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令和5(ワ)70127債務不存在確認等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和7年7月25日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社SHIFFON
被告サクラインターナショナル株式会社 Aⅰ
法令 著作権
著作権法101条3回
民法709条2回
商標法4条1項7号2回
著作権法2条1項12号1回
著作権法15条1回
民法163条1回
商標法29条1回
キーワード 商標権95回
ライセンス92回
許諾35回
侵害31回
損害賠償20回
差止20回
無効6回
抵触1回
実施1回
無効審判1回
主文 1 被告会社が、原告に対し、原告が別紙著作物目録記載の著作物を複製、翻案、
2 被告会社が、原告に対し、原告が別紙著作物目録記載の著作物を複製、翻案、20
3 被告会社が、原告に対し、原告が別紙標章目録記載の各標章を、別紙被告商
4 被告会社が、原告に対し、原告が別紙標章目録記載の各標章を、別紙被告商
5 被告会社は、文書、口頭又はインターネットを通じて、原告が別紙著作物目
6 被告会社は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和5年5月11日
7 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告会社の
9 この判決は、第5項及び第6項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 本件に至る経緯等 (1) 被告会社は、株式会社バイタルジャパン(以下「バイタルジャパン」とい う。)が、令和4年9月に開催されたイベント(以下「本件イベント」とい う。)において、別紙著作物目録記載の著作物(以下「本件著作物」という。)5 及び別紙標章目録記載1ないし3の各標章(以下、これらの標章を併せて 「本件各標章」という。)を使用した製品を展示したことについて、バイタル ジャパンに対し、同製品を製造、陳列する行為は、被告会社が有する本件著 作物の著作権(以下「本件著作権」という。)及び別紙被告商標目録記載1な いし4の商標(以下、同目録記載の番号に応じて「本件商標1」などといい、10 これらを併せて「本件各商標」という。)に係る商標権(以下、同目録記載の 番号に応じて「本件商標権1」などといい、これらを併せて「本件各商標権」 という。)を侵害するものであるとして、上記行為の差止め及び製品の廃棄を 求めるとともに、応じない場合には損害賠償を含む法的措置を講じる用意が ある旨の書面(以下「本件警告書」という。)を送付した。15 (2) 本件は、本件イベント開催当時バイタルジャパンの取引先であった株式会

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判決文

令和7年7月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第70127号 債務不存在確認等請求事件
口頭弁論終結日 令和7年4月25日
判 決
5 株式会社SHIFFON訴訟承継人
原 告 株式会社SHIFFON
同訴訟代理人弁護士 成 川 弘 樹
金 子 禄 昌
葛? 谷 滋 基
10 遠 藤 賢 祐
被 告 サクラインターナショナル株式会社
(以下「被告会社」という。)
被 告 Aⅰ
(以下「被告個人」という。)
15 上記両名訴訟代理人弁護士 田 中 圭 祐
主 文
1 被告会社が、原告に対し、原告が別紙著作物目録記載の著作物を複製、翻案、
譲渡、展示、公衆送信又は送信可能化することにつき、同目録記載の著作物の
著作権侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことを確認する。
20 2 被告会社が、原告に対し、原告が別紙著作物目録記載の著作物を複製、翻案、
譲渡、展示、公衆送信又は送信可能化することにつき、著作権に基づく差止請
求権を有しないことを確認する。
3 被告会社が、原告に対し、原告が別紙標章目録記載の各標章を、別紙被告商
標目録記載の各商標権の指定商品又はその包装に付し、別紙標章目録記載の各
25 標章を付した別紙被告商標目録記載の各商標権の指定商品を、譲渡し、引き渡
し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出又は輸入することについて、別
紙被告商標目録記載の各商標権の侵害を理由とする損害賠償請求権を有しない
ことを確認する。
4 被告会社が、原告に対し、原告が別紙標章目録記載の各標章を、別紙被告商
標目録記載の各商標権の指定商品又はその包装に付し、別紙標章目録記載の各
5 標章を付した別紙被告商標目録記載の各商標権の指定商品を、譲渡し、引き渡
し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出又は輸入することについて、別
紙被告商標目録記載の各商標権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。
5 被告会社は、文書、口頭又はインターネットを通じて、原告が別紙著作物目
録記載の著作物及び別紙標章目録記載の標章について第三者にライセンスをす
10 る権限を有しないとの事実を告知し、又は流布してはならない。
6 被告会社は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和5年5月11日
から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
7 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告会社の
15 負担とする。
9 この判決は、第5項及び第6項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文第1項ないし第4項と同旨。
20 被告らは、文書、口頭又はインターネットを通じて、原告が別紙著作物目録
記載の著作物及び別紙標章目録記載の標章について第三者にライセンスをする
権限を有しないとの事実を告知し、又は流布してはならない。
被告らは、原告に対し、連帯して、金1100万円及びこれに対する本訴状
送達の日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
25 被告らは、別紙謝罪広告目録第1記載の謝罪広告を、別紙謝罪広告目録第2
記載の要領をもって掲載せよ。
第2 事案の概要等
本件に至る経緯等
(1) 被告会社は、株式会社バイタルジャパン(以下「バイタルジャパン」とい
う。)が、令和4年9月に開催されたイベント(以下「本件イベント」とい
5 う。)において、別紙著作物目録記載の著作物(以下「本件著作物」という。)
及び別紙標章目録記載1ないし3の各標章(以下、これらの標章を併せて
「本件各標章」という。)を使用した製品を展示したことについて、バイタル
ジャパンに対し、同製品を製造、陳列する行為は、被告会社が有する本件著
作物の著作権(以下「本件著作権」という。)及び別紙被告商標目録記載1な
10 いし4の商標(以下、同目録記載の番号に応じて「本件商標1」などといい、
これらを併せて「本件各商標」という。)に係る商標権(以下、同目録記載の
番号に応じて「本件商標権1」などといい、これらを併せて「本件各商標権」
という。)を侵害するものであるとして、上記行為の差止め及び製品の廃棄を
求めるとともに、応じない場合には損害賠償を含む法的措置を講じる用意が
15 ある旨の書面(以下「本件警告書」という。)を送付した。
(2) 本件は、本件イベント開催当時バイタルジャパンの取引先であった株式会
社SHIFFON(平成16年6月16日に設立され、令和7年3月1日に
原告に吸収合併され消滅した。以下では、「原告」と表記する場合、特に記載
がない限り、吸収合併消滅会社である株式会社SHIFFONも含む。)が、
20 本件警告書に記載された警告対象となった製品は、原告が、スケートボーダ
ー兼アーティストとして活躍するBⅰ(以下「Bⅰ」という。)のブランド管
理会社であるTULUMIZE INC.(以下「TULUMIZE」とい
う。)との間の契約に基づき、マスターライセンシーとして製造、販売等する
ものであり、被告会社は、本件警告書により、原告に対して著作権侵害又は
25 商標権侵害を理由として権利行使する意向を表明していることは明らかであ
るところ、被告会社は、本件著作権を有しておらず、また、本件各商標は商
標法4条1項7号に該当し無効であるか、原告に対する本件商標権に基づく
権利の行使が権利濫用又は商標法29条に該当し、被告会社は原告に対して
本件各商標権に基づく権利を行使することができないと主張するとともに、
本件警告書の送付が、被告らと競業関係にある原告の営業上の信用を害する
5 虚偽の事実を告知するものであり、不正競争防止法(以下「不競法」という。)
2条1項21号の不正競争に該当し、かつ、被告個人による被告会社の代表
取締役としての職務行為上の不法行為に該当すると主張して、被告会社に対
しては、次項(1)及び(2)の各損害賠償請求権等の不存在確認(以下、順次
「著作権侵害債務不存在確認」及び「商標権侵害債務不存在確認」といい、
10 両者を併せて「本件各債務不存在確認」という。、被告らに対しては、同(3)

の不競法3条1項に基づく差止め、同(4)の不競法4条又は不法行為に基づく
損害賠償及び同(5)の不競法14条に基づく信用回復の措置を求める事案であ
る。
本件請求
15 著作権侵害に基づく損害賠償請求権及び著作権に基づく差止請求権の不存
在確認請求(著作権侵害債務不存在確認に係る請求)
原告が、被告会社に対し、原告が本件著作物を複製等することにつき、被
告会社が著作権侵害に基づく損害賠償請求権及び著作権に基づく差止請求権
を有しないことの確認を求めるもの。
20 商標権侵害に基づく損害賠償請求権及び商標権に基づく差止請求権の不存
在確認請求(商標権侵害債務不存在確認に係る請求)
原告が、被告会社に対し、原告が本件各標章を本件各商標権の指定商品に
付すことなどにつき、被告会社が商標権侵害に基づく損害賠償請求権及び商
標権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めるもの。
25 不競法3条1項に基づく差止請求
原告が、被告らに対し、同法3条1項に基づき、原告が本件著作物及び本
件各標章について第三者にライセンスをする権限を有しないとの事実を告知
し、又は流布することの差止めを求めるもの。
不競法4条又は不法行為に基づく損害賠償請求
5 原告が、被告らに対し、被告個人に対しては不競法4条又は民法709条
に基づき、被告会社に対しては不競法4条又は会社法350条に基づき、連
帯して1100万円(無形損害1000万円及び弁護士費用100万円)及
びこれに対する本訴状送達の日(被告会社につき令和5年5月10日、被告
個人につき同月27日)の翌日から各支払済みまで民法所定の年3パーセン
10 トの割合による遅延損害金の支払を求めるもの。
不競法14条に基づく信用回復の措置請求
原告が、被告らに対し、不競法14条に基づき、被告らの不正競争により
害された原告の営業上の信用を回復するため、別紙謝罪広告目録第1記載の
謝罪広告を、別紙謝罪広告目録第2記載の要領をもって掲載することを求め
15 るもの。
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(以下、特記しない
限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)等
当事者等
ア 吸収合併消滅会社である株式会社SHIFFON(令和4年9月1日以
20 前の商号は「株式会社志風音」であった。)は、平成16年6月16日に設
立された株式会社であり、衣類等について、輸出、輸入やその代理業務並
びに卸、小売業等を行っていた。
イ 吸収合併存続会社である原告は、令和6年12月10日に設立され、令
和7年3月1日に吸収合併消滅会社である株式会社SHIFFONを合併
25 し、同社の権利義務を承継した株式会社であり、衣類等について、輸出、
輸入やその代理業務並びに卸、小売業等を行っている。原告は、令和7年
4月8日に、吸収合併消滅会社である株式会社SHIFFONが提起した
本訴訟の訴訟手続につき受継の申立てをした。
ウ 被告会社は、衣料品繊維製品及び衣料用付属品の販売等並びに関連する
業務として衣料品繊維製品に関連するライセンス事業を行う株式会社であ
5 る。被告会社は、Bⅰの創作に係る本件著作物を含むイラスト、デザイン
等についてライセンス及びサブライセンス事業を展開してきた。被告個人
は、被告会社の代表取締役である。
エ サクラグループ有限会社(以下「サクラグループ」という。)は、被告個
人の配偶者が代表取締役を務める会社である。
10 オ Bⅰは、米国に在住し、スケートボーダー兼アーティストとして活動す
る者である。
カ Cⅰ(以下「Cⅰ」という。)は、米国に在住し、スケートボーダー兼ア
ーティストとして活動する者である。
キ Cujo Arts and Literature, Inc.(以下
15 「Cujo」という。)は、BⅰとDⅰ(以下「Dⅰ」という。)が平成1
2年(2000年)4月に設立し、Dⅰが代表取締役を務める米国ネバダ
州の会社である。Cujoは、平成20年(2008年)11月頃解散決
議がされ、また、ネバダ州法の規定に基づく年次申告を行わなかったこと
などにより、平成24年(2012年)5月1日、 永久失効」

20 (Permanently Revoked)となった。(甲99、乙56、58、59)
BⅰとCujoとの関係
Bⅰは、平成11年(1999年)10月1日、Cujoとの間で、雇用
契約書(乙7。以下「本件雇用契約書」という。)を作成した。本件雇用契約
書には、CujoがBⅰをエグゼクティブ・プロデューサーとして雇用し、
25 BⅰがCujoに対してCujoのウェブサイト、アートワーク、出版、映
画、スポーツ活動のためのコンテンツ開発及び制作に係るサービスを提供す
ること(1条)、CujoがBⅰに対して年俸5万ドルを支払うこと(3条)、
Bⅰが同契約終了後90日間はグアム州全域を含む地理的範囲において競業
避止義務を負うこと(9条)、その他休暇の定め等が記載されている。(乙7、
60)
5 被告会社とCujo及びCⅰとの音楽契約
被告会社は、平成12年(2000年)10月20日、Cujo及びCⅰ
との間で、アーティスト(Cujo及びCⅰの総称)が、一定の音楽作品を
制作し、また、それらのアルバムカバーアート等を創作するサービスを被告
会社に提供するとともに、被告会社が、アーティストの宣伝目的等のために、
10 カバーアート等を日本、米国、ラテンアメリカ及び欧州を含む全世界(以下
「ワールドワイドベース」という。)でTシャツ等に複製し、販売する独占
権を有することなどを内容とする契約(MUSIC PRODUCTION SERVICE AGREEMENT。
以下「本件音楽契約」という。)を締結した。なお、本件音楽契約の契約書に
おけるCujoの署名欄には、「秘書」(Its Secretary)としてBⅰが署名
15 している。(乙1、75)
本件著作物
ア 本件著作物は、「エンジェル」などと称されるキャラクター(以下、当該
キャラクターを総称して「エンジェル」という。)を描いたイラストであり、
Bⅰは、平成13年(2001年)1月頃に来日した際、被告個人の求め
20 に応じて本件著作物を制作した。
イ なお、別紙イラスト目録記載1のイラスト(以下「エンジェル1」とい
う。)は、平成10年(1998年)5月に発行されたBⅰの作品集に掲載
されている。(甲21)
本件各商標
25 ア 被告会社は、平成15年3月17日、本件著作物と同様のエンジェルの
図形を内容とする本件商標1及び2の出願を行い、これらの商標はいずれ
も同年10月24日に登録された。被告会社は、平成21年6月29日、
サクラグループに本件商標権1及び2を移転し、サクラグループは、令和
2年10月19日に、再び本件商標権1及び2を被告会社に移転した。(甲
13、14、59、60)
5 イ 被告会社は、平成14年11月25日、Bⅰの氏名を英字表記した本件
商標3及び4の出願を行い、本件商標3は平成16年4月16日に登録さ
れ、本件商標4は同年5月14日に登録された。これらの商標の登録につ
いて、Bⅰは、平成15年(2003年)8月26日付けの承諾書をもっ
て、自らの氏名を商標として登録することを承諾していた。被告会社は、
10 平成21年6月29日に本件商標権3及び4をサクラグループに移転し、
サクラグループは、令和3年11月24日に、再び本件商標権3及び4を
被告会社に移転した。(甲15、16、61、62、乙18)
サクラグループとBⅰとのライセンス契約
サクラグループは、平成22年(2010年)12月8日、Bⅰとの間で、
15 Bⅰが、サクラグループに対し、衣類等の一定の商品にBⅰの名称、肖像及
びBⅰが創作し所有するデザインを利用する独占権を付与することなどを内
容とする契約(LICENSEING AGREEMENT。以下「本件ライセンス契約」という。)
を締結した。本件ライセンス契約締結の交渉は、被告個人が行っていた。(甲
8)
20 TULUMIZEと原告とのマスターライセンス契約
Bⅰが代表を務めるTULUMIZEと原告は、令和4年(2022年)
1月4日、原告が、日本において、TULUMIZEに関連する著作権及び
/又は商標権などの知的財産権を使用して商品を製造及び販売すること、並
びに日本の商標法に基づく指定商品又は指定役務の範囲のうち第9類、第1
25 8類、第25類及び第35類の範囲内で、TULUMIZEの名称、デザイ
ンを使用して商品を製造及び販売することにつき、TULUMIZEが原告
に対して許諾する旨の契約(以下「本件マスターライセンス契約」という。)
を締結した。なお、上記知的財産権は、TULUMIZEがBⅰから譲渡さ
れた、Bⅰの名前、署名、「エンジェル」のデザイン及び作品を含む、全ての
知的財産権を意味するとされている。(甲3)
5 BⅰとTULUMIZEとの権利譲渡契約
BⅰとTULUMIZEは、令和4年(2022年)5月23日、Bⅰが、
TULUMIZEに対し、Bⅰが作成し、保有する全作品の複製、展示、頒
布及び貸与の権利を含む全ての著作権(ただし、二次的著作物を創作する権
利を除く。)を譲渡する旨の契約を締結した。(甲4)
10 被告会社とCⅰとの権利譲渡契約
被告会社とCⅰは、令和4年(2022年)6月21日、Cⅰが、被告会
社に対し、音楽制作物(楽曲及び歌詞)、録音物、カバーアートワークに関す
る全ての著作権及び関連する権利を含む、Cⅰの権利、権原、及び利益の全
てを譲渡する旨の契約(RIGHT TRANSFER AGREEMENT)を締結した。(乙11)
15 被告会社とCujoとの権利譲渡契約
被告会社とCujoは、令和4年(2022年)8月7日、Cujoが、
被告会社に対し、本件音楽契約に基づき被告会社に納入された音楽著作物
(作曲、作詞)、録音物、ジャケット作品(アルバムジャケット、歌詞集)に
関する全ての権利、及び本件音楽契約に関する全ての契約上の権利を譲渡す
20 る旨の契約(Cujo's Rights Transfer Agreement)を締結した。なお、当該権
利譲渡契約第1条(2)③記載の「別紙2」には、本件著作物を含む著作物が掲
載されている。(乙10)
原告とバイタルジャパンとの有償支給取引契約
原告とバイタルジャパンは、令和4年8月1日、①原告が、バイタルジャ
25 パンに対し、自身が商品の製造に関する権利を有する「Mark Gonz
ales」のブランドを、バイタルジャパンが使用して商品を製造すること
を委託すること、②バイタルジャパンは、製造した商品を原告に販売し、原
告はその販売価格に使用料を加算してバイタルジャパンに販売することを内
容とする有償支給取引契約を締結した。(甲12)
本件イベントにおける製品の展示
5 バイタルジャパンは、令和4年9月7日から同月9日にかけて東京ビッグ
サイトで開催された「第94回 東京インターナショナル ギフト・ショー
秋2022」(本件イベント)において、本件著作物及び本件各標章を使用し
た「Mark Gonzales ARTWORK COLLECTION」
ブランドの鞄などの製品(以下「本件製品」という。)を展示した。(甲10)
10 本件警告書の送付
被告会社は、バイタルジャパンに対し、令和4年9月14日付け本件警告
書を送付した。本件警告書には、次のような内容が記載されている。(甲17)
ア 被告会社は、Bⅰのブランドのライセンス事業を営んでおり、「Mark
Gonzales」との呼称は、被告会社の登録商標である。
15 イ Bⅰのブランドを代表するエンジェルは、被告会社が著作権を保有する
とともに、被告会社の登録商標である。
ウ バイタルジャパンは、「Mark Gonzales ARTWORK
COLLECTION」と銘打って、エンジェルのマークを使用した手提
げ鞄、リュック、ポシェット等の商品を多数製造し、本件イベントで陳列
20 したが、これらの行為は、被告会社の商標権を侵害し、エンジェルに関す
る著作権(複製権、翻案権、展示権)等を侵害する違法な行為である。
エ バイタルジャパンは、原告からライセンスを受けていると主張するが、
原告は正当な権利者である被告会社から許諾を得ていない。
オ 被告会社は、バイタルジャパンに対し、直ちに、被告会社の知的財産権
25 を侵害する商品の製造等を停止し、製造済みの商品についても全て廃棄す
ることを要求し、仮にこれに応じない場合には、商標権及び著作権侵害を
理由として、商品の製造、販売の差止め及び損害賠償を請求するなど、法
的措置を講じる予定である。
原告は、本件警告書に記載された警告対象となった製品は、原告が、Bⅰ
のブランド管理会社であるTULUMIZEとの間の契約に基づき、マスタ
5 ーライセンシーとして製造、販売等するものであり、被告会社は、本件警告
書により、原告に対して著作権侵害又は商標権侵害を理由として権利行使す
る意向を表明していることは明らかであるなどと主張して、本件各債務不存
在確認に係る請求を含む本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
本件各商標権に係る取得時効の援用
10 被告会社は、本件第12回弁論準備手続期日(令和7年4月25日)にお
いて、被告準備書面(7)を陳述し、原告に対し、本件各商標権について、取得
時効を援用する旨の意思表示をした。(当裁判所に顕著な事実)
外国法の規定
ア 米国著作権法101条
15 「著作権の移転」とは、著作権又は著作権に含まれるいずれかの排他的
権利の譲渡、モゲージ設定、独占的使用許諾その他の移転、譲与又は担保
契約をいい、その効力が時間的又は地域的に制限されるか否かを問わない
が、非独占的使用許諾は含まない。
「共同著作物」とは、二以上の著作者が、各々の寄与物を分離できない
20 又は相互に依存する部分からなる単一物に統合する意図をもって、作成す
る著作物をいう。
「職務著作物」とは、以下のいずれかをいう。
(ア) 被用者がその職務の範囲内で作成する著作物。
(イ) 集合著作物の寄与物、映画その他の視聴覚著作物の一部分、翻訳、補
25 足的著作物、編集著作物、教科書、試験問題、試験の解答資料又は地図
帳として使用するために、特に注文または委託を受けた著作物であって、
当事者が署名した文書によって職務著作物として扱うことに明示的に同
意したもの。前段において、「補足的著作物」とは、序文、あとがき、挿
し絵、地図、海図、表、編集後記、編曲、試験の解答資料、文献目録、
付録、索引等、他の著作物を紹介し、終結させ、図解し、説明し、修正
5 し、注釈し又はその使用を助けることを目的として、他の著作者が著作
物の二次的付加物として発行するために作成する著作物をいう。また、
「教科書」とは、組織的指導活動における使用を目的として発行を予定
して作成する言語、絵画又は図形の著作物をいう。
イ 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」
10 という。)5条2項(抄)
著作物の保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障され
る救済の方法は、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところに
よる。
争点
15 被告会社による本件著作権に基づく権利行使の可否(争点1)
ア 本件著作権がCujo及びCⅰに原始的に帰属するか(争点1-1)
イ 被告会社による本件著作権の取得の有無(争点1-2)
被告会社による本件商標権に基づく権利行使の可否(争点2)
不競法3条1項に基づく差止請求の可否(争点3)
20 不競法4条又は不法行為に基づく損害賠償請求の可否(争点4)
不競法14条に基づく信用回復措置請求の可否(争点5)
第3 争点に関する当事者の主張
争点1-1(本件著作権がCujo及びCⅰに原始的に帰属するか)につい

25 (被告らの主張)
(1) 本件著作物は、平成13年(2001年)1月頃、別紙イラスト目録記載
2のイラスト(以下「エンジェル2」という。)の納品を受けた被告個人から
Bⅰに対し、「もう少ししっかりした形のエンジェルが欲しい」等の要望を伝
え、Bⅰが作成したものであるところ、本件著作物は、本件音楽契約に係る
絵画創作物であり、本件音楽契約に係る絵画創作物を含むコラボレーション
5 アルバムは、Cujoの従業員兼役員であったBⅰとCⅰが共同で制作した
ものであり、イラスト、歌詞、デザイン、メロディーが一体となっており、
分離不可能な性質のものである。仮に、分離可能であったとしても、両名の
コラボレーションアルバムであり、BⅰもCⅰの楽曲にインスピレーション
を受けてイラストを描いているのであって、相互依存性なくして作品は完成
10 しない。したがって、本件著作物は、BⅰとCⅰの共同著作物である。
そして、本件著作物は、Cujoに雇用されていたBⅰが、Cujoが締
結した本件音楽契約につき創作したものであるから、本件著作物は職務著作
物に当たる。
以上によれば、本件著作物の著作者はBⅰとCⅰであって、その著作権は
15 CujoとCⅰに原始的に帰属していた。
(2) Bⅰが平成2年(1990年)頃に制作したとされる別紙イラスト目録記
載3のイラスト(以下「エンジェル3」という。)と本件著作物は、羽の形、
表情、胴体部分の描写等から一見して別であるから、本件著作物は他のエン
ジェルの複製や二次的著作物ではなく、新規の著作物である。
20 (原告の主張)
(1) 本件著作物は、Bⅰの「エンジェル」と呼ばれる作品の一つであり、Bⅰ
は、平成7年(1995年)頃までに別紙イラスト目録記載4のイラスト
(以下「エンジェル4」という。)を創作し、その後、平成10年(1998
年)5月までにエンジェル4の二次的著作物としてエンジェル1を創作した。
25 本件著作物は、平成13年(2001年)1月頃に被告会社からの求めに応
じてBⅰが描いたものであるが、エンジェル1を有形的に再製したものにす
ぎないから、本件著作物は、遅くとも平成10年(1998年)5月までに
Bⅰが単独で創作したものである。上記の経緯からすれば、本件著作物は、
Bⅰの単独著作物であって、その著作権は制作者であるBⅰに原始的に帰属
している。
5 (2) 上記のとおり、本件著作物は、本件音楽契約とは無関係に、Bⅰが単独で
制作したものであるから、Cⅰは本件著作物の共同著作者ではない。また、
Cujoは、Bⅰの収入に対する課税を回避する目的で設立された法人であ
り、銀行口座の預金が唯一の資産であって、従業員を雇用することはもちろ
ん、事業を行うことすら想定しておらず、Bⅰの作品制作活動を管理してい
10 た事実もないから、本件著作物がCujoの職務著作に当たることもない。
争点1-2(被告会社による本件著作権の取得の有無)について
(被告らの主張)
被告会社は、以下のとおり、本件著作権を取得した。
本件音楽契約に基づく本件著作権の取得
15 ア 本件著作物は、本件音楽契約に係る絵画著作物であり、被告会社が、本
件音楽契約2条3項により、一定の音楽作品に関連して創作された一切の
カバーアート等をワールドワイドベースでTシャツ等に複製し、販売する
独占権を取得したことに基づき本件著作権のうち使途に限定のある複製権
及び頒布権は、譲渡又は原始取得により、被告会社に帰属する。また、同
20 契約6条により、本件著作物の翻案権につき、これを申請する権利も、譲
渡又は原始取得により、被告会社に帰属する。
イ 仮に、上記アの主張が認められないとしても、被告会社は、本件音楽契
約2条3項により、本件著作物に係る独占権(exclusive rights)の保有
者であるところ、これは独占的なライセンスの付与を意味するものであり、
25 米国著作権法101条は独占的なライセンスの付与を「著作権所有権の移
転」と定義しているから、被告会社は、その保有に係る原因行為が著作権
の譲渡であるか独占的なライセンスの付与であるかにかかわらず、米国に
おいて著作権者として扱われ、排他的使用権、許諾権・処分権、排除救済
権を有し、日本国においても著作権者と認定される。
Cujo及びCⅰとの間の権利譲渡契約に基づく本件著作権の取得
5 前記1(被告らの主張)のとおり、本件著作権はCujoとCⅰに原始的
に帰属するものであるところ、被告会社は、Cujo及びCⅰそれぞれと権
利譲渡契約を締結し、Cujo及びCⅰに残存した全ての権利を譲り受けて
いるから、被告会社は、本件著作物の全ての著作権を有する。仮に、本件著
作物につき、Cⅰとの共同著作が否定され、Cujoの職務著作とされる場
10 合でも、被告会社はCujoから権利を譲り受けており、結論は変わらない。
また、本件音楽契約に関し、Bⅰが創作した著作物は、被告会社、Cuj
o、Cⅰを一体化したグループの職務著作物であり、その著作権は同グルー
プに原始的に帰属していた。そして、被告会社は、Cujo及びCⅰそれぞ
れと権利譲渡契約を締結し、Cujo及びCⅰに残存した全ての権利を譲り
15 受けているから、被告会社は、本件著作物の全ての著作権を有する。
(原告の主張)
前記1のとおり、本件著作物は、本件音楽契約に基づいて制作されたもので
はなく、本件音楽契約とは無関係である。そして、本件著作物の著作権者であ
るBⅰは、本件著作物に関し、被告会社に著作権の譲渡をしていないし、何の
20 許諾もしていない。
被告らは、本件音楽契約を根拠に、Cujo及びCⅰから本件著作権の譲渡
を受けたと主張するが、そもそも、本件著作物は本件音楽契約の対象ではない
し、被告会社は、同契約2条3項により、音響作品とアーティストの広報のた
めに、音響作品に関連して創作された一切のカバーアートをTシャツ等に複製
25 し、販売することに関する独占的な権利(exclusive rights)を有するにすぎ
ない。したがって、被告会社は、本件音楽契約に基づき本件著作権を取得して
いない。
また、前記1で述べたとおり、CujoとCⅰは本件著作権を有していない
から、被告会社とCⅰ及びCujoとの間の権利譲渡契約により、被告会社が、
本件著作権を取得することもない。
5 以上によれば、被告会社は本件著作権を有していない。
争点2(被告会社による本件各商標権に基づく権利行使の可否)について
(被告らの主張)
本件各商標権は被告会社に帰属しており、被告会社は、原告に対し、本件各
商標権に基づき権利を行使することができる。
10 本件各商標権が本件音楽契約及びBⅰによる商標登録への承諾に基づくこ

ア 本件商標1及び2について
本件商標1及び2は、本件音楽契約の成果物であり、かつ、本件著作物
であるから、前記2(被告らの主張)のとおり、被告会社がこれら商標の
15 出願、登録、使用をする権限を有している。
イ 本件商標3及び4について
被告会社は、本件音楽契約2条4項により「Bⅱの氏名使用権」を有す
ることに加えて、平成15年(2003年)に、Bⅰから自らの氏名を登
録使用することの承諾を得ているから、本件商標3及び4を適法に出願、
20 登録、使用することができる。
原告の主張に対する反論
ア 被告会社及びサクラグループが、本件ライセンス契約に基づきライセン
ス事業を行っていたことは認めるが、本件各商標は、上記(1)のとおり、本
件ライセンス契約とは無関係の本件音楽契約及びBⅰによる商標登録の承
25 諾に由来するものであり、本件ライセンス契約の対象ではない。
イ そもそも、本件ライセンス契約においてBⅰがサクラグループに対して
許諾した権利は、Bⅰが創作し所有権を有する著作権の商品化権にすぎず、
本件ライセンス契約11条に規定する登録は「著作権登録」である。また、
本件ライセンス契約11条が定める返還義務は、「本件ライセンス契約期間
中のサクラグループによる同契約の許諾対象物の登録」が前提条件である
5 が、本件各商標は、被告会社による本件ライセンス契約締結前の登録商標
である。
ウ また、本件ライセンス契約の許諾対象物は、「Bⅰが創造し所有権を有す
る名前・写真・デザイン」に限定されるところ、Bⅰは、平成15年(2
003年)に被告会社に自らの氏名を登録使用することを承諾しているか
10 ら、被告会社以外の者であるサクラグループに対し、「MARK GONZ
ALES」の商標としての使用を許諾する権限を有しておらず、本件商標
3及び4は本件ライセンス契約の許諾対象物には該当しない。
さらに、被告会社は、平成12年(2000年)当時より、「MARK
GONZALES」ブランドを展開しており、平成22年(2010年)
15 の時点で、本件ライセンス契約を締結し、既に一定の顧客吸引力を有する
ブランド商標の無償譲渡ともいうべき返還義務に合意することには経済的
合理性がなく、合理的意思解釈としても、本件ライセンス契約に本件商標
3及び4は含まれない。
本件各商標権の時効取得
20 商標権についても、民法163条の適用が観念できるところ、以下のとお
り、本件各商標については取得時効が完成しているから、これを援用する。
ア 本件商標権1及び2について
被告会社は、本件音楽契約に基づき、本件商標1及び2の出願、登録を
行っており、登録時点で自らに正当な権限が存在すると確信しており、善
25 意、無過失であった。その後、被告会社は商標権者としてライセンス事業
を営み、「自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と」本件商標
権1及び2の準占有を行っており、平成25年3月16日に時効は完成し
ている。仮に、善意、無過失が否定される場合も、令和5年3月16日に
時効が完成している。
イ 本件商標権3及び4について
5 被告会社は、Bⅰの明確な承諾を得て、本件商標3及び4の出願、登録
を行っており、善意、無過失で所有の意思をもって準占有を開始している。
その後、被告会社は商標権者としてライセンス事業を営み、「自己のために
する意思をもって、平穏、かつ、公然と」本件商標権3及び4の準占有を
行っており、平成24年12月18日に時効は完成している。仮に、善意、
10 無過失が否定される場合も、令和4年12月18日には時効が完成してい
る。
(原告の主張)
(1) 被告会社は、下記アないしウにより、原告に対し、本件各商標権を行使す
ることができない。
15 ア 本件各商標が商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当すること
①本件ライセンス契約11条は、サクラグループが、Bⅰの要求に応じ
て、サクラグループが行った登録をBⅰに返却することを条件に、「Gon
zo Cuntry」 「Mark
、 Gonzales」及びBⅰのデザイ
ンを保護するために登録することができるものとする旨定めているところ、
20 被告会社は、サクラグループと一体的な存在であり、本件ライセンス契約
の実質的当事者として、同契約11条に基づき、Bⅰに対して本件各商標
権の返還義務を負い、Bⅰから再三にわたり返還を求められているにもか
かわらず、これを怠っていること、②被告会社は、本件ライセンス契約終
了により、同契約の対象であった知的財産を使用することができなくなっ
25 ているにもかかわらず、これを知りながら、本件各商標を含む上記知的財
産を使用して、Bⅰの許諾の下で展開されていると一般消費者に誤認させ
るような態様でブランドを展開し続けていること、③被告会社は、Bⅰや
原告のライセンスビジネスを妨害する目的で、原告からライセンスを受け
たライセンシーに対して、本件各商標権に基づき販売停止等を求める通知
書を送付していること、④被告会社は、本件各商標のほかにも、エンジェ
5 ルやBⅰの略称によって構成される商標を出願していること、⑤被告会社
は、本件各商標の出願につき、本件音楽契約によって本件著作権が被告会
社に譲渡され、Bⅰの氏名の使用が許諾されており、その使用許諾に商標
出願の許諾が含まれるため、Bⅰから本件商標出願を許諾されている等の
根拠のない主張を展開していること、⑥被告会社は、上記④の商標の出願
10 の根拠や、出願理由に関する原告からの質問への回答を拒否していること、
⑦Bⅰは、本件商標3及び4に関して返還請求や無効主張をするなど、こ
れらの商標の出願登録につき与えた許諾を撤回していること、⑧被告会社
は、Bⅰや原告への嫌がらせとしてBⅰ及び原告の訴訟代理人弁護士に懲
戒請求を行っていること、⑨被告会社は、本件ライセンス契約に基づき、
15 同契約の対象であった知的財産にかかるBⅰの権利を尊重し、Bⅰが行う
ライセンスビジネスを妨げてはならない信義則上の義務を負うにもかかわ
らず、上記①ないし③の行為によってBⅰのライセンスビジネスの展開を
妨げていること、⑩被告会社は、Bⅰの訴訟代理人でもある原告の訴訟代
理人を債務者として仮処分命令を申し立て、同事件においておよそ認めら
20 れる余地のない非論理的な主張を多々展開し、弁護士の業務を妨害してい
ることからすれば、本件各商標はBⅰに返還すべきものであり、被告会社
には本件各商標の使用に関する固有の正当な利益が認められず、被告会社
が不当な目的で商標登録を保持し、本件各商標を使用していることは明ら
かであるから、本件各商標は公序良俗に反する商標である。
25 イ 被告会社による原告に対する本件各商標権の行使が権利濫用であること
上記ア記載の事情に加え、⑪知的財産高等裁判所は、令和6年8月8日、
エンジェルやBⅰの名称によって構成される、本件各商標と類似する商標
について、公序良俗に反する商標に該当し無効である旨の判決をしたこと、
⑫本件各商標は、Bⅰの信用が化体した商標であり、被告会社の信用が化
体した商標ではないこと、⑬原告は、正当な権利者であるTULUMIZ
5 Eから本件各標章の使用について許諾を得ていることからすれば、被告会
社による原告に対する本件各商標権侵害を理由とする権利行使は権利濫用
に該当し、許されない。
ウ 被告会社による本件商標権1及び2の行使が、TULUMIZE及びB
ⅰの有する本件著作権に抵触すること
10 本件商標1及び2を構成する本件著作物の著作権は、TULUMIZE
及びBⅰが保有していることから、商標法29条により、被告会社は、本
件商標権1及び2を行使することはできない。
(2) 被告らが主張する本件各商標権の時効取得についての反論
ア 商標権に準占有の規定は適用されないから、商標権の時効取得はそもそ
15 も観念することができない。仮に、商標権に準占有の規定が適用されると
しても、被告会社及びサクラグループは、本件各商標につき、本件ライセ
ンス契約11条により、Bⅰに対して返還義務があることを前提として使
用していたものであるから、「自己のためにする意思」をもって本件商標権
を行使していない。また、被告会社及びサクラグループは、善意、無過失
20 ともいえないから、時効取得は成立しない。
イ 仮に被告会社が本件各商標権を時効取得したとしても、被告会社は、本
件各商標権につき、本件ライセンス契約11条に基づく返還義務を負うか
ら、被告らの主張は失当である。
争点3(不競法3条1項に基づく差止請求の可否)について
25 (原告の主張)
(1) 原告と被告会社はともに、本件著作物や本件各標章等について、第三者に
ライセンスを付与するというライセンス事業を行っており、また、被告個人
は被告会社の代表取締役として被告会社の業務を行っているから、原告と被
告らは競争関係にある。
(2) 被告会社は、バイタルジャパンに対し、令和4年9月14日付で本件警告
5 書を送付したが、本件警告書は、被告個人が被告会社の代表取締役として送
付したものであるから、被告らが送付したものといえる。そして、本件警告
書には、本件製品を製造し、陳列した行為が、被告会社が保有する本件著作
権及び本件商標権を侵害すること、及びバイタルジャパンのライセンサーで
ある原告は正当な権利者である被告会社の許諾を受けていないことなどが記
10 載されており、原告が本件著作物及び本件各標章に関して第三者にライセン
スをする権限を有していないとの事実を告知するものである。
しかし、本件著作権を有するのは、被告会社ではなくTULUMIZEで
あり、原告は本件マスターライセンス契約により本件著作権を使用して商品
の製造又は販売をすることができるし、本件商標権は無効であるか、被告会
15 社による本件商標権の行使は権利濫用であるから、本件各標章についてTU
LUMIZEは原告にライセンスをすることができ、原告もバイタルジャパ
ンにライセンスをすることができるから、本件警告書は虚偽の事実を告知す
るものである。
(3) 本件警告書により、原告は、バイタルジャパンから、本件著作物及び本件
20 各標章の使用についてライセンスをする権限を有していないとの疑いを持た
れることとなり、原告の事業上の信用が害されたものといえる。
(4) 以上のとおり、本件警告書の送付は、不競法2条1項21号の不正競争に
該当するから、原告は、被告らに対し、不競法3条1項に基づき、原告が本
件著作物及び本件各標章の使用に関してライセンスをする権限を有していな
25 いとの事実及び流布の差止めを求める。
(被告らの主張)
(1) 原告と被告らが競争関係にあることは認めるが、被告会社は、本件著作権
及び本件各商標権を有しているから、本件警告書の送付は、虚偽の事実を告
知するものではなく、不正競争に該当しない。
(2) 被告会社は、本件著作権及び本件各商標権を20年以上にわたり正当に有
5 し、かつ正当に使用し続けてきており、原告が被告会社の許諾なく本件著作
物を使用し、ライセンスする行為は、被告会社の有する本件著作権及び本件
各商標権を侵害する行為に該当するだけでなく、不正競争に該当する可能性
が高いことから、被告会社が、保有する権利の限度において、原告が本件著
作物のライセンスをする権限を有しないことを告知、流布等することは正当
10 な防御行為であり、正当な権利行使の範囲内の行為であるといえるから、不
正競争に該当しない。
争点4(不競法4条又は不法行為に基づく損害賠償請求の可否)について
(原告の主張)
(1) 被告会社がバイタルジャパンに対して本件警告書を送付した行為は、上記
15 4のとおり、被告らの不正競争に当たる。また、被告会社による本件警告書
の送付行為は、被告会社の代表取締役である被告個人が行ったものであり、
被告個人の行為は、不正競争に該当するとともに、原告の権利又は法律上保
護された利益を侵害するものとして不法行為にも該当する。
(2) 原告は、本件マスターライセンス契約締結の事実をウェブページ等で対外
20 的に公表しており、被告らも当然これを把握しているところ、原告に問合せ
等を行うことなく、原告の営業上の信用を害することを意図して、あえて本
件警告書を送付していることから、被告らに故意又は過失があることは明ら
かである。
(3) 被告らの行為により、原告は営業上の信用を害されたものであり、原告に
25 は少なくとも1000万円の無形損害が生じた。また、弁護士費用として1
00万円につき、被告らの不正競争又は不法行為と因果関係がある。
(4) 以上によれば、被告個人は、不競法4条又は民法709条に基づき、被告
会社は、不競法4条又は会社法350条に基づき、原告に対し、連帯して、
1100万円の損害賠償責任を負う。
(被告らの主張)
5 否認ないし争う。
本件警告書を送付した行為は、不正競争や不法行為に該当しない。
争点5(不競法14条に基づく信用回復措置請求の可否)について
(原告の主張)
被告らの不正競争により侵害された原告の営業上の信用を回復するためには、
10 別紙謝罪広告目録第1記載の謝罪広告を同第2の要領に従い掲載することが必
要である。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
本件警告書を送付した行為は、不正競争や不法行為に該当しない。
15 第4 当裁判所の判断
認定事実
前提事実等並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認
められる。
(1) 被告会社は、平成12年(2000年)10月20日、Cujo及びCⅰ
20 との間で、本件音楽契約を締結した。
本件音楽契約の具体的内容は、次のとおりである。(前提事実等(3)、乙1、
75)
第1条 音楽制作
1.1 アーティスト(Artists。Cujo及びCⅰの総称。以下本契約にお
25 いて同じ。)は、一定の音楽作品(Music Work。作曲及び作詞をいい、以
下 「 音 楽 作 品 」 と い う 。 ) 及 び 音 楽 作 品 の 演 奏 の 録 音 物 ( Sound
Recordings。以下「録音物」という。)を制作し、また、それらのアルバ
ムカバーアート及び/又は写真(Cover Artwork。以下「カバーアート」と
いう。)を創作するサービス(Services。以下「本サービス」という。)
を被告会社に提供する。
5 第2条 権利
2.1 音楽作品及び録音物の著作権は、第4条(原文ママ)に定める納入
物の納入時に被告会社に移転される。
(Copyrights of the Music Works and the Sound Recordings shall be
transferred to Sakura at the time of delivery of the Delivery
10 Materials set forth in Article 4.)
2.2 被告会社は、ワールドワイドベース(日本、米国、ラテンアメリカ
及び欧州を含む全世界)において、その著作権の保護期間中、録音物の全
部又は一部を、コンパクトディスク、音楽テープ、DVD及びその他の媒
体(Audio Works と総称されるもの。以下「音響作品」という。)により、
15 複製、頒布、販売、上演、演奏、放送、インターネット等の通信ネットワ
ーク等を利用した送信、その他の方法により利用する独占権(exclusive
rights)を有する。
(Sakura shall have the exclusive rights to reproduce, distribute,
release, perform, broadcast, transmit through telecommunication
20 network such as Internet, and exploit in any other means the Sound
Recordings in compact discs, music tapes, DVD and any other
media(hereinafter “Audio Works”), as a whole or in part, worldwide,
including, but not limited to ,Japan, the United States, Latin America,
and Europe(the “Worldwide Basis”)for the term of protection for
25 copyrights thereof.)
2.3 被告会社は、音響作品及びアーティストの宣伝目的のために、その
著作権の保護期間中、音響作品に関連して創作された一切のカバーアート
をワールドワイドベースでTシャツ等に複製し、販売する独占権を有する。
(Sakura shall have the exclusive rights to reproduce and sell any and
all album cover artwork and/or photographs created in conjunction
5 with the Audio Works for T-shirts, etc. Worldwide Basis for
promotional purpose of the Audio Works and the Artists for the term
of protection for copyrights thereof.)
2.4 被告会社は、音響作品及びアーティストの宣伝目的のために、Bⅰ
及びCⅰの名前を使用する権利を有する。
10 (Sakura shall have the right to use the names Bⅱ and Cⅱ for
promotional purpose of the Audio Works and the Artists.)
第6条 制作管理
6.1 アーティストは、音響作品のリリースに併せて制作される全ての作
曲、Tシャツ及び/又は宣伝資料に対し完全な制作管理権を保有する。
15 6.2 全ての商品デザインは、制作前に両アーティストの書面による承認
を得なければならない。
6.3 アーティストがデザイン申請を受領してから30日以内に、アーテ
ィストの承認又は拒絶を得られなかった場合には、被告会社は、アーティ
ストの承認なくデザインを制作する権利を有する。
20 第12条 一般条項
12.3 管轄
本契約に起因又は関連する一切の紛争については、カリフォルニア州の
裁判所が専属管轄権を有する。
12.6 準拠法
25 本契約は、米国カリフォルニア州の法律に準拠する。
(2) Cⅰは、平成12年(2000年)11月頃、被告会社に対し、楽曲と共
にエンジェル2の描かれたカバーアートワーク、CDを納品した。(甲48、
乙32、45、弁論の全趣旨)
(3) Bⅰは、平成13年(2001年)1月頃に来日した際、被告個人から、
「エンジェル2よりももう少ししっかりした感じの鳥にして欲しい」と求め
5 られ、本件著作物を制作した。(乙45)
(4) 被告会社は、平成15年(2003年)、ニューヨークの「BARNEYS
NEW YORK」において、「MARK GONZALES ブランド」の
コーナーを設置してBⅰのアート作品を展示し、渋谷に「RE・UNITS
マークゴンザレス店」をオープンするなど、本件著作権や「MARK GO
10 NZALES」の名称を用いたBⅰに関するブランドの展開を始めた。(乙4
5、弁論の全趣旨)
(5) サクラグループは、平成22年(2010年)12月8日、Bⅰとの間で、
本件ライセンス契約を締結した。本件ライセンス契約の締結は、サクラグル
ープの承諾の下、被告個人が行っており、本件ライセンス契約の締結後、被
15 告会社は、サクラグループと共に、本件ライセンス契約に基づきライセンス
事業を行っていた。
本件ライセンス契約の具体的内容は、以下のとおりである。(前提事実等
(6)、甲8、乙41、45、弁論の全趣旨)
第1条 Bⅰは、サクラグループに対し、本契約の条件に従い、平成23年
20 (2011年)1月1日から1年間、衣類、アクセサリー、プロモー
ション 、広告物並びに、履物及びその関連商品を除く全ての 商 品
(Products と総称されるもの。以下「本商品」という。)に、Bⅰの名
称、肖像及びBⅰが創作し所有するデザインを利用する独占権を付与
するものとする。
25 第2条 Bⅰは、サクラグループがBⅰの肖像、絵画、詩、物語並びに「G
onzo Cuntry」及び「Mark Gonzales」という
名称(Materialsと総称されるもの。以下「本素材」という。)を本商
品に独占的に利用し、製造し、アジアの地域で配布・販売することを
許諾する。ただし、サクラグループは、アディダスインターナショナ
ルBV又はその関連会社、子会社、販売会社、ライセンシーが製造す
5 るものと同一又は類似の性質若しくはタイプのスポーツ及びレジャー
用フットウェア、関連アクセサリーの販売のために本素材を利用する
ことを特に禁じる。Bⅰは、自身のオリジナル作品、及び、自身の作
品展で限定版の記念品を販売することができる。
第4条 サクラグループは、許諾製品の製造、マーケティング、流通、販売
10 を目的として、第三者への利用許諾を行うことができる。ただし、サ
クラグループが利用許諾を行うことができるのは、第3条に基づき承
認された肖像及びデザインのみであり、当該第三者は、第2条に定め
る商品及び地域に限定され、本契約に定める全ての条件に従うものと
する。
15 第5条 Bⅰは、自分の新しいイメージ、デザイン、活動に関する情報をサ
クラグループに提供するものとする。保証義務はないが、新しいイメ
ージやデザインを含むサクラグループの要求に応じるために、最善の
努力をするものとする。
第6条 Bⅰには、平成22年(2010年)12月15日までに、返金不
20 可の4万ドルの利用料(以下「年間利用料」という。)が支払われるも
のとする。
第10条 サクラグループは、本契約と同一の条件で、最大10年間継続し
て本契約を更新するオプションを有するものとする。更新年度の契約
条件(年間利用料の支払を含む。)は、各年度の開始前に、二者間の合
25 意により友好的に変更することができる。
第11条 Bⅰは、本素材及び本商品に関する全ての知的財産権を保持する
ものとする。サクラグループは、許諾された全ての商品にBⅰが作者
であることを明示し、各商品に「ⒸMark Gonzales」と
の表示を行うものとする。サクラグループは、Bⅰの要求に応じて、
サクラグループが行った登録をBⅰに返却することを条件に、「Gon
5 zo Cuntry」「Mark
、 Gonzales」及びBⅰのデザ
インを保護するために登録することができるものとする。
第12条 本契約で明確に譲渡されない全ての権利は、Bⅰに留保されるも
のとする。
第15条(その他の規定)
10 e 準拠法。本契約は、米国ニューヨーク州で実行、遂行及び実施される
ことを意図しており、その州の法律に従って解釈及び施行されるものと
する。
f 管轄。本契約は、米国ニューヨーク州ニューヨークで締結されたもの
とみなされる。本契約に何らかの形で関連する紛争は、米国ニューヨー
15 ク州ニューヨークの連邦裁判所又は州裁判所で解決されるものとする。
(6) Bⅰは、平成26年(2014年)3月31日、サクラグループに対し、
サクラグループがBⅰとの契約に違反したのみならず、意図的にアディダス
との関係を妨害してきたことなどを理由として、本件ライセンス契約を同年
5月1日付けで解除する旨通知し、サクラグループにおいて、同日までに、
20 Bⅰの名前、画像、デザイン、絵、詩、物語並びに「Gonzo Cunt
ry」及び「Mark Gonzales」の名称の使用を停止することを
求めた。(甲127)
(7) Bⅰは、令和2年(2020年)3月2日、サクラグループに対し、本件
ライセンス契約が同年12月31日をもって終了することを確認した上、同
25 契約11条に基づきサクラグループが商標登録したBⅰの氏名及びデザイン
に関する商標権を、全てBⅰに返還することを求めるとともに、平成26年
(2014年)から令和元年(2019年)までのロイヤリティの支払を求
めることなどを記載した書面を送付した。(甲49)
(8) Bⅰは、令和2年(2020年)3月6日、サクラグループに対し、被告
個人が本件ライセンス契約は令和3年(2021年)12月31日に終了す
5 ると主張しているが、同契約が令和2年(2020年)12月31日に終了
することは、同契約10条が「10年を限度として更新できる」とされてい
ることからも明らかであるなどと記載した書面を送付した(甲50)
(9) サクラグループとBⅰは、本件ライセンス契約のロイヤリティの支払につ
いて協議し、Bⅰは、令和2年(2020年)7月17日、サクラグループ
10 に対し、本件ライセンス契約が令和3年(2021年)12月31日まで有
効であることを記載した上で、本件ライセンス契約のロイヤリティ32万米
ドルの支払を求める書面を送付した。被告会社は、これに先立つ令和2年
(2020年)7月6日、Bⅰに対し、32万米ドルを支払った。(甲51、
乙34)
15 (10) Bⅰは、令和3年(2021年)4月12日、サクラグループに対し、本
件ライセンス契約が令和2年(2020年)12月31日の有効期限を過ぎ
ても更新されなかったために同契約が同日をもって終了したこと、残りの在
庫品については12か月間のセルオフ期間が設けられているが、サクラグル
ープは、令和3年(2021年)1月1日以降、残りの在庫品についても、
20 Bⅰの知的財産権を使用することはできないこと、サクラグループがアジア
諸国内で登録した「Mark Gonzales」の商標権の放棄を求める
ことなどを記載した書面を送付した。(甲64)
(11) サクラグループは、令和3年(2021年)4月27日、Bⅰに対し、本
件ライセンス契約が同年12月31日まで存続すること、令和2年(202
25 0年)に契約が終了したというBⅰの主張は矛盾するものであり、商標の返
却や放棄を行う理由がないことなどを記載した書面を送付した。(甲65)
(12) Bⅰは、令和3年(2021年)9月6日、被告会社及びサクラグループ
に対し、被告会社及びサクラグループの名義で行われているエンジェルのデ
ザイン及びBⅰの署名の商標登録及び出願を直ちに放棄し、Bⅰに権利を返
還することを求める書面を送付した。(甲67)
5 (13) Bⅰは、令和3年(2021年)11月、被告会社又はサクラグループの
ライセンシーに対し、令和4年(2022年)1月1日以降、Bⅰの画像、
知的財産等を用いた製品の販売等を停止するよう求めた。(甲68、69、乙
36、37)
(14) 被告会社は、遅くとも令和3年12月頃から、日本国内において、ライセ
10 ンシーを通じて、「Mark Gonzales」に加え、BⅰとCⅰが平成
13年(2001年)に作成したアルバムのタイトルである「(what i
t iSNt)」を用いたブランドを展開している。(甲74、75、129
~140、147、148)
(15) 被告会社は、バイタルジャパンを販売元とする「MARK GONZAL
15 ES」の文字やエンジェルが付された鞄などを販売する株式会社タカハシに
対し、令和5年12月14日付け「ご通知」と題する書面を送付し、同書面
において、上記商品は被告会社の商標権や著作権を侵害するものであること、
これらの権利については原告と係争中であるが、商標権が20年以上前から
被告会社に帰属することは揺るぎない事実であることなどを告知した。(甲1
20 49)
(16) 被告会社は、原告と連携して「Mark Gonzales」の文字やエ
ンジェルが付された商品を製造する株式会社水野鞄店に対し、令和6年2月
26日付け「ご通知」と題する書面を送付し、同書面において、「Mark
Gonzales」との呼称は被告会社の登録商標であること、エンジェル
25 のマークも被告会社の登録商標であり、かつ被告会社が著作権を保有してい
ること、被告会社は株式会社水野鞄店及び原告に対して商標権や著作権の利
用を許諾していないこと、これらの権利はBⅰ及び原告との間で係争中であ
るが、商標権が20年以上前から被告会社に帰属することは揺るぎない事実
であることなどを告知した。(甲150)
(17) 知的財産高等裁判所は、令和6年8月8日、Bⅰが請求した本件各商標の
5 無効審判につき、本件各商標を無効とすることはできないとした特許庁の審
決の取消しを求める訴訟(同裁判所令和5年(行ケ)第10128号等)に
おいて、特許庁の判断を維持し、Bⅰの請求を棄却した。(甲163)
(18) 東京地方裁判所は、令和7年1月30日、被告会社及びサクラグループと
Bⅰとの間の訴訟(同裁判所令和3年(ワ)第32244号、同6年(ワ)
10 第70389号)において、被告会社に対し、Bⅰへの本件各商標権の移転
登録手続を命じる旨の判決をした。被告会社は、同訴訟において、本件ライ
センス契約の当事者が被告会社も含むものとして判断されることについて異
議はない旨を述べていた。(甲94、乙74)
被告会社による本件著作権に基づく権利行使の可否について(争点1)
15 争点1-1(本件著作権がCujo及びCⅰに原始的に帰属するか)
ア 共同著作物性について
(ア) 準拠法
ベルヌ条約5条2項は、著作物の保護の範囲及び著作者の権利を保全
するため著作者に保障される救済の方法は、専ら、保護が要求される同
20 盟国の法令の定めるところによる旨規定しているところ、法の適用に関
する通則法は、上記範囲及び方法を単位法律関係とする規定を、上記と
別異に設けるものではない。
そうすると、著作物の保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著
作者に保障される救済の方法という法律関係に適用される準拠法は、当
25 該著作物の保護が要求される同盟国の法令(以下「保護国法」という。)
をいうものと解するのが相当である。
そして、共同著作者性という法律の性質は、当該著作物に係る権利の
帰属主体及び範囲をいうものであるから、上記にいう「著作物の保護の
範囲」に該当すると解するのが相当である。
したがって、これらの法律関係には、保護国法として、日本で保護さ
5 れる著作権については日本法が、米国で保護される著作権については米
国著作権法が、それぞれ適用されると解するのが相当である。
(イ) 共同著作物性についての判断
認定事実(3)のとおり、本件著作物は、Bⅰが、平成13年(2001
年)1月頃に来日した際、被告個人から「エンジェル2よりももう少し
10 しっかりした感じの鳥にして欲しい」と求められたことに応じて作成し
たものであり、その制作過程においてCⅰが関与したことを認めるに足
りる的確な証拠はない。
なお、Cⅰは、令和4年(2022年)6月24日付けの宣誓供述書
(乙12)において、本件著作物が描かれたカバーアートワークを含む
15 本件音楽契約に係る著作物につき、CⅰとBⅰとの共同作品として制作
されたこと、CⅰとBⅰは、作曲、歌詞、イラスト、言葉遣い、色付け、
データ変換等の役割を担当したこと、Cⅰが、著作物によって生じる一
部又は全ての権利について一定のシェアを受ける権利を有する旨を述べ
ているが、その一方で、同年11月7日付けの宣誓供述書(甲98)に
20 おいては、本件音楽契約に係るカバーアートワークについて、全てBⅰ
が単独で制作し、Cⅰは一切制作に関与していないこと、カバーアート
については、レイアウト、フォーマット、色付け、サイズ変更以外に関
与していないことを述べており、その供述が大きく変遷していることか
らすれば、カバーアートワークをBⅰと共同で制作した旨のCⅰの陳述
25 は直ちに信用することができない。
そうすると、本件著作物の創作にCⅰが関与したとは認められず、共
同著作物を定めた著作権法2条1項12号の規定によっても、米国著作
権法101条の共同著作物の規定によっても、本件著作物がBⅰとCⅰ
の共同著作物であるとは認められない。
イ 職務著作性について
5 (ア) 準拠法
著作物の保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障さ
れる救済の方法という法律関係に適用される準拠法は、保護国法をいう
ものと解されることは、上記アで説示したとおりである。
そして、職務著作性という法律関係の性質は、共同著作者性と同様に、
10 当該著作物に係る権利の帰属主体及び範囲をいうものであるから、上記
にいう「著作物の保護の範囲」に該当すると解するのが相当である。
そうすると、これらの法律関係には、日本で保護される著作権につい
ては日本法が、米国で保護される著作権については米国著作権法が、そ
れぞれ適用されるものと解するのが相当である。
15 (イ) 職務著作性についての判断
BⅰとCujoとの関係については、前提事実等(2)のとおり、本件雇
用契約書が存在するところ、Cujoの法人所得税申告書(乙9)には
Bⅰに役員報酬として2万8448米ドルが支払われた旨の記載がある
ほか、Cujoの代表者であるDⅰが、在職証明書(乙8)及び権利譲
20 渡契約(乙10)において、BⅰがCujoの従業員であった旨やBⅰ
が作成した著作物が職務著作物であると記載していることが認められる。
しかし、上記在職証明書や権利譲渡契約の記述に関しては、他方で、
Dⅰが、令和5年(2023年)8月22日付け宣誓供述書(甲101)
において、平成11年(1999年)から平成16年(2004年)ま
25 でBⅰと婚姻関係にあったところ、Cujoは、平成12年(2000
年)4月19日頃、BⅰのアートワークのライセンスとBⅰの税金を節
約する目的で設立されたこと、Bⅰは、Bⅰが制作したアートワークに
ついて、Cujoから指示も監督も受けておらず、Bⅰ個人の名義でア
ートワークを制作、発表し、その一部について、Cujoがライセンス
を与えることを許諾していたことを供述しており、上記在職証明書や権
5 利譲渡契約におけるDⅰの記述を直ちに信用することはできない。
そして、Bⅰは、令和5年(2023年)4月21日付けの宣誓供述
書(甲100)において、CujoはBⅰの収入のタックスシェルター
として設立されただけであり、Cujoに銀行口座以外の資産はなく、
ペン、鉛筆、紙、机、椅子、電話、コピー機などの設備や備品はなかっ
10 たこと、Bⅰに勤務時間はなく、特定の場所に出勤する必要もなく、仕
事の内容ややり方を教えてもらったことも、材料や備品、機器を提供し
てもらったこともないこと、Bⅰの作品について承認や管理をされたこ
とも、制作について口を出されたこともなく、完全に自律して、自由に
作品を作っており、Cujoに限らず、誰に対しても作品のライセンス
15 を与えることができた旨を述べるとともに、Cujoに対して、Bⅰの
知的財産に関するいかなる権利も譲渡又は移転したことはないと供述し
ている。
以上に加え、本件雇用契約書、上記在職証明書及び権利譲渡契約によ
っても、具体的なBⅰの勤務状況やCujoの事業実態は明らかではな
20 いことからすれば、BⅰとCujoとの間で本件雇用契約書が作成され、
Cujoの法人所得税申告書にBⅰに対して役員報酬が支払われた旨の
記載があることを考慮しても、Cujoは、Bⅰの収入に関する節税目
的で設立された会社であり、事業の実態はなく、Bⅰに対する指揮、監
督もなく、Bⅰは独立してアートワークを制作したものと認めるのが相
25 当である。
そうすると、Bⅰは、Cujoの従業員であるとは認められず、本件
著作権について、BⅰがCujoの従業員として作成したものと認める
ことはできないから、職務著作物を定めた著作権法15条の規定によっ
ても、米国著作権法101条の職務著作物の規定によっても、本件著作
物が職務著作物であると認めることはできない。
5 なお、被告らは、本件著作物が被告会社、Cujo及びCⅰのグルー
プの職務著作物であるなどとも主張するが、同主張を認めるに足りる証
拠はなく、採用することができない。
ウ 小括
以上によれば、Cujo及びCⅰが本件著作権を原始的に取得したとの
10 被告らの主張は採用することができない。
争点1-2(被告会社による本件著作権の取得の有無)
上記(1)のとおり、Cujo及びCⅰが本件著作権を原始的に取得したとは
認められないものの、被告らは、本件音楽契約又はCujo及びCⅰとの権
利譲渡契約に基づき、譲渡又は原始取得により、被告会社が本件著作権を取
15 得した旨を主張するので、この点について判断する。
ア 本件音楽契約に基づく本件著作権の取得について
(ア) 準拠法
契約による著作権譲渡の成否という法律関係の性質は、当該契約の効
力をいうものであるから、単位法律関係としては、法の適用に関する通
20 則法7条にいう「法律行為の成立及び効力」に該当する。そして、同条
によれば、上記法律関係には、当事者が当該法律行為の当時に選択した
地の法が適用されることになるから、本件音楽契約において指定された
カリフォルニア州法が適用されると解するのが相当であり、著作権に関
しては、同法に優先する連邦法である米国著作権法が適用される。
25 (イ) 本件音楽契約に基づく本件著作権の取得についての判断
認定事実(1)のとおり、本件音楽契約2条3項は、被告会社は、音響作
品及びアーティストの宣伝目的のために、その著作権の保護期間中、音
響作品に関連して創作された一切のカバーアートをワールドワイドベー
スでTシャツ等に複製し、販売する独占権を有するというものであると
ころ、同項の文言を字義通り読めば、音響作品とアーティストのプロモ
5 ーションという限定された目的の範囲で、被告会社に、音響作品に付随
して制作されるアルバムジャケットのアートワーク及び写真をTシャツ
などに複製、販売する独占的な権利があるとされているだけであり、被
告会社に対し著作権ないしその一部が譲渡されることを定めたものと解
することはできない。このことは、本件音楽契約2条1項において、音
10 楽作品及び録音物の著作権が、納品時に被告会社に対して移転される旨
が明確に定められていることと比較しても明らかであり、同条3項によ
り被告会社に著作権ないしその一部の譲渡がされたと解釈する余地はな
く、また、同項により被告会社に著作権ないしその一部が原始的に帰属
するとも認められない。同項は、その文言に照らし、被告会社に対する
15 上記目的及び行為の範囲内での独占的なライセンスの付与を定めたもの
というべきである。
被告らは、本件音楽契約2条3項が被告会社に対する独占的なライセ
ンスの付与を定めたものであるとしても、米国著作権法101条におい
て、独占的なライセンスの付与も著作権の移転と定義されており、被告
20 会社は著作権者としての権利を有する旨主張するところ、前提事実等
(16)のとおり、同条は、 「著作権の移転」とは、著作権又は著作権に含

まれるいずれかの排他的権利の譲渡、モゲージ設定、独占的使用許諾そ
の他の移転、譲与又は担保契約をいい、その効力が時間的又は地域的に
制限されるか否かを問わないが、非独占的使用許諾は含まない。」として、
25 著作権の譲渡(assignment)と独占的使用許諾(exclusive lisence)とを明
確に区別しており、特定の目的及び行為の範囲内で独占的なライセンス
を付与されただけの被告会社に著作権そのものが帰属するものと解釈す
ることはできない。
したがって、本件音楽契約2条3項に基づき、被告会社が本件著作権
を取得したとの被告らの主張は採用することができない。
5 イ Cujo及びCⅰとの間の権利譲渡契約による本件著作権の取得につい

上記(1)のとおり、Cujo及びCⅰが本件著作権を原始的に取得したと
は認められず、その他、Cujo及びCⅰが本件著作権を取得したことを
認めるに足りる証拠はないから、被告会社とCujo及びCⅰそれぞれと
10 の間の権利譲渡契約により、被告会社が本件著作権を取得したとの被告ら
の主張は採用することができない。
ウ 小括
以上によれば、被告会社が本件著作権を有するとは認められず、原告が、
本件著作物を複製、翻案、譲渡、展示、公衆送信又は送信可能化すること
15 につき、被告会社の原告に対する著作権侵害に基づく損害賠償請求権及び
著作権に基づく差止請求権を認めることはできないから、原告の著作権侵
害債務不存在確認に係る請求には理由がある。
被告会社による本件各商標権に基づく権利行使の可否について(争点2)
(1) 本件各商標は被告会社が出願し、登録されたものであり、本件各商標権が
20 被告会社(ただし、平成21年にサクラグループに移転され、令和2年又は
令和3年に再び被告会社に移転している。)に帰属するものであることは、前
提事実等(5)のとおりである。原告は、これを前提に、被告会社は本件ライセ
ンス契約11条に基づき、Bⅰに対し本件各商標権を返還しなければならな
い義務を負うなどとして、もはや本件各商標権に基づき原告に対し権利行使
25 をすることはできない旨を主張することから、以下、この点について検討す
る。
(2) 前提事実等(6)及び認定事実(5)によれば、本件ライセンス契約は、Bⅰが、
サクラグループに対し、アジアにおいてアディダスインターナショナルBV
等が製造する商品と競合しない限度で、Bⅰの肖像、絵画、詩、物語並びに
「Gonzo Cuntry」及び「Mark Gonzales」という
5 名称(本素材)を利用することができる独占的な権利を与えるものであり、
サクラグループは、Bⅰの要求があればBⅰに返還することを条件として、
「Gonzo Cuntry」 「Mark
、 Gonzales」及びBⅰの
デザインを保護するために商標登録をすることができるものとしたことが認
められる。なお、被告らは、本件ライセンス契約11条が規定する登録は
10 「著作権登録」であると主張するが、認定事実(5)のとおり、本件ライセンス
契約11条は、Bⅰは、本素材及び本商品に関する全ての知的財産権を保持
するものとするなどとして、Bⅰの有する知的財産権全般について取り決め
るものであり、著作権に限定されるものと解することはできない。
そして、本件各商標が、Bⅰの氏名のほか、Bⅰのデザインを代表するエ
15 ンジェルについてのものであり、本件ライセンス契約11条において、保護
のために商標登録することが認められた対象であることからすれば、本件各
商標は、本件ライセンス契約にいう「本素材」に該当するというべきである。
そうすると、Bⅰは、サクラグループに対し、本件ライセンス契約11条
に基づき、本件各商標権の返還を求めることができるところ、認定事実(7)な
20 いし(12)で認定したとおり、Bⅰは、令和2年(2020年)3月頃から、
サクラグループに対し、再三にわたり、本件各商標権の返還を要求している
にもかかわらず、サクラグループはこれに応じず、同年10月には本件商標
権1及び2を、令和3年(2021年)11月24日には本件商標権3及び
4をそれぞれ被告会社に移転し、本件ライセンス契約が終了したことが明白
25 である令和4年(2022年)4月1日以降も、被告会社が本件商標権を保
持し、被告会社及びサクラグループにおいて、ライセンシーを通じて「Ma
rk Gonzales」やエンジェルが付された商品を販売等しているこ
とが認められる。そして、被告会社は、本件ライセンス契約の直接の当事者
ではないものの、サクラグループの代表者が被告個人の配偶者であること、
被告個人が本件ライセンス契約に係る交渉を行っていたこと、被告会社がサ
5 クラグループと共に本件ライセンス契約に基づきライセンス事業を行ってい
たことに加え、被告会社とサクラグループの間での本件各商標権の移転の経
緯や時期などにも照らせば、被告会社が、本件各商標権を保有し続けている
ことを奇貨として、本件マスターライセンス契約により、Bⅰのブランド管
理会社であるTULUMIZEからエンジェルやBⅰの名前の使用許可を得
10 ている原告に対し、本件各商標権に基づき差止めや損害賠償を請求すること
は、その余の事情を考慮するまでもなく、権利の濫用に当たるというべきで
ある。
(3) 被告らは、本件各商標は、本件音楽契約に由来するものであり、本件ライ
センス契約の対象外であると主張する。
15 しかし、本件商標1及び2については、本件著作物を内容とする商標であ
るところ、上記2で説示したとおり、本件音楽契約により被告会社に認めら
れた権利は、音響作品とアーティストのプロモーションという目的の範囲で、
音響作品に付随して制作されるアルバムジャケットのアートワーク及び写真
をTシャツなどに複製、販売することができる独占的な使用権にすぎず、本
20 件音楽契約に本件商標1及び2の登録に関する条項があると認めることはで
きないから、本件商標1及び2の登録が本件音楽契約に基づくものであると
認めることはできない。
また、本件商標3及び4については、Bⅰの氏名を内容とする商標である
ところ、本件音楽契約2条4項では、音響作品及びアーティストの宣伝目的
25 のために、被告会社がBⅰの氏名を使用できることが定められているにすぎ
ず、Bⅰの氏名につき、被告会社を権利者として商標登録をすることまで約
定したものであると認めることはできない。
(4) 被告らは、本件ライセンス契約11条が定める返還義務は、「本件ライセン
ス契約期間中のサクラグループによる同契約の許諾対象物の登録」が前提条
件であるとも主張するところ、確かに、本件各商標は本件ライセンス契約の
5 締結よりも前に、本件商標3及び4についてはBⅰの承諾も得た上で、被告
会社により出願、登録されたものである。しかし、本件各商標権は、本件ラ
イセンス契約の締結時には、被告会社から本件ライセンス契約の当事者であ
るサクラグループに譲渡されており、登録後の商標を後に契約の対象とする
ことはあり得ることであるから、当該契約が遅れてされたからといってその
10 対象に含まれないということにはならない。このことは、本件ライセンス契
約11条において改めて「Mark Gonzales」の商標登録をする
ことができると確認されていることからも明らかである。
(5) なお、被告らは、被告会社が本件各商標権を時効取得したなどと主張する
が、仮にかかる主張が認められたとしても、上記(2)で説示した事情からすれ
15 ば、被告会社による原告に対する本件各商標権に基づく権利の行使は権利濫
用に当たるというべきであるから、同主張は失当である。
(6) 小括
以上によれば、被告会社は、原告に対し、本件各標章を本件各商標権の指
定商品又はその包装に付し、本件各標章を付した同指定標品を、譲渡し、引
20 き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出又は輸入することにつき、
商標権侵害に基づく損害賠償請求権及び商標権に基づく差止請求権を行使す
ることはできないから、原告の商標権侵害債務不存在確認に係る請求には理
由がある。
不競法3条1項に基づく差止請求について(争点3)
25 (1) 原告と被告らが競争関係にあることは、当事者間に争いがなく、少なくと
も原告と被告会社はそれぞれBⅰに関するブランドのライセンス事業を展開
していることからしても、原告と被告会社との間には競争関係があると認め
ることができる。
(2) 前提事実等(13)のとおり、被告会社がバイタルジャパンに送付した本件警
告書には、①被告会社が本件著作権及び本件各商標権を保有していること、
5 ②バイタルジャパンが本件イベントにおいて陳列した本件製品は、これら被
告会社の権利を侵害するものであること、③ライセンサーであると主張する
原告は正当な権利者である被告会社から許諾を得ていないこと、④被告会社
の権利を侵害する商品の製造等の差止め及び廃棄を求め、これに応じない場
合は、法的措置を講じる予定であることが記載されている。
10 しかし、上記2で説示したところによれば、本件著作権はBⅰに原始的に
帰属していたことが認められ、被告会社は本件著作権を有しておらず、また、
上記3で説示したところによれば、本件各商標権はBⅰに帰属すべきもので
あることが認められ、原告に対する本件各商標権に基づく権利行使は権利濫
用に該当することからすれば、原告から本件各標章の許諾を受けたバイタル
15 ジャパンに対しても同様に、本件各商標権に基づく権利行使は認められない
というべきである。そうすると、本件警告書中、被告会社が、本件著作権を
有していることや、本件製品の製造、陳列等につき本件各商標権を行使でき
ることを前提に、前提事実等(7)のとおり、TULUMIZEとの間でBⅰの
知的財産権について本件マスターライセンス契約を締結している原告に、本
20 件著作物や本件各標章の使用につき許諾する権限がないことを指摘すること
は虚偽の告知に当たり、原告の営業上の信用を害するものといえる。他方で、
被告個人については、本件警告書の内容に照らしても、本件警告書の送付に
ついて、被告会社の代表取締役としての職務から離れた個人としての行為が
あるとはいえず、その他、被告個人による不正競争があることを認めるに足
25 りる証拠はない。
(3) 被告らは、本件警告書を送付した行為が正当な権利の行使であると主張す
るが、Bⅰが、令和3年(2021年)11月、被告会社やサクラグループ
のライセンシーに対し、令和4年(2022年)1月1日以降、Bⅰの画像、
知的財産等を用いた販売等を停止するよう求めていることからすれば、被告
会社は、同年9月14日付けの本件警告書を送付する以前に、本件著作権や
5 本件各商標の帰属について争いがあることは十分に認識していたものと認め
られる。そして、エンジェルの著作権については、被告会社が自身に著作権
があると主張する拠り所である本件音楽契約について、およそ被告会社に著
作権の帰属を認めた規定と解することができないことは上記2で説示したと
おりであり、また、本件各商標権についても、令和2年(2020年)以降、
10 度々Bⅰから返還を求められていた上、遅くとも令和4年(2022年)4
月1日には本件ライセンス契約が終了していたことからすれば、被告会社に
おいて本件各商標権を保持し続けることの根拠に欠けていたことは明らかと
いうべきである。そうすると、本件警告書の送付が被告会社による正当な権
利の行使であるとは認められない。
15 (4) 上記(2)で認定した被告会社の不正競争の内容に加え、認定事実(15)及び
(16)で認定したとおり、被告会社が、本件著作物及び本件各標章を付した商
品を取り扱っている原告又はバイタルジャパンの関係先に対し、原告と係争
中ではあるものの、自身が本件著作権及び本件各商標権を有している旨を警
告する書面を送付していることからすれば、被告会社が、文書、口頭又はイ
20 ンターネットを通じて、原告が本件著作物及び本件各標章について第三者に
ライセンスをする権限を有しないとの事実を告知し、又は流布することを差
し止める必要性が認められる。
(5) したがって、原告の被告会社に対する不競法3条1項に基づく差止請求に
は理由があり、被告個人に対する同請求は、被告個人の不正競争が認められ
25 ないから理由がない。
不競法4条又は不法行為に基づく損害賠償請求の可否について(争点4)
上記4で認定したとおり、本件警告書中、原告に本件著作物及び本件各標章
の使用について許諾する権限がないことを指摘する点は被告会社による不正競
争に該当するところ、上記4(3)で説示したところによれば、被告会社には少な
くとも過失が認められるから、被告会社は、原告に対し、不競法4条に基づく
5 損害賠償責任を負う。他方で、被告個人については、上記4(2)で説示したとお
り、不正競争があるとは認められず、その他、被告個人に不法行為があったこ
とを認めるに足りる証拠はないから、被告個人が不法行為責任を負うとまでは
認められない。
そうすると、被告会社についてのみ上記損害賠償責任が認められるところ、
10 被告会社の不正競争により原告に生じた無形損害は、本件警告書の内容等から
すれば、100万円と認めるのが相当である。また、弁護士費用として10万
円につき、被告会社の不正競争と相当因果関係を認める。
したがって、被告会社は、原告に対し、110万円及びこれに対する被告会
社に対する訴状送達日の翌日である令和5年5月11日から支払済みまで民法
15 所定の年3パーセントの割合による遅延損害金を支払う義務がある。
不競法14条に基づく信用回復措置請求の可否について(争点5)
本件警告書の送付が被告会社による不正競争に該当することは上記4で説示
したとおりである。しかし、本件における被告会社の不正競争が、バイタルジ
ャパンに対する本件警告書の送付のみであることに鑑みれば、原告の信用回復
20 措置として謝罪広告の掲載まで行う必要性は認められない。
したがって、原告が、被告らに対し、不競法14条に基づき、信用回復の措
置を求める請求は理由がない。
第5 結論
よって、原告の請求は主文掲記の限度で理由があるからこれらを認容し、そ
25 の余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、仮執行宣言は主文第
1項ないし第4項については相当ではないから付さないこととして、主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
澁 谷 勝 海

裁判官
本 井 修 平

裁判官
塚 田 久 美 子

(別紙)
著作物目録


(別紙)
標章目録




10 3

(別紙)
被告商標目録
1 登録番号 第4721594号
5 出願日 平成15年3月17日
登録日 平成15年10月24日
商標

商品及び役務の区分並びに指摘商品又は指定役務
10 第18類 かばん類、袋物、かばん金具、がま口口金、皮革製包装用容器、愛
玩動物用被服類、携帯用化粧道具入れ、傘、ステッキ、つえ、つえ
金具、つえの柄、乗馬用具、皮革

2 登録番号 第4721595号
出願日 平成15年3月17日
登録日 平成15年10月24日
商標
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第25類 洋服、コート、Tシャツ、スポーツシャツ、ポロシャツ、靴下、手
袋、帽子、その他の被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バン
ド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴
3 登録番号 第4765359号
出願日 平成14年11月25日
登録日 平成16年4月16日
商標

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第25類 洋服、コート、Tシャツ、スポーツシャツ、ポロシャツ、靴下、手
袋、帽子、その他の被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バン
ド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴
4 登録番号 第4769801号
出願日 平成14年11月25日
登録日 平成16年5月14日
商標

商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第18類 かばん類、袋物、かばん金具、がま口口金、皮革製包装用容器、愛
玩動物用被服類、携帯用化粧道具入れ、傘、ステッキ、つえ、つえ
金具、つえの柄、乗馬用具、皮革
(別紙謝罪広告目録 省略)

(別紙)
イラスト目録
5 1







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