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令和5(ワ)70422損害賠償等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年8月1日
事件種別 民事
法令 著作権
キーワード 侵害55回
許諾12回
差止7回
損害賠償5回
主文 1 被告は、別紙 1 の写真を使用し、公開し、又は公衆送信してはならな
2 被告は、原告社団に対し、77 万円及びこれに対する令和 4 年 12 月 17
3 被告は、原告Aに対し、33 万円及びこれに対する令和 4 年 12 月 20 日10
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用はこれを 3 分し、その 1 を原告らの負担とし、その余を被告
6 この判決は、第 2 項及び第 3 項に限り、仮に執行することができる。15
事件の概要

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判決文

令和 6 年 8 月 1 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和 5 年(ワ)第 70422 号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 令和 6 年 5 月 16 日
判 決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
5 主 文
1 被告は、別紙 1 の写真を使用し、公開し、又は公衆送信してはならな
い。
2 被告は、原告社団に対し、77 万円及びこれに対する令和 4 年 12 月 17
日から支払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
10 3 被告は、原告Aに対し、33 万円及びこれに対する令和 4 年 12 月 20 日
から支払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用はこれを 3 分し、その 1 を原告らの負担とし、その余を被告
の負担とする。
15 6 この判決は、第 2 項及び第 3 項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主文第 1 項同旨
2 被告は、原告社団に対し、219 万 4500 円及びこれに対する令和 4 年 12 月 17
20 日から支払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告Aに対し、192 万 5000 円及びこれに対する令和 4 年 12 月 20 日
から支払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、原告らが、被告は、別紙 2 投稿動画目録のとおり、令和 4 年 8 月 31
25 日~同年 12 月 17 日の間に、原告Aが撮影した別紙 1 の写真(以下「本件写真」と
いう。 を利用して作成した別紙 2 投稿動画目録記載の各動画
) 「本件動画 1」
(以下、
などといい、一括して「本件各動画」という。 を動画共有プラットフォーム
) 「YouTube」
に投稿するなどしたことにより、原告社団の著作権及び原告Aの著作者人格権を侵
害したと主張して、被告に対し、以下の請求をする事案である。
5 (1) 原告社団の請求
ア 本件写真の著作権に基づき、本件写真の使用等の差止め(著作権法(以下「法」
という。)112 条 1 項)。
イ 著作権侵害の不法行為(民法 709 条(損害額につき、法 114 条 3 項))に基
づき、219 万 4500 円の損害賠償及びこれに対する最後の不法行為の日である令和
10 4 年 12 月 17 日から支払済みまで民法所定の年 3%の割合による遅延損害金の支払。
(2) 原告Aの請求
ア 本件写真に係る著作者人格権に基づき、本件写真の使用等の差止め。
イ 著作者人格権侵害の不法行為に基づき、192 万 5000 円の損害賠償及びこれ
に対する最後の不法行為の日である令和 4 年 12 月 20 日から支払済みまで民法所定
15 の年 3%の割合による遅延損害金の支払。
2 前提事実(当事者間に争いがない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実)
(1) 当事者等
原告社団は、YouTube や出版等を通じて啓蒙活動等を行う権利能力なき社団であ
20 る。C(以下「C」という)は、原告の諸事務を行う職員である。
原告Aは、カメラマンとして活動する者である。(甲 4、14)
被告は、
「D」名義で、自ら開設した YouTube チャンネル「暇な空白チャンネル」
(以下「被告チャンネル」という。)に自ら作成した動画を投稿している者である。
(2) 本件写真
25 本件写真(別紙 1 のもの)は、一般社団法人 Colabo(以下「Colabo」という。)
の代表者であるE(以下「E」という。)の肖像を撮影した写真であり、写真の著作
物(法 10 条 1 項 8 号)に当たる。
本件写真は、令和 2 年 2 月に原告Aが撮影したものであり、また、令和 3 年 10
月 28 日付け毎日新聞に掲載されたEに関する記事(甲 11、 11。
乙 以下「本件記事」
という。)において利用された。
5 (3) 被告による本件各動画の投稿等
ア 被告による本件写真の利用の概要
被告は、本件各動画を作成し、別紙 2 投稿動画目録記載のとおり、令和 4 年 8 月
31 日~同年 12 月 17 日の間に、同目録記載の各タイトルを付して、これらを被告
チャンネルに投稿した。被告は、本件各動画において、以下のとおり、本件写真を
10 利用したが、原告らは、被告に対し、これを許諾していない。
イ サムネイルとしての利用
(ア) 被告は、別紙 2 投稿動画目録記載のとおり、本件動画 13 及び 31 を除く本件
各動画(同目録の「サムネイル」欄に「〇」の記載のあるもの)につき、本件記事
から取得した本件写真をサムネイルとして利用した。その利用態様の詳細は、別紙
15 3 サムネイル目録の「顔部変更前」欄のとおりである。
すなわち、本件動画 1~3 については、本件写真の上下左右を切り取る加工処理
(トリミング)をすると共に、本件写真のうちEの肖像部分(以下「E肖像部分」
という。)にモザイク処理がされ、また、イラストや文字等が付加されている。
本件動画 4~8 については、文字等が付加されているほかは、上記のような処理
20 はされていない。
本件動画 9 以下(ただし、本件動画 13 及び 31 を除く。)については、本件写真
のうちEの顔部分を中心とするE肖像部分を残すようにトリミングした上、イラス
トや文字等が付加されている。なお、本件動画 23~30、32 及び 35 については、そ
のような加工がされたことを直接的に裏付けるに足りる証拠はないものの、弁論の
25 全趣旨によれば、これを認めることができる。
(イ) 被告は、令和 4 年 12 月 20 日頃、別紙 3 サムネイル目録の「顔部変更後」欄
のとおり、本件各動画(ただし、本件動画 13 及び 31 を除く。)のうち、本件動画
33 及び 34 を除く動画につき、それぞれが利用する本件写真のE肖像部分の顔部分
に、人物の顔のイラスト(以下「本件イラスト」という。)を重ねる処理をした。
ウ 動画内での利用
5 被告は、別紙 2 投稿動画目録の「映像」欄に時間(「全編」を含む。)の記載のあ
る動画(本件動画 4~17、19、21~23、28~31、34、35)につき、同欄記載の時間
帯において、別紙 4 動画使用部分目録記載のとおり、本件写真を利用した。なお、
上記各動画と別紙 4 動画使用部分目録の各利用態様との対応関係は、別紙 2 投稿動
画目録の「別紙との対応関係」欄記載のとおりである。(甲 10 の 1~10 の 16、10
10 の 18~10 の 20、10 の 22~10 の 24、弁論の全趣旨)
(4) 本件訴えに至る経緯等
ア 原告社団は、同月 19 日頃、YouTube に対し、本件動画 33 及び 34 につき、
原告社団の著作権を侵害するとして、その公開停止の申立てをした。YouTube は、
同日頃、これらの公開を停止したが、令和 5 年 1 月 4 日、これらの公開を再開した。
15 イ 被告は、令和 4 年 12 月 23 日付け訴状により、上記申立てが違法であるとし
て、原告社団を被告とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した(東京地
方裁判所令和 4 年(ワ)第 70126 号損害賠償請求事件。以下「前訴」という。 。し

かし、裁判所は、令和 5 年 8 月 24 日、被告の請求をいずれも棄却した。(乙 5)
ウ 被告は、遅くとも令和 6 年 3 月 20 日までに、本件各動画のサムネイルに利
20 用していた本件写真を本件イラストで覆うことにより本件写真(又はこれを加工し
た画像)を認識できないようにすると共に、映像に利用していた本件写真について
は、その表現上の本質的特徴を感得することができない程度にぼかしを掛けた。
(甲
16、弁論の全趣旨)
3 争点
25 (1) 本件写真の著作権の帰属(争点 1)
(2) 原告社団の著作権侵害の成否(争点 2)
ア 複製権及び公衆送信権侵害の有無(争点 2-1)
イ 引用の成否(争点 2-2)
(3) 原告Aの著作者人格権侵害の成否(争点 3)
ア 氏名表示権侵害の有無(争点 3-1)
5 イ 同一性保持権侵害の有無(争点 3-2)
ウ 名誉又は声望を害する方法による利用行為該当性(争点 3-3)
(4) 差止めの必要性の有無(争点 4)
(5) 原告らの損害の有無及び額(争点 5)
4 争点に対する当事者の主張
10 (1) 本件写真の著作権の帰属(争点 1)
(原告社団の主張)
原告社団は、令和 2 年 1 月頃、原告Aに対してEの写真撮影を依頼し、同年 2 月
17 日、本件写真の納品を受け、これに対する対価 7 万円を支払ったことにより、本
件写真の著作権の譲渡を受けた。したがって、原告社団が本件写真の著作権を有す
15 る。
原告社団は、本件写真を利用する際、原告Aからその都度利用許諾を得たり、利
用料を支払ったりはしておらず、原告社団による本件写真の利用は原告Aの利用許
諾に基づくものではない。
(被告の主張)
20 原告Aと原告社団は、本件写真の撮影に係る契約書を作成しておらず、著作権の
譲渡に関する明示的な合意もしていない。原告社団と原告Aの契約については、本
件写真につき、原告Aがデータを提供し、原告社団の公開する動画等における利用
を許諾することを内容とするものと解することも可能である。原告Aも、7 万円と
いう「プロの仕事としては破格の値段」でEを含む 3 名の撮影を行ったところ、前
25 訴においては、本件写真の「使用権」を原告社団に譲渡したとの認識である旨など
を述べていたことを踏まえると、本件写真を含む写真の著作権を原告Aに留保した
まま、原告社団による利用を許諾したにすぎないと考えられる。原告社団が本件写
真の著作権を有する旨の主張及び原告A等の陳述は、前訴及び本件において原告社
団を勝訴させるために、著作権譲渡の合意を仮装するものにすぎない。
したがって、原告社団は、本件写真の著作権を有しない。
5 (2) 原告社団の著作権侵害の成否(争点 2)
(原告社団の主張)
ア 複製権及び公衆送信権侵害の成立(争点 2-1)
被告は、令和 4 年 8 月 31 日~同年 12 月 17 日の間、別紙 2 投稿動画目録記載の
とおり、原告社団が著作権を有する本件写真を本件各動画のサムネイルとして、又
10 は動画中の映像として利用して本件各動画を作成し、YouTube に投稿することによ
り、原告社団の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害した。
本件各動画中の本件写真にはモザイク処理やイラストを重ねる処理がされたもの
もあるが、これらをもってしても、本件写真の表現上の本質的特徴を感得すること
ができることから、被告の行為は、なお原告の著作権を侵害するものである。
15 イ 引用の不成立(争点 2-2)
本件各動画は、Colabo が不正に公金を取得しているなどとする被告の主張を内容
とするものであり、その作成・公表につき、本件写真を引用する必要性はないから、
引用の目的上正当な範囲内での引用とはいえない。また、本件各動画内では撮影者
や引用元の明示がないから、公正な慣行に合致した利用であるとはいえず、引用さ
20 れた本件写真とサムネイルや動画との間に主従の関係もない。
したがって、本件各動画の投稿は引用の要件を充たさない。
(被告の主張)
ア 複製権及び公衆送信権侵害の不成立(争点 2-1)
被告は、本件各動画のうち本件動画 1~3 については、別紙 3 サムネイル目録の
25 とおり、本件写真のトリミングをすると共に、本件写真の表現上の本質的特徴であ
るE肖像部分の顔部分に、同人の顔とは判別できない程度のモザイク処理を施した
上、本件写真の上部及び下部に文字列を重ね、さらに、本件動画 1 及び 3 について
は、左中央部に他の写真を重ねるという処理をしている。
また、被告は、別紙 3 サムネイル目録のとおり、本件動画 13、31、33 及び 34 を
除く本件各動画につき、本件写真のE肖像部分の顔部分に本件イラストを重ねる処
5 理をしている。加えて、本件動画 9~35(ただし、本件動画 13、31、33 及び 34 を
除く。 のサムネイルについては、
) 本件写真から切り出したE肖像部分の画像を利用
しており、背景部分の画像は利用していない。
これらの加工処理により、本件各動画中の本件写真は、いずれもその内容及び形
式を覚知できない画像となっており、本件写真を有形的に再製したものとはいえな
10 い。したがって、本件各動画の作成及び公開は、本件写真の複製権及び公衆送信権
を侵害しない。
イ 引用の成立(争点 2-2)
YouTube を含む動画サイトにおいては、批評等の表現行為を行う際、その主題に
関連する画像をインターネットから取得して利用することが広く行われており、そ
15 の利用が動画作成者及び閲覧者の双方にとって相当な範囲にとどまる限りで許容さ
れるとの社会通念又は公正な慣行が存在する。
本件各動画は、E又は Colabo に対する批判等を内容とするものであり、本件写
真は、批判の対象であるEを被写体とする写真であるから、その利用は引用の目的
上正当な範囲内で行われたものといえる。また、本件写真は、インターネット上で
20 繰り返し利用されているものである。加えて、本件写真には、著作者・著作権者の
表示や無断転載を禁じる旨の明示的な表示もなかった。これらの事情を踏まえると、
被告による本件各動画での本件写真の利用は、公正な慣行の範囲を逸脱するもので
はない。
したがって、本件各動画における本件写真の利用は、適法な引用(法 32 条)に当
25 たり、本件著作権を侵害するものではない。
(3) 原告Aの著作者人格権侵害の成否(争点 3)
(原告Aの主張)
ア 氏名表示権侵害(争点 3-1)
被告は、本件写真を利用した本件各動画を YouTube に投稿するに際し、著作者で
ある原告Aの氏名を表示しなかった。したがって、本件各動画の作成・投稿は、原
5 告Aの氏名表示権(法 19 条 1 項)を侵害する。
原告Aが原告社団に対して氏名表示権を行使していなかったとしても、これをも
って、原告Aが被告との関係でも行使しないものとしたとはいえない。
イ 同一性保持権侵害(争点 3-2)
被告は、本件各動画において、前提事実(3)イ及びウのとおり、モザイク処理やト
10 リミング等の処理を施している。被告のこれらの行為は、本件写真につき原告Aが
有する同一性保持権(法 20 条 1 項)を侵害する。
本件各動画中の本件写真は、上記変更等をもってしても、なおその表現上の本質
的特徴を感得するに足るものである。
ウ 名誉又は声望を害する方法による利用(争点 3-3)
15 原告Aは、被写体であるEの優しさや繊細さを引き出すための工夫を凝らして本
件写真を撮影した。しかるに、被告は、別紙 2 投稿動画目録記載のとおり、本件各
動画にEを誹謗中傷するタイトルを付してこれらを YouTube に投稿した。被告に
よるこのような本件写真の利用は、著作者である原告Aの創作意図を著しく踏みに
じり、原告Aの名誉・声望を損ねるものである。
20 したがって、被告の行為は、原告Aの著作者人格権を侵害するものとみなされる
(法 113 条 11 項)。
(被告の主張)
ア 氏名表示権侵害の不成立(争点 3-1)
本件写真は、原告社団の作成する動画を含む様々な媒体において、撮影者(著作
25 者)が誰であるかの表示のないままに利用されている。このような事情に鑑みると、
原告Aは、このような利用を広く容認していたというべきである。また、原告Aは、
少なくとも前訴の提起までは、自らが本件写真の著作者であることを明らかにして
(法 19 条 2 項)を
おらず、本件写真への著作者名の表示につき「別段の意思表示」
していない。
したがって、被告の行為につき、原告Aの氏名表示権の侵害は成立しない。
5 イ 同一性保持権侵害の不成立(争点 3-2)
本件各動画中の本件写真については、前提事実(3)イ及びウのとおり、モザイク処
理やトリミング等の処理が施されている。
このうち、本件動画 1~3 のサムネイル(変更前のもの)については、トリミング
やモザイク処理により、本件写真とは全く異なる画像となっており、その表現上の
10 本質的特徴を感得することができない。
本件写真からE肖像部分を切り出してサムネイル画像としている本件動画 9~22
(本件動画 13 を除く。また、変更前のもの)については、本件写真のうちその表現
上の本質的特徴を有するE肖像部分を切り出した態様により利用することは、社会
通念に照らし、著作者の名誉感情が害されるほどの表現上の変更とはいえない。
15 本件各動画(本件動画 13,31,33 及び 34 を除く。)のサムネイル(変更後のも
の)は、本件写真の表現上の本質的特徴であるE肖像部分の顔部分に本件イラスト
を重ねており、Eの顔を認識することができない。加えて、本件動画 9~35(本件
動画 13,31,33 及び 34 を除く。)のサムネイルについては、本件写真の背景部分
の画像は利用されていない。このため、これらの動画のサムネイルは、本件写真と
20 は全く異なる画像となっており、本件写真の表現上の本質的特徴を感得することが
できない。
以上より、被告による本件写真の利用は、原告Aの同一性保持権を侵害しない。
ウ 名誉又は声望を害する方法による利用といえないこと(争点 3-3)
「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは、
25 社会的に見て著作者の名誉・声望を害するおそれがあると認められるような行為を
指し、主観的な名誉感情を害するにすぎない行為を含まない。
本件写真からは、原告Aの主張する撮影意図を読み取ることはできない。また、
本件写真の撮影者が原告Aであることは公にされていなかった上、本件各動画に本
件写真が利用されたとしても、その撮影者である原告Aが本件各動画の内容に同調
しているなどと受け取られるものでもない。
5 したがって、被告による本件写真の利用は、社会的に見て原告Aの名誉・声望を
害するおそれがあるとはいえず、著作者人格権の侵害行為とはみなされない。
(4) 差止めの必要性の有無(争点 4)
(原告らの主張)
被告による著作権及び著作者人格権の侵害の停止予防のためには、被告による本
10 件写真の使用等を差し止める必要がある。
被告によれば、本件写真は削除されたわけではなく、ぼかしを掛けたというにす
ぎず、これも本件訴訟による動画の削除を逃れるためにすぎない。被告の手元には
本件写真のデータが残っており、いつでも使用可能であることに違いはない。
(被告の主張)
15 被告は、令和 5 年 7 月頃、本件各動画に利用していた本件写真のうち、サムネイ
ルに利用していたものについては本件イラストで覆い、本件写真を加工した画像を
認識できないようにし、動画内で映像として利用していたものについてはぼかしを
掛け、本件写真の表現上の本質的特徴を感得することができないようにした。
したがって、被告は、同月頃以降、本件各動画において、本件写真を利用してい
20 ない。そうである以上、本件写真の使用等の差止めの必要はない。
(5) 原告らの損害の有無及び額(争点 5)
(原告らの主張)
ア 原告社団の損害
(ア) 著作権侵害による損害 199 万 5000 円
25 被告は、本件各動画のサムネイルとして 33 箇所、動画中で 24 箇所(合計 57 箇
所)において、本件写真を利用している。インターネットコンテンツにおける写真
の利用料の相場は 6 か月、1 回、1 箇所あたり 3 万 5000 円程度であることから、原
告社団の損害は、199 万 5000 円(=3 万 5000 円/箇所×57 箇所)となる。
(イ) 弁護士費用相当損害額 19 万 9500 円
上記損害額の 1 割である 19 万 9500 円をもって弁護士費用相当損害額とするの
5 が相当である。
(ウ) 合計額 219 万 4500 円
イ 原告Aの損害
(ア) 著作者人格権侵害による損害 175 万円
原告Aは、被告による本件各動画の公表により、著作者人格権を侵害され、著し
10 い精神的苦痛を受けた。この精神的苦痛を慰謝するに足る金員としては、1 動画に
つき 5 万円が相当である。したがって、原告Aの損害は、175 万円(=5 万円/本×35
本)となる。
5 万円×35 本=175 万円
(イ) 弁護士費用相当損害額 17 万 5000 円
15 上記損害額の 1 割である 17 万 5000 円をもって弁護士費用相当損害額とするの
が相当である。
(ウ) 合計額 192 万 5000 円
(被告の主張)
ア 原告社団の損害
20 争う。原告社団は、本件写真を利用させるに当たり対価を受けていなかったとみ
られることなどから、被告の本件各動画の投稿による原告社団の損害を観念できな
い。また、原告社団主張の損害額は高額に過ぎる。
イ 原告Aの損害
争う。原告Aは、本件写真の撮影の対価として 7 万円を受領したにすぎないこと
25 などから、原告A主張の損害額は高額に過ぎる。
第3 当裁判所の判断
1 本件写真の著作権の帰属(争点 1)について
(1) 事実認定
前提事実(前記第 2 の 2)、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実
は、以下のとおりである。
5 ア 本件写真の撮影に至る経緯等
(ア) 原告Aは、反差別に関する作品を多く手がけてきた写真家であり、同じく反
差別運動を行ってきた原告社団代表者とは本件写真の撮影以前から知り合いであっ
た。
原告Aは、令和 2 年 1 月頃、原告社団の YouTube 番組の制作を引き受けた知人
10 から、同番組の素材として利用する写真として、Eを含む 3 名の写真撮影を依頼さ
れた。原告Aは、これを引き受け、同月 9 日付け請求書(甲 5)により、原告社団
に対し、「品目」欄に「交通費 撮影費」と記載して 7 万円(税込)を請求した。
なお、原告社団は、この依頼以前にも原告Aに写真撮影を依頼したことが数回あ
ったが、いずれの際も、原告社団及び原告Aの間で契約書を作成したことはなく、
15 本件写真の撮影に当たっても同様であった。
(上記のほか、甲 2、4、証人C)
(イ) 原告Aは、同年 2 月 11 日、原告社団代表者の自宅等でEの写真を撮影し、
同月 17 日、原告社団に対し、その中から選定した本件写真のみを依頼に係るEの
写真として納品した。これに対し、原告社団は、同月 20 日、原告Aに対し、前記請
20 求に係る金員を送金した。(甲 2、3、14、証人C)
(ウ) なお、原告Aは、前訴で提出した陳述書(乙 6)において、本件写真につき、
「この写真の使用権を「のりこえねっと」に譲渡したとの認識です。 、
」「この写真を
勝手に使用して動画やそのサムネイルを作成したとすれば、 「のりこえねっと」
私や
の著作権を侵害していることになると思います。」などと陳述した。
25 イ 原告社団及びEによる本件写真の利用
(ア) 原告社団は、令和 2 年 3 月 18 日~令和 4 年 5 月 18 日の間に、男性のセク
ハラ行為や女性差別的言動の告発を内容とした「シリーズ キモいおじさん」と題
する全 4 回の動画を YouTube に投稿した。これらの動画にはEが出演しており、そ
のサムネイルには、上記シリーズ名等と共に本件写真が利用されていた。原告社団
は、このような本件写真の利用につき、原告Aから個別に許諾を得ることはしなか
5 った。(甲 3、4、6、13、14、乙 7 の 1~7 の 4、証人C)
(イ) Eないし Colabo は、本件記事を含むEのインタビュー記事やメッセージ投
稿サービス「X」の Colabo のアカウントにおいて、本件写真を利用している。(乙
8 の 1 及び 8 の 2、9 の 1~9 の 3、10~12、13 の 1~13 の 4、14~16)
(2) 検討
10 ア 前提事実及び上記各認定事実によれば、原告Aは、原告社団代表者との関係
性を前提として、原告社団から対価(7 万円)の支払を受けて本件写真を含む写真
の撮影を行い、原告社団は、原告Aから本件写真の納品を受け、その後、原告Aか
ら個別に許諾を得ることなく、本件写真を利用していたといえる。また、上記認定
事実からうかがわれる原告社団とEないし Colabo との関係性を踏まえると、E及
15 び Colabo による本件写真の利用は、原告社団の包括的又は個別の許諾に基づき行
われたものであることがうかがわれる。
他方、原告社団の原告Aに対する利用許諾料の支払その他原告社団による本件写
真の利用が原告社団と原告Aとの利用許諾契約に基づくものであることをうかがわ
せる具体的な事情は見当たらない。
20 このような本件写真の利用態様に鑑みると、原告社団による本件写真の利用は、
原告Aによる本件写真の納品及び原告社団によるその対価の支払によって原告社団
が本件写真の著作権を取得したことに基づくものと理解される。このような理解は、
原告社団代表者、原告A及びCの各陳述ないし供述(甲 2~4、14、証人C)に沿う
ものでもある。また、これらの陳述ないし供述については、いずれもその信用性に
25 疑義を抱くべき具体的な事情はなく、また、相互に矛盾するものでもない。加えて、
原告社団及び原告Aは、前訴から一貫して、本件写真に係る著作権は原告Aから原
告社団に譲渡された旨主張している。
これらの事情を総合的に考慮すると、本件写真に係る著作権は、原告Aの原告社
団に対する本件写真の納品及び原告社団の原告Aに対するその対価の支払により、
原告Aから原告社団に譲渡されたとみるのが相当である。
5 イ これに対し、被告は、著作権譲渡を裏付ける契約書等がないことその他の事
情を縷々指摘して、原告Aから原告社団に対し本件写真に係る著作権の譲渡はない
旨主張する。
確かに、原告Aから原告社団に対する著作権譲渡を直接的に裏付ける契約書その
他の客観的な資料は存在しない。また、原告Aは、前訴において、本件写真につき、
10 原告社団に対して「写真の使用権」を譲渡したとの認識である旨や、被告の本件写
真の利用をもって「私や「のりこえねっと」の著作権を侵害していることになる」
旨陳述したところ、これらの陳述は、原告Aが本件写真の著作権を有することを前
提とする趣旨と理解し得ないものではなく、少なくとも、著作権の帰属につき判然
としない内容のものであるとはいえる。原告社団が原告Aに支払った対価の額も、
15 Eを含む 3 名の写真撮影に関するものであることや交通費を含むことを考えると、
原告A及び原告社団代表者も陳述するとおり、著作権譲渡の対価としては相当に低
廉であると評価し得る。
しかし、契約書その他直接的に著作権譲渡を裏付ける客観的な資料がないことは、
もとより直ちに著作権譲渡がなかったことを意味するものではない。原告社団と原
20 告Aとの関係性に鑑みれば、そのような資料の不存在は必ずしも不自然ないし不合
理とはいえない。同様の理由から、支払われた対価が著作権譲渡の対価としては相
当に低廉であるとしても、これをもって著作権譲渡がなかったことをうかがわせる
事情とは必ずしもいえない。前訴における原告Aの陳述も、趣旨は判然としない部
分はあるものの、
「譲渡」や「原告社団の著作権の侵害」という表現を含むものであ
25 る。そもそも、上記陳述は、原告社団が本件動画 33 及び 34 の著作権を主張する前
訴において原告社団により提出されたものであることや、原告社団と原告Aとの関
係性に加え、原告Aは法律の専門家ではなく、法的事項につき不正確な表現をする
ことも十分にあり得ることをも考慮すると、前提として原告社団に対する著作権譲
渡を含意するものと理解するのが相当である。
その他被告が縷々指摘する事情は、いずれも、一般的抽象的な可能性の指摘にと
5 どまり、本件において考慮すべき程度の具体性を有するものとはいえない。
以上より、この点に関する被告の主張は採用できない。
(3) 小括
以上より、原告Aによる本件写真の納品及び原告社団による対価の支払をもって、
原告Aから原告社団に対して本件写真に係る著作権が譲渡され、原告社団にその著
10 作権が帰属するものと認められる。
2 原告社団の著作権侵害の成否(争点 2)について
(1) 複製権及び公衆送信権侵害の有無(争点 2-1)について
被告は、前提事実(3)のとおり、令和 4 年 8 月 31 日から同年 12 月 17 日にかけ、
いずれも本件各動画の著作権者である原告社団の許諾を得ることなく、本件写真を
15 サムネイル又は動画内において利用した本件各動画を作成し、YouTube に投稿した。
本件写真においては、少なくともE肖像部分がその表現上の本質的特徴部分を構
成するものといえるところ、まず、本件写真に文字等を付加したにとどまる画像を
サムネイルとするもの(本件動画 4~8)については、本件写真を「印刷、写真、…
(法 2 条 1 項 15 号)したものを「公衆によつて
その他の方法により有形的に再製」
20 直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信」(法 2 条 1 項
7 号の 2)したものといえる。したがって、これらの動画に係る被告の行為は、本件
社団の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものといえる。本件各動画のうち、
動画内で本件写真を利用したもの(本件動画 4~17、19、21~23、28~31、34、35)
についても同様である。
25 また、本件各動画のうち、本件写真のE肖像部分につきモザイク処理や本件イラ
ストを重ねる処理等を施したものをサムネイル画像とするもの(本件動画 1~3、9
~12、14~30、32~35)についても、そのシルエットやイラストが重ねられていな
い部分からなお本件写真の内容及び形式を覚知させるに足るものといえる。したが
って、これらの動画に係る被告の行為についても、原告社団の著作権を侵害するも
のといえる。
5 したがって、被告による本件各動画における本件写真の利用は、本件写真の複製
及び公衆送信に当たる。これに反する被告の主張は採用できない。
(2) 引用の成否(争点 2-2)について
本件各動画は、そのサムネイルの表示及び動画の内容(甲 7、8、10。別紙 3 サム
ネイル目録及び別紙 4 動画使用部分目録参照)によれば、Eないし Colabo の活動
10 に対する批判的な立場から作成されたものと理解し得るところ、本件写真を利用す
る必要性は必ずしも高くはないとみられる上に、通常の報道ないし批評の域を超え
て、Eないし Colabo を揶揄する文脈において本件写真を利用していることがうか
がわれる。また、本件各動画において、本件写真の撮影者、権利者ないし引用元を
示す記載等も置かれていない。これらの事情を総合的に考慮すると、本件各動画に
15 おける本件写真の利用は、
「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評…
(法 32 条 1 項)たものとはいえない
その他の引用の目的上正当な範囲内で行われ」
から、適法な「引用」(法 32 条)に当たらない。これに反する被告の主張は採用で
きない。
(3) 小括
20 以上より、被告による本件写真の利用は、本件写真に係る原告社団の著作権(複
製権、公衆送信権)の侵害に当たる。
3 原告Aの本件写真の著作者人格権侵害の成否(争点 3)について
(1) 氏名表示権侵害の有無(争点 3-1)について
被告は、本件写真を利用した本件各動画を YouTube に投稿に際し、原告Aの氏名
25 等を著作者名として表示しなかった。このような被告の行為は、原告Aの氏名表示
権(法 19 条 1 項)を侵害するものといえる。
これに対し、被告は、本件写真は様々な媒体で著作者名の表示のないままに利用
されていたことをもって、原告Aがこのような利用を広く容認していたというべき
である旨などを主張する。しかし、本件写真の利用にあたり著作者名の表示を要し
ない旨を原告Aが一般的・包括的に意思表示したなどの事情の存在はうかがわれな
5 い。また、著作者は、氏名表示権として、その実名等を著作者名として表示し、又
は表示しないこととする権利を有するのであって、原告Aが被告以外の者による本
件写真の利用に対し著作者名の表示を求めなかったことをもって、被告との関係に
おいても不表示を容認していたものとみることは必ずしもできない。法 19 条 2 項
に係る主張についても、少なくとも侵害者である被告がこれを主張することは相当
10 でない。
その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用
できない。
(2) 同一性保持権侵害の有無(争点 3-2)について
前提事実(3)によれば、被告は、本件動画 1~3 につき、本件写真にモザイク処理
15 を施したものをサムネイルとして利用したこと、本件動画 9~35(ただし、本件動
画 13 及び 31 を除く。)については、サムネイルとして、本件写真の背景部分を切
除すると共にE肖像部分もトリミングして利用したことが認められる。
また、被告は、本件動画 1~32(ただし、本件動画 13 及び 31 を除く。)及び 35
の動画(計 31 本)につき、本件写真の背景部分に文字列を付す、E肖像部分に吹き
20 出しや文字列を付すなどの処理を施し、その後、このうちE肖像部分の顔部分に本
件イラストを重ねる処理をしたことがそれぞれ認められる。
さらに、これらの改変が原告Aの意に反しないことをうかがわせる具体的な事情
はない。
したがって、被告のこれらの行為は、いずれも原告Aの著作物である本件写真の
25 構図やその内容を同人の意に反して改変したものであり、原告Aの同一性保持権(法
20 条)を侵害するものといえる。
これに対し、被告は、本件各動画において、本件写真は、被告によるモザイク処
理や本件イラストを重ねる処理により、いずれもその表現上の本質的特徴を感得す
ることができないものになっており、同一性保持権侵害は成立しない旨主張する。
しかし、被告による上記処理によっても、なお本件写真の表現上の本質的特徴部分
5 であるE肖像部分の形式及び内容を覚知し得ることは前記(2(1))のとおりである。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
(3) 名誉又は声望を害する方法による利用行為該当性(争点 3-3)について
原告Aは、被告による本件各動画における本件写真の利用につき、原告Aの名誉
又は声望を害する方法による著作物の利用である旨を主張する。
10 しかし、著作権法 113 条 11 項が著作者の名誉又は声望を害する方法によりその
著作物を利用する行為を著作権人格権の侵害とみなす旨定めているのは、著作者の
民法上の名誉権の保護とは別に、その著作物の利用行為という側面から、著作者の
名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨による。このような趣旨に鑑みる
と、同項所定の著作者人格権侵害の成否は、他人の著作物の利用態様に着目して、
15 当該著作物利用行為が、社会的に見て著作者の名誉又は声望を害するおそれがある
と認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。
本件各動画における本件写真の利用に際し、本件写真の著作者が原告Aである旨
の表示はされていない。また、原告社団やEないし Colabo も、本件写真の利用に
際しその著作者が原告Aであることは表示しておらず、本件写真の著作者が原告A
20 であることが一般に広く知られていることをうかがわせる具体的な事情も見当たら
ない。そうすると、たとえ被告による本件各動画での本件写真の利用態様等が原告
Aの本件写真の創作意図に反するものであったとしても、当該利用行為は、社会的
に見て、原告Aの本件写真に係る著作者としての名誉又は声望を害するおそれがあ
るものとは必ずしもいえない。
25 したがって、被告の行為は、著作者である原告Aの名誉又は声望を害する方法に
よりその著作物である本件写真を利用する行為とはいえず、これをもって原告Aの
著作者人格権を侵害する行為とみなすことはできない。これに反する原告Aの主張
は採用できない。
4 差止めの必要性の有無(争点 4)について
本件各動画については、遅くとも令和 6 年 3 月 20 日までに、サムネイルにおい
5 ては本件イラストで覆うことにより、映像中で利用されていた本件写真については
ぼかしを掛けることにより、それぞれ本件写真の表現上の本質的特徴を感得し得な
いようにした処理が施されたことが認められる(甲 16)。
しかし、被告がなお本件写真のデータを保有しているとみられることを踏まえる
と、ぼかしを外すなどして被告が本件写真を利用するおそれは依然としてあるとみ
10 るのが相当である。
したがって、原告らの著作権及び著作者人格権に基づく使用差止めの必要性は認
められる。この点に関する被告の主張は採用できない。
5 原告らの損害の有無及び額(争点 5)について
(1) 原告社団の損害
15 ア 著作権侵害による損害 70 万円
被告は、本件各動画 合計 35 本において本件写真を利用している。その利用期間
は、前提事実(3)及び(4)によれば、最短でも 1 年を超える。また、「出版・報道・教
育写真」のウェブサイトでの商用利用につき、 社・1 種・1 号・1 版・1 回・1 箇
「1
所の使用に限った料金」として、使用箇所・サイズを問わず 6 か月以下の期間で 3
20 万 5200 円(税込)の料金を設定している例がある(甲 12)。さらに、本件は著作権
侵害の事案である上、被告は、Eないし Colabo につき揶揄を織り交ぜた批判的な
立場から作成した本件各動画において本件写真を利用したとみられることに鑑みる
と、 その著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」 法 114 条 3 項)
「 (
を考えるにあたっては、任意に締結される利用許諾契約において設定される利用料
25 に比して自ずと高額になるであろうことを考慮すべきといえる。
他方、本件写真の著作権の譲受けに当たり原告社団が支払った対価は、Eを含む
3 名の撮影費用及び交通費を含む合計で 7 万円にとどまる(前記 1(1)ア(ア)) また、

本件各動画は、被告のEないし Colabo に対する批判的立場から作成された一連の
ものともいえるものである。加えて、上記料金設定の例も、あくまで契約前の段階
で公表されている一例にすぎない。
5 これらの事情その他一切の事情を総合的に考慮すると、本件において原告社団が
「受けるべき金銭の額に相当する額」は、本件各動画の 1 動画当たり 2 万円、合計
70 万円とするのが相当である。これに反する原告社団及び被告の主張はいずれも採
用できない。
イ 弁護士費用 7 万円
10 上記著作権侵害による損害額のほか、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、本
件において、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は 7 万円
とするのが相当である。
ウ 合計額 77 万円
(2) 原告Aの損害
15 ア 著作者人格権侵害による損害 30 万円
本件各動画における本件写真の利用期間及び改変の態様を含む利用態様をはじめ
とする一切の事情を勘案すると、原告Aの著作者人格権侵害による精神的苦痛を慰
謝するには、30 万円をもって相当とすべきである。これに反する原告A及び被告の
主張はいずれも採用できない。
20 イ 弁護士費用 3 万円
上記著作者人格権侵害による損害額その他一切の事情を考慮すると、被告の不法
行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は 3 万円とするのが相当である。
ウ 合計額 33 万円
第4 結論
25 よって、原告らの請求は、それぞれ、主文の限度で理由があるからその限度でこ
れらを認容し、その余の請求には理由がないからいずれも棄却することとして、主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第 47 部
裁判長裁判官
杉 浦 正 樹
裁判官
石 井 奈 沙
裁判官
20 志 摩 祐 介
別紙
当事者目録
原 告 のりこえねっと
(以下「原告社団」という。)
原 告 A
(以下「原告A」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士 神 原 元
被 告 B
同訴訟代理人弁護士 渥 美 陽 子
松 永 成 高
同訴訟復代理人弁護士 小 沢 一 仁
垣 鍔 晶

(別紙1~4 省略)

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