請求項4
本件特許権5 5975400 控訴人PIPM 平成25年1月17日 平成28年7月29日 請求項1 6
当審におけ
平成25年11月15日
る訴え変更:
本件特許権6 5498618 控訴人パナソニック (原出願日 平成26年3月14日 6
平成25年1月17日) 訂正後の
請求項1
当審におけ
平成25年11月15日
る訴え変更:
本件特許権7 5486727 控訴人パナソニック (原出願日 平成26年2月28日 6
平成25年3月4日) 訂正後の
請求項1,3
【略称について】
「本件各特許権」:本件特許権1~7の総称。
「本件特許1」等:本件特許権1~7に係る各特許をそれぞれ「本件特許1」などという。
「本件各特許」:本件特許1~7の総称。
「本件各発明」:控訴人らが主張する本件各特許に係る特許請求の範囲請求項記載の各発明の
総称。
(別紙5)
本件特許権1関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨より容易に認定
5 できる事実。)
1 本件特許権1
控訴人PIPMは、以下の特許権(本件特許権1)を有する。
特許番号 特許第5658831号
発明の名称 ランプ及び照明装置
10 優先日 平成24年4月25日(以下「本件優先日1」という。)
出願日 平成25年3月5日
登録日 平成26年12月5日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲1の2)の特許請求の範囲請求項1、3、
14、16及び17に各記載のとおり(以下、同記載の発明を請求項の番号に合わ
15 せて「本件発明1-1」などといい、これらを併せて「本件各発明1」などという。
また、本件特許権1に係る願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書1」とい
う。)
2 構成要件の分説
本件各発明1をそれぞれ構成要件に分説すると、別添2「特許権1充足論一覧表」
20 の「発明」欄「1-1」~「1-17」に対応した各「構成要件」欄記載のとおり
である。
3 訂正及び訂正後の特許請求の範囲等
(1) 控訴人PIPMは、平成30年2月5日付け審判請求書により、本件特許権
1に係る特許請求の範囲のうち請求項14等の訂正を訂正事項とする訂正審判を請
25 求した(甲22、23。以下「先行訂正審判請求」という。)。
他方、被控訴人は、同年4月6日付け審判請求書により、本件特許権1に係る発
明のうち、請求項1~8、14、16、17記載の発明に係る特許につき、特許無
効審判(無効2018‐800036号)を請求した(乙129。以下「関連無効審判1」と
いう。)。この関連無効審判1において、控訴人PIPMは、答弁書提出期間内に
先行訂正審判請求における請求内容と同一の訂正請求を行ったが、その後、審判長
5 による審決の予告を受けて、令和元年12月16日付け訂正請求書により、本件特
許権1に係る特許請求の範囲のうち請求項1、14及び17等の訂正並びに請求項
18及び20等を追加する訂正等を請求した(甲83、84。以下、この訂正を
「本件訂正1」という。)。
(2) 本件訂正1に係る請求項1、17、18及び20記載の各発明(以下「本件
10 訂正発明1-1」などといい、これらを併せて「本件各訂正発明1」という。)の
各特許請求の範囲は、別添3「本件各訂正発明1の特許請求の範囲」に記載のとお
りである。これをそれぞれ構成要件に分説すると、別添2「特許権1充足論一覧表」
の「発明」欄「訂正1-1」~「訂正1-20」に対応した各「構成要件」欄記載
のとおりである。
15 (3) 被控訴人は、令和3年1月21日付け審判請求書により、本件特許権1に係
る発明のうち、請求項3、6~8、14、16、17記載の発明に係る特許につき、
特許無効審判(無効2021‐800004号)を請求した(乙350。以下「関連無効審判
2」という。)。特許庁は、同審判手続を中止した。
4 被控訴人の行為
20 (1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年8月1日から被控訴人製品4及
び5を、平成27年1月1日以前に被控訴人製品14~16を、同日以後に被控訴
人製品7~13を、同年5月から被控訴人製品1~3を、それぞれ製造、販売し又
は販売の申出をしている。
控訴人PIPMが本件特許権1の侵害を主張する本件各発明1、本件各訂正発明
25 1と被控訴人製品1~5及び7~16との対応関係は、別添2「特許権1充足論一
覧表」のとおりである(なお、灰色の塗り潰し部分は本件特許権1に係る請求の対
象ではない。)。
(2) 被控訴人製品1~5及び7~16の各構成
別添4「被控訴人製品1~5及び7~16の各構成(控訴人PIPMの主張)」
記載の被控訴人 製品 1~5及び7~16の各構成 のうち 、構成1-14d、1-1j’、 1-
5 18f’及び1-20d’を除く各構成は、当事者間に争いがない。
また、被控訴人製品1~5及び7~16は、複数のLEDチップが実装された複
数の容器が、基台の上にある基板の上に実装されており、基台に直接実装されてい
ない。
5 構成要件の充足
10 被控訴人製品1~5及び7~16の各構成が、別添2「特許権1充足論一覧表」
に「○」の記載がある各構成要件を充足することは、当事者間に争いがない。構成
要件の充足につき争いがあるのは、同一覧表に「争」の記載がある部分である。
したがって、本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17並びに本件訂正発
明1-17について、対象となる被控訴人製品が上記各発明の構成要件を充足する
15 ことは、当事者間に争いがない。
6 争点
(1) 本件特許権1関係の請求に固有の争点
ア 構成要件の充足性
(ア) 構成要件1―14D、1-18F’及び1-20D’の充足性(争点1)
20 (イ) 構成要件1-1J’の充足性(争点2-1)
(ウ) 均等論(争点2-2・当審における主張)
イ 無効の抗弁、訂正の再抗弁(訂正の適法性、訂正による無効理由の解消)及
び先使用の抗弁
(ア) 無効理由1(実施可能要件違反)の有無(争点3)
25 (イ) 無効理由2(サポート要件違反)の有無(争点4)
(ウ) 無効理由3(明確性要件違反)の有無(争点5)
(エ) 無効理由4(631N製品等の公然実施による新規性欠如)の有無等(争点6)
(オ) 無効理由5(631N製品等を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点7)
(カ) 無効理由6(乙144発明を主引用発明とする進歩性欠如)の有無(争点8)
(キ) 無効理由7(クラーテ製品①の公然実施による新規性欠如)の有無(争点9)
5 (ク) 403W製品に基づく先使用権の成否(争点10)
(ケ) 無効理由8(403W製品の公然実施による新規性欠如)の有無(争点11)
(コ) 無効理由9(クラーテ製品②の公然実施による新規性欠如)の有無(争点1
2)
(サ) 無効理由10(クラーテ製品①等を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争
10 点13)
(シ) 本件訂正1の適法性(本件訂正発明1-20関係)(争点14)
なお、各無効理由の有無及び先使用権の成否の対象となる発明は、別添5「無効
論等一覧表」のとおりである。
ウ 再訂正による訂正の再抗弁(争点15・当審における主張)
15 (2) 本件特許権5の請求と共通の争点
損害額(争点16)
第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件1-14D、1-18F’及び1-20D’の充足性(争点1)
(控訴人PIPMの主張)
20 (1) 「基台の上に実装された」(構成要件1-14D、1-18F’及び1―2
0D’)の意義
ア 特許請求の範囲の記載
構成要件1-14D、1-18F’及び1―20D’では、その特許請求の範囲
の文言上、「基台の上に実装された複数の容器とを備え」と規定されているのみで
25 あり、実装される容器が基台に直接接しているか、基板を介して接しているかにつ
いては、何ら限定がされていない。むしろ、特許請求の範囲の記載において、請求
項13には「前記複数のLEDチップの各々は、前記基板に実装されている、」と
記載されているのに対し、本件発明1-14に係る請求項14には「前記基台の上
に実装された複数の容器とを備え」と記載されており、あえて文言が使い分けられ
ている。すなわち、直接基板に接する形で容器が設置される場合には「基板に」と
5 の用語を用いられているのに対し、直接又は間接を問わず何らかの形で基台の上方
(照明空間側)に容器が設置される場合には、「基台の上に」という用語が用いら
れている。
イ 本件明細書1の記載
本件明細書1の記載は、LEDのモジュールとして、基板にLEDを「直接実装」
10 するCOB(Chip On Board)型と、非透光性容器のパッケージを用いるSMD(Surface
Mount Device)型の2通りを前提としている。請求項13は、COB型に対応するも
のとして前記ア記載の文言が用いられている。他方、本件発明1-14が対応する
SMD型においては、LEDチップが非透光性容器のパッケージの中に入った状態で、
基台の上方に設置されることから、請求項14には、「前記基台の上に、実装され
15 た複数の容器とを備え、前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々
に実装されている」との表現により、その位置関係が記述されている。
ウ 小括
したがって、「基台の上に実装された」(構成要件1-14D、1-18F’及
び1―20D’)とは、基台の上(照明空間側)に容器が設置されていればよく、
20 基台に直接容器が備えられている場合のみならず、基台の上に基板及び容器が設置
されている場合であっても、これを充足する。
(2) 構成要件の充足
被控訴人製品1~5及び7~16は、いずれも基台の上の基板上に容器を実装す
る以上、上記各被控訴人製品は本件発明1-14の構成要件1-14Dを、被控訴
25 人製品1~5、7~10及び12は本件訂正発明1-18の構成要件1-18F’
を、被控訴人製品8及び10は本件訂正発明1-20の構成要件1-20D’を、
それぞれ充足する。
(被控訴人の主張)
(1) 「基台の上に実装された」(構成要件1-14D、1-18F’及び1―2
0D’)の意義
5 ア 回路配置の用語として、「実装」は、「構成部品を配置、接続すること」と
定義されており、その意味は一義的に明確である。したがって、「基台の上に実装
された」(構成要件1-14D、1-18F’及び1―20D’)とは、構成部品
たる容器を基台に配置、接続する構成を意味する。「基台の上」の基板に容器が実
装されているからといって、容器を配置、接続していない基板の下の「基台」が容
10 器を実装していると解釈する当業者はいない。
イ 本件明細書1は、COB型のLEDチップの基板への実装技術と、LEDチッ
プを容器内に実装したSMD型容器の基板への実装技術とを記載しているだけである。
SMD型のLED部品が基板に実装されていることに関して、当業者は、これを「基
板に実装」する技術と理解するのであり、「基台の上に実装」する技術とは理解し
15 ない。本件明細書1にも、これを「基台の上に実装」する技術と説明する記載はな
い。また、本件明細書1において、「基台の上に実装」という用語を、LED部品
を実装する基板を介して配置するという意味で使用する例は記載されていない。
(2) 構成要件の非充足
被控訴人製品1~5及び7~16は、いずれも、基台ではなく、基板の上にLE
20 D部品が実装されている。したがって、上記各被控訴人製品は、構成要件1-14
D、1-18F’及び1―20D’を充足しない。
2 構成要件1-1J’の充足性(争点2-1)
(控訴人PIPMの主張)
(1) 「衝立状」(構成要件1-1J’)の意義
25 ア 本件訂正発明1-1において、基台は「基板を保持するもの」であること
(構成要件1-1F’) を前提に、第1壁部及び第2壁部は、「基台の底部の基板
側に衝立状に形成され」るものである(構成要件1-1J’)。
「状」とは、名詞に続けて使用される場合、「…のような形である、…に似た様
子である」等の意味を有するから、構成要件1-1J’における壁部は、「衝立に
類似する形状」という意味を有する。
5 また、当該壁部は、「基板側」に形成されるものである。「側」とは、「物の一
つの方向・面」を示すものであるから、あくまで各壁部が全体として底部から基板
の方向に向かって形成されていれば足りる。
以上によると、本件訂正発明1-1の第1壁部及び第2壁部は、基台の底部にお
いて、基板の方向に向かって衝立に類似する形状として構成されていれば足りるの
10 であって、「基板上に実装されるLEDの発光面を超えて」「切り立った形状」の
ものと解すべき理由はない。
イ 本件訂正発明1-1は、構成要件1-1J’の構成を採用することで、第1
壁部及び第2壁部がLEDチップで発生する熱を効果的に放熱するという効果を有
する。このような作用効果や機能の観点からみても、各壁部はLEDチップより照
15 明空間側に突出している必要はなく、壁部が基板に近づく構造であればよい。
ウ 特許図面は正確性を担保するものではなく、部材間の正確な位置関係を示す
ものではない。したがって、本件明細書1の図3Bをもって、「壁部」につき「基板
を超えて」「切り立った」面であると特定することは相当でない。
(2) 構成要件の充足
20 別添6「被控訴人製品写真一覧(本件訂正発明1-1関係)」のとおり、被控訴
人製品1~5、7~10及び12は、いずれも、基台の底部から立ち上がっている
第1壁部及び第2壁部が、被控訴人製品の基板側に折り曲げ加工されている。これ
によって、壁部が存在しない場合に比べ、壁部が基板に近づくことによる放熱効果
等を得ることができることから、上記各被控訴人製品は、本件訂正発明1-1の構
25 成要件1-1J’を充足する。
(被控訴人の主張)
(1) 「衝立状」(構成要件1-1J’)の意義
「衝立」とは「衝立障子」の略であり、「衝立障子」とは、「屏障具の一。一枚
の襖障子または板障子に台をとりつけ、移動に便ならしめたもの。」とされる。こ
のような「衝立」の一般的な意味によると、本件訂正発明1-1の「壁部」が「衝
5 立状に形成されており」とは、少なくとも、壁部が基板を超えて面として切り立つ
形で形成され、基板側の空間を仕切る形状の構成である必要がある。
(2) 構成要件の非充足
被控訴人製品1~5、7~10及び12において、基台上端の形状は、いずれも、
基台の短手方向の両端に一対の突部が設けられる構成であるだけであって、一対の
10 突部がLED容器の発光面より上側に突状に形成される構成でなく、空間を仕切る
べき切り立った衝立状には形成されていない。
したがって、上記各被控訴人製品は、いずれも「衝立状」と理解できる形状の
「壁部」を有しておらず、本件訂正発明1-1の構成要件1-1J’を充足しない。
3 均等論(争点2-2)
15 (控訴人PIPMの主張)
仮に被控訴人製品1~5、7~10及び12について文言侵害が成立しなかった
としても、均等侵害が成立する。
本件各訂正発明1は、ランプ最外郭から発せられる光源一つの輝度分布をパラメ
ータとして採用することで、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化することができ
20 るという知見を得ることができ、①粒々感の定義が曖昧で数値化されておらず、ラ
ンプ設計にフィードバックすることが非常に困難であったこと、②粒々感に影響を
与えるランプの構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは
光源素子から筐体までの距離等が多種多様であったこと、すなわち、従来は、粒々
感に影響を及ぼし得るパラメータが表示に多い中で、光束低下を必要最小限に抑え
25 て粒々感を抑制することが困難であったとの課題を解決することができたというこ
とに本質的部分がある。
構成要件1-1J’に関する相異点は、本件各訂正発明1の第1壁部及び第2壁
部が「基台の底部の基板側に、同底部に対して略直立した形状に形成されている」
ものであるところ、被控訴人製品1~3、7~10及び12については、客観的な
構成として、基台の底部から略直立に延出する第1壁部及び第2壁部に相当する部
5 位に加えて、基板とほぼ同じ高さで基台の底部に平行に形成された部分が存在し、
また、被控訴人製品4及び5については、第1壁部及び第2壁部に相当すると見ら
れる部位が、基台の一部が内側に向けて傾斜した形状に形成されているという点で
あるが、このような構成の相異は本件各訂正発明1の非本質的部分である。また、
略直立の場合以外でも被控訴人製品1~5、7~10及び12のような構成で「基
10 板11を挟持し、短手方向の動きが規制する機能を果たす」構成を容易に想定する
ことができるのであり、当業者であれば、容易に置換することができる構成である。
(被控訴人の主張)
控訴人PIPMの均等侵害の主張は時機に後れた攻撃防御方法であって却下すべ
きである。
15 仮に時機に後れた攻撃防御方法により却下されないとしても、均等侵害の第1か
ら第5要件いずれも満たさないから、均等侵害は成立しない。
本件訂正発明1-1のパラメータは、無効理由7のクラーテ製品①のパラメータ
y=1.22xであり、「従来技術に見られない特有の技術的特徴」に相当しない。本
件パラメータに臨界的意義も信頼性もない。控訴人PIPMは「定量化を実現した」
20 との定性的な主張をするのみであり、本件訂正発明1-1は、クラーテ製品①にお
ける従来技術のままで、課題解決に資する内容ではない。したがって、第1要件を満
たさない。
控訴人PIPMが、「壁部」が「衝立状に形成されており」に固有の作用効果を明確
に主張しない以上、第2要件を満たさない。
25 控訴人PIPMが、「衝立状」ではない「壁部」の異なった形状の範囲まで均等を主
張するのであれば、第4要件における容易推考性が明らかである。したがって、第
4要件を満たさない。
本件明細書1には、「衝立状に形成されて」いない構成まで記載されていたことに
なるから、訂正の再抗弁に当たり、明細書に記載されていた事項を自ら放棄して「衝
立状」を選択したことになる。したがって、第5要件を満たさない。
5 4 無効理由1(実施可能要件違反)の有無(争点3)
(被控訴人の主張)
(1) 本件特許権1の出願当時、複数のLEDチップの間隔を適宜に縮めることに
よりLEDチップから発せられる光の粒々感のない輝度均斉度を得る解決手段は周
知であった。したがって、構成要件1-1Dの技術的意義は、同構成要件において
10 特定したパラメータ値を選択すると、カバーの材質やLEDチップの構成の差異に
関係なく輝度均斉度が85%以上となり、粒々感という課題を解決することができ
る点にある。
しかし、被控訴人が数学的に理論値を算出したところによると、拡散性のあるカ
バー材を透過する以前の段階で、y=1.09xになると輝度均斉度が88%を超え、輝
15 度均斉度85%を実現するためにはy=1.02xで十分であった。また、本件明細書1
図7A~Cの実験結果には、y=1.09xより低い数値で輝度均斉度85%を達成した実
験例もあれば、y>1.09xでも輝度均斉度85%を達成していない実験例もある。
このように、当業者は、理論値及び明細書に開示のある実験結果から考察しても、
構成要件1-1Dに特定したパラメータ値により輝度均斉度85%以上になるとの
20 課題解決が常に得られると理解することはできず、85%以上の輝度均斉度を得よ
うとした場合、本件各発明1及び本件各訂正発明1のパラメータ値に依拠すること
ができず、適切な拡散性や形状のカバー部材等を工夫するといった過度の試行錯誤
を要する。
(2) ランプの最外郭を透過した際の光の輝度分布について、本件各発明1及び本
25 件各訂正発明1が所望する輝度均斉度は、本件明細書1に開示された測定方法を前
提に「LEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝
度分布」(以下「LED1個当たりの輝度分布」という。)の合計から算出される
数値であり、本件各発明1及び本件各訂正発明1所望の輝度均斉度を得るためには、
まず所望のLED1個当たりの輝度分布を得ることが必須である。しかし、この輝
度分布は、LEDからの発光特性、カバー部材の形状、拡散性等の変動により変わ
5 り得る。そのため、当業者は、本件明細書1に開示された事項や技術常識から所望
のLED1個当たりの輝度分布を得ることができるとは理解できない。
(3) このように、本件明細書1には、本件各発明1及び本件各訂正発明1の課題
解決の技術的意義を論理的に理解できる内容で実施可能要件を充足すべき開示がな
い。したがって、本件特許権1に係る特許(以下「本件特許1」という。)は、特
10 許法36条4項1号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされ
るべきものである(同法123条1項4号)。そうである以上、控訴人PIPMは、
被控訴人に対し、本件特許権1を行使することはできない(同法104条の3第1
項)。
(控訴人PIPMの主張)
15 上記(被控訴人の主張)(1)は、「輝度」の概念と「照度」を混同し、本件各発
明1及び本件各訂正発明1がパラメータとして採用する「ランプの最外郭を透過し
たときに得られる輝度分布の半値幅(輝度)」ではなく、「ランプの最外郭を透過
する前の面における光量(照度)」についての理論値を算出して独自の理論を主張
するものであり、誤った技術理解に基づくものである。
20 また、本件各発明1及び本件各訂正発明1は、光の粒々感を左右する多種多様な
要素がある中で、特定の輝度均斉度を取るx値(隣り合う発光素子の発光中心間隔)
及びy値(ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅)(以下 、
それぞれ単に「x値」、「y値」ということがある。)をプロットした結果が直線近
似できることを見いだしたものであって、そもそも「近似」である以上、一定の微
25 差が生じることは折り込み済みである。
さらに、外面輝度を問題とした場合の上記(被控訴人の主張)(2)も、技術的理
解の誤りを含んだ独自の理論に基づくものであり、当業者の技術常識を無視する不
合理なものである。
本件各発明1及び本件各訂正発明1は、x値とy値の二つのパラメータによって粒
々感を感じさせないようにすることを容易にするものである。また、x値とy値の測
5 定及び調整をすることは技術常識にすぎない。このため、当業者であれば、このよ
うなパラメータによって、本件各発明1及び本件各訂正発明1の所定の輝度均斉度
を実現することに過度の試行錯誤を要するものではない。
5 無効理由2(サポート要件違反)の有無(争点4)
(被控訴人の主張)
10 前記4(被控訴人の主張)(2)のとおり、本件各発明1及び本件各訂正発明1が
所望する輝度均斉度はLED1個当たりの輝度分布の合計から算出されるところ、
被控訴人のシミュレーションでは、本件明細書1で示されるようなパラメータと輝
度均斉度の関係性を導き得ない。また、本件各発明1及び本件各訂正発明1所望の
輝度均斉度を得るためには、所望のLED1個当たりの輝度分布を得ることが必須
15 であるが、その条件については本件明細書1に記載されていない。
このように、本件各発明1及び本件各訂正発明1は、発明の詳細な説明に記載し
たものであるとはいえない。したがって、本件特許1は、特許法36条6項1号に
違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである(同
法123条1項4号)。そうである以上、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本
20 件特許権1を行使することはできない。
(控訴人PIPMの主張)
本件各発明1及び本件各訂正発明1は、従来技術の有する課題を解決するために
x値及びy値という二つのパラメータを採用し、y≧1.09x等の関係を満たすことで粒
々感をほとんど感じなくさせることができるとしたものである。
25 このように、特許請求の範囲に記載された本件各発明1及び本件各訂正発明1の
特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載されており、当業者であれば、その発
明の課題が解決できることを容易に認識し得る。
6 無効理由3(明確性要件違反)の有無(争点5)
(被控訴人の主張)
本件各発明1及び本件各訂正発明1につき、拡散性が弱いカバー部材等を含め得
5 るという控訴人PIPMの主張を前提とすると、各構成要件の「ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅y(mm)」というパラメータそのものに
つき、カバー部材における輝度ではなく、カバー部材を透過する前のLEDチップ
の輝度との合成値を含む形でそのパラメータの特定を行うこととなり、通常の「輝
度」という用語とは異なる発明特定事項を備えることになる。また、LEDチップ
10 の種類が特定されていないことから、非常に指向性の強い狭角タイプのLEDチッ
プを使用した場合、ランプの最外郭を通過したときに得られる輝度分布の測定を実
施しても、LEDチップの直接透過光に近似した光が観測されることになる。
このように、光拡散部の拡散度合いやLEDチップが特定されていない「ランプ
の最外郭を透過したときに得られる輝度分布」との記載は、どの箇所の輝度を測っ
15 ているかすら技術的に不明確な特定であり、発明としての明確性に欠ける。
したがって、本件特許1は、特許法36条6項2号に違反してされたものであり、
特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123条1項4号)。そう
である以上、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権1を行使することは
できない。
20 (控訴人PIPMの主張)
被控訴人の主張は、LEDランプから発せられる光を、「LEDチップから直接
外部に発せられる光」と、「カバー部材によって拡散されて外部に発せられる光」
という本件各発明1及び本件各訂正発明1にはない二つの概念を持ち込んで明確性
要件違反を主張するものであり、これらの発明の前提に関する理解に誤りがある。
25 これらの発明においては、上記二つの概念を分けることなく一括した光として捉え、
「各々の光が最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅」とのみ定義して
いるのであって、これは、当業者であれば問題なく評価可能なものである。
また、本件各発明1及び本件各訂正発明1に係る各請求項の記載は、「ランプの
最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅」や「隣り合う前記LEDチッ
プの発光中心間隔」という明確な要素を「y≧1.09x」等という数式にて関係付けるも
5 のであって、その外縁に不明確な点はない。また、カバー部材についても、「光拡
散部を有する長尺状の筐体」と記載されており、当業者であれば、y≧1.09xの関係
を満たすように、LEDチップの発光中心間隔との関係において、適宜拡散性のレ
ベルの異なるカバー部材を用いて調整することが可能である。
7 無効理由4(631N製品等の公然実施による新規性欠如)の有無等(争点6)
10 (被控訴人の主張)
(1) 被控訴人は、以下のとおり、以前に本件発明1-1、1-14、1-16及
び1-17(ただし、本件発明1-14については、「実装」(構成要件1-14
D)につき、基板を介して配置することを含むと解した場合)と同一の構成となる
製品RA-631N(以下「631N製品」という。)及びRAD-402W(以下、「402W製品」と
15 いい、これと631N製品を併せて「631N製品等」という。)を製造、販売等して実施
していた。すなわち、本件発明1-1、1-14、1-16及び1-17は、いず
れも本件優先日1前に日本国内において公然実施をされた発明である。
したがって、上記各発明に係る本件特許1は、特許法29条1項2号に違反して
されたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123
20 条1項2号)。そうである以上、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、上記各発明
に係る本件特許権1を行使することができない。
(2) 公然実施
ア 631N製品について
631N製品は、平成24年1月発行の被控訴人のチラシ(以下「本件チラシ1」と
25 いう。)及び同年2月発行の 被控訴人のカタログ(以下「本件カタログ1」とい
う。)に掲載されている。また、631N製品は、同月8日付け部品明細表(以下「本
件部品明細表」という。)のとおり、本件優先日1より前に製品内容が確定され、
その後変更がない。
さらに、被控訴人札幌営業所は、同月29日、631N製品20本を同年3月23日
までにラルズストア宮の沢店(以下「ラルズストア」という。)に納品する注文を
5 受け、同月21日、運送会社を介して出荷した。
加えて、631N製品は、同月、韓国から日本に輸入され、通関した。
以上によると、631N製品に係る発明(以下「631N発明」という。)は、本件優先
日1より前に公然実施をされた発明といえる。
イ 402W製品について
10 402W製品は、本件チラシ1(なお、402W製品は「平成24年3月初旬発売開始予
定」とされている。)及び本件カタログ1に掲載されている。また、402W製品は、
平成24年4月頃、大量に輸入され、同時期において広く販売されていた。
さらに、被控訴人は、同年4月16日、取引先である株式会社カナデンテクノエ
ンジニアリング(以下「カナデン」という。)に対し、402W製品を見本品として無
15 償交付した。カナデンは電気工事業を営む者であり、被控訴人は、新製品の販売に
当たって実際の市販品を取引先に見本品として交付しただけであって、被控訴人と
カナデンとの間に、402W製品の構成に係る秘密保持義務はない。
以上によると、402W製品に係る発明(以下「402W発明」という。また、これと
631N発明を併せて「631N等発明」という。)は、本件優先日1より前に公然実施を
20 された発明といえる。
(3) 631N等発明の構成等
ア 構成
(ア) 本件発明1-1、1-16及び1-17と対比すべき631N等発明の構成は、以
下のとおりである。
25 1-1a6 乳色カバーを有する蛍光灯に外形類似の長尺円筒状の筐体と、
1-1b6 前記長尺円筒状筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された12
6個のLEDチップと、を備えた
1-1c6 直管形LEDユニットであって、
1-1d6 前記126個のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過
したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LED
5 チ ッ プ の L E D ピ ッ チ を x( mm) と す る と 、 y=15.6mm、 x=9.21mmで あ り 、
y=1.69xとして、y≧1.09xの関係を満たす、
1-1e6 直管形LEDユニット。
なお、402W発明においては、構成1-1d6について、y=15.76mm、x=9.21mm、y=1.71x
と読み替える(以下同じ。)。
10 (イ) 本件発明1−14と対比すべき631N等発明の構成は、以下のとおりである。
1-14a6 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
1-14b6 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-14c6 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
15 1-14d6 前記基台の上の基板の上に実装された複数の容器と、
1-14e6 を備えたランプであって、
1-14f6 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-14g6 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチッ
20 プの発光中心間隔をx(mm)とすると、y=15.6mm、x=9.21mmであり、y=1.69x
として、y≧1.09xの関係を満たす、
1-14h6 ランプ。
イ 631N等発明の上記各構成は、本件発明1-1、1-14、1-16及び1-
17の各構成要件と一致する。したがって、631N等発明は、上記各発明とそれぞれ
25 同一である。
(4) 先使用
被控訴人が631N製品等を事業として行っていた以上、先使用権も成立する(特許
法79条)。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 631N製品について
5 ア 本件カタログ1及び本件部品明細表は、いずれも631N製品が本件各発明1の
各構成要件を充足することを明らかにするものではない。このため、いずれも、本
件優先日1より前に631N製品に係る発明が公然実施されたことを裏付けるものでは
ない。また、被控訴人が公然実施品とする631N製品には「121002」との記載がある。
当該記載は製品の製造年月日を示すものであるから、当該記載によると、当該製品
10 は平成24年10月2日に製造されたものと考えられる。
イ 被控訴人札幌営業所が平成24年3月21日に631N製品をラルズストアに納
品した証拠として提出する納品書は、検印や承認印等がなく、実際に発行されたも
のであるか疑義がある。
ウ 被控訴人が提出する通関書類一式は、被控訴人の取引先からの出港日又はそ
15 の予定日が同月19日であると示されているだけであり、ラルズストアへの販売や
同店での使用を示すものではない上、「3/29入荷」という手書きの記載があり、
同月21日出荷という被控訴人の主張する事実と整合しない。
エ これらの事情等を踏まえると、631N製品に係る発明が本件優先日1前に公然
実施をされていたとはいえない。
20 (2) 402W製品について
ア 本件部品明細表及び本件カタログ1については、上記(1)アと同様である。
また、402W製品の見本品を平成24年4月16日にカナデンに対して納品した点
については、証拠上、上記見本品の納品の時期、経緯等は判然としない上、証拠間
の関連性が不明なものや食違いのあるものなどがある。
25 イ 公然実施とは、不特定の者に知られ、又は知られるおそれのある状況で実施
されたことをいい、少なくとも、取引において秘密を保持することが暗黙に求めら
れるような場合は、公然実施には当たらない。
被控訴人とカナデンとの間で取引されたのは、正規の商品ではなく見本品(サン
プル品)であるところ、サンプル品は、正規の商品と異なる仕様が存在していたり、
相手方と特別な関係を前提として授受されたりすることが通常である。実際、被控
5 訴人は、当該取引をするために、見本品手配申請書の提出という特殊な社内手続ま
で要していた。しかも、当該取引は、「渡し切りサンプル(点灯試験・分解テス
ト)」が目的であると明記されている。これらの事情を踏まえると、当該取引に当
たっては、被控訴人とカナデンとの間に秘密を保持することが暗黙のうちに求めら
れていたといえる。
10 以上によると、被控訴人とカナデンとの間でサンプル品の取引がされたという事
実からは、402W発明が公然実施をされたとはいえない。
(3) 631N等発明にかかる先使用権の成立は争う。
8 無効理由5(631N製品等を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点7)
(被控訴人の主張)
15 (1) 主引用発明の公然実施
前記7(被控訴人の主張)(2)のとおり、被控訴人は、本件優先日1前に、631N
製品等を、それぞれ製造販売していた。
(2) 631N等発明の構成等
ア 本件発明1-1、1-14、1-16及び1-17と対比すべき631N等発明
20 の構成は、前記7(被控訴人の主張)(3)のとおりである。
イ 本件発明1−3と対比すべき631N等発明の構成は、以下のとおりである。
1-3a7 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
1-3b7 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
25 1-3c7 を備えたランプであって、
1-3d7 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチッ
プの発光中心間隔をx(mm)とすると、y=1.69xの関係になる、
1-3e7 ランプ。
ウ 本件訂正発明1-1と対比すべき631N等発明の構成は、以下のとおりである。
5 1-1a’7 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長
尺状の筐体と、
1-1b’7 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LEDチ
ップと、
1-1c’7 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁性を有する光反射シート
10 と、
1-1d’7 前記筐体内に平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテー
プを介し載置される長尺状のLED基板と、
1-1e’7 前記基板の上に実装された複数の容器と、
1-1f’7 前記基板を保持する金属製の前記平板状部材及び外殻部材と一体成形
15 される基台と、
1-1g’7 を備えたLEDランプであって、
1-1h’7 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-1i’7 前記基台は、前記長尺状の前記外殻部材の底部と一体に成形された前
記平板状部材の短手方向の一方の端部に設けられた第1突部と、他方の端部
20 に設けられた第2突部とを有し、
1-1j’7 前記第1突部及び前記第2突部は、前記底部の前記基板側に前記容器
の発光面高さを超えない範囲で突状に形成されており、
1-1k’7 前記複数LEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したと
きに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
25 の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.69xの関係を満たす、
1-1l’7 ランプ。
エ 本件訂正発明1-17と対比すべき631N等発明の構成
本件訂正発明1-17と本件発明1-3とを比較すると、実質的な両者の相違は、
本件訂正発明1-17の構成要件1-17E’「前記LEDチップを発光させるための
電力として、商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受ける
5 口金と、を備え、」という部分のみである。したがって、同部分以外は、前記アのと
おりである。
オ 本件訂正発明1-18と対比すべき631N等発明の構成は、以下のとおりである。
1-18a’7 ランプを備える照明装置であって、
1-18b’7 前記ランプは、
10 1-18c’7 光拡散部を有する長尺状の筐体と、
1-18d’7 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチッ
プと、
1-18e’7 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
1-18f’7 前記基台の上に載置されたLED基板の上に実装された複数の容器と、
15 1-18g’7 前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の
口金と、を備え、
1-18h’7 前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させるための
電力を受け、
1-18i’7 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
20 1-18j’7 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したと
きに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの
発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.69xである
1-18k’7 照明装置。
カ 本件訂正発明1-20と対比すべき631N等発明の構成は、以下のとおりであ
25 る。
1-20a’7 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長
尺状の筐体と、
1-20b’7 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-20c’7 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
5 1-20d’7 前記基台の上に載置されたLED基板の上に実装された複数の容器と、
を備えたランプであって、
1-20e’7 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-20f’7 前記筐体は、ポリカーボネートからなる前記カバー部材と、前記半円状
の外郭部材からなる直管であり、
10 1-20g’7 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.69xとなる、
1-20h’7 ランプ。
(3) 相違点の存在
15 ア 相違点1
631N等発明は、本件各発明1及び本件各訂正発明1の各パラメータに係る構成に
ついて、パラメータ値がその範囲外であるか、又は幅を持った構成であるかという
点で相違する。
イ 相違点2
20 本件訂正発明1-1の第1壁部及び第2壁部は、底部の基板側に衝立状に形成さ
れているのに対して、631N等発明はこのような構成を有しない点で相違する。
(4) 相違点に係る構成の容易想到性
ア 相違点1
上記相違点1は、本件優先日1当時、高価であったLEDの部品数を適宜減らし
25 た上、粒々感のない均一光を維持するという程度の変更で一致する相違点にすぎず、
当業者が日常的課題に対して適宜に行う最適数値を目指した設計変更の範囲に含ま
れる。すなわち、一定の規格で長さが定められた長尺状のランプである直管形LE
D照明ユニットにおいては、LEDの部品数を減らせば、隣り合う発光素子の発光
中心間隔(x値)が広くなるのが当然であり、631N等発明につき、部品数を減少さ
せる設計変更の結果、本件各発明1及び本件各訂正発明1の各パラメータに係る構
5 成を充足することになる。したがって、上記相違点に係る構成につき、631N等発明
に上記技術常識を適用することで、当業者は、上記各発明を容易に想到し得る。
イ 相違点2
特開2010-257769号公報(乙293)には、その明細書及び図面を参酌すると、
「長尺状で断面コの字状である支持体2の側面部に固定される断面コの字状の筐体5
10 は、LED基板4を固定する基台であるところ、その短手方向の両端部側壁部分が
LED6よりカバー側に突出し、衝立状に形成されており」という構成を有するL
EDランプの発明(以下「乙293発明」という。)が開示されている。この構成
は、照らす必要のない天井側に光源を向けず、床面側を広く照らすという効果をも
たらす構成である。
15 631N等発明においても、透光性のあるカバー部材を断面半円状とする一方、透光
性のない断面半円状の金属製の基台を有することから、照らす必要のない天井側に
光源を向けず、床面側を広く照らすようにすることは、乙293発明と共通する課
題を解決するための構成であるといえる。
したがって、631N等発明に乙293発明を適用して、基台の短手方向の両端部側
20 壁部分につき、第1壁部及び第2壁部として、LEDの容器の発光面よりもカバー
部材側に突出させ、これを衝立状に形成することは、両者の課題の共通性からその
適用が動機付けられているといえる。
よって、631N等発明に乙293発明を適用することにより、相違点2に係る本件
訂正発明1-1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得る。
25 ウ なお、本件訂正発明1-17及び1-18の数値範囲以外の構成についてみる
と、631N製品等の直管形LEDユニットを、同時期に存在していたことが明らかな器
具本体に取り付け、照明装置にすることは、当業者にとって容易に想到し得るもので
ある。
(5) 小括
以上のとおり、本件各発明1及び本件各訂正発明1は、その優先日前に公然実施
5 をされた発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を
欠く(特許法29条2項)。そうすると、本件各発明1に係る本件特許1は、いず
れも特許無効審判により無効にされるべきものであるから( 同法123条1項2
号)、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件各発明1に係る本件特許権1を行
使できない。また、本件各訂正発明1については、本件訂正1によっても無効理由
10 が解消されていないことから、訂正の再抗弁は成立しない。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 公然実施をされていないこと
631N等発明が本件優先日1当時公然実施をされていたといえないことは、前記7
(控訴人PIPMの主張)のとおりである。
15 また、本件発明1-17、本件訂正発明1-17及び1-18に関し、631N製品
等は直管形LEDランプであるところ、本件優先日1前に、これらのランプが実際
に照明器具に取り付けられることにより、全体として照明装置として存在したかは
明らかでない。したがって、631N等発明が公然実施をされていたとはいえない。
(2) 容易想到性について
20 本件各発明1は、単に一定の輝度均斉度を実現するものではなく、x値及びy値と
いう二つのパラメータを採用し、それが直線近似するという関係性を見いだした点
に意義を有する。
他方、631N製品等には、本件各発明1に係るパラメータ及び同パラメータを採用
した場合の輝度均斉度と直線近似の関係性という技術的思想について、何ら開示又
25 は示唆はない。
また、仮に、当業者が、「照度ムラ」が生じない範囲で設置するLEDチップの
個数を減らすことで、631N製品等を前提にLEDチップの間隔を広げるとの考えに
至ったとしても、「照度ムラ」はそもそも輝度均斉度を実現しようとする本件各発
明1とは課題を異にしており、本件各発明1の技術的思想が単なる当業者の設計事
項にすぎないということはできない。むしろ、照度と輝度の違いを考慮外にした場
5 合、本件各発明1は、LEDの個数を増やすことによっても、各発明に係るパラメ
ータに従ってy値を調整することで、85%~90%の輝度均斉度を実現し得る。
これに対し、単純にLEDの個数を減らすという考えは、本件各発明1の技術的思
想であるパラメータによる調整に対しては阻害事由になる。
9 無効理由6(乙144発明を主引用発明とする進歩性欠如)の有無(争点8)
10 (被控訴人の主張)
(1) 国際公開第2000/14705号記載の発明
国際公開第2000/14705号(乙144)の記載によると、乙144には、以下の発
明(以下「乙144発明」という。)が記載されている。
o 硬質の半透明の拡散プラスチック材料で作られた細長いディフューザ ー2
15 (拡散部)を有する長尺状の本体1と、
p 前記本体1の長尺方向に沿って前記本体1内に配置された複数の LEDチッ
プと、
q を備えたライトであって
r 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ライトの最外郭を透過したときに
20 得られる輝度出力が実質的に均一で非ピクセル化されている、
s ライト。
(2) 他の文献記載の技術
ア 特表2010-519757号公報
特表2010-519757号公報(乙145)は、液晶のバックライトに係る技術に関す
25 るものであるが、乙145には、従来技術の例として、LED放射パターン(ラン
バート)が示された上、拡散スクリーン上の各LEDの拡散された輝度プロフィー
ル及びその半値全幅が示されており、特に、本件各発明1及び本件各訂正発明1に
おける「LED1個当たりの輝度分布の半値幅」と同義であることが理解できる。
このため、本件発明1−3の構成要件のうち、構成要件1-3A、C及びEに相
当する構成並びに「前記スクリーンのバックに2次元アレイ状に配置された複数の
5 LEDチップと」(構成要件1-3Bと対比すべき構成)及び「前記複数のLED
チップの各々の光が前記スクリーンの最外郭を透過したときに得られる輝度プロフ
ィール(輝度分布)の半値全幅と、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔が目
立つ明るいスポットの有無に影響を与える」(構成要件1-3Dと対比すべき構成)
なる構成が記載されている。
10 イ シャープ株式会社のレポート
上記アのとおり、乙145には液晶用のLED直下型バックライトの輝度均斉度
向上技術において半値幅という概念があるところ、シャープ株式会社の平成23年
8月のプレスリリースにおけるLEDシーリングライト及びLED電球新製品発表
会レポート(乙146)によると、液晶テレビのバックライトに使用されるLED
15 技術と効率のよい直照方式を組み合わせ、高い省エネ性能を実現したものとして、
その照明器具が紹介されている。したがって、乙146によって、本件優先日1の
前から、液晶のバックライトの技術が照明装置分野に適用されていたことが分かる。
ウ 特開2010-129508号公報
特開2010-129508号公報(乙31)の明細書には、照度ムラをなくし照明光の均
20 一化を図るには、複数のLEDを一定ピッチで配列することに加え、隣り合うLE
Dの数量を多くして、その配列ピッチを小さくすればよいことが教示されている。
エ 特開2011-216271号公報
特開2011-216271号公報(乙147)は、液晶のバックライトに係る技術に関す
るものであるが、その明細書には、「LEDは配光特性に強い指向性があり、配光
25 分布が発光面の正面方向に特に偏っているため、このLEDと液晶パネルとの間に、
光拡散剤を含んだ一般的な光拡散フィルムを配置するだけでは、輝度ムラを抑える
ことが難しく、特に、LEDの光源間距離が長くなるほど、且つ、LEDから光拡
散フィルムまでの距離が短くなるほど、輝度ムラが大きくなるという不都合があっ
た。そのため、これまではLEDの光源間距離を通常30mm以下と短くし、LEDか
ら光拡散フィルムまでの距離を出来るだけ長く設定して、輝度ムラを軽減するよう
5 にしているが、上記のように光源間距離を短くするとLEDの使用個数が多くなる
のでコストアップを招くという問題がある」ことが記載されている。
また、乙147の表1~8には、液晶のバックライトで使用される面発光ユニッ
トの実施例1~14において、68.7%(実施例11)から98.7%(実施例2)
まで、その(輝度)均斉度を適宜変更することが記載されている。
10 (3) 本件発明1-3と乙144発明との対比及び相違点
乙144には、LED照明装置のランプが、拡散性のあるディフューザーからの
光出力を粒々感のない均一な光になるように認識されるようにすることが記載され
ている。乙144発明と本件発明1−3との相違点は、本件発明1-3の構成要件
1-3Dにおける「複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過し
15 たときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし」、「隣り合う前記LEDチッ
プ の 発 光 中 心 間 隔 を x ( mm ) と す る 」 と の 前 提 を 置 い た 上 で 、 両 者 の 関 係 を
1.21x≦y≦1.49xとするパラメータだけである。
乙145には、スクリーンの最外郭を透過したときに得られる輝度プロフィール
(輝度分布)の半値全幅と、隣り合うLEDチップの発光中心間隔とが示されてお
20 り、全体的光出力に目立つ明るさが生じないようにするためLEDの比較的高い密
度が必要であることが明記されている。特に、乙145の図35では、その半値全幅
は隣り合うLEDチップ間の発光中心間隔の約1.21倍である。
乙146に示されるように、液晶のバックライト技術を照明装置に適用すること
は、本件優先日1前から存在する技術常識となった技術水準であった。そのため、
25 均斉度向上のためLED1個当たりの輝度半値幅とLEDチップ間隔を適宜に調整
する乙145に図示されたy=1.21xのパラメータを乙144発明に適用することは、
当業者にとって容易に想到し得る。
また、乙31には、LEDの配列間隔を狭めて、照度ムラを減らし、照明光の均
一化を得るという技術常識が示されている。さらに、乙147には、85%以上、
90%以上、95%以上といった所望の輝度均斉度を得ることが開示されており、
5 当業者であれば、LEDの配置を調整して所望の均斉度の向上を図ることに特段の
困難性はない。
したがって、本件発明1−3は、乙144発明に、乙146に示されるとおり関
連する技術分野の技術である乙145記載のパラメータを転用して適用することに
より想到し得るものであり、かつ、その輝度均斉度も、乙147に示されるとおり、
10 常識的なものであるから、容易に想到し得る。
(4) 小括
以上のとおり、本件発明1−3は、当業者が、特許出願前に日本国内又は外国に
おいて頒布された刊行物に記載された乙144発明に基づいて容易に発明をするこ
とができたものであり、上記発明に係る本件特許1は、特許法29条2項に違反し
15 てされたものである。そうすると、上記特許は、特許無効審判により無効にされる
べきものであるから、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、上記発明に係る本件特
許権1を行使できない。
なお、本件発明1-17についても同様である。
(控訴人PIPMの主張)
20 (1) 乙144発明について
ア 乙144発明の構成
乙144発明の構成は、次のとおりである。
o’ 光を拡散するチューブ状のディフューザーを有する本体と、
p’ 本体の長尺方向に沿って本体内に配置された複数のLEDチップと、
25 q’ を備えたライトであって
r’ 前記複数のLEDチップの各々の距離を十分に近接させることによって、単
一の実質的に連続光源からであると知覚されるような
s’ ライト
イ 本件発明1-3との相違点
(ア) 本件発明1-3と乙144発明は、構成要件1-3Dと構成r’において相違
5 する。すなわち、本件発明1-3は1.21x≦y≦1.49xのパラメータを採用する一方、
乙144発明はLEDの間隔を狭める方法を採用している。
(イ) 技術分野の相違
人工光源においては、大別して、空間の明るさを確保するためのもの及び表示用
のためのものという2種類の分野が存在する。
10 乙144発明は、表示のための照明器具を前提とするものであるところ、この種
の照明器具においては、より表示を見やすくするため、器具全体の光の見える方向
を限定する必要がある。このため、乙144発明は、求められる特性及びその具体
的技術分野を本件発明1-3と異にする。
(ウ) 技術的思想及び課題解決方法の相違
15 乙144発明は、単に「光源は、十分に近接して配置」することによって、その
拡散性を向上させ非ピクセル化するものにすぎず、本件発明1―3におけるx値及
びy値に関する構成は開示されていないし、このような二つのパラメータ及び輝度
均斉度が直線近似することを用いて粒々感を抑制するという技術的思想は、一切開
示又は示唆されていない。
20 本件発明1-3の上記技術的思想は、LED間の距離を広げる場合であっても、
カバー部材の拡散性を高めたり、LEDからカバーまでの距離を拡大するなどして
y値を調整することにより所望の輝度均斉度を確保することができるというもので
あり、乙144発明の技術的思想とは矛盾するともいえる。
(2) 副引用例について
25 乙31、145~147は、いずれも、そもそも技術分野及び具体的課題が相違
するため、乙144発明に適用する動機付けを欠く。
また、乙144発明を含め被控訴人が指摘するどの文献にも、構成要件1-3D
の構成によって輝度均斉度を85%以上にできることについては記載も示唆もされ
ておらず、そもそも、一列に並べられたLEDチップの輝度の均斉度が直線近似で
きるという本件各発明1の技術的思想の前提についても、何ら開示されていない。
5 (3) 小括
したがって、乙144発明にどのような副引用例を組み合わせても本件発明1-
3に至ることはなく、乙144発明に基づき、当業者が本件発明1―3を容易に想
到できるものではない。
10 無効理由7(クラーテ製品①の公然実施による新規性欠如)の有無(争点
10 9)
(被控訴人の主張)
(1) 公然実施
株式会社リコー(以下「リコー」という。)は、平成23年7月に「クラーテP
シリーズ40形」という商品 名のインバータ用製品「CLARTE PI40N/23」(以下
15 「クラーテ製品①」という。)を上市した。クラーテ製品①は、平成24年1月に、
別シリーズと共に、同社のカタログに掲載されている。
被控訴人は、平成30年2月26日終了のオークションにおいて、クラーテ製品
①と同一の型番であり、「CLARTE PI40N/23」と印字されている直管形LEDユニ
ット2本を入手した(以下、これらの製品を「被控訴人クラーテ製品①」という)。
20 被控訴人クラーテ製品①のLEDユニットにはシリアル番号「11081726992607717-
1」が印字され、また、同ユニットを収納していた外箱には、「RICOH\CLARTE」と
印字されると共に、「CLARTE PI40N/23 2(2本入)」と印字されたシールが貼付
されている。上記シリアル番号前半の「1108」という部分から、被控訴人クラーテ
製品①は、平成23年8月に製造された製品と理解される。
25 したがって、クラーテ製品①に係る発明(以下「クラーテ発明①」という。)は、
本件優先日1より前に公然実施をされた発明といえる。
(2) クラーテ発明①の構成等
ア 本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17と対比すべきクラーテ発明
①の構成は、以下のとおりである。
1-3a9 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
5 1-3b9 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-3c9 を備えたランプであって、
1-3d9 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチッ
10 プ の 発 光 中 心 間 隔 を x( mm) と す る と 、 y=1.22xの 関 係 に な る ( x=8.6mm、
y=10.45mm)、
1-3e9 ランプ。
イ 本件発明1-14と対比すべきクラーテ発明①の構成は、以下のとおりであ
る。
15 1-14a9 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
1-14b9 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-14c9 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
1-14d9 前記基台の上の基板の上に実装された複数の容器と、
20 1-14e9 を備えたランプであって、
1-14f9 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-14g9 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチッ
プ の 発 光 中 心 間 隔 を x( mm) と す る と 、 y=1.22xの 関 係 に な る ( x=8.6mm、
25 y=10.45mm)、
1-14h9 ランプ。
(3) 新規性の欠如
ア 上記(1)及び(2)のとおり、クラーテ発明①は、x値が8.6mm、y値が10.45mmで
あり、y=1.22xである製品と特定できる。このため、クラーテ製品①の構成は、本
件各発明1(ただし、本件発明1-14については、「実装」(構成要件1-14
5 D)につき、基板を介して配置されている場合を含むと解した場合)と同一である。
イ 被控訴人クラーテ製品①は、新品、未使用の製品としてオークションに出品
され、前記外箱に収納された状態で被控訴人の元に届いたものである。これにつき、
被控訴人が委託した外部試験機関の測定結果によると、各LEDが一般的なLED
のランバーシアン配光特性を維持していることが確認されている。LEDパッケー
10 ジの配光特性が初期値から変化していないのであれば、拡散カバーやLEDパッケ
ージの基板に特段の変化がなければ、その光量自体が減少していても、拡散カバー
を透過した表面輝度分布における半値幅や輝度均斉度に変化がないというのが技術
常識である。
控訴人PIPMが主張する被控訴人クラーテ製品①の測定結果は、カタログ値が
15 前提としている点灯状態とは異なるため、同カタログ値と比較して上記測定結果が
異常な数値とはいえない。
(4) 小括
以上のとおり、本件各発明1は、いずれも、本件優先日1前に日本国内において
公然実施をされた発明であるから、上記各発明に係る本件特許1は、特許法29条
20 1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきもの
である。そうである以上、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、上記各発明に係る
本件特許権1を行使することはできない。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 公然実施がされていないこと
25 被控訴人がクラーテ製品①の上市時期として主張するリコーのニュースリリース
の対象は、「クラーテPシリーズ 40形」と記載されているのみであり、クラー
テ製品①の型番(PI40N/23)が特定されていない。
また、被控訴人クラーテ製品①が、いつ、どのように流通過程に置かれたのかは
明らかでない。
(2) 被控訴人クラーテ製品①の測定数値が初期値と同等とはいえないこと
5 ア 被控訴人クラーテ製品①が製造されたという平成23年8月から被控訴人が
入手したという平成30年2月までは、長期間が経過しており、被控訴人が入手す
るまでの状況も不明である。このため、被控訴人クラーテ製品①については、使用
の有無、程度、使用環境、保管状況、クラーテ製品①との製品の同一性に疑義が生
じ、現時点での測定結果をもって、公然性を備えた時点のそのままの状態を維持し
10 ているものとはいえない。
むしろ、被控訴人クラーテ製品①のカバー部材には新品未使用であるならば存在
するはずのない無数の傷が存在することや、オークションの出品時に提供されてい
た写真と実際に被控訴人が入手した製品の写真とで外観が異なることなどからも、
同製品が長期間使用されたり、カバー部材の交換等が行われた等の可能性が考えら
15 れる。また、控訴人による測定の結果によると、被控訴人クラーテ製品①は、クラ
ーテ製品①の取扱説明書記載の消費電力を20%以上も上回る。このような想定値
からの大幅な上昇は、異常状態での保管や、製造業者が想定していない状況下で使
用されたことを示唆している。すなわち、異常な使用方法やカバー部材の変更、想
定されていない条件下での保管等の可能性を示すものである。
20 イ LEDチップは、LEDの封止に用いられるシリコン樹脂が経年によって樹
脂やせを生じ、凹形状になることによって、LEDからの出射角が狭くなる。この
ため、本件各発明1のパラメータに影響する半値幅について、初期値の方が約1.
45倍大きく算出される。加えて、シリコン樹脂が経年により黄変することでもL
EDからの出射角がより鋭角となり、半値幅の値が初期値より小さくなる。
25 したがって、被控訴人クラーテ製品①の測定結果をもって、本件優先日1時点の
値と同一であるということはできない。
11 403W製品に基づく先使用権の成否(争点10)
(被控訴人の主張)
(1) 「基台の上に実装」(構成要件1-14D、1-18F’及び1-20D’)
につき、基板を介して配置することを含むと解すると共に、「前記第1壁部及び前
5 記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されており」(構成要件1-
1J’)につき、第1壁部及び第2壁部が基台の底部において基板の方向に向かっ
て衝立に類似する形状として構成されていれば足りると解した場合、被控訴人は、
以下のとおり、本件各発明1並びに本件訂正発明1-1、1-17及び1-18の
発明の内容を知らないで、自ら上記各発明と同一であるRAD-403W(以下「403W製品」
10 という。)に係る発明(以下「403W発明」という。)をし、本件優先日1の際現に
日本国内においてその発明の実施である事業をしていた者として、その発明及び事
業の目的の範囲内において、上記各発明に係る本件特許権1につき通常実施権を有
する。
そうである以上、被控訴人製品1~5及び7~16につき、控訴人PIPMは、
15 被控訴人に対し、本件各発明1に係る本件特許権1を行使し得ない。このことは、
本件訂正発明1-1、1-17及び1-18についても同様である。
(2) 先使用
ア 被控訴人は、本件優先日1前の平成24年4月23日、403W製品480本を
輸入し、我が国での通関手続を終了した。被控訴人は、同月26日、上記製品48
20 0本のうち24本を、取引先であるミツワ電機株式会社関西特機営業所からの注文
を受けて同日出荷し、同月28日、兵庫県内にある温泉宿「佳泉郷 井づつや」
(以下「井づつや」という。)に納品した。
被控訴人が井づつやから提供を受けた上記納品に係る403W製品(以下「被控訴人
403W製品」という。)には、ロット番号として「120416」との印字があり、その製
25 造年月日は平成24年4月16日と理解される。
また、403W製品は、本件チラシ1及び本件カタログ1に掲載されている。
イ 以上のとおり、被控訴人は、本件優先日1の際現に、日本国内において403W
発明の実施である事業をしていた。
(3) 403W発明の構成等
403W発明の構成は、以下のとおりである。
5 ア 本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17と対比すべき構成
1-3a10 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
1-3b10 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-3c10 を備えたランプであって、
10 1-3d10 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチッ
プの発光中心間隔を x(mm)とすると 、y=1.34xの関係になる(x=11.7mm、
y=15.7mm)、
1-3e10 ランプ。
15 上記構成は、本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17の各構成要件に相
当することから、403W発明は、本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17と
同一の発明である。
イ 本件発明1-14と対比すべき構成
1-14a10 光拡散部となるカバーを有する長尺状の筐体と、
20 1-14b10 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLED
チップと、
1-14c10 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
1-14d10 前記基台の上の基板の上に実装された複数の容器と、
1-14e10 を備えたランプであって、
25 1-14f10 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装さ
れ、
1-14g10 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過し
たときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチ
ップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y=1.34xの関係になる(x=11.7mm、
y=15.7mm)、
5 1-14h10 ランプ。
上記構成は、本件発明1−14の各構成要件に相当することから、403W発明は、
本件発明1-14と同一の発明である。
ウ 本件訂正発明1-1、1-17及び1-18について
403W発明の上記アの構成は、本件訂正発明1-17及び1-18の構成要件1-
10 17E'及び1-18H'を除く構成要件と同一である。また、本件訂正発明1-1
7の「商用電源からの…を受ける口金」(構成要件1-17E’)という発明特定
事項も、本件訂正発明1-18の「前記一対の口金の一方のみ…を受け」(構成要
件1-18H’)という発明特定事項も、403W製品がもともと備えている構成であ
る。したがって、403W発明は、本件訂正発明1-17及び1-18と同一の発明で
15 ある。
本件訂正発明1-1についても、「衝立状」について第1壁部及び第2壁部が基
台の底部において基板の方向に向かって衝立に類似する形状として構成されていれ
ば足りると解した場合、本件訂正発明1-1と403W発明の構成は同一である。
したがって、403W発明は、本件訂正発明1-1と同一の発明である。
20 (4) 被控訴人403W製品の測定値が初期値と同等といえること
ア 配光特性に変化がないこと
被控訴人403W製品についてLEDの全光束及び配光データを測定し、その配光特
性を測定したところ、被控訴人403W製品のうち、特に変色が認められた製品2本で
あっても、50%ビーム開き角が114度及び115度であり、初期特性のランバー
25 シアン配光特性(50%ビーム開き角120度)を維持していたことから、被控訴人
403W製品の配光特性は初期値と変わりないことが確認できた。前記10(被控訴人
の主張)(3)イのとおり、LEDパッケージの配光特性が初期値から変化していな
ければ、拡散カバーやLEDパッケージの基板に特段の変化がない場合、その光量
自体が減少していても、拡散カバーを透過した表面輝度分布における半値幅、輝度
均斉度の変化がないことは技術常識である。したがって、被控訴人403W製品のパラ
5 メータに関して、経年による変化はない。
イ 使用環境の影響や、シリコン樹脂やせ等がみられないこと
井づつやの泉質は硫化ガスが発生する硫黄泉ではなく硫酸泉であり、控訴人PI
PMが指摘する被控訴人403W製品のLEDチップの黒ずみや異物の付着は、単なる
はんだフラックスの飛び散りである。また、被控訴人403W製品のLEDチップには
10 若干の変色が認められるものの、樹脂表面は、もともと窪みのある初期形状を保っ
ていることから、樹脂の形状の変化により配光特性が変化しているとは合理的に推
認できない。
ウ 拡散カバーの経年による影響がみられないこと
被控訴人403W製品について、403W製品と拡散カバー部材が同一かつ未使用である
15 402W製品のカバー部材と交換した場合と、しなかった場合の4条件の下に半値幅等
の測定を行ったところ(以下「本件交換実験」という。)、各測定値は、拡散カバ
ーを交換した場合としなかった場合とで、半値幅等に有意な変化がなかった。すな
わち、被控訴人403W製品について、経年等によるカバー部材の劣化等による半値幅
の変化はなく、被控訴人の測定した各x値、y値及びパラメータ値は、初期値と異な
20 らないといえる。
(5) 控訴人PIPMは、本件各発明1及び本件各訂正発明1は、粒々感を感じる
という課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消できるが、単に拡
散性を高めただけでは、その副作用として光束が低下してしまい、ランプの照度が
低下してしまうという二律背反的な解決課題を解決するため、「光源一つの輝度分
25 布をパラメータとして採用し、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化する」という
高度な技術的思想を実現したとの特殊性があるとし、本件各発明1及び本件各訂正
発明1に含まれているパラメータを想到できず、被控訴人は本件各発明1及び本件
各訂正発明1を実施していないとして、先使用権の成立要件を欠くと主張する。し
かし、粒々感の解消という既存の課題とLEDの配置を狭めてこれを解決するとい
う課題解決原理が広く知られている中、官能試験の裏付けすらないまま、過度な拡
5 散性を排除したといった技術論が成り立つ余地はなく、製造方法の発明であれば、
控訴人PIPMが主張する各パラメータによって製造することの技術的意義も理解
できる余地があるとしても、物の属性としてのパラメータに関して、既存の403W製
品で既に実現されているのに、二律背反の課題が解決されていないと主張すること
は、論理矛盾である。物の発明として、403W製品に関する事業において、本件各発
10 明1及び本件各訂正発明1の技術的思想が本件特許権1の出願前に先行実施されて
いたことは明らかである。
(6) 403W製品に基づく先使用権の範囲について
「先使用権者が自己のものとして支配していた」先使用製品に具現された先使用
発明に関して、いかなる範囲で「同一性を失わない」と判断されるべきであるかに
15 ついては、公平説からは、対象となるべき特許の明細書等で公開されて真に価値を
有すべき発明といえる範囲と、技術常識に従い把握されるべき製品の設計思想の範
囲とを、当該特許の出願時の技術水準から比較対照した上で決すべきである。
本件各発明1の数値限定の発明特定事項とするパラメータ内に内包される測定値
が確認された先使用製品が存在する場合、原則として先使用の成否が問題となって
20 いる本件各発明1の発明特定事項であるパラメータ全域において、先使用発明とし
ての「同一性を失わない」との判断を前提とする法定通常実施権が成立するとした
上で、先使用製品の測定値を除いたり、含まない範囲の数値限定を行ったりするこ
とによる発明を区別する臨界的意義(技術的意義)を特許権者が主張・立証した場
合にのみ、実質同一発明であるという推定を覆すことを認めるのが相当である。
25 本件においては、403W製品は、被控訴人の商品ラインナップにおいて「超エコノ
ミータイプ」と位置付けられ、「エコノミータイプ」と位置付けられる402W製品よ
り、LED数を減少させ(99個←126個)、高価な反射シートを反射塗布膜に
変更し、実用性に問題のない範囲でコスト低減を図ったという設計思想が感得され
る製品である(乙138、297)。他方、本件特許権1の明細書の開示内容は貧
弱な内容であり、かつ、実用性もなく、データ間の不整合が確認できる内容で、臨
5 界的意義がないパラメータでしかない以上、公平説の観点から技術的意義のないパ
ラメータに特有の技術的思想を肯定することはできない。
そもそも、控訴人PIPMが主張するy値とx値の関係は、単なる隣り合うLE
D1個当たりの輝度分布の重なり合わせを調整するための信頼性のない指標にすぎ
ず、理論的にはy値自体が単なるLEDからカバー部材の内面までの距離Lに比例
10 してLED1個当たりの輝度分布を把握し得るものであって、L値を調整すること
でy値も調整されるものであるから、L値を調整するという設計指針も隣り合うL
ED1個当たりの輝度分布の重なり合わせを調整するという意味での技術思想が既
に確立されていたものである。
そして、402W製品において、y/x=1.71が実現されていた以上、y/x=
15 1.34までの間、実用性を保ちつつ、適宜にLEDピッチ数を変更して製品開発
を行ったことが、その商品ラインナップからも理解できる。
さらに、検証対象となった403W製品は、当該製品内のLED99個のうち、左側
L18からL50までの間のy/xの値は1.272~1.363と測定されるも
のであって、同時期に井づづやより引き上げた2本のうち、未分解のものは、同1.
20 326~1.381と測定されるものであり、同一製品でもばらつきがある。井づ
つやから新たに回収した22本を含むRAD-403Wの24本につきそれぞれ2か所で測
定した各測定結果に基づくy/xの標準偏差(σ)は、0.0187と算定される
ことから、想定上の平均値±3σ(理論上、99.7%が収まる範囲)は、1.2
829~1.3950と理解されるものである(乙388)。
25 加えて、403W製品及び402W製品を含むホワイトチューブだけでなく、クラーテ製
品 ① 及び リ コ ー が 製 造 、 販売 等 し た グ ロ ー 管 用の 製 品 CLARTE PG40N/23A ( 以 下
「クラーテ製品②」という。)のように、当時、市場に流通していた直管型LED
ユニットにおいて、y=1.22x、y=1.208~1.278xだった事実も
示しており、他製品であっても、このような市場で流通のパラメータは技術水準か
ら同一発明の範囲と常識的に把握されるべき数値範囲であると理解される。
5 したがって、403W製品が、実用性のある均一光を保ち、実用性のある明るさを確
保した製品として「超エコノミータイプ」という商品ラインナップで事業展開され
ていた以上、反覆実施可能な発明として完成していることは明らかであり、特殊な
パラメータについては何らの相違点にもならないものであり、既に本件特許権1に
係る各発明のパラメータを横断すべき商品ラインナップが存在していながら、先使
10 用として成立する発明の範囲が「x値=11.7、y値=15.7に限定される」
とする控訴人PIPMの主張は、相当ではない。
(控訴人PIPMの主張)
以下のとおり、被控訴人403W製品の現在における輝度均斉度の測定は、本件優先
日1時点の403W製品の初期値を示すものではない。したがって、本件優先日1の際、
15 403W製品が、本件各発明1並びに本件訂正発明1-1、1-17及び1-18に規
定するパラメータを充足するという前提自体が成立しない。
(1) 経年変化
被控訴人の主張を前提とすると、被控訴人403W製品は、井づつやに納品されてか
ら被控訴人が回収するまで約6年80日間稼働しており、その使用時間は、1日当
20 たり16時間と仮定した場合、約3万6320時間に及ぶ。
JIS規格によると、一般照明用LEDモジュールの寿命に関しては、「LEDモ
ジュールが点灯しなくなるまでの総点灯時間、又は全光束が点灯初期に測定した値
の70%に下がるまでの総点灯時間のいずれか短い時間」とされている。また、一
般的に、LED照明の分野では、約4万5000時間程度点灯した場合には、光出
25 力の初期値が70%になるものとされており、光出力の低下の程度は、使用期間が
長期化することに伴い大きく減少する。これを被控訴人403W製品に適用すると、そ
の光出力は、少なくとも76.3%まで減少していることになる。
そうすると、被控訴人403W製品は、JIS規格において製品寿命とされている光出
力70%に近い値を取っており、少なくとも、経年劣化により輝度分布を含む光特
性が大きく異なっている。後記(2)で述べるように、カバー部材についても劣化が
5 生じており、被控訴人が主張するように、単体のLEDの配光角度データをもって
カバーを含むランプの状態での光学特性を論じることは無意味であり、技術的に不
適切である。
(2) 使用環境による影響
井づつやは温泉宿であり、その温泉はいずれも硫黄成分を含むものであることか
10 ら、施設内には硫化水素(硫化ガス)が発生している。このような環境下では、L
ED製品は、実際の使用状況によっては設計値より極めて速く劣化が進むとされて
おり、かつ、通常の使用環境では想定できないような異常な劣化モードに陥るとい
う報告もある。このため、被控訴人403W製品については、少なくともこのような使
用環境を考慮に入れて、現時点における測定値の信用性を検討する必要がある。
15 また、硫化ガスは、家電製品に用いられる金属表面に腐食生成物をもたらすこと
が知られている。LEDは、その基本的構造として、リードフレームに銅合金素材
やニッケルメッキ、銀メッキ等が用いられるなどしているが、硫化ガスの存在によ
り光特性が変化することが知られている。実際に、被控訴人403W製品についても、
特殊環境等の要因によるものと推定されるLEDチップの黒ずみや異物の付着等が
20 確認できる。
加えて、LEDランプのカバー部材には、通常プラスチック樹脂が用いられてい
るが、プラスチックについても、硫化ガスの影響を受け劣化することが知られてい
る。このため、硫化ガス発生地域における長時間の使用を前提とした場合、光の透
過率や拡散性が初期値と同様であることはあり得ない。
25 (3) 経年によるLEDチップを覆うシリコン樹脂の劣化
上記(2)の使用環境に関する事情に加え、LEDランプにおいては、使用及び保
管によるLEDを覆う樹脂の劣化(凹形状への変化及び黄変)が生じることが知ら
れている。このような経時変化により、LEDから出射される光の輝度分布の半値
幅は、初期値と使用継続後とでは、少なくとも初期値の方が1.454倍大きいも
のと容易に推測し得る。
5 被控訴人は、現時点における測定を基に、403W製品のパラメータ値をy=1.34xと
主張するが、上記に基づきこれを初期値に置き換えれば、その値はy=1.95xとなる。
また、被控訴人測定の403W製品のLED1個当たりの50%ビーム開き角は、114
度及び115度であり、本来のLEDのランバーシアン配光である120度とは有
意な差があることから、経年劣化が根拠づけられる。
10 (4) 本件交換実験について
402W製品と403W製品の各カバー部材について、その厚みや拡散材の濃度を含めた
カバー部材全体の構成が同一であるかは不明である。むしろ、402W製品と403W製品
では搭載されるLEDチップの個数が3割も異なることを踏まえると、粒々感をな
くすためのカバー部材はそれぞれの製品において最適化されていたはずであるから、
15 両者は異なるものと推測される。そうである以上、本件交換実験の結果をもって、
被控訴人403W製品のカバー部材に経年劣化が存在しないと考えることはできない。
また、LEDランプは工業製品である以上、402W製品も403W製品も、その特性につ
いて不可避的に一定のばらつきが存在するはずである。このようなばらつきを無視
した本件交換実験の結果は、被控訴人が本件交換実験の対象とした具体的製品の交
20 換差が少なかったという偶然の事情が存在したことを意味するにすぎない。
上記のとおり、LED封止体に用いられる樹脂の劣化によるLEDの光は出射角
が狭くなること等を考慮するならば、少なくとも、403W製品の半値幅の初期値は、
y=1.95xの値を採っていたと考えられる。
(5) 被控訴人は、本件各発明1及び本件各訂正発明1を実施していないこと
25 先使用権の要件は、「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし 」
たことであるところ、特許法79条における「発明」とは、「自然法則を利用した
技術的思想の創作のうち高度のもの」(同法2条1項)をいうが、403W製品は、x
値及びy値の関係性を特定する技術的思想が明示的ないし具体的にうかがわれるも
のではなく、本件各発明1及び本件各訂正発明1の技術的思想が存在しない以上、
被控訴人は、「その発明」をしたものとはいえず、403W製品に基づき先使用権が発
5 生することはあり得ない。
特に、被控訴人は、本件各発明1(本件各訂正発明1)の、「ランプの光拡散性
を高めれば粒々感を解消できるが、単に拡散性を高めただけでは、その副作用とし
て光束が低下してしまい、ランプの照度が低下してしまう」という二律背反的な解
決課題と、「光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制する」という目的のため
10 に直線近似論に基づき光源一つの輝度分布をパラメータ化したという特殊な発明を
具体的に認識したものではない。
(6) 403W製品に基づく先使用権の範囲について
先使用権の範囲については、「先使用権者が自己のものとして支配していた発明
の範囲」かが問題となるところ、403W製品等から、本件発明1のパラメータx、y
15 のいずれか、又は二律背反的な課題を解決すべきy/xの技術的意義が読み取れな
いのであれば、先使用権は成立しない。
仮に403W製品に基づき先使用権による通常実施権が発生するとしても、403W製品
により「具現された発明」と同一性を失わない範囲に限られ、その範囲は、あくま
でも403W製品のx値=11.7、y値=15.7により算出されるy=1.34x
20 に限定される。
また、被控訴人が主張する403W製品を含む製品開発の方向性を考慮するとしても、
同じシリーズ品である402W製品はy=1.69xであり、y/x=1.49(輝度
均斉度95%)を上回っており、被控訴人が輝度均斉度を高める方向で開発を進め
ていたのであって、被控訴人は、少なくとも403W製品よりも輝度均斉度を低下させ
25 る方向での開発を進めることはあり得ず、y=1.34xを下限として、1.34
x≦y≦1.49xの範囲となる。
さらに、403W製品のばらつきのデータを踏まえたとしても、各被控訴人製品にお
けるy/xの値は、403W製品のばらつきの範囲内に含まれるようなものではなく、
各被控訴人製品は先使用権の範囲内に含まれない。
被控訴人は、本件発明のy値はLEDからカバー部材の内面までの距離L値に依
5 存し、y値とL値は同義であると主張するが、L値はy値を構成する多種多様な要
素の一つにすぎず、本件発明は個々のパラメータの変動を考えることなくオールイ
ンワンのパラメータとして、y値、更にはy/xの値を評価することにより、輝度
均斉度を制御することを実現しているであって、y値をL値と同義であるとする被
控訴人の主張は誤りである。
10 12 無効理由8(403W製品の公然実施による新規性欠如)の有無(争点11)
(被控訴人の主張)
(1) 優先日が繰り下がること
本件特許権1に係る特許出願は、特願2012-100405号の国内出願を国内優先権主
張の基礎出願とする国際出願であるから、その基礎とされた先の出願の願書に最初
15 に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)に記載のない事項は、新規事項
の追加のあった平成25年3月5日を基準として新規性が判断される。
本件明細書1の「この実験では、LED素子を5mm間隔で実装したCOB型のLED
モジュール10と、ガラス管の筐体20とを用いている。なお、上記の付着量は、直管
40Wタイプ代替を想定した直管形LEDランプの場合、すなわちガラス管の長さが
20 約1170mm、内径直径が約25mmの場合である。」(【0092】)との記載は、当初明細
書に記載されておらず、平成25年3月5日の本件特許権1に係る特許出願の際に
なり初めて本件明細書1に追記された記載である。
本件各発明1は、上記記載があって初めて、筐体20の表面の拡散膜を形成する
際の拡散材(炭酸カルシウム)について拡散膜の厚みが特定できる記載になってい
25 るから、当該記載の追記は新規な技術的事項の追加に当たる。
したがって、本件各発明1及び本件各訂正発明1の特許性判断の基準日は、国際
出願の日である平成25年3月5日である。
(2) 公然実施
前記11(被控訴人の主張)(2)アの事情を踏まえると、本件各発明1は、いず
れも上記基準日前に日本国内において公然実施をされた発明である。このため、上
5 記各発明に係る本件特許1は、特許法29条1項2号に違反してされたものである
から、特許無効審判により無効にされるべきものである。そうである以上、控訴人
PIPMは、被控訴人に対し、上記各発明に係る本件特許権1を行使することはで
きない。
また、本件訂正発明1-1、1-17及び1-18については、本件訂正1によ
10 っても無効理由が解消されていないことから、訂正の再抗弁は成立しない。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 本件明細書1【0092】の記載は、新規事項の追加に当たらない。したがって、
本件特許1の特許性判断の基準日は繰り下がらない。
(2) 前記11(控訴人PIPMの主張)のとおり、平成25年3月5日時点で
15 403W製品が本件各発明1並びに本件訂正発明1-1、1-17及び1-18に規定
するパラメータを充足するという前提自体が成立しない。
13 無効理由9(クラーテ製品②の公然実施による新規性欠如)の有無(争点
12)
(被控訴人の主張)
20 (1) 本件訂正発明1-20の「基台の上に実装」(構成要件1-20D’)につき、
基板を介して配置することを含むと解した場合、リコーは、以下のとおり、本件優
先日1以前に、本件訂正発明1-20と同一の構成となるクラーテ製品②を製造、
販売等して実施していたことになる。すなわち、本件訂正発明1-20は、本件優
先日1前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、当該発明に係る特
25 許は、特許法29条1項2号に違反して無効である。すなわち、本件訂正発明1-
20については、本件訂正1によっても無効理由が解消されていないことから、訂
正の再抗弁は成立しない。
(2) 公然実施
リコーは、遅くとも平成24年1月にはクラーテ製品②を製造、販売し、同社の
5 カタログにも掲載していた。
また、被控訴人は、令和元年9月12日にオークションによりグロー管用クラー
テ製品を入手したところ、同製品(以下「被控訴人クラーテ製品②」という。)に
は、平成24年3月に製造されたことを裏付ける「1203」というシリアル番号が印
字されている。
10 このように、クラーテ製品②に係る発明(以下「クラーテ発明②」という。)は、
本件優先日1前に公然実施をされていた。
(3) クラーテ発明②の構成
クラーテ発明②の構成は、以下のとおりである。
1-20a’12 光拡散性の樹脂製カバー部材と断面半円状の外殻部材とからなる長尺
15 状の筐体と、
1-20b’12 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-20c’12 前記筐体内に配置された平板状部材及び前記外殻部材とよりなる長尺
状の基台と、
20 1-20d’12 前記基台の上に載置されたLED基板の上に実装された複数の容器と、
を備えたランプであって、
1-20e’12 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-20f’12 前記筐体の一部である光拡散部である前記樹脂製カバー部材がポリカ
ーボネートからなる直管であり、
25 1-20g’12 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.208xの関係である、
1-20h’12 LEDランプ。
クラーテ発明②の上記各構成は、本件訂正発明1-20の構成要件1-20A’~H
’にそれぞれ相当する。したがって、クラーテ発明②は、本件訂正発明1-20と同一
5 の発明である。
(4) 被控訴人クラーテ製品②の測定値が初期値と同等であること
被控訴人クラーテ製品②には、口金ピンが黒ずんでいるものも存在する。しかし、
口金ピンの黒ずみは単なる口金部分の酸化を示すだけであって、口金部分の抵抗値
が変動しても、本件訂正発明1-20のパラメータと関連し得るLEDの配光特性
10 には関係しない。実際、被控訴人クラーテ製品②のLED1個当たりの配光特性は、
同じくオークションで入手し、ほとんど未使用である被控訴人クラーテ製品①の配
光特性と同一と評価してよい測定値である。また、関連無効審判請求事件での検証
手続の結果においても、被控訴人クラーテ製品②のパラメータは、x値8.6mm、y値
10.39mm、y=1.208xであり、被控訴人が行った測定結果(以下「被控訴人測定値」
15 という。)と有意な差がなく、本件訂正発明1-20の構成要件1-20G’のパ
ラメータの範囲内に収まるものである。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 公然実施
クラーテ製品②の上市時期は明らかではない。
20 仮に被控訴人クラーテ製品②の製造日が平成24年3月であったとしても、本件
優先日1である同年4月25日まで僅か1か月程度である。LEDのような製品群
にあっては、当業者の経験則からしても、一定の数量を在庫として保管しておく可
能性が高いことから、製品製造後すぐ市場に出回るとは考え難い。
さらに、後記(2)のとおり、被控訴人測定値が初期値と等しいといえない点を措
25 くとしても、被控訴人クラーテ製品②の被控訴人測定値は、測定対象によって結果
に大きなばらつきが存在し、14本のうち12本は、本件訂正発明1-20の構成
要件1―20G’のパラメータを充足しておらず、その平均値も同パラメータを充
足していない。仮に僅か2本の被控訴人測定値が前記パラメータの範囲内にあった
としても、同製品に本件訂正発明1-20の技術的思想が具体的に表れているとは
いえない。
5 したがって、本件優先日1前にクラーテ発明②が公然実施をされていたとはいえ
ない。
(2) 経年変化
ア クラーテ製品②は定格時間が4万時間のところ、被控訴人の主張を前提とし
ても、被控訴人クラーテ製品②は、その25%に相当する1万時間もの長時間にわ
10 たり点灯していたものであるから、LEDの発光部や樹脂カバー等に経年劣化が生
じていると考えられる。また、被控訴人の主張を前提とすると、クラーテ製品②は
光触媒膜が採用されており、これが用いられていない製品と比べても、経年劣化に
よる特性の変化が更に不安定であるといえる。加えて、被控訴人クラーテ製品②に
は、使用されているピンが黒ずんでいるものが多く、このような外観からも、長時
15 間使用し劣化が相当進んでいるとみられる。さらに、同製品のランプマーク側の管
端部は黒ずみが激しく、その劣化具合からすると、同部分以外にも黒ずみが存在す
ると推認されるところ、このような黒ずみ部分の存在により、カバー全体の透過性
及び光拡散性が初期から変化し、半値幅(y値)に変化がみられることになる。
イ 被控訴人提出の証拠には、「電気工事屋さんが取り外して、ざっくりと中性
20 洗剤で管だけ拭きあげた状態」でオークションに出品した旨の記載がある。このよ
うな拭き上げにより、被控訴人クラーテ製品②の光触媒膜が剥がれ落ちたり、樹脂
カバーの光学特性が変化して、y値が変化した可能性がある。
ウ 以上によると、現在測定される被控訴人クラーテ製品②のy値が初期値と同
じとはいえない。
25 14 無効理由10(クラーテ製品①等を主引用例とする進歩性欠如)の有無
(争点13)
(被控訴人の主張)
(1) 主引用発明の公然実施
前記10及び13の各(被控訴人の主張)のとおり、リコーは、本件優先日1以
前に、クラーテ製品①及びクラーテ製品②(両者を併せて「クラーテ製品」といい、
5 クラーテ発明①とクラーテ発明②を併せて「クラーテ発明」という。)を製造販売
していた。クラーテ製品①とクラーテ製品②とは、実質的に、クラーテ製品②のカ
バー部材に光触媒機能が付与されている点に差異があるだけで、同じ構成の製品で
ある。
(2) 本件訂正発明1-1について
10 ア 本件訂正発明1-1と対比すべきクラーテ発明の構成
1-1a’13 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長尺
状の筐体と、
1-1b’13 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチッ
プと、
15 1-1c’13 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁性を有する光反射塗布膜と、
1-1d’13 前記筐体内に平板状部材のカバー部材側の面に絶縁性のサーマルテープ
を介して載置された長尺状のLED基板と、
1-1e’13 前記基板の上に実装された複数の容器と、
1-1f’13 前記基板を保持する金属製の前記平板状部材及び外殻部材と一体成形さ
20 れる基台と、
1-1g’13 を備えたLEDランプであって、
1-1h’13 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-1i’13 前記基台は、前記長尺状の底部を有するが、前記平板状部材の短手方向
の端部に第1壁部と第2壁部とを有さない、
25 1-1j’13 衝立状の第1壁部及び第2壁部は、前記底部の前記基板側に形成されて
いない、
1-1k’13 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したと
きに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの
発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす(クラーテ
製品①はy≒1.22x、クラーテ製品②はy≒1.208x)、
5 1-1l’13 LEDランプ
イ 一致点及び相違点
クラーテ発明と本件訂正発明1-1とを対比すると、クラーテ発明は、本件訂正発
明1-1の構成要件1―1A’、1―1B’、1―1D’~H’、1―1K’、1―1L’に相
当する構成を有するから、これらの点で両発明は一致する。他方、クラーテ発明の構
10 成は、本件訂正発明1-1の構成要件1―1C’、1―1I’、1―1J’に関して、以
下の3点で相違する。
(ア) 相違点1(構成要件1―1C’)
本件訂正発明1-1は、複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートを備え
るのに対して、クラーテ発明は光反射塗布膜として、白色塗料をLED基板表面に塗
15 布したものである。
(イ) 相違点2(構成要件1―1I’)
本件訂正発明1-1は、「第1壁部」と「第2壁部」とを有しているのに対して、
クラーテ発明はこれを有しない。
(ウ) 相違点3(構成要件1―1J’)
20 本件訂正発明1-1の第1壁部及び第2壁部は、底部の基板側に衝立状に形成され
ているのに対して、クラーテ発明はこれを有しない。
ウ 相違点1に係る構成の容易想到性について
相違点1に関して、LEDを用いたランプにおいて、ランプの光取り出し効率を向
上させるために、絶縁反射シートを用いるか、LED基板表面に光反射シートを設け
25 るかは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき設計事項であり、本件優先日1前の周
知技術といえる。
また、絶縁性の反射塗布膜の替わりに光反射シートを用いたことで光束に変化があ
り、また結果として得られる輝度均斉度に影響があるとしても、本件訂正発明1-1
のx値及びy値のパラメータには影響を与えない。
したがって、相違点1に係る構成につき、クラーテ製品の構成を本件訂正発明1-
5 1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できる。
エ 相違点2に係る構成の容易想到性について
(ア) 副引用発明としての乙300発明の適用
特開2011-96614号公報(乙300)は、その明細書及び図面によると、蛍光灯形の
LED照明装置であるLEDランプにおいて、複数個のLEDを一列設置しているア
10 ルミ製LED基板と、これを嵌合固定するアルミ製のLED基板基体とにより構成さ
れる放熱基板につき、「放熱基板205は、アルミ製の基板基体208と、前記基板基体208
の短手方向の一方の端部に設けられた基板レール10と、前記基板基体208の短手方向
の他方の端部に設けられた基板レール10とを有し」との構成を採る発明(以下「乙3
00発明」という。)を開示している。このうち、基板基体208の短手方向の両端部に
15 設けられた一対のレール10の壁体は、本件訂正発明1-1の第1壁部及び第2壁部に
相当する構成である。また、レール10の壁体の形状は、LEDを下方向に向け設置さ
れるLED基板209を保持する構成であると把握される。
他方、クラーテ発明において下向きに保持されるLED基板に関しても、基台に
これを固定する必要があるところ、クラーテ発明のLED基板を固定するネジ等の
20 構成に替えて、乙300発明の一対のレール10の形状の壁体を基台の短手方向の両
部に設けて、これを保持するとの構成を採ることは、同一の技術分野、課題の共通
性、作用・効果の共通性の観点から動機付けられている。
したがって、クラーテ発明に対し、乙300発明のレール10の形状の壁体を採用す
ることにより、相違点2に係る本件訂正発明1-1の構成とすることは、当業者にと
25 って容易に想到できる。
(イ) 副引用発明としての乙301発明の適用
特開2012-69297号公報(乙301)は、その明細書及び図面によると、直管と直管
内に設けられた複数のLEDモジュールが載置された基台とを接着材で接着して構成
されるランプにおいて、「基台30は、直管10の管軸方向に沿って、断面略凹字形状の
凹部33を有する下部側の部位と、前記下部側の部位の凹部33の短手方向の一方の端部
5 と垂直方向で略同じ位置から壁体が形成され、実装基板21の長辺端部(幅方向の端部)
の一方を固定するために形成された係止部32と、前記下部側の部位の凹部33の短手方
向の他方の端部と垂直方向で略同じ位置から実装基板21を載置するために形成された
壁体とを有し」との構成を採る発明(以下「乙301発明」という)を開示している。
このうち、「係止部32」は、本件訂正発明1-1の「壁部」に相当する。
10 他方、クラーテ製品のLED基板に関しても、左右に移動しないように、基台に
これを固定する必要があるところ、LED基板を固定するネジ等の構成に替えて、
乙301発明の係止部32の壁体を基台の短手方向の一端に設けると共に、他端でも
同様に係止部を設けることで、LED基板を保持するとの構成を採ることは、同一
の技術分野、課題の共通性、作用・効果の共通性の観点から動機付けられている。
15 したがって、クラーテ発明に対し、乙301発明の係止部32の形状の壁体を両端
部に採用することにより、相違点2に係る本件訂正発明1-1の構成とすることは、
当業者にとって容易に想到できる。
(ウ) 周知慣用技術の適用
LEDを用いたランプにおいて、基台が、長尺状の底部と、平板状部材の短手方向
20 の一方の端部に設けられた第1壁部と、平板状部材の短手方向の他方の端部に設けら
れた第2壁部とを有し、第1壁部及び第2壁部は、平板状部材の基板側に衝立状に形
成されたものとするか否かは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき事項であり、本
件優先日1前の周知技術において、適宜に選択すべき衝立状の形状が明確に示されて
いる。
25 したがって、以下の相違点3に係る構成の容易想到性を判断すれば、同時に相違点
2の容易想到性が判断でき、クラーテ発明に、上記周知技術を適用することにより、
相違点2に係る本件訂正発明1-1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到
できる。
オ 相違点3に係る構成の容易想到性について
上記エ(ウ)の事情に加え、クラーテ発明は、透光性のあるカバー部材を断面半円
5 状とする一方、透光性のない断面半円状の金属製の基台を有することから、前記8
(被控訴人の主張)(4)イと同様の理由により、クラーテ発明に乙293発明を適
用して、基台の短手方向の両端部側壁部分につき、第1壁部及び第2壁部として、
LEDの容器の発光面よりもカバー部材側に突出させ、これを衝立状に形成するこ
とは、両者の課題の共通性からその適用が動機付けられているといえる。したがっ
10 て、クラーテ発明に乙293発明を適用することにより、相違点3に係る本件訂正
発明1-1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できる。
(3) 本件訂正発明1-17について
ア 本件訂正発明1-17と対比すべきクラーテ発明①の構成
1-17a’13 LEDランプを備える照明装置であって、
15 1-17b’13 前記ランプは、
1-17c’13 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長
尺状の筐体と、
1-17d’13 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
20 1-17e’13 前記LEDチップを発光させるための電力として、インバータ用電子
安定器からの高周波電力を受ける口金と、を備え、
1-17f’13 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
の発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす(クラー
25 テ製品①はy≒1.22x、クラーテ製品②はy≒1.208x)、
1-17g’13 照明装置。
イ 一致点及び相違点
本件訂正発明1-17とクラーテ発明①とを対比すると、クラーテ発明①は、本件
訂正発明1-17の構成要件1-17A’~D’、1-17F’、1-17G’に相当する
構成を有するから、これらの点で両発明は一致する。
5 他方、本件訂正発明1―17の構成要件1-17E’に関して、本件訂正発明1-1
7は、口金から受ける電力につき「商用電源からの交流電力又はLED点灯用電源か
らの直流電力」を受ける口金を備えるのに対し、クラーテ製品①は、器具入力電圧が
蛍光灯用のインバータ用電子安定器からの高周波電力を受ける口金を備えるものであ
る点で、両発明は相違する。なお、この相違は、x値とy値のパラメータには影響を与
10 えない。
ウ 相違点に係る構成の容易想到性
LEDは直流電力により駆動されるのが技術常識であり、従前のインバータ用の蛍
光灯の照明器具(ソケット)に取り付けるクラーテ製品①においても、インバータ用
電子安定器からの高周波電力を口金から受け取っても、内部で直流電力に変換してか
15 ら、これをLEDに供給する構成になることは、当然の前提である。
したがって、LEDランプの筐体内部に商用電源からの交流電力を直流電力に変換
すべき装置を設け、商用電源からの交流電力を口金から受けるようにするか、外部に
専用のLED点灯用電源を設け、一旦、商用電源からの交流電力を外部で直流電力に
変換してから口金が直流電力を受けるようにするかは、当業者が適宜に行えば足りる
20 設計事項にすぎない。
そうである以上、クラーテ発明①にこのような設計変更を施すことで相違点に係る
本件訂正発明1-17の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できる。
エ クラーテ発明②との関係
クラーテ発明②は、蛍光灯用安定器を経由した交流電力により発光させる構成であ
25 り、これを本件訂正発明1-17の構成要件1-17E’の「商用電源からの交流電力」
とみれば、クラーテ発明②と本件訂正発明1-17に相違点はない。
クラーテ発明②が蛍光灯用安定器を経由しているため商用電源そのものではないと
して、これを相違点とした場合は、クラーテ発明①の場合(上記ア~ウ)と同様であ
る。
(4) 本件訂正発明1-18について
5 ア 本件訂正発明1-18と対比すべきクラーテ発明の構成
1-18a’13 LED ランプを備える照明装置であって、
1-18b’13 前記ランプは、
1-18c’13 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長
尺状の筐体と、
10 1-18d’13 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-18e’13 前記筐体内に配置された前記平板状部材及び外殻部材とよりなる長尺
状の基台と、
1-18f’13 前記基台の上に載置されたLED基板の上に実装された複数の容器と、
15 1-18g’13 前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の
口金と、を備え、
1-18h’13 前記一対の口金の両方から前記LEDチップを発光させるための電力
を受け、
1-18i’13 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
20 1-18j’13 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
の発光中心間隔をx(mm)とすると、1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす(クラー
テ製品①はy≒1.22x、クラーテ製品②はy≒1.208x)、
1-18k’13 照明装置。
25 イ 一致点及び相違点
本件訂正発明1-18とクラーテ発明とを対比すると、クラーテ発明は、本件訂正
発明1-18の構成要件1-18A’~G’、1-18I’~K’に相当する構成を有す
るから、これらの点で両発明は一致する(ただし、構成要件1-18F’については、
「実装」につき、基板を介して配置することを含むと解した場合。。
)
5 他方、本件訂正発明1-18の構成要件1-18H’に関して、本件訂正発明1-1
8が口金の一方から電力を受ける(以下「片側給電」という。)のに対し、クラーテ
発明は、両方から電力を受ける(以下「両側給電」という。)点で、両発明は相違す
る。
ウ 相違点の容易想到性
10 LED素子に直流電力を供給する必要があるのは技術常識である。また、片側給電
の方法は、631N製品等でも採用されているとおり、本件優先日1時点で既に周知慣用
技術であった。したがって、片側給電か両側給電かは、単なる設計事項である。
また、クラーテ発明につき、両側給電から片側給電に変更することについて、阻害
事由はない。
15 以上によると、クラーテ発明にこのような設計変更を施すことで相違点に係る本件
訂正発明1-18の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できる。
(5) 本件訂正発明1-20について
ア 本件訂正発明1-20と対比すべきクラーテ発明①の構成
1-20a’13 光拡散性の樹脂製カバー部材と、断面半円状の外殻部材とからなる長
20 尺状の筐体と、
1-20b’13 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチ
ップと、
1-20c’13 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
1-20d’13 前記基台の上に載置されたLED基板の上に実装された複数の容器と、
25 を備えたランプであって、
1-20e’13 前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
1-20f’13 前記筐体は、ポリカーボネートからなる前記カバー部材と、前記半円
状の外郭部材からなる直管であり、
1-20g’13 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
ときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップ
5 の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.22xの関係である、
1-20h’13 LED ランプ。
イ 一致点及び相違点
本件訂正発明1-20とクラーテ発明①を対比すると、クラーテ発明①は、本件訂
正発明1-20の構成要件1-20A’~F’、H’に相当する構成を有するから、これ
10 らの点で両発明は一致する(ただし、構成要件1-20D’については、「実装」に
つき、基板を介して配置することを含むと解した場合。。
)
他方、本件訂正発明1-20の構成要件1-20G’に関して、クラーテ発明①の構
成においてはy≒1.22xであり、1.09x≦y≦1.21xの関係を満たすものではない点で、
両発明は相違する。
15 ウ 相違点の容易想到性
上記相違点に係るクラーテ発明①の構成につき本件訂正発明1-20の構成とする
ことが当業者にとって容易に想到し得ることは、前記8(被控訴人の主張)(4)と同
様である。
エ クラーテ発明②について
20 前記13(被控訴人の主張)(3)のとおり、本件訂正発明1-20の構成とクラ
ーテ発明②の構成に相違点はない。仮に相違点がある場合は、クラーテ発明①の場
合(上記ア~ウ)と同様である。
(6) 小括
以上のとおり、本件各訂正発明1は、その優先日前に公然実施をされた発明であ
25 るクラーテ発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠
く。したがって、本件各訂正発明1は、本件訂正1により無効理由を解消できてい
ないことになるから、訂正の再抗弁は認められない。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 本件訂正発明1-1について
ア 本件訂正発明1-1とクラーテ発明の相違点が、被控訴人が主張する相違点
5 1~3であることは認める。
イ 相違点1について
LEDランプにおいて、ランプの光取出し効率を向上させるために絶縁反射シー
トを用いることが当業者にとって周知技術であったとはいえない。
また、クラーテ製品は、蛍光灯用の器具本体を使用したままLEDランプに取替
10 可能とする製品であるところ、顧客に対し、蛍光灯とほぼ同じ明るさで消費電力と
CO2 を削減できることを訴求している。絶縁反射シートは高価な部材であるところ、
クラーテ製品の構成を白色塗布膜から絶縁反射シートに変更することは、無用なコ
スト増加につながり、取替コストを削減しようとするクラーテ製品の目的に反する。
したがって、クラーテ製品の白色塗布膜から絶縁反射シートに変更することには阻
15 害事由が存在する。
ウ 相違点2及び3について
上記のとおり、クラーテ製品は、蛍光灯用の器具本体を使用したままLEDラン
プに取替可能とする製品である。もっとも、蛍光灯は配光角が360度であり、天
井まで明るく照らすものである一方、クラーテ製品が採用する直管形LEDは、一
20 般的に配光角が狭く天井が暗くなりやすいという課題を有しており、単に蛍光灯を
LEDに置き換えた場合には、使用者に天井が暗いという違和感を生じさせていた。
そこで、LEDランプにおいても一定以上の天井の明るさを確保するために、照明
工業会で規格が設けられている。また、LEDランプを用いた場合でも蛍光灯と同
様に天井面を広く照らしたいというメーカーによる訴求も、多数存在していた。実
25 際のクラーテ製品においても、照射角度が240度という通常のLEDランプより
も広角配光の設計がされている。このような広角の配光を実現するために、クラー
テ製品は、基板の側面に何ら障害物を設けない設計を敢えて採用している。仮にク
ラーテ製品の基板の側面に壁部が設けられた場合、LEDチップから出射される光
は壁部で遮られ、天井や壁に対する明るさを減殺することになるため、クラーテ製
品は、あえて壁部を設けない構造を採用しているのであり、これに壁部を設けるこ
5 とには阻害事由がある。同様の事情から、クラーテ発明に被控訴人が主張する副引
用例の発明を適用する動機付けは存在しない。
したがって、相違点2及び3に係る構成について、クラーテ発明に各副引用例を
適用することで本件訂正発明1-1の構成とすることについて、当業者は容易に想
到し得たものではない。
10 (2) 本件訂正発明1-17について
被控訴人が主張する相違点の存在と内容は認める。
クラーテ製品は、工事をすることなく蛍光ランプからLEDランプに置き換える
ことが可能な製品であり、リコーは、この点を消費者に訴求しているところ、同製
品について蛍光ランプ用安定器を使用しない構成に置き換える場合、同製品に別途
15 商用電源からの交流電力等を受ける口金その他これに付随する装置を設ける必要が
あり、その際には工事費用等がかかる。したがって、敢えて商用電源からの交流電
力を受ける口金に変更することは、クラーテ発明の目的に反するものである以上、
動機付けがなく、むしろ阻害事由が存在する。
(3) 本件訂正発明1-18
20 被控訴人が主張する相違点の存在と内容は認める。
両側給電であるクラーテ発明の構成について、片側給電に変更する場合、蛍光灯
インバータ安定器の撤去と照明器具の工事が必要となる。これは、工事をすること
なく蛍光灯器具から蛍光管を外してLEDランプに取り替えるだけで使用できるこ
とを消費者に訴求するクラーテ発明の目的に反する。
25 したがって、クラーテ発明について両側給電を片側給電に変更することには阻害
事由が存在するから、相違点に係る構成について、クラーテ発明に基づき本件訂正
発明1-18の構成を当業者が容易に想到し得るものではない。
(4) 本件訂正発明1-20について
ア クラーテ発明①について
被控訴人が主張する相違点の存在と内容は認める。
5 パラメータに関する相違点について容易想到性がないことは、前記8(控訴人P
IPMの主張)(2)のとおりである。
イ クラーテ発明②について
前記13(控訴人PIPMの主張)のとおり、クラーテ発明②は公然実施性及び
被控訴人測定値の正確性に問題があり、その構成を特定し得ない。
10 その点を措くとしても、被控訴人測定値の平均値はy=1.239xであり、本件訂正発
明1-20のパラメータの範囲に含まれておらず、相違点が存在する。パラメータ
に関する相違点に容易想到性がないことについては、前記8(控訴人PIPMの主
張)(2)のとおりである。
15 本件訂正1の適法性(本件訂正発明1-20関係)(争点14)
15 (控訴人PIPMの主張)
本件訂正1後の請求項20は、x及びyの関係について、本件訂正1前の請求項1
等で「1.09x≦y」とされていたものを、本件訂正1前の請求項2等の「1.21x≦y」
を根拠に、「1.21」との上限値を規定するものにすぎない。
したがって、本件訂正1後の請求項20における「1.09x≦y≦1.21x」は、本件
20 明細書1に開示されているに等しい事項であり、特許請求の範囲を拡張するもので
はない。
(被控訴人の主張)
本件訂正1のうち、請求項20の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は
変更する訂正であり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記
25 載した事項の範囲内の訂正ではない。
すなわち、本件訂正発明1-20は、「y≦1.21x」の関係を満たすという構成が
追加されているが、本件明細書1には、上記関係を直接示す記載は見当たらない上、
本件訂正1前の従前の請求項にもその旨の特定はない。また、「y≦1.21x」という
上限値の追加は、明細書に明記されている「y≧1.21x」の技術的意義と逆の発明に
訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を変更するものである。
5 このため、本件訂正1は、特許法134条の2第9項、126条5項及び6項に
適合せず、訂正要件を満たさない。したがって、本件訂正発明1-20に係る訂正
の再抗弁は認められない。
16 再訂正による訂正の再抗弁(争点15)
(控訴人PIPMの主張)
10 (1) 控訴人PIPMは、当審において、本件訂正を更に再訂正する旨の主張をし
た(当審において主張される訂正を「本件再訂正」といい、本件再訂正後の発明を
「本件再訂正発明1-1」などといい、併せて「本件各再訂正発明」という。)。
(2)ア 控訴人PIPMは特許権者として、本件特許権1について無効審判事件
が係属中であるため、訂正請求が制限されている。控訴人PIPMは、請求項1、
15 3、16、17及び18について、次のとおり訂正を予定している(下線部分が訂
正事項である。)。
【請求項1】
光拡散部を有する長尺状の筐体と、
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、
20 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、
前記筐体内に配置された長尺状の基板と、
前記基板の上に実装された複数の容器と、
前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、
前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
25 前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられ
た第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されて
おり、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得ら
れる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間
5 隔をx(mm)とすると、
1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす、
ランプ。
【請求項3】
光拡散部を有する長尺状の筐体と、
10 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、
前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと、を備えたランプであ
って、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得ら
れる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間
15 隔をx(mm)とすると、
1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす、
ランプ。
【請求項16】
光拡散部を有する長尺状の筐体と、
20 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、
前記筐体内に配置された長尺状の基板と、
前記基板の上に実装された複数の容器と、
前記基板を保持する金属製の基台と、を備えたランプであって、
前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
25 前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の端部に設けられ
た第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部とを有し、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されて
おり、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得ら
れる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間
5 隔をx(mm)とすると、
1.29x≦y≦1.49xの関係を満たし、
前記筐体は、ポリカーボネートからなる直管である、
ランプ。
【請求項17】
10 ランプを備える照明装置であって、
前記ランプは、
光拡散部を有する長尺状の筐体と、
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、
前記LEDチップを発光させるための電力として、商用電源からの交流電力又は
15 LED点灯用電源からの直流電力を受ける口金と、を備え、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得ら
れる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間
隔をx(mm)とすると、
1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす(但し、x=11.7、y=15.
20 7の場合を除く)、
照明装置。
【請求項18】
ランプを備える照明装置であって、
前記ランプは、
25 光拡散部を有する長尺状の筐体と、
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、
前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
前記基台の上に実装された複数の容器と、
前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の口金と、を
備え、
5 前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させるための電力を受け 、
前記複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装され、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得ら
れる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間
隔をx(mm)とすると、
10 1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす(但し、x=11.7、y=15.
7の場合を除く)、
照明装置。
イ 原判決は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18との関係
で、403W製品の測定値がx=11.7、y=15.7であることを認定している。
15 この点に関し、403W製品に基づく先使用権が成立せず、また、仮に403W製品に基づ
く先使用権が認められたとしても、その範囲が「x=11.7、y=15.7」の
値に限定されることは、既に主張したところである。
控訴人PIPMは、本件訂正発明1-17及び同1-18発明に関し、「x=1
1.7、y=15.7」について、いわゆる除くクレームによる特許請求の範囲か
20 ら除外しており、これにより403W製品は、同訂正発明の構成要件を満たさないこと
が明らかとなったので、先使用権の成立は否定され、また、仮に無効理由8(403W
製品の公然実施による新規性喪失)が問題となったとしても、無効理由は存在しな
い。
ウ 次に、本件訂正発明1-1、1-3、1-16及び1-17については、y
25 /xの下限値を1.29としている。
原判決は、無効理由等との関係では、403W製品に基づく先使用権の成否(争点1
0)及びクラーテ製品②の公然実施による新規性欠如の有無(争点12)しか判断
していないが、仮に控訴審において他の無効理由が審理されたとしても、上記の訂
正によって、被控訴人が主張する引用例のx値及びy値については、いずれも上記
各訂正発明のy/xの範囲外となり無効理由が解消されている。
5 (3) 本件再訂正発明1-1、1-3、1-16、1-17、1-18の技術的範
囲に属する被控訴人製品
本件再訂正により、本件再訂正発明1-1、1-3、1-16及び1-17の技
術的範囲に属する被控訴人製品は、次のとおりである。
y=αx
被告製品1 y=1.40x
被告製品2 y=1.36x
被告製品3 y=1.46x
被告製品4 y=1.44x
被告製品5 y=1.25x
被告製品7 y=1.24x
被告製品8 y=1.20x
被告製品9 y=1.29x
被告製品10 y=1.20x
被告製品11 y=1.51x
被告製品12 y=1.41x
被告製品13 y=1.59x
被告製品14 y=1.59x
被告製品15 y=1.78x
被告製品16 y=1.72x
10 また、本件再訂正により、本件再訂正発明1-18の技術的範囲に属する被控訴
人製品は、次のとおりである。
y=αx
被告製品1 y=1.40x
被告製品2 y=1.36x
被告製品3 y=1.46x
被告製品4 y=1.44x
被告製品5 y=1.25x
被告製品7 y=1.24x
被告製品8 y=1.20x
被告製品9 y=1.29x
被告製品10 y=1.20x
被告製品11 y=1.51x
被告製品12 y=1.41x
被告製品13 y=1.59x
被告製品14 y=1.59x
被告製品15 y=1.78x
被告製品16 y=1.72x
(被控訴人の主張)
(1) 控訴人PIPMによる本件再訂正による訂正の抗弁の主張は時機に後れたも
5 のであって、訴訟の解決を遅延させることが明らかであるから、時機に後れた攻撃
防御方法として却下すべきである。
(2) 403W製品に認められるべき先使用の抗弁が成り立つ範囲は、控訴人PIPM
の主張に基づけば、臨界的意義のない特殊パラメータの細分化(明細書に全く記載
のないパラメータである。)であるにもかかわらず、本件特許権1に係る各発明全
10 てに及ぶから、訂正の再抗弁の要件を充足していない。
17 損害額(争点16)
(控訴人PIPMの主張)
(1) 被控訴人製品1~5及び7~16について(本件特許権1に対する侵害)
ア 本件特許権1を侵害する侵害品全体の売上高は、少なくとも6億円である。
5 これを被控訴人製品1~3及び7~16に均等に割り付けると、各被控訴人製品の
推計年間売上高は、それぞれ4615万3846円となる。ただし、被控訴人製品
15及び16は、端数調整のため4615万3847円となる。
イ 被控訴人製品1~3及び7~16について
平成27年1月~平成29年1月の間の被控訴人製品1~3及び7~16の販売
10 により控訴人PIPMが受けるべき金銭の額(特許法102条3項)は、それぞれ
480万7692円である。
・被控訴人製品1~3及び7~14について
\46,153,846/年(売上)*0.05(実施料率)*25/12年(H27.1~H29.1)
=\4,807,692
15 ・ 被控訴人製品15及び16について
平成27年1月~平成29年1月の間の被控訴人製品15及び16の販売により
控訴人PIPMが受けるべき金銭の額は、それぞれ480万7692円となる。
\46,153,847/年(売上)*0.05(実施料率)*25/12年(H27.1~H29.1)
=\4,807,692
20 ウ 被控訴人製品4及び5
被控訴人は、遅くとも平成26年8月1日から被控訴人製品4及び5の製造、販
売等を行っており、被控訴人製品4及び5の年間売上高は、それぞれ少なくとも2
億円と推計される。
したがって、被控訴人製品4及び5の製造、販売等による本件各発明1及び本件
25 各訂正発明1の実施に対し、控訴人PIPMが受けるべき金銭の額は、それぞれ少
なくとも2500万円である。
\200,000,000/年(売上)*0.05(実施料率)*30/12年(H26.8~H29.1)
=\25,000,000
(2) 被控訴人製品6について(本件特許権5に対する侵害)
被控訴人は、遅くとも平成28年8月1日から被控訴人製品6の製造、販売等を
5 行っており、その年間売上高は少なくとも15億円と推計され、被控訴人製品6の
製造、販売等による本件発明5の実施に対して、控訴人PIPMが受けるべき金銭
の額(特許法102条3項)は、3750万円である。
\1,500,000,000/年(売上)*0.05(実施料率)*6/12年(H28.8~H29.1)
=\37,500,000
10 (3) 小括
以上によると、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権1及び5の侵害
の不法行為に基づき、少なくとも合計1億4999万9996円の損害賠償請求権
を有するところ、このうち1億円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日
(平成29年3月1日)から支払済みまで改正前の民法所定の年5%の割合による
15 遅延損害金の支払を求める。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件明細書1の記載
20 (1) 本件明細書1には、次の記載がある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ及び照明装置に関し、例えば、発光ダイオード(LED:
Light Emitting Diode)を用いた直管形のLEDランプ及びこれを備えた照明装置
25 に関する。
【背景技術】
【0004】
LEDランプにおいて、LEDは、LEDモジュールとして構成されている。L
EDモジュールには、表面実装型(SMD:Surface Mount Device)又はCOB型(Chip
On Board)等がある。SMD型のLEDモジュールは、樹脂成形された非透光性容器
5 (キャビティ)の中に実装されたLEDチップが蛍光体含有樹脂によって封止され
たパッケージ型のLED素子を用いたものであり、当該LED素子を基板の上に複
数実装することで作製できる。一方、COB型のLEDモジュールは、基板上に複数
のLEDチップ(ベアチップ)を直接実装して蛍光体含有樹脂によって封止するこ
とで作製できる。
10 【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LEDランプでは、LEDモジュールが筐体内に収納されている。LEDモジュ
ールは、一定間隔で並べられた複数のLED(LED素子やベアチップ)を有する。
この場合、LEDの並び方向に沿って発光輝度の高い領域(LEDが実装された部
15 分)と発光輝度の低い領域(LEDが実装されていない部分)とが繰り返して現れ
るので、LEDランプの光(照明光)には輝度差が生じる。特に、光源がLEDで
ある場合、LEDはランバーシアン配光であって放射角が比較的に狭いという特質
を有するので、上記の輝度差が大きくなる。このように、従来のLEDランプでは、
筐体を透過するLEDの光に輝度差が生じるので 、ユーザに光の粒々感(以下、
20 「粒々感」と記載する)を与えるという問題がある。
【0007】
特に、直管形LEDランプでは、筐体として長尺状の直管が用いられているので、
ユーザは一層粒々感を感じる傾向にある。さらに、LEDモジュールとしてSMD型
のものを用いる場合、LEDチップが非透光性容器内に実装されて側方への光が遮
25 断された構成のLED素子を複数配置するので、LED素子が配置された部分とL
ED素子が配置されない部分とで上記の輝度差が非常に大きくなり、ユーザはさら
に粒々感を感じる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ユーザが感じ
られないまでに粒々感を抑制することのできるランプ及び照明装置を提供すること
5 を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るランプの一態様は、光拡散部を有する
長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の発光
10 素子と、を備えたランプであって、前記複数の発光素子の各々の光が前記ランプの
最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前
記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とすると、y≧1.09xの関係を満たす
ことを特徴とする。
【発明の効果】
15 【0021】
本発明によれば、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することのできるラ
ンプ及び照明装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
20 (本発明に至った経緯)
上述のとおり、長尺状の筐体を用いたLEDランプでは、粒々感を感じるという
課題がある。この課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消するこ
とは自明のことである。しかしながら、単に拡散性を高めただけでは、その副作用
として光束が低下してしまい、ランプ照度が低下してしまう。
25 【0024】
したがって、光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制することが重要となる
が、従来、このような課題に対する技術的な解決手段は見出されていなかった。そ
の理由として、(1)粒々感の定義があいまいで数値化されておらず、ランプ設計に
フィードバックすることが非常に困難であったということ、(2)粒々感に影響を与
えるランプの構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは、
5 光源素子から筐体までの距離等が多種多様であるということ、が挙げられる。すな
わち、従来は、粒々感に影響を及ぼしうるパラメータが非常に多い中で、光束低下
を必要最小限に抑えて粒々感を抑制することが極めて困難であった。
【0025】
本願発明者は、…光束低下を最小限に抑えて効果的に粒々感を抑制することので
10 きる画一的な領域を見出すとともに、その領域を数値化することに成功した。すな
わち、本発明は、ランプ最外郭から発せられる光源1つの輝度分布をパラメータと
して採用することで、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化することができるとい
う知見を得ることができた。本発明は、このようにして成し遂げたものであり、こ
れにより、上記(1)及び(2)の課題を解決することができた。
15 【0030】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る直管形LEDランプ1は、従来の
直管形蛍光灯に代替する直管形LEDランプであって、LEDモジュール10と、L
EDモジュール10を収納する長尺状の筐体20と、筐体20の長手方向(管軸方向)の
一方の端部に設けられた第1口金である給電用口金(給電側口金)30と、筐体20の
20 長手方向の他方の端部に設けられた第2口金であるアース用口金(非給電側口金)
40と、LEDモジュール10が配置される第1基台50及び第2基台54と、LEDモジ
ュール10に電力を供給するためのコネクタ60と、LEDモジュール10が発する光を
所定の方向に反射する反射部材70と、第1基台50を筐体20に取り付けるための取り
付け部材80と、LEDモジュール10を発光させるための点灯回路90とを備える。
【図2】 【図4】
15 【0033】
図4に示すように、LEDモジュール10は、LEDチップが基板上に直接実装さ
れたCOB型の発光モジュールであって、基板11と、複数のLED(ベアチップ)12
と、LED12を封止する封止部材13と、モジュール外部からLED12を発光させる
ための電力の供給を受ける電極端子14とを備える。
20 【0034】
基板11は、LED12を実装するためのLED実装基板である。本実施の形態では、
基板11として、筐体20の管軸方向において長尺状の矩形基板を用いている。LED
12は基板11の一方の面にのみ実装されている。図2に示すように、基板11は、LE
D12が実装される面である第1面(第1主面)11aと、第1面11aとは反対側の面で
25 ある第2面(第2主面)11bとを有する。…LEDモジュール10は、基板11の第2
面11bと第2基台54の載置面とが接触するように、第2基台54に載置される。
【0036】
LED12は、発光素子の一例であって、基板11上に直接実装される。図2及び図4
に示すように、基板11には、複数のLED12が基板11の長手方向に沿ってライン状
に一列配置されている。
5 【0042】
なお、本実施の形態では、COB型のLEDモジュール10を用いたが、図5に示すよう
なSMD型のLEDモジュール10Aを用いても構わない。SMD型のLEDモジュール10A
は、基板11と、基板11上に一列に実装された複数のLED素子15Aとを備える。L
ED素子15Aは、非透光性樹脂(白樹脂等)によって成型された容器であるパッケ
10 ージ(キャビティ)16Aと、パッケージ16Aの凹部底面に実装されたLED12(LE
Dチップ)と、パッケージ16Aの凹部に充填され、LED12を封止する蛍光体含有
樹脂である封止部材13と、金属配線等とを備える。
【図5】
【0053】
20 第1基台50及び第2基台54は、いずれも金属製であり、LEDモジュール10で発
生する熱を放熱するヒートシンクとして機能するとともに、LEDモジュール10を
載置及び固定するための基台として機能する。
【0054】
第1基台50は、ヒートシンクの外郭を構成する部材であり、図2に示すように、
25 筐体20の全長とほぼ同じ長さの長尺状に構成されている。第1基台50は、例えば、
亜鉛めっき鋼板等の金属板を折り曲げ加工等することによって形成することができ
る。
【0055】
第1基台50は、長尺状の底部(底板部)と、底部における第1基台50の短手方向
(基板11の幅方向)の両端部に形成された第1壁部51及び第2壁部52とを有する。
5 第1壁部51及び第2壁部52は、第1基台50を構成する金属板を折り曲げ加工するこ
とによって衝立状に形成されている。図3Bに示すように、LEDモジュール10の基
板11は第1壁部51と第2壁部52とによって挟持されており、LEDモジュール10は、
第1壁部51と第2壁部52とによって基板11の短手方向の動きが規制された状態で第
1基台50に配置される。
10 【図3B】
20 【0058】
第2基台54は、長尺状の基板からなり、第1基台50とLEDモジュール10の基板
11との間に配置される中板ヒートシンクである。第2基台54には、LEDモジュー
ル10(基板11)が載置される。すなわち、第2基台54と基板11の第2面11bとが接
触した状態で、LEDモジュール10は第2基台54に配置される。
25 【0082】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、最大輝度に対する最小輝度の割合を輝
度均斉度(%)としたときに、当該輝度均斉度を85%以上とすることにより、粒
々感がほとんど感じられなくなることが分かった。
【0083】
さらに、本発明者らは、実験を重ねた結果、LED1個の輝度分布における半値
5 幅(図6A)と、複数のLEDを配列したときにおける隣り合うLEDの発光中心
間隔(図6B)と、輝度均斉度とには、相関関係があるということを突き止めた。
なお、半値幅は、FWHM(Full Width at Half Maxim
um)である。また、発光中心間隔は、隣り合うLEDにおいて、各々のLEDの
輝度分布の中心(最大輝度)同士の間隔である。
【0086】
図7Aの結果をもとに検討した結果、複数のLEDの各々の光が拡散部材を透過
したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合うLEDの発光中
5 心間隔をx(mm)とすると、一列に並べられたLEDの輝度の均斉度は、y=α
xとして直線近似できることが分かった。また、LEDの光を拡散させる拡散部材
の材料がガラス及びポリカーボネートのいずれであっても直線近似できることが分
かった。また、LEDモジュールがSMD型及びCOB型のいずれであっても直線
近似できることが分かった。すなわち、拡散部材やLEDモジュールの種類によら
10 ず、一列に並べられたLEDにおける輝度均斉度は直線近似できることが分かった。
【0087】
具体的には、図7Bに示すように、85%の輝度均斉度は、y=1.09xとし
て直線近似できることが分かった。また、90%の輝度均斉度は、y=1.21x
として直線近似できることが分かった。さらに、95%の輝度均斉度は、y=1.
15 49xとして直線近似できることが分かった。
【0088】
また、各直線における相関係数R 2 は、0.99又は1.00であることから、
輝度分布の半値幅yとLEDの発光中心間隔xと輝度均斉度とには高い相関関係が
あることも確認できている。なお、LEDランプの実用上、発光中心間隔xは3m
m以上30mm以下とすることが好ましいが、少なくともこの範囲においては高い
5 相関関係があることが確認できている。
【0089】
ここで、図7Bの結果をもとにして、上記のようにy=αxとして直線近似した
ときにおける直線傾きαと輝度の均斉度との関係を図7Cに示す。
【0090】
10 本実験における拡散部材は、本実施の形態における直管形LEDランプ1の最外
郭に相当すると考えることができる。したがって、図7B及び図7Cに示すように、
直管形LEDランプ1において、筐体20と、筐体20の管軸方向(長尺方向)に
沿って並べられた複数のLED12とが、y≧1.09xの関係を満たすように構
成することにより、輝度均斉度を85%以上とすることができる。これにより、複
15 数のLED12の並び方向において現れる高輝度領域と低輝度領域輝度との輝度差
を抑制することができるので、ユーザに粒々感をほとんど感じさせないようにする
ことができる。なお、本実施の形態において、ランプの最外郭は筐体20としてい
るが、これに限らない。
(2) 上記(1)によると、本件各発明1は、次のようなものと認められる。
20 ア 技術分野
本件各発明1は、発光ダイオード(LED)を用いた直管形のLEDランプ及び
これを備えた照明装置に関する(【0001】)。
イ 発明が解決しようとする課題
LEDランプでは、LEDモジュールが筐体内に収納され、当該LEDモジュー
25 ルは、一定間隔で並べられた複数のLED(LED素子やベアチップ)を有すると
ころ、従来、LEDの並び方向に沿って発光輝度の高い領域(LEDが実装された
部分)と発光輝度の低い領域(LEDが実装されていない部分)とが繰り返して現
れ、筐体を透過するLEDの光に輝度差が生じるので、ユーザに光の粒々感を与え
るという問題があり、特に、直管形LEDランプでは、ユーザは一層粒々感を感じ
る傾向にある(【0006】、【0007】)。
5 この課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消することは自明で
あるが、その副作用として光束が低下してしまい、ランプ照度が低下してしまう。
そのため、光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制することが重要となるが、
従来、(1)粒々感の定義があいまいで数値化されておらず、ランプ設計にフィー
ドバックすることが非常に困難であったこと、(2)粒々感に影響を与えるランプ
10 の構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは光源素子から
筐体までの距離等が多種多様であること、すなわち、粒々感に影響を及ぼし得るパ
ラメータが非常に多い中で、光束低下を必要最小限に抑えて粒々感を抑制すること
が極めて困難であった(【0023】、【0024】)。
ウ 課題を解決する手段(本件各発明1)
15 本件各発明1は、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿っ
て前記筐体内に配置された複数の発光素子とを備えたランプであって、前記複数の
発光素子の各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半
値幅をy(mm)とし、隣り合う前記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とする
と、yとxが所定の関係を満たすものであり(【0009】)、光束低下を最小限
20 に抑えて効果的に粒々感を抑制することのできる画一的な領域を見いだすとともに、
その領域を数値化することに成功したもの、すなわち、ランプ最外郭から発せられ
る光源一つの輝度分布をパラメータとして採用することで、輝度均斉度との関係で
粒々感を定量化することができるという知見、具体的には、輝度均斉度を85%以
上とすることにより、粒々感がほとんど感じられなくなること、実験結果(図7A)
25 から、LED1個の輝度分布における半値幅y(mm)(図6A)と、隣り合うL
EDの発光中心間隔x(mm)(図6B)と、一列に並べられたLEDの輝度均斉
度とには、相関関係があり、拡散部材の材料がガラス及びポリカーボネートのいず
れであっても、y=αx(85%の輝度均斉度はy=1.09x、90%の輝度均
斉度はy=1.21x、95%の輝度均斉度はy=1.49x)として直線近似で
きる(図7B)こと、各直線における相関係数R 2 から輝度分布の半値幅yとLE
5 Dの発光中心間隔xと輝度均斉度とには高い相関関係があること、という知見を得
てできたもので(【0025】【0082】【0083】【0086】~【008
8】【0090】)、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿
って前記筐体内に配置された複数の発光素子とを備えたランプであって、前記複数
の発光素子の各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の
10 半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とす
ると、y≧1.09xの関係を満たすランプ(【0009】)である。
エ 本件各発明1の効果
本件各発明1によると、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することので
きるランプ及び照明装置を実現することができる(【0021】)。
15 (3) 本件各発明1に係るパラメータの技術的範囲
ア 直線近似式について
本件明細書で1は、輝度均斉度が目標とする85%、90%、95%が得られる
場合のLED1個の輝度分布における半値幅y(mm)(図6A)と隣り合うLE
Dの発光中心間隔x(mm)(図6B)を実測し、その結果(図7A)から、y=
20 αxとの直線近似を行った(回帰式を得た)もの( 以 下 「 本 件 パ ラ メ ー タ 」 と い
う 。 ) であるところ(【0086】~【0089】)、このように、二つの測定
データから、直線近似式(回帰式)を得ることは周知の技術的事項であるといえる
(甲1008)。
イ 本件各発明1に係るパラメータの要旨
25 本件各発明1は、「ランプ」又は「照明装置」に係る発明であって、「物」
の発明である。そして、「物」の発明である本件各発明1において、近似式
y=αxからなる本件に係るパラメータにおいて、αがとり得る値の範囲を
特定するものである。
そうすると、新規性又は進歩性の判断に際しての発明の要旨認定の場面で
は、y値及びx値(の測定結果)が、各請求項で特定されているy=αxの
5 関係におけるαの範囲内である物を全て含み、これはy値又はx値の具体的
な数値のいかんやy値又はx値の設計方法を問わないものと解するのが相当
である。
なお、控訴人PIPMは、所望の輝度均斉度を得るために、y/x値に着
目するとカットアンドトライを要せず簡易的に検証可能である(例えば、甲
10 1008)とし、物の発明において、物の製造方法で特定しているかのよう
な主張をしているが、仮に物の製造方法で特定しているとしても、物の発明
を製造方法に限定して解釈する必然性はなく、これと製造方法は異なるが物
としては同一であるものも当該特許発明に包含されると解するのが相当であ
る。
15 ウ 直線近似式の意義と輝度均斉度の精度
本件各発明1に係るパラメータは、統計的に推定された近似式であり、こ
のような式から導出される数値は予測値であること、また、予測値と実測デ
ータとの差は「残差」と呼ばれ、決定係数(本件の「相関係数」)が、1に
近いほど分析の精度(予測値の精度)が高いものであることは、技術常識で
20 ある(乙178)。この点、本件明細書1の【0088】にて「各直線にお
ける相関係数R2は、0.99又は1.00である」とする。
ただし、近似式は、あくまでも統計的に推定されたものであるから、高い
相関性がある本件パラメータ(近似式)を満たす場合でも、目標とする輝度
均斉度が厳密に達成できるものではない。
25 例えば、輝度均斉度が85%が見込まれるy=1.09xを満たすy値と
x値を備えるランプであっても、実際の輝度均斉度は、85%を下回ること
もあれば、上回ることもある。このように、近似式には、その統計的性質か
ら一定の微差を生じることが織り込まれているものである。
このように、本件パラメータは、その特定されるy/x値を満たす場合で
あっても、輝度均斉度の目標値に近い値を達成できる(目標値を下回ること
5 もあれば、上回ることもある)ということを意味するにすぎない。
より具体的には、本件明細書1(【0087】)から、1.09≦y/x
≦1.21の数値範囲において85%から90%程度の輝度均斉度が、1.
21≦y/x≦1.49の数値範囲において90%から95%程度の輝度均
斉度が、1.49≦y/xの数値範囲において95%程度の輝度均斉度がお
10 およそ得られることが期待できるものである。
そもそも各輝度均斉度の目標値についても、この目標値の前後において、
「粒々感」に係る光学的な効果が大きく変化するような臨界的な意義を持つ
ものでもなく、本件パラメータによって、目標とする輝度均斉度がおお よそ
得られることが期待できれば十分であると理解できる。
15 2 構成要件1-14D、1-18F’及び1-20D’の充足性(争点1)
(1) 「基台の上に実装された」(1-14D、1-18F’及び1-20D’)
の意義
ア 特許請求の範囲の記載
本件発明1-14に係る特許請求の範囲請求項14(同項により引用される請求
20 項1を含む。)には、同発明に係る「ランプ」(構成要件1-14G)が、「光拡
散部を有する長尺状の筐体」(構成要件1-14A)と、「前記筐体の長尺方向に
沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップ」(構成要件1-14B)と、
「前記筐体内に配置された長尺状の基台」(構成要件1-14C)と、「前記基台
の上に実装された複数の容器」(構成要件1-14D)とを備えるところ、「前記
25 複数のLEDチップの各々は、前記複数の容器の各々に実装されている」(構成要
件1-14E)ことが記載されている。
この記載によると、本件発明1-14は、複数のLEDチップの各々が、複数の
容器の各々に実装され、その複数の容器が、筐体内に配置された長尺状の基台の上
に実装されている構成であることは理解し得るものの、「基台の上に実装された」
(構成要件1-14D)の具体的な態様ないし方法は明示されておらず、LEDチ
5 ップが実装された容器が、基台の上に直接実装された構成のみを意味するのか、基
板を介して間接的に実装する構成を含むものであるのかは、特許請求の範囲の記載
からは一義的に明らかではない。
JIS工業用語大辞典(乙161)や集積回路用語(乙162)の定義においても、
「実装」ないし「実装する」とは、「構成部分を配置、接続すること」と定義され
10 るにとどまり、その配置方法等に間接的な方法も含むものであるのか否かは、一義
的に定義されていない。
このことは、本件訂正発明1-18の構成要件1-18F’、本件訂正発明1-
20の構成要件1-20D’についても同様である。
イ 本件明細書1の記載
15 本件明細書1の記載によると、本件各発明1は、LEDをLEDモジュールとし
て構成するLEDランプに係る発明である(【0001】、【0006】~【0008】)。L
EDモジュールには、樹脂成形された非透光性容器の中に実装されたLEDチップ
が蛍光体含有樹脂によって封止されたパッケージ型のLED素子を用いて、当該L
ED素子を基板の上に複数実装することで作製できるSMD型や、基板上に複数のL
20 EDチップを直接実装して蛍光体含有樹脂によって封止することで作製できるCOB
型等がある(【0004】)。本件発明1-14並びに本件訂正発明1-18及び1-
20のLEDモジュールは、いずれも、LEDチップを容器に実装するものであり、
SMD型である。
また、本件明細書1には、本件各発明1の実施例として、ランプ全体の構成とし
25 て、LEDモジュール10が第1基台50及び第2基台54に配置されること(【0030】 、
)
COB型の発光モジュールでは、図4に示すように、LEDモジュール10は、LEDチ
ップが基板上に直接実装されること(【0033】)、基板11は、LED12を実装する
ためのLED実装基板であり、LEDモジュール10は、基板11の第2面11bと第2
基台54の載置面とが接触するように、第2基台54に載置されること(【0034】 、本
)
実施の形態では、図5に示すようなSMD型のLEDモジュール10Aを用いても構わず、
5 SMD型のLEDモジュール10Aは、基板11と、基板11上に一列に実装された複数のL
ED素子15Aとを備え、LED素子15Aは、LED12(LEDチップ)を凹部底面に
実装した容器であるパッケージ16Aを備えること(【0042】)、第1基台50及び第
2基台54は、LEDモジュール10を載置及び固定するための基台として機能するこ
と(【0053】)、LEDモジュール10の基板11は、第1基台50を構成する金属板を
10 折り曲げ加工することによって衝立状に形成された第1壁部51と第2壁部52とによ
って挟持されており、LEDモジュール10は、第1壁部51と第2壁部52とによって
基 板 11 の 短 手 方 向 の 動 き が 規 制 さ れ た 状 態 で 第 1 基 台 50 に 配 置 さ れ る こ と
(【0055】)、第2基台54には、LEDモジュール10(基板11)が載置されること
(【0058】)が記載されている。
15 本件明細書1に記載されたSMD型のLEDモジュールの実施例では、「LEDモ
ジュール10」の「パッケージ16A」は「基板11」に実装され、「基板11」は第1基
台50及び第2基台54(基台)に載置されている。また、この実施例と、LED12を
基板11上に直接実装するLEDモジュール10を基台に載置するCOB型発光モジュー
ルの実施例とは、本件明細書1において、等しく発明の実施例として取り扱われて
20 おり、各実施例の位置付けを異にすべきことをうかがわせる記載もない。他方、本
件明細書1には、「容器」である「パッケージ16A」が直接「基台」に実装されて
いる実施例の記載はない。
このように、本件明細書1の記載によると、同明細書には、LEDチップを実装
した容器を基台の上に実装する方法として、容器を基板に実装し、同基板を基台に
25 載置する実施例が明示的に開示され、かつ、同実施例を含み、LEDモジュールが
基台に配置された構成を意味する旨が記載されている。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1-14に係る特許請求の範囲及び本件明細書1の記載
を参酌すると、「基台の上に実装された」(構成要件1-14D、1-18F’及
び1-20D’)とは、LEDチップが実装された容器が基台の上に直接実装され
5 た構成に限られず、容器が基板を介して間接的に実装された構成を含むものとする
のが相当である。これに反する被控訴人の主張は採用できない。
(2) 被控訴人製品の構成要件充足性
前提事実(前記第1の4(2))によると、被控訴人製品1~5及び7~16は、
いずれも、複数のLEDチップが実装された複数の容器が、基台の上にある基板の
10 上に実装されている。上記(1)のとおり、このような構成も「基台の上に実装され
た」に該当することから、上記各被控訴人製品は、本件発明1-14並びに本件訂
正発明1-18及び1-20の構成要件1-14D、1-18F’及び1-20D
’を充足する。
また、前提事実(前記第1の4(2))のとおり、本件発明1-14並びに本件訂
15 正発明1-18及び1-20について、それぞれの対象となる被控訴人製品が構成
要件1-14D、1-18F’及び1-20D’を除く構成要件を充足することは、
当事者間に争いがない。
以上によると、被控訴人製品1~5及び7~16は本件発明1-14の、被控訴
人製品1~5、7~10及び12は本件訂正発明1-18の、被控訴人製品8及び
20 10は本件訂正発明1-20の構成要件をいずれも充足するから、それぞれ、上記
各発明の技術的範囲に属する。
3 構成要件1-1J’の充足性(争点2-1)
(1) 「衝立状」(構成要件1-1J’)の意義
ア 特許請求の範囲の記載
25 本件訂正発明1-1に係る特許請求の範囲の記載によると、同発明に係るランプ
は、「基板を保持する金属製の基台」(構成要件1-1F’)をその構成要素の一
つとして備えるところ、「前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向
の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方の端部に設けら
れた第2壁部とを有し」(構成要件1-1I’)、「前記第1壁部及び前記第2壁
部は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成されて」(構成要件 1-1J’)いる
5 ことが特定されている。
これによると、基台の底部の短手方向の両端部にそれぞれ設けられた第1壁部と
第2壁部は、底部に対し基板側に形成されるものであり、その形状ないし状態が
「衝立状」であることが示されている。もっとも、いかなる形状等をもって「衝立
状」とするかについては記載がなく、その意味が一義的に明らかとはいえない。
10 イ 本件明細書1の記載等
「第1壁部」及び「第2壁部」について、本件明細書1【0055】には、第1基台
50が、長尺状の底部(底板部)と、底部における第1基台50の短手方向(基板11の
幅方向)の両端部に形成された第1壁部51及び第2壁部52とを有すること、これら
の壁部は、第1基台50を構成する金属板を折り曲げ加工することによって衝立状に
15 形成されていることが記載されている。また、同段落には、同明細書図3Bと合わせ、
LEDモジュール10の基板11は第1壁部51と第2壁部52とによって挟持されており、
LEDモジュール10は、第1壁部51と第2壁部52とによって基板11の短手方向の動
きが規制された状態で第1基台50に配置されることも記載されている。本件訂正1
における本件訂正発明1-1の構成要件1-1J'の追加は、この記載等を含む本
20 件明細書1の記載による開示に基づいて行われたものである(甲83)。
さらに、広辞苑第六版においては、「衝立」とは「衝立障子の略」であり、「衝
立障子」とは「屏障具の一。一枚の襖障子または板障子に台をとりつけ、移動に便
ならしめたもの。…玄関・座敷などに立てて隔てとする。」と説明されている。加
えて、「衝立障子」は、一般に、それが設置される面に対してほぼ直立するものと
25 把握される。他方、「状」とは、「すがた。ありさま。」を意味し(広辞苑第六
版)、「○○状」とは、ある物事の形等を「○○」に例える際に用いられる表現で
ある。
以上の本件明細書1の記載等を踏まえると、第1壁部及び第2壁部は、基台の底
部の基板側に衝立状に形成されることにより基板11を挟持し、短手方向の動きを
規制する機能を果たすものであるところ、その形状等は上記意味での「衝立障子」
5 に例えられるものである必要があることが理解できる。
ウ 小括
以上によると、本件訂正発明1-1に係る特許請求の範囲及び本件明細書1の記
載等並びに「衝立」の一般的な意味等に鑑みると、第1壁部及び第2壁部が「衝立
状」に形成されるとは、これらの壁部が基台の底部の基板側に、同底部に対してほ
10 ぼ直立した形状に形成されていることを意味するものと解される。これに反する控
訴人PIPMの主張は採用できない。
(2) 被控訴人製品1~5、7~10及び12の構成要件充足性
被控訴人製品1~5、7~10及び12の断面図は、別添7「被控訴人製品断面
図」のとおりである。
15 このうち、被控訴人製品4及び5については、第1壁部及び第2壁部に相当する
と見られる部位は、基台の底部から基板側に形成された基台の一部が内側に向けて
鋭角に傾斜した形状に形成されており、底部に対してほぼ直立した形状とはいえな
い。
次に、被控訴人製品1~3、7~10及び12については、第1壁部及び第2壁
20 部に相当すると見られる部位には、基台の底部から基板側にほぼ直立といってよい
形状に延出している部分もあるものの、これと一体のものとして、基板とほぼ同じ
高さで基台の底部に平行に形成された部分もあるため、全体としては「コの字」又
は「T字」と表現すべき形状に形成されているものというべきであって、底部に対
してほぼ直立した形状に形成されているとはいえない。
25 したがって、被控訴人製品1~5、7~10及び12は、いずれも、第1壁部及
び第2壁部に相当すると見られる部位が底部の基板側に「衝立状」に形成されてお
らず、本件訂正発明1-1の構成要件1-1J’を充足しない。
(3) 小括
以上によると、被控訴人製品1~5、7~10及び12は、いずれも本件訂正発
明1-1の技術的範囲に属しない。
5 4 均等論について(争点2-2)
(1) 被控訴人は、控訴人PIPMの均等侵害の主張に対し時機に後れた攻撃防御
方法であると主張するが、訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められないか
ら、却下しない。
(2) 証拠によると、本件訂正発明1-1における「衝立状」は、無効審判201
10 8-800036号における令和元年10月10日付け審決の予告(乙272)に
対し、令和元年12月16日の本件訂正1(甲83、84)により減縮されたもの
である。
より具体的には、本件訂正発明1―1における訂正は、本件訂正1における訂正
事項1が該当し、LEDチップが実装される基板を保持する金属製の「基台」を追
15 加するとともに、かかる「基台」について、「前記長尺状の底部と、前記底部の短
手方向の一方の端部に設けられた第1壁部と、前記底部の短手方向の他方に設けら
れた第2壁部」とを有すること、及び、「前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記
底部の前記基板側に衝立状に形成されて」いることに減縮したもので、また、上記
訂正事項1の根拠は、本件明細書の段落【0053】~【0055】及び図3B等
20 と主張されていた(甲83)。
そして、本件訂正1の上記経緯からすると、「衝立状」との特定によって、鉛直
方向に立直する態様以外の「第1壁部」及び「第2壁部」を意識的に除外している
ものといえる。また、このことは、例えば、本件訂正1により訂正された請求項4
では、「第1壁部」及び「第2壁部」が特定されているものの、「衝立状」の特定
25 はないところ、このような請求項との対比からも裏付けられる。
したがって、均等侵害が認められる場合に必要である第5要件を満たさない。
5 充足論・均等論のまとめ
本件発明1-1、1-3、1-16及び1-17並びに本件訂正発明1-17に
つき、対象となる各被控訴人製品が対応する各発明の構成要件を充足し、その技術
的範囲に属することは、前記第1の5のとおりである。
5 また、本件発明1-14並びに本件訂正発明1-18及び1-20については、
前記2のとおり、被控訴人製品1~5、7~16は、対応する各発明の構成要件を
充足し、その技術的範囲に属すると認められる。
他方、本件訂正発明1-1については、被控訴人製品1~5、7~10及び12
は、いずれもその構成要件1-1J'を充足せず、その技術的範囲に属しない。ま
10 た、均等侵害も成立しない。
したがって、本件訂正発明1-1については、その余の点を論ずるまでもなく、
訂正の再抗弁は認められない。
6 403W製品に基づく先使用権の成否(争点10)
事案に鑑み、まず、403W製品に基づく先使用権の成否(争点10)について、原
15 判決の判断及びこれに対する当事者の主張するところをも踏まえて当裁判所の判断
を示す。
(1) 403W製品の先使用について
ア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認めら
れる。
20 (ア) 被控訴人は、平成24年4月23日頃、韓国で製造された403W製品480セ
ットを輸入した(乙143、315)。
(イ) 被控訴人は、同月25日、ミツワ電機株式会社関西支社に対し、403W製品2
4台を含む商品の見積書を作成、送付し、同月26日、同社関西特機営業所から受
注して、同月28日、これを井づつやに納品した(乙167、168)。
25 その後、井づつやに納品された上記403W製品24台は、同所のエントランスロビ
ー等において使用されていたところ、被控訴人は、平成30年7月23日までに、
井づつやからこれを入手した。この被控訴人403W製品には、製造ロット番号として
「120416」が表示されているところ、これは、当該製品の製造年月日が平成24年
4月16日であることを意味する。(乙166、弁論の全趣旨)
(ウ) 被控訴人は、本件チラシ1(平成24年1月発行)に、平成24年3月初旬
5 発売予定の商品として403W製品を掲載した(乙138)。また、被控訴人は、本件
カタログ(同年2月発行)にも403W製品を掲載したところ、他の掲載商品には発売
予定時期を明記したものが見られるが、403W製品にはそのような記載はない(乙3
5)。
イ 上記各認定事実を総合考慮すると、被控訴人は、遅くとも本件優先日1であ
10 る平成24年4月25日以前に、403W発明の実施である事業をしていたことが認め
られる。
(2) 403W発明の構成等
ア 403W発明の構成のうち、前記第2の11(被控訴人の主張)(3)における構
成1-3a10~c10及びe10並びに1-14a10~f10及びh10については、証拠(乙166、
15 297、299)及び弁論の全趣旨により、これが認められる。
上記構成1-3a10~c10及びe10は、本件発明1-1の構成要件1-1A~C及びE、
本件発明1-3の構成要件1-3A~C及びE、本件発明1-16の構成要件1-
16A~C及びF、本件発明1-17の構成要件1-17A~C及びE並びに本件
訂正発明1-17の構成要件1-17B’~D’にそれぞれ相当するものといえる。
20 また、構成1-14a10~f10及びh10は、本件発明1-14の構成要件1-14A~E、
G及び本件訂正発明1-18の構成要件1-18B’~F’、I’にそれぞれ相当する
ものといえる。
さらに、403W製品は、直管形LEDユニットであり、樹脂(ポリカーボネート)
製カバー(筐体)の長手方向の両端に口金が設けられているところ、その一方には
25 電源内蔵ユニット用専用口金を備え、この口金のみが、電源内蔵用専用ソケット
(給電側)を通じて交流電力を受けるものである(乙35、299)。そうすると、
403W発明は、本件発明1-16の構成要件1-16E並びに本件訂正発明1-17
の構成要件1-17E’及び本件訂正発明1-18の構成要件1-18G’、H’に相当
する構成を備えていることが認められる。
加えて、403W製品は、既存の器具本体をそのまま残し、専用ソケット及び直管形L
5 EDユニットをリニューアルして照明装置として使用する製品シリーズに含まれる製
品である(乙35)。したがって、ランプである403W製品に係る発明(403W発明)は、
そのランプが取り付けられた照明装置に係る発明に含まれるといえる。このため、
403W発明は、本件発明1-17の構成要件1-17F、本件訂正発明1-17の構成
要件1-17A’及びG’並びに本件訂正発明1-18の構成要件1-18A’及びK’に
10 相当する構成を備えていることが認められる。
イ 403W製品の輝度均斉度等
(ア) 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認めら
れる。
a LEDモジュールの寿命は、製造業者等が指定する条件下で点灯したとき、
15 LEDモジュールが点灯しなくなるまでの総点灯時間又は全光束が点灯初期に測定
した値の70%に下がるまでの総点灯時間のいずれか短い時間とされているところ、
高光束LEDを1万時間連続通電してその光出力の変化を調査した実験データによ
ると、1チップ方式の白色LEDの寿命(光出力が70%になる時間)は4万50
00時間と推定されるとの実験データがある。なお、控訴人パナソニックのカタロ
20 グ(乙34)には、直管形LEDランプについて、4万時間経過後の光束維持率が
95%であることが示されている。
また、LEDを連続的に点灯し続けると 、LEDチップを封止する樹脂(以下
「LED樹脂部」という。)が黄変し、光量の低下を招くことがある。さらに、LE
D照明は、使用する場所の環境温度が高くなるほど劣化が加速されると共に、使用
25 環境下に硫化ガス等の発生要因がある場合、LED樹脂部及び接合部にダメージを
与えることなどによっても、劣化が加速する場合がある。
(以上につき、上記のほか、甲37~39)
b 被控訴人403W製品は、平成24年4月28日の井づつやへの納品後、被控訴
人が平成30年7月に入手するまで、6年以上の間継続的に使用されていたものと
見られるところ、そのLED素子の中央部分はやや黄変しており(乙217、21
5 8)、カタログに記載された初期値を100%とした場合の被控訴人403W製品の全
光束(全ての方向に放出する光束の総和)は89.0%、光効率は92.6%に減
少している(乙216)。もっとも、被控訴人403W製品のLED1個当たりの配光
データは、新品のLEDの配光データがおおむね120度(ランバーシアン配光の
場合)であるのに対し、114度及び115度である(乙214、215の3、2
10 15の4)。
また、403W製品のカバーと402W製品のカバーは、共通の部材(ポリカーボネート)
を使用した同じ仕様のものであると認められるところ(乙35、298、299、
315)、被控訴人403W製品と未使用の402W製品について、それぞれカバーを交換
して全光束及びy/x値を測定した結果、いずれも交換せずに測定した結果との差は、
15 1%以下(全光束)及び0.01(y/x値)であった(乙316~318)。
(イ) 以上の事情を踏まえると、被控訴人403W製品のLED素子は、6年以上使用
を継続されているものであり、LED樹脂部の黄変及び全光束や光効率の減少は生
じているものの、その配光特性は、初期値(ランバーシアン配光)と大きく異なら
ず、著しい経時変化は見られないものといってよい。403W製品の光拡散性を有する
20 カバー部分についても、被控訴人403W製品には、上記継続使用期間にもかかわらず、
全光束やy/x値の測定値に影響を与えるような劣化等が生じているとはいえない。
そうすると、被控訴人403W製品について、被控訴人が平成30年7月23日に測
定したy値=15.7mm、x値=11.7mm、y=1.34xとの測定結果(乙166)及び令和2年
1月29日に測定したy値=15.6mm、x値=11.7mm、y=1.33xとの測定結果(乙297)
25 は、いずれも403W製品の初期値とほぼ同等のものと見るのが相当である。
(ウ) そして、403W発明は、「前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの
最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記
L E Dチ ッ プ の 発 光 中 心 間隔 を x( mm) と す ると 、 y=15.7mm、 x=11.7mmで あり 、
y=1.34x」との構成、すなわち構成1-3d10及び1-14g10を有するといえる。
したがって、403W発明は、本件発明1-1の構成要件1-1D、本件発明1-
5 3の構成要件1-3D、本件発明1-14の構成要件1-14F、本件発明1-1
6の構成要素1-16D及び本件発明1-17の構成要件1-17D並びに本件訂
正発明1-17の構成要件1-17F’及び本件訂正発明1-18の構成要件1-
18J’に相当する構成を有していると認められる。
ウ 以上によると、403W発明は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び
10 1-18の構成要件を充足する構成を備えたものであると認められる。
エ 控訴人PIPMの主張について
控訴人PIPMは、被控訴人403W製品について、長時間の使用による経年変化、
LED素子の樹脂やせや黄変、使用環境の影響等により、被控訴人測定時点での被
控訴人403W製品のy/x値等が初期値のものと同等とはいえない旨を主張する。
15 しかし、前記イ(ア)のとおり、被控訴人403W製品については、長時間の使用によ
る経年変化等により、LED素子の中央部に黄変が見られ、また、カタログ値と比
較して全光束や光効率が10%程度減少しているという事実は認められるものの 、
それ以上に、LED素子の劣化(凹み)をはじめ、配光特性に影響を及ぼし得るよ
うなLED素子の劣化等を裏付ける具体的な事情は見当たらず、カバー部材につい
20 ても、y/x値等に影響を与えるような劣化が生じているといった事実の存在を具体
的にうかがわせる事情は見当たらない。本件交換実験の結果に関しても、上記のと
おり、交換に係る製品が共通の部材を使用した同じ仕様のものであると認められる
ことに鑑みると、控訴人PIPMが指摘する事情を考慮しても、その結果の信用性
を疑うべき事情は認められない。
25 控訴人PIPMは、甲74の見解書等に基づいて、井づつやの使用品403W製品は、
劣化により、最外郭部の輝度分布は狭くなる方向になるところ、原判決は403W製品
の配光角度が114度及び115度と認定しているが、これはまさに経時変化を示
すものであって、現在における測定値が403W製品の発売当時の初期値を示すもので
なく、全光束やy/x値の測定値に影響を与えるような劣化等が生じていると主張
する。
5 「報告書(RAD-403W(井づつや)の寿命推定)」(甲37)における井づつや製
品が点灯されていた時間等の調査結果からは、井づつやの使用品403W製品の光出力
は76%程度であることが推定されるとの記載があり、被控訴人による実測値でも、
全光束がカタログ値の89.0%(乙216)又は87.8%(乙347)であっ
て、LEDランプとしての使用を経て、一定程度の劣化が認められる。しかしなが
10 ら、個々のLEDの配光は初期値(乙222)と劣化後(乙215)で差が認めら
れず、井づつやの使用品403W製品のカバーを新品に交換する実験(乙136、34
7)によると、y値とカバーの劣化との関係も認められない。また、被控訴人403W
製品につき、LED光束とLED電流は、ほぼ正比例であることを前提として、電
流を増加(光束を増加)させても、経年劣化による光束低下によるy値の変化がな
15 いものといえることが認められる(乙409)。他方、控訴人PIPMの主張は、
劣化による配光の変化についての可能性を指摘するにとどまるもので、本件全証拠
によっても、具板的な配光の変化が立証されているとはいえない。
以上に照らすと、被控訴人403W製品の劣化によるy値の有意な変化は認められず、
控訴人PIPMの上記主張は採用できない。
20 (3) 先使用権の範囲
ア 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に
係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日
本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をして
いる者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、そ
25 の特許出願に係る特許権について通常実施権を有する(特許法79条)。
上記のとおり、先使用権者は、「その実施又は準備をしている発明及び事業の目
的の範囲内において」特許権につき通常実施権を有するものとされるが、ここにい
う「実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」とは、特許発明の特許
出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備して
いた実施形式だけでなく、これに具現されている技術的思想、すなわち発明の範囲
5 をいうものであり、したがって、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)
に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現され
た発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解する
のが相当である(最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判
決・民集40巻6号1068頁参照)。
10 そして、先使用権制度の趣旨が、主として特許権者と先使用権者との公平を図る
ことにあり、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をし
ていた実施形式以外に変更することを一切認めないのは、先使用権者にとって酷で
あって相当ではなく、先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲にお
いて先使用権を認めることが同条の文理にも沿うと考えられること(前記最高裁判
15 決参照)からすると、実施形式において具現された発明を認定するに当たっては、
当該発明の具体的な技術内容だけでなく、当該発明に至った具体的な経過等を踏ま
えつつ、当該技術分野における本件特許発明の特許出願当時(優先権主張日当時)
の技術水準や技術常識を踏まえて、判断するのが相当である。
イ 被控訴人403W製品に具現されている発明
20 (ア) 証拠(乙388)によると、被控訴人403W製品は、試料No.1とNo.2
について、LED99個のうち左から18~35番目、及び、38~50番目まで
のLED31個についてy/x値を計測したところ、試料No.1については、最
小値1.272、最大値1.363、平均値3σが1.271、1.370であり、
試料No.2については、最小値1.326、最大値1.381、平均値3σが1.
25 304、1.387であったことが認められる。また、被控訴人403W製品全24本
について、左から25番目と50番目のLED2個についてy/x値を計測したと
ころ、左から25番目のLEDについては、最小値1.303、最大値1.388、
平均値3σが1.281、1.397であり、左から50番目のLEDについては、
最小値1.297、最大値1.381、平均値3σが1.272、1.403であ
ったことが認められる。
5 ここで、工業製品にあっては、同一生産工程で生産されても、その品質はさまざ
まな原因によってばらつきが存在するものであり、照明器具においても同様のこと
がいえると解されるところ、上記のとおり、被控訴人403W製品においても、それぞ
れ数値範囲にばらつきが生じているものと理解できる。また、品質管理の手法とし
ては、製品の検査結果を要求される品質標準と比較して、この差(製造誤差)を標
10 準偏差の3倍(3σ)の範囲に収めることが一般的に採用される手法の一つである
と理解できる(乙388、弁論の全趣旨)。これらを踏まえると、被控訴人403W製
品のy/x値は、実測値で1.27~1.38程度、一般的な製造誤差を考慮した
場合である3σは、403W製品に要求される品質標準は不明であるものの、一般的な
管理手法に照らせば、実測された平均値がそれに該当するといえ、被控訴人403W製
15 品のy/x値は、おおむね1.27~1.40程度であったと認めることができる。
(イ) また、先使用権に係る実施品である403W製品は、本件優先日1前において公
然実施されていた402W製品とシリーズ品を構成する(乙35)から、被控訴人402W
製品と極めて関連性が高い公然実施品である。
そして、403W製品は、402W製品と共通のカバー部材を採用しつつ(乙315)、
20 402W製品と比べると、LEDの個数を減らしつつも「粒々感の解消」を図った超エ
コノミータイプとの位置づけであった(乙297)。すなわち、403W製品は、402W
製品との比較でいえば、y値(半値幅)を固定して、x値(LEDチップの配列ピ
ッチ)を工夫しつつ、本件各発明1と同様の課題である粒々感を抑えている(所定
の輝度均斉度を得ている)ものと理解できる(乙35)。
25 ここで、証拠(乙317)によると、カナデンに納品された402W製品のy/x値
は1.7程度であり、その余の402W製品のy/x値は更に大きいこと(乙77では
1.89)が認められる。
また、証拠(乙90、207)によると、平成23年6月に被控訴人が発売した
「THF72L」や「LEDZ TUBEシリーズ(RAD-402など)」は、
粒々感のない光源の実現のため、所定の明るさにする制約からX値が決まり、電源
5 内蔵型LED(型番RAD)では、電源を内蔵するためLEDとカバー部材の間隔
を大きく取れない制約があるため、数種類のカバー部材を用意して粒々感を目視評
価して、カバーを選定していたものであり、「LEDZ LシリーズSLIM T
UBE MODULE」は、x値16mm、y値26.2mm y/x値1.64
であったことが認められる。
10 以上のことを踏まえると、403W製品に具現化された発明であるy/x値が1.4
を超える部分から1.7又は1.7を超える範囲は、被控訴人においてx値を適宜
調整することで実現していた範囲であって自己のものとして支配していた範囲であ
るといえる。
(ウ) さらに、本件各発明1の課題であるLED照明の粒々感を抑えることは、L
15 ED照明の当業者において本件優先権主張日前から知られた課題であり、当業者は
このような課題につき、本件パラメータを用いずに、試行錯誤を通じて、粒々感の
ない照明器具を製造していたものといえる。そのような技術状況からすると、「物」
の発明の特定事項として数式が用いられている場合には、出願(優先権主張日)前
において実施していた製品又は実施の準備をしている製品が、後に出願され権利化
20 された発明の特定する数式によって画定される技術的範囲内に包含されることがあ
り得るところであり、被控訴人が本件パラメータを認識していなかったことをもっ
て、先使用権の成立を否定すべきではない。
そこで、本件優先日1当時の技術水準や技術常識等についてみると、前記認定の
とおり、輝度均斉度が85%程度を上回ることで粒々感に対処できることが周知技
25 術(乙402、甲31)であったこと、y/x値が1.208~1.278程度の
クラーテ製品②が、本件優先日1前に公然実施されていたこと、403W製品は、402W
製品と比較して、LEDの個数を減らす設計によるものであって、本件各発明1と
同様の課題である粒々感を抑えることができる範囲内でx値を402W製品より大きく
し、y/x値を輝度均斉度が85%程度となる1.1程度まで小さくすることは、
402W製品を起点とした403W製品の設計に至る間の延長線上にあるといえる。以上の
5 ことからすると、y/x値が1.27~1.1を満たす製品を設計することは、
403W製品によって具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施
形式というべきである。
(エ) まとめ
以上のとおり、被控訴人403W製品に具現されたy/x値との同一の範囲は、1.
10 27~1.40と認定でき、また、被控訴人403W発明に具現された発明と同一性を
失わない範囲は、1.1~1.7又は1.7を超える範囲と認定できるから、1.
1~1.7又は1.7を超える範囲は、先使用権者である被控訴人が自己のものと
して支配していた範囲と認められる。
(オ) 控訴人PIPMの主張
15 控訴人PIPMは、本件各訂正発明1は、オールインワンのパラメータとして、
y値、更にはy/xの値を評価することで、非常にシンプルなアプローチで、輝度
均斉度を制御することを実現しているとの本件発明1の技術的思想を前提とした主
張をするが、前記1(3)のとおり、y/x値に関して如何なる設計手法を取るかは、
本件発明の技術的範囲とは無関係であり、先使用による通常実施権の判断において、
20 403W製品が、控訴人PIPMがいう本件パラメータに係る技術思想を備える必要は
ない。かえって公然実施されているような数値範囲を事後的に包含する本件パラメ
ータについては、公平の観点から、特許権の行使が及ばないと解するのが相当であ
る。
(カ) 再 訂 正 発 明 1 - 1 7 、 1 - 1 8 は 照 明 装 置 で 、 403W製 品 は ラ ン プ で あ
25 るが、当該ランプは、照明器具本体に取り付けて照明装置として使用するこ
とが前提である以上、同一性の範囲内であると いえる。
以上によると、被控訴人は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-
18の内容を知らないで自らこれらに含まれる403W発明をし、本件優先日1の際に、
日本国内において、その発明の実施である事業をしている者と認められる。
したがって、被控訴人は、403W発明及び上記事業の範囲内において、本件各発明
5 1並びに本件訂正発明1-17及び1-18に係る特許権について、通常実施権を
有する。
また、403W製品は、x値及びy値の関係性を特定する技術的思想が明示的ないし具
体的にうかがわれるものではないものの、実際にはそのx値及びy値の関係性により、
本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18に係る構成要件に相当する
10 構成を有し、その作用効果を生じさせている。加えて、403W発明につき、照明器具
としての機能を維持したまま、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-
18の特定するx値及びy値の関係性を満たす数値範囲に設計変更することは可能と
認められる。このため、被控訴人製品1~5及び7~16は、いずれも、403W発明
と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式であるにとどまるものといえ
15 る。
そして、控訴人PIPM及び被控訴人が測定した被控訴人製品1~5及び7~1
6のy/xの値は別添2特許権1充足論一覧表の「y=αx(控訴人測定)」及び
「y=αx(被控訴人測定)」欄記載のとおりであり、いずれの値についても、 前
記(エ)の被控訴人403W発明に具現された発明と同一性を失わない範囲に含まれてい
20 るものといえる。
そうすると、被控訴人による被控訴人製品1~5及び7~16の製造販売は、被
控訴人の上記通常実施権の及ぶ範囲内に含まれる。
(4) 小括
以上のとおり、被控訴人は、403W発明に基づく上記通常実施権により、業として
25 被控訴人製品1~5及び7~16を製造販売し得ることから、その余の点につき論
ずるまでもなく、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件各発明1並びに本件訂
正発明1-17及び1-18に係る本件特許権1を行使し得ない。
7 無効理由9(クラーテ製品②の公然実施による新規性欠如)の有無(争点1
2)
(1) 公然実施の有無
5 ア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認めら
れる。
(ア) リコーは、平成23年7月7日、直管形LEDランプである「クラーテPシ
リーズ40形」を同月末発売予定である旨をプレスリリースした(乙173)。ま
た、リコーは、平成24年1月時点の製品を掲載したカタログ「<クラーテ>Pシ
10 リーズ」(乙171の1)にクラーテ製品②を掲載しているところ、同カタログ掲
載の仕様は、上記プレスリリースに係る製品の仕様とおおむね同一である。さらに、
同社は、遅くとも同月には、クラーテ製品②を含むシリーズ製品を販売していた。
(上記のほか、乙170、172、368)
(イ) 被控訴人は、令和元年9月12日終了のオークションにより、クラーテ製品
15 ②の14本(被控訴人クラーテ製品②)を入手したところ、これらの被控訴人クラ
ーテ製品②には、いずれも、製造ロット番号として「1203」が表示されている。
これは、当該製品の製造年月が平成24年3月であることを意味する。(乙172、
174、186、288)
イ 上記各認定事実を総合考慮すると、クラーテ製品②は、遅くとも平成24年
20 1月頃には、リコーから販売されたことによりその構造が第三者に解析可能な状態
に至ったものと認められる。
これに対し、控訴人PIPMは、クラーテ製品②の上市時期が明らかでないこと、
仮に被控訴人クラーテ製品②の製造日が平成24年3月であっても、製品製造後す
ぐ市場に出回るとは考え難いことなどを主張する。
25 しかし、上記のとおり、リコーがクラーテ製品②を平成24年1月には販売して
いたことが認められるのであって、それから約3か月が経過した本件優先日1時点
では、クラーテ製品②が実際に市場に出回っていたものと見るのが合理的かつ相当
である。したがって、この点に関する控訴人PIPMの主張は採用できない。
ウ 小括
以上によると、クラーテ発明②は、本件優先日1より前に日本国内において公然
5 実施をされた発明といえる。
(2) クラーテ発明②の構成等
ア クラーテ発明②が構成1-20a’12~f’12及びh’12を有すること、これらの構成
がそれぞれ本件訂正発明1-20の構成要件1―20A’~F’及びH’に相当するこ
とについては、控訴人は明らかに争わないことから、これが認められる。なお、本
10 件訂正発明1-20の構成要件1―20D’の「基台の上に実装された」の意義に
ついて、LEDチップが実装された容器が基板を介して間接的に実装された構成を
含むことは前記2のとおりである。
イ 被控訴人クラーテ製品②の14本の構成1-20g’12に係るパラメータ(y/x)
の被控訴人測定値は、1.208~1.278であった(乙289)。また、関連無効審判1
15 における検証手続の結果によると、被控訴人クラーテ製品②は、x値は8.6mm、y値
は10.39mmであり、y≒1.208xであった(乙346、365、弁論の全趣旨)。
そうすると、クラーテ発明②は、「前記複数のLEDチップの各々の光が前記ラ
ンプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う
前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、y≒1.208xの関係である」(構
20 成1-20g’12)との構成を有するものと認められる。この構成は、本件訂正発明1-2
0の構成要件1―20G’に相当する。
(3) したがって、本件訂正発明1-20は、本件優先日1より前に日本国内にお
いて公然実施をされた発明であるクラーテ製品②に係る発明と同一の発明であるか
ら、特許法29条1項2号に違反し、無効にされるべきものと認められる。すなわ
25 ち、本件訂正発明1-20に係る本件訂正1によっては無効理由が解消されないこ
とから、本件訂正発明1-20に係る訂正の再抗弁は認められない。
(4) 控訴人PIPMの主張について
控訴人PIPMは、被控訴人測定値のばらつきや経年変化等の事情を指摘して、
被控訴人測定値が初期値と等しいとはいえない旨を主張する。
この点、被控訴人クラーテ製品②については、オークションの出品者による説明
5 として、中古品であること、商品の状態として「やや傷や汚れ」があること、使用
期間が2年弱であること、電気工事業者による取り外し作業の際に「ざっくりと中
性洗剤で管だけ拭きあげた状態」で丁寧な梱包により発送すること 、「RICOHロゴ
マークあたり」が黒ずんで見えるものの、LEDは使用が進んでも黒ずむことはな
いため元々の仕様であることなどが記載されている(乙288)。
10 ところで、クラーテ製品②は、光束が70%まで低下するまでの定格寿命が4万
時間とされている(乙170の3、171の1)。しかしながら、このため、被控
訴人クラーテ製品②につき、2年間の使用時間として仮に4万時間の25%に相当
する1万時間使用された事実があったとしても、配光特性に影響を与えるとは必ず
しもいえず、現に、被控訴人クラーテ製品②のうち2本の配光特性はいずれも11
15 7度である(乙320)。口金ピンやランプマーク側の管端部の黒ずみについても、
その存在から直ちに他の部位にも同様の黒ずみが存在し、配光特性に影響を与える
とはいえない。また、クラーテ製品②については、光触媒の膜が剥がれて本来の効
果が得られなくなる場合があるとして、製品の表面を強く擦らないようにとの注意
喚起がされているものの(乙170の3)、「ざっくりと中性洗剤で」「拭き上げ」
20 るといった態様がこれに含まれるとは考えられない。さらに、被控訴人クラーテ製
品①(乙169、214、215によると、未使用品と認められる。)と被控訴人
クラーテ製品②のカバー部材を交換した測定によっても、両者の半値幅等に有意な
差異はない(乙370)。
これらの事情等を踏まえると、被控訴人クラーテ製品②につき、経年変化等によ
25 りパラメータの値に変化が生じているとは考えられず、上記(2)での認定に係る被
控訴人クラーテ製品②の被控訴人測定値及び関連無効審判1の検証手続における測
定値は、初期値とおおむね等しいものと見られる。
したがって、この点に関する控訴人PIPMの主張は採用できない。
8 再訂正による訂正の再抗弁(争点15)
(1) 控訴人PIPMによる本件再訂正は、「1.09x≦y≦1.49xの関係
5 を満たす、」を「1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす、」(請求項1) と、
「1.21x≦y≦1.49xの関係を満たす、」を「1.29x≦y≦1.49
xの関係を満たす、」(請求項3)と、「1.09x≦y≦1.49xの関係を満
たし、」を「1.29x≦y≦1.49xの関係を満たし、」(請求項16)と、
各「1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす、」を「1.29x≦y≦1.4
10 9xの関係を満たす(但し、x=11.7、y=15.7の場合を除く)、」(請
求項17、18)と訂正しようとするものである。
(2) 本件再訂正の主張につき、被控訴人は、時機に後れた攻撃防御方法として却
下すべきであると主張するが、訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められな
いから、却下しない。
15 (3) しかしながら、本件再訂正のうち先使用による通常実施権の主張を回避しよ
うとするところは、特許発明の無効理由を解消しようとするものではないことに加
え、前記5のとおり、本件再訂正のうち請求項1に係る発明については、対象とな
る被控訴人製品はいずれも、本件再訂正によってもそのまま維持される本件訂正発
明1―1の構成要件1―1J’(本件再訂正発明1の構成要件1―1J”)を充足
20 せず、その技術的範囲に属せず、また、均等侵害も成立しないから、同請求項1に
つき、本件再訂正による訂正の再抗弁は認められない。
また、前記6によると、被控訴人に先使用による通常実施権が認められる403W製
品に係るy/x値の同一の範囲は1.1~1.7又は1.7を超える範囲であると
認められることから、控訴人PIPMは、本件再訂正による請求項1、3、16、
25 17及び18に係る各発明に基づく本件特許権1を行使し得ないといえる。
9 まとめ
以上のとおり、本件各発明1(並びに本件訂正発明1-17及び1-18)に係
る本件特許権1に基づく控訴人PIPMの請求については、被控訴人に403W発明に
基づく先使用権が成立することにより、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件
特許権1を行使し得ない。本件訂正発明1-1に係る訂正の再抗弁は、被控訴人製
5 品1~5、7~16がその技術的範囲に属さないことにより、また、本件訂正発明
1-20に係る訂正の再抗弁は、クラーテ発明②の公然実施を理由とする新規性欠
如の無効理由があり、本件訂正1によって無効理由が解消されないことにより、い
ずれも再抗弁の成立が認められない。さらに、控訴人PIPMの本件再訂正による
訂正の再抗弁も理由がない。
10 以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、被控訴人による本件特許
権1の侵害は認められないから、控訴人PIPMの本件特許権1の侵害に基づく請
求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙5の別添1)●(省略)●
(別紙5の別添2) 特許権1充足論一覧表
被控訴人製品 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用 メンテナンス用
直管形 直管形 直管形 T8管直管形 L型口金 L型口金
直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ 直管形LEDユ
LEDモジュール LEDモジュール LEDモジュール LEDモジュール TUBE TYPE TUBE TYPE
品名 ニット ニット ニット ニット ニット ニット ニット ニット ニット
ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ホワイトチュー ハイパワー ミドルパワー
ブユニット ブユニット ブユニット ブモジュール ブモジュール ブユニット ブユニット ブユニット ブユニット ブユニット ブユニット ブモジュール ブモジュール タイプ タイプ
RAD-530NA RAD-537NA RAD-458NA RA-638NA-M
型番 RAD-529NA RA-652N RA-653N RAD-455WA RAD-456WA RAD-457NA RAD-526NA RAD-649N RA-660N RA-657N RA-663N
/DA/WA/WWA /WA/WWA /WA/WWA/LA /WA-M
/DA/WA/WWA /W/WW /W/WW /NA/WWA /NA/WWA /WA/WWA /WA/LA/LLA /W/WW /W /W/WW /W/WW
/LA/LLA /LA/LLA /LLA /WWA-M
y=αx (控訴人PIPM測定) 1.40 1.36 1.46 1.44 1.25 1.24 1.20 1.29 1.20 1.51 1.41 1.59 1.59 1.78 1.72
y=αx (被控訴人測定) 1.27 1.30 1.40 1.30 1.36 1.22 1.11 1.34 1.12 1.37 1.48 1.71 1.47 1.74 1.79
発明 構成要件
1-1A 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-1B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-1C を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-1D ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,y≧1.09xの関係を満たす,
1-1E ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-3A 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-3B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-3C を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-3 前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-3D ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,y≧1.21x かつ y≦1.49xである,
1-3E ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-14A 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-14B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-14C 前記筐体内に配置された長尺状の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-14D 前記基台の上に実装された複数の容器とを備え, 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争
1-14 前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
1-14E ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
実装されている,
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-14F ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,y≧1.09xの関係を満たす,
1-14G ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16A 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-16B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-16C を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-16D ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,y≧1.09xの関係を満たす,
1-16E 前記筐体は,ポリカーボネートからなる直管である, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16F ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17A 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-17B ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-17C を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-17D ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,y≧1.09xの関係を満たす,
1-17E ランプを備える, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17F 照明装置。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙5の別添2) 特許権1充足論一覧表
被控訴人製品 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
発明 構成要件
1-1A’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-1B’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-1C’ 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1D’ 前記筐体内に配置された長尺状の基板と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1E’ 前記基板の上に実装された複数の容器と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1F’ 前記基板を保持する金属製の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1G’ を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
訂正 前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
1-1H’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1 実装され,
前記基台は,前記長尺状の底部と,前記底部の短手方向の一
1-1I’ 方の端部に設けられた第1壁部と,前記底部の短手方向の他 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
方の端部に設けられた第2壁部とを有し,
前記第1壁部及び前記第2壁部は,前記底部の前記基板側に
1-1J’
衝立状に形成されており,
争 争 争 争 争 争 争 争 争 争
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-1K’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-1L’ ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17A’ ランプを備える照明装置であって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17B’ 前記ランプは, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17C’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-17D’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
訂正 前記LEDチップを発光させるための電力として,商用電源
1-17 1-17E’ からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受け ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
る口金と,を備え,
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-17F’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-17G’ 照明装置。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18A’ ランプを備える照明装置であって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18B’ 前記ランプは, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18C’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-18D’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-18E’ 前記筐体内に配置された長尺状の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18F’ 前記基台の上に実装された複数の容器と, 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争
訂正 前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられ
1-18G’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
た一対の口金と,を備え,
1-18
前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させ
1-18H’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
るための電力を受け,
前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
1-18I’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
実装され,
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-18J’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-18K’ 照明装置。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-20A’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-20B’ ○ ○
LEDチップと,
1-20C’ 前記筐体内に配置された長尺状の基台と, ○ ○
前記基台の上に実装された複数の容器と,を備えたランプで
1-20D’
あって,
争 争
訂正
1-20 1-20E’
前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
○ ○
実装され,
1-20F’ 前記筐体は,ポリカーボネートからなる直管であり, ○ ○
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-20G’ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす,
1-20H’ ランプ。 ○ ○
(別紙5の別添2) 特許権1充足論一覧表
被控訴人製品 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
発明 構成要件
1-1A’’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-1B’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-1C’’ 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1D’’ 前記筐体内に配置された長尺状の基板と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1E’’ 前記基板の上に実装された複数の容器と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1F’’ 前記基板を保持する金属製の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1G’’ を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
再訂正 1-1H’’
前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-1 実装され,
前記基台は,前記長尺状の底部と,前記底部の短手方向の一
1-1I’’ 方の端部に設けられた第1壁部と,前記底部の短手方向の他 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
方の端部に設けられた第2壁部とを有し,
前記第1壁部及び前記第2壁部は,前記底部の前記基板側に
1-1J’’
衝立状に形成されており,
争 争 争 争 争 争 争
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-1K’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-1L’’ ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-3A’’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-3B’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-3C’’ 前記複数のLEDチップの光を反射する絶縁反射シートと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
再訂正
1-3
1-3D’’ を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-3E’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-3F’’ ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16A’’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-16B’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-16C’’ 前記筐体内に配置された長尺状の基板と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16D’’ 前記基板の上に実装された複数の容器と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16E’’ 前記基板を保持する金属製の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-16F’’ を備えたランプであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
1-16G’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
再訂正 実装され,
前記基台は,前記長尺状の底部と,前記底部の短手方向の一
1-16 1-16H’’ 方の端部に設けられた第1壁部と,前記底部の短手方向の他 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
方の端部に設けられた第2壁部とを有し,
前記第1壁部及び前記第2壁部は,前記底部の前記基板側に
1-16I’’
衝立状に形成されており,
争 争 争 争 争 争 争
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-16J’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす,
1-16K’’ ランプ。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17A’’ ランプを備える照明装置であって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17B’’ 前記ランプは, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-17C’’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-17D’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
再訂正 前記LEDチップを発光させるための電力として,商用電源
1-17 1-17E’’ からの交流電力又はLED点灯用電源からの直流電力を受け ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
る口金と,を備え,
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-17F’’ し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
とすると,1.29x≦y≦1.49xの関係を満たす(但
し,x=11.7,y=15.7の場合を除く),
1-17G’’ 照明装置。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙5の別添2) 特許権1充足論一覧表
被控訴人製品 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
1-18A’’ ランプを備える照明装置であって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18B’’ 前記ランプは, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18C’’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-18D’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
LEDチップと,
1-18E’’ 前記筐体内に配置された長尺状の基台と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-18F’’ 前記基台の上に実装された複数の容器と, 争 争 争 争 争 争 争 争 争 争
前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられ
再訂正 1-18G’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
た一対の口金と,を備え,
1-18
前記一対の口金の一方のみから前記LEDチップを発光させ
1-18H’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
るための電力を受け,
前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に
1-18I’’ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
実装され,
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-18J’’ し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
とすると,1.09x≦y≦1.49xの関係を満たす(但
し,x=11.7,y=15.7の場合を除く),
1-18K’’ 照明装置。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
1-20A’ 光拡散部を有する長尺状の筐体と, ○ ○
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
1-20B’ ○ ○
LEDチップと,
1-20C’ 前記筐体内に配置された長尺状の基台と, ○ ○
再訂正 1-20D’
前記基台の上に実装された複数の容器と,を備えたランプで
争 争
1-20 あって,
(控訴審で 1-20E’ 前記複数のLEDチップの各々は,前記複数の容器の各々に ○ ○
新たな訂正 実装され,
なし) 1-20F’ 前記筐体は,ポリカーボネートからなる直管であり, ○ ○
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を
透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)と
1-20G’ ○ ○
し,隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)
とすると,1.09x≦y≦1.21xの関係を満たす,
1-20H’ ランプ。 ○ ○
(別紙5の別添3)
本件各訂正発明1の特許請求の範囲
1 本件訂正発明1
5 「光拡散部を有する長尺状の筐体と,
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED チップと,
前記複数の LED チップの光を反射する絶縁反射シートと,
前記筐体内に配置された長尺状の基板と,
前記基板の上に実装された複数の容器と,
10 前記基板を保持する金属製の基台と,を備えたランプであって,
前記複数の LED チップの各々は,前記複数の容器の各々に実装され,
前記基台は,前記長尺状の底部と,前記底部の短手方向の一方の端部に設け
られた第1壁部と,前記底部の短手方向の他方の端部に設けられた第2壁部と
を有し,
15 前記第1壁部及び前記第2壁部は,前記底部の前記基板側に衝立状に形成さ
れており,
前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに
得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合う前記 LED チップの発光
中心間隔を x(mm)とすると,
20 1.09x≦y≦1.49x の関係を満たす,
ランプ。
2 本件訂正発明1-17
「ランプを備える照明装置であって,
25 前記ランプは,
光拡散部を有する長尺状の筐体と,
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED チップと,
前記 LED チップを発光させるための電力として,商用電源からの交流電力
又は LED 点灯用電源からの直流電力を受ける口金と,を備え,
前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに
5 得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合う前記 LED チップの発光
中心間隔を x(mm)とすると,
1.09x≦y≦1.49x の関係を満たす,
照明装置。」
10 3 本件訂正発明1-18
「ランプを備える照明装置であって,
前記ランプは,
光拡散部を有する長尺状の筐体と,
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED チップと,
15 前記筐体内に配置された長尺状の基台と,
前記基台の上に実装された複数の容器と,
前記筐体の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられた一対の口金と,
を備え,
前記一対の口金の一方のみから前記 LED チップを発光させるための電力を
20 受け,
前記複数の LED チップの各々は,前記複数の容器の各々に実装され,
前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに
得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合う前記 LED チップの発光
中心間隔を x(mm)とすると,
25 1.09x≦y≦1.49x の関係を満たす,
照明装置。」
4 本件訂正発明1-20
「光拡散部を有する長尺状の筐体と,
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED チップ
と,
5 前記筐体内に配置された長尺状の基台と,
前記基台の上に実装された複数の容器と,を備えたランプであって,
前記複数の LED チップの各々は,前記複数の容器の各々に実装され,
前記筐体は,ポリカーボネートからなる直管であり,
前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したとき
10 に得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし,隣り合う前記 LED チップの
発光中心間隔を x(mm)とすると,
1.09x≦y≦1.21x の関係を満たす,
ランプ。」
15 以 上
(別紙5の別添4)
被控訴人製品1~5及び7~16の各構成(控訴人PIPMの主張)
被控訴人製品(下記表中は被告製品)1~5及び7~16を、本件各発明1及び
本件訂正発明の各構成要件に当てはめると、次の通りである。
1 本件発明1-1関係
1-1a 光拡散部を有する長尺状のカバーと、
1-1b 前記カバーの長尺方向に沿って前記カバー内に配置された複数の
LED チップと、
10 1-1c を備えたランプであって、
1-1d 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
と き に 得 ら れ る 輝 度 分 布 の 半 値 幅 を y( mm) と し 、 隣 り 合 う 前 記
LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると、次の関係を満たす
1-1e ランプ。
2 本件発明1-3関係
1-3a 光拡散部を有する長尺状の筐体と、
1-3b 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED チ
ップと、
5 1-3c を備えたランプであって、
1-3d 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過した
と き に 得 ら れ る 輝 度 分 布 の 半 値 幅 を y( mm) と し 、 隣 り 合 う 前 記
LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると、次の関係を満たす
1-3e ランプ。
なお、表に横線が引かれている製品は、対応する発明の数値範囲に含まれない
ものである(以下同様)。
3 本件発明1-14関係
1-14a 光拡散部を有する長尺状の筐体と、
1-14b 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の LED
チップと、
5 1-14c 前記筐体内に配置された長尺状の基台と、
1-14d 前記基台の上に実装された複数の容器とを備え
1-14e 前記複数の LED チップの各々は、前記複数の容器の各々に実装さ
れている、
1-14f 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過し
10 たときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし、隣り合う前
記 LED チ ッ プ の 発 光 中 心 間 隔 を x ( mm ) と す る と 、
次の関係を満たす、
25 1-14g ランプ。
4 本件発明1-16関係
(1) 構成要件1-16A 及び同16-C 関係
被控訴人製品1~5及び7~16の仕様書によれば、各被控訴人製品は、カバー
の「材質」として「PC」、すなわちポリカーボネートが採用されており、その形
5 状もすべて直管形 LED ランプである。
(2) 構成要件1-16B 関係
上記1「本件発明1-1関係」のとおりである。
5 本件発明1-17関係
10 (1) 構成要件1-17A 関係
上記1「本件発明1-1関係」のとおりである。
(2) 構成要件1-17B 関係
被控訴人製品1~5及び7~16は、直管形 LED ランプであることから「照明
装置」に当たる。
6 本件訂正発明1-1関係
1-1a’ 光拡散部を有する長尺状のカバーと、
1-1b’ 前記カバーの長尺方向に沿って前記カバー内に配置された複数の
LED チップと、
20 1-1c’ 前記複数の LED チップの光を反射する絶縁反射シートと、
1-1d’ 前記カバー内に配置された長尺状の基板と、
1-1e’ 前記基板の上に実装された複数の容器と、
1-1f’ 前記基板を保持する金属製の基台と、
1-1g’ を備えたランプであって、
25 1-1h’ 前記複数の LED チップの各々は、前記複数の容器の各々に実装さ
れ、
1-1i’ 前記基台は、前記長尺状の底部と、前記底部の短手方向の一方の
端部に設けられた壁部 A と、他方の端部に設けられた壁部 B とを有
し、
1-1j’ 前記壁部 A 及び壁部 B は、前記底部の前記基板側に衝立状に形成
5 されており、
1-1k’ 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過し
たときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし、隣り合う前
記 LED チ ッ プ の 発 光 中 心 間 隔 を x ( mm ) と す る と 、
次の関係を満たす、
1-1l’ ランプ
上記被控訴人製品1~5、7~10、12の「カバー」は、本件訂正発明1-1
25 の「筐体」に相当する。また、同被控訴人製品1~5、7~10、12の構成 1-1i
’における「壁部 A」及び「壁部 B」は、それぞれ、本件訂正発明1-1の「第1
壁部」及び「第2壁部」に相当する。被控訴人製品1~5、7~10、12の第1
壁部及び第2壁部が「衝立状」に形成されていること(本件発明1-14の構成要
件 1-1j’との関係)は、別添「被控訴人製品写真一覧(本件訂正発明1-1関係)」
のとおりである。
7 本件訂正発明1-17関係
1-17a’ ランプを備える照明装置であって、
1-17b’ 前記ランプは、
1-17c’ 光拡散部を有する長尺状のカバーと、
10 1-17d’ 前記カバーの長尺方向に沿って前記カバー内に配置された複数
の LED チップと、
1-17e’ 前記 LED チップを発光させるための電力として、商用電源から
の交流電力又は LED 点灯用電源からの直流電力を受ける口金と、
を備え、
15 1-17f’ 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過
したときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし、隣り合う
前 記 LED チ ッ プ の 発 光 中 心 間 隔 を x ( mm ) と す る と 、
次の関係を満たす、
15 1-17g’ 照明装置
上記各被控訴人製品における「カバー」は、本件訂正発明1-17における「筐
体」に相当する。
8 本件訂正発明1-18関係
20 1-18a’ ランプを備える照明装置
1-18b’ 前記ランプは、
1-18c’ 光拡散部を有する長尺状のカバーと、
1-18d’ 前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の
LED チップと、
25 1-18e’ 前記カバー内に配置された長尺状の基台と、
1-18f’ 前記基台の上に実装された複数の容器と、
1-18g’ 前記カバーの長手方向の一方の端部に給電側ソケット、他方の
端部に可動側ソケットという一対のソケットと、を備え、
1-18h’ 前記一対の口金のうち給電側ソケットのみから前記 LED チップ
を発光させるための電力を受け、
5 1-18i’ 前記複数の LED チップの各々は、前記複数の容器の各々に実装
され、
1-18j’ 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過
したときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし、隣り合う
前記 LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると、次の関係を
10 満たす
1-18k’ 照明装置
25 上記各被控訴人製品の「カバー」は、本件訂正発明1-18の「筐体」に相当
する。また、同各被控訴人製品では、一対のソケットが存在するものの、可動側
ソケットは電力を受けるものではなく、給電側ソケットのみが、LED チップを発
光させる電力を受ける構成が採用されている。
9 本件訂正発明1-20関係
5 1-20a’ 光拡散部を有する長尺状のカバーと、
1-20b’ 前記カバーの長尺方向に沿って前記カバー内に配置された複数
の LED チップと、
1-20c’ 前記カバー内に配置された長尺状の基台と、
1-20d’ 前記基台の上に実装された複数の容器と 、を備えたランプであ
10 って、
1-20e’ 前記複数の LED チップの各々は、前記複数の容器の各々に実装
され、
1-20f’ 前記カバーは、ポリカーボネートからなる直管であり、
1-20g’ 前記複数の LED チップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過
15 したときに得られる輝度分布の半値幅を y(mm)とし、隣り合う
前記 LED チップの発光中心間隔を x(mm)とすると、次の関係に
ある
15 1-20h’ ランプ。
上記各被控訴人製品の「カバー」が「PC」、すなわちポリカーボネートで構成
されていることは、上記4「本件発明1-16関係」に記載のとおりである。また、
各被控訴人製品における「カバー」は、本件訂正発明1-20の「筐体」に相当す
る。
以 上
(別紙5の別添5) 無効論等一覧表
引例
被告の抗弁 対象の特許発明 構成要件
(主) (副)
本件発明1-
無効理由1 実施可能要件違反 1,3,14,16,17
(注)本件再訂正発明1-
本件訂正発明1- 17,18は、(但し,x=11.
無効理由2 サポート要件違反 1,17,18,20 7,y=15.7の場合を除く)
以下同じ。
無効理由3 明確性要件違反 本件再訂正発明1-
1,3,14,16-18,20
新規性欠如 本件発明1- RA-631N(y=1.69x)
無効理由4 先使用 1,14,16,17 RAD-402W(y=1.71x)
1 1-1D y≧1.09x
3 1-3D 1.21x≦y≦1.49x
本件発明1- 14 1-14F y≧1.09x
16 1-16D y≧1.09x
17 1-17D y≧1.09x
1-1K' 1.09x≦y≦1.49x
1
1-1J' 衝立状
本件訂正発明1- 17 1-17F' 1.09x≦y≦1.49x
18 1-18J' 1.09x≦y≦1.49x RA-631N(y=1.69x)
進歩性欠如
無効理由5 周知技術(乙31,RAD-403W)
20 1-20G' 1.09x≦y≦121x RAD-402W(y=1.71x)
1-1K'' 1.29x≦y≦1.49x
1
1-1J'' 衝立状
3 1-3E'' 1.29x≦y≦1.49x
本件再訂正発明1 1-16J'' 1.29x≦y≦1.49x
16
- 1-16I'' 衝立状
17 1-17F'' 1.29x≦y≦1.49x
18 1-18J'' 1.09x≦y≦1.49x
20 1-20G' 1.09x≦y≦1.21x
3 1-3D 1.21x≦y≦1.49x
無効理由6 進歩性欠如 本件発明1- 乙144 乙145等
17 1-17D y≧1.09x
1 1-1D y≧1.09x
3 1-3D 1.21x≦y≦1.49x
クラーテ製品①
無効理由7 新規性欠如 本件発明1- 14 1-14F y≧1.09x
(y=1.22x)
16 1-16D y≧1.09x
17 1-17D y≧1.09x
1 1-1D y≧1.09x
3 1-3D 1.21x≦y≦1.49x
本件発明1- 14 1-14F y≧1.09x
16 1-16D y≧1.09x
17 1-17D y≧1.09x
1 1-1K' 1.09x≦y≦1.49x RAD-403W
先使用
本件訂正発明1- 17 1-17F' 1.09x≦y≦1.49x (y=1.34x)
18 1-18J' 1.09x≦y≦1.49x
1 1-1K'' 1.29x≦y≦1.49x
本件再訂正発明1 16 1-16J'' 1.29x≦y≦1.49x
- 17 1-17F'' 1.29x≦y≦1.49x
18 1-18J'' 1.09x≦y≦1.49x
1 1-1D y≧1.09x
3 1-3D 1.21x≦y≦1.49x
本件発明1- 14 1-14F y≧1.09x
16 1-16D y≧1.09x
17 1-17D y≧1.09x
1 1-1K' 1.09x≦y≦1.49x RAD-403W
無効理由8 新規性欠如
(y=1.34x)
本件訂正発明1- 17 1-17F' 1.09x≦y≦1.49x
18 1-18J' 1.09x≦y≦1.49x
1 1-1K'' 1.29x≦y≦1.49x
本件再訂正発明1 3 1-3E'' 1.29x≦y≦1.49x
- 17 1-17F'' 1.29x≦y≦1.49x
18 1-18J'' 1.09x≦y≦1.49x
本件訂正発明1-20 1.09x≦y≦1.49x
16 1-16J'' 1.29x≦y≦1.49x クラーテ製品②
無効理由9 新規性欠如 本件再訂正発明1 (y=1.208~1.278x)
17 1-17F'' 1.29x≦y≦1.49x
-
20 1-20G' 1.09x≦y≦1.49x
周知技術(乙302,RA-631N,
1-1C' 絶縁反射シート
RAD-402W)
1 壁部 乙300,乙301,又は周知技術
1-1I'
(LDL40S,乙293,乙294)
クラーテ製品① 乙293,又は周知技術(LDL40S,
1-1J' 衝立状 (y=1.22x) 乙293,乙294)
本件訂正発明1- 技術常識(RA-631N,RAD-402W,
17 1-17E' 口金
乙267)
1-18F' 基台の上に実装 クラーテ製品② 乙305,又は乙294
18 (y=1.208~1.278x) 技術常識(RA-631N,RAD-402W,
1-18H' 口金の一方のみから
乙267)
20 1-20D' 基台の上に実装 乙305,又は乙294
周知技術(乙302,RA-631N,
1-1C'' 絶縁反射シート
無効理由10 進歩性欠如 RAD-402W)
1 乙300,乙301,又は周知技術
1-1I'' 壁部
(LDL40S,乙293,乙294)
クラーテ製品① 乙293,又は周知技術(LDL40S,
1-1J'' 衝立状 (y=1.22x) 乙293,乙294)
壁部 乙300,乙301,又は周知技術
1-1I''
16 (LDL40S,乙293,乙294)
本件再訂正発明1
- 乙293,又は周知技術(LDL40S,
1-1J' 衝立状
乙293,乙294)
口金 技術常識(RA-631N,RAD-402W,
17 1-17E'
乙267)
1-18F' 基台の上に実装 クラーテ製品② 乙305,又は乙294
18 (y=1.208~1.278x) 技術常識(RA-631N,RAD-402W,
1-18H' 口金の一方のみから
乙267)
20 1-20D' 基台の上に実装 乙305,又は乙294
別紙5の別添6 被控訴人製品写真一覧(本件訂正発明1-1関係)
被控訴人製品 写真(被告第21-1 明るさタイプ
品名 大きさ
準備書面) 消費電力
メンテナンス用直管形LED 6000lm L2367
1 RAD-529NA ユニット
ホワイトチューブユニット 40.0W φ32
メンテナンス用直管形LED 3000lm L1198
2 RAD-530NA ユニット
ホワイトチューブユニット 20.7W φ32
メンテナンス用直管形LED 1500lm L580
3 RAD-537NA ユニット
ホワイトチューブユニット 11.6W φ32
L2367
直管形LEDモジュール 6000lm
4 RA-652N ホワイトチューブモジュール φ33.2
39.1W
φ34.1
L1198
直管形LEDモジュール 3000lm
5 RA-653N ホワイトチューブモジュール φ32.7
20.9W
φ33.6
メンテナンス用直管形LED 6000lm L2367
7 RAD-455WA ユニット
ホワイトチューブユニット 39.1W φ32
メンテナンス用直管形LED 4000lm L2367
8 RAD-456WA ユニット
ホワイトチューブユニット 26.3W φ32
メンテナンス用直管形LED 3000lm L1198
9 RAD-457NA ユニット
ホワイトチューブユニット 19.6W φ32
メンテナンス用直管形LED 2000lm L1198
10 RAD-458NA ユニット
ホワイトチューブユニット 13.1W φ32
メンテナンス用直管形LED 7000lm L2367
12 RAD-649N ユニット
ホワイトチューブユニット 42.5W φ32
被控訴人製品1(RAD-529NA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品2(RAD-530NA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品3(RAD-537NA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品4(RA-652N)
被控訴人製品5(RA-653N)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品7(RAD-455WA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品8(RAD-456WA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品9(RAD-457NA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品10(RAD-458NA)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
被控訴人製品12(RAD-649N)
第1壁部 絶縁反射シート
第2壁部
基台
底部
別紙5の別添7 被控訴人製品断面図
被告製品1 RAD-529NA
被告製品2 RAD-530NA
被告製品3 RAD-537NA
被告製品4 RA-652N
被告製品5 RA-653N
被告製品7 RAD-455WA
被告製品8 RAD-456WA
被告製品9 RAD-457NA
被告製品10 RAD-458NA
被告製品11 RAD-526WA
被告製品12 RAD-649N
被告製品13 RA-660N
被告製品14 RA-638WA-M
被告製品15 RA-657N
被告製品16 RA-663N
(別紙6)
本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権2
控訴人パナソニックは、以下の特許権(本件特許権2)を有する。
特許番号 特許第5584841号
発明の名称 照明用光源及び照明装置
出願日 平成26年4月3日
10 分割の表示 特願2013―24492号(以下「本件原出願2」という。)
の分割
原出願日 平成25年2月12日(以下「本件原出願日2」という。)
登録日 平成26年7月25日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲2の2)の特許請求の範囲請求項1に記載
15 のとおり(以下、同請求項記載の発明を「本件発明2」という。また、本件特許2
に係る願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書2」という。なお、下
記の本件訂正2による本件明細書2の訂正はない。)
控訴人パナソニックは、令和3年10月15日付けで、訂正審判請求(訂正20
21−390170号。甲2007、2008)をし、特許庁は、令和4年3月8
20 日付けで訂正認容の審決をした(以下、同訂正を「本件訂正2」という。甲200
9)。
控訴人パナソニックは、令和4年5月9日付けの訴え変更申立書(特許2)によ
り、請求原因における本件発明2を、本件訂正2後の特許請求の範囲請求項1に記
載の発明(以下、本件訂正2後の請求項1の発明を「本件訂正発明2」という。)
25 に変更した。
2 構成要件の分説
本件訂正発明2を構成要件に分説すると、次のとおりである(下線部は本件訂正
2による訂正箇所である。)。
2A 透光性カバーと、
2B 前記透光性カバーに覆われた基台と、
5 2C 前記基台の載置面上に載置された長尺状の基板と、
2D 前記基板の上に配置された発光素子と、
2E 前記基板を押さえるための複数の押さえ部材とを備え、
2F 前記押さえ部材は、前記透光性カバーとは分離されており、前記基板の長手
方向における前記発光素子の配光特性の劣化を抑制し且つ前記発光素子からの光を
10 遮光しないように前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置され、
2G 前記基台は、前記基板及び前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁
部と、前記基板及び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部とを有する
2H 照明用光源。
3 被控訴人の行為
15 (1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年8月1日から、被控訴人製品
4及び5を製造、販売し又は販売の申出をしている。
(2) 被控訴人製品4及び5の構成
別添2「被控訴人製品4及び5の構成(控訴人パナソニックの主張)」記載の被
控訴人製品4及び5の構成のうち、構成4e~4g及び5e~5gを除く各構成は、当事者
20 間に争いがない。
なお、別紙3物件説明書の「4 被控訴人製品4」の「(2) 被控訴人製品4の
写真」及び「5 被控訴人製品5」の「(2) 被控訴人製品5の写真」のとおり、
被控訴人製品4及び5の基板は、いずれも基台の側壁部及び突出部に接触していな
い。
25 4 構成要件の充足
被控訴人製品4の構成4a~4f及び4h並びに被控訴人製品5の構成5a~5f及び5hが
それぞれ本件訂正発明2の構成要件2A~2F及び2Hを充足することは、当事者間に争
いがない。
5 争点
(1) 本件特許権2関係の請求に固有の争点
5 ア 構成要件2Gの充足性(争点1)
イ 無効理由(公然実施による新規性欠如)の有無(争点2)
ウ 先使用権の成否(争点3)
(2) 本件特許権3、4、6及び7関係の請求と共通の争点
損害額ないし不当利得額(争点4)
10 第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件2Gの充足性(争点1)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「規制」(構成要件2G)の意義
「規制」とは、辞書によると「おきて。きまり。また、規律を立てて制限するこ
15 と。」を意味する。このような文理からは、「規制」(構成要件2G)とは、側壁部
及び突出部の存在によって、何らかの方法により基板及び押さえ部材が動く範囲を
制限していれば足りる。
また、本件明細書2では、実施の一態様として、基板と基台との間に隙間が生じ
る場合も本件訂正発明2の技術的範囲に含まれることを前提としている。さらに、
20 他の実施例においても、「押さえ部材」は、基板を押さえるものとして、押圧力に
よって基板を固定するものと位置付けられており、基板が基台に設けられた側壁部
又は突出部に接触していない場合も開示されている。
したがって、「規制」(構成要件2G)については、基板及び押さえ部材のそれぞ
れが側壁部及び突出部に物理的に接触していなければならないという限定はなく 、
25 基板については、直接的に側壁部又は突出部に接触させる方法のほか、押さえ部材
を介して動きを制限する方法をも含む。
(2) 構成要件の充足
被控訴人の主張によれば、被控訴人製品4及び5においては、サーマル・テープ
により基板を基台に接着させており、基板が基台の側壁部及び突出部に接触してお
らず、また、サーマル・テープの使用に加えて、基台に設けられた側壁部及び突出
5 部という構成と共に、基板を跨ぐようにして押さえ部材を設置しているという。し
かし、仮にサーマル・テープのみによって基板の垂直及び水平方向の動きの規制が
必要十分であれば、あえて押さえ部材を用いる必要はない。被控訴人製品4及び5
は、基台に設けられた側壁部及び突出部によって押さえ部材及び基板の動きを制限
するという本件訂正発明2の技術的思想を使用しつつ、単にサーマル・テープとい
10 う従来技術を付加利用したものにすぎない。
したがって、被控訴人製品4及び5は、本件訂正発明2の構成要件2Gを充足する。
(被控訴人の主張)
(1) 「規制」(構成要件2G)の意義
ア 以下のとおり、本件訂正発明2の構成要件2Gにより、基台が有する側壁部及
15 び突出部は、押さえ部材だけでなく基板の水平方向の動きと垂直方向の動きとを規
制する部位と特定されていることから、側壁部及び突出部は、直接的に基板の水平
方向及び垂直方向の動きを規制している構成である必要がある。少なくとも、押さ
え部材の水平方向及び垂直方向での動きを規制することにより間接的に基板の動き
を規制する構成は、基板の水平方向及び垂直方向の動きを「規制」(構成要件2G)
20 する構成に当たらない 。
イ 本件特許2に係る特許請求の範囲請求項2は、押さえ部材が基台の側壁部と
突出部とによって動きが規制されていれば「間接的に基板の動きが規制される」構
成になっているところ、同請求項は、あえて押さえ部材の動きだけを規制する部位
として基台の側壁部及び突出部の機能を特定している。これは、同請求項では「基
25 板」の動きを直接的に規制する発明として特定する必要がないことによる。他方 、
本件訂正発明2においては、構成要件2Gにより発明を特定している。このような用
語の使用方法の区別に鑑みると、「規制」(構成要件2G)は、請求項2において他
の構成から当然に含む機能である「間接的な基板の動きの規制」ではなく、「直接
的な基板の動きの規制」を意味するものと理解される。
ウ 本件明細書2において、「基板」の「水平方向の動きを規制する側壁部」に
5 関する記載は【0063】のみであるところ、これを図3と合わせて見ても、押さえ部
材の水平方向の動きを規制することで間接的に基板の水平方向を規制する技術的事
項の記載はない。水平方向の動きの規制も「押さえ部材」を通じて間接的に行って
よい根拠として控訴人パナソニックが指摘する本件明細書2の記載は、全て基板の
突出部11bが押さえ部材50の基板押さえ部51の下側の空間に挿入されていることの
10 記載でしかない。
エ 押さえ部材を物理的に固定し、間接的に基板が固定されることで、水平方向
及び垂直方向の動きを規制する技術的事項は、本件原出願2に係る発明の内容であ
る。控訴人パナソニックは、本件特許2の分割出願の際、特許庁に対し、構成要件
2Gに相当する構成を有する点が本件原出願2に係る発明と異なる旨を明記した平成
15 26年4月3日提出に係る上申書(以下「本件上申書」という。)を提出し、その
後、構成要件2Gについては変更がないまま、本件特許2の登録に至っている。
したがって、構成要件2Gに関して、「側壁部と突出部が押さえ部材の動きを規制
することで、間接的に基板の動きを規制する」構成を含む旨を本件訴訟において控
訴人パナソニックが主張することは、包袋禁反言に反する。
20 (2) 構成要件の非充足
被控訴人製品4及び5において、基板は、粘着性のあるサーマル・テープにより
固定されているだけであり、基台の側壁部及び突出部は基板に接触していない。
したがって、被控訴人製品4及び5は、その基台に基板の水平方向の動きを規制
する側壁部も、基板の垂直方向の動きを規制する突出部も備えておらず、構成要件
25 2Gを充足しない。
2 無効理由(公然実施による新規性欠如)の有無(争点2)
(被控訴人の主張)
(1) 控訴人パナソニックからの権利行使が制限されること
「規制」(構成要件2G)につき、基台の側壁部及び突出部による基板の動きの規
制には、押さえ部材の動きを規制することにより間接的に基板の動きを規制するこ
5 とを含むと解釈した場合、被控訴人は、以下のとおり、本件原出願日2以前に、本
件訂正発明2並びに被控訴人製品4及び5と同一の構成となる製品RA-631N
(以下「631N製品」という。)及びRAD-402W(以下、「402W製品」
といい、これと631N製品を併せて「631N製品等」という。)を製造、販売
等して実施していたことになる。すなわち、本件訂正発明2は、特許出願前に日本
10 国内において公然実施をされた発明であるから、本件特許2は、特許法29条1項
2号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものであ
って(同法123条1項2号)、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特
許権2を行使することができない(同法104条の3第1項)。
(2) 公然実施
15 ア 631N製品について
631N製品は、平成24年1月発行の被控訴人のチラシ(以下「本件チラシ」
という。)及び同年2月発行の被控訴人のカタログ(以下「本件カタログ」とい
う。)に掲載されている。また、631N製品は、本件原出願日2より前に製品内
容が確定され、その後変更がない。
20 さらに、被控訴人札幌営業所は、同月29日、631N製品20本を同年3月2
3日までにラルズストア宮の沢店(以下「ラルズストア」という。)に納品する注
文を受け、同月21日、運送会社を介して出荷した。
加えて、631N製品は、同月、韓国から日本に輸入され、通関した。
以上によると、631N製品に係る発明(以下「631N発明」という。)は、
25 本件原出願の日より前に公然実施をされた発明といえる。
イ 402W製品について
402W製品は、本件チラシ(なお、402W製品は「平成24年3月初旬発売
開始予定」とされている。)及び本件カタログに掲載されている。また、402W
製品は、平成24年4月頃、大量に輸入され、同時期において広く販売されていた。
さらに、被控訴人は、同年4月16日、取引先であるカナデンに対し、402W
5 製品を見本品として無償交付した。カナデンは電気工事業を営む者であり、被控訴
人は、新製品の販売に当たって実際の市販品を取引先に見本品として交付しただけ
であって、被控訴人とカナデンとの間に、402W製品の構成に係る秘密保持義務
はない。
ウ 小括
10 以上によると、402W製品に係る発明(以下「402W発明」といい、これと
631N発明を併せて「631N等発明」という。)は、本件原出願日2より前に
公然実施をされた発明といえる。
控訴人ら は 、 原 判 決 の 公 然 実 施 性 の 判 断 を 理 由 が な い と す る が 、 被 控 訴 人 は
既に十分な主張立証している。サンプル品であれば、市販品でも、守秘義務
15 が生じるとの控訴人らの理解は成り立たない。
(3) 631N等発明の構成等
ア 631N等発明の構成
631N等発明の構成は、いずれも、以下のとおりである。
o 透光性カバーを備えた長尺円筒状の筐体と、
20 p 前記透光性カバーに覆われた基台と、
q 前記基台の載置面上に載置された長尺状の基板と、
r 前記基板の上に配置されたLEDチップと、
s 前記基板を押さえるための複数の押さえ部材とを備え、
t 前記押さえ部材は、前記透光性カバーとは分離されており、前記基板の長手方
25 向における前記LEDチップからの光を少なくとも光軸から60度の範囲で一切遮断
(光)しないように前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置され、
u 前記基台は、前記基板前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁部(基
板と側壁部とは接触しておらず、基板との関係では間接的に規制)と、前記基板及び
前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部(基板と突壁部とは接触しておら
ず、基板との関係では間接的に規制)とを有する
5 v ランプ
イ 631N等発明の上記構成のうち、構成o~t及びvは、本件訂正発明2の構
成要件2A~2F及び2Hと同一又はこれに相当する。
また、631N製品等は、構成uにより、「押さえ部材」を介して基板の動きを
規制しているといえる。このため、「規制」(構成要件2G)につき、基台の側壁部
10 及び突出部による基板の動きの規制には押さえ部材の動きを規制することにより間
接的に基板の動きを規制することを含むと解した場合、631N等発明の構成uは、
本件訂正発明2の構成要件2Gに相当する。
したがって、631N等発明の構成は、本件訂正発明2の構成と同一である。
(4) 「遮光しない」(構成要件2F)の意義
15 「遮光」とは、「光を遮ること」と定義されるが、全ての光を遮るという意味を
有する用語として一義的なものとは理解されない。
また、本件訂正発明2は、照明装置の技術分野の発明であるところ、当該分野は、
直管形LEDユニット内のLEDからの発光を室内に配光するに当たり、発光特性に応じ
た全ての光の厳密な「遮光」が求められる技術分野ではない。
20 さらに、本件明細書2には、LEDのランバーシアン配光特性に関する記載はなく、
当該配光特性との関係で、発光経路に押さえ部材が位置することを防ぐため、押さ
え部材の形状に「傾斜面を設けた」とか「曲面」にしたとの記載も存在しない。
【0087】には、光の経路の途中に押さえ部材が存在することにより光の乱反射が発
生し得ることを前提として、これを防止するために押さえ部材の表面を「傾斜面や
25 曲面とすることが好ましい」とされているだけであり、配光特性に応じた光の経路
に押さえ部材の表面が存在しないように構成したとは記載されていない。本件明細
書2の図面からも、そのような構成は読み取れない。このような本件明細書2の記
載等を参酌すると、「前記発光素子からの光を遮光しないように」(構成要件2F)
とは、「発光素子の間に押さえ部材が基板を跨ぐように配置されることで、発光素
子の上面の光を遮光しない」という意味を超えて解釈されることはない。
5 本件特許2の出願の経緯においても、控訴人パナソニックは、LED素子を全面的
に覆うカバー部材等の部位が「押さえ部材」として機能している先行例との比較の
上で、本件訂正発明2の「押さえ部材」が「遮光しない」と主張していたにすぎず、
押さえ部材が一切遮光してはならないとの意味で先行例との相違を主張したのでは
ない。なお、本件訂正発明2は、その構成要件2Fにおいて、要件を追加されてい
10 るが、「劣化を抑制」とあるとおり、また、実施例において、押さえ部材側に偏っ
た配置を可能とする構成が明記されているとおり、出射光の一部が押さえ部材に遮
られ、乱反射が生じることを前提に、角部を丸めて、その「劣化を抑制」と特定し
ているだけである。
以上によると、「遮光」(構成要件2F)には特別の構成上の限定はなく、少なく
15 とも、631N製品等の押さえ部材との相違はない。
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 公然実施がされていないこと
ア 631N製品について
部品明細表が存在することは、製造準備の図面が発行されたことを示すにとどま
20 る。本件カタログも、631N製品が本件訂正発明2の各構成要件を充足するか否
かを明らかにするものではない。このため、いずれも、本件原出願日2より前に6
31N発明が公然実施されたことを裏付けるものではない。
さらに、被控訴人札幌営業所が平成24年3月21日に631N製品をラルズス
トアに納品した証拠として提出する納品書は、検印や承認印等がなく、実際に発行
25 されたものであるか疑義がある。
被控訴人が提出する通関書類一式は、被控訴人の取引先からの出港日又はその予
定日が同月19日であると示されているだけであり、ラルズストアへの販売や同店
での使用を示すものではない上、「3/29入荷」との手書きの記載があることに
照らすと、同月21日出荷という被控訴人の主張する事実と整合しない。
原判決が402W製品を公然実施品と認定した判断には、明白な誤りがある。サ
5 ンプル品の現実の納品時期や経緯等は判然としないばかりか、少なくとも(点灯試
験・分解テスト用)「サンプル品」の場合、それ自体では公然性が認められないこ
とは明らかというべきである。その内部構造等は不明であり、膨大な品番群の中で
この品番のものが実際に不特定の第三者に販売等されていた事実の立証もない。
イ 402W製品について
10 (ア) 部品明細表及び本件カタログについては、上記アと同様である。
また、402W製品の見本品を平成24年4月16日にカナデンに対して納品し
た点については、証拠上、上記見本品の納品の時期、経緯等は判然としない上、証
拠間の関連性が不明なものや食違いのあるものなどがある。
(イ) 公然実施とは、不特定の者に知られ、又は知られるおそれのある状況で実
15 施されたことをいい、少なくとも、取引において秘密を保持することが暗黙に求め
られるような場合は、公然実施には当たらない。
被控訴人とカナデンとの間で取引されたのは、正規の商品ではなく見本品(サン
プル品)であるところ、サンプル品は、正規の商品と異なる仕様が存在していたり、
相手方と特別な関係を前提として授受されたりすることが通常である。実際、被控
20 訴人は、当該取引をするために、見本品手配申請書の提出という特殊な社内手続ま
で要していた。しかも、当該取引は、「渡し切りサンプル(点灯試験・分解テス
ト)」が目的であると明記されている。これらの事情を踏まえると、当該取引に当
たっては、被控訴人とカナデンとの間に秘密を保持することが暗黙のうちに求めら
れていたといえる。
25 以上によると、被控訴人とカナデンとの間でサンプル品の取引がされたという事
実をもってして、402W発明が公然実施されたとはいえない。
(2) 「遮光しない」の意義
ア 本件訂正発明2の構成要件2Fは、「押さえ部材」について、単に基板を基台
に押さえるに止まらず、発光素子(LEDチップ)からの光を「遮光しないように」
配置されることを発明特定事項としている。
5 「遮光」とは、文字どおり「光を遮ること」を意味する。したがって、特許請求
の範囲の記載から、押さえ部材に求められる「光を遮光しないように」との特性は、
LEDチップから出射される光の主な進路が押さえ部材によって妨げられないことを
意味する。また、LEDの照明分野において、LEDがランバーシアン配光特性を有する
ことは、当業者にとっては自明であり、技術常識にすぎない。このため、当業者で
10 あれば、構成要件2Fに係る特許請求の範囲の記載から、「押さえ部材」は、ランバ
ーシアン配光特性を前提として、これに従った光の進行を遮らない形状のものであ
ることを認識する。
さらに、本件明細書2によると、本件訂正発明2では、押さえ部材について、基
板を跨ぐように配置されるとされており、その際、LEDチップの配光特性の劣化を
15 抑制すべきことが記載されている。
加えて、控訴人パナソニックは、本件訂正発明2の審査過程における補正に際し、
構成要件2Fの「光を遮光しないように」との文言を追加しているところ、このよう
な構成につき、平成26年6月19日付け意見書(以下「本件意見書」という。)
において、押さえ部材が発光素子からの光を遮光しないように配置されることによ
20 り、押さえ部材による配光への影響を気にする必要がなく、より簡単な構成で基板
を基台に固定することができるという効果と共に、光の取り出し効率が低下するこ
とを抑制できる効果が得られる としている。このように、構成要件2Fの追加は、
「簡単な構成で、発光素子が実装された基板に対して過度の負荷を与えることなく
当該基板を基台に固定することができる。」という作用効果をより高く実現するも
25 のであることに加え、LEDチップの配光特性に配慮した押さえ部材を配置すること
により、同チップから出射される光を効率良くランプの光源とできるという効果を
有する。このような構成要件2Fの作用効果からすると、「遮光しない」とは、LED
チップの配光特性を前提として、LEDチップから出射される光の取り出し効率を阻
害しないことをいう。
イ ランバーシアン配光は、光軸上光度の半値となる角度が片側60°となるこ
5 と、すなわち、0°~60°の範囲で大部分の光が出射される特性を有するもので
あって、60°以上の角度において一切の光が出射されていないことを示すもので
はない。このため、本件訂正発明2においても、ランバーシアン配光特性に従った
大部分の光については押さえ部材がLEDからの光を遮光しないことによってその配
光特性を劣化させないようにできる一方、それ以外のわずかな光については、その
10 進行方向に押さえ部材が存在し得る。こうした光について、押さえ部材の表面を傾
斜面や局面にすることで乱反射等を防止する必要が存在する。本件明細書2におい
ては、このような観点から、押さえ部材の表面を傾斜面や曲面とする実施例が記載
されているにすぎず、押さえ部材がランバーシアン配光特性に従った光の進路に存
在することを前提とするものではない。
(3) 631N等発明が構成要件2Fに相当する構成を有しないこと
631N製品等では、押さえ部材の空洞端部は、LEDチップの光源から45°~
56.3°の位置に存在する。そのため、631N製品等では、押さえ部材により、
LEDチップから出射される光が遮光されている(なお、被控訴人製品5では、押さ
え部材による遮光角度がいずれも60°を超えるように変更されており、押さえ部
5 材がLEDチップから出射される光を遮光しない構成を満たす。)。また、本件訂正
2により、402W製品は、本件訂正発明2の構成要件を充たさないことがより一
層明らかになったものである。
以上のとおり、631N等発明は、押さえ部材に関する「遮光しない」(構成要
件2F)との構成を欠くことから、本件訂正発明2の構成と異なる。
(4) したがって、631N等発明の公然実施により、本件訂正発明2につき新
規性が欠如するとはいえない。
25 3 先使用権の成否(争点3)
(被控訴人の主張)
前記2(被控訴人の主張)のとおり、被控訴人は、本件原出願日2以前に、63
1N製品等を製造、販売等して実施する事業をしていた。したがって、「規制」
(本件訂正発明2の構成要件2G)につき、押さえ部材の動きを規制することにより
間接的に基板の動きを規制することを含むと解釈した場合、被控訴人は、本件訂正
5 発明2の内容を知らないで自らその発明と同一である631N等発明をし、本件原
出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしていた者として、そ
の発明及び事業の目的の範囲内において、本件訂正発明2に係る特許権(本件特許
権2)につき通常実施権を有する。そうである以上、被控訴人製品4及び5につき、
控訴人パナソニックの被控訴人に対する本件特許権2の行使は許されない。
10 (控訴人パナソニックの主張)
被控訴人が本件原出願の際、本件訂正発明2と同一の発明をし、その実施である
事業をしていないことは、前記2(控訴人パナソニックの主張)(1)のとおりであ
る。また、631N等発明の構成が本件訂正発明2と異なることは、同(3)のとお
りである。
15 4 損害額ないし不当利得額(争点4)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 不法行為に基づく損害賠償請求
ア 被控訴人製品4及び5について(本件特許権2に対する侵害)
被控訴人は、遅くとも平成26年8月1日から被控訴人製品4及び5の製造、販
20 売等を行い、平成29年1月までの間に、少なくとも合計2億円の利益を得た。
\200,000,000/年(売上)*0.2(限界利益)*30/12年(H26.8~H29.1)
=\100,000,000(被控訴人製品4及び5それぞれにつき)
イ 被控訴人製品6について(本件特許権4、6及び7に対する侵害)
被控訴人は、遅くとも平成26年3月1日から被控訴人製品6の製造、販売等
25 を行っており、平成29年1月までの間に、少なくとも合計8億7500万円の
利益を得た。
\1,500,000,000/年(売上)*0.2(限界利益)*35/12年(H26.3~H29.1)
=\875,000,000
(2) 不当利得返還請求
被控訴人は、遅くとも平成26年3月1日から被控訴人製品6の製造、販売等を
5 行い、その販売により得た利益について、法律上の原因なく利得を得た。その額は、
少なくとも合計4億3750万円を下らない。
\1,500,000,000/年(売上)*0.1(実施料率)*35/12年(H26.3~H29.1)
=\437,500,000
(3) 小括
10 以上によると、被控訴人は、被控訴人製品4~6に係る本件特許権2、4、6及
び7の侵害により、少なくとも10億7500万円の利益を受けたことから、控訴
人パナソニックは、その額の損害を受けたものといえる(特許法102条2項)。
したがって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、上記各特許権侵害の不法行
為に基づき、10億7500万円の損害賠償請求権を有する。
15 また、被控訴人は、被控訴人製品6に係る本件特許権3の侵害により、少なくと
も4億3750万円の不当利得を得た。したがって、控訴人パナソニックは、被控
訴人に対し、本件特許権3の侵害による利得につき、4億3750万円の不当利得
返還請求権を有する。
控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、特許権侵害の不法行為に基づく10億
20 7500万円の損害賠償金のうち一部である9億円の損害賠償金及びこれに対する
訴状送達の日の翌日(平成29年3月1日)から支払済みまで改正前の民法所定の
年5%の割合による遅延損害金の支払を求め、又は不当利得返還請求に基づく4億
3750万円の不当利得返還金及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成29年
3月1日)から支払済みまで改正前の民法所定の年5%の割合による遅延利息の支
25 払を求める。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件明細書2の記載
本件明細書2には、次のような記載がある。
5 (1) 技術分野
「本発明は、直管形ランプ等の照明用光源及びこれを備えた照明装置に関する。」
(【0001】)
(2) 背景技術
「発光ダイオード(LED…)等の半導体発光素子は、…様々な製品の光源として
10 期待されている。中でも、LEDを用いたランプ(LEDランプ)の研究開発が盛んに進
められている。」(【0002】)
「LEDランプとしては、両端部に電極コイルを有する直管形蛍光灯に代替する直
管形のLEDランプ(直管形LEDランプ)…等がある。例えば、特許文献1には、従来
の直管形LEDランプが開示されている。」(【0003】)
15 「LEDランプには、光源として1つ又は複数のLEDモジュールが内蔵されている。
LEDモジュールは、例えば、基板と、基板の上に実装された複数のLED等とによって
構成されている。」(【0004】)
(3) 発明が解決しようとする課題
「直管形LEDランプの一例として、例えば、長尺円筒状のガラス管を外郭筐体と
20 して用い、当該ガラス管内に長尺状の金属製の基台を配置する構造のものがある。
また、半円筒状の樹脂製の透光性カバーと長尺状の金属製の基台とを組み合わせる
ことで長尺円筒状の外郭筐体を構成する構造のものもある。」(【0006】)
「いずれの構造の場合も、複数個の長尺状のLEDモジュールが長尺状の基台の上
に一列に配置されており、各LEDモジュールは所定の方法で基台に固定されている。
25 LEDモジュールを基台に固定する方法としては、いくつか考えられる。」(【000
7】)
「例えば、LEDモジュールと基台とをシリコーン樹脂等の接着剤で接着する方法
がある。しかしながら、LEDランプを照明装置に取り付けた場合、LEDモジュールは
基台に対して下側(床側)に位置することになる。このため、接着剤のみで接着し
ただけでは、接着力が次第に低下し、LEDモジュールが自重によって基台から落下
5 する場合がある。さらに、接着剤を用いた固定方法では、製造時に硬化時間を要す
るので製造時間が長くなるという問題もある。」(【0008】)
「金属製の基台の一部をかしめることによってLEDモジュールの基板を押さえつ
けるという方法もある。しかしながら、かしめによってLEDモジュールの基板を押
さえつけると、かしめた部分において基板に局所的な負荷がかかることになる。」
10 (【0009】)
「LEDモジュールの基板と基台とをねじ止めする方法もある。しかしながら 、基
板と基台とを直接ねじ止めすると、ねじの締め付け力によって、この場合も基板に
局所的な負荷がかかることになる。」(【0010】)
「このように、基板に局所的な負荷がかかると、基板に歪みが生じ、LEDモジュ
15 ールの信頼性が低下するという問題がある。」(【0011】)
「本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成
で、発光素子が実装された基板に対して過度の負荷を与えることなく当該基板を基
台に固定することができる照明用光源及び照明装置を提供することを目的とする。」
(【0012】)
20 (4) 課題を解決するための手段
「上記目的を達成するために、本発明に係る照明用光源の一態様は、透光性カバ
ーと、前記透光性カバーに覆われた基台と、前記基台の載置面上に載置された基板
と、前記基板の上に配置された発光素子と、前記基板を押さえるための押さえ部材
とを備え、前記押さえ部材は、前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置され、前
25 記基台は、前記基板及び前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁部と、前
記基板及び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部とを有することを特
徴とする。」(【0013】)
「本発明に係る照明用光源の一態様において、前記押さえ部の一部材は、前記基
板と前記基台との間の隙間に位置していてもよい。」(【0016】)
(5) 発明の効果
5 「本発明によれば、簡単な構成で、発光素子が実装された基板に対して過度の負
荷を与えることなく当該基板を基台に固定することができる。」(【0018】)
(6) 発明を実施するための形態
「以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すもの
である。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状…などは、一例で
10 あって本発明を限定する主旨ではない。」(【0020】)
「LEDモジュール10は、直管形LEDランプ1の光源であり、透光性カバー20に覆わ
れる形で基台30の上に配置される。基台30に載置されたLEDモジュール10は、押さ
え部材50によって基台30に固定される。具体的な固定方法については後述する。」
(【0028】)
15 「LEDモジュール10は、長尺状であって、基台30の長手方向(X軸方向)に沿っ
て複数並べられる。本実施の形態では、4つのLEDモジュール10を用いて、短辺部
分が互いに隣り合うように直線状に配置されている。」(【0029】)
「本実施の形態におけるLEDモジュール10は、表面実装(SMD…)型の発光モジュ
ールであって、基板11と、基板11に実装された複数のLED素子12と、…電極端子13
20 と、…金属配線…とを備える。基板11が基台30の載置面上に載置されることで、LE
Dモジュール10が基台30の載置面上に載置される。」(【0030】)
「基板11は、長尺状の基板である。基板11は、矩形基板の一部が切り欠かれたよ
うな形状になっており、基板11には、切り欠き部11a(凹部)が設けられている。
…例えば、切り欠き部11aは、矩形基板の短辺の中央部分を残すように、対向する
25 長辺端部から内方に後退するように一対で設けられている。」(【0032】)
「このように、長尺状の矩形基板に切り欠き部11aが存在する結果、切り欠かれ
ずに残った部分は、矩形基板の主面水平方向で長手方向に突出する突出部11bとな
る。つまり、突出部11bは、矩形基板の短辺側の一部から長手方向に延在するよう
に設けられる。」(【0033】)
「なお、基板11としては、切り欠き部11aが設けられていない矩形基板を用いて
5 も構わない。」(【0034】)
「基台30は、外郭筐体(ランプ筐体)の外面の一部を構成し、LEDモジュール10
を支持するための長尺状の支持基台である。基台30には複数のLEDモジュール10が
載置される。」(【0055】)
「図3に示すように、基台30は、LEDモジュール10(基板11)を載置するための載
10 置部31と、…外郭部32と、…中空部33と、連結部34とを有する。」(【0058】)
「載置部31における基台30の短手方向(Y軸方向)の両端部には溝部31a(レー
ル)が設けられている。各溝部31aは、断面形状が逆L字状に構成されており、基
台30の長手方向の一方の端部から他方の端部にわたって(X軸方向に)延設されて
いる。各溝部31aは、載置面の主面垂直方向(Z軸方向)に立設するように形成さ
15 れた板状の側壁部31a1と、載置面の主面水平方向に側壁部31a1から突出する突出部
31a2とによって構成されている。つまり、溝部31aの窪みは、側壁部31a1と突出部3
1a2とによって構成された空間領域であり、溝部31aはY軸方向に開口するように構
成されている。」( 【 0061】)
「各溝部31aの窪みには、LEDモジュール10の基板11の長辺端部と、押さえ部材50
20 の固定部52とが収納される。」(【0062】)
「これにより、基板11の長辺端部と押さえ部材50の固定部52の端部とは横並びで
溝部31aに収納される。また、溝部31aの側壁部31a1は、基板11の長辺端部に対向し、
突出部31a2は、基板11及び固定部52の表面に対向する。したがって、基板11及び押
さえ部材50の主面水平方向の動きが側壁部31a1によって規制されるとともに、基板
25 11及び押さえ部材50の主面垂直方向の動きが突出部31a2によって規制されるので、
基板11及び押さえ部材50は溝部31a1から抜け出すことがない。」(【0063】)
「押さえ部材50は、LEDモジュール10の基板11を基台30に押さえるように構成さ
れており、…基板11の表面を押さえる部分である基板押さえ部51と、基台30に固定
される部分である固定部52とを有する。」(【0076】)
「固定部52は、基板押さえ部51の脚部であり、基板押さえ部51の両端部に設けら
5 れている。基板押さえ部51と固定部52とは段差を有するように構成されており、基
板押さえ部51の裏面(基台30に対向する面)の高さ位置は、固定部52の裏面(基台
30との接触面)の高さ位置よりも高い。これにより、押さえ部材50を基台30に配置
したときに、基板押さえ部51の下方には空間領域が形成される。この空間領域に基
板11の突出部11bが挿入される。」(【0077】)
10 「基板押さえ部51の裏面には、基板11の表面に接触する凸部 53が設けられてい
る。」(【0078】)
「図5(a)及び図6に示すように、基台30上に隣り合うように並べられた2つの基
板11は、一方の基板11の突出部11bと他方の基板11の突出部11bとが隣接するように
配置されている。これにより 、隣り合う基板11の各々の切り欠き部 11aも隣接す
15 る。」(【0083】)
「押さえ部材50は、基板11を跨いで基台30の上に配置されている。具体的には、
押さえ部材50は、基板11の切り欠き部11aから基板11を跨ぐように基台30の上に配
置されている。また、切り欠き部11aが対向して一対設けられているので、押さえ
部材50は、一対の切り欠き部11aの間の部分の基板11(突出部11b)を跨ぐように基
20 台30の上に配置されている。」(【0084】)
「これにより、図5(b)に示すように、基板11の突出部11bは、基板押さえ部51に
よって押さえつけられる。言い換えると、基板押さえ部51は、跨いだ部分の基板11
(突出部11b)の表面を押さえている。このように、突出部11bは、押さえ部材50の
基板押さえ部51と基台30とによって挟持される。」(【0085】)
25 「なお、本実施の形態では、基板11に切り欠き部11aが設けられているので、押
さえ部材50は、切り欠き部11aに対応させて突出部11bを跨ぐように構成されている
が、基板11は切り欠き部11aのない矩形基板等でもよく、この場合、押さえ部材50
は基板11の一部を跨ぐように構成されていればよい。」(【0086】)
「なお、基板押さえ部51には角が存在しないことが好ましく、基板押さえ部51の
表面は、傾斜面や曲面とすることが好ましい。これにより、LED素子12間に基板押
5 さえ部51が存在しても光の乱反射等を抑制することができるので、配光特性の劣化
を抑制することができる。」(【0087】)
「押さえ部材50の固定部52は、切り欠き部11aが設けられた位置に丁度収まるよ
うに配置される。つまり、固定部52は、切り欠き部11aが設けられた位置で基台30
に接触している。」(【0088】)
10 「本実施の形態において、押さえ部材50は、隣り合う基板11を跨ぐようにして配
置されている。つまり、押さえ部材50(基板押さえ部51)は、一方の基板11の突出
部11bと他方の基板11の突出部11bとを同時に押さえている。また、基板押さえ部51
の裏面に形成された凸部53も両方の基板11に接触している。」(【0089】)
「押さえ部材50は、塑性変形部30Kによる押圧力によって基台30に固定されてい
15 る。塑性変形部30Kは、基台30の溝部31aの一部を塑性変形させることによって形成
される。例えば、塑性変形部30Kは、かしめ部であり、…固定部52が収納された部
分の溝部31aをかしめることによって、固定部52を基台30に固定することができ、
押さえ部材50を基台30に固定させることができる。」(【0091】)
「これに連動して、基板11(突出部11b)は、押さえ部材50の基板押さえ部51か
20 ら押圧力を受けることになる。つまり、固定部52と溝部31aとをかしめることによ
って、固定部52に接続される基板押さえ部51が基板11(突出部11b)に対して押圧
力を与えることになる。これにより、基板11は、押さえ部材50からの押圧力によっ
て、基台30に押しつけられて基台30に固定される。」(【0092】)
「本実施の形態では、押さえ部材50を固定するときの押圧力によって基板11を基
25 台30に固定している。これにより、基板11に対して間接的に押圧力を加えることが
できるので、基板11に局所的な負荷がかかることを抑制できる。したがって、簡単
な構成で、基板11に対して過度の負荷を与えることなく当該基板11を基台30に固定
することができる。」(【0138】)
「本実施の形態において、押さえ部材50の固定部52は、切り欠き部11aが設けら
れた位置において基台30に接触している。これにより、押さえ部材50を基台30に安
5 定して固定させることができるので、基板11も安定して基台30に固定することがで
きる。」(【0142】)
「以上、本発明に係る照明用光源及び照明装置について、実施の形態及び変形例
に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。」
(【0149】)
10 「例えば、上記実施の形態及び変形例では、隣り合う基板11の隣接部分を押さえ
部材50によって押さえたが、1つの基板の一部のみを押さえ部材50で押さえるよう
に構成しても構わない。具体的には、基板11の対向する長辺端部の一部を跨ぐよう
に押さえ部材50を配置しても構わない。」(【0150】)
2 構成要件2Gの充足性(争点1)について
(1) 「規制」(構成要件2G)の意義
ア 特許請求の範囲の記載
本件訂正発明2に係る特許請求の範囲請求項1には、「透光性カバー」(構成要
5 件2A)、「透光性カバーに覆われた基台」(構成要件2B)、「基台の載置面上に載
置された長尺状の基板」(構成要件2C)、「基板の上に配置された発光素子」(構
成要件2D)及び「基板を押さえるための複数の押さえ部材」(構成要件2E)を備え
る「照明用光源」(構成要件2H)において、「前記押さえ部材」は「前記透光性カ
バーとは分離されており、前記基板の長手方向における前記発光素子の配光特性の
10 劣化を抑制し且つ前記発光素子からの光を遮光しないように前記基板を跨ぐように
前記基台の上に配置され」るものであること(構成要件2F)、「前記基台」は「前
記基板及び前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁部」及び「前記基板及
び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部 」を有するものであること
(構成要件2G)が記載されている。
15 もっとも、「前記基台」が有する「側壁部」及び「突出部」が「前記基板及び前
記押さえ部材」の「水平方向」及び「垂直方向」の各「動き」を「規制」すること
について、「規制」の具体的な態様ないし方法に関する記載はなく、また、特許請
求の範囲の記載全体を見ても、これをうかがわせる記載は見当たらない。このため、
「規制」の具体的な態様ないし方法、すなわち、「側壁部」及び「突出部」が基板
20 及び押さえ部材に接触するなどして直接的にこれらの動きを規制する構成のみを意
味するのか、何らかの形で間接的に規制する構成を含むものであるのかは、特許請
求の範囲の記載からは一義的に明らかでない。
イ 本件明細書2の記載
(ア) 本件明細書2の記載(前記1)によると、本件訂正発明2は、例えば、基
25 板と、基板の上に実装された複数の発光素子(LED等)とによって構成されるLEDモ
ジュールを1つ又は複数内蔵するLEDランプにおいて、LEDモジュールを基台に固定
する方法として、接着剤で接着する方法や金属製の基台の一部をかしめる方法、基
板と基台とをねじ止めする方法といった従来の方法が有する問題を解決するために、
簡単な構成で、発光素子が実装された基板に対して過度の負荷を与えることなく当
該基板を基台に固定することができる照明用光源を提供することを目的とし(【00
5 07】~【0012】)、そのような効果を奏するものである(【0018】)。本件訂正発
明2の各構成要件のうち、構成要件2A~2Eは、照明用光源(構成要件2H)が備える
構成要素を規定するものであるのに対し、構成要件2F及び2Gは、それぞれ、押さえ
部材及び基台の構成及び配置ないし機能を特定するものであることに鑑みると、構
成要件2F及び2Gは、本件訂正発明2の上記目的、すなわち基板の基台への固定に関
10 わるものと理解される。
(イ) 本件明細書2には、本件訂正発明2の実施例として、基台30に載置されたL
EDモジュール10(表面実装型の発光モジュールであり、基板11と、基板11に実装さ
れた複数のLED素子12等を備えるところ、基板11が基台30の載置面上に載置される
ことで、LEDモジュール10が基台30の載置面上に載置される。)が押さえ部材50に
15 よって基板30に固定される例が示されている(【0028】、【0030】)。
この実施例における「具体的な固定方法」(【0028】)は、以下のとおりである。
すなわち、まず、長尺状の基板11は、矩形基板の一部が切り欠かれたような形状
になっており、例えば、矩形基板の短辺の中央部分を残すように、対向する長辺端
部から内方に後退するように一対で設けられている切り欠き部11a(凹部)と、こ
20 れにより切り欠かれずに残った部分であり、矩形基板の主面水平面上で長手方向に
突出する突出部11bが設けられている(【0032】、【0033】)。
他方、LEDモジュール10を支持するための長尺状の支持基台である基台30は、LED
モジュール10(基板11)を載置するための載置部31等を有し、その載置部31におけ
る短手方向(Y軸方向)の両端部に、それぞれ断面形状が逆L字状に構成された溝
25 部31aが設けられており、これが基台30の長手方向の一方の端部から他方の端部に
わたって(X軸方向に)延設されている。また、各溝部31aは、載置面の主面垂直
方向(Z軸方向)に立設するように形成された板状の側壁部31a1と、載置面の主面
水平方向に側壁部31a1から突出する突出部31a2とによって構成されている(【005
5】、【0058】、【0061】)。この各溝部31aの窪みには、基板11の長辺端部と、押
さえ部材50の固定部52とが、横並びで収納される(【0062】、【0063】)。また、
5 溝部31aの側壁部31a1は基板11の長辺端部に対向し、突出部31a2は基板11及び固定
部52の表面に対向する。このような配置となることにより、基板11及び押さえ部材
50の主面水平方向の動きは側壁部31a1によって規制され、かつ、基板11及び押さえ
部材50の主面垂直方向の動きは突出部31a2によって規制されることとなり、基板11
及び押さえ部材50は溝部31aから抜け出すことがなくなる(【0063】)。
10 加えて、押さえ部材50は、LEDモジュール10の基板11を基台30に押さえるように
構成されており、基板11の表面を押さえる部分である基板押さえ部51と、基台30に
固定される部分である固定部52とを有する(【0076】)。固定部52は、基板押さえ
部51の両端部に設けられ、基板押さえ部51と段差を有するように構成されており、
押さえ部材50を基台30に配置したときに基板押さえ部51の下方に形成される空間領
15 域に、基板11の突出部11bが挿入される(【0077】)。基板押さえ部51の裏面には、
基板11の表面に接触する凸部53が設けられている(【0078】)。
基台30上に隣り合うように並べられた2つの基板11は、それぞれの突出部11bが
相互に隣接するように配置され、これにより、各基板11の切り欠き部11aも隣接す
る(【0083】)。このように切り欠き部11aが対向して一対設けられているので、
20 押さえ部材50は、一対の切り欠き部11aの間の部分の基板11の突出部11bを跨ぐよう
に基板30の上に配置されている(【0084】)。これにより、基板11の突出部11bは、
基板押さえ部51によって押さえつけられ、突出部11bは、押さえ部材50の基板押さ
え部51と基台30とによって挟持される(【0085】)。また、押さえ部材50の固定部
52は、切り欠き部11aが設けられた位置に丁度収まるように配置され、固定部52は、
25 切り欠き部11aが設けられた位置で基台30に接触している(【0088】)。この実施
の形態においては、押さえ部材50(基板押さえ部51)は、一方の基板11の突出部11
bと他方の基板11の突出部11bとを同時に押さえていると共に、基板押さえ部51の裏
面に形成された凸部53も両方の基板11に接触している(【0089】)。
このように基台30、基板11及び押さえ部材50を配置等した上で、押さえ部材50は、
塑性変形部30Kによる押圧力によって基台30に固定される。例えば、押さえ部材50
5 の固定部52が収納された部分の基台 30の溝部31aの一部をかしめることによって
(このかしめ部が塑性変形部30Kである。なお、LEDモジュールを基台に固定する方
法として基台の一部をかしめることは、従来技術である。【0009】)、固定部52が
基台30に固定され、押さえ部材50が基台30に固定される(【0091】)。これに連動
して、基板11の突出部11bは押さえ部材50の基板押さえ部51から押圧力を受けるこ
10 ととなり、これによって、基板11は、基台30に押しつけられて基台30に固定される
(【0092】、【0138】)。
(ウ) このような本件訂正発明2の実施例の構成において、押さえ部材50は、基
台30の側壁部31a1により水平方向の動きを、また、突出部31a2により垂直方向の動
きを、それぞれ直接的に制限すなわち規制される。
15 他方、基板11については、基板11のうち、押さえ部材50の固定部52と横並びで基
台30の溝部31aに収納されている長辺端部の部分は、押さえ部材50と同様に、基台3
0の側壁部31a1により水平方向の動きを、また、突出部31a2により垂直方向の動き
をそれぞれ直接的に規制される。これに加え、基板11の切り欠き部11aの位置に押
さえ部材50の固定部52が丁度収まるように配置されること、隣り合う2つの基板11
20 の突出部11bが押さえ部材50の基板押さえ部51に同時に押さえられると共に、基板
押さえ部51の裏面に形成された凸部53も両方の基板11に接触することで、押さえ部
材50の動きが基台30の側壁部31a1及び突出部31a2により規制されることによって、
間接的にも、基板11の動きが規制されている。
(エ) 本件明細書2には、基板と基台との間に隙間が存在し、そこに押さえ部材
25 が位置していてもよいとされている(【0016】)。また、本件明細書2には、上記
実施例につき、基板11としては切り欠き部11aが設けられていない矩形基板を用い
てもよく(【0034】、【0086】)、この場合、押さえ部材50は基板11の一部を跨ぐ
ように構成されていればよいこと(【0086】)も示されている。さらに、本件訂正
発明2の実施の形態は上記実施例に限定されるものではなく(【 0020】、【014
9】)、例えば、1つの基板の一部のみを押さえ部材50で押さえるように構成する
5 こと、具体的には、基板11の対向する長辺端部の一部を跨ぐように押さえ部材50を
配置することとしても構わないこと(【0150】)も示されている。
(オ) 本件明細書2の上記各記載によると、基台の側壁部及び突出部による基板
の水平方向及び垂直方向の各動きの規制につき、間接的な態様ないし方法による規
制を排除する趣旨はうかがわれず、むしろ直接的に規制する態様ないし方法に限ら
10 ず間接的なものも含まれるものと解される。
ウ 以上によると、本件訂正発明2に係る特許請求の範囲及び本件明細書2の記
載を参酌すると、「規制」(構成要件2G)は、基台の側壁部及び突出部による基板
の水平方向及び垂直方向の各動きの規制につき、基板の動きを直接的に規制する態
様ないし方法に限られず、間接的な態様ないし方法による規制も含むものとするの
15 が相当である。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は、「規制」(構成要件2G)につき、少なくとも押さえ部材の水平方向
及び垂直方向での動きを規制することにより間接的に基板の動きを規制する構成は
当たらないなどと主張する。
20 しかし、本件訂正発明2の実施の形態が本件明細書2記載の実施例に限定されな
いことは、上記のとおりである。
また、本件特許2に係る請求項2記載の発明においては、押さえ部材の動きの規
制に係る構成は示されているものの、基板の動きの規制に係る構成は発明の内容と
されておらず、前記イ(ウ)及び(エ)のとおりの本件明細書2の記載に照らすと、同請
25 求項2の記載をもって、「規制」(構成要件2G)の意義につき、基板の動きを間接
的に規制する態様ないし方法によるものを排除する趣旨まで読み取ることはできな
い。
さらに、本件上申書(乙4の8)を見ても、控訴人パナソニックは、「分割出願
に係る発明と他の特許出願に係る発明とが同一でないことの説明」として、「本願
の請求項1に係る発明は、「前記基台は、前記基板及び前記押さえ部材の水平方向
5 の動きを規制する側壁部と、前記基板及び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制
する突出部とを有する」という構成要件を有する点で、原出願の請求項1に係る発
明と異なります。」とするにとどまる。このような記載から、「規制」の意義につ
き、基板の動きを間接的に規制する態様ないし方法によるもの全てを排除する趣旨
を読み取ることはできない。
10 むしろ、控訴人パナソニックは、本件意見書(乙4の13)において、本件訂正
発明2を含む発明につき、「発光素子が配置された基板が、押さえ部材によって押
さえられており、また、その押さえ部材は、基台の側壁部と突出部とによって動き
が規制されております。これにより、簡単な構成で、発光素子が配置された基板に
対して過度の負荷を与えることなく当該基板を基台に固定することができるという
15 効果(効果A)が得られます(【0018等】)。」などと説明している。この記載か
らは、控訴人パナソニックは、「規制」(構成要件2G)につき、基板の動きを間接
的に規制する態様ないし方法によるものを含む趣旨に理解していたことがうかがわ
れる。
その他、被控訴人が主張する点を考慮しても、この点に関する被控訴人の主張は
20 採用できない。
オ 小括
以上のとおり、「規制」(構成要件2G)には、基台の側壁部及び突出部による基
板の水平方向及び垂直方向の各動きの規制につき、基板の動きを直接的に規制する
態様ないし方法に限られず、間接的な態様ないし方法による規制も含むものとする
25 のが相当であり、基板を直接的に側壁部又は突出部に接触させる方法のほか、押さ
え部材を介して間接的にその動きを制限する方法を含む。
(2) 被控訴人製品4及び5の構成要件充足性
ア 被控訴人製品4の構成4a~4f及び4h並びに被控訴人製品5の構成5a~5f及び5
hがそれぞれ本件発明2の構成要件2A~2F及び2Hを充足することは、当事者間に争い
がない。
5 イ 前提事実(前記第1の3(2))、証拠(乙91)及び弁論の全趣旨によると、
別紙3物件説明書「4 被控訴人製品4」の「(2) 被控訴人製品4の写真」及び
「5 被控訴人製品5」の「(2) 被控訴人製品5の写真」のとおり、被控訴人製品
4及び5の基板はいずれも基台の側壁部及び突出部に接触していないところ、これ
らの被控訴人製品の基台は側壁部及び突出部を有し、側壁部は基台の上に配置され
10 た押さえ部材の水平方向の動きを、突出部は押さえ部材の垂直方向の動きをそれぞ
れ規制していること、基板は、このように側壁部及び突出部により動きを規制され
た押さえ部材を介して、水平方向及び垂直方向の動きを規制されていることが認め
られる。
そうすると、被控訴人製品4及び5は、「前記基台は、前記基板及び前記押さえ
15 部材の水平方向の動きを規制する側壁部と、前記基板及び前記押さえ部材の垂直方
向の動きを規制する突出部を有する」(構成4g、5g)との構成を備えるものといえ、
これらは、いずれも本件訂正発明2の構成要件2Gを充足する。
これに対し、被控訴人は、被控訴人製品4及び5において、基板は粘着性のある
サーマル・テープにより固定されているだけであるなどと主張する。しかし、サー
20 マル・テープの使用は、接着剤での固定(本件明細書2【0008】)に類する従来技
術にすぎず、また、押さえ部材が基板の脱落を防止する機能を果たすものであると
しても、上記認定のとおり、被控訴人製品4及び5において、押さえ部材を介して
基板の水平方向及び垂直方向の動きが規制されていると認められる以上、サーマル
・テープの使用は、本件訂正発明2との関係では任意に付加された事項にすぎず、
25 被控訴人製品4及び5が構成4g及び5gとの構成を備えるものであることが否定され
るものではない。
その他、被控訴人が主張する点を考慮しても、この点に関する被控訴人の主張は
採用できない。
ウ 小括
以上によると、被控訴人製品4及び5は、本件訂正発明2の構成要件をいずれも
5 充足するから、いずれもその技術的範囲に属する。
3 無効理由(公然実施による新規性欠如)の有無(争点2)について
(1) 公然実施の有無
ア 証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認めら
れる。
10 (ア) 被控訴人は、遅くとも平成24年2月頃から402W製品の製造準備を開
始し、韓国において製造した402W製品につき、少なくとも、同年3月6日頃に
260セット、同年4月6日頃に2497セット、同月13日頃に600セットを
輸入した。(乙79、84、85~87、90、139、140)
(イ) 被控訴人は、同年2月10日、「処理方法」を「渡し切りサンプル(点灯
15 試験・分解テスト)」として見本品手配申請書(乙80。以下「本件申請書」とい
う。)を作成し、402W製品4本を含む4種類の直管形LEDランプ合計16本を
カナデンに対して納品する社内手続を行い、同年4月16日を納期としてその処理
を完了し、同月17日、これをカナデンに納品した。
カナデンに納品された402W製品は同社の倉庫に保管されていたところ、被控
20 訴人は、平成29年9月頃、同社からこれを入手した。当該製品には、製造ロット
番号として「120331」が表示されているところ、これは、当該製品の製造年月日が
平成24年3月31日であることを意味する。
(以上につき、上記のほか、乙77、78、88、139、148、160、1
83、184)
25 (ウ) 被控訴人は、チラシ(平成24年1月発行。以下「本件チラシ」という。)
に、平成24年3月初旬発売予定の商品として 402W製品を掲載した(乙13
8)。また、被控訴人は、カタログ(同年2月発行。以下「本件カタログ」とい
う。)にも402W製品を掲載したところ、他の掲載商品には発売予定時期を明記
したものも見られるにもかかわらず、402W製品にはそのような記載はない(乙
35)。
5 イ 上記各認定事実を総合的に考慮すると、402W製品は、遅くとも被控訴人
からカナデンに納品された平成24年4月17日頃には、同社に譲渡されたことに
よりその構造が解析可能な状態に至ったものと認められる。
これに対し、控訴人パナソニックは、上記アの認定事実を認めるに足りる証拠が
ないことを指摘すると共に、仮に平成24年4月17日頃に被控訴人からカナデン
10 に対して402W製品が納品されたとしても、被控訴人とカナデンとの間に秘密を
保持することが暗黙のうちに求められていたため、公然実施されたとはいえないな
どと主張する。
しかし、本件申請書は、その書面の体裁等に鑑みると、被控訴人において内部的
に定形化された書式に基づき作成されたものと見られ、日常的な業務の一環として
15 作成されたものであることがうかがわれる。また、その記載内容並びに「申請者印」
欄及び「完了印」欄の押印は、平成24年4月16日付け「見本品引取書」(乙7
8)及び同月17日付け「判取票」(乙88)の記載又は押印と一致ないし整合す
ることから、本件申請書の作成日は、上記認定のとおり、同年2月10日と認めら
れる(なお、同様の理由及び筆跡の字体そのものから、判取票の作成日付は、同年
20 9月17日ではなく同年4月17日であることも認められる。)。また、上記「判
取票」は、カナデン担当者(乙148)の姓と同一の印影が存在することから、平
成24年4月17日に同社に402W製品が納品されたことを裏付けるものといえ
る。
また、本件申請書には、「処理方法」の「渡し切りサンプル(点灯試験・分解テ
25 スト)」欄にチェックがされているものの、カナデンは、電気工事業等の建設業許
可を得ている事業会社であり(乙76)、また、被控訴人による402W製品の商
品開発に共同研究その他の形で関与していたことをうかがわせる事情も見当たらな
いこと、本件チラシ及び本件カタログの記載からは、カナデンに納品された平成2
4年4月頃又はこれに極めて近接した時点で、402W製品は既に一般向けに販売
されていたことがうかがわれることによると、カナデンに対する402W製品の納
5 品が、その構成等につき同社に守秘義務を負わせることを前提として行われたもの
であるとは考え難い。
その他控訴人パナソニックが主張する点を考慮しても、この点に関する控訴人パ
ナソニックの主張は採用できない。
ウ 小括
10 以上によると、402W発明は、本件原出願日2より前に日本国内において公然
実施された発明といえる。
(2) 402W発明の構成
ア 402W発明の構成のうち、構成o~t及びvについては、当事者間に争いが
ない。
15 また、402W発明の構成のうち、構成o~s及びvが本件訂正発明2の構成要件2
A~2E及び2Hに相当することは、当事者間に争いがない。構成uについては、前記2
のとおり、「規制」(本件訂正発明2の構成要件2G)につき、基板を直接的に側壁
部又は突出部に接触させる方法のほか、押さえ部材を介して間接的にその動きを制
限する方法を含むものと解されることを踏まえると、本件訂正発明2の構成要件2G
20 に相当するものといえる。
イ 「遮光しない」(構成要件2F)の意義
(ア) 本件訂正発明2に係る特許請求の範囲の記載によると、「前記押さえ部材
は、前記透光性カバーとは分離されており、前記基板の長手方向における前記発光
素子の配光特性の劣化を抑制し且つ前記発光素子からの光を遮光しないように前記
25 基板を跨ぐように前記基台の上に配置され」(構成要件2F)とされている。
そして、「前記押さえ部材は」「前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置され」
につき、「跨ぐ」とは「股を開いて物の上を越える。」(広辞苑第六版)の意味で
あるから、「押さえ部材」が「長尺状の基板」(構成要件2C)の上を超えるよう
に基台の上に配置されていることを意味していると解される。
また、「前記基板の長手方向における前記発光素子の配光特性の劣化を抑制し且
5 つ前記発光素子からの光を遮光しないように」は、「前記基板を跨ぐように前記基
台の上に配置され」を修飾するものであるから、「押さえ部材」が「長尺状の基板」
(構成要件2C)の上を超えるように基台の上に配置されていることの 態様を更に
限定するものであることと理解できる。
ここで、「前記発光素子からの光を遮光しないように・・・配置され」につき検
10 討すると、「遮光」とは「光をさえぎること。」(広辞苑第六版)を意味する用語
であるから、「遮光しない」とは、「光をさえぎることがない」意味であるものの、
その程度については、特許請求の範囲には記載がなく、また、本件明細書2をみて
も、「遮光」について明示する箇所はない。すなわち、「遮光しない」に関係する
記載として、「基板押さえ部51には角が存在しないことが好ましく、基板押さえ部
15 51の表面は、傾斜面や曲面とすることが好ましい。これにより、LED素子12間に基
板押さえ部51が存在しても光の乱反射等を抑制することができるので、配光特性の
劣化を抑制することができる。」(【0087】)との記載があると共に、図5(a)及
び図6において、押さえ部材とLED素子との位置関係の例が示されている。これら
のほかに、押さえ部材と発光素子から出射される光との関係に関する明示的な記載
20 は、本件明細書2には見当たらない。
そうすると、「押さえ部材」が「長尺状の基板」(構成要件2C)の上を超える
ように配置されることで、発光素子の上面の光を遮ることがない(換言すると、押
さえ部材は発光素子の上を超える(跨ぐ)ように基台の上に配置されるものではな
い)ことを意味していると解される。
25 また、「前記基板の長手方向における前記発光素子の 配光特性の劣化を抑制」
(する)「ように・・・配置され」について検討すると、「配光」とは、光源の空
間に対する光度(光源の強度に係る量)分布(端的に言うと「光の広がり」)をい
い、「配光特性」とは、光の出かたをいうから、基板の長手方向において、発光素
子の光の出かたに影響を与えないような配置を特定するものであると解される。 こ
のような特定は、具体的な構造等で特定せず、いわゆる、作用、機能、性質又は特
5 性(「機能、特性等」という)を用いて物を特定しようとする記載であるといえる
ところ、その発明の要旨を認定するに当たっては、本願出願時点の技術常識を踏ま
えて解釈されるべきものとなる。
配光特性の劣化を抑制することに関する段落【0087】からすると、基板押さえ部
51には角が存在しないこと、基板押さえ部51の表面は、傾斜面や曲面とするこ
10 とが、LED素子12間に基板押さえ部51が存在しても光の乱反射等を抑制する
ことができ、配光特性の劣化を抑制することができるものであって、このような態
様が、「前記基板の長手方向における前記発光素子の配光特性の劣化を抑制」(す
る)「ように・・・配置され」の機能等を満たす一例であることがわかる。そこで、
光の乱反射等を抑制することにより、配光特性の劣化を抑制する点について検討す
15 る。
光の乱反射とは、入射した光が不規則な方向に反射する現象のことであり、本件
明細書の【0087】に記載されるように形状により生じる場合のほか、表面に複雑な
凹凸がある場合や乳白色ガラスのように光が拡散する場合などにも生じることが技
術常識である。
20 そうすると、上記場合のほか、光が拡散しないような素材である場合なども、
「前記基板の長手方向における前記発光素子の配光特性の劣化を抑制」(する)
「ように・・・配置され」た物に当たるといえる。
(イ) 控訴人パナソニックは、本件意見書において、本件訂正発明2を含む発明
では「押さえ部材が発光素子からの光を遮光しないように配置されております。こ
25 れにより、押さえ部材による配光への影響を気にする必要がありませんので、より
簡単な構成で基板を基台に固定することができるという効果(効果A1)が得られま
す。さらに、発光素子からの光を遮光しないように押さえ部材を配置することによ
って光の取出し効率が低下することを抑制できるという効果(効果 B)も得られま
す。」と記載している。また、平成26年5月21日起案の拒絶理由通知書(乙4
の12)において、引用文献2(特開2012-199163号公報。乙150。以下「乙1
5 50文献」という。)記載の「支持部材13は押さえ部材に相当する」などと指摘さ
れたことに対応して、控訴人パナソニックは、本件意見書において、「引用文献2
における支持部材13は、LED11bを覆うように配置されており、光の取出し効率が低
下する構成になっております。したがって、引用文献2では、…上記の効果A1及び
効果Bについても得られません。」と記載している。ここで、乙150文献には、
10 支持部材13をその構成に含む光拡散部分15が「矩形状をなす基板11aと、基板の長
手方向に沿って配設される固体発光素子11bからなる」(【0011】)光源ユニット1
1の全面を筒状に覆う構成が開示されている(【0017】、【0018】、図2)。
(ウ) 本件訂正発明2に係る特許請求の範囲及び本件明細書2の各記載に加え 、
本件意見書及び乙150文献の記載を踏まえると、本件訂正発明2において、押さ
15 え部材は、基板を跨ぐ形で基台の上に配置されることから、その構造及び配置によ
り、基板の上に実装されたLED素子から発せられる光を遮らないような構成とする
ことが求められること、そのような構成として、具体的には、押さえ部材につき、
LED素子の全面を覆うことによりそこからの光を遮光する構成が 少なくとも排除さ
れることは明らかといえる。しかし、本件訂正発明2に係る特許請求の範囲及び本
20 件明細書2の各記載においては、例えば、押さえ部材の表面に形成される傾斜面や
曲面の配置や傾斜等の程度に関する具体的な記載はなく、また、LED素子の大きさ
や高さ等を踏まえたLED素子と押さえ部材との位置関係等についても、具体的な記
載はない。LED素子から発せられる光のランバーシアン配光特性との関係に言及し
て押さえ部材等を構成すべきことをうかがわせる記載もなく、ランバーシアン配光
25 特性との関係を考慮すべき旨の記載も、明示的には置かれていない。
これらの事情を総合的に考慮すると、仮に、LEDの照明分野においてLEDがランバ
ーシアン配光特性を有することが技術常識であったとしても、押さえ部材50の構成
につき、本件明細書2の「基板押さえ部51の表面は、傾斜面や曲面とすることが好
ましい。これにより、LED素子12間に基板押さえ部51が存在しても光の乱反射等を
抑制することができるので、配光特性の劣化を抑制することができる。」(【008
5 7】)との記載並びに図5(a)及び6から、当業者が、ランバーシアン配光特性を前提
として、これに従った光の進行を遮らない構成とすべきことを認識するとまではい
えない。
したがって、「遮光しない」(構成要件2F)とは、「光を遮らない」ことを意味
するものの、必ずしも厳密な意味で発光特性に応じた全ての光を遮らないことを意
10 味するものではなく、発光素子の間に押さえ部材が基板を跨ぐように配置されるこ
とで、発光素子の上面の光を遮ることがないことを意味するものと解される。これ
に反する控訴人パナソニックの主張は採用できない。
ウ 402W製品について
証拠(甲25、乙11、45、82、84、87、91)及び弁論の全趣旨によ
15 ると、402W製品の押さえ部材は、被控訴人製品4及び5と同一の部材であり、
透光性カバーから分離され、基板を跨ぐように基台の上に配置されていると共に、
透明で、LED素子の上面に当たる部分には開口部が、開口部以外の基板の上に跨る
部分は隣り合うLED素子の間に、それぞれ位置するように配置されていること、4
02W製品の遮光角度が45度ないし56.3度であることが認められる。これに
20 よると、402W製品の押さえ部材は、LED素子からの光を「遮光しない」(構成
要件2F)ように配置されているものといえる。このような押さえ部材は、「押さえ
部材」(本件訂正発明2の構成要件2F)に相当するといえる。
本件訂正発明2は、ランバーシアン配光特性であることは、必ずしも特定されて
いないが、一般的なLEDの配光特性であることから、これを前提としたとしても、
25 光軸から60度において、光度が1/2となり、これ以上隔離しても、一定の光度
がある配光特性であることや、「遮光」や「遮光しない」の程度については、本件
発明2に係る特許請求の範囲には記載がないことを踏まえると、押さえ部材の遮光
角度が、60度より小さいものでは光を遮光し、60度より大きいものでは遮光し
ないということはできない。
また、本件訂正2により新たに限定された「発光素子の配光特性の劣化を抑制」
5 についてみても、公然実施品である402W製品と被控訴人製品5の押さえ部材は、
同一の部材であり、いずれの押さえ部材も透明な素材であるところ、表面に複雑な
凹凸があるものや乳白色の素材を用いるものと比べて光の乱反射が抑制されている
ことが認められる。
そうすると、公然実施品である402W製品の押さえ部材は配光特性の劣化を抑
10 制しないとし、被控訴人製品5の押さえ部材は配光特性の劣化を抑制するというこ
とはできない。
したがって、402W発明の構成tは、本件訂正発明2の構成要件2Fに相当する。
これに反する控訴人パナソニックの主張は採用できない。
(3) 小括
15 以上によると、本件訂正発明2は、本件原出願日2(平成25年2月12日)よ
り前に日本国内において公然実施をされた発明である402W発明と同一の発明で
あるから、本件特許2は特許法29条1項2号に違反してされたものであり、特許
無効審判により無効にされるべきものと認められる(同法123条1項2号)。
したがって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権2を行使する
20 ことができない(同法104条の3第1項)。
4 まとめ
以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人パナソニックの本
件特許権2の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙6の別添1)●(省略)●
(別紙6の別添2)
被控訴人製品4及び5の構成(控訴人パナソニックの主張)
1 被控訴人製品4
5 4a 透光性を有するカバーと,
4b 前記透光性を有するカバーに覆われた基台と,
4c 前記基台の載置面上に載置された基板と,
4d 前記基板の上に配置された LED チップと,
4e 前記基板を押さえるための複数の押さえ部材とを備え,
10 4f 前記押さえ部材は,前記透光性を有するカバーとは分離されており,前記
LED チップからの光を遮断しないように前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置
され,
4g 前記基台は,前記基板及び前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁
部と,前記基板及び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部を有する
15 4h ランプ。
2 被控訴人製品5
5a 透光性を有するカバーと,
5b 前記透光性を有するカバーに覆われた基台と,
20 5c 前記基台の載置面上に載置された基板と,
5d 前記基板の上に配置された LED チップと,
5e 前記基板を押さえるための複数の押さえ部材とを備え,
5f 前記押さえ部材は,前記透光性を有するカバーとは分離されており,前記
LED チップからの光を遮断しないように前記基板を跨ぐように前記基台の上に配置
25 され,
5g 前記基台は,前記基板及び前記押さえ部材の水平方向の動きを規制する側壁
部と,前記基板及び前記押さえ部材の垂直方向の動きを規制する突出部を有する
5h ランプ。
以上
(別紙7)
本件特許権3関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権3
控訴人パナソニックは、以下の特許権(本件特許権3)を有する。
特許番号 特許第5453503号
発明の名称 光源ユニット及び照明器具
出願日 平成24年10月11日(以下「本件出願日3」という。)
10 登録日 平成26年1月10日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲3の2)の特許請求の範囲請求項1に記載
のとおり(以下、同請求項記載の発明を「本件発明3-1」という。)
控訴人パナソニックは、令和3年10月14日付けで、訂正審判請求(訂正20
21−390165号。甲3011~3013)をし、特許庁は、令和4年2月8
15 日付けで訂正認容の審決をした(以下、同訂正を「本件訂正3」といい、同訂正後
の明細書及び図面を併せて「本件明細書3」という。甲3015)。
控訴人パナソニックは、令和4年5月9日付けの訴え変更申立書(特許3)によ
り、請求原因を、本件発明3-1に加えて、本件訂正3後の請求項3の発明(以下
「本件訂正発明3-3」という。)及び本件訂正3後の請求項4の発明(以下「本
20 件訂正発明3-4」といい、本件発明3-1及び本件訂正発明3-3と併せて「本
件各発明3」という。)に追加的変更をする申立てをした(以下「本件訴え変更の
申立て」という。)。
2 構成要件の分説
本件発明3-1、本件訂正発明3-3、本件訂正発明3-4をそれぞれ構成要件
25 に分説すると、次のとおりである(下線部は本件訂正3による訂正箇所である。)。
(本件発明3-1)
3-1A 長尺状に形成され吊ボルトを用いて天井材に取り付けられる器具本体
と、
3-1B 前記器具本体に取り付けられる光源ユニットとを備え、
3-1C 前記器具本体における前記天井材と反対側には、前記器具本体の長手
5 方向に沿って収容凹部が設けられ、
3-1D 前記収容凹部の底面部には前記吊ボルトを通すための孔が設けられて
おり、
3-1E 前記光源ユニットは、複数のLEDが実装されたLED基板と、前記
複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LED基板を前記器具本
10 体に取り付けるための取付部材と、前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装
置とを有し、
3-1F 前記取付部材は、前記器具本体の前記収容凹部と対向する部位に前記
吊ボルトの少なくとも一部及び前記電源装置が配置される収容部を有し、
3-1G 前記電源装置は、前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた状態
15 で前記収容部内における前記吊ボルトと干渉しない位置に配置されることを特徴と
する
3-1H 照明器具。
(本件訂正発明3-3)
3-3A 吊ボルトを通すための孔を有し、前記孔に通された前記吊ボルトによ
20 って天井材に取り付けられる器具本体に取り付けられる光源ユニットであって、
3-3B 複数のLEDが実装されたLED基板と、
3-3C 前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置と、
3-3D 一面側に前記LED基板、
3-3E 他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の取付部材と、
25 3-3F 長尺状に形成されており前記複数のLEDを覆うようにして前記取付
部材に取り付けられるカバー部材とを備え、
3-3G 前記取付部材は、前記器具本体と対向する部位に前記吊ボルトの少な
くとも一部及び前記電源装置が配置される収容部を有し、
3-3H 前記電源装置は、前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた状態
で前記収容部内における前記吊ボルトと干渉しない位置に配置され、
5 3-3I 前記カバー部材は、前記カバー部材の短手方向における両端部に設け
られている一対の延出部を有し、
3-3J 前記カバー部材は、長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた
収容凹部に前記光源ユニットを収容した状態では、前記器具本体の長手方向及び幅
方向と直交する方向において前記一対の延出部の各々が前記収容凹部の開口端縁と
10 重なっていることを特徴とする
3-3K 光源ユニット。
(本件訂正発明3-4)
3-4A 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成された底面部と、
3-4B 前記底面部の幅方向における両側から前記底面部と交差する方向に突
15 出する一対の側面部とで形成されており、
3-4C 前記底面部と一対の前記側面部とで囲まれる空間により前記収容部が
構成されており、
3-4D 前記カバー部材は、前記取付部材側の面に開口を有し、前記開口を通
して前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部材に取り付けられ、
20 3-4E 前記カバー部材は、前記カバー部材の短手方向における前記一対の延
出部よりも内側の位置において前記取付部材側に突出し、前記取付部材の一対の前
記側面部に外側から取り付けられる一対の突壁部を有し、
3-4F 前記収容凹部に前記光源ユニットを収容した状態では、前記一対の突
壁部の各々が前記収容凹部の内壁と対向していることを特徴とする
25 3-4G 請求項3記載の光源ユニット。
3 被控訴人の行為
(1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年3月1日から、被控訴人製品6
の製造、販売又は販売の申出をそれぞれ開始した。
被控訴人製品6について、別紙2物件目録記載の器具本体の型番及び製品の形
(型)の対応関係は、別添2「特許権3充足論一覧表」の「被控訴人製品6」の各
5 欄記載のとおりである(なお、灰色の塗り潰し部分は本件の対象ではない。)。
(2) 被控訴人製品6の構成
別添3「被控訴人製品6の構成(控訴人パナソニックの主張)」記載の被控訴人
製品6の構成のうち、下面開放形(埋込)、白ルーバー形及び空調ダクト 回避型
(以下「下面開放形(埋込)等」という。)及びトラフ形を除き、構成3a~e及びh
10 については、当事者間に争いがない。下面開放形(埋込)等は同記載1及び2の構
成3cについて、トラフ形は同記載1の構成3aについて、それぞれ争いがある。
4 構成要件の充足
被控訴人製品6について、別添2「特許権3充足論一覧表」 の各構成要件欄に
「○」が付されている本件発明3-1各構成要件を充足することについては、当事
15 者間に争いがない。構成要件の充足につき争いがあるのは、同一覧表に「争」の記
載がある部分である。
5 争点
(1) 本件特許権3関係の請求に固有の争点
ア 構成要件の充足性
20 (ア) 被控訴人製品6全般について
構成要件3-1F及び3-1Gの充足性(争点1-1)
(イ) 下面開放形(埋込)等について
構成要件3-1Cの充足性(争点1-2)
(ウ) トラフ形について
25 構成要件3-1Aの充足性(争点1-3)
イ 均等論の成否(争点1-4)
ウ 本件訴え変更の申立ての許否(争点2)
エ 本件訂正発明3-3及び3-4の構成要件の充足性(争点3)
オ 無効理由(NNF発明①の公然実施による新規性欠如)の有無(争点4)
カ 間接侵害の成否(争点5)
5 キ 差止の必要性(争点6)
(2) 本件特許権2、4、6及び7関係の請求と共通の争点
損害額及び不当利得額(争点7)
第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件3-1F及び3-1Gの充足性(争点1-1)
10 (控訴人パナソニックの主張)
本件発明3-1の「吊ボルト」については、「吊ボルトの少なくとも一部…が配
置される収容部」(構成要件3-1F)及び「収容部内における前記吊ボルト」
(構成要件3-1G)を充足することを要するところ、例えば、被控訴人製品6-
(1)の仕様書の記載によると、取付ボルト(以下、単に「ボルト」という場合があ
15 る。)の出しろは、天井面から側壁部の下端部までの距離から収容部の高さを控除
した約20.3mmとなり、また、ボルトの高さは15mm~25mmと記載とされていることか
ら、一般的な施工を行えば、ボルトは取付部材の収容部に達する。したがって、大
抵の被控訴人製品6-(1)は、「吊ボルトの少なくとも一部…が配置される収容部」
(構成要件3-1F)及び「収容部内における前記吊ボルト」(構成要件3-1G)
20 を充足する。
その他の被控訴人製品6についても、一般的な施工を前提とすれば、通常、ボル
トの少なくとも一部が収容部に配置されることから、被控訴人製品6-(1)と同様
に、構成要件3-1F及び3-1Gを充足する。
(被控訴人の主張)
25 トラフ形については、ボルトを介して設置されること自体が標準的な設置方法で
はないから(後記3(被控訴人の主張))、本件発明3-1構成要件3-1F及び
Gを充足しない。
他の被控訴人製品6においては、ボルトの長さ次第で、ボルトの一部が取付部材
の「収容部」に配置されるか否かが定まる。したがって、そのような配置関係とな
らない設置例の被控訴人製品6は、本件発明3-1構成要件3-1F及びGを充足
5 しない。
2 構成要件3-1Cの充足性(争点1-2)
(控訴人パナソニックの主張)
本件発明3-1構成要件3-1Cにおいて、「天井材」は何ら限定されておらず、
器具本体を埋め込む部分の「天井材」もこれから除外されていない。例えば、被控
10 訴人製品6-(5)(ERK9642W)の取扱説明書では、埋め込まれる天井面を基準とし
て、「器具本体における天井材と反対側」に収容凹部が設けられている。
したがって、被控訴人製品6のうち下面開放形(埋込)等についても、埋め込ま
れる天井面を基準として、「器具本体における天井材と反対側」に収容凹部が設け
られているといえる。
15 また、下面開放形(埋込)等の製品においても、ボルトを収容部に配置しない場
合には、その分LEDユニットが天井と反対側にせり出すことになるため、本件発明
3-1の構成を満たすことで、所定の作用効果を奏する。
以上によると、下面開放形(埋込)等も、本件発明3-1の構成要件3-1Cを
充足する。
20 (被控訴人の主張)
本件発明3-1に係る特許請求の範囲及び本件明細書3の記載を踏まえると、構
成要件3-1Cは、いわゆる「天井直付け型の照明器具」に関する発明であること
を特定する点にその技術的意義があり、収容凹部が天井面の下側に位置することを
構成要件とするものである。
25 しかるに、被控訴人製品6のうち下面開放形(埋込)等においては、器具本体の
収容凹部は、天井材と反対側ではなく、天井材側に設けられている。
そもそも、下面開放形(埋込)等の製品は、天井裏面に器具本体を設置するため、
天井からの突出量を低く押さえた照明器具を提供するという本件発明3-1の目的
及び効果に沿わない構成となるものであって、本件発明3-1とは技術的思想が異
なる。
5 したがって、下面開放形(埋込)等の製品は、本件発明3-1の構成要件3-1
Cを充足しない。
3 構成要件3-1Aの充足性(争点1-3)
(控訴人パナソニックの主張)
トラフ型を含む被控訴人製品6の仕様書には、全て「取付ボルト穴」と「取付ボ
10 ルト高さ」の表が記載されており、「吊ボルト」の使用が予定されている。したが
って、仮にボルトではなくレールが使用される場合があるとしても、それは被控訴
人製品6が販売された後の工事施工の問題にすぎず、技術的範囲の属否とは無関係
である。
(被控訴人の主張)
15 トラフ形は、通常、レールに取り付けられ設置されるLED照明装置を指すという
のが業界用語であり、ボルトをもって設置される例はない。
したがって、トラフ形は、「吊ボルトを用いて天井材に取り付けられる器具本体」
に当たらず、本件発明3-1の構成要件3-1Aを充足しない。
4 均等論の成否(争点1-4)
20 (控訴人パナソニックの主張)
争点1-2において、被控訴人製品6の一部に、器具本体の収容凹部は天井材と
反対側ではなく天井材側に設けられているもの(下面開放形(埋込)等)が存在す
る場合には、これらの相違点がある場合でも、均等論が成立する。
すなわち、争点1-2における相違点は、構成要件3-1C「前記器具本体にお
25 ける前記天井材と反対側には、前記器具本体の長手方向に沿って収容凹部が設けら
れ、」であるところ、本件発明3-1の作用効果は「天井からの突出量の低減」で
あり、器具本体の収容凹部が天井材と反対側ではなく天井材側に設けられていると
しても、かかる構成の相違は本件発明3の非本質的部分であり、作用効果も同一で
あり、置換容易性もある。したがって、均等論が成立する。
(被控訴人の主張)
5 否認ないし争う。
控訴人パナソニックの均等論の主張は、時機に後れた攻撃防御方法であって、却
下されるべきである。
下面開放形(埋込)被控訴人製品6は、「前記器具本体における前記天井側と同
じ側には、前記器具本体の長手方向に沿って収容凹部が設けられ、」との構成をと
10 ることによって、一切天井からの突出量がない照明器具として完成される構成内容
が明確に示されており、均等論の第1要件の非本質的な差異及び第2要件の置換容
易性を満たさない。
5 本件訴え変更の申立ての許否(争点2)
(被控訴人の主張)
15 照明器具に関する発明である本件発明3-1にあっては、物の発明の構成要件で
ある吊ボルトを含むことから、発明の完成として施工現場における直接侵害と被控
訴人の間接侵害という争点があったが、器具本体側の発明特定事項を置きつつ、光
源ユニットの発明とする本件訂正発明3-3及び3-4に関しては、実際の施工現
場において吊ボルトを用いて、かつ、光源ユニット収容部にまで吊ボルトの出しろ
20 が到達する施工現場を前提とした直接侵害を前提とした間接侵害を対象とするのか
との点につき、控訴人パナソニックの釈明から審理を必要とする紛争類型になるも
のであり、侵害訴訟を最初からやり直すに等しい請求項の追加要請である。
被控訴人は、控訴人パナソニックに対し、光源ユニット係る発明として請求項で
特定されている本件訂正発明3-3及び3-4に基づく差止請求権及び不当利得返
25 選請求権の訴訟物の追加につき、万が一その本案審理を許容するのであれば、控訴
状に添付の被控訴人製品6目録につき、本件訂正発明3-3及び本件訂正発明3-
4と、どの製品(器具本体、光源ユニット、組み合わされ吊ボルトとともに完成す
る照明器具)が新請求の各発明に対応するのか、上記訴えの取下げを前提とした審
理を求めるかの2項目に関して、控訴状及び控訴理由書で特定されていない請求内
容を特定するための釈明を求めたが、控訴人パナソニックは、何ら回答していない。
5 控訴人パナソニックが直接侵害を主張するのであれば、光源ユニットの発明とし
て特定のある請求項3及び4を根拠とする侵害主張においては、器具本体に関する
差止請求及び不当利得返還請求を基礎付ける理由の主張がなく、間接侵害を主張 す
るのであれば、多機能型間接侵害に関する主張がない。そして、控訴人パナソニッ
クからの具体的な主張がない以上、訴えの変更要件としては、訴訟遅延を招くこと
10 が明らかである。
(控訴人パナソニックの主張)
争う。
6 本件訂正発明3-3及び3-4の構成要件の充足性(争点3)
(控訴人パナソニックの主張)
15 (1) 被控訴人製品6について、本件訂正発明3-3に即して分説すると以下のと
おりである。
3a-3 アンカーボルトを通すための取付用ボルト穴を有し、前記穴に通され
た前記アンカーボルトによって天井材に取り付けられる器具本体に取り付けられる
LEDユニットであって(構成6-①、6-③)、
20 3b-3 複数のLEDが実装されたLED基板と(構成6-④)、
3c-3 前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置と(構成6-④)、
3d-3 一面側に前記LED基板(構成6-④)、
3e-3 他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の取付部材と(構成6
-④、6-⑤)、
25 3f-3 長尺状に形成されており前記複数のLEDを覆うようにして前記取付
部材に取り付けられるカバー部材とを備え(構成6-④)、
3g-3 前記取付部材は、前記器具本体と対向する部位に前記アンカーボルト
の少なくとも一部及び前記電源装置が配置される収容部を有し(構成6-⑤)、
3h-3 前記電源装置は、前記LEDユニットを前記器具本体に取り付けた状
態で前記収容部内における前記アンカーボルトと干渉しない位置に配置され(構成
5 6-⑤)、
3i-3 前記カバー部材は、前記カバー部材の短手方向における両端部に設け
られている一対の延出部を有し(構成6-⑫)、
3j-3 前記カバー部材は、長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた
収容凹部に前記LEDユニットを収容した状態では、前記器具本体の長手方向及び
10 幅方向と直交する方向において前記一対の延出部の各々が前記収容凹部の開口端縁
と重なっていることを特徴とする(構成6-⑬)
3k-3 LEDユニット(構成6-①)。
以上を踏まえて、被控訴人製品6における「アンカーボルト」、「LEDユニッ
ト」及び「アンカーボルトを通すための取付用ボルト穴」は、それぞれ、本件訂正
15 発明3-3における「吊ボルト」、「光源ユニット」及び「吊ボルトを通すための
孔」に相当する。
したがって、被控訴人製品6の構成3a-3ないし3k-3は、それぞれ本件訂
正発明3-3の構成要件3-3Aないし3-3Kを充足する。
なお、本件訂正発明3-3との関係において、被告製品6の逆富士形、トラフ形
20 といった形の違いにより構成要件充足性の判断が異なることはない。
(2) 被控訴人製品6について、本件訂正発明3-4に即して分説すると以下のと
おりである。
3a-4 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成された底面部と (構成6-
⑥)、
25 3b-4 前記底面部の幅方向における両側から前記底面部と交差する方向に突
出する一対の側面部とで形成されており(構成6-⑥)、
3c-4 前記底面部と一対の前記側面部とで囲まれる空間により前記収容部が
構成されており(構成6-⑤、6-⑥)、
3d-4 前記カバー部材は、前記取付部材側の面に開口を有し、前記開口を通
して前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部材に取り付けられ(構成6-④)、
5 3e-4 前記カバー部材は、前記カバー部材の短手方向における前記一対延出
部よりも内側の位置において前記取付部材側に突出し、前記取付部材の一対の前記
側面部に外側から取り付けられる一対の突壁部を有し(構成6-⑩ないし6-⑫)、
3f-4 前記収容凹部に前記LEDユニットを収容した状態では、前記一対の
突壁部の各々が前記収容凹部の内壁と対向していることを特徴とする(構成6-⑬)、
10 3g-4 請求項3記載のLEDユニット。
以上を踏まえて、被控訴人製品6における「LEDユニット」は、本件訂正発明
3-4における「光源ユニット」に相当する。
したがって、被控訴人製品6の構成3a-4ないし3g-4は、それぞれ本件訂
正発明3-3の構成要件3-4Aないし3-4Gを充足する。
15 なお、本件訂正発明3-4との関係において、被告製品6の逆富士形、トラフ形
といった形の違いにより構成要件充足性の判断が異なることはない。
(被控訴人の主張)
(1) 別紙3物件説明書における被控訴人製品6の構成6-②の「凹所」と「遊び
の隙間」について
20 被控訴人製品6が「凹所」を備えるという控訴人パナソニックの総括的な主張に
ついては、被控訴人製品6のうち、下面開放形及びウォールウォッシャー形の製品
群については認めるものの、その余の逆富士形及びトラフ形の製品群についてはこ
れを否認する。
逆富士形及びトラフ形の被控訴人製品6にあっては、LEDユニットを器具本体
25 に取り付けた際に僅かにできる器具本体の幅方向での隙間は、「照明空間に向けて
開口」されるものでなく、単なる機械的な余裕を保つための「遊びの隙間」であり、
規格からも最大各数ミリレベルの隙間である。
(2) 同6-③の「アンカーボルトによって天井材に取り付けられ」について
本件発明3-1の「吊りボルトを用いて天井材に取り付けられる」及び「吊ボル
ト」の構成と対比する関係で必要となる被控訴人製品6が「アンカーボルトによっ
5 て天井材に取り付けられ」ているとの控訴人パナソニックの主張については、多く
ても、施工工事の約2割程度については、被控訴人製品6のうち、逆富士形、下面
開放形、下面開放形(埋込)反射笠付形、白ルーバー形及び空調ダクト回避型の製
品群については認めるものの、トラフ形の製品群についてはこれを否認する。
ユーザーの特異な使用方法がないとはいえないが、トラフ形は、通常、レールに
10 取り付けられ設置されるLED照明装置を指すというのが業界用語である。また、
被控訴人製品6のうち、下面開放型(埋込)については「天井材と同じ側」に「L
EDユニットを収容する長手方向に沿った収容凹部」を備えるものであるから、こ
れを「天井材の反対側」に備えるとの特定は否認する。
(3) 同6一⑤の「アンカーボルトの収容部に配置」について
15 本件発明3-1の「前記吊りボルトの少なくとも一部・・・が配置される収容部」
(構成3-1F)及び「前記電源装置は・・・前記収容部内における吊りボルトと
干渉しない位置に配置される」(構成3-1G)との構成と対比する関係で必要と
なる被控訴人製品6の「アンカーボルトの収容部に配置」されるとの控訴人パナソ
ニックの主張については、前記のとおり、トラフ形については、アンカーボルトを
20 介し設置されること自体が標準的な設置方法でないため、これを否認し、その余の
製品についても、各製品の取扱説明書に記載のとおり、「アンカーボルト」の長さ
次第で「取付部材の収容部」に「アンカーボルトの一部」が配置されるかが定まる
ため、そのような配置関係に設置されない被控訴人製品6については、これを否認
する。
25 (4) 同6一⑩の「カバー部材の構成」について
本件訂正発明3-3及び3-4の構成と対比する関係で必要となる被控訴人製品
6の「カバー部材」の構成に関する控訴人パナソニックの主張については、「一対
の突壁部a及びb」を備えることは認めるものの、その余の構成については否認す
る。
7 無効理由(NNF発明①の公然実施による新規性欠如)の有無(争点4)
5 (被控訴人の主張)
(1) 本件出願日3以前に、阪急電鉄株式会社(以下「阪急電鉄」という。)の摂
津市駅(以下「摂津市駅」という。)構内において、本件発明3-1と同一の構成
となる製品NNF41100(以下「本件設置品」という。また、本件設置品に係る発明を
「NNF発明①」という。)が使用され、実施されていた。すなわち、本件発明3-
10 1は、本件特許3の出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、
本件特許3は、特許法29条1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判
により無効にされるべきものである(同法123条1項2号)。したがって、控訴
人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権3を行使することはできない(同
法104条の3第1項)。
15 (2) 公然実施
ア 控訴人パナソニックによるNNF製品の販売等と摂津市駅への設置
控訴 人 パナ ソ ニッ ク は 、 本 件出 願 日以 前 に 、 LEDベ ー スラ イ ト ( 品 番 NNF41100
LE9。以下「NNF製品」という。)を製造、販売等して実施していた。NNF製品は、
ボルトが取付部材の収容部に配置(収容)されない点を除き、本件発明3-1と同
20 一の構成を有する。
NNF製品は、本件出願日3以前である平成22年3月、摂津市駅構内の地下通路
内に7台設置されたところ、うち3台(本件設置品)は、天井面からのボルトの出
しろが約40mmを超えて施工され、同ボルトの一部が収容部に配置されている。また、
本件設置品は、平成21年製である。
25 イ 公然実施
(ア) 本件設置品は、平成22年3月に阪急電鉄に所有権が移転した工事終了時点
又は同社から委託を受けた施工業者による工事終了時点において、控訴人パナソニ
ックに対して守秘義務を負わない不特定の第三者である阪急電鉄ないし施工業者に
よってその発明(NNF発明①)の内容を認識することが可能となったものである。
したがって、遅くとも平成22年3月に、阪急電鉄に本件設置品の所有権が移転し
5 た時点又は施工業者が施工工事を行った時点で、NNF発明①は公然実施をされたと
いえる。
(イ) 阪急電鉄に設置された7台のNNF製品のうち3台が本件設置品であるから、
割合としては僅かな施工例とはいえない。
また、本件設置品の設置後、躯体工事に関連する天井材を取り外してボルトの長
10 さだけを継ぎ足すといった追加工事を行う必要性があったとは考えられない上、本
件設置品の設置状況が自然であることを踏まえると、本件設置品のボルトの天井面
からの出しろ長さは、平成22年3月から変更されていないといえる。
さらに、NNF製品の施工説明書兼取扱説明書(以下「本件説明書3」という。乙
95)の照明器具の製品寿命に関する記載は、ボルトの出しろ長さと無関係な事項
15 であるし、コンクリート製の天井面から引き出されている吊りボルトの長さが電車
の走行による振動で変動することは技術常識からしてあり得ない。
(3) NNF発明①の構成及び本件発明3-1との対比
ア 本件設置品に係るNNF発明①の構成は、以下のとおりである。
a1 長尺状に形成され吊りボルト(取付ボルト)を用いて天井材に取り付けられ
20 る器具本体と、
b1 前記器具本体に取り付けられる光源ユニット(LEDユニット)とを備え、
c1 前記器具本体における前記天井材と反対側には、前記器具本体の長手方向に
沿って収容凹部(器具本体の凹所)が設けられ、
d1 前記収容凹部(器具本体の凹所)の底面部には、前記吊りボルトを通すため
25 の孔(取付ボルト穴)が設けられており、
e1 前記光源ユニット(LEDユニット)は、複数のLED(6個のパネル、各パネル
の下の9個のLED)が実装されたLED基板(各パネルの下の9個のLEDが実装さ
れた6個のLED基板)と、前記複数のLEDが前記収容凹部(器具本体の凹所)の
外側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部
材(LEDユニットの枠体)と、前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置
5 (電源ユニット又は電源ブロック)とを有し、
f1 前記取付部材(LEDユニットの枠体)は、前記器具本体の前記収容凹部(器
具本体の凹所)と対向する部位に前記吊りボルトの少なくとも一部及び電源装
置(電源ユニット又は電源ブロック)が配置される(枠体の凹所の底面の鋼板
にネジで固定され、又は銀色取付台を介してネジで固定され、それぞれ高さ方
10 向で全高約7分の1又は約3分の1が枠体の凹所に位置する)収容部(LEDユ
ニットの枠体の凹所)を有し、
g1 前記電源装置 (電源ブロ ック又は 電源ユニッ ト )は、 前記光源ユ ニット
(LEDユニット)を前記器具本体に取り付けた状態で前記収容部(LEDユニット
の枠体の凹所)内における前記吊りボルトと干渉しない位置(取付ボルト穴の
15 位置とは干渉しない位置)に配置されることを特徴とする
h1 照明器具。
イ NNF製品は 、 構成 f1及びg1に関し 、天井材からの ボルトの 出しろ長さ が約
40mmを超える場合に、収容部(取付部材の底面部及び側面部で構成された空間であ
るLEDユニットの枠体の凹所)にその一部が配置されるところ、本件設置品におい
20 ては、いずれもボルトの出しろ長さが約40mmを超えており、ボルトがLEDユニット
の枠体の凹所に到達している。
したがって、NNF発明①の構成a1~h1は、いずれも本件発明3-1の構成要件3
-1A~Hと一致し、NNF発明①と本件発明3-1は同一の発明である。
(4) 「収容部」(構成要件3-1F、G)の意義等
25 ア 「収容部」は、「取付部材」に設けられるものであり、「前記器具本体の前
記収容凹部と対向する部位に前記吊ボルトの少なくとも一部及び前記電源装置が配
置される」ものである(構成要件3-1F)。「収容」とは、「人や物品を一定の
場所におさめ入れること」等の意味を有する用語である。また、照明器具の技術分
野にあって、「収容部」との用語は、特段の特定がない限り、照明器具内部におけ
る何らかの部品をおさめ入れる収容スぺースの空間を意味する用語と理解できる。
5 本件発明3-1も、電源装置及び吊りボルトの一部を収容するという以外に、収容
部について何ら限定していない。
また、「前記器具本体の前記収容凹部と対向する部位に」との特定は、「前記吊
ボルトの少なくとも一部及び前記電源装置が配置される」 に掛かるものであり、
「収容部」に掛かるものではない。
10 次に、「対向する部位」とは、単に、「互いに向き合う」部位という意味でしか
なく、収容凹部と収容部という空間が互いに向き合っているという関係性を特定す
るだけであり、向き合う方向以外(水平方向)での広狭や、その配置関係が内側に
なるか外側になるかとの限定を伴う文言ではない。本件明細書3においても、「対
向」という文言は、「互いに向き合う」という以上の意味では使用されていない。
15 加えて、器具本体の収容凹部と取付部材の収容部が別個独立の構成であることは、
それぞれが別の部材に設けられていることを意味し、これを超えて、収容凹部と収
容部が重なり合う空間がいずれか一方の空間でなければならないと解釈する必要は
ない。
したがって、本件発明3-1の「収容部」とは、光源ユニットの取付部材に設け
20 られ、吊りボルトの少なくとも一部及び電源装置が配置されることによってこれら
を収容し、器具本体の収容凹部と互いに向き合っている空間を意味する。
イ NNF発明①が「収容部」を有すること。
NNF発明①では、取付部材のパネル枠(側面部)と底面部で囲まれた空間 (枠体
の凹所)が存在し、同空間は、器具本体の収容凹部と対向しており、この収容凹部
25 と対向する部位に、電源ユニット及び銀色の取付け台を配置している(下図参照)。
また、NNF製品は、機器の客観的な構成上、ボルトの一部を収容部に収容するこ
とが可能な構成であり、NNF発明①は、現にボルトの一部が収容部に収容された構
成である。
5 したがって、取付部材のパネル枠(側面部)と底面部で囲まれた空間は、本件発
明3-1の「収容部」(構成要件3-1F、G)に相当する。
なお、本件明細書3の記載によると、本件発明3-1は、「収容部」が「電源装
置」を高さ方向で約2分の1 弱から3分の1強しか収容していない態様をもって
「収容部」としている。そうである以上、2台の電源ユニット又は2台の電源ユニ
10 ット及びこれと一体化されている銀色の取付け台の一部を収容しているNNF発明①
の収容部と本件発明3-1の収容部の間に、発明としての相違点は認められない。
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 公然実施がされていないこと
ア 控訴人パナソニックがNNF製品を本件出願日3の前に製造販売していたこと
15 は認める。
イ 本件発明3-1の発明特定事項であるボルト及び電源装置と収容部の本件設
置品における位置関係は、本件設置品の内部構造に関するものであるから、同製品
を分解した上、ボルトの長さ等を測定しなければ判明し得ない。しかし、本件設置
品は、摂津市駅構内の地下通路に設置されており、当業者といえどもこれを分解し
て内部構造を把握することは不可能である。そうである以上、NNF発明①は、「公
5 然実施をされた発明」とはいえない。
また、本件説明書3にはNNF製品の施工には電気工事士の資格が必要である旨が
記載されているところ、電気工事施工業者は、少なくとも、工事の請負人として発
注者に対する信義則上の守秘義務を負っていると解されることから、不特定の第三
者に該当しない。
10 加えて、公然実施発明も「発明」(特許法2条1項)である以上、第三者による
認識だけでなく、その反復可能性及び再現可能性が必要である。NNF製品は、本件
説明書3において、「ボルトの出しろ 15~35mm」と記載されており、この
長さだと収容凹部に到達しないこと、ボルトの一部を取付部材の枠体の凹所に配置
することが「警告」として明確に禁止されていることから、当業者がNNF発明①を
15 再現することはあり得ない。その意味でも、NNF発明①は、「公然実施をされた発
明」とはいえない。
さらに、本件設置品は、控訴人パナソニックが阪急電鉄にNNF製品を販売した時
点では、ボルトの一部が「収容部」に収容されているものではなく、施工業者によ
る取付けという別個の具体的な行為が行われることによって初めて本件発明3-1
20 の構成要件3-1Fを充足する。そうすると、仮にNNF発明①が本件発明3-1の
構成要件を充足するとしても、それは、各自の部分的行為を総合して一つの行為と
解釈できることを要するが、本件ではそのような事情は存在しない。
しかも、本件設置品は、施工業者がNNF製品の仕様書の警告に反して施工したも
のであり、阪急電鉄がこれを積極的に許容しているはずもない。しかも、本件設置
25 品は僅か3台のみにとどまり、施工業者も、その施工に当たり本件発明3-1の技
術的思想を実現しようとしたものではなく、偶然、過失により施工を誤ったにすぎ
ないのであって、これによって当業者が本件発明3-1を実施し得るものではない。
照明器具内部の位置関係を含めた特殊な発明特定事項と本件発明3-1に特有の
「天井からの突出量の低減」という周知でない作用効果を、不特定多数の第三者が
当然に認識することは不可能である。
5 NNF製品には、本件発明3-1の構成要件3-1F、Gが規定する「吊ボルト」
はセット販売されておらず、他から購入等しなければならない。
したがって、NNF発明①は、公然実施発明と評価すべき前提を欠く。
ウ 被控訴人による調査時の設置状況は、本件出願日におけるNNF製品の設置状
況を示すものでない。すなわち、本件設置品が摂津市駅に設置されたとされる平成
10 22年3月から、被控訴人が本件設置品の調査(以下「本件調査」という。)を行
った令和元年6月まで、9年3か月が経過している。NNF製品は、本件説明書3に
よると、1年ごとの自主点検や3年ごとの専門家による点検が奨励されている上、
一般の使用方法(1日10時間点灯等)を前提としても10年で照明器具の内部が
劣化するとされている。また、NNF製品の仕様書においては、振動のある場所では
15 使用を控えるように注意がされている。しかるに、本件設置品は、駅構内の地下通
路(ホーム階段下)という、長期間にわたり点灯が継続されると共に比較的振動の
大きい場所において使用されていたのであるから、一般的な使用状況を前提とした
場合よりも経年変化の可能性が高い。このため、本件設置品の本件調査時における
設置状況は、本件出願日3当時の状況と同一であるとはいえない。
20 (2) 本件発明3-1とNNF発明①との相違点の存在
ア 本件発明3-1とNNF発明①とは、「収容部」に関し、本件発明3-1が、
取付部材の底面と両側面とで囲まれた空間であり、吊りボルトの一部及び電源装置
を干渉することなく配置する「収容部」を有するのに対し、NNF発明①はこのよう
な「収容部」を有しない点(相違点1-1。なお、詳細は後記イのとおり。)、及
25 び、「収容部」と「電源装置」の配置に関し、本件発明3-1は、「電源装置が配
置される収容部」であるのに対し、NNF発明①は、「電源ユニットの一部」が配置
される「枠体の凹所」である点(相違点1-2)において相違する。
これらの相違点が存在する以上、本件発明3-1につき、新規性欠如の無効理由
はない。
イ 相違点1-1について
5 (ア) 「収容部」の意義
本件発明3-1に係る特許請求の範囲の記載によると、「収容凹部」は、「前記
器具本体における前記天井材と反対側には、前記器具本体の長手方向に沿って…設
けられ」るものとされ(構成要件3-1C)、器具本体の一部の構成であることが
明記されている。これに対し、「収容部」については、「前記取付部材は、前記器
10 具本体の前記収容凹部と対向する部位に前記吊ボルトの少なくとも一部及び前記電
源装置が配置される収容部を有し」と記載され (構成要件3-1F)、器具本体
(その一部である「収容凹部」)とは異なる取付部材の構成と位置付けられ、また、
その位置関係については、「収容凹部と対向する部位」に存在すると特定されてい
る。
15 「対向」とは、「互いにむきあうこと」を意味し、「部位」とは、「全体に対す
るある部分の位置」等を意味する。そうすると、「収容部」が存在する、「収容凹
部」と「対向する部位」とは、単に収容凹部と正面に位置する取付部材全体を指す
ものではなく、取付部材の中でも更に収容凹部の開口面に対応した一部の部位を指
す。また、「収容」とは、「人や物品を一定の場所におさめ入れること」等の意味
20 を有する用語であり、何かをおさめる場所と特定される。そうすると、構成要件3
-1Fのとおり、本件発明3-1の「収容部」は、吊りボルトの少なくとも一部及
び電源装置をおさめ入れるだけの一定の空間を意味するものである。同空間が収容
凹部の対向した部位に存在し得るのは、収容凹部の内側に独立の空間として存在す
る場合以外には合理的に想定できない。
25 これに加えて、本件明細書3の「取付部材21の底面部211と両側面部212、212と
で囲まれる空間からなる収容部213」(【0017】)等の記載を参酌すると、取付部
材の底面部と両側面部とが器具本体の収容凹部と対向していなければならず、本件
各発明3-1では、収容部が収容凹部の内側に存在することになる。
さらに、構成要件3-1Gは、「前記電源装置は、前記光源ユニットを前記器具
本体に取り付けた状態で前記収容部内における前記吊ボルトと干渉しない位置に配
5 置される」と規定している。
以上を踏まえると、本件発明3の「収容部」(構成要件3-1F、G)とは、収
容凹部の内側にあって、収容凹部と対向した位置にあり、収容凹部とは別個独立の
取付部材の底面部と取付部材の両側面部とで囲まれる空間であり、かつ、吊りボル
トの一部及び電源装置が干渉しないように配置される空間であると理解できる。こ
10 のような収容部の構成によることで、本件発明3-1は、その作用効果を奏する。
(イ) NNF発明①が「収容部」を有しないこと
NNF製品では、下図のとおり、枠体を設置した状態では、「枠体の下面」と「器
具本体の側面」とで囲まれる空間は存在するとしても、「収容凹部」と「対向」す
る位置に、「収容凹部」とは別個独立の「取付部材の底面部と取付部材の両側面部
15 とで囲まれる空間」であり、かつ「吊ボルトの少なくとも一部及び電源装置が配置
される空間」である「収容部」は存在しない。すなわち、NNF製品では、枠体を取
りつけることによって、「器具本体の上面」及び「器具本体の側面」に加え、枠体
の下面で特定される空間(下図のピンクで着色された空間)が生じているが、これ
器具本体の上面
枠体の下面 器具本体の側面
は、器具本体における「収容凹部」の構成の開口部を塞いだものであり、実質的に
は「収容凹部」そのものにすぎない。また、NNF製品における同図のピンクで着色
された空間は、器具本体から独立した構成ではなく、器具本体側の空間の一部にす
ぎないことから、器具本体の収容凹部と「対向」した空間ともいえない。
5 また、下図の水色の部分に当たる枠体の凹所が「収容部」であるとすると、「収
容部」に「収容凹部」そのものが含まれる空間が生じることとなり、収容部と収容
凹部とが別個独立の構成であることに反する。また、上記部分のうち、器具本体の
両側面と取付部材の両側面とで囲まれる空間(下図の○で囲まれた空間)は、「収
容凹部」とは異なる空間となるが、当該空間に係る部材は、NNF製品の枠体を取り
10 付けることを目的とした取付箇所であり、「吊ボルトの少なくとも一部及び電源装
置」のみならず、およそ何らかの部材を配置することは不可能である。
20 さらに、NNF製品では、取付部材(パネル枠)の方が器具本体よりも全体として
一回り大きい部材とされているところ、これは、器具本体に取付部材を固定するに
当たって、取付部材の外側から「ツマミネジ」を回し入れる必要があることに起因
するものであり、「枠体の凹所」の存在は、「天井面からの突出量の低減」という
本件発明3-1の課題とは無関係な構成である。NNF製品における「枠体の凹所」
25 は、吊りボルトや電源装置といった部材の収容を目的とするものではなく、単に、
器具本体の開口部に対し、「蓋」の役割を果たすものにすぎないのであって、本件
発明3-1の具体的課題や技術的思想とは関係を有しない。
加えて、被控訴人の主張は、NNF製品の取付部材の側面部が収容部を構成するも
のであることを前提とするが、同側面部は、取付部材を器具本体に取り付けるため
の意味しかなく、取付部材の側面部の有無によって、照明器具の天井からの突出量
5 の高低が左右されることはない。このような場合に照明器具の天井からの突出量を
左右するのは、器具本体自体の厚みやカバー部材の大きさ等、別の要因となる。
したがって、NNF製品における取付部材の底面部及び側面部で構成される空間は
「収容部」に当たらず、収容部を設けない場合に比べて器具全体の高さ寸法を小さ
くすることができるという本件発明3-1の作用効果を奏することもない。
10 したがって、NNF製品には「収容部」が存在しない。
8 間接侵害の成否(争点5)
(控訴人パナソニックの主張)
被控訴人製品6は、その仕様書及び販売の実態に鑑みると、器具本体とLEDユニ
ットが不可分のものとして取り扱われている。このような販売実態に照らせば、被
15 控訴人製品6は、直接侵害の有無を検討すれば足りる。
もっとも、器具本体及び専用ユニットのいずれかのみが販売される場合でも、以
下のとおり、収容凹部にボルトの一部を収容するに当たって、器具本体及び専用ユ
ニットのいずれもが不可欠な関係にあるといえることから、間接侵害(特許法10
1条2号)の要件を充足する。
20 すなわち、本件発明3-1は、LEDユニット及び器具本体の間に設けられた収容
部にボルトの少なくとも一部及びボルトと干渉しない位置に電源装置が配置される
ことによって、天井からの突出量が大きくなっていたという課題を解決するもので
あるところ、この課題を解決するために 、被控訴人製品6における器具本体及び
LEDユニットのいずれもが必要不可欠である。
25 また、本件の提訴により、被控訴人は、本件発明3-1が特許発明であることや
その物がその発明の実施に用いられることを認識しているのであるから、被控訴人
による被控訴人製品6の製造、販売及び販売の申出については、侵害とみなされる。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。被控訴人製品6の器具本体は従来技術そのものであり、特許法
101条2号の「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に当たらない。
5 9 差止の必要性(争点6)
(控訴人パナソニックの主張)
被控訴人製品6においては、その全ての仕様書において、顧客に対し、ボルトの
使用を指示している。そうである以上、一般的な施工をすれば、通常はボルトの少
なくとも一部が収容部に配置されることになり、侵害が発生する蓋然性がある。
10 被控訴人製品6のうち生産を中止した製品についても、被控訴人においてその在
庫を廃棄した可能性は極めて低く、いまだ被控訴人の譲渡によって本件特許権3を
侵害するおそれは排除できない。
(被控訴人の主張)
被控訴人製品6において、吊りボルトを使用していない施工例は全施工例の中で
15 8割以上を占め、これらは本件発明3-1の構成要件3-1A、F及びGを充足し
ない。したがって、「アンカーボルトを使用する施工現場への出荷用」といった限
定のない控訴人パナソニックの差止請求は、過剰差止の結果を生じさせるものであ
る。
また、被控訴人製品6の中には、既に生産を終了し廃番となってから4~5年以
20 上経過している製品もあり、その差止めの必要性自体が肯定できない。
10 損害額及び不当利得額(争点7)
(控訴人パナソニックの主張)
別紙6「本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由」の第2の4(控訴人パ
ナソニックの主張)のとおりである。
25 (被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件発明3-1について
本件特許権3に係る本件訂正3後の請求項及び本件明細書3には、次の記載があ
る。
5 (1) 技術分野
本件発明3-1は、光源ユニット及び照明器具に関する(【0001】 。
)
(2) 背景技術
従来より、取付ねじを用いて天井に取り付けられる天井直付け型の照明器具が提
供されているが、この照明器具は、横長且つ長尺状に形成されたベースプレート、
10 ベースプレートに対して配置されるウィング部と、ウィング部に取り付けられるL
EDユニットとを備え、ベースプレートの略中央部には、取付ねじを通すためのね
じ穴が長手方向に沿って複数設けられている(【0002】 。
)
(3) 発明が解決しようとする課題
上記従来の照明器具では、取付ねじがウィング部の凹部内に進入できず、取付ね
15 じのねじ頭を配置するためのスペースがベースプレートとウィング部の間に設けら
れているため、器具全体の高さ寸法が大きくなってしまうという問題があった
(【0004】)。
(4) 課題を解決する手段等
上記目的を達成するために本件発明3-1の構成からなる照明器具、本件訂正発
20 明3-3、3-4の構成からなる光源ユニットを採用したものである(請求項1、
3、4、【0006】 。
)
(5) 本件各発明3の作用、効果
本件各発明3によると、光源ユニットを器具本体に取り付けた状態では、吊ボル
トの少なくとも一部が取付部材の収容部に配置されるので、収容部を設けない場合
25 に比べて器具全体の高さ寸法を小さくすることができ、その結果天井からの突出量
を低く抑えた照明器具を提供することができる(【0008】)。
2 公然実施の有無等
事案に鑑み、争点4(無効理由(NNF製品①の公然実施による新規性欠如)の有
無)についてまず判断する。
(1) 争いのない事実、証拠(以下に掲記のもの)及び弁論の全趣旨によると、以
5 下の事実が認められる。
ア 控訴人パナソニックは、本件出願日3以前にNNF製品を製造、販売した(争
いのない事実)。
パナソニック電工株式会社発行に係る「施設・屋外・店舗照明総合カタログ
2011-2013」(乙14。以下「本件カタログ3」という。)は、平成23年4月時
10 点の内容が記載された製品カタログであるところ、これには、「従来品」、「当社
2009年度機種」として、NNF製品が掲載されている。本件カタログ3には、NNF
製品について、「光源寿命40000時間(光束維持率70%)」との記載がある。
また、本件説明書3(乙95)には、以下の記載がある。
〔工事店向け施工説明の冒頭部分〕
15 ・「器具の施工には電気工事士の資格が必要です。施工は必ず工事店に依頼して
ください。」
〔同「安全に関するご注意」の「警告」欄〕
・「施工は、取付方法にしたがい確実に行う。施工に不備があると落下・感電・
火災の原因となります、」
20 ・「天井直付専用器具ですので、半埋込・傾斜天井・壁面での取付はしない。」
〔同「注意」欄〕
・「振動のある場所…では使用しないでください。」
〔同「各部のなまえと取付けかた」欄〕(下図参照)
・「ボルトの出しろ15~35mm」
25 ・「2 本体の取付/(「/」は改行部分を示す。以下同じ。) ・電源線、ア
ース線を本体の電源穴から引き込んでおく。/・本体を取付ボルトで確実に取付け
る。/5 パネル枠の取付/・パネル枠を回転させる。/・ツマミネジで確実に取
付ける。」
〔顧客向け取扱説明の「安全に関するご注意」の「注意」欄〕
・「照明器具には寿命があります。/設置して10年(※)経つと、外観に異常
5 が無くても内部の劣化は進行しています。点検・交換してください。/※使用条件
は周囲温度30℃、1日10時間点灯、年間3000時間点灯です。/●周囲温度
が高い場合、点灯時間が長い場合などは寿命が短くなります。/ ●1年に1回は
「安全チェックシート」に基づき自主点検してください。3年に1回は工事店等の
専門家による点検をお受けください。」
イ 控訴人パナソニックは、平成22年3月、摂津市駅の竣工に合わせて、NNF
製品を同所に納入した。NNF製品は、同駅の地下通路(プラットホーム下にあり、
プラットホーム間の移動等に使用される通路)の天井に7台設置された。その施主
は阪急電鉄であり、電気工事は株式会社阪急阪神電気システムが行った。(乙98
の2・3)
5 ウ 本件調査が実施された令和元年6月13日時点で、摂津市駅の地下通路に設
置 さ れ て い た NNF 製 品 7 台 の 器 具 本 体 に は 「 Panasonic LED 照 明 器 具 品番
NNF41100 LE9 09年製」などと記載された銘板ラベルが貼付されていた。また、
上記7台のうちの少なくとも一部については、平成29年9月28日時点でも、上
記内容の記載された銘板ラベルが貼付されていた。
10 上記7台のうち、本件設置品である3台については、天井面からのボルトの出し
ろ長さが、本件説明書3の記載(15~35mm)を超える約41mmであった。
なお、本件調査に係る写真撮影報告書(乙246)によると、NNF製品の器具本
体以外の取付部材を含む光源ユニット等の部材については、パネル枠内部に斑点や
黒ずみ等が認められるなど、本件調査時点までに相応のまとまった期間使用されて
15 いたことをうかがわせる痕跡がある一方、取替え等により他の部材に比して明らか
に使用期間が異なることなどをうかがわせる部材は見当たらない。
(以上につき、上記のほか、乙99、252)
エ 以上の各認定事実を総合考慮すると、まず、本件調査時点で摂津市駅地下通
路に設置されていた本件設置品3台を含むNNF製品7台は、いずれも、控訴人パナ
20 ソニックが平成22年3月に阪急電鉄に販売し、摂津市駅の地下通路に設置された
ものと同一のものと認められる。
そうすると、本件設置品は、摂津市駅の地下通路の天井に設置された平成22年
3月頃には、その設置工事に従事した施工業者やその後の点検作業に関与した電気
工事業者を含む不特定の第三者によって、その構造が解析可能な状態に至ったもの
25 といえ、本件設置品に係る発明(NNF発明①)は、公然実施をされたものと認めら
れる。
(2) 控訴人パナソニックの主張について
ア 控訴人パナソニックは、本件設置品の内部構造は同製品を分解等しなければ
判明し得ないところ、本件設置品は摂津市駅構内の地下通路に設置されたものであ
るため、当業者もこれを分解して内部構造を把握し得ないこと、施工業者は工事の
5 請負人として、少なくとも発注者に対する守秘義務を負い、不特定の第三者に該当
しないこと、NNF製品においては、ボルトの一部を取付部材の枠体の凹所に配置す
ることが「警告」として明確に禁止されており、発明としての再現可能性がないこ
となどを指摘して、NNF発明①は公然実施をされた発明とはいえないと主張する。
しかし、前記認定のとおり、本件設置品は、平成22年3月に摂津市駅の地下通
10 路に設置される際に、施工業者によってその取付工事が行われたところ、NNF製品
のボルト、電源ユニット及びパネル枠は、施工の際にいずれも目視できる部材であ
り、その視認対象もボルトと電源装置等の位置関係であって、定規等を用いて確認
できるものであることに照らせば、本件発明3-1の発明特定事項と対比する観点
からその構成を把握するために、必ずしも分解等を要するものではないと思われる。
15 施工業者は取付工事等に必要な知識経験を有すると想定されること等にも鑑みると、
取付時における上記各部材の位置関係を含むNNF製品の内部構造は、施工業者が認
識し得たものと見られる。このことは、その後の点検作業に関与した電気工事業者
についても同様である。
また、NNF製品は、平成22年3月時点で既に一般に向けて販売されていたこと
20 に鑑みると、このようなNNF製品の内部構造について、控訴人パナソニックとの関
係で、秘密として管理された状況で施工工事等が行われ、使用されていたとは考え
難く、そのような状況で工事等が行われたことを裏付ける具体的な事情も見当たら
ない。また、発注者であり鉄道事業者である阪急電鉄と請負人である施工業者(な
いし点検に当たる工事業者)との間で、NNF製品の設置工事等に当たり、少なくと
25 もNNF製品の内部構造について、施工業者等が阪急電鉄に対し守秘義務を負うと考
えるべき合理的な理由もない。
さらに、NNF製品の販売時にはボルトの一部が「収容部」に収容されておらず、
施工業者の取付行為が別途行われることは、施工業者等がNNF製品の構造を解析し
得る状態に至ることを妨げる事情ではなく、これをもって公然実施をされたといえ
なくなるものではない。
5 加えて、NNF製品は、ボルトの出しろ長さが50mmの場合でも、器具本体に光源ユ
ニットを取り付けることが可能である(乙128)。このことと、本件設置品が同
時期に設置したと考えられるNNF製品7台のうち3台であり、母数が少ないことも
あって数は少ないものの、割合的には少ないとはいえないことを併せ考えると、当
業者がNNF発明①を再現することは客観的に可能であり、かつ、実際にそのような
10 施工がされる例も少なからず存在するものとうかがわれる。
控訴人パナソニックは、本件発明3-1の作用効果を認識できないとか、本件説
明書3の記載やNNF製品を購入した場合にボルトがセット販売ではないことから 、
本件発明3-1の技術的思想を認識できないなどと主張するが、本件での新規性の
有無については、摂津市駅にて公然実施された製品に係る発明であるNNF発明①が、
15 特許請求の範囲に記載されている発明と同一であるか否か、すなわち、両者に相違
点があるか否かが問題なのであって、NNF発明①の作用効果を認識できる必要はな
いし、取扱説明書(乙95)のNNF発明①に反する記載や別途販売されているNNF製
品の存在は上記判断を左右しない。
イ さらに、控訴人パナソニックは、本件調査時の設置状況は本件出願日3にお
20 ける設置状況を示すものではないなどとも主張する。
しかし、NNF製品は、天井直付専用器具であり、そのボルトは、器具本体を天井
に取り付けるための部材である。本件設置品の器具本体には、それが平成21年度
製であることを示すラベルが貼付されていたのであるから、これを天井に取り付け
るためのボルトについても、平成22年3月に設置されてから本件調査時まで変更
25 されていないと考えるのが合理的である。実際、前記認定のとおり、本件設置品の
各部材につき取替えが行われたことをうかがわせる事情は見られない。
点検について見ても、器具の施工に電気工事士の資格が必要とされていることか
らすると、電気工事士が設置した本件設置品につき、自主点検時に器具本体の取り
外しを含む点検が行われるとは考え難い上、3年ごとの専門家による点検について
も、その際、点検のために器具本体ないしボルトを取り外す必要性があったとは考
5 えられず、これが行われたことをうかがわせる具体的な事情もない。
また、本件設置品の設置場所である駅構内の地下通路においては、他の場所と比
較して振動が多いと推察はされるものの、振動によりボルトの出しろ長さが影響を
受けるとも考え難い。その他の経年変化についても、器具本体の天井への取付け部
分につき自重によると見られる20mm径の湾曲が見られる(乙99)以外に、少なく
10 ともボルトの出しろ長さに影響を与え得るような構造的な変化等は見られない。
したがって、本件調査時の本件設置品の施工状況は、本件出願日3における設置
状況を示していると認められる。
ウ その他控訴人パナソニックが主張する点を考慮しても、この点に関する控訴
人パナソニックの主張はいずれも採用できない。
15 (3) 小括
以上によると、NNF発明①は、本件出願日3より前に日本国内において公然実施
をされた発明といえる。
3 NNF発明①の構成等
被控訴人主張に係るNNF発明①の構成のうち、構成a1~e1及びh1の構成について、
20 控訴人パナソニックは、明らかに争わない。
また、本件設置品は、前記認定のとおり、天井面からのボルトの出しろの長さが
約41mmを超えている。NNF製品は、天井面からのボルトの出しろ長さが約40mmを超
える場合、光源ユニットであるLEDユニットを器具本体に取り付けた状態で、ボル
トの一部(天井材と反対側の先端部分)がLEDユニットの枠体が形成する凹所に届
25 く状態となる。したがって、本件設置品は、 LEDユニットを器具本体に取り付けた
状態で、ボルトの一部が、LEDユニットの枠体が形成する凹所に届いていると認め
られる(乙94、190、246、252、弁論の全趣旨)。
そのほか、証拠(乙94、95、97、127、128、190、246、27
7)及び弁論の全趣旨によると、NNF発明①の構成は、以下のとおりであると認め
られる。
5 a1’ 長尺状に形成され吊りボルト(取付ボルト)を用いて天井材に取り付けら
れる器具本体と、
b1’ 前記器具本体に取り付けられる光源ユニット(LEDユニット)とを備え、
c1’ 前記器具本体における前記天井材と反対側には、前記器具本体の長手方向
に沿って収容凹部(器具本体の凹所)が設けられ、
10 d1’ 前記収容凹部(器具本体の凹所)の底面部には、前記吊りボルトを通すた
めの孔(取付ボルト穴)が設けられており、
e1’ 前記光源ユニット(LEDユニット)は、複数のLEDが実装されたLED基板と、
前記複数のLEDが前記収容凹部(器具本体の凹所)の外側を向くようにして前
記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材(LEDユニットの枠体)
15 と、前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置(電源ユニット)とを有し、
f1’ 前記取付部材(LEDユニットの枠体)は、前記器具本体の前記収容凹部(器
具本体の凹所)と対向する部位に前記吊りボルト及び前記電源装置(電源ユニ
ット)の一部が配置されるLEDユニットの枠体の凹所を有し、
g1’ 前記電源装置(電源ユニット)は、前記光源ユニット(LEDユニット)を前
20 記器具本体に取り付けた状態で前記LEDユニットの枠体の凹所内における前記
吊りボルトと高さ方向で干渉しないように、前記取付ボルト穴の位置とは干渉
しない位置に水平方向に配置されることを特徴とする
h1’ 照明器具。
4 本件発明3-1とNNF発明①の対比
25 (1) NNF発明①の構成a1’~e1’及びh1’につき、本件発明3-1の構成要件3-1
A~E及びHと対比すると、構成a1’~e1’及びh1’は、本件発明3-1の構成要件3
-1A~E及びHに相当するものといえる。
(2) 「収容部」(構成要件3-1F、G)の意義及びNNF発明①の構成との対比
ア 「収容部」(構成要件3-1F、G)の意義
(ア) 本件発明3-1における「収容部」は、本件特許権3に係る特許請求の範囲
5 の記載によると、「前記取付部材」が有するものであって、「前記器具本体の前記
収容凹部と対向する部位に前記吊ボルトの少なくとも一部及び前記電源装置が配置
される」ものであり(構成要件3-1F)、かつ、「前記電源装置」が、「前記光
源ユニットを前記器具本体に取り付けた状態で前記収容部内における前記吊ボルト
と干渉しない位置に配置される」もの(構成要件3G-1)とされている。
10 ここで、一般に、「収容」とは「人や物品を一定の場所におさめ入れること」等
を意味し(甲87、88)、「対向」とは「互いに向き合うこと」を意味する。
また、構成要件3-1Fについては、「収容部」は、「前記器具本体の前記収容
凹部」と対向する位置関係にあり、両者が対向する部位には、「前記吊ボルトの少
なくとも一部及び前記電源装置が配置される」ことが示されているものと理解され
15 る。
もっとも、特許請求の範囲の記載からは、これ以上に、「収容部」の構成等は明
らかではない。
(イ) 本件明細書3の記載によると、本件発明3-1の効果は、「光源ユニットを
器具本体に取り付けた状態では、吊ボルトの少なくとも一部が取付部材の収容部に
20 配置されるので、収容部を設けない場合に比べて器具全体の高さ寸法を小さくする
ことができ、その結果天井からの突出量を低く抑えた照明器具を提供することがで
きる」というものである(【0008】)。また、本件明細書3には、実施例として
「この電源装置24は、取付部材21の底面部211と両側面部212、212とで囲まれる空
間からなる収容部213に少なくとも一部が収容された状態で、例えばねじなどを用
25 いて取付部材21に取り付けられる」ことが示されている(【0017】、図1(b))。
他方、本件発明3-1において「収容部」と対向するとされる「収容凹部」は、本
件特許権3に係る特許請求の範囲の記載によると、「前記器具本体の長手方向に沿
って…設けられ」ており(構成要件3-1C)、その「底面部には前記吊ボルトを
通すための孔が設けられており」(構成要件3-1D)とされているところ、本件
明細書3には、本件発明3-1の実施例として、「作業者は、…少なくとも電源装
5 置24及び端子台ブロック25が収容凹部11に収容されるようにして、…光源ユニット
2を器具本体1に取り付ける。」と記載されている(【0020】)。
さらに、本件明細書3には、照明器具を天井材に取り付けた状態においては、
「図1(b)に示すように、吊ボルト200の一部及び電源装置24の一部が取付部材21の
収 容 部213に配置さ れる。また 、図 1(a)に示すように 、電源 装置 24の長手 寸 法L1
10 (前後方向に沿った寸法)が吊ボルト200の取付ピッチ寸法P1よりも小さく設定さ
れているため、前後方向(図1(a)中の左右方向)において吊ボルト200と干渉しな
いように電源装置24を配置することができる。」とも記載されている(【0021】)。
【本件明細書3の図1】
(ウ) 以上のような特許請求の範囲及び本件明細書3の記載等を考え合わせると、
本件発明3-1における「収容部」とは、「取付部材に設けられた空間であり、器
具本体に設けられた空間である「収容凹部」と互いに向き合う部位に存在し、「電
5 源装置」及び「吊ボルト」の少なくとも一部をおさめ入れ、かつ、高さ方向で「電
源装置」及び「吊ボルト」が互いに干渉しないように、水平方向に「電源装置」及
び「吊ボルト」を配置するもの」と解することができる。
また、本件発明3-1の構成要件3-1Fには、吊りボルトは「少なくとも一部」
が収容部に「配置」されると記載されているのに対し、電源装置については、単に
10 収容部に「配置される」と記載されているのみで、吊りボルトのような「少なくと
も一部」という限定がない。しかし、このような特許請求の範囲の記載は、電源装
置の全部が収容部に配置されなければならないことを直ちに意味するとは必ずしも
解されない上、上記のとおり、本件明細書3には、電源装置の一部が収容部のみな
らず収容凹部にも収容された実施例が記載されている 。これらの点に鑑みると、
15 「収容部」の意義としては、「電源装置」についても、少なくとも一部が配置され
るものとすれば足りると解される。
(エ) 控訴人パナソニックの主張について
控訴人パナソニックは、「収容部」の意義について、収容凹部の内側にあって、
収容凹部と対向した位置にあり、収容凹部とは別個独立の取付部材の底面部と取付
20 部材の両側面部とで囲まれる空間であり、かつ、吊りボルトの一部及び電源装置が
干渉しないように配置される空間を意味すると主張する。
しかし、本件発明3-1の特許請求の範囲にも、本件明細書3にも、収容部が収
容凹部の内側にあるとは明記されていない。また、収容部が収容凹部の内側にない
場合であっても、収容部が収容凹部に対向する部位を有し、そこに電源装置及び吊
25 りボルトの少なくとも一部を収容することに何ら支障はない。本件発明3-1の効
果との関係でも、収容部が収容凹部の内側になくとも、収容部の収容凹部に対向す
る部位に吊りボルト及び電源装置の少なくとも一部が配置され、その中で電源装置
及び吊りボルトが互いに高さ方向で干渉しないような水平方向の配置で収容される
限りにおいて、天井からの突出量の低減という本件発明3-1の効果はなお生じ得
る。
5 さらに、部材ごとに見た場合、取付部材に存する収容部により形成される空間と、
器具本体に存する収容凹部により形成される空間とは、別個独立の空間として存在
するものであり、本件発明3-1に係る照明器具を組み立て、取り付けたことによ
って両者が一部重なることとなったとしても、なおそのように把握し得ることに違
いはない。
10 その他控訴人パナソニックが指摘する事情を考慮しても、「収容部」の意義につ
いては前記(ウ)のとおり解釈すべきであって、この点に関する控訴人パナソニック
の主張は採用できない。
イ NNF発明①の「LEDユニットの枠体の凹所」について
(ア) NNF発明①の「LEDユニットの枠体の凹所」とは、下図の水色で示した部分で
15 あると ころ 、同 所は 、取付 部材 (構 成 e1’) に 設け られ た空 間であ り 、 器 具 本 体
(構成a1’)に設けられた空間である収容凹部(器具本体の凹所。構成c1’)と互い
に向き合う部位に存在しており、電源ユニット及びボルトの一部をおさめ入れ、か
つ、高さ方向で電源ユニット及びボルトが互いに干渉しないように、水平方向に電
源ユニット及びボルトが配置されているといえる。したがって、NNF発明①の「LED
ユニットの枠体の凹所」は、本件発明3-1の「収容部」(構成要件3―1F、G)
5 に相当する構成ということができる。
(イ) 控訴人パナソニックは、NNF発明①の「LEDユニットの枠体の凹所」は、本件
発明3-1の収容部に相当するものではないと主張する。
しかし、控訴人パナソニックの主張のうち、「収容部」(構成要件3-1F、G)
の意義につき控訴人パナソニック主張の解釈を前提とするものは、前記のとおり、
10 その前提において失当である。
また、控訴人パナソニックは、NNF発明①の「LEDユニットの枠体の凹所」につき、
器具本体両側面と取付部材の両側面とで囲まれる空間が存在することを指摘する。
しかし、本件発明3-1の特許請求の範囲及び本件明細書3のいずれの記載を見て
も、本件発明3-1の「収容部」のうち、「前記収容凹部と対向する部位に前記吊
15 ボルトの少なくとも一部及び電源装置が配置される」ことについては記載があるも
のの、「収容部」に「収容凹部」と対向しない部位がある場合に、同所にボルト等
の部材を配置することができない空間が含まれてはならないことを示す記載は存在
しない。そのような空間が「収容部」に含まれたとしても、それが本件発明3-1
の作用効果の奏功を妨げるとも思われない。
20 さらに、NNF発明①の「LEDユニットの枠体の凹所」においては、ボルトと電源ユ
ニットが高さ方向で干渉し合わない位置で配置されていることから、そのような構
成を持たない照明器具に比して、天井からの突出量は低減されていることが認めら
れる。
その他控訴人パナソニックが指摘する事情を考慮しても、この点に関する控訴人
25 パナソニックの主張は採用できない。
ウ 以上によると、NNF発明①の構成f1’及びg1’の「LEDユニットの枠体の凹所」
は、本件発明3-1の「収容部」(構成要件3-1F、G)に相当するものといえ
る。
(3) 小括
したがって、NNF発明①は、本件発明3-1と同一の発明であると認められる。
5 そうすると、本件発明3-1は、本件出願日3(平成24年10月11日)より
前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、本件特許3は特許法29
条1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきも
のである。そうである以上、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権
3を行使することができない。
10 4 当審における本件訴えの変更の申立ての許否について
前記第1の1のとおり、控訴人パナソニックは、令和4年5月9日付けの訴え変
更申立書(特許3)により、請求原因を本件発明3-1に加えて、本件訂正発明3
-3及び本件訂正発明3-4に基づく訴えの追加的変更をする旨の申立てをした。
これに対し、被控訴人は、本件訴え変更の申立てを許容すると被控訴人製品6目
15 録につき、本件訂正発明3-3及び本件訂正発明3-4と、どの製品(器具本体、
光源ユニット、組み合わされ吊ボルトとともに完成する照明器具)が新請求の各発
明に対応するのか、上記訴えの取下げを前提とした審理を求めるかの2項目に関し
て、控訴状及び控訴理由書で特定されていない請求内容を特定する必要があり、控
訴人パナソニックから具体的な主張がない以上、訴訟遅延を招くことが明らかであ
20 るとして、本件訴え変更の不許を求めた。
そこで検討すると、本件訂正発明3-3及び本件訂正発明3-4の被疑侵害物件
として主張されている被控訴人製品6は、別紙2物件目録6-①及び6-②に記載
された(1)「LEDベースライト110Wタイプ」~(14)「LEDベースライト4
0Wタイプ」の複数のタイプがある上に、それらに多数の「器具本体型番」や「専
25 用ユニット型番」を組み合わせた各製品であるところ、本件訴え変更の申立ては、
これを認めることにより、別紙1物件目録の被控訴人製品6において、 どの製品
(器具本体、光源ユニット、組み合わされた吊ボルトとともに完成する照明器具)
が対象となるのか、更に特定が必要となり、それらに対する認否・反論も含め、新
たに審理をしなければならず、民訴法143条1項の「これにより著しく訴訟手続
を遅滞させることとなるとき」に該当し、同条4項の「請求又は請求の原因の変更
5 を不当であると認めるとき」といえる。
したがって、控訴人パナソニックの本件訴え変更の申立ては、同法297条、1
43条1項及び4項に基づき、許さないのが相当である。
5 まとめ
以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人パナソニックの本
10 件特許権3の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙7の別添1)●(省略)●
(別紙7の別添2)
特許権3充足論一覧表
逆富士形 下面開放形(埋込)
トラフ形 下面開放形 反射笠付形 白ルーバー形 空調ダクト回避型 ウォールウォッシャー形
枝番 電力 器具型番 W:230 W:150 W:300 W:220 W:150
ERK9585W ERK9585W
ERK9640W ERK9640W
(1) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9560W ERK9560W
ERK9562W ERK9562W
ERK9819W ERK9819W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9826W ERK9826W
ERK9584W ERK9584W
ERK9635W ERK9635W
ERK9636W ERK9636W
ERK9820W ERK9820W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9637W ERK9637W
ERK9845W ERK9845W
ERK9846W ERK9846W
被 ERK9847W ERK9847W
控 ERK9563W ERK9563W
訴 (4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9638W ERK9638W
人 ERK9639W ERK9639W
ERK9567W ERK9567W
製
ERK9566W ERK9566W
品 ERK9642W ERK9642W
6 (5) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9641W ERK9641W
ERK9561W ERK9561W
(6) LEDベースライト 110Wタイプ ERK9817W ERK9817W
(7) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9818W ERK9818W
ERK9393W ERK9393W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ
ERK9396W ERK9396W
ERK9306W ERK9306W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9309W ERK9309W
ERK9307W ERK9307W
(10) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9308W ERK9308W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9310W ERK9310W
(12) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9311W ERK9311W
ERK9474W ERK9474W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9475W ERK9475W
ERK9491W ERK9491W
(14) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9488W ERK9488W
長尺状に形成され吊ボルトを用いて天井材に取り付け
3-1A ○ 争 ○ ○ ○ ○ ○
られる器具本体と,
前記器具本体に取り付けられる光源ユニットとを備
3-1B え, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
3-1C 前記器具本体における前記天井材と反対側には,前記 ○ ○ ○ ○ 争 争 争
器具本体の長手方向に沿って収容凹部が設けられ,
前記収容凹部の底面部には前記吊ボルトを通すための
構 3-1D 孔が設けられており, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
成 前記光源ユニットは,複数のLEDが実装されたLE
要 D基板と,前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を
3-1E 向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
件 付けるための取付部材と,前記複数のLEDに点灯電
力を供給する電源装置とを有し,
前記取付部材は,前記器具本体の前記収容凹部と対向
3-1F する部位に前記吊ボルトの少なくとも一部及び前記電 争 争 争 争 争 争 争
源装置が配置される収容部を有し,
前記電源装置は,前記光源ユニットを前記器具本体に
3-1G 取り付けた状態で前記収容部内における前記吊ボルト 争 争 争 争 争 争 争
と干渉しない位置に配置されることを特徴とする
3-1H 照明器具。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙7の別添3)
被控訴人製品6の構成(控訴人パナソニックの主張)
1 逆富士形,トラフ形,下面開放形,下面開放形(埋込)
3a 長尺状に形成されアンカーボルトを用いて天井材に取り付けられる器具
本体と(別紙3物件説明書構成6-①,6-③),
3b 前記器具本体に取り付けられる LED ユニットとを備え( 同構成6-
①),
10 3c 前記器具本体における前記天井材と反対側には,前記器具本体の長手方
向に沿って収容凹部が設けられ(同構成6-③),
3d 前記収容凹部の底面部には前記アンカーボルトを通すための取付用ボル
ト穴が設けられており(同構成6-③,6-④),
3e 前記 LED ユニットは,複数の LED が実装された LED 基板と,前記複数
15 の LED が前記収容凹部の外側を向くようにして前記 LED 基板を前記器具
本体に取り付けるための取付部材と,前記複数の LED に点灯電力を供給
する電源装置とを有し(同構成6-④),
3f 前記取付部材は,前記器具本体の前記収容凹部と対応する部位に前記ア
ンカーボルトの少なくとも一部及び前記電源装置が配置される収容部を
20 有し(同構成6-⑤),
3g 前記電源装置は,前記 LED ユニットを前記器具本体に取り付けた状態
で前記収容部内における前記アンカーボルトと干渉しない位置に配置さ
れることを特徴とする(同構成6-⑤)
3h 照明器具(同構成6-⑮)。
2 反射笠付形,白ルーバー形,空調ダクト回避型
3a 長尺状に形成されアンカーボルトを用いて天井材に取付けられる本体と,
3b 前記本体に取付けられる LED ユニットとを備え,
5 3c 前記本体における前記天井材と反対側には,前記本体の長手方向に沿っ
て凹部が設けられ,
3d 前記凹部の底面部には前記アンカーボルトを通すための孔が設けられて
おり,
3e 前記 LED ユニットは,複数の LED が実装された LED 基板と,前記複数
10 の LED が前記凹部の外側を向くようにして前記 LED 基板を前記本体に取
り付けるための取付部材と,前記複数の LED に点灯電力を供給する電源
装置とを有し,
3f 前記取付部材は,前記本体の凹部と対向する部位に前記アンカーボルト
の少なくとも一部及び前記電源装置が配置される収容部を有し,
15 3g 前記電源装置は,前記 LED ユニットを前記本体に取り付けた状態で前
記収容部内における前記アンカーボルトと干渉しない位置に配置されるこ
とを特徴とする
3h 照明器具。
20 以 上
(別紙8)
本件特許権4関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権4
控訴人パナソニックは、以下の特許権(本件特許権4)を有する。
特許番号 特許第5492344号
発明の名称 光源ユニット及び照明器具
出願日 平成25年11月15日
10 分割の表示 特願2012―225953号の分割
原出願日 平成24年10月11日(以下「本件原出願日4」という。)
登録日 平成26年3月7日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲4の2)の特許請求の範囲請求項1、4及
び5に各記載のとおり(以下、各記載の発明をそれぞれ「本件発明4-1」、「本
15 件発明4-4」及び「本件発明4-5」といい、これらを併せて「本件各発明4」
という。また、本件特許4に係る願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明
細書4」という。)
2 構成要件の分説
本件各発明4をそれぞれ構成要件に分説すると、本件発明4-1は、別添2「特
20 許権4充足論一覧表」の「本件発明4-1」の「4-1A」~「4-1H」の各欄
に、「本件発明4-5は、同一覧表の「本件発明4-5」の「4-5A」~「4-
5J」の各欄に、それぞれ記載のとおりである。
控訴審において控訴人パナソニックが請求原因として追加した「本件発明4-4」
は以下のとおりである。
25 4-4A 前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置を備えていることを
特徴とする
4-4B 請求項1〜3の何れか1項に記載の光源ユニット。
3 被控訴人の行為
(1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年3月1日から、被控訴人製品6
の製造、販売又は販売の申出をそれぞれ開始した。
5 被控訴人製品6について、別紙2物件目録記載の器具本体の型番、適合ユニット
の型番及び製品の形(型)の対応関係は、別添2「特許権4充足論一覧表」の「被
控訴人製品6」の各欄記載のとおりである。また、被控訴人製品6の各型番のカバ
ー部材の形状には、別の配光制御機能のあるカバー部材を備える製品(以下「オプ
ティカルタイプ」という。)もあるところ、該当する製品は、同一覧表の「被控訴
10 人製品6」の「オプティカルタイプ」欄記載のとおりである。
(2) 被控訴人製品6の構成
別添3「被控訴人製品6の各構成(控訴人パナソニックの主張)」記載の被控訴
人製品6の各構成につき、オプティカルタイプ並びにトラフ形及びウォールウォッ
シャー形(以下、トラフ形及びウォールウォッシャー形を併せて「トラフ形等」と
15 いう。)を除く被控訴人製品6に関しては、構成4-1a~e及びh並びに構成4
-5a~h及びjについて、当事者間に争いがない。オプティカルタイプは構成4
-1c及び4-5hについて、トラフ形等は構成4-1g、4-5d、e、g及び
iについて、それぞれ争いがある。また、4-4aにつき争いがある。
4 構成要件の充足
20 被控訴人製品6について、別添2「特許権4充足論一覧表」 の各構成要件欄に
「○」が付されている本件各発明4の各構成要件を充足することは争いがない。構
成要件の充足につき争いがあるのは、同一覧表に「争」の記載がある部分である。
5 争点
(1) 本件特許権4関係の請求に固有の争点
25 ア 構成要件の充足性
(ア) 被控訴人製品6全般について
構成要件4-1F、G、4-4B及び4-5Iの充足性-「延出部」の意義(争
点1)
(イ) オプティカルタイプについて
構成要件4-1C、4-4B及び4-5Hの充足性-「拡散性」の有無(争点2)
5 (ウ) トラフ形等について
構成要件4-1G、4―4B及び4-5D、E、G、Iの充足性-「収容凹部」
及び「矩形の収容凹部」の意義(争点3)
イ 無効理由の有無
(ア) 無効理由1(乙6発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点4)
10 (イ) 無効理由2(乙151発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点5)
(ウ) 無効理由3(乙152発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点6)
(エ) 無効理由4(ワイドキャッツアイ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無
(争点7)
ウ 訂正の再抗弁の成否(争点8)
15 エ 間接侵害の成否(争点9)
(2) 本件特許権2、3、6及び7関係の請求と共通の争点
損害額(争点10)
第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件4-1F、G、4-4B及び4-5Iの充足性-「延出部」の意義
20 (争点1)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「延出部」(構成要件4-1F、G、4−4B及び4-5I)の意義
ア 延出部はカバー部材の一部であれば足りること
(ア) 「延出部」(構成要件4-1F、G、4−4B及び4-5I)は、以下のと
25 おり、LED基板を覆うカバー部材そのものとして、カバー部材の両端において、一
対の突壁部が並ぶ方向における突壁部よりも外側に延出した部分である。
(イ) 特許請求の範囲の記載によると、構成要件4-1E及びFの主語は、「前記
カバー部材」であり、そのカバー部材の構成(客体)として、「前記取付部材に取
り付けられる一対の突壁部」(構成要件4-1E)と、「前記一対の突壁部の各々
に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延出する一
5 対の延出部」(同4-1F)とが併記されている。また、構成要件4-1Gにおい
ては、「カバー部材」自体の特徴的構成として 、「収容凹部の開口端縁と重なる
「延出部」」が記述されており、この記載からも、「延出部」がカバー部材の別物
品として特定されていないことが理解される。「…部」という表現も、一般的に、
別の物品を指すという解釈は考えられない。その他のクレーム上も、「延出部」が
10 別物品であると限定するような記載はない。
また、「延出部」の用語は本件各発明4の各請求項において使用されているとこ
ろ、特許法施行規則において、特許請求の範囲に関し、用語は明細書及び特許請求
の範囲全体を通じて統一して使用するとされていることからすると、本件発明4-
5における「延出部」も、本件発明4-1における延出部と同一の意味と解釈すれ
15 ば足りる。
(ウ) 本件明細書4においても、カバー部材は一対の突壁部及び「延出部」を有す
るとされている。また、「延出部」はカバー部材の「両端部」に設けられるものと
記載されているところ、これは、延出部がカバー部材の内部において割り当てられ
る位置を説明するものである。さらに、発明の効果につき、「延出部」が収容凹部
20 の開口端縁と重なることにより「カバー部材と収容凹部との間に隙間が生じない」
とされているところ、「延出部」がカバー部材と区別されるものであれば、「「延
出部」と器具本体の収容凹部の間に隙間が生じない」と特定されているはずである。
このように、本件明細書4において、「延出部」は、カバー部材そのものとして捉
えられている。
25 イ 出願経過禁反言に反する事情はないこと
控訴人パナソニックは、本件特許権4の出願審査での手続補正の際に提出した意
見書において、「延出部」及びカバー部材を特定の形状に限定した ことはなく、
「カバー部材」の形状から、カバー部材が一対の突壁部相当部から膨らみ出ている
形状(以下「膨出した形状」という。)を除外したこともない。
なお、以下の図のとおり、被控訴人製品6のカバー部材の延出部は、カバー部材
5 の一対の突壁部から水平方向に直線に延ばされたものであり、そもそも「膨出した
形状」ではない。
突壁部 突壁部
延出部
(2) 構成要件の充足性
20 被控訴人製品6は、上記図の製品をはじめ、いずれのタイプのカバー部材であっ
ても、LED基板を覆うカバー部材そのものとして、カバー部材の両端において、一
対の突壁部が並ぶ方向における突壁部よりも外側に延出した部分すなわち「延出部」
を有する。また、被控訴人製品6では、いずれも、この延出部に相当する構成によ
り、収容凹部の開口端縁と隙間が生じないようにカバー部材が重なっている。
25 したがって、被控訴人製品6の構成4-1f及びgは構成要件4-1F及びGを、
構成4-5iは構成要件4-5Iを、それぞれ充足する。
(3) 作用効果を奏すること
本件各発明4の作用効果は、延出部の存在により、「光源ユニットを点灯させた
際にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄えを向上すること」にあり、
一般的な使用方法を前提として、スジ状の暗さが生じるか否かが検証される必要が
5 ある。しかし、被控訴人が行った実験(以下「被控訴人実験」という。)は、照明
器具の真下位置のみで測定を行っており、それ以外に一般的な使用者が照明器具を
観察するであろう位置からの測定を行っていない。また、被控訴人実験は、カバー
部材の輝度を測定するだけであり、器具本体の収容凹部とカバー部材との間の隙間
(左右方向の隙間)部分が使用者にどのように認識されるか、同部分にスジ状の暗
10 さが生じるかが検証されていない。さらに、控訴人パナソニックの実験結果による
と、被控訴人製品6について、器具本体の収容凹部とカバー部材との間に上下方向
の隙間を生じさせた場合、同部分の左右方向の隙間にスジ状の暗さが生じることが
確認された。
したがって、被控訴人製品6のカバー部材の延出部は、本件各発明4の作用効果
15 を奏する。
(被控訴人の主張)
(1) 「延出部」(構成要件4-1F、G、4-4B及び4-5I)の意義
ア 特許請求の範囲及び本件明細書4の記載
(ア) 「延出」という用語は、特許分野においては、「伸び出ている部位」との意
20 味を有していることから、「延出部」とは、「部材の一端から伸び出ている部分」
を特定すべき用語と理解される。また、「延出部」との用語の多くは、板状又は線
状の部材を特定するために使用されるものであって、部材の端から形状を保って伸
ばし出ている構成を特定する内容のものである。
このような通常の用語の意味からすると、本件各発明4の「延出部」とは、連続
25 する部材の他の部位から区別できる部位であって、かつ、他の部材の端部から中実
のまま伸び出た部位と把握できる構成のものと理解される。
(イ) 本件発明4-1では、まず構成要件4-1Cにおいて「カバー部材」が「LE
D基板を覆うように」これを内包する部材であることを特定した上で 、構成要件4
-1Fにおいて、カバー部材は、「…前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の
突壁部が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部とを有し」
5 と特定する以上、「延出部」は、「LED基板を覆う」部位ではないと区別されてい
るものと理解されるのであって、突壁部を除き全てLED基板を内包するカバー部材
として一体となっているカバー部材には、本件各発明4の「延出部」は存在しない。
また、本件明細書4においても、「延出部」は、一貫して、「LED基板を覆」い、
これを内包するカバー部材と区別され、そのカバー部材の端部として伸ばし出され
10 た部位を「延出部」と説明している(本件発明4-1を引用する本件発明4−4も
同様である。)。
(ウ) 本件発明4-5においては、カバー部材に「突壁部」との特定がなく、「カ
バー部材は、…延出部が設けられている」とだけ特定されている(構成要件4-5
I)。もっとも、「拡散性を有し且つ前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部
15 材に取り付けられる」(同4-5H)というカバー部材の技術的意義の特定は、実
質的に本件発明4-1と同じである。また、本件発明4-5では、カバー部材に設
けられた特定の部位としての「延出部」の存在を前提として、「延出部」につき、
「前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記収容凹部の開口
端縁と隙間が生じないように重なる」(同4-5I)と特定されている。この点で、
20 本件発明4-5と本件発明4-1とで相違するところはない。
(エ) したがって、「延出部」は、複数のLED基板を内包するため中空の構成とな
るカバー部材の他の部位から区別された部位であって、カバー部材の端部から伸び
出されたLED基板を内包しない中実の構成である。
イ 出願経過禁反言
25 控訴人パナソニックは、本件特許権4の出願審査過程において、手続補正によっ
て構成要件4-1Gを追加した際、本件各発明4における「延出部」の形状につい
て、本件明細書4の図1及び5並びにこれを説明する記載を根拠として補正した。
また、特開2012-3993号公報(乙6 )の図21の発明につき 、カバー部材の形状が
「カバー部材を前面側に膨出させるように形成することで、前面側から見てカバー
部材と器具本体の収容凹部とが重なるように構成された」ものであり、本件各発明
5 4のカバー部材の「延出部」とは異なる旨を説明していた。
すなわち、控訴人パナソニックは、「延出部」の具体的構成を特定した本件各発
明4の特徴として、「膨出させるように形成すること」と「延出部」とは異なるも
のとして、本件特許4の設定登録を得たものである。
しかるに、被控訴人製品6のカバー部材は、前面側に膨出させるように形成され
10 た形状のものであり、LEDからの直接光を受けることで、光源ユニットと器具本体
との間の隙間を覆っているものである。
このような被控訴人製品6のカバー部材について、控訴人パナソニックが、「延
出部」があるとして本件各発明4の技術的範囲に属すると主張することは、出願経
過禁反言に当たり許されない。
15 (2) 構成要件の非充足
被控訴人製品6のカバー部材は、突壁部を除き、全て複数のLED基板を覆うよう
にして取付部材に取り付けられる中空の部位だけで構成され、カバー部材として一
体となっており、本件各発明4の「延出部」というべき部位は設けられていない。
あえて部位を特定すれば、「膨出部」における「ベース部」(下図参照)が収容凹
20 部の開口端縁と隙間が生じないように重なっているだけである。
したがって、被控訴人製品6は「延出部」を有さず、本件発明4-1の構成要件
4-1F及びG並びに本件発明4-5の構成要件4-5Iをいずれも充足しない。
(3) 作用効果の不奏功
本件各発明4は、「収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重な」る(構成
要件4-1G及び4-5I)という特定の形状の延出部を前提として、光源ユニッ
5 トを点灯させた際にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄えを向上さ
せるとの作用効果を奏し、課題を解決するものである。
しかし、被控訴人実験のとおり、被控訴人製品6のカバー部材は、点灯時にカバ
ー部材自体にLEDから直接光を受け明るく輝く膨出部が存在していることにより、
下から見上げたときに光源ユニットと器具本体との間の遊びの隙間によりスジ状に
10 暗くなるという現象が発生しないため、本件各発明4のカバー部材が収容凹部の開
口端縁と隙間が生じないように重なるとの構成による課題解決原理を利用していな
い。被控訴人製品6について、光源ユニットと器具本体を離間させた場合に観察さ
れるスジ状の黒い部分は、カバー部材における突壁部の暗さであり、カバー部材と
収容凹部との間の左右方向の隙間の暗さではない。
15 このように、被控訴人製品6は本件各発明4の作用効果を奏しないところ、これ
は、本件各発明4の課題解決原理ではなく、乙6記載の原理を採用したことによる
ものであって、本件各発明4の「延出部」を欠くことによるものである。
2 構成要件4-1C、4-4B及び4-5Hの充足性-「拡散性」の有無(争
点2)
20 (控訴人パナソニックの主張)
(1) 「拡散性を有し」(構成要件4-1C、4-4B及び4-5H)の意義
本件各発明4の各特許請求の範囲では、カバー部材の「拡散性」に関し、構成要
件4-1C及び4-5Hに「拡散性を有し」との記載が存在するのみであり、カバ
ー部材の材質や加工等「拡散性」を定義付ける内容は限定されていない。そうする
25 と、特許請求の範囲の記載からは、カバー部材の拡散性がカバーの原材料、カバー
表面の加工その他いかなる手段等によってもたらされたかを問うことなく、当該カ
バーが「拡散性」を有していれば足りることとなる。
また、本件明細書4の記載によると、本件各発明4の課題解決のための特徴的構
成は、拡散性のあるカバーが器具本体の収容凹部との隙間を生じないように重なる
ことによって、光源ユニットを点灯させた際にスジ状に暗くなることを防止するこ
5 とにある。他方、「拡散」とは、「ひろがり散ること」を意味するところ、このよ
うな作用効果を奏するためには、カバー部材の材質、加工手段等を問わず、カバー
部材が拡散性を有していれば足りる。
したがって、「拡散性を有」する(構成要件4-1C及び4-5H)とは、当該
カバーが拡散性を有していれば足り、その拡散性が、カバーの原材料、カバー表面
10 の加工その他いかなる手段等によってもたらされるかは問題ではない。
(2) 構成要件の充足
被控訴人製品6のうちオプティカルタイプのカバーは、乳白色のポリカーボネー
ト製であり、かつ、面に凹凸を設けるプリズム形式により、LED素子から発せられ
た光を拡散させている。また、オプティカルタイプのカバー部材が面の凹凸によっ
15 て光拡散性を有することは、当業者にとって周知の技術である。
また、仮に被控訴人製品6のオプティカルタイプのカバーが透明であったとして
も、作用効果に相違は生じない。
したがって、被控訴人製品6のうちオプティカルタイプのカバー部材のものも、
「拡散性を有」しているといえることから、本件発明4-1の構成要件4-1C及
20 び本件発明4-5の構成要件4-5Hをそれぞれ充足する。
(被控訴人の主張)
(1) 「拡散性を有し」(構成要件4-1C、4-4B及び4-5H)の意義
光源ユニットを点灯させた際にスジ状に暗くなることがないという本件各発明4
の作用効果を発生させるためには、カバー部材自体が一定の拡散性を有することが
25 必要である。本件明細書4記載の実施例においても、材料として拡散性を有する材
料が例に挙げられている。カバー部材に一定の拡散性がなく、透明なままであれば、
カバー部材と収容凹部との間の隙間自体は視認できるままであり、一定以上に光の
散乱を生じさせるだけ拡散性のあるカバー部材自体が輝くからこそ、本件各発明4
の作用効果を生じる。このため、カバー部材が透明である場合は、本件各発明4の
「拡散性を有」するカバー部材に該当しない。
5 (2) 構成要件の非充足
被控訴人製品6のうちオプティカルタイプのものは、他の被控訴人製品6のカバ
ー部材と同様にポリカーボネート製であり、拡散材を一部使用しているものの、表
面に凹凸のあるプリズム形式で光を拡散させる透明で透光性のあるカバーである。
拡散材を一部使用しているのは、透光性が高い透明なままでは、消灯時において内
10 部の構造を視認でき、見栄えがよくないことに対する工夫であり、点灯時に収容凹
部とカバー部材との間の隙間が直接視認できる程度の透明性は維持されている。ま
た、オプティカルタイプの表面に凹凸があるのは色むらを防ぐためであり、収容凹
部とカバー部材との間の隙間による点灯時のスジ状の暗さを防ぐためではない。
さらに、拡散性のない透明なカバー部材の場合、周辺部分の暗さを認識し得ない
15 のは、中心部分での輝度が強すぎるため、点灯時においてそのまぶしさから周辺部
分の暗さを認識し得ないのであって、本件各発明4の機序による作用効果ではない。
以上によると、被控訴人製品6のうちオプティカルタイプのものは、控訴人パナ
ソニックが主張する被控訴人製品6の各構成4-1c及び4-5hの「乳白色の」との部分
を「凹凸のあるプリズムが設けられた背面が視認可能な透明の」との構成とすべき
20 であり、かつ、透明なポリカーボネートは「光拡散性を有」するとはいえない。
したがって、被控訴人製品6のうちオプティカルタイプのものは、本件発明4-
1の構成要件4-1C、本件発明4-4の構成要件4-4B及び本件発明4-5の
構成要件4-5Hをいずれも充足しない。
3 構成要件4-1G、4-4B、4-5D、E、G、Iの充足性-「収容凹部」
25 及び「矩形の収容凹部」の意義(争点3)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「収容凹部」(構成要件4-1G)及び「矩形の収容凹部」(構成要件4-
5D、E、G及びI)の意義
ア 「凹」とは、「物の表面が部分的にくぼんでいること」を意味し、「凹まる」
(くぼまる)とは、「周囲が高く中央が低くなる」ことを、「凹む」(くぼむ)と
5 は、「一部分が落ち込んで低くなる」ことを、それぞれ意味として持つ。ここでは、
基準として他の場所を設定した上、その他の一部分のみが当該基準よりも低くなる
ことを示している。
また、本件明細書4の記載によると、「収容凹部11」は、器具本体1にあって、
「天井材100と反対側(つまり下側)には光源ユニット2を収容するための矩形の収
10 容凹部11が器具本体1の全長にわたって設けられている」などとあることから、器
具本体において、光源ユニットを収容する部分のみが、器具本体の高い部分と比較
して低く凹型に形成されていることが理解される。
したがって、「収容凹部」(構成要件4-1G、4-5D、E、G、I)とは、
器具本体における一定の基準となる部分(開口縁)と、同基準よりも低くなった一
15 部分(底面)と、開口縁付近から底面に至る部分(側面)とで囲まれる領域(「く
ぼみ」)であって、光源ユニットを収容するための部分を意味する。
イ 「矩形の」収容凹部は、「矩形」とは「直角四辺形。長方形。さしがた。」
を意味することから、光源ユニットを配置(収容)するための「くぼみ」部分を有
すると共に、その「くぼみ」部分の形状が直角四辺形であることを意味する。
20 (2) 構成要件の充足性
被控訴人製品6のうちトラフ形等のものは、いずれも、器具本体における一定の
基準となる部分(開口縁)と、同基準よりも低くなった位置部分(底面)と、開口
縁付近から底面に至る部分(側面)とで囲まれる領域(「くぼみ」)を備えると共
に、その形状が直角四辺形であることから、「収容凹部」(構成要件4-1G)及
25 び「矩形の収容凹部」(構成要件4-5D、E、G及びI)を充足する。
(被控訴人の主張)
(1) 「収容凹部」(構成要件4-1G)及び「矩形の収容凹部」(構成要件4-
20 5D、E、G及びI)の意義
「収容凹部」は、構成要件4-1Gにより「長尺状に形成された器具本体の一面
に設けられた収容凹部」として特定されるものであり、かつ、本件発明4-1では、
ここに「光源ユニットを収容した状態」の照明が問題とされる。したがって、「長
尺状に形成された器具において、照明器具の長手方向に沿って伸びるカバー部材を
25 支持する開口部」といった構成も、「収容凹部」(構成要件4-1G)に相当する。
他方、構成要件4-5Dには、「前記器具本体の一面には、前記器具本体の長手
方向に沿って矩形の収容凹部が設けられており」と特定されているところ、「矩形」
とは、「直角四辺形。長方形。さしがた。」との意味であることと、上記特定から
は、「矩形の収容凹部」とは、「収容凹部」の開口部分が長方形状であることを意
味するものと理解される。また、本件明細書4では、上下方向で見た場合の形状を
5 「矩形」、その立体構成を「箱状」と表現することで、表記が一貫している。した
がって、「矩形の収容凹部」とは、収容凹部の開口部分が長方形状であることを意
味すると解され、本件発明4-1の「収容凹部」と実質的に異なるところはない。
(2) 構成要件の非充足
「収容凹部」及び「矩形の収容凹部」の意義につき、控訴人パナソニックの主張
10 のとおり解した場合、被控訴人製品6のうちトラフ形等のものは、本件各発明4の
「収容凹部」及び「矩形の収容凹部」の構成を備えているとはいえない。
4 無効理由1(乙6発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点4)
(被控訴人の主張)
(1) 乙6発明の構成
15 ア 本件各発明4の「延出部」(構成要件4-1F、G、4-4B及び4-5I)
について控訴人主張のとおり解釈した場合、乙6の第3の実施形態に係る図21及び
第6の実施形態に係る図26を含む明細書の記載によると、乙6には、以下の発明
【図 21】
(以下、前者の発明を「図21発明」、後者の発明を「図26発明」といい、また、こ
れらを併せて「乙6発明」という。)が記載されている(なお、下図には必要に応
じて加筆している。)。
【図26】
イ 図21発明
A’1-2 複数のLED22が実装されたLED基板23と、
15 B’1-2 前記LED基板23が取り付けられる取付部材21と、
C’1-2 拡散性を有し且つ前記LED基板23を覆うようにして前記取付部材21に取
り付けられるカバー部材24とを備えた
D’1-2 光源部2であって、
E’1-2 前記カバー部材24は、前記取付部材21に取り付けられる突壁部と、
20 F’1-2 前記カバー部材は、前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部
が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延出する一対のカバー端部を含
む膨出部とを有し、
G’1-2 カバー部材24は、長尺状に形成された器具本体1の一面に設けられた収
容凹部11に光源部2を収容した状態では、器具本体1の長手方向及び幅方向と
25 直交する方向において一対のカバー部材24の膨出部の各々が収容凹部11の開
口端縁と隙間が生じた状態で重なっている
H’1-2 光源部2
ウ 図26発明
A’1-2~E’1-2及びH’1-2は図21発明と同じ。
F’1-1 前記カバー部材は、前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部
5 が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延出する一対のカバー端部を有
し、
G’1-1 カバー部材24は、長尺状に形成された器具本体1の一面に設けられた収
容凹部11に光源部2を収容した状態では、器具本体1の幅方向(水平方向)に
おいて一対のカバー端部の各々が収容凹部11の開口端縁と隙間が生じないよ
10 うに配置されている
(2) 本件発明4-1と乙6発明との対比及び相違点
ア 対比及び相違点
本件発明4-1と乙6発明とを対比すると、本件発明4-1と図21発明の相違点
は、本件発明4-1が、「前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向にお
15 いて前記一対の延出部の各々が前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重
なっている」(構成要件4-1G)のに対し、図21発明は、「カバー部材24は、長
尺状に形成された器具本体1の一面に設けられた収容凹部11に光源部2を収容した状
態では、器具本体1の長手方向及び幅方向と直交する方向において一対のカバー部
材24の膨出部の各々が収容凹部11の開口端縁と隙間が生じた状態で重なっている」
20 (構成G’1-2)点である(以下「相違点1-2」という。)。
また、本件発明4-1と図26発明の相違点は、本件発明4-1が、構成要件4-
1Gにおいて、「前記一対の延出部の各々」が「前記収容凹部」の外側にまで延出
する構成であることを前提として、「前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないよ
うに」「上下方向で」「重なっている」のに対し、図26発明にあっては、「一対の
25 カバー端部の各々」が「収容凹部」の内側まで延出する構成にとどまり、「前記収
容凹部の開口端縁と」「隙間が生じないように」「水平方向で」「前記収容凹部の
側壁と当接している」(構成G’1-1)点である(以下「相違点1-1」という。)。
イ 相違点の容易想到性
(ア) 主引用例を図26発明、副引用例を図21発明とした場合(以下「無効理由1-
1」という。)
5 相違点1-1に係る図26発明の構成に、「膨出部」を設けることを意味する図21
発明を適用することで、当業者は、本件発明4-1の構成を容易に想到できる。ま
た、図21発明において、カバー部材24を前面側へ膨出させるように形成し、側板部
11cの背面方向へ拡がる傾斜面より外側に突出する量を多くするように形成して膨
出部を設ける(構成F’1-2)意味が、カバー部材の膨出部分において拡散された光
10 が側板部11cや天井面Cに向かい、これらに照射されて照明の明るさ感を増すことを
可能にする点にあることを踏まえると、図26発明に対し、図21発明の膨出部を設け、
その膨出する位置を側板部11c等にできる限り近づけ、カバー部材24の膨出部と収
容凹部11の開口端縁との間に隙間が生じないように重なるように配置する、すなわ
ち上下方向に隙間が生じないように重ねることについての動機付けがあるといえる。
15 さらに、膨出部の膨出する位置を側壁部11cに接する位置から膨出させるか、一定
の隙間を設けるかは、本件発明4-1の課題解決に関連しない相違点であるから、
相違点1-1については、設計事項の論理付けで十分である。
したがって、本件発明4-1は、図26発明に図21発明を適用することにより、ま
た、その適用に当たっての設計変更により、当業者が同一の発明に想到することが
20 容易なものである。
(イ) 主引用例を図21発明、副引用例を図26発明とした場合(以下「無効理由1-
2」という。)
前記のとおり、本件発明4-1と図21発明とは、相違点1-2がある。
もっとも、乙6には、図26発明につき、カバー部材24と収容凹部11との隙間によ
25 る光学的な暗部という課題と、その解決手段として、カバー部材24のカバー端部が
収容凹部11の側壁との間に隙間なく配置されるとの構成が明記されている。そのた
め、相違点1-2に係る図21発明の構成に図26発明を適用し、図21発明の膨出部に
ついて、「前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記一対の
延出部の各々が前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっている」構
成すなわち本件発明4-1の構成を想到することは、当業者にとって容易である。
5 また、図21発明に図26発明を適用するに当たり、膨出部の膨出を開始する位置を変
更する必要はなく、その他の膨出部の具体的形状等は、当業者が技術常識に従って
支障が生じない形状を適宜に選択すれば足りる。
(3) 本件発明4-5との関係
ア 本件発明4-5は、構成要件4-5Cにおいて、「照明器具」(構成要件4
10 -5J)が「前記光源ユニットに対して点灯電力を供給する電源装置とを備え」と
特定し、構成要件4-5Eにおいて、「前記電源装置は、前記光源ユニットを前記
器具本体に取り付けた状態において前記収容凹部内に配置され」と特定している。
すなわち、電源装置は、光源ユニット及び器具本体のいずれに備えられていてもよ
く、光源ユニットを器具本体に取り付けたときに器具本体の収容凹部に配置される
15 ことだけが発明特定事項になる。他方、乙6には、器具本体1の収容凹部11に点灯
装置3が配置される発明が開示されていることから、電源装置の発明特定事項につ
いては、新たな相違点は生じない。
また、本件発明4-5では、取付部材に関し、構成要件4-5Gにおいて、本件
発明4-1に規定された機能以外にも、「LED基板を前記器具本体に取り付けるた
20 め」との特定が追加されているが、本件明細書4には具体的な取付方法等の記載が
なく、構成要件4-5Gの「取付部材」は、カバー部材を介し器具本体と嵌合する
ことでこれに取り付けられる構成を含む。
さらに、本件発明4-5は、「突壁部」という発明特定事項を有さず、「延出部」
は、カバー部材の端部から伸び出された中実の部位であり、LED基板を内包する他
25 のカバー部材と異なる部位と理解されることから、本件発明4-1との関係で、突
壁部と延出部とに相当する構成を分けて主張してきた点は、全て「延出部」と理解
すれば足りる。
イ 以上によると、本件発明4-1に関する上記(1)及び(2)の主張は、本件発明
4-5においても当てはまる。
(4) 小括
5 以上のとおり、図26発明を主引用例とし、図21発明を副引用例とした場合でも、
また、図21発明を主引用例とし、図26発明を副引用例とした場合でも、当業者は、
本件各発明4と同一の発明に想到することが容易であるといえる。
そうすると、本件各発明4は、本件特許4の出願前に頒布された刊行物に記載さ
れた発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これら
10 の発明に係る本件特許4は、特許法29条2項に違反してされたものであり、特許
無効審判により無効にされるべきものである(同法123条1項2号)。
そうである以上、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権4を行使
することができない(同法104条の3第1項)。
(控訴人パナソニックの主張)
15 (1) 無効理由1-1について
ア 相違点
本件発明4-1と図26発明は、本件発明4-1がカバー部材と収容凹部の開口端
縁との隙間の存在を前提としている(構成要件4-1G)のに対し、図26発明は、
カバー部材の幅方向の外面を収容凹部の内壁面に当接することによって、器具本体
20 とカバー部材との隙間を生じさせないようにしている点と、本件発明4-1におけ
る「延出部」は、カバー部材と収容凹部の開口端縁との隙間を上下方向から重なる
ようにするものである(構成要件4-1F)のに対し、図26発明では、収容凹部と
開口端縁との隙間が存在しない以上、「延出部」が存在しない点が相違する。
イ 容易想到性がないこと
25 (ア) 主引用例としての適格性に欠けること
本件発明4-1は、カバー部材と器具本体の開口端縁との間に隙間が存在する構
成を前提とし、照射空間側から照明器具を見た場合、同隙間部分がスジ状に暗くな
るため見栄えが良くないという具体的課題が生じるところ、その解決方法を提供し
ている。
これに対し、図26発明では、器具本体の内壁面とカバー部材の幅方向の外面とを
5 当接させるという方法によって器具本体とカバー部材との隙間を生じさせず、光学
的な暗部が生じることを抑制している。そうすると、図26発明を出発点とした場合、
当業者は本件発明4-1の具体的課題に直面できず、同発明の技術的思想に至るこ
とはない。
したがって、図26発明は、主引用例としての適格性に欠ける。同様の理由により、
10 図26発明は、副引用例である図21発明との課題の共通性も存在しないから、図26発
明に図21発明を適用する動機付けがない。
(イ) 図21発明の膨出部は前面側に向けられたものであること
乙6において、図21発明のカバー部材の膨出部は、前面側に膨出する旨が明記さ
れており、幅方向に対して膨出するものではない。図21発明においては、あくまで
15 前面側に膨出するからこそ、カバー部材に傾斜面が形成され、同傾斜面から外側に
突出する光によって照明の明るさ感を増すことができるのである。
したがって、図26発明に図21発明を適用する動機付けは存在せず、また、仮に適
用したとしても、本件発明4-1の構成に至ることはない。
(2) 無効理由1-2について
20 ア 相違点
本件発明4-1と図21発明の相違点が相違点1-2であることは認める。
イ 容易想到性がないこと
乙6において、カバー部材24に膨出部を設ける目的は、光の方向を変更し、側板
部11cや天井面Cへの照射量を増やすことにあり、カバー部材と側板部11cや天井面C
25 との間の距離の短縮を目的とするものではない。むしろ、膨出部を天井面Cに近づ
けると、側板部11cや天井面Cへの照射量が低減する。そうすると、側板部11cや天
井面Cへの照射量の増大を意図する図21発明に対して図26発明を組み合わせること
に動機付けは存在せず、むしろ阻害事由がある。
また、図21発明に図26発明を適用しても、図21発明のカバー部材の外面を収容凹
部に当接させるだけであって、「膨出部」が収容凹部の開口端縁との隙間を生じさ
5 せないように上下方向に隠して隙間を見えなくするという技術的思想に至ることは
ない。しかも、図21発明において、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2を
配設しようとすると、係止爪4aを回避するために、カバー部材24の上端部の上限方
向の長さを長くする必要があり、その結果、カバー部材24の膨出部が開始する位置
も必然的に下側に位置することになり、同膨出部は収容凹部11の開口端縁から離れ
10 た位置とならざるを得ず、開口端縁との隙間が生じないように上下方向に隠して隙
間を見えなくするという構成に至ることはあり得ない。
さらに、乙6には、図26発明に関し、係止部材4を解除する際には、収容凹部11
の開口部側には隙間が存在しないことから、側板部11cに形成された解除孔11eにド
ライバー等の工具を挿入して係止部材4を解除するのが不可欠な操作となるとされ
15 ている。しかるに、図21発明に図26発明を組み合わせると、膨出部の存在により解
除孔に工具を挿入して解除することができず、図26発明の当初の目的を損なうこと
になる。したがって、図21発明に図26発明を組み合わせることには阻害事由がある。
以上によると、図21発明に図26発明を適用することにより本件発明4-1に至る
ことは、当業者にとって容易に想到し得ない。
20 5 無効理由2(乙151発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点5)
(被控訴人の主張)
(1) 国際公開第2010/126083号(乙151)に記載された第6の実施形態に係る
発明(以下「乙151発明」という。)は、以下のとおり、本件各発明4の各構成
要件に相当する構成を全て備えている。すなわち、本件各発明4は、いずれも本件
25 特許4の出願前に公開された公報に記載された発明であるから、これらの発明に係
る本件特許4は、特許法29条1項3号に違反してされたものであり、特許無効審
判により無効にされるべきものであって(同法123条1項2号)、控訴人パナソ
ニックは、被控訴人に対し、本件特許権4を行使することはできない。
(2) 本件発明4-1との関係
ア 乙151の明細書の記載によると、乙151には、以下の発明(乙151発
5 明)が開示されている。
A’2 複数のLED素子1が実装された基板2と、
B’2 前記基板2が取り付けられるベース部材3と、
C’2 拡散性を有し且つ前記基板2を覆うようにして前記ベース部材3に取り付け
られるカバー部材13とを備えた
10 D’2 光源ユニットであって、
E’2 前記カバー部材13は、前記ベース部材3に取り付けられる一対の突壁部と、
F’2 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向における前
記突壁部よりも外側に延出する一対の支持部13bを有し、
G’2 前記カバー部材13は、長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた開
15 口部に前記カバー部材13を収容した状態では、前記器具本体の長手方向及び幅
方向と直交する方向において前記一対の支持部13bの各々が前記開口部の縁部
と隙間が生じないように重なっている
H’2 光源ユニット。
【図9に必要に応じて加筆したもの】
イ 補足説明
(ア) 「光源ユニット」
乙151発明は、カバー部材13において、LED素子1、基板2及びベース部材3が保
持されて一体的に構成され、これらが器具に支持されて照明装置を構成するもので
5 あると理解できる。このため、カバー部材13は、器具から区別された構成部分とし
て把握される。したがって、LED素子1、基板2、ベース部材3及びカバー部材13の構
成部分は、本件発明4-1の構成要件4-1D及びHの「光源ユニット」に相当する。
(イ) 「延出部」
乙151発明の「支持部13b」(構成F’2)は、カバー部材13の一部であり、そ
10 の周方向両端から長手方向に沿って延びる突条である。このため、支持部13bは、
カバー部材13の周方向両端から伸び出された部位として、本件発明4-1の「延出
部」(構成要件4-1F及びG)に相当する。
(ウ) 「収容凹部」
【図3】
「収容」とは、「人や物品を一定の場所におさめ入れること」などと定義される
ところ、乙151発明の長尺方向に沿って設けられた「開口部」は、光源ユニット
25 に相当するLED素子、基板、ベース部材及びこれらを一つにとりまとめて保持し、
器具と区別されたコンポーネントとして把握されるカバー部材を一定の場所に収め
入れている。
また、「凹部」の「凹」は「物の表面が部分的にくぼんでいること。くぼみ。」
と定義される。乙151発明は、乙151の第1の実施形態と基本的な構成を同じ
くするところ、第1の実施形態の「器具5」は、主となる部分が板金などで構成さ
5 れ、板金を折り曲げ加工した内部は空洞である。また、乙151における上記図3
のとおり、カバー部材4を支持する「開口部5c」は、照明器具Aの長手方向に沿っ
て延びる形状であり、同じく板金の折り曲げ加工によって照明器具Aの長手方向に
沿って存在する空間であって、「器具5」に光源ユニットである「カバー部材 4」
(乙151発明のカバー部材13に相当)を収容するための空間である。
10 したがって、乙151発明の「開口部」は、全体でみれば、板金により形成され
たくぼみであり、かつ、長尺方向に沿った空間が器具本体の正面視でその一部に形
成されていることから、「凹部」と理解することができる。
以上によると、乙151における「開口部5c」及びこれを引用する乙151発明
の「開口部」は、本件発明4-1の「収容凹部」(構成要件4-1G)に相当する
15 部位である。
(エ) 「収容凹部の開口端縁の隙間」
乙151発明では、長尺状に形成された器具の一面に設けられた開口部内にカバ
ー部材13を収容した状態で、器具の長手方向及び幅方向と直交する方向において一
対の支持部13bの突条(上)と突条(下)の間に開口部の縁部が嵌合し、支持部13b
20 の下側の突条(下)の各々が開口部の縁部(収容凹部の開口端縁)と隙間が生じな
いように重なっている。
乙151発明においては、カバー部材13はスライド移動することから、「遊び」
といえる隙間が存在すると考えられる。そもそも、本件発明4-1の特許請求の範
囲の記載は、上下方向で「隙間が生じないように重な」る構成を特定しているので
25 あり、「器具本体とカバー部材との間の隙間」の存在は発明特定事項ではない。
ウ 以上によると、乙151発明は、本件発明4-1の各構成要件に相当する構
成を全て備えることから、本件発明4-1と同一の発明である。
(3) 本件発明4-5との関係
ア 構成要件4-5A~C、E及びJ
(ア) 本件発明4-5は、光源ユニット(構成要件4-5B)に関する発明である
5 本件発明4-1と異なり、発明特定事項として器具本体及び電源装置をもその構成
として特定している(構成要件4-5A、C、E及びJ)。
(イ) 乙151発明は、第1の実施形態と基本的構成を同じくし、同実施形態に関
する説明と図面を引用しているところ、乙151では、第1の実施形態に係る照明
装置について、前記図3のとおり、器具本体を「器具5」とし、照明装置Aが、LED
10 素子1、基板2、ベース部材3、カバー部材4及び電源ユニット6等を備えている旨記
載されている。また、照明装置Aの構成を引用する乙151発明の照明装置Fの構
成については、「器具」が図示されていないものの、開口部の縁部は、カバー部材
13の支持部13bに対して、支持部13bの備える一対の長手方向に沿って延びる突条の
間に嵌合する旨記載されている。
15 さらに、乙151では、電源ユニット6につき、ベース部材3のLED素子1が実装さ
れていない裏面に設けても構わないことが開示されており、乙151記載の第1の
実施形態では、照明装置Aの長手方向に沿って延びる開口部(長方形として矩形)
内に、光源ユニットに相当するカバー部材と共に、電源ユニット6が収容されてい
る。
20 したがって、乙151発明は、本件発明4-5の「照明器具」(構成要件4-5
A、J)及び「電源装置」(同4-5C、E)に相当する構成を有する。
イ 構成要件4-5D
前記のとおり、乙151発明の「開口部」は収容凹部に相当する。
また、「矩形」とは、収容凹部の開口部分が長方形状であることを意味するもの
25 と理解されるところ、乙151には、開口部5cが照明器具Aの長手方向に沿って伸
びる形状である旨が記載されていることから、開口部5cの形状は長方形状、すなわ
ち矩形である。
したがって、乙151発明の「開口部」は、本件発明4-5の「矩形の収容凹部」
(構成要件4-5D)に相当する。
ウ 構成要件4-5F~H
5 乙151の記載によると、乙151発明は、複数の「LED素子1」が実装された
「基板2」を保持する「ベース部材3」があり、「ベース部材3」が「カバー部材13」
の内側に装着されている。このうち「ベース部材3」は、「カバー部材13」を介し
て「基板2」を「器具」に取り付ける構成である。また、「ベース部材3」は、「カ
バー部材4の曲面部側をLED素子1が指向するように、カバー部材4に装着される」、
10 すなわち複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして「器具」に取り付ける
構成である。
「カバー部材13」は、拡散材入りのポリカ―ボネートで構成されており、照明装
置Fの長手方向全域にわたって延びる樋形状のものと理解できることから 、複数の
「LED素子1」を覆うようにして「ベース部材3」に取り付けられている。
15 本件発明4-5の構成要件4-5Gは、「前記複数のLEDが前記収容凹部の外側
を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材と」と
特定しているだけであるから、「取付部材」単独で「器具本体に取り付ける」構成
を有する必要性はなく、他の部材と共に器具本体に取り付ける構成であっても差し
支えない。
20 したがって、乙151発明は、本件発明4-5の構成要件4-5F~Hに相当す
る構成を有する。
エ 構成要件4-5I
前記(2)と同様に、乙151発明は、本件発明4-5の構成要件4-5Iに相当
する構成を有する。
25 オ 小括
以上によると、乙151発明は、本件発明4-5の各構成要件に相当する構成を
全て備えることから、本件発明4-5と同一の発明である。
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 乙151発明は、蛍光管の電極に対応する箇所には口金が設けられている関
係上、長手方向に連ねて配置した場合には、口金の箇所の光量が低下して陰ができ
5 てしまうことや、天井からの落下の危険性という従来技術の課題に対し、乙151
記載の構成を採用することにより、誤った器具での使用防止や軽量化による安全を
確保すると共に、長手方向に複数照明器具を並べて配置した際に、シームレス化に
よって上記のような陰を作らないという作用効果を奏するものである。
したがって、乙151発明は、器具本体の開口端縁の上下方向の隙間の存在を前
10 提としてその具体的課題を把握する本件各発明4とは全く異なる技術的思想に基づ
くものである。
(2) 相違点の存在
ア 「光源ユニット」の不存在(構成要件4-1D、H、4-5B)
(ア) 本件発明4-1の「光源ユニット」(構成要件4-1D、H)は、特許請求
15 の範囲記載のとおり、複数のLEDが実装されたLED基板(同4-1A)、LED基板が
取り付けられる取付部材(同4-1B)及び取付部材に取り付けられるカバー部材
(同4-1C)から構成されるものである。本件発明4-5の「光源ユニット」
(同4-5B)も、複数のLEDが実装されたLED基板(同4-5F)、LED基板を器
具本体に取り付けるための取付部材(同4-5G)及び取付部材に取り付けられる
20 カバー部材(同4-5H)が一体となり構成されるものである。
(イ) 乙151発明では、カバー部材13について、カバー部材13の支持部13bが器
具本体の縁部と嵌合することで器具本体に設置されるという取付方法が記載されて
いるのみであって、LED及び基板と一体として構成されているか否かは不明である。
また、本件発明4-1とは異なり、本件発明4-5において、取付部材は、LED
25 基板を器具本体に取り付けるための構成であることが特許請求の範囲の文言上明示
されている(構成要件4-5G)。他方、乙151発明の「ベース部材3」は、単
に基板を保持するための部材であって、器具本体に取り付ける部材ではない。乙1
51発明は、カバー部材が直接器具本体に取り付けられた構成を有する。したがっ
て、乙151発明は、本件発明4-5の構成要件4-5Gを充たさない。
このように、乙151発明は、カバー部材がLED素子及びLED基板と一体として構
5 成されているかが不明であること、LED基板を器具本体に取り付けるための取付部
材に相当する部材がないことから、本件各発明4の「光源ユニット」に相当する構
成を有しない。
イ 「収容凹部」及び「矩形の収容凹部」の不存在(構成要件4-1G及び4-
5D)
10 (ア) 「収容凹部」の不存在
本件各発明4に係る特許請求の範囲及び本件明細書4の記載において、「収容凹
部」は、「長尺状に形成された器具本体の一面に設けられる」だけではなく、「光
源ユニットを収容するもの」と規定されている。また、前記3(控訴人パナソニッ
クの主張)(1)アのとおり、「収容凹部」(構成要件4-1G、4-5D、E、G、
15 I)とは、器具本体における一定の基準となる部分(開口縁)と、同基準よりも低
くなった一部分(底面)と、開口縁付近から底面に至る部分(側面)とで囲まれる
領域(「くぼみ」)であって、光源ユニットを収容するための部分を意味する。
これに対し、乙151発明に引用される乙151の第1の実施形態において器具
本体に設けられた空間は、板金が折り曲げ加工されたことにより生じているもので
20 あって、光源ユニットを「収容」するために設けられたものではない。また、乙1
51発明の器具の「開口部」についても、単にカバー部材を取り付ける際にカバー
部材を支持するだけであって、光源ユニットを「収容」するものではないし、凹状
の空間を形成するための側壁部等は存在せず、中空の器具5の表面に単に穴(開口
部5c)を設けただけの構成であり、カバー部材が配置される部分において「表面が
25 部分的にくぼんでいる」箇所は存在しない。
したがって、乙151発明には「収容凹部」は存在しない。
(イ) 「矩形の収容凹部」の不存在
前記3(控訴人パナソニックの主張)(1)イのとおり、「矩形の収容凹部」とは、
器具本体における一定の基準となる部分(開口縁)と、同基準よりも低くなった一
部分(底面)と、開口縁付近から底面に至る部分(側面)とで囲まれる領域(「く
5 ぼみ」)であって、光源ユニットを収容するための部分の形状が直角四辺形である
ことを意味する。
他方、乙151発明においては、器具本体内の空間の開口部の形状は「矩形」に
相当し得るものの、くぼみの基準となる器具本体の高い部分や、その基準を前提に
一部低くなり落ち込んでいる部分という意味での「凹」に相当する部分は存在しな
10 い。
したがって、乙151発明は、「矩形の収容凹部」(本件発明4-5の構成要件
4-5D)の構成を有しない。
ウ 開口端縁の隙間及び延出部の不存在(構成要件4-1F、G、4-5I)
本件各発明4は、器具本体の収容凹部に光源ユニットを収容した際、カバー部材
15 と収容凹部との間に隙間が生じることを前提に、延出部が上下方向において収容凹
部の開口端縁と重なり、結果として外観上隙間が生じないことになる点に技術的意
義を有する。カバー部材と器具本体の収容凹部の開口端縁との間に隙間が存在しな
い場合、「延出部」が「重なる」対象も存在しないことから、本件各発明4の特許
請求の範囲の文言と合わせ、カバー部材と器具本体の収容凹部の開口端縁との間に
20 隙間が生じていることは発明の特定事項であるといえる。
これに対し、乙151発明にはそもそも収容凹部が存在しないことから、本件各
発明4における「収容凹部の開口端縁と」の「隙間」が生じることはない。また、
乙151発明は、カバー部材を直接器具本体に取り付ける構造となっており、本件
各発明4のように「光源ユニット」を器具本体の収容凹部に取り付ける構成ではな
25 いため、この点からも、カバー部材と器具本体の「収容凹部」との間に「隙間」が
生じるものではない。
また、このような隙間が生じない以上、これを前提とする「延出部」の構成も存
在しない。
したがって、乙151発明は、「収容凹部の開口端縁と」の「隙間」及び「延出
部」の構成を有しない。
5 6 無効理由3(乙152発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点6)
(被控訴人の主張)
(1) 特開2005-19299号公報(乙152)記載の実施形態1に係る発明(以下「乙
152発明」という。)は、以下のとおり、本件発明4-1の「カバー部材」(構
成要件4-1C)に相当する「蓋部3」について、「拡散性を有」するか否かが不
10 明であることを除き、本件発明4-1の各構成要件に相当する構成を全て備えてい
る。また、一定の拡散性を有するカバー部材の使用との特定事項は、乙152内の
示唆とこれに動機付けられた周知技術の適用によって、当業者が容易に想到し得る。
そうすると、本件発明4-1は、本件特許4の出願前に日本国内において頒布され
た刊行物に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと
15 いえるから、上記発明に係る本件特許4は、特許法29条2項に違反してされたも
のであり、特許無効審判により無効にされるべきものである。したがって、控訴人
パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権4を行使することはできない。
(2) 乙152発明の内容
ア 乙152の記載によると、乙152発明は、以下の構成を備える。
20 A’3 複数のLED2が実装されたLED基板10と、
B’3 前記LED基板10が取り付けられる絶縁板13と、
C’3 拡散性の有無・程度は不明であるが、前記LED基板10を覆うようにして前
記絶縁板13に取り付けられる蓋部3を備えた
D’3 光源ユニットであって、
25 E’3 前記蓋部3は、前記蓋部3の端部より下方に突出し、前記絶縁板13に取り付
けられる一対の突壁部と、
F’3 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向における前
記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部とを有し、
G’3 前記蓋部3は、長尺状に形成された取付ベース1の一面に設けられたスペー
ス(収容凹部)に蓋部3を収容した状態では、前記取付ベース1の長手方向及び
5 幅方向と直交する方向において前記一対の延出部の各々が前記収容凹部の開口
端縁と隙間が生じないように重なっている
H’3 光源ユニット。
【図】(乙152に掲載された図を反転の上、説明を加筆したもの)
イ 補足説明
(ア) 絶縁板13と「取付部材」について
本件発明4-1における「取付部材」(構成要件4-1B)は、複数のLEDが実
装されたLED基板が取り付けられる部材であり、「カバー部材」はその構成に含ま
25 れない。乙152発明では、絶縁板13上にLED2、基板10、電気部品11が配設されて
いる以上、絶縁板13は、「取付部材」に相当する。なお、「配設」とは、通常、そ
れぞれの位置に設けるといった意味であり、その意味は「取り付け」と相違するも
のではない。
(イ) 蓋部3と「光源ユニット」について
乙152によると、蓋部3は、LED基板10を覆うようにして絶縁板13に取り付けら
5 れるものであり、かつ、多数のLED2を実装する基板10、絶縁板13及び蓋部3は一体
の構成であり、これと区別される取付ベース1に取り付けられる。また、前記(ア)の
とおり、絶縁板13は「取付部材」に相当する。したがって、乙152発明は、本件
発明4-1の「光源ユニット」(構成要件4-1D及びH)に相当する蓋部3の構
成を有する。
10 (ウ) 蓋部3の「突壁部」及び「延出部」について
前記(ア)のとおり、乙152発明の絶縁板13は、本件発明4-1の「取付部材」
に相当する。また、乙152の記載によると、乙152発明の蓋部3の幅方向のそ
れぞれの端部より下方向に突出した先端鍵状部位(突壁部)は、絶縁板13を保持し、
これに取り付けられている。このため、乙152発明の突壁部は、本件発明4-1
15 の「突壁部」(構成要件4-1E)に相当する。
また、乙152の記載によると、乙152発明の蓋部3は、一対の突壁部の各々
に対して一対の突壁部が並ぶ方向における突壁部よりも外側に伸ばし出された一対
の部位(延出部)を有する。この延出部は、本件発明4-1の「延出部」(構成要
件4-1F)に相当する。
20 (エ) 器具本体と蓋部3との間の「隙間」について
本件発明4-1の特許請求の範囲の記載において、「収容凹部の開口端縁の隙間」
を構成要件に含む記載はなく、構成要件4-1Gにおいて、「収容凹部の開口端縁
と隙間が生じないように重なっている」との記載があるだけである。他方、乙15
2によると、乙152発明においては、収容凹部の開口端縁と隙間が存在し、一対
25 の延出部の各々が収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっている。
(3) 本件発明4-1と乙152発明との対比及び相違点
乙152発明の構成A’3、B’3、E’3~H’3は、本件発明4-1の構成要件4-
1A、B、E~Hにそれぞれ相当する。本件発明4-1と乙152発明との相違点
は、本件発明4-1の構成要件4-1Cの発明特定事項のうち、カバー部材の拡散
性の有無と程度のみである。
5 (4) 相違点の容易想到性
乙152には、LEDを必要とする場所とそうでない場所において、蓋部3を透明な
ものと不透明なもの(内部が見えないようにするため)を使い分けることが記載さ
れている。LEDの照明を必要とする場所に取り付ける場合の蓋部3が「LED非収納用
蓋部4」と比較して透明であることは、LED照明器具の発光効率を高める目的による
10 ものである。他方、消灯時において、LEDを必要としない場所と同様に、内部空間
を見えないようにすることは、見栄えをよくするための普遍的な課題であるところ、
乙152においても、「拡散性を有」する「蓋部3」を適用することが示唆されて
いる。また、LED照明装置の分野では、一定の拡散性のあるカバー部材を用いるこ
とは周知慣用技術であった。
15 したがって、本件発明4-1は、乙152発明に、乙152の示唆に基づき動機
付けられる周知技術を組み合わせることによって、当業者が容易に想到できたもの
といえる。
(5) 本件発明4-5との関係
本件発明4-5は、本件発明4-1と異なり、構成要件4-5C及びEにおいて
20 電源装置に関する記載があるところ、乙152には、基板10の下部にLED2を点灯さ
せるための電気部品11が配設され、その下部には伝熱シート12が配設されている旨
記載されている。乙152発明の「電気部品11」及び「伝熱シート12」は、構成要
件4-5C及びEに相当する構成である。
また、乙152発明の絶縁板13は、蓋部3と共に基板10を取付ベース1に取り付け
25 ている構成であるから、直接「取付ベース1」と嵌合するものではなくとも、本件
発明4-5の構成要件4-5Gに相当する構成である。
そのほか、乙152発明と本件発明4-5との対比は、本件発明4-1との対比
と同様である。したがって、相違点及びその容易想到性についても、本件発明4-
1の場合と同様である。
(控訴人パナソニックの主張)
5 (1) 乙152発明が本件発明4-1の構成要件4-1Aを充足することは争わな
い。その余の構成要件4-1B~Hを充足することは争う。
乙152発明は、後記のとおり、そもそも「収容凹部の開口端縁との隙間」が生
じないものであるため、このような隙間の存在を前提にカバー部材の延出部が隙間
を隠して見えなくさせる点に意義を有する本件発明4-1とは具体的課題を共通に
10 するものではなく、主引用例としての適格性がない。
(2) 「取付部材」の不存在(構成要件4-1B)
本件発明4-1の「取付部材」は、「LED基板」と、LED基板を器具本体に取り付
けるための「取付部材」と、拡散性を有し、かつ、LEDを覆うようにして取付部材
に取り付けられる「カバー部材」との三つの構成を含むものである。他方、乙15
15 2には、基板10については、絶縁板13に「配設されている」と記載されているもの
の、絶縁板13に「取り付けられる」旨の記載や、両者の取付け状態を示す図は存在
しない。
したがって、乙152発明の「絶縁板13」は、本件発明4-1の「取付部材」に
相当しない。
20 (3) 蓋部3の「拡散性」の有無が不明であること(構成要件4-1C)
乙152発明において、蓋部3の拡散性の有無及び程度が不明であり、本件発明
4-1の構成要件4-1Cと相違することは認める。
(4) 「光源ユニット」の不存在(構成要件4-1D)
上記(2)のとおり、絶縁板13は、本件発明4-1における取付部材に相当しな
25 い。したがって、乙152発明の「蓋部3」は、「光源ユニット」の構成要素であ
る「取付部材」を有しない。そうである以上、乙152発明の「蓋部3」は、「光
源ユニット」に相当するものではない。
(5) 「突壁部」及び「延出部」の不存在(構成要件4-1E、F)
本件発明4-1の「突壁部」は、カバー部材に関するものであり、「取付部材に
取り付けられる一対の突壁部」として構成されている。
5 しかし、上記(2)のとおり、乙152発明の絶縁板13は、本件発明4-1の取付
部材に相当しない。そうすると、乙152発明の蓋部3の幅方向のそれぞれの端部
より下方向に突出した部位が存在するとしても、その部位は、単に絶縁板13を嵌合
するための部位にすぎず、「取付部材に取り付けられる一対の突壁部」(構成要件
4-1E)に相当するものとはいえない。
10 また、乙152発明には「突壁部」が存在しない以上、これを前提として存在す
る「突壁部が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部」
(構成要件4-1F)との技術的思想も開示されていない。
(6)「収容凹部の開口端縁の隙間」の不存在(構成要件4-1G)
乙152発明は、取付ベース1の上端部を、蓋体3の上側の突出部と下側の突出部
15 の間に挟むようにようにして嵌合させたものであり、本件発明4-1における「収
容凹部の開口端縁の隙間」自体が存在しない。被控訴人が「隙間」と主張する部分
は、取付べース1において蓋部3を嵌合固定するに当たり、嵌合を可能にするために
取付ベース1上端部を切り欠いたものであって、本件発明4-1における光源ユニ
ットと「収容凹部の開口端縁の隙間」には当たらない。
20 (7) 容易想到性がないこと
乙152発明は、取付ベース等の部品の他の用途への転用可能性と、直列に多数
接続して使用した場合におけるLEDの入力電圧の降下防止を目的とするものであっ
て、本件各発明4とは具体的課題を全く異にする。したがって、仮にカバー部材に
拡散性を与えることが周知技術であったとしても、乙152発明にこれを適用する
25 動機付けは存在しない。また、上記周知技術を適用することにより、開口端縁の隙
間について、カバー部材の延出部が上下方向において重なることによって、隙間に
おける暗いスジを見えづらくするという本件発明4-1の構成に至ることはあり得
ない。
したがって、上記各相違点に係る本件発明4-1の構成について、容易想到性は
ない。
5 (8) 本件発明4-5との関係
ア 乙152発明との関係における本件発明4-5の進歩性についても、以下の
点を付加するほかは、本件発明4-1の場合と同様である。
イ 「複数のLEDが収容凹部の外側を向くようにしてLED基板を器具本体に取り付
けるための取付部材」の不存在(構成要件4-5G)
10 本件発明4-5の「取付部材」は、複数のLEDが収容凹部の外側を向くようにし
てLED基板を器具本体に取り付けるための取付部材(構成要件4-5G)と構成さ
れている。しかし、乙152発明では、LEDを配設した基板が嵌合しているのは絶
縁板13であり、絶縁板13は、蓋部3の内部に嵌合されているだけであって、器具本
体に相当する取付ベース1にLED基板を取り付けるものではない。
15 7 無効理由4(ワイドキャッツアイ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無
(争点7)
(被控訴人の主張)
(1) 「延出部」(構成要件4-5I)につき、仮に他のカバー部材の部位と区別
されず、複数のLEDを覆うようにしてLEDを内包するカバー部材の特定の位置関係の
20 部位であると解釈した場合、本件発明4-5は、以下のとおり、被控訴人が遅くと
も本件原出願日4より前である平成24年7月に販売したワイドキャッツアイとい
う商品名の照明器具(照明器具及び器具本体型番:ERK8775W、光源ユニット製造管
理用型番:WEHP108M-L840F。以下「ワイドキャッツアイ製品」といい、同製品に
係る発明を「ワイドキャッツアイ発明」という。)に関して、その公然実施発明を
25 主引用発明とする進歩性欠如の無効原因を有することになる。したがって、本件発
明4-5に係る本件特許4は、特許法29条2項に違反してされたものであり、特
許無効審判により無効にされるべきものであるから、控訴人パナソニックは、被控
訴人に対し、本件特許権4を行使することはできない。
(2) 公然実施
ワイドキャッツアイ製品は、平成24年2月発行の被控訴人のカタログ(以下
5 「本件カタログW」という。)において、「2012年4月中旬発売予定」と記載
され、また、同年5月18日を初回工場出荷日としてその最終製造承認が得られ、
遅くとも同年7月以降販売された製品であり、同年7月発行の被控訴人のカタログ
にも掲載されている。さらに、被控訴人は、同年8月6日を製造日とするラベルの
付された「ERK8775W」との型番の器具本体及び同年7月25日を製造日とするラベ
10 ルの付された「WEHP108M-L840F」との管理型番の付された光源ユニットで構成さ
れるワイドキャッツアイ製品を入手した。
したがって、ワイドキャッツアイ発明は、本件特許4の出願前に日本国内におい
て公然実施をされた発明である。
(3) 相違点と相違点に係る構成の容易想到性
15 本件発明4-5とワイドキャッツアイ発明の相違点は、本件発明4-5の器具本
体が長尺状に形成されている(構成要件4-5A)のに対し、ワイドキャッツアイ
発明の器具本体は正方形状である点のみである。
同一メーカーの同種シリーズ商品において、同じ光源ユニットが数多くの器具本
体と組み合わされて照明装置を構成することは周知慣用技術であるところ、ワイド
20 キャッツアイ製品について、長尺状の器具本体に合わせて、長尺状の照明装置にす
ることは、当業者にとって容易に想到できる。
したがって、上記相違点に係る構成につき、ワイドキャッツアイ発明に上記周知
技術を組み合わせることにより本件発明4-5の構成を想到することは、当業者に
とって容易である。
25 そうすると、本件発明4-5は、本件特許4の出願前に日本国内において公然実
施をされた発明であるワイドキャッツアイ発明に基づき当業者が容易に発明をする
ことができたものである。そうである以上、上記発明に係る本件特許4は、特許法
29条2項に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきも
のであるから、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権4を行使する
ことはできない。
5 (控訴人パナソニックの主張)
以下のとおり、本件発明4-5は、ワイドキャッツアイ発明を主引用例として進
歩性を欠くものとはいえない。
(1) 公然実施がされていないこと
本件カタログWは、奥付ページに「2012.2第1版」と記載されているもの
10 の、ワイドキャッツアイ製品は「発売予定」等と記載されているだけである。照明
業界において、当初の発売予定から実際の発売日がずれ込むことは一般的にあり得
る。
また、ワイドキャッツアイ製品の製造承認等に係る資料は被控訴人の内部資料で
あり信用性に乏しい上、あくまで「製造承諾申請」及び「最終検査」が実施された
15 ことを示すにとどまる。
このため、これらをもって、ワイドキャッツアイ製品が平成24年7月に市場に
流通していたとはいえない。
さらに、ワイドキャッツアイ製品に係る仕様書も、作成日付として「2012/
09/20」との記載があるだけであり、本件原出願日4より前にワイドキャッツ
20 アイ製品が販売されたことを示すものではない。
これらの事情から、ワイドキャッツアイ発明が本件原出願日4より前に公然実施
されたことの立証はない。
(2) 主引用発明としての適格性の欠如
本件各発明4は、カバー部材と収容凹部との間に隙間が生じないことから、光源
25 ユニットを点灯させた際にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄えを
向上させるという技術的思想を有するものである。
他方、ワイドキャッツアイ製品は、カバー部材全体が猫の目のように大きな曲面
であることが特徴であり、器具本体の角部に曲面のカバー部材が当たることを防止
するために、意図的にカバー部材と器具本体の収容凹部の開口縁との間に隙間を設
け、独自の照明効果を得るものである。このようなワイドキャッツアイ製品におい
5 て、カバー部材と収容凹部との間に隙間が生じないようにカバー部材が重なるとい
う本件発明4-5の技術的思想は何ら開示されていない。したがって、ワイドキャ
ッツアイ発明は、主引用発明としての適格性を欠く。
(3) 本件発明4-5とワイドキャッツアイ発明の相違点
ア 器具本体の形状等(構成要件4-5A、D)
10 本件発明4-5の「器具本体」は、「長尺状に形成された器具本体」(構成要件
4-5A)であるところ、ワイドキャッツアイ発明の器具本体は正方形である。
また、本件発明4-5の「矩形の収容凹部」(構成要件4-5D)は、長手方向
に沿ったものとされているが、ワイドキャッツアイ発明の器具本体は正方形である
ことから、「長手方向」が存在しない。
15 イ 「取付部材」の有無(構成要件4-5G、H)
本件発明4-5の「取付部材」(構成要件4-5G、H)は、LED基板を器具本
体に取り付けること及びカバー部材が取り付けられることという二つの役割を有す
る。
他方、ワイドキャッツアイ発明において、複数のLEDが収容凹部の外側を向くよ
20 うにLED基板を固定し、また、カバー部材が取り付けられているのは、下部に設け
られている放熱フィン状の部材であるが、同部材は、器具本体との関係では、LED
基板やカバー部材を取り付けるものではない。ワイドキャッツアイ発明において、
器具本体への取付けは、別の部材に備えられた取付バネによって実現されている。
したがって、ワイドキャッツアイ発明には、LED基板及びカバー部材を器具本体
25 に取り付ける「取付部材」が存在しない。
ウ 「延出部」の有無(構成要件4-5I)
ワイドキャッツアイ製品は、被控訴人の測定を前提としても0.26mm~0.9
8mmの隙間が設けられている。これは、前記のとおり、器具本体の角部に曲面のカ
バー部材が当たることを防止する等の目的から、意図的に設けられたものである。
したがって、ワイドキャッツアイ発明は、本件発明4-5の「前記器具本体の長
5 手方向及び幅方向と直交する方向において前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じな
いように重なる延出部」(構成要件4-5I)を有しない。
(4) 容易想到性がないこと
本件発明4-5とワイドキャッツアイ発明には、被控訴人が主張する相違点を含
む上記の相違点が存在する。しかるに、被控訴人は、照明器具の形状に係る相違点
10 のみについて容易想到性を主張するにとどまり、その余の相違点については、副引
用例を含め、その容易想到性に関する論理付けの主張をしていない。
8 訂正の再抗弁の成否(争点8 当審において追加された争点)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 訂正及びその適法性
15 控訴人パナソニックは、令和4年3月22日付けで、本件特許4の特許請求の範
囲のうち請求項1、4、5を次のとおりに訂正することなどを内容とする訂正請求
をした(便宜のため、分説符号を付した。下線部は、訂正箇所である。以下、この
訂正請求による訂正を「本件訂正4」といい、本件訂正4後の請求項1に係る発明
を「本件訂正発明4-1」と、本件訂正4後の請求項4に係る発明を「本件訂正発
20 明4-4」と、本件訂正4後の請求項5に係る発明を「本件訂正発明4-5」とい
い、これらを合わせて「本件各訂正発明4」という。)。
【請求項1】
4-1A’ 複数のLEDが実装されたLED基板と、
4-1B’ 前記LED基板が取り付けられる取付部材と、
25 4-1C’ 拡散性を有し且つ前記LED基板を覆うようにして前記取付部材に
取り付けられるカバー部材とを備えた
4-1D’ 光源ユニットであって、
4-1E’ 前記カバー部材は、前記取付部材に取り付けられる一対の突壁部
と、
4-1F’ 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向にお
5 ける前記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部とを有し、
4-1G’ 長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた収容凹部は、長尺
且つ矩形板状に形成された底面部と、前記収容凹部の開口部の端縁から突出して前
記底面部に接続されている一対の側面部とを有し、
4-1H’ 前記取付部材は、前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くよ
10 うにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための部材であり、
4-1I’ 前記カバー部材は、前記収容凹部に前記光源ユニットを収容した状
態では、前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記一対の延
出部の各々が前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっていることを
特徴とする
15 4-1J’ 光源ユニット。
【請求項4】
4-4A 前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置を備えていることを
特徴とする
4-4B 請求項1~3の何れか1項に記載の光源ユニット。
20 【請求項5】
4-5A’ 長尺状に形成された器具本体と、
4-5B’ 前記器具本体に取り付けられる光源ユニットと、
4-5C’ 前記光源ユニットに取り付けられており前記光源ユニットに対して
点灯電力を供給する電源装置とを備え、
25 4-5D’ 前記器具本体の一面には、前記器具本体の長手方向に沿って矩形の
収容凹部が設けられており、
4-5E’ 前記電源装置は、前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた状
態において前記収容凹部内に配置され、
4-5F’ 前記光源ユニットは、複数のLEDが実装されたLED基板と、
4-5G’ 前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LE
5 D基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材と、
4-5H’ 拡散性を有し且つ前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部材
に取り付けられるカバー部材とを有し、
4-5I’ 前記カバー部材は、前記取付部材に取り付けられる一対の突壁部を
有し、
10 4-5J’ 前記収容凹部は、板金の曲げ加工により開口部を有するように形成
されており、
4-5K’ 前記カバー部材は、前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた
状態で、前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記収容凹部
の開口端縁と隙間が生じないように重なる延出部が設けられていることを特徴とす
15 る
4-5L’ 照明器具。
(2) 無効理由の解消
本件各訂正発明4と乙151発明とを対比すると、両発明は相違点があるから新
規性を欠くことにはならない。また、乙152発明との間において、両発明は相違
20 点があり、かつ、相違点に係る本件各訂正発明4の構成を採用する動機付けはなく、
当業者において、相違点に係る本件各訂正発明4の構成に容易に想到することはで
きないから進歩性を欠くことにはならない。したがって、無効理由が解消される。
(3) 被控訴人製品が本件各訂正発明4の技術的範囲に属すること
被控訴人製品6は、本件各訂正発明4の上記各構成要件を充足することから、本
25 件各訂正発明4の技術的範囲に属する。
(被控訴人の主張)
仮に本件訂正4が認められたとしても、本件各訂正発明4の構成は、乙152発
明等から容易に想到し得るものであって、本件訂正4により、乙152発明等を主
引用例とする本件各発明4の進歩性欠如の無効理由が解消されるものではない。
9 間接侵害の成否(争点9)
5 (控訴人パナソニックの主張)
仮に、被控訴人製品6について本件発明4-1との関係で直接侵害が成立しない
場合、本件発明4-1は、カバー部材を器具本体に収容した際、カバー部材と器具
本体の収容凹部の開口端縁との「隙間」の存在を前提として、この隙間をカバー部
材の延出部により上下方向に覆うことで、「隙間を生じなくさせる」ことに技術的
10 意義を有することから、被控訴人製品6のうち光源ユニットを収容する器具本体は、
発明による課題の解決に不可欠なものであり、被控訴人は本件発明4-1が特許発
明であることやその物が発明の実施に用いられることを認識していることから、被
控訴人による被控訴人製品6の製造、販売及び販売の申出は侵害とみなされる(特
許法101条2号)。
15 (被控訴人の主張)
否認ないし争う。
10 損害額(争点10)
(控訴人パナソニックの主張)
別紙6「本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由」の第2の4(控訴人パ
20 ナソニックの主張)(1)及び(3)のとおり。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
事案に鑑み、まず、争点6(無効理由3(乙152発明を主引用例とする進歩性
25 欠如)の有無)及び争点8(訂正の再抗弁の成否)について判断する。
1 本件各発明4について
(1) 本件明細書4には、次のような記載がある。
ア 技術分野
【0001】
本発明は、光源ユニット及び照明器具に関するものである。
5 イ 背景技術
【0002】
従来より、天井に取り付けられる天井直付け型の照明器具が提供されている(例
えば特許文献1参照)。この照明器具は、横長且つ長尺状に形成された器具本体と、
係止部材を用いて器具本体に取り付けられる光源部とを備え、器具本体の略中央に
10 は光源部を収容するための収容凹部が全長に亘って設けられている。
【0003】
また、光源部は、横長且つ長尺状に形成された取付部材と、複数の発光素子がそ
れぞれ実装され取付部材の下面に並べて取り付けられる複数の基板と、複数の基板
を覆うようにして取付部材に取り付けられるカバー部材とを有する。そして、一体
15 に組み付けられた光源部は、その一部が器具本体の収容凹部に収容された状態で、
係止部材を用いて器具本体に取り付けられる。
ウ 発明が解決しようとする課題
【0005】
上述の特許文献1(特開2012-3993号公報)に示した照明器具では、光源部を器
20 具本体に取り付けた状態でカバー部材と収容凹部との間に隙間が生じ、光源部を点
灯させた際には隙間部分がスジ状に暗くなるため、照明器具を見上げたときの見栄
えが良くなかった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、点
25 灯時における見栄えを向上させた光源ユニット及び照明器具を提供することにある。
エ 発明の効果
【0015】
長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた収容凹部に光源ユニットを収容
した場合には、器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向においてカバー部材
の延出部が器具本体の収容凹部の開口端縁に重なるようになっている。これにより、
5 カバー部材と収容凹部との間に隙間が生じないので、光源ユニットを点灯させた際
にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄えを向上させた光源ユニット
を提供することができるという効果がある。
オ 発明を実施するための形態
【0018】
10 本実施形態の照明器具Aは、図1~図4に示すように、天井直付け型の照明器具で
あり、吊ボルト200…を用いて天井材100に取り付けられる器具本体1と、器具本体1
に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2とを備える。
【0019】
器具本体1は、板金に曲げ加工を施すことで長尺且つ上面(天井材100との対向面)
15 が開口する扁平な箱状に形成され、天井材100と反対側(つまり下側)には光源ユ
ニット2を収容するための矩形の収容凹部11が器具本体1の全長に亘って設けられて
いる。
【0021】
光源ユニット2は、図1(a)及び図2に示すように、複数…のLED基板22と、LED基板
20 22が取り付けられる取付部材21と、LED基板22を覆うようにして取付部材21に取り
付けられるカバー部材23とを有する。また、光源ユニット2は、LED基板22に所定の
点灯電力を供給する電源装置24と、端子台ブロック25とを有する。
【0024】
取付部材21は、板金に曲げ加工を施すことでU字状に形成され、長尺且つ矩形板
25 状に形成された底面部211と、底面部211の左右方向(幅方向)における両端から上
下方向(底面部211と直交する方向)に延出する一対の側面部212とで構成される。
各側面部212の先端には、図1(a)に示すように、互いに離れる方向に傾斜する傾斜
部212aがそれぞれ全長に亘って設けられている。
【0026】
LED基板22は、例えば取付部材21の底面部211の一部を切り起こすことで形成され
5 た係止爪…により取付部材21に固定される。
【0027】
カバー部材23は、拡散性を有する材料(例えば乳白色のアクリル樹脂)により上
面(取付部材21側の面)が開口する長尺状に形成されている。このカバー部材23は、
左右方向(幅方向)において両端側から中央側に行くほど下側への突出量が大きく
10 なるような凸レンズ形状の拡散面231を有している…。
【0028】
カバー部材23の左右方向における両端部には、…光源ユニット2を器具本体1に取
り付けた状態で、上下方向において器具本体1の収容凹部11の開口端縁と重なる延
出部232がそれぞれ設けられている。また、カバー部材23の左右方向において各延
15 出部232の内側には、上側(取付部材21側)に突出する突壁部233がそれぞれ全長に
亘って設けられており、各突壁部233の先端には内向きに突出する突起部233aがそ
れぞれ設けられている。
【0034】
次に、光源ユニット2の組立手順について説明する。まず最初に、作業者は、電
20 源装置24及び端子台ブロック25をそれぞれ取付部材21の上面側に取り付け、さらに
電源装置24と端子台ブロック25の間を電線により接続する。その後、作業者は、上
記係止爪によりLED基板22を取付部材21の底面部211に固定し、LED基板22のコネク
タ223から導出する電線…の端部を電源装置24に接続する。
【0035】
25 そして最後に、作業者は、開口側を上向きにした状態でカバー部材23を取付部材
21に組み付ける。このとき、カバー部材23の各突壁部233にそれぞれ設けた突起部2
33aが、取付部材21の各側面部212にそれぞれ設けた傾斜部212aに引っ掛かり、カバ
ー部材23が取付部材21に取り付けられる。以上のような手順に従って、光源ユニッ
ト2が組み立てられる。なお、カバー部材23を取付部材21に取り付ける上記方法は
一例であり、他の方法であってもよい。
5 【0036】
続けて、照明器具Aの施工手順について説明する。まず最初に、作業者は、…器
具本体1を天井材100に固定する。
【0037】
その後、作業者は、…例えば器具本体1及び取付部材21にそれぞれ設けた嵌合構
10 造(図示せず)によって光源ユニット2を器具本体1に取り付ける。このとき、少な
くとも電源装置24及び端子台ブロック25が収容凹部11に収容される。
【0038】
ここで、図1(b)は照明器具Aを天井材100に取り付けた状態の断面図であり、上
下方向(器具本体1の長手方向及び幅方向と直交する方向)において、カバー部材2
15 3の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁と重なっている。これにより、
カバー部材23と収容凹部11との間に隙間が生じないので、光源ユニット2を点灯さ
せた際にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄えを向上させた照明器
具Aを提供することができる。
(2) 本件各発明4の概要
20 ア 技術分野
本件各発明4は、光源ユニット及び照明器具に関する(【0001】)。
イ 背景技術
従来より、天井直付け型の照明器具が提供されている(乙6)が、この照明器具
は、横長且つ長尺状に形成された器具本体とこれに取り付けられる光源部とを備え、
25 器具本体の略中央には光源部を収容するための収容凹部が全長に亘って設けられて
おり、光源部は、複数の発光素子がそれぞれ実装され取付部材とこれに取り付けら
れるカバー部材とを有している(【0002】【0003】)。
ウ 発明が解決しようとする課題
上記従来の照明器具では、光源部を器具本体に取り付けた状態でカバー部材と収
容凹部との間に隙間が生じ、光源部を点灯させた際には隙間部分がスジ状に暗くな
5 るため、照明器具を見上げたときの見栄えが良くなかった(【0005】)ところ、
本件各発明4は、点灯時における見栄えを向上させた光源ユニット及び照明器具を
提供することにある(【0006】)。
エ 課題を解決する手段等
上記目的を達成するために本件発明4-1、4-4の構成からなる光源ユニット、
10 本件発明4-5の構成からなる照明器具を採用したものである(請求項1、4、5、
【0007】)。
オ 本件各発明4の作用、効果
本件各発明4によると、カバー部材と収容凹部との間に隙間が生じないので、光
源ユニットを点灯させた際にスジ状に暗くなることがなく、点灯時における見栄え
15 を向上させた光源ユニットを提供することができる(【0015】)
(3) 本件発明4-1及び4-5における「取付部材」の意義
ア 本件発明4-1について
本件発明4-1において、「取付部材」に関しては、構成要件4-1B「前記L
ED基板が取り付けられる取付部材と」、構成要件4-1C「拡散性を有し且つ前
20 記LED基板を覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを備え
た」、構成要件4-1E「前記カバー部材は、前記取付部材に取り付けられる一対
の突壁部と」、構成要件4-1F「を有し」、と特定されている。
ここで、「取付(け)」とは、「①機器・器具などをとりつけること。装置する
こと。」(広辞苑第6版)を意味する名詞であるから、「取付部材」とは、機器・
25 器具などをとりつけること、装置することに関わる部材であることが分かる。
また、「取り付ける」とは、「①機器などを一定の場所に設置したり他の物に装
置したりする。」(広辞苑第6版)を意味する動詞であり、構成要件4-1Bでは、
「られる」という受け身を表す助動詞と合わせ用いられているから、構成要件4-
1Bにより、「取付部材」は、LED基板が装置される対象物であることが特定さ
れている。
5 さらに、同様に構成要件4-1Cから、「取付部材」は、LEDを覆うようにし
てカバー部材が装置される対象物であることが特定されており、そのための構成と
して、構成要件4-1E及び構成要件4-1Fから、カバー部材が一対の突壁部を
有することが特定されている。
以上のとおり、本件発明4-1の各構成要件の特定から、本件発明4-1の「取
10 付部材」は、カバー部材が装置されて一体となること、及び、LED基板が取り付
けられる部材であることが認められる。
イ 本件発明4-5について
本件発明4-5において、「取付部材」に関しては、構成要件4-5G「前記複
数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体
15 に取り付けるための取付部材と」、構成要件4-5H「拡散性を有し且つ前記複数
のLEDを覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを有し」 と
特定されている。ここで、構成要件4-5Hは構成要件4-1Cと同様の特定であ
る。これに加えて、構成要件4-5Gは、「前記複数のLEDが前記収容凹部の外
側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材と」
20 と特定しているところ、「にして」とは状態を表す助詞であり、また、「ため」と
は「目的」を意味する助詞(広辞苑第6版)であるから、構成要件4-5Gから、
「取付部材」は、複数のLEDが収容凹部の外側を向く状態でLED基板を器具本
体に取り付けることを目的とした部材であることが特定されている。
他方、本件発明4-5では、「取付部材」を器具本体に取り付けるための具体的
25 な構成、例えば、ボルトやフックなどについての特定はない。
このように、本件発明4-5では、「取付部材」を器具本体に取り付ける(装置
する)ための具体的な構成の特定がない以上、当業者は、「取付部材」を器具本体
に取り付けるための構成として、技術水準を踏まえて任意のものを採用し得るもの
である。例えば、本件優先日前に公になっている、乙6図13の「係止部材4」、
乙58の「係止部材40」及び「係止穴84」、乙258の「キックバネ3」、甲
5 4008の「取付ばね18」及び「取付金具13」(甲4009、4010も同様)
の取付部材と器具本体の間に係止又は嵌合させる手段を介在させる構成を含め、カ
バー部材を介在するような態様を排除するものではないと解さざるを得ない。
ウ もっとも、特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、
通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容
10 とは異なるものとして解される余地はあるため、本件明細書4をみると、「取付部
材」については、従来技術の説明として【0003】に、課題を解決するための手
段として【0007】、【0008】、【0012】に、実施形態として【002
1】、【0024】~【0028】、【0030】、【0032】~【0035】、
【0037】、【0044】、【0046】、【0047】、【0051】に、そ
15 れぞれ記載があるが、いずれにおいても、通常の意味内容とは異なるものとして定
義又は説明されているものではない。
さらに、本願明細書4の実施例について検討するに、取付部材について以下のよ
うに説明されている。
図1に係る実施形態における取付部材21は、複数のLED基板22が取り付け
20 られ、LED基板22を覆うようにしてカバー部材23が取り付けられること
(【0021】)、板金に曲げ加工を施すことで形成され、所定の形状、穴、LE
D基板を取り付けるための係止爪(図示せず)を有すること(【0024】~【0
026】)、電源装置24や端子台ブロック25を取付部材21に取り付けるため
の構成を有すること(【0030】、【0032】~【0035】)、さらに、例
25 示として、器具本体1と取付部材21にそれぞれ設けた嵌合構造(図示せず)によ
り光源ユニット2を器具本体に取り付ける(【0037】)ものであること。
また、図5に係る実施形態の別の例における取付部材21は、器具本体として構
成された反射板5及び取付部材にそれぞれ設けた嵌合構造(図示せず)により光源
ユニット2を反射板5(器具本体)に取り付ける(【0044】)ものである。
このように実施形態では、図示はないものの、取付部材21と器具本体には嵌合
5 構造が設けられていることが分かり、「嵌合」とは、「〔機〕軸が穴にかたくはま
り合ったり、滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう語」(広辞苑第
6版)であるから、取付部材21と器具本体とは、はまり合うための構造を有し、
これにより取り付けられることが記載されている。
しかしながら、以上のような実施形態に関する記載によって、本件において、特
10 許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは
異なるものとして定義又は説明されているとはいえないから、このような実施形態
に本件発明4-1及び4-5の要旨を限定して解釈して認定すべき特段の事情はな
い。
エ したがって、「取付部材」には、LEDを取り付けた部材が直接本体に取り
15 付けられるものに限定されるものではなく、カバー部材を介在するような態様を排
除するものではない。
(4) 構成要件4-5Cにおける「電源装置」について
構成要件4-5Cでは「電源装置」が光源ユニットに対して点灯電力を供給する
装置であることが特定されていると解される。
20 2 乙152発明について
(1) 乙152には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1~図3に
ついては別添4を参照)。
【0001】
【発明の属する技術分野】
25 本発明は、床面又は壁面等に取り付けられるLED照明器具であって、店舗等で
商品等の照明に用いられるLED照明器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
床面等に取り付けられるLED照明器具であって、店舗等で商品等の照明に用い
られるLED照明器具の従来のものとしては、LEDライン型ベース器具があった。
5 このものは、断面がコ字状の長尺の取付ベースの内部にLED用の電源回路を配設
し、上部にLED等の照明装置を配設させた構造をしている。このものを床面や階
段面に取り付けることにより案内灯として用いたり、壁面に取り付けることにより
展示商品のライトアップに用いたりしていた。また、これを改良したLED照明器
具が、特開2935677号公報に開示されている。
10 【0003】
【特許文献1】
特開2935677号公報(第3-4頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
15 しかしながら、従来のLED照明器具や特開2935677号公報に開示されて
いるものは、取付ベース等の部品は他の用途への転用ができないために、専用の照
明器具を生産することが必要となり、コストアップの原因になっていた。また、こ
の種の照明器具を直列に多数接続して使用した場合に、LEDの入力電圧が降下し
て、LEDの輝度が低下するおそれがあった。さらに、このLED照明器具以外の
20 電気機器を使用する場合には、このための電力用配線を別に配線することが必要と
なっていた。
【0005】
本発明は、かかる事由に鑑みてなしたもので、その目的とするところは、取付ベ
ース等の部品が他の用途への転用が可能であり、このものを直列に多数接続して使
25 用した場合でも、LEDの入力電圧が降下することなく、さらに、このLED照明
器具以外の電気機器を使用する場合でも、このための電力用配線を別に配線するこ
とが必要のないLED照明器具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、床面等に配設する断面が略コ字状で長尺な取付ベースと、
5 前記取付ベースの開口部に嵌合される蓋部とを有してなり、前記蓋部に多数のLE
Dを配設してなることを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記取付ベースの内部に前記
LED用の電源回路を有してなることを特徴としている。
10 【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2の構成において、前記取付ベース
の内部に電力用配線を有してなることを特徴としている。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかの構成において、前記
15 LED照明器具の終端部にLED用電力供給配線又は前記電力用配線の電極端子を
有してなることを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかの構成において、前記
取付ベースの内部にLED入力電圧の降下を補正するブースターを有してなること
20 を特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1~3に基づいて説明する。本実施形態のLED照明器
25 具壁は、図1、2に示すように、断面がコ字状で長尺な取付ベース1と、この上部
に嵌合されて内部に多数のLED2を配設している蓋部3とを備えている。取付ベ
ース1は、金属または樹脂を形成したものであり、具体的形状としては、横が約2
0mm、高さが約15mm、長さが約1mである。このものの側面は、後述する蓋
部3が嵌合できるように、弾力性を有している。取付ベース1の内部は空洞になっ
ていて、各種の電気機器を配設できるようになっている。また、取付ベース1の終
5 端部には、終端板5が取り付けられている。蓋部3は、取付ベース1の上部の開口
部を覆うように嵌合するものであり、アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料か
らできている。また、この蓋部3の長さは、取付ベース1の約半分である。したが
って、図1に示すように、1個の取付ベース1に2個の蓋部3が嵌合できる構成に
なっている。蓋部3の内部の上部には、基板10に取り付けられたLED2が5~
10 10cm間隔で配設されている。この基板10の下部には、LED2を点灯させる
ための電気部品11が配設され、この下部には、伝熱シート12が配設されている。
LED2、基板10、電気部品11と伝熱シート12は、蓋部3に嵌合することで
保持されている絶縁板13上に配設されている。さらに、取付ベース1の内部で絶
縁板13の下部は、電力用配線14を配設するスペースとなっている。
15 【0012】
本実施形態のLED照明器具の取付け手順について説明する。まず、取付ベース
1を床面又は壁面に取り付ける。ここで、取付けの構成としては、長期間取り付け
ておく場合には、ビスや釘で確実に固定し、短期間のみ取り付けておく場合には、
両面の接着テープを用いる。次に、他の電気機器に電気を供給する電力用配線14
20 を必要とする場合には、電力用配線14を取付ベース1の底面に配設させる。一方、
伝熱シート12及び、上部にLED2を下部に電気部品11を配設した基板10を
配設した絶縁板13を蓋部3の内部で嵌合させる。この蓋部3を取付ベース1の開
口部を覆うように嵌合させる。本実施形態では、取付ベース1の側面板の内部に蓋
部3が嵌合する構造になっている。一方、電力用配線14は、取付ベース1の終端
25 部から引き出して、必要な電気機器に接続させる。
【0013】
また、LEDの照明が必要としない場所に取付ベース1を配設する場合には、断
面を図3に示すような、LED非収納用蓋部4を取付ベース1の開口部に嵌合させ
る。このLED非収納用蓋部4は、内部が見えないように、不透明な樹脂を用いる。
この部分内部には、電力用配線14のみが収納されている構造になっている。この
5 状態で、LED用スイッチ(図示せず)をON又はOFFさせることにより、LE
Dを点滅させることができる。ここで、本実施形態のLED照明器具を床面に配設
させれば、案内灯として用いることができる。また、店舗灯の壁や天井に配設させ
れば、展示商品の局所照明として用いることができる。
【0021】
10 (実施形態4)
本発明の実施形態4を図12に基づいて説明する。本実施形態は、実施形態1に
類似しているが、LED照明器具として、ブースター20と電源21とが組み込ま
れている点が異なる。電源21には、LED用電池が内蔵され、ブースター20は、
LED用電源の電圧降下を補正するための電気回路が内蔵されている。
15 【0022】
本実施形態のLED照明器具は、電源21とが組み込まれているので、外部から
電力を供給するための電線を接続することなく、LEDを点灯させることができる。
また、ブースターが組み込まれているので、多数のLEDが具備されていても、電
圧降下をおこすことなく、LEDの輝度を保持することができる。
20 【0023】
【発明の効果】
請求項1に係る発明は、床面等に配設する断面が略コ字状で長尺な取付ベースと、
前記取付ベースの上部に嵌合される蓋部とを有してなり、前記蓋部に多数のLED
を配設してなることを特徴としているので、取付ベースや蓋部としては、市販の配
25 線レールの部品を流用することができ、このことにより、コストダウンをはかるこ
とができる。
(2) 上記(1)の記載によると、乙152発明は、壁面等に取り付けられるLED
照明器具に関するもので(【0001】)、従来、断面がコ字状の長尺の取付ベー
スの内部にLED用の電源回路を配設し、上部にLED等の照明装置を配設した構
造のものがあったが、取付ベース等の部品の転用ができないことや、LED照明以
5 外の電気機器を使用する場合には、このための電源用配線を別に配線することが必
要である等の問題があるところ(【0002】~【0004】)、取付ベース等の
部品の転用が可能で、LED照明以外の電気機器のために別に配線をする必要がな
いLED照明器具の提供を目的とする(【0005】)ものである。
乙152のLED照明器具は、床面等に配設する断面が略コ字状で長尺な取付ベ
10 ースと、前記取付ベースの開口部に嵌合される蓋部とを有してなり、前記蓋部に多
数のLEDを配設してなり(【0006】)、取付ベースの内部に前記LED用の
電源回路と電力用配線を有するものである(【0007】【0008】)。
そして、実施形態1に係るLED照明装置は、断面がコ字状で長尺な取付ベース
1と、この上部に嵌合されて内部に多数のLED2を配設している蓋部3とを備え、
15 取付ベース1は、金属又は樹脂を形成したもので、側面は蓋部3が嵌合でき、内部
は空洞で各種の電気機器を配設でき、蓋部3は、取付ベース1の上部の開口部を覆
うように嵌合するもので、アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料からなり、蓋
部3の内部の上部には、基板10に取り付けられたLED2が5~10cm間隔で
配設され、この基板10の下部には、LED2を点灯させるための電気部品11が
20 配設され、LED2、基板10、電気部品11とは絶縁板13上に配設され、取付
ベース1の内部で絶縁板13の下部は、電力用配線14を配設するスペースとなっ
ている(【0011】)。なお、乙152では蓋部3の拡散性は不明である。
3 乙152発明の構成及び本件各発明4との対比
(1) 本件発明1について
25 ア 乙152-1発明
前記認定の乙152の記載及び弁論の全趣旨によると、本件発明4-1との対比
との関係では、乙152に記載される以下の構成に係る発明(以下「乙152-1
発明」という。)が認められる。
「LED2が5~10cm間隔で取り付けられた基板10と、
上部にLED2を下部に電気部品11を配設した前記基板10を配設した絶縁板
5 13と、
アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料からできており且つ基板10を覆うよ
うにして絶縁板13に取り付けられる蓋部3と、
を備えたLED2を含むユニットであって、
前記蓋部3は、前記絶縁板13に取り付けられる一対の突壁部と前記一対の突壁
10 部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に延
出する一対の延出部とを有し、
長尺な取付ベース1の一面に設けられた凹部は、長尺且つ矩形板状に形成された
底面と、前記凹部の開口部の端縁から突出して前記底面に接続されている一対の側
面板とを有し、
15 前記絶縁板13は、前記5~10cm間隔のLED2が前記凹部の外側を向く
ように、前記基板10を配設して前記蓋部3の内部に嵌合する部材であり、前記蓋
部3が前記取付ベース1に嵌合し、
前記蓋部3は、前記凹部にLED2を含むユニットを収容した状態では、上下方
向において、蓋部3の一対の延出部の各々が前記凹部の開口端縁と隙間が生じない
20 ように重なっている、
LED2を含むユニット。」
イ 本件発明4-1と乙152-1発明との対比
本件発明4-1と乙152-1発明とは、以下の点で相違するものの、その余
の点では一致していることが認められる。
25 (相違点ア) カバー部材に関して、本件発明4-1では、「拡散性を有」する
のに対して、乙152-1発明では、「アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料
からできて」いるものの、拡散性を有するか否かは不明である点。
ウ 判断
LED照明器具のカバー部材が拡散性を備えるようになすことは、例示するまで
もなく、本件原出願日4前に周知慣用の技術であり、乙152-1発明において、
5 適宜採用して上記相違点アに係る本件発明4-1の構成とすることは、当業者が容
易になし得ることである。
そうすると、本件発明4-1は、乙152-1発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものである。
(3) 本件発明4-4について
10 乙152-1発明における「下部に電気部品11を配設した前記基板10を配設
した絶縁板13」「を備えたLED2を含むユニット」である点は、本件発明4-
4で特定されている事項に相当するから、新たな相違点はない。
したがって、本件発明4-4は、前記(2)のとおりの本件発明4-1と同様の理
由により、乙152-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたも
15 のである。
(4) 本件発明4-5について
ア 乙152-5発明
前記認定の乙152の記載及び弁論の全趣旨によると、本件発明4-5との対比
との関係では、乙152に記載される以下の構成に係る発明(以下「乙152-5
20 発明」という。)が認められる。
「長尺な取付ベース1と、前記取付ベース1に取り付けられる、基板10と絶縁
板13と蓋部3とを備えたLED2を含むユニットと、
前記LED2を含むユニットの前記絶縁板13上に配設された電気部品11と、
取付ベース1の内部のスペースにおける絶縁板13の下部に配設された電力用配線
25 14とを備え、
前記取付ベース1の一面には、取付ベース1の長手方向に沿って矩形の凹部が設
けられており、
前記電気部品11及び前記電力用配線14は、前記LED2を含むユニットを前
記取付ベース1に取り付けた状態において前記凹部内に配設され、
前記LED2を含むユニットは、LED2が5~10cm間隔で取り付けられた
5 基板10と、
前記5~10cm間隔で取り付けられたLED2が前記凹部の外側を向くように、
前記基板10を配設して前記蓋部3の内部に嵌合する絶縁板13と、
アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料からできており、前記5~10cm間
隔で取り付けられたLED2を覆うようにして前記絶縁板13を内部に嵌合させる
10 蓋部3とを有し、
前記蓋部3が前記取付ベース1に嵌合し、
取付ベース1は金属を形成したものであり、断面がコ字状に形成され、
前記蓋部3は、前記凹部にLED2を含むユニットを嵌合した状態では、上下方
向において、前記凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なる一対の延出部が設
15 けられている、
LED照明器具。」
イ 本件発明4-5と乙152-5発明との対比
前記1の本件発明4-5の要旨認定を前提とすると、本件発明4-5は、乙15
2-5発明のように「絶縁板13」と「取付ベース1」との間に「蓋部3」が介在
20 する取付構造を排除するものではないといえる。
他方、乙152-5発明の「絶縁板13」には、LED2を配設した基板10が
配設されているのであるから、「絶縁板13」が存在しなければ、LED2は「取
付ベース1」に配設することができない。
以上に照らすと、乙152-5発明における「絶縁板13」は、本件発明4-5
25 の「前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材」に相当するとい
える。
また、上記1(4)の認定のとおり、本件発明4-5は、光源ユニットに対して点
灯電力を供給する装置を備えていればよい一方で、乙152-5発明の「電気部品
11」は、LED2を点灯させるためのもの(乙152【0011】)であるか
ら、本件発明4-5の「電源装置」に相当するといえる。
5 これらを踏まえると、本件発明4-5と乙152-5発明とは、以下の点で相違
するものの、その余の点では一致している。
(相違点イ) カバー部材が、本件発明4-5では、「拡散性を有」するのに対
して、乙152-5発明では、「アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料からで
きて」いるものの、拡散性を有するかは不明である点。
10 ウ 判断
本件発明4-5と乙152-5発明の相違点イは、本件発明4-1、4-4の相
違点アと同様であるから、前記(2)と同様の理由により、乙152-5発明におい
て、相違点イに係る本件発明4-5の構成を備えることは、当業者が容易になし得
るものである。
15 そうすると、本件発明4-5は、乙152-5発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものといえる。
(5) 控訴人パナソニックの主張について
控訴人パナソニックは、上記相違点ア、イの存在のほか、乙152発明の「絶縁
板3」は本件各発明4の「取付部材」に相当しない旨を主張するが、本件各発明4
20 の「取付部材」につき、「直接的に取付部材が器具本体に取り付ける構成」と解釈
することを前提とするものである。しかしながら、本件各発明4について先に検討
したとおり、このような解釈は採用できないから、一審原告の主張は前提を誤るも
のであり、採用できない。
(6) 小括
25 以上のとおり、本件発明4-1、4-4、4-5は、乙152発明に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件各発明4に係る特許4
は、特許法29条2項に違反してされたものである。
4 訂正の再抗弁の成否について
これに対し、控訴人パナソニックは、本件各発明4につき、訂正の再抗弁を主張
しているため、次に訂正の再抗弁の成否につき検討する。
5 (1) 本件訂正発明4-1及び4-5における「取付部材」の意義
ア 本件訂正発明4-1について
本件訂正発明4-1において、「取付部材」に関しては、その構成要件4-1B’
「前記LED基板が取り付けられる取付部材と」、構成要件4-1C’「拡散性を
有し且つ前記LED基板を覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部
10 材とを備えた」、構成要件4-1E’「前記カバー部材は、前記取付部材に取り付
けられる一対の突壁部と」、構成要件4-1F’「を有し」、構成要件4-1H’
「前記取付部材は、前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記
LED基板を前記器具本体に取り付けるための部材であり」と特定されている。
ここで、本件発明4-1から、本件訂正4により、構成要件4-1H’「前記取
15 付部材は、前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LED基
板を前記器具本体に取り付けるための部材であり」と更に特定されているところ、
同文言は、本件発明4-5の構成要件4-5G「前記複数のLEDが前記収容凹部
の外側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部
材と」と同様の特定であると理解できる。
20 そうすると、本件訂正により更に特定された事項を考慮しても、前記1(3)にお
ける判示のとおり、本件訂正発明4-1の「取付部材」は、カバー部材が装置され
て一体となること、及び、LED基板が取り付けられ、それが収容凹部の外側を向
く状態で器具本体に取り付けることを目的とした部材であると認められるものの、
本件訂正発明4-1では、「取付部材」を器具本体に取り付ける(装置する)ため
25 の具体的な構成の特定がない以上、当業者は、「取付部材」を器具本体に取り付け
るための構成として、技術水準を踏まえて任意のものを採用し得るものであるから、
取付部材と器具本体の間に係止又は嵌合させる手段を介在させる構成を含め、カバ
ー部材を介在するような態様を排除するものではないと解される。
イ 本件訂正発明4-5について
本件訂正発明4-5において、「取付部材」に関しては、構成要件 4-5G’
5 「前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LED基板を前記
器具本体に取り付けるための取付部材と」、構成要件4-5H’「拡散性を有し且
つ前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材と
を有し」、構成要件4-5I’「前記カバ一部材は、前記取付部材に取り付けられ
る一対の突壁部を有し」と特定されている。
10 ここで、構成要件4-5G’は構成要件4-1H’と、構成要件4-5H’は構
成要件4-1C’と、構成要件4-5I’は構成要件4-1E’と、それぞれ同様
の特定であるから、本件訂正発明4-5の「取付部材」の意味についても、本件訂
正発明4-1と同様に解するのが相当である。
(2) 構成要件4-5J’における「板金の曲げ加工により開口部を有する」につ
15 いて
構成要件4-5J’は「前記収容凹部は、板金の曲げ加工により開口部を有する
ように形成されており」と特定する。このような構成要件は、物の発明の特定事項
に物の製造方法が記載されている場合といえるから、物の発明についての特許に係
る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても、その特許
20 発明の技術的範囲は、当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一であ
る物として確定されるものと解するのが相当である。
したがって、本件訂正発明4-5において、板状の金属で形成された「収容凹部」
が、「開口部を有するように形成され」ていれば、「物」の発明としての差異はな
いといえる。
25 (3) 構成要件4-5C’における「電源装置」について
前記1(4)のとおり、構成要件4-5C’においても「電源装置」が光源ユニッ
トに対して点灯電力を供給する装置であることが特定されていると解される。
(4) 本件訂正発明4-1及び本件訂正発明4-4と乙152-1発明との対比に
ついて
ア 前記 (1)アによ ると、本件訂正発明 4-1は、乙152-1発明の よ う に
5 「絶縁板13」と「取付ベース1」との間に「蓋部3」が介在する取付構造を排除
するものではない。
他方、乙152-1発明の「絶縁板13」には、LED2を配設した基板10が
配設されているのであるから、「絶縁板13」が存在しなければ、LED2は「取
付ベース1」に配設することができない。
10 以上に照らすと、乙152-1発明における「絶縁板13」は、本件訂正発明4
-1の「前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材」に相当する
といえる。
そうすると、本件訂正発明4-1と乙152-1発明とは、以下の点で相違する
ものの、その余の点では一致している。
15 (相違点ア’) カバー部材に関して、本件訂正発明4-1では、「拡散性を有」
するのに対して、乙152-1発明では、「アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁
材料からできて」いるものの、拡散性を有するか否かは不明である点。
イ 相違点ア’についての検討
LED照明器具のカバー部材が拡散性を備えるようになすことは、例示するまで
20 もなく、本件原出願日4前に周知慣用の技術であり、乙152-1発明において、
適宜採用して上記相違点ア’に係る本件訂正発明4-1の構成とすることは、当業
者が容易になし得ることである。
そうすると、本件訂正発明4-1は、乙152-1発明に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたものである。
25 加えて、乙152-1発明における「下部に電気部品11を配設した前記基板1
0を配設した絶縁板13」「を備えたLED2を含むユニット」である点は、本件
訂正発明4-4で特定されている事項に相当するから、新たな相違点はない。
したがって、本件訂正発明4-4は、上記の本件訂正発明4-1と同様の理由に
より、乙152-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので
ある。
5 (5) 本件訂正発明4-5と乙152-5発明との対比について
ア 本件訂正発明4-5と乙152-5発明との対比
前 記(1)アによると 、本件訂正発明 4-1 と同様、乙152-5発明のように
「絶縁板13」と「取付ベース1」との間に「蓋部3」が介在する取付構造を排除
するものではない。
10 他方、乙152-5発明の「絶縁板13」には、LED2を配設した基板10が
配設されているのであるから、「絶縁板13」が存在しなければ、LED2は「取
付ベース1」に配設することができない。
以上に照らすと、乙152-5発明における「絶縁板13」は、本件訂正発明4
-5の「前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材」に相当する
15 といえる。
また、本件訂正発明4-5の「電源装置」についてみるに、本件訂正発明4-5
は、光源ユニットに対して点灯電力を供給するもととなる装置を備えていればよい
一方で、乙152-5発明の「電気部品11」は、LED2を点灯させるためのも
の(乙152【0011】)であるから、本件訂正発明4-5の「電源装置」に相
20 当するといえる。
これらを踏まえると、本件訂正発明4-5と乙152-5発明とは、以下の点で
相違するものの、その余の点では一致している。
(相違点イ’) カバー部材が、本件訂正発明4-5では、「拡散性を有」する
のに対して、乙152-5発明では、「アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料
25 からできて」いるものの、拡散性を有するかは不明である点。
イ 判断
本件訂正発明4-5と乙152-5発明の相違点イ’は、本件訂正発明4-1、
4-4の相違点ア’と同様であるから、上記(4)イ「相違点ア’についての検討」
と同様の理由により、乙152-5発明において、相違点イ’に係る本件訂正発明
4-5の構成を備えることは、当業者が容易になし得るものである。
5 そうすると、本件訂正発明4-5は、乙152-5発明に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたものと言わざるを得ない。
(6) 小括
したがって、本件各訂正発明4は、本件原出願日4より前に公開された公報に記
載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許
10 法29条2項に違反してされたものであるから、乙152発明を主引用発明とする
本件各発明4の進歩性欠如の無効理由が解消されるということはできない。そうで
ある以上、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権4を行使すること
ができない。
5 まとめ
15 以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人パナソニックの本
件特許権4の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙8の別添1)●(省略)●
(別紙8の別添2)
特許権4充足論一覧表
器具本体 適合ユニット型番 (RAD-) 逆富士形 下面開放形(埋込)
(青はオプティカルタイプ)
オプティカルタイプ 下面開放形 反射笠付形 白ルーバー形 空調ダクト回避型 トラフ形 ウォールウォッシャー形
枝番 電力 型番 W:230 W:150 W:300 W:220 W:150
ERK9585W ERK9585W
ERK9640W 533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, ERK9640W
(1) LEDベースライト 110Wタイプ 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW,
ERK9560W 701N/W, 710N/W, 711N/W ERK9560W
ERK9562W ERK9562W
ERK9819W 533NA/WA, 562NA/WA, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, 600N/W/WW, ERK9819W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, 701N/W, 710N/710W,
ERK9826W 711N/W ERK9826W
ERK9584W ERK9584W
ERK9635W ERK9635W
ERK9636W ERK9636W
ERK9820W 494NA/WA/WWA, 496NA/WA, 553D/N/W/WW, 564N/W/WW, ERK9820W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ 595D/L/N/W/WW, 596N/W, 603L/N/W/WW, 605N/W, 637L/N/W/WW, RAD-637L/N/W/WW
ERK9637W 646W/WW, 647W/WW, 648W/WW, 661N/W/WW, 702N/W, 705N/W ERK9637W
ERK9845W ERK9845W
ERK9846W ERK9846W
ERK9847W ERK9847W
ERK9563W ERK9563W
被 498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW,
ERK9638W ERK9638W
控 (4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9639W
598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW, RAD-650N/W/WW
ERK9639W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
訴 ERK9567W ERK9567W
人 ERK9566W ERK9566W
製 (5) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9642W 599N/W, 607N/W, 634N/W ERK9642W
品 ERK9641W ERK9641W
6 ERK9561W ERK9561W
533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W,
(6) LEDベースライト 110Wタイプ ERK9817W 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, ERK9817W
701N/W, 710N/W, 711N/W
498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW,
(7) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9818W 598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW, RAD-650N/W/WW ERK9818W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
ERK9393W ERK9393W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ 527N/W, 528N/W, 533N/W, 534N/W
ERK9396W ERK9396W
ERK9306W ERK9306W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 502N/W/WW
ERK9309W ERK9309W
ERK9307W ERK9307W
(10) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 495N/W, 496N/W, 502N/W/WW, 503N/W
ERK9308W ERK9308W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9310W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 504N/W/WW ERK9310W
(12) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9311W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 499N/W, 500N/W, 504N/W/WW, 505N/W ERK9311W
ERK9474W ERK9474W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ 542N/W
ERK9475W ERK9475W
ERK9491W ERK9491W
(14) LEDベースライト 40Wタイプ (LEDユニット付きセット商品)
ERK9488W ERK9488W
4-1A 複数のLEDが実装されたLED基板と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4-1B 前記LED基板が取り付けられる取付部材と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4-1C
拡散性を有し且つ前記LED基板を覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材と
争 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
を備えた
本
件 4-1D 光源ユニットであって, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
発
明 4-1E 前記カバー部材は,前記取付部材に取り付けられる一対の突壁部と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4
| 4-1F 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向における前記突壁部よりも外側に 争 争 争 争 争 争 争 争 争
1 延出する一対の延出部とを有し,
前記カバー部材は,長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた収容凹部に前記光源ユニッ
4-1G トを収容した状態では,前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記一対の 争 争 争 争 争 争 争 争 争
延出部の各々が前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっていることを特徴とする
4-1H 光源ユニット。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
本件発
明
4-4A 前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置を備えていることを特徴とする ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4
|
4 4-4J 請求項1~3の何れか1項に記載の光源ユニツト。 争 争 争 争 争 争 争 争 争
4-5A 長尺状に形成された器具本体と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4-5B 前記器具本体に取り付けられる光源ユニットと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4-5C 前記光源ユニットに対して点灯電力を供給する電源装置とを備え, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4-5D 前記器具本体の一面には,前記器具本体の長手方向に沿って矩形の収容凹部が設けられており, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 争 争
本 4-5E
前記電源装置は,前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた状態において前記収容凹部内に ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 争 争
配置され,
件
発
明 4-5F 前記光源ユニットは,複数のLEDが実装されたLED基板と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
4
|
4-5G 前記複数のLEDが前記収容凹部の外側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 争 争
5 付けるための取付部材と,
4-5H
拡散性を有し且つ前記複数のLEDを覆うようにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材
争 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
とを有し,
前記カバー部材は,前記光源ユニットを前記器具本体に取り付けた状態で,前記器具本体の長手
4-5I 方向及び幅方向と直交する方向において前記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なる 争 争 争 争 争 争 争 争 争
延出部が設けられていることを特徴とする
4-5J 照明器具。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙8の別添3)
被控訴人製品6の各構成(控訴人パナソニックの主張)
5 1 本件発明4-1関係
4-1a 複数の LED が実装された LED 基板と(別紙3物件説明書構成6-
④)、
4-1b 前記 LED 基板が取り付けられる取付部材と(同構成6-④)、
4-1c 乳白色のポリカーボネートからなり且つ前記 LED 基板を覆うようにし
10 て前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを備えた(同構成6-④)
4-1d LED ユニットであって(同構成6-④)、
4-1e 前記カバー部材は 、前記取付部材に取り付けられる一対の突壁部と
(同構成6-⑩)、
4-1f 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向におけ
15 る前記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部とを有し(同構成6-
⑪、6-⑫)、
4-1g 前記カバー部材は、長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた
収容凹部に前記 LED ユニットを収容した状態では、前記器具本体の長
手方向及び幅方向と直交する方向において前記一対の延出部の各々が前
20 記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっていることを特徴
とする(同構成6-⑬)
4-1h LED ユニット(同構成6-①)。
2 本件発明4-4関係
4-4a 複数の LED に点灯電力を供給する電源装置を備え(同構成6-④)
4-4b 複数の LED が実装された LED 基板と(同構成6-④)、
4-4c 前記 LED 基板が取り付けられる取付部材と(同構成6-④)、
5 4-4d 乳白色のポリカーボネートからなり且つ前記 LED 基板を覆うようにし
て前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを備えた(同構成6-④)
4-4e LED ユニットであって(同構成6-④)、
4-4f 前記カバー部材は 、前記取付部材に取り付けられる一対の突 壁部 と
(同構成6-⑩)、
10 4-4g 前記一対の突壁部の各々に対して前記一対の突壁部が並ぶ方向におけ
る前記突壁部よりも外側に延出する一対の延出部とを有し(同構成6-
⑪、6-⑫)、
4-4h 前記カバー部材は、長尺状に形成された器具本体の一面に設けられた
収容凹部に前記 LED ユニットを収容した状態では、前記器具本体の長
15 手方向及び幅方向と直交する方向において前記一対の延出部の各々が前
記収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なっていることを特徴
とする(同構成6-⑬)
4-4i LED ユニット(同構成6-①)。
3 本件発明4-5関係
20 4-5a 長尺状に形成された器具本体と(同構成6-①)、
4-5b 前記器具本体に取り付けられる LED ユニットと(同構成6-①)、
4-5c 前記 LED ユニットに対して点灯電力を供給する電源装置とを備え(同
構成6-④)、
4-5d 前記器具本体の一面には、前記器具本体の長手方向に沿って収容凹部
25 が設けられており(同構成6-③)、
4-5e 前記電源装置は、前記 LED ユニットを前記器具本体に取り付けた状態
において前記収容凹部内に配置され(同構成6-⑤)、
4-5f 前記 LED ユニットは、複数の LED が実装された LED 基板と(同構成
6-④)、
4-5g 前記複数の LED が前記収容凹部の外側を向くようにして前記 LED 基
5 板を前記器具本体に取り付けるための取付部材と(同構成6-④)、
4-5h 乳白色のポリカーボネートからなり、かつ、前記複数の LED を覆うよ
うにして前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを有し(同構成6
-④)、
4-5i 前記カバー部材は、前記 LED ユニットを前記器具本体に取り付けた状
10 態で、前記器具本体の長手方向及び幅方向と直交する方向において前記
収容凹部の開口端縁と隙間が生じないように重なる延出部が設けられて
いることを特徴とする(同構成6-⑬)
4-5j 照明器具(同構成6-⑮)。
15 以 上
(別紙8の別添4)
乙 1 5 2 ( 特 開 2005-19299 号 公 報 ) の 図 1 ~ 3
【図1】
【図2】
【図3】
(別紙9)
本件特許権5関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権5
控訴人PIPMは、以下の特許権(本件特許権5)を有する。
特許番号 特許第5975400号
発明の名称 照明器具
出願日 平成25年1月17日(以下「本件出願日5」という。)
10 登録日 平成28年7月29日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲5の2)の特許請求の範囲請求項1に記載
のとおり(以下、同請求項記載の発明を「本件発明5」という。また、本件特許5
に係る願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書5」という。)
2 構成要件の分説
15 本件発明5をそれぞれ構成要件に分説すると、別添2「特許権5充足論一覧表」
の「構成要件」の「5A」~「5J」の各欄に記載のとおりである。
3 被控訴人の行為
(1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年3月1日から、被控訴人製品6
の製造、販売又は販売の申出をそれぞれ開始した。
20 被控訴人製品6について、別紙2物件目録記載の器具本体の型番、適合ユニット
の型番及び製品の形(型)の対応関係は、別添2「特許権5充足論一覧表」の「被
控訴人製品6」の各欄記載のとおりである(なお、灰色の塗り潰し部分は本件の対
象ではない。)。
さらに、被控訴人製品6に採用されるカバー部材には、被控訴人製品6-(3)に
25 代表される新カバー部材のタイプ、被控訴人製品6-(9)に代表される旧カバー部
材のタイプ及び被控訴人製品6-(3)に代表されるオプティカルタイプの3種類が
ある。
(2) 被控訴人製品6の構成
別添3「被控訴人製品6の構成(控訴人PIPMの主張)」記載の被控訴人製品6の
構成のうち、構成5a、e~g及びjについては、当事者間に争いがない。
5 また、被控訴人製品6について、控訴人PIPMが「反射部材」と主張する部位が器
具本体と一体であることは、当事者間に争いがない。
なお、上記以外の被控訴人製品6の構成については当事者間に争いがあるところ、
更に被控訴人製品6のうちトラフ形の製品の一部(別添2「特許権5充足論一覧表」
のうち黄色で塗り潰した欄の型番の製品。以下「片面白色形」という。)について
10 は、器具本体につき片面のみあらかじめ白色塗装されたカラー鋼板が用いられてい
ることから、被控訴人製品6全般についての構成の争いに加え、「白色塗装されて
いること」(構成5i)に関しても、争いがある。
4 構成要件の充足
被控訴人製品6が、別添2「特許権5充足論一覧表」の各構成要件欄に「○」が
15 付されている本件発明5の各構成要件を充足することについては、当事者間に争い
がない。構成要件の充足につき争いがあるのは、同一覧表に「争」の記載がある部
分である。
5 争点
(1) 本件特許権5関係の請求に固有の争点
20 ア 構成要件の充足性
(ア) 被控訴人製品6全般について
a 構成要件5B~D(反射部材)の充足性(争点1)
b 構成要件5D、H及びI(凹所)の充足性(争点2)
c 構成要件5H(延出部)の充足性(争点3)
25 (イ) 片面白色形について
構成要件5B(反射部材)及び5I(反射面)の充足性(争点4)
イ 均等論(争点5)(当審における控訴人PIPMの追加主張)
ウ 無効理由の有無
(ア) 無効理由1(旧iDシリーズ発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点
6)
5 (イ) 無効理由2(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争
点7)
(ウ) 無効理由3(ERK発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点8)
(2) 本件特許権1関係の請求と共通の争点
損害額(争点9)
10 第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件5B~D(反射部材)の充足性(争点1)
(控訴人PIPMの主張)
(1) 「反射部材」(構成要件5B~D)の意義
ア 本件発明5の構成要件5A、B及びCによると、特許請求の範囲の文言上、
15 「反射部材」は光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射するものと
して規定されているものの、「反射部材」が「器具本体」と物理的に区別されたも
のであるか否かという具体的構造は特定されていない。
また、構成要件5Cによると、反射部材は器具本体に「保持」されるものである。
「保持」とは、「保ちつづけること」、「一定の状態に支持すること。支持された
20 状態を保ち続けること。」などを意味する。すなわち、「保持」とは、一定の状態
の継続性に着目した用語であり、継続するための手段や態様を問うものではなく、
「継続」の主体と客体が別部材であることを要するといった具体的構成を特定する
ものではない。
したがって、本件発明5における「反射部材」(構成要件5B~D)は、光源ユ
25 ニットから放射される光を照明空間に向けて反射するという役割を担うものであっ
て、かつ、器具本体の一部であるか否かを問わず、器具本体との関係で一定の状態
を維持し続けているものであれば足りる。
イ 本件明細書5記載の実施例につき、「反射部材」が器具本体と別部材である
ことが示されているものと理解するとしても、特許発明の技術的範囲は実施例に限
定されるものではない。
5 そもそも、本件明細書5記載の実施例も、器具本体が保持筐体を介して反射部材
と一体化された照明器具を開示するものである。すなわち、本件明細書5において
は、器具本体と反射部材について、細かく分解していけば各部品に分かれることが
あっても、両者を一体として把握することが前提となっており、別部品であるか一
体成形されたものかを区別していない。
10 また、本件明細書5記載の反射部材と取付板とを溶接等で一体化し、更に取付板
を器具本体に一体化して反射部材を器具本体に一体化したとしても、凹所や延出部
に直接影響を与えるものではないため、これを用いた照明器具は、本件発明5の作
用効果をそのまま奏することになる。すなわち、反射部材と器具本体とが一体であ
ろうが別部材であろうが、本件発明5の作用効果を奏することに違いはない。
15 なお、器具本体と反射部材が一体の場合において、反射部材に相当する部分であ
る「底板」を器具本体と理解することは何ら不合理なものではない。
(2) 構成要件の充足
被控訴人製品6は、製品の形ごとに、以下の図の黄色部分として特定したとおり、
いずれも、器具本体と一体となり、光を照射空間に反射し、器具本体に保持されて
20 いる「反射部材」を備えている。
ア 逆富士形
反射部材
10 イ 下面開放形
反射部材
ウ ウォールウォッシャー形
反射部材
エ トラフ形
反射部材
10 オ 保持筐体付き下面開放形
したがって、被控訴人製品6は、いずれも、本件発明5の「反射部材」(構成要
件5B~D)を備えている。
20 (被控訴人の主張)
(1) 「反射部材」(構成要件5B~D)の意義
本件発明5の「照明器具」(構成要件5D)は、「光源ユニット」(同5A)と、
「反射部材」(同5B)と、「器具本体」(同5C)とを「備え」るものと特定さ
れている。このような場合、光源ユニット、器具本体及び反射部材が最終的に照明
25 器具として一体に形成されるとしても、それぞれが別部材であると理解することが
通常であり、器具本体の一部の部位を「反射部材」として把握し直すことは不自然
である。
また、本件発明5の照明器具は、「前記光源ユニットと前記反射部材を保持する
器具本体とを備え」(構成要件5C)と特定されているところ、「保持」とは「た
もちつづけること。手放さずにもっていること」である。器具本体が別部材である
5 「光源ユニット」を当該意味で「保持する」一方で、「反射部材」について、器具
本体の一部の部位として一定の状態に保つという意味で「保持する」と解釈するこ
とは、場当たり的な解釈であり成り立たない。
本件明細書5では、一貫して、器具本体の一部である「反射板」と「反射部材」
とは区別した用語で特定されており、特許請求の範囲に記載された「反射部材」だ
10 け、「反射板」を含む用語と解釈することはできない。
さらに、控訴人が主張するような、一体の構成の一部部位を「器具本体」とし、
その余の部位を「反射部材」と解するような解釈は、当業者が使用する用語の理解
として成り立たない。
(2) 構成要件の非充足
15 被控訴人製品6は、いずれも、LEDユニットが一つだけであり、2個以上のLEDユ
ニットの間に設置されるべき「反射部材」は存在しておらず、器具本体の一部であ
る反射板部があるのみである。
したがって、被控訴人製品6は、いずれも、「反射部材」を備えないことから、
構成要件5B~Dを充足しない。
20 2 構成要件5D、H及びI(凹所)の充足性(争点2)
(控訴人PIPMの主張)
(1) 「凹所」(構成要件5D、H及びI)の意義
本件発明5に係る特許請求の範囲には、「凹所」に関して、「前記光源ユニット
と前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口する凹所が形成された照明器
25 具であって」(構成要件5D)、「前記凹所は、前記光源ユニット並びに前記開口
面と対向する内壁面が反射面となっていることを特徴とする」(同5I)との記載
がある。これらの記載から、「凹所」の構成について、光源ユニットと反射部材
(これを保持する器具本体を含む。)との間の「空間」であること、開口面と対向
する面は、光源ユニットから出射された光を「反射」する機能を持つことを読み取
ることができる。ここで、「凹所」において光源ユニットから出射された光を反射
5 する機能を持ち得るのは、光源ユニットに対向する内壁面と、開口面と対向する内
壁面だけである。また、本件明細書5の記載によると、構成要件5Iの構成を備え
なければ、凹所は、輝度の低下が発生する部位となってしまい、これによってカバ
ー部材の両端に暗い筋が生じてしまう。
したがって、本件発明5の「凹所」は、光源ユニット、光源ユニットに対向する
10 内壁面及び開口面に対向し光源ユニットから出射された光を反射する機能を持つ内
壁面、の三つから構成されるものである。
さらに、本件明細書5記載の実施例を参酌すると、下図のとおり、本件発明5の
①カバー部材(突壁部)
③内壁面(底面)
②内壁面(側板)
凹所
「凹所」は、①カバー部材の突壁部、②カバー部材の突壁部に対向する内壁面
25 (側板)、及び③開口面に対向する内壁面(底面)によって、構成されることにな
る。
(2) 構成要件の充足
ア 保持筐体付きの下面開放形以外の被控訴人製品6について
被控訴人製品6において、「反射部材」は器具本体と一体となっているところ、
被控訴人製品6(保持筐体付きの下面開放形以外のもの。本項において 、以下同
5 じ。)は、以下の逆富士形の例のように、カバー部材の突壁部、カバー部材の突壁
部に対向する内壁面(側板)及び開口面に対向する内壁面(底面)の存在を見て取
ることができる。
したがって、被控訴人製品6は、本件発明5の「凹所」(構成要件5D、H、I)
を備えている。
イ 保持筐体付きの下面開放形の被控訴人製品6について
20 以下のとおり、保持筐体付きの下面開放型の被控訴人製品6においても、カバー
部材の突壁部、カバー部材の突壁部に対向する内壁面(側板)及び開口面に対向す
る内壁面(底面)の存在を見て取ることができる。
したがって、上記被控訴人製品6も、本件発明5の「凹所」(構成要件5D、H、
I)を備えている。
(被控訴人の主張)
(1) 「凹所」(構成要件5D、H及びI)の意義
15 本件発明5は、構成要件5Dにおいて、「光源ユニット」と「反射部材との間」
において、「照明空間に向けて開口する」空間を「凹所」と称している。
(2) 構成要件の非充足
前記1(被控訴人の主張)のとおり、被控訴人製品6は、いずれも「反射部材」
を有しない以上、反射部材と光源ユニットとの間に形成される空間である本件発明
20 5の「凹所」を有しない。
また、被控訴人製品6の「光源ユニット」と「器具本体」(の一部である反射板
部)との間には隙間があるものの、この隙間は、いわば「遊びの隙間」であり、本
件発明5の「照明空間に向けて開口する凹所」(構成要件5D)を形成するもので
はない。
25 本件明細書5の記載によると、本件発明5において「凹所」が設けられる理由は、
取付板に設けられた差し込み部と光源ユニットとの干渉を避けるためである。しか
し、被控訴人製品6においては、器具本体の底面に、そもそも光源ユニットとの間
で干渉が生じる部位が存在しない。
以上のとおり、被控訴人製品6の上記「遊びの隙間」をもって、本件発明5の
「凹所」とする合理的根拠はない。
5 3 構成要件5H(延出部)の充足性(争点3)
(控訴人PIPMの主張)
(1) 「延出部」(構成要件5H)の意義
本件発明5に係る特許請求の範囲の記載によると、本件発明5の「延出部」に関
しては、「前記カバー部材は、前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口
10 面と重なる延出部を有し」(構成要件5H)とされている。
このような記載によると、「延出部」は、カバー部材の客体(構成)とされてお
り、カバー部材と別物品であるとは理解されない。本件明細書5の記載によっても、
「延出部」は、カバー部材の構成部分として記載されており、「LED基板を覆う」
部位とは区別されたものと理解することはできない。
15 (2) 構成要件の充足
被控訴人製品6は、カバー部材のいずれのタイプにおいても、以下のとおり、カ
バー部材は、その両端において、一対の突壁部が並ぶ方向における各突壁部よりも
外側に延出した部分を有しており、これは本件発明5の「延出部」(構成要件5H)
に相当する。
ア 新カバータイプ
取付部材
延出部
10 イ 旧カバータイプ
(下図は「被告製品6-(8)」とあるが、「被控訴人製品6-(9)」である。)
取付部材
延出部
ウ オプティカルタイプ
取付部材
延出部
(3) 「延出部」の構成により作用効果を奏すること
本件発明5における「見栄えの向上」という作用効果は、定量的に定められたも
のではなく、定性的なものである。したがって、本件発明5では、延出部における
輝度低下が少しでも抑えられていれば、その作用効果として十分である。
15 被控訴人製品6は、被控訴人の測定によっても、延出部に相当する構成を備える
ことにより当該延出部の輝度が高くなることが確認されている以上、見栄えの向上
に寄与しており、本件発明5の作用効果を奏している。
(被控訴人の主張)
(1) 「延出部」(構成要件5H)の意義
20 「延出部」とは、いわゆる特許用語として、「何らかの部材の一端から伸び出て
いる部分」を特定すべき用語と理解される。また、「延出部」との用語は、多くは
板状又は線状の部材を特定するために使用され、筒状ないし管状の部材も含め、部
材の端から形状を保って伸ばし出ている構成を特定するものである。換言すれば、
延出部は、カバー部材との「物品とは区別された端部」として「伸び出ている」部
25 分を特定するために用いられる用語と理解できる。
本件発明5は、まず、「透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部
材に取り付けられるカバー部材とを具備し」(構成要件5G)として、「カバー部
材」につき「発光素子を覆うように」これを内包する部材であることを特定した上
で、「前記カバー部材は、前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口面と
重なる延出部を有し」(同5H)と特定している。したがって、「延出部」(同5
5 H)は、「発光素子を覆う」部位でないものとして区別される部位をいうものと理
解される。
(2) 構成要件の非充足
被控訴人製品6のカバー部材は、突壁部を除き全てLED基板を内包する部材とし
て一体となっている。
10 したがって、被控訴人製品6は、本件発明5の「延出部」(構成要件5H)に相
当する構成を有しない。
(3) 作用効果の不奏功
被控訴人製品6は、LEDを内包するカバー部材の両端部を、突壁部よりも外側に、
上面側、縦面部及び下面部からなる断面略コの字状の半筒状に形成する(膨出させ
15 る)ことによって、光源ユニットと器具本体との間の隙間に生じ得る暗部に関する
光学的処理を行っている。したがって、カバー部材の端部により伸び出された「延
出部」によって課題を解決する本件発明5の課題解決原理を一切使用していない。
4 構成要件5B(反射部材)及び5I(反射面)の充足性(争点4)
(控訴人PIPMの主張)
20 本件発明5に係る特許請求の範囲の記載によると、「反射部材」(構成要件5B)
及び「反射面」(同5I)が光を反射する方法について、塗装方法等による限定は
設けられていない。
被控訴人製品6に用いられている鋼材は、銅等と同じく50~60%の反射率を有す
る以上、片面白色形についても、その内壁面は反射面となっている。したがって、
25 片面白色形も、「光を照明空間に向けて反射する反射部材」(構成要件5B)及び
「反射面」(同5I)を備えているといえる。
(被控訴人の主張)
本件明細書5では、単なる「鋼板」と「白色塗装などで反射面とする」部位とを
分けて説明されている。
また、照明器具の分野において、メタリックな鏡面仕上げをした鋼板や、白色に
5 塗装した鋼板を「反射面」と呼ぶことはあっても、ただの灰緑色の鋼板を「反射面」
と判断する当業者はいない。さらに、片面白色形の底面の反射率は40%弱であり、
照明装置の分野において「反射面」と評価され得るものではない。
したがって、片面白色形は、「反射部材」(構成要件5B)及び「反射面」(同
5I)の構成を有しない。
10 5 均等論(争点5)
(控訴人PIPMの主張)
文言解釈として「反射部材」が器具本体と一体の部材である場合は含まれないと
しても、「反射部材」が「器具本体」と一体の部材か別部材かは「照明器具」とい
う完成品に係る本件発明5の非本質的部分である。この相違点の有無は本件発明5
15 の作用効果の同一性にも影響せず、置換可能である。
したがって、均等第1から第3要件は全て認められ、均等侵害が成立する。
(被控訴人の主張)
(1) 本件の先行技術(乙6)の第3実施形態の発明との関係での均等侵害の不成
立
20 ア 乙6は、収容凹部11の下面側は白色に塗装されている(乙6【 001
3】)。「器具本体1」は、「亜鉛めっき銅板を折曲して形成され」ているため、
別部材ではないが、控訴人PIPMが主張する均等にあっては差異点にならない。
イ 第1要件の不充足
差異点①(「反射部材」が「器具本体」と別部材であること)、差異点②(「延
25 出部」が「カバー部材」から外側に伸び出た部位で「発光素子」を覆う部位ではな
い)を無視すれば、乙6第3実施形態は、本件発明5と同一である。従来技術その
ままである構成であるから、第1要件を満たさない。
ウ 第4要件の不充足
控訴人PIPMは、LEDを内包する「収容凹部の幅方向の両側」の開口面と重なる
「膨出部」を有する被控訴人製品6に対して、均等論を主張するため、乙6第3実
5 施形態の発明によって、新規性欠如の無効理由を有することになり、均等論の第4
要件違反となる。
(2) 旧iD製品(乙24カタログ①、乙123カタログ②)との関係での均等侵
害の不成立
ア 第1要件の不充足
10 本件発明5は、前記差異点①(別体)を無視すれば旧iD製品と同一で、従来技
術そのものである。
なお、控訴人PIPMは旧iD製品には凹所がないと主張するが、0.5mm幅だと
開口面に相当しないというのは技術的裏付けのない感覚論であって理由がない。
イ 第4要件の不充足
15 被控訴人製品6のERK9396Wの器具本体とRAD493-2-3というカバー部材の組合せに
おいて「遊びの隙間」は1.1mmである(乙46)。
被控訴人製品6のような1.1mm幅の「遊びの隙間」に対し、その均等領域を
広げる場合、0.5mm幅の旧iD製品に係る発明と実質的に同一であることが明
らかであるから、第4要件を満たさない。
20 (3) ERK発明(乙276)との関係での均等侵害の不成立
ア 第1要件の不充足
本件発明5は、差異点③(「延出部」が「カバー部材」から外側に伸びだされた
部位で、「発光素子」を覆う部位ではない)を無視すれば、型番ERK8986Wの照明器
具(以下「ERK製品」という。)に係る発明(以下「ERK発明」という。)と同一で、
25 そのものである。
イ 第4要件の不充足
控訴人PIPMは、被控訴人製品6のカバー部材のLED基板を内包するカバー部材
の部位であり、中空の膨出部にすぎない構成を本件発明5の「延出部」に相当する
と主張してきたものであり、控訴人PIPMが主張する均等論は、第4要件を満たさな
い。
5 6 無効理由1(旧iDシリーズ発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点
6)
(被控訴人の主張)
(1) 無効理由1-1及び1-2
ア 本件発明5に係る特許請求の範囲の記載の解釈につき、控訴人PIPMの主張を
10 前提とすると、本件特許5には以下の無効理由が存在する。
すなわち、控訴人パナソニックは、本件出願日5以前である平成24年11月に
発行された同社のカタログ2冊(乙24、123。以下、それぞれ「本件カタログ
5-①」、「本件カタログ5-②」という。)において、「一体型LEDベースライト
iDシリーズ」という名称の各製品(以下「旧iDシリーズ製品」という。)を掲
15 載し、同年12月、その販売を開始した。本件カタログ5-①及び5-②は、旧i
Dシリーズ製品の販売に合わせて、遅くとも同月には頒布されたものである。
本件カタログ5-①及び5-②には、旧iDシリーズ製品に係る発明(以下「旧
iDシリーズ発明」という。)の構成が示されているところ、これによると、以下
のとおり、旧iDシリーズ発明の構成は、本件発明5と同一である。
20 そうすると、本件発明5は、本件出願日5前に日本国内において頒布された刊行
物に記載された発明であるから、本件特許5は、特許法29条1項3号に違反して
されたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123
条1項2号)。したがって、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権5を行使
することはできない(同法104条の3第1項。以下、本件カタログ5-①を引用
25 例とする新規性欠如の無効理由を「無効理由1-1」と、本件カタログ5-2②を
引用例とする新規性欠如の無効理由を「無効理由1-2」という。)。
イ 旧iDシリーズ発明の構成
本件カタログ5-①記載の旧iDシリーズ製品の構成は、下図のとおりである。
凹所
反射部材
発光素子/基板/取付部材
延出部
器具本体
カバー部材
光源ユニット
凹所 内壁面が反射面(白色塗装)
これによると、当業者は、旧iDシリーズ発明の構成として、以下の発明特定事
項を読み取ることができる(本件カタログ5-②からも同様である。)。
25 5A’-1 光を放射するLEDライトバーユニットと、
5B’-1 前記LEDライトバーユニットから放射される光を照明空間に向けて反射す
る器具本体の反射板部(反射部材)と、
5C’-1 光を放射する LEDライトバーユニットと器具本体の反射板部とを有する
(保持する)器具本体とを備え、
5D’-1 前記LEDライトバーユニットと前記反射板部との間に、前記照明空間に向
5 けて開口する凹所が形成されたベースライトであって、
5E’-1 前記LEDライトバーユニットは、基板に実装された複数の発光素子と、
5F’-1 前記基板が取り付けられる取付部材と、
5G’-1 透光性を有し且つ発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けられる
カバー部材とを具備し、
10 5H’-1 前記カバー部材は、前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口
面と重なる延出部を有し、
5I’-1 前記凹所は、前記LEDライトバーユニット並びに前記開口面に対向する内
壁面が白色塗装された反射面となっていることを特徴とする
5J’-1 ベースライト
15 ウ 旧iDシリーズ発明の構成と本件発明5との対比
旧iDシリーズ発明の上記構成5A’-1~J’-1は、本件発明5の構成要件5A~J
と全く同一である。
エ 小括
したがって、本件発明5は、本件出願日5前に日本国内において頒布された刊行
20 物(本件カタログ5-①(無効理由1-1)又は本件カタログ5-②(無効理由1
-2))記載の発明であるから、本件特許5は特許法29条1項3号に違反してさ
れた無効なものである。
(2) 無効理由1-3
前記のとおり、旧iDシリーズ製品は、平成24年12月に発売された。
25 被控訴人は、平成25年1月30日、平成24年12月7日製造に係る旧iDシ
リーズ製品の逆富士形の器具本体(型番NNFK90515)及び同月25日製造に係るLED
ライトバーユニットを保有しているところ、当該製品に係る発明(以下「被控訴人
保有旧iDシリーズ発明」という。)の構成は、旧iDシリーズ発明と同一である。
したがって、前記(1)と同様の理由により、本件発明5は、本件出願日5に日本
国内において公然実施をされた発明といえることから、本件特許5は、特許法29
5 条1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきも
のである。
よって、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権5を行使することはできな
い。
(控訴人PIPMの主張)
10 (1) 本件カタログ5-①が平成24年12月に頒布されていたことは認める。
しかし、本件カタログ5-①は、控訴人パナソニックにおいて販売予定の製品の
概要を記載したものにすぎず、その目的及び記載内容からしても、本件発明5の
「凹所」のような内部構造に関する点までを詳細に把握し得るものではない。
したがって、本件カタログ5-①のみでは、本件発明5の構成と旧iDシリーズ
15 発明の構成とを比較し得ない。
(2) 旧iDシリーズ製品には、以下のとおり内壁面の底面が存在せず、「凹所」
に相当する構成が存在しない。
すなわち、まず、本件発明5の「凹所」の意義は、前記2(控訴人PIPMの主張)
(1)のとおりである。
20 他方、旧iDシリーズ製品においては、下図のとおり、カバー部材の突壁部の天
井側の部位が内壁面の側板方向に大きく湾曲していることによって、実質的にはカ
バー部材の突壁部と内壁面の側板が一体となっている。このため、旧iDシリーズ
製品では、「凹所」の開口面に対向しているのはあくまで「カバー部材の突壁部」
であって、底面、すなわち開口面に対向する「内壁面」が存在しない。
25 したがって、旧iDシリーズ製品は、本件発明5の「凹所」の構成のうち、開口
面に対向する内壁面(底面)の構成を有しておらず、本件発明5の「凹所」が存在
しない。
また、本件発明5の「反射面」(構成要件5I)は、カバー部材から出射された
光を反射するものであるから、カバー部材自身は反射面にはなり得ない。このため、
仮に旧iDシリーズ製品のカバー部材の突壁部が「内壁面の底面」にあたるとして
5 も、「反射面」(構成要件5I)にはなり得ないから、この点でも旧iDシリーズ
製品は「凹所」の構成を充たさない。
(3) 以上のとおり、少なくとも、旧iDシリーズ発明及び被控訴人保有旧iDシ
リーズ発明は本件発明5の構成要件5Iを満たさないことから、両発明の構成には
相違点がある。
10 7 無効理由2(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争
点7)
(被控訴人の主張)
(1) 無効理由2-1
ア 本件発明5と旧iDシリーズ発明との相違点
本件発明5と旧iDシリーズ発明との間には、本来、LEDライトバーユニットが
複数なのか単数なのか(本件発明5の構成要件5Aについて。相違点1)、器具本
体が別部材として反射部材を保持するのか、器具本体の一部として反射板部がある
のか(同5B及び5Cについて。相違点2)、照明空間に向けて開口する凹所と重
5 なる延出部を有するのか、カバー部材に向けて開口する凹所と重なる延出部を有す
るのか(同5Hについて。相違点3)という相違点が存在する。
イ 相違点に係る容易想到性
(ア) 被控訴人が平成24年7月に発行したカタログ(乙21。以下「被控訴人カ
タログ①」という。)には、スクエアベースライト・キャッツアイ製品(以下
10 「SBC製品」という。)が掲載されているところ、その記載内容から、SBC製品につ
いて、2個の光源ユニット(キャッツアイモジュール)、別部材である反射部材を
保持する器具本体及び照明空間に向けて開口する凹所の構成を読み取ることができ
る。
(イ) 旧iDシリーズ発明に関しては、本件カタログ5-①において、その光源ユ
15 ニットであるLEDライトバーユニットが様々な器具本体に取替可能であることがそ
の特徴として掲載されている。
他方、SBC製品は、同じく取り外し可能なキャッツアイモジュールをその光源ユ
ニットとする器具本体と、これとは別部材である反射部材の構成を開示しており、
旧iDシリーズ発明と機能的に共通である上、既にSBC製品の器具本体は実機とし
20 て市場に流通していたことから、SBC製品の器具本体の構成は周知慣用技術となっ
ていたものである。
したがって、上記相違点に係る構成につき、SBC発明の器具本体の構成を旧iD
シリーズ発明に適用し、本件発明5と同一の構成に想到することは容易である。
(ウ) 以上のとおり、本件発明5は、本件出願日5前に日本国内において頒布され
25 た刊行物に記載された発明である旧iDシリーズ発明に基づいて容易に発明をする
ことができたものであるから、本件特許5は、特許法29条2項に違反してされた
ものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123条1項
2号)。したがって、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権5を行使するこ
とはできない。
(2) 無効理由2-2及び2-3
5 SBC製品に関しては、被控訴人カタログ①のほか、いずれも本件出願日5前に頒
布された刊行物であるSBC製品の取扱説明書(乙119)及び公然実施をされた製
品(器具本体を含む照明器具全体の型番ERK8986W(乙120))が存在する。これ
らの刊行物(無効理由2-2)及び公然実施品(無効理由2-3)を副引用例とし
た場合も、前記(1)と同様である。
10 (控訴人PIPMの主張)
被控訴人が主張するクレーム解釈を前提としても、旧iDシリーズ発明に対して
特定の被控訴人製品である被控訴人カタログ①記載の器具本体を適用する動機付け
はない。そもそも、本件カタログ5-①には、「組み替え可能な電源内蔵型LEDユ
ニット」としか記載されておらず、被控訴人が主張するように器具本体との関係を
15 問わない旨を記載したものではないし、このような記載から当業者が旧iDシリー
ズ発明にSBC製品の器具本体の形状を適用することはない。
また、旧iDシリーズ発明は製品そのものであって、所定の文言により表現され
た発明はなく、被控訴人カタログ①記載の器具本体を適用することの示唆もなけれ
ば、本件カタログ5-①の具体的課題等も記載されていない。
20 したがって、本件発明5は、本件カタログ5-①を主引用例とし、これに被控訴
人カタログ①を適用することによって容易に想到し得るものではない。無効理由2
-2及び2-3についても同様である。
8 無効理由3(ERK発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点8)
(被控訴人の主張)
25 (1) 本件発明5に係る特許請求の範囲の記載の解釈につき、控訴人PIPMの主張を
前提とすると、本件特許5には以下の無効理由が存在する。すなわち、被控訴人は、
以下のとおり、本件出願日5以前に本件発明5と同一の構成となるERK製品を製造、
販売して、ERK発明を実施していた。このため、本件発明5は、本件出願日5前に
日本国内において公然実施をされた発明といえる。
したがって、本件特許5は、特許法29条1項2号に違反してされたものであり、
5 特許無効審判により無効にされるべきものである。そうである以上、控訴人PIPMは、
被控訴人に対し、本件特許権5を行使することができない。
(2) 公然実施
ERK製品は、平成24年2月発行の被控訴人のカタログ(乙35。以下「被控訴
人カタログ②」という。)に掲載されており、本件出願日5前から、ERK発明は、
10 公然実施をされていたものである。
実 際、 被控訴人 は 、 ERK製品を 、物件名 「大分大学(医病) 病棟新営(モ デ ル
分)」の案件において、同年6月4日を着日として実機2台を納品するなど、同年
中に多くのERK製品を出荷した。
(3) ERK発明の構成等
15 ア ERK発明の構成は、以下のとおりである。
5A’-3 光を放射する光源ユニットと、
5B’-3 前記光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射部
材と、
5C’-3 前記光源ユニットと前記反射部材を保持する器具本体とを備え、
20 5D’-3 前記光源ユニットと前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口
する凹所が形成された照明器具であって、
5E’-3 前記光源ユニットは、基板に実装された1乃至複数の発光素子と、
5F’-3 前記基板が取り付けられる取付部材と、
5G’-3 透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けら
25 れるカバー部材とを具備し、
5H’-3 前記カバー部材は、前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口
面と重なる延出部を有し、
5I’-3 前記凹所は、前記光源ユニット並びに前記開口面と対向する内壁面が反
射面となっていることを特徴とする
5J’-3 照明器具。
5 イ ERK発明の上記各構成は、本件発明5の各構成要件と一致する。したがって、
ERK発明は本件発明5と同一であり、本件発明5は、本件出願日5前に日本国内に
おいて公然実施をされた発明である。
(控訴人PIPMの主張)
(1) 公然実施をされたとはいえないこと
10 被控訴人カタログ②において、SBC製品は、現に発売しているのではなく、あく
まで発売予定として掲載されているのみである。このような被控訴人カタログ②の
記載から公然実施の事実を認めることはできない。また、被控訴人は、自身の販売
管理システムに基づき平成24年中に多くのERK製品が納品されたとするが、被控
訴人作成の内部資料にすぎず、その信用性は著しく低い。
15 以上によると、ERK発明が公然実施をされたとはいえない。
(2) 相違点の存在
ア ERK製品が「凹所」(構成要件5D及びI)を有しないこと
本件発明5における「凹所」は、光源ユニットと反射部材との間に形成される空
間を指す(構成要件5D)。これに対し、被控訴人が凹所として特定するERK製品
20 の箇所は、器具本体の側面と反射部材との間に形成されている空間である。
したがって、ERK製品は本件発明5の「凹所」に相当する構成を備えておらず、
この点が本件発明5とERK発明との相違点となる。
イ ERK製品が「延出部」(構成要件5H)を有しないこと
本件発明5の「延出部」(構成要件5H)は、本件明細書5の記載によると、凹
25 所内壁面で反射された光が延出部を通して照明空間へ出射されるように、凹所の開
口面に重なってこれを隠している構成である。これに対し、ERK製品は、下図のと
おり、照明器具に光源ユニットを取り付けたとき、器具本体の配置されるL字金具
がカバー部材のストッパーとしての役割を果たすことから、凹所の開口端縁と光源
ユニットとの間には意図的に設けられた隙間(下図の「隙間A」)が存在する。
このため、ERK製品のカバー部材は、凹所の開口面に重なってこれを隠すもので
はない。そうである以上、ERK発明は、本件発明5の「前記カバー部材は、前記取
付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口面と重なる延出部を有し」(構成要件
15 5H)との構成を備えておらず、本件発明5とERK発明とは、この点で相違する。
また、ERK製品は、上記隙間が設けられているため、「カバー部材の両端に暗い
筋が生じ難くなり、その結果、従来例に比べて見栄えの向上を図ることができる」
という本件発明5の作用効果を奏しない。
ウ 以上のとおり、本件発明5とERK発明には複数の相違点が存在するから、両
20 者は同一の発明とはいえない。
9 損害額(争点9)
(控訴人PIPMの主張)
別紙5「本件特許権1関係の請求に関する事実及び理由」の第2の17(控訴人
PIPMの主張)のとおりである。
25 (被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件発明5について
(1) 本件発明5の技術的意義
本件特許権5に係る特許請求の範囲及び本件明細書5には、次の記載がある。
5 ア 技術分野
本件発明5は照明器具に関する(【0001】)
イ 背景技術
従来の照明器具は、横長且つ長尺状に形成された器具本体と、係止部材を用いて
器具本体に取り付けられる光源部とを備え、器具本体の略中央部には光源部を収容
10 するための収容凹部が全長に亘って設けられ、光源部は、器具本体と同様に横長且
つ長尺状に形成された取付部材と、複数の発光ダイオード(LED)がそれぞれ実装
されて取付部材の下面に取り付けられる複数の基板と、複数の基板を覆うようにし
て取付部材に取り付けられるカバー部材とを有する(【0002】~【000
4】)。
15 ウ 発明が解決しようとする課題
従来例では、カバー部材の長手方向に沿った側端部と、器具本体の収容凹部の側
壁との間に隙間が空いているため、カバー部材及び器具本体の側板部(収容凹部の
外側の部分)の輝度に比べて、前記隙間の部分の輝度が著しく低下してしまい、カ
バー部材の両脇に暗い筋が生じて見栄えが良くないという問題があったところ、従
20 来例に比べて見栄えの向上を図ることを目的とする(【0004】【0005】)。
エ 課題を解決する手段等
上記目的を達成するために本件発明5の構成からなる照明器具を採用したもので
ある(請求項1、【0006】)。
オ 本件発明の作用、効果
25 本件発明によると、発光素子から放射されてカバー部材の内部を導光される光が、
光源ユニットと前記反射部材との間に形成された凹所へ出射されると、凹所の内壁
面で反射され、カバー部材の延出部を通して照明空間へ出射されるので、凹所(延
出部)における輝度の低下が抑えられ、カバー部材の両端に暗い筋が生じ難くなり、
その結果、従来例に比べて見栄えの向上を図ることができる(【0009】)。
(2) 「反射部材」(構成要件5B~D)の意義
5 ア 特許請求の範囲の記載
本件特許権5に係る特許請求の範囲の記載によると、本件発明5の「照明器具」
は、「光を放射する光源ユニット」(構成要件5A)、「前記光源ユニットから放
射される光を照明空間に向けて反射する反射部材」(同5B)及び「前記光源ユニッ
トと前記反射部材を保持する器具本体」(同5C)を備え、「前記光源ユニットと
10 前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口する凹所が形成された」(同5
D)ものである。これによると、本件発明5の「照明器具」が備えるべき「光源ユ
ニット」(同5A)、「反射部材」(同5B)及びこれらを保持する「器具本体」
(同5C)とは、それぞれ別個独立に把握し得る構成として特定されているといえ
る。
15 また、「保持する」(同5C)は、「たもちつづけること、手放さずに持ってい
ること」(広辞苑第6版)との意味を有する。
上記「保持する」の意味が持つ「たもちつづける」との要素に着目すると、「た
もつもの」・「たもたられるもの」という主体・客体の関係性が含まれるものと理
解される。そうすると、構成要件5Cは、「器具本体」と「光源ユニット」及び
20 「反射部材」とが部材として別個独立であることを前提として、そのような「光源
ユニット」及び「反射部材」を「器具本体」が「たもつ」こと、すなわち「たもち
つづける」ことを定めるものと理解される。他方、「器具本体」と「光源ユニット」
又は「反射部材」につき、物理的には一体であるものの、機能ないし状態につき別
個独立のものとして把握し得る場合、その間に「たもつもの」・「たもたられるも
25 の」という関係性は成立しない。
もっとも、「たもちつづける」の語が含意する「状態の継続性」に着目すれば、
前者はもとより、後者の場合も、「光源ユニット」又は「反射部材」を「器具本体」
が「保持する」と理解することも、なお可能と思われる。
このため、特許請求の範囲の記載からは、「反射部材」(構成要件5B5~D)
につき、「器具本体」と一体のものを含むか否かは、明確とまでは必ずしもいえな
5 い。
イ 本件明細書5の記載
「反射部材」について、本件明細書5には、実施例として以下のような記載があ
る。
すなわち、「反射部材6」は、「複数…の光源ユニット3、複数…の点灯装置4、
10 取付板5」と共に、「点灯モジュール2」が「複数」備えるものである(【001
3】)。また、「点灯モジュール2」は、「器具本体1に対して着脱自在に取り付け
られる」ものであり 、「器具本体 1」と共に 、「照明器具」が備えるもの で あ る
(【0012】)。このような「反射部材6は、隣り合う光源ユニット3の間に生じ
る3箇所のスペースにそれぞれ配置される。これらの反射部材6は…一対の反射板
15 60と、各反射板60の上端から上向きに延出された一対の側板61と、各側板61の上端
から水平向きに突出する突板62とが、長方形状の金属板を曲げ加工することで一体
に形成されている(図2参照)。…取付板5に設けられている複数の差込部51にそれ
ぞれ差込片63が差し込まれることにより、取付板5に反射部材6が取り付けられる」
(【0027】)。この「取付板5は、鋼板などの金属板が矩形(正方形)に加工
20 されてなる。…4つの光源ユニット3は、長手方向に沿って互いに平行となり且つ
隣の光源ユニット3との間隔が何れも等しくなるように並べた状態で取付板5の下面
に固定される」(【0026】)。他方、「器具本体1は、図2及び図8に示すよう
に鋼板などの金属板により、下面が開口した矩形箱状に形成されている。この器具
本体1において、左右方向に対向する一対の側壁が下方に向かって外向きに傾斜し
25 ており、この傾斜した部分が反射板13を構成している。また、器具本体1において、
前後方向に対向する一対の側壁に、点灯モジュール2を固定するための固定片14が
切り起こして形成されている」(【0032】)。その上で、「取付板5に設けら
れるねじ挿通孔…に固定ねじ141が挿通され、各固定ねじ141が固定片14のねじ孔
140にそれぞれねじ込まれることにより、器具本体1内に収納された状態で点灯モジ
ュール2が固定片14に固定される」(【0033】)。
5 【図2】
このように、本件明細書5の実施例においては、反射部材6は、器具本体1から着
脱自在な点灯モジュール2を構成する部材であり、器具本体1とは部材として別個独
立のものであることを前提として、取付板5に取り付けられることによって、同じ
20 く取付板5に取り付けられた光源ユニット3と共に、点灯モジュール2を構成するも
のとして器具本体1に固定されるものとされている。すなわち、この実施例におい
ては、上記のような「器具本体」、「光源ユニット」及び「反射部材」の関係性を
もって、「器具本体」が「光源ユニット」と「反射部材」を「保持する」ものであ
ることが示されているものと理解される。
25 他方、本件明細書5には、器具本体と反射部材とが一体の部材であり、機能ない
し状態において別個独立のものとして把握し得る構成が本件発明5に含まれること
をうかがわせる具体的な記載はない。
ウ 小括
以上のような特許請求の範囲及び本件明細書5の各記載によると、本件発明5の
「反射部材」(構成要件5B~D)は、「器具本体」とは別個独立の部材であるこ
5 とを要すると解されるのであって、器具本体と一体の部材である場合も含まれると
解することはできない。
エ 控訴人PIPMの主張について
控訴人PIPMは、「保持」とは一定の状態の継続性に着目した用語であり、継続す
るための手段や態様を問うものではないこと、特許発明の技術的範囲は実施例に限
10 定されるものではないこと、本件明細書5記載の実施例も、器具本体と反射部材が
一体として把握されるものであること、溶接等により器具本体と反射部材とが一体
化したとしても、本件発明5の作用効果を奏することなどを指摘して、反射部材と
器具本体が一体の部材である場合も、「反射部材」を構成し得ると主張する。
しかし、特許請求の範囲及び本件明細書5の記載によると、「反射部材」につき
15 「器具本体」と別個独立の部材であることを要すると解されることは、上記のとお
りである。特許発明の技術的範囲が明細書記載の実施例に必ずしも限定されるもの
でないことは、一般論としてはそのとおりとしても、本件における上記解釈を左右
するものではない。
また、本件発明5の実施により各部材を取り付け、組み立てることによって一つ
20 の照明器具を構成する以上、取付け及び組立後の状態をもって「一体化」したもの
と評価ないし形容することは可能であるとしても、そのことは、各部材が部材とし
て一体であることを許容することを直ちには意味しない。
さらに、溶接等により器具本体と反射部材とが一体化したような場合、もともと
は器具本体と反射部材は別個独立の部材として存在していたのであるから、この場
25 合に本件発明5の作用効果を奏するとしても、本件発明5の「反射部材」につき器
具本体と一体の部材である場合を含むと解する根拠とはならない。
その他控訴人PIPMが縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する控訴人PIPM
の主張はいずれも採用できない。
2 争点6(無効理由2(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の
有無)について
5 事案に鑑み、まず、争点6(無効理由2(旧iDシリーズ発明を主引用例とする
進歩性欠如)の有無)について判断する。
(1) 本件発明5は、上記1(2)のとおり、「本件発明5の「反射部材」(構成要件
5B~D)は、「器具本体」とは別個独立の部材であることを要すると解されるの
であって、器具本体と一体の部材である場合も含まれると解することはできない」
10 から、この点で、旧iDシリーズ発明と相違する。
一方、控訴人PIPMは、旧iDシリーズ製品は、本件発明5の「凹所」の構成のう
ち、開口面に対向する内壁面(底面)の構成を有していないと主張するが、旧iD
シリーズ発明は、開口面と対抗する内壁面の全面が白色の塗装が施されて反射面と
なっていることが認められ(乙26)、さらに、以下の図のとおり、 カバー部材が
15 備える第1突壁部及び第2突壁部と当該両突壁部と対向する内壁面の側板との隙間
(間隔0.5mm)が存在すると認められる。そして、光はわずかな隙間であって
も通過する(漏れる)という性質に鑑みれば、隙間が存在しないもの(例えば「し
まりばめ」)以外の嵌め合いは「凹所」が存在すると解されるから、旧iDシリー
ズ発明は、開口面と対向する内壁面が反射面となっているといえる。
5 以上を踏まえると、本件発明5と旧iDシリーズ発明とは、以下の相違点で相違
するものの、その余の点では一致している。
(相違点) 本件発明5では、光源ユニットと反射部材を保持する器具本体とを
備える、すなわち、「反射部材」は「器具本体」とは別個独立の部材であるのに対
して、旧iDシリーズ発明では、LEDライトバーユニットと器具本体の反射板部
10 とを有する器具本体、すなわち、器具本体と反射板部は一体の部材である点。
(2) そこで、上記相違点について検討するに、上記1によると、本件発明5が解
決しようとする課題を解決する手段は、構成要件5H(前記カバー部材は、前記取
付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口面と重なる延出部を有し)及び構成要
件5I(前記凹所は、前記光源ユニット並びに前記開口面と対向する内壁面が反射
15 面となっていることを特徴とする)であると解されることに照らすと、反射部材を
器具本体と別体にするか一体成型するかは課題解決手段とは関係しない任意付加的
な事項であるといえるものであって、かかる点に阻害要因も認められない。
そうすると、当業者であれば、旧iDシリーズ発明において、相違点に係る本件
発明5の構成を備えることは、容易になし得ることである。
20 (3) 以上を踏まえると、本件発明5は、本件原出願日5(平成25年1月17日)
より前に日本国内において公然実施をされた旧iDシリーズ発明に基づいて、当業
者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許5は特許法29条2
項に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである。
したがって、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件特許権5を行使すること
25 ができない。
3 まとめ
以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人PIPMの本件特許権
5の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。 以 上
(別紙9の別添1)●(省略)●
別紙9の別添2 特許権5充足論一覧表
器具本体 専用ユニット型番 (RAD-) 逆富士形 下面開放形(埋込) 空調ダクト回避 ウォールウォッ
下面開放形 反射笠付形 白ルーバー形 トラフ形
枝番 電力 器具品番 (青はオプティカルタイプ) W:230 W:150 W:300 W:220 W:150 型 シャー形
ERK9585W ERK9585W
ERK9640W 533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, ERK9640W
(1) LEDベースライト 110Wタイプ 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW,
ERK9560W 701N/W, 710N/W, 711N/W ERK9560W
ERK9562W ERK9562W
ERK9819W 533NA/WA, 562NA/WA, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, 600N/W/WW, ERK9819W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, 701N/W, 710N/710W,
ERK9826W 711N/W ERK9826W
ERK9584W ERK9584W
ERK9635W ERK9635W
ERK9636W ERK9636W
ERK9820W 494NA/WA/WWA, 496NA/WA, 553D/N/W/WW, 564N/W/WW, ERK9820W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ 595D/L/N/W/WW, 596N/W, 603L/N/W/WW, 605N/W, 637L/N/W/WW,
ERK9637W 646W/WW, 647W/WW, 648W/WW, 661N/W/WW, 702N/W, 705N/W ERK9637W
ERK9845W ERK9845W
ERK9846W ERK9846W
ERK9847W ERK9847W
ERK9563W ERK9563W
被 ERK9638W 498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW, ERK9638W
控 (4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9639W
598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW,
ERK9639W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
訴 ERK9567W ERK9567W
人 ERK9566W ERK9566W
製 ERK9642W 599N/W, 607N/W, 634N/W ERK9642W
(5) LEDベースライト 20Wタイプ
品 ERK9641W ERK9641W
6 ERK9561W ERK9561W
533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W,
(6) LEDベースライト 110Wタイプ ERK9817W 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, ERK9817W
701N/W, 710N/W, 711N/W
498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW,
(7) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9818W 598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW, ERK9818W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
ERK9393W ERK9393W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ 527N/W, 528N/W, 533N/W, 534N/W
ERK9396W ERK9396W
ERK9306W ERK9306W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 502N/W/WW
ERK9309W ERK9309W
ERK9307W ERK9307W
(10) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 495N/W, 496N/W, 502N/W/WW, 503N/W
ERK9308W ERK9308W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9310W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 504N/W/WW ERK9310W
(12) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9311W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 499N/W, 500N/W, 504N/W/WW, 505N/W ERK9311W
ERK9474W ERK9474W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ 542N/W
ERK9475W ERK9475W
ERK9491W ERK9491W
(14) LEDベースライト 40Wタイプ (LEDユニット付きセット商品)
ERK9488W ERK9488W
5A 光を放射する光源ユニットと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
5B 前記光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射部材と, 争 争 争 争 争 争 争 争
5C 前記光源ユニットと前記反射部材を保持する器具本体とを備え, 争 争 争 争 争 争 争 争
5D
前記光源ユニットと前記反射部材との間に,前記照明空間に向けて開口する凹所が形成された 争 争 争 争 争 争 争 争
照明器具であって,
構 5E 前記光源ユニットは,基板に実装された1乃至複数の発光素子と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
成
要 5F 前記基板が取り付けられる取付部材と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
件
透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを具
5G ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
備し,
5H
前記カバー部材は,前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口面と重なる延出部を有 争 争 争 争 争 争 争 争
し,
争 争 争 争 争
5I
前記凹所は,前記光源ユニット並びに前記開口面と対向する内壁面が反射面となっていること 争
(「前記凹所」に関し (「前記凹所」に関し
争
(「前記凹所」に関し (「前記凹所」に関し
争
(「前記凹所」に関し
を特徴とする (「前記凹所」に関してのみ)
てのみ) てのみ)
(「前記凹所」に関してのみ)
てのみ) てのみ)
(「前記凹所」及び「反射面」)
てのみ)
5J 照明器具。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙9の別添3)
被控訴人製品6の構成(控訴人 PIPM の主張)
5a 光を放射する LED ユニットと(別紙3物件説明書構成6-①),
5 5b 前記 LED ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射
板と(同構成6-①),
5c 前記 LED ユニットと前記反射板を保持する器具本体とを備え(構成6
-①),
5d 前記 LED ユニットと前記反射板との間に,前記照明空間に向けて開口
10 する凹所が形成された照明器具であって(構成6-②),
5e 前記 LED ユニットは,基板に実装された複数の LED と(構成6-④),
5f 前記基板が取り付けられる取付部材と(構成6-④),
5g 乳白色のポリカーボネートからなり且つ前記 LED を覆うように前記取
付部材に取り付けられるカバー部材とを具備し(構成6-④),
15 5h 前記カバー部材は,前記取付部材よりも外側に延出して前記凹所の開口
面と重なる延出部を有し(構成6-⑫,6-⑭),
5i 前記凹所は,前記LEDユニット並びに前記開口面と対向する内壁面が
白色塗装されていることを特徴とする(構成6-⑮)
5j 照明器具(構成6-⑮)。
以 上
(別紙10)
本件特許権6関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権6
控訴人パナソニックは、以下の特許権(本件特許権6)を有する。
特許番号 特許第5498618号
発明の名称 照明器具
出願日 平成25年11月15日
10 分割の表示 特願2013―6626号の分割
原出願日 平成25年1月17日(以下「本件原出願日6」という。)
登録日 平成26年3月14日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲6の2)の特許請求の範囲請求項1に記載
のとおり(以下、同請求項記載の発明を「本件発明6」という。)
15 控訴人パナソニックは、令和3年10月14日付けで、訂正審判請求(訂正20
21−390168号。甲6001~6003)をし、特許庁は、令和 4年2月8
日付けで訂正認容の審決をした(甲6004)。
控訴人パナソニックは、令和4年5月9日付けの訴え変更申立書(特許6)によ
り、請求原因を本件発明6から、訂正後の本件発明6(以下、同訂正を「本件訂正
20 6」と、訂正後の請求項1の発明を「本件訂正発明6」と、また、訂正後の本件特
許6に係る願書に添付した明細書及び図面を「本件訂正明細書6」という。)に変
更した。
2 構成要件の分説
本件訂正発明6を構成要件に分説すると、次のとおりである(下線部は訂正箇所
25 である。)。
【請求項1】
6A 光を放射する光源ユニットと、
6B 前記光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射部材
とを備え、
6C 前記光源ユニットと前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口す
5 る凹所が形成された照明器具であって、
6D 前記光源ユニットは、基板に実装された1乃至複数の発光素子と、
6E 前記基板が取り付けられる取付部材と、
6F 透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けられ
るカバー部材とを具備し、
10 6G 前記カバー部材は、主部と、
6H 前記主部の幅方向における両端部より互いに並行するように前記照明空間
と反対側に突出した第1突壁部及び第2突壁部と、
6I 前記第1突壁部及び前記第2突壁部の各々から外側に延出して前記凹所の
開口面と重なる延出部とを有し、
15 6J 前記凹所は、少なくとも前記第1突壁部又は前記第2突壁部と対向する面
及び前記開口面と対向する面を含む内壁面が反射面となっていることを特徴とする
6K 照明器具。
3 被控訴人の行為
(1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年3月1日から、被控訴人製品6
20 の製造、販売又は販売の申出をそれぞれ開始した。
被控訴人製品6について、別紙2物件目録記載の器具本体の型番、適合ユニット
の型番及び製品の形(型)の対応関係は、別添2「特許権6充足論一覧表」の「被
控訴人製品6」の各欄記載のとおりである(なお、灰色の塗り潰し部分は本件の対
象ではない。)。
25 さらに、被控訴人製品6に採用されるカバー部材には、被控訴人製品6-(3)に
代表される新カバー部材のタイプ、被控訴人製品6-(9)に代表される旧カバー部
材のタイプ及び被控訴人製品6-(3)に代表されるオプティカルタイプの3種類があ
る。
(2) 被控訴人製品6の構成
被控訴人製品6の構成について、控訴人パナソニックの主張は別添3「被控訴人
5 製品6の構成(控訴人パナソニックの主張)」記載のとおりであり、被控訴人の主
張は別添4「被控訴人製品6の構成(被控訴人の主張)」記載のとおりである。
なお、被控訴人製品6のうちトラフ形の製品の一部(別添2「特許権6充足論一
覧表」のうち黄色で塗り潰した欄の型番の製品。以下「片面白色形」という。)に
ついては、器具本体につき片面のみあらかじめ白色塗装されたカラー鋼板が用いら
10 れている。
4 構成要件の充足
被控訴人製品6が、別添2「特許権6充足論一覧表」の各構成要件欄に「○」が
付されている本件訂正発明6の各構成要件(ただし、構成要件6Jについては前記
2のとおり訂正した後のものとなる。)を充足することについては、当事者間に争
15 いがない。構成要件の充足につき争いがあるのは、同一覧表に「争」の記載がある
部分である。
5 争点
(1) 本件特許権6関係の請求に固有の争点
ア 構成要件の充足性
20 (ア) 被控訴人製品6全般について
a 構成要件6G及びHの充足性(争点1)
b 構成要件6Iの充足性(争点2)
(イ) 片面白色形について
構成要件6Jの充足性(争点3)
25 イ 無効理由の有無
(ア) 無効理由1(乙6発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点4)
(イ) 無効理由2(旧iDシリーズ発明の公然実施による新規性欠如)の有無(争
点5)
(2) 本件特許権2~4及び7関係の請求と共通の争点
損害額(争点6)
5 第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件6G及びHの充足性(争点1)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「主部」(構成要件6G)の意義
「主部」とは、一般に、「主要な部分」を意味する。また、本件訂正発明6の特
10 許請求の範囲において、カバー部材は、「透光性を有し且つ前記発光素子を覆うよ
うに…取り付けられる」ものとされている(構成要件6F)。したがって、本件訂
正発明6において、カバー部材に主として要求されている要素は、発光素子を覆う
と共に、当該発光素子からの光を拡散することである。
また、本件訂正明細書6には、「突壁部」(同6H)について、カバー部材に設
15 けられるものであり、カバー部材そのものとして形成され、取付部材に設けられた
側壁部と係合されることにより、カバー部材の取付部材に対する位置決めと、移動
規制を実現するという機能を有することが開示されている。
そうすると、「主部」(同6G)とは、カバー部材のうち、発光素子を覆うのに
本来的に必要な部分であり、その両端部において、照明空間の反対側に突出する部
20 位が「突壁部」に相当することとなる。
(2) 構成要件の充足
上記「主部」(構成要件6G)の意義及び「突壁部」(同6H)の機能を踏まえ
ると、被控訴人製品6のカバー部材において、発光素子を覆うのに本来的に必要な
部分は、下記図A記載の「主部」であり、これが本件訂正発明6の「主部」に相当
25 する。
また、その幅方向における両端部において、互いに並行するように照明空間の反
対側に突出する部位は、そのように突出することにより、カバー部材の取付部材に
対する位置決めと移動規制を実現するものであるから、本件訂正発明6の「突壁部」
に相当する。
5 【図A】
突壁部
突壁部
両端
延出部
延出部
主部
(被控訴人の主張)
15 (1) 被控訴人製品6のカバー部材の「主部」及び構成要件6Gの非充足
「主要な部分」という日本語の通常の意味からすれば、被控訴人製品6において
は、下記図Bのとおり、長尺状のカバー部材の幅方向断面の下面側で一体となって
いる連続的な弧状で長尺に形成された部分を「主部」と理解するのが通常であり、
これを恣意的に区切ることはできない。「発光素子を覆うように…取り付けられる」
20 (構成要件6F)という特定を踏まえても、控訴人パナソニックが「延出部」(図
A参照)と称する部位を「主部」から排除する理由はない。
したがって、被控訴人製品6のカバー部材の「主部」は、控訴人パナソニック主
張に係る図A記載の部分ではなく、図B記載の部分であるから、控訴人パナソニック
の主張を前提とする限り、被控訴人製品6は、本件訂正発明6の構成要件6Gを充
25 足しない。
【図B】
(2) 構成要件6Hの非充足
本件訂正発明6の「突壁部」は、「前記主部の幅方向における両端部より互いに
並行するように前記照明空間と反対側に突出した」ものであるところ(構成要件 6
10 H)、図B及び下記図Cのとおり、被控訴人製品6においては、「主部の幅方向にお
ける両端部」と「突壁部」とが離れており、「突壁部」が「主部の幅方向における
両端部より…突出」しているとはいえない。
したがって、被控訴人製品6は、構成要件6Hを充足しない。
【図C】
2 構成要件6Iの充足性(争点2)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「延出部」(構成要件6I)の意義
ア 「延出部」に関連する本件訂正発明6の構成要件6F~Iによると、カバー
25 部材は、「発光素子を覆うように取付部材に取り付けられる」部材とされていると
ころ(構成要件6F)、このようなカバー部材を構成するものとして 、「主部」
(同6G)、「第1突壁部」及び「第2突壁部」(同6H)並びに「延出部」(同
6I)が並列的に記載されている。
したがって、本件訂正発明6の「延出部」は、カバー部材の客体(構成)とされ
ており、LED基板を覆う部位と区別された部位でなければならないと理解すること
5 はできない。
イ 本件訂正明細書6においても、「延出部」は、カバー部材を構成する部分と
して記載されており、また、カバー部材の「主部」と一体形成され、かつ連続性を
持った構成であることが前提とされている。本件訂正発明6の発明の効果との関係
でも、「カバー部材の延出部を通して照明空間へ出射される」と記載されているこ
10 とから、「延出部」について、LED基板を覆うカバー部材と区別される別物品であ
ると理解することはできない。
ウ 以上のとおり、本件訂正発明6の「延出部」(構成要件6I)は、カバー部
材の構成の一部であり、主部と一体形成され、かつ連続性を持った部位であって、
LED基板を覆うカバー部材とは別物品と限定解釈することはできない。
15 (2) 構成要件の充足
被控訴人製品6のカバー部材は、以下のとおり、いずれのカバータイプにおいて
も、その両端において一対の突壁部が並ぶ方向における同突壁部よりも外側に延出
した部分すなわち「延出部」(構成要件6I)に相当する部位を有する。
ア 新カバータイプ
延出部
イ 旧カバータイプ
(下図は「被告製品6-(8)」とあるが、「被控訴人製品6-(9)」である。)
延出部
ウ オプティカルタイプ
延出部
10 (3) 作用効果を奏功すること
被控訴人が行った実験は、そもそも実験に求められる前提条件を欠くものであり、
被控訴人製品6が本件訂正発明6の作用効果を奏しないことを立証し得るものでは
ない。
(被控訴人の主張)
15 (1) 「延出部」(構成要件6I)の意義
「延出部」とは、通常、「何らかの部材の一端から伸び出ている部分」を特定す
べき用語と理解される。換言すれば、延出部は、カバー部材の物品とは区別された
端部として伸び出ている部分を特定するために用いられる用語である。
本件訂正発明6においては、まず、「透光性を有し且つ前記発光素子を覆うよう
20 に前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを具備し」(構成要件6F)として、
カバー部材が発光素子を覆うようにこれを内包する部材であることを特定した上で、
「前記第1突壁部及び前記第2突壁部の各々から外側に延出して前記凹所の開口面
と重なる延出部とを有し」(同6I)と特定している。
したがって、「延出部」(同6I)は、「発光素子を覆う」部位ではないものと
25 して区別されるものと理解できる。
(2) 構成要件の非充足
被控訴人製品6のカバー部材は、突壁部を除き全てLED基板を内包するものとし
て一体となっている。したがって、被控訴人製品6のカバー部材には、本件訂正発
明6の「延出部」(構成要件6I)に相当する部位は存在しないから、被控訴人製
品6は構成要件6Iを充足しない。
5 (3) 作用効果の不奏功
被控訴人の実験結果によると、被控訴人製品6は、光源ユニットと反射部材との
隙間である凹所に黒色アルミテープを貼付し反射面をなくした場合であっても、カ
バー部材の表面の輝度に一切の変化がない。すなわち、被控訴人製品6は、本件訂
正発明6の課題解決原理を一切使用していない。
10 3 構成要件6Jの充足性(争点3)
(控訴人パナソニックの主張)
本件訂正6後の特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明6は、「反射面」
(構成要件6J)に関し、内壁面が光を反射する方法について、塗装方法や塗装色
等による限定を設けていない。
15 被控訴人製品6に用いられている鋼材は、銅等と同様に50~60%の反射率を有し
ている以上、片面白色形についても、その内壁面は反射面となっていることから、
本件訂正発明6の「反射面」に相当する構成を有し、本件訂正発明6の構成要件6
Jを充足する。
(被控訴人の主張)
20 照明器具の分野において、メタリックな鏡面仕上げをした鋼板や白色に塗装した
鋼板を「反射面」と呼ぶことはあっても、ただの灰緑色の鋼板を「反射面」と判断
する当業者はいない。また、片面白色形の反射率は40%弱であり、照明装置の分野
において「反射面」と評価され得るものではない。
したがって、片面白色形は、「反射面」(構成要件6J)に相当する構成を有し
25 ない。
4 無効理由1(乙6発明を引用例とする新規性欠如)の有無(争点4)
(被控訴人の主張)
(1) 本件訂正発明6の「主部」、「突壁部」及び「延出部」に関し、控訴人の主
張を前提とする場合、本件特許6には以下の無効理由が存在する。
すなわち、本件訂正発明6は、特開2012―3993号公報(乙6)に第3の
5 実施形態として開示された発明(以下「乙6発明」という。)と同一である。
そうすると、本件訂正発明6は、特許出願前に日本国内において頒布された刊行
物に記載された発明であるから、本件特許6は、特許法29条1項3号に違反して
されたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123
条1項2号)。
10 したがって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権6を行使する
ことはできない(同法104条の3第1項)。
(2) 乙6発明の構成
乙6発明の構成は、以下のとおりである。
6A’-1 光を放射する光源部2と、
15 6B’-1 前記光源部2から放射される光を下方に向けて反射する白色の塗装が施
されて反射面をなす側板部11cとを備え、
6C’-1 前記光源部2と前記側板部11cとの間に、前記下方に向けて開口する収容
凹部11の側壁11bと光源部2のカバー部材24との間の隙間が形成された照明器具
であって、
20 6D’-1 前記光源部2は、基板に実装された複数の発光素子と、
6E’-1 前記基板が取り付けられる取付部材21と、
6F’-1 透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材21に取り付け
られるカバー部材24とを具備し、
6G’-1 前記カバー部材24は、主部と、
25 6H’-1 前記主部の上方の幅方向における両端より互いに並行するように前記下
方と反対側に突出した突壁部a及び突壁部bと、
6I’-1 前記突壁部a及び前記突壁部bの各々から外側に延出して前記収容凹部11
の側壁11bと光源部2のカバー部材24との間の隙間の開口面と重なる延出部とを
有し、
6J’-1 前記収容凹部11の側壁11bと光源部2のカバー部材24との間の隙間は、少
5 なくとも前記突壁部a又は前記突壁部bと対向する前記側壁11bが前記収容凹部
11の前面側の表面に白色の塗装が施されて反射面となっていることを特徴とす
る
6K’-1 照明器具。
(3) 本件訂正発明6と乙6発明との対比
10 乙6発明の上記構成6A’-1~6K’-1は、本件訂正発明6の構成要件6A~Kに相当
する。
(4) 小括
したがって、本件訂正発明6は、本件原出願日6の出願日前に頒布された刊行物
記載の発明である乙6発明と同一の発明であるから、本件特許6は特許法29条1
15 項3号に違反してされた無効なものである。
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「凹所の開口面と重なる延出部」(構成要件6I)の意義
ア 本件訂正6後の特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明6の「延出部」
(構成要件6I)と他の構成との位置関係については、「前記第1突壁部及び前記
20 第2突壁部の各々から外側に延出して前記凹所の開口面と重なる」(同6I)とさ
れている。また、「凹所」については、「照明空間に向けて開口する」とされてい
るところ(同6C)、「重なる」とは、一般に、「物の上に別の同じようなものが
のる」などの意味を有するものであることから、「凹所の開口面と重なる」とは、
照明空間側から見て、カバー部材の延出部が、凹所の開口面を覆うような位置関係
25 にあることをいうものと理解できる。
イ 本件訂正明細書6の記載によると、乙6は従来技術として挙げられており、
乙6発明では、カバー部材の長手方向に沿った側端部と、器具本体の収容凹部の側
壁との間に隙間が空いてしまうことから、この隙間部分に暗い筋が生じてしまい、
見栄えが良くないという課題が存在したところ、延出部を凹所の開口面と重ならせ
るという構成を採用してこの課題を解決したのが本件訂正発明6であり、これによ
5 り凹所の暗い筋が生じ難くなるという効果をもたらしている旨が記載されている。
このような本件訂正明細書6の記載を参酌すると、本件訂正発明6の特許請求の
範囲の「凹所の開口面と重なる延出部」とは、凹所の開口面を覆い、隙間が存在し
ないように設けられた部位をいう。
(2) 乙6発明が「凹所の開口面と重なる延出部」を有しないこと
10 乙6発明は、カバー部材と凹所相当部分の開口面との間に大きな隙間があり、カ
バー部材が凹所を隙間なく覆う構成にはなっていない。
また、乙6発明は、そもそも、施工作業の省力化と、収容スペースを確保して点
灯装置を効率的に配置することができる照明器具の提供とを目的とするものであり、
本件訂正発明6のように、凹所の輝度低下を防止して暗い筋を生じ難くするといっ
15 た課題には一切触れられていない。また、乙6発明には、発光素子から出射された
光が、拡散性を有する透光性カバー部材を透過して拡散され、その光が側板部や天
井面に向かうことが記載されているものの、これらは単に「照明の明るさ感を増す
ことができる」とされているだけであり、本件訂正発明6と同様の課題に着目した
ものではない。
20 (3) 小括
したがって、乙6発明は、本件訂正発明6における「凹所の開口面と重なる延出
部」(構成要件6I)を有しておらず、本件訂正発明6とは相違点を有する。そう
である以上、乙6発明と本件訂正発明6の構成は同一ではない。
5 無効理由2(旧iDシリーズ発明の公然実施による新規性欠如)の有無(争
25 点5)
(被控訴人の主張)
(1) 控訴人パナソニックは、平成24年12月、「一体型LEDベースライトiD
シリーズ」という名称の製品(以下「旧iDシリーズ製品」という。)を発売した。
旧iDシリーズ製品に係る発明(以下「旧iDシリーズ発明」という。)は、本
件訂正発明6の発明特定事項の全てに相当する構成を備えたものであり、本件訂正
5 発明6と同一の発明である。
(2) 旧iDシリーズ発明において、凹所の横幅が0.5mmであれば、「開口面
と対向する内壁面が白色塗装されていること」と相違しないとの控訴人パナソニッ
クの主張には、合理性がなく、侵害論の主張と整合性が取れない。
本件訂正発明6と旧iDシリーズ発明との間には、相違点が存在しない。したが
10 って、本件訂正発明6には、新規性欠如の無効理由がある。
(3) そうすると、本件訂正発明6は、本件原出願日6の出願日前に日本国内にお
いて公然実施をされた発明である旧iDシリーズ発明と同一の発明であるから、本
件特許6は、特許法29条1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判に
より無効にされるべきものである(同法123条1項2号)。
15 よって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権6を行使すること
はできない。
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 旧iDシリーズ製品が本件原出願日6の出願日前に販売されていたことは認
める。
20 しかし、以下のとおり、本件訂正発明6と旧iDシリーズ製品とは、「凹所」の
有無の点で、その構成に相違点がある。
(2) 「凹所」(構成要件6C、I及びJ)の意義
本件訂正6後の特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明6の「凹所」(構
成要件6C、I、J)は、その構成として、光源ユニットと反射部材(これを保持
25 する器具本体を含む。)との間の「空間」であること、同空間を形成する壁面のう
ち、少なくともカバー部材の第1突壁部又は第2突壁部と対向する内壁面は、光を
「反射」する機能が備えられていることという2点を要することを読み取ることが
できる。
上記のとおり、「凹所」は、「少なくとも」第1突壁部又は第2突壁部と対向す
る内壁面に光を反射する機能を有することからすると、反対に、第1突壁部又は第
5 2突壁部と対向しない面、すなわち「開口部」と対向する面についても、光を反射
する機能を備えていることが前提とされていると理解できる。
また、カバー部材の一部である第1突壁部及び第2突壁部は光を出射するもので
あり、他方、「反射面」はカバー部材から出射された光を反射するものである。
以上を踏まえると、本件訂正発明6における「凹所」は、①カバー部材である第
10 1突壁部又は第2突壁部と、②同第1突壁部又は第2突壁部に対向し反射面となる
内壁面(内壁面(側板))、及び③開口面に対向し反射面となり得る内壁面(内壁
面(底面))、の三つから構成されるものであるといえる(下図参照)。
①カバー部材
(突壁部)
③内壁面(底面)
②内壁面(側板)
凹所
25 (3) 旧iDシリーズ製品には「凹所」が存在しないこと
旧iDシリーズ製品では、下図のとおり、カバー部材の突壁部の天井側の部位が、
内壁面の側板方向に大きく湾曲しており、これによって、実質的には、カバー部材
の第1突壁部又は第2突壁部と内壁面の側板が一体となっている。
本件訂正6後の特許請求の範囲及び本件訂正明細書6の記載によると、本件訂正
発明6において、「内壁面の底面」となり得るのは、カバー部材から出射された光
を反射する機能を有することができるものだけであり、カバー部材自身は「内壁面
15 の底面」にはなり得ないと理解できる。
そうすると、旧iDシリーズ製品では、カバー部材の第1突壁部又は第2突壁部
が底面に相当する位置に設けられている結果、構成要件6Jが規定する「凹所」の
構成のうち③に相当する構成が存在しないこととなる。
これを踏まえると、旧iDシリーズ製品の構成は、以下のとおりとなる。本件訂
20 正発明6と旧iDシリーズ製品とは、本件訂正発明6が「凹部」を備える(構成要
件6C、I、J)のに対し、旧iDシリーズ製品は、これと異なる「開口する溝」
部を備える(構成6C'-2、6I’-2、6J’-2)点で相違する。
6A’-2 光を放射する光源ユニットと、
6B’-2 前記光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射部
25 材とを備え、
6C’-2 前記光源ユニットと前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口
する溝が形成された照明器具であって、
6D’-2 前記光源ユニットは、基板に実装された1乃至複数の発光素子と、
6E’-2 前記基板が取り付けられる取付部材と、
6F’-2 透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けら
5 れるカバー部材とを具備し、
6G’-2 前記カバー部材は、主部と、
6H’-2 前記主部の幅方向における両端部より互いに並行するように前記照明空
間と反対側に突出した第1突壁部及び第2突壁部と、
6I’-2 前記第1突壁部及び前記第2突壁部の各々から外側に延出して前記溝の
10 開口面と重なる延出部とを有し、
6J’-2 前記溝は、前記第1突壁部又は前記第2突壁部と対向する内壁面の側板
からなることを特徴とする
6K’-2 照明器具。
(4) 小括
15 以上のとおり、旧iDシリーズ製品は本件訂正発明6の「凹所」(構成要件6C、
I、J)に相当する構成を備えておらず、両発明の構成には相違点が存在する。そ
うである以上、本件訂正発明6と旧iDシリーズ発明は、同一とはいえない。
(5) 控訴審における主張
本件訂正6により、旧iDシリーズ製品の構成にない構成要件が加えられ、旧i
20 Dシリーズ製品が本件訂正発明6の発明の要旨を満たさないことがより明らかとな
り、原判決の公然実施を根拠とする無効理由が解消された。
6 損害額(争点6)
(控訴人パナソニックの主張)
別紙6「本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由」の第2の4(控訴人パ
25 ナソニックの主張)(1)及び(3)を引用する。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件訂正発明6について
(1) 本件訂正発明6の概要
5 本件訂正6後の特許請求の範囲及び本件訂正明細書6には、次の記載がある。
ア 技術分野
本件訂正発明6は、照明器具に関する(【0001】)。
イ 背景技術
従来の照明器具は、横長且つ長尺状に形成された器具本体と、係止部材を用いて
10 器具本体に取り付けられる光源部とを備え、器具本体の略中央部には光源部を収容
するための収容凹部が全長に亘って設けられ、光源部は、器具本体と同様に横長且
つ長尺状に形成された取付部材と、複数の発光ダイオード(LED)がそれぞれ実装
されて取付部材の下面に取り付けられる複数の基板と、複数の基板を覆うようにし
て取付部材に取り付けられるカバー部材とを有する(【0002】~【0005】 。
)
15 ウ 発明が解決しようとする課題
従来例では、カバー部材の長手方向に沿った側端部と、器具本体の収容凹部の側
壁との間に隙間が空いているため、カバー部材及び器具本体の側板部(収容凹部の
外側の部分)の輝度に比べて、前記隙間の部分の輝度が著しく低下してしまい、カ
バー部材の両脇に暗い筋が生じて見栄えが良くないという問題があったところ、従
20 来例に比べて見栄えの向上を図ることを目的とする(【0007】【0008】)。
エ 課題を解決する手段等
上記目的を達成するために本件訂正発明6の構成からなる照明器具を採用したも
のである(請求項1、【0009】)。
オ 本件発明の作用、効果
25 本件発明によると、発光素子から放射されてカバー部材の内部を導光される光が、
光源ユニットと前記反射部材との間に形成された凹所へ出射されると、凹所の内壁
面で反射され、カバー部材の延出部を通して照明空間へ出射されるので、凹所(延
出部)における輝度の低下が抑えられ、カバー部材の両端に暗い筋が生じ難くなり、
その結果、従来例に比べて見栄えの向上を図ることができる(【0012】)。
2 無効理由2(旧iDシリーズ発明の公然実施による新規性欠如)の有無(争
5 点5)
事案に鑑み、まず、旧iDシリーズ発明の公然実施による新規性欠如の有無(争
点5)について検討する。
(1) 公然実施
旧iDシリーズ製品が本件原出願日6の出願日前に販売されていたことは、当事
10 者間に争いがない。したがって、旧iDシリーズ発明は、本件特許6の出願前に公
然実施をされた発明といえる。
(2) 旧iDシリーズ発明の構成
ア 旧iDシリーズ発明が構成6A’-2、6B'-2、6D'-2~6H’-2及び6K’-2の構成
を備えるものであることは、当事者間に争いがない。
15 これによると、旧iDシリーズ発明の上記各構成は、本件訂正発明6の構成要件
6A、B、D~H及びKと同一といえる。
イ 「凹所」(構成要件6C、I及びJ)の意義
(ア) 特許請求の範囲の記載
本件訂正6後の特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明6の「凹所」は、
20 「前記光源ユニットと前記反射部材との間に、前記照明空間に向けて開口する」部
位として、本件訂正発明6の「照明器具」に「形成され」るものであり(構成要件
6C)、カバー部材が有する「前記第1突壁部及び前記第2突壁部の各々から外側
に延出」する「延出部」が前記「開口面と重なる」ものであり(同6I)、かつ、
「前記凹所は、少なくとも前記第1突壁部又は前記第2突壁部と対向する面及び前
25 記開口面と対向する面を含む内壁面が反射面となっていることを特徴とする」(同
6J)となっている。
(イ) 以上のような特許請求の範囲の記載を踏まえると、本件訂正発明6の「凹所」
(構成要件6C、I、J)は、①光源ユニットと反射部材の間に位置し、照明空間
に向けて開口し、②同開口面が延出部と重なっており、③第1突壁部又は第2突壁
部と対向する内壁面が反射面となっているものであることを要し、かつ、第1突壁
5 部及び第2突壁部と対向しない面である開口面と対向する面(内壁面(底面))に
ついても、光を反射する機能を備えていることを要するものと理解できる。
ウ 旧iDシリーズ発明について
(ア) 旧iDシリーズ発明のカバー部材(青色)と器具本体の反射部材(赤色)の
位置関係は、下図のとおりである。
これによると、旧iDシリーズ発明には、①光源ユニットを構成するカバー部材
(青色)と、器具本体の反射部材(赤色)の側板との間に位置し、照明空間に向け
て開口する開口部が存在し、②当該開口面は延出部と重なっており、③上記カバー
20 部材の突壁部と対向する器具本体の反射部材の側板の表面が反射面となっている空
間、すなわち上図の黄色着色部分の空間が存在し、④開口面と対抗する内壁面の全
面が白色の塗装が施されて反射面となっていることが認められる(乙26)。これ
を控訴人パナソニックの主張に係る「開口する溝」(構成6C’-2)というか否かは
さておき、当該空間は、本件訂正発明6の「凹所」(構成要件6C、I、J)に相
25 当する構成といえる。
このように旧iDシリーズ発明は、開口面と対抗する内壁面の全面が白色の塗装
が施されて反射面となっているところ、カバー部材が備える第1突壁部及び第2突
壁部と当該両突壁部と対向する内壁面の側板との隙間(間隔)が存在しさえすれば、
このような隙間の広狭にかかわらず、開口面に対向する面を特定することができる。
(イ) そして、被控訴人製品6の1.1mm~3.9mmの隙間を「凹所」に相当
5 するとの控訴人パナソニックの主張に照らしても、当事者間に争いがない旧iDシ
リーズ発明における第1突壁部及び第2突壁部と対向する内壁面の側板との0.5
mmの横幅の存在につき、「凹所」、すなわち「隙間」に該当しないとすることは
困難であるし、光はわずかな隙間であっても通過する(漏れる)という性質に鑑み
れば、0.5mmであることをもって隙間が存在しないと解釈することはできない。
10 そうすると、本件訂正発明6は、本件原出願日6(平成25年1月17日)より
前に日本国内において公然実施をされた発明といえるから、本件特許6は特許法2
9条1項2号に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべき
ものである。
したがって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権6を行使する
15 ことができない。
3 まとめ
以上より、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人パナソニックの本件特
許権6の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙10の別添1)●(省略)●
別紙10の別添2 特許権6充足論一覧表
器具本体 適合ユニット型番 (RAD-) 逆富士形 下面開放形(埋込) 空調ダクト回避 ウォールウォッ
下面開放形 反射笠付形 白ルーバー形 トラフ形
枝番 電力 器具品番 (青はオプティカルタイプ) W:230 W:150 W:300 W:220 W:150 型 シャー形
ERK9585W ERK9585W
ERK9640W 533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, ERK9640W
(1) LEDベースライト 110Wタイプ 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW,
ERK9560W 701N/W, 710N/W, 711N/W ERK9560W
ERK9562W ERK9562W
ERK9819W 533NA/WA, 562NA/WA, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, 600N/W/WW, ERK9819W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, 701N/W, 710N/710W,
ERK9826W 711N/W ERK9826W
ERK9584W ERK9584W
ERK9635W ERK9635W
ERK9636W ERK9636W
ERK9820W 494NA/WA/WWA, 496NA/WA, 553D/N/W/WW, 564N/W/WW, ERK9820W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ 595D/L/N/W/WW, 596N/W, 603L/N/W/WW, 605N/W, 637L/N/W/WW,
ERK9637W 646W/WW, 647W/WW, 648W/WW, 661N/W/WW, 702N/W, 705N/W ERK9637W
ERK9845W ERK9845W
ERK9846W ERK9846W
ERK9847W ERK9847W
ERK9563W ERK9563W
被 ERK9638W 498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW, ERK9638W
控 (4) LEDベースライト 40Wタイプ
ERK9639W
598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW,
ERK9639W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
訴 ERK9567W ERK9567W
人 ERK9566W ERK9566W
製 ERK9642W 599N/W, 607N/W, 634N/W ERK9642W
(5) LEDベースライト 20Wタイプ
品 ERK9641W ERK9641W
6 ERK9561W ERK9561W
533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W,
(6) LEDベースライト 110Wタイプ ERK9817W 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, ERK9817W
701N/W, 710N/W, 711N/W
498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, 597N/W/WW,
(7) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9818W 598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, 658W/WW, ERK9818W
659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
ERK9393W ERK9393W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ 527N/W, 528N/W, 533N/W, 534N/W
ERK9396W ERK9396W
ERK9306W ERK9306W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 502N/W/WW
ERK9309W ERK9309W
ERK9307W ERK9307W
(10) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 495N/W, 496N/W, 502N/W/WW, 503N/W
ERK9308W ERK9308W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9310W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 504N/W/WW ERK9310W
(12) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9311W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 499N/W, 500N/W, 504N/W/WW, 505N/W ERK9311W
ERK9474W ERK9474W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ 542N/W
ERK9475W ERK9475W
ERK9491W ERK9491W
(14) LEDベースライト 40Wタイプ (LEDユニット付きセット商品)
ERK9488W ERK9488W
6A 光を放射する光源ユニットと, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
6B 前記光源ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射部材とを備え, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
6C
前記光源ユニットと前記反射部材との間に,前記照明空間に向けて開口する凹所が形成された ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
照明器具であって,
6D 前記光源ユニットは,基板に実装された1乃至複数の発光素子と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
6E 前記基板が取り付けられる取付部材と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
透光性を有し且つ前記発光素子を覆うように前記取付部材に取り付けられるカバー部材とを具
6F ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
備し,
構
成 6G 前記カバー部材は,主部と, 争 争 争 争 争 争 争 争
要
件
6H
前記主部の幅方向における両端部より互いに並行するように前記照明空間と反対側に突出した 争 争 争 争 争 争 争 争
第1突壁部及び第2突壁部と,
6I
前記第1突壁部及び前記第2突壁部の各々から外側に延出して前記凹所の開口面と重なる延出 争 争 争 争 争 争 争 争
部とを有し,
6J
前記凹所は,少なくとも前記第1突壁部又は前記第2突壁部と対向する内壁面が反射面となっ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 争 ○
ていることを特徴とする
6K 照明器具。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙10の別添3)
被控訴人製品6の構成(控訴人パナソニックの主張)
5 6a 光を放射する LED ユニットと(別紙3物件説明書構成6-①),
6b 前記 LED ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する反射
板とを備え(同構成6-①),
6c 前記 LED と前記反射板との間に,前記照明空間に向けて開口する凹所
が形成された照明器具であって(同構成6-②),
10 6d 前記 LED ユニットは,基板に実装された複数の LED と(同構成6-
④),
6e 前記基板が取り付けられる取付部材と(同構成6-④)
6f 乳白色のポリカーボネートからなり且つ前記 LED を覆うように前記取付
部材に取り付けられるカバー部材とを具備し(同構成6-④),
15 6g 前記カバー部材は,主部と(同構成6-⑩)
6h 前記主部の幅方向における両端部より互いに並行するように前記照明空
間と反対側に突出した突壁部 a 及び突壁部 b と(同構成6-⑩,6-⑪),
6i 前記突壁部 a 及び前記突壁部 b の各々から外側に延出して前記凹所の開
口面と重なる延出部とを有し(同構成6-⑫,6-⑭),
20 6j 前記凹所は,少なくとも前記突壁部 a 又は前記突壁部 b と対向する内壁
面が白色塗装されていることを特徴とする(同構成6-⑮)
6k 照明器具(構成6-⑮)。
以 上
(別紙10の別添4)
被控訴人製品6の構成(被控訴人の主張)
5 6a’ 光を放射する1個の LED ユニットと,
6b’ 前記 LED ユニットから放射される光を照明空間に向けて反射する器具
本体の反射板部とを備え,
6c’ 前記 LED ユニットと前記器具本体の反射板部の間に,カバー部材のベ
ース部一部,配光制御部,及び主部両脇一部に向けて開口する前記器具本
10 体の幅方向で最大でその両脇に各数ミリ幅の遊びの隙間が形成された照明
器具であって,
6d’ 前記 LED ユニットは,基板に実装された複数の LED と,
6e’ 前記基板が取り付けられる取付部材と,
6f’-1 オプティカルタイプ以外のカバー部材の被告製品6にあっては,乳白
15 色のポリカーボネートからなり且つ前記 LED を覆うように前記取付部材
に取り付けられるカバー部材とを具備し,
6f’-2 オプティカルタイプのカバー部材の被告製品6にあっては,透明なポ
リカーボネートからなり且つ前記 LED を覆うように前記取付部材に取り
付けられるカバー部材とを具備し,
20 6g’ 前記カバー部材は,主部と,
6h’ 前記主部の幅方向における両端部に位置する配光制御部の幅方向にお
ける両端部に位置するベース部より互いに並行するように前記照明空間と
反対側に突出した突壁部 a 及び b と,
6i’ 前記突壁部 a 及び前記突壁部 b の各々から外側に膨出して前記遊びの隙
25 間の開口面に重なる主部の両脇一部,配光制御部,及びベース部を有し
6j’-1 片面白色のカラー鋼板使用のトラフ形3機種を除く被告製品6にあっ
ては,前記遊びの隙間は,前記 LED ユニット並びに前記開口面と対向す
る内壁面が白色塗装されていることを特徴とし,
6j’-2 片面白色カラー鋼板使用のトラフ形3機種にあっては,前記遊びの隙
間は,前記 LED ユニット並びに前記開口面と対向する内壁面がカラー鋼
5 板裏面の灰緑色であることを特徴とする
6k’ 照明器具
以 上
(別紙11)
本件特許権7関係の請求に関する事実及び理由
第1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より容易に認定できる事実)
5 1 本件特許権7
控訴人パナソニックは、以下の特許権(本件特許権7)を有する。
特許番号 特許第5486727号
発明の名称 光源ユニット及び照明器具
出願日 平成25年11月15日
10 分割の表示 特願2013―42062号の分割
原出願日 平成25年3月4日(以下「本件原出願日7」という。)
登録日 平成26年2月28日
特許請求の範囲 別添1特許公報(甲7の2)の特許請求の範囲請求項1に記載
のとおり(以下、同請求項記載の発明を「本件発明7」という。)
15 控訴人パナソニックは、令和3年10月14日付けで、訂正審判請求(訂正20
21-390166号。甲7001~7003)をし、特許庁は、令和4年3月8
日付けで訂正認容の審決をした(以下、同訂正を「本件訂正7」という。甲700
5)。
控訴人パナソニックは、令和4年5月9日付けの訴え変更申立書(特許7)によ
20 り、請求原因を本件発明7から、本件訂正7後の本件発明7(以下、本件訂正7後
の請求項1の発明を「本件訂正発明7-1」、 本件訂正7後の請求項3の発明を
「本件訂正発明7-3」といい、両者を併せて「本件訂正発明7」という。また、
本件訂正7後の本件特許7に係る明細書及び図面を「本件明細書7」という。)に
変更した。
25 2 構成要件の分説
本件訂正発明7をそれぞれ構成要件に分説すると、次のとおりである(下線部は
本件訂正7による訂正箇所である。)。
(1) 本件訂正発明7-1
7-1A 外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部
を有する長尺状の器具本体に対して、少なくとも一部が前記凹部内に収容された状
5 態で取り付けられる光源ユニットであって、
7-1B 光源と、
7-1C 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と、
7-1D 一面側に前記光源、他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状
の取付部材と、
10 7-1E 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタ
に着脱自在に接続される第2コネクタとを備え、
7-1F 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成され、一面に前記光源が取
り付けられる底面部と、前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して
前記光源と反対側で且つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで形
15 成され、
7-1G 前記電源装置は、前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで
形成される空間内に配置され、
7-1H 前記第1コネクタは、前記端子台における前記電源装置と対向する部
位から引き出された第1電線を介して前記端子台に接続され、
20 7-1I 前記第2コネクタは第2電線を介して前記電源装置に接続されており、
7-1J 前記器具本体に取り付けられた状態では、前記第1コネクタに接続さ
れた前記第2コネクタが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前
記底面部とで囲まれる空間内に収められることを特徴とする
7-1K 光源ユニット。
25 (2) 本件訂正発明7-3
7-3A 外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部
を有する長尺状の器具本体に対してと、少なくとも一部が前記凹部内に収容された
状態で前記器具本体に取り付けられる光源ユニットとを備え、
7-3B 前記光源ユニットは、光源と、
7-3C 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と、
5 7-3D 一面側に前記光源、他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状
の取付部材と、
7-3E 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタ
に着脱自在に接続される第2コネクタとを有し、
7-3F 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成され、一面に前記光源が取
10 り付けられる底面部と、前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して
前記光源と反対側で且つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで形
成され、
7-3G 前記電源装置は、前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで
形成される空間内に配置され、
15 7-3H 前記第1コネクタは、前記端子台における前記電源装置と対向する部
位から引き出された第1電線を介して前記端子台に接続され、前記第2コネクタは
第2電線を介して前記電源装置に接続されており、前記光源ユニットが前記器具本
体に取り付けられた状態では、前記第1コネクタに接続された前記第2コネクタが
前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前記底面部とで囲まれる空
20 間内に収められることを特徴とする
7-3I 照明器具。
3 被控訴人の行為
(1) 被控訴人は、業として、遅くとも平成26年3月1日から、被控訴人製品6
の製造、販売又は販売の申出をそれぞれ開始した。
25 被控訴人製品6について、別紙2物件目録記載の器具本体の型番、適合ユニット
の型番及び製品の形(型)の対応関係は、別添2「特許権7充足論一覧表」の「被
控訴人製品6」の各欄記載のとおりである(なお、灰色の塗り潰し部分は本件の対
象ではない。)。
(2) 被控訴人製品6の構成
控訴人パナソニックが主張する被控訴人製品6の構成は、別添3「被控訴人製品
5 6の構成(控訴人パナソニックの主張)」記載のとおりである。
4 構成要件の充足
構成要件の充足に争いがあるのは、被控訴人製品6-(14)につき、本件訂正発明
7-1において、別添2「特許権7充足論一覧表」に「争」の記載がある構成要件
7-1C、7-1D、7-1E、7-1H及び7-1Iであり、本件訂正発明7-
10 3において、別添2「特許権7充足論一覧表」に「争」の記載がある構成要件7-
3C、7-3D、7-3E及び7-3Hである。また、被控訴人製品6-(5)、(1
3)以外の被控訴人製品6につき、本件訂正発明7-1において構成要件7-1H、
本件訂正発明7-3において構成要件7-3Hで争いがある。
その余は、別添2「特許権7充足論一覧表」の「〇」の記載のとおり、当事者間
15 に争いがない。
5 争点
(1) 本件特許権7関係の請求に固有の争点
ア 構成要件の充足性
(ア) 構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び7-3Dの充足性(争点1)
20 (イ) 構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3Hの充足性(争点2)
(ウ) 構成要件7-1H及び7-3Hの充足性(争点3)
イ 無効理由(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点
4)
(2) 本件特許権2~4及び6関係の請求と共通の争点
25 損害額(争点5)
第2 争点に関する当事者の主張
1 構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び7-3Dの充足性(争点1)
(控訴人パナソニックの主張)
(1) 「電源装置がそれぞれ配置される」(構成要件7-1D及び7-3D)の意
義
5 特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明7の「電源装置」(構成要件7-
1D及び7-3D)は、板状の取付部材に「配置される」と共に、取付部材の底面
部と一対の側面部とで「形成される空間内に配置され」るものである。
「配置」とは、「それぞれの位置に割り当てること、割り当てられた位置・持場
・受持」であり、「位置」とは、「ある人・物・事柄が、他との関係もしくは全体
10 との関係で占める場所、あるいは立場」を意味する。
そうすると、本件訂正発明7の特許請求の範囲の文言上、電源装置が取付部材に
「固定」されていることは求められていない。むしろ、本件訂正発明7の構成要件
7-1A及び7-3Aは「取り付け」という文言を使用しているのに対し、同7-
1D及び7-3Dは、敢えて「配置」との文言を用いていることを踏まえると、特
15 許請求の範囲の記載は、物理的な固定を意味する「取付け」と最終的な割り当て場
所を意味し物理的固定を要しない「配置」とを使い分けている。
本件訂正発明7の作用効果との関係でも、端子台と電源装置との接続方法を容易
にし、事後的に機能を追加できるようにすることで作業性の向上を図るという本件
訂正発明7の作用効果にとって、端子台と電源装置との接続方法こそが重要であり、
20 電源装置の位置は、取付部材の底面部と一対の側面部とで形成される空間内に占め
る場所に割り当てられていれば足り、電源装置が器具本体又は取付部材のいずれに
固定されているかは本件訂正発明7の作用効果に影響しない。
したがって、本件訂正発明7の「電源装置が…配置される」(構成要件7-1D
及び7-3D)とは、取付部材の底面部と一対の側面部とで形成される空間内に占
25 める場所に割り当てられていることで足りる。
(2) 構成要件の充足
被控訴人製品6-(14)の電源装置は、以下のとおり、光源ユニット、電源装置及
び器具本体が本件明細書記載の順で配列されており、取付部材の底面部と一対の側
面部とで形成される空間に占める場所に割り当てられて存在している。
したがって、被控訴人製品6-(14)は、本件訂正発明7の構成要件7-1C、7
5 -3C、7-1D及び7-3Dを充足する。
また、仮に文言非侵害であったとしても、客観的には、被控訴人製品6-(14)の
電源装置は器具本体の凹部と取付部材の底面分との囲まれる空間に配置されており、
構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び7-3Dとの相違点は、非本質的部分
であり、作用効果は同一であり、置換可能性もあるので、均等侵害が成立する。
10 (被控訴人の主張)
(1) 特許請求の範囲の記載
ア 特許請求の範囲の記載によると、本件訂正発明7の「光源ユニット」は、
「光源ユニットであって」(構成要件7-1A。構成要件7-3Aは「光源ユニッ
トとを備え」)とされた上で、「前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と」
15 (同7-1C及び7-3C)、「一面側に前記光源、他面側に前記電源装置がそれ
ぞれ配置される板状の取付部材と」(同7-1D及び7-3D)、「前記電源装置
に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタに着脱自在に接続される第
2コネクタとを備え」(構成要件7-1E。構成要件7-3Eは「第2コネクタと
を有し」)とされている。したがって、その文理上、「光源ユニット」の構成は、
20 「取付部材」に「配置された」「電源装置」を備えていると評価できるものである
ことが必要である。
また、構成要件7-1D及び7-3Dは、「取付部材」につき、「板状の」とす
ることで「面としての広がりを有する薄い部材」として形状を特定し、そのような
「取付部材」の一面側に光源、他面側に電源装置を「配置」、すなわちそれぞれの
25 位置を割り当てることとしている。これによると、「電源装置」は、取付部材の他
面上に位置すると理解するのが通常であり、他面側の方向に存在すればよいと解釈
することは通常ではない。
イ 本件明細書7における本件訂正発明7の作用効果の記載は、第1コネクタ及
び第2コネクタに係る構成要件7-1A、7-3A、7-1E及び7-3Eに基づ
く作用効果を説明したものにすぎず、構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び
5 7-3Dに関する作用効果の充足性とは関連性がない。本件訂正発明7の作用効果
を奏するからといって、構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び7-3Dを充
足するとはいえない。
ウ 以上によると、本件訂正発明7の「電源装置が…配置される」(構成要件7
-1D及び7-3D)とは、「取付部材」の「他面」上に電源装置が位置すること
10 を意味する。
(2) 構成要件の非充足
被控訴人製品6-(14)の電源装置は、器具本体側に配置されており、取付部材の
他面側に配置されていないから、同製品の光源ユニットは本件訂正発明7の「電源
装置」(構成要件7-1C、7-3C、7-1D及び7-3D)を有しない。
15 したがって、被控訴人製品6-(14)は、本件訂正発明7の構成要件7-1C、7
-3C、7-1D及び7-3Dを充足しない。
控訴人パナソニックの均等侵害の主張は争う。
2 構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3Hの充足性(争点2)
(控訴人パナソニックの主張)
20 (1) 「コネクタ」(構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3H)の意
義
「コネクタ」とは、一般に、「連結器、継ぎ手」を意味し、本件訂正発明7の
「コネクタ」(構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3H)もこの意味
である。
25 (2) 構成要件の充足
被控訴人製品6-(14)において、端子台は、当初から物理的及び電気的に電源装
置と接続された状態で販売されているのではなく、ストリップゲージ等の接続部を
備える端子台に電源装置を接続することにより、端子台と電源装置との電気的接続
を実現している。この接続部は、端子台が備えているべき不可欠な部品ではない。
すなわち、被控訴人製品6-(14)において、同接続部は、あくまで電源装置との電
5 気接続を容易にするための連結器として用いられている。
また、電源装置に設置され端子台の接続部に接続させるために設けられた電源線
は、電源装置と端子台との「継ぎ手」として機能している。
したがって、被控訴人製品6-(14)の端子台に備えられた接続部及び電源装置側
における電源線がそれぞれ、本件訂正発明7の構成要件7-1E、7-3E、7-
10 1H及び7-3Hの「第1コネクタ」及び「第2コネクタ」に相当することから、
被控訴人製品6-(14)は構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3Hを充
足する。
また、仮に文言非侵害であったとしても、客観的には、被控訴人製品6-(14)は
第1コネクタ及び第2コネクタを備えており、構成要件7-1E、7-3E、7-
15 1H及び7-3Hとの相違点は、非本質的部分であり、作用効果は同一であり、置
換可能性もあるので、均等侵害が成立する 。
(被控訴人の主張)
(1) 「コネクタ」(構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3H)の意
義
20 照明器具の技術分野において、「第1コネクタ」と「第2コネクタ」との二つの
コネクタが特定されている場合、当業者は、これらの用語につき、「コネクタ」同
士が雄・雌の接続端となって連結する用語を意味するものと理解するのが通常であ
る。本件明細書7においても、一貫して「コネクタ」による接続については「第1
コネクタ」と「第2コネクタ」とが接続される構成が示されているところ、本件特
25 許7の出願当時の技術常識として、二つの「コネクタ」を用いる接続は、コネクタ
同士の接続である。
また、本件訂正発明7の構成要件7-1E及び7-3Eにおいて、「第1コネク
タ」は電源線が接続された「端子台からの」ものと特定されており、これは、端子
台への電源線差込口等での受入れを指す用語ではない。また、「第2コネクタ」は、
当該第1コネクタに対して「着脱自在に接続されるもの」と特定されており、これ
5 は、端子台に固定される電源装置への通常の電線を指す用語ではない。
(2) 被控訴人製品6-(14)の構成
被控訴人製品6-(14)では、電源装置と電源端子台との間の電気的な接続にコネ
クタを用いておらず、端子から直接接続されており、光源ユニットから受電用コネ
クターに接続されるのは、電源装置からの出力コネクターである。すなわち、被控
10 訴人製品6-(14)は、電源線及びアース線だけを端子台の一端の差込口に挿入して
接続されるものであり、電源線と端子台とが電源線差込口で着脱自在に接続されて
いるとはいえても、電源装置と端子台との間がコネクタにより着脱自在に接続され
ているとは評価できない。
(3) 構成要件の非充足
15 上記のとおり、被控訴人製品6-(14)は、端子台の一端の電源線差込口に電源線
を差し込む形で接続されているものであり、これを「コネクタ」と見ることはでき
ず、ましてや、電源線が接続された「端子台からの第1コネクタ」と、これに「着
脱自在に接続される第2コネクタ」の接続と見ることはできない。すなわち、被控
訴人製品6-(14)は、構成要件7-1E、7-3E、7-1H及び7-3Hの構成
20 を有しない。
したがって、被控訴人製品6-(14)は、構成要件7-1E、7-3E、7-1H
及び7-3Hを充足しない。
控訴人パナソニックの均等侵害の主張は争う。
3 構成要件7-1H及び7-3Hの充足性(争点3)
25 (控訴人パナソニックの主張)
被控訴人製品6においては、「給電用コネクタは、電源端子台における電源装置
と対向する部位から引き出された電線①を介して端子台に接続され」 「給電用コネ
、
クタは電線②を介して電源装置に接続されて」いるものであって、構成要件7-1
H及び7-3Hを充足する。
(被控訴人の主張)
5 構成要件7-1H及び7-3Hは、「第1コネクタは、前記端子台における前記
電源装置と対向する部位から引き出された第1電線を介して前記端子台に接続され」
とあるとおり、「電源装置と対向する方向から電線が引き出されている 必要がある
が、被控訴人製品6(1)~(4)、(6)~(12)及び(14)は、対向しない部位から電線を
引き出す(乙93の10の1~3、乙93の9、乙93の10の1~3、乙93の
10 10の1)から、構成要件7-1H及び7-3Hを充足しない。
4 無効理由(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争点
4)
(被控訴人パナソニックの主張)
(1) 旧iDシリーズ製品に係る発明(以下「旧iDシリーズ発明」という。)の
15 構成
旧iDシリーズ発明の構成は、以下のとおりである。
7A’ 外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部を有
する長尺状の器具本体に対して、少なくとも一部が前記凹部に収容された状態で取
り付けられる光源ユニットであって、
20 7B’ 光源と、
7C’ 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と、
7D’ 一面側に前記光源、他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の取
付部材と、
7E’ 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタに着
25 脱自在に接続される第2コネクタとを備え、
7F’ 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成され、一面に前記光源が取り付
けられる底面部と、前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して前記
光源と反対側で且つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで構成さ
れ、
7G’ 前記電源装置は、前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで形成
5 される空間内に配置され、
7H’ 前記器具本体に取り付けられた状態では、前記第1コネクタに接続された
前記第2コネクタが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前記底
面部とで囲まれる空間内に収められることを特徴とする
7I’ 光源ユニット。
10 (2) 旧iDシリーズ発明と本件訂正発明7の相違点について
被控訴人保有旧iDシリーズ製品は、器具本体側の端子台及び端子台からの第1
コネクタを紛失している。この点(構成7A’の欠如)をもって本件訂正発明7との
相違点とした場合でも、以下のとおり、同相違点に係る構成につき、被控訴人保有
旧iDシリーズ製品に係る発明(以下「 被控訴人保有旧iDシリーズ発明」とい
15 う。)から本件訂正発明7を想到することは容易であるから、本件特許7は、特許
法29条2項に違反してされたものであり、特許無効審判により無効にされるべき
ものであって(同法123条1項2号)、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、
本件特許権7を行使することはできない。
(3) 副引用例であるNNF44101製品について
20 控訴人パナソニックは、本件原出願日7前の平成24年7月9日頃、品番NNF441
01の製品(以下「NNF製品」という。)を製造、販売した。
NNF製品は、器具本体側に端子台及び第1コネクタを設けると共に、光源ユニッ
ト側に電源装置及び第2コネクタを設け、両者の電気的接続をとる技術を採用して
いる。このNNF製品は市場でその構成が広く知られていたことから、照明器具の技
25 術分野においては、器具本体の端子台及び端子台からの第1コネクタと、光源ユニ
ット側の電源装置からの第2コネクタを接続すべき構成は周知慣用技術であったと
いえる。同技術は、NNF製品の施工説明書等にも記載されている。
(4) 相違点に係る構成の容易想到性
被控訴人保有旧iDシリーズ製品を含む旧iDシリーズ製品は、電源装置を器具
本体側ではなく光源ユニット側に配置し、天井直付けの照明器具として器具本体に
5 設けた電源線の引き込み穴より電源線を引き込む構成であることから、器具本体側
と光源ユニット側との電気的接続をとるため両者を接続するという課題を有する。
被控訴人保有旧iDシリーズ製品には、光源ユニット側の電源装置及び電源装置か
らの第2コネクタが残存していることから、これに触れた当業者にとって、電源装
置及び第2コネクタと接続するために、NNF製品に見られる上記周知慣用技術を適
10 用し、本件訂正発明7と同一の発明を想到することは容易である。
仮に、端子台からの第1コネクタの向きについて、施工の際に不便という観点か
ら本件訂正発明7の「着脱自在」(構成要件7―1E、7―3E)に当たらないと
しても、そのような施工上の不便は端子台の向きを逆にすれば解消するに足り、こ
のことは容易に想到し得る。
15 (控訴人パナソニックの主張)
ア 旧iDシリーズ製品が本件原出願日7前に販売されていたこと、旧iDシリ
ーズ製品の構成が構成7A’~7D’及び7F’~7I’のとおりであることは認めるが、
旧iDシリーズ製品の第1コネクタは、電源装置と反対方向に向かうようにして設
けられている点に特徴を有するものであり、かかる点は相違点となる。
20 そもそも、NNF製品という一つの公然実施品について記載した取扱説明書 等から、
端子台及び端子台からの第1コネクタと光源ユニット側の電源装置からの第2コネ
クタとを接続するという構成が周知慣用技術であったと裏付けることはできない。
また、NNF製品の取扱説明書を見ても、同製品において端子台からの第1コネクタ
(電源用コネクタ)が電源装置の方向を向いて設けられているかは明らかではない。
25 前記のとおり、本件訂正発明7の構成要件7―1E、7―3Eは第1コネクタの
接続部が電源装置方向(第2コネクタ側)を向いて設けられていることを意味する
ところ、旧iDシリーズ製品にNNF製品の技術を適用しても、本件訂正発明7の構
成に至るものではない。
加えて、旧iDシリーズ製品は公然実施品であって、所定の文言により表現され
た発明ではなく、旧iDシリーズ製品にNNF製品に係る技術を適用することの示唆
5 もなければ、動機付けの前提としての具体的課題も明らかにされていない。
以上のとおり、本件訂正発明7は、旧iDシリーズ製品にNNF製品に係る技術を
適用することによって容易に想到し得るものではない。
4 損害額(争点5)
(控訴人パナソニックの主張)
10 別紙6「本件特許権2関係の請求に関する事実及び理由」の第2の4(控訴人パ
ナソニックの主張)(1)及び(3)のとおり。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
15 1 本件訂正発明7について
本件訂正7後の特許請求の範囲及び本件明細書7によると、本件訂正発明7は、
次のとおりのものと認められる。
(1) 技術分野
本件発明7は、光源ユニット及び照明器具に関する(【0001】)。
20 (2) 背景技術
従来、天井に取り付けられる天井直付け型の照明器は、天井に直付けされる器具
本体と、器具本体に対して着脱自在に取り付けられる光源部とを備え、天井裏に先
行配線された電源線が接続される端子台と、光源部に対して点灯電力を供給する電
源装置とが器具本体に取り付けられ、さらに端子台と電源装置の間が電線により接
25 続されている(【0002】)。
(3) 発明が解決しようとする課題
従来例では、照明器具を設置した後に機能を追加することができないため、機能
を追加するには、その機能を付加した照明器具を新たに設置することになる結果、
コストアップになるとともに作業工数が増加するという問題があったところ、作業
性を向上させた光源ユニット及び照明器具を提供することを目的とする(【000
5 4】【0005】)。
(4) 課題を解決する手段等
上記目的を達成するために本件訂正発明7の構成からなる照明器具を採用したも
のである(請求項1、【0006】)。
(5) 本件訂正発明7の作用、効果
10 本件訂正発明7によると、端子台に電気的に接続された第1コネクタと、電源装
置に電気的に接続された第2コネクタとを接続するだけで、端子台と電源装置とを
電気的に接続することができ、作業性が向上する(【0010】)。
2 無効理由1(旧iDシリーズ発明を主引用例とする進歩性欠如)の有無(争
点3)
15 事案に鑑み、まず、旧iDシリーズ発明の公然実施による進歩性欠如の有無(争
点3)について検討する。
(1) 旧iDシリーズ製品が本件原出願日7前に販売されていたこと、旧iDシリ
ーズ製品の構成が構成7A’~7D’及び7F’~7I’のとおりであることは、当事者間
に争いがない。
20 他方、旧iDシリーズ製品の構成を明らかにするために、控訴人パナソニックが
提出した報告書(甲28)によると、旧iDシリーズ製品における第1コネクタは、
電源装置と反対方向に向かうようにして設けられていると認められる。これらを踏
まえると、旧iDシリーズ発明の構成は以下のとおりであると認められる。
7A” 外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部を
25 有する長尺状の器具本体に対して、少なくとも一部が前記凹部内に収容された状態
で取り付けられる光源ユニツトであって、
7B” 光源と、
7C” 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と、
7D” 一面側に前記光源、他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の
取付部材と、
5 7E” 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタに
接続される第2コネクタとを備え、
7F” 前記取付部材は、長尺且つ矩形板状に形成され、一面に前記光源が取付
けられる底面部と、前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して前記
光源と反対側で且つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで形成さ
10 れ、
7G” 前記電源装置は、前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで形
成される空間内に配置され、
7H” 第1コネクタは、前記端子台における前記電源装置と反対方向に向かう
ように引き出された第1電線を介して前記端子台に接続され、
15 7I” 前記第2コネクタは第2電線を介して前記電源装置に接続されており、
7J” 前記器具本体に取り付けられた状態では、前記第1コネクタに接続され
た前記第2コネクタが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前記
底面部とで囲まれる空間内に収められることを特徴とする
7K” 光源ユニツト。
20 (2) 旧iDシリーズ発明の構成と本件訂正発明7-1の構成要件7-1A~D、
F~Iの対比
本件訂正発明7-1は、構成要件7-1H「前記第1コネクタは、前記端子台に
おける前記電源装置と対向する部位から引き出された第1電線を介して前記端子台
に接続され」る点が限定されている。これに対して、旧iDシリーズ発明は、「第
25 1コネクタは、前記端子台における前記電源装置と反対方向に向かうように」(7
H”)設けられている。したがって、本件訂正発明7-1と旧iDシリーズ発明と
は、本件訂正発明7-1では、「前記第1コネクタは、前記端子台における前記電
源装置と対向する部位から引き出された第1電線を介して前記端子台に接続され」
(7-1H)るのに対して、旧iDシリーズ発明では、第1コネクタは、前記端子
台における前記電源装置と反対方向に向かうようにして引き出された第1電線を介
5 して前記端子台に接続される点で相違し、その余の点では一致していると認められ
る。
(3) 容易想到性について
旧iDシリーズ発明における端子台から引き出される第1電線の向きは、現に採
用されている反対方向のほか、対向、直行が選択肢となり得るが、このような選択
10 肢は三者択一であって極めて限定的であるし、これらは当業者にとって自明の選択
肢にすぎない。
そうすると、旧iDシリーズ発明における端子台から引き出される第1電線の向
きを、反対方向に換えて、対向する位置にする程度のことは、当業者にとって容易
に想到可能であるといわざるを得ない。また、対向とすることによる効果も施工上
15 の不便の解消というものであって、当業者にとって自明のものであり、当業者が予
測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるということはできない。
(4) 控訴人パナソニックの主張について
控訴人パナソニックは、旧iDシリーズ発明製品は公然実施品であることから、
動機付けの前提としての課題も明らかにされておらず、旧iDシリーズ製品におい
20 て第1電線の向きを変更することは、容易に想到するものではないと主張するが、
当業者とは、本件訂正発明7-1の属する技術分野の出願時の技術常識を有し、研
究開発のための通常の技術的手段を用いることや材料の選択、設計変更等の通常の
創作能力を発揮できる者であることを踏まえると、端子台から引き出される第1電
線の向きという、せいぜい三者択一の選択肢の中から一を選択する程度のことは、
25 当業者の通常の創作能力の範囲内といわざるを得ない。
(5) 本件訂正発明7-3について
本件訂正発明7-1と本件訂正発明7-3との違いは、「光源ユニット」(7-
1K)に関する発明か、「照明器具」(7-3I)に関する発明かであって、その
他の基本的な構成要件は同一であるから、上記(1)~(4)については、本件訂正発明
7-3も同様に言え、本件訂正発明7-3も旧iDシリーズ発明の構成から容易想
5 到であったといえる。
(6) 小括
以上によると、本件訂正発明7は、本件原出願日7(平成25年3月4日)より
前に日本国内において公然実施をされた発明に基づき容易に想到できたといえるか
ら、本件特許7は特許法29条2項に違反してされたものであり、特許無効審判に
10 より無効にされるべきものといえる。
したがって、控訴人パナソニックは、被控訴人に対し、本件特許権7を行使する
ことができない。
2 まとめ
以上によると、その余の点について論ずるまでもなく、控訴人パナソニックの本
15 件特許権7の侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
以 上
(別紙11の別添1)●(省略)●
(別紙11の別添2) 特許権7充足論一覧表
器具本体 逆富士形 下面開放形(埋込) 空調ダクト回 ウォールウォッ
適合ユニット型番 (RAD-) トラフ形 下面開放形 反射笠付形 白ルーバー形
枝番 電力 器具品番 W:230 W:150 W:300 W:220 W:150 避型 シャー形
ERK9585W ERK9585W
ERK9640W 533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, ERK9640W
(1) LEDベースライト 110Wタイプ 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW,
ERK9560W 701N/W, 710N/W, 711N/W ERK9560W
ERK9562W ERK9562W
ERK9819W 533NA/WA, 562NA/WA, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W, 600N/W/WW, ERK9819W
(2) LEDベースライト 110Wタイプ 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, 701N/W, 710N/710W,
ERK9826W 711N/W ERK9826W
ERK9584W ERK9584W
ERK9635W ERK9635W
ERK9636W ERK9636W
ERK9820W 494NA/WA/WWA, 496NA/WA, 553D/N/W/WW, 564N/W/WW, ERK9820W
(3) LEDベースライト 40Wタイプ 595D/L/N/W/WW, 596N/W, 603L/N/W/WW, 605N/W, 637L/N/W/WW,
ERK9637W 646W/WW, 647W/WW, 648W/WW, 661N/W/WW, 702N/W, 705N/W ERK9637W
ERK9845W ERK9845W
ERK9846W ERK9846W
ERK9847W ERK9847W
被 ERK9563W ERK9563W
ERK9638W 498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW, ERK9638W
控 (4) LEDベースライト 40Wタイプ 597N/W/WW, 598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW,
ERK9639W 658W/WW, 659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W ERK9639W
訴 ERK9567W ERK9567W
人 ERK9566W ERK9566W
製 (5) LEDベースライト 20Wタイプ
ERK9642W 599N/W, 607N/W, 634N/W ERK9642W
品 ERK9641W ERK9641W
ERK9561W ERK9561W
6
533NA/WA, 562N/NA/W/WA, 563N/W, 572DA/NA/WA/WWA, 594N/W,
(6) LEDベースライト 110Wタイプ ERK9817W 600N/W/WW, 601N/W, 602N/W, 630N/W/WW, 636N/W/WW, 645W/WW, ERK9817W
701N/W, 710N/W, 711N/W
498NA/WA/WWA, 500NA/WA, 554N/W/WW, 566N/W/WW,
(7) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9818W 597N/W/WW, 598N/W, 604N/W/WW, 606N/W, 650N/W/WW, 657W/WW, ERK9818W
658W/WW, 659W/WW, 660N/W/WW, 703N/W, 706N/W
ERK9393W ERK9393W
(8) LEDベースライト 110Wタイプ 527N/W, 528N/W, 533N/W, 534N/W
ERK9396W ERK9396W
ERK9306W ERK9306W
(9) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 502N/W/WW
ERK9309W ERK9309W
ERK9307W ERK9307W
(10) LEDベースライト 40Wタイプ 493N/W/WW, 494N/W/WW, 495N/W, 496N/W, 502N/W/WW, 503N/W
ERK9308W ERK9308W
(11) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9310W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 504N/W/WW ERK9310W
(12) LEDベースライト 40Wタイプ ERK9311W 497N/W/WW, 498N/W/WW, 499N/W, 500N/W, 504N/W/WW, 505N/W ERK9311W
ERK9474W ERK9474W
(13) LEDベースライト 20Wタイプ 542N/W
ERK9475W ERK9475W
ERK9491W ERK9491W
(14) LEDベースライト 40Wタイプ (LEDユニット付きセット商品)
ERK9488W ERK9488W
外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部を有する長尺状の
7-1A 器具本体に対して,少なくとも一部が前記凹部内に収容された状態で取り付けられる光 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
源ユニットであって,
7-1B 光源と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-1C 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と, ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-1D 一面側に前記光源,他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の取付部材と, ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
本
件 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタに着脱自在に接続 被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-1E ○ ○ ○ ○ ○ ○
訂 される第2コネクタとを備え, その余:○ その余:○
正
発
明 前記取付部材は,長尺且つ矩形板状に形成され,一面に前記光源が取り付けられる底面
7 7-1F 部と,前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して前記光源と反対側で且 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで形成され,
|
1 前記電源装置は,前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで形成される空間内
7-1G ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
に配置され,
前記器具本体に取り付けられた状態では,前記第1コネクタに接続された前記第2コネ
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-1H クタが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前記底面部とで囲まれる ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
空間内に収められることを特徴とする
前記第1コネクタは,前記端子台における前記電源装置と対向する部位から引き出され 被控訴人製品6-(5)、(13):〇 被控訴人製品6-(5)、(13):〇 被控訴人製品6- 被控訴人製品6- 被控訴人製品6-
被控訴人製品6-(5)、(13):〇
7-1I その余:争 〇 ○ その余:争 (5)、(13):〇 (5)、(13):〇 (5)、(13):〇
た第1電線を介して前記端子台に接続され, その余:争
その余:争 その余:争 その余:争
7-1J 前記第2コネクタは第2電線を介して前記電源装置に接続されており, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
7-1K 光源ユニット。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
外部からの電源線が接続される端子台が底面部に取り付けられた凹部を有する長尺状の
7-3A 器具本体に対してと,少なくとも一部が前記凹部内に収容された状態で前記器具本体に ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
取り付けられる光源ユニットとを備え,
7-3B 前記光源ユニットは,光源と, ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-3C 前記光源に対して点灯電力を供給する電源装置と, ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
7-3D 一面側に前記光源,他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の取付部材と, ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
本
件
訂
正
7-3E 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記端子台からの第1コネクタに着脱自在に接続 ○
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
○ ○ ○ ○ ○
発 される第2コネクタとを有し, その余:○ その余:○
明
7
| 前記取付部材は,長尺且つ矩形板状に形成され,一面に前記光源が取り付けられる底面
3 7-3F 部と,前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に対して前記光源と反対側で且 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
つ前記底面部と交差する方向に突出する一対の側面部とで形成され,
7-3G 前記電源装置は,前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで形成される空間内 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
に配置され,
前記第1コネクタは,前記端子台における前記電源装置と対向する部位から引き出され
た第1電線を介して前記端子台に接続され,第2コネクタは第2電線を介して前記電源 被控訴人製品6-(5)、(13):〇 被控訴人製品6-(5)、(13):〇 被控訴人製品6- 被控訴人製品6- 被控訴人製品6-
被控訴人製品6-(5)、(13):〇
その余:争 ○ ○ その余:争 (5)、(13):〇 (5)、(13):〇 (5)、(13):〇
装置に接続されており、 その余:争
その余:争 その余:争 その余:争
7-3H
前記器具本体に取り付けられた状態では,前記第1コネクタに接続された前記第2コネ
被控訴人製品6-(14):争 被控訴人製品6-(14):争
クタが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付部材の前記底面部とで囲まれる ○
その余:○ その余:○
○ ○ ○ ○ ○
空間内に収められることを特徴とする
7-3I 照明器具。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
(別紙11の別添3)
被控訴人製品6の構成(控訴人パナソニックの主張)
5 7a 外部からの電源線が接続される電源端子台が底面部に取り付けられた凹
部を有する長尺状の器具本体に対して,少なくとも一部が前記凹部内に収
容された状態で取り付けられる LED ユニットであって(別紙3物件説明
書構成6-①,6-⑦,6-⑨),
7b LED と(同構成6-④),
10 7c 前記 LED に対して点灯電力を供給する電源装置と(同構成6-④),
7d 一面側に前記 LED,他面側に前記電源装置がそれぞれ配置される板状の
取付部材と(同構成6-④,6-⑤,6-⑥),
7e 前記電源装置に電気的に接続され且つ前記電源端子台からのコネクター
に着脱自在に接続される給電用コネクターとを備え(同構成6-⑦),
15 7f 前記取付部材は,長尺且つ矩形板状に形成され,一面に前記 LED が取り
付けられる底面部と,前記底面部の幅方向における両側から前記底面部に
対して前記 LED と反対側で且つ前記底面部と交差する方向に突出する一
対の側面部とで形成され(同構成6-⑥),
7g 前記電源装置は,前記取付部材の前記底面部と一対の前記側面部とで形
20 成される空間内に配置され(同構成6-⑧),
7h 前記器具本体に取り付けられた状態では,前記コネクターに接続された
前記給電用コネクターが前記器具本体の前記凹部の前記底面部と前記取付
部材の前記底面部とで囲まれる空間内に収められることを特徴とする(同
構成6-⑨)
25 7i LED ユニット(同構成6-①)。
以 上
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