令和7(行ケ)10026審決取消請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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| 裁判年月日 |
令和7年7月24日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告株式会社Donuts 被告特許庁長官
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| 法令 |
商標権
商標法3条1項3号15回 商標法6条2項1回 商標法15条1回
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| キーワード |
審決14回 拒絶査定不服審判2回 無効審判1回 無効1回 分割1回
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| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。15
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした本件審決
の取消訴訟である。争点は、商標法3条1項3号該当性である。 |
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判決文
令和7年7月24日判決言渡
令和7年(行ケ)第10026号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年7月1日
判 決
原 告 株式会社Donuts
同訴訟代理人弁護士 恩 田 俊 明
10 被 告 特許庁長官
同 指 定 代 理 人 吉 田 聡 一
同 板 谷 玲 子
同 阿 曾 裕 樹
主 文
15 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2023-12067号事件について令和7年2月12日にした
20 審決(以下「本件審決」という。)を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、商標出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした本件審決
の取消訴訟である。争点は、商標法3条1項3号該当性である。
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない)
25 原告は、令和4年4月14日、「九州コレクション」の標準文字からなる別
紙「商標目録」記載の商標(以下「本願商標」という。甲1)について、商標
登録出願をしたが(商願2022-43637)、令和5年4月14日付けで
拒絶査定を受けたため、同年7月18日、拒絶査定不服審判を請求(甲5)し
た。
特許庁は、これを不服2023-12067号事件として審理し、令和7年
5 2月12日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との本件審決をし、その
謄本は、同月26日、原告に送達された。
原告は、同年3月27日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
2 本件審決の理由の要旨(詳細は別紙「本件審決の理由」のとおり)
本願商標をその指定役務中、ファッションショーに関係する役務に使用した
10 場合、これに接する取引者、需要者に「九州で開催される有名デザイナーなど
の発表する発表会、ファッションショー」ほどの意味合いを認識させるに止ま
るから、本願商標は、単に、役務の質(内容)を表示するにすぎず、自他役務
識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
15 3 取消事由
商標法3条1項3号該当性判断の誤り
第3 当事者の主張
(原告の主張)
1 本件審決は、本願商標の対象役務の中にファッションショーの企画・運営等
20 のファッションショーに関するものが含まれると評価した上で、記述的商標該
当性を判断するに当たり、「これを取り扱う業界においては」という判断枠組
みを採用するが、このような判断過程は、本願の指定役務の需要者を意図的に
狭く解釈する不当なものである。
指定役務との関係で本願商標の記述的商標該当性を判断するに際しては、最
25 高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判
集民事126号507頁(以下「ワイキキ商標事件最高裁判決」という。)に
照らし、本願商標の指定役務の全部について、その需要者等であれば何人もそ
の使用を欲するか否か、という検討を行うべきである。
この点、ファッションショーを取り扱わない業界においては、「地名」+
「コレクション」の語が多様な意味合いで用いられ、しかもそれらが需要者等
5 において特段の混乱もなく使用されていることが窺える(甲9の1~5、甲1
0の1~15)。
2 ファッションショーを取り扱う業界の需要者であっても、市井の人々である
以上、日々さまざまな情報に接しており、「地名」+「コレクション」の語が
ファッションショー以外の意味合いで用いられる例は枚挙にいとまがないので
10 あるから、本願商標が需要者に「九州で開催される有名デザイナーなどの発表
する発表会、ファッションショー」ほどの意味合いを認識させるに止まるとは
いえない。
(被告の主張)
1 商標法3条1項3号該当性について
15 本願商標「九州コレクション」は、その構成文字の語義(乙1~3)とその
指定役務に係る取引の実情(乙4~26)を踏まえると、ファッション関連の
商品展示会やイベント等と関係して、「九州で開催される製品発表会」(ファ
ッションショー又はそれを模したイベント)程度の意味合いを容易に認識、理
解させるものである。
20 そうすると、本願商標は、その指定役務中、例えば第35類「広告業」や第
41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及
びスポーツ・競馬・ 競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除
く。)」などのファッション関連の商品展示会やイベント等と関係する役務に
使用するときは、その取引者、需要者(一般消費者を含む。)をして、上記意
25 味合い、すなわち、役務の質(内容)又は提供の場所を表示したものと一般に
認識されるものであって、同種イベントの開催に際して必要適切な表示として
何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認める
のは公益上適当ではなく、自他役務の識別力を欠く。
したがって、本願商標は、その指定役務との関係において、役務の質又は提
供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、
5 商標法3条1項3号に該当する。
2 原告の主張に対する反論
⑴ 原告の主張1について
商標法15条は、商標登録出願が同法3条を含む拒絶理由のいずれかに該
当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなけれ
10 ばならない旨を規定しているから、商標登録出願に係る指定商品又は指定役
務(概念上包含している商品及び役務を含む。)との関係において拒絶理由
が存在するときは、仮に拒絶理由に該当しない商品又は役務が含まれている
としても、当該出願は拒絶しなければならない。そして、拒絶査定不服審判
においては、拒絶査定が違法か否かが審理の対象になるところ、指定商品又
15 は指定役務の一部にでも拒絶理由があれば、当該拒絶査定は同条に基づき適
法になされたものといえる。
したがって、本願商標の指定役務(ファッション関連の商品展示会やイベ
ント等と関係する役務)について、商標法3条1項3号に該当する以上、こ
れらの役務以外の指定役務との関係について特段検討、評価するまでもなく、
20 本願は拒絶されるべきである。
⑵ 原告の主張2について
本件審決は、本願商標について、ファッション関連の商品展示会やイベン
ト等に関係する役務に係る取引の実情や使用される場面に着目して、その語
の意味を認定、判断したものであり、原告の指摘は当を得ない。
25 また、原告が挙げる事例のうち、例えば「北海道コレクション」(北海道
物産展、甲9の1)、「プラグス三重コレクション」(三重の食材販売、甲
9の3)、「まるごと滋賀コレクション」(滋賀の特産品の販売イベント、
甲9の4)などは、商品販売促進のためのイベント分野において、「○○コ
レクション」(「○○」には地名が入る。)と称する、当該場所由来の産品
を取り扱う商品展示会が開催されている実情と関連するものであるから、
5 仮にこの取引の実情を踏まえたとしても、本願商標「九州コレクション」は、
商品販売促進のための商品展示会やイベント等と関係して、「九州のコレク
ション(収集物、特産品)」程度の意味合いを認識、理解させるにすぎず、
その指定役務中、これらのイベントと関連する役務に使用するときは、その
取引者、需要者をして、役務の質(内容、テーマ)を表示したものと一般に
10 認識されるものである。
したがって、いずれにしても、本願商標は、その指定役務との関係におい
て、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であ
るから、商標法3条1項3号に該当するとの結論に変わりはない。
第4 当裁判所の判断
15 1 商標法3条1項3号該当性について
⑴ 判断基準
商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているの
は、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で、商品の産地、販
売地、品質その他の特徴等、役務の提供の場所、質その他の特徴等を表示記
20 述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲
するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当と
しないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合
自他商品・役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものである
ことによる(ワイキキ商標事件最高裁判決参照)。
25 そうすると、出願に係る商標が、その指定役務について、同号にいう役務
の提供の場所、質その他の特徴(以下「役務の特徴」という。)を普通に用
いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、当該
商標が当該役務との関係で役務の特徴を表示記述するものであり、当該商標
が当該役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、役
務の特徴を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものと
5 解される。
⑵ 本願商標について
ア 本願商標「九州コレクション」を構成する文字中、「九州」は「福岡・
佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島の七県の総称。」を意味する語
である(乙1・広辞苑第七版)。
10 また、「コレクション」は、英語の「collection」の日本語表記であ
り、①「趣味として集めること。収集。」、②「収集品。特に美術品・
骨董品・書物などの収集品。」のほか、③「有名デザイナーなどの発表
する、そのシーズンの一連の新作。また、その発表会。」(乙3・広辞
苑第七版)を意味する語である。
15 英語の「collection」も、「(服飾の)コレクション、新作品(発表
会)≪デザイナーが1シーズンに売り出す衣服の全部≫」の意味を有し
ている(乙2・新英和中辞典第7版)。
イ そして、ファッション、アパレル業界においては、パリ、ミラノ、ニュ
ーヨーク、ロンドンの世界4都市でそれぞれ開催される「ファッションウ
20 ィーク」(ある一定期間のうちに多数のブランドがファッションショーや
最新のコレクションを発表する期間、又はそのイベントの総称)がその取
引者、需要者に広く知られており、これらのイベントは、日本国内では
「世界4大コレクション」と呼ばれたり、各都市名を採って「パリコレク
ション」「ミラノコレクション」などと呼ばれたりするのが一般的となっ
25 ている(乙4、5)。
また、日本国内では、東京ファッション・デザイナー協議会が立ち上
げ、2020年春夏コレクションからは「Rakuten Fashion Week TOKYO」
の名称で開催されているファッションイベントが「東京コレクション」
と呼ばれている(乙5)。
⑶ 本願商標の指定役務に係る取引の実情等
5 本願商標の指定役務(商標法6条2項)は、商標法施行令2条の規定によ
る商品及び役務の区分に属する商品又は役務として商標法施行規則6条、別
表で定める第35類「広告業」及び同第41類「興行の企画・運営又は開催
(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・
小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」(以下単に「興行の開催等」
10 という。)を含むものであり、この「広告業」には、「広告のための商品展
示会、商品見本市の企画又は運営」が含まれている(同規則別表・第35類
「一 広告業」(六))。以下、この「広告のための商品展示会、商品見本
市」を「商品展示会等」という。)。
これらの指定役務に係る商品展示会等の役務の取引者、需要者は、商品展
15 示会等の目的に応じ、その商品や役務に関係する取引業者、販売業者又は一
般消費者であり、興行の開催等の役務の需要者もその役務に関係する取引業
者や一般消費者であると認められる。
そして、本件審決時における、これらの指定役務に関する取引の実情とし
て、前記⑵イに加え、以下の事実が認められる。
20 ア 福岡県北九州市で開催された、モデルがランウェイを歩くといったファ
ッションショーを模した企画を含むイベント(興行に当たると認められ
る。)の名称として、「KSC 九州コレクション 2024」(乙6)、
「九州コレクション2022」(乙7)の名称が用いられている。
イ また、国内各地で開催された、デザイナーや服飾関係の業者、団体によ
25 り開催されたファッションショー(服飾に係る商品展示会等に当たると
認められる。)や、前記ア同様のファッションショーを模した企画を含
むイベント(商業目的以外と窺われるものを含む。)の名称として、開
催地の地域名と「コレクション」を組み合わせた、以下の名称が用いら
れている。
「沖縄コレクション2023」(乙11)
5 「沖縄コレクション2010」(乙12)
「OKINAWA COLLECTION (オキナワコレクション)
2008」(乙13)
「福岡コレクション」(乙16)
「99春夏福岡コレクション」(乙17)
10 「横浜コレクション2016~SpringSummer~」(乙18)
「ヨコハマコレクション2015」(乙19)
「みんなの四国コレクション」(乙20)
「松山コレクション2024」(乙22)
「HAKODATE COLLECTION(函館コレクション)20
15 23」(乙23)
「いしかわコレクション2023」(石川県金沢市で開催、乙24)
「仙台コレクション2016」(乙26)
「KYOTO COLLECTION(京都コレクション)」(甲10
の15)
20 ウ 前記ア、イの名称の多くが新聞等で報道されているほか(乙7、11~
13、16~20、22~24、26)、特定の地域で開催されたファッ
ションショー(商業目的以外と窺われるものを含む。)について報道する
新聞等において、「NDC(日本デザイナークラブ)九州’98-’99秋
冬コレクション」について「NDC九州コレクション」(乙8)、「Pray
25 for Peace Collection 2024 in 沖縄」について「子供と平和を願う『沖
縄コレクション』」(乙9)、「福岡アジアコレクション(FACo)」
について「福岡コレクション」(乙15)、市民文化団体「長崎コレクシ
ョン」が企画したミニファッションショーについて「長崎コレクション」
(乙25)といった略称が用いられている。
エ ファッションショー以外の商品展示会等に係る、以下の事例がある。
5 (ア) 東京都内で開催された北海道の物産展の名称として「北海道コレクシ
ョン HOKKAIDO COLLECTION」(甲9の1)
(イ) 横浜市内で開催された北海道幌加内町の物産展の名称として「北海道
コレクション」(甲9の2)
(ウ) プラグスマーケット四日市店が店内に設けた、三重県産の飲食品等
10 を販売するコーナーの名称として「プラグス三重コレクション」(甲
9の3)
(エ) 東京都内で開催された滋賀県主催の物産展の名称として「まるごと
滋賀コレクション」(甲9の4)
(オ) 神奈川県横須賀市で開催された、「横須賀に関連するアニメ・ゲー
15 ム・マンガ作品、乗り物、郷土研究等オンリー同人誌即売会」の名称
として「スカこれ!10~横須賀これくしょん~」(甲10の3)
(カ) 沖縄県内のデパートで開催された、かりゆしウェアや同県の伝統織
物などの展示即売会の名称として 「OKINAWAコレクション」
(乙10)
20 (キ) 沖縄県南城市の工芸作家が中心となって作品の展示、販売等を行う
企画の名称として「OKINAWA Collection クラフ
トフェア沖縄」(乙14)
オ 「興行」に係る、以下の事例がある。
(ア) 千葉県柏市が主催した「私たちの70年・柏コレクション写真展」
25 (甲10の2)
(イ) モデル事務所が高松市で共同開催したタレント発掘のための「四国コ
レクション-四国の若きチカラ発信オーデション」(甲9の5、乙2
1)
(ウ) 沖縄県北部で開催された芸術祭の企画展示名「ホテル アンテルーム
那覇コレクション」(甲10の7)
5 ⑷ 判断
以上のとおり、本願商標を構成する「コレクション」は、一般に「有名デ
ザイナーなどの発表する、そのシーズンの一連の新作の発表会」を意味する
ものとして使用されることがある語であって、これと代表的な開催地の地名
を結び付けた「パリコレクション」などの語は、その地で開催されるファッ
10 ションウィークの日本国内における呼び名として、ファッションに関係する
役務の取引者、需要者に広く知られていると認められる。
加えて、本願商標の指定役務に係る商品展示会等又は興行の開催等に含ま
れる、ファッションショーやファッションショーを模した企画を含むイベン
ト(商業目的のもの、商業目的以外のもの)については、開催地の地名に続
15 けて「コレクション」の文字を組み合わせた名称が広く用いられており、新
聞等においても、これらのファッションショーやイベントが当該名称ととも
に報道されている。その他、特定の地域で開催されたファッションショーに
ついて、開催地の地名に続けて「コレクション」の文字を組み合わせた略称
が、記事中で用いられている実情が認められる。
20 このような本願商標の構成文字の語義及び本願の指定役務に関する取引の
実情を踏まえると、本願商標「九州コレクション」は、その指定役務に含ま
れるファッションショーや、ファッションショーの要素を伴うイベントの企
画、運営、開催について使用された場合、本願商標の指定役務である商品展
示会等又は興行の開催等の取引者、需要者に、「九州で開催される、ファッ
25 ションショー又はファッションショーを模した企画を含むイベント」という、
役務の提供の場所及び役務の質(内容)を表示記述するものと一般に認識さ
れると認められる。
このような本願商標は、ファッションショーや、ファッションショーの要
素を伴うイベントの企画、運営、開催に係る役務の取引に際し、役務の特徴
(特に提供の場所及び役務の内容)を表すための必要適切な表示として、何
5 人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認める
のを公益上適当としないものであるとともに、多くの場合自他役務識別力を
欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることが明らかである。
そうすると、「九州コレクション」を標準文字で表した本願商標は、少な
くともその指定役務に含まれるファッションショーや、ファッションショー
10 の要素を伴うイベントに係る役務につき、当該役務の特徴を普通に用いられ
る方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項3号に
該当する。
2 原告の主張に対する判断
⑴ 原告は、本願商標の指定役務のうち、ファッションショーを取り扱わない
15 役務に係る取引の実情や需要者等の認識をも考慮すべきである旨主張する。
しかし、出願商標の指定商品・役務の中の一部に登録を受けることのでき
ないものがあれば、出願の分割ないし手続補正により当該登録を受けること
のできない指定商品・役務が削除されない限り、その出願は全体として登録
を受けることができないと解される(東京高裁昭和59年9月26日判決・
20 無体集16巻3号66頁参照)。本願商標は、指定役務の少なくとも一部に
ついて商標法3条1項3号に該当する以上、全体として登録を受けることが
できない。
なお、原告は、ワイキキ商標事件最高裁判決を引用するが、同判決は、複
数の商品(せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類)を指定商品とする「ワ
25 イキキ」の片仮名文字からなる商標について、少なくとも花香水を含む化粧
品類についてはワイキキの土産品として生産され、広く現地の販売店におい
て販売されていることが認められる事案において、商標法3条1項3号該当
性及び同法4条1項16号該当性を認め、登録無効審判不成立審決を取り消
した原判決を結論において維持したものである。ワイキキ商標事件最高裁判
決は、指定商品の一部についてのみ商標法3条1項3号該当性が認められる
5 にすぎない場合には出願全部の拒絶査定をすることができない旨の判断を示
したものではないから、同判決を根拠に、ファッションショー以外の指定役
務について、本願商標の商標法3条1項3号該当性を判断すべきである旨の
原告の主張は理由がない。
⑵ この点を措くとしても、原告が指摘する「地名」と「コレクション」を組
10 み合わせた語の使用例(甲9の1~5、甲10の1~15)は、以下に述べ
るとおり、いずれも前記1⑷の判断を覆すに足りるものではない。
すなわち、そもそも前記1⑶イのファッションショーを模したイベントの
名称であるもの(京都コレクション、甲10の15)は、むしろ前記1⑷の
判断を裏付けるものである。
15 前記1⑶オ(イ)のオーディション(四国コレクション、甲9の5)は、モ
デル分野の審査があるもので、事情によりファッションショーを取りやめた
と報じられており(乙21)、当初はファッションショーを模した企画を含
むイベントとして計画されていたと認められる。
また、前記1⑶エの、「コレクション」と組み合わせた地域の物産を対象
20 とする商品展示会等の名称に使用されている例(甲9の1~4、甲10の3
のほか、乙10、14)のほか、その地域の物産に係る販売用ウェブサイト
(江戸川いいものコレクション、甲10の1)、地産品等を紹介する冊子名
(大津コレクション、甲10の4)、国際見本市に出展した県の特産品の展
示プロジェクト(A×岐阜コレクション、甲10の5)、特産品を紹介する
25 SNSのアカウント名(鹿児島コレクション、甲10の9)、寄付金募集用
ウェブサイトの謝礼品の表示(町田コレクション、甲10の13)に「地名」
と「コレクション」を組み合わせた語が用いられていることは、本願商標
「九州コレクション」が特定の地域の物産を対象とする商品展示会等に係る
役務に使用された場合、「九州産の物産の広告のための商品展示会、商品見
本市」という、役務の質(内容)を表示記述するものと一般に認識されると
5 認められることになり、商標法3条1項3号該当性を認めるべき事情となる。
これ以外の様々な使用例についても、一定の地域で撮影された写真の展示
会(柏コレクション写真展、甲10の2)、一定の地域に存在する観光資源
や生き物の集まり(滋賀コレクション、甲10の6)、一定の地域の展示会
場(那覇コレクション、甲10の7)、一定の地域の伝統工芸品を用いた製
10 品の集合(福島コレクション、甲10の8)、一定の地域の風景やニュース
を紹介した記事の掲載サイトの標題の名称(静岡コレクション、甲10の1
0)、一定の地域の情報の発信サイト(三重コレクション、甲10の11)、
一定の地域の学生から構成される団体(愛媛コレクション、甲10の12)、
一定の地域の写真素材(小樽コレクション、甲10の14)であって、「地
15 名」と「コレクション」の組合せは、各地域と関連する事物の集合を表示記
述するものとしても一般に認識されているものということができ、それ自体、
商標法3条1項3号該当性を認めるべき事情となる一方、これらの使用例の
存在により前記1⑷の認定判断が否定されることにはならない。
⑶ したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
20 3 結論
以上のとおり、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、本件審決に原告主
張の取消事由は認められないから、原告の請求は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 響
裁判官
菊 池 絵 理
10 裁判官
頼 晋 一
(別紙)
商 標 目 録
【商標】
5 九州コレクション(標準文字)
【指定役務】
第35類 広告業、商品の販売に関する情報の提供、消費者のための商品及
び役務の選択における助言と情報の提供、求人情報の提供、実演者
に関する事業の管理、職業のあっせん、モデルのあっせん、オンラ
10 インによるダウンロード可能並びに記録済みの音楽及び映画の小売
の業務において行われる顧客に対する便益の提供、広告場所の貸与、
ファンクラブの企画・運営又は管理
第41類 電子出版物の提供、娯楽分野における情報の提供、写真の撮影、
興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行
15 及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関する
ものを除く。)、インターネットを利用して行う映像の提供、イン
ターネットを利用して行う音楽の提供、映画・演芸・演劇又は音楽
の演奏の興行の企画又は運営、教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデ
オの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)、音響用又は
20 映像用のスタジオの提供
以 上
(別紙)
本件審決の理由
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
5 本願商標は、「九州コレクション」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中
の「九州」の文字は「福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島の7県の総称。」
(「広辞苑 第七版」岩波書店)を意味する語で、また、「コレクション」の文字は
「(1)趣味として集めること。収集。(2)収集品。特に美術品・骨董品・書物な
どの収集品。(3)有名デザイナーなどの発表する、そのシーズンの一連の新作。ま
10 た、その発表会。」(前掲書)を意味する語であって、本願商標は、これらの語を組
み合わせてなるものと容易に理解できるものである。
そして、本願の指定役務には、例えば第41類「興行の企画・運営又は開催(映
画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競
走の興行に関するものを除く。)」中に「ファッションショーの企画・運営」が含ま
15 れるなど、ファッションショーに関するものが含まれると解されるところ、これを取
り扱う業界においては、別掲のとおり、地名や地域名と「コレクション(COLLE
CTION)」の文字を組み合わせた「〇〇コレクション(〇〇COLLECTIO
N)」の文字が、当該地又は当該地域において開催される「デザイナーなどのファッ
ションの発表会、ファッションショー」ほどの意味合いで使用されている事実が認め
20 られる。
そうすると、本願商標をその指定役務中、例えば、ファッションショーの企画・運
営を含む第41類「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興
行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」
などのファッションショーに関係する役務に使用しても、これに接する取引者、需要
25 者に「九州で開催される有名デザイナーなどの発表する発表会、ファッションショー」
ほどの意味合いを認識させるに止まり、本願商標は、単に、役務の質(内容)を表示
するにすぎず、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、「原査定や審判体の見解はいずれも、「地域」+「コレクション」の語
5 から想起されうる意味合いとして「ファッションショー」が存在することを縷々繰り
返すものではあっても、そのほかにも「地域に関する情報をまとめて紹介する」など
といった他の種々の意味合いを想起させることが否定されるような「一般的」な用法
とまでは言えず、あくまで複数の意味合いとともに「間接的」な用法のひとつである
ことを示しているに過ぎない。よってかかる見解は、本願商標が記述的商標であるこ
10 との根拠足りえない。」旨主張する。
たしかに、請求人が主張するとおり、地名・地域名と「コレクション」の語を組み
合わせたものを、請求人の挙げる事例のような地域の産品等を収集したものに関する
役務との関係でみた場合には、「コレクション」の語が、「収集。収集品。」の意味
合いも有することから、「○○(地名・地域名)に関する産品等を収集したもの」ほ
15 どの意味合いに理解され得ることを否定するものではない。
しかしながら、登録出願に係る商標が識別力を有するか否かの判断は、指定役務の
取引者、需要者によってどのように認識されるかを基準として判断されるべきところ、
前記(1)のとおり、各語の意味合いと、本願の指定役務中のファッションショーに
関係する役務を取り扱う業界における取引の実情を考慮すれば、地名・地域名と「コ
20 レクション」の語からなる本願商標は、ファッションショーに関係する役務との関係
において、「九州で開催される有名デザイナーなどの発表する発表会、ファッション
ショー」という役務の質(内容)を表示したものと一般に認識させるというべきであ
る。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
25 以 上
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