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令和6(行ケ)10002審決取消請求事件

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裁判所 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年5月23日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社田中
被告前田工繊株式会社
対象物 土木工事用不織布およびその製造方法
法令 特許権
特許法29条2項2回
特許法36条6項2号1回
特許法36条6項1号1回
特許法36条4項1号1回
特許法29条1項1号1回
特許法29条1項1回
キーワード 審決22回
無効18回
実施18回
進歩性5回
特許権1回
無効審判1回
新規性1回
主文 1 特許庁が無効2022-800065号事件について令和5年1
1月28日にした審決のうち、特許第6889970号の請求項2及
2 訴訟費用は、被告の負担とする。20
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等25 ⑴ 被告は、出願日を令和2年12月8日とし(以下「本件出願日」という。)、 発明の名称を「土木工事用不織布およびその製造方法」とする発明について 特許出願をし、令和3年5月26日、特許権の設定登録(特許第68899 70号。請求項の数7。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。 (甲27、46) ⑵ 原告は、令和4年7月8日、本件特許につき、無効審判請求をした(無効5 2022-800065号事件。以下「本件審判」という。)。被告は、同 年9月30日、審判事件答弁書を提出するとともに、特許請求の範囲及び本 件特許に係る明細書の訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲 28~30) ⑶ 特許庁は、令和5年11月28日、本件訂正を認めた上で、「特許第6810 89970号の請求項1、3~5、7に係る発明についての特許を無効とす る。特許第6889970号の請求項2、6に係る発明についての本件審判 の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、

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判決文

令和6年5月23日判決言渡
令和6年(行ケ)第10002号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年4月9日
判 決
原 告 株 式 会 社 田 中
同訴訟代理人弁護士 山 田 威 一 郎
同訴訟代理人弁理士 田 中 順 也
被 告 前 田 工 繊 株 式 会 社
同訴訟代理人弁理士 山 口 真 二 郎
同 大 島 信 之
15 同 松 本 忠 大
主 文
1 特許庁が無効2022-800065号事件について令和5年1
1月28日にした審決のうち、特許第6889970号の請求項2及
び6に係る部分を取り消す。
20 2 訴訟費用は、被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
25 1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 被告は、出願日を令和2年12月8日とし(以下「本件出願日」という。 、

発明の名称を「土木工事用不織布およびその製造方法」とする発明について
特許出願をし、令和3年5月26日、特許権の設定登録(特許第68899
70号。請求項の数7。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。
(甲27、46)
5 ⑵ 原告は、令和4年7月8日、本件特許につき、無効審判請求をした(無効
2022-800065号事件。以下「本件審判」という。)。被告は、同
年9月30日、審判事件答弁書を提出するとともに、特許請求の範囲及び本
件特許に係る明細書の訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲
28~30)
10 ⑶ 特許庁は、令和5年11月28日、本件訂正を認めた上で、「特許第68
89970号の請求項1、3~5、7に係る発明についての特許を無効とす
る。特許第6889970号の請求項2、6に係る発明についての本件審判
の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、
その謄本は、同年12月15日、原告に送達された。
15 ⑷ 原告は、令和6年1月5日、本件審決のうち、本件特許の請求項2及び6
に係る部分の取消しを求めて本件訴えを提起した。
被告は、答弁書及び準備書面を提出せず、かつ第1回弁論準備手続及び第
1回口頭弁論期日に出頭しなかった。
2 特許請求の範囲の記載
20 本件訂正後の特許請求の範囲のうち、請求項1、2、5及び6の記載は、次
のとおりである(下線部が、本件訂正による訂正箇所である。請求項1及び5
は本件審決により無効とされたが、請求項2が請求項1を引用し、請求項6が
請求項5を引用しているため、請求項1及び5についても記載する。以下、本
件訂正後の請求項2、請求項6に記載の各発明をそれぞれ「本件発明2」 「本

25 件発明6」といい、本件発明2及び本件発明6を併せて「本件各発明」という。
また、本件特許に係る明細書(本件訂正後のもの)及び図面を併せて「本件明
細書等」という。 。

【請求項1】
ニードルパンチ方式で製造されたたておよびよこの伸び率が150%以
上である土木工事用不織布であって、
5 不織布の繊維原料が白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合
物からなり、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈
10 し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ
不織布本体の外表面に斑模様を形成していることを特徴とする、
土木工事用不織布。
【請求項2】
15 前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴
とする、請求項1に記載の土木工事用不織布。
【請求項5】
ニードルパンチ方式で製造するたておよびよこの伸び率が150%以上
である土木工事用不織布の製造方法であって、
20 不織布の繊維原料に白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用
し、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈
25 し、
前記白色繊維及び着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて
不織布本体を製造し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ
不織布本体の外表面に斑模様を形成したことを特徴とする、
土木工事用不織布の製造方法。
5 【請求項6】
前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴
とする、請求項5に記載の土木工事用不織布の製造方法。
3 本件審判で主張された無効理由
原告は、本件審判において、次の無効理由を主張した。
10 ⑴ 無効理由1(サポート要件違反)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した
ものではないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1
号に適合しないため、本件特許は、同項に規定する要件を満たしていない特
許出願に対してされたものである。
15 ⑵ 無効理由2(明確性要件違反)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、「鼠色系」との文言、「鼠色」
との文言及び「斑模様」との文言(請求項1、5)が、いずれもその外延が
不明確か、又は外延を特定できないから、本件特許の特許請求の範囲の記載
が特許法36条6項2号に適合しないため、本件特許は、同項に規定する要
20 件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
⑶ 無効理由3(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、白色繊維と黒色繊維をどのように
混合すると「鼠色」の色彩及び外表面の「斑模様」を形成することができる
のかについて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者
25 がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないか
ら、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に適合し
ないため、本件特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対
してされたものである。
⑷ 無効理由4(新規性欠如)
本件特許の請求項1、3ないし5及び7に係る発明は、甲8ないし15に
5 係る合成繊維不織布又はその製造方法であるから、特許法29条1項1号又
は2号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、
3ないし5及び7についての特許は、同項の規定に違反してされたものであ
る。
⑸ 無効理由5(進歩性欠如)
10 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、甲8ないし15に係る合成繊
維不織布又はその製造方法に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明を
することができたものであり、特許を受けることができないものであるため、
請求項1ないし7についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してさ
れたものである。
15 4 本件審決の理由等
本件審決の理由は、別紙1審決書(写し)記載のとおりである。
本件審決は、無効理由1ないし3に係る原告(請求人)の主張は理由がない
と判断し、無効理由4及び5について、請求項1、3ないし5及び7に係る発
明についての特許は、特許法29条1項及び2項の規定に違反してされたもの
20 であるから、同法123条1項2号に該当し無効とすべきであり、請求項2及
び6(本件発明2及び6)についての特許は、同法29条2項に該当するとは
認められず、無効とならない旨判断した。
無効理由5に関する原告の主張(本件発明2及び6に関するもの)に対する
判断の要旨は次のとおりである。
25 ⑴ア 原告の製品である合成繊維不織布「ニードキーパー NK-800Z」
(以下「800Z製品」という。)は、次のとおりのものと認定する。
「空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216N/
5cmであり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212N/
5 5cmであり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が入
りまじっており、
ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.
5%、黒色:7.5%であり、
10 合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた
15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブ
ラックが添加されており、
合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向
の線が表れる、空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布。」
15 イ 800Z製品の製造方法は、次のとおりのものと認定する。
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製造方法であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216N/
5cmであり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212N/
20 5cmであり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が入
りまじっており、
ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.
5%、黒色:7.5%であり、
25 合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた
15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブ
ラックが添加されており、
合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向
の線が表れる、空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製造方
法。」
5 ウ 800Z製品、及び800Z製品の製造方法は、本件特許の出願前に公
然知られた又は公然実施をされた発明である。
⑵ア 本件発明2と800Z製品とを対比すると、以下の一致点及び相違点が
あると認められる。
〔一致点〕
10 「たておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布であ
って、
不織布の繊維原料が白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混
合物からなり、
15 前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈
し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ
不織布本体の外表面に斑模様を形成している、
20 土木工事用不織布。」
〔相違点1〕(以下、単に「相違点1」という。)
本件発明2は、ニードルパンチ方式で製造されたものであるのに対して、
800Z製品は「合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直
な方向に縦方向の線が表れる」ものの、そのような方式で製造されたもの
25 であるか不明な点。
〔相違点2〕(以下、単に「相違点2」という。)
本件発明2は、「前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲
である」のに対して、800Z製品は、
「白色繊維と黒色繊維の比率が白色:
92.5%、黒色:7.5%であ」る点。
イ 相違点1につき、
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布」で
5 ある800Z製品は、土木資材であること、また、
「合成繊維不織布の片の
表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れ」ていること
から、800Z製品はニードルパンチ方式で製造されたものである蓋然性
が高く、相違点1は、実質的な相違点でない。
また、厚物として土木資材に用いられるウェブの機械的結合方法として
10 ニードルパンチ法は周知であり(甲21の38頁6~9行) 800Z製品

における結合方法として、当該周知のニードルパンチ法を用いて、相違点
1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到できたこと
である。
ウ 相違点2につき、800Z製品は、一定の品質を保って製造されるもの
15 であるところ、白色繊維と黒色繊維の比率を変えるような設計変更をする
ことは、通常行わない。
また、甲22の記載によると、800Z製品の製品仕様では、
「綿色」
「ホ
ワイト」の綿の「混率」が「95」%、
「綿色」
「ブラック」の綿の「混率」
が「5」%とされており、これは、綿色ブラックの綿の混率は仕様で5%
20 とされているところ、上記相違点に係る製品の測定値は仕様の5%より大
きい「黒色:7.5%」であったということであり、この点、製品仕様の
5%を中心に大小の値が測定されることが技術常識であるところ、800
Z製品において、黒色繊維の混率を7.5%から更に高める動機はないし、
製品仕様の5%を、桁の異なる10%以上とすることには阻害要因がある
25 といえる。
エ したがって、本件発明2は、800Z製品に基づいて、当業者が容易に
発明できたものではない。
⑶ 本件発明6についての判断は、本件発明2についての判断と同様である。
したがって、本件発明6は、800Z製品の製造方法に基づいて、当業者が
容易に発明できたものではない。
5 ⑷ なお、前記2のとおり、本件発明6(請求項6)は請求項5を引用してい
るが、本件審決は、請求項5に係る発明(以下「本件発明5」という。)と8
00Z製品の製造方法との一致点及び相違点を次のとおり認定している。
〔一致点〕
「たておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布の製造方
10 法であって、
不織布の繊維原料に白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用し、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
15 不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不
織布本体の外表面に斑模様を形成した、
土木工事用不織布の製造方法。」
〔相違点3〕(以下、単に「相違点3」という。)
本件発明5は、ニードルパンチ方式で製造するものであり、前記白色繊維
20 および着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて不織布本体を製
造するのに対して、800Z製品はそのようなものであるか不明である点。
5 原告の主張する取消事由
本件各発明の進歩性に関する判断の誤り
第3 当事者の主張
25 〔原告の主張〕
⑴ 相違点1について
800Z製品はニードルパンチ方式で製造された製品であるから、本件審
決が、相違点1において800Z製品の製造の方式が不明であると認定した
ことは相当でない。
⑵ 相違点2について
5 次のとおり、白色繊維と黒色繊維からなる鼠色の土木工事用不織布を製造
する際に、黒色繊維の比率を10%以上に高める動機付けはあり、黒色繊維
の比率を変更することに阻害要因があるとはいえない。
ア 土木工事用不織布の市場では、鼠色の色彩の製品が、本件特許の出願前
から多数存在していた。
10 例えば、原告は、本件出願日よりも前から、ニードルパンチ製法で、黒
色繊維と白色繊維を混合して製造される短繊維不織布を用いた土木工事
用不織布である「ニードキーパー」シリーズを製造、販売しており、これ
らの製品には、
「NK-400S」、
「NK-500S」、
「NK-700S」、
「NK-1000S」との4種類の製品が存在するが、いずれも800Z
15 製品よりも色彩が濃い鼠色の製品である(甲18、40)。
800Z製品は、原告の上記各製品よりも黒色繊維の割合が低く、薄い
鼠色の製品となっているが、これは、800Z製品の製造を開始した当時、
白色繊維の価格が安かったことと、当時の発注主から、耐候性に関する強
い要望がなかったことによるものであり、市場の状況や顧客からの要望次
20 第では、濃い鼠色になっていた可能性も十分にあり得た。
イ 上記「NK-500S」における黒色繊維の混合率は23.9%であり
(甲19) 本件発明2で規定されている
、 「10~90%」の範囲内であり、
「NK-400S」 「NK-700S」及び「NK-1000S」は「N

K-500S」とほぼ同様の色彩の製品であるから、これらの製品に関し
25 ても黒色繊維の混合量は「10~90%」の範囲内である。
原告が「NK-400S」の旧バージョンとして製造、販売していた製
品である「NK-400」、及び、本件出願日以前から販売されていた、ニ
ードルパンチ製法で製造された短繊維不織布を用いた他社製の土木工事
用不織布である「テイジンキーパー」(甲42) 「SNマット」
、 (甲43)
及び「ステラキーパー」
(甲44)も、黒色繊維と白色繊維を混合させた濃
5 い鼠色であり、黒色繊維の混合量は10ないし90%であると考えられる。
以上の点に鑑みると、本件発明2及び6の「着色繊維の混合量が重量比
で10~90%の範囲である」との構成は、本件出願日の前に周知になっ
ていたといえる。
ウ 港湾用防砂シートに使用される不織布は、他の土木工事にも使用される
10 ことから、耐候性を付与するために、カーボンブラックを含む繊維を用い
て耐候性を上げた不織布であることが多い。
カーボンブラックを含む繊維を用いることには、①光の反射を抑制し、
眩しく感じにくくする、②汚れを目立ちにくくする、③耐候性及び耐摩耗
性を向上させるとの利点があり、黒色繊維の割合が大きくなるとその効果
15 はより大きなものとなる。
本件明細書等の段落【0008】の記載からすれば、被告自身も、カー
ボンブラックで着色した黒色繊維を用いることに、耐候性及び耐摩耗性を
向上させる効果があると認めているといえるし、耐候性及び耐摩耗性のほ
か遮光性が向上することも、本件出願日の時点で周知な技術的事項であっ
20 た。
したがって、原告自身が800Z製品を改良した製品を開発し、あるい
は競合他社が800Z製品を参考にして新製品を開発する際に、より耐候
性及び耐摩耗性を高めるために、黒色繊維の割合を増やすことは、当業者
であれば容易に想到し得ることであり、800Z製品の黒色繊維の割合を
25 高めて10ないし90%の範囲内とする動機付けはある。
さらに、白色繊維と黒色繊維は時期によって価格が変動し、黒色繊維の
方が安価になる時期もあるから、製品の原価を抑える観点からも、黒色の
繊維比率を上げる改良を行う動機付けがあるといえる。
エ 公然実施品に基づく発明の進歩性の判断において、本件審決のように、
「一定の品質を保って製造される」製品に関する設計変更は「通常行わな
5 い」などと、過度に厳格な判断基準を設けることは不当である。
また、本件審決では、設計書で定まっている事項を変更することには阻
害要因があるかのような判断がされているが、そのような考え方を採った
場合、公然実施品に基づく設計変更や改良をした場合には、従来品との差
異がごくわずかで何らの作用効果を奏さない場合であっても、進歩性が肯
10 定されることになってしまい、かえって産業の発達を阻害することになる。
⑶ 本件発明2と800Z製品との相違点2は、着色繊維の混合量の差異であ
るが、着色繊維の混合量や不織布の色彩の設定は、当業者が容易に最適化、
好適化をすることが可能な設計事項にすぎない。
本件審決は、無効理由1(サポート要件違反)に関する判断の中で、本件
15 各発明の課題は、本件明細書等の段落【0006】に記載されている「簡易
な手法により不織布の伸び具合を把握できること」及び「不織布の伸び適正
に管理しながら敷設できること」であり、これらの課題を解決するための手
段は、
「不織布に色彩が付されていることであり、またそのことで足りるもの
である」との判断をしているが、この判断からすれば、本件各発明の課題は、
20 不織布に色彩が付されていれば解決可能ということになり、着色繊維の混合
量が重量比で10ないし90%の範囲であるか否かは、上記の課題との関係
では何ら技術的な意味を持っておらず、本件発明2及び6で規定されている
数値範囲を設定することで有利な効果が得られるとはいえない。
また、本件明細書等においては、黒色繊維の混合比率を10ないし90%
25 の範囲に設定した実施例1ないし7と、白色繊維のみからなる比較例1、黒
色繊維のみからなる比較例2に関し、色彩、模様の観察結果(段落【004
9】の表4)と光の反射性能の体感試験の結果(段落【0050】の表5)
が掲載されているが、黒色繊維を10%未満の割合で混合した比較例との対
比は行われておらず、着色繊維の混合量の重量比の数値範囲を10ないし9
0%に設定したことによる効果の差異に関しては、何ら具体的な検証がされ
5 ていない。
以上の各事情を考慮すれば、800Z製品の着色繊維の混合量を「10~
90%の範囲」に変更することは、当業者が容易に最適化、好適化をするこ
とが可能な設計事項であるということができる。
第4 当裁判所の判断
10 1 本件各発明の技術的意義等
⑴ 特許請求の範囲
本件各発明に係る特許請求の範囲の記載は、前記第2の2に記載のとおり
である。
⑵ 本件明細書等の記載
15 本件明細書等のうち、明細書の記載は別紙2のとおり、図面の記載は別紙
3のとおりである。
⑶ 本件各発明の技術的意義
上記⑴の特許請求の範囲及び上記⑵の本件明細書等の記載によれば、本件
各発明の技術的意義は次のとおりであると認められる。
20 ア 技術分野
本件各発明は、護岸工事等において、埋立土砂の流出を防止するための
防砂シート等の土木用資材として使用する高伸度の不織布に関し、特に不
織布の伸び具合をより正確に把握できる土木工事用不織布及びその製造
方法に関する。(段落【0001】)
25 イ 背景技術
従来の土木工事用不織布は白色以外の特別な色彩を付ける必然性がな
いことから、不織布の原料には白色系の繊維を用い、製造される不織布は
外表面だけでなく内部組織も白色となっている。また、従来の一般的な不
織布は伸び率が織布と比べて大幅に劣ることから、敷設面の凹凸等の不陸
に対する追従性が悪い。そこで、不陸に対する追従性をよくするために、
5 様々な延伸構造の不織布が提案されている。
(段落【0002】、
【0003】)
ウ 発明が解決しようとする課題
従来の土木工事用不織布は、①その全体が白色であるため、耐候性と耐
摩耗性に問題があることに加えて、施工時に光が反射して眩しく敷設作業
を阻害しやすい、②土木工事用不織布は全体を引き延ばしながら現場に敷
10 設しているが、不織布の実際の伸び量を把握することができず、そのため、
伸び量にばらつきを生じ、不織布を均一の伸び率で引き延ばしながら敷設
することが技術的に難しい、③敷設面に大きな起伏があると、起伏に馴染
ませるために不織布がさらに引き伸ばされ、不織布が伸長限界を超えて破
れ易くなり、破れると破損個所の補修に多くの時間と手数がかかるといっ
15 た問題点を内包している。(段落【0005】)
本件各発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところ
は少なくとも次の一つ土木工事用不織布及びその製造方法を提供するこ
とにある。
<1>簡易な手法により不織布の伸び具合を把握できること。
20 <2>不織布の伸び適正に管理しながら敷設できること。
<3>不織布を防砂シートに用いた場合、防砂機能の保証期間を延長でき
ること。
(以上、段落【0006】)
エ 課題を解決するための手段
25 本件各発明の土木工事用不織布は、ニードルパンチ方式で製造された縦
及び横の伸び率が150%以上である高伸度の土木工事用不織布であっ
て、不織布の繊維原料が白色繊維と、白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔
料で着色した着色繊維との混合物からなり、白色繊維及び着色繊維が化学
繊維であり、着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩
を有し、不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、
5 かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成しているものであり、さらに着色
繊維の混合量は重量比で10ないし90%の範囲であってよく、さらに白
色繊維及び着色繊維がポリエステル系繊維であってよく、さらに不織布が
防砂シートであってよい、土木工事用不織布である。
本件各発明の土木工事用不織布の製造方法は、上記土木工事用不織布の
10 製造方法であり、白色繊維及び着色繊維を混錬した後にニードルパンチで
交絡させて不織布本体を製造する方法を含むものである。
(以上、段落【0007】)
オ 本件各発明の効果
本件各発明は少なくとも次の一つの効果を奏する。
15 <1>白色繊維に適量の着色繊維を混入した原料を使用することで、斑模
様を有する混合色の不織布を製造することができる。
<2>不織布全体に色彩が付与してあるので、不織布の伸び量に差がある
とその差が色彩の濃淡となって表れ、不織布の色彩の濃淡によって、不織
布の大まかな伸び具合を目視により把握することができる。
20 <3>不織布の該表面が斑模様を呈することから、特定した複数の斑点間
の距離を伸長前と伸長後に実測することで、不織布の伸び率を正確に把握
することができる。
<4>不織布の伸びを把握できるので、不織布の伸び適正に管理しながら
敷設することができる。
25 <5>不織布の伸長限界を把握できるので、破損した場合に補修対応を簡
単に行える。
<6>着色繊維の顔料にカーボンブラックを用いた場合には、不織布の耐
候性および耐摩耗性を高めることができる。
そのため、不織布を防砂シートに用いた場合には、光の反射を抑えて施
工性を改善できるだけでなく、紫外線劣化と摩耗劣化を回避して砂防シー
5 トの防砂機能を長期間に亘って保証することができる。
(以上、段落【0008】)
カ 発明を実施するための形態
(ア) 土木工事用不織布の概要
本件各発明に係る不織布は、優れた弾力性、伸長性及び強度を併せ持
10 っており、例えば防砂シート等の埋立護岸の吸出し防止工、洗掘対策工、
連接ブロック工、石積み工等の吸出し防止工、各種フィルター工又は遮
水シート工の保護材等の土木工事における洗掘対策、吸出し防止用資材
として使用するものであり、高い弾性力と伸長性を有していて、各種の
敷設面の凹凸等に追従させて敷設できる。(段落【0011】)
15 (イ) 繊維原料
不織布の繊維原料は、白色繊維と着色繊維とからなる。白色繊維及び
着色繊維は同一の繊維素材からなる。不織布を着色繊維のみで製造する
と、不織布全体が単一色となって斑模様が生じない。本件各発明では、
不織布に斑模様を形成するために、白色繊維と着色繊維の組合せを採用
20 した。(段落【0017】)
着色繊維は特定色の顔料の一種又は複数種を含む。実用的には一種の
顔料で十分である。本件明細書等の実施例では、顔料として紫外線吸収
機能を有するカーボンブラックを採用した形態について説明するが、顔
料はカーボンブラック以外の任意の色彩を採用することができる。顔料
25 にカーボンブラックを用いると、不織布の耐候性、耐久性および耐摩耗
性の向上効果を期待できる。着色繊維の着色範囲は、全長に亘って均一
に着色しても、部分的に着色してもよい。(段落【0021】)
不織布の全体繊維量に対する着色繊維の混合量は、適宜選択が可能で
ある。本件各発明では着色繊維の混合量を10ないし90%の範囲とし、
実用上は20ないし80%の範囲が望ましく、機能的には50%の混合
5 量が最もよい。着色繊維の混合量が20%より小さいと、不織布の全体
色が薄くなって斑が形成され難くなり、さらに光が反射しやすく、さら
に耐候性に問題が生じる。着色繊維の混合量が50%を超えると、不織
布の全体色が濃くなって肉眼で斑を識別することが難しくなる。着色繊
維の混合量を上記の範囲にすることで、耐候性の確保と、肉眼で認識可
10 能な斑を形成することと、光の反射の抑制といった複数の要素を同時に
満足できる。(段落【0023】~【0025】)
不織布は不織布全体が白色ではなく、白色繊維及び着色繊維が混合す
ることで不織布全体が灰色系の色彩を帯びると共に、着色繊維がところ
どころに密集して斑模様となる。(段落【0030】)
15 本件各発明では不織布の全体に色彩が付与してあるので、不織布の伸
び量に差があると、その差は色彩の濃淡となって表れる。具体的には、
伸び量の多い部位の色彩は、伸び量の少ない他の部位と比べて薄くなる。
このように、不織布の色彩の濃淡によって、不織布の大まかな伸び具合
を目視により把握することができる。不織布を敷設面の不陸に沿わせて
20 敷設する際に、不織布が伸びた部分の色が薄く見えるため、敷設後にお
いて不陸部分が分りやすくなり、作業者が不織布の上を歩くときのつま
ずき等の歩行障害を回避できる。また、色彩変化に基づく不織布の伸び
情報は、進行中の不織布の敷設作業に反映させて、不織布の張力調整に
活用することができる。(段落【0033】~【0035】)
25 不織布は斑模様を呈することから、不織布の表面にはスポット的に多
数の斑点が形成されており、例えば二つの斑点ア、イを選択し、伸長前
の斑点ア、イの距離L 1と、伸長後の斑点ア、イの距離L 2 を実測するこ
とで、不織布の伸び率(L 1:L 2)を正確に把握することができる。計
測点の数は二つに限定されず、二つ以上であればよく、四つ以上の斑点
を見つけて、不織布の縦横方向へ向けた伸び率を計測することも可能で
5 ある。複数の斑点の変位を実測した不織布の伸び情報は、進行中の不織
布の敷設作業に反映させて、不織布の張力調整に活用できることの他に、
伸び率の限界に近い場合は、別途の補修用不織布を敷設する等の対策工
に活用することができる。さらに、敷設面に不陸部があった場合、不織
布を伸長させて敷設面に対して不織布を隙間なく敷設することが理想で
10 あるが、不織布の斑点の間隔を確認することで、不陸部に対する不織布
の伸長具合をリアルタイムで確認することができる。(段落【0038】
~【0041】)
着色繊維がカーボンブラックを含むことで、不織布は、白色繊維単体
のみで製造した従来の不織布と比較して、耐候性と耐摩耗性に優れる。
15 実際の現場では二、三か月程度、不織布が日光に晒される場合があるが、
白色繊維単体のみで製造した従来の不織布は、紫外線に対する特別な対
策が取られていないので、二、三か月の間でも屋外に晒されると紫外線
劣化が進行する。白色繊維単体のみで製造した従来の不織布の耐候性を
高める手段として、酸化チタンを混錬することが知られているが、酸化
20 チタンの混錬量に比例して光が反射しやすくなって、施工時の眩しさの
問題が残るだけでなく、耐摩耗性についても顕著な問題となりやすい。
(段落【0042】~【0044】 【0051】
、 )
本件各発明に係る不織布は色彩がグレーとなるため、不織布を海洋工
事の防砂シート(吸出防止材)として用いた場合に、水分を含んだ箇所
25 と含まない箇所を色の変化で把握できる。水を含んだ箇所の色は、水を
含まないドライの部位と比べて濃いグレー色となって表れる。したがっ
て、不織布の色彩の濃淡によって、土砂が吸出され易い部位を把握して、
その対策に活用することができる。(段落【0045】)
以上のように、本件各発明に係る不織布は、光の反射を抑えて施工性
を改善できるだけでなく、砂防シートとして使用した場合は、紫外線劣
5 化と摩耗劣化を回避して砂防シートの防砂機能を長期間に亘って保証す
ることができる。(段落【0052】)
キ 実施例
本件明細書等には、白色繊維と黒色繊維の混合比率を変えた実施例とし
て、実施例1ないし7が記載されている。実施例1ないし7は、それぞれ、
10 黒色繊維の割合が、50%、80%、20%、60%、40%、90%、
10%とされ、比較例として、比較例1(全て白色繊維)及び比較例2(全
て黒色繊維)が用いられており、これらの実施例1ないし7並びに比較例
1及び2により、強度・伸度の測定、不織布の色彩と斑模様の発生状況、
光の反射性能についての体感試験を行っている。
(段落【0046】~【0
15 050】)
2 取消事由(本件各発明の進歩性に関する判断の誤り)について
⑴ア 証拠(甲10の1~3、甲11~13、23)によれば、原告が製造、
販売する土木工事用不織布である800Z製品が、おおむね本件審決の認
定した前記第2の4⑴アのとおりのものであることが認められる。
20 ただし、甲10の1ないし3及び甲11の記載内容によれば、本件審決
における800Z製品の認定及び800Z製品の製造方法の認定におけ
る「231、217、230、216N/5cm」及び「229、206、23
1、212N/5cm」との記載は、いずれも「231、217、230、2
16%」及び「229、206、231、212%」の誤りであると認められ
25 る。
上記の誤記を訂正した上で、800Z製品、及び800Z製品の製造方
法について認められる内容を記載すると、以下のとおりとなる。
(ア) 800Z製品(以下「引用発明1」ということがある。)
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%
5 であり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%
であり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が
入りまじっており、
10 ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:9
2.5%、黒色:7.5%であり、
合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散してい
た15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボ
ンブラックが添加されており、
15 合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方
向の線が表れる、空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布。」
(イ) 800Z製品の製造方法(以下「引用発明2」ということがある。)
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製造方法であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%
20 であり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%
であり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が
入りまじっており、
25 ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:9
2.5%、黒色:7.5%であり、
合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散してい
た15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボ
ンブラックが添加されており、
合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方
5 向の線が表れる、空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製
造方法。」
イ 800Z製品は、平成29年3月24日及び平成30年8月30日の時
点で、那覇空港第2滑走路増設工事で使用されていること(甲11)、80
0Z製品について、厚さ(mm) 質量
、 (g/㎡) 引張強さ
、 (N/5cm)、
10 伸び率(%)、引裂強さ(N)を測定した結果を表示した平成29年3月1
3日付け試験成績証明書(甲10の1) 同年7月6日付け試験成績証明書

(甲10の2)及び平成30年5月30日付け試験成績証明書(甲10の
3)が作成されており、これらの試験成績証明書は工事の施主がメーカー
に対して求めるものであって、その内容は秘密にされるものではないこと
15 (甲39)が認められ、これらの事実によれば、800Z製品及び800
Z製品の製造方法は、本件出願日の時点で公然実施されていた発明である
と認められる。
ウ 本件発明2と引用発明1との一致点及び相違点を検討すると、一致点と
して前記第2の4⑵アに認定の一致点があり、相違点として前記第2の4
20 ⑵アに認定の相違点1及び相違点2があることが認められる。
⑵ 相違点1について
証拠(甲8、23、31)によれば、800Z製品の不織布の断面には、
規則的に不織布繊維が縦方向に絡められた跡が存在することが認められる。
そして、甲21(38頁)によれば、ニードルパンチ方式(ニードルパンチ
25 法)は、厚物として土木資材に用いられる繊維(ウェブ)の機械的結合方法
であり、ニードルをウェブ中に貫通させるものであって、ニードルパンチに
より結合された不織布は、表面に垂直な方向に穿孔され、ニードルパンチの
跡が残るものであり、この事実は技術常識であることが認められる。そうす
ると、空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布である800Z製品
に上記の跡があることからすれば、800Z製品はニードルパンチ方式を用
5 いて製造されたものであると認められ、このことは、800Z製品の暫定設
計書(甲22)の製造基準書の工程欄に「パンチ」との記載があるほか、生
産条件(参考値)欄に「パンチ仕掛け時に引張り強度、伸度の物性確認作業
を行う」と記載されていることからも裏付けられる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではないというべきであり、本件審決
10 も同趣旨の判断をしており、その判断に不当な点は認められない。⑶ 相違
点2について
ア 相違点2に係る技術常識について
甲45の1(特開平9-165731号公報)、甲45の2(特開平9-
24565号公報)及び甲45の3(特開平11-100821号公報)
15 には、それぞれ別紙4「文献の記載」1ないし3のとおりの記載があるこ
とが認められる。
上記各文献の記載によれば、合成樹脂製の埋立用防砂シート、樹脂フィ
ラメントからなる網状構造体と繊維シートとが一体化されてなる積層シ
ートである透水性土木シートや、不織布からなり港湾工事などの敷設に用
20 いられる土木用不織シートにおいて、カーボンブラックが、耐候性、耐摩
耗性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、
景観を損なうことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で、
合成樹脂や繊維に添加されるものであることが、本件出願日の時点におけ
る技術常識であったと認められる。
25 イ 本件出願日当時に存在した土木工事用不織布について
証拠(甲3、16、19)によれば、港湾・埋立等の土木建設工事にお
ける吸い出し防止及び洗掘防止を目的に開発された合成繊維不織布であ
る原告の製品「ニードキーパー」の製品カタログ(平成7年3月に作成さ
れたもの)に、品番を「NK-500S」とする製品が掲載されているこ
と、NK-500Sは、平成8年3月までに行われた沖縄地区の港湾工事
5 における防砂シートの現場特性、適応性を把握するための現場実験におい
て使用されたものの一つであること、NK-500Sの色は灰色であって
斑模様となっており、令和4年1月18日に実施された試験の結果によれ
ば、NK-500Sの白色繊維と黒色繊維との比率(JIS L 103
0-2に定められた顕微鏡法により測定したもの) 白色が76.
は、 1%、
10 黒色が23.9%であることが認められる。
上記JIS L 1030-2に定められた顕微鏡法による測定では、
顕微鏡で白色繊維と黒色繊維を鑑別し、繊維の本数と直径を測定し、繊維
の本数、繊維の直径から算出される断面積及び繊維の密度から、白色繊維
と黒色繊維の質量の比率が算出されており(甲25、33)、この比率は、
15 本件発明2における「重量比」と同一であると認められる。なお、800
Z製品の白色繊維と黒色繊維との比率に関する試験(その結果は、白色繊
維が92.5%、黒色繊維が7.5%であった。甲12)も、JIS L
1030-2の顕微鏡法によってされたものである。
また、証拠(甲16)によれば、上記港湾工事における防砂シートの現
20 場実験において、NK-500S以外に、織布(帆布)からなる原告の製
品「UN-300」及び不織布からなる原告の製品「PX-500」も用
いられたが、このうちPX-500は、NK-500Sよりも濃い色であ
り、濃灰色ないし黒色であること、UN-300は白色であることが認め
られる。
25 以上の事実によれば、土木工事用の防砂シート(不織布又は織布)とし
て用いられる製品の色の濃さは一様でなく、白色の製品、灰色の斑模様の
製品とともに濃灰色ないし黒色の製品も使用されていることは、本件出願
日時点における技術常識であったと認められる。
ウ 本件発明2における黒色繊維の混合比率の意義について
前記1⑶の本件各発明の技術的意義によれば、本件発明2において不織
5 布を白色繊維と黒色繊維の混合物としたことの意義は、不織布の表面を斑
模様として、特定した斑点間の距離を伸長前と伸長後に測定することで、
不織布の伸び率を把握することができること、並びに、着色繊維の顔料に
カーボンブラックを用いることで不織布の光の反射を抑えて施工性を改
善するとともに、耐候性及び耐摩耗性を高めることにあると認められる。
10 本件明細書等では、不織布の全体繊維量に対する着色繊維の混合量につ
いて、適宜選択が可能であるとしつつ、着色繊維の混合量を10ないし9
0%の範囲とし、実用上は20ないし80%の範囲が望ましく、機能的に
は50%の混合量が最もよいとしており、その理由として、着色繊維の混
合量が20%より小さいと、不織布の全体色が薄くなって斑が形成され難
15 くなるとの問題、光が反射しやすくなるとの問題、及び耐候性の問題が生
じるとし、着色繊維の混合量が50%を超えると、不織布の全体色が濃く
なって肉眼で斑を識別することが難しくなり、混合量を上記の範囲とする
ことで、耐候性の確保と、肉眼で識別可能な斑を形成することと、光の反
射の抑制といった複数の要素を同時に満足することができるとされてい
20 る(段落【0023】~【0025】、前記1⑶カ(イ))。
本件明細書等における、白色繊維と黒色繊維の混合比率を変えた実施例
1ないし7と比較例1及び2による試験によれば、この混合比率と、繊維
の縦及び横の強度及び伸度とは、相関関係はないといえる(段落【004
8】の試験結果)。また、光の反射性は、黒色繊維の混合比率を高めるほど
25 眩しさを感じにくくなる(段落【0050】 。そして、本件明細書等にお

いて、黒色繊維を10%未満の割合で混合した比較例との対比は行われて
おらず、比較例1及び2は、全て白色繊維のもの及び全て黒色繊維のもの
であるから、白色繊維と黒色繊維の混合比率を、10ないし90%の範囲
とした場合と、10%未満とした場合との効果の差異は、本件明細書等に
記載された実施例及び比較例による試験からは明らかでない。
5 以上によれば、本件発明2について、黒色繊維の混合比率を高めると、
①斑が形成され、これを用いて不織布の伸び率を把握することが可能とな
り、②光の反射を抑えて眩しさを感じにくくなり、③耐候性及び耐摩耗性
が高まり、他方、黒色繊維の混合比率を高くしすぎると、全体の色が濃く
なって斑を識別するのが困難になるという結果が生じるが、本件発明2に
10 おいて黒色繊維の混合比率を10ないし90%の範囲としたことに特段
の技術的意義があるとは認められない。
エ 上記ア及びイのとおり、カーボンブラックが、耐候性、耐摩耗性及び遮
光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損な
うことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で土木工事用不
15 織布を含む土木工事用シートに添加されているものであること、及び、土
木工事用の防砂シート(不織布又は織布)として用いられる製品の色の濃
さが一様でなく、白色の製品、灰色の斑模様の製品とともに濃灰色ないし
黒色の製品も使用されていることが、本件出願日の時点における技術常識
であったと認められ、白色繊維と黒色繊維を混合した土木工事用不織布に
20 おける黒色繊維の混合比率が多様なものであると当業者が認識していた
ということができる。
また、上記ウのとおり、本件発明2についても、黒色繊維の混合比率を
10ないし90%の範囲としたことに特段の技術的意義があるとは認め
られない。
25 そうすると、引用発明1の土木工事用不織布において、耐候性、耐摩耗
性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景
観を損なうことの防止、並びに不織布の伸び率測定のための斑模様の明確
さを好適なものとするために、カーボンブラックにより着色した黒色繊維
の比率を増減することは、当業者の設計事項にすぎないというべきである。
また、白色繊維と、カーボンブラックにより着色した黒色繊維を混合し
5 た土木工事用不織布において、黒色繊維の割合を高めれば、斑模様が濃く
なって、斑点の間の距離の測定に基づく不織布の伸び率の測定が容易にな
るほか、耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射の抑制といった効
果があることが、上記のとおり本件出願日の時点における技術常識であっ
たといえるから、黒色繊維の比率を7.5%より高める動機付けがあった
10 ということができる。
以上によれば、引用発明1について、黒色繊維の混合比率が7.5%と
されているところ、これを10ないし90%の範囲とすることによって、
相違点2に係る構成を導くことは、当業者が容易に想到することができた
ものというべきである。
15 オ 本件審決は、800Z製品は一定の品質を保って製造されるものであり、
白色繊維と黒色繊維の比率を変えるような設計変更は通常行わないとか、
800Z製品の製品仕様書(甲22)では黒色の綿の混率が5%と記載さ
れていることを指摘した上で、製品仕様における黒色繊維の比率5%を桁
の異なる10%以上にすることには阻害要因があると判断している。
20 しかし、800Z製品について、製品の同一性あるいはその品質を維持
するために、仕様書で定められた仕様の遵守が求められるとしても、同製
品を基に、仕様の一部を変更して、新たな仕様の土木工事用不織布の製品
を開発、製造しようとすることは当然に行われることであって、800Z
製品の仕様として黒色繊維の比率が特定の値に定められているからとい
25 って、この値を変更することに阻害要因があると認められることにはなら
ず、800Z製品の使用における黒色繊維の比率が1桁である5%とされ
ていることから、この比率を2桁の10%にすることに阻害要因があると
解することもできない。
そして、前記ウ及びエのとおり、黒色繊維の比率を特定の割合又は特定
の範囲に定めることについて特段の技術的意義があるとは認められず、か
5 つ、カーボンブラックにより着色した黒色繊維の比率を高める動機付けが
あったといえることからすれば、引用発明1について、その黒色繊維の比
率を、上記仕様書に記載された数値から変更することに阻害要因があると
は認められない。
⑷ 本件発明6について
10 本件発明6は、その内容からすれば、本件発明2の土木工事用不織布の製
造方法に関する発明であると認められる。
本件発明6は、本件発明5を引用するものであるところ、本件審決は、本
件発明5と引用発明2(800Z製品の製造方法)との一致点及び相違点を
前記第2の4⑷のとおり認定しているが、これらの一致点及び相違点(相違
15 点3)は、本件発明6と引用発明2との一致点及び相違点でもあると認めら
れる。
そして、前記⑵の説示内容からすれば、相違点3は、相違点1と同様に、
実質的な相違点ではないと認めることができる。
また、本件発明6と引用発明2(800Z製品の製造方法)とを対比する
20 と、相違点3のほか、本件発明2と引用発明1との相違点2と同様の相違点
として、「本件発明6は、『前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の
範囲である』繊維の製造方法であるのに対して、800Z製品の製造方法は、
『白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であ』る
繊維の製造方法である点」も相違点であると認められる。
25 そして、前記⑶の説示内容からすれば、引用発明2について、黒色繊維の
混合比率が7.5%とされているところ、これを10ないし90%の範囲と
することによって、上記相違点に係る構成を導くことは、当業者が容易に想
到することができたものというべきである。
⑸ 上記⑶及び⑷のとおり、本件発明2は、引用発明1並びに前記⑶ア及びイ
に記載の技術常識に基づいて、本件発明6は、引用発明2並びに上記技術常
5 識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれ
も特許法29条2項により特許を受けることができない発明であると認める
のが相当である。
よって、取消事由は理由がある。
3 結論
10 以上のとおりであり、取消事由は理由があり、本件審決のうち、特許第68
89970号の請求項2及び6に係る部分は取り消されるべきものであって、
原告の請求は認容されるべきである。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
20 東 海 林 保
25 裁判官
今 井 弘 晃
5 裁判官
水 野 正 則
(別紙1審決書写し、別紙2明細書写し省略)
別紙3
【図1】 【図2】
【図3】
【図4】
別紙4
文献の記載
1 甲45の1(特開平9-165731号公報)
5 「埋立作業に先立って構築される埋立護岸の裏込め工の法面に敷設され、埋立土
砂の漏出を防止する合成樹脂繊維織布からなる埋立用防砂シートにおいて、前記
合成樹脂繊維織布は、その表面に海水浸漬部位より上方の陸上部分に透水可能な
合成樹脂被膜が形成されたことを特徴とする埋立用防砂シート。 (
」 【請求項1】)
「前記樹脂被膜は、カーボンブラックが混合された塩化ビニル樹脂被膜であるこ
10 とを特徴とする請求項1記載の埋立用防砂シート。 (
」 【請求項3】)
「【発明が解決しようとする課題】ところで、ポリエステル繊維は一般的な性状と
して長期間の使用に対して品質劣化を示すことが認められている。したがって、
水深が深い水域を広範囲にわたって埋め立てるような場合には、防砂シートの陸
上部分は3~4年の期間にわたり、海水飛沫を受けた状態で暴露される。このよ
15 うな長期の暴露状態では、紫外線の影響により白色の織布が黄変し、強度劣化を
生じるおそれもある。 (発明の詳細な説明、段落【0004】
」 )
「本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、長期間の暴露に
おいても、品質を保持できる耐候性を発揮できる埋立用防砂シートを提供するこ
とにある。 (段落【0008】
」 )
20 「また、本実施の形態では、塩化ビニル樹脂ペーストにカーボンブラックが混合
されている。
・・・カーボンブラックを含有することにより、塩化ビニル樹脂ペー
ストは黒色となり、防砂シートの樹脂被膜21部分も黒色面を構成する。また、
副次的な効果として、樹脂内にカーボンブラックを適量添加することにより被膜
表面の耐摩耗性を向上することができる。添加量は、塩化ビニル樹脂100重量
25 部に対してカーボンブラック2~5重量部に設定されている。防砂シートを敷設
する場所によっては景観に考慮する必要となることもある。このような場合には、
黒色樹脂に代えて暗褐色、灰色、銀色等の顔料を用い、周辺景観にマッチした色
彩とすることも可能である。 (段落【0014】
」 )
「このように、防砂シートの陸上部に暗色の樹脂被膜21を形成することにより、
太陽光による紫外線を遮断でき、防砂シートの経年劣化を防止することが期待で
5 きる。・・・」(段落【0015】)
2 甲45の2(特開平9-24565号公報)
「軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートと繊維シートとが
一体化されてなる積層シートであって、該積層シートの透水係数が1×10

cm/sec 以上であることを特徴とする透水性土木シート。 (
」 【請求項1】)
「該繊維シートが、カーボンブラックを含有するものである請求項1記載の透水
性土木シート。 (
」 【請求項13】)
「【従来の技術】従来、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を
防止するシートとして、織布、不織布等が使用されている。(段落【0002】
」 )
15 「しかし、これらのシートでは、例えば海岸護岸工事に長期間(1~12カ月)
敷設した時に波浪により生じるシートと栗石との摩耗によってシートが破損し
たり、また、台風時が通過したり、波浪の多い冬期には、さらに短期間でシート
が破損し、堤防内の土砂がシート破損部から流出する問題があった。 (段落【0

003】)
20 「・・・さらに、長期間屋外での使用となるため、たとえばポリエステル繊維製
不織布を使用する場合、カーボンブラックを含有させることによって、耐候性を
改善することができる。かかるカーボンブラックは1㎡ 当りの重量に対して、好
ましくは0.2~0.6%の範囲で含有させるのが良い。かかる含有のさせ方に
ついては、含浸、塗布、さらには原着のいずれでもよいが、耐久性などの点から
25 いえば、原着が好ましい。0.2%未満では耐候性の増加が期待できなく、0.
6%を越えると、不織布の生産工程での針抵抗が大きくなり生産性を悪化する傾
向があり好ましくない。 (段落【0014】
」 )
3 甲45の3(特開平11-100821号公報)
「本発明は、強度、親水性(自己水中沈降性)など施工性に優れた土木用不織シ
5 ート、特に水質汚染などが少ない海岸、湖岸、河岸などの防波堤や岸壁に敷設さ
れる埋立土砂の吸い出し防止シートや防砂シートとして有効な土木用不織シー
トに関するものである。 (段落【0001】
」 )
「また、これらの繊維には、カーボンブラックを好ましくは0.01%以上、よ
り好ましくは0.1~1%、特に好ましくは0.2~0.5%含有されているも
10 のが使用される。港湾工事などの敷設に際し、シートが白色であった場合、太陽
光によるシートの光の反射により、雪目現象が発生し、作業上の障害、特に作業
者に障害が及ぶばかりか、敷設後の美観が損なわれやすい。繊維中のカーボンブ
ラックの含有率が0.01%未満の場合には上記不都合が生じやすいため好まし
くない。さらに、カーボンブラックを0.01%以上添加することにより、港湾
15 や河川堤防に敷設した場合においては、白色シートと比較して太陽光の遮光性が
向上するため、上記欠点を解決するばかりか防草効果が得られるなど土木用不織
シートとしてカーボンブラック添加の効果は絶大なものとなる。 (段落【002

9】)

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