ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和5(ワ)10237 特許権侵害差止等請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 大阪地方裁判所大阪地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和6年11月14日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告有限会社日本一安い罠の店 被告合同会社太田製作所 |
| 法令 |
特許権 特許法102条1項2回 特許法100条1項1回 |
| キーワード | 侵害15回 特許権12回 差止5回 進歩性4回 実施2回 無効1回 損害賠償1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を、いずれも棄却する。20 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本判決における略語は、本文中に定義するもののほか、以下のとおりである。 |
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令和6年11月14日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
令和5年(ワ)第10237号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結の日 令和6年9月19日
判 決
原 告 有限会社日本一安い罠の店
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 原 志 津 子
同 平 田 曜
同 立 花 玄 成
同訴訟代理人弁理士 市 川 泰 央
被 告 合同会社太田製作 所
同代表者代表社員
同訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎
同 小 山 秀
同 小 松 栄 二 郎
同訴訟復代理人弁護士 中 田 健 一
主 文
1 原告の請求を、いずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は、別紙1「物件目録」記載の野生動物屠殺用具を製造し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。2 被告は、別紙1「物件目録」記載の野生動物屠殺用具及びその半製品(別紙2「被告製品説明」記載の構造を具備しているが、別紙1「物件目録」記載の野生動物屠殺用具として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。3 被告は、原告に対し、14万6500円及びこれに対する令和5年11月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
5 第2 事案の概要1 本判決における略語は、本文中に定義するもののほか、以下のとおりである。
(1) 本件特許 別紙3「特許権目録」記載の特許(特許第5687750号)
(2) 本件特許権 本件特許に係る特許権
(3) 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の発明
(4) 本件明細書 本件特許の「明細書及び図面」
(5) 被告製品 別紙1「物件目録」記載の製品2 本件は、本件特許権を有する原告が、被告製品を製造等する被告の行為が本件特許権の侵害であると主張して、被告に対し、① 特許法100条1項に基づき被告製品の製造等の差止めを、② 同条2項に基づき半製品を含む被告製品の廃棄を、③ 民法709条に基づき損害賠償金14万6500円(ただし、少なくとも5883万0200円の損害が生じたとして、その明示的一部請求)及びこれに対する令和5年11月4日(訴状送達日の翌日であり、不法行為よりも後の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。3 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1) 当事者ア 原告は、狩猟用罠の製造、販売等を業とする有限会社である。イ 被告は、鳥獣類捕獲器の製造、販売等を業とする合同会社である。
(2) 原告の特許権原告は、本件特許権を有している(甲1、2)。
(3) 構成要件の分説、被告製品の構成及び構成要件充足性ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。「先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有し、基端にグリップ部を形成した、伸縮自在の所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接
5 続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成され、電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており、野生動物を屠殺する場合には、作業者は一方の手で竿体のグリップ部を把持し、他方の手で電源スイッチ部を把持し、野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチボタンを押すと、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を構成することにより野生動物を屠殺するように構成したことを特徴とする野生動物屠殺用具。」イ 本件発明を構成要件に分説したものは、別紙4-1「充足論(被告製品の構成)検討表」の「 本件発明の構成要件」欄のとおりである。被告製品の構成のうち、「当事者間で争いがないものは、同別紙の「被告の主張」欄に「◯」と記載されており、被告製品の構成が本件発明の構成要件を充足することに争いがないものは、構成要件BないしEである。
(4) 被告の行為被告は、令和2年10月19日頃から現在まで、被告製品を製造、販売している(弁論の全趣旨)。4 争点
(1) 被告製品の構成(争点1)
(2) 文言侵害の成否(争点2)
(3) 均等侵害の成否(争点3)
(4) 自由技術の抗弁の成否(争点4)
(5) 原告に生じた損害(争点5)
(6) 差止め及び廃棄の必要性(争点6)
5 第3 争点についての当事者の主張1 被告製品の構成(争点1)に関する主張は、別紙4-1「充足論(被告製品の構成)検討表」に、文言侵害の成否(争点2)に関する主張は、別紙4-2「充足論(文言侵害)検討表」に各記載のとおりである。また、均等侵害の成否(争点3)に関する主張は、別紙5「充足論(均等侵害)検討表」に記載のとおりである。2 争点4(自由技術の抗弁の成否)について【被告の主張】
(1) 仮に、被告製品が本件発明の技術的範囲に含まれていたとしても、被告製品は、本件特許の出願当時における公知技術と実質的に同一(引用発明との間の相違点が課題解決のための具体的手段における微差「(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合をいう。)である。このように、公知技術を含む一定領域の範囲内の技術は、本来、何人も自由に利用することができるべきものであり、いわゆる自由技術に該当するから、原告の権利行使は認められない。
(2) 本件特許出願時以前の日である平成25年8月2日時点で、インターネット上のブログ「電気ショッカーの解説」(乙27)では、「電気ショッカー」の存在が公開されていた。この「電気ショッカー」は、対象物に対し、電圧を付加することでショックを与えるための用具であり、捕獲檻に入った猪に対しとどめを刺すために猪を動けなくするためのものであり、別紙6のような構造を有する(以下、この「電気ショッカー」を「主公知技術」という。)。主公知技術の構成及び被告製品との一致点、相違点及び相違点についての検討に関する被告の主張は、別紙7「自由技術の抗弁検討表」に記載のとおりである。【原告の主張】
(1) 被告が主張する自由技術の抗弁なるものは、特許無効の抗弁が明文化された現代において、採用の余地がない独自の見解にすぎない。
5 (2) 主公知技術の構成及び被告製品との一致点、相違点及び相違点についての検討に関する原告の主張は、別紙7「「自由技術の抗弁検討表」に記載のとおりである。3 争点5(原告に生じた損害)について【原告の主張】
(1) 特許法102条1項に基づき推定される損害額 5348万2000円原告は、令和2年10月19日から現在に至るまで、本件発明を実施した野生動物屠殺用具(以下「原告製品」という。)を製造、販売しているところ、その販売価格は1個当たり2万3100円、原価は8800円である。よって、原告製品1個当たりの販売利益は1万4300円(=2万3100円-8800円)となる。一方、被告は、遅くとも令和2年10月19日から現在まで被告製品を製造、販売しているところ、野生動物屠殺用具の日本におけるシェアが、原告:被告=60:40であること、原告が、当該期間中、原告製品を5610個販売したことを踏まえると、被告は、被告製品を3740個(=5610個×40÷60)販売したものと考えられる。そうすると、原告は、被告の特許権侵害行為により、少なくとも5348万2000円「(=1万4300円/個×3740個)の損害を被ったものと認められる「(特許法102条1項)。
(2) 弁護士・弁理士費用 534万8200円被告に対し、上記損害額の賠償を求めるために必要かつ相当な弁護士・弁理士費用は、上記のとおりである。
(3) 合計 5883万0200円ただし、本訴訟においては、このうち、14万6500円に限り、請求する。【被告の主張】争う。4 争点6(差止め及び廃棄の必要性)について
5 【原告の主張】被告は、現在も被告製品を製造・販売しており、被告製品が本件訴訟において本件特許権を侵害していることを争うなどしていることも考慮すれば、本件特許権侵害の予防のため、被告製品の製造等の行為の差止め及び廃棄を求める必要がある。【被告の主張】争う。
第4 当裁判所の判断
1 被告製品の構成(争点1)について証拠(甲3、乙1ないし5)によれば、被告製品の構成は次のaないしi記載のとおりであると認められる。a 竿体(11)の先端部に取付け取り外し可能で先端先鋭状の正電極部となる金属針部(12)を突設したキャップ部と、約1メートルの長さの1本の塩化ビニル製パイプ(KCビニルパイプ)からなる所定長さの竿体(11)と、b 金属針部(12)に接続した通電コード(13)と、c 通電コード(13)に接続したバッテリー(14)と、d バッテリー(14)からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部(15)としての機能を有するDC/ACインバーターであるインバーター(16)と、e 通電コード(13)の中途に介設した手元スイッチ(17)と、を備え、f (なし)g 手元スイッチ(17)は、金属針部(12)とインバーター(16)を繋ぐ通電コード(13)の途中に直列にインバーター(16)に接続されており、h 野生動物「(Y)を気絶させる場合には、作業者「(A)は、最初に金属製網体「(32)にクリップ(22)を取り付け、その後インバーター(16)と手元スイッチ(17)を「入」にし、一方の手で竿体「(11)の基端側部を把持し、野生動物「(Y)に竿体「(11)の金属針部(12)を突き刺し、インバーター(16)から通電コード(13)、金属針部「 12)、野生動物「 Y)、金属製網体「 32)の順に電流が流れる閉回路を形成する( ( (
5 ことにより野生動物(Y)を気絶するように構成したi 野生動物気絶用具。
2 文言侵害の成否(争点2)について
(1) 本件明細書の記載本件明細書には、以下の記載がある。ア 技術分野【0001】この発明は、野生の猪や鹿等の野生動物類や猛禽類を屠殺するための道具に関する。イ 背景技術【0005】また、野生動物を殺処分する方法としては、炭酸ガスによる処分、薬剤等の注射又は薬剤等を餌に混ぜて与えることによる処分が一般的に採用されている。【0006】例えば、特許文献1に記載の「動物用安楽死装置」は、動物を所定容積の処分室内に収容し、処分室内に麻酔液気化器により所定の速度で気化された麻酔ガスを供給して、動物に麻酔ガスを吸入させることによって麻酔をかけた後、処分室内を酸欠状態にして動物を安楽死させる動物用安楽死装置である。ウ 発明が解決しようとする課題【0008】ところが、毒殺や麻酔などで屠殺すると、結果的に野生動物や猛禽類が苦しむ時間を有するもので、短時間で安楽死させることができない。また、動物によっては、毒や麻酔の効果が最初はみられても、結果的に死に至らせることができず、かえって危害の度が増すおそれがあった。【0009】また、特許文献1に記載の「動物用安楽死装置」は、所定容積の処理室内に麻酔
5 ガスを供給する装置構成であるため、その装置を有する場所まで野生動物を移送する必要があるが、その移送途中において野生動物から危害を受けたり、野生動物が逃げたりするおそれがあった。【0010】さらに、近年では猟師が高齢化しており、一旦野生動物や猛禽類に襲われてしまうと、それを振り払う体力を有しないことにより、結果的に命を落とす危険性があった。【0011】したがって、そのような猛威を振るう野生動物等に対しては、短時間で息の根を止める必要があった。また、野生動物が生息している場所でも簡単に屠殺する必要があった。【0012】この発明は、上記課題を解決するためになされているもので、特に猛威を振る舞う野生動物を簡単でかつ確実に屠殺を行える野生動物屠殺用具を提供することを目的としている。エ 課題を解決するための手段【0013】請求項1の発明は、先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有し、基端にグリップ部を形成した、伸縮自在の所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成され、電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており、野生動物を屠殺する場合には、作業者は一方の手で竿体のグリップ部を把持し、他方の手で電源スイッチ部を把持し、
5 野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチ部のスイッチボタンを押すと、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物を屠殺するように構成したことを特徴とする野生動物屠殺用具を提供する。オ 発明の効果【0017】請求項1に記載の発明によれば、先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有し、基端にグリップ部を形成した、伸縮自在の所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成され、電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており、野生動物を屠殺する場合には、作業者は一方の手で竿体のグリップ部を把持し、他方の手で電源スイッチ部を把持し、野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチ部のスイッチボタンを押すと、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物を屠殺するように構成しているので、簡単な装置構成により大電流を流し、動物の心拍を急速に停止して屠殺することができ、従って、猟師等が猛禽類や野生動物等を捕獲場所において簡単にかつ安全に屠殺することができる効果を有する。【0018】また、野生動物や猛禽類等を短時間で屠殺することができるため、野生動物や猛
5 禽類等を苦しませる時間を少なくできる効果がある。【0020】しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターは携行可能に構成しているため、野生動物が生息している場所まで持ち運びその捕獲場で屠殺することができる。しかも、その携帯性を利用して猛威を振るう野生動物や猛禽類に対して捕獲現場において安全確実な屠殺処分が可能な対応姿勢をとることができる効果がある。【0021】バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成しているので、野生動物や猛禽類等の屠殺時に邪魔にならず、竿体を突き刺し作業をするのに集中できる効果がある。【0022】また、ケース内にバッテリ部やDC/ACインバーターを収納することで、このケースを肩掛け状態等にして猪が生息する山林等にまで持ち運びできる効果がある。しかも、暴れ回る野生動物等に対して応対姿勢を変えながら、金属針部の突き刺し作業に集中できる効果を有する。【0023】所定長さの竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成しているので、動物との距離を大きくしたり小さくしたりすることができる。例えば、猛威を振るう猛禽類に対しては距離を大きくとって電極を接触させるようにすることができ、安全性を確保できる場合は距離を短くして確実に電極を動物の体に接触させることができる効果を有する。【0024】電源昇圧部、DC/ACインバーター、電源スイッチ部等の各操作部分をグリップ部に配設して作業者の手元において操作可能に構成しているので、例えば、電源昇圧部、DC/ACインバーターが作動状態をグリップ部で点灯ランプを点灯して
5 いることを確認できたり、グリップ部に設けたスイッチを操作できる構成することにより、竿体を手元に置いて把持しながらも野生動物に対して大電流を流す操作が容易になる効果がある。カ 発明を実施するための形態【0028】まず、竿体11について説明する。竿体11は、先端側に先端先鋭状の金属針部12を有し、基端側にグリップ部19を備え、金属針部12とグリップ部19との間に杆状本体31を備える。【図1】【0032】杆状本体31は、その全体長さを伸縮自在とすることもできる。すなわち、図1に示すように、杆状本体31は、外竿体31aと、外竿体31aより径が小さい内竿体31bとを備え、内竿体31bは外竿体31aに対して伸縮可能な入れ子管構造とすることで伸縮自在に構成することができる。内竿体31bは、径を異ならせて複数設けることができる。なお、杆状本体31は、伸縮自在とせず、その全体を
5 一体に形成してもよい。【0033】このように構成することで、竿体11の全長を長く形成することができ、猛威を振るう猛禽類に対しては距離を離して突き刺すことができる。また、猛禽類の体の特定部位に確実に突き刺したい場合には竿体11を収縮させて距離を縮めた状態で安全確実に突き刺すことができるように構成している。【0034】グリップ部19は、先端の金属針部12が大電流源となるため、より絶縁性を保持できるように絶縁性素材で被覆するように構成している。【0051】檻23は、金属製網体32からなりその全体が導電性素材で形成されている。そして檻23は、接地電位と同電位になるようにグランド端子(図示せず)を土中に埋設している。なお、クリップ22は一部を直接に地中に突き刺してグランド端子に代わるように構成してアース機能を果たすようにすることができる。【0052】さらに、インバーター16には、電源スイッチ部17を並列に接続している。電源スイッチ部17には、スイッチボタン17aを配設しており、スイッチボタン17aを押すことでインバーター16から金属針部12に通電可能としている。【0053】図2は、本発明の野生動物屠殺用具の構成を示した回路図である。すなわち、図2に示すように、電源スイッチ部17のスイッチボタン17aを閉じることで、インバーター16→通電コード13→金属針部12→野生動物Y→檻23→土中(接地箇所)に電流が流れる閉回路が形成される。【図2】【0063】また、野生動物Yに突き刺す直前で、バッテリ部14から延びるコネクタ20の一方と、インバーター16から延びるコネクタ20の他方とを嵌合させる。このように直前で嵌合させるので、不使用時での大電流を流す事故が少なくなる。
(2) 構成要件A(「伸縮自在の所定長さの竿体」)の充足性ア 特許請求の範囲請求項1には「伸縮自在の所定長さの竿体」との記載があるところ(構成要件A)、その文言から、「竿体」が「伸縮自在」である構成が示されているものと当業者は理解できる。また、本件明細書をみると、本件発明が解決しようとする課題は、要するに、非力な者であっても、危険な野生動物が生息している場所において、簡単かつ確実に屠殺できるようにすることである(【0008】ないし【0012】)。このような課題を解決するため、竿体を伸縮自在に構成することで、動物との距離を調整できるようにし、例えば、猛禽類に対しては距離を長く取ったり、安全性を確保できる場合には距離を短く取って確実に電極を動物の体に接触させたりすることができるという効果が得られる(【0023】)。これらによれば、当業者にとって、「伸縮自在の所定長さの竿体」とは、竿体部分の長さそれ自体を変更できる構造の竿体を意味するものと理解されるのであり、
5 固定長の竿体は、含まれないものというべきである。イ この点、原告は、「伸縮自在」とは、把持位置を変化させることで竿体の機能部分の長さを変えることができるという意味であり、竿体自体が固定長であっても把持位置の変化にともない竿体の機能部分の長さ(把持位置から先方の竿体部分の長さ)が変化することも「伸縮自在」に含まれると主張する。しかし、可変長の竿体であっても固定長の竿体であっても、把持位置を変えれば機能部分の長さを変えられる。原告主張のように解すると、敢えて、特許請求の範囲の請求項1に「伸縮自在」との文言を付した意味がないこととなる。また、上記のとおり、竿体を伸縮自在にすることで、対象動物との距離に応じて使用することができる効果が得られるところ、固定長の竿体で、把持位置を変えるだけで同様の効果を実現することは極めて困難であると考えられる。よって、原告の主張は採用できない。ウ 以上のとおり、被告製品は構成要件Aを充足しないものと認められる。
(3) 構成要件Fの充足性ア 特許請求の範囲の請求項1の構成要件Fは「バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成され」と規定する。また、本件明細書の記載からすると、前記(2)アのとおり、本件発明は、危険な野生動物が生息している場所において、簡単かつ確実に野生動物を屠殺することを解決すべき課題としている。そして、バッテリーとインバーターをケースに収納し、背負い状態にすることは、携行性を向上し、屠殺処分をする際に柔軟な体位を取ることができるようにするために重要な効果を生じさせ、簡単かつ安全確実な野生動物の屠殺を実現することに寄与しており、単なる作業性の問題以上の効果を有するものと当業者は理解する(【0020】ないし【0022】)。イ 証拠(乙1ないし5、7)によれば、被告製品は、野生動物が捕獲された檻のそばに到着してから組み立てて用いるものであること、そのため、バッテリーやインバーターを背負う必要がないことが認められ、また、被告製品の付属品として
5 バッテリーとインバーターを収納するケースや背負い状態にするための用具が販売されているものではなく、取扱説明書にもバッテリーとインバーターを背負い状態にするような使用方法は記載されていない。そうすると、バッテリーとインバーターを背負い状態にすることを必須要素とせず、かつ、そのような示唆もない被告製品は、構成要件Fを充足しないものと認められる。被告製品でも、バッテリーとインバーターをケースに収納し、背負い状態にすることが物理的に不可能とまではいえないが、そのような使用方法が一般的であるとはいえないし、実際にかかる使用方法が行われていることを示す証拠もない。
(4) 構成要件Gの充足性ア 構成要件Gは「電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており」と規定している。上記の「並列」との文言からは、インバーターに接続された2本の通電コードが物理的に並列の構造を備えるものと理解することができる。また、本件明細書の記載によると、電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており、作業者は、一方の手で竿体を把持して野生動物に金属針部を突き刺し、他方の手で電源スイッチ部を把持してスイッチボタンを押し、電流を流して野生動物を屠殺することができる構成となっており、当該構成が、捕獲場所において、簡単にかつ安全に野生動物の屠殺を実現することができる効果に寄与しているものとされる(【0013】【0017】【0024】)。これらによれば、構成要件Gの文言は、電源スイッチ部をDC/ACインバーターに接続する通電コードが、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードと、物理的に並列の構造を備えることを示すものと当業者は理解すると認められる。イ 一方、被告製品は、手元スイッチ(17)を、金属針部「(12)とインバーター(16)を繋ぐ通電コード(13)によってインバーターに直列に接続しており、電源スイッチ
5 部に相当する手元スイッチとインバーターを接続する通電コードと、金属針部とインバーターを繋ぐ通電コードが物理的に並列の構造を有するとはいえない。また、被告製品の手元スイッチ(17)と竿体(11)との間の距離が短いことから、作業者が一方の手で竿体の金属針部(19)を野生動物に突き刺すと、手元スイッチもこれに伴って野生動物の側に移動し、他方の手で手元スイッチのスイッチボタンを操作することはかえって危険であることから、被告製品の構造が、左右の手に竿体とスイッチをそれぞれ把持して捕獲場所において簡単にかつ安全に野生動物の屠殺を実現することができる効果に寄与するともいえない(乙5)。そうすると、被告製品は、構成要件Gを充足しないものと認められる。
(5) 構成要件Hの充足性ア 構成要件Hは「野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチ部のスイッチボタンを押すと、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより」と規定する。かかる文言からすると、DC/ACインバーター、通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成するために、土中の接地電極は本件発明の不可欠な構成であると当業者は理解するものといえる。イ 一方、証拠(乙1ないし4)によれば、被告製品は、アース棒などのような部品又はその役割を果たす部品を土中に埋設して接地電極とする構成を備えていない。被告製品の金属製網体にグランド端子を加えることが不可能であるとはいえないが、被告製品は、手元スイッチを「入」にすると、インバーター(16)、通電コード(13)、金属針部(12)、野生動物、金属製網体(32)の順に電流が流れ、閉回路を形成する構造を有しており、土中に電流を流す必要がなく、「土中の接地電極」の構成が示唆されているとは認められない。よって、被告製品は、構成要件Hを充足しない。
5 (6) 小括以上の次第であり、被告製品は、少なくとも、構成要件A及び構成要件FないしHを充足しない。
3 均等侵害の成否(争点3)について特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、① 同部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件)、② 同部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって(第2要件)、③ 上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件)、④ 対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件)、かつ、⑤ 対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。(1) 第1要件についてア 特許発明における本質的部分とは、特許請求の範囲及び明細書の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきであり、特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきものである。前記2(2)ア認定のとおり、本件発明は、非力な者であっても、危険な野生動物が
5 生息している場所において、簡単かつ確実に屠殺できるようにすることを解決すべき課題とし「 【0008】ないし「 0012】)、このような課題を解決するため、( 【竿体を伸縮自在に構成することで、対象動物との距離を調整できるようにし、例えば、猛禽類に対しては距離を長く取ったり、安全性を確保できる場合には距離を短く取って確実に電極を動物の体に接触させたりすることができるという効果が得られるというものである。一方、証拠(甲2、乙18)によれば、本件特許の出願時点で、野生動物を殺処分する手段として、麻酔ガス等を用いることや電気スタナーを用いることなどが知られていたことが認められる。これらの手段は、動物を殺害することはできるが、即効性に欠けたり、即効性があっても動物に近づく必要があることから危険を伴ったりするものであった。そうすると、本件発明は、従来技術である電流を用いた屠殺手段を踏まえ、簡単かつ安全確実な屠殺手段を提供するものであり、本件発明の構成中の本質的部分は、このような屠殺手段を提供する竿体の伸縮構造(構成要件Aの「伸縮自在の所定長さの竿体」)、バッテリ部、電源昇圧部及びインバーター部の背負い構造(構成要件F)、双方の手でそれぞれ電源スイッチと竿体を把持できる通電コードの並列構造(構成要件G)に認められるものというべきである。イ 前記2で検討したとおり、被告製品は、少なくとも、構成要件Aの「伸縮自在の所定長さの竿体」の部分、構成要件F及びGを充足しないのであるから、本件発明の構成中、被告製品と異なる部分が本件発明の本質的部分ではないとの均等侵害の第1要件は認められない。(2) 第5要件についてア 証拠(乙8ないし17)によれば、本件特許の出願経緯について、以下の事実が認められる。(ア) 原告は、平成25年10月31日、以下の特許請求の範囲で、本件発明について、特許出願をした。
5 【請求項1】先端先鋭状の金属針部を先端に有した所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターは携行可能に構成したことを特徴とする携行自在な猛禽類屠殺用具。【請求項2】バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して肩掛け状態、腰吊下状態、或いは背負い状態に構成したことを特徴とする請求項1に記載の携行自在な猛禽類屠殺用具。【請求項3】所定長さの竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の携行自在な猛禽類屠殺用具。【請求項4】電源昇圧部、DC/ACインバーター、電源スイッチ部等の各操作部分をグリップ部に配設して作業者の手元において操作可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の携行自在な猛禽類屠殺用具。(イ) 特許庁審査官は、平成26年3月13日(起案日)、原告に対し、要旨、以下の理由により、原告の出願は拒絶すべきものであると通知した。a 請求項1の猛禽類が何を指すのかが不明である(明確性要件違反)。b 請求項4の「電源昇圧部・・・等」とあるのは、「各操作部分」を有するものの例示に過ぎず、何の「各操作部分」であるかが実質的に特定されていない(明確性要件違反)。
5 c 進歩性欠如(ウ) 上記拒絶理由通知に対し、原告は、特許請求の範囲を次のとおり補正し、進歩性に関する意見書を提出した。【請求項1】先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有した所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターは携行可能に構成し、野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、野生動物に金属針部を突き刺し、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物を屠殺するように構成したことを特徴とする野生動物屠殺用具。【請求項2】バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して肩掛け状態、腰吊下状態、或いは背負い状態に構成したことを特徴とする請求項1に記載の携行自在な野生動物屠殺用具。【請求項3】所定長さの竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の携行自在な野生動物屠殺用具。【請求項4】電源昇圧部、DC/ACインバーター、電源スイッチ部等の野生動物に電流を流すための操作部分をグリップ部に配設して作業者の手元において操作可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の携行自在な野生動物屠殺用具。
5 (エ) 特許庁審査官は、平成26年6月13日(起案日)、上記補正を検討してもなお、原告の出願は、進歩性欠如を理由に拒絶すべきであるとの査定をした。(オ) 原告は、平成26年9月17日、上記拒絶査定に対する不服審判を申し立てるとともに、特許請求の範囲を次のとおり補正した。【請求項1】先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有した所定長さの竿体と、竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成し、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成し、野生動物を屠殺する場合には、作業者は一方の手で竿体のグリップ部を把持し、他方の手で電源スイッチ部を把持し、野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチ部のスイッチボタンを押すと、電源スイッチ部に並列に接続したDC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物を屠殺するように構成したことを特徴とする野生動物屠殺用具。【請求項2】ないし【請求項4】削除(カ) 特許庁審査官は、平成26年11月20日(起案日)、原告の上記補正後の出願に対し、要旨、「電源スイッチ部に並列に接続したDC/ACインバーター」
5 とあるものの「並列」が、電気回路上の並列を意味するのか、何らかの物と並列になるのかが明らかではない、「竿体と、竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成し、・・・通電コードと」とあるが「竿体は伸縮自在に構成し、基端にグリップ部を形成し」という記載が前後の文章と整合性が取れておらず不明瞭であるとして拒絶すべきものと通知した。そのうえで、請求項を次のとおりにすることでこれらの拒絶理由は解消できるとの補正の示唆を行った。【請求項1】先端先鋭状の正電極部となる金属針部を先端に有し、基端にグリップ部を形成した、伸縮自在の所定長さの竿体と、金属針部に接続した通電コードと、通電コードに接続したバッテリ部と、バッテリ部からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部と、DC/ACインバーターと、通電コードの中途に介設した電源スイッチ部とよりなり、しかも、バッテリ部と電源昇圧部とDC/ACインバーターはケースに収納して背負い状態に構成され、電源スイッチ部は、金属針部とDC/ACインバーターを繋ぐ通電コードに対して並列に延びる通電コードによって、DC/ACインバーターに接続されており、野生動物を屠殺する場合には、作業者は一方の手で竿体のグリップ部を把持し、他方の手で電源スイッチ部を把持し、野生動物を収納する金属製網体を土中の接地電極と同電位にし、作業者は一方の手で野生動物に竿体の金属針部を突き刺し、他方の手で把持した電源スイッチ部のスイッチボタンを押すと、DC/ACインバーターから通電コード、金属針部、野生動物、金属製網体及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物を屠殺するように構成したことを特徴とする野生動物屠殺用具。
5 (キ) 原告は、平成26年12月11日、上記の補正の示唆のとおり、請求の範囲を補正し、平成27年1月5日(起案日)、特許査定を受けた。イ 以上の審査経緯に鑑みれば、原告は、当初、竿体の伸縮構造については固定長の竿体も含むものとし、バッテリ部、電源昇圧部及びインバーター部の背負い状態の構成については携行可能であるとするのみで背負い構造に限られないものとし、双方の手でそれぞれ電源スイッチと竿体を把持できる並列構造については双方の手でそれぞれ把持することが明示的に記載されていないものとし、土中の接地電極と同電位とする回路構造については土中を閉回路に含まない回路構造も含むものとして、特許請求の範囲を記載していたが、進歩性欠如及び明確性要件違反を指摘されたことから、拒絶査定を回避するため、現在の特許請求の範囲の請求項1の記載のとおりに限定したのであり、限定により除外された部分は、いずれも本件特許の特許請求の範囲から意識的に除外したものであることが認められる。そうすると、被告製品と本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載との相違点は、いずれも原告が意識的に除外した部分に該当するから、均等侵害に関するその余の原告の主張を前提としても、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときとの第5要件を満たさないというべきである。(3) したがって、被告製品は、本件発明と均等なものとはいえない。
4 以上のとおり、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属さないものと認められるから、その余の争点について検討するまでもなく、原告の請求は、いずれも理由がない。
5 結論よって、原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官
武 宮 英 子
裁判官
阿 波 野 右 起
裁判官
西 尾 太 一
(別紙1)
物件目録
1 商品名「ポータブル電気止め刺し機」と称される用具以上
(別紙2)
被告製品説明被告製品(別紙1「物件目録」記載の野生動物屠殺用具)は、以下のとおりの構成を備えている。5 a 先端先鋭上の正電極部となる金属針部(12)を先端に有し、基端側をグリップ部分(19)とした所定長さの竿体(11)と、b 金属針部(12)に接続した通電コード(13)と、c 通電コード(13)に接続したバッテリー(14)と、d バッテリー(14)からの直流電圧を昇圧するための電源昇圧部(15)としての機能を有するDC/ACインバーターであるインバーター(16)と、e 通電コード(13)の中途に介設した手元スイッチ(17)とよりなり、f しかも、バッテリー(14)と電源昇圧部(15)を含むインバーター(16)は、ケース(18)に収納して背負い状態に構成され、g 手元スイッチ(17)は、金属針部(12)とインバーター(16)を繋ぐ通電コード(13)によって、インバーター(16)に接続されており、h 野生動物「(Y)を屠殺する場合には、作業者「(A)は一方の手で竿体「(11)のグリップ部分「(19)を把持し、他方の手で手元スイッチ「(17)を把持し、野生動物「 Y)を収納する金属製網体「 32)を土中の接地電極と同電位にし、作業( (者「(A)は一方の手で野生動物「(Y)に竿体「(11)の金属針部「(12)を突き刺し、他方の手で把持した手元スイッチ(17)を「入」操作すると、インバーター(16)から通電コ―ド「 13)、金属針部「 12)、野生動物「 Y)、金属製網体( ( ((32)及び土中の順に電流が流れる閉回路を形成することにより野生動物「(Y)を屠殺するように構成したi ことを特徴とする野生動物屠殺用具。以上
(別紙3)
特許権目録特許番号 特許第5687750号発明の名称 野生動物屠殺用具出願日 平成25年10月31日出願番号 特願2013-226769登録日 平成27年1月30日以上
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