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令和3(ワ)1720特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 一部認容 大阪地方裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日 令和6年4月22日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社GSユアサ
被告エリーパワー株式会社
法令 特許権
特許法102条3項4回
特許法100条1項1回
キーワード 特許権42回
侵害37回
実施36回
進歩性15回
損害賠償7回
無効7回
差止5回
新規性4回
審決3回
許諾2回
ライセンス2回
訂正審判1回
主文 1 被告は、原告に対し、5億2928万5945円及びうち3億6882万15
60円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員、20
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余は被告の負担と
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 本判決で用いる主な呼称 (1) 本件特許(権)1:特許第5713127号の特許(に係る権利)。その明細 書及び図面は本件明細書1 (2) 本件特許(権)2:特許第6493463号の特許(に係る権利)。その明細 書及び図面は本件明細書215 本件特許(権)1、2を総称して本件各特許(権) (3) 本件発明1:本件特許1の特許請求の範囲請求項1記載の発明 (4) 本件発明2:本件特許2の特許請求の範囲請求項2記載の発明(ただし、本 件訂正による訂正後のもの) 本件発明1、2を総称して本件各発明20 (5) 本件訂正:訂正審決(訂正2022-390001)による本件発明2の訂 正(甲31、40) (6) 被告製品1、同2、同3:別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品(項ご との総称) 被告製品1ないし3を総称して被告製品25

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判決文

令和6年4月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和3年(ワ)第1720号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和6年2月14日
判 決
原告 株式会社GSユアサ
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 松本司
同 田上洋平
10 同 冨田信雄
被告 エリーパワー株式会社
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 三村量一
15 同 澤田将史
同 松下昂永
同補佐人弁理士 相田義明
主 文
1 被告は、原告に対し、5億2928万5945円及びうち3億6882万15
20 60円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員、
うち1億6046万4385円に対する令和4年5月27日から支払済みまで
年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余は被告の負担と
25 する。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は、別紙被告製品目録記載2の製品を製造し、販売し、もしくは輸出し、
又は販売の申出をしてはならない。
5 2 被告は、第1項記載の製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、12億7765万円及びうち8億8588万5377円
に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち1
265万円に対する令和3年2月1日から、うち3億7911万4623円に対
する令和4年5月27日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
10 第2 事案の概要
1 本判決で用いる主な呼称
(1) 本件特許(権)1:特許第5713127号の特許(に係る権利)。その明細
書及び図面は本件明細書1
(2) 本件特許(権)2:特許第6493463号の特許(に係る権利)。その明細
15 書及び図面は本件明細書2
本件特許(権)1、2を総称して本件各特許(権)
(3) 本件発明1:本件特許1の特許請求の範囲請求項1記載の発明
(4) 本件発明2:本件特許2の特許請求の範囲請求項2記載の発明(ただし、本
件訂正による訂正後のもの)
20 本件発明1、2を総称して本件各発明
(5) 本件訂正:訂正審決(訂正2022-390001)による本件発明2の訂
正(甲31、40)
(6) 被告製品1、同2、同3:別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品(項ご
との総称)
25 被告製品1ないし3を総称して被告製品
2 訴訟物
本件各特許権(ただし、本件特許権1については、本件口頭弁論終結時までに
存続期間が満了した。)を有する原告の被告に対する、次の各請求
(1) 被告製品2による本件特許権2の侵害を前提とする特許法100条1項に
基づく被告製品2の製造等の差止め請求及び同2項に基づく廃棄請求
5 (2) 民法709条に基づく次の損害賠償請求の合計12億7765万円及び各
内金に対する不法行為の後日から支払済みまで民法所定の割合(平成29年
法律第44号による民法改正前の行為につき年5分、改正後の行為につき年
3パーセント)による遅延損害金の支払請求
ア 被告製品1及び3による本件特許権1の侵害に係る損害
10 「●(省略)●」のうち12億6500万円(明示的一部請求)
イ 被告製品2による本件特許権2の侵害に係る損害
「●(省略)●」
3 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠(特に明示する場合を除き、枝番
号があるものは各枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認
15 定できる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、電池、整流器、変換器等の製造、販売等を目的とする株式会社で
ある。
イ 被告は、電池、周辺機器、システムの開発等を目的とする株式会社である。
20 (2) 本件各特許権
本件各特許権の書誌的事項は次のとおりである。
ア 本件特許権1
発明の名称 電池
原出願日 平成14年5月27日
25 出願日 平成26年3月27日
登録日 平成27年3月20日
イ 本件特許権2
発明の名称 蓄電装置
原出願日 平成25年3月29日
出願日 平成29年7月24日
5 登録日 平成31年3月15日
(3) 本件訂正
原告は、令和4年1月18日、本件訂正に係る訂正審判を請求し、同年8月
12日に訂正を認める審決がされ、同審決は、同月22日に確定した。
(4) 本件各発明の構成要件
10 本件各発明の構成要件は、別紙本件各発明の構成要件等に記載のとおり分説
される。なお、本件明細書1の記載は、別紙特許公報(甲2)のとおりであり、
本件明細書2の記載は、別紙特許公報(甲4)のとおりである。
(5) 被告の行為
被告は、平成22年5月から被告製品1を、平成28年10月から被告製品
15 2を、同年4月から被告製品3をそれぞれ製造販売し、又は、製造販売してい
た(甲5、6、21)。
(6) 被告製品の構成等
被告製品の構造は、別紙被告製品1及び3説明書、被告製品2説明書記載の
とおりである。
20 被告製品1及び3が、別紙本件各発明の構成要件等の被告製品1及び3欄記
載の構成を有すること、本件発明1に係る構成要件A1からA6まで、B、B
1、C、C1及びDを充足することは当事者間に争いがない。
被告製品2の構成には当事者間に争いがあるが、被告製品2が、本件発明2
に係る構成要件E、F1、G1、G4及びIを充足することは当事者間に争い
25 がない。
なお、リチウムイオン電池の発電要素は、別紙発電要素の図のとおり、巻回
型と積層型があるところ、被告製品1及び3は積層型に属する。
(7) 争点2に係る文献について
ア 乙9公報:特開2000-150306号公報(平成12年5月30日公
開)。乙9公報記載の発明は乙9発明。
5 イ 乙10公報:特開平9-73915号公報(平成9年3月18日公開) 乙

10公報記載の発明は乙10発明。
ウ 乙11公報:特開2002-93402号公報(平成14年3月29日公
開)。乙11公報記載の発明は乙11発明。
(8) 争点3に係る文献について
10 ア 乙17公報:特開2012-59663号公報(平成24年3月22日公
開)。乙17公報記載の発明は乙17発明。
イ 乙16公報:WO2008/016152A1号国際特許公開公報(平成
20年2月7日公開)。乙16公報記載の発明は乙16発明。
4 争点
15 (1) 被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
ア 被告製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか(争点1-1)
イ 被告製品2が構成要件F2及びG2を充足するか(争点1-2)
(2) 本件特許1に次の無効理由があるか(争点2)
ア 本件発明1についての乙9発明に基づく進歩性欠如(争点2-1)
20 イ 本件発明1についての乙10発明に基づく進歩性欠如(争点2-2)
ウ 本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如(争点2-3)
(3) 本件特許2に次の無効理由があるか(争点3)
ア 本件発明2についての乙17発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如(争
点3-1)
25 イ 本件発明2についての乙16発明に基づく進歩性欠如(争点3-2)
ウ 本件訂正に訂正要件違反があるか(争点3-3)
(4) 損害の発生及びその額等(争点4)
ア 本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額(争点4-1)
イ 本件特許権2の侵害に係る損害の発生及びその額等(争点4-2)
第3 争点に関する当事者の主張等
5 1 争点1-1(被告製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか)につい

【原告の主張】
(1) 「活物質未塗工部の外側面」(構成要件B2、C2)の充足性
本件特許1の請求項2は、「前記発電要素は、巻回型の発電要素である請求
10 項1記載の電池。」としていること、本件明細書1には、本件発明1は、積層型
の発電要素の場合でも良い旨や発電要素の形状や種類は一切限定されない旨
の記載(【0029】)があることから、本件発明1に係る発電要素は巻回型に
限定されるものではない。
したがって、被告製品1及び3は、
「活物質未塗工部の外側面」を充足する。
15 (2) 「表面が接合される」(構成要件B2、C2)の充足性
「接合」の字義は、
「つぎあわすこと」であり、その一例として「ガス管を―・
せる」と記載されていること(乙3)からすれば、他の物が介在してもよいこ
とを当然の前提としていると理解できる。また、本件明細書1には金属箔と接
続板部との間には、接続部品を用いることが可能であることが明示されている
20 こと(【0026】)に加え、技術的にも、
「活物質未塗工部」と「接続板部の表
面」が直接接触している構成に限定して理解しなければならない理由はない。
したがって、活物質未塗工部と接続板部の表面は直接接触している必要はな
いから、被告製品1及び3は「表面が接合される」を充足する。
(3) 以上から、被告製品1及び3は構成要件B2及びC2を充足する。
25 【被告の主張】
(1) 「活物質未塗工部の外側面」(構成要件B2、C2)の非充足性
本件明細書1には、本件発明1の背景技術や実施例において、巻回型の発電
要素を前提とする記載がある(【0002】【0014】等)
、 。また、原告は、
本件特許1の出願経過において、補正により構成要件B2及びC2を追加して
いるところ、その際、
「発電要素の活物質未塗工部の外側面(活物質未塗工部の
5 最外周面)」などと説明していた。
したがって、本件発明1に係る発電要素は、巻回型に限定されるから、被告
製品1及び3は、「活物質未塗工部の外側面」を充足しない。
(2) 「表面が接合される」(構成要件B2、C2)の非充足性
「接合」の字義は、つぎあわすことであり、つぎあわすことは、継いでつけ
10 合わせる、すなわち、
「はなれないように合わせる。くっつける。」と定義され
るから、二つの物が「接合」している場合には、二つの物は直接接触する形で
結合しており、その間に他の物が介在することは想定されていない。また、本
件明細書1には、
「接続板部」と金属箔 「活物質未塗工部」 の面とが
( ) 「密着」、
「溶接」「接合」又は「溶着」されることを説明する記載があるところ(
、 【00
15 18】、
【0023】、
【0024】、
【0026】、
) これらはいずれも「接続板部」
と金属箔とが直接接触する形で結合されることを明示している。
したがって、活物質未塗工部と接続板部の表面は直接接触する形で結合して
いる必要があるところ、被告製品1及び3の「活物質未塗工部」 「接続板部」

との間にはクリップ部材が存在するため、両者は表面が直接接触する形で結合
20 されていないから、被告製品1及び3は「表面が接合される」を充足しない。
(3) 以上から、被告製品1及び3は構成要件B2及びC2を充足しない。
2 争点1-2(被告製品2が構成要件F2及びG2を充足するか)について
【原告の主張】
(1) 被告製品2の構成
25 被告製品2の構成は、別紙本件各発明の構成要件等の被告製品2の原告の主
張欄記載のとおりである。
(2) 「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体」
(構成要件F2)の充足性
本件明細書2の記載(【0011】【0031】【0032】
、 、 )及び原告が本
件特許2の出願時に提出した上申書(甲22)によれば、本件発明2は、外装
5 体、すなわち、外装体本体と蓋体が密閉構造である発明であることが特定され
ており、蓋体は内蓋部と外蓋部を有しているから、蓋体(内蓋部と外蓋部)に
より外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成であればよく、「内蓋部」のみ
で外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成である必要はない。また、電熱の
技術常識からすれば、密閉状態でなくとも、一部の蓄電素子の上面を覆うこと
10 で蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響は軽減できることに加
え、本件明細書2には、内蓋部は、一部の蓄電素子の上面を覆うように配置さ
れていることとしてもかまわない旨が記載されているところ(【0054】、

これは内蓋部のみで外装体本体の開口部が密閉されることを必ずしも要しな
いことを意味しているにほかならない。
15 したがって、内蓋部と外蓋部で外装体本体の開口部を密閉状態で塞いでいれ
ばよいから、被告製品2は、「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋
部及び外蓋部を有する蓋体」(構成要件F2)を充足する。
(3) 「電極端子が配置されている側」(構成要件G2)の充足性
本件明細書2には、正極端子及び負極端子は、電極体に蓄えられている電気
20 を蓄電素子(非水電解質二次電池)の外部空間に導出し、また、電極体に電気
を蓄えるために蓄電素子の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端
子である旨の記載(【0037】【0041】
、 )があるから、
「電極端子」は、蓄
電素子の外部空間に電気を導出し、また、蓄電素子の内部空間に電気を導入す
るための部材である。
25 したがって、
「電極端子が配置されている側」とは、蓄電素子において、電極
端子に相当する部材が配置されている側を意味するから、被告製品2は、「電
極端子が配置されている側」(構成要件G2)を充足する。
(4) したがって、被告製品2は構成要件F2及びG2を充足する。
【被告の主張】
(1) 被告製品2の構成
5 被告製品2の構成は、別紙本件各発明の構成要件等の被告製品2の被告の主
張欄記載のとおりである。
(2) 「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体」
(構成要件F2)の非充足性
構成要件F2は、「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外
10 蓋部を有する蓋体」と規定しており、「前記外装体本体の開口部を密閉状態で
塞ぐ」はそれに引き続く「内蓋部」を修飾していることは当然である。また、
本件明細書2(【0004】ないし【0006】【0023】【0059】等)
、 、
及び本件特許2の出願経過において原告が提出した上申書(甲22)によれば、
本件発明2の技術的意義は、蓄電素子から発せられる熱が電気機器に与える影
15 響を低減させる点にあり、構成要件F2は、かかる課題を解決する手段である。
仮に、外蓋部が「外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ」一方で、内蓋部に複
数の穴が存在している構成である場合、蓄電素子から発せられる熱が穴を通っ
て電気機器に影響を及ぼすことは免れず、課題解決に役立たない構成となる。
したがって、
「内蓋部」は「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ」もの
20 でなければならないところ、被告製品2の支持部材には5か所のスリットが設
けられているから、被告製品2は「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ
内蓋部及び外蓋部を有する蓋体」(構成要件F2)を充足しない。
(3) 「電極端子が配置されている側」(構成要件G2)の非充足性
「電極」の字義は、電池、発電機などで電流の出入りする所であり、
「端子」
25 の字義は、電池、電気機器、電気回路などの外部との接続口の金具であるから、
「電極端子」とは、電池における、電流の出入りする所であって、外部との接
続口となっている金具を意味している。
被告製品2においては、クリップ部材が、電極端子に該当するところ、被告
製品2において、クリップ部材は電池の両端方向に配置されているのに対し、
電池監視部は4つの電池セルを直立させて並べて形成される上側面の中央部
5 の直上に存在する。
したがって、被告製品2は、電気機器が「電極端子が配置されている側」に
配置されているとはいえず、構成要件G2を充足しない。
3 争点2-1(本件発明1についての乙9発明に基づく進歩性欠如)について
【当事者間に争いのない事実等】
10 (1) 乙9発明の構成
本件特許1の優先日より前に公開された乙9公報に記載の乙9発明の構成
は、別紙主引用例の構成(本件発明1)の乙9発明の構成の被告の主張欄記載
のとおりである。
(2) 本件発明1と乙9発明の相違点
15 本件発明1と乙9発明は、本件発明1が構成要件A4の「前記電池外装体の
外方に配置されるとともに前記正極側の外部接続端子に接続される正極側の
端子接続部材、及び、前記電池外装体の外方に配置されるとともに前記負極側
の外部接続端子に接続される負極側の端子接続部材」を備えるのに対し、乙9
発明が当該構成を備えていない点(相違点乙9)で相違する。
20 (3) したがって、次のいずれかの副引用例に記載された構成が、前記構成要件A
4に係る構成に相当するか、及び相当するとしてこれを適用することが容易想
到であるかどうかが争点となる。
ア 乙12公報:特開平9-115500号公報(平成9年5月2日公開) 同

公報に記載された構成は乙12構成。
25 イ 乙22公報:特開2001-6657号公報(平成13年1月12日公開)。
同公報に記載された構成は乙22構成。
ウ 乙23公報:特開2000-90791号公報(平成12年3月31日公
開)。同公報に記載された構成は乙23構成。
【被告の主張】
(1) 乙12構成を適用することが容易想到であること
5 ア 乙12構成について
乙12公報(【請求項9】【0001】【0013】【0052】【005
、 、 、 、
6】参照)には、密閉形二次電池において、端子極柱のネジ部をナット締め
によって接続する際にかかる回転トルクによって生ずる、極板間短絡、リー
ド板の溶接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大と
10 いった問題を解決するために 【0013】、
( ) 蓋体31の外方において、端子
極柱32・37のフランジ部32b・37bの一辺から水平方向に延出され
た部分32d・37dを形成し、これに極板群8から導出されたリード板9
を接続した構成が開示されている。また、これらの構成は正極側と負極側と
で同様であると考えられる(別紙乙12公報の図の【図1】【図6】参照)
、 。
15 加えて、電池外装体の外方に配置されるとともに外部接続端子に接続され
る端子接続部材を備える構成は周知であること(乙24ないし30)を踏ま
えると、乙12公報記載の「端子極柱」及び「フランジ部」がそれぞれ構成
要件A4の「外部接続端子」及び「端子接続部材」に相当し、乙12公報に
は、密閉形二次電池の蓋部の外方に配置されるとともに正極側の端子極柱に
20 接続される正極側のフランジ部、及び、前記蓋部の外方に配置されるととも
に負極側の端子極柱に接続される負極側のフランジ部という構成要件A4
に相当する構成が開示されているに等しいといえる。仮にそうでなくとも、
前記周知例に加え、
「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置されてい
るか内方に配置されているかは、電池の機能として重要な電気的な接続には
25 影響がないことから、
「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置される
か内方に配置されるかは、些細な差異であって、設計事項にすぎない。
イ 乙9発明に乙12構成を組み合わせることは容易であること
乙12構成は、密閉形二次電池において、端子極柱のネジ部をナット締め
によって接続する際にかかる回転トルクによって生ずる、極板間短絡、リー
ド板の溶接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大と
5 いった問題を解決するために、トルクのかかる端子極柱の軸と内部の発電要
素からの電極引出部分の軸とを、電池を収納する容器の外側でオフセットさ
せて接続することにより、端子極柱にかかるトルクがそのまま電極引出部分
を伝わって電池内部の構成要素に印加されることがないようにしたものと
理解できる(乙12公報の【0017】 そして、
)。 このような電極の構成は、
10 リチウムイオン電池の電極にも適用することができる(【0056】。

一方、乙9発明は、リチウムイオン電池に関する発明であり、乙12公報
に記載された密閉型二次電池と同様に、電池の外装体から外方向に突出した
2本の外部接続端子を備えているから、外部接続端子をナット締めして接続
する際に生じる回転トルクによって、乙12公報の記載と同様に、極板間短
15 絡、リード板の溶接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗
の増大といった問題が生じることが容易に予測できる。また、外部電極端子
へのナット締めの際のトルクが問題を引き起こすことは、当業者に周知の事
項であった(乙13ないし15)。
以上から、当業者には、乙9発明のリチウムイオン電池において予測され
20 るこれらの課題を解決するために、乙12構成を適用し、発電要素からの取
出し電極部と外部接続端子とを、電池を収納する容器の外で接続部材を用い、
オフセットして接続することについて動機付けがある一方、阻害事由は存在
しない。
(2) 乙22構成を適用することが容易想到であること
25 ア 乙22構成について
乙22公報(【0001】【0008】【0010】ないし【0012】
、 、 、
【0016】ないし【0018】)には、積層電極は、これより延在する集線
タブ34c、バス構造34、電流板4及び接触ディスク8を経由して、正極
側の外部接続端子を兼ねるスタッド12(ねじ部14を含む。本件特許1の
「外部接続端子」に相当)に電気的に接続される(別紙乙22公報の図の【図
5 1】ないし【図3】参照)構成、すなわち、電池エンクロージャ部分30の
上部に配置されるとともにスタッド12に接続される電流板4(乙22構成)
を開示しており、これが構成要件A4に相当する。
イ 乙9発明に乙22構成を組み合わせることは容易であること
乙9発明は、リチウムイオン電池における電極構成に係る発明であるとこ
10 ろ、乙22公報記載の発明もリチウムイオン電池を含む電池における電極構
成に係る発明であるから、技術分野は同一である。また、乙22構成は、外
部と接続するための端子と発電要素とを電気的に接続する機能を有すると
ころ、乙9発明にも、同様の機能を有する構成として、発電要素の積層端面
に表面が接合されている挟扼集電部材50と外部端子80とが、電極体10
15 の端部から当該電極体10の中央方向に水平に延びるリード90で結ばれ
た集電構造が示されているから、機能も共通している。
ウ 以上から、当業者において、乙9発明に乙22構成を組み合わせる動機付
けがある一方、阻害事由は存在しない。
(3) 乙23構成を適用することが容易想到であること
20 ア 乙23構成について
乙23公報(【0001】【0002】【0013】【0018】【002
、 、 、 、
0】【0021】
、 )には、
「陰極を形成する巻線は、例えば平らな金属棒22
によって形成されるコレクタに電気的に接続」され、「この金属棒22自身
はケース又はカバーに接続されて、正端子8への導電体要素5を形成」する
25 一方で、
「陽極を形成する巻線は、コンテナ1内で扁平にされ、カバー4を通
してバッテリの外側に開口するチューブ23によって形成されたコレクタ
に電気的に接続」され、「このチューブ23はブレーカスイッチに接続する
接続素線6bに対応」する。また、陰極(カソード)を形成する巻線(発電
要素)は、例えば平らな金属棒22によって形成されるコレクタ(集電接続
板)に電気的に接続される。この金属棒22自身はケース又はカバーに接続
5 されて、正端子8への導電体要素5を形成する構成が開示されている(別紙
乙23公報の図の【図1】【図5】【図13】ないし【図15】参照)
、 、 。
したがって、乙23公報には、リチウムイオン電池において、カバー4の
外方に配置されるとともに、正端子8に接続される陰極(カソード)側の導
電体要素5、及び、カバー4の外方に配置されるとともに負端子7に接続さ
10 れる陽極(アノード)側の接続手段6(6a)が開示されており、これが構
成要件A4に相当する。
イ 乙9発明に乙23構成を組み合わせることは容易であること
乙9発明は、リチウムイオン電池における電極構成に係る発明であるとこ
ろ、乙23公報記載の発明もリチウム電池における電極構成に係る発明であ
15 るから、技術分野は同一である。また、乙23構成は、外部と接続するため
の端子と発電要素とを電気的に接続する機能を有するところ、乙9発明にも、
同様の機能を有する構成として、発電要素の積層端面に表面が接合されてい
る挟扼集電部材50と外部端子80とが、電極体10の端部から当該電極体
10の中央方向に水平に延びるリード90で結ばれた集電構造が示されて
20 いるから、機能も共通している。
以上のとおり、当業者において、乙9発明に乙23構成を組み合わせる動
機付けがある。
【原告の主張】
次のとおり、乙12公報、乙22公報及び乙23公報は、いずれも構成要件A
25 4に相当する構成を開示しておらず、また、乙9発明にこれらの構成を適用する
ことは容易想到でない。
(1) 乙12構成を適用することについて
ア 乙12構成について
乙12公報には、蓋体1の下面に端子極柱2のフランジ部2bと係合する
回転阻止部4を設ける構成が開示されており 【請求項1】
( 、
【0019】、
【0
5 037】【図1】ないし【図3】【図5】【図6】
、 、 、 (A)【図7】
、 (A)、そ

の結果、乙12公報記載の発明は「端子極柱に外力が加わっても、端子極柱
が回転することがないため、極板群等にねじり応力が加わらず、内部短絡の
発生や電池性能の低下を防止でき、電池の耐久性を長期にわたり保持できる」
(【0081】)との効果を奏するものである。すなわち、乙12公報には、
10 端子極柱2のフランジ部2bが蓋体の下面に設けられる構成しか開示され
ておらず、フランジ部2bは蓋体1と電槽10の内部に配置されており、蓋
部の外方に配置されている構成については記載も示唆も無い。
すなわち、乙12公報記載の「フランジ部」は、蓋体(構成要件A4の「電
池外装体」に相当)の「外方に配置」されていないことから、本件発明1の
15 構成要件A4の「端子接続部材」に相当する構成ではなく、乙12構成は、
構成要件A4に相当しない。
イ 阻害要因があること
乙9発明は、集電用リードによる集電方式の問題を解決課題として、集電
用リードに代わり、挟扼集電部材を設ける集電方式を採用した発明である
20 (乙9公報の【0004】ないし【0007】。

一方、乙12公報記載の発明は、複数のリード板を設けた集電方式を採用
した電池を前提として、当該集電方式を採用したことから生じる課題を解決
する発明である(乙12公報の【請求項1】【0013】【0035】。
、 、 )
このように、乙9発明は集電用リードによる集電方式を排斥している発明
25 であるのに対し、これに複数のリード板の構成を前提とする乙12構成を適
用することは、乙9発明の目的に反するものとなるから、乙9発明に乙12
構成を適用することは、阻害要因が存在する。
(2) 乙22構成を適用することについて
ア 乙22構成について
乙22公報によれば、乙22公報記載の発明は、過電流の発生時に電池か
5 らの電流を自動的に遮断することを目的とするものであり(【0001】、

電池にいわゆるヒューズを設ける発明である。そのため、
「接触ディスク8」
と「導電ポスト22」の間に「溶接接続部11」を設け、過電流の発生時に
「溶接接続部11」が破断することにより電流を遮断する 【0020】。
( )そ
して、電流板4には接触ディスク8及び電気フィールドスルー20との接続
10 を容易にするために「孔6」が設けられ(【0016】、電気フィールドスル

ー20の「導電ポスト22」の直径と「接触ディスク8」に設けられた「穴
10」の直径を調整することにより、溶接接続部の直径を調整して、溶接接
続部が破断する電流容量を調整するものである(【0020】。

したがって、乙22公報の「電流板4」は、本件発明1の「集電接続板」
15 の「本体部」に相当する構成に接続される部材ではないことから、本件発明
1の「端子接続部材」に相当する構成ではなく、乙22構成は、構成要件A
4に相当しない。
イ 動機付けがないこと
乙9発明は、集電方式の発明であり、「簡便かつ迅速に電極からの集電処
20 理を行うことを提供することを目的」とする発明である(乙9公報の【請求
項1】【0007】。これに対し、乙22公報記載の発明は、過電流の発生
、 )
時に電池からの電流を自動的に遮断することを目的とする発明であり、乙9
発明と技術分野の関連性はなく、課題の共通性、作用・機能の共通性及び引
用発明の内容中の示唆のいずれも存しない。
25 また、過電流を遮断するのであれば、正極又は負極の一方のみに「自動遮
断器」を設けることしか当業者は想到し得ないから、乙9発明に乙22構成
を適用しても、正極と負極の双方に端子接続部材を設けるとの構成を当業者
が想到することはあり得ない。
(3) 乙23構成を適用することについて
ア 乙23構成について
5 乙23公報によれば、巻線(発電要素)から電気を集電するのが「コレク
タ」で「平らな金属棒22」であり、
「平らな金属棒22」と「ケース又はカ
バー4」から「導電体要素5」を形成していること、カバー4が正端子8と
電気的に接続されていることが記載されており(【0018】【0020】
、 、
【図14】、乙23公報は、発電要素の正極又は負極をケースに電気接続さ

10 せるという電池のタイプを採用している。
したがって、導電体要素5はカバー4及び金属棒22であり、カバー4(本
件発明1の電池外装体に相当)そのものが導電体要素を構成している以上、
カバーの外方に配置される導電体要素については記載も示唆もない。
よって、乙23構成は、構成要件A4に相当する構成ではない。
15 イ 動機付けがないこと
乙23公報には、外部端子7、8にトルクが作用することの記載も示唆も
なく、本件発明1における課題及びその解決手段を当業者が認識することが
できない。
また、乙9発明は、集電方式の発明であり、
「簡便かつ迅速に電極からの集
20 電処理を行うことを提供することを目的」とする発明であるのに対し、乙2
3公報記載の発明は、バッテリの内部温度が所定の臨界値を越えると、電気
回路を遮断することを目的とする発明であり(乙23公報の【0019】、

乙9発明と技術分野の関連性はなく、課題の共通性、作用・機能の共通性及
び引用発明の内容中の示唆のいずれも存しない。
25 4 争点2-2(本件発明1についての乙10発明に基づく進歩性欠如)について
【当事者間に争いのない事実等】
(1) 乙10発明の構成
本件特許1の優先日より前に公開された乙10公報に記載された乙10発
明の構成は、別紙主引用例の構成(本件発明1)の乙10発明の構成の被告の
主張欄記載のとおりである。
5 (2) 本件発明1と乙10発明の相違点
本件発明1と乙10発明について、本件発明1は、構成要件A4の「前記電
池外装体の外方に配置されるとともに前記正極側の外部接続端子に接続され
る正極側の端子接続部材、及び、前記電池外装体の外方に配置されるとともに
前記負極側の外部接続端子に接続される負極側の端子接続部材」を備えるのに
10 対し、乙10発明は、当該構成を備えていない点(相違点乙10)が相違して
いる。
(3) 争点は、前記3(争点2-1)の【当事者間に争いのない事実等】(3)記載の
各副引用例の構成が構成要件A4に相当する構成であるか(これらについては、
前記3の当事者の主張欄に記載のとおり。)及びこれらを乙10発明に適用す
15 ることが容易想到であるかどうかである。
【被告の主張】
(1) 乙12構成を適用することが容易想到であること
乙10発明は、大型の平角型のリチウムイオン二次電池等を製造するのに適
用して好適な平角型二次電池の製造方法に関する発明であり、乙12公報に記
20 載された密閉型二次電池と同様に、電池の外装体から外方向に突出した2本の
外部接続端子を備えているから、外部接続端子をナット締めして接続する際に
生じる回転トルクによって、乙12構成と同様に、極板間短絡、リード板の溶
接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大といった問題
が生じることが容易に予測できる。また、外部電極端子へのナット締めの際の
25 トルクが問題を引き起こすことは、リチウムイオン電池を含む二次電池の分野
において当業者に周知の事項であった(乙13ないし15)。
そうすると、当業者には、乙10発明のリチウムイオン電池において予測さ
れるこれらの課題を解決するために、乙12構成を適用し、発電要素からの取
出し電極部と外部接続端子とを、電池を収納する容器の外で接続部材を用い、
オフセットして接続することについて動機付けがある一方、阻害事由は存在し
5 ない。
(2) 乙22構成を適用することが容易想到であること
乙10発明は、リチウムイオン電池における電極構成に係る発明であるとこ
ろ、乙22公報記載の発明もリチウムイオン電池を含む電池における電極構成
に係る発明であるから、技術分野は同一である。また、乙22構成は、外部と
10 接続するための端子と発電要素とを電気的に接続する機能を有するところ、乙
22公報にも、同様の機能を有する構成として、正極の活物質未塗布部と正極
側の外部正極端子とを接続する正極リード体11a、及び、前記負極の活物質
の未塗布部と前記外部負極端子とを接続する負極リード体12aが示されて
いるから、機能も共通している。
15 以上のとおり、当業者において、乙10発明に乙22構成を組み合わせる動
機付けがある一方、阻害事由は存在しない。
(3) 乙23構成を適用することが容易想到であること
乙10発明は、リチウムイオン電池における電極構成に係る発明であるとこ
ろ、乙23公報記載の発明もリチウム電池における電極構成に係る発明である
20 から、技術分野は同一である。また、乙23構成は、外部と接続するための端
子と発電要素とを電気的に接続する機能を有するところ、乙10発明にも、同
様の機能を有する構成として、正極の活物質未塗布部と正極側の外部正極端子
とを接続する正極リード体11a、及び、前記負極の活物質の未塗布部と前記
外部負極端子とを接続する負極リード体12aが示されているから、機能も共
25 通している。
以上のとおり、当業者において、乙10発明に乙23構成を組み合わせる動
機付けがある。
【原告の主張】
(1) 乙12構成を適用することについて
否認し争う。
5 (2) 乙22構成を適用することについて
乙10発明は、平角形二次電池の製造方法の発明であり(乙10公報【請求
項1】、大型の二次電池において複数枚の平板電極(集電リード部)と電極端

子との溶接を良好とすることを目的とする発明である 【0008】
( ないし【0
018】。これに対し、乙22公報記載の発明は、過電流の発生時に電池から

10 の電流を自動的に遮断することを目的とする発明であり、乙10発明と技術分
野の関連性はなく、課題の共通性、作用・機能の共通性及び引用発明の内容中
の示唆のいずれも存しない。
(3) 乙23構成を適用することについて
乙10発明は、平角形二次電池の製造方法の発明であり、大型の二次電池に
15 おいて複数枚の平板電極(集電リード部)と電極端子との溶接を良好とするこ
とを目的とする発明である。これに対し、乙23公報記載の発明は、バッテリ
の内部温度が所定の臨界値を越えると、電気回路を遮断することを目的とする
発明であり、乙10発明と技術分野の関連性はなく、課題の共通性、作用・機
能の共通性及び引用発明の内容中の示唆のいずれも存しない。
20 5 争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如)について
【当事者間に争いのない事実等】
(1) 乙11発明の構成
本件特許1の優先日より前に公開された乙11公報に記載された乙11発
明の構成は、別紙主引用例の構成(本件発明1)の乙11発明の構成の被告の
25 主張欄記載のとおりである。
(2) 本件発明1と乙11発明の相違点
本件発明1と乙11発明は、次の点が相違している。
ア 本件発明1は、構成要件A4の「前記電池外装体の外方に配置されるとと
もに前記正極側の外部接続端子に接続される正極側の端子接続部材、及び、
前記電池外装体の外方に配置されるとともに前記負極側の外部接続端子に
5 接続される負極側の端子接続部材」を備えるのに対し、乙11発明は、当該
構成を備えていない点(相違点乙11-1)
イ 本件発明1は、構成要件B2において「前記正極側の本体部から突設され
て、前記正極の活物質未塗工部の外側面のうちの前記正極の活物質未塗工部
の端部と前記正極の活物質塗工部との間に、表面が接合される正極側の接続
10 板部とを有し、 という構成を有し、
」 構成要件C2において「前記負極側の本
体部から突設されて、前記負極の活物質未塗工部の外側面のうちの前記負極
の活物質未塗工部の端部と前記負極の活物質塗工部との間に、表面が接合さ
れる負極側の接続板部とを有する」という構成を有するのに対し、乙11発
明では、接続板部に相当する正極集電板及び負極集電版の表面と正極及び負
15 極の活物質未塗布部の端部とがそれぞれレーザ溶接されており、上記の構成
を備えていない点(相違点乙11-2)
(3) 争点は、前記3(争点2-1)の【当事者間に争いのない事実等】(3)記載の
各副引用例の構成が構成要件A4に相当する構成であるか(これらについては、
前記争点2-1の当事者の主張欄に記載のとおり。)及びこれらを乙11発明
20 に適用することが容易想到であるかどうかである。
【被告の主張】
(1) 乙12構成を適用することが容易想到であること
ア 相違点乙11-1
乙11発明は、密閉形電池、特に巻回式の発電要素を採用した密閉形電池
25 に関する発明であり、乙12公報に記載された密閉型二次電池と同様に、電
池の外装体から外方向に突出した2本の外部接続端子を備えているから、外
部接続端子をナット締めして接続する際に生じる回転トルクによって、乙1
2公報記載の発明と同様に、極板間短絡、リード板の溶接外れによる特性低
下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大といった問題が生じることが容
易に予測できる。また、外部電極端子へのナット締めの際のトルクが問題を
5 引き起こすことは、リチウムイオン電池を含む二次電池の分野において当業
者に周知の事項であった(乙13ないし15)。
そうすると、乙11発明の密閉形電池において予測されるこれらの課題を
解決するために、乙12構成を適用し、発電要素からの取出し電極部と外部
接続端子とを、電池を収納する容器の外で接続部材を用い、オフセットして
10 接続することについては、当業者に動機付けがある一方、阻害事由は存在し
ない。
イ 相違点乙11-2
乙9発明は、別紙主引用例の構成(本件発明1)の乙9発明の構成の被告
の主張欄記載のとおり、相違点乙11-2に係る構成(乙9b2及び乙9c
15 2)を有している。
乙9発明と乙11発明とは、いずれも密閉型電池における集電方法に関す
る発明であり、技術分野が共通している。また、乙9発明の課題は「集電用
リードをいくつも付設しなければならない大型の電池等では、このリードの
付設作業に必要な手間、工数は多大のものとなっていた。また、間欠的に活
20 物質層を形成する方式では、実質的な電極面積の減少となり、効率の面で問
題を抱えていた」こと及び「複数の集電用リードを外部端子にまとめるよう
に接続する作業は、ボルトナット等による締結、抵抗溶接、カシメ等によっ
て行うのであるが、この作業は煩雑さを極め、上記集電用リードの付設作業
と相俟って、電池等の作製工数を大幅に増大させ、電池等のコストを引き上
25 げる要因となっていた。また、同一の積層端部に正極および負極の集電用リ
ードを付設する場合は、内部短絡を防止するためのリード付設箇所をそろえ
るといった作業や、それぞれの電極の集電用リードが触れ合わないように捌
くといった作業をも必要とし、集電処理作業を一層難しいものとさせていた」
(乙9公報【0005】)ことである。これらの課題は、積層型又は巻回型の
発電要素に集電部材を接続する際には必ず生ずるものであるから、乙11発
5 明は乙9発明の課題を同様に有している。
したがって、当業者において、乙11発明に乙9発明の上記構成を組み合
わせる動機付けがある。
(2) 乙22構成を適用することが容易想到であること
乙11発明は、密閉形電池における電極構成に係る発明であるところ、乙2
10 2公報記載の発明はリチウムイオン電池の電極構成に係る発明であり、リチウ
ムイオン電池は通常密閉形であるから、技術分野は同一である。また、乙22
構成は、外部と接続するための端子と発電要素とを電気的に接続する機能を有
するところ、乙11発明も、同様の機能を有する構成として、正極の活物質の
未塗布部と正極端子とを接続する正極集電板15、及び、負極の活物質の未塗
15 布部と外部負極端子とを接続する負極集電板14を有する。
以上のとおり、当業者において、乙11発明に乙22構成を組み合わせる動
機付けがある一方、阻害事由は存在しない。
(3) 乙23構成を適用することが容易想到であること
乙11発明は、密閉形電池における電極構成に係る発明であるところ、乙2
20 3公報記載の発明もコンテナ内に密閉された電池における電極構成に係る発
明であるから、技術分野は同一である。また、乙23構成は、外部と接続する
ための端子と発電要素とを電気的に接続する機能を有するところ、乙11発明
も、同様の機能を有する構成として、正極の活物質の未塗布部と正極端子とを
接続する正極集電板15、及び、負極の活物質の未塗布部と外部負極端子とを
25 接続する負極集電板14を有する。
以上のとおり、当業者において、乙11発明に乙23構成を組み合わせる動
機付けがある。
【原告の主張】
(1) 乙12構成を適用することについて
否認し争う。
5 (2) 乙22構成を適用することについて
乙11発明は、巻回型の発電要素を採用した密閉型電池の発明であり(乙1
1公報の【請求項1】、
)「高出力が得られるとともに容積効率を向上できる密
閉型電池を提供すること」を目的とする発明である(【0008】。これに対

し、乙22公報記載の発明は、過電流の発生時に電池からの電流を自動的に遮
10 断することを目的とする発明であり、乙11発明と技術分野の関連性はなく、
課題の共通性、作用・機能の共通性及び引用発明の内容中の示唆のいずれも存
しない。また、正極又は負極の一方のみに「自動遮断器」を設けることしか当
業者は想到し得ない。
(3) 乙23構成を適用することについて
15 乙11発明は、巻回型の発電要素を採用した密閉型電池の発明であり、「高
出力が得られるとともに容積効率を向上できる密閉型電池を提供すること」を
目的とする発明である。これに対し、乙23公報記載の発明は、バッテリの内
部温度が所定の臨界値を越えると、電気回路を遮断することを目的とする発明
であり、乙11発明と技術分野の関連性はなく、課題の共通性、作用・機能の
20 共通性及び引用発明の内容中の示唆のいずれも存しない。
6 争点3-1(本件発明2についての乙17発明に基づく新規性欠如又は進歩性
欠如)について
【被告の主張】
本件発明2は、本件特許2の優先日より前に公開された乙17公報に記載され
25 た乙17発明と同一である。仮に、乙17発明と本件発明2との間に何らかの相
違点があるとしても、同相違点は、極めて些細な差異であって設計事項にすぎな
いから、本件発明2は、乙17発明に基づいて、当業者が容易に発明することが
できた。
(1) 乙17発明の構成
乙17公報の記載(【請求項1】【0001】【0022】【0025】【0
、 、 、 、
5 026】【0041】【0046】【図1】【図3】【図4】
、 、 、 、 、 )によれば、乙1
7公報は、別紙主引用例の構成(本件発明2)の乙17発明の構成の被告の主
張欄記載の構成を有する乙17発明を開示している。
(2) 乙17発明と本件発明2の対比
本件発明2における「蓄電素子」「電気機器」「蓄電装置」「外装体本体」
、 、 、 、
10 「内蓋部」及び「外蓋部」は、それぞれ乙17発明における「電池セル9」、
「バッテリ監視ユニット30」「組電池」「バッテリ収納ケース」「配線ボー
、 、 、
ド1」及び「蓋部25」に該当する。
【原告の主張】
(1) 乙17発明の構成
15 別紙主引用例の構成(本件発明2)の乙17発明の構成の原告の主張欄記載
のとおりである。
(2) 新規性を欠如しないこと
乙17公報の【図1】及び【図3】によれば、乙17公報には本件発明2の
内蓋部に相当する「配線ボード1」に、単芯線3を通すための開口が設けられ
20 ていることから、
「配線ボード1」を蓋部25で覆っても、密閉状態で塞ぐこと
にはならない。また、乙17公報のバッテリ収納ケース19の側面には、大き
な開口が設けられていることから、この点においても乙17発明に「密閉状態
で塞ぐ」との構成は開示されていない。
したがって、乙17公報には、本件発明2の構成要件F2に相当する構成が
25 開示されていないことから、乙17発明に基づいては新規性を欠如しない。
(3) 進歩性を欠如しないこと
乙17公報には本件発明2の構成要件F2に相当する構成が開示されてい
ない以上、乙17発明に基づいて進歩性が欠如することもない。
7 争点3-2(本件発明2についての乙16発明に基づく進歩性欠如)について
【被告の主張】
5 (1) 乙16発明の構成
乙16公報の記載 【0031】
( ないし【0033】、
【0035】、
【0038】
ないし【0040】【0042】【0045】【0046】【0055】【0
、 、 、 、 、
060】【0096】【0137】【0166】【図1】【図8】【図 9】【図
、 、 、 、 、 、 、
13】)によれば、乙16公報は、別紙主引用例の構成(本件発明2)の乙16
10 発明の構成の被告の主張欄記載の構成を有する乙16発明を開示している。
(2) 乙16発明と本件発明2との相違点
乙16発明と本件発明2は、次の点が相違している。
ア 本件発明2の電気機器が複数の蓄電素子(非水電解質二次電池)それぞれ
に接続されて複数の前記蓄電素子それぞれの状態を取得する構成を有する
15 のに対し、乙16発明にはそのような構成が明示されていない点(相違点乙
16-1)
イ 本件発明2は蓄電素子を備える発明であるのに対して、乙16発明は蓄電
要素及び電解液を備える発明である点(相違点乙16-4-1)
ウ 本件発明2は非水電解質二次電池に係る発明であるのに対し、乙16発明
20 は電槽内に流動性のある電解液を注入した液式の蓄電池に係る発明である
点(相違点乙16-4-2)
(3) 容易想到性
ア 相違点乙16-1
公知例(乙17、31ないし37)によれば、鉛蓄電池をはじめとする、
25 リチウムイオン電池以外の電池においても、複数の蓄電素子それぞれの監視
が必要となるという技術常識が存在していたのであって、リチウムイオン電
池に固有の技術常識ではない。乙16発明においても、複数の蓄電要素は電
槽内で直列に接続されるのであるから(乙16公報の【0031】、乙16

発明において、電子回路基板を「複数の前記蓄電素子それぞれに接続されて
複数の前記蓄電池素子それぞれの状態を取得する」ように構成することは、
5 当業者が必要に応じてなし得る設計事項である。
したがって、乙16発明に接した当業者は相違点乙16-1に係る構成を
容易に想到することができる。
イ 相違点乙16-4-1
原告の主張を前提とすれば、蓄電素子とは蓄電要素と電解液を主たる構成
10 要素とするものであるから、両者は実質的には同一である。したがって、相
違点乙16-4-1は実質的には相違点ではない。
ウ 相違点乙16-4-2
公知例(乙38、39)によれば、非水電解質二次電池においても電槽内
に流動性のある電解液を注入する場合があることは技術常識であった。
15 したがって、乙16発明に接した当業者は、相違点乙16-4-2に係る
構成を当然に想到する。
【原告の主張】
(1) 乙16発明の構成
乙16発明の構成は、別紙主引用例の構成(本件発明2)の乙16発明の構
20 成の原告の主張欄記載のとおりである。
(2) 乙16発明と本件発明2の相違点
乙16発明と本件発明2は、次の点が相違している。
ア 本件発明2の電気機器が複数の蓄電素子(非水電解質二次電池)それぞれ
に接続されて複数の前記蓄電素子それぞれの状態を取得する構成を有する
25 のに対し、乙16発明の電子回路基板は、正負端子及び液面センサ等に接続
されて、鉛蓄電池の液面検出および/または状態検知をする点(相違点乙1
6-1’)
イ 本件発明2は、外装体本体に収容されるのが蓄電素子であるのに対し、乙
16発明ではセル室(及びセル室に収容される蓄電要素及び電解液)である
点(相違点乙16-2)
5 ウ 本件発明2は、電気機器が複数の前記蓄電素子のそれぞれに設けられた電
極端子が配置されている側に配置されているのに対し、乙16発明では極板
耳が配置されている側に配置されている点(相違点乙16-3)
エ 本件発明2の蓄電素子が非水電解質二次電池であるのに対し、乙16発明
は蓄電素子に相当する構成はなく、鉛蓄電池のセルである点(相違点乙16
10 -4)
(3) 容易想到でないこと
ア 相違点乙16-1’
「複数の蓄電素子それぞれの状態検知が必要」であることは、非水電解質
二次電池固有の技術常識であるところ、鉛蓄電池の発明である乙16発明に
15 は、セル室ごとの電池状態を検知するという課題は存在せず、電子回路基板
には正負端子及び液面センサが接続されているにすぎない。また、原告が指
摘をする公知例(乙17、31ないし37)は、非水電解質二次電池を前提
とするものであるなど、乙16発明において、個々のセル室の電池状態を検
知するとの構成を採用する動機付けとなるものではない。
20 したがって、鉛蓄電池の発明である乙16公報には、個々の「セル室、蓄
電要素及び電解液の組み合わせ」ごとの電池状態を検知するとの技術的思想
は開示も示唆もされていないから、本件発明2との相違点乙16-1’の構
成を当業者が容易に想到することはできない。
イ 相違点乙16-4
25 乙16発明は鉛蓄電池についての発明であり、①電子回路基板に接続され
るリード線の断線のおそれや、②鉛蓄電池の電解液が電槽蓋の上面に付着し
てリード線等が腐食する、③リード線等が電槽蓋の上面を通らないことによ
る見栄えのよい鉛蓄電池の提供といった課題を解決することをその目的と
するところ、これらの課題は、電槽蓋の上面にリード線が通ること及び電解
液が電槽蓋に付着することから生じる課題である。これに対し、非水電解質
5 二次電池(リチウムイオン電池)を備える蓄電装置においては、電気機器と
の接続において、蓋の上面にリード線を通すという思想は当業者にはない。
また、非水電解質二次電池(リチウムイオン電池)を備える蓄電装置におい
ては、通常の使用形態で電解液が電槽蓋に付着することがないため、電解液
が電槽蓋に付着するという課題も生じない。
10 したがって、非水電解質二次電池を備える蓄電装置においては、乙16公
報に記載の①ないし③の課題がそもそも生じず、乙16発明に記載の事項を、
非水電解質二次電池を備える蓄電装置に適用しようとは当業者は想到し得
ない。
8 争点3-3(本件訂正に訂正要件違反があるか)について
15 【被告の主張】
本件訂正は、次の訂正事項1、すなわち、
「複数の前記蓄電素子それぞれに接続
されて複数の前記蓄電素子それぞれの状態を取得する電気機器とを備える蓄電
装置であって、(下線部が訂正箇所)を含む。しかし、原告が訂正事項1の根拠

として指摘する本件明細書2の段落【0055】から分かることは、複数の蓄電
20 素子と接続されることのみであり、複数の蓄電素子の一つ一つとの間に接続が必
要であることや、複数の蓄電要素を一体として接続しているだけでは足りないこ
となどは示されておらず、複数の蓄電素子それぞれの状態が取得できなければな
らないという記載は一切存在しない。
したがって、訂正事項1は、新たな技術的事項を追加するものであって、
「願書
25 に添付した明細書又は図面」 「記載した事項の範囲内において」
に された訂正(特
許法126条5項)に該当せず、訂正要件を充足しない。
【原告の主張】
本件明細書2の段落【0055】には、「複数の蓄電素子400の状態を取得
し」「複数の蓄電素子400に接続されている。、
、 」「複数の蓄電素子400の充
電状態や放電状態」との記載があり、いずれも「複数の蓄電素子400」が目的
5 語となっていることから、当該記載からは、電気機器700が複数の蓄電素子4
00それぞれの状態を取得し、複数の蓄電素子400それぞれに接続され複数の
蓄電素子400それぞれの充電状態や放電状態を監視することを意味している
と理解するのが、用語の有する普通の意味(特許法施行規則様式29備考8)で
ある。
10 したがって、訂正事項1は本件明細書2に明示的に記載された事項であり、訂
正事項1は本件明細書2に記載した事項との関係で新たな技術的事項を導入す
るものではない。
9 争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)について
【当事者が争わないとした事実】
15 本件特許1の登録日である平成27年3月20日から本件特許1の満了日で
ある令和4年5月27日までの間の、被告製品1及び同3の売上額は、(少なく
とも)「●(省略)●」である。
【原告の主張】
(1) 実施料率
20 ア 本件発明1の実施料相場
株式会社帝国データバンクが作成した「知的財産の価値評価を踏まえた特
許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロ
イヤルティ料率に関する実態把握~(平成22年3月)(甲43)の表Ⅲ-

11によれば、
「電気」は、日本の司法決定では平均値3.5%、最高値8.
25 0%であるものの、1997~2008年という少し過去の統計である。一
方で、同表によれば米国の司法決定では平均値11.1%、最高値は42.
0%である。
また、表Ⅱ-3(2009年11月15日~2010年2月15日の調査
実施期間のアンケート調査)によれば、
「電気」は平均値2.9%、最高値は
9.5%である。
5 イ 本件発明1の技術的意義が高いこと等
本件発明1は、特に大型の二次電池において(本件明細書1の【0002】、

容易に電池を製作できるようにするとともに(【0008】、二次電池の端

子と外部の接続部材との接触抵抗を低減させ(【0021】、十分に大きな

充放電電流を流すことができるようになり 【0023】、
( ) かつ、二次電池の
10 外部接続端子にトルクや衝撃が加わっても、二次電池の外装体内部の接続板
部と発電要素の活物質未塗工部との接合部分を損傷させたり、当該接合部分
での接合が外れたりすることを防止する(甲37)といった重要な効果を奏
するものであり、その技術的意義は高い。また、本件発明1に対する代替技
術は存在しない(なお、被告は周知技術(乙75ないし82)に係る主張を
15 するが、実質的に無効理由を追加するための証拠であり、時機に後れたもの
として却下されるべきである。。

ウ 本件発明1の売上げ等への貢献度等
本件発明1には、前記イの技術的意義があり、被告製品1及び3を構成す
る大型リチウムイオン電池セル全てにおいて実施されている。本件発明1に
20 よって、電池製作の容易性によるコスト低減、接触抵抗の低減による高効率
化、外部端子に対する耐トルク性・耐衝撃性が向上することになり、需要者
の購入動機に強い影響を与える。したがって、本件発明1は、被告製品1及
び3の売上げ及び利益の増加に貢献するものである。
また、本件発明1は「電池」の発明であるところ、被告製品1の蓄電シス
25 テム(蓄電システムにおいて電池の占める価格割合は、家電用蓄電システム
では約65.6%である。 や被告製品3の電池パックは、
) まさに電池が基幹
製品であり、その性能が製品において最も重視される。
エ 原告と被告の競業関係
原告は、本件発明1を実施して、従来から、40Ah及び80Ah級のリ
チウムイオン電池セルを製造し、これらのセルを用いた製品を製造販売して
5 いる。これに対し、被告製品1及び3を構成する大型リチウムイオン電池セ
ルは、その電池容量を55Ahとするものであり、次のとおりサイズも近似
するものであるから、市場において完全に競合している。
オ 被告の応訴態度等
10 本訴提起前に原告が話合いによる解決を提案したにもかかわらず、被告が
これを拒絶して、原告は本訴を提起せざるを得なくなった。また、本訴にお
いて、被告は、被告製品1及び3の売上げの開示を拒み、文書提出命令が確
定したのち、「●(省略)●」このような被告の応訴態度からすれば、客観
的真実としての被告製品1及び3の売上げが前記争いのない額を超えるこ
15 とが強く推認される。
カ これらの諸事情を総合考慮すると、本件特許権1を侵害した被告に事後的
に定められるべき、本件での実施に対し受けるべき料率は「●(省略)●」
を下らない。
(2) 実施料相当額
20 本件特許権1の特許権侵害を前提とした実施料相当額としては、被告製品1
及び3の売上高の「●(省略)●」が相当であり、「●(省略)●」が原告の
被った損害となる(特許法102条3項、4項)。
(3) 弁護士費用
本件訴訟は特許法に基づく専門的な事件であり、原告が自ら訴訟を提起、遂
行することが困難であり、法律専門家である弁護士に依頼しなければ解決が困
難な事案であることなどを勘案すれば、被告の特許権侵害行為と相当因果関係
のある弁護士費用の損害額は、「●(省略)●」を下らない。
5 (4) 消費税
上記の損害賠償と弁護士費用の合計額「●(省略)●」に対する消費税は、
「●(省略)●」である。なお、消費税率は、消費税法基本通達9-1-21
により判決が確定した日の税率となるため、損害の発生時期を問わず10%と
なる。
10 (5) 損害額の合計
本件特許権1の侵害行為により、原告が平成27年3月20日から令和4年
5月27日までに被った損害額は、合計「●(省略)●」となる。
このうち、原告は、一部請求として12億6500万円の支払を求める。
(6) 遅延損害金
15 平成27年3月20日から令和4年5月27日までの被告製品1及び3の
販売又は輸出による1日当たりの売上げは均等なものと推定される。
よって、原告は、被告に対し、平成27年3月20日から令和2年3月31
日までの損害8億8588万5377円に対する令和2年3月31日から支
払済みまで年5分の割合による遅延損害金、同年4月1日から令和4年5月2
20 7日までの損害3億7911万4623円に対する同日から支払済みまで年
3分の割合による遅延損害金の支払を求める。
【被告の主張】
原告の主張する相当実施料率を否認し争う。
(1) 本件発明1の実施料相場
25 被告が過去に締結したライセンス契約の事例に基づけば、電池(「蓄電シス
テム」を構成する一部である。 の製造原価に対するライセンス料率の割合は、

「●(省略)●」又は「●(省略)●」であったことや、原告は、蓄電システ
ム全体における電池の占める価格割合が約65.6%であると主張しているこ
と、証拠(甲47)からうかがえる蓄電システムに占める電池のコストの割合
の平均は47%であることから、蓄電システム全体の売上高に対して適用すべ
5 き実施料率は、0.656又は0.47を乗じた値とすべきことから、蓄電シ
ステムを中心とした被告製品1及び3全体の売上額を基準とすれば、相当な実
施料率は「●(省略)●」程度であり、せいぜい「●(省略)●」といえ、「●
(省略)●」を超えることすら想定し難い。
(2) 本件発明1の技術的意義が乏しいこと等
10 本件発明1の技術的意義は、「電池において、作製を容易にすることができ
る電池を提供すること」にあり(本件明細書1の【0008】、電池の機能に

影響を与えるものではなく、電池作製に際してごく一部の工程を容易にしたの
みであるから、本件発明1を実施した電池やその電池が組み込まれた製品の販
売への寄与は極めて小さい。また、被告製品1及び3には、本件発明1には存
15 在しないクリップ部材が存在し、このクリップ部材を使用してそれを設置する
という工程が増加することから、本件発明1の効果は被告製品1及び3におい
てほとんど発揮されていない。
また、被告製品1及び3において、集電接続板に相当する部材を含む構造の
作製を容易にするための代替手段は、公開公報に記載されたものだけでも多数
20 存在しており(乙66ないし69)、これらは全て平成12年以前の出願に係
る発明であるから、仮に特許登録がされていたとしても、存続期間の満了によ
り、現時点では、被告において実施することに何ら妨げはない。そもそも、被
告製品1及び3は、周知技術(乙75ないし82)を用いているだけであり、
本件発明1を用いているわけではない。
25 (3) 本件発明1が需要者の選好に寄与していないこと等
本件発明1の技術的意義は、電池の作製を部分的に容易にすることにすぎず、
電池の需要者にとって重要である、発電量、発電効率、充電時間等には全く影
響を与えないものである。需要者において、本件発明1が使用されていること
を理由に被告製品1又は3を購入した者は皆無であって、需要者にとってみれ
ば、本件発明1を採用してもしなくても、得られる効用には何ら影響がない。
5 また、被告製品1は、いずれも蓄電システムであって、
「電池」を一部品とし
て用いているにすぎず、被告製品3は、電池パックであり、複数の「電池」を
接続してモジュール化した上で更にバッテリ管理ユニットなどを搭載したも
のであって、単なる「電池」とは全く異なる。
(4) 被告が保有する多数の特許を実施していること
10 「●(省略)●」
(5) 以上によれば、被告製品1及び3の全体の売上高に対して、本件発明1の適
正な実施料率はせいぜい「●(省略)●」であり、原告が主張する「●(省略)
●」という実施料率は採用の余地がない。
10 争点4-2(本件特許権2の侵害に係る損害の発生及びその額等)について
15 【原告の主張】
(1) 本件特許権2の侵害に係る損害について
ア 実施料相当額の損害
被告は、平成28年10月から、別紙被告製品目録2の②記載の製品の販
売を開始し、以降、順次製品ラインナップを拡大して、本件特許2の登録日
20 である平成31年3月15日から令和3年1月末日までに、少なくとも合計
「●(省略)●」の売上げを上げている。
本件特許権2の特許権侵害を前提とした実施料相当額としては、被告製品
2の売上高の「●(省略)●」が相当であり、「●(省略)●」が原告の被
った損害となる(特許法102条3項、4項)。
25 イ 弁護士費用
本件訴訟は特許法に基づく専門的な事件であり、自ら訴訟を提起・遂行す
ることが困難であり、法律専門家である弁護士に依頼しなければ解決が困難
な事案であることなどを勘案すれば、被告の特許権侵害行為と相当因果関係
のある弁護士費用の損害額は、差止請求を実現するために要する費用もあわ
せれば、「●(省略)●」を下らない。
5 ウ 消費税
上記の損害賠償と弁護士費用の合計額 (省略) に対する消費税は、
「● ●」
「●(省略)●」である。
エ 損害額の合計
よって、本件特許権2の侵害行為により、原告が平成31年3月15日か
10 ら令和3年1月末日までに被った損害額は、合計「●(省略)●」となる。
オ 遅延損害金
原告は、被告に対し、「●(省略)●」に対する令和3年2月1日から支
払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 差止請求権及び廃棄請求権
15 被告製品2を業として製造し、販売し、もしくは輸出し、又は販売の申出を
する被告の行為は、本件特許権2を侵害するから、原告は、被告に対し、本件
特許権2の侵害行為の差止請求権及び被告製品2の廃棄請求権を有する。
【被告の主張】
いずれも争う。
20 第4 当裁判所の判断
1 判断の大要
当裁判所は、被告製品1及び3は本件特許権1を侵害し、被告製品2は本件特
許権2を侵害しないと判断し、被告は、主文掲記の限度で損害賠償義務を負うと
判断する。理由の筋道は次のとおりである。
25 (1) 争点1-1(被告製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか)につ
き、充足する。
(2) 争点1-2(被告製品2が構成要件F2及びG2を充足するか)につき、充
足しない。
(3) 争点2(本件特許1に無効理由があるか)につき、いずれの無効理由も認め
られない。
5 (4) 争点3(本件特許2に無効理由があるか)及び争点4-2(本件特許権2の
侵害に係る損害の発生及びその額等)は判断を要しない。
(5) 争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)は後記説示
のとおり。
2 争点1-1(被告製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか)につい
10 て
(1) 「活物質未塗工部の外側面」の構成を備えるかどうかについて
ア 本件特許1の特許請求の範囲請求項1は、発電要素の形状について特定し
ていない一方、請求項2は、
「前記発電要素は、巻回型の発電要素である請求
項1記載の電池。 と特定していることから、
」 本件発明1の発電要素は、特定
15 の形状に限定されるものではないと理解するのが自然である。
イ 本件明細書1には、「…上記実施形態では、長円筒形の巻回型の発電要素
1について説明したが、積層型の発電要素1の場合にも、積層の端面からは
み出した正極1aや負極1bの金属箔を同様に接続固定することができる。
さらに、本発明は、発電要素1の形状や種類は一切限定されず、集電接続板
20 2とこの発電要素1との接続構造も特に限定されない。(
」【0029】)との
記載があり、本件発明1の発電要素の形状や種類は限定されないことが明記
されている。
ウ 前記ア及びイに照らすと、本件発明1の発電要素は、特定の形状に限定さ
れるものではないものと認められ、被告製品1及び3の「活物質未塗工部の
25 両端の2つの面」 本件発明1の
は、 「活物質未塗工部の外側面」に相当する。
したがって、被告製品1及び3は、構成要件B2及びC2の「活物質未塗工
部の外側面」を充足する。
エ 被告は、本件明細書1や原告の意見書(甲20)の記載を指摘して、本件
発明1の発電要素が巻回型に限定される旨を主張する。しかし、これらの記
載は実施例の説明にすぎず、特許請求の範囲や本件明細書の記載は、前記ア
5 及びイのとおりであるから、被告の指摘を考慮しても、前記認定は左右され
ない。
(2) 「表面が接合される」の構成を備えるかどうかについて
ア 「接合」の字義は「つぎあわすこと」であるところ、
「つぎあわせる」の字
義は「①継いでつけ合わせる。②ぬいつけて一つにする。」であり、
「つけ合
10 わせる」の字義は「①はなれないように合わせる。くっつける。②添えてあ
しらう。配合する。」である(乙2ないし4)。そうすると、
「接合」の字義か
ら、活物質未塗工部と接続板部の表面が直接接触していることを要するかど
うかが一義的に明らかになるものではない。その他、本件発明1に係る請求
項において、活物質未塗工部と接続板部との接合の態様について特定をする
15 記載はない。
イ 本件明細書1には、挟持板4は、接続板部2bと金属箔とを溶着して確実
に接続固定するためだけに用いられるものであること(【0018】、本件

明細書1中の実施形態では、接続板部2bと正極1aや負極1bの金属箔と
の接続に挟持板4を用いる場合を示したが、挟持板4以外の接続部品を用い
20 たり、いずれの接続部品を用いることなく接続を行うことも可能であること
(【0026】)が記載されている。これらの記載によれば、本件発明1にお
いて、活物質未塗工部と接続板部とを接続固定する部材は限定されておらず、
接続の態様についても限定されないことが示唆されているものと理解でき
る。
25 ウ 前記ア及びイに照らすと、
「表面が接合される」とは、活物質未塗工部と接
続板部の表面が、直接接触している場合に限定されるものではなく、両部材
が何等かの部材を介する態様も含め離れないように合わせられていれば足
りるものと認められる。
被告製品1及び3の活物質未塗工部と接続板部との間には、活物質未塗工
部を厚さ方向に纏めるクリップ部材が存在するものの、クリップ部材を介し
5 て、活物質未塗工部と接続板部の表面が離れないように合わせられているこ
とから、被告製品1及び3は、構成要件B2及びC2の「表面が接合される」
を充足する。
エ 被告は、本件明細書1の記載を指摘して、
「接続板部」と金属箔とが直接接
触する形で結合されることを明示している旨を主張する。しかし、これらの
10 記載は実施例の説明にすぎず、特許請求の範囲や本件明細書の記載は、前記
ア及びイのとおりであるから、被告の指摘を考慮しても、前記認定は左右さ
れない。
(3) まとめ
したがって、被告製品1及び3は、構成要件B2及びC2を充足し、本件特
15 許1の技術的範囲に属する。
3 争点1-2(被告製品2が構成要件F2及びG2を充足するか)について
(1) 被告製品2が構成要件F2(「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内
蓋部及び外蓋部を有する蓋体」)を充足するかについて
ア 構成要件F2は、「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び
20 外蓋部を有する蓋体」と規定しており、「前記外装体本体の開口部を密閉状
態で塞ぐ」 「内蓋部」
は を修飾していると理解することが自然であるものの、
この記載から開口部を密閉状態で塞ぐ主体が一義的に明らかになるもので
はない。
イ 本件明細書2には次の記載がある。すなわち、従来、充放電可能な蓄電素
25 子に、当該蓄電素子の充電状態や放電状態などを監視するための制御基板な
どの電気機器が取り付けられた蓄電装置が知られている(【0002】)が、
従来の蓄電装置では、蓄電素子から発せられる熱により、電気機器が影響を
受けるおそれがあるという問題があった 【0004】。
( ) 本発明は、上記問題
を解決するためになされたものであり、蓄電素子が収容される外装体本体と、
前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体
5 とを備え、前記電気機器は、前記内蓋部と前記外蓋部との間に配置されてい
る構成等をとり、蓄電素子から発せられる熱を内蓋部によって遮断すること
によって(【0006】ないし【0021】、蓄電素子から発せられる熱によ

る電気機器への影響を低減することができる蓄電装置を提供することを目
的とし 【0005】、
( ) かかる効果を奏するものである 【0023】。
( ) また、
10 本件明細書2には、発明を実施するための形態として、外装体本体200内
方に、複数の蓄電素子400、規制部材500、バスバー600の順に配置
され、外装体本体200の開口部210が内蓋部320で閉止されているこ
と 【0033】、
( ) 内蓋部320上に電気機器700が配置されて、外蓋部3
10が電気機器700を覆うように内蓋部320上に配置されること(【0
15 034】、内蓋部320は、外装体本体200内方に複数の蓄電素子400

と規制部材500とバスバー600とが収容された状態で、外装体本体20
0の開口部210を塞ぐように配置され、内蓋部320には、電気機器70
0が載置されること(【0052】【図5】ないし【図9】
、 )が記載されてい
る。
20 これらの本件明細書2の記載内容に照らすと、本件発明2は、蓄電素子か
ら発せられる熱により、電気機器が影響を受けるおそれがあるという従来技
術の課題に対し、外装体本体に蓄電素子400を配置して、内蓋部で外装体
本体の開口部を塞ぐとともに、内蓋部に電気機器を載置する構成をとること
によって、蓄電素子から発せられる熱を内蓋部によって遮断し、電気機器へ
25 の影響を低減させることを目的とする発明であると認められる。
ウ このような構成要件F2の規定や本件発明2の目的、構造、効果に照らす
と、構成要件F2は、内蓋部が外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐことを
特定するものであると認められる。
被告製品2の中蓋には、5か所のスリットが設けられていることは当事者
間に争いがないから、被告製品2の内蓋部は、外装体本体の開口部を密閉状
5 態で塞いでいるとはいえず、被告製品2は、構成要件F2を充足しない。
エ 原告は、本件明細書2の記載(【0011】【0031】【0032】【0
、 、 、
054】)及び原告が本件特許2の出願時に提出した上申書(甲22)の記
載内容を指摘して、内蓋部と外蓋部で外装体本体の開口部を密閉状態で塞い
でいればよい旨を主張する。
10 しかし、前記イの本件明細書2の記載によれば、「外装体本体の開口部を
密閉状態で塞ぐ」のは、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響
を低減させるためであると認められるところ、外蓋部で外装体本体の開口部
を密閉状態で塞ぐことと、前記目的との関連性が明らかでない。また、本件
明細書2には、内蓋部と外蓋部で外装体本体の開口部を密閉状態にすること
15 やその技術的意義等に関する記載はない。一方で、本件明細書2の段落【0
054】には、内蓋部は、全ての蓄電素子の容器蓋部の上面を覆うように配
置されていることに限定されず、一部の蓄電素子の容器蓋部の上面を覆うよ
うに配置されていることにしても構わない旨が記載されているものの、その
旨が特許請求の範囲において特定されていないことに照らすと、かかる記載
20 は、蓄電素子から発せられる熱の影響を低減させるためのいくつかの実施形
態の一つであり、本件発明2の「密閉」される構成とは異なる形態について
説明したものと理解するのが相当である。
したがって、原告の前記主張は採用できない。
(3) 以上から、その余の構成要件の充足性を判断するまでもなく、被告製品2は
25 構成要件F2を充足しないから、本件発明2の技術的範囲に属しない。
4 争点2-1(本件発明1についての乙9発明に基づく進歩性欠如)について
(1) 乙12構成について
ア 被告は、電池外装体の外方に配置されるとともに外部接続端子に接続され
る端子接続部材を備える構成は周知であること(乙24ないし30)を踏ま
えると、乙12公報記載の「端子極柱」及び「フランジ部」がそれぞれ構成
5 要件A4の「外部接続端子」及び「端子接続部材」に相当し、乙12公報に
は、密閉形二次電池の蓋部の外方に配置されるとともに正極側の端子極柱に
接続される正極側のフランジ部、及び、前記蓋部の外方に配置されるととも
に負極側の端子極柱に接続される負極側のフランジ部という構成が記載さ
れているに等しいといえ、仮にそうでなくとも、フランジ部を容器の内方に
10 設置するか外方に設置するかは、設計事項にすぎない旨を主張する。
イ しかし、乙12公報の特許請求の範囲【請求項1】には、
「フランジ部は係
合部を有し、蓋体の下面にはその係合部に係合する回転阻止部が設けられ、
これらにより端子極柱の回り止め部を形成し」との記載があり、発明の詳細
な説明には、同様の記載のほか(【0019】、合成樹脂製の蓋体1には、前

15 記ポール部2aを挿入する正負2個の端子孔1a及び下面側に前記フラン
ジ部2bの側面2辺の係合部2kと当接する位置に固定リブ回転阻止部4
が設けられていること 【0037】、
( ) 発明の効果として、端子極柱に一体に
形成された平面状フランジ部上面と蓋体下面の間に環状パッキングを介在
させ、ポール部に環状押圧バネを係止させて端子極柱を蓋体に固定すること
20 によって、この環状パッキングが上下方向に圧縮され、端子極柱を蓋板に対
して確実に密閉しつつ固定できること(【0080】、またフランジ部と蓋

体の下面に端子極柱の回り止め部を有することによって、端子極柱に外力が
加わっても、端子極柱が回転することがないため、極板群等にねじり応力が
加わらず、内部短絡の発生や電池性能の低下を防止でき、電池の耐久性を長
25 期にわたり保持できること(【0081】)が記載されている。
これらの記載に照らすと、乙12公報記載の「フランジ部」は、蓋体の下
面に設けられており、蓋体の下面にはフランジ部の係合部に係合する回転阻
止部が設けられていることにより、端子極柱に外力が加わっても端子極柱が
回転することがないこと等という効果を奏するものであると認められる。そ
うすると、乙12公報は、フランジ部が蓋体の下面に設けられている構成を
5 開示していると認められ、端子接続部材が電池外装体の外方に配置されてい
る構成を開示しているとはいえない。
また、乙12公報には、フランジ部を蓋体の外方に設ける構成についての
示唆はないから、仮に、電池外装体の外方に配置されるとともに外部接続端
子に接続される端子接続部材を備える構成が周知であったとしても、乙12
10 公報に、構成要件A4の構成に相当する構成が記載されているに等しいとは
いえず、フランジ部を容器の内方に設置するか外方に設置するかが設計事項
であるともいえない。
したがって、乙12構成は、本件発明1の構成要件A4に相当する構成と
は認められず、乙9発明に乙12構成を適用しても、本件発明1の構成に到
15 達しない。
ウ したがって、容易想到性を検討するまでもなく、被告の主張は理由がない。
(2) 乙9発明に乙22構成を適用することについて
ア 被告は、乙22公報は、電池エンクロージャ部分30の上部に配置される
とともにスタッド12に接続される電流板4を開示しており、これが構成要
20 件A4に相当し、当業者において、乙9発明に乙22構成を組み合わせる動
機付けがある一方、阻害事由は存在しない旨を主張する。
イ しかし、乙22公報記載の発明の名称は「電池用自動遮断器」であり、発
明の詳細な説明には次の記載がある。すなわち、本発明は、所定の過電流の
発生時に電池からの電流を遮断する自動遮断器を経由して充電式電池から
25 の電流を制御すること、またその機構を製造する単純な方法を提供すること
を目的とし(【0001】【0005】、電池エンクロージャ内部のバス構
、 )
造が、電池エンクロージャの外側にある端子アセンブリに電気フィードスル
ーによって接続され、電気フィードスルーは、端子アセンブリに形成された
穴の周縁に沿って形成される溶接接続部によって端子アセンブリに接続さ
れ、所定の過電流が発生したときに溶接接続部が切断されることによって、
5 電流を遮断するものである(【0007】。そして、電流板4は、端子アセン

ブリ2の電気フィードスルー20への接続を容易にするために孔6を含み
(【0016】、
) 孔6、ポスト22、および穴10の相対的な直径は、電流板
4と接触ディスク8の間の各溶接接続部の直径が、各接触ディスク8と当該
のポスト22の間の溶接接続部11の直径よりも大きくなるように、かつ各
10 ポストの直径が各穴10の直径よりも大きく、そのため各ポスト22とバス
構造34の間の電気接続が、各ポスト22と当該の接触ディスク8の間の溶
接接続部11の直径よりも大きくなるような寸法に作られており、溶接接続
部11が最小の直径を有し、それが導体の最短の長さであり、最小の電流容
量を有するため、溶接接続部11は、過電流の発生時に最初に破断し、した
15 がって遮断器として働くことになる(【0020】。そして、この自動遮断

器は、任意のサイズおよびタイプの電池、特に電気自動車用の充電式電池に
使用することができ、正(プラス)の側または負(マイナス)の側で使用す
ることができる(【0010】。

これらの記載に照らすと、乙22公報記載の発明は、過電流の発生時に電
20 池からの電流を自動的に遮断することを目的とする発明、すなわち、電池に
ヒューズを設ける発明であって、正極又は負極の一方のみに使用することが
想定されており、乙22公報にはその旨が明記されている。したがって、乙
9発明に乙22構成を適用しても、当業者は、正極と負極の双方に端子接続
部材を設ける構成要件A4の構成を想到し得ない。
25 また、乙9発明は、活物質が形成されていない集電箔の部分のみが積層さ
れている集電箔積層部を有し、かつ、同部を挟み付ける挟扼集電部材と、同
部材とリードにより導通された外部端子とを有する構造を採用することに
より、簡便かつ迅速に電極からの集電処理を行うことを提供することを目的
とする発明(乙9公報の【請求項1】【0007】【0008】【図7】
、 、 、 )で
あるのに対し、乙22公報記載の発明は、バスワッシャ、導電ポスト、接触
5 ディスク、電流板等を経てスタッドまで至る経路において、過電流の発生時
に電池からの電流を自動的に遮断することを目的とする発明である。これら
の発明は、その課題や目的を異にしているほか、当該目的を達成するための
集電部材から外部端子までの通電経路の構造を異にしており、各発明を構成
する各部材の対応関係が明らかではないことから、仮に、乙9発明と乙22
10 公報記載の発明の技術分野に関連性があるとしても、そのことから直ちに、
乙9発明のケース蓋の外方に乙22公報の電流板を適用することを動機付
けることにならず、乙22公報にこれを示唆する記載もない。
したがって、(乙22構成を正極と負極の双方に設ける構成が乙22文献
に開示されているとはいえないから、乙22構成は構成要件A4に相当しな
15 いとみる余地もあるが、)仮に、乙22公報の電流板4が本件発明1の端子
接続部材に相当するとしても、乙9発明に乙22構成を適用する動機付けが
あるとはいえず、容易想到性は認められない。
(3) 乙9発明に乙23構成を適用することについて
ア 被告は、乙23公報に開示された導電体要素5及び接続手段6(6a)が
20 構成要件A4の「正極側の端子接続部材」及び「負極側の端子接続部材」に
相当し、当業者において、乙9発明に乙23構成を組み合わせる動機付けが
ある一方、阻害事由は存在しない旨を主張する。
イ しかし、乙23公報には、陰極を形成する巻線は、例えば平らな金属棒2
2によって形成されるコレクタに電気的に接続され、この金属棒22自身は
25 ケース又はカバーに接続されて、正端子8への導電体要素5を形成する 【0

018】 と記載されている。かかる記載と【図14】を併せて考慮すると、

乙23公報は、巻線(発電要素)がコレクタ(金属棒22)に電気的に接続
され、金属棒22はケース又はカバー4に接続されて、ケース又はカバー4
は正端子8に接続され、金属棒22とケース又はカバー4が導電体要素5を
形成する構成を開示しているものと認められる。そうすると、乙23公報の
5 ケース又はカバー4(電池外装体)は、それ自体が導電体要素5を構成して
いることから、導電体要素5は電池外装体の外方に配置されているとはいえ
ず、乙23公報にこれを示唆する記載もない。
したがって、乙23構成は、構成要件A4に相当する構成でないから、乙
9発明に乙23構成を適用しても、相違点乙9に係る本件発明1の構成に到
10 達しない。
ウ この点を措いても、前記(2)イのとおり、乙9発明は簡便かつ迅速に電極
からの集電処理を行うことを提供することを目的とする発明であるのに対
し、乙23公報記載の発明は、ブレーカスイッチ及びブレーカスイッチを含
むバッテリの発明であるほか(乙23公報の【発明の名称】【0019】 、
、 )
15 乙9発明及び乙23公報には、外部端子にトルクが作用することによる課題
についての記載や示唆はないから、これらの発明は、課題や目的の共通性は
認められず、その他、乙9発明に乙23公報の導電体要素5の適用を動機付
ける示唆もない。
したがって、仮に、乙23公報の導電体要素5が本件発明1の端子接続部
20 材に相当するとしても、乙9発明に乙23構成を適用する動機付けがあると
はいえない。
(4) 以上から、本件発明1は、当業者が、乙9発明に乙12構成、乙22構成及
び乙23構成を適用しても、本件発明1の構成に到達しないか、又は、相違点
乙9に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たとはいえない。
25 争点2-1に係る被告の主張は、いずれも理由がない。
5 争点2-2(本件発明1についての乙10発明に基づく進歩性欠如)について
(1) 前記4のとおり、乙12構成及び乙23構成は、いずれも 構成要件A4に
相当する構成であるとは認められない(乙22構成も構成要件A4に相当しな
いとみる余地があることも前記のとおり。)から、これらの適用をいう被告の
主張は前提を欠く。
5 (2) 乙10発明に乙22構成を適用することについては、次のとおり示唆や動機
付けが認められず、容易想到性が認められない。
すなわち、乙22公報記載の発明は、電池にヒューズを設ける発明であって、
正極又は負極の一方のみに使用することが想定されているから、乙10発明に
乙22構成を適用しても、当業者は、正極と負極の双方に端子接続部材を設け
10 る構成(構成要件A4)を想到し得ない。
また、乙10発明は、平角型二次電池の製造方法の発明であり(乙10公報
の【請求項1】、電極リード体上に複数枚の集電体のリード部を重ねて載せ、

その上に複数の孔が設けられた押え治具で押え付けた後、この複数の孔の部分
より超音波溶接ホーンを用いて溶接することにより、大型の二次電池において
15 複数枚の平板電極(集電リード部)と電極端子との溶接を良好とすることを目
的とする発明である(【0008】ないし【0018】。これに対し、乙22公

報記載の発明は、前記4のとおりであって、その課題や目的を異にするほか、
当該目的を達成するための集電部材から外部端子までの通電経路の構造を異
にしており、各発明を構成する各部材の対応関係が明らかではないことから、
20 仮に、乙10発明と乙22公報記載の発明の技術分野に関連性があるとしても、
そのことから直ちに、乙10発明の電池ケース蓋の外方に乙22公報の電流板
を適用することを動機付けることにならず、乙22公報にこれを示唆する記載
もない。
したがって、仮に、乙22公報の電流板4が本件発明1の端子接続部材に相
25 当するとしても、乙10発明に乙22構成を適用する動機付けがあるとはいえ
ない。
(3) 乙10発明に乙23構成を適用することについては、次のとおり示唆や動機
付けが認められず、容易想到性が認められない。
すなわち、乙10発明は、平角型二次電池の製造方法の発明であり、大型の
二次電池において複数枚の平板電極(集電リード部)と電極端子との溶接を良
5 好とすることを目的とする発明であるのに対し、乙23公報記載の発明は、前
記4のとおりであるほか、乙10発明及び乙23公報には、外部端子にトルク
が作用することによる課題についての記載や示唆はないことから、乙10発明
との課題や目的の共通性は認められず、その他、乙10発明に乙23公報の導
電体要素5の適用を動機付ける示唆もない。
10 したがって、仮に、乙23公報の導電体要素5が本件発明1の端子接続部材
に相当するとしても、乙10発明に乙23構成を適用する動機付けがあるとは
いえない。
(4) 以上から、当業者が、乙10発明に乙12構成、乙22構成及び乙23構成
を適用しても、本件発明1に到達しないか、又は適用することの容易想到性は
15 認められない。
争点2-2に係る被告の主張は、いずれも理由がない。
6 争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如)について
(1) 乙12構成、乙22構成及び乙23構成の構成要件A4相当性
前記4、5のとおりである。
20 (2) 乙11発明に乙22構成を適用することについては、次のとおり示唆や動機
付けが認められず、容易想到性が認められない。
すなわち、乙22公報記載の発明は、電池にヒューズを設ける発明であって、
正極又は負極の一方のみに使用することが想定されているから、乙11発明に
乙22構成を適用しても、当業者は、正極と負極の双方に端子接続部材を設け
25 る相違点乙11-1に係る構成を想到し得ない。
また、乙11発明は、巻回型の発電要素を採用した密閉型電池の発明であり
(乙11公報の【請求項1】、発電要素の軸方向両端面に接続された一対の集

電板と、各集電板に接続された一対の端子とを備え、同端子が発電要素の軸線
に対して交差する方向に沿って延びていることを特徴とする構成をとること
により、高出力が得られるとともに容積効率を向上させることができる密閉型
5 電池を提供することを目的とする発明である 【0001】
( ないし【0009】。

これに対し、乙22公報記載の発明は、前記4のとおりであって、乙11発明
とは、課題や目的を異にするほか、当該目的を達成するための集電部材から外
部端子までの通電経路の構造を異にしており、各発明を構成する各部材の対応
関係が明らかでないことから、仮に、乙11発明と乙22公報記載の発明の技
10 術分野に関連性があるとしても、そのことから直ちに、乙11発明の蓋部の外
方に乙22公報の電流板を適用することを動機付けることにはならず、乙22
公報にこれを示唆する記載もない。
(3) 乙11発明に乙23構成を適用することについては、次のとおり示唆や動機
付けが認められず、容易想到性が認められない。
15 すなわち、乙11発明は、巻回型の発電要素を採用した密閉型電池の発明で
あり、高出力が得られるとともに容積効率を向上させることができる密閉型電
池を提供することを目的とする発明であるのに対し、乙23公報記載の発明は、
前記4のとおりであるほか、乙11発明及び乙23公報には、外部端子にトル
クが作用することによる課題についての記載や示唆はないことから、乙11発
20 明との課題や目的の共通性は認められず、その他、乙11発明に乙23公報の
導電体要素5の適用を動機付ける示唆もない。
したがって、仮に、乙23公報の導電体要素5が本件発明1の端子接続部材
に相当するとしても、乙11発明に乙23構成を適用する動機付けがあるとは
いえない。
25 (4) 以上から、当業者が乙11発明に乙12構成、乙22構成及び乙23構成を
適用しても、本件発明1に至らないか、又は適用することにつき容易想到性は
認められない。
争点2-3に係る被告の主張は、いずれも理由がない。
7 争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)について
(1) 被告製品1及び3の売上げ
5 本件においては、本件特許1の登録日である平成27年3月20日から本件
特許1の満了日である令和4年5月27日までの被告製品1及び3の売上げ
が、少なくとも「●(省略)●」であることを前提に審理されることとなった。
原告は、特許法102条3項により推定される損害を主張するので検討する。
(2) 相当な実施料率について
10 ア 該当技術分野における実施料率の状況
本件において、本件発明1の実施許諾契約の実例を認めるに足りる証拠は
ないところ、証拠(甲43)によれば、アンケート結果による技術分類別ロ
イヤルティ料率の平均値のうち、電気の技術分類では、平均2.9%、最大
値9.5%、最小値0.5%であること、日本の司法決定によるロイヤルテ
15 ィ料率のうち、電気分野の平成9年から平成20年の累計は、平均値3.5%、
中央値3.0%、最高値8.0%であり、平成16年から平成20年は、平
均値3.0%、最大値7.0%、最小値1.0%であることが認められる。
イ 本件発明1の技術的意義等
本件明細書1によれば、従来の非水電解質二次電池は、作製が困難である
20 という課題があったことに対し、本件発明1は、正極側及び負極側において、
電池外装体の外方に配置されるとともに外部接続端子に接続される端子接
続部材、及び、活物質未塗工部と端子接続部材とを接続する集電接続板とを
備え、集電接続板は、発電要素の端部から中央方向に水平に延びるとともに
端子接続部材と接続される本体部と、同本体部から突設されて、活物質未塗
25 工部の外側面のうちの端部と活物質塗工部との間に、表面が接合される接続
板部とを有する構成をとることにより、作製を容易にすることができる電池
を提供することを目的とし、かかる効果を奏する発明である(【0006】、
【0008】ないし【0010】。

また、証拠(甲37)及び弁論の全趣旨によれば、本件発明1が端子接続
部材と集電接続板の本体部の構成を備えている技術的意義は、電池外装体の
5 内外において、外部接続端子と集電接続板の接続板部との間の距離を長くす
ることができるようになり、外部接続端子に加えられるトルクや衝撃を接続
板部と発電要素の活物質未塗工部との接合部分に伝わりにくくすることが
可能となり、当該接合部分を損傷させたり、当該接合部分での接合が外れた
りすることを防止できることにあることが認められる。これらの事実関係に
10 照らすと、本件発明1は、電池製作を容易にし、電池の耐久性を高めること
に資する電池に関する発明であることが認められる。そして、被告が代替技
術として指摘をする公開特許公報(乙66ないし69)は、いずれも発電要
素からの集電を容易にする集電体を形成する構成を開示しているものの、本
件発明1に係る構成要件B2及びC2(活物質未塗工部の端部と活物質塗工
15 部との間に、表面が接合される接続板部とを有する構成)や構成要件A4(電
池外装体の外方に配置されるとともに外部接続端子に接続される端子接続
部材)に相当する構成を開示するものではないことから、本件発明1の代替
手段であるとは認められず、その他これを認めるに足りる証拠はない(なお、
被告は、被告製品1及び3は、周知技術を用いているだけで本件発明1を用
20 いているわけではない旨を主張し、その証拠(乙75ないし82)を提出す
るが、被告製品1及び3が本件発明1の技術的範囲に属し、本件発明1に無
効理由は存在しないことは、前判示のとおりであって、該主張は実質的に侵
害論を蒸し返すものにほかならず、かつ、約一年間をかけてされた損害論の
審理の終盤にされたものであるから、民訴法157条に基づき、時機に後れ
25 た攻撃防御方法として却下することとする。。

一方、本件発明1は、電池の機能に直接的に資するものではなく、また、
被告製品1は蓄電システムであるところ、蓄電システムにおいて電池の占め
る価格割合は、家庭用蓄電システムでは約65.6%であること(甲47)、
被告製品3は電池パックであり、電池はその一部を構成するものであること
から、本件発明1が被告製品1及び3の売上げに占める貢献の程度は、その
5 限りにおいて限定的である。
ウ その他の事情
原告と被告は競合関係にあること、原告と被告は紛争関係にあることに加
え、本件においては、被告は、確定した文書提出命令によって提出を命じら
れた文書の提出を拒み、原告は被告製品1及び3の正確な売上高の開示を受
10 けることができなかったことが当裁判所に顕著であるところ、この事情は、
実施許諾に当たり特許権者が実施権者の正確な販売数量、利益等を把握でき
ないリスクに相当するものであって、実施料の算定にあたり考慮されるべき
(上振れさせる)要因に当たるものというべきである。
エ 小括
15 上記アからウに述べた事情その他本件に表れた事情を総合考慮すると、本
件発明1の実施に対して受けるべき料率としては「●(省略)●」を相当と
認める。これに沿わない原告及び被告の主張は、上記説示に照らし、いずれ
も採用することができない。
(3) 実施料相当額の損害
20 本件特許権1の侵害による実施料相当額の損害は、(1)の金額に(2)の料率を
乗じた4億4250万円となる。
(4) 消費税相当額の損害
特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金に対して消費税が課せられるの
は、損害賠償金の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められることによ
25 るものであるところ(消費税法4条1項、消費税法基本通達5-2-5) 本件

では、特許権侵害行為が、資産の譲渡等に相当する行為に該当するものと解さ
れる。そうであるところ、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金は、特許
権侵害行為時に直ちに発生して金額が確定するものであるから、特許権侵害行
為時、すなわち、被告製品1及び3の販売時を基準として、適用される消費税
率を決定すべきと解するのが相当である。
5 本件特許権1の侵害期間は、平成27年3月20日から令和4年5月27日
まで(2626日)であるところ、被告は、被告製品1及び3の売上げの詳細
を開示しないから、前記(3)の損害合計4億4250万円を、消費税率が8%
から10%に改正された令和元年10月1日の前後で日数に応じ案分するほ
かない。これによると、平成27年3月20日から令和元年9月30日まで(1
10 656日。以下「期間A」とする。)の損害が2億7904万7982円、令和
元年10月1日から令和4年5月27日まで(970日。以下「期間B」とす
る。 の損害が1億6345万2018円となる
) (小数点以下四捨五入。以下同
じ。。

したがって、本件特許権1の侵害による消費税相当額の損害は、各金額に当
15 該期間の所定の税率を乗じた2232万3839円と1634万5202円
の合計3866万9041円となる。
以上から、(3)及び(4)の合計額である4億8116万9041円が、特許法
102条3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」
となる。
20 (5) 弁護士費用相当の損害
本件特許権1の侵害と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は、上記
損害合計の1割に当たる4811万6904円(なお、期間Aと期間Bの各損
害額に応じて案分すると期間Aにつき3013万7182円、期間Bにつき1
797万9722円)をもって相当と認める。
25 (6) 損害額の合計
本件特許権1の侵害により原告が被った損害は、合計5億2928万594
5円となる。
(7) 遅延損害金について
期間Bの損害(1億9777万6942円)を、民法改正前(令和元年10
月1日から令和2年3月31日まで183日。以下「期間B1」とする。)と改
5 正後(令和2年4月1日から令和4年5月27日まで787日。以下「期間B
2」とする。 の日数で案分すると、
) 期間B1の損害は3731万2557円、
期間B2の損害が1億6046万4385円となり、期間Aと期間B1におけ
る損害合計(3億6882万1560円)に対する遅延損害金の利率は年5分、
期間B2における損害に対する遅延損害金の利率は年3パーセントとなる。
10 (8) まとめ
本件特許権1の侵害を理由とする原告の請求は、被告に対し、5億2928
万5945円及びうち3億6882万1560円に対する令和2年3月31
日から支払済みまで年5分の割合、うち1億6046万4385円に対する令
和4年5月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金
15 の支払を求める限度で理由がある。
第5 結論
以上の次第で、原告の請求のうち、本件特許権1の侵害を理由とする請求につい
ては、主文掲記の限度で理由があるから認容し、その余は棄却することとし、本件
特許権2の侵害を理由とする請求については理由がないから、いずれも棄却するこ
20 ととして、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
松 阿 彌 隆
裁判官
阿 波 野 右 起
裁判官峯健一郎は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官
10 松 阿 彌 隆
※別紙特許公報については掲載省略

(別紙)
被告製品目録
1 下記①~⑬記載の製品名の蓄電システム
① POWER YIILE HEYA(パワーイレ・ヘヤ)
5 ② POWER YIILE HEYA S(パワーイレ・ヘヤ・エス)
③ POWER YIILE(パワーイレ)
④ POWER YIILE+(パワーイレ・プラス)
⑤ POWER YIILE 3(パワーイレ・スリー)
⑥ POWER iE6(パワーイエ・シックス)
10 ⑦ POWER iE6 HYBRID(パワーイエ・シックス・ハイブリッド)
⑧ POWER iE5 Link(パワーイエ・ファイブ・リンク)
⑨ Power Storager X(パワーストレージャー・エックス)
⑩ Power Storager 10(パワーストレージャー・テン)
⑪ ELIIY ONE(エリーワン)
15 ⑫ POWER iE5 GRID(パワーイエ・ファイブ・グリッド)
⑬ Power Storager D20(パワーストレージャー・ディー・
トゥエンティ)
2 下記①~④記載の商品名及び型番の二輪車始動用バッテリー
20 ① HY85S
② HY93
③ HY93-C
④ HY110
25 3 「Enphase AC Battery」向け電池パック
以上
(別紙) 本件各発明の構成要件等
本件発明1 被告製品1及び3 本件発明2 被告製品2
原告の主張 被告の主張
複数の蓄電素子と、複数の前記蓄電素子それぞ 4個の電池と、4個の前記電池それぞれに接続さ
れに接続されて複数の前記蓄電素子それぞれの れて4個の電池それぞれの状態を取得する電池監
A1 蓋板を有する電池外装体と、 蓋部材を有する容器本体と、 E 認める。
状態を取得する電気機器とを備える蓄電装置で 視部とを備える二輪車始動用バッテリーであっ
あって、 て、
一端部に正極の活物質未塗工部を有し、他端部に負極 一端部に正極の活物質未塗工部を有し、他端部に負極
A2 F1 前記蓄電素子は、非水電解質二次電池であり、 前記電池は、リチウムイオン電池であり、 認める。
の活物質未塗工部を有する発電要素と、 の活物質未塗工部を有する積層型の発電要素と、
前記二輪車始動用バッテリーは、4個の前記電池
前記蓄電装置は、複数の前記蓄電素子が収容さ
前記蓋板の一端部に配置された正極側の外部接続端 前記蓋部材の一端部に配置された正極側のねじ部材、 が収容される容器と、前記容器の開口部を密閉状
れる外装体本体と、前記外装体本体の開口部を 認める(ただし、中蓋は支持部材と表現すべきであ
A3 子、及び、前記蓋板の他端部に配置された負極側の外 及び、前記蓋部材の他端部に配置された負極側のねじ F2 態で塞ぐ中蓋及び上蓋を有する蓋とを備え、中蓋
密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体 る。)
部接続端子と、 部材と、 には下記電池の略L字型をなすタブを通すための
とを備え、
5カ所のスリットが設けられており、
前記電池外装体の外方に配置されるとともに前記正極 前記容器本体の外方に配置されるとともに前記正極側
側の外部接続端子に接続される正極側の端子接続部 のねじ部材に接続される正極側の端子接続部材、及
A4 材、及び、前記電池外装体の外方に配置されるととも び、前記容器本体の外方に配置されるとともに前記負 G1 前記電気機器は、 前記電池監視部は、 認める。
に前記負極側の外部接続端子に接続される負極側の端 極側のねじ部材に接続される負極側の端子接続部材
子接続部材と、 と、
(前記二輪車始動用バッテリーが備える複数の前記
電池のそれぞれに前記電池の両端部を挟持するク
リップ部材が設けられており、前記クリップ部材に
前記蓄電装置が備える複数の前記蓄電素子に対 前記二輪車始動用バッテリーが備える複数の前記
前記正極の活物質未塗工部と前記正極側の端子接続部 前記正極の活物質未塗工部と前記正極側の端子接続部 接合され、当該クリップ部材から電池の長手方向に
A5 G2 して当該複数の前記蓄電素子のそれぞれに設け 電池に対して当該複数の前記電池のそれぞれに設
材とを接続する正極側の集電接続板、及び、 材とを接続する正極集電体、及び、 向けて突設し、突設した先から直上部に延伸して略
られた電極端子が配置されている側、かつ、 けられた電極端子が配置されている側、かつ、
L字型をなすタブを備えているところ、)前記電池
を直立させて4つ並べることにより形成される上側
面の中央部の直上、かつ、
前記負極の活物質未塗工部と前記負極側の端子接続部 前記負極の活物質未塗工部と前記負極側の端子接続部 前記中蓋と前記上蓋との間に保護ケースに収容さ 前記支持部材及び前記蓋との間に保護ケースに収容
A6 G3 前記内蓋部と前記外蓋部との間に
材とを接続する負極側の集電接続板とを備え、 材とを接続する負極集電体とを備え、 れた状態で された状態で
B 前記正極側の集電接続板は、 前記正極集電体は、 G4 配置されており、 配置されており、 認める。
前記発電要素の正極側の端部から前記発電要素の中央 前記発電要素の正極側の端部から前記発電要素の中央
前記内蓋部には、外部端子が取り付けられてい 前記中蓋には、外部接続端子が取り付けられてい 前記支持部材には、外部接続端子が取り付けられて
B1 方向に水平に延びるとともに前記正極側の端子接続部 方向に水平に延びるとともに前記正極側の端子接続部 H
る る いる
材と接続される正極側の本体部と、 材と接続される正極側の基部と、
前記正極側の基部から突設されて、前記正極の活物質
前記正極側の本体部から突設されて、前記正極の活物 未塗工部の両端の2つの面を挟んで前記正極の活物質
質未塗工部の外側面のうちの前記正極の活物質未塗工 未塗工部を全て厚さ方向に纏める金属板を折り曲げる
B2 I 蓄電装置。 二輪車始動用バッテリー 認める。
部の端部と前記正極の活物質塗工部との間に、表面が ことによって形成されたクリップ部材の面であって前
接合される正極側の接続板部とを有し、 記発電要素を重ねた際に2つのクリップ部材が対向す
る面に、表面が接合される正極側の接続部とを有し、
C 前記負極側の集電接続板は、 前記負極集電体は、
前記発電要素の負極側の端部から前記発電要素の中央 前記発電要素の負極側の端部から前記発電要素の中央
C1 方向に水平に延びるとともに前記負極側の端子接続部 方向に水平に延びるとともに前記負極側の端子接続部
材と接続される負極側の本体部と、 材と接続される負極側の基部と、
前記負極側の基部から突設されて、前記負極の活物質
前記負極側の本体部から突設されて、前記負極の活物 未塗工部の両端の2つの面を挟んで前記負極の活物質
質未塗工部の外側面のうちの前記負極の活物質未塗工 未塗工部を全て厚さ方向に纏める金属板を折り曲げる
C2
部の端部と前記負極の活物質塗工部との間に、表面が ことによって形成されたクリップ部材の面であって前
接合される負極側の接続板部とを有する 記発電要素を重ねた際に2つのクリップ部材が対向す
る面に、表面が接合される負極側の接続部とを有する
D 電池。 リチウムイオン電池。
(別紙)
被告製品1及び3説明書
1 図面
5 (1) 図1 被告製品1及び3を構成するリチウムイオン電池の斜視図
(2) 図2 被告製品1及び3のリチウムイオン電池の分解斜視図
(3) 図3 集電体の斜視図
(4) 図4 発電要素の構成
(5) 図5 活物質未塗工部の金属箔の端部の構成
(6) 図6 活物質未塗工部と集電体の接続部の構成(図1のA-A断面から容器
5 本体を除いた模式図)
2 写真
(1) 写真1 被告製品1(POWER YIILE 3)
5 (2) 写真2 被告製品1(POWER YIILE 3)から背面パネルを取り
外した状態
(3) 写真3 被告製品1(POWER YIILE 3)から取り出したリチウ
ムイオン電池
(4) 写真4 被告製品1(POWER YIILE 3)のリチウムイオン電池
から容器を除去した負極側
以上
(別紙)
被告製品2説明書
1 図面
5 (1) 図1 被告製品2の斜視図
(2) 図2 被告製品2の図1の矢印Aに沿って上蓋の上面を切除し、電池監視部
を外側に取り出した分解斜視図
(3) 図3 被告製品2の図1の矢印Aに沿って上蓋の上面を切除した上面図
(4) 図4 容器内のリチウムイオン電池の図
2 写真
(1) 写真1 被告製品2(HY93)
(2) 写真2 被告製品2の上蓋の上面を切除した状態の上面写真
(3) 写真3 保護ケースに収容された電池監視部
5 (4) 写真4 容器内のリチウムイオン電池
以上
(別紙)
発電要素の図
5 以上
(別紙) 主引用例の構成(本件発明1)
被告の主張 被告の主張 被告の主張
乙9a1:ケース本体71とケース蓋72からなるケース70と、 乙10a1:上蓋10aを有する電池ケース10と、 乙11a1:蓋部を有する密閉形電池用パッケージ19と、
乙11a2:正極が、アルミニウム箔の所定幅が露出するよう
乙9a2:一端部に正極の活物質が形成されていない部分を有し、他端部 乙10a2:一端部に正極の活物質の未塗布部を有し、他端部に
に活物質が塗布され、負極が、銅箔の所定幅が露出するように
に負極の活物質が形成されていない部分を有する電極体10と、 負極の活物質の未塗布部を有する積層体14と、
活物質が塗布された発電要素11と、
乙10a3:前記電池ケース蓋の一端部に配置された正極側の外
乙9a3:前記ケース蓋の一端部に配置された正極側の外部端子80、及 乙11a3:前記蓋部の一端部に配置された正極端子17、及
部正極端子11、及び、前電池ケース蓋の他端部に配置された負
び、前記蓋板の他端部に配置された負極側の外部端子80と、 び、前記蓋部の他端部に配置された負極端子16と、
極側の外部負極端子12と、
乙9a5:前記正極の活物質が形成されていない部分と前記正極側の外部 乙10a5:前記正極の活物質の未塗布部と前記正極側の外部正
乙11a5:前記正極の活物質の未塗布部と前記正極端子とを
端子とを接続する正極側の挟扼集電部材50及びリード90、並びに、前 極端子とを接続する正極リード体11a、及び、前記負極の活物
接続する正極集電板15、及び、前記負極の活物質の未塗布部
記負極の活物質が形成されていない部分と前記負極側の外部端子とを接続 質の未塗布部と前記外部負極端子とを接続する負極リード体12
と前記外部負極端子とを接続する負極集電板14とを備え、
する負極側の挟扼集電部材50及びリード90とを備え、 aとを備え、
乙 乙10b:前記正極リード体11aは、 乙 乙11b:前記正極集電板15は
乙 乙9b:前記正極側の集電構造は、
1 1

0 乙10b1:前記積層体の正極側の端部から前記積層体の中央方 1 乙11b1:前記発電要素11の正極側の端部から前記発電要
発 乙9b1:前記電極体の正極側の端部から前記電極体の中央方向に水平に
発 向に水平に延びるとともに正極側の外部正極端子と接続される正 発 素11の中央方向に水平に延びるとともに前記正極端子17に
明 延びるとともに正極側の外部端子と接続されるリード90と、
明 極側の水平部と、 明 接続される支持部材22に接続され、

の の
構 乙9b2:前記リード90から突設されて、前記正極の活物質が形成され 乙10b2:前記正極側の水平部から突設されて、前記正極の活
構 構
成 ていない部分の積層端面のうちの前記正極の活物質が形成されていない部
成 物質の未塗布部の積層端面のうちの前記正極の活物質の未塗布部 成 乙11b2:前記支持部材22の端部から垂直に突設されて、
分の端部と前記正極の活物質が形成されている部分との間に、表面が接合 の端部と、前記正極の活物質の塗布部との間に、表面が接合され 活物質の未塗布部の端部に表面がレーザ溶接されており、
される正極側の挟扼集電部材50とを有し、 る垂直部とを有し、
乙9c:前記負極側の集電構造は、 乙10c:前記負極リード体12aは、 乙11c:前記負極集電板14は、
乙10c1:前記積層体の負極側の端部から前記積層体の中央方 乙11c1:前記発電要素11の負極側の端部から前記発電要
乙9c1:前記発電要素の負極側の端部から前記電極体の中央方向に水平
向に水平に延びるとともに負極側の外部負極端子と接続される負 素11の中央方向に水平に延びるとともに前記負極端子16に
に延びるとともに前記負極側の外部端子と接続されるリード90と、
極側の水平部と、 接続される支持部材21に接続され、
乙9c2:前記リード90から突設されて、前記負極の活物質が形成され 乙10c2:前記負極側の水平部から突設されて、前記負極の活
ていない部分の積層端面のうちの前記負極の活物質が形成されていない部 物質の未塗布部の積層端面のうちの前記負極の活物質の未塗布部 乙11c2:前記支持部材21の端部から垂直に突設されて、
分の端部と前記負極の活物質が形成されている部分との間に、表面が接合 の端部と、前記負極の活物質の塗布部との間に、表面が接合され 活物質の未塗布部の端部に表面がレーザ溶接されている
される負極側の挟扼集電部材50とを有する る垂直部とを有する
乙9d:電池。 乙10d:二次電池。 乙11d:電池。
(別紙)
乙12公報の図
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
5 【図6】
【図7】
以上
(別紙)
乙22公報の図
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
以上
(別紙)
乙23公報の図

以上
(別紙) 主引用例の構成(本件発明2)
被告の主張 原告の主張 被告の主張 原告の主張
乙16発明の蓄電要素は電子回路基板に接続されておら
乙17e:複数の電池セル9と、複数の前記電池セル9それぞれ
乙16e:蓄電要素と、前記蓄電要素に接続される電子回路 ず、また、乙16発明は蓄電池一般ではなく鉛蓄電池につ
に接続されて複数の前記電池セル9それぞれの状態を取得する 認める。
基板4とを備える蓄電池であって、 いての発明であることから、乙16eは乙16公報に記載
バッテリ監視ユニット30とを備える組電池であって
されていない。
「蓄電素子」についての記載は存在せず、また、蓄電要素
乙16f:前記蓄電要素及び電解液が収容される電槽1と、
は電槽1のセル室に電解液とともに収納されているもので
乙17f1:前記電池セル9は、非水電解質二次電池であり、 認める。 前記電槽1の開口部を密閉状態で塞ぐ電槽蓋2並びに凹部蓋
あるから、構成乙16fは乙16公報に記載されていな
9及び還流室蓋10を有する蓋体とを備え、
い。
乙17f2:前記電池セル9は、複数の前記電池セル9が収容さ
乙 乙17公報において、密閉する 乙
れるバッテリ収納ケースと、前記バッテリ収納ケースの開口部を
1 構成は開示されていない。 1
密閉状態で塞ぐ配線ボード1及び蓋部25とを備え、
7 6
発 発
明 乙17g1:前記バッテリ監視ユニット30は、 認める。 明 乙16g1:前記電子回路基板4は、 認める。
の の
構 構
乙17g2:前記組電池が備える複数の前記電池セル9に対して 乙16g2:前記蓄電池が備える複数の前記蓄電要素及び電 乙16公報には、電極端子に相当する構成は記載も示唆も
成 成
当該複数の前記電池セル9のそれぞれに設けられた正端子11及 認める。 解液に対して当該複数の前記蓄電要素のそれぞれに設けられ ないから、乙16g2の構成は乙16公報に記載されてい
び負端子12が配置されている側、かつ、 た電極端子が配置されている側、かつ、 ない。
乙17g3:前記配線ボード1と前記蓋部25との間に 認める。 乙16g3:前記電槽蓋2と前記凹部蓋9との間に 認める。
乙17g4:配置されており、 認める。 乙16g4:配置されており、 認める。
乙17h:前記配線ボード1からは外部接続用の端子が突出して 乙16h:前記電槽蓋2には、正極端子5及び負極端子6が
認める。 認める。
いる 取り付けられている
乙16公報に記載されているのは蓄電池(二次電池)のう
乙17i:組電池。 認める。 乙16i:蓄電池。 ちの鉛蓄電池のみであり、広く蓄電池一般が記載されてい
るわけではないから、鉛蓄電池と特定されるべきである。
(別紙)
乙17公報の図
【図1】
【図3】
【図4】
以上
(別紙)
乙16公報の図
【図1】
【図8】
【図9】
【図13】
5 以上

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