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令和7(ネ)10035債務不存在確認請求、損害賠償請求反訴控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年9月8日
事件種別 民事
当事者 被控訴人東日本高速道路株式会社
法令 特許権
特許法102条3項1回
キーワード 特許権11回
侵害8回
損害賠償5回
実施5回
差止1回
主文 1 本件控訴を棄却する。20
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 請求の要旨 本件は、被控訴人による本訴請求と控訴人による反訴請求からなる。5 (1) 本訴請求 本訴請求は、被控訴人が、原判決別紙原告設備目録記載の各設備(原告各設備)は、 控訴人が有する特許第4379879号の特許(親出願特許)の特許請求の範囲の請 求項1及び5に係る各発明(本件発明1、2)、特許第5769141号の特許(第 4世代特許)の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明(本件発明3-1、310 -2)並びに特許6159845号の特許(第7世代特許)の特許請求の範囲の請求 項1及び2に係る各発明(本件発明4-1、4-2)の各技術的範囲に属さず、また、 控訴人が上記各特許(本件各特許)に係る特許権(本件各特許権)を行使することは 権利の濫用であるから、被控訴人による原告各設備の設置及び使用は、いずれも、控 訴人が有する本件各特許権を侵害しないと主張して、控訴人に対し、控訴人が被控訴15 人に対する本件各特許権に基づく不法行為による損害賠償請求権、不当利得返還請求 権及び差止請求権を有しないことの確認を求めるものである。

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判決文

令和7年9月8日判決言渡
令和7年(ネ)第10035号 債務不存在確認請求、損害賠償請求反訴控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70615号、同6年(ワ)第70110
号)
5 口頭弁論終結日 令和7年7月14日
判 決
控 訴 人 有 限 会 社 P X Z
10 同訴訟代理人弁護士 鷹 見 雅 和
同訴訟代理人弁理士 森 哲 也
同補佐人弁理士 田 中 秀 哲
被 控 訴 人 東日本高速道路株式会社
同訴訟代理人弁護士 岩 瀬 ひ と み
紋 谷 崇 俊
山 崎 泰 和
主 文
20 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中、主文第2項から第4項までを取り消す。
25 2 上記主文第2項及び第3項の取消しに係る被控訴人の本訴請求をいずれも棄却
する。
3 被控訴人は、控訴人に対し、1000万円及びこれに対する令和5年10月3
1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等(略語は特記するもののほか原判決の例による。)
1 請求の要旨
5 本件は、被控訴人による本訴請求と控訴人による反訴請求からなる。
(1) 本訴請求
本訴請求は、被控訴人が、原判決別紙原告設備目録記載の各設備(原告各設備)は、
控訴人が有する特許第4379879号の特許(親出願特許)の特許請求の範囲の請
求項1及び5に係る各発明(本件発明1、2)、特許第5769141号の特許(第
10 4世代特許)の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明(本件発明3-1、3
-2)並びに特許6159845号の特許(第7世代特許)の特許請求の範囲の請求
項1及び2に係る各発明(本件発明4-1、4-2)の各技術的範囲に属さず、また、
控訴人が上記各特許(本件各特許)に係る特許権(本件各特許権)を行使することは
権利の濫用であるから、被控訴人による原告各設備の設置及び使用は、いずれも、控
15 訴人が有する本件各特許権を侵害しないと主張して、控訴人に対し、控訴人が被控訴
人に対する本件各特許権に基づく不法行為による損害賠償請求権、不当利得返還請求
権及び差止請求権を有しないことの確認を求めるものである。
(2) 反訴請求
反訴請求は、控訴人が、原告各設備は本件発明2、4-1及び4-2の各技術的範
20 囲に属するから、被控訴人が原告各設備を設置し、使用したことにより、控訴人が有
する親出願特許及び第7世代特許に係る各特許権がそれぞれ侵害されたと主張して
(請求の対象期間は、原告設備1につき令和元年8月4日~令和5年10月31日、
原告設備2につき平成30年2月24日~令和5年10月31日) 被控訴人に対し、

民法709条に基づき、特許法102条3項により算定される損害及び弁護士費用の
25 一部請求として、損害賠償金1000万円(内訳は、特許権1件につき各500万円)
及びこれに対する不法行為後の日である令和5年10月31日から支払済みまで民法
所定年3%の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
2 原審の判断
原審は、要旨次のとおり判断して、本訴請求の一部を却下し(主文第1項)、その
余の本訴請求を認容し(主文第2項、第3項)、反訴請求は棄却した(主文第4項)。
5 (1) 本訴請求に係る訴えの確認の利益について
控訴人は、原告各設備の設置及び使用が第4世代特許に係る特許権を侵害しないこ
とを争っていないから、本訴請求のうち、第4世代特許に係る特許権侵害について各
請求権が存在しないことの確認を求める訴えは、訴えの利益を欠く。
また、控訴人が反訴を提起したことにより、本訴請求のうち、親出願特許及び第7
10 世代特許に係る特許権侵害について不法行為による損害賠償請求権が存在しないこと
の確認を求める各訴えは、それぞれ損害賠償金500万円及びこれに対する遅延損害
金の支払請求権が存在しないことの確認を求める限度で確認の利益を欠くに至った。
(2) 特許権侵害の有無について
原告各設備は、親出願特許の特許請求の範囲の請求項5に係る下記アの構成要件2
15 Eを充足しないから本件発明2の技術的範囲に属さず、また、第7世代特許の特許請
求の範囲の請求項1及び2に係る下記イの構成要件4Fを充足しないから本件発明4
-1及び4-2の技術的範囲にも属さない。したがって、被控訴人が原告各設備を設
置し、使用することは、親出願特許及び第7世代特許に係る各特許権をいずれも侵害
しない。
20 ア 構成要件2E
「前記判定手段により判定した結果に従って、ETCによる料金徴収が可能な車両
を、ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリ
アに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出
るルートへ誘導し、ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC車専用
25 出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口へ誘導する誘導手段を備え、」
イ 構成要件4F
「前記判定手段により判定した結果に従って、ETCによる料金徴収が可能な車両
を、ETCゲートを通って前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリ
アに入る、または前記有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアから出
るルートへ通じる第1のレーンへ誘導し、ETCによる料金徴収が不可能な車両を、
5 再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレ
ーンへ誘導する誘導手段と、を備え、」
3 控訴の提起
控訴人は、原判決中、主文第2項から第4項までを不服として控訴を提起した(原
判決が本訴請求の一部を却下した部分については、不服を申し立てていない。)。
10 4 前提事実及び争点
原判決「事実及び理由」の第2の2及び3(4頁1行目~24頁5行目)に記載の
とおりであるからこれらを引用する(ただし、同第2の3(1)(争点1)を除く。)。
第3 争点についての当事者の主張
次のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理
15 由」の第2の4(24頁6行目~62頁20行目)に記載のとおりであるからこれを
引用する(ただし、同第2の4(1)(争点1(確認の利益の有無)について)を除く。
また、原判決45頁2行目(同第2の4(3)(原告の主張)ア(イ)中)の「単に「第1
の遮断機を下ろす」
(構成要件4J)」は「単に「第1の遮断機を下ろす」
(構成要件4
I)」の誤記として、原判決48頁25~26行目(同第2の4(3)(原告の主張)ウ
20 (イ)中)の「「常時開方式」「常時開方式」及び「進入時閉方式」
、 」は「「常時閉方式」、
「常時開方式」及び「進入時閉方式」」の誤記として、それぞれ訂正する。。

1 控訴人の補充主張
(1) 構成要件2Eについて
ア 原判決は、構成要件2Eの「ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前
25 記ETC車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口へ誘導する誘導手段」に
いう「一般車用出入口」は、本件発明2に係る車両誘導システムが設置されている有
料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置されているものに限定さ
れる旨解釈した。
しかし、本件発明2の特許請求の範囲には、誘導手段が誘導する先である「一般車
用出入口」について、誘導される車両が直前に進入を試みた有料道路料金所、サービ
5 スエリア又はパーキングエリアに設置されているものとの記載はなく、「一般車用出
入口」は、本件発明2に係る車両誘導システムの構成要件外のものである。また、
「誘
導」という用語に、すぐ近くのものに案内するといった限定的な意味はない。
また、本件親出願明細書の【図11】に記載された実施例では、本件発明2に係る
車両誘導システムを備えたスマートインターチェンジにおいて、ETCによる料金徴
10 収が不可能な車両を、隣接する通常の有料道路料金所の一般車用出口に誘導する構成
が開示されている。すなわち、次の図 【図11】
( に矢印等を付記したもの)において、
レーンEを走行するETCによる料金徴収が不可能な車両のうち、ETCカードを挿
し直すなどしてETCによる料金徴収が可能となる車両は、矢印①のとおり走行して
再度ETC車専用出口から出ることができるが、それ以外の車両は、永久に有料道路
15 を走行し続けることはあり得ない以上、矢印②のとおり走行し、加速車線から有料道
路を走行し、隣接するインターチェンジの一般車用出口を利用して一般道路に出ざる
を得ない。スマートインターチェンジから一般道路に出ようとした非ETC車を、隣
接する別のインターチェンジの一般車用出口を利用させて一般道路に出させることは、
当業者の技術常識でもある。

そうすると、本件親出願明細書には、
「一般車用出入口」が、車両誘導システムが設
置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリア自体ではなく、
それに隣接した別のインターチェンジに設置されている態様も開示されているから、
5 構成要件2Eの「一般車用出入口」の意義を限定的に解する理由はなく、本件発明2
に係る車両誘導システムが設置されている施設に隣接する別のインターチェンジの一
般車用出入口も含まれると解釈すべきである。
イ 仮に原判決の解釈を前提としても、少なくとも原告設備1-1、2-1及び2
-3は、構成要件2Eを充足する。
10 すなわち、本件親出願明細書の【図11】に記載された実施例には、次の各図(【図
11】の右上部分を拡大し、矢印を付記したもの)のとおり、ETCによる料金徴収
が不可能な車両をルートEに誘導することで、再度ETC車専用入口手前に戻るルー
トに誘導する態様(左図)と、隣接する別のインターチェンジの一般車用入口へ誘導
する態様(右図)が含まれている。

そして、原告設備1-1、2-1及び2-3においても、次の図(原告設備1-1
周辺の道路地図)のように、ETCによる料金徴収が不可能な車両を一般道路に戻す
5 ことにより、運転者の選択に応じて、矢印①のとおり、交差点付近でUターンして、
再度、ETC車専用入口の手前へ戻ることを可能としているから、少なくとも、当該
車両を「再度前記ETC車専用(出)入口手前へ戻るルート」へ誘導しているという
ことができ、構成要件2Eを充足する。

10 (2) 構成要件4Fについて
構成要件4Fは、
「・・・ETCによる料金徴収が不可能な車両を、再度前記ETC
車専用出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する
誘導手段」として、上記(1)の構成要件2Eに「に通じる第2のレーン」との文言を追
加し、誘導手段が誘導する先である「一般車用出入口」が、当該誘導される車両が直
5 前に進入を試みた有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに設置され
ているものである必要がないことを確認的に示したものである。
したがって、上記(1)アのとおり、誘導手段が誘導する先を限定して解釈した原判決
は誤りである。
また、原判決は、控訴人が、本件発明2が本件発明4の上位概念であると主張した
10 ことを挙げて、原告各設備が本件発明2の技術的範囲に含まれない以上、本件発明4
の技術的範囲にも含まれないとした。しかし、控訴人の同主張は、原告各設備が本件
発明2及び4のいずれの技術的範囲にも属しているとの控訴人の主張を前提とするも
のであって、仮に原告各設備が本件発明2の技術的範囲に属さないのであれば、本件
発明2は本件発明4の上位概念とはならず、裁判所は、本件発明4の技術的範囲を解
15 釈した上で、これに原告各設備が属するかを別途検討すべきである。
2 被控訴人の補充主張
(1) 構成要件2Eについて
ア 控訴人は、本件親出願明細書の【図11】に依拠し、構成要件2Eの「一般車
用出入口」には、本件発明2に係る車両誘導システムが設置されている施設に隣接す
20 る別のインターチェンジの一般車用出入口も含まれると主張する。
しかし、本件親出願明細書には、ETC車専用出入口から分岐するレーン以外の誘
導手段が開示されておらず、誘導設備としても遮断機の開閉と表示パネル以外は開示
されていないことから、技術常識を斟酌しても、構成要件2Eの「一般車用出入口」
に、別の施設の一般車用出入口が含まれるとは解釈できず、原告各設備が「一般車用
25 出入口へ誘導する誘導手段」を備えているということもできない。
イ 控訴人は、少なくとも原告設備1-1、2-1及び2-3は、再度、ETC車
専用入口手前へ戻るルートに誘導する構成を備えていると主張する。
しかし、そもそもETC車専用入口が使えないために一般道路に戻る車両を、再度」

ETC車専用入口手前に戻るルートに誘導することは背理であるし、運転者の意思の
みに基づく運転操作による車両の通行を誘導と評価することには無理がある。
5 (2) 構成要件4Fについて
控訴人は、出願経過から本件訴訟に至るまで、本件発明4が本件発明2の下位概念
に相当する発明であると一貫して主張してきた上、
「に通じる第2のレーン」との文言
を特許請求の範囲に追加したとしても、本件明細書7の段落【0017】では、課題
を解決するための手段として、「再度出入口手前へ戻るルート又は一般車用出入口へ
10 誘導する誘導手段」と、本件親出願明細書の段落【0016】と同一の記載をしてい
るのであるから、構成要件4Fの意義を、構成要件2Eと別異に解する余地はない。
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原告各設備は構成要件2E及び4Fをいずれも充足せず、本件発
明2及び4のいずれの技術的範囲にも含まれないから、被控訴人が原告各設備を設置
15 し、使用することは、親出願特許及び第7世代特許に係る各特許権を侵害する行為に
当たらないと判断する。その理由は、次に当審における控訴人の補充主張に対する判
断を示すほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の2(64頁16行目~87頁1
1行目)に記載のとおりであるからこれを引用する(ただし、原判決80頁16~1
7行目(同第3の2(2)ア(ア)中)の「【0033】」は「【0032】」の誤記として訂
20 正する。。

2 控訴人の補充主張について
(1) 構成要件2Eについて
ア 控訴人は、本件親出願明細書の【図11】及び技術常識によると、構成要件2
Eの「一般車用出入口」には、本件発明2に係る車両誘導システムが設置されている
25 有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに隣接する別のインターチェ
ンジの一般車用出入口も含まれる旨主張する。
しかし、本件親出願明細書の【図11】及びこれに対応する段落【0063】~【0
065】には、スマートインターチェンジにおける実施例として、ETCによる料金
徴収が可能な車両が通行できるレーン(A→D)と、ETCによる料金徴収が不可能
な車両が通行するレーン(A→E)が記載され、
「一般車レーンB、Cが無いことを除
5 き、
・・・レーン(A→D)と(A→E)の役割・・・は、図3、4、6及び7のそれ
と同じである。 と記載されているにとどまり、
」 当該スマートインターチェンジに隣接
する別のインターチェンジの一般車用出入口は記載されておらず、ましてや、ETC
による料金徴収が不可能な車両を、隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口
まで誘導する具体的手段も記載されていない。本件親出願明細書の他の部分をみても、
10 車両誘導システムが設置されている施設に隣接する別のインターチェンジの一般車用
出入口や、そこへの誘導手段は記載されていない。なお、
【図11】の実施例において、
ETCによる料金徴収が不可能であったためにスマートインターチェンジを利用でき
なかった車両は、レーンEを走行した後、種々の経路を走行して、当該スマートイン
ターチェンジの近隣にある別のインターチェンジの一般車用出入口を利用することが
15 あり得る。しかし、それは、ETCによる料金徴収が可能な車両しか通行できないス
マートインターチェンジの性質上、ETCによる料金徴収が不可能な車両は近隣の一
般車用出入口を利用せざるを得ないという当然のことであって、その車両の走行挙動
を、【図11】の実施例に係る誘導手段による誘導の結果とみることは困難である。
そうすると、本件親出願明細書の記載からは、ETCによる料金徴収が不可能であ
20 ったためにスマートインターチェンジを利用できなかった車両が、隣接する別のイン
ターチェンジの一般車用出入口を利用することが、本件発明2に係る誘導手段による
誘導の結果であることを読み取ることはできない。
したがって、構成要件2Eの「一般車用出入口」に、本件発明2に係る車両誘導シ
ステムが設置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに隣
25 接する別のインターチェンジの一般車用出入口が含まれると解することはできない。
控訴人の主張は採用することができない。
イ 控訴人は、仮に構成要件2Eの「一般車用出入口」に隣接する別のインターチ
ェンジの一般車用出入口が含まれないとしても、少なくとも原告設備1-1、2-1
及び2-3では、ETCによる料金徴収が不可能な車両を一般道路に戻すことにより、
運転者の選択に応じて、交差点付近でUターンして、再度ETC車専用入口の手前に
5 戻ることを可能としており、当該車両を「再度前記ETC車専用(出)入口手前へ戻
るルート」に誘導しているといえる旨主張する。
しかし、前記1で引用する原判決の「事実及び理由」の第3の2(2)ア(イ)a(82
頁11行目~84頁15行目)のとおり、
「誘導」とは、目的に向かっていざない導く
ことを意味するところ、原告各設備内にはUターンを指示する標識等は存在しないの
10 であるから、原告各設備が、ETCによる料金徴収が不可能な車両を再度ETC車専
用出入口手前へ戻るルートにいざない導いているということはできない。当該車両の
運転者が、その選択によりUターンをして再度ETC車専用出入口手前へ戻ることが
事実上可能であるとしても、そのような運転者の意思による車両の走行を、原告各設
備に設置された誘導手段によるものと評価することには無理があるというほかない。
15 したがって、原告各設備は、いずれも、ETCによる料金徴収が不可能な車両を「再
度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート」に誘導する誘導手段を備えているとは
いえないから、構成要件2Eを充足しない。控訴人の主張は採用することができない。
(2) 構成要件4Fについて
ア 控訴人は、構成要件4Fについて、構成要件2Eに「に通じる第2のレーン」
20 との文言を追加し、誘導手段が誘導する先である「一般車用出入口」が、当該誘導さ
れる車両が直前に進入を試みた有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリ
アに設置されているものである必要がないことを確認的に示したものである旨主張す
る。
しかし、本件明細書7の記載は、上記(1)アでみた本件親出願明細書の記載と実質的
25 に異なるところがなく、車両誘導システムが設置されている施設に隣接する別のイン
ターチェンジの一般車用出入口や、そこへの誘導手段は、何ら記載されていないから、
構成要件4Fの「一般車用出入口」に、本件発明4に係る車両誘導システムが設置さ
れている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリアに隣接する別のイン
ターチェンジの一般車用出入口が含まれると解することはできない。控訴人の主張は
採用することができない。
5 イ 加えて、構成要件4Fについて、原告各設備へのあてはめを行うと、次のとお
りである。
(ア) 「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート・・・に通じる第2のレーン
へ誘導する誘導手段」について
a 前記第2の4で引用する前提事実(7)(原判決16頁2行目~23頁2行目)、
10 証拠(甲11、28)及び弁論の全趣旨によると、それぞれ以下の(a)~(d)の事実が
認められる。
(a) 原告各設備においては、ETC車載器との無線通信が不能又は不可であって、
かつ、インターホンによる係員との通話等の結果、課金等処理を行うことができなか
った車両は、ETCによる料金徴収が不可能な車両ということができるところ、この
15 ような車両は、①発進制御機1、⑤発進制御機3及び⑧路側表示器により、レーンd
に誘導される。
(b) 原告設備1-1では、レーンdは、進入してきたETC車専用入口に向かう車
線の反対車線(ETC車専用出口から出てくる道路の走行車線でもある。)に接続し、
その後一般道路に接続する。なお、その経路(ルート)上において、再度進入してき
20 たETC車専用出入口手前へ車両を誘導する標識等があるとは認められない。
(c) 原告設備1-2では、レーンdは、原告設備1-2が設置された横手北SIC
より進行方向先の高速道路に合流する。
(d) 原告設備2-1~2-4では、レーンdは、それぞれ進入してきたETC車専
用出入口に向かう車線の反対車線に接続し、その後一般道路(原告設備2-1、2-
25 3)又はパーキングエリア(原告設備2-2、2-4)にそれぞれ接続する。なお、
その経路(ルート)上において、再度進入してきたETC車専用出入口手前へ車両を
誘導する標識等があるとは認められない。
b したがって、原告各設備のルートdはいずれも「再度前記ETC車専用出入口
手前へ戻るルート・・・に通じる第2のレーン」に当たるとは認められず、原告各設
備はいずれも「再度前記ETC車専用出入口手前へ戻るルート・・・に通じる第2の
5 レーンへ誘導する誘導手段」(構成要件4F)を備えているとは認められない。
(イ) 「一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘導する誘導手段」について
前記アのとおり、構成要件4Fの「一般車用出入口」に、本件発明4に係る車両誘
導システムが設置されている有料道路料金所、サービスエリア又はパーキングエリア
に隣接する別のインターチェンジの一般車用出入口が含まれるとは解されないところ、
10 原告各設備は、いずれも一般車用出入口を備えていないから、原告各設備のレーンd
は、「一般車用出入口に通じる第2のレーン」には当たらない。
したがって、原告各設備は、いずれも「一般車用出入口に通じる第2のレーンへ誘
導する誘導手段」(構成要件4F)を備えているとは認められない。
(ウ) 小括
15 上記のとおり、原告各設備は、いずれも構成要件4Fを充足しない。
3 結論
以上によると、被控訴人の本訴請求を一部認容し、控訴人の反訴請求を棄却した原
判決は相当であって、本件控訴には理由がないからこれを棄却することとして、主文
のとおり判決する。
20 知的財産高等裁判所第1部

25 裁判長裁判官
本 多 知 成
5 裁判官
伊 藤 清 隆

裁判官
天 野 研 司

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