令和6(ネ)10012特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
令和7年7月10日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法102条3項2回 特許法29条の21回 特許法123条1項2号1回 特許法123条1項1回 特許法104条の31回
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キーワード |
進歩性36回 実施31回 新規性17回 無効16回 特許権12回 審決8回 刊行物7回 侵害6回 訂正審判4回 損害賠償3回 分割1回 ライセンス1回
|
主文 |
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
4月17日〕、設定登録日:平成23年7月29日、
024-390011、甲22の1)
1 原判決を取り消す。
2 被告パナソニックコネクトは、原告ら各自に対し、1500万円及びこれに5
3 被告パナソニック株式会社は、原告ら各自に対し、1500万円及びこれに
4 仮執行宣言
1 事案の要旨
9条、損害額につき特許法102条3項)に基づく損害賠償請求として、①
104条の3第1項)などとして、原告らの請求をいずれも棄却した。
2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容
12行目から23行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。20
3 構成要件の分説
1 争点
2 争点に関する当事者の主張
2を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如)に関する当事者の主張は、次
4】)、スマートカード(乙19)は、一般に、プラスチック製のカー
5の「個別情報」とは、本件訂正後の請求項4記載の機能のうち、少な
5の「個別情報の発信要求」は機能・作用が異なる。
9文献記載の技術は、自動改札機の発明であり、携帯通信端末には1つ
1 当裁判所は、本件訂正後の請求項5に係る本件訂正発明5には、乙52を主15
2 争点2′-3〔乙52を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如〕につい20
2】)、カードの改竄や不正使用が増えている現状を背景に、磁気カー
5】)。無線通信インタフェース部132及び142は、それぞれが送
2及び142は、たとえばRFID技術において用いられているような
85】【0086】)。このうち、受信装置は、携帯端末からカード情
092】)、受信装置において、これに対応する機能を選択することなど
1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求」をする旨記載されてい15
3】)。
30は、アンテナ521及び駆動処理回路522を有するリーダライタ5
20と協働して動作し、アンテナ521及び31Aを介して電磁誘導で電
500から非接触データキャリア30に対してリ-ダライタ520を介し20
00に残高「Y-A」を送る。…決済部500では残高「Y-A」の照合
500は、非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y-B+A」
4】)、非接触データキャリアを使用したプリペイド対応自動販売機シス25
3】)。そうすると、乙52発明の「購入金額ボタン110」が本件訂正
523」にかざされた「非接触データキャリア30」に対して「決済部5
00」から「ID及び残高の読取要求を送る」ことは、本件訂正発明5の
0から決済部500に残高「Y-A」を送り、決済部500では残高「Y
033】参照)。
6号公報)である。乙9文献には、自動改札システムに関して、発券機
007】【0016】参照)、各種カードの情報を携帯電話に統合し、
3 小括20
41と、無線通信インタフェース部142と、照合用データ記録部143とを備えている。
2のICアセンブリ140の各構成要素を制御する。無線通信インタフェース部132お
0を記憶する。ここでは、個別情報340としてカード情報を記憶している例について説
340を発信する(S122)。受信装置60では、受信したカード情報340が、要求
20には、多少離れた位置から読み取り可能なように近接型を利用することが好ましい。
0の送受信部20には、やや離れた位置から読み取り可能なように近傍型または近接型を15
321、商品の購入を中止して返却(返金)を指示する返却レバー322、残額等を
0、返却レバー322、表示部330及び現金投入口321は、一般的な現金販売も
0は、利用者が非接触データキャリア30を用いて商品を購入する場合の決済処理を
0、商品の購入を中止して返金(返却)を指示する返却指示手段としての返金ボタン
511、非接触データキャリア30との間でデ-タ送受信を行うためのリ-ダライタ30
520のアクセスエリア523、利用者の操作を案内したり、利用前後のプリペイド
0、返金ボタン511、リ-ダライタ520、表示/ガイダンス部530に接続さ
0はインタフェ-ス(I/F)装置541を経て自動販売機部300に接続されてお
21を覆い、かつ非接触データキャリア30によって押圧され易いようにパネル面か
0の関係を模式的に示しており、非接触データキャリア30は、円盤状の本体部315
31A及びデータ処理を行うICチップ31Bが具備されている。非接触データキャ
5及び図6を参照して説明する。図5は取引のシーケンスの詳細を時系列に示してお
3にかざすと、決済部500から非接触データキャリア30に対してリ-ダライタ5
20を介してID及び残高の読取要求が送られ、その読取要求に応じて非接触データ35
0の残高欄に残高「Y-A」を表示すると共に、受入金額A(図6の例では90円)5
10)を点灯する。この状態で表示/ガイダンス部530の表示は、段階3の「横の
00では商品選択ボタン310の選択信号を入力し、当該商品選択ボタンの商品に対
30に対してID及び残高の読取要求が指示される。このときIDが相違している場30
30から決済部500に残高「Y-B+A」を送る。決済部500は残高「Y-B+
3にかざすように表示/ガイダンス部530に表示して利用者に報知する。ここで、
0に対して残高「Y-A」(図6の例では910円)が送られる。これにより、決済
500に残高Y(図6の例では1000円)を送る。決済部500は残高Yの照合チ
1 被告製品の本件訂正発明5の技術的範囲への属否(争点1′)
2以外の製品は、個別情報の発信要求を指示するスイッチは付いていないから、構成
2 本件訂正発明5に係る無効理由の有無
2-1 乙50を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-1)
2-2 乙51を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-2)
2-3 乙10を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-4)5
2-4 乙9を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-5)
3 本件訂正発明1、3及び4に係る無効理由の有無
3-1 乙3を主引用例とする進歩性欠如(争点4′-1)40
15文献に開示された技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た。
3-2 乙4を主引用例とする拡大先願要件違反(争点4′-2)30
4 原告らの損害(争点5)
0億円×実施料率5%)の、ロ号製品について実施料相当額225億円(=4500 |
事件の概要 |
1 事案の要旨
⑴ 本件は、本件特許権を有する原告モビリティ及び本件専用実施権を有する
原告モビリティ・エックスが、イ号製品を販売する被告パナソニックコネク
ト及びロ号製品を販売する被告パナソニックに対し、本件訂正前の本件特許
の特許請求の範囲請求項5に係る発明(本件発明5)について、イ号製品及15
びロ号製品は本件発明5の技術的範囲にそれぞれ属し、被告製品の販売は、
本件特許権及び本件専用実施権を侵害すると主張して、不法行為(民法70
9条、損害額につき特許法102条3項)に基づく損害賠償請求として、①
被告パナソニックコネクト及び②被告パナソニックのそれぞれについて、平
成23年4月1日から令和3年3月31日までの間の被告製品の売上に基づ20
いて原告らの損害(原告モビリティ・エックスについては専用実施権の設定
を受けた平成30年8月以降の損害)を算定し、原告らそれぞれに対し、各
損害額の一部である各1500万円及びこれに対する不法行為後の日(①令
和3年8月28日、②同月31日)から各支払済みまで民法所定の年3%の
割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお、原告らは、本件訂25 |
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判決文
令和7年7月10日判決言渡
令和6年(ネ)第10012号 特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第20886号、同5年(ワ)第70045号)
口頭弁論終結日 令和7年3月13日
5 判 決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主 文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
10 事 実 及 び 理 由
本判決において用いる主な略語は、次のとおりである(原判決で定義された略語
を含む。)。
原告モビリティ 控訴人株式会社モビリティ
原告モビリティ・エックス 控訴人モビリティ・エックス株式会社
15 被告パナソニックコネクト 被控訴人パナソニックコネクト株式会社
被告パナソニック 被控訴人パナソニック株式会社
本件特許 発明の名称を「携帯電話、Rバッジ、受信装置」とす
る特許(特許第4789092号、出願日:平成20
年5月7日〔特願2002-584251の分割、原
20 出願日:平成14年4月17日、優先日:平成13年
4月17日〕、設定登録日:平成23年7月29日、
甲1、2)
本件特許権 本件特許に係る特許権
本件専用実施権 本件特許に係る専用実施権(平成30年8月9日設定
25 登録、甲1)
本件訂正審判請求 令和6年1月24日請求に係る訂正審判請求(訂正2
024-390011、甲22の1)
本件訂正審決 本件訂正審判請求に係る令和6年10月22日訂正審
決(同年11月7日確定、甲30、31)
本件訂正 本件訂正審決による訂正。本件訂正後の本件特許の特
5 許請求の範囲請求項の数は5
本件訂正発明 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項に係る
発明。請求項ごとの発明は、請求項の番号を付して
「本件訂正発明5」などという。
本件明細書 本件訂正後の本件特許の明細書及び図面。以下、特に
10 断らない限り「【4桁の数字】」は本件明細書の段落
を指し、「【図〇】」は本件明細書の図面を指す。
本件発明 本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲請求項に係る
発明。請求項ごとの発明は、請求項の番号を付して
「本件発明5」などという。
15 イ号製品 原判決別紙物件目録1(イ号製品)記載の各製品
ロ号製品 原判決別紙物件目録2(ロ号製品)記載の各製品
被告製品 イ号製品及びロ号製品
乙3発明 引用例乙3(特開平 11-55246 号公報)記載の発明
乙4発明 引用例乙4(特開 2001-245354 号公報)記載の発明
20 乙9発明 引用例乙9(特開平 10-162176 号公報)記載の発明
乙10発明 引用例乙10(特開平 10-154193 号公報)記載の発明
乙50発明 引用例乙50(特開平 10-232965 号公報)記載の発明
乙51発明 引用例乙51(特開平 7-210754 号公報)記載の発明
乙52発明 引用例乙52(特開平 10-289354 号公報)記載の発明
25 コンビネーション 二以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明
サブコンビネーション コンビネーションにおいて、組み合わされる各装
置に係る発明
RFID Radio Frequency Identification
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
5 2 被告パナソニックコネクトは、原告ら各自に対し、1500万円及びこれに
対する令和3年8月28日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 被告パナソニック株式会社は、原告ら各自に対し、1500万円及びこれに
対する令和3年8月31日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
4 仮執行宣言
10 第2 事案の概要
1 事案の要旨
⑴ 本件は、本件特許権を有する原告モビリティ及び本件専用実施権を有する
原告モビリティ・エックスが、イ号製品を販売する被告パナソニックコネク
ト及びロ号製品を販売する被告パナソニックに対し、本件訂正前の本件特許
15 の特許請求の範囲請求項5に係る発明(本件発明5)について、イ号製品及
びロ号製品は本件発明5の技術的範囲にそれぞれ属し、被告製品の販売は、
本件特許権及び本件専用実施権を侵害すると主張して、不法行為(民法70
9条、損害額につき特許法102条3項)に基づく損害賠償請求として、①
被告パナソニックコネクト及び②被告パナソニックのそれぞれについて、平
20 成23年4月1日から令和3年3月31日までの間の被告製品の売上に基づ
いて原告らの損害(原告モビリティ・エックスについては専用実施権の設定
を受けた平成30年8月以降の損害)を算定し、原告らそれぞれに対し、各
損害額の一部である各1500万円及びこれに対する不法行為後の日(①令
和3年8月28日、②同月31日)から各支払済みまで民法所定の年3%の
25 割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお、原告らは、本件訂
正前の本件特許の特許請求の範囲請求項6に基づく特許権侵害も主張してい
たが、当審段階で、本件訂正審決の確定により請求項6が削除されたため、
主張を撤回している。)。
⑵ 原審は、本件発明5は引用例乙9記載の発明(乙9発明)と同一であるか
ら、新規性欠如による無効理由があり、原告らは本件特許権又は本件専用実
5 施権を行使することができない(特許法123条1項2号、29条1項3号、
104条の3第1項)などとして、原告らの請求をいずれも棄却した。
これに対し、原告らは、原判決を不服として本件控訴を提起した。
⑶ 原告モビリティは、本件控訴後である令和6年1月24日、本件特許につ
いて本件訂正審判請求をし、これに対する本件訂正審決は、同年11月7日
10 に確定した(甲30、31)。これに基づき原告らは、当審において本件請
求を整理し、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項5に係る発明
(本件訂正発明5)について、被告製品はいずれも本件訂正発明5の技術的
範囲にそれぞれ属し、被告製品の販売は、本件特許権及び本件専用実施権を
侵害する等と改めて主張して、不法行為(民法709条、損害額につき特許
15 法102条3項)に基づく損害賠償請求をするものとした(本判決の主張整
理においては、本件訂正発明5に基づく請求に係る主張を記載している。)。
2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実)
⑴ 当事者については、原判決の「事実及び理由」の第2の2⑴(原判決2頁
20 12行目から23行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
⑵ア 本件特許については、原判決の「事実及び理由」の第2の2⑵ア(原判
決2頁24行目から3頁7行目まで)に記載のとおりであるから、これを
引用する。
イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
25 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は、別紙「本件訂正後の
特許請求の範囲の記載」のとおりである。
ウ 本件明細書等の記載
本件訂正後の本件特許の願書添付の明細書及び図面(本件明細書)の記
載は、別紙「本件訂正後の本件明細書の記載(抜粋)」記載のとおりであ
る。
5 ⑶ 本件専用実施権の設定については、原判決の「事実及び理由」の第2の2
⑷(原判決7頁4行目から9行目まで)に記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑷ 被告らの行為
被告パナソニックコネクトはイ号製品又はこれに対応する装置を、被告パ
10 ナソニックはロ号製品を、それぞれ販売している。
3 構成要件の分説
本件訂正後の特許請求の範囲請求項1、3~5を分説すると、次のとおりと
なる。
【請求項1】
15 A RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、
B′当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯
電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する
被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段と、
C′前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジ
20 に対して当該Rバッジの製造時に書き込まれた書換不可能な識別情報であっ
てRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信
手段と、
D 前記Rバッジより前記識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当
該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、
25 E 前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アク
セス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、
F′前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可すると
いう比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時
間が経過する前に前記被保護情報へのアクセスがなされた場合には当該アク
セスを許可し、前記所定時間が経過した後に前記被保護情報へのアクセスが
5 なされた場合には当該アクセスを禁止する
G ことを特徴とする携帯電話。
【請求項3】
H 請求項1記載の携帯電話であって、アプリケーションプログラムやデバイ
スドライバをインターネットを経由してダウンロードして新たな機能を追加
10 および/または更新する手段を有することを特徴とする携帯電話。
【請求項4】
I′前記新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカー
ド、クレジットカード、電子マネー、アミューズメント施設のチケット、公
共施設のチケットのうち少なくとも1つであって、それらの中から1つが選
15 択され得ることを特徴とする請求項3記載の携帯電話。
【請求項5】
J′請求項4記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェ
ースを有する受信装置であって、
K′当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、前記選択し
20 た1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけ
られた前記携帯電話に発信する発信手段と、
L 前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判
断する判断手段とを有し、
M′前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求した個別情報であると判
25 断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行う
N ことを特徴とする受信装置
第3 争点及び争点に係る当事者の主張
1 争点
⑴ 被告製品の本件訂正発明5の技術的範囲への属否(争点1′)
⑵ 本件訂正発明5に係る無効理由の有無
5 ア 乙50を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-1)
イ 乙51を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-2)
ウ 乙52を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-3)
エ 乙10を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-4)
オ 乙9を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-5)
10 ⑶ 本件訂正発明1、3及び4に係る無効理由の有無
ア 乙3を主引用例とする進歩性欠如(争点4′-1)
イ 乙4を主引用例とする拡大先願要件違反(争点4′-2)
⑷ 原告らの損害(争点5)
2 争点に関する当事者の主張
15 争点に関する当事者の主張のうち、当裁判所が判断した争点2′-3(乙5
2を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如)に関する当事者の主張は、次
のとおりであり、その余の争点に関する当事者の主張は、別紙「争点に関する
当事者の主張」記載のとおりである。
(争点2′-3〔乙52を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如〕について)
20 ⑴ 被告らの主張
ア 本件訂正後の特許請求の範囲の記載請求項5の解釈
本件訂正審決が判断するとおり、本件訂正発明5は、携帯電話と受信装
置の間で送受信を行う個別情報システムという全体装置の発明に対する受
信装置の発明であるから、いわゆるサブコンビネーション発明である。そ
25 して、本件訂正発明5の⒜-1「請求項4記載の」又は⒜-2「請求項4
記載の携帯電話」との事項、及び⒝「前記選択した1つの新たな機能に対
応する」との事項は、いずれも受信装置の構造、機能等を特定するもので
はなく、受信装置の発明の特定に意味を有しないものであるから、これら
を除外して、新規性・進歩性を判断すべきである。そうすると、本件訂正
発明5の解釈は、以下の❶又は❷のいずれかの構成要件によることとなる。
5 (ア) 構成要件❶
前記⒜-1・⒝により「J′…携帯電話との間で送受信するためのR
FIDインターフェースを有する受信装置であって、K′当該受信装置
に設けられた読み取りスイッチの押下によって、…個別情報の発信要求
を当該受信装置に近づけられた前記携帯電話に発信する発信手段と、L
10 前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを
判断する判断手段とを有し、M′前記判断手段で前記受信した個別情報
が前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との
間で処理を行う N ことを特徴とする受信装置。」
(イ) 構成要件❷
15 前記⒜-2・⒝により「J′…RFIDインターフェースを有する受
信装置であって、K′当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押
下によって、…個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられた…
【通信相手】に発信する発信手段と、L …【通信相手】から受信した
個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し、
20 M′前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求した個別情報であ
ると判断されたときに、…【通信相手】との間で処理を行う N こと
を特徴とする受信装置」
イ 進歩性欠如
(ア) 本件訂正発明5を構成要件❶により解釈する場合、本件特許の優先
25 日前に頒布された刊行物である乙52(特開平10-289354号公
報)に記載された乙52発明と本件訂正発明5を対比すると、両発明は、
「【通信相手】と送受信するためのRFIDインターフェ-スを有し、
当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、個別情報
の発信要求を当該受信装置に近づけられた前記【通信相手】に発信する
発信手段と、前記【通信相手】から受信した個別情報が要求した個別情
5 報であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信
した個別情報が前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記
【通信相手】との間で処理を行うことを特徴とする受信装置」である点
で一致し、相違点は、次のとおりである。
(相違点)
10 乙52発明では、受信装置が個別情報を受送信する【通信相手】は非
接触データキャリアであるのに対して、本件訂正発明5は、受信装置が
個別情報を受送信する【通信相手】は携帯電話である点
(イ) 相違点の容易想到性
乙52発明と本件訂正発明5の相違点は、乙19記載事項との組合せ
15 により、又は「携帯電話」と「受信装置」間のRFIDインターフェー
スについての周知技術との組合せにより、容易に想到し得る。
すなわち、乙52の非接触データキャリアは、ICチップを内蔵した
ICカードやICタグも想定されるところ(段落【0001】【000
4】)、スマートカード(乙19)は、一般に、プラスチック製のカー
20 ドに収容され、データを格納したマイクロコンピュータを内蔵するもの
であり、これは、上記ICカードに他ならない。そして、スマートカー
ド(乙19)は、販売時点情報管理システム(POS)と情報のやり取
りをして取引を実行するものを含み(段落【0002】)、スマートカ
ードを携帯電話に内蔵し、RFIDインターフェースで通信を行う技術
25 の開示もあるなど、乙52と技術分野が共通する。携帯電話への内蔵に
よる破損からの保護、紛失や盗難の可能性低減、携帯電話機能の利用に
よる更新修正等の作用効果も容易に理解し得るなど組合せの動機付けが
ある。
また、乙9、11、19には「受信装置」と「携帯電話」のRFID
インターフェースによる通信という周知技術が記載されている。
5 (ウ) よって、乙52発明に乙19記載事項又は周知技術との組合せによ
り、本件訂正発明5との相違点の構成(受信装置が個別情報を受送信す
る【通信相手】は携帯電話である)に容易に想到し得るから、本件訂正
発明5は進歩性を欠く。
ウ 新規性欠如
10 本件訂正発明5を構成要件❷により解釈する場合、乙52発明と本件訂
正発明5を対比すると、両発明には相違点はなく同一発明であるから、本
件訂正発明5は新規性を欠く。
⑵ 原告らの主張
ア 本件訂正後の特許請求の範囲の記載請求項5の解釈
15 (ア) 本件訂正後の請求項4の「携帯電話」は、複数の新たな機能として
「プリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、クレジット
カード、電子マネー、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチ
ケット」を備え、それらの複数の新たな機能から1つが選択され得る構
成であり、当該「携帯電話」はその選択した1つの新たな機能(当該機
20 能を識別する個別情報)を、外部から読み取り可能な状態に置かれ、そ
の選択した1つの新たな機能のみを読み取ることが可能である。
そして、本件訂正発明5の「受信装置」の発信手段は、当該受信装置
に設けられた読み取りスイッチを押下することで、前記選択した1つの
新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられ
25 た前記携帯電話に発信するものであるところ、当該携帯電話が複数の新
たな機能の1つとして「クレジットカード」を選択し、当該「受信装置」
において要求した個別情報も「クレジットカード」を特定する個別情報
であったとすれば、本件訂正発明5の「受信装置」の判断手段は、受信
した個別情報が要求した個別情報であると判断するので、当該「受信装
置」は請求項4の携帯電話と間で処理を行うことになる。
5 よって、本件訂正後の請求項4に記載された「他のサブコンビネーシ
ョン」である携帯電話に関する事項(複数の新たな機能の中から1つが
選択され得る)は、本件訂正発明5に記載された「サブコンビネーショ
ン」の発明である「受信装置」の構造、機能等である「発信手段」を特
定することは明らかである。すなわち、本件訂正後の請求項4の携帯電
10 話に関する事項(複数の新たな機能の中から1つが選択され得る)は、
当該装置のみを特定する事項ではなく、本件訂正発明5に係る「受信装
置」の発明の構造、機能等(当該受信装置に設けられた読み取りスイッ
チの押下によって、前記選択した1つの新たな機能に対応する個別情報
の発信要求を当該受信装置に近づけられた前記携帯電話に発信する発信
15 手段)を特定するものといえる。
(イ) そして、以上を踏まえ、本件明細書の記載によれば、本件訂正発明
5の「個別情報」とは、本件訂正後の請求項4記載の機能のうち、少な
くとも1つの「新たな機能」に関する情報、すなわち「カードの種別を
示す情報」と解すべきである(なお、以上の解釈によれば、被告らの構
20 成要件❷による解釈は誤りである。)。
イ 進歩性欠如
(ア) 相違点の認定
乙52発明の「購入金額選択ボタン」の押下と「ID及び残高の読取
要求」の間には、利用者へのかざし要求が介在しており、「購入金額選
25 択ボタン」それ自体は、「ID及び残高の読取要求」を非接触データキ
ャリア30に発信するためのものではない。また、乙52発明の「ID
及び残高の読取要求」は、施設の退場ゲート付近に設置された精算機が、
非接触データキャリアに残金の返済をするために必要な要求であり、非
接触データキャリアは利用金額及び残高データを利用履歴として記憶す
るのみで、IDの一致の有無の判断はホストコンピュータが行っている
5 から、乙52発明の自動販売機はIDの一致の有無の判断手段を有さな
い。よって、乙52発明の「ID及び残高の読取要求」と本件訂正発明
5の「個別情報の発信要求」は機能・作用が異なる。
また、本件訂正発明5の「個別情報」は「複数種類の複数のカード類
から選択した1つのカードの種別を示す識別情報」と解されるところ、
10 乙52発明の非接触データキャリア30は一種類のカード(プリペイド
カード)に相当し、その識別のためには互いに異なるIDを記憶する必
要があるから、その「ID及び残高」は、本件訂正発明5の「個別情報」
である上記「カードの種別を示す識別情報」に対応しない。
したがって、乙52発明の「ID及び残高の読取要求」は、本件訂正
15 発明5の構成要件K′「読み取りスイッチの押下」による「個別情報の
発信要求」の「発信手段」を開示しない。また、乙52発明の「ID及
び残高」は「個別情報」に該当しないから、本件訂正発明5の構成要件
Lの「判断手段」も、構成要件M′の「…判断されたときに」「処理を
行う」ことも備えない。よって、被告らの主張する相違点は誤りである。
20 (イ) 容易想到性
乙52発明は「プリペイドカード」として使用可能な非接触データキ
ャリアを開示するだけであるから、これに代えて「携帯電話」を用いる
ことの動機付けはない。
仮に「携帯電話」を使用したとしても、乙52発明は本件訂正発明5
25 の構成要件K′、L、M′を開示も示唆もしないから、当業者は本件訂
正発明5には想到し得ない。すなわち、乙19文献記載の技術は、携帯
電話に1つのカード機能(スマートカード機能)をもたせRFIDイン
ターフェースで通信を行うにすぎず、本件訂正後の請求項4の携帯電話
のように複数のカード機能を対象とするものには対応しない。また、乙
9文献記載の技術は、自動改札機の発明であり、携帯通信端末には1つ
5 のカード機能(公共施設のチケット)が記憶されるにすぎず、チケット
データは、個別情報(カードの種別を示す情報)にも該当しない。自動
改札機は、携帯通信端末にチケットデータ送信要求を常時定期的に送信
しており、本件訂正発明5の読み取りスイッチの押下によって発信する
発信手段の開示もない。そして、乙11文献記載の技術では、電子通貨、
10 クレジットカード、チケットの各種カードを保有するが、それらの中か
ら1つが選択され得ることの開示はない。専用端末機の具体的な構成の
開示もなく、読み取りスイッチを設けることを積極的に排除する構成と
なっている。
第4 当裁判所の判断
15 1 当裁判所は、本件訂正後の請求項5に係る本件訂正発明5には、乙52を主
引用例とする進歩性欠如の無効理由があるから、原告らは被告らに対して権利
を行使することができず、原告らの本件訂正後の本件特許に係る本件特許権又
は本件専用実施権に基づく請求は理由がないものと判断する。その理由は、次
のとおりである。
20 2 争点2′-3〔乙52を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如〕につい
て
⑴ 本件訂正発明5の解釈
ア 本件訂正後の請求項1、3~5の記載は、前記第2の3のとおりである
ところ、本件訂正発明1、3、4は携帯電話に関する発明であり、本件訂
25 正発明5は受信装置に関する発明である。
そして、本件訂正発明5の受信装置は、「J′…携帯電話との間で送受
信する…」「K′…個別情報の発信要求を…携帯電話に発信する…」、
「L …携帯電話から受信した個別情報…」が所定のものの場合には
「M′…携帯電話との間で処理を行う」などとされるから、携帯電話と受
信装置から構成される個別情報システム(全体装置)における受信装置に
5 関する発明であるといえる。
イ 本件明細書には、別紙「本件訂正後の本件明細書の記載(抜粋)」の記
載がある。これによれば、本件訂正発明の概要は次のとおりである。
(ア) 近年、市場には膨大な数の磁気カードが流通しているが(【000
2】)、カードの改竄や不正使用が増えている現状を背景に、磁気カー
10 ドからICカードに切り替える動きが各業界において本格化しつつある
(【0005】)。そこで、携帯電話などの携帯端末に多目的ICカー
ドを統合するなどし、この端末に対してセキュリティ対策を施す方法が
検討されており、例えば、携帯端末をパスワードで保護し、端末にあら
かじめ記録されたパスワードと所有者が入力するパスワードとが一致し
15 た場合にのみICカードの機能を利用できるようにする方式が考えられ
る。しかしながら、このような方式ではカード機能を利用するたびに端
末にパスワードを入力しなければならない煩わしさがあり、また、何ら
かの理由でパスワードが漏洩した場合に、不正入手したパスワードを利
用して端末にアクセスされる可能性もある(【0007】)。
20 (イ) 本件訂正発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的と
するところは、個人情報や金銭的価値のある情報を統合して管理する場
合に当該情報の第三者による不正使用を確実に防止するための情報保護
システムを提供することにある(【0009】)。
(ウ) 本件訂正発明は、RFIDインターフェースを有する携帯電話であ
25 って、当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、
当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護するこ
とを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手
段と、前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有する
Rバッジに対して当該Rバッジの製造時に書き込まれた書換不可能な識
別情報であってRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信
5 号を送信する送信手段と、前記Rバッジより前記識別情報を受け取って、
該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との
比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付
手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御
手段とを備えることを特徴とする携帯電話により、課題を解決するもの
10 である(【0011】)。
(エ) なお、本件明細書では、金属端子による電気的な接触を使用せずに
行う通信全般を「無線通信」といい、非接触自動識別システム(RFI
D)で用いられる各方式の無線通信は、その一例である(【002
5】)。無線通信インタフェース部132及び142は、それぞれが送
15 信機能と受信機能の両方を有する。この無線通信インタフェース部13
2及び142は、たとえばRFID技術において用いられているような
アンテナやコイルなどを有し、互いにデータの送受信を行うものである。
RFIDにはさまざまな変調方式や周波数、通信プロトコルを利用した
ものがあるが、本件訂正発明は特定の方式に限定されるものではなく、
20 どのような方式を利用してもよい。ICアセンブリに設けられる無線通
信インタフェース部の数にも特に制限はなく、必要に応じて異なる変調
方式で機能する無線通信インタフェース部を複数設けるようにしてもよ
い。(【0026】【0027】)。
(オ) そして、第2の実施の形態では、携帯端末にICカードで行われて
25 いる機能を内蔵させる個別情報システムについて、クレジットカード機
能を内蔵させた携帯端末と、RFIDインターフェースの送受信部を組
み込んだ受信装置で構成されるシステムを例に説明する。
すなわち、定期券・乗車券・クレジットカード・鍵などの機能を内蔵
させる個別情報システムは、携帯端末と受信装置で構成される(【00
85】【0086】)。このうち、受信装置は、携帯端末からカード情
5 報(個別情報)を読み取る機能を備えている。携帯端末は、メモリ上の
データ格納部に個別情報としてカード情報を記憶する(【0087】
【0088】)。個別情報には複数のカード情報を記憶することができ、
その中から利用するカードを選択する機能がある(【0089】)。携
帯端末で利用するカードを選択し、携帯端末を受信装置に近づける。受
10 信装置では、例えば、読み取りスイッチの押下により、カード情報の読
み取り指示を受け、その送受信部からカード情報の発信要求を携帯端末
に発信する(【0092】)。また、受信装置では、携帯端末から受信
したカード情報が要求したカード情報であれば処理を続行するが、要求
したカード情報でない場合はエラー終了する(【0093】)。携帯端
15 末に持たせることのできるカード機能には、定期券や乗車券、鍵、電子
マネー・クレジットカード・会員権・診察券・健康保健所・身分証明書
・アミューズメント施設のチケット類の機能がある(【0094】~
【0096】)。
ウ 検討
20 ウ-1 「請求項4の携帯電話」について
(ア) 前記アのとおり、本件訂正発明5は、携帯電話と受信装置から構成
される個別情報システム(全体装置)というコンビネーションにより構
成されるものである。本件訂正発明5のうち、本件訂正後の特許請求の
範囲請求項5に記載された「受信装置」は、「請求項に係るサブコンビ
25 ネーション」であり、「J′請求項4記載の携帯電話」は、「他のサブ
コンビネーション」ということができる。
そして、本件訂正発明5における「請求項に係るサブコンビネーショ
ン」(受信装置)の発明の認定に当たっては、「他のサブコンビネーシ
ョン」(請求項4記載の携帯電話)に関する事項も検討対象とするべき
であるが、その構造、機能、形状、組成、作用、性質、特性、用途等
5 (以下「構造、機能等」という。)の観点から検討した上で、当該他の
サブコンビネーションに関する事項が、当該他のサブコンビネーション
のみを特定する事項であって、請求項に係るサブコンビネーションの構
造、機能等を特定しない場合には、当該他のサブコンビネーションに関
する事項は当該請求項に係るサブコンビネーションを特定するためには
10 意味を有しないものとして、本件訂正発明5の要旨を認定するのが相当
である。
(イ) 請求項4記載の携帯電話は、請求項3記載の携帯電話を引用してお
り、請求項3記載の携帯電話は請求項1記載の携帯電話である。したが
って、「請求項4記載の」携帯電話とは、構成要件A~I′に係る事項
15 により特定される携帯電話のことであるから、以下においては、このよ
うな携帯電話が、本件訂正発明5における受信装置の特定にどのような
意味を有するかについて検討する。
まず、本件訂正後の請求項1において、構成要件Aは、「携帯電話」
が「RFIDインターフェースを有する」ことを特定するものである。
20 また、構成要件B′における「スイッチ」及び「受付手段」、構成要件
C′における「送信手段」、構成要件Dにおける「比較手段」、構成要
件Eにおける「アクセス制御手段」は、いずれも「携帯電話」が「Rバ
ッジ」に識別情報を要求し、受信した識別情報を比較して、被保護情報
に対するアクセス要求を許可し、又は禁止することを特定するものであ
25 る。さらに、構成要件F′は、構成要件Eの「アクセス制御手段」を特
定するものである。そして、構成要件Gは「携帯電話」が「…ことを特
徴とする」ことを特定するものである。したがって、構成要件A~Gは、
いずれも「携帯電話」の構造、機能等を特定するものであり、「受信装
置」の構造、機能等を特定するものではない。
次に、本件訂正後の請求項3において、構成要件Hの「アプリケーシ
5 ョンプログラムやデバイスドライバをインターネットを経由してダウン
ロードして新たな機能を追加および/または更新する手段を有すること」
は、請求項1の「携帯電話」が有する手段を特定するものであり、「受
信装置」の構造、機能等を特定するものではない。
そして、本件訂正後の請求項4において、構成要件I′は、構成要件
10 Hの「新たな機能」を特定するものであり、「受信装置」の構造、機能
等を特定するものではない。
(ウ) 以上によれば、本件訂正後の請求項5における「他のサブコンビネ
ーション」である「請求項4記載の」携帯電話に関する事項は、本件訂
正発明5における「受信装置」の発明を特定するためには意味を有しな
15 いものといえる。
したがって、本件訂正発明5に係る発明の要旨認定においては、「請
求項4記載の」との事項は除外して認定するのが相当というべきである。
ウ-2 「個別情報」について
本件訂正発明5における「個別情報」については、前記イの本件明細書
20 の記載によれば、個別情報システムとして多様な機能の実現が想定され
(【0085】【0094】~【0096】)、受信装置において受信し
た個別情報が、要求した個別情報であれば処理を続行し、要求した個別情
報でなければエラー終了する(【0093】)ものとされる。一方、本件
明細書には、受信装置において受信した個別情報が要求した個別情報か否
25 かを判断する際の具体的内容や、個別情報を受信した後に処理を続行する
際の具体的内容については記載していない。
そうすると、本件訂正発明5において、「受信装置」は、受信した「個
別情報」について個別情報システム上の所定の処理を実行し、これにより
個別情報システムの機能を実現しているにとどまるから、これによれば、
本件訂正発明5における「個別情報」とは、個別情報システム上の所定の
5 処理を実行し、個別情報システムの機能を実現するために必要な情報をい
うものと解するのが相当である(なお、個別情報システムには、受信した
個別情報が要求した個別情報か否かを判断する段階や、その後に処理を続
行するか否を判断する段階も含まれるものと解される。)。
ウ-3 「前記選択した1つの新たな機能に対応する個別情報」について
10 本件訂正発明5における「前記選択した1つの新たな機能に対応する個
別情報」については、前記イの本件明細書の記載によれば、携帯端末にお
いて新たなカード機能を選択することの記載はあるが(【0089】【0
092】)、受信装置において、これに対応する機能を選択することなど
の記載はない。本件訂正後の本件明細書にも、受信装置が「前記選択した
15 1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求」をする旨記載されてい
るだけで(甲30、【0015】)、受信装置が発信要求をするに当たり、
携帯端末における選択との対応関係を確認したり、携帯端末における選択
と連動するような受信装置における選択を行ったりする等の技術の説明は
されていない。また、受信装置が携帯端末から受信した個別情報について
20 個別情報システム上必要な所定の処理を行う場合にも、本件明細書上、受
信装置は、当該個別情報が「要求した個別情報」であるか否かについて判
断するだけで、当該個別情報が携帯端末において選択した機能に対応する
個別情報であるか否かを判断する旨の記載は見当たらない(【009
3】)。
25 そうすると、本件訂正発明5における「前記選択した1つの新たな機能
に対応する個別情報」は、携帯電話における構成、機能等を特定し、受信
装置に受信される個別情報が携帯電話側において特定されるものであるこ
とを述べたものにすぎず、受信装置における構成、機能等を特定する記載
とはいえない。したがって、「受信装置」に関する発明である本件訂正発
明5において、「前記選択した1つの新たな機能に対応する個別情報」は、
5 単に「個別情報」とするものと技術的には異ならないものというべきであ
る。
ウ-4 「RFIDインターフェース」について
本件訂正発明5における「RFIDインターフェース」については、前
記イの本件明細書の記載によれば、RFIDは「非接触自動識別システム」
10 であり、この無線通信インタフェース部132及び142は、たとえばR
FID技術において用いられているようなアンテナやコイルなどを有し、
互いにデータの送受信を行うものであって、RFIDにはさまざまな変調
方式や周波数、通信プロトコルを利用したものがあるが、本件訂正発明は
特定の方式に限定されないなどとされる(【0025】~【0027】)。
15 そうすると、本件訂正発明5における「RFIDインターフェース」は、
非接触自動識別システムにおいて用いられる、無線でデータの送受信を行
う技術であって、特定の方式に限定されないものと解される。
エ 以上によれば、本件訂正発明5は、「携帯電話との間で送受信するため
のRFIDインターフェースを有する受信装置であって、当該受信装置に
20 設けられた読み取りスイッチの押下によって、個別情報の発信要求を当該
受信装置に近づけられた前記携帯電話に発信する発信手段と、前記携帯電
話から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断
手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求した個別
情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うことを
25 特徴とする受信装置」であるものと解される。
オ 当事者の主張について
(ア) 被告らは、請求項5の解釈において「請求項4記載の携帯電話との
間で送受信するための」との事項を除外することを主張する(前記被告
らの主張の構成要件❷の解釈)。確かに、RFIDインターフェースを
通じて受信装置と送受信することができる装置や端末である限り、技術
5 的にみて、携帯電話に限る必要はないということはできる。しかしなが
ら、本件訂正後の請求項5の構成要件J′の「携帯電話との間で送受信
するためのRFIDインターフェースを有する」との事項は、少なくと
も、構成要件上、本件訂正発明5の「受信装置」が「携帯電話」と送受
信する機能を有することを特定し、特許請求の範囲を限定するものと解
10 されるから、この意味において、本件訂正発明5の認定において「携帯
電話との間で送受信するための」の事項を除外することはできないもの
というべきである。よって、被告らの主張を採用することはできない。
(イ) 原告らは、「個別情報」について「複数種類の複数のカード類から
選択した1つのカードの種別を示す識別情報」と解されると主張する。
15 しかしながら、原告らの解釈は、本件明細書に記載されたものではない
上、「複数種類の複数のカード類から選択した」情報であるか否かは、
読み取り対象となるカード情報自体に影響する事項ではなく、当該情報
を定義する事項として意味があるものとはいえない。本件明細書には、
受信装置において「複数種類の複数のカード類から選択した情報」であ
20 るか否かを判断し、処理する旨の記載はない。他方、原告らの主張する
「カード種別を示す識別情報」については、受信した個別情報が要求し
た個別情報であるか否かを受信装置において判断する場合に必要な情報
の一つになり得るものと考えられるが、本件明細書には受信後の処理の
具体的内容が特定されていないから、本件訂正発明5において個別情報
25 の内容に「カード種別を示す識別情報」が含まれない限り受信後の処理
を実行することができないものと解することは困難である。そうすると
「個別情報」を「カード種別を示す識別情報」等に限定して解すること
はできず、原告らの主張を採用することはできない。
⑵ 乙52発明
なお、乙52発明において、非接触データキャリア及び非接触ICカード
5 を併せて「非接触データキャリア等」ということがある。
ア 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である乙52文献(特開平10
-289354公報)には、次の記載がある(別紙「乙52文献の記載内
容」参照)。
【0001】
10 【発明の属する技術分野】本発明は、プリペイド価値付けされたICカード、
ICタグ等の非接触データキャリアを用いて商品を販売(購入)する非接
触データキャリアを使用したプリペイド対応自動販売機システムに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】…本発明を適用した自動販売機システム…、図2はそ
15 の外観構成例を…示している。この自動販売機システムは、従来から利用
されているプリペイドカードの代わりに、図4に示すような非接触データ
キャリア30(リストバンド形状の非接触ICタグ、ペンダント形状の非
接触ICタグ、非接触ICカード等)を用いて商品を購入することができ
るようにしたものであり、…自動販売機部300の前面パネルには、販売
20 商品301のサンプル棚が設けられており、その下方には利用者が所望の
商品を選択して指示する商品選択ボタン310…投出された商品を取出す
ための取出口341等が設けられている。…
【0009】自動販売機部300に接続される…決済部…500は、利用者
が非接触データキャリア30を用いて商品を購入する場合の決済処理を制
25 御する装置であり、図2及び図3に示すように、決済部500の前面パネ
ルには、利用者が希望する商品の価格(金額)を択一的に受付ける購入金
額選択ボタン510…非接触データキャリア30との間でデ-タ送受信を
行うためのリ-ダライタ520のアクセスエリア523…が設けられてい
る。…リ-ダライタ520はアンテナ521及び駆動処理回路522で構
成されて…いる。
5 【0011】図4は、本発明に用いる非接触データキャリア30とリーダラ
イタ520の関係を模式的に示しており、非接触データキャリア30は…
送受信を行うアンテナ31A…が具備されている。非接触データキャリア
30は、アンテナ521及び駆動処理回路522を有するリーダライタ5
20と協働して動作し、アンテナ521及び31Aを介して電磁誘導で電
10 力を供給されると共に、相互に非接触でデータ通信を行う。データ通信は、
シリアルパルスがFSK(Frequency Shift Keying)
変調された微弱電波によって行われる。…尚、非接触データキャリア30
は非接触ICカードで代替でき…る。…
【0012】上述のような構成において、本発明の自動販売機システムの動
15 作例を図5及び図6を参照して説明する。…
【0013】決済部500では、表示/ガイダンス部530の段階1の表示
…が点灯された待機状態となっており、利用者がその表示を見て希望する
購入金額選択ボタン110(A円)を押下…かざし要求…に従って利用者
が非接触データキャリア30をアクセスエリア523にかざすと、決済部
20 500から非接触データキャリア30に対してリ-ダライタ520を介し
てID及び残高の読取要求が送られ、その読取要求に応じて非接触データ
キャリア30から決済部500にID及び残高Y…が送られるので、決済
部500は商品の販売が可能か否かをチェックする。
【0014】~【0016】上記チェックにおいて、選択金額>残高で販売
25 不可の場合にはメッセ-ジ欄の「残高が不足しています」を表示し(音声
も)、最初の待機状態となる。また、選択金額≦残高で販売可能な場合…
には、非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y-A」及び残高
照合を指示し、この指示に基いて非接触データキャリア30から決済部5
00に残高「Y-A」を送る。…決済部500では残高「Y-A」の照合
チェックを行(う)…商品の中から商品B…が利用者によって選択され…
5 商品Bの金額が受入金額Aよりも小さく、釣り銭がある場合には、決済部
500は、非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y-B+A」
及び残高照合を指示する。…非接触データキャリア30から決済部に残高
「Y-B+A」を送る。決済部500は残高「Y-B+A」の照合チェッ
クを行(う)…
10 【0019】尚、…決済部(子機)500と自動販売機部(親機)300と
を…一体化した構成としても良い。また、本発明は、飲料、食品、タバコ
等の商品の自動販売機に限らず、交通機関の切符や食券の券売機、コイン
ロッカー、自動受付機など、自動サービス機器全般に応用することができ
るものである。
15 イ 以上によれば、乙52文献に記載された発明(乙52発明)では、リ-
ダライタ520は、アンテナ521及び駆動処理回路522で構成され、
非接触データキャリア30との間で、相互に非接触のデ-タ送受信を行う
ものである(【0009】。なお、非接触データキャリア30は非接触I
Cカードに代替可能とされている(【0011】))。したがって、「リ
20 ーダライタ520」は、本件訂正発明5の「RFIDインターフェースを
有する受信装置」に相当する。
また、乙52発明では、非接触データキャリア30が送ってくる「残高
Y」は(【0013】)、自動販売機における商品の販売が可能か否かを
チェックし、販売取引を処理するために必要な情報であって(【001
25 4】)、非接触データキャリアを使用したプリペイド対応自動販売機シス
テム(【0001】)上の所定の処理を実行し、その機能を実現するため
に必要な情報であるから、「個別情報」に相当する。
さらに、乙52発明では、「購入金額選択ボタン110」を押下し、か
ざし要求に従ってアクセスエリア523に非接触データキャリア30をか
ざすと、決済部500からリ-ダライタ520を介して非接触データキャ
5 リア30に対して「ID及び残高の読取要求」が送られ る(【001
3】)。そうすると、乙52発明の「購入金額ボタン110」が本件訂正
発明5の「読み取りスイッチ」に相当し、乙52発明の「アクセスエリア
523」にかざされた「非接触データキャリア30」に対して「決済部5
00」から「ID及び残高の読取要求を送る」ことは、本件訂正発明5の
10 「受信装置に近付けられた」機器に「個別情報の発信要求を発信する」こ
とに相当する。
加えて、乙52発明では、非接触データキャリア30から決済部500
に送られた残高が選択金額以上であり、商品の販売が可能か否かをチェッ
クしており(【0013】【0014】)、これは、プリペイド対応自動
15 販売機システムにおけるプリペイド機能を具体化する販売処理が実行可能
か否かを判断することであるから、「受信した個別情報が要求した個別情
報であるか否かを判断する」ことに相当する。
そして、乙52発明で商品の「販売可能な場合」(【0014】)は、
「受信した個別情報が前記要求した個別情報であると判断されたときに」
20 相当し、その場合は「非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y
-A」及び残高照合を指示し、この指示に基いて非接触データキャリア3
0から決済部500に残高「Y-A」を送り、決済部500では残高「Y
-A」の照合チェック」等の処理を行う(【0014】~【0016】)
から、これは、送受信のやり取りを行う機器「との間で処理を行う」こと
25 に相当する。
ウ したがって、乙52文献には、次の乙52発明が記載されているものと
認められる。
「 非接触データキャリア等との間で送受信するためのRFIDインターフ
ェースを有する受信装置であって、当該受信装置に設けられた読み取りス
イッチの押下によって、個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられ
5 た前記非接触データキャリア等に発信する発信手段と、前記非接触データ
キャリア等から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断
する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求
した個別情報であると判断されたときに、前記非接触データキャリア等と
の間で処理を行うことを特徴とする受信装置」
10 ⑶ 本件訂正発明5と乙52発明の対比
本件訂正発明5と乙52発明を対比すると「対象となる機器との間で送受
信するためのRFIDインターフェースを有する受信装置であって、当該受
信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、個別情報の発信要求
を当該受信装置に近づけられた前記機器に発信する発信手段と、前記機器か
15 ら受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段と
を有し、前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求した個別情報であ
ると判断されたときに、前記機器との間で処理を行うことを特徴とする受信
装置」の点で一致し、相違点は、以下のとおりである(これに反する原告ら
の主張は、後記のとおり採用することができない。)。
20 (相違点)
本件訂正発明5では「受信装置」が「個別情報」の送受信や「処理」を行
う対象が「携帯電話」であるのに対し、乙52発明では「非接触データキャ
リア等」である点
⑷ 相違点の容易想到性について
25 ア 各文献の記載事項
(ア) 乙19文献は、平成10年4月14日に公開された発明の名称を
「セルラ電話で用いるための非接触型スマートカード」とする特許出願
の公開公報(特開平10-98542号公報)である。乙19文献には、
銀行業務、輸送、加入者、医療、IDなどに関する多くの種類の情報を
転送するための媒体であるスマートカードについて、その能力内の処理
5 を実行する際には、外部リーダ/システム(自動現金引出し・預入れ装
置〔ATM〕、POSシステムなど)との間でやり取りを行うが、接触
型の可撓性プラスチック・スマートカードの問題点や欠点(汚損可能性、
紛失可能性等)を解決するため、スマートカード及びその関連機能をセ
ルラ電話機能に組み込むことにより、電話におけるスマートカード論理
10 機能回路と外部リーダ/システムとの非接触インターフェースを行い
(RFインターフェース)、これによりスマートカード内のデータ(個
別情報)の送受信を行う技術が開示されている(乙19【0002】~
【0004】【0007】【0011】【0029】【0032】【0
033】参照)。
15 (イ) 乙9文献は、平成10年6月19日に公開された発明の名称を「自
動改札システム」とする特許出願の公開公報(特開平10-16217
6号公報)である。乙9文献には、自動改札システムに関して、発券機
の設置場所まで利用者が足を運んでチケットを購入しなければならない
従来のICカードチケットに代えて携帯通信端末にチケットデータを電
20 話回線網を介してダウンロードして記憶させ、利用者が携帯通信端末を
自動改札機にかざすと、携帯通信端末は自動改札機からチケットデータ
送信要求を受信し、これに従ってチケットデータを送信する、また、自
動改札機は受信したチケットデータに基づいて改札扉の開閉を行い、利
用者の改札通行を整理することなどが記載されており(乙9【0004】
25 【0013】【0017】~【0019】【0021】【0022】
【0057】~【0064】、原判決別紙「乙9文献の開示事項」参
照)、ICカードに代えて携帯電話等と受信用端末との非接触の交信に
よって個別情報の送受信を行う技術及びこれを前提とした発明が開示さ
れている。
(ウ) 乙11文献は、平成12年11月2日に公開された発明の名称を
5 「携帯電話を利用した電子通貨と電子的財布」とする特許出願の公開公
報(特開2000-306032号公報)である。乙11文献には、各
種ICカード等に代えて、各種システム及び情報を電子化して携帯電話
等に記憶させ、携帯電話自体が各種カード等の役割をするようにし、専
用端末機が携帯電話と赤外線や電波や超音波等により自動的に交信し、
10 照会や精算を行うことなどが記載されており(乙11【0006】【0
007】【0016】参照)、各種カードの情報を携帯電話に統合し、
ICカードに代えて携帯電話等と受信用端末との非接触の交信によって
個別情報の送受信を行う技術及びこれを前提とした発明が開示されてい
る。
15 (エ) 以上によれば、スマートカードの機能を携帯電話の機能に取り込み、
受信装置におけるRFIDインターフェースを用いて、スマートカード
内のデータ(個別情報)の送受信を携帯電話との非接触の交信により行
う技術(乙19)及び受信装置における個別情報の送受信を、ICカー
ドに代えて携帯電話との非接触の交信により行う技術(乙9及び11)
20 は、本件特許の優先日(平成13年4月17日)当時、いずれも外部メ
ディアに記録された個別情報の送受信により必要な処理を行うシステム
を開発しようとする当業者にとって周知技術であったということができ
る。
イ 乙52発明とこれらの周知技術は、いずれもRFIDインターフェース
25 を用いて、非接触の交信によりシステムの処理に必要な個別情報を送受信
する点において技術分野が共通している。そして、乙52発明の「非接触
データキャリア等」は、非接触ICカードを含むところ、乙52発明にこ
れらの周知技術を適用し、受信装置との個別情報の通信を行う「非接触デ
ータキャリア等」(非接触ICカード)に代えて「携帯電話」とする構成
を採用することは、当業者において容易に想到し得たものということがで
5 きる。
ウ したがって、本件訂正発明5は、当業者が乙52発明に基づいて容易に
発明をすることができたものであるから、進歩性を欠くというべきである。
⑸ 原告らの主張について
ア 原告らは、乙52発明の「購入金額選択ボタン」の押下と「ID及び残
10 高の読取要求」の間には、利用者へのかざし要求が介在するから、「購入
金額選択ボタンの押下」それ自体は「ID及び残高の読取要求」を非接触
データキャリアに発信するためのものではないなどと主張する。
しかしながら、「利用者へのかざし要求」は、非接触のデータ交信の前
提条件と考えるのが自然であり、本件訂正発明5の構成要件「K′当該受
15 信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、前記選択した1つ
の新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられ
た前記携帯電話に発信する発信手段と、」においても、「受信装置に近づ
けられた携帯電話」に発信要求を発信することとされているから、この点
において乙52発明と本件訂正発明5との間には実質的な相違点はない。
20 また、本件訂正発明5の構成要件K′は、「読み取りスイッチの押下」が
契機となって「個別情報の発信要求」を発信するような「発信手段」であ
ることを特定しているものと解され、「読み取りスイッチの押下」と「発
信要求」が直接対応するような「発信手段」であることまで特定するもの
とは解し難い(本件明細書【0092】参照)。
25 乙52発明の「購入金額選択ボタンの押下」も、これを契機として「I
D及び残高の読取要求」が行われるという関係にあることが認められる以
上、当該構成要件を充当するというべきであるから、原告らの主張を採用
することはできない。
イ 原告らは、乙52発明の「ID及び残高」は「個別情報」に該当しない
から、本件訂正発明5の構成要件Lの「判断手段」も、構成要件M′の
5 「…判断されたときに」「処理を行う」ことも備えないなどと主張する。
しかしながら、前記⑴ウ-2のとおり、本件訂正発明5における「個別情
報」とは、個別情報システム上の所定の処理を実行し、個別情報システム
の機能を実現するために必要な情報のことを広く指すから、乙52発明に
おける「ID及び残高」が当該「個別情報」に該当しないということはで
10 きない。原告らの主張は、本件訂正発明5に関する原告らの解釈を前提と
するものと考えられるが、同解釈を採用することができないことは、前記
⑴オのとおりである。
ウ その他、原告らは、本件訂正発明5に係る特許の無効理由を判断するに
当たっては、構成要件AからNまでの全てを一連の構成要件として考慮し
15 て判断されるべきであるから、請求項4記載の携帯電話を除外して、本件
訂正発明5の無効理由を認めることは特許法123条1項柱書後段の法理
を無視するものである旨主張するが、「請求項4記載の」携帯電話である
ことは、本件訂正発明5の内容を特定する意味を持たないと解されること
は前記のとおりであるから、同主張も理由がない。
20 3 小括
以上によれば、本件訂正発明5には、乙52文献を主引用例とする進歩性欠
如の無効理由があるから、原告らは、被告らに対し、本件特許の特許権又は専
用実施権を行使することはできない(特許法104条の3)。
そうすると、その余の点について判断するまでもなく、原告らの本件請求は
25 いずれも理由がない。そして、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、
前記認定判断を左右するに足りる的確な主張立証はない。
第4 結論
よって、原判決は、結論においてこれと同旨であるから、本件控訴をいずれ
も棄却することとして、主文のとおり判決する。
5 知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
10 清 水 響
裁判官
15 菊 池 絵 理
裁判官
20 頼 晋 一
(別紙)
当 事 者 目 録
控訴人(一審原告) 株 式 会 社 モ ビ リ テ ィ
5 (以下「原告モビリティ」という。)
控訴人(一審原告) モビリティ・エックス株式会社
(以下「原告モビリティ・エックス」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 寒 河 江 孝 允
被控訴人(一審被告) パナソニックコネクト株式会社
(以下「被告パナソニックコネクト」という。)
被控訴人(一審脱退被告パナソニックホールディングス株式会社承継
参加人) パナソニック株式会社
(以下「被告パナソニック」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 増 井 和 夫
同 橋 口 尚 幸
同 齋 藤 誠 二 郎
以上
(別紙)
本件訂正後の特許請求の範囲の記載
【請求項1】
RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、当該携帯電話のスイッチを押す
5 ことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限
し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段
と、前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジに対して当
該Rバッジの製造時に書き込まれた書換不可能な識別情報であってRバッジを一意に識別
できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記Rバッジより前記識別情
10 報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との
比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた
前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手
段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前
記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過する前に前記被保護情報へのアクセスが
15 なされた場合には当該アクセスを許可し、前記所定時間が経過した後に前記被保護情報へ
のアクセスがなされた場合には当該アクセスを禁止することを特徴とする携帯電話。
【請求項2】
前記被保護情報は、プリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、クレジット
カード、定期券、乗車券、電子マネー、鍵、会員権、診察券、健康保険証、身分証明書、
20 アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケット、社員証、学生証、通行証、各種
証明書発行用カード、図書館の貸出カード、入退室管理カードのうち少なくとも1つに記
録されたデータであることを特徴とする請求項1記載の携帯電話。
【請求項3】
請求項1記載の携帯電話であって、アプリケーションプログラムやデバイスドライバをイ
25 ンターネットを経由してダウンロードして新たな機能を追加および/または更新する手段
を有することを特徴とする携帯電話。
【請求項4】
前記新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、クレジットカ
ード、電子マネー、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケットのうち少なく
30 とも1つであって、それらの中から1つが選択され得ることを特徴とする請求項3記載の
携帯電話。
【請求項5】
請求項4記載の携帯電話との間で送受信するためのRFIDインターフェースを有する受
信装置であって、当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、前記選択
35 した1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられた前記
携帯電話に発信する発信手段と、前記携帯電話から受信した個別情報が要求した個別情報
であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情報が前記
要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話との間で処理を行うことを特
徴とする受信装置。
40 【請求項6】(削除) 以上
(別紙)
本件訂正後の本件明細書の記載(抜粋)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
5 【0001】
本発明はRFIDインターフェースを利用した情報保護技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、市場には膨大な数の磁気カードが流通している。一例として、クレジットカード、
10 キャッシュカード、プリペイドカード、社員証や学生証、通行証、各種証明書発行用カー
ド、図書館の貸出カード、入退室管理カードなどがあげられる。これらのカードは特定の
目的ごとに提供されているため、場合によっては外出時に何枚ものカードを携行しなけれ
ばならない。しかしながら、カードの枚数によっては非常にかさばる上に、必要なときに
必要なカードをすぐに取り出しにくいなどの問題がある。
15 【0003】
これに対する対応策として、複数のカードを可能な限り1枚にまとめる方法が考えられる。
たとえば、金融機関のキャッシュカードをクレジットカードとしても利用できるようにし
かカードが、デビッドカードとして実用化されている。デビッドカードの所有者は、店舗
備え付けの端末にカードを挿入して暗証番号を入力するだけで、現金を持ち歩かずに商品
20 を購入することができる。
【0004】
しかしながら、決済時にテンキーを使って自分で暗証番号を入力しなければならず、暗証
番号漏洩の不安を拭いきれないことが普及の妨げとなっている。また、デビットカードで
は磁気ストライプを利用しているため、紛失や盗難事故の際に改竄されやすいという問題
25 もある。事実、磁気ストライプに記録されたデータを読み取り、偽造カードにコピーして
使用する「スキミング」と呼ばれる被害が近年になって急増している。
【0005】
こうしたカードの改竄や不正使用が増えている現状を背景に、磁気カードからICカード
に切り替える動きが各業界において本格化しつつある。周知のように、ICカードとはプ
30 ラスチック製のカードにICチップを埋め込んだもので、磁気カードに比べて偽造が難し
いという利点がある。また、データ記録容量が極めて大きいため、複数のカードを1枚に
まとめた多目的カードを比較的容易に製造することができるという利点もある。
【0006】
しかしながら、従来のクレジットカードなど個人情報と金銭的価値の両方が付帯するカー
35 ドの場合、所有者以外の第三者に不正使用された場合の被害は甚大である。一方、金銭的
な価値がありながら匿名性の高いカード(プリペイドカードなど)では、紛失や盗難事故
の際に所有者の手元に戻ってくる可能性が極めて低いという欠点がある。さらに、金銭的
な価値はなくとも個人情報が多く記録されたカード(住民カードや保健医療カードなど)
であればプライバシー保護の観点からさまざまな問題が危惧される。
40 【0007】
そこで、携帯電話、PHS、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコンなどの携帯端末に
多目的ICカードを統合したり、複数のICカードの機能を搭載したり、あるいは搭載可
能な仕組み(ICカードとしての機能を実行するためのソフトを所定のサーバ等にダウン
ロード可能な形態で提供し、そのソフトをダウンロードする、あるいはこのようなソフト
5 が搭載された、カード用専用チップを装着する等)を用意するなどし、この端末に対して
セキュリティ対策を施す方法が検討されている。ICカードには大きく分けて接触型と非
接触型の2種類があり、カードに記録されたデータを利用するには接触型の場合は専用の
端末(以下、「リーダライタ」と呼ぶ)にカードを挿入しなければならないが、非接触型
ではその必要がなく、リーダライタにかざすだけでよい。したがって、携帯端末をパスワ
10 ードで保護し、端末にあらかじめ記録されたパスワードと所有者が入力するパスワードと
が一致した場合にのみICカードの機能を利用できるようにする方式が考えられる。しか
しながら、このような方式ではカード機能を利用するたびに端末にパスワードを入力しな
ければならない煩わしさがあり、リーダライタにかざすだけでよいという非接触型ICカ
ードの利点が半減してしまう。また、パスワード自体は所有者個人を特定する手段にはな
15 らず、何らかの理由でパスワードが漏洩した場合に、悪意の拾得者が不正入手したパスワ
ードを利用して端末にアクセスする可能性もある。
【0008】
あるいは、携帯端末の紛失時に通常の電話機を利用して遠隔地から携帯端末を緊急制御す
る方法も考えられる。すなわち、プッシュボタン操作によって生成される信号を利用して
20 携帯端末の不正使用を防止するものである。しかしながら、この方法では遠隔操作に対応
した基地局の存在が不可欠になるため、確実に不正使用を防止するという意味では不十分
である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
25 【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、個人情報や金
銭的価値のある情報を統合して管理する場合に当該情報の第三者による不正使用を確実に
防止するための情報保護システムを提供することにある。
【0010】
30 本発明の他の目的は、かかる情報保護システムを実現するための情報保護方法を提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、当
35 該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第
三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要
求として受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェース
を有するRバッジに対して当該Rバッジの製造時に書き込まれた書換不可能な識別情報で
あってRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、
40 前記Rバッジより前記識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予
め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じ
て前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段と
を備え、前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比
較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過する前に前
5 記被保護情報へのアクセスがなされた場合には当該アクセスを許可し、前記所定時間が経
過した後に前記被保護情報へのアクセスがなされた場合には当該アクセスを禁止すること
を特徴とする携帯電話が得られる。
【0012】
上記携帯電話において、前記被保護情報は、例えば、プリペイドカード、キャッシュカー
10 ド、デビッドカード、クレジットカード、定期券、乗車券、電子マネー、鍵、会員権、診
察券、健康保険証、身分証明書、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケット、
社員証、学生証、通行証、各種証明書発行用カード、図書館の貸出カード、入退室管理カ
ードなどに記録されたデータであってよい。
【0013】
15 また、上記携帯電話はアプリケーションプログラムやデバイスドライバをインターネット
を経由してダウンロードして新たな機能を追加および/または更新する手段を有すること
が好ましい。
【0014】
前記新たな機能とは、例えば、プリペイドカード、キャッシュカード、デビッドカード、
20 クレジットカード、電子マネー、アミューズメント施設のチケット、公共施設のチケット
などであって、それらの中から1つが選択され得る。
【0015】
また、本発明の第2の形態によれば、前記携帯電話との間で送受信するためのRFIDイ
ンターフェースを有する受信装置であって、当該受信装置に設けられた読み取りスイッチ
25 の押下によって、前記選択した1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受
信装置に近づけられた前記携帯電話に発信する発信手段と、前記携帯電話から受信した個
別情報が要求した個別情報であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で前
記受信した個別情報が前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記携帯電話と
の間で処理を行うことを特徴とする受信装置が得られる。
30 【0016】(削除)
【発明の効果】
【0017】
以上詳細に説明したように、本発明では、携帯端末に定期券・クレジットカード・運転免
許書などの個人情報を携帯端末に登録することができる。
35 【0018】
また、携帯端末に一意に割り振られる識別情報をもとに携帯端末の利用状況の履歴を取る
ことが確実に行われ悪用を防ぐことができる。
【0019】
さらに、携帯端末が悪意を持つ第3者に渡っても、対応するレッドバッジ(ICチップ)
40 などがない限り悪用できない。
【0020】
また、これにより、利用した覚えのない料金を支払う必要がない。
【0021】
或いは、携帯端末に記憶されている個人データの流出を防ぐことが可能になる。
5 【0022】
また、非接触ICチップとも送受信ができ、携帯端末からICカードの識別を行うことも
できる。さらに、書き込みが行え、容易にRFIDシステムが構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
10 以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による情報保護システムの概要を示すブロック図である。こ
の情報保護システムは、第1のICアセンブリ130と第2のICアセンブリ140とで
構成される。第1のICアセンブリは、中央処理装置(CPU)131と、無線通信イン
15 タフェース部132と、照合用データ記録部133と、トリガ信号受信部134と、被保
護情報記録部135とを備えている。同様に、第2のICアセンブリ140は、CPU1
41と、無線通信インタフェース部142と、照合用データ記録部143とを備えている。
また、第1および第2のICアセンブリ130および140は、各アセンブリで必要なア
プリケーションプログラムや制御プログラム、オペレーティングシステム(OS)、デバ
20 イスドライバなどが格納された図示しない読取専用メモリ(ROM)やランダムアクセス
メモリ(RAM)を含む。
【0025】
第1のICアセンブリ130および第2のICアセンブリ140は、無線を利用して互い
にデータの送受信が可能なように構成されている。この場合、本願明細書において使用す
25 る「無線通信」という用語は、金属端子による電気的な接触を使用せずに行う通信全般を
意味し、一例として、非接触自動識別システム(RFID(Radio Frequen
cy Identifycation)で用いられている電磁結合方式、電磁誘導方式、
マイクロ波方式、光方式の無線通信があげられる。また、米国特許第6,211,799
号(特開平11-225119号)に開示されているような人体を介して電力と情報を伝
30 送するための方法による通信も本願明細書における「無線通信」に包含されるものとする。
【0026】
CPU131は、第1のICアセンブリ130の各構成要素を制御し、CPU141は第
2のICアセンブリ140の各構成要素を制御する。無線通信インタフェース部132お
よび142は、それぞれが送信機能と受信機能の両方を有する。この無線通信インタフェ
35 ース部132および142は、たとえばRFID技術において用いられているようなアン
テナやコイルなどを有し、互いにデータの送受信を行うものである。
【0027】
RFIDにはさまざまな変調方式や周波数、通信プロトコルを利用したものがあるが、本
発明は特定の方式に限定されるものではなく、どのような方式を利用してもよい。ICア
40 センブリに設けられる無線通信インタフェース部の数にも特に制限はなく、必要に応じて
異なる変調方式で機能する無線通信インタフェース部を複数設けるようにしてもよい。な
お、汎用性の観点から見ると、非接触型ICカードの分野で標準規格化が進められている
仕様に準拠するなどの方式を採用すると好ましい。日本においては、次世代ICカードシ
ステム研究会(the Next Generation IC Card Syste
5 m Study Group)やICカードシステム利用促進協議会(Japan IC
Card System Application Council)が標準化活動を行
っている。また、すでに確立されている国際規格として、ISO/IEC10536、I
SO/IEC14443、ISO/IEC15693がある。このような規格に準拠した
無線通信インタフェース部132および142とすることで、より一層汎用的かつ実用性
10 の高い情報保護システムを構築できる可能性がある。
【0085】
第2の実施の形態では、携帯端末10に(ICカードで行われている)定期券・乗車券・
クレジットカード・鍵などの機能を内蔵させる個別情報システムについて説明する。ここ
では、クレジットカードなどカード機能を携帯端末10に内蔵させる場合を例に説明する。
15 前述の実施の形態と同一のものには同一符号を伏して詳細な説明を省略する。
【0086】
他の実施の形態における個別情報
システム11は、図12に示すように、携帯端末10とRFIDインターフェースの送受
信部20’(受信部)を組み込んだ受信装置60とで概略構成される。
20 【0087】
受信装置60は、送受信部20’と制御部40’が設けられ、携帯端末10から個別情報
を読み取る機能を備えている。この受信装置60に携帯端末10を近づけて個別情報を読
み取るようにするため、送受信部20’には、近接型を使用することが好ましい。
【0088】
25 携帯端末10は、図13に示すように、メモリ30上のデータ格納部34に個別情報34
0を記憶する。ここでは、個別情報340としてカード情報を記憶している例について説
明する。
【0089】
個別情報340には、複数のカード情報(例えば、図13のA、B、C)を記憶すること
30 も可能でその中から利用するカードを選択する機能を備える。さらに、カードに応じたア
プリケーションプログラム33を複数用意し、各カードに応じた機能を持たせることが可
能である。
【0090】
以下、個別情報340をカード情報と置き換えて説明する。
35 【0091】
次に、本実施の形態の動作を図14のフローチャートに従って説明する。
【0092】
携帯端末10で、利用するカードを選択して(S120)、携帯端末10を受信装置60
に近づける。受信装置60では、例えば、受信装置60に設けられている読み取りスイッ
40 チの押下によって、カード情報340の読み取り指示を受け取ると、読み取りコマンドを
送受信部20に送る(S220)。そこで、送受信部20から指定されているカードのカ
ード情報340(個別情報)の発信要求(パワーパルスなど)を携帯端末10に発信する
(S221)。
【0093】
5 携帯端末10では、カード情報340の発信要求を受け取ると選択されているカード情報
340を発信する(S122)。受信装置60では、受信したカード情報340が、要求
したカード情報であれば処理を続行するが(S224)、要求したカード情報でない場合
はエラー終了する(S225)。
【0094】
10 本実施の形態では、携帯端末10にカード機能を持たせる場合について説明したが、定期
券や乗車券の機能を持たせることも可能である。この場合には、受信装置60の送受信部
20には、多少離れた位置から読み取り可能なように近接型を利用することが好ましい。
【0095】
また、携帯端末10に鍵の機能を持たせることも可能である。この場合には、受信装置6
15 0の送受信部20には、やや離れた位置から読み取り可能なように近傍型または近接型を
利用することが好ましい。
【0096】
また、電子マネー・クレジットカード・会員権・診察券・健康保健所・身分証明書・アミ
ューズメント施設のチケット類の機能を持たせることも可能である。
20 【0097】
さらに、個別情報340は、携帯端末10の固体それぞれを識別する識別情報を利用する
こともできる。
【0098】
さらにまた、携帯端末10を買い換えるなど置き換えをする場合には、携帯端末10に記
25 録されている電子マネー・クレジットカード・会員権などを管理する管理会社にインター
ネットなどを介して置き換えを通知する。そこで、古い携帯端末10では利用できないよ
うにし、新しい携帯端末10にその情報をダウンロードして利用するようにすることも可
能である。
【0099】
30 以上、説明したように、携帯端末10に、複数の機能を兼ね備えるようにすることが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の一実施形態による情報保護システムの概要を示すブロック図である。
35 【図12】個別情報システムの構成を表す図である。
【図13】携帯端末に個別情報が格納されているようすを示す図である。
【図14】個別情報システムの動作を示すフローチャートである。
図1 図12
図13
図14
以 上
(別紙)
乙52文献の記載内容
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリペイド価値付けされたICカード、ICタ
5 グ等の非接触データキャリアを用いて商品を販売(購入)する非接触データキャリア
を使用したプリペイド対応自動販売機システムに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明を適用した自動販売機システムの主要部の構成の
一例を示すブロック図であり、図2はその外観構成例を、図3はパネル面の詳細を示
10 している。この自動販売機システムは、従来から利用されているプリペイドカードの
代わりに、図4に示すような非接触データキャリア30(リストバンド形状の非接触
ICタグ,ペンダント形状の非接触ICタグ,非接触ICカード等)を用いて商品を
購入できるようにしたものであり、親機300と子機500とから構成されている。
親機300は、従来から使用されている一般的な現金による自動販売機(以下、「自
15 動販売機部」と言う)であり、図2に示すように、自動販売機部300の前面パネル
には、販売商品301のサンプル棚が設けられており、その下方には利用者が所望の
商品を選択して指示する商品選択ボタン310、一般的な現金販売による現金投入口
321、商品の購入を中止して返却(返金)を指示する返却レバー322、残額等を
表示するための表示部330、投出された商品を取出すための取出口341等が設け
20 られている。尚、自動販売機部300において、図1の破線で示す貨幣処理部32
0、返却レバー322、表示部330及び現金投入口321は、一般的な現金販売も
併用できるようにした場合の構成を示しており、非接触データキャリア30のみを対
象とした場合は、現金投入口321、返却レバー322、表示部330及び貨幣処理
部320は不要となる。
25 【0009】自動販売機部300に接続される子機(以下、「決済部」と言う)50
0は、利用者が非接触データキャリア30を用いて商品を購入する場合の決済処理を
制御する装置であり、図2及び図3に示すように、決済部500の前面パネルには、
利用者が希望する商品の価格(金額)を択一的に受付ける購入金額選択ボタン51
0、商品の購入を中止して返金(返却)を指示する返却指示手段としての返金ボタン
30 511、非接触データキャリア30との間でデ-タ送受信を行うためのリ-ダライタ
520のアクセスエリア523、利用者の操作を案内したり、利用前後のプリペイド
残高等を表示する表示/ガイダンス部530が設けられている。決済部500の内部
構成は図1に示すようになっており、決済部500は、上記購入金額選択ボタン51
0、返金ボタン511、リ-ダライタ520、表示/ガイダンス部530に接続さ
35 れ、決済に係る制御を行うCPU,メモリ等で成る制御部540を有しており、制御
部540には、ホストコンピュ-タへ取引状況ログを送出するために私設無線回線、
PHS電話回線等で接続された通信端末550が接続されている。また、制御部54
0はインタフェ-ス(I/F)装置541を経て自動販売機部300に接続されてお
り、自動販売機の仕様に基づくコマンド/レスポンスの授受によって、非接触データ
40 キャリアを用いたプリペイドによる販売を制御するようになっている。尚、リ-ダラ
イタ520はアンテナ521及び駆動処理回路522で構成されており、アンテナ5
21を覆い、かつ非接触データキャリア30によって押圧され易いようにパネル面か
ら突出した形状で、押圧部523が設けられている。
【0011】図4は、本発明に用いる非接触データキャリア30とリーダライタ52
5 0の関係を模式的に示しており、非接触データキャリア30は、円盤状の本体部31
と、本体部31を装着して腕に装填するためのバンド32とで構成されており、通常
は利用者の腕にはめられた状態で使用される。本体部31には送受信を行うアンテナ
31A及びデータ処理を行うICチップ31Bが具備されている。非接触データキャ
リア30は、アンテナ521及び駆動処理回路522を有するリーダライタ520と
10 協働して動作し、アンテナ521及び31Aを介して電磁誘導で電力を供給されると
共に、相互に非接触でデータ通信を行う。データ通信は、シリアルパルスがFSK
(Frequency Shift Keying)変調された微弱電波によって行
われる。かかるリーダライタ520が決済部(子機)500に装着され、駆動処理回
路522で処理されたデータが制御部540に送出されるようになっている。尚、非
15 接触データキャリア30は非接触ICカードで代替でき、いずれも市販のものを利用
できる。又、有効距離が1mにも及ぶものは自動販売機等で利用者を特定できなくな
るため、本発明では有効距離が1~2cmのものを使用する。
【0012】上述のような構成において、本発明の自動販売機システムの動作例を図
5及び図6を参照して説明する。図5は取引のシーケンスの詳細を時系列に示してお
20 り、自動販売機部300と決済部500との間のインタフェースは、受入金額を販売
機に送って選択商品金額を受取り、支払い後の残金を販売機に送ると商品が投出され
る制御がされている従来の自動販売機のインタフェースをそのまま使用している。ま
た、図6は、取引のシーケンスに具体的な金額と操作例を記載した模式図である。決
済部500はホストコンピュータとの通信端末550を備えており、取引状況ログを
25 適宜ホストコンピュータに送信して記憶管理するようにしている。
【0013】決済部500では、表示/ガイダンス部530の段階1の表示「上の金
額ボタンを押して下さい」が点灯された待機状態となっており、利用者がその表示を
見て希望する購入金額選択ボタン110(A円)を押下(図6の例では「90円」が
選択)することにより、当該選択された金額の購入金額選択ボタン510(A円)が
30 点灯表示されると共に、非接触データキャリア30のアクセスエリア523へのかざ
し要求を行う。即ち、表示/ガイダンス部530の段階2の表示「上の枠内にタグを
かざしてください」を点灯すると共に、音声によっても利用者へのかざし要求を行
う。この操作案内に従って利用者が非接触データキャリア30をアクセスエリア52
3にかざすと、決済部500から非接触データキャリア30に対してリ-ダライタ5
35 20を介してID及び残高の読取要求が送られ、その読取要求に応じて非接触データ
キャリア30から決済部100にID及び残高Y(図6の例では1000円)が送ら
れるので、決済部100は商品の販売が可能か否かをチェックする。
【0014】上記チェックにおいて、選択金額>残高で販売不可の場合にはメッセ-
ジ欄の「残高が不足しています」を表示し(音声も)、最初の待機状態となる。ま
40 た、選択金額≦残高で販売可能な場合(図6の例では90円<1000円で販売可)
には、非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y-A」及び残高照合を指示
し、この指示に基いて非接触データキャリア30から決済部500に残高「Y-A」
を送る。図6の例では、1000円-90円=910円が残高として送られている。
決済部500では残高「Y-A」の照合チェックを行って、表示/ガイダンス部53
5 0の残高欄に残高「Y-A」を表示すると共に、受入金額A(図6の例では90円)
を自動販売機部300に送出し、販売可能な商品301のランプ(商品選択ボタン3
10)を点灯する。この状態で表示/ガイダンス部530の表示は、段階3の「横の
自動販売機の商品選択ボタンを押してください」となっている。図6の例では、自動
販売機部(親機)300に収納されている販売商品は、「100円」,「90円」,
10 「70円」,「60円」の4種類であり、90円の受入金額が送られると「90
円」,「70円」及び「60円」の商品選択ボタン310のランプが点灯される。但
し、商品売切れなどの場合には、選択ボタン310が点灯されないことは従来のもの
と同じである。
【0015】表示/ガイダンス部530の案内に従って、ランプ点灯された商品の中
15 から商品B(図6の例では70円)が利用者によって選択されると、自動販売機部3
00では商品選択ボタン310の選択信号を入力し、当該商品選択ボタンの商品に対
応する金額Bを利用金額データとして決済部500に送ると共に、商品投出部340
を介して商品Bを投出する。そして、表示/ガイダンス部530は、段階4の「商品
をお取ください」を音声と共に表示する。図6の例では、70円の商品が選択されて
20 いるので、70円の利用金額デ-タが決済部500に送られている。利用金額デ-タ
Bを受けた決済部500内の制御部540では、デ-タの更新を行うと共に、更新完
了を自動販売機部500に通知し、取引終了となる。
【0016】ここにおいて、商品Bの金額が受入金額Aよりも小さく、釣り銭がある
場合には、非接触データキャリア30をアクセスエリア523にかざすように、表示
25 /ガイダンス部530に段階5の「お釣りがあります もう一度タグをかざしてくだ
さい」を音声と共に表示して利用者に通知する。図6の例では、受入金額90円に対
して70円の商品が選択されているので、90円-70円=20円の釣り銭が生じて
いる。この様に釣り銭がある場合に、利用者が非接触データキャリア30をアクセス
エリア523に再度かざすと上述と同様に、決済部500から非接触データキャリア
30 30に対してID及び残高の読取要求が指示される。このときIDが相違している場
合には、表示/ガイダンス部530のメッセージ欄の「もう一度タグをかざしてくだ
さい」を表示(音声も)し、タグ受付状態に戻る。IDが一致している場合には、非
接触データキャリア30から決済部500に対してID及び現在の残高「Y-A」が
送られる。図6の例では、1000円-90円=910円が残高として送られる。I
35 D及び残高「Y-A」が決済部500に送られると、決済部500は非接触データキ
ャリア30に対して残高書換え「Y-B+A」及び残高照合を指示する。図6の場合
の残高書換えは910円-70円+90円=930円であり、非接触データキャリア
30から決済部500に残高「Y-B+A」を送る。決済部500は残高「Y-B+
A」の照合チェックを行って、表示/ガイダンス部530の残高欄に残高「Y-B+
40 A」を表示する。図6の場合には930円を残高として表示する。
【0017】一方、図5の破線部は商品購入を途中で中止した場合の返金処理を示し
ており、利用者が購入金額選択ボタン510を選択して非接触データキャリア30の
残高更新処理後に決済部500の返金ボタン511を押下すると、決済部500から
自動販売機部300に返金要求が送出されて、商品選択ボタン310の全てのランプ
5 が消灯される。そして、自動販売機部300から決済部500に返金A(図6の例で
は90円)を送り、決済部500は非接触データキャリア30をアクセスエリア52
3にかざすように表示/ガイダンス部530に表示して利用者に報知する。ここで、
利用者が非接触データキャリア30をアクセスエリア523にかざすと上述と同様
に、決済部500から非接触データキャリア30に対してID及び残高の読取要求が
10 送出される。このときIDが相違している場合には、表示/ガイダンス部530のメ
ッセージ欄の「もう一度タグをかざしてください」を表示(音声も)し、タグ受付状
態に戻る。IDが一致している場合には、非接触データキャリア30から決済部50
0に対して残高「Y-A」(図6の例では910円)が送られる。これにより、決済
部500は非接触データキャリア30に対して残高書換え「Y-A+A」(図6の例
15 では1000円)及び残高照合の指示を送り、非接触データキャリア30から決済部
500に残高Y(図6の例では1000円)を送る。決済部500は残高Yの照合チ
ェックを行って、表示/ガイダンス部530の残高欄に残高Yを表示する。
【0018】以上のような方式を採ることにより、利用者はデータキャリア30を1
度だけ、リーダライタにかざせば良いことになり、簡単な操作で商品を購入できるよ
20 うになる。更に、自動販売機側のソフトウエアを変更することなく既存の装置をその
まま使えるため、非接触データキャリアを使用したプリペイド対応の自動販売機を安
価にかつ容易に提供することが可能となる。
【0019】尚、上述した実施の形態では、決済部(子機)500と自動販売機部
(親機)300とを別の筐体に分けた構成とし、既存の自動販売機に子機を付加する
25 形態を例として説明したが、一体化した構成としても良い。また、本発明は、飲料,
食品,タバコ等の商品の自動販売機に限らず、交通機関の切符や食券の券売機、コイ
ンロッカー、自動受付機など、自動サービス機器全般に応用することができるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
30 【図1】本発明の自動販売機システムの主要部の構成例を示すブロック図である。
【図2】自動販売機の外観構成の一例を示す斜視図である。
【図3】決済部のパネル面の一例を示す図である。
【図4】本発明に用いる非接触データキャリア及びリーダライタの接続関係を模式的
に示す図である。
35 【図5】本発明の自動販売機システムの動作例を説明するための図である。
【図6】図5の具体例を示す模式図である。
図1
図2 図3
図4
図5
図6
(別紙)
争点に関する当事者の主張
1 被告製品の本件訂正発明5の技術的範囲への属否(争点1′)
(原告らの主張)
5 ⑴ 本件訂正発明と被告製品を対比すると、別紙「表2 構成要件の分説比較」のとお
りであり、「AUthentiGate Android IC カード認証パッケージ」スタンドアロンライセ
ンスインストール済の Android3.2 以降の NFC 対応端末(以下「スマホ」ともいう。)
である SHARP 製 AQUOS R(NTT ドコモ)を「本件アクオス」とし、Rバッジとし
て交通系ICカードの Suica を使用した例を説明するものである。
10 ⑵ 被告製品の構成要件充足性
ア 本件アクオス(請求項1から4まで)
(ア) 本件アクオスの特徴aは、RFID の一種である NFC を有するスマホであるか
ら、構成要件Aを充足する。
(イ) 本件アクオスの特徴bは、本件アクオスのディスプレイが非表示のときにス
15 イッチ(電源キー又は指紋センサー)を押すと、ロック画面を表示することから、
構成要件Bを充足する。
(ウ) 本件アクオスの特徴cは、Suica が Felica 仕様(甲 10)に準拠した手順で動作
を行うものであり、これによれば、本件アクオス(リーダ/ライタ)は、Polling
コマンドを実行し、Suica(カード)の識別情報 IDm を得ているから、構成要件
20 Cを充足する。
(エ) 本件アクオスの特徴dは、Suica から受け取るID情報は、その製造時に書き
込まれた書換不可能な情報であって、一意に識別できる情報であるから、構成要
件Dの識別情報に相当し、構成要件Dを充足する。
(オ) 本件アクオスの特徴eは、本件アクオスに予め登録した Suica をかざせばロッ
25 ク解除され未登録の NFC カードをかざしてもロック解除されないから、構成要
件Eを充足する。
(カ) 本件アクオスの特徴fは、本件アクオスの動作から構成要件Fを充足する。
(キ) 本件アクオスの特徴gは、本件アクオスが携帯電話であることから、構成要
件Gを充足する。
30 (ク) 本件アクオスの特徴hは、本件アクオスが、アプリケーションプログラムや
デバイスドライバをインターネットを経由してダウンロードし新たな機能を追加
できることから、構成要件Hを充足する。
(ケ) 本件アクオスの特徴iは、新たな機能はプリペイドカード、キャッシュカー
ド、デビッドカード、クレジットカード、電子マネー、アミューズメント施設の
35 チケット、公共施設のチケットのうち少なくとも1つであることから、構成要件
Iを充足する。
イ 被告製品(請求項5)
(ア) 被告製品の特徴jは、被告製品が NFC インターフェースを備え、モバイル
Suica をインストールしたスマホをかざすことで処理できることに争いはないか
40 ら、構成要件 J を充足する。
(イ) 被告製品の特徴kは、被告製品が Felica 仕様(甲 10)に準拠した手順で動作
を行うものであり、これによれば、被告製品(リーダ/ライタ)は、イ号製品は
タッチパネルで選択された決裁手段に応じて、ロ号製品は読み取りスイッチの押
下により、対応するICカード等(スマホ)が補足されるまで Polling コマンド
5 を送信するから、発信手段を有しており、構成要件Kを充足する。
(ウ) 被告製品の特徴lは、被告製品では、Polling コマンドに該当スマホが応答し
なければ、処理が中断され、Polling コマンドに該当スマホが応答した場合には、
スマホから製造 ID と製造パラメータ PMm を受信する。
このうち、製造 ID は、リーダ/ライタが通信相手のカードを識別するための
10 ID、すなわち「前記選択した1つの新たな機能」を識別するための ID である。
製造 ID により「前記選択した1つの新たな機能」である個別情報(イ号製品で
は店員が設定し客に伝えられた電子マネー・クレジットカード等の情報、ロ号製
品ではシステムに登録されたカード情報)であるか否かが判断され、要求した個
別情報であれば処理を継続し、要求した個別情報でなければ処理は中断される。
15 よって、構成要件 L を充足する。
(エ) 被告製品の特徴mは、被告製品は受信した個別情報が要求した個別情報であ
ると判断されたときにスマホとの間で処理を行うことから、構成要件Mを充足す
る。
(オ) 被告製品の特徴nは、被告製品が受信装置であることに争いはないから、構
20 成要件Nを充足する。
(カ) また、イ号製品は、いずれも決済端末であり、当該受信装置に設けられた読
み取りスイッチを有することは明らかであり、本件訂正発明5の構成要件を充足
する。
ウ 以上によれば、被告製品は、本件訂正発明5の技術的範囲に属する。
25 (被告らの主張)
⑴ イ号製品(決済端末)のうち、JT-C60、JT-R700CR、JT-C52
2以外の製品は、個別情報の発信要求を指示するスイッチは付いていないから、構成
要件K′「当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって、…個別情報
の発信要求を…発信する発信手段」を充足しない。
30 ⑵ ロ号製品(入退室管理システム、入退室管理に用いる「鍵」となるICカードの情
報を読み取る装置)は、ICカードの情報を読み取るだけの装置なので、個別情報の
発信要求を指示するスイッチはない。よって、構成要件K′「当該受信装置に設けら
れた読み取りスイッチの押下によって、…個別情報の発信要求を…発信する発信手段」
を充足しない。また、本件訂正発明5の「個別情報」は、請求項4では「鍵」が除外
35 されているから、「鍵」の個別情報を取り扱う装置であるロ号製品は、構成要件K′
「前記選択した1つの新たな機能に対応する個別情報の発信要求を当該受信装置に近
づけられた前記携帯電話に発信する発信手段」を充足しない。
⑶ 本件アクオスは、本件訂正後の特許請求項の範囲請求項1の構成要件B′、構成要
件E、構成要件F′を充足しないから、本件訂正発明5の「請求項4の携帯電話」を
40 充足しない。
2 本件訂正発明5に係る無効理由の有無
2-1 乙50を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-1)
(被告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
5 本判決本文第3の2⑴アのとおり、本件訂正発明5は、携帯電話と受信装置の間で
送受信を行う個別情報システムという全体装置の発明に対する受信装置の発明(サブ
コンビネーション発明)であるから、受信装置の発明の特定に意味を有しない事項を
除外して解釈すべきである。よって、「請求項4記載の」との事項、及び「前記選択
した1つの新たな機能に対応する」との事項を除外して解釈(構成要件❶)するか、
10 又は「請求項4記載の携帯電話」との事項及び「前記選択した1つの新たな機能に対
応する」との事項を除外して解釈(構成要件❷)するのが相当である。
⑵ 進歩性欠如
ア 本件訂正発明5を構成要件❶により解釈する場合、本件特許出願前に頒布された
刊行物である乙50(特開平10-232965号公報)に記載された乙50発明
15 と本件訂正発明5を対比すると、両発明は、「【通信相手】と送受信するためのR
FIDインターフェ-スを有し、当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押
下によって、個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられた前記【通信相手】
に発信する発信手段と、前記【通信相手】から受信した個別情報が要求した個別情
報であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情
20 報が前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記【通信相手】との間で
処理を行うことを特徴とする受信装置」である点で一致し、相違点は、次のとおり
である。
【相違点】
乙50発明では、受信装置が個別情報を受送信する【通信相手】は非接触データ
25 キャリアであるのに対して、本件訂正発明5は、受信装置が個別情報を受送信する
【通信相手】は携帯電話である点
イ 相違点の容易想到性
乙50発明と本件訂正発明5の相違点は、乙19記載事項と組み合わせることに
より、あるいは、携帯電話と受信装置の間の RFID インターフェースについての周
30 知技術(乙9、11、19)との組合せにより、当業者が容易に想到し得るもので
ある。
⑶ 新規性欠如
本件訂正発明5を構成要件❷により解釈する場合、乙50発明と本件訂正発明5を
対比すると、両発明には相違点はなく同一発明であるから、本件訂正発明5は新規性
35 を欠く。
(原告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
本判決本文第3の2⑵アのとおり、本件訂正後の「請求項4の携帯電話」に関する
事項(複数の新たな機能の中から1つが選択され得る)は、本件訂正発明5に係る
40 「受信装置」の発明の構造、機能等を特定するものといえるから、本件訂正発明5の
「個別情報」とは、本件訂正後の請求項4記載の機能のうち、少なくとも1つの「新
たな機能」に関する情報、すなわち「カードの種別を示す情報」と解すべきである
(なお、構成要件❷により解釈することは相当でない。)。
⑵ 進歩性欠如
5 乙50発明は、本件訂正発明5の構成要件K、L、Mを開示していないから、被告
らによる相違点の認定には誤りがある。よって、乙50発明に乙19発明を適用し、
又は乙50発明に周知技術(乙9、11、19)を適用しても、本件訂正発明5に容
易い想到し得ず、進歩性欠如の無効理由はない。
2-2 乙51を主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如(争点2′-2)
10 (被告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
前記2-1(被告らの主張)⑴のとおり
⑵ 進歩性欠如
ア 本件訂正発明5を構成要件❶により解釈する場合、本件特許出願前に頒布された
15 刊行物である乙51(特開平7-210754号公報)に記載された乙51発明と
本件訂正発明5を対比すると、両発明は、「【通信相手】と送受信するためのRF
IDインターフェ-スを有し、当該受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下
によって、個別情報の発信要求を当該受信装置に近づけられた前記【通信相手】に
発信する発信手段と、前記【通信相手】から受信した個別情報が要求した個別情報
20 であるか否かを判断する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情報
が前記要求した個別情報であると判断されたときに、前記【通信相手】との間で処
理を行うことを特徴とする受信装置」である点で一致し、相違点は、次のとおりで
ある。
【相違点】
25 乙51発明では、受信装置が個別情報を受送信する【通信相手】はプリペイドカ
ードであるのに対して、本件訂正発明5は、受信装置が個別情報を受送信する【通
信相手】は携帯電話である点
イ 相違点の容易想到性
乙51発明と本件訂正発明5の相違点は、乙19記載事項と組み合わせることに
30 より、あるいは、携帯電話と受信装置の間の RFID インターフェースについての周
知技術(乙9、11、19)との組合せにより、当業者が容易に想到し得るもので
ある。
⑶ 新規性欠如
本件訂正発明5を構成要件❷により解釈する場合、乙51発明と本件訂正発明5を
35 対比すると、両発明には相違点はなく同一発明であるから、本件訂正発明5は新規性
を欠く。
(原告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
前記2-1(原告らの主張)⑴のとおり
40 ⑵ 進歩性欠如
乙51発明は、本件訂正発明5の構成要件K、L、Mを開示していないから、被告
らによる相違点の認定には誤りがある。よって、乙51発明に乙19発明を適用し、
又は乙51発明に周知技術(乙9、11、19)を適用しても、本件訂正発明5に容
易い想到し得ず、進歩性欠如の無効理由はない。
5 2-3 乙10を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-4)
(被告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
前記2-1(被告らの主張)⑴のとおり
⑵ 進歩性欠如(その1)
10 ア 本件訂正発明5を構成要件❶により解釈する場合、本件特許出願前に頒布された
刊行物である乙10(特開平10-154193号公報)に記載された乙10発明
と本件訂正発明5を対比すると、両発明は、「当該受信装置に設けられた読み取り
スイッチの押下によって、個別情報の発信要求を【通信相手】に発信する発信手段
と、前記【通信相手】から受信した個別情報が要求した個別情報であるか否かを判
15 断する判断手段とを有し、前記判断手段で前記受信した個別情報が前記要求した個
別情報であると判断されたときに、前記【通信相手】との間で処理を行うことを特
徴とする受信装置」である点で一致し、相違点は、次のとおりである。
【相違点1】
乙10発明では、受信装置が個別情報を受送信する【通信相手】は電子マネーカ
20 ードであるのに対して、本件訂正発明5は、受信装置が個別情報を受送信する【通
信相手】は携帯電話である点
【相違点2】
乙10発明では、個別情報の送受信は接触通信で行われるのに対して、本件訂正
発明5は、「受信装置に近づけられた携帯電話」に RFID インターフェースで行わ
25 れる点
イ 相違点の容易想到性
乙10発明と本件訂正発明5の相違点は、乙19記載事項と組み合わせることに
より、あるいは、携帯電話と受信装置の間の RFID インターフェースについての周
知技術(乙9、11、19)との組合せにより、当業者が容易に想到し得るもので
30 ある。
⑶ 進歩性欠如(その2)
ア 本件訂正発明5を構成要件❷により解釈する場合、乙10発明と本件訂正発明5
を対比すると、両発明の相違点は、次のとおりである。
【相違点2】
35 乙10発明では、個別情報の送受信は接触通信で行われるのに対して、本件訂正
発明5は、「受信装置に近づけられた携帯電話」に RFID インターフェースで行わ
れる点
イ 相違点の容易想到性
乙10発明と本件訂正発明5の相違点は、乙19記載事項と組み合わせることに
40 より、あるいは、携帯電話と受信装置の間の RFID インターフェースについての周
知技術(乙9、11、19)との組合せにより、当業者が容易に想到し得るもので
ある。
(原告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
5 前記2-1(原告らの主張)⑴のとおり
⑵ 進歩性欠如
乙10発明は、本件訂正発明5の構成要件K、L、Mを開示していないから、被告
らによる相違点の認定には誤りがある。よって、乙10発明に乙19発明を適用し、
又は乙10発明に周知技術(乙9、11、19)を適用しても、本件訂正発明5に容
10 易い想到し得ず、進歩性欠如の無効理由はない。
2-4 乙9を主引用例とする進歩性欠如(争点2′-5)
(被告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
前記2-1(被告らの主張)⑴のとおり
15 ⑵ 進歩性欠如(その1)
ア 本件訂正発明5を構成要件❶により解釈する場合、本件特許出願前に頒布された
刊行物である乙9(特開平10-162176号公報)に記載された乙9発明と本
件訂正発明5を対比すると、両発明の相違点は、次のとおりである。
【相違点】
20 本件訂正発明5は、受信装置に設けられた読み取りスイッチの押下によって個別
譲歩の発信要求を発信するが、乙9発明では、そのようなスイッチの押下による発
信の構成については開示がない点
イ 相違点の容易想到性
乙9発明と本件訂正発明5の「押下スイッチ」についての相違点は、当業者にと
25 ってそのようなスイッチを取り付けることは設計的事項にすぎないから、容易にそ
の相違点に係る構成に想到し得るものである。又は、そもそも起動スイッチがこの
押下スイッチに該当するともいえるので、本件訂正発明5は乙9発明から容易に想
到し得るもの(若しくは同一発明)である。
⑶ 進歩性欠如(その2)
30 本件訂正発明5を構成要件❷により解釈する場合、乙9発明と本件訂正発明5を対
比すると、両発明の相違点は、前記⑵アと同様であるから、前記⑵イのとおり、本件
訂正発明5は乙9発明から容易に想到し得るもの(若しくは同一発明)である。
(原告らの主張)
⑴ 本件訂正後の特許請求の範囲請求項5の解釈
35 前記2-1(原告らの主張)⑴のとおり
⑵ 進歩性欠如
乙9発明は、本件訂正発明5の構成要件K、L、Mを開示していないから、本件訂
正発明5には進歩性欠如(又は新規性欠如)の無効理由はない。
3 本件訂正発明1、3及び4に係る無効理由の有無
40 3-1 乙3を主引用例とする進歩性欠如(争点4′-1)
(被告らの主張)
⑴ 本件特許出願前に頒布された刊行物である乙3(特開平11-55246号公報)
に記載された乙3発明と本件訂正発明1を対比した場合、以下のとおりである。
ア 本件訂正発明1の携帯電話が「RFIDインターフェース」を有するのに対し、
5 乙3発明の携帯電話については明示的記載がないという相違点については、乙3発
明の「第1の電波信号送受信装備3」が本件訂正発明1の「RFIDインターフェ
ース」と実質的に一致する。又は、RFIDインターフェースは本件特許出願時に
は技術常識であったから、当業者には、同相違点に係る構成を容易に想到し得た。
イ 本件訂正発明1の携帯電話が「Rバッジ」と送受信することと、乙3発明の携帯
10 電話が「IDカード」と無線通信することの相違点については、上記「IDカード」
が「Rバッジ」に相当するので実質的相違点ではない。
ウ 本件訂正発明1の携帯電話が「受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録し
てある識別情報との比較」をするのに対し、乙3発明の携帯電話が「IDカードか
ら受け取ったデータとパスワードとして入力されたデータとの和と、携帯電話に記
15 憶されていたデータとの比較」をするという相違点については、同一技術分野の乙
15文献に開示された技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た。
エ 本件訂正発明1の携帯電話が「所定時間が経過する前に前記被保護情報へのアク
セスがなされた場合には当該アクセスを許可し、前記所定時間が経過した後に前記
被保護情報へのアクセスがなされた場合には当該アクセスを禁止する」構成である
20 のに対し、乙3発明の携帯電話については、携帯電話の使用が可能となる「一定時
間」が「アクセス要求が許可」された時点からであることの記載がないという相違
点は、乙3発明の携帯電話が、電源の投入という「アクセス要求」が「許可されて
から所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可する構成」を備
えるということからすると、本件訂正後の請求項1においても、実質的相違点であ
25 るとはいえない。
⑵ よって、本件訂正発明1は、乙3文献を主引用例として進歩性欠如の無効理由があ
る。
(原告らの主張)
争う。本件訂正審決において乙3文献を主引用例とする無効理由はない旨判断された。
30 3-2 乙4を主引用例とする拡大先願要件違反(争点4′-2)
(被告らの主張)
本件訂正発明1は、本件訂正後においても、本件特許の優先日前に出願され本件特許
の優先日後に出願公開された乙4発明(特開2001-245354号公報)と同一の
発明であるから、その特許出願は拡大先願要件(特許法29条の2)に違反する(本件
35 訂正発明3及び4についても、本件訂正後において、乙4発明と実質的に同一であ
る。)。
(原告らの主張)
争う。本件訂正審決において乙4文献を主引用例とする無効理由はない旨判断された。
4 原告らの損害(争点5)
40 (原告らの主張)
⑴ 平成23年4月1日から令和3年3月31日までの間、被告パナソニックコネクト
は、イ号製品を販売して売上額は4000億円であり、被告パナソニックは、ロ号製
品を販売して売上額は4500億円である。
⑵ 原告モビリティは、被告らによる特許権侵害行為により、平成23年4月1日から
5 令和3年3月31日までの間、イ号製品について実施料相当額200億円(=400
0億円×実施料率5%)の、ロ号製品について実施料相当額225億円(=4500
億円×実施料率5%)の損害を被った。
⑶ 原告モビリティ・エックスは、被告らによる特許権侵害行為により、平成30年8
月1日から令和3年3月31日までの間、イ号製品について実施料相当額60億円
10 (=4000億円×3/10×実施料率5%)、ロ号製品について実施相当額67.5億円
(=4500億円×3/10×実施料率5%)の損害を被った。
⑷ 原告らは、被告らに対し、各損害額の一部及びこれに対する遅延損害金の支払を求
めるものである。
(被告らの主張)
15 争う
(別紙)
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