令和6(ネ)10065損害賠償等請求控訴事件
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和7年1月30日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
著作権
民事訴訟法260条2項3回
|
キーワード |
侵害29回 損害賠償8回 差止7回 許諾5回
|
主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事件の概要 |
|
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 著作権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
令和7年1月30日判決言渡
令和6年(ネ)第10065号 損害賠償等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70422号)
口頭弁論終結日 令和6年12月16日
判 決
控訴人(第1審被告)
X
同訴訟代理人弁護士:渥美陽子、松永成高、小沢一仁
被控訴人(第1審原告)
1 のりこえねっと(以下「被控訴人社団」という。)
2 Y’ こと Y (以下「被控訴人 Y」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士:神原元
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
(略語は、原判決の例による。)
第1 事案の要旨
カメラマンである被控訴人 Yは、被控訴人社団からの依
頼に基づき、 Z( Colabo 代 表 者 )の 肖 像 写 真( 本 件 写 真 )を
撮 影 し 、被 控 訴 人 社 団 に 納 品 し た 。被 控 訴 人 社 団 は 、本 件 写 真
を使用して、男性のセクハラ行為や女性差別的言動を告発す
る 内 容 の 動 画 を 作 成 し YouTube に 投 稿 し て い た と こ ろ 、 控 訴
人 は 、被 控 訴 人 ら の 許 諾 を 得 る こ と な く 、本 件 写 真 を 改 変( ト
リ ミ ン グ 、 Z 肖 像 部 分 に モ ザ イ ク 処 理・本 件 イ ラ ス ト を 重 ね
る 処 理 を 施 す な ど ) し た 上 、 こ れ を 「 Colabo の 活 動 報 告 書 は
嘘だらけのデタラメでした」等のタイトルの本件各動画に使
用 し YouTube に 投 稿 し た 。
控訴人の上記行為につき、被控訴人社団は本件写真の著作
権を侵害された旨、被控訴人 Yは本件写真の著作者人格権
を侵害された旨、それぞれ主張している。
第2 当事者の求めた裁判
第 2-1(1) 被控訴人社団の請求(※に請求の法的根拠を掲げる。)
ア 控訴人は、本件写真を使用し、公開し、又は公衆送信して
はならない。
※ 法112条1項に基づく妨害予防としての差止請求
イ 控訴人は、被控訴人社団に対し、219万4500円及び
これに対する令和4年12月17日から支払済みまで年3%
の割合による金銭を支払え。
※ 主請求は著作権(複製権及び公衆送信権)侵害の不法行
為に基づく損害賠償請求、附帯請求は遅延損害金請求(利率
は民法所定、起算点は各最後の不法行為の日)
第 2-1(2) 被控訴人 Yの請求(同上)
ア 第 2-1(1)ア と 同 旨
イ 控訴人は、被控訴人 Yに対し、192万5000円及び
これに対する令和4年12月20日から支払済みまで年3%
の割合による金銭を支払え。
※ 主請求は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)
又は法113条11項に係る不法行為に基づく損害賠償請
求 、 附 帯 請 求 は 第 2-1(1)の イ に 同 じ 。
第 2-2 原審の判断及び控訴の提起
第 2-2(1) 原審は、被控訴人社団が被控訴人 Yから本件写真の著作
権を譲り受けた著作権者であること、控訴人の行為が被控訴
人社団の著作権(複製権及び公衆送信権)、被控訴人 Yの
著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害するも
のであることを認め、被控訴人らによる差止請求のほか、被
控訴人社団の損害賠償請求を77万円の、被控訴人 Yの損
害賠償請求を33万円の限度で認容した(金銭請求の認容部
分は仮執行宣言付き)。これに対し、控訴人が、その敗訴部
分を不服として以下のとおり控訴するとともに、原判決後に
した仮払金につき民事訴訟法260条2項の申立てをした。
第 2-2(2) 控訴の趣旨
ア 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
イ 前項の部分に係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
第 2-2(3) 民事訴訟法260条2項の申立て
ア 被控訴人社団は控訴人に対し、80万7556円及びこれ
に対する令和6年8月1日(仮払金受領の日)から支払済み
まで年3%の割合による金銭を支払え。
イ 被控訴人 Yは控訴人に対し、34万6014円及びこれ
に対する令和6年8月1日(同上)から支払済みまで年3%
の割合による金銭を支払え。
第3 前提事実及び争点
第 3-1 前提事実
(1) 前 提 事 実 は 、 原 判 決 後 の 仮 払 の 事 実 を 下 記 (2)の と お り 加 え
る ほ か 、原 判 決「 事 実 及 び 理 由 」第 2 の 2( 2 頁 ~ )記 載 の と
おりであるから、これを引用する。
(2) 原判決後の仮払
控 訴 人 は 、原 判 決 言 渡 し 当 日 で あ る 令 和 6 年 8 月 1 日 、原 判
決 で 支 払 を 命 じ ら れ た 額( 遅 延 損 害 金 を 含 む 。)と し て 、被 控
訴人社団に対し80万7556円、被控訴人 Yに対し34
万6014円を支払った。
第 3-2 争点
本件の争点は以下のとおりであるが、争点2-2及び争点
3-3については、当審において特段の補充的主張はされて
いない。
(1) 本件写真の著作権の帰属(争点1)
(2) 控訴人による被控訴人社団の著作権侵害の成否(争点2)
(2)ア ・複製権及び公衆送信権侵害の有無(争点2-1)
(2)イ ・引用の成否(争点2-2)
(3) 控訴人による被控訴人 Yの著作者人格権侵害の成否(争点
3)
(3)ア ・氏名表示権侵害の有無(争点3-1)
(3)イ ・同一性保持権侵害の有無(争点3-2)
(3)ウ ・名誉又は声望を害する方法による利用行為該当性(争点3
-3)
(4) 差止めの必要性の有無(争点4)
(5) 被控訴人らの損害の有無及び額(争点5)
第4 争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は、以下のとおり当審における
当 事 者 の 補 充 的 主 張 を 加 え る ほ か 、原 判 決「 事 実 及 び 理 由 」の
第 2 の 4( 5 頁 ~ )に 記 載 の と お り で あ る か ら 、こ れ を 引 用 す
る。
第 4-1 争点1(本件写真の著作権の帰属)について
第 4-1(1) 争点1:控訴人の主張
ア 原判決が、本件写真の著作権が被控訴人 Yから被控訴人
社団に譲渡されたことの根拠として挙げる事情は、①被控訴
人社団が、本件写真の納品後、個別に被控訴人 Yの許諾を
得ることなく本件写真を利用していること、② Z及び
Colabo が 、毎 日 新 聞 の ウ ェ ブ サ イ ト に 本 件 写 真 を 提 供 し て お
り、これが被控訴人社団の包括的又は個別の許諾に基づき行
われたものであることがうかがわれること、③被控訴人社団
から被控訴人 Yへの利用許諾料の支払等がないことである。
しかし、これらは、被控訴人 Yから被控訴人社団への著
作権譲渡でなく、無償利用許諾があったとしても説明がつく
こ と で あ る 。請 求 書( 甲 5 )に は 交 通 費 及 び 撮 影 費 し か 品 目 が
なく、その額も7万円と低廉で、これでプロの写真家である
被控訴人 Yが著作権譲渡をしたとは考えられない。
イ 被控訴人社団が、本件各動画のうち33、34のみについ
て 、YouTube に 対 し 、被 控 訴 人 社 団 の「 動 画 の 」著 作 権 を 侵 害
したことを理由に公開停止を申し立てている。 件 写真の」
本 「
著作権を有するとは認識していなかった証左である。
被控訴人らは、前訴を有利にするために、本件では本件写
真の著作権が被控訴人社団に譲渡されたと仮装しているもの
にすぎない。
第 4-1(2) 争点1:被控訴人らの主張
控訴人の主張は争う。
被控訴人社団は、控訴人との間の前訴及び本件訴訟を通じ
て、本件写真の著作権は被控訴人 Yから被控訴人社団に移
転したことを前提に、著作権が被控訴人社団に帰属すること
を主張し、その旨の陳述書を提出している。本件訴訟におい
て、被控訴人 Yが上記著作権の帰属について異議を述べた
こともない。
第 4-2 争 点 2 - 1( 複 製 権 及 び 公 衆 送 信 権 侵 害 の 有 無 )、争 点 3 - 2
(同一性保持権侵害の有無)について
第 4-2(1) 争点2-1、争点3-2:控訴人の主張
控訴人が本件各動画において利用した本件写真には、 Z
肖像部分につきモザイク処理や本件イラストを重ねる処理等
を施したものがあるが、これについて本件写真の内容及び形
式を覚知することは不可能である。
加工のない写真を見たことのある者や、 Zの顔を知って
いる者であれば、 Zの容貌を想起することがあるかもしれ
ないが、それは本件写真自体から Z肖像部分の内容及び形
式を覚知できることを意味するものではない。
第 4-2(2) 争点2-1、争点3-2:被控訴人らの主張
シルエットやイラストを重ねていない部分からなお本件写
真の内容及び形式を覚知することは可能である。
第 4-3 争点3-1(氏名表示権侵害の有無)について
第 4-3(1) 争点3-1:控訴人の主張
原判決は、法19条2項に係る主張を侵害者である控訴人
が す る こ と は 相 当 で な い と 判 断 す る が 、同 項 は 、 著 作 物 を 利
「
用 す る 者 」に つ い て 適 用 さ れ る も の で あ り 、控 訴 人 が 本 件 写 真
の著作権や氏名表示権以外の著作者人格権を侵害していたと
しても、それを理由に同項の適用を排斥することはできない
はずである。
被控訴人 Yは、被控訴人社団や Z 、 Colabo が 、 本 件 写
真を利用するに際し、被控訴人 Yの氏名を表示しなくても
問題としておらず、これを容認していたものというべきであ
る 。被 控 訴 人 Y は 、本 件 写 真 の 利 用 に 当 た り そ の 氏 名 を 表 示
すべき旨の別段の意思表示もしていない。
し た が っ て 、控 訴 人 は 、本 件 写 真 を 利 用 す る に あ た り 法 1 9
条2項の適用を受け、氏名表示権侵害の責任を負わない。
第 4-3(2) 争点3-1:被控訴人 Yの主張
法19条2項は、利用者が著作物を利用するにあたって著
作権者表示をいかにするかを著作者に確認する等の手間を省
く規定であるから、適法な利用であることが前提となる。
第 4-4 争点4(差止めの必要性の有無)について
第 4-4(1) 争点4:控訴人の主張
控訴人が写真のデータを保有していることの一事をもって、
著作権侵害のおそれがあるということはできない。
本件写真はインターネットにおいて公表されており、その
データは控訴人以外でも容易に取得することができる。
第 4-4(2) 争点4:被控訴人らの主張
控訴人は、本件写真を使用した動画を削除するなり差し替
えたりするのではなく、単にぼかしをいれているだけであり、
ぼかしをはずせば容易に元の状態に戻すことができるから、
控訴人の主張は失当である。
第 4-5 争点5(被控訴人らの損害の有無及び額)について
第 4-5(1) 争点5:控訴人の主張
被控訴人社団から被控訴人 Yに支払われたのは7万円で
あり、これは Zら3名の撮影費用及び交通費を含むもので
あ り 、 Z に つ い て は 5 ~ 6 通 り 、他 の 物 に つ い て は そ れ ぞ れ
5 通 り 程 度 の 写 真 が 撮 影 さ れ て い る 。そ う す る と 、本 件 写 真 の
撮影についての対価はせいぜい5000円未満である。原判
決が認定した被控訴人社団の法114条3項により算定され
る損害額や、被控訴人 Yの著作者人格権侵害による慰謝料
額は過大である。
第 4-5(2) 争点5:被控訴人らの主張
法114条3項により算定される損害額や、著作者人格権
侵害による慰謝料額が、著作権の交換価値を基準にしなけれ
ばならない理由はない。
なお、被控訴人社団は法114条2項により算定される損
害額に基づく請求はしていないが、控訴人が本件各動画を
YouTube に 投 稿 す る こ と で 利 益 を 得 て い た こ と も 考 慮 す べ き
である。
第5 当裁判所の判断
当 裁 判 所 も 、原 審 と 同 様 、控 訴 人 は 、被 控 訴 人 社 団 と の 関 係
で 著 作 権( 複 製 権 及 び 公 衆 送 信 権 )侵 害 、被 控 訴 人 Yとの関
係 で 著 作 者 人 格 権( 同 一 性 保 持 権 及 び 氏 名 表 示 権 )侵 害 の 責 任
を免れず、被控訴人らの差止請求及び損害賠償請求は原審が
認 容 し た 限 度 で 理 由 が あ る と 判 断 す る 。そ の 理 由 は 、当 審 に お
ける控訴人の補充的主張に対する判断を下記のとおり加える
ほ か 、原 判 決「 事 実 及 び 理 由 」の 第 3 の 1 ~ 5( 1 2 頁 ~ )の
とおりであるから、これを引用する
第 5-1 争点1(本件写真の著作権の帰属)について
控 訴 人 は 、原 判 決 摘 示 の 事 情( 間 接 事 実 )は 被 控 訴 人 Yか
ら被控訴人社団への著作権の譲渡を根拠付けるものではない
と 主 張 す る が 、本 件 で は 、譲 渡 側 の 被 控 訴 人 Yと譲受側の被
控 訴 人 社 団 の 双 方 が 、本 件 写 真 の 著 作 権 譲 渡( 口 頭 合 意 )の 事
実 を 主 張 し 、こ れ に 沿 う 直 接 証 拠( 甲 2 ~ 4 、1 4 の 陳 述 書 、
証人 A )が 提 出 さ れ て い る 。被 控 訴 人 ら が 口 裏 合 わ せ を し て
著作権譲渡の事実を仮装することが疑われる具体的な事情が
あ る と い う の で あ れ ば 格 別 、本 件 に お い て そ の よ う な 理 由( 実
益 )が あ る と は 考 え ら れ ず 、以 上 の 証 拠 関 係 だ け で 著 作 権 譲 渡
の事実を認めるに十分である。
控 訴 人 は 、被 控 訴 人 ら が 、前 訴 を 有 利 に す る た め に 、本 件 写
真の著作権が被控訴人 Yから被控訴人社団に譲渡されたと
仮装している旨主張するが、本件訴えは令和5年7月5日に
提起されたところ、前訴は同年6月15日に既に弁論が終結
さ れ 、同 年 8 月 2 4 日 棄 却 判 決 が さ れ て お り( 乙 5 )、本 件 訴
えの提起が前訴を有利にするという関係にあるとは認められ
ない。
第 5-2 争点2-1(複製権及び公衆送信権侵害の有無)について
控訴人は、本件写真の Z肖像部分にモザイク処理や本件
イラストを重ねる処理を施したものについては、本件写真の
内容及び形式を覚知することは不可能であると主張するが、
モザイク処理については粗いモザイクが施されているにすぎ
ず 、本 件 イ ラ ス ト を 重 ね る 処 理 を し た も の に つ い て は 、上 半 身
や 髪 の 部 分 等 を 認 識 す る こ と が で き 、ア ン グ ル の 選 択 、照 明 等
を含め、本件写真の表現上の本質的特徴を感得することがで
きるものといえる。
第 5-3 争点3-1(氏名表示権侵害の有無)について
控訴人は、控訴人が本件写真の著作権又は著作者人格権を
侵害していたとしても、それを理由に法19条2項の適用を
排 斥 す る こ と は で き な い と 主 張 す る が 、同 項 は 、著 作 者 の 推 定
的意思を基礎として、著作物を利用する者の便宜を図った規
定と解されるところ、少なくとも本件写真に無断の改変が加
えられている本件において、同項の適用は前提を欠くという
べきである。
また、控訴人は、被控訴人 Yが、被控訴人社団や Z、
Colabo が 、 本 件 写 真 を 利 用 す る に 際 し 、 被 控 訴 人 Yの氏名
を表示していなくても問題としていない旨主張するが、本件
写真の利用が予想される範囲の者であるからにすぎず、一律
に氏名表示を要しない意思が示されているとはいえない。
第 5-4 争点3-2(同一性保持権侵害の有無)について
控訴人は、 Z肖像部分にモザイク処理や本件イラストを
重ねる処理をしたものは、その表現上の本質的特徴を感得す
ることができないものになっているから、同一性保持権を侵
害 し な い 旨 主 張 す る が 、 こ れ を 採 用 で き な い こ と は 前 記 第 5-
2 のとおりである。
第 5-5 争点4(差止めの必要性)について
控訴人は、本件写真のデータを保有していることの一事を
もって、控訴人が本件写真を利用するおそれがあるとはいえ
な い 旨 主 張 す る が 、侵 害 の 態 様 、控 訴 人 と 被 控 訴 人 ら 及 び そ の
関係者( Z 及 び Colabo) と の 関 係 性 、 前 訴 も 含 め た 本 件 の
経緯に鑑みれば、控訴人が本件写真のデータを敢えて保有し
続け消去していないことは、侵害のおそれを裏付けるものと
いうべきである。
ま た 、控 訴 人 は 、本 件 写 真 は イ ン タ ー ネ ッ ト に お い て 公 表 さ
れており、そのデータは控訴人以外でも容易に取得すること
ができる旨主張するが、控訴人以外の者がデータを利用する
可能性があることをもって、控訴人によるデータの利用の可
能性を否定することはできない。
第 5-6 争点5(被控訴人らの損害の有無及び額)について
控訴人は、被控訴人社団から被控訴人 Yに支払われたの
は7万円であり、被写体となった者3名それぞれの複数枚の
撮影費用及び交通費を含むものであるから、原判決の認定に
係る損害額は過大である旨主張する。
し か し 、こ れ ら の 要 素 を 考 慮 し た と し て も 、原 判 決 が 掲 げ る
諸事情を総合すれば、原判決が認定した損害額が過大とはい
えない。密接な関連性のある者の間の著作権の譲渡価格は著
作 権 の 市 場 価 値 に 直 結 し な い も の で あ り 、ま し て 、著 作 権 あ る
いは著作者人格権侵害に基づく損害額算定の基準となるもの
とはいえない。
第 5-7 結論
以 上 に よ れ ば 、被 控 訴 人 ら の 差 止 請 求 は 理 由 が あ り 、被 控 訴
人社団の損害賠償請求は77万円及び遅延損害金の支払を求
める限度で、被控訴人 Yの損害賠償請求は33万円及び遅
延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容
し 、そ の 余 は 理 由 が な い か ら 棄 却 す べ き で あ る 。こ れ と 同 旨 の
原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却
す る こ と と し 、主 文 の と お り 判 決 す る 。な お 、民 事 訴 訟 法 2 6
0 条 2 項 の 申 立 て に つ い て は 、本 件 控 訴 が 棄 却 さ れ る の で 、判
断を要しない。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
宮 坂 昌 利
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
岩 井 直 幸
最新の判決一覧に戻る