令和5(ネ)10042民事訴訟 特許権
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和6年12月9日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
民事訴訟法143条1項1回
|
キーワード |
無効19回 進歩性7回 特許権4回 無効審判4回 損害賠償4回 審決3回 新規性1回 実施1回 侵害1回
|
主文 |
1 本件控訴を棄却する。25
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事件の概要 |
1 控訴人の請求
(1) 主位的請求10
被控訴人は、控訴人に対し、62億3700万円及びこれに対する令和
3年11月11日から支払済みまで年3分の割合による金銭を支払え。
(2) 予備的請求
被控訴人は、控訴人に対し、56億7000万円及びこれに対する令和
3年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。15
【請求の法的根拠】
(1)について
・ 主請求:不法行為に基づく損害賠償請求
・ 附帯請求:遅延損害金請求(起算日は訴状送達日の翌日、利率は民法所定)
(2)について20
・ 主請求:不当利得返還請求
・ 附帯請求:利息金請求(起算日は訴状送達日の翌日、利率は平成29年法
律第44号による改正前の民法所定) |
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判決文
令和6年12月9日判決言渡
令和5年(ネ)第10042号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第28206号)
口頭弁論終結日 令和6年10月2日
5 判 決
控訴人(第1審原告) 本 田 技 研 工 業 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 上 山 浩
10 同 田 島 明 音
同 後 藤 充
同訴訟代理人弁理士 鷺 健 志
被控訴人(第1審被告) マ ツ ダ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 中 村 稔
同 田 中 伸 一 郎
同 相 良 由 里 子
同 岸 慶 憲
20 同訴訟代理人弁理士 大 塚 文 昭
同 弟 子 丸 健
同 山 本 泰 史
同補佐人弁理 士 石 崎 亮
主 文
25 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(略語は、原判決の例による。ただし、被控訴人各製品の特定に関しては、後述の
とおりの訂正がある。)
第1 事案の要旨
5 発明の名称を「原動機付車両」とする本件特許(特許第3196076号、
期間満了消滅)の特許権者であった控訴人が、被控訴人に対し、本件特許権の
存続期間中の侵害を理由に損害賠償等を請求した。
第2 当事者の求めた裁判
1 控訴人の請求
10 (1) 主位的請求
被控訴人は、控訴人に対し、62億3700万円及びこれに対する令和
3年11月11日から支払済みまで年3分の割合による金銭を支払え。
(2) 予備的請求
被控訴人は、控訴人に対し、56億7000万円及びこれに対する令和
15 3年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。
【請求の法的根拠】
(1)について
・ 主請求:不法行為に基づく損害賠償請求
・ 附帯請求:遅延損害金請求(起算日は訴状送達日の翌日、利率は民法所定)
20 (2)について
・ 主請求:不当利得返還請求
・ 附帯請求:利息金請求(起算日は訴状送達日の翌日、利率は平成29年法
律第44号による改正前の民法所定)
2 原審の判断及び控訴の提起
25 原審は控訴人の請求を全部棄却する判決をしたところ、これを不服とする
控訴人が下記のとおり控訴を提起した。
なお、控訴人は、当審において、被控訴人各製品の特定に関し、原判決別紙
被告製品目録を本判決別紙被控訴人製品目録のとおりに訂正する申立てをした。
【控訴の趣旨】
(1) 原判決を取り消す。
5 (2) 上記1(1)、(2)と同旨
第3 前提事実
前提事実は、原判決の「事実及び理由」第2の1(2頁~)に記載のとおり
であるから、これを引用する。本件特許権、本件発明の構成要件及び先行文献
(当審判断に関するもの)を以下に再掲するとともに、本件特許の無効審判事
10 件の動きを付け加える。
1 本件特許権
発明の名称 原動機付車両
登録番号 第3196076号
出願日 平成10年12月25日
15 登録日 平成13年6月8日
存続期間満了日 平成30年12月25日
2 本件発明の構成要件
本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである。
A アクセルペダルの踏込み開放時にも変速機において走行レンジが選択され
20 ている場合は、原動機から駆動輪へ駆動力を伝達する原動機付車両であって、
B 前記原動機付車両停止時、前記原動機を停止可能な原動機停止装置と、
C ブレーキペダルの踏込み開放後も引続きホイールシリンダにブレーキ液圧
を作用可能なブレーキ液圧保持装置と、を備える原動機付車両において、
D 前記ブレーキ液圧保持装置の故障を検出する故障検出装置を備え、
25 E 前記故障検出装置によって前記ブレーキ液圧保持装置の故障を検出した時
に前記原動機停止装置の作動を禁止する
F ことを特徴とする原動機付車両
3 先行文献
(1) 乙9
発明の名称を「エンジン自動停止始動装置」とする実開昭59-110
5 346号のマイクロフィルム(昭和59年7月25日公開)
(2) 乙10
発明の名称を「駐車ブレーキ安全装置」とする特開平8-198072
号(平成8年8月6日公開)
4 無効審判事件の動き
10 本件発明(請求項3)に係る本件特許につき、令和4年6月15日(本件訴
訟の第1審係属中)、被控訴人が特許庁に無効審判請求をした(無効2022
-800053号事件)ところ、令和6年1月31日(本件訴訟の当審係属
中)、特許庁は、本件発明に係る本件特許を無効とする旨の審決をした。その
理由は、本件訴訟の無効理由1-2(乙9〔審判甲1〕を主引用例、乙10
15 〔審判甲5〕を副引例とする進歩性欠如)と同じである。
同審決に対しては、控訴人が審決取消訴訟を提起しており、令和6年(行ケ)
第10018号事件として当庁に係属中である。なお、控訴人は、上記審判に
おいて、特許請求の範囲の訂正請求は行っていない。
第4 争点及び争点に関する当事者の主張
20 1 本件の争点は以下のとおりである。
(1) 被控訴人各製品の特定(当審で追加された争点)
(2) 被控訴人各製品の構成要件充足性(原審の争点1)
ア 構成要件Aの充足性(争点1-1)
イ 構成要件Bの充足性(争点1-2)
25 ウ 構成要件Cの充足性(争点1-3)
(ア) 「ブレーキペダルの踏込み開放後も引続き・・・ブレーキ液圧を作
用可能なブレーキ液圧保持装置」について
(イ) 「ホイールシリンダ」について
エ 構成要件Eの充足性(争点1-4)
(3) 本件特許の無効理由の有無(原審の争点2)
5 ア 乙9発明に基づく新規性欠如(無効理由1-1、争点2-1-1)、又
は乙9発明を主引例、乙10発明を副引例とする進歩性欠如(無効理由
1-2、争点2-1-2)
イ 乙9発明を主引例、乙13発明を副引例とする進歩性欠如(無効理由2、
争点2-2)
10 ウ 乙13発明及び周知技術に基づく進歩性欠如(無効理由3、争点2-3)
エ 明確性要件違反(無効理由4、争点2-4)
オ サポート要件違反(無効理由5、争点2-5)
(4) 訂正の対抗主張の当否(原審の争点3)
(5) 損害額等(原審の争点4)
15 (6) 消滅時効の成否(原審の争点5)
2 争点に関する当事者の主張
(1) 被控訴人各製品の特定について
【控訴人の主張】
ア 被控訴人各製品の詳細は別紙「被控訴人製品目録」記載のとおりであり、
20 これには被控訴人が海外に輸出している乗用車も含まれる。控訴人は、
原審における審理の当初から、海外向け輸出車も含めて被控訴人各製品
と特定していたが、念のため、被控訴人各製品を上記のとおり訂正する。
イ 被控訴人は、控訴人が海外向け輸出車も含めて主張していることについ
て、請求原因の追加であり、著しく訴訟手続を遅延させることになると
25 主張するが、控訴人は、原審において、被控訴人各製品を国内向け乗用
車に限定するなどとは何ら言及していない。確かに、控訴人は、原審に
おいて、 『KE系』の『KE』とは、届出型式の『DBA-』に次ぐ2
「
文字を指している」と説明していたが、被控訴人各製品の特定について
「DBA」から始まるものに限定するなどとは主張していない。
【被控訴人の主張】
5 控訴人は、原審において、損害賠償請求の対象としていた被控訴人各製
品について、日本市場向けの車両を主張していたところ、控訴審になって突
如、海外向け輸出車も同対象製品に含まれると主張した。しかし、控訴人は、
原審において、原判決別紙被告製品目録のとおり、日本市場における販売車
種名に加え、日本市場で販売するために国土交通省の定める「届出型式」を
10 記載して特定していたのであり、上記請求の対象たる被控訴人各製品には、
およそ海外市場向けの車両が被控訴人各製品に含まれないことが明らかであ
る。
控訴人の上記主張は、請求原因の追加であり、新たな審理を要すること
になり、著しく訴訟手続を遅延させることになるから、民事訴訟法143条
15 1項ただし書に該当する。被控訴人は、同条4項に基づいてこれを認めない。
(2) その他の争点に関する当事者双方の主張は、当審における当事者の補充
的主張を下記(3)のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」第3(6
頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(3) 当審における補充的主張(乙9発明を主引例、乙10発明を副引例とす
20 る進歩性欠如〔無効理由1-2、争点2-1-2〕関係)
【控訴人の主張】
ア 原判決は、「安全性の観点から、エンジンがエンジン自動停止始動装置
の作動により自動停止した場合には、制動保持装置の作動によりブレー
キ液圧が作用し、もってブレーキがかかった状態を保持するという、エ
25 ンジン自動停止始動装置と制動保持装置の各作動の一体不可分性を必須
の特徴とする技術的思想が開示されている」としたが、そのような記載
は乙9には存在しない。乙9に記載されているのは、全てのエンジン自
動停止条件が満足された場合には、まず、制動保持装置により制動装置
の作動状態を保持させ、次にエンジンを停止させるというものであり、
上記とは作動機序も異なっている。「安全性」を考慮することは自動車技
5 術において一般的に当然の観点であり、原判決は、発明の課題ないし目
的を極めて上位概念化した判断をしており、誤っている。
イ また、乙9発明は、ステップS21~S25の全てのエンジン自動停止
条件が満足されたと判断された後に、ステップS26で、制動装置の作
動状態を保持させるための制動保持信号が制動保持装置に出力される。
10 そのため、ステップS26で制動保持装置26に対し制動保持信号を出
力する前の工程であるステップS25の「エンジンを自動停止させるた
めの他の停止条件」として、制動保持装置26が故障しているか否かを
検出する信号が用いられていないことは明らかである。乙9発明には、
制動保持装置26が故障しているか否かを検出する装置を備えるという
15 技術思想がそもそもない。
したがって、乙9発明に対し、坂道発進補助装置50(制動保持装置)
の異常を検出する乙10発明を適用する動機付けは認められない。
ウ 加えて、乙10発明は、安全性の観点から、駐車ブレーキ安全装置の作
動解除を行う場合は、運転手にこの解除動作を十分に認識させるように
20 することを目的とするものであり、坂道発進補助装置50に異常が検出
された場合には、警報ランプ20及び警報ブザー21を作動させて、運
転手に注意を促す構成を採用している。
そのため、乙9発明に接した当業者は、安全性の観点から乙10発明
を適用して改良を試みようとする場合、その手段は①エンジン自動停止
25 始動装置の作動を禁止することに限られるわけではなく、②エンジン自
動停止始動装置は作動させた上で、警報ランプ20及び警報ブザー21
を作動させて、運転手に注意を促すという構成を想起するといえる。そ
して、乙10発明にはまさにその構成が明示的に開示されているのであ
るから、乙9発明に乙10発明を適用して想到する構成は、相違点1の
構成(構成要件E)ではなく、警報ランプや警報ブザーの作動により運
5 転手に注意を促すことにより安全性を確保するという構成である。
したがって、この点からも、相違点1について容易想到性を肯定した
原判決は誤っている。
エ さらに、乙9発明は、エンジン自動停止装置が作動し、エンジン自動停
止できる場面をできるだけ多くすることにより、「燃費向上、排気エミッ
10 ションの向上」を実現することを目的としている。しかるに、乙9発明
に乙10発明を適用して相違点1に係る構成を採用する場合、坂道発進
補助装置50の異常検出時にエンジン自動停止装置の作動を禁止する構
成を採用すると、エンジン自動停止装置が作動する場面が減少するから、
乙9の目的に反することになってしまう。
15 したがって、乙9発明への乙10発明の適用により相違点1に係る構成
を採用することには阻害事由がある。
【被控訴人の主張】
ア 原判決が認定するように、乙9には、「安全性の観点から、エンジンが
エンジン自動停止始動装置の作動により自動停止した場合には、制動保
20 持装置の作動によりブレーキ液圧が作用し、もってブレーキがかかった
状態を保持するという、エンジン自動停止始動装置と制動保持装置の各
作動の一体不可分性を必須の特徴とする技術的思想が開示されて」おり、
この一体不可分性により、制動保持装置の作動によるブレーキ液圧が作
用しておらず、もってブレーキがかかった状態を保持することができな
25 いなら、エンジン自動停止始動装置が作動しないことによりエンジンが
自動停止しないのである。原判決の乙9発明の課題等の認定に誤りはな
い。
イ 乙9発明には、同じ安全性の観点から、エンジン自動停止始動装置と制
動保持装置の各作動の一体不可分性を必須の特徴とする技術的思想が開
示されているところ、当業者、特に安全が常に大きな課題である自動車
5 の製造に関わる当業者にとって、安全のための乙10発明の異常検知シ
ステムを乙9発明の技術的思想に適用しようとすることには動機があり、
むしろ当然のことである。
そして、乙9にステップS25として示されたところによれば、乙9発
明は、エンジンが停止しても問題が生じないことを信号等により判断し、
10 この「他の停止条件」も肯定されて始めて、エンジン自動停止がなされ
る構成を有しているのである。したがって、乙10発明の「坂道発進補
助装置50」に相当する制動保持装置の作動により、ブレーキがかかっ
た状態を保持することができないなら、エンジン自動停止始動装置の作
動をしないことによりエンジンを自動停止しないとするのは、乙9及び
15 乙10の開示内容から当然のことである。
さらに、乙9発明の自働変速機付き車両に乙10に記載された「坂道発
進補助装置50」の異常検出を適用するとき、制動保持装置26の異常
発生の検出時、制動保持装置26を作動させず(S25、S26)、エン
ジンを停止せない(S27)ことは、当然の選択であり、当業者が適宜
20 なし得る設計事項にすぎない。乙9発明への乙10発明の適用により相
違点1に係る構成を採用することには阻害事由など存在しない。
以上により、乙9発明に乙10発明を組み合わせて、本件発明との相違
点1に至ることは、当業者が容易に想到できるものである。
第5 当裁判所の判断
25 当裁判所は、原判決と同様、無効理由1-2(乙9発明を主引例、乙10発
明を副引例とする進歩性欠如)につき特許無効の抗弁が成立し、かつ、訂正の
再抗弁は失当であるから、控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理
由は、以下のとおりである。
1 本件発明の内容
本件発明の内容は、原判決の「事実及び理由」第4の1(1)(56頁~)に
5 記載のとおりであるが、主な点を以下に再掲する。
(1) 本件明細書等の記載
ア 発明の属する技術分野
本発明は、自動変速機を備えるとともに、原動機がアイドリング状態
でかつ所定の低車速以下においてブレーキペダルの踏込み時にはブレー
10 キペダルの踏込み開放時に比べて、クリープの駆動力を低減する駆動力
低減装置、または/および車両停止時に原動機を自動で停止可能な原動
機停止装置を備え、さらにブレーキペダルの踏込み開放時にも引き続き
ホイールシリンダのブレーキ液圧を作用可能なブレーキ液圧保持装置を
備える原動機付車両に関するものである(【0001】)。
15 イ 発明が解決しようとする課題
例えば、特開平9-202159号公報に開示されているブレーキ力
制御装置が故障した場合、ブレーキペダルの踏込みを開放した時に、駆
動力が大きな状態に切り換わるまでブレーキ力を保持することができな
い。その結果、坂道発進の際、ブレーキペダルの踏込みを開放した時に、
20 車両が後退する(【0004】)。
また、燃費の悪化をさらに防止するために、ブレーキペダルの踏込み
時に駆動力を低減させるとともに、車両停止時に原動機を自動で停止さ
せる車両では、ブレーキペダルの踏込み開放により原動機を自動で始動
するとともに、駆動力を大きな状態にする。さらに、駆動力の低減は行
25 わないが、車両停止時に原動機を自動で停止させる車両では、ブレーキ
ペダルの踏込み開放により原動機を自動で始動する。この2つのいずれ
かの構成を有する原動機付車両にブレーキ液圧保持装置を備えている場
合も、ブレーキ液圧保持装置の故障によって、ブレーキペダルの踏込み
を開放した時に駆動力が大きな状態に切り換わるまでブレーキ力を保持
することができない。その結果、坂道発進の際、ブレーキペダルの踏込
5 みを開放した時に、車両が後退する(【0005】)。
ウ 本発明の課題は、ブレーキ液圧保持装置が故障した場合に、駆動力を大
きな状態に維持または駆動力を大きな状態に切り換え、坂道発進時にお
ける車両の後退を防止できる原動機付車両を提供することである(【0
006】)。
10 (2) 本件発明の内容
上記(1)の本件明細書等の記載に示されているとおり、本件発明は、車両
停止時に原動機を自動で停止可能な原動機停止装置(アイドリングストップ
機能)及びブレーキペダルの踏込み開放時にも引き続きホイールシリンダの
ブレーキ液圧を作用可能なブレーキ液圧保持装置を備える原動機付車両にお
15 いて、ブレーキ液圧保持装置が故障した場合に、坂道発進時における車両の
後退を防止できる原動機付車両を提供することを課題とするものである。そ
して、本件発明は、原動機停止装置を備えた原動機付車両において、坂道発
進時における原動機停止時にエンジン再始動までの間に車両が後退してしま
うことを防止するためのブレーキ液圧保持装置が故障した場合、坂道発進時
20 におけるアイドリングストップ機能の作動を禁止してアイドリング状態を維
持する構成を採用するものである。このような構成によって、本件発明は、
ブレーキ液圧保持装置が故障した場合であっても、原動機から駆動輪へ伝達
される駆動力を維持して坂道発進可能な状態とし、もって車両の後退を防止
して、上記課題を解決するものである。
25 2 乙9及び乙10の記載について
(1) 乙9の記載について
乙9には、図面とともに以下の記載がある。
ア 本考案は、自動変速機付き車両に適用されるエンジン自動停止始動装置
に関するものである(乙9の2頁)。
イ 自動変速機付き車両に適用される従前のエンジン自動停止始動装置、例
5 えば、特開昭50-148731号公報に記載されている装置では、シ
フトレバーがどのレンジにあってもアクセルペダルを踏込めば再始動す
るようになっている。そして、再始動時の自動変速機内の変速ギア位置
は一速に選択されている。従って、シフトレバーがDレンジにある場合、
再始動のためにアクセルペダルを僅かに踏込めば問題は生じないが、踏
10 込み量が大きいと再始動と同時に急発進する惧れがある。
そこで、駐車ブレーキやフットブレーキが作動していることをエンジ
ン自動停止や再始動の条件として含ませることも可能であるが、(1)車両
が停止した後に駐車ブレーキを作動させないとエンジンが自動停止しな
い、(2)車両が停止した後もフットブレーキを踏み続けていないとエンジ
15 ンが自動停止しない、(3)再始動の際、フットブレーキが踏込まれていな
かったり、駐車ブレーキが作動していないとエンジンが再始動しない、
等の問題があり、エンジン自動停止始動装置を有効に活用させることが
できず、かかる装置に基づいた燃費向上、排気エミッションの向上が実
質的に得られない惧れがある(乙9の2~4頁)。
20 ウ 本考案の目的は、このような問題点に鑑み、自動変速機付き車両に適用
しても有効に活用できるようにしたエンジン自動停止始動装置を提供す
ることにある(乙9の4頁)。
エ 本考案は、車両を制動する制動装置と自動変速機とを有する車両に用い
られるエンジン自動始動停止装置において、車両の速度に応じた車速信
25 号を出力する車速センサおよびスロットルバルブがほぼ全閉のときにア
イドル信号を出力するアイドルスイッチを含み、エンジンおよび車両各
部の状態を検出するセンサ群と、センサ群からの検出信号に基づいてエ
ンジン停止条件が満足したと判断したときにエンジン停止信号を出力す
る停止信号発生手段と、アイドル信号が生起していないで、かつ、セン
サ群からの検出信号に基づいてエンジン再始動条件が満足したと判断し
5 たときにエンジン再始動信号を出力する再始動信号発生手段と、エンジ
ン停止信号に応動してエンジンを停止させるエンジン停止手段と、エン
ジン再始動信号に応動してエンジンを再始動させるエンジン再始動手段
と、車速信号に基づいて車速が零であると判断されたときに車速零信号
を出力する車速判定手段と、車速零信号が出力されているときに制動保
10 持信号を出力し、エンジン始動後に制動解除信号を出力する制動保持解
除信号発生手段と、制動保持信号に応動して制動装置を作動状態に保持
し、制動解除信号に応動して作動状態にある制動装置の作動を解除する
制動保持手段とを具備したことを特徴とする(乙9の4~5頁)。
オ 第1図は本考案の一実施例の構成を示し、エンジン1には、インジェク
15 タ3、スタータ5、イグナイタ7が設けられ、エンジン1の出力軸には
自動変速機9が接続されている。
エンジン1の各気筒には、インテークマニホルド11及びエキゾース
トマニホルド13が接続され、インテークマニホルド11には、アクセ
ルペダルと連動のスロットルバルブ15が設けられている。また、17
20 はパーキングブレーキ、19は運転席の表示パネルである。
スロットルバルブ15には、その開度を検出するスロットル位置セン
サ15aと、全閉状態を検出するアイドルスイッチ15bとが設けられ
ている。自動変速機9には、各レンジに応じたニュートラルレンジ信号
やドライブレンジ信号等を出力するレンジスイッチ群21が設けられ、
25 また、自動変速機出力軸の回転数に応じた車速信号を出力する車速セン
サ23が設けられている。
ブレーキペダル(不図示)が踏込まれているときにブレーキペダル信
号を出力するブレーキスイッチ24がブレーキペダルの近傍に設けられ、
また、制動保持装置26がブレーキ装置(不図示)と協働するように設
けられている。この制動保持装置26は、例えば、ブレーキペダルに
5 よって制御されるマスタシリンダ(不図示)の入力ロッド(不図示)を、
保持装置26の電磁石を励磁することにより所定の位置で保持するよう
に構成することができ、ブレーキペダルを踏込んでいるときに電磁石を
励磁すれば、ブレーキペダルが解放されても制動装置が保持されるよう
にすることができる。更に、他の公知技術を用いてもよいことは勿論で
10 あり、例えば、特公昭44-22247号、特開昭48-45332号、
特開昭51-43526号公報に記載の技術を用いることができる(乙
9の5~7頁)。
カ 第2図は第1図に示した制御回路37の詳細構成例を示す(乙9の8
頁)。
15 キ 第4図は、そのエンジン自動停止始動処理の一手順を示す。第4図に示
すプログラムが起動されると、ステップS21では、車速信号に基づい
て車速が零か、厳密には車速が所定値以下か否かが判断され、ステップ
S22では、アイドルスイッチ15bからのアイドル信号に基づいてス
ロットルバルブ15が全閉しているか否かを判断し、ステップS23で
20 は、車速が零になった時点からある認定時間、例えば1.5秒が経過し
たか否かが判断され、ステップS24では、ブレーキペダル信号の有無
によりブレーキペダルが踏込まれているか否かが判断される。ここで、
ステップS23の判断を行っているのは、車両が停止した後も継続して
ブレーキペダルが踏込まれている場合には、運転者が車両を停止させる
25 意志があると判断するためである。
更にステップS25では、エンジンを自動停止させるための他の停止
条件、例えば、ターンシグナルが出されていないこと、ヘッドランプが
点灯していないこと、エアコンディショナが作動していないこと、水温
が所定以上であること、等が、ターン信号、ライト信号、エアコン信号、
水温信号等により判断される。
5 これらのステップS21~S25がすべて肯定判断されれば、エンジ
ン自動停止条件が満足されたこととなるが、制動装置の作動状態を継続
して保持するため、ステップS26では、I/O37eから制動保持装
置26に制動保持信号を出力する。次いで、ステップS27に進む。
ステップS27では、I/O37eから、エンジン停止信号を構成す
10 る、燃料カット信号、点火カット信号を燃料リレー31、点火リレー3
5にそれぞれ出力し、これにより、イグナイタ7を減勢して点火プラグ
に高電圧が供給されないようにするとともに、インジェクタ3を減勢し
て燃料を噴射しないようにし、以て、エンジン1を停止させる。また、
ステップS27では、I/O37eから停止ランプ27へ点灯信号を出
15 力して停止ランプ27を点灯させる(乙9の10~12頁)。
ク このように、第4図に示した手順は、エンジン自動停止条件がすべて満
足され、ブレーキペダルが踏込まれているときに、自動的に制動装置を
作動状態に保持し、エンジンが再始動して、所定の回転数以上になった
ときに、制動装置の作動状態を解除するものである(乙9の13~14
20 頁)。
ケ 以上説明したように、本考案によれば、エンジン自動停止時に制動装置
の作動状態を保持するようにするとともに、エンジン再始動後に、作動
状態にある制動装置による制動を解除するようにしたので、駐車ブレー
キの作動を、エンジン自動停止や再始動の条件とする必要がなく、エン
25 ジン自動停止始動装置を有効に活用することができる(乙9の14頁)。
コ 第1図
サ 第2図
シ 第4図
(2) 乙10の記載について
乙10には以下の記載事項がある。
ア 【発明が解決しようとする課題】
従来のブレーキ補助装置は、作動時にブレーキ液圧を一定に保つよう
5 に構成されたものであり、例えば坂道等で駐車中の車両が動き出した場
合に、積極的にブレーキ液圧を増加させて車両の動きを止めるものでは
なかった(【0005】 。
)
そこで、車両のブレーキオイル供給系にブレーキ液圧を調整できるよ
うなアクチュエータを設け、車速センサ等の各種センサ類からの検出情
10 報に基づいて、駐車中の車両が動き出したと判断すると、コントローラ
がブレーキアクチュエータの作動を制御して、積極的に車両を停止させ
るように構成した駐車ブレーキ安全装置を設けることが考えられる(【0
006】 。
)
このような駐車ブレーキ安全装置においては、装置の作動を解除する
15 ための何らかの手段が必要になるが、駐車ブレーキ安全装置の作動を簡
単に解除できるように構成してしまうと、運転者が無意識にこれを解除
した場合に、運転者は駐車時にブレーキ装置が作動していないにもかか
わらずこれが作動しているものと認識してしまう事が考えられる(【00
07】 。
)
20 本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、駐車ブレーキ安
全装置の作動解除を行なう場合は、運転者にこの解除動作を十分に認識
させるようにした、駐車ブレーキ安全装置を提供することを目的とする
(【0008】 。
)
イ まず、上述の坂道発進補助装置50について説明すると、この坂道発進
25 補助装置50は、図2に示すブレーキペダル(サービスブレーキ操作部
材)4を踏んで車両1を停止させた場合に作動するものであって、運転
者がブレーキペダル4を踏んで車両1が停止したことが所定時間以上検
出されると、ブレーキ液圧供給系(ブレーキ作動用非圧縮流体供給系)
6に設けられた切り換え弁(マグネットバルブ)7を切り換えて、ブ
レーキ液圧供給系6内のブレーキオイルを封じ込めて、運転者がブレー
5 キペダル4から足を離しても制動力を保持するようになっている(【00
17】 。
)
ウ 次に、坂道発進補助装置50の作動警報について説明すると、作動解除
コントローラ53には、パーキングスイッチ16、ドアスイッチ17及
びキースイッチ18が接続されており、坂道発進補助装置50の作動中
10 に運転者が以下の操作のいずれかを行なったことが検出されると、コン
トローラ9は警報ランプ20及び警報ブザー21を作動させて、運転者
に警報を行なうようになっている(【0046】 。
)
6.パーキングスイッチ16及びドアスイッチ17により、パーキン
グブレーキレバーを引かずにドアを開けたことが検出されたとき。
15 7.パーキングスイッチ16及びキースイッチ18により、パーキン
グブレーキレバーが引かれずにエンジンの停止が検出されたとき。
上述の6.の場合は、作動解除コントローラ53では、パーキングブ
レーキを作動させずに、運転者が車両1から離れると判断して警報信号
を設定し、ドライバ56から警報ランプ20及び警報ブザー21にこの
20 警報信号出力するようになっているのである。そして、これにより警報
ランプ20及び警報ブザー21を作動させて、運転者に注意を促すよう
になっているのである(【0047】 。
)
また、上述の6.、7.の場合以外にも、坂道発進補助装置50に異常
が発生したことが検出されると、上記と同様に警報ランプ20及び警報
25 ブザー21を作動させて、運転者に注意を促すようになっている。この
ように、車両1に坂道発進補助装置50をそなえることにより、発進と
停車とを頻繁に繰り返すような場合に、運転者の疲労を大きく低減する
ことができ、また、安全且つ確実に坂道発進を行なうことができるよう
になる(【0048】 。
)
3 無効理由1-2(乙9発明を主引例、乙10発明を副引例とする進歩性欠
5 如)について
(1) 本件発明と乙9発明との一致点及び相違点の認定
上記2(1)の記載によれば、乙9には、下記「乙9発明」が記載されてお
り、これと本件発明との一致点及び相違点は下記のとおりであると認められ
る(原判決の「事実及び理由」第4の7(2)のとおり)。
10 【乙9発明】
「アクセルペダルの踏込み開放時にも自動変速機においてDレンジが選択さ
れている場合は、エンジンから駆動輪へ駆動力を伝達する車両であって、
前記車両停止時、エンジンを停止可能なエンジン自動停止始動装置と、
ブレーキペダルの踏込み開放後も引続きブレーキ液圧を作用可能な制動保持
15 装置と、
を備える車両」
【一致点】
「アクセルペダルの踏込み開放時にも変速機において走行レンジが選択され
ている場合は、原動機から駆動輪へ駆動力を伝達する原動機付車両であって、
20 原動機付車両停止時、原動機を停止可能な原動機停止装置と、ブレーキペダ
ルの踏込み開放後も引続きブレーキ液圧を作用可能なブレーキ液圧保持装置
と、を備える原動機付車両」
【相違点】
・相違点1:本件発明は「前記ブレーキ液圧保持装置の故障を検出する故障
25 検出装置を備え、前記故障検出装置によって前記ブレーキ液圧保持装置
の故障を検出した時に前記原動機停止装置の作動を禁止する」ものであ
るのに対して、乙9発明はそのような構成を備えていない点
・相違点2:本件発明は「ホイールシリンダ」にブレーキ液圧を作用可能で
あるのに対して、乙9発明は「ホイールシリンダ」を有するものである
のか否か不明な点
5 (2) 相違点2に係る容易想到性について
相違点2に係る構成が液圧式ブレーキ装置において周知慣用のもので
あって、乙9発明に接した当業者が容易に想到し得たことは、原判決の「事
実及び理由」第4の7(4)のとおりである(控訴人もこの点につき控訴理由
等で特に触れていない。)。当審における無効論に関する実質的な争いは、
10 相違点1に係る容易想到性に絞られているので、次項でこれを検討する。
(3) 相違点1に係る容易想到性について
ア 乙9発明と乙10発明は、ともに制動保持装置(乙10においては坂道
発進補助装置)を備え、それらはブレーキがかかった状態を保持する機
能を有するものであることに照らすと、乙9発明及び乙10発明は、そ
15 のような機能を用いる車両である点で共通する技術分野に属するといえ
る。また、乙10発明と同様に、乙9発明においても、制動保持装置の
故障発生が想定され、それに対処する課題が存在することは当業者には
明らかである。
そうすると、乙9発明に触れた当業者は、上記の制動保持装置の故障
20 発生という課題を認識し、その課題を解決する点において、乙10発明
を乙9発明に適用する動機があるということができる。
イ これに対し、控訴人は、乙9発明は、制動保持装置26が故障している
か否かを検出する技術思想を有しておらず、故障を検知する乙10発明
を適用する動機付けに欠ける旨主張する。
25 しかし、上記2(1)エのとおり、乙9発明は、エンジンおよび車両各部
の状態を検出するセンサ群を備えるものであり、車速零信号が出力され
ているときに制動保持信号を出力し、エンジン始動後に制動解除信号を
出力する制動保持解除信号発生手段と、制動保持信号に応動して制動装
置を作動状態に保持し、制動解除信号に応動して作動状態にある制動装
置の作動を解除する制動保持手段とを具備している。そして、乙9発明
5 において制動保持装置の異常が検知された場合には、上記の乙9発明に
おいて求められている 状態、すなわち 、 制動保持装置の作動によりブ
レーキ液圧が作用し、もってブレーキがかかった状態を保持できなくな
ることは明らかである。そうすると、乙9発明に触れた当業者は、上記
の制動保持装置の故障発生という課題を認識し、その課題を解決するた
10 め、乙10発明における制動保持装置の異常を検出する信号を付加する
動機付けがあるといえる。
ウ 以上によれば、乙9発明に乙10発明の制動保持装置の故障を検知して
運転手へ警報を発する技術を適用することは当業者が容易に想到し得る
といえる。
15 そして、上記2(1)イ~エのとおり、乙9発明が、エンジン自動停止に
より発生する問題を、センサ群からの検出信号に基づいて制動保持装置
を作動させることにより解消する技術思想を有することに照らせば、制
動保持装置の故障を検知し、制動保持装置を作動させることができない
故障が生じた場合には、その検知結果をエンジン自動停止条件の一つと
20 して用い、相違点1に係る「前記故障検出装置によって前記ブレーキ液
圧保持装置の故障を検出した時に前記原動機停止装置の作動を禁止する」
構成とすることは、当業者が容易になし得た事項といえる。
よって、乙9発明に乙10発明を適用した際に、本件発明の相違点1
に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
25 エ これに対し、控訴人は、乙9発明に接した当業者が安全性の観点から乙
10発明を適用してその改良を試みようとする場合、その手段は①エン
ジン自動停止始動装置の作動を禁止することに限られるわけではなく、
むしろ、②エンジン自動停止始動装置は作動させた上で、警報ランプ2
0及び警報ブザー21を作動させて、運転手に注意を促すという構成で
あると主張する。しかしながら、上記のとおり、乙9発明が、エンジン
5 自動停止により発生する問題を制動保持装置の作動により解消する技術
思想を有することに照らせば、制動保持装置の故障を検知し、制動保持
装置を作動させることができない故障が生じた場合には、その検知結果
をエンジン自動停止条件の一つとして用い、相違点1に係る「前記故障
検出装置によって前記ブレーキ液圧保持装置の故障を検出した時に前記
10 原動機停止装置の作動を禁止する」構成(構成要件E)とすることは、
当業者が当然容易になし得る事項である。
また、控訴人は、乙10発明を適用することによって、乙9発明におけ
るエンジン自動停止装置が作動する場面が減少するから阻害事由がある
とも主張するが、乙10発明を適用して制動保持装置の故障が検知され、
15 エンジン自動停止装置が作動するのは、稀なことであることは明らかで
あり、この程度の減少を理由として阻害事由があるとは到底いえない。
オ なお、控訴人は、乙9には「エンジン自動停止始動装置と制動保持装置
の各作動の一体不可分を必須の特徴とする技術的思想が開示されている」
とした原判決の認定は誤りであると主張する。この点に関する限り、控
20 訴人の主張には首肯できるものがあると考えるが、当裁判所は、乙9発
明と乙10発明の組合せによる容易想到性を導く筋道において、原判決
のいう「エンジン自動停止始動装置と制動保持装置の各作動の一体不可
分」なる論理構成を採用していない。控訴人の上記主張は、当裁判所の
判断を左右するものではない。
25 カ 以上により、乙9発明に乙10発明を適用して相違点1に至ることは、
当業者が容易に想到できることである。
4 訂正の再抗弁について
控訴人は訂正の再抗弁(訂正の対抗主張)を主張するが、本件訴訟と並行し
て進行していた無効審判事件において訂正請求を行うなどしておらず、上記主
張は失当というべきである。
5 第6 結論
よって、その余の点について検討するまでもなく、控訴人の本訴請求はいず
れも理由がなく、棄却すべきものである。これと同旨の原判決は相当であり、
本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
宮 坂 昌 利
裁判官
15 本 吉 弘 行
裁判官
岩 井 直 幸
(別紙)
被控訴人製品目録
下表の車種名及び型式により特定される国内において販売される乗用車、及
5 び、それに相当する輸出される乗用車であって、自動変速機及び「i-stop 制御」
の構成を備えたもの。
車種名 型式*
被控訴人製品 1 MAZDA CX-5 KE 系
被控訴人製品 2 MAZDA CX-5 KF 系
被控訴人製品 3 MAZDA CX-3 DK 系
被控訴人製品 4 MAZDA CX-8 KG 系
被控訴人製品 5 MAZDA ROADSTER ND 系
被控訴人製品 6 MAZDA DEMIO DE 系
被控訴人製品 7 MAZDA DEMIO DJ 系
被控訴人製品 8 MAZDA AXELA BL 系
被控訴人製品 9 MAZDA AXELA BM 系
被控訴人製品 10 MAZDA ATENZA GJ 系
被控訴人製品 11 MAZDA BIANTE CC 系
被控訴人製品 12 MAZDA PREMACY CW 系
* 「KE 系」の「KE」とは、届出型式の「DBA-」等の「-」に次ぐ2文字を指して
いる。「KF 系」 「DK 系」 「KG 系」 「ND 系」 「DE 系」 「DJ 系」 「BL 系」 「BM
、 、 、 、 、 、 、
系」 「GJ 系」 「CC 系」 「CW 系」についても、届出型式の「-」に次ぐ2文字を
、 、 、
指している。
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