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令和6(ワ)70207民事訴訟 著作権

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和6年10月31日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ 株式会社ポニーキャニオン キングレコード株式会社
被告ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
法令 著作権
キーワード 侵害12回
損害賠償2回
許諾1回
差止1回
主文 1 被告は、原告株式会社ソニー・ミュージックレーベルズに対し、別紙発信者情
2 被告は、原告株式会社ポニーキャニオンに対し、別紙発信者情報目録記載 3 の
3 被告は、原告キングレコード株式会社に対し、別紙発信者情報目録記載 4 の各
4 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要

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判決文

令和 6 年 10 月 31 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和 6 年(ワ)第 70207 号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和 6 年 9 月 3 日
判 決
原告 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
原告 株式会社ポニーキャニオン
原告 キングレコード株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士 林 幸平
15 同 笠島祐輝
同 尋木浩司
同 前田哲男
同 福田祐実
20 被告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 浦中裕孝
同 深沢篤嗣
同 安西一途
25 主 文
1 被告は、原告株式会社ソニー・ミュージックレーベルズに対し、別紙発信者情
報目録記載 1 及び 2 の各情報を開示せよ。
2 被告は、原告株式会社ポニーキャニオンに対し、別紙発信者情報目録記載 3 の
各情報を開示せよ。
3 被告は、原告キングレコード株式会社に対し、別紙発信者情報目録記載 4 の各
5 情報を開示せよ。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
10 第2 事案の概要
本件は、いずれもレコード製作会社である原告らが、被告のインターネット接
続サービスを利用する氏名不詳の発信者らが、P2P 形式のファイル共有ネットワ
ークシステム「BitTorrent」
(以下「ビットトレント」という。)を介して、原告
らがレコード製作者の権利を有する各レコードについての送信可能化権を侵害
15 したことが明らかであるなどと主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者
の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)
5 条 1 項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各発信者情報(以下、併せて「本
件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣
20 旨により容易に認められる。なお、書証の番号は特に断らない限り枝番号を含む
(以下同じ。。
))
(1) 当事者
ア 原告らは、レコードを製作の上、これらを複製して CD 等として発売して
いる株式会社である。
25 イ 被告は、一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っ
ている株式会社である。
(2) 原告らの送信可能権
ア 原告株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ(以下「原告 SML」とい
う。)は、実演家 A が歌唱する楽曲を録音したレコードを製作の上、令和 4
年 3 月 16 日、「ア」と題する商業用音楽 CD(商品番号:AICL-4189)を
5 日本全国で発売した(以下、この CD に対応する楽曲のレコードを「本件レ
コード 1」という。。原告 SML は、本件レコード 1 に固定されている音を

最初に固定した者すなわちレコード製作者(著作権法 2 条 1 項 6 号)に当た
るから、本件レコード 1 について送信可能化権(同法 96 条の 2)を有する。
(甲 3)
10 イ 原告 SML は、実演家 B が歌唱する楽曲を録音したレコードを製作の上、
令和 5 年 5 月 24 日、
「イ」と題する商業用音楽 CD(商品番号:BVCL-
1312)を日本全国で発売した(以下、この CD に対応する楽曲のレコードを
「本件レコード 2」という。。原告 SML は、本件レコード 2 に固定されて

いる音を最初に固定した者すなわちレコード製作者に当たるから、本件レコ
15 ード 2 について送信可能化権を有する。(甲 7)
ウ 原告株式会社ポニーキャニオン(以下「原告ポニーキャニオン」という。)
は、実演家 C が歌唱する楽曲を録音したレコードを製作の上、令和 4 年 1 月
10 日、
「ウ」と題する配信商品を日本全国で発売した(以下、この配信商品
に対応する楽曲のレコードを「本件レコード 3」という。。原告ポニーキャ

20 ニオンは、本件レコード 3 に固定されている音を最初に固定した者すなわち
レコード製作者に当たるから、本件レコード 3 について送信可能化権を有す
る。(甲 11、18)
エ 原告キングレコード株式会社(以下、
「原告キングレコード」という。 は、

実演家Dが歌唱する楽曲を録音したレコードを製作の上、平成 30 年 10 月
25 24 日、「エ」と題する商業用音楽 CD(商品番号:KICM-1889)を日本全
国で発売した(以下、この CD に対応する楽曲のレコードを「本件レコード
4」という。。原告キングレコードは、本件レコード 4 に固定されている音

を最初に固定した者すなわちレコード製作者に当たるから、本件レコード 4
について送信可能化権を有する。(甲 15、19)
(3) 調査会社による調査
5 原告ら又はその関連会社は、調査会社(以下「本件調査会社」という。)に対
し、ビットトレントを利用した著作隣接権侵害行為に関する調査を委託した。
本件調査会社は、「P2P FINDER」(以下「本件システム」という。)を使用し
て調査を行ったところ、別紙発信者情報目録記載の各日時に、同目録記載の各
IP アドレス及びポート番号を割り当てられた氏名不詳者ら(以下、これらの者
10 を併せて「本件発信者」という。)が、ビットトレントネットワーク上におい
て、本件レコード 1~4(以下、これらを併せて「本件各レコード」という。)
の複製物である各音声ファイルを、不特定多数のビットトレント利用者がダウ
(甲 2、 6、 10、
ンロードし得る状態にしたとの調査結果を得た。 3、 7、 11、14、
15)
15 (4) 本件発信者情報の保有
被告は、本件発信者情報を保有している。
2 本件の主な争点は権利侵害の明白性であり、この点に関する当事者の主張は以
下のとおりである。
(原告らの主張)
20 本件発信者は、別紙発信者情報目録記載 1~4 の各日時頃、被告のインターネ
ット接続サービスを利用して、同目録記載の各 IP アドレス及びポート番号の割
当てを受けてインターネットに接続し、ビットトレントネットワークにおいて、
本件各レコードを複製した各音声ファイルを、不特定多数の他の利用者からの求
めに応じ自動的に送信し得る状態にした。
25 上記の各送信可能化行為について、著作隣接権の権利制限事由(著作権法 102
条。同条 1 項が準用する同法 30 条以下を含む。)は存在しないから、本件発信者
によって、本件各レコードに係る原告らの送信可能化権が侵害されたことが明ら
かである。
(被告の主張)
本件調査の方法や結果について説明する本件調査会社の代表者の陳述書の信
5 用性は不明である。また、本件調査会社が本件発信者から本件各レコードの音楽
ファイルをビットトレント上でダウンロードしたことにつき、十分な立証がない。
さらに、本件発信者がビットトレントの技術的な仕組みを知らずに利用してい
た可能性は十分にあり得るから、本件発信者の故意又は過失によって本件各レコ
ードに係る原告らの送信可能化権の侵害が生じたことが明らかとはいえない。
10 第3 当裁判所の判断
1 争点(権利侵害の明白性)について
(1) 前提事実、証拠(甲 2、3、6、7、10、11、14、15、17、20、21)及び弁論
の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア ビットトレントとは、インターネットを通じ、P2P 方式でファイルを共有
15 するネットワークである。ビットトレントネットワークを通じて特定のファ
イルをダウンロードしようとする利用者は、インデックスサイト(「Torrent
ファイル」
(以下「トレントファイル」という。)を蔵置、配布するトレント
ファイル検索サイト)において当該ファイルの情報が記載されたトレントフ
ァイルをダウンロードした後、当該トレントファイルをビットトレントに対
20 応したクライアントソフトで読み込むと、トラッカー(ピアからの登録を受
け付け、他のピアの情報を提供する Web アプリケーションサーバ)に接続
して当該ファイルを保有するピア(ビットトレントネットワークに参加して
いる端末)の情報を取得することができ、当該ピアから当該ファイルをダウ
ンロードすることができる。
25 イ 本件調査において、本件システムは、本件各レコードに関わるキーワード
をファイル名に含むトレントファイルを取得し、ビットトレントネットワー
クにおいて、本件各レコードの複製物と推測される音声ファイルが公開され
ていることを確認した。本件システムは、当該トレントファイルに記載され
た情報に基づき、トラッカーに接続してピアの一覧を取得した後、その一覧
の中から当該音声ファイル全体を保有しているピアを特定し、当該ピアから
5 当該音声ファイルの一部をダウンロードした。当該ダウンロードの時刻及び
当該ピアに割り当てられた IP アドレス及びポート番号は、別紙発信者情報
目録記載のとおりのものであった。
ウ その後、本件調査会社は、当該トレントファイルをビットトレントに対応
したクライアントソフトで読み込み、当該音声ファイル全体を取得して、原
10 告ら又はその関連会社に提供した。当該音声ファイルに含まれる音(楽曲)
は、本件各レコードに含まれるものと同一であった。
(2) 検討
前提事実及び上記各認定事実によれば、本件発信者は、別紙発信者情報目録
記載 1~4 の各日時頃、被告のインターネット接続サービスを利用して、同目
15 録記載の各 IP アドレス及びポート番号の割当てを受けてインターネットに接
続し、ビットトレントネットワークを介して、本件各レコードの複製物である
各音声ファイルを、不特定多数のビットトレント利用者からの求めに応じ自動
的に送信し得る状態にしたことが認められる。
また、証拠(甲 3、7、11、15)及び弁論の全趣旨によれば、原告らは本件発
20 信者の上記行為を許諾していないものと認められると共に、その他の著作隣接
権の制限事由の存在もうかがわれない。
したがって、本件発信者の上記行為により、本件各レコードに係る原告らの
送信可能化権がいずれも侵害されたことは明らかといえる。
(3) 被告の主張について
25 被告は、本件調査の方法や結果について説明する本件調査会社の代表者の陳
述書の信用性が不明である旨及び本件発信者の故意又は過失によって本件各
レコードに係る原告らの送信可能化権の侵害が生じたことが明白であるとは
いえない旨を主張する。
しかし、本件調査において使用された本件システムは、プロバイダ責任制限
法ガイドライン等検討協議会により、P2P 型ファイル交換ソフトによる情報流
5 通に関する検知システムとして信頼性が認められるものと認定されており(甲
17)、その調査方法に特段の問題があるとはうかがわれないこと、その調査結
果に関する本件調査会社の代表者の陳述内容が不正確であることをうかがわ
せる事情も見当たらないことから、本件調査結果の信用性に疑義はないといっ
てよい。
10 また、権利侵害の明白性の要件(法 5 条 1 項 1 号)は、「当該開示の請求に
係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたこ
とが明らかであるとき」とするものであり、故意又は過失は同要件の充足性を
左右するものではない。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
15 2 その他の要件について
証拠(甲 3、7、11、15)及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、それぞれ、本
件発信者に対し、本件各レコードに係る送信可能化権侵害を原因とする損害賠償
請求及び差止請求を行うことを予定していると認められる。したがって、原告ら
には、いずれも、本件発信者を特定して権利を行使するため、本件発信者情報の
20 開示を受けるべき正当な理由(法 5 条 1 項 2 号)があるといえる。これに反する
被告の主張は採用できない。
第4 結論
よって、原告らの請求はいずれも理由があるから認容することとして、主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第 47 部
裁判長裁判官
杉 浦 正 樹
裁判官
細 井 直 彰
裁判官
志 摩 祐 介
(別紙発信者情報目録省略)

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