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令和7(行ケ)10004審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年6月25日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ダイレクトマーケティングエージェンシー
被告特許庁長官同指定代理人大島勉
法令 商標権
キーワード 審決20回
拒絶査定不服審判1回
実施1回
ライセンス1回
主文 1 原告の請求を棄却する。15
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は、令和4年12月21日、「ダイレクトマーケティングエージェンシ ー」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について、第 35類及び第42類に属する別紙のとおりの役務を指定役務として商標登録出願25 (以下「本願」という。)をした。

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判決文

令和7年6月25日判決言渡
令和7年(行ケ)第10004号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年4月23日
判 決
原 告 株式会社ダイレクトマーケ
ティングエージェンシー
同訴訟代理人弁護士 廣 田 逸 平
被 告 特 許 庁 長 官
同指定代理人 大 島 勉
阿 曾 裕 樹
主 文
15 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2023-14150号事件について令和6年12月5日にした
20 審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 原告は、令和4年12月21日、「ダイレクトマーケティングエージェンシ
ー」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について、第
25 35類及び第42類に属する別紙のとおりの役務を指定役務として商標登録出願
(以下「本願」という。)をした。
(2) 原告は、令和5年7月11日付けで本願商標が商標法(以下「法」という。)
3条1項3号及び4条1項16号に該当することを理由とする拒絶査定を受けたた
め、同年8月23日、拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は、これを不服2023-14150号事件として審理し、令和6年12
5 月5日、
「本件審判の請求は、成り立たない。 との審決
」 (以下「本件審決」という。)
をして、その謄本は同月18日に原告に送達された。
(3) 原告は、令和7年1月14日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し
た。
2 本件審決の理由の要旨
10 本願商標は、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の文字を標準文字で
表してなるところ、その構成中、「ダイレクトマーケティング」の文字はマーケテ
ィングの一種を表す語であり、「エージェンシー」の文字は「代理店。代理業。」
の意味を有する語であるから、本願商標は、全体として「ダイレクトマーケティン
グの代理店(代理業)」ほどの意味合いを容易に認識させるものである。
15 そして、本願商標の指定役務を取り扱う業界において、ダイレクトマーケティン
グに特化した代理店・代理業が存在する事実や、何らかの事業に係る代理店・代理
業であることを表すために「○○エージェンシー」のような用例が用いられている
事実が認められる。また、本願商標の指定役務を取り扱う業界において、「ダイレ
クトマーケティングエージェンシー」等の文字が使用されている事実も認められる。
20 そうすると、本願商標の構成文字の語義や、上記した取引の実情から、本願商標
を、その指定役務に使用したときには、これに接する取引者及び需要者は、「ダイ
レクトマーケティングに特化した代理店(代理業)に関する役務」、「ダイレクト
マーケティングに特化した代理店(代理業)により提供される役務」であると認識
するにとどまるから、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標
25 章のみからなる商標であるというのが相当である。
また、本願商標を、上記に相応する役務以外の役務に使用するときは、役務の質
について誤認を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本願商標は、法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。
第3 原告の主張する審決取消事由(法3条1項3号及び4条1項16号該当性
判断の誤り)
5 法3条1項3号の該当性の判断に当たっては、役務の質等を間接的に表示するに
すぎないか否か、すなわち、直接的、一義的でなく、間接的、抽象的又は多義的な
標章であるか否かで判断されなければならず、そのような標章であれば、同号に該
当しない。
本件審決は、辞書等に採録のない造語である本願商標を、
「ダイレクトマーケティ
10 ング」及び「エージェンシー」という語に分けて、辞書やウェブページを引用して、
それぞれの語の意味合い及び全体としての意味合いを特定し、「ダイレクトマーケ
ティングに特化した代理店(代理業)」と認定している。
しかし、
「ダイレクトマーケティング」及び「マーケティング」という語は、極め
て多義的な語であることから、本件審決が辞書に採録されているとする意味合い、
15 本件審決がウェブページを引用する意味合い及び原告が辞書に採録されているとす
る意味合いは、それぞれ相違する。すなわち、
「ダイレクトマーケティング」 「ダ
及び
イレクト」+「マーケティング」の語の意味合いは、直接的、一義的でなく、間接
的、抽象的又は多義的であることが明らかである。また、
「エージェンシー」という
語についても、本件審決が辞書に採録されているとする意味合い、本件審決がウェ
20 ブページを引用する意味合い及び原告が辞書に採録されているとする意味合いは、
それぞれ相違する。すなわち、「エージェンシー」の意味合いについても、直接的、
一義的でなく、間接的、抽象的又は多義的であることが明らかである。
このように、本願商標を構成する「ダイレクトマーケティング」
(又は「ダイレク
ト」+「マーケティング」)及び「エージェンシー」の語は、いずれも間接的、抽象
25 的又は多義的な語であり、それゆえ、それぞれの語を組み合わせた「ダイレクトマ
ーケティングエージェンシー」という構成についても、直接的、一義的でなく、間
接的、抽象的又は多義的である。
したがって、本願商標の語義や本件審決が引用する取引の実情からすると、本願
商標に接した取引者及び需要者が、本件審決が認定した一義的かつ直接的な意味合
いとして容易に認識することができるという本件審決の判断は誤りであり、本願商
5 標は法3条1項3号に該当しない。このことは、
「マーケティング」の語に別の語を
併せてなる先登録例(甲7の1~6)からも裏付けることができる。これらの先登
録例は、本願商標と近似した構成を有し、近似した役務を指定しているが、法3条
1項3号に該当しないと判断されているからである。
以上を総合的に判断すると、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表
10 示する標章のみからなる商標とはいえず、法3条1項3号に該当するものではなく、
また、本願指定役務との関係において、その質について誤認を生ずるおそれもない
ため、法4条1項16号に該当するものでもない。
第4 被告の反論
1 本願商標が法3条1項3号及び4条1項16号に該当すること
15 (1) 本願商標の構成
本願商標は、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の文字を標準文字で表
してなるところ、その構成文字は、「ダイレクト」(介在するものがなく、直接であ
るさま。乙2) 「マーケティング」
、 (顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、
最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需要の増加と新たな市
20 場開発を図る企業の諸活動。乙3)及び「エージェンシー」
(代理店。乙4)の文字
を、同じ大きさ及び書体で、字間なく、横一列にまとまりよく表してなる。
そして、「ダイレクトマーケティング」の語は、「カタログ・ダイレクトメール・
雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者に直接商品情報を提供す
る販売促進方法」
(甲1の1~3、乙2)の意味を有する、一般の国語辞典等を含む
25 辞書にも掲載されている成語であり、本願商標の指定役務に係る取引業界において、
事業者の業務内容を表示するために広く用いられている実情もある。
そうすると、本願商標は、
「ダイレクトマーケティング」と「エージェンシー」の
語を組み合わせたものと容易に看取できる。
(2) 取引の実情
「ダイレクトマーケティング」の語は、本願商標の指定役務に係る取引業界にお
5 いて、事業者の業務内容を表示するために広く用いられている実情がある(乙5~
10)。また、
「エージェンシー」の語は、一般の商取引において、
「○○エージェン
シー」(○○には業務内容や業種が入る。)との表記で、特定の業務を行う代理店で
あることを表示するために用いられている(乙11~15)。さらに、「ダイレクト
マーケティングエージェンシー」と称する又は称される、ダイレクトマーケティン
10 グ業務を行う事業者も多数存在する(甲5、6、乙16~29)。
(3) 法3条1項3号及び4条1項16号該当性
以上のとおり、本願商標は、その構成文字の語義やその指定役務に係る取引の実
情を踏まえると、構成文字全体として「ダイレクトマーケティング(カタログ・ダ
イレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者に直接
15 商品情報を提供する販売促進方法)を業務とする又はそれに特化した代理店」程度
の意味合いを容易に認識、理解させるものであり、その指定役務との関係で役務の
質(業務内容、業種)を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示である
から、当該役務に使用された場合、取引者及び需要者をして、役務の質を表示した
ものと一般に認識される。
20 そのため、本願商標は、その指定役務について、役務の質を普通に用いられる方
法で表示する標章のみからなる商標であり、また、
「ダイレクトマーケティング」業
務とは関連しない役務については、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあ
る。
したがって、本願商標は、法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。
25 2 原告の主張に対する反論
(1) 原告は、
「ダイレクトマーケティング」「マーケティング」及び「エージェン

シー」の語が多義的であるから、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」とい
う語全体の意味合いが更に多種多様なものになるため、本願商標に接した取引者及
び需要者が、その役務の直接具体的な質を直接的に特定することができない旨、さ
らに、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」との語は、業界紙や専門メディ
5 アにおいて一切使用されていないことから、業界において役務の品質を直接的、か
つ、具体的に表示するものとして、取引上一般には使用されていない旨を主張する。
しかしながら、「ダイレクトマーケティング」の語は、「カタログ・ダイレクトメ
ール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者に直接商品情報を
提供する販売促進方法」の意味を有する、一般の国語辞典等を含む辞書にも掲載さ
10 れている成語(各辞書の記載内容は、表現ぶりや視点の違いこそあれ、おおむね共
通する意味合いに収れんされる。 であり、
) 本願商標の指定役務に係る取引業界にお
いて、事業者の業務内容を表示するために広く用いられている実情がある。
また、
「エージェンシー」の語は、一般の商取引において、
「○○エージェンシー」
との表記で、特定の業務を行う代理店であることを表示するために用いられること
15 も多い中、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」と称する又は称される、ダ
イレクトマーケティング業務を行う事業者も多数いる。
そうすると、本願商標は、その構成文字の語義やその指定役務に係る取引の実情
を踏まえると、構成文字全体として、抽象的かつ漠然とした意味合いの造語ではな
く、
「ダイレクトマーケティング(カタログ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電
20 話など各種のメディアを通じて、消費者に直接商品情報を提供する販売促進方法)
を業務とする又はそれに特化した代理店」程度の意味合いを容易に認識、理解させ
るものであり、その指定役務に使用された場合、取引者及び需要者をして、役務の
質(業務内容、業種)を直接的に表示したものと一般に認識される。
そのため、本願商標は、その指定役務について、役務の質を普通に用いられる方
25 法で表示する標章のみからなる商標であり、また、
「ダイレクトマーケティング」業
務とは関連しない役務については、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあ
る。
したがって、本願商標は、法3条1項3号及び4条1項16号に該当する。
(2) 原告は、過去の商標登録例を引用して、もし本願商標が登録されないことと
なれば、上記商標との関係において極めて平仄の合わない不公平で恣意的な判断と
5 評価されかねない旨を主張する。
しかしながら、商標登録の可否は、商標の構成、指定役務、取引の実情等を踏ま
えて、具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべきものであって、原告が指
摘するような他の商標登録事例があるからといって、本願商標の登録の可否が影響
を受けるものではない。また、原告の引用する商標登録例は、本願商標とは構成文
10 字が異なり、全て事案を異にするものであるから、参考にもならない。
したがって、原告が援用する商標登録例は、本願商標の法3条1項3号及び4条
1項16号該当性の判断に何ら影響しない。
(3) 以上のとおり、原告の主張にはいずれも理由がなく、本願商標が法3条1項
3号及び4条1項16号に該当するとした本件審決に誤りはない。
15 第5 当裁判所の判断
1 取消事由(法3条1項3号及び4条1項16号該当性判断の誤り)について
(1) 法3条1項3号について
法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、これら
の商標が、指定商品又は役務との関係で、取引に際し必要適切な表示として何人も
20 その使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上
適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合
自他商品又は役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるこ
とによるものである(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第
三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。
25 そうすると、審決時において、当該商標がその指定役務に使用された場合に、取
引者及び需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識
されるものであり、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判
断されるときは、当該商標は法3条1項3号に該当するものと解するのが相当であ
る。そして、当該商標の取引者及び需要者によって当該役務に使用された場合に役
務の質を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定
5 役務に関する取引の事情を考慮して判断すべきである。
(2) 法4条1項16号について
法4条1項16号に掲げる商標が商標登録の不登録事由とされているのは、商標
が表す観念と指定役務とが符合しないために、当該商標の取引者及び需要者が誤っ
た役務の提供を受けるなどの錯誤を防止するために、商品の品質等について誤認を
10 生ずるおそれのある商標は登録できないとして、需要者の保護を図ったものである。
(3) 本願商標の構成
ア 本願商標は、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の文字を標準文字
で表してなるものである。
本願商標の「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の文字は、
「ダイレクト」、
15 「マーケティング」及び「エージェンシー」の各語を組み合わせたものと認められ
るが、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」自体は辞書等に掲載されている
語ではない。
イ 本願商標のうち、
「ダイレクト」の語は「介在するものがなく、直接であるさ
ま」
(乙2:大辞泉第二版)「マーケティング」の語は「顧客ニーズを的確につかん

20 で製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需
要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動」
(乙3:大辞泉第二版。甲3も、こ
の語義を排除するものではない。)及び「エージェンシー」の語は「代理店」
(乙4:
大辞泉第二版)との意味をそれぞれ有する。
「ダイレクト」と「マーケティング」を組み合わせた「ダイレクトマーケティン
25 グ」の語は、
「カタログ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディ
アを通じて、消費者に直接商品情報を提供する販売促進方法」の意味を有する成語
である(乙2:大辞泉第二版。甲1の1~3にも同様の意味が記載されている。 。

ウ 本願商標は、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の文字を、同じ大
きさ及び書体で、字間なく、横一列にまとまりよく表してなるものであり(乙1)、
「ダイレクトマーケティング」と「エージェンシー」の語を組み合わせたものと容
5 易に看取できる。
(4) 本願商標の指定役務に係る取引の実情
本願商標は、指定役務を別紙のとおりとしているところ、掲記の証拠及び弁論の
全趣旨によると、当該役務に関連する取引の実情として、次の事実が認められる。
ア 「ダイレクトマーケティング」の語は、令和6年8月から11月頃にかけて、
10 本願商標の指定役務に係る取引業界において、
「…「ダイレクトマーケティング」に
特化した広告代理店…」
(乙5)、
「…ダイレクトマーケティングに特化した広告代理
店です。 (乙6) 「ダイレクトマーケティングに特化した知見に基づくノウハウを
」 、
ご提供し、…」
(乙7)「…ダイレクトマーケティングに特化したインターネット広

告事業を展開しております。 (乙8) 「…ダイレクトマーケティングに特化した会
」 、
15 社です。 (乙9) 「…ダイレクトマーケティング広告に特化し、主に通販会社様と
」 、
の繋がりが強い広告代理店です。 (乙10)などのように、事業者の業務内容を表

示するために広く用いられている実情がある。
イ 「エージェンシー」の語は、一般の商取引において、
「ブランディングエージ
ェンシー」 令和6年8月時点のウェブサイト。
( 乙11) デジタルエージェンシー」


20 (令和3年4月6日付け。乙12)「提携エージェンシー」
、 (令和6年7月18日付
け。乙13)「写真エージェンシー」
、 (平成27年4月11日付け。乙14)「モデ

ルエージェンシー」(令和2年12月11日付け。乙15)などのように、「○○エ
ージェンシー」との表記で、特定の業務を行う代理店であることを表示するために
用いられている実情がある。
25 ウ 「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の語に関連する取引の実情と
して、次の事実が認められる。
(ア) 令和7年2月時点の「株式会社日本ダイレクトマーケティング」のウェブサ
イトにおいて、同社の事業メニューとして「各専門分野のエキスパートがご提供す
るマーケティング手法」が紹介されており、
「法人データ、個人データ、DM、テレ
マーケティング、FAX-DMなどを活用したダイレクトマーケティングエージェ
5 ンシー」 「私たちはダイレクトマーケティングを機軸としたクロスメディア・ソリ

ューションを駆使し、より効果的・効率的にビジネスニーズにお応えします。」との
記載がある(甲5、乙16)。
(イ) 令和6年8月時点の「ヴィアックス」のウェブサイトにおいて、「ダイレク
トマーケティング事業」の見出しの下、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー
10 として、私どもは見込み客群の構築から、見込み客・顧客との関係性の継続・発展、
LTVの最大化をお手伝いします。」との記載がある(乙17)。
(ウ) 令和6年8月時点の「株式会社エニイ」のウェブサイトにおいて、「特長」
の項に、「エニイは1988年にダイレクトマーケティングエージェンシーとして
創業し、企業の営業・販促・マーケティング(フロントサイド)を、データ運用の
15 視点から長く支援してまいりました。ダイレクトマーケティングの運用支援を行う
中で、多くの課題を解決することで”データを適切に管理する”ための技術やノウ
ハウを培ってきました。」との記載がある(甲6、乙18)。
(エ) 「PR TIMES」のウェブサイトにおいて、
「フュージョン株式会社、第
34回全日本DM大賞にてグランプリを受賞!」の見出しの記事情報(令和2年3
20 月6日付け)において、
「フュージョン株式会社は、…ダイレクトマーケティングを
実践するダイレクトマーケティングエージェンシーです。ダイレクトマーケティン
グ活動の基盤となる、事業計画策定、各種リサーチ業務、データベースシステム構
築から、DMをはじめとするプロモーション施策の実施・運営まで、一気通貫で対
応できることを強みとしています。」との記載がある(乙19)。
25 (オ) 「PR TIMES」のウェブサイトにおいて、
「世界トップのダイレクト・
マーケティング・エージェンシー 子会社【プロキシミティ・ジャパン】へ社名変
更」の見出しの記事情報(平成20年9月26日付け)において、
「…ダイレクトマ
ーケティングの分野では最も多くの表彰を受けている(*1)プロキシミティ・ワ
ールドワイド(世界45カ国、57オフィスで展開)の一員として、最新のプラン
ニングツールやノウハウを共有し、その活動の場を広げてきました。 との記載があ

5 る(乙20)。
(カ) 「クロスチャネル・キャンペーンマネジメントの最新動向」のウェブサイト
における「アトリビューション特別対談 株式会社ディレクタスAさんに聞く」の
見出しの記事情報(平成26年7月29日付け)において、
「紙のDMからEメール
マーケティングへ」の見出しの下、
「私は、1993年にディレクタスを設立したの
10 ですが、設立当初は、ダイレクトメールを支援するダイレクトマーケティングエー
ジェンシーでした。」との記載がある(乙21)。
(キ) 「株式会社Xmaker」のウェブサイトにおいて、【業務委託メンバーイ

ンタビュー】広告バナー制作から地方創生の未来づくりまで。クリエイティブディ
レクターが語るXmakerのマーケティングの可能性」の見出しの記事情報(令
15 和7年1月9日付け)に、
「それを形にするための第一歩として、次世代ダイレクト
マーケティングエージェンシー・株式会社ファインドスターに新卒で入社。 との記

載がある(乙22)。
(ク) 「J-GoodTech」のウェブサイトにおいて、「株式会社データブレ
ーン」の会社紹介記事(令和4年9月14日最終更新)に、
「ダイレクトマーケティ
20 ングエージェンシー(ダイレクトマーケティングをメインとした広告代理店) 、
」「ダ
イレクトマーケティングを展開するにあたっての戦略構築、戦術企画、その構成要
素としてメディアやクリエイティブ、データベースなどのプロデュースをさせてい
ただきます。」との記載がある(乙23)。
(ケ) 令和7年2月時点の「デジレカ」のウェブサイトにおいて、「通販業界特化
25 のダイレクトマーケティングエージェンシーとして成長を続けるスペシャリスト集
団」の見出しの下、
「株式会社ワンスターは、通販業界特化のダイレクトマーケティ
ングエージェンシーとして成長を続けるベンチャー企業です。 との記載がある
」 (乙
24)。
(コ) 「RECRUIT AGENT」のウェブサイトにおいて、
「株式会社ビー・
アンド・ディー」の求人情報(令和6年10月4日最終更新)に、
「■日本トップク
5 ラスのダイレクトマーケティングエージェンシーとして、高いコミュニケーション
戦略を提案しています」との記載がある(乙25)。
(サ) 令和7年3月時点の「社長メシ」のウェブサイトにおいて、「株式会社BO
NDIC B」の「自己紹介」の項に、
「その後世界最大のダイレクトマーケティン
グエージェンシー「ラップアンドコリンズ」の日本拠点(日本最初の専門エージェ
10 ンシー)にて、プランナーとして活躍。金融関係、高級輸入自動車などダイレクト
マーケティングに当初から取り組んでいる業種や通信販売を幅広く担当。それらに
加え業界としてダイレクトマーケティングの導入期にある様々な業界入企業をサポ
ート。」との記載がある(乙26)。
(シ) 令和7年2月時点の「paiza」のウェブサイトにおいて、「東京カメラ
15 部株式会社」の企業情報記事に、「役員略歴」の見出しの下、「システムインテグレ
ーター、ダイレクトマーケティングエージェンシー、コンサルティングファーム、
電機メーカー、雑貨製造販売会社の取締役を経て現職。 との記載がある
」 (乙27)。
(ス) 「宣伝会議」のウェブサイトにおける記事情報(2014年12月号)にお
いて、「ダイレクトマーケティングを定義する7つの特徴」の見出しの下、「ダイレ
20 クトマーケティングという言葉は、1961年にCによって提唱されました。Cは
「ダイレクトマーケティングの父」と呼ばれ、世界的なダイレクトマーケティング
エージェンシーの創始者です。」との記載がある(乙28)。
(セ) 「I.m.press」のウェブサイトにおいて、「DMW関西25周年イ
ベント」の見出しの記事情報(平成22年4月11日付け)に、
「その間のダイレク
25 トマーケティングの変遷について考える機会を得た。まず、DMW東京が発足した
1984年は、折りしも日本初のダイレクトマーケティング・エージェンシーが誕
生した年。」との記載がある(乙29)。
(5) 法3条1項3号及び4条1項16号該当性の判断
前記(3)によると、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の語は、
「カタロ
グ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者
5 に直接商品情報を提供する販売促進方法」の意味を有する成語である「ダイレクト
マーケティング」と、
「代理店」との意味を有する「エージェンシー」との語を組み
合わせた語である。
また、前記(4)によると、本件審決時、本願商標の指定役務に係る取引業界におい
て、
「ダイレクトマーケティング」の語は、事業者の業務内容を表示するために広く
10 用いられており、一般の商取引において、「エージェンシー」の語は、「〇〇エージ
ェンシー」との表記で、特定の業務を行う代理店であることを表示するために用い
られている。さらに、「ダイレクトマーケティングエージェンシー」と称して、「ダ
イレクトマーケティング」業務を行う事業者も多数存在している実情がある。
このような本願商標の構成文字の語義及び指定役務に関する取引の実情を踏ま
15 えると、本願商標である「ダイレクトマーケティングエージェンシー」は、
「カタロ
グ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメディアを通じて、消費者
に直接商品情報を提供する販売促進方法を業務とする又はそれに特化した代理店」
といった意味合いを容易に認識、理解させるものといえる。そうすると、本願商標
は、その指定役務との関係で、役務の質(業務内容、業種)を表示記述するもので
20 あり、本願商標が指定役務に使用された場合に、その取引者及び需要者によって、
将来を含め、役務の質(業務内容、業種)を表示したものと一般に認識されるもの
であるといえる。そして、本願商標は、ダイレクトマーケティングエージェンシー」

の文字を標準文字で表してなるものであり、特別に識別力を獲得するための他の要
素が加えられていない。
25 以上を総合すると、本願商標は、本件審決時において、その指定役務につき、役
務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、また、
「ダ
イレクトマーケティング」業務とは関連しない役務については、役務の質について
誤認を生じさせるおそれがあると認められるため、本願商標は、法3条1項3号及
び4条1項16号に該当する。
2 原告の主張について
5 (1) 原告は、
「ダイレクトマーケティング」「マーケティング」及び「エージェン

シー」の語が多義的であるから、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」とい
う語全体の意味合いが更に多種多様なものになるため、本願商標に接した取引者及
び需要者が、その役務の直接具体的な質を直接的に特定することができない旨を主
張する。
10 しかし、前記1(5)に判示したとおり、本願商標の構成文字の語義及び指定役務に
関する取引の実情を踏まえると、本願商標である「ダイレクトマーケティングエー
ジェンシー」は、
「カタログ・ダイレクトメール・雑誌・テレビ・電話など各種のメ
ディアを通じて、消費者に直接商品情報を提供する販売促進方法を業務とする又は
それに特化した代理店」といった意味合いを容易に認識、理解させるものといえる
15 のであり、その意味合いが理解不可能なほどに多種多様であるということはできず
(原告が提出した証拠も上記意味合いと異なる意味合いを記載しているものではな
い。、原告の主張は独自の主張というほかない。

(2) また、原告は、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」との語は、業界
紙や専門メディアにおいて一切使用されていないことから、業界において役務の品
20 質を直接的、かつ、具体的に表示するものとして、取引上一般には使用されていな
い旨を主張する。
しかし、
「ダイレクトマーケティングエージェンシー」の語に関連する取引の実情
として、
「ダイレクトマーケティング」業務を行う事業者が多数存在する実情にある
ことは、前記1(4)ウに認定したとおりであるから、この語が取引上一般には使用さ
25 れていないということはできない(原告が主張するウェブ検索によって「ダイレク
トマーケティングエージェンシー」の語が表示されなかった(甲4の1~6)から
といって、上記の取引の実情が否定されるわけではない。 。

(3) さらに、原告は、過去の商標登録例(甲7の1~6)を引用して、もし本願
商標が登録されないこととなれば、上記商標との関係において極めて平仄の合わな
い不公平で恣意的な判断と評価されかねない旨を主張する。
5 しかし、商標登録の可否は、商標の構成、指定役務、取引の実情等を踏まえて、
商標ごとに個別に判断すべきものであって、原告が指摘するような他の商標登録事
例があるからといって本願商標の登録の可否が影響を受けるものではないから、本
願商標がその指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章の
みからなる商標であることを否定する理由にはならない。
10 (4) 以上により、原告の上記主張はいずれも採用することができない。また、原
告は、その他にも様々な主張をするが、いずれも上記認定判断を左右するものでは
ない。
3 結論
以上によると、原告の取消事由の主張には理由がなく、本件審決にこれを取り消
15 すべき違法はないから、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部

20 裁判長裁判官
本 多 知 成

裁判官
伊 藤 清 隆

裁判官
天 野 研 司

(別紙)
本願の指定役務
第35類
「広告業、トレーディングスタンプの発行、経営の診断又は経営に関する助言、事
業の管理、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、ビジネスコンサル
ティング、事業の評価、事業に関する情報の提供、事業の調査、商業に関する情報
の提供、価格比較の調査、経済予測、商取引の受注管理、他人の事業のために行う
物品の調達及びサービスの手配、事業に関する指導及び助言、事業の管理に関する
指導及び助言、事業の組織に関する指導及び助言、商業又は工業の管理に関する助
言、事業の能率化に関する診断・指導及び助言、人事管理に関する指導及び助言、
統計の編集、他人の商品及びサービスのライセンスに関する事業の管理、原価分析、
世論調査、企業の人事管理のための適性検査、デジタルトランスフォーメーション
のための事業に関する助言、財務書類の作成、職業のあっせん、競売の運営、輸出
入に関する事務の代理又は代行、書類の複製、文書又は磁気テープのファイリング、
コンピュータデータベースへの情報編集、コンピュータによるファイルの管理、給
料支払名簿の作成、インボイスの作成に関する事務の代行、電子計算機を用いて行
う情報検索事務の代行、電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準
ずる事務用機器の操作、建築物における来訪者の受付及び案内、広告用具の貸与、
タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与、消費者のための商品及び役
務の選択における助言と情報の提供、求人情報の提供、新聞記事情報の提供、自動
販売機の貸与」
第42類
「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成
される設備の設計、デザインの考案、電子計算機のプログラムの設計・作成又は保
守、不正アクセス又はデータ漏洩を検出するためのコンピュータシステムの遠隔監
視、インターネットを介したクレジットカードの不正利用検出のための電子的な監
視、ウェブサイトの作成又は保守、コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守
に関する助言、コンピュータソフトウェアの設計、コンピュータソフトウェアの保
守、電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の
専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及
び説明、品質管理、機械器具に関する試験又は研究、ウェブサイト経由によるコン
ピュータ技術及びコンピュータプログラミングに関する情報の提供、コンピュータ
システムの分析、計測器の貸与、電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提
供、ウェブサーバーの貸与、オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提
供(SaaS) クラウドコンピューティングを介した仮想コンピュータシステムの

提供、コンピュータウェブサイトのホスティング、コンピュータソフトウェアの貸
与、コンピュータソフトウェアプラットフォームの提供(PaaS)、コンピュータ
の貸与、サーバーのホスティング、データセンター施設の貸与、電子データの保存
用記憶領域の貸与、暗号資産のマイニング、クラウドコンピューティングを介した
仮想コンピュータシステムの提供、コンピュータ技術に関する助言、情報技術(I
T)に関する助言、デジタルトランスフォーメーションのための技術的助言」
以 上

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