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令和7(ネ)10012不正競争行為差止請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年7月16日
事件種別 民事
当事者 被控訴人株式会社グッドマン
法令 不正競争
キーワード 差止3回
侵害2回
主文 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
2 上記の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。20
3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
事件の概要 1 事案の概要 本件は、被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人の販売する原判決別紙原告商品目録 記載の商品(原告商品)の主要な構成品であるYコネクター(原告Yコネクター)の 形態が被控訴人の商品等表示として需要者の間に広く知られており、控訴人が原告Y コネクターの形態と類似するYコネクター(被告Yコネクター)を主要な構成品とす る原判決別紙被告商品目録2記載の商品(被告商品)を製造し、販売する行為は、被5 控訴人の商品と混同を生じさせる行為であって、不正競争防止法(不競法)2条1項

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判決文

令和7年7月16日判決言渡

令和7年(ネ)第10012号 不正競争行為差止請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70036号)

口頭弁論終結日 令和7年5月14日

判 決

控 訴 人 株式会社東海メディカルプロ

ダクツ

同訴訟代理人弁護士 小 川 宏 嗣

野 田 裕 之

大 杉 浩 二

被 控 訴 人 株 式 会 社 グ ッ ド マ ン

同訴訟代理人弁護士 寺 島 英 輔

高 橋 隆 二

主 文

1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

2 上記の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。

3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

主文同旨

第2 事案の概要等(略語は原判決の例による。)

1 事案の概要本件は、被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人の販売する原判決別紙原告商品目録記載の商品(原告商品)の主要な構成品であるYコネクター(原告Yコネクター)の形態が被控訴人の商品等表示として需要者の間に広く知られており、控訴人が原告Yコネクターの形態と類似するYコネクター(被告Yコネクター)を主要な構成品とする原判決別紙被告商品目録2記載の商品(被告商品)を製造し、販売する行為は、被控訴人の商品と混同を生じさせる行為であって、不正競争防止法(不競法)2条1項1号の不正競争に当たると主張して、同法3条1項に基づき被告商品の製造及び販売の差止めを求める事案である。原判決は、原判決別紙被告商品目録1記載の商品(被告商品のうち「TMP YコネクターⅠ」(医療機器承認番号30400BZX00258000)として製造販売承認を得ているもの。)の製造及び販売の差止めを求める限度で被控訴人の請求を認容し、その余の請求を棄却した。控訴人は、原判決中控訴人敗訴部分を不服として控訴を提起した。2 前提事実及び争点原判決「事実及び理由」の第2の2及び3(2頁8行目~5頁9行目)に記載のとおりであるからこれらを引用する。なお、参照のために、原判決別紙原告Yコネクターの形態と名称を本判決別紙1として、原判決別紙被告Yコネクターの形態と名称を本判決別紙2として、それぞれ添付する。

第3 争点についての当事者の主張

次のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」の第2の4(5頁10行目~26頁22行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。

1 争点1(原告Yコネクターの形態が不競法2条1項1号所定の周知な商品等表

示に該当するか)について(控訴人の補充主張)

(1) 特別顕著性について

原判決は、被控訴人が主張する本件特徴(エ)及び(オ)について、商品の形態が不競法2条1項1号によって保護されるべき商品等表示に該当するための要件となる特別顕著性を有していると認定した。しかし、次のとおり、原判決の上記判断には、事実認定の誤りや法令解釈の誤りがある。原告Yコネクターの形態の特徴として被控訴人が主張するもの(本件各特徴)のうち、本件特徴(エ)(オープナー以外が全て無色透明であるのに対して、オープナーは透明でありながら単色で着色されている。)に関して、Yコネクターは、使用前に生理食塩液を満たして空気を取り除くことから内部の視認性を高める必要があり、このために全体として無色透明とする必要が高い一方、手技中に操作することから商品全体の視認性も高める必要があり、内部の視認性を高める必要がないオープナーに着色されるものである。このように、本件特徴(エ)は、商品の技術的な機能及び効能に由来する形態の特徴であって、多くの他社のYコネクターが同一の特徴を有しているから、ありふれた形態であり顕著な特徴とはいえない。次に、本件特徴(オ)(全長が約88mmであり、全長、サムホイール、メインブランチ及びローテータの上端部からYコネクター下端部までの長さのおおむねの比率が4:1:2:1である。)については、そもそも商品の全長と各部位の比率といったものは、商品の「形態」の特徴とはいい難い。また、88mmというYコネクターの全長は、把持性・操作性を重視する医師からの需要が多い長さであって、それは飽くまでYコネクターとしてどのような機能(把持性・操作性か末梢到達性か)を重視するかによって通常選択し得る範囲内の数値であり、この全長自体を被控訴人が独占することは当然許されないところ、全長88mmの二弁式Yコネクターを製作するとなると、各部位の設計上の制約から、サムホイール及びローテータの長さはおおむね全長の4分の1程度にならざるを得ない。したがって、本件特徴(オ)は、二弁式Yコネクターの通常の設計によるものにすぎず、顕著な特徴とはいえない。

(2) 周知性について

原判決は、原告Yコネクターの形態は、需要者である医師を中心とする医療従事者において、被控訴人の出所を表示するものとして周知になっている旨を認定した。しかし、商品の形態が商品等表示として「需要者の間に広く認識されているもの」というには、当該商品の特別顕著な形態自体が有する出所識別機能が需要者に周知となっている必要があると解される。しかし、被控訴人は、需要者である医師等に対し、原告Yコネクターの形態を商品の差別化要素として宣伝してきたわけではなく、その形態自体が有する出所識別機能が需要者に周知されているとはいい難い。

(3) 小括

以上のとおり、原告Yコネクターの形態は、特別顕著性及び周知性のいずれも認められないというべきであって、被控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの(不競法2条1項1号)には当たらない。(被控訴人の補充主張)

(1) 特別顕著性について

商品の形態が周知商品等表示として保護されるためにいわゆる特別顕著性が求められるのは、当該形態の出所識別力を判定するためであり、創作性を判定するものではない。商品の形態の特徴が通常選択され得るもので、容易に考え付くアイデアであったとしても、当該特徴を有する商品が他になく、当該特徴が出所識別力を有するに至っていれば、特別顕著性を認めることに障害はない。また、商品の寸法や寸法の比率等の数値により表現される特徴や、商品を特定の角度から観察した平面的な特徴も、それぞれ独立して当該商品の出所を識別する要素、特性足り得るものである。他社のYコネクターの全長及び各部位の寸法及びその比率が製品により様々であることは証拠により客観的に明らかであり、設計上の制約からこれらがおおむね同程度とならざるを得ない旨の控訴人の主張は証拠に反する。なお、原告Yコネクターの形態が特別顕著な形態を有するかを判断するに当たり、他社商品として、カネカ社Yコネクター及びメディカル・イノベイション社Yコネクターを考慮に入れることは相当ではない。両商品とも、原告Yコネクターの形態が周知商品等表示として保護の対象となったといえる平成20年頃より後に製造販売の承認がされたものであり、これらの商品により、原告Yコネクターの形態が有する出所識別力を喪失又は希釈化させたとみるべき事情はないからである。本件特徴(オ)は、Yコネクター全長に対するサムホイール、メインブランチ及びローテータの各寸法の割合という形で認定することもできる。具体的には、全長に対する各部位の長さ比は、サムホイールが約32%、メインブランチが約42%、ローテータが約26%である。このような原告Yコネクターの寸法比は、他社のYコネクターとは異なる特徴であって、これにより、需要者である医療従事者に対し洗練されたスマートな印象を与え、その印象により商品の出所を想起させるものである。そして、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴である本件特徴(エ)及び(オ)に加えて、その余の形態的特徴も含めた一体の形態として全体的に観察すると、原告Yコネクターの形態は、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているといえる。

(2) 周知性について

周知性の要件の解釈として、当該商品の特別顕著な形態自体が有する出所識別機能が需要者に周知されていることを要するとすべき根拠はなく、需要者において、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていれば足りる。二弁式Yコネクターの商品形態は、使用感、使いやすさ、利便性といった機能面に影響する以上、需要者である医療従事者も、商品の選定に際してその形態を考慮するというべきである。そして、被控訴人のカタログや展示会等による営業活動の結果、原告商品は圧倒的なシェアを獲得し、同営業活動は商品の形態を周知させることにも寄与していたことからすると、原告Yコネクターの形態が、平成20年頃から現在にかけて需要者に周知であることは明らかである。

2 争点2(原告Yコネクターと被告Yコネクターの各形態が同一又は類似である

か)について(控訴人の補充主張)

(1) 被告Yコネクターの形態は、原告Yコネクターの形態の顕著な特徴を備えてい

ないことある商品の形態が周知商品等表示とされる場合に、被疑侵害品との類似性を判断するに当たっては、特別顕著と評価された形態的特徴を被疑侵害品も備えているかという観点から検討されるべきところ、被告Yコネクターは、次のとおり、本件特徴(エ)及び(オ)をいずれも備えていない。具体的には、本件特徴(エ)(オープナー以外が全て無色透明であるのに対して、オープナーは透明でありながら単色で着色されている。)について、被告Yコネクターは、オープナーは梨地のシボ加工がされて透明感はないし、スクリューの下部及びローテータの上部にそれぞれ配されているCリングがオレンジ色に着色されているから、本件特徴(エ)を備えていない。次に、本件特徴(オ)(全長が約88mmであり、全長、サムホイール、メインブランチ及びローテータの上端部からYコネクター下端部までの長さのおおむねの比率が4:1:2:1である。)について、原告Yコネクターのより正確な寸法比は約4:1.3:1.7:1.1というべきところ、被告Yコネクターの寸法比は約4:1.3:1.9:0.9であるから、本件特徴(オ)を備えていない。

(2) 相違点が与える印象の差異が、共通点が与える印象を超えること

原告Yコネクターと被告Yコネクターの共通点といえる①全長、②スクリュー部の形状が円柱状であること、③全体が透明な部材で製作されオープナーが暖色系の色彩で着色されていること、④全体的な寸法割合というのは、二弁式Yコネクターを設計する以上必然的に類似する形態や、同種商品としてありふれた形態が含まれているから、これらの共通点が、需要者である医療従事者に与える印象は限定的である。他方で、原告Yコネクターと被告Yコネクターとの相違点としては、①オープナーの色や透明感の有無及び形状、②スクリュー部自体の形状、スクリュー部に設けられた凹凸の違い及びスクリュー部の着色の有無、③メインブランチとサイドポートの接続部に設けられた円形リブの存否、④ローテータ部の凸型リブの数及び形状並びにローテータ上部の着色の有無、⑤アタッチメントを取り付けるためのフランジの存否などがある。ここで、二弁式Yコネクターの需要者である医療従事者とりわけ医師は、単に商品の形態や大きさのみではなく、その使用感や操作性を体感して商品選択をするから、使用感や操作性に影響を与えるオープナー上部の形態やシボ加工の有無、スクリュー部やローテータ部の形状といった差異は、需要者が商品選択をする上で、視覚上大きな影響を与えるものである。また、上記③の相違点に係る被告Yコネクターの円形リブには、控訴人の社名を示す「TMP」と商品名を示す「Smart」の文字が刻印された上、シボ加工が施されて透明感のない素材が使用されており、原告Yコネクターとは全く異なった印象を与える特徴である。

(3) 小括

以上のとおり、仮に原告Yコネクターの形態が周知商品等表示に当たるとしても、被告Yコネクターの形態はこれに類似していないから、控訴人が被告Yコネクターを製造又は販売する行為は、不競法2条1項1号の不正競争に当たらない。(被控訴人の補充主張)

(1) 被告Yコネクターの形態が、原告Yコネクターの形態の顕著な特徴を備えてい

ないとの点について商品等表示が類似するか否かは、取引の実情の下において取引者、需要者が両者の外観、称呼、観念に基づく印象、記憶、連想から、両者を全体として類似したものとして受け取るおそれがあるか否かによって判断されるべきであり、商品の形態の場合には、特に出所識別力が強い部分において共通するときは、特別顕著な形態の全てを具備していなくとも、離隔的観察の上、「全体として類似したものとして受け取るおそれ」があれば、類似すると判断されるべきである。控訴人は、本件特徴(エ)について、オープナーが透明感のない素材であることや、スクリュー及びローテータのCリングが着色されていることなどを挙げるが、これらの相違点はささいなものにすぎず、離隔的観察、全体観察によれば、類似性に影響を与えるものではない。また、控訴人は、本件特徴(オ)について、詳細な寸法比を主張するが、需要者たる医療従事者とりわけ医師は、原告Yコネクターの厳密な寸法比によりその形態を認識するものではなく、全体のおおむねの寸法と各部のおおむねの寸法比率(全長が長く、サムホイール、ローテータと比較してメインブランチが相対的に長い)により、洗練されたスマートな印象を受け、その印象により出所を認識する。この「全体のおおむねの寸法と各部のおおむねの及び寸法比率」は、看者に与える視覚的印象が極めて強く、原告Yコネクターの形態において出所識別力が強い部分である。そして、被告Yコネクターも、そのおおむねの比率である「4:1:2:1」を備えているのであるから、類似性が否定されることはない。

(2) 相違点が与える印象の差異が、共通点が与える印象を超えるとの点について

控訴人は、商品の使用感や操作性に影響を与える部分の差異が、類似性判断に影響すると主張する。しかし、類似性の要件は、出所混同のおそれの有無を、両表示の比較という観点から外形的、抽象的に判断するためのものであって、商品の使用感や操作性など表示の外形から看取し得ないものは、類似性判断の基礎とはなり得ない。前記(1)のとおり、原告Yコネクターの形態は、本件特徴(オ)、具体的には、全長が長く、サムホイール、ローテータと比較してメインブランチが相対的に長いという、おおむねの寸法と各部のおおむねの寸法比率(4:1:2:1)によって、洗練されたスマートな印象を与えるものであり、この部分が最も出所識別力が強いものである。そして、被告Yコネクターも、Yコネクター全長に対する各部位の長さ比は、サムホイールが約32%、メインブランチが約47%、ローテータが約22%であって、原告Yコネクターに酷似している。また、被告Yコネクターは、原告Yコネクターの形態が有する本件特徴(エ)のうち、「全体が透明な部材で製作され、オープナーは暖色系(かんきつ系)の色彩で着色されている」という、看者に与える視覚的印象が比較的強い部分において共通している。これに対し、オープナーの色彩・形状、スクリューの形状、接続部分のシボ加工の有無並びに円形の支持部及び支持部への刻印の有無、ローテータのリブの相違及びCリングの着色の有無といった相違点は、いずれもささいな相違として共通点に包摂されるものであって、需要者たる医師を中心とする医療従事者は、両表示が全体的に類似するとの印象を受けるものである。なお、被告Yコネクターは、外観のみならず、部品構成・部品数や内部構造においても原告Yコネクターとほぼ同一であり、原告Yコネクターのデッドコピーともいえる模倣品である。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実原判決の「事実及び理由」の第3の1(26頁24行目~32頁21行目)に記載のとおりであるからこれを引用する。なお、参照のために、原判決別紙二弁式Yコネクター比較を本判決の別紙3として添付する。

2 争点1(原告Yコネクターの形態が不競法2条1項1号所定の周知な商品等表示に該当するか)について

(1) 当裁判所も、原告Yコネクターの商品全体の形態は、平成20年頃から現在(口

頭弁論終結時)に至るまで、他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しているという

ことができ、かつ、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表

示するものとして周知になっているから、不競法2条1項1号の「商品等表示…とし

て需要者の間に広く認識されているもの」に当たると判断する。その理由は、原判決

の「事実及び理由」の第3の2(32頁22行目~49頁21行目)に記載のとおり

であるから、これを引用する。ただし、39頁15行目~16行目の「全長72mm

のものから全長78.99mmのものまで幅があり」を「全長72mmのものから全

長87.99mmのものまで幅があり」

(原判決別紙二弁式Yコネクター比較における

製品長の記載に照らし誤記と認められる。)と、同頁23~24行目の「スクリューの

長さは22.22mm」を「スクリューの長さは25.05mm」

(乙24により認め

られるカネカ社Yコネクターのスクリューの長さに照らすと誤記と認められる。)と、

頁22~23行目及び49頁18~19行目に本件口頭弁論終結時として「令和

年8月27日」とあるのをそれぞれ控訴審(当審)の口頭弁論終結日である「令和

年5月14日」と、いずれも改める。

(2) 控訴人は、本件特徴(エ)について、商品の技術的な機能及び効能に由来する形態

の特徴であり、多くの他社のYコネクターが同一の特徴を有しているとして、ありふ

れた形態であり顕著な特徴とはいえないと主張する。しかし、別紙3のとおり、原告

Yコネクター以外の二弁式Yコネクターは、透明感を残しつつ全体が青色に着色され

ているか(アボット社コネクター) サムホイールやローテータの内部に着色されたリ

、

ングや部材を有している(その他の二弁式Yコネクター)のであるから、オープナー

のみを透明でありながら単色(黄色)で着色し、それ以外を全て無色透明とすること

は、原告Yコネクターの形態として、他の同種商品とは異なる顕著な特徴の一つであ

るといえる。

また、控訴人は、本件特徴(オ)について、そもそも商品の全長と各部位の比率につき、

商品の「形態」の特徴とはいい難いと主張するほか、独占することが許されない全長

を前提とすると、各部位の設計上の制約から、サムホイール及びローテータの長さは

おおむね全長の4分の1程度にならざるを得ないとして、通常の設計による形態であ

り顕著な特徴とはいえないと主張する。しかし、商品を構成する各部位の寸法比は、

当該商品の形態の一部を構成するものであるから、各部位の寸法比であることのみを

理由に、これを商品等表示としての保護の対象から除外する理由はない。また、別紙

のとおり、二弁式Yコネクターにおけるサムホイール及びローテータの長さは、必

ずしも一義的に定まるものではなく、その差異として5mm~10mm程度の幅がみ

られるから、全長に比した各部位の寸法比も当然に一致するものではない。そして、

補正して引用する原判決「事実及び理由」第3の2(3)オ(イ)のとおり、被告Yコネク

ターを除く他社の二弁式Yコネクターにおいて、原告Yコネクターとおおむね同様の

全長、サムホイール、メインブランチ及びローテータの比率を有する形態の商品はな

かったのであるから、このような全長と各部位との寸法比も、原告Yコネクターの形

態として、他の同種商品とは異なる顕著な特徴の一つであるといえる。

さらに、控訴人は、商品の形態が商品等表示として「需要者の間に広く認識されて

いるもの」というには、当該商品の特別顕著な形態自体が有する出所識別機能が需要

者に周知となっている必要があるところ、原告Yコネクターの形態自体が有する出所

識別機能が需要者に周知されているとはいえないと主張する。しかし、補正して引用

する原判決「事実及び理由」第3の2(4)ア及びイのとおり、平成20年頃から現在に

かけての二弁式Yコネクター市場における原告商品の国内シェアは、少なくとも5割

以上を維持し続けているものと推認されるところ、原告商品の需要者である医療従事

者とりわけ医師は、バルーン拡張式血管形成術を行う際に、二弁式Yコネクターをい

ったんは目視した上で、これを把持して操作することや、原告商品のカタログ等にも

原告Yコネクターの形態が掲載されていること等に照らすと、他の同種商品とは異な

る顕著な特徴を有する原告Yコネクターの形態は、その出所を表示するものとして需

要者の間に広く認識されていると認められる。

したがって、控訴人の主張はいずれも採用することができない。

争点2(原告Yコネクターと被告Yコネクターの各形態が同一又は類似である

か)について

当裁判所は、原判決と異なり、被告Yコネクターの形態は、原告Yコネクターの形

態と同一ではなく、類似しているともいえず、控訴人が被告Yコネクターを含む被告

商品を販売等する行為は、不競法2条1項1号の不正競争に当たらないから、被控訴

人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。

(1) 商品等表示の類否

ある商品等表示が不競法2条1項1号所定の「他人の商品等表示」と類似のものに

当たるか否かについては、取引の実情の下において、取引者、需要者が、両表示の外

観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして

受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべきである(最高裁昭和57年(オ)

第658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁、最高裁

昭和56年(オ)第1166号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号

頁参照)。

(2) 原告Yコネクターの形態について

ア 証拠(甲2、6、11、24、乙7、10、24、44。枝番号の表記は省略

する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によると、原告Yコネクターの形態の外観は、次

のとおりである(別紙1参照)。

すなわち、全体的な構成としては、メインブランチの上端にメインブランチよりも

径の大きい弁を内蔵したサムホイール(スクリュー、オープナー)が、メインブラン

チの下端にサムホイールより径が小さくメインブランチより径の大きい円柱状のロー

テータが、それぞれ同軸に接続されている。また、スクリューの上端部に上下に摺動

可能な側面視T字状のオープナーを備えているほか、メインブランチにはこれから分

岐して約60度の角度で斜め上方に伸びるサイドポートが接続されている。そして、

前記2のとおり、他の同種商品とは異なる顕著な特徴の一つとして、Yコネクター全

体がオープナーを除き全て無色透明で、オープナーは透過性の素材を用いつつ黄色に

着色されているほか(本件特徴(エ))、全長が約88mmであって、全長に占めるサム

ホイール、メインブランチ及びローテータの寸法比率は、それぞれ約32%、約42%、

約26%であって、全長の寸法を4としたとき、各部位の寸法比は、おおむね4:1:

:1ということができる(本件特徴(オ))。

各部分の具体的構成についてみると、オープナーの上端のハンドル部は、上面視で

円形状であり、その外縁の6か所に小さな凸部が均等に離れて配されている。スクリ

ューは、基本的に円柱形状であるが、その側面視上部約3分の2の部分は、その中心

部が若干膨らむような形で丸みを帯びているほか、45度間隔の幅で8つの凹部が設

けられている。メインブランチとサイドポートの接続部分には、接合部からそれぞれ

mm弱離れた箇所をつなぐ形の水かき様(略二等辺三角形状)のリブが設けられ

ている。円柱状のローテータの上部約4分の1から下端部にかけて、側面部に90度

間隔の幅で凸型のリブが4か所に設けられている。

イ 原告Yコネクターの形態からは、特段の称呼及び観念を生じない。

(3) 被告Yコネクターの形態について

ア 証拠(甲6、7、11、24、乙7、10、24、44)及び弁論の全趣旨に

よると、被告Yコネクターの形態の外観は、次のとおりである(別紙2参照)。

すなわち、全体的な構成としては、メインブランチの上端にメインブランチよりも

径の大きい弁を内蔵したサムホイール(スクリュー、オープナー)が、メインブラン

チの下端にサムホイールより径が小さくメインブランチより径の大きい円柱状のロー

テータが、それぞれ同軸に接続されている。また、スクリューの上端部に上下に摺動

可能な側面視T字状の透明感のない素材を用いたオープナーを備えているほか、メイ

ンブランチにはこれから分岐して約60度の角度で斜め上方に伸びるサイドポートが

接続されている。オープナーは、シボ加工された素材がオレンジ色に着色されており、

スクリューの下部及びローテータの上部には、オープナーと同色(オレンジ色)に着

色されたCリングが配されている。その余の部分は無色透明である。全長は約88m

mであって、全長に占めるサムホイール、メインブランチ及びローテータの寸法比率

は、それぞれ約32%、約47%、約22%である。

各部分の具体的構成についてみると、オープナーの上部のハンドル部は、上面視で

円形状であり、外縁全体に連続的に10個の半円状の凸部がある花弁形状となってい

る。スクリューは円柱形状であり、上側約3分の2の部分の直径がその余の部分の直

径よりやや細く、外周に90度間隔の幅でスクリューの軸方向と平行に4つのリブ状

凸部が設けられている。また、スクリューの上部にアタッチメント取付用のフランジ

が配されている。メインブランチとサイドポートの接続部分には、全体として円形状

(円の直径は、メインブランチの長さの約半分であり、20mm程度とみられる。)を

構成する3つの扇形状の支持部が設けられており、メインブランチとサイドポートと

が鋭角に接続する部分に設けられた扇形状の支持部には、シボ加工が施された上、

「T

MP」

「Smart」の文字が二行にわたって成形されている。円柱状のローテータの

側面部には45度間隔の幅で凸型のリブが8か所に設けられている。

イ 被告Yコネクターの形態からは、全体として円形状を構成する扇形状の支持部

の一つに成形された「TMP」

「Smart」の文字に相応して「ティーエムピー」

「ス

マート」の称呼を生じ、

「Smart」の文字に相応して「聡明な」といった観念を生

じる。

(4) 原告Yコネクターの形態と被告Yコネクターの形態の類否

以上を前提として、原告Yコネクターの形態と被告Yコネクターの形態とを比較す

ると、両者は、その外観のうち、Yコネクターとしての全体的な構成が共通している

ほか、オープナーが着色されている点、その他の部分の多くが無色透明である点、全

長が約88mmである点、全長の寸法を4としたときに、サムホイール、メインブラ

ンチ及びローテータの各寸法比が、おおむね1:2:1といい得る点において共通し

ている。もっとも、Yコネクターの全体的な構成自体は、Yコネクターの技術的な機

能に由来し、他の同種製品も基本的には同様の構成を有するものであるから、そのこ

とを認識している需要者(医師を中心とする医療従事者)に対する出所識別標識とし

ての機能を果たすものとは認められない。

他方で、両者には、①原告Yコネクターではオープナーのみが透明かつ黄色に着色

され、他の部材は全て無色透明であるのに対し、被告Yコネクターではオープナーは

シボ加工された透明感のない素材が用いられてオレンジ色に着色され、スクリューの

下部及びローテータの上部にオープナーと同色(オレンジ色)に着色されたCリング

を有する点、②原告Yコネクターのメインブランチとサイドポートの接続部分には、

接合部からそれぞれ10mm弱離れた箇所をつなぐ形の水かき様(略二等辺三角形状)

のリブが設けられているのに対し、被告Yコネクターのメインブランチとサイドポー

トの接続部分には、全体として円形状(直径20mm程度)を構成する3つの扇形状

の支持部が設けられており、メインブランチとサイドポートとが鋭角に接続する部分

に設けられた扇形状の支持部には、シボ加工が施された上、「TMP」「Smart」

の文字が二行にわたって成形されている点において相違しており、その他にも、オー

プナーの形状、スクリューやローテータに設けられた凹凸の数や形状、アタッチメン

ト取付用フランジの有無等の相違点がみられる。

ここで、上記①の点については、前記2のとおり、原告Yコネクターの形態のうち、

他の同種商品とは異なる顕著な特徴である「オープナー以外を全て無色透明とする」

という点に関わるものであるところ、同種商品(控訴人及び被控訴人以外の他社のY

コネクター)には、スクリューやローテータの内部が一部着色されているものがある

ものの、スクリューやローテータの外側のほか、メインブランチ及びサイドポートを

含めたYコネクターの大部分が無色透明の素材によって構成されていることは他の幾

つかの同種商品も備える特徴であることに照らすと、オープナー以外を無色透明とす

ることは、原告Yコネクターと被告Yコネクターとの類否を判断する事項として大き

なものとは認め難く、他方、被告Yコネクターでは、オープナーはシボ加工された素

材がオレンジ色に着色され、スクリューの下部及びローテータの上部にオープナーと

同色(オレンジ色)に着色されたCリングを有するのに対し、原告Yコネクターでは

これらの特徴を有しないとの相違点は、需要者である医師を中心とする医療従事者に

与える印象の差異が小さいとはいえない。また、上記②については、被告Yコネクタ

ーに設けられた円形状の支持部は、商品全体の中央に位置し、その直径もメインブラ

ンチの長さの半分程度に達しており、全体として被告Yコネクターの形態に安定した

印象を持たせるものであって、これは、接続部分に水かき様のリブを設けるにとどめ、

ローテータやスクリューの細さやメインブランチの長さもあいまった外観により原告

Yコネクターの形態が持つ全体としてスリムな印象とは異なるものというべきである。

加えて、オープナーの形状、スクリューやローテータに設けられた凹凸の数や形状、

アタッチメント取付用のフランジ等、他の外観上の差異も、Yコネクターの全体的な

構成自体は需要者に対する出所識別標識としての機能を果たすものと認められないこ

とからすると、それぞれ、需要者に異なる印象を与え得るものというべきである。

加えて、被告Yコネクターの円形状の支持部に成形された「TMP」「Smart」

の文字部分は、必ずしも強く目をひくとまではいえないが、同部分からは「ティーエ

ムピー」「スマート」の称呼が生じ、「聡明な」といった観念が生じるのに対し、原告

Yコネクターの形態からは何らの称呼及び観念を生じない。

そうすると、全長が約88mmでほぼ一致している点や、全長に対するサムホイー

ル、メインブランチ及びローテータの各寸法比がおおむね一致しているとしても、原

告Yコネクターの形態と被告Yコネクターの形態とは、外観、称呼、観念上の差異が

あって、二弁式Yコネクターの需要者である医師を中心とする医療従事者は、これら

の差異に基づいて異なる印象を受けるといえるから、両者を全体的に類似のものと受

け取るおそれがあるとまで認めることはできない。

したがって、被告Yコネクターの形態は、他人の商品等表示である原告Yコネクタ

ーの形態と類似するものとは認められない。

(5) 被控訴人の主張について

被控訴人は以下のとおり主張するが、次の理由によりいずれも採用することができ

ない。

ア 被控訴人は、需要者は、原告Yコネクターの厳密な寸法比によりその形態を認

識するのではなく、全体のおおむねの寸法及び寸法比率(全長が長く、サムホイール、

ローテータと比較してメインブランチが相対的に長い)による洗練されたスマートな

印象からその出所を認識するところ、この「全体のおおむねの寸法と各部のおおむね

の寸法比率」は、看者に与える視覚的印象が極めて強く、原告Yコネクターの形態に

おいて出所識別力が強い部分であるから、この全体のおおむねの寸法と各部のおおむ

ねの寸法比率を備える被告Yコネクターについて、原告Yコネクターとの類似性が否

定されることはないと主張する。しかし、原告Yコネクターにおける「全体のおおむ

ねの寸法と各部のおおむねの寸法比率」が他の同種商品とは異なる顕著な特徴である

としても、被控訴人の「商品等表示」として保護の対象となるのは飽くまで原告Yコ

ネクターの形態全体であって、「全体のおおむねの寸法と各部のおおむねの寸法比率」

が共通するからといって、直ちに商品等表示としての類似性が肯定されるものではな

い。

イ 被控訴人は、オープナーが透明感のない素材であること、スクリュー及びロー

テータのCリングが着色されていることその他の相違点は、ささいな相違として共通

点に包摂され、離隔的観察、全体観察によれば、類似性に影響を与えるものではなく、

原告Yコネクターと被告Yコネクターとは、全体的な構成や全体が透明な部材で製作

されているとの共通性があるなどと主張する。

しかし、前記(4)及び引用する原判決「事実及び理由」第3の2(5)エのとおり、両

者の共通点であるYコネクターの全体的な構成自体や、その大部分を透明性のある素

材とすることは、二弁式Yコネクターの技術的な機能に由来するものであって、その

ことを認識する需要者(医師を中心とする医療従事者)に対する出所識別標識として

の機能を果たすものとは認められない。

また、前記(4)のとおり、スクリューやローテータ内に着色された部材を備えた上で、

Yコネクターの大部分が無色透明の素材によって構成されている同種商品が幾つか存

在することから、原告Yコネクターの形態のうち、他の同種商品とは異なる顕著な特

徴は、「オープナー以外を全て無色透明とする」(かつ、オープナーは透明でありなが

ら着色されている)ことであるが、被告Yコネクターは、スクリューやローテータ内

に着色された部材(Cリング)を備え、かつ、オープナーが透明感のない素材である

ことから、原告Yコネクターのこれらの特徴を備えていない。

さらに、被告Yコネクターには、商品中央に、メインブランチの長さの半分にも達

する程度の直径を有する円形状の支持部を有し、これにより全体として被告Yコネク

ターの形態に安定した印象を持たせている上、そこには「TMP」

「Smart」の文

字も成形されているほか、オープナーの形状、スクリューやローテータに設けられた

凹凸の数や形状、アタッチメント取付用のフランジ等、Yコネクターを構成する各部

の具体的形状に種々の差異があるのであるから、「全体のおおむねの寸法と各部のお

おむねの寸法比率」といった共通点に、これらの相違点がささいな相違として包摂さ

れるということは困難である。

ウ 被控訴人は、被告Yコネクターが、外観のみならず、部品構成・部品数や内部

構造においても原告Yコネクターとほぼ同一であり、原告Yコネクターのデッドコピ

ーともいえる模倣品である旨主張する。しかし、上記のとおり、両者には複数の看過

し得ない相違点があり、被控訴人の主張は採用できない。また、仮に一般に市場に出

回っている原告Yコネクターと被告Yコネクターが、部品構成・部品数や内部構造が

ほぼ同一であるとしても、それらをもって、被告Yコネクターの形態が原告Yコネク

ターの形態に類似するかという点には直接関係しない。

結論

以上によると、その余の争点について検討するまでもなく、被控訴人の請求には理

由がないから全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であり、本件

控訴は理由があるから、原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上で、これを棄却す

ることとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官

本 多 知 成

裁判官

伊 藤 清 隆

裁判官

天 野 研 司

(別紙1)

原告Yコネクターの形態と名称以上

(別紙2)

被告Yコネクターの形態と名称以上

(別紙3) 二弁式Yコネクター比較

2021/09/01バリエーション追加発売CEBAFDメディカル・イノベイション社 メディカル・イノベイショ メリットメディカル社Yコアボット社コネクター 原告Yコネクター カネカ社Yコネクター 被告YコネクターYコネクターI ン社YコネクターⅡ ネクター承認日 1994.10.12 1999.8.12 2020.5.21 2014.8.6 ー 2016.5.12 1994.2.3製品長A 74mm 87.99mm 82.30mm 72.65mm 87.70mm 72mm 74mmサイドポート角度B 60° 60° 58° 60° 60° 60° 40°オープンナー隙間C 0mm 4.75mm 4.80mm 4.88mm 4.50mm 5 6ローテータ長さD 19.40mm 23.10mm 19mm 19mm 19.40mm 19mm 21mmサムホイール長さE 29.61mm 27.90mm 33.88mm 33.82mm 27.50mm ー 24.31mmサイドポート長さF 27.55mm 35.70mm 31.29mm 25.81mm 34.20mm ー 22.17mm最大耐圧 400psi 500psi 43.5psi 43.5psi 600psi 43.5psi ー最大機器サイズ 8.7Fr 10Fr 7.6Fr 9Fr 9Fr 9Fr 9Fr

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