知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ネ)10001 特許権侵害行為差止等請求控訴事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和6(ネ)10001特許権侵害行為差止等請求控訴事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年3月6日
事件種別 民事
法令 特許権
特許法29条2項1回
特許法100条1項1回
キーワード 進歩性20回
特許権10回
無効9回
審決4回
新規性3回
差止2回
侵害2回
訂正審判1回
優先権1回
損害賠償1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
3 この判決に対する控訴人による上告及び上告受理のための付加期間を3
0日と定める。
事件の概要 本件は、本件特許1、本件特許2及び本件特許3に係る特許権(以下「本件各 特許権」という。)を有する原告が、被告製品はいずれも本件各発明(本件発明

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和7年3月6日判決言渡
令和6年(ネ)第10001号 特許権侵害行為差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所令和3年(ワ)第4061号)
口頭弁論終結日 令和6年12月3日
5 判 決
控 訴 人 カード-モンローコーポレイション
同訴訟代理人弁護士 山 本 健 策
10 同 上 米 良 大 輔
同 福 永 聡
同 本 田 輝 人
同補佐人弁理士 橋 本 卓 行
同 飯 田 貴 敏
15 同 田 中 宏 樹
被 控 訴 人 道 下 鉄 工 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 牧 野 知 彦
20 同 高 山 和 也
同訴訟代理人弁理士 田 村 啓
同 中 嶋 隆 宣
同 奥 西 祐 之
同補佐人弁理士 稲 葉 和 久
25 主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
3 この判決に対する控訴人による上告及び上告受理のための付加期間を3
0日と定める。
事 実 及 び 理 由
5 (注)本判決で用いる略語の定義は、別に本文中で定めるもののほか、次のとお
りである。
原告 :控訴人(1審原告)
被告 :被控訴人(1審被告)
本件特許1:原告を特許権者とする特許第5745724号(発明の名称:
10 ヤーン色配置システム。甲1の1、2の1)
本件特許2:原告を特許権者とする特許第5389467号(発明の名称:
ヤーン色配置システム。甲1の2、2の2)
本件特許3:原告を特許権者とする特許第5622876号(発明の名称:
タフティング機のためのステッチ分布制御システム。甲1の3、
15 2の3)
本件訂正審決:特許庁訂正2024-390023号事件に係る令和6年8
月21日付け審決(甲66)
本件訂正 :本件訂正審決により認められた本件特許3に係る特許請求の範
囲の訂正
20 本件発明1:本件特許1の特許請求の範囲・請求項1に係る発明
本件発明2:本件特許2の特許請求の範囲・請求項1に係る発明
本件発明3:本件訂正前の本件特許3の特許請求の範囲・請求項1に係る発

訂正発明3:本件訂正後の本件特許3の特許請求の範囲・請求項1に係る発
25 明
本件明細書3:本件特許3に係る特許公報記載の明細書及び図面(甲2の3)
本件優先日3:本件特許3に係る最先の優先日(平成21年2月23日)
被告製品 :原判決別紙「被告製品目録」記載の各製品
乙4公報 :特表2006-524753号公報(乙4)
乙4発明 :乙4公報に記載された発明
5 ハイロー制御:タフティングマシンにおいて、隠したい色のヤーン(糸)を
引き抜くか、引き戻してその色のタフトの高さを他のタフト
よりも低くする技術
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
10 2 被告は、被告製品の製造、譲渡、輸入、輸出及び譲渡の申出をし、譲渡のた
めの展示をしてはならない。
3 被告は、被告製品及びその半製品(被告製品の構造を具備しているが、未だ
製品として完成に至らないもの)を廃棄せよ。
4 被告は、被告製品の製造に供する製造設備を廃棄せよ。
15 5 被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和3年5月28日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、本件特許1、本件特許2及び本件特許3に係る特許権(以下「本件各
特許権」という。)を有する原告が、被告製品はいずれも本件各発明(本件発明
20 1、本件発明2又は本件発明3(本件訂正後は訂正発明3)をいう。以下同じ。)
の技術的範囲に属し、被告による被告製品の製造、譲渡等は本件各特許権の侵害
に当たると主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づき被告製品の製造、
譲渡等の差止めを、同条2項に基づき被告製品等の廃棄を求めるとともに、不法
行為に基づき、損害額10億円の一部である1億円の損害賠償及びこれに対する
25 不法行為の後である令和3年5月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで
平成29年法律第44号附則17条の規定によりなお従前の例によるとされる場
合における同法による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払
を求める事案である。
原審が、本件発明1、本件発明2及び本件発明3はいずれも乙4発明から容易
に発明することができたものであるから、これらの各発明に係る特許はいずれも
5 進歩性欠如の無効理由を有し、原告は本件各特許権を行使することができないと
して、原告の請求をいずれも棄却したところ、原告がこれを不服として控訴した。
なお、本件控訴の後、本件訂正により、本件発明3は後記の訂正発明3に訂正
された。
1 前提事実(当事者、タフティングマシンの意義、本件各特許権及び本件各発
10 明の構成要件、被告製品の構成、被告の行為)は、以下のとおり補正するほか、
原判決の「事実及び理由」中、第2の1(原判決2頁25行目から4頁25行
目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(以下、引用文中の「別
紙」は「原判決別紙」と、単に「本件発明」とあるのは「本件各発明」と、そ
れぞれ読み替える。)。
15 (原判決の補正)
3頁14行目の「特許請求の範囲」の次に「(ただし、本件特許権3につい
ては、本件訂正前のもの)」を加え、4頁12行目末尾に行を改めて次のとお
り加える。
「 原告は、当審において、本件発明3について本件訂正と同内容の訂正の再
20 抗弁を主張するとともに、令和6年3月11日、本件特許3の特許請求の範
囲の請求項1を訂正発明3のとおり訂正すること等を求める訂正審判(訂正
2024-390023号事件)を請求し(甲41)、特許庁は、同年8月
21日、本件特許3について、「本件審判請求書に添付された特許請求の範
囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。」
25 との本件訂正審決をした(甲66)。
訂正発明3の構成要件は、次のとおり分説される(下線部は本件訂正によ
り追加された構成を示す。)。
3A 複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタフ
ティング機であって、該タフティング機は、
3B 少なくとも1つの針棒であって、該少なくとも1つの針棒に沿って一
5 連の針が載置されている、少なくとも1つの針棒と、
3C 該タフティング機のタフティング区画を通して裏打ち材料を供給する
ための裏打ち供給ロールと、
3D 一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、
3D’ 該少なくとも1つの針棒を、該タフティング区画を横断して横方向
10 に移行させるための、該少なくとも1つの針棒に連結された少なくとも
1つのシフターと、
3E 一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打ち
材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中へ往復
運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置に
15 おいて、該タフティング区画の下に載置される、一連のゲージ部品と、
3F ステッチ分布制御システムであって、
3F1 該ステッチ分布制御システムは、一連のパターンステップに従って、
該裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された一連
の糸の中の糸を選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御する
20 ために、該糸供給機構を制御し、かつ、
3F2’ 該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト
状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高
密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するために、
該裏打ち供給ロールを制御し、前記効果的ステッチレート毎にステッチ
25 を行い、前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の
糸の中の糸を選択的に保持することによって、該パターン化タフト状物
品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、ステッチ分
布制御システムとを備える、
3G タフティング機。」
2 争点及び争点についての当事者の主張は、後記第3のとおり当審における当
5 事者の追加的・補足的主張を加えるほか、原判決の「事実及び理由」中、第2
の2及び第3(原判決4頁26行目から6頁14行目まで、原判決別紙「被告
製品の構成」、同「構成要件充足性(本件発明1)」、同「構成要件充足性
(本件発明2)」、同「構成要件充足性(本件発明3)」、同「無効主張(本
件発明1及び2・明確性要件違反)」、同「無効主張(本件発明3・新規性欠
10 如)」、同「無効主張(本件発明3・進歩性欠如)」、同「無効主張(本件発
明1・進歩性欠如)」及び同「無効主張(本件発明2・進歩性欠如)」の各
「原告の主張」欄及び「被告の主張」欄)記載のとおりであるから、これを引
用する(ただし、争点及び争点についての当事者の主張中、「本件発明3」と
あるものは、いずれも「訂正発明3」に読み替える。)。
15 各争点中、当審において判断した争点は、「乙4発明に基づく訂正発明3の
進歩性欠如の有無(争点2-3)」、「乙4発明に基づく本件発明1の進歩性
欠如の有無(争点2-4)」及び「乙4発明に基づく本件発明2の進歩性欠如
の有無(争点2-5)である。
第3 当審における当事者の追加的・補足的主張
20 1 訂正発明3の技術的範囲への属否(争点1関係)について
(原告の主張)
被告製品は、以下のとおり、訂正発明3の構成要件を全て充足し、その技術
的範囲に属する。
⑴ 本件発明3と共通する構成要件
25 訂正発明3の構成要件3Aから3Dまで、3E、3F、3F1、3Gは、
訂正前の本件発明3と同一であり、被告製品はこれらの構成要件を充足する。
⑵ 構成要件3D’
被告製品は、シフターの発明特定事項に関する本件発明1の構成要件1E
及び本件発明2の構成要件2Eを充足することから(争いがない)、同じく
シフターの発明特定事項に関する構成要件3D’を充足する。
5 ⑶ 構成要件3F2’
被告製品は、本件訂正前の構成要件3F2を充足するので、各ステッチ場
所において一連の糸を提示しており、「前記効果的ステッチレート毎にステ
ッチを行」っている。また、被告製品は、構成要件3F1を充足するので
(争いがない)、「選択されたステッチ場所において、提示された一連の糸
10 の中の糸を選択的に保持」している。
被告製品は、4色柄の模様を作成する場合、作成される模様における1イ
ンチ当たりのステッチ数が4、6、8、10となるように設定することがで
き、その際1インチ当たりに実際に打ち込むステッチ数はそれぞれ16、2
4、32、40になっている(乙8・1頁「4.試験条件」)。そして、こ
15 のように設定された被告製品を用いてタフティングされたカーペットの外観
は、ユーザが設定した1インチ当たりのステッチ数である4、6、8、10
となっており、所望の織物ステッチレートの外観を有している。
そのため、被告製品は、「前記効果的ステッチレート毎にステッチを行い、
前記選択されたステッチ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を
20 選択的に保持することによって、」を充足するから、構成要件3F2’を充
足する。
(被告の主張)
否認ないし争う。
2 乙4発明に基づく訂正発明3の新規性欠如の有無(争点2-2)及び乙4発
25 明に基づく訂正発明3の進歩性欠如の有無(争点2-3)について
(被告の主張)
⑴ 乙4発明について
訂正発明3との対比を前提とすると、乙4公報には、以下の発明が記載さ
れている(下線部は構成要件3F2’に係る訂正に対応する。)。
3a 複数の糸を送る糸送りユニットを備え、所望のカーペット・パターン
5 を持つカーペット形成するためのタフト作製機であって、該タフト作製
機は、
3b 少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針
棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針棒
と、
10 3c 該タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基
材14(=裏打ち材料)を供給するための基材送りロール18と、
3d 一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50と、
3e 一連のルーパ23であって、該一連のルーパ23は、該針が基材の中
において糸のループまたはタフトを形成するように基材14の中を上昇、
15 下降させられるとき、該針のつくるループと係合する位置において、タ
フト作製領域の下に載置される、一連のルーパ23と、
3f 制御システムであって、
3f1 該制御システムは、ユーザの所望するカーペット・パターンをタフ
トするために要求される糸送りレートを計算したパターン・データにし
20 たがって、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成される
ように個々の針13への該糸の供給を独立に制御するために、該糸送り
ユニット50を制御し、かつ、
3f2’ ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求
される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データに
25 したがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御
し、所望のパターンに要求されるステッチ・レート毎にステッチを行い、
タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成されることによっ
て、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制御システム
とを備える、
3g タフト作製機。
5 ⑵ 一致点及び相違点
訂正発明3と乙4発明とを対比すると、以下の点で相違し、その他の点で
一致する。
なお、構成要件D’は、相違点とはならない。
【相違点3-1】
10 構成要件3Aにおいて、訂正発明3では「複数の異なる糸」とされてい
るのに対し、乙4発明では「複数の糸」が使用されているが、それが「異
なる糸」であるか否かは明示されていない点
【相違点3-2】
構成要件3F1において、訂正発明3では「一連の糸の中の糸を選択的
15 に保持する」とされているのに対し、乙4発明はこのような構成が明示さ
れていない点
【相違点3-3】
構成要件3F2’において、訂正発明3では「該パターン化タフト状物
品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッ
20 チレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏
打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、前記効
果的ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッチ場所に
おいて、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持することによっ
て、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの
25 外観を有する、ステッチ分布制御システムとを備える、」とされているの
に対し、乙4発明は「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトす
るために要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン
・データにしたがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール1
8を制御し、所望のパターンに要求されるステッチ・レート毎にステッチ
を行い、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成されること
5 によって、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制御シス
テムとを備える、」点
⑶ 相違点の検討
ア 相違点3-1について
訂正発明3では「複数の異なる糸」としか特定されていないのであるか
10 ら、「複数の糸」が使用されている乙4発明との関係において、相違点3
-1は実質的な相違点とはならない。
イ 相違点3-2について
構成要件3F1の意味は、「選択されたステッチ場所において、模様に
表したい色のヤーンを選択的に高いタフトで残し、残りの色のヤーンを引
15 き抜くか又は引き戻す(以下、両者を併せて「引き下げる」と総称する。)
ように針への糸供給量を糸供給機構が制御すること」であり、要するに、
所望のカーペット・パターンが赤色のタフトを残し、青色と緑色のタフト
を引き下げるものであれば(下図参照)、赤色の糸が供給されているニー
ドルについては、高いタフトを形成するように糸供給量を制御し、青色と
20 緑色の糸が供給されているニードルについては、ヤーンを引き下げられる
ように糸供給量を減らす制御を行うことを規定したのが構成要件3F1で
ある。
X
X
X X
X
X
X X
他方、乙4発明において、糸送りユニット50を制御している制御シス
テムは、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成されるよう
に個々の針13への該糸の供給を独立に制御し、これによって「本発明の
5 糸送りユニットは、プログラムされたパターン命令に従ってタフト作製機
の各々の針に対する一連の糸の各々の送りを個々に制御して所望のパター
ンを形成する」ことができ(乙4公報【0013】)、乙4発明のタフト
作製機によって赤色、青色、緑色の3色のヤーンを使ったタフティングを
行う場合には、所望のカーペット・パターンが上図のようなものであれば、
10 そうなるように糸送りユニット50による赤色、青色、緑色のヤーンの糸
送りを個々独立に制御して、所望のカーペット・パターンを形成すること
になる。
したがって、相違点3-2は、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点3-3について
15 訂正発明3の構成要件3F2’は、訂正前の構成要件3F2に、「効果
的ステッチレート毎にステッチを行い」という、「単位長さ当たりに実際
に打ち込まれるタフトの数」という効果的ステッチレートの定義からすれ
ば当然の構成と、構成要件3F1の「選択されたステッチ場所において提
示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する」との構成とを付加したに
20 すぎず、訂正前の構成要件3F2と実質的に変わるものではない。
構成要件3F2’における「所望の織物ステッチレート」とは、「タフ
ティングマシンを用いて実際に作成された模様にかかるステッチレート」
のことであり、「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高
密度な効果的ステッチレート」というのは、「所望の織物ステッチレート」
×「ヤーンの数」を含んでいる。
一方、乙4発明の構成3f2’は、「ユーザの所望するカーペット・パ
5 ターンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチレートを
計算したパターン・データにしたがって基材の供給を制御するために、該
基材送りロール18を制御」することにより、「ユーザの所望するカーペ
ット・パターン」を得ている。
そして、前記アのとおり、乙4発明においては複数の色の糸が使用され
10 ているところ、ニードルシフトとハイロー制御とを組み合わせた多色のタ
フティングマシンによって、例えば3色のタフトをすれば所望の1色以外
は引き下げるのであるから、実際のステッチレート(所望の織物ステッチ
レートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレート)は、自
ずと「所望の織物ステッチレート」×「ヤーンの数」になる。
15 したがって、この点は一致点である。
(列)
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮
(行) 1 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
2 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
3 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
4 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
5 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
6 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
7 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
8 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
9 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
また、仮に相違点と解したところで、乙4発明に技術常識又は設計的事
項を適用することにより、容易想到である。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は、乙4発明は、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込む
タフトが多くなるようにバッキング材料の搬送を制御するものではない
旨主張している。
5 しかし、乙4発明はハイロー制御とニードルシフトを組み合わせたタ
フティング機であり、模様として見えるタフトの色以外の色は全て引き
下げるのであるから、実際のステッチレート(所望の織物ステッチレー
トよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレート)が「所望
の織物ステッチレート」×「ヤーンの数」になることは当然の帰結であ
10 り、乙4発明では、そのようなバッキング材料の給送速度で制御されて
いる。
また、乙4公報には、所望の模様に従ったパラメータが計算され、所
望のパターンが生成されることが開示されているから(乙4公報【00
12】、【0019】、【0020】、【0048】、【0049】)、
15 カーペット模様の抽出方法に関する技術的思想を読み取ることができる。
原告が指摘する甲33、44、52、53、57は、いずれも本件優
先日3当時の技術常識を裏付けるものではない。
(イ) 原告の主張は、実質的には、構成要件3F1及び3F2’の「ステッ
チ場所」は「1マス」を意味しており、その「1マス」に色の数だけ打
20 つ(例えば、3色であれば1マスに3回ステッチする)という相違点が
生じたと主張するもので、これを図示すれば、以下のとおりとなる。
効果的
ステッチレート
所望の織物
= ステッチレート
所望の織物
ステッチレート

3(色の数)
本件発明
従来
しかし、実際にタフティングを行うバッキング材料(基布)に「マス」
は存在していないし、本件明細書3にも「マス」などといった概念は何
ら記載されていない。上記の図のマスを除外して図示すれば以下のとお
5 りであり、原告の主張する「ステッチ場所」による差異は、単にステッ
チをどれだけ詰めて(高密度で)打ったかの違いでしかない。そして、
どれだけ詰めてステッチするかはバッキング給送速度の調整によって行
われるものであるから(争いがない)、乙4発明においても基材送りロ
ール18を制御しているとおり(構成3f2’、乙4発明を含む従来技

10 術において当然に行われていたことである。
X
B
= X
A
✕ X
X X B
X
3(色の数)
A = X X
A
A X
X ✕ X
3(色の数) X X
X
X X
従来 本件発明
また、ニードルシフトとハイロー制御を組み合わせたタフティングマ
シンにおいて、引き下げられるタフトはカーペットの外観に現れないこ
と、すなわち模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトの方
5 が多くなることは、当業者にとって当然の前提である。タフティングマ
シンは所望の模様を得るために使用する装置であるところ、所望の模様
は残すタフト(引き下げられないタフト)によって形成されるのである
から、どのタフトが残るかを基準に実際に打つタフト(効果的ステッチ
レート)を決めることは、技術常識以前の問題といえる。
10 オ 小括
したがって、訂正発明3は、乙4発明と実質的に相違しないか、又は乙
4発明に技術常識あるいは設計的事項を適用したにすぎないものであって、
乙4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(原告の主張)
15 ⑴ 訂正発明3及び乙4発明について
ア 構成要件3F2’の「所望の織物ステッチレート」とは、完成したカー
ペット模様としてユーザが所望するステッチ方向の単位長さ当たりのタフ
トの数であり、「効果的ステッチレート」とは、本件明細書3【0027】
にも記載されているように、「所望の織物ステッチレート」に糸の種類の
数を乗じたものである。
5 そして、訂正発明3は、「選択されたステッチ場所において提示された
一連の糸の中の糸を選択的に保持する」ために、糸供給機構の制御(構成
要件3F1)及び裏打ち供給ロールの制御(構成要件3F2’)を行うこ
とを特定している。
かかる制御は、「選択されたステッチ場所」において、一連の糸(例え
10 ば赤色、緑色、青色)が提示されることが前提となっている。そして、各
ステッチ間隔は、下記【図C】の例では30分の1インチであるので、一
連の糸(赤色、緑色、青色)が提示される間隔、すなわち「選択されたス
テッチ場所」は、30分の1インチ(各ステッチ間隔)に糸の種類の数で
ある3を乗じた10分の1インチになる。
15 つまり、構成要件3F2’の「選択されたステッチ場所」は、「所望の
織物ステッチレート」(下記【図C】の例では1インチ当たり10ステッ
チ)の逆数であり、「所望の織物ステッチレート」、「効果的ステッチレ
ート」及び「選択されたステッチ場所」の関係は、以下の計算式で表され、
一義的に定まる長さを有する領域である。
20 【効果的ステッチレート】
=X(所望の織物ステッチレート)×Y(糸の種類)
【選択されたステッチ場所】
1 1
= (各ステッチ間隔)×Y(糸の種類)= ?
X×Y
イ 訂正発明3の効果
25 従来技術のタフティングマシンは、ステッチの数とタフト製品のパイル
糸の密度が一致することが前提であったので、1インチ当たり針が裏打ち
材料を実際にステッチする数は、ユーザが所望するステッチ方向の単位長
さ当たりのタフトの数(タフトの密度)である「所望の織物ステッチレー
ト」と同じものとなり、「所望の織物ステッチレート」に糸の数を乗じた
「効果的ステッチレート」毎にステッチするものではなかった(甲33、
5 44、52、53、57、58、乙14・4枚目)。
例えば、上半分を赤、左下部分を青、右下部分を緑の配色とするカーペ
ットを作成する場合、従来のタフティングマシンは、【図A】のタフティ
ング動作を行った上で、ハイロー制御により【図B】のような模様を作成
することができたが、完成したカーペット模様は、カーペット模様の表面
10 に見える糸の量が所望の織物ステッチレートよりも少なく、その表面が所
望の織物ステッチレートの外観にならないという技術的課題があった。
【図A】
15 【図B】
これに対し、訂正発明3のタフティングマシンは、下記【図C】のタフ
ティング動作を行い、選択されたステッチ場所において提示された一連の
糸の中の糸を選択的に保持する制御(構成要件3F1)を行うことにより、
5 下記【図D】のように、完成したカーペット模様の表面が所望の織物ステ
ッチレートの外観になるという作用効果を奏し、従来のタフティングマシ
ンの技術的課題を解決するものである。
【図C】
【図D】
ウ 乙4発明について
5 乙4発明は、前記イの従来技術と異なるものではなく、模様として見え
るタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くなるようにバッキング材料の
供給速度を制御するものではない。
(ア) 乙4公報が開示する技術的思想は、機能性が向上した糸送り制御シス
テムを提供することにあり、カーペット模様の抽出方法に関する技術的
10 思想を読み取ることはできない。
(イ) 乙4公報には、基材送りロールが「効果的ステッチレート」によって
基材を供給できることについて、何ら言及されていない。
(ウ) 乙4公報【0020】及び【0054】の記載をみても、「基材の送
り」又は「ステッチレート」は、「ユーザの所望するカーペット・パタ
15 ーン」に対する単位長さ当たりのタフト数と考えられ、実際に打ち込む
タフトの密度が模様として見えるタフトの密度と同じになるように基材
の供給速度を制御するものにすぎない。乙4公報【図8】にあるとおり、
基材の送り(供給速度)はカーペットパターン(模様)とは関係なく確
立するパラメータと考えられ、構成要件3F2’のような制御を行うも
のではない。
(エ) 乙4公報は、訂正発明3の「選択されたステッチ場所」、「選択され
5 たステッチ場所への一連の糸の提示」、「提示された一連の糸の中の糸
を選択的に保持するための糸の供給制御」を何ら開示するものではない。
⑵ 一致点及び相違点
①前記⑴のとおり、訂正発明3の「選択されたステッチ場所」は「所望の
織物ステッチレート」の逆数であること、②構成要件3F1は、「該裏打ち
10 材料に沿って選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸
を選択的に保持する」ことを発明特定事項としているのであって、単に「一
連の糸の中の糸を選択的に保持する」ことのみを発明特定事項としているの
ではないこと、③構成要件3F2’においても「前記選択されたステッチ場
所において、前記提示された一連の糸」が発明特定事項とされていることを
15 踏まえると、訂正発明3と乙4発明とは、少なくとも以下の点において相違
する。
【相違点3-2】
訂正発明3は、構成要件3F1において、糸供給機構が「該裏打ち材料
に沿って選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を
20 選択的に保持するように該針への該糸の供給を制御」するものであるのに
対し、
乙4発明は、糸送りユニット50が「タフト作製機を通過する基材に所
望のパターンが形成されるように個々の針13への該糸の供給を独立に制
御」するものの、選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の
25 中の糸を選択的に保持するように糸送りユニット50を制御するものでは
ない点
【相違点3-3’】
訂正発明3は、構成要件3F2’において、効果的ステッチレート毎に
ステッチするよう裏打ち供給ロールを制御することで、所望の織物ステッ
チレートの逆数の「選択されたステッチ場所」に一連の糸を提示(ステッ
5 チ)するものであるの対し、
乙4発明は、「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするた
めに要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・デ
ータにしたがって基材の供給を制御」し、バッキング材料の供給速度を変
更し得る機能を有するものの、所望の織物ステッチレート毎にステッチす
10 るものであるため、所望の織物ステッチレートの逆数の「選択されたステ
ッチ場所」に一連の糸を提示(ステッチ)するものではない点
⑶ 相違点の容易想到性
ア 訂正発明3のタフティングマシンは、相違点3-3’にかかる構成(裏打
ち供給ロールの制御)により、効果的ステッチレート毎にステッチを行うこ
15 とで、所望の織物ステッチレートの逆数となる「選択されたステッチ場所」
に一連の糸を提示(ステッチ)し、相違点3-2にかかる構成(糸供給機構
の制御)により、各選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の
中から選択的に糸を保持することで、完成したカーペット模様の表面が、所
望の織物ステッチレートの外観になるという作用効果を奏するものである。
20 乙4発明のタフト作製機に、上記のような技術的意義がある裏打ち供給ロ
ールの制御(構成要件3F2’)及び糸供給機構の制御(構成要件3F1)
を付加することは、単なる最適材料の選択・設計変更などの設計的事項では
ないし、単なる寄せ集めでもない。
イ 前記⑴ウのとおり、乙4公報には、前記のような技術的意義のある裏打ち
25 供給ロールの制御(構成要件3F2’)及び糸供給機構の制御(構成要件3
F1)の開示はなく、これらの事項や、所望の織物ステッチレートに糸の数
を乗じた効果的ステッチレート毎にステッチするタフティングマシンを開示
した先行文献も見当たらない。
ウ 構成要件3F2’に係る相違点3-3’が容易想到である旨の被告の主張
は、ニードルシフトとハイロー制御を組み合わせたタフティングマシンにお
5 いて、引き下げられるタフトを考慮してバッキング材料の給送速度を遅くし、
密なカーペットを作成することが周知技術であったことを前提としている
(原判決別紙「無効主張(本件発明3・新規性欠如)」・被告の主張欄)。
しかし、先行技術文献である「Carpet Manufacture」と題する文献(20
02年作成、乙2)及びカーペット辞典(平成8年11月発行、乙14)に
10 よっても、ニードルシフトとハイロー制御を組み合わせたタフティングマシ
ンにおいて、「引き下げられるタフトを考慮して」、バッキング材料の給送
速度を遅くして、密なカーペットを作成することが周知技術であったとは認
められない。
エ 乙4発明では、糸送りユニットの制御、すなわち従来技術であるニードル
15 シフトとハイロー制御によって、乙4公報の「所望のカーペット・パターン」
(乙4公報【0012】、【0020】、【0048】)等が一応実現され
ているのであるから、訂正発明3の裏打ち供給ロールの制御(構成要件3F
2’)及び糸供給機構の制御(構成要件3F1)を導入する動機は存在しな
い。
20 また、乙4公報の「所望のカーペット・パターン」、「所望されるカーペ
ット・パターン」、「所望またはプログラムされたカーペット・パターン」
といった単なる一般的な記載から、所望の織物ステッチレートに異なる糸の
数を乗じた効果的ステッチレート毎にステッチするよう基材送りロールを制
御する技術的思想を直ちに導けないことは、明らかである。
25 3 乙4発明に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点2-4)について
(被告の主張)
原判決の認定に誤りはない。
乙4発明の内容、訂正発明3と共通する本件発明1の技術的意義に係る原告
の主張は、訂正発明3に係る原告の主張と同旨であり、前記2(被告の主張)
のとおり、いずれも理由がない。
5 (原告の主張)
以下の理由から、原判決が認定する本件発明1と乙4発明の相違点及び各相
違点に係る容易想到性の判断は、いずれも誤りである。
⑴ 構成要件1G2との関係においても、乙4発明のタフト作製機がバッキン
グ材料の供給速度を変更し得る機能を有することのみを根拠に、乙4発明が
10 タフティングされた物品の外観が所望の織物ステッチレートとなるように、
模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くなるようにバッ
キング材料の供給速度を制御することを含むとはいえない。
⑵ また、各模様ステップ(訂正発明3の「ステッチ場所」に相当)について
選択されたヤーンを引き下げるかまたは該バッキング材料の外に引き出す
15 (構成要件1G1)ためには、バッキング給送ロールによる制御(構成要件
1G2)が前提として必要となるから、乙4発明がこの制御を行うものでな
い以上、構成要件1G1のヤーン給送メカニズムの制御も行っていない。
⑶ さらに、構成要件1G1のヤーン給送メカニズムの制御及び構成要件1G
2のバッキング給送ロールの制御は、それぞれ本件発明3の構成要件3F1
20 及び3F2と同様の技術的意義があるから、①乙4発明に構成要件1G1及
び構成要件1G2の制御を付加することが単なる最適材料の選択・設計変更
などの設計的事項ではなく、単なる寄せ集めでもなく、②当該付加を行う動
機付けが存在しないことも、訂正発明3と同様である。
⑷ 構成要件1G3(規定されたスティッチ速度がゲージに対し一定数となる
25 ように設定できること)との対比における相違点1-4については、構成要
件1G2において「規定されたスティッチ速度」は「有効スティッチ速度」
と関連付けられており、乙4発明がバッキング材料の給送速度を変更し得る
としても、乙4発明の構成から、「有効スティッチ速度」と関連付けられた
「規定されたスティッチ速度」をゲージに従って決定する構成要件1G3に
至ることは、容易とはいえない。
5 4 乙4発明に基づく本件発明2の進歩性欠如の有無(争点2-5)について
(被告の主張)
原判決の認定に誤りはない。
乙4発明の内容、訂正発明3と共通する本件発明2の技術的意義に係る原告
の主張は、訂正発明3に係る被告の主張と同旨であり、前記2(被告の主張)
10 のとおり、いずれも理由がない。
(原告の主張)
⑴ 構成要件2G、2Hとの関係においても、乙4発明のタフト作製機がバッ
キング材料の供給速度を変更し得る機能を有することのみを根拠に、乙4発
明が、タフティングされた物品の外観が「所望のスティッチ速度」となるよ
15 うに、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くなるよう
にバッキング材料の供給速度を制御することを含むとはいえない。
乙4公報は、所望のスティッチ速度を取り、異なる色があることを確認し
つつ、所望のスティッチ速度ではなく、所望のスティッチ速度に色の数を乗
じた「有効処理スティッチ速度」でバッキング材料を供給することを教示も
20 示唆もしておらず、各ステッチ場所において一つのヤーンのみを提示するこ
とを教示している。
⑵ また、各ステッチ場所について選択されたヤーンを引き下げるかまたは該
バッキング材料の外に引き出す(構成要件2G)ためには、バッキング給送
ロールによる制御が前提として必要となるから、乙4発明がこの制御を行う
25 ものでない以上、構成要件2Gのヤーン給送メカニズムの制御も行っていな
い。
⑶ さらに、構成要件2Gのヤーン給送の制御及びバッキング材料給送の制御
は、本件発明3の構成要件3F1及び3F2と同様の技術的意義があるから、
乙4発明に構成要件2Gの構成を付加することが単なる最適材料の選択・設
計変更などの設計的事項ではなく、単なる寄せ集めでもなく、当該付加を行
5 う動機付けも存在しないことも、前記と同様である。
⑷ 構成要件2Hの「高められた有効処理スティッチ速度は、該模様を形成す
る異なる色のヤーンの数を乗じた」ものになることについて、乙4公報を初
めとする先行文献には記載がなく、この点においても進歩性を有する。
第4 当裁判所の判断
10 1 当裁判所も、本件各発明に係る特許は、いずれも乙4発明に基づく進歩性欠
如の無効理由を有するものと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
2 乙4発明に基づく訂正発明3の進歩性欠如の有無(争点2-3)について
⑴ 訂正発明3の技術的意義について
15 ア 原告は、訂正発明3は、特にニードルシフトの制御(構成要件3D’)、
効果的ステッチレート毎にステッチする裏打ち供給ロールの制御(構成要
件3F2’)及び選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の
中の糸を選択的に保持する制御(構成要件3F1)により、完成したカー
ペット模様が所望の織物ステッチレートの外観になるという作用効果を奏
20 し、従来のタフティングマシンの技術的課題を解決するものであると主張
する。
イ まず、前提として、訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」、「効
果的ステッチレート」、「選択されたステッチ場所」の各用語の意義につ
いて検討する。
25 (ア) 本件明細書3の記載及び弁論の全趣旨によれば、訂正発明3の「所望
の織物ステッチレート」(構成要件3F2’)とは、ユーザが所望する
模様として見える完成品の外観上の単位長さ当たりのステッチ数(タフ
トの密度)を指す用語として用いられているものと認められる。なお、
本件明細書3には、1インチ当たりの保持される所望のステッチの外観
の例示として、「1インチ当たり8~10ステッチの外観」が示されて
5 いるが(本件明細書3【0013】)、具体的にどの程度の密度を指す
のかを特定する記載はない。
(イ) 「効果的ステッチレート」(構成要件3F2’)については、構成要
件3F2’の「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高
密度な効果的ステッチレート」との文言や、本件明細書3【0013】
10 の「従来のタフティングプロセスよりも増大した、もしくは高密度な、
効果的または有効プロセスステッチレート」との記載、本件明細書3
【0027】の「本発明では、ステッチ分布制御システムによって実行
される有効または効果的プロセスステッチレートは、そのような標準的
な従来の所望の織物ステッチレートより実質的に高くなる。本発明によ
15 るステッチ分布制御システムによって、この高められた有効または効果
的プロセスステッチレートは、概して、完成タフト状物品に対する所望
の織物ステッチレートまたは密度にほぼ同等になり、すなわち、物品は、
その表側に1インチ当たり8、10、12ステッチ等の外観を有するこ
とになり、これには、パターンの中で走らせている異なる色の数が乗じ
20 られる。…例えば、パターンの中に3つの色が存在する場合、ステッチ
分布制御システムによって計算および実行される有効または効果的プロ
セスステッチレートは、所望のステッチレート(1インチ当たり10ス
テッチ)に色の数(3)を乗じることによって決定され、1インチ当た
りほぼ30ステッチの有効または効果的プロセスステッチとな(る)」
25 との記載と併せると、「効果的ステッチレート」とは、ハイロー制御に
より隠したい色の糸を引き下げることを前提として(構成要件3F1)、
完成品の外観が「所望の織物ステッチレート」となるように実際に打ち
込まれる単位長さ当たりのステッチ数(タフトの密度)(その後で隠し
たい色の糸を引き下げることとなるため、「所望の織物ステッチレート」
よりも単位長さ当たりのステッチ数が多い高密度なものとなる。)を指
5 す用語として用いられているものと認められる。
この「効果的ステッチレート」は、「裏打ち供給ロール」の制御によ
り実現されるものである(構成要件3F2’、本件明細書3【000
8】、【0031】、【0055】)。
なお、原告は、「効果的ステッチレート」は「所望の織物ステッチレ
10 ート」に糸の種類の数を乗じたものであると主張するが、前記のとおり、
本件明細書3【0027】にはこれに沿った記載はあるものの、構成要
件3F2’の文言に照らすと、そのように厳密に特定されたものとまで
は認められない。
(ウ) 「選択されたステッチ場所」については、構成要件3F1、3F2’
15 の文言に照らすと、「一連のパターンステップに従って、該裏打ち材料
に沿って選択」された、ステッチを行う場所であって、かつ、「選択的
に保持」される(すなわち、残したい色の糸は残され、隠したい色の糸
は引き下げられる)「一連の糸」が「提示」される場所であること、こ
の「ステッチ」は「効果的ステッチレート毎」に行われるものであるこ
20 とを理解することができるが、各構成要件の文言や本件明細書3の記載
(【0013】、【0024】)をみても、これらの事項以上に、「選
択されたステッチ場所」を限定する文言はない。したがって、訂正発明
3における「選択されたステッチ場所」とは、効果的ステッチレートに
より実際のステッチが行われた場所であって、かつ、ステッチされた糸
25 が分別のため提示されるところを指す用語として用いられているものと
認められる。
ウ 以上を前提に、訂正発明3の技術的意義について検討する。
原告は、訂正発明3は、完成したカーペット模様が所望の織物ステッチ
レートの外観になるという作用効果を奏し、従来のタフティングマシンの
技術的課題を解決するものと主張する。
5 この点、原告が当審における追加的・補足的主張において例として挙げ
る【図D】(前記第3の2(原告の主張)⑴以下参照。以下の【図A】、
【図B】及び【図C】も当該原告の主張部分に掲記されたものを指す。)
の外観上のステッチレート(1インチ当たり10ステッチ:10/1)を
ユーザが所望する場合には、「効果的ステッチレート」を【図C】のよう
10 に「所望の織物ステッチレート」の3倍(1インチ当たり30ステッチ:
30/1)に設定し、一連の3色の糸が提示される「選択されたステッチ
場所」(その一場所当たりの基材のステッチ方向の幅1/10インチ)に
ステッチし、残したい色の糸を残し、隠したい色の糸を引き下げる(選択
的に保持する)ことにより、「所望の織物ステッチレート」の外観による
15 完成品が得られると認められる。
もっとも、前記イ(ア)のとおり、「所望の織物ステッチレート」とはユ
ーザが所望する模様として見える完成品の外観上の単位長さ当たりステッ
チ数(タフトの密度)であり、本件明細書3上、特定の数値に限定されて
おらず、ユーザの主観的な所望により決まる性質のものである。そして、
20 「効果的ステッチレート」は、提示・選択の対象となる糸の数と「所望の
織物ステッチレート」とを踏まえて決まることになる。例えば、糸の種類
が3であり、原告が従来技術によるタフティングの例として挙げる【図B】
の外観をユーザが所望する場合には、「所望の織物ステッチレート」は概
ね10分の9インチ当たり3ステッチ、隠されることになる糸を含めて実
25 際に打ち込まれる「効果的ステッチレート」は【図A】のとおり1インチ
当たり10ステッチとなる。そして、この場合の「選択されたステッチ場
所」、すなわち効果的ストレッチレートによりステッチされる「一連の糸」
が提示される場所は、隠したい色の糸のステッチ場所を含む3/10イン
チの幅となる。
なお、ニードルシフトの制御(構成要件3D’)は、乙4発明にも含ま
5 れる従来技術である(乙4、弁論の全趣旨)。
そうすると、この場合、原告の主張する「従来技術」においても、ニー
ドルシフトの制御(構成要件3D’)に加え、「効果的ステッチレート」
毎にステッチする裏打ち供給ロールの制御(構成要件3F2’)及び選択
されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持
10 する制御(構成要件3F1)により、完成したカーペット模様が「所望の
織物ステッチレート」の外観になるという作用効果を奏していることにな
る。
【図A】
15 【図B】
エ 原告は、さらに、「選択されたステッチ場所」は「所望の織物ステッチ
レート」の逆数であり、「所望の織物ステッチレート」から一義的に定ま
る長さであるとも主張する。
5 しかし、前記の「所望の織物ステッチレート」及び「選択されたステッ
チ場所」の意義に照らすと、「選択されたステッチ場所」とは、「効果的
ステッチレート」に従ってステッチされた一連の糸が選択のため提示され
る場所である。そして、「効果的ステッチレート」は選択の対象となる糸
の種類の数と「所望の織物ステッチレート」を踏まえて決められるのであ
10 り、例えば、単位となる長さ(Xインチ)当たりの「所望の織物ステッチ
レート」が外観上Xインチ当たりYステッチ(Y/X)であるとき、糸の種
類の数がPだとして、「効果的ステッチレート」はXインチ当たりPYス
テッチ(PY/X)である。他方、この場合の「選択されたステッチ場所」
は、隠す対象となる糸も含めたP本分のステッチされた一連の糸が分別の
15 ため提示される場所の単位を指すから、「効果的ステッチレート」におけ
る1ステッチ当たりの幅(X/PY)に糸の種類の数(P)を乗ずると、
X/Yとなる。すなわち、「選択されたステッチ場所」の幅(X/Y)が、
糸の種類の数にかかわらず、「所望の織物ステッチレート」の単位長さ当
たりのステッチ数(Y/X)の逆数と一致することになるのは、当然であ
り、特に技術的意義があるということはできない。
したがって、訂正発明3の「選択されたステッチ場所」は、前記イ(ウ)
のとおり、「効果的ステッチレート毎にステッチを行った結果、(ハイロ
5 ー制御により)選択的に保持される一連の糸が提示される場所」を意味し、
これ以上の発明特定事項を含むものではない。
オ 以上のとおり、訂正発明3は、ニードルシフト及びハイロー制御を行う
タフティング機において、ユーザの所望する完成品の「所望の織物ステッ
チレート」、すなわち求められる完成品の単位長さ当たりのステッチ数
10 (タフトの密度)に応じて、ハイロー制御により一連の糸が選択的に保持
され、残りの糸は引き抜き、又は隠されることを考慮した「効果的ステッ
チレート」を設定し、裏打ち供給ロールを制御することによって「効果的
ステッチレート」によるステッチを行うことにより、完成したカーペット
模様が「所望の織物ステッチレート」の外観になるという作用効果を奏す
15 るものと認められる。
⑵ 乙4発明について
ア 乙4公報の記載は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」
の第4の3の⑴(原判決36頁11行目~43頁10行目直前まで)記載
のとおりであるから、これを引用する。
20 (原判決の補正)
原判決39頁4行目末尾(乙4公報【0018】を記載した段落の末尾)
に改行の上、次のとおり加える。
「「…さらにタフト作製機コントローラは、デザイン・センター40から直
接またはネットワーク接続を介して入力を受け取ることができる。デザイ
25 ン・センター40(図2)は、分離または独立型デザイン・センターまた
はワークステーション・コンピュータ41を含むことができ、ワークステ
ーション・コンピュータ41は、モニタ42およびユーザ入力43、たと
えば、キーボード、描画タブレット、マウスなどを有し、それらを介して
作業者は、当技術分野で知られているように、様々なタフト付きカーペッ
トのパターンをデザインおよび作製することができる。 」(【001
5 9】)」
イ 乙4公報の記載に照らすと、訂正発明3に対応して、以下の乙4発明が
記載されていると認められる(下線部は、本件訂正により付加された構成
に対応する部分である。)。
3a 複数の糸を送る糸送りユニットを備え、所望のカーペット・パター
10 ンを持つカーペット形成するためのタフト作製機であって、該タフト作
製機は、
3b 少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復
針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針
棒と、
15 3c 該タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して
基材14(=裏打ち材料)を供給するための基材送りロール18と、
3d 一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50と、
3d’該少なくとも1つの往復針棒17を横方向でシフト可能にするため
の往復駆動する主駆動シャフトと、
20 3e 一連のルーパ23であって、該一連のルーパ23は、該針が基材の
中において糸のループまたはタフトを形成するように基材14の中を上
昇、下降させられるとき、該針のつくるループと係合する位置において、
タフト作製領域の下に載置される、一連のルーパ23と、
3f 制御システムであって、
25 3f1 該制御システムは、ユーザの所望するカーペット・パターンをタ
フトするために要求される糸送りレートを計算したパターン・データに
したがって、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成され
るように個々の針13への該糸の供給を独立に制御するために、該糸送
りユニット50を制御し、かつ、
3f2’ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求
5 される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データに
したがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御
し、所望のパターンに要求されるステッチ・レート毎にステッチを行い、
タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成されることによっ
て、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制御システム
10 とを備える、
3g タフト作製機。
⑶ 訂正発明3と乙4発明の対比
ア 訂正発明3と乙4発明とを対比すると、次の点において相違し、その余
は一致するものと認められる(下線部は、本件訂正により付加された構成
15 に対応する部分である。)。
なお、訂正前の本件発明3と同様に、構成要件3Aにおいて、訂正発明
3は『複数の異なる糸』とされているのに対し、乙4発明は『複数の糸』
が使用されているが、「複数の糸」であれば「異なる糸」を含むことは明
らかであり、弁論の全趣旨も考慮し、相違点としては認定しない。
20 【相違点3-2】
構成要件3F1において、訂正発明3は「一連の糸の中の糸を選択的
に保持する」とされているのに対し、乙4発明はこのような構成が明示
されていない点
【相違点3-3】
25 構成要件3F2’において、訂正発明3は「該パターン化タフト状物
品を形成するように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステ
ッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで
該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏打ち供給ロールを制御し、
前記効果的ステッチレート毎にステッチを行い、前記選択されたステッ
チ場所において、前記提示された一連の糸の中の糸を選択的に保持する
5 ことによって、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステ
ッチレートの外観を有する、ステッチ分布制御システムとを備える」と
されているのに対し、
乙4発明は「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするた
めに要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・
10 データにしたがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール1
8を制御し、所望のパターンに要求されるステッチ・レート毎にステッ
チを行い、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成される
ことによって、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制
御システムとを備える」点
15 イ これに対し、原告は、①相違点3-2(構成要件3F1)については、
乙4発明は「選択されたステッチ場所において提示された一連の糸の中の
糸を選択的に保持するように糸送りユニット50を制御するものではない
点」が相違点となり、②相違点3-3(構成要件3F2’)については、
乙4発明は「所望の織物ステッチレート毎にステッチするものであるため、
20 所望の織物ステッチレートの逆数の『選択されたステッチ場所』に一連の
糸を提示(ステッチ)するものではない点」が相違点になると主張する。
しかし、①の点については、前記⑴イのとおり、構成要件3F1におい
て、「選択されたステッチ場所」は、実際にステッチが行われた場所であ
って、かつ、当該場所においてステッチされた糸のうちいずれの色の糸を
25 残すのかを分別する場所という程度の意味を有するにすぎない。乙4発明
も、後記⑷のとおり、現にステッチが行われた場所において、プログラム
された命令に従ってタフトを形成し、高くするタフトと隠すタフトとを選
別処理することにより、プログラムされたパターンを形成することを前提
とするもの(乙4公報【0004】【0008】)であるから、構成要件
3F1の「選択されたステッチ場所において提示された」との構成は、乙
5 4発明の構成3f1に含まれていると解され、この点は相違点とならない。
また、②の点については、乙4公報によっても、乙4発明は「所望のパ
ターンに要求されるステッチ・レート毎」にステッチを行うと記載されて
いるだけで、それ以上の特定はないから、この「所望のパターンに要求さ
れるステッチレート」が訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」と同
10 義であるとは直ちに認めることはできない。したがって、原告の主張は、
その前提を欠くものである。また、「選択的されたステッチ場所」が「所
望の織物ステッチレート」の逆数であること自体に特段の技術的意義が認
められないことは、前記⑴エのとおりである。
したがって、相違点の認定に係る原告の主張は、いずれも採用すること
15 ができない。
⑷ 相違点3-2の容易想到性について
①構成要件3F1の「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」とは、所望
の箇所に模様に表したい色のヤーンを高いタフトで残し、残りのヤーンを引
き下げること、すなわちハイロー制御を意味すること、②本件優先日3以前
20 において、タフティングマシンにハイロー制御が用いられることは技術常識
であり、乙4公報【0004】にも従来技術として記載されていること、③
乙4公報の【0008】、【0020】等の記載は、前記技術常識と併せる
と、乙4発明がハイロー制御を備えることを開示しているものと認められる
こと、④したがって、相違点3-2は実質的な相違点といえないことは、原
25 判決「事実及び理由」の第4の3⑷イ(44頁24行目~46頁2行目)と
同様であるから、これを引用する。
⑸ 相違点3-3の容易想到性について
ア 乙4発明の基材送りロール18の制御について
(ア) 乙4発明の構成3f2’の「所望のパターンに要求されるステッチ・
レート毎にステッチを行い、タフト作成機を通過する基材に所望のパタ
5 ーンが形成されることによって、ユーザの所望するカーペット・パター
ンを生成する」制御システムの意味について検討する。
(イ) 乙4公報には、基材の送りに関し、以下の記載があり(以下、この項
において、【 】内の番号は、同公報の段落番号等を指す。下線は付加
したもの。)、構成3f2’の「ユーザの所望するカーペット・パター
10 ンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチレートを計
算したパターン・データにしたがって基材の供給を制御するために、該
基材送りロール18を制御」する構成が開示されている(原告は、乙4
公報の【図8】から、乙4発明において、基材の送り(供給速度)はカ
ーペットパターン(模様)とは関係なく確立するパラメータであると主
15 張するが、下記【0054】の記載に照らし、原告の主張は採用するこ
とができない。)。
【0017】
「…タフト作製機11は…制御ユニット26を含む。制御ユニット26
は、タフト作製機の様々な動作要素、たとえば、針棒の往復、基材の
20 送り、針棒のシフト、ベッド板の位置などをモニタおよび制御する。」
【0018】
「タフト作製機コントローラ26は、一般的に、タフト作製機の様々な
動作または駆動要素からのフィードバックを制御およびモニタし、た
とえば、…基材送りロールの駆動モータ37を制御して基材のステッ
25 チ・レートまたは送りレートを制御するため基材送りエンコーダ36
からのフィードバックをモニタする。」
【0020】
「作業者は、デザイン・センターのコンピュータ41で、パターン・デ
ータ・ファイル、および可能性として、所望のカーペット・パターン
のグラフィック表現を作成することができる。コンピュータ41は、
5 そのようなカーペット・パターンをタフト作製機でタフトにするため
に要求される様々なパラメータを計算する。そのような計算には、糸
送りレート、パイル高、基材の送りまたはステッチ・レート、および
パターンをタフトにするために要求される他のパラメータの計算が含
まれる。」
10 【0054】
「代替的に、パターンまたはパターン・データ・ファイルは、ステッ
プ207で示されるようにデザイン・センターで作成され、タフト
作製機、またはタフト作製機のシステム・コントローラへダウンロ
ードまたは入力される。…もし作業者またはデザイナが、図209
15 で示されるように、新しいパターンのデザインを望むならば、デザ
イナは所望のパターン要件またはエフェクトを入力する。入力は、
たとえば、デザイン・センターのモニタで表示される所望のパター
ンを描画することによって行われるか、および/または、パイルの
高さ、ステッチ・レート、シフトまたはステップ・シーケンスなど
20 を含む様々なカーペット・パターン・パラメータをプログラムする
ことによって行われる。」
(ウ) そして、以下の先行技術文献によれば、タフト製品の基材の送り方向
の密度は、基材の給送速度が遅いほどステッチの長さは短く、製品の密
度は高くなることから、基材の給送速度を調整することによってタフト
25 製品の密度の調整が可能であることは、本件優先日3以前の技術常識で
あったと認められる(この点は、原告も争っていない。)。
<Carpet Manufacture>(2002年発行、乙2)
「ステッチの長さはバッキング布の給送速度によって制御され、マシ
ンの回転数に対して布の速度が遅いほど、ステッチの長さは短くな
り、カーペットは重くなる。」
5 <WOOL TUFTED CARPET MANUAL>(1974年9月発行、乙11)
「インチ当りのスティッチ数に基ずくカーペットの品質は、第一基布が
ニードリング領域を通過する際の基布の引張速度によってコントロー
ルされる。ニードリング領域を通過する第一基布の速度が速ければ、
単位長当りのスティッチ数は少なくなる。」
10 <カーペットハンドブック>(平成3年12月25日発行、乙13)
「ステッチは、織物でいうよこ密度を表わす用語で、タフティング機の
基布送り速度で決定される。その速度を変えることによって任意のス
テッチを得ることができる。ステッチは通常カーペットの長さ方向1
インチ間のステッチ数、または10㎝間のステッチ数で表わす。」
15 (エ) そして、前記⑷のとおり、タフティング機において、ハイロー制御す
なわち所望の箇所に模様に表したい色の糸を高いタフトで残し、残りの
糸を引き下げる制御を行うことは技術常識であり、乙4発明はこのよう
なハイロー制御を備えるものである。
そうすると、乙4発明において、実際にタフトを打ち込むステッチレ
20 ートを「所望の織物ステッチレート」と同じものとした場合、その後に
ハイロー制御を行い、隠すべき糸を引き下げた結果が、完成品のステッ
チレートが「所望の織物ステッチレート」の外観とならないことは自明
であるから、当業者が当然に認識し得たことと認められる。
(オ) 以上の乙4公報の記載と技術常識を考慮すると、乙4発明の構成3f
25 2’の「所望のパターンに要求されるステッチ・レート毎にステッチを
行い、タフト作成機を通過する基材に所望のパターンが形成されること
によって、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する」という
制御内容には、ニードルシフトとハイロー制御を組み合わせたタフト作
製機において、引き下げられるタフトを考慮して基材の給送速度を調整、
具体的には速度を遅くして、実際にタフトを打ち込むステッチレートを
5 「所望の織物ステッチレート」よりも高くし、完成品のステッチレート
の外観を「所望の織物ステッチレート」とすることが含まれていると解
されるのであり、仮にそうでないとしても、乙4公報の記載に技術常識
を適用することにより、この点については当業者が容易に想到し得たと
認められる。
10 (カ) 原告は、前記(ウ)が周知技術であり、ハイロー制御が技術常識である
ことは認めつつも、引き下げられるタフトを考慮して基材の給送速度を
調整することは周知技術ではないと主張する。しかし、この点が周知技
術であることを記載した先行技術文献がなくとも、引き下げられるタフ
トの存在を前提に、タフトの密度を調整し、「所望のパターン」を形成
15 することは当業者が当然に認識し得たもの又は通常の創造能力を発揮す
ることにより容易に想到することができたものと認められる。
(キ) 原告は、さらに、乙4発明ほかの従来技術のタフティングマシンは、
ステッチの数とタフト製品のパイル糸の密度が一致することが前提であ
ったので、実行されるステッチレートは「所望の織物ステッチレート」
20 であったと主張し、各証拠(甲33、44、52、53、57、58、
乙14・4枚目)の記載を指摘する。
しかし、原告が指摘する特開平3-294561号公報(甲33、平
成2年4月13日出願)、特開昭61-275454号公報(甲44、
昭和60年5月27日出願)の記載は、いずれも、一連の針で構成され
25 る針棒(ニードルバー)によるニードルシフトとハイロー制御を組み合
わせたタフティング機に関するものではないし、これらの文献において
ステッチの数とタフト製品のパイル糸の密度が一致することを前提とし
た記載がされていたとしても、ステッチの数とタフト製品のパイル糸の
密度が必ず一致しなければならない旨記載されているわけではないから、
乙4発明のタフティングマシンにおいて、ステッチの数とタフト製品の
5 パイル糸の密度が一致することが当然の前提になっていたということは
できない。また、これらの文献の記載は、その内容に照らし、引き下げ
られるタフトの存在がある場合にユーザの所望するカーペット・パター
ンの外観(以下「所望の外観」という。)を生成するため、ステッチレ
ートを高くすることを阻害する要因になるとまでは認められない。
10 原告が指摘する米国特許第8347800号明細書(甲52、201
1年7月26日出願)、米国再発行特許発明第49534号明細書(甲
53、2021年4月5日出願)、米国特許第10167585号明細
書(甲57、2017年5月17日出願)、米国特許第1150588
6号明細書(甲58、2019年1月13日国際出願)は、いずれも本
15 件優先日3(平成21(2009)年2月23日)より後に出願された
特許に係る公報である上、これらの公報における原告主張の従来技術と
その課題に係る記載は、いずれも、米国特許第8141505号明細書
(甲54)、又はその公開特許公報である米国特許出願公開第2009
/0205547号明細書(甲55)を引用し、又は言及するものであ
20 る。
そして、この米国特許第8141505号明細書(甲54)は、その
米国特許出願(Appl.No.:12/122,004)が本件特許
1及び本件特許2の優先権主張の基礎出願とされており(甲2の1・
2)、本件各発明に係るタフティング機が記載されているものであるか
25 ら(弁論の全趣旨)、前記の各米国特許公報の記載は、実質的には、本
件各発明を前提としたものであり、本件特許1及び本件特許2の各明細
書、さらにはこれらと内容が共通する本件明細書3に記載された以上の
内容を開示するものとはいい難い。結局、これらの文献の記載をもって
しても、乙4発明のタフティングマシンにおいて、ステッチの数とタフ
ト製品のパイル糸の密度が一致することが前提となっており、実行され
5 るステッチレートが「所望の織物ステッチレート」であったことを認め
るに足りない。
なお、これらの原告が指摘する各公報の記載を考慮しても、前記(ウ)、
(エ)の技術常識の認定は左右されるものではないし、乙4発明にこれら
の技術常識を適用する阻害要因となる事情があるとも認められない。
10 その他、原告が指摘するカーペット辞典(乙14)の記載は、「ステ
ッチ」の項の説明において「ステッチ数とはタフト製品のたて方向のパ
イル糸の密度である。」と説明するものにすぎない。
したがって、原告の主張は、前記(オ)の認定及び判断を左右するもの
ではない。
15 イ 訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」、「効果的ステッチレート」
及び「選択されたステッチ場所」に係る構成について
前記アのとおり、ニードルシフトとハイロー制御を組み合わせたタフテ
ィング機において、引き下げられるタフトを考慮して基材の給送速度を調
整して、実際にタフトを打ち込むステッチレートを高くし、所望の外観を
20 生成することは、乙4発明の構成3f2’に含まれているか、少なくとも、
乙4発明と前記(ウ)、(エ)の技術常識から、当業者が容易に想到し得たこと
である。
しかるところ、前記⑴イによれば、訂正発明3における「所望の織物ス
テッチレート」とは、ユーザが所望する模様として見える完成品の外観上
25 の単位長さ当たりのステッチ数すなわち「所望の外観」のことである。ま
た、訂正発明3における「効果的ステッチレート」とは、引き下げられる
タフトを考慮した上で「所望の外観」を生成するために実際に打ち込まれ
るタフトのステッチレートのことである。さらに、訂正発明3における
「選択されたステッチ場所」とは、実際にステッチが行われた場所であっ
て、「(ハイロー制御により)選択的に保持される一連の糸が提示される
5 場所」を意味するのであり、この意味における「選択されたステッチ場所」
は、乙4発明の構成要件3f1に含まれていると解されることは、前記3
イのとおりである。そうすると、訂正発明3における「所望の織物ステッ
チレート」、「効果的ステッチレート」及び「選択されたステッチ場所」
に係る構成は、表現する用語が異なるだけで、その内容自体は乙4発明に
10 含まれているか、少なくとも当業者が容易に想到し得たものというほかは
ない。
ウ 原告は、前記イの認定判断を争う旨主張するが、以下のとおり、いずれ
も採用することができない。
(ア) 原告は、乙4発明に、訂正発明3の裏打ち供給ロールの制御(構成要
15 件3F2’)及び糸供給機構の制御(構成要件3F1)を付加すること
は、単なる最適材料の選択・設計変更などの設計的事項や周知技術の寄
せ集めではないと主張するが、前記の認定判断は、乙4発明が実質的に
は訂正発明3を含むものであり、仮にそうでなくても、乙4発明に技術
常識を適用することにより訂正発明3に容易に想到することができたこ
20 とを理由とするものであるから、原告の主張は理由がない。
(イ) 原告は、乙4公報には訂正発明3の裏打ち供給ロールの制御(構成要
件3F2’)及び糸供給機構の制御(構成要件3F1)の開示はなく、
これらの事項や「効果的ステッチレート」を開示した先行技術文献がな
いと主張する。
25 しかし、裏打ち供給ロールの制御により、ステッチレート及びタフト
の密度を調整することができることは本件優先日3以前の技術常識であ
ったことは、前記ア(ウ)のとおりである。また、訂正発明3における
「効果的ステッチレート」とは、引き下げられるタフトを考慮した上で
所望の外観を生成するために実際に打ち込まれるタフトのステッチレー
トを意味するところ、前記技術常識を踏まえ、所望の外観を生成するた
5 めに、実際のステッチレート(効果的ステッチレート)を外観上のステ
ッチレートよりも高く設定することは、「効果的ステッチレート」とい
う表現を用いた先行文献がなかったとしても、当業者において容易に想
到することができたと考えられる。
(ウ) 原告は、乙4発明では糸送りユニットの制御によって「所望のカーペ
10 ット・パターン」等が一応実現されているから、訂正発明3の裏打ち供
給ロールの制御(構成要件3F2’)及び糸供給機構の制御(構成要件
3F1)を組み合わせる動機がないと主張する。
しかし、もともと乙4発明は、糸送りユニットの制御だけを行うもの
ではなく、乙4発明に係るタフト作製機の制御ユニットは、基材の送り
15 レート又はステッチレートの制御を含むタフト作製機の様々な動作要素
を制御することとされている(乙4公報【0017】【0018】【0
020】)。そうすると、乙4発明は、所望の外観を生成するため、基
材のステッチレートの制御も行うという意味において訂正発明3を含む
ものというべきであり、仮にそうでないとしても、前記のとおり、ハイ
20 ロー制御を行う乙4発明において、実際にタフトを打ち込むステッチレ
ートを「所望の織物ステッチレート」とした場合に、完成品が「所望の
織物ステッチレート」の外観とならないことは、当業者が当然に認識し
得たことであるから、技術常識に照らし、基材の給送速度を調整して実
際にタフトを打ち込むステッチレートを「所望の織物ステッチレート」
25 よりも高くする動機付けはあると認められる。
(エ) 原告は、その他るる主張するが、いずれも、前記イの認定判断を左右
するに足りるものではない。
エ 小括
以上のとおり、相違点3-3に係る訂正発明3の構成は、乙4発明に実
質的に含まれているか、少なくとも技術常識に照らし当業者が容易に想到
5 し得たものと認められる。
⑹ 訂正発明3の進歩性についての結論
以上のとおり、訂正発明3は、少なくとも、乙4発明に本件優先日3当時
の技術常識を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができた
ものであるから、本件特許3は、進歩性欠如(特許法29条2項)の無効理
10 由を有する。
3 乙4発明に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点2-4)について
⑴ 本件発明1が、乙4発明に本件優先日3当時の技術常識を適用することに
より、当業者が容易に発明をすることができたものであることは、原判決
「事実及び理由」第4の5(48頁20行目~51頁25行目)に記載のと
15 おりであるから、これを引用する。
⑵ 原告の補足的主張に対する判断
ア 原告は、訂正発明3の進歩性に係る主張を引用して、①乙4発明のタフ
ト作製機において、基材の送り(基材の供給速度)はカーペット・パター
ン(模様)とは関係なく確立するパラメータとされており、また、実際に
20 打ち込まれる単位長さ当たりのタフトの数はユーザの所望するカーペット
パターンのステッチレートとされている、②乙4発明は、各模様ステップ
について選択されたヤーンを引き下げるかまたは引き出す(構成要件1G
1)ためのバッキング給送ロールによる制御(構成要件1G2)を行うも
のではない、③乙4発明に、構成要件1G1及び構成要件1G2の制御
25 (それぞれ、本件発明3の構成要件3F1及び3F2と同様の技術的意義
を有する。)を付加することは単なる設計的事項や寄せ集めではなく、当
該付加を行う動機付けも存在しないと主張する。
しかし、これらの原告の主張がいずれも理由がないことは、前記2で認
定判断したとおりである。
なお、本件発明1の「規定されたスティッチ速度」、「有効スティッチ
5 速度」が、それぞれ訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」、「効果
的ステッチレート」と同じ意味であることは、当事者間に争いがない。
イ 原告は、本件発明1の構成要件1G3(規定されたスティッチ速度がゲ
ージに対し一定数となるように設定することができること)の「規定され
たスティッチ速度」は、構成要件1G2において「有効スティッチ速度」
10 と関連付けられているから、乙4発明が基材の給送速度を変更し得るとし
ても、構成要件1G3に係る相違点1-4は容易想到とはいえない旨主張
する。
しかし、構成要件1G2において、「規定されたスティッチ速度」は、
訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」と同様、「該タフティングさ
15 れた物品の模様の外観」を形成するものとして規定されており、「有効ス
ティッチ速度」に基づいて定められるものとは規定されていないから、原
告の主張には理由がない。
4 乙4発明に基づく本件発明2の進歩性欠如の有無(争点2-5)について
⑴ 本件発明2が、乙4発明に本件優先日3当時の技術常識を適用することに
20 より、当業者が容易に発明をすることができたものであることは、原判決
「事実及び理由」第4の6(51頁26行目~54頁24行目)に記載のと
おりであるから、これを引用する。
⑵ 原告の補足的主張に対する判断
ア 原告は、訂正発明3の進歩性に係る前記の各主張を引用して、①乙4発
25 明のタフティング機において、基材の送り(基材の供給速度)はカーペッ
ト・パターン(模様)とは関係なく確立するパラメータとされており、ま
た、実際に打ち込まれる単位長さ当たりのタフトの数はユーザの所望する
カーペットパターンのステッチレートとされている、②乙4発明は、各ス
テッチ場所について選択されたヤーンを引き下げるかまたは引き出す(構
成要件2G)ためのバッキング給送ロールによる制御(構成要件2G)を
5 行うものではない、③乙4発明に構成要件2G及び2Hの制御(それぞれ、
本件発明3の構成要件3F1及び3F2と同様の技術的意義を有する。)
を付加することは単なる設計的事項や寄せ集めではなく、当該付加を行う
動機付けも存在しないと主張する。
しかし、これらの原告の主張がいずれも理由がないことは、前記2で認
10 定判断したとおりである。
なお、本件発明2の「所望のスティッチ速度」、「有効処理スティッチ
速度」が、それぞれ訂正発明3の「所望の織物ステッチレート」、「効果
的ステッチレート」と同じ意味であることは、当事者間に争いがない。
イ 原告は、構成要件2Hの「高められた有効処理スティッチ速度は、(所
15 望のスティッチ速度に)該模様を形成する異なる糸のヤーンの数を乗じた」
ものになることについて、乙4公報や他の先行技術文献には記載がなく、
この点においても進歩性を有すると主張する。
しかし、ハイロー制御を考慮して、訂正発明3の所望の効果的ステッチ
レートに相当する本件発明2の「有効処理スティッチ速度」を、訂正発明
20 3の所望の織物ステッチレートに相当する本件発明2の「所望のスティッ
チ速度」よりも高いものとする際、原告も従来技術として主張する、ニー
ドルシフトとハイロー制御を備えるタフティングマシンの動作(前記の
【図A】、【図B】)を考慮すれば、「有効処理スティッチ速度」を「所
望のスティッチ速度」に異なる糸のヤーンの数を乗じたものとすることは、
25 この点を明示する先行技術文献がなくとも、当業者が容易に想到し得るも
のと認められる。
5 結論
よって、原告の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理
由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 響
裁判官
菊 池 絵 理
裁判官
頼 晋 一

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (3月17日~3月23日)

来週の知財セミナー (3月24日~3月30日)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

知財テラス特許事務所 名古屋事務所

愛知県名古屋市中区平和一丁目15-30 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

佐藤良博特許事務所

埼玉県久喜市久喜東6-2-46 パレ・ドール久喜2-203 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

彩都総合特許事務所 新潟オフィス

新潟県新潟市東区新松崎3-22-15 ラフィネドミールⅡ-102 特許・実用新案 意匠 商標 訴訟