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令和6(行ケ)10045審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和6年10月31日
事件種別 民事
当事者 原告ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ・インク 株式会社トンボ鉛筆
被告有限会社パーム
法令 商標権
商標法6条2項1回
商標法50条1項1回
商標法27条2項1回
商標法2条3項1回
キーワード 商標権27回
審決18回
分割2回
拒絶査定不服審判1回
差止1回
侵害1回
主文 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加に係る費用を含め、原告らの負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3010
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(甲1、乙1ないし3、丙1ないし3、弁論の 全趣旨) ⑴ 原告トンボ鉛筆は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その商標を 「本件商標」という。なお、商品及び役務の区分、指定商品及び指定役務に20 ついては、後記⑵のとおり。)の商標権者である。

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判決文

令和6年10月31日判決言渡
令和6年(行ケ)第10045号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和6年8月29日
判 決
原 告 ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ・インク
(以下「原告ズーム」という。)
10 同訴訟代理人弁護士 城 山 康 文
同 大 石 裕 太
同 佐 々 木 公 樹
同訴訟復代理人弁護士 早 田 尚 貴
同訴訟代理人弁理士 横 川 聡 子
15 同 高 橋 友 和
原 告 株 式 会 社 ト ン ボ 鉛 筆
(以下「原告トンボ鉛筆」という。)
20 同訴訟代理人弁理士 菊 池 英 龍
同 田 邊 潔
被 告 有 限 会 社 パ ー ム
25 同訴訟代理人弁護士 堀 籠 佳 典
同訴訟代理人弁理士 押 本 泰 彦
同 豊 崎 玲 子
被告補助参加人 株 式 会 社 ズ ー ム
5 同訴訟代理人弁護士 林 い づ み
同 服 部 謙 太 朗
主 文
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加に係る費用を含め、原告らの負担とする。
10 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が取消2021-300089号事件について令和6年3月28日
15 にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(甲1、乙1ないし3、丙1ないし3、弁論の
全趣旨)
⑴ 原告トンボ鉛筆は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その商標を
20 「本件商標」という。なお、商品及び役務の区分、指定商品及び指定役務に
ついては、後記⑵のとおり。)の商標権者である。
登録番号 第4363622号
登録出願日 平成元年10月19日
設定登録日 平成12年2月25日
25 存続期間の更新登録
平成21年12月22日、令和2年1月21日
登録商標
⑵ 本件商標の商品の区分、指定商品
本件商標の商品の区分、指定商品は、次のとおりである。なお、本件商標
5 の指定商品については、後記イのとおり、商標法附則2条に基づく書換登録
がされた。
ア 設定登録時及び平成21年12月22日の存続期間更新登録時
第11類 電気機械器具(電池を除く)、電子計算機〔中央処理装置及
びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子
10 回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)電子式卓上計算機、

電気材料
イ 平成22年5月10日申請、同年7月28日登録の指定商品の書換登録
(以下「本件書換登録」という。)後
第7類 起動器、交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電
15 動機及び直流電動機(その部品を除く。を除く。、
) )交流発電機、
直流発電機、家庭用食器洗浄機、家庭用電気式ワックス磨き機、
家庭用電気洗濯機、家庭用電気掃除機、電気ミキサー、電機ブ
ラシ
第8類 電気かみそり及び電気バリカン
20 第9類 配電用又は制御用の機械器具、回転変流機、調相機、電気磁
気測定器、電線及びケーブル、電気アイロン、電気式ヘアカー
ラー、電気ブザー、磁心、抵抗線、電極、電子計算機、電子計
算機用プログラム、電子式卓上計算機
第10類 家庭用電気マッサージ器
25 第11類 電球類及び照明用器具、家庭用電熱用品類
第12類 陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除
く。)
第17類 電気絶縁材料
第21類 電気式歯ブラシ
5 ウ 令和2年1月21日の存続期間更新登録後
第9類 配電用又は制御用の機械器具、回転変流機、調相機、電気磁
気測定器、電線及びケーブル、電気アイロン、電気式ヘアカー
ラー、電気ブザー、磁心、抵抗線、電極、電子計算機、電子計
算機用プログラム、電子式卓上計算機
10 ⑶ 被告は、原告トンボ鉛筆を被請求人として、令和3年2月10日、本件商
標の指定商品のうち第9類「電子計算機、電子計算機用プログラム、電子式
卓上計算機」(以下「本件取消対象指定商品」という。)について、商標法5
0条1項に基づき不使用取消しの審判(取消2021-300089号事件)
を請求し、同年3月26日、同審判の請求の登録がされた。なお、同条2項
15 に規定する「審判の請求の登録前3年以内」は、平成30年(2018年)
2月26日から令和3年(2021年)2月25日までの期間(以下「本件
要証期間」という。)であった。
⑷ 特許庁は、令和6年3月28日、
「登録第4363622号商標の指定商品
中、第9類『電子計算機、電子計算機用プログラム、電子式卓上計算機』に
20 ついての商標登録を取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、
その謄本は、同年4月5日、原告トンボ鉛筆に送達された。
⑸ 原告トンボ鉛筆は、令和6年3月29日に、原告ズームに、本件商標権の
うち、第9類「電子計算機用プログラム」の指定商品に係る商標権を分割譲
渡し、その旨同年4月22日に登録された(登録第4363622号の2、
25 甲2。。

⑹ 原告らは、令和6年5月2日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起
した。
⑺ 被告補助参加人は、別紙2商標権目録記載の商標権を有しており、同商標
権に基づいて、令和3年11月30日、東京地方裁判所に、原告ズームを被
告とする商標権侵害行為差止等請求訴訟を提起し(同裁判所令和3年(ワ)
5 第30910号)、同訴訟は係属中であり、原告ズームは、前記⑸の分割譲渡
を受けた商標権に基づき、登録商標の使用の抗弁及び権利濫用の抗弁を主張
している。被告補助参加人の補助参加について、当事者は異議を述べていな
い。
2 本件審決の理由の要旨
10 本件審決の理由は、要するに、原告トンボ鉛筆は、2018年(平成30年)
ないし2021年(令和3年)頃に「トンボ鉛筆総合カタログ」を発行し、当
該カタログにおいて、
「シャープペンシル、黒ボールペン、赤ボールペンの機能
を有する筆記用具」を紹介したところ、上記商品に「ZOOM」の欧文字より
なる商標が使用されていたことが推認され、上記商標と本件商標とは、構成文
15 字を同じくし、いずれも「ズーム」の称呼を共通にする社会通念上同一の商標
であると認められるが、原告トンボ鉛筆が本件商標を使用したと主張する商品
は、
「シャープペンシル、黒ボールペン、赤ボールペンの機能を有する筆記用具」
であり、第16類「筆記具(文房具)」の範ちゅうに属する商品と判断するのが
相当であるから、本件取消対象指定商品の範ちゅうに属する商品とは認められ
20 ず、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件要証期間に
本件取消対象指定商品について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の
使用(商標法2条3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしたとは認めら
れないというものである。
3 原告トンボ鉛筆による本件要証期間における本件商標の使用に関連する前提
25 事実
原告トンボ鉛筆において、品名が「ZOOM L104(タッチペン付)、

品番が「CLB-132」である、尾栓にタッチペン(直径6.5㎜、高さ4
㎜の半円形の静電容量式タッチペン、甲17(1~2頁))を付した多機能ペン
(甲15~18。以下「使用商品1」という。 につき、
) 本件要証期間に商標「Z
OOM」を付して販売した事実は、当事者間に争いがなく、上記商標「ZOO
5 M」が本件商標と社会通念上同一であるとした本件審決の判断を、被告は明ら
かに争わない。この尾栓のタッチペン部分は、タブレット型コンピュータやス
マートフォンへの入力に対応している(タッチペンの使用の様子について甲1
7(2頁)、甲18(2頁)。

このタッチペン付きの尾栓(ZOOM L104用タッチペン替え)は、使
10 用商品1とは別個に独立して販売もされている(甲19、32。品番:TK-
TZLBT、製品コード:3081399。以下、タッチペン付きの尾栓(替
え部品) 「使用商品2」
を といい、使用商品1と併せて「各使用商品」という。。

使用商品2については「別紙1 使用商品2」の「ZOOM L104用タッ
チペン替え TK-TZLBT、製品コード:3081399」のとおりであり、
15 使用商品2を使用商品1の尾栓として取り付ける際のイメージは同別紙〈取付
方法〉のとおりである。
4 原告ら主張の本件審決の取消事由
原告らが主張する本件審決の取消事由は、本件商標を本件要証期間中に本件
取消対象指定商品に使用したとは認められないとした本件審決の判断の誤り
20 である。
第3 当事者の主張
本件審決の取消事由として原告らが主張するのは、上記第2の4のとおり本
件商標を本件要証期間中に本件取消対象指定商品に使用したとは認められな
いとした本件審決の判断の誤りであり、これについての当事者双方の主張は以
25 下のとおりである。
1 〔原告らの主張〕
⑴ 各使用商品は、本件審決が筆記具として認定した第16類商品と、第9類
商品との2面性を有しており、各使用商品は、ペン型データ入力具として、
第9類の「電子計算機」の範疇に属する製品にも当たる。したがって、本件
商標の本件取消対象指定商品についての使用の事実は明らかである。
5 ⑵ 原告トンボ鉛筆は、本件書換登録前の旧11類の「電子計算機〔中央処理
装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁
気ディスク、磁気テープを含む)」を指定商品として登録を受けていたとこ

ろ、本件書換登録は、書換ガイドライン(甲22)に従って書き換えをした
だけであるから、書換前と同様に、
「電子計算機」ないし「中央処理装置」に
10 「周辺機器」が含まれており、各使用商品はこれに当たるから、本件取消対
象指定商品について使用の事実が認められる。
⑶ 本件書換登録の申請時においても、商品「電子計算機」は、周辺機器を含
むものとして考えられていた。すなわち、
「商品及び役務の区分解説〔国際分
類第9版対応〕(甲56)において、
」 「電子計算機には、電子計算機(中央処
15 理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、
磁気テープその他の周辺機器)等のハードウェアが含まれる。 と説明されて

おり、本件書換登録の申請時においても、
「電子計算機」は、周辺機器を含む
概念として考えられていたことが明らかである。
そして、被告が提出する「周辺機器」についての辞書の記載(乙26)に、
20 「補助記憶装置、ディスプレー・プリンターなどの出力装置、キーボードな
どの入力装置、通信装置の類」とあること、スタイラスペン(タッチペン)
をペン型の入力装置として解説している文献が複数存在すること(甲57、
58)、情報処理技術者試験の一種である基本情報技術者試験の対策用のシ
ラバスにおいても、スタイラスペンがマウスやキーボードなどと並んで入力
25 装置として解説されていること(甲59)からも、入力装置は、電子計算機
を構成する周辺機器に含まれるものと解されるのであって、各使用商品は、
入力装置であるスタイラスペン(ペン型データ入力具)の性質を有するもの
として、
「電子計算機」の周辺機器に含まれ、各使用商品における本件商標の
使用は本件取消対象指定商品における使用に当たることが明らかである。
⑷ 本件商標の書換登録前の指定商品に含まれる、〔中央処理装置及びその周

5 辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁
気テープを含む。〕
)」との部分は、「電子計算機」の内容を補足的に説明して
いるものに過ぎず、指定商品そのものは「電子計算機」である。そのため、
本件書換登録前の指定商品として表示された「電子計算機〔中央処理装置及
びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディ
10 スク、磁気テープを含む。〕
)」は、書換ガイドラインに掲載された商品に該当
するものといえ、原告トンボ鉛筆による書換登録申請は書換ガイドラインの
記載に従ってされたものである。被告の主張する「商品移行関係対照表」
(乙
31)は、書換登録を受けようとする指定商品及び書換表示が書換ガイドラ
インの一覧表に掲載されていない場合に、総合勘案する際の資料の一つとし
15 て書換ガイドライン上で挙げられているに過ぎず(甲66) 書換ガイドライ

ンに掲載されているものについては、書換ガイドラインを優先して参照する
のが当然である。
2 〔被告の主張〕
⑴ 各使用商品は「電子計算機」ではないところ、原告らの主張する「コンピ
20 ュータ用データ入力具」は「電子計算機」とは別商品であり、本件取消対象
指定商品についての使用には当たらない(乙10)。
⑵ 「コンピュータのデータ入力具」はタッチスクリーンに対する入力装置で
あり、本件商標の出願時には存在しなかった。
「電子計算機」と「コンピュー
タのデータ入力具」とは異なる商品であり、指定商品に「コンピュータのデ
25 ータ入力具」が記載されていない以上、商標権の権利範囲外である。書換登
録前の指定商品が「電子計算機〔中央処理装置およびその周辺機器・・・〕」
であったとしても、書換後の指定商品が単品の商品「電子計算機」となって
いる以上、後者に周辺機器は含まれない(商標法27条2項)使用商品1は、

タッチペン付きボールペンであり、電子計算機の周囲に配置されたり、これ
に接続されてデータや信号のやり取りを行うものではないから、「電子計算
5 機」に包含される「周辺機器」には当たらない。各使用商品を第16類の「筆
記具(文房具) の範疇に属する商品であるとした本件審決の判断に誤りはな

い。
⑶ 本件書換登録は、書換ガイドラインに従ったものではない。書換登録前の
本件商標の指定商品は「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子
10 計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含
む)」であって、
〕 「電子計算機」ではない。
「商品移行関係対照表」
(乙31)の193頁には、書換可能な表示として
「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子
回路等周辺機器を含む)」等が掲載されている。そのため、書換に際してなる
15 べく書換前の商品を網羅したいと欲する書換登録申請人は、書換ガイドライ
ンに掲載されていない表示も採択して書換登録申請をしていた。
国際分類制度の商品に書換された後では、下位概念の商品「電子計算機」
の概念には「電子計算機プログラム」「中央処理装置」及び「電子計算機の

周辺機器」は含まれていない。原告トンボ鉛筆の指定商品は、書換前の指定
20 商品「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラ
ムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む。〕
)」であったも
のを「電子計算機」及び「電子計算機プログラム」のみに書き換えており、
その結果として「中央処理装置」及び「電子計算機の周辺機器」は含まれな
くなった。
25 ⑷ なお、スタイラスペンは、
「文字を書くこと、イラストを描くことに特化し
たスマホ・タブレット用のペン」を示す電子応用機械器具であり、各使用商
品はこれには該当しない。
第4 当裁判所の判断
1 各使用商品が本件取消対象指定商品に該当するか否かについて
⑴ 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施
5 行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属
するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注
釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準
における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最高裁平
成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決・民集6
10 5巻9号3568頁参照)。
⑵ 本件商標の指定商品について本件書換登録の申請がされた日(平成22年
5月10日、甲55。以下「本件書換登録申請日」という。)に施行されてい
た、商標法6条2項において政令で定めることとされた商品及び役務の区分
につき規定する平成27年政令第26号による改正(条文繰下げ)前の商標
15 法施行令1条(以下「商標法施行令1条」という。)の別表(第一条関係)に
は、「第九類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、
信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学
式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧
調整用又は電気制御用の機械器具」と規定されていた。
20 そして、商標法施行令1条の規定による商品及び役務の区分に属する商品
又は役務を規定する、本件書換登録申請日に施行されていた商標法施行規則
6条の別表(第6条関係。平成23年経済産業省令第66号による改正前の
もの。以下「省令別表」という。)の「第九類 十六 電子応用機械器具及び
その部品」は、次のとおりであった。
25 「十六 電子応用機械器具及びその部品
(一) 電子応用機械器具
ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器
具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディスク用
シールドケース 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測
深器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用静電複写機 電
5 子応用扉自動開閉装置 電子計算機 電子顕微鏡 電子式卓上計算機
ハードディスクユニット ワードプロセッサ
(二) 電子管
X線管 光電管 真空管 整流管 ブラウン管 放電管
(三) 半導体素子
10 サーミスター ダイオード トランジスター
(四) 電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)
集積回路 大規模集積回路
(五) 電子計算機用プログラム」
そうすると、本件商標の指定商品のうち、
「電子計算機」は、上記第九類十
15 六の「(一) 電子応用機械器具」中に定める「電子計算機」を意味するものと
解されるので、そこにいう「電子計算機」の意義について検討することとな
る。
⑶ 本件書換登録申請日における類似商品・役務審査基準等の記載は、以下の
とおりであった。
20 ア 本件書換登録申請日当時の「類似商品・役務審査基準」であることに当
事者間に争いのない特許庁商標課編 『商品及び役務の区分』
「 に基づく類似
商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕(平成19年1月1日から平

成23年12月31日までに対応)には、以下のとおり記載されている(甲
4、乙9、被告第2準備書面9頁)。
25 「電子応用機械器具及びその部品 11C01」
「1 電子応用機械器具
ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械
器具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディス
ク用シールドケース 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波
応用測深器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用静電複
5 写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機 電子顕微鏡 電子式卓
上計算機 ハードディスクユニット ワードプロセッサ
2 電子管
X線管 光電管 真空管 整流管 ブラウン管 放電管
3 半導体素子
10 サーミスター ダイオード トランジスター
4 電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)
集積回路 大規模集積回路
(備考)
『電子管 半導体素子 電子回路(電子計算機用プログラ
ムを記憶させた電子回路を除く。』 『電子通信機械器具』
)は、
15 に類似する。
5 電子計算機用プログラム
(備考)『電子計算機用プログラム』は、第42類の『電子計算機
用プログラムの提供』に類似する。」
イ また、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕

20 には、第9類十六の「電子応用機械器具及びその部品」につき、
「この概念
には、電子の作用を応用したもので、電子の作用をその機械器具の機能の
本質的な要素としているものだけが含まれる。と記載され、電子計算機」
」 「
の説明として、〈電子計算機〉電子計算機には、電子計算機(中央処理装

置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁
25 気テープその他の周辺機器)等のハードウェアが含まれる。 と記載されて

いる(甲56)。
⑷ 一方、本件書換登録前の、本件商標の設定登録に至る経過は次のとおりで
ある。
ア 原告トンボ鉛筆は、平成元年10月19日に、旧第11類の指定商品で
ある「電気機械器具(電池を除く) 電気通信機械器具、
、 電子応用機械器具、
5 (医療機械器具に属するものを除く)、電気材料」を指定商品として、本件
商標の出願を行い、同出願は商願平1-119154号として特許庁に係
属した(乙1、2)。
これに対して、平成8年1月17日付け(同年2年9日発送)で拒絶理
由通知が発せられたところ、その理由には、上記出願は、『ZOOM』の

10 文字を書してなるから、これをその指定商品中ZOOM(ズーム)機能を
有する商品、例えばビデオカメラに使用するときは、単に商品の品質、用
途を表示するにすぎない」とされていた(乙2)。
原告トンボ鉛筆は、これにつき平成8年5月16日付けで意見書及び手
続補正書を提出し、上記出願に係る商標の指定商品を、
「電気機械器具(電
15 池を除く)、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)、電気
材料」と補正した(乙2)。
イ しかし、平成8年6月26日付け(同年7月12日発送)で、上記手続
補正書による指定商品の補正については、指定商品中の「電子応用機械器
具」には「画像処理装置」があることから、さきの認定を覆すことができ
20 ないとして、拒絶査定がされた(乙2)。
ウ 原告トンボ鉛筆は、平成8年7月30日付けで拒絶査定不服審判(平成
8年審判第12756号)を請求した(乙3)。
原告トンボ鉛筆は、これと同時に平成8年7月30日付け手続補正書を
提出し、指定商品を、「電気機械器具(電池を除く)、電子計算機〔中央処
25 理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、
磁気ディスク、磁気テープを含む。〕電子式卓上計算機、電気材料」に補

正した(乙2)。
エ なお、本件商標の出願当時の商品等の区分一覧表には、第十一類に「電
気機械器具」「電気通信機械器具」「電子応用機械器具(医療機械器具に
、 、
属するものを除く。」
)、「電気材料」との大概念表示があり、そのうちの「電
5 子応用機械器具」の下位に、中概念表示として「一 電子応用機械器具」、
「二 電子管」「三
、 半導体素子」「四
、 電子回路(電子計算機用プログ
ラムを記憶させた電子回路を除く。」があり、このうちの「一
) 電子応用
機械器具」の下位の商品の中に、
「電子計算機〔中央処理装置およびその周
辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、
10 磁気テープを含む。〕、
)」「電子式卓上計算機」が記載されていた。
平成8年7月30日付け手続補正書による補正は、指定商品を、それ以
前の「電気機械器具(電池を除く)、電子応用機械器具(医療機械器具に属
するものを除く)、電気材料」(平成8年5月16日付け手続補正書による
補正後)から、「電気機械器具(電池を除く)、電子計算機〔中央処理装置
15 及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気
ディスク、磁気テープを含む。〕電子式卓上計算機、電気材料」に補正す

るものであり、大概念表示として「電気機械器具(電池を除く)、
」「電気材
料」を残し、大概念表示である「電子応用機械器具(医療機械器具に属す
るものを除く)」を削り、その下位の中概念表示「一 電子応用機械器具」
20 中の商品である「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算
機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含
む。〕
)」及び「電子式卓上計算機」を残すというものである。この補正によ
り、大概念「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)」の下
位の中概念表示である「二 電子管」「三
、 半導体素子」「四
、 電子回路
25 (電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。」も削除された

ことになった。
なお、当時、
「電子応用機械器具」の大概念表示の下に「電子計算機用プ
ログラム」の中概念表示は存せず、中概念表示の「一 電子応用機械器具」
の下に「ハードディスクユニット」も存しなかった。
(甲66、乙2ないし4、6)
5 オ 上記審判請求事件について、平成11年12月16日付け(平成12年
1月19日到達)で「原査定を取り消す。本願商標は、登録をすべきもの
とする。」との審決がされた(乙3)。
本件商標は、平成12年2月25日に登録第4363622号として設
定登録がされた(乙1、2)。
10 ⑸ 商標法附則2条1項は、「平成4年3月31日までにされた商標登録出願
に係る商標権を有する商標権者は、申請により、次条第1項の申請書の提出
の日に効力を有する第6条第2項の政令で定める商品及び役務の区分に従っ
て、その商標権の指定商品の書換の登録(以下「書換登録」という。)を受け
なければならない。 と定めるところ、
」 この商標権の指定商品の書換の登録に
15 関する法の定めやガイドライン等の記載は、以下のとおりである。
ア 商標法附則4条1項は、
「書換登録の申請は、その申請に係る商標権の指
定商品の範囲を実質的に超えないように、附則第2条第1項に規定する商
品及び役務の区分に従ってしなければならない。」と、同8条は、「審査官
は、書換登録の申請について拒絶の理由を発見しないときは、書換登録を
20 すべき旨の査定をしなければならない。」と、同12条1項は、「書換は、
登録によりその効力を生ずる。」と、同条2項は、「附則第8条の査定があ
ったときは、商標権の指定商品を書き換えた旨の登録をする。」と、同条3
項は、書換登録につき、書換の「申請書に記載されなかった指定商品に係
る商標権は、登録の時に消滅する。」とそれぞれ定めている。
25 イ 上記の指定商品の書換に関し、特許庁の作成した書換ガイドライン(乙
6)には、以下のとおり記載されている。
「① 拒絶理由通知
審査官は、書換登録申請が次のいずれかに該当するときは、書換登
録申請をした者に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して
意見書を提出する機会を与えなければならない(附則第7条)。
5 ・その申請に係る商標権の指定商品の範囲を実質的に超えているとき
・その申請書の提出の日に効力を有する商品及び役務の区分に従って
いないとき
・その申請をした者が当該商標権者でないとき」(乙6(3枚目))
「2.書換表示が新商品(新たな機能・品質等を有するものを含む。)の場
10 合の取扱い
書換登録を受けようとする指定商品が、その商標権に係る出願の時
に存在していないという充分な心証を得たときは、商標権の指定商品
の範囲を実質的に超えているものとして、その申請は拒絶されること
となる。
15 ただし、商品の品質、形状、用途、機能等及び当該商品が属すべき
指定商品のもつ商品概念並びに取引の通念を総合的に勘案して、当該
指定商品と実質的に同一種類のものとみられる場合は、当該指定商品
に属するものとして取り扱われることとなる(特許庁商標課 編『商標
審査基準〔改訂第6版〕 77~78 頁参照)」
』 。(乙6(5枚目))
20 ウ 「書換ガイドライン〔国際分類第9版対応〕」のうちの「書換ガイドライ
ン利用上の注意事項」には、以下のとおり記載されている(甲66)。
「1.書換ガイドラインの見方について」
「e.一覧表の『書換表示の区分』欄の類は番号順に配列している。
『書換表示の商品』欄の商品については、旧区分の1の商品に対して
25 書換表示が複数の商品となる場合は、各商品の配列を五十音順とし、各
商品間をカンマ )
(,で区切っている。括弧書で複数の商品を除く場合は、
各商品間を中黒(・)で区切っている。」
「2.書換ガイドラインに掲載されていない商品の書換表示について」
「a.一覧表の書換表示は基準的性格のものであるから、一覧表の書換表
示以外の書換表示であっても、それが書換登録申請に係る商標権の指定
5 商品の範囲内の適切な商品表示であれば、その書換表示による書換も認
められることとなる。」
エ 本件書換登録に適用される特許庁商標課編「商標権の指定商品の書換の
ための書換ガイドライン〔国際分類第9版対応〕」
(甲22)の一覧表には、
昭和34年法区分の商品「電子計算機」については「書換表示」として、
10 区分「9」、商品「電子計算機,電子計算機用プログラム」、類似群「11
C01」と記載されている。
そうすると、上記ウの注意事項の記載内容に従えば、指定商品「電子計
算機」については、二つの商品である「電子計算機」及び「電子計算機用
プログラム」に書換可能であることが示されているが、それ以外の書換表
15 示であっても、それが書換登録申請に係る商標権の指定商品の範囲内の適
切な商品表示であれば、その書換表示による書換も認められることとなる。
⑹ 電子計算機及び周辺機器について、辞書及び文献には以下の記載がある。
「電子計算機」について、辞書には、
「トランジスター・集積回路などを用
いた高速自動計算機。演算装置のほかに制御装置・記憶装置を備え、あらか
20 じめ作成したプログラムに従って計算や論理的処理を高速度で行う。グラフ
ィックスや各種情報処理など多方面に利用。コンピューター。(広辞苑第7

版。乙27)と記載されている。
「周辺装置」について、辞書には、
「コンピューター本体に組み合わせて使
用する各種の装置。補助記憶装置、ディスプレー・プリンターなどの出力装
25 置、キーボードなどの入力装置、通信装置の類。周辺機器。」
(広辞苑第7版。
乙26)と記載されている。
また、情報処理技術者試験
「 基本情報 図解テキスト①ハードウェアとソ
フトウェア2001年版」
(甲52) 「1.
は、 2 コンピュータの基本構成」
において、コンピュータを処理装置と周辺装置に分類し、処理装置を中央処
理装置と主記憶装置(メモリ)に分類した上で主記憶装置(メモリ)はプロ
5 グラムを記憶しておく装置であるとし、周辺装置については、
「処理装置の外
部にあり記憶装置とやりとりを行う入力装置・出力装置・補助記憶装置を総
称して周辺装置と呼びます。 とした上で、
」 補助記憶装置としてハードディス
ク等を、入力装置としてキーボード等を、出力装置としてディスプレイやプ
リンタなどを挙げ、これらを「周辺装置」としている。
10 ⑺ 以上を前提に検討すると、上記⑵の政令、省令の定めのとおり、本件商標
の本件書換登録後の指定商品は省令別表第九類十六の「(一) 電子応用機械
器具」中の商品「電子計算機」を意味するものと解されるところ、省令別表
第九類十六「(一) 電子応用機械器具」中には他の商品として「ハードディス
クユニット」も記載され、更に省令別表第九類十六には、
「(一) 電子応用機
15 械器具」とは別に、「(五)電子計算機用プログラム」が記載されている。
これは、上記⑶アの「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査
基準〔国際分類第9版対応〕」の「電子応用機械器具及びその部品 11C0
1」における「1 電子応用機械器具」中の商品として「電子計算機」と「ハ
ードディスクユニット」が定められ、
「1 電子応用機械器具」とは別に「5
20 電子計算機用プログラム」が定められているのと同旨である。
そして、上記⑶イの「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕に
は、第9類十六の「電子応用機械器具及びその部品」につき、
「この概念には、
電子の作用を応用したもので、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な
要素としているものだけが含まれる。」とした上で、「電子計算機」の説明と
25 して、〈電子計算機〉電子計算機には、電子計算機(中央処理装置及び電子

計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープその
他の周辺機器)等のハードウェアが含まれる。」と記載されており、商品「電
子計算機」は、上記本質的要素を踏まえた上で、中央処理装置と、電子計算
機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器等のハードウェアを含む
ものとされている。もとより、商標の指定商品を示す用語の意味は、他の指
5 定商品との関係等をも考慮して解釈されるべきものであり、一般的な用法や
科学技術上の用法における意味と常に完全に一致するとは限らないが、上記
の指定商品としての「電子計算機」の語の意味は、上記⑹に照らすと、一般
的に又は科学技術上いわれる「電子計算機」の中核的内容を示し、一般的な
用法や科学技術上の用法にも合致するものであり、それらと矛盾するもので
10 はない。
一方、省令別表第九類十六に商品として記載された「ハードディスクユニ
ット」については、上記⑹の辞書及び文献等の記載にもよれば、電子計算機
(コンピュータ)の処理装置の外部にある補助記憶装置として、電子計算機
の周辺機器に属するものと認められる。
15 そうすると、本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」
は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを
含むものであり、その「電子計算機」に含まれる周辺機器も、中央処理装置
及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれ
に当たり、ハードディスクユニット等の電子計算機外部の周辺機器はこれに
20 当たらないものというべきである。
⑻ 各使用商品に関連しては、以下の事実が認められる。
原告トンボ鉛筆による2015年(平成27年)10月14日付けプレス
リリースには、「タブレットやスマートフォン対応のタッチペンを尾栓に搭
載したモデルも同時発売します。
・・・タッチペン付は、上記多機能ペンに加
25 えてスマートフォンやタブレットが操作しやすい直径6.5ミリ、高さ4ミ
リ(半円形)の静電容量式タッチペンを尾栓に搭載しました。」との記載があ
る(甲17)。
また、各使用商品の掲載された原告トンボ鉛筆のカタログには、
「スマート
フォン対応のタッチペン搭載 指では操作しづらかった細かな箇所もタッチ
できる細身のタッチペンです。」との記載がある(甲18)。使用商品1の外
5 箱には「Stylus pen」とのシールが貼付されている(甲19)。
「imidas 2007」には、
スタイラスペンについて文献の記載を見ると、 「スタ
イラスペン ペン型の入力機器で、タブレットやデジタイザー(文字や図形
を入力するためのプレート型の装置)で文字や図形、図面の座標を入力する
ために使われる。」と(甲57)「カタカナ外来語/略語辞典」
、 (平成11年
10 10月1日、株式会社自由国民社)には、「スタイラス・ペン(stylus pen)
〔コンピューター〕座標を指定して図形を入力するためのペン。と
」(乙52)、
それぞれ記載されている。
⑼ 本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」の意味につい
て上記⑺で検討した結果を本件に当てはめると、まず、使用商品2について
15 は、その仕様は「別紙1 使用商品2」記載のとおりであるところ、上記⑻
のとおり、使用商品2は静電容量式のタッチペン付きの尾栓であって、人の
指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、上記⑺のとおり、電
子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むと
する「電子計算機」に含まれるものとは解しがたい。加えて、「電子計算機」
20 につき、上記のとおり中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させ
た電子回路等の周辺機器のみを含み、補助記憶装置であるハードディスクユ
ニット等の電子計算機外部の周辺機器ですら含まれないと解されることから
すれば、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機用プログラムの記憶とは
何ら関係しない、多機能ペンの尾栓である使用商品2は、電子計算機に含ま
25 れる周辺機器に当たるものとは解しがたいというべきである。
次に、使用商品1は、多機能ペンであって筆記具である上、静電容量式の
タッチペン付きの尾栓を備えていることを考慮しても、上記と同様に、人の
指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、電子の作用をその機
械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むとする「電子計算機」
に含まれるものとは解しがたく、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機
5 用プログラムの記憶とは何ら関係しない多機能ペンである使用商品1は、電
子計算機に含まれる周辺機器に当たるものとも解しがたいというべきである。
その他、本件取消対象指定商品につき、本件要証期間における本件商標の
使用の事実の立証はされていない。
そうすると、本件取消対象指定商品について、本件要証期間における本件
10 商標の使用の事実は立証されていないこととなるから、これと同旨の本件審
決の判断に誤りはない。
したがって、原告らの主張する取消事由には理由がない。
2 原告らの主張に対する判断
⑴ 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑴及び⑵のとおり、各使用商品
15 は「電子計算機」ないしそこに含まれる周辺機器に当たるから、本件商標の
本件取消対象指定商品についての使用の事実の立証がされていると主張する。
しかし、既に述べたとおり、本件商標の本件書換登録後の指定商品である
「電子計算機」は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素として
いるものだけを含み、その電子計算機に含まれる周辺機器も、中央処理装置
20 及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれ
に当たり、ハードディスクユニット等の外部周辺機器はこれに当たらないと
解されるところ、各使用商品は、いずれもそこにいう「電子計算機」に該当
するものとは認められないというべきである。なお、原告らの主張のうち、
本件書換登録が書換登録ガイドラインに従ったものであるとする点について
25 の判断は後記⑶のとおりである。
したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
⑵ 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑶のとおり、
「商品及び役務の区
分解説〔国際分類第9版対応〕(甲56)によれば、本件書換登録の申請時

においても、電子計算機は周辺機器を含むものとして考えられていたとし、
「周辺機器」についての辞書等の記載によれば、スタイラスペンが入力装置
5 として解説されていることなどから、各使用商品は、入力装置であるスタイ
ラスペン(ペン型データ入力具)の性質を有するものとして、「電子計算機」
の周辺機器に含まれる旨を主張する。
しかし、上記1⑶イの「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」
(甲56)の記載を含め、本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」
10 に含まれる周辺機器については、中央処理装置及び電子計算機用プログラム
を記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれに当たるものであり、ハード
ディスクユニット等の外部周辺機器がこれに当たらないと解されることにつ
いては既に述べたとおりである。そして、上記1⑻のとおり、使用商品1の
外箱には「Stylus pen」とのシールが貼付されていたけれども、各使用商品
15 が本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」に含まれないことについ
ては、上記1⑼で述べたとおりである。
したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
⑶ 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑵及び⑷のとおり、原告トンボ
鉛筆は、本件書換登録の申請に当たり、本件書換登録申請日当時の書換ガイ
20 ドラインに沿って書き換えを行ったに過ぎないから、本件書換登録後の指定
商品「電子計算機」は、本件書換登録前の「電子計算機〔中央処理装置及び
その周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディス
ク、磁気テープを含む)」と同義であるところ、書換前の「その周辺機器」

には各使用商品が含まれるから、書換後の「電子計算機」についても同様に
25 解すべき旨を主張する。
しかし、上記1⑸エのとおり、書換ガイドラインの一覧表上に昭和34年
法に基づく商品として記載されているのは「電子計算機」であって、本件書
換登録前の本件商標の指定商品であった「電子計算機〔中央処理装置及びそ
の周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、
磁気テープを含む)」
〕と同一ではないから、原告トンボ鉛筆の行った書換は、
5 必ずしも書換ガイドラインの一覧表に示された通りの書換を行ったものとは
いえない。加えて、そもそも書換ガイドラインは、上記1⑸ウにあるとおり、
基準的な性格のものに過ぎない上に、一覧表の書換表示以外の書換表示であ
っても、それが書換登録申請に係る商標権の指定商品の範囲内の適切な商品
表示であれば、その書換表示による書換も認められるのであるから、本件申
10 請時の商品等区分に従い、本件書換登録前の指定商品の記載に基づいて原告
トンボ鉛筆が指定商品に含まれると考える商品について書換申請を行うこと
も可能であったということができる(上記1⑸エ)。なお、本件書換登録申請
日当時の「類似商品・役務審査基準」が適用される間における書換登録にお
いても、書換前の第11類「電子計算機〔中央処理装置およびその周辺機器
15 (電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テー
プを含む)」及びこれと類似する記載を、第9類「電子計算機〔中央処理装

置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気
ディスク、磁気テープを含む)」などや、これと類似する記載に書き換えた例
も存するところである(乙47ないし49、51)。
20 さらに、上記の点を措くとしても、上記1⑸ウの書換ガイドライン利用上
の注意事項(「旧区分の1の商品に対して書換表示が複数の商品となる場合
は、各商品の配列を五十音順とし、各商品間をカンマ )
(, で区切っている。)

から明らかなとおり、そもそも同ガイドラインの一覧表に示された記載に沿
って商品「電子計算機」の書換登録を行ったとする場合の書換後の商品は、
25 上記1⑸エのとおり「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」の二つ
の商品であり、指定商品を実質的に超えない範囲で書換登録がなされるもの
であること(上記1⑸ア、イ)に鑑みれば、二つの商品に書換えられた後の
一方の商品である「電子計算機」が、書換前の商品「電子計算機」と内容的
に全く同一とはいえないことも明らかである。
そして、商標法附則12条3項が「(書換の)申請書に記載されなかった指
5 定商品に係る商標権は、登録の時に消滅する。」と規定するところから、書換
登録がなされた後にあっては、該商標の指定商品については、書換後の指定
商品の内容に従って客観的に定まるものと解される。これに沿って解した場
合の、本件書換登録後の本件商標の指定商品である「電子計算機」の意義、
及び各使用商品がこれに当たらないことについては、既に検討したとおりで
10 ある。
したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
3 結論
以上のとおり、本件商標を本件要証期間中に本件取消対象指定商品に使用し
たとは認められないとした本件審決の判断に誤りはないから、原告ら主張の取
15 消事由には理由がなく、本件審決に、これを取り消すべき違法はない。
よって、原告らの請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
中 平 健
裁判官
今 井 弘 晃
5 裁判官
水 野 正 則
別紙1 使用商品2
別紙2
商標権目録
【登録番号】 商標登録第4940899号(T4940899)
5 【登録日】 平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願日】 平成17年8月8日(2005.8.8)
【登録商標】
10 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第9類 理化学機械器具、測定機械器具、配電用又は制御用の機械器具、回転変
流機、調相機、電池、電気磁気測定器、電線及びケーブル、写真機械器具、映画機
械器具、光学機械器具、眼鏡、加工ガラス(建築用のものを除く。、救命用具、電

気通信機械器具、録音済みの磁気カード・磁気シート・磁気テープ・コンパクトデ
15 ィスク・その他のレコード、電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路
及びCD-ROM、メトロノーム、電子計算機用マウスパッド、電子計算機用マウ
ス、コンピュータプログラムを記憶させた磁気ディスク・磁気テープ・その他の記
録媒体、電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具及びその部品、電子
出版物、オゾン発生器、電解槽、ロケット、業務用テレビゲーム機用のプログラム
20 を記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディスク・CD-RO
M・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ、業務用テレビゲーム
機、スロットマシン、運動技能訓練用シミュレーター、乗物運転技能訓練用シミュ
レーター、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気ブザー、乗物の故障の警告用
の三角標識、発光式又は機械式の道路標識、鉄道用信号機、火災報知機、ガス漏れ
25 警報器、盗難警報器、事故防護用手袋、消火器、消火栓、消火ホース用ノズル、ス
プリンクラー消火装置、消防艇、消防車、自動車用シガーライター、保安用ヘルメ
ット、防火被服、防じんマスク、防毒マスク、溶接マスク、磁心、抵抗線、電極、
新聞・雑誌・書籍・地図・図面・写真の画像・文字情報を記録させた電子回路・R
OMカートリッジ・光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・磁気カード・磁
気テープ、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、映写フィルム、スライドフ
5 ィルム、スライドフィルム用マウント、ガソリンステーション用装置、自動販売機、
駐車場用硬貨作動式ゲート、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記
録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、
タイムレコーダー、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵
便切手のはり付けチェック装置、計算尺、ウエイトベルト、ウエットスーツ、浮袋、
10 運動用保護ヘルメット、エアタンク、水泳用浮き板、レギュレーター、潜水用機械
器具、アーク溶接機、金属溶断機、電気溶接装置、家庭用テレビゲームおもちゃ専
用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・光ディスク・光磁気ディス
ク・CD-ROM・デジタルバーサタイルディスク-ROM及び磁気テープ、家庭
用テレビゲームおもちゃ専用のコントローラ・ジョイスティック・メモリーカード・
15 ボリュームコントローラ・マウス、その他の家庭用テレビゲームおもちゃ、携帯用
液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM、
検卵器、電動式扉自動開閉装置、磁石、永久磁石、標識用ブイ、二輪自動車用シガ
ーライター、耳栓
第15類 調律機、楽器、演奏補助品、音さ

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