ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ワ)70223 損害賠償請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年9月11日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告株式会社セガ 被告LINEヤフー株式会社 |
| 対象物 | ゲームシステム及びゲームプログラム |
| 法令 |
特許権 特許法126条5項2回 特許法36条4項1号1回 特許法17条の21回 特許法102条2項1回 |
| キーワード | 実施30回 無効23回 新規性14回 進歩性10回 特許権10回 審決2回 訂正審判1回 損害賠償1回 |
| 主文 | 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 本件は、発明の名称を「ゲームシステム及びゲームプログラム」とする特許権 (特許第6143141号。請求項の数3。以下「本件特許1」といい、本件特 許1に係る特許権を 「本件特許権1」 という。 ) 及び発明の名称を 「ゲーム装置」 とする特許権(特許第5622184号。請求項の数4。以下「本件特許2」と いい、本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)を有する原告が、 被告が生産し、電気通信回線を通じて提供等するゲームプログラム(タイトルを 「LINE:ディズニーツムツム」とするゲームに係るプログラムをいい、以下 「被告ゲームプログラム」という。)が、本件特許権2に係る発明の技術的範囲 に、同プログラムについて使用する通信システム(以下「被告ゲームシステム」 という。)が、本件特許権1に係る発明の技術的範囲に、それぞれ属すると主張 |
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令和7年9月11日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第70223号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和7年7月18日
判 決
原 告 株 式 会 社 セ ガ
同訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘
同訴訟代理人弁護士 小 西 絵 美
同訴訟代理人弁護士 末 吉 亙
同訴訟代理人弁理士 山 田 彰 彦
被 告 LINEヤフー株式会社
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
同訴訟代理人弁護士 木 村 広 行
同訴訟代理人弁護士 亀 山 和 輝
同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘
同補佐人弁理士 野 本 裕 史
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和6年6月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、発明の名称を「ゲームシステム及びゲームプログラム」とする特許権(特許第6143141号。請求項の数3。以下「本件特許1」といい、本件特許1に係る特許権を「本件特許権1」という。)及び発明の名称を「ゲーム装置」とする特許権(特許第5622184号。請求項の数4。以下「本件特許2」といい、本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)を有する原告が、
5 被告が生産し、電気通信回線を通じて提供等するゲームプログラム(タイトルを「LINE:ディズニーツムツム」とするゲームに係るプログラムをいい、以下「被告ゲームプログラム」という。)が、本件特許権2に係る発明の技術的範囲に、同プログラムについて使用する通信システム(以下「被告ゲームシステム」という。)が、本件特許権1に係る発明の技術的範囲に、それぞれ属すると主張して、民法709条、特許法102条2項、3項に基づく損害の賠償及び民法703条に基づく利得金の返還として、1億円及びこれに対する令和6年6月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)
⑴ 当事者ア 原告は、スマートフォン等のスマートデバイス用ゲームプログラムその他コンテンツの企画、開発及び販売等を目的とする株式会社である。イ 被告は、ソーシャルネットワークサービス及びスマートフォン用ゲームプログラムの提供等を目的とする株式会社である。
⑵ 本件特許1(甲1、2)ア 原告は、以下の本件特許1を有している(本件特許1出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書1」という。)。特許番号 :特許第6143141号発明の名称:ゲームシステムおよびゲームプログラム出願日 :平成28年7月22日原出願日 :平成24年8月9日登録日 :平成29年5月19日イ 本件特許1の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載内容は、別紙「特許
5 請求の範囲」記載1のとおりである(以下、請求項1に記載された発明を「本件発明1-1」、請求項2に記載された発明を「本件発明1-2」といい、これらを総称して「本件発明1」という。)。ウ 本件発明1-1を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件1A」などという。)。【1A】 購入手続きを行なうことでユーザーに付与される第1の仮想アイテム、および、ゲームの実行によりユーザーに付与される第2の仮想アイテムを区別なく利用可能なゲームを実行するゲームシステムであって、【1B】 前記ユーザーに対応付けて、前記第1の仮想アイテムの数量と、前記第2の仮想アイテムの数量とをそれぞれ記憶する手段と、【1C】 前記ユーザーが前記第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段と、【1D】 を備えたことを特徴とするゲームシステム。エ 本件発明1-2を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件1E」などという。)。【1E】 前記ゲームシステムの表示画面内において、前記第1の仮想アイテムの表示領域と前記第2の仮想アイテムの表示領域とが区別されている、【1F】 請求項1に記載のゲームシステム。
⑶ 本件特許2(甲3、4)ア 原告は、以下の本件特許2を有している(本件特許2出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書2」という。)。なお、原告は、令和6年10月22日付け審判請求書により、特許請求の
5 範囲(請求項2~4)の訂正を求める訂正審判請求をし、特許庁は、上記請求を認める旨の審決をし、同審決は確定した(甲19、37。以下、「本件訂正」という。)。特許番号 :特許第5622184号発明の名称:ゲーム装置出願日 :平成26年5月2日原出願日 :平成21年4月28日登録日 :平成26年10月3日イ 本件特許2の本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2の記載内容は、別紙「特許請求の範囲」記載2のとおりである(以下、訂正後の同発明を「本件発明2」という。)。ウ 本件発明2を構成要件に分説すると、次のとおりとなる(以下、分説した構成要件をその符号に従い「構成要件2A」などという。)。【2A】 情報処理装置を、
⑴ プレイヤに対応づけて、ゲームアイテムデータを記憶する記憶手段、
⑵ 前記プレイヤが金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータを取得する取得手段、
⑶ 前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断する判断手段、
⑷ 前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけ
5 て記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更する変更手段、として機能させ、【2B】 前記変更手段は、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更することを特徴とする、【2C】 ゲームプログラム。
⑷ 被告の行為被告は、被告ゲームプログラムを生産し、サーバ用プログラムをサーバ装置にインストールして使用するほか、電気通信回線を通じてユーザーにスマートデバイス用プログラムを提供している。そして、被告ゲームプログラムについて、その管理するサーバから、通信ネットワークを介し、ユーザーの情報処理端末と通信するシステム(被告システム)を使用している。(以上につき、弁論の全趣旨)
⑸ 先行文献ア 本件特許1の原出願日(平成24年8月9日)より前に、Wemade社が提供するインターネットゲームサービスに係る利用規約及び当該ゲームを利用できる前払式電子支給手段である「Weキャッシュ」と各種イベントから顧客に提供される無料キャッシュである「ボーナスキャッシュ」について説明する記事(乙2。以下「乙2文献」といい、同文献に記載された発明を「乙2発明」という。)が公開されていた。イ 本件特許1の原出願日(平成24年8月9日)より前に、Wemade社が提供するインターネットゲームサービスであるミルの伝説2、ミルの伝説3、ミルの伝説Xに係る利用規約(乙3。以下「乙3文献」といい、同文献に記載された発明を「乙3発明」という。)が公開されていた。
5 ウ 本件特許2の原出願日(平成21年4月28日)より前に、「野球つくONLINE2」と題するゲーム(以下「乙6ゲーム」という。)及び当該ゲームを紹介するウェブページ(乙6。以下「乙6文献」という。)が公開されていた(以下、乙6文献に記載された発明を「乙6発明1及び2」、乙6ゲームのプログラムとして実施された発明を「乙6発明3」といい、これらを総称して「乙6発明」という。)。エ 本件特許2の原出願日(平成21年4月28日)より前に、「悪魔城ドラキュラ-蒼月の十字架-」と題するゲーム(乙7。以下「乙7ゲーム」といい、同ゲームのプログラムとして実施された発明を「乙7発明」という。)が公開されていた。オ 本件特許2の原出願日(平成21年4月28日)より前に、発明の名称を「ゲーム装置および情報記録媒体」とする公開特許公報(特開2000-37561、公開日平成12年2月8日。乙8。以下「乙8公報」といい、同公報に記載された発明を「乙8発明」という。)が公刊されていた。カ 本件特許2の原出願日(平成21年4月28日)より前に、「ガンダムタクティクスオンライン」と題するゲーム(以下「乙39ゲーム」という。)を紹介するウェブページ(乙39。以下「乙39文献」といい、同文献に記載された発明を「乙39発明」という。)が公開されていた。2 争点
⑴ 本件特許権1についてア 充足論(ア) 被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテム、および…第2の仮想アイテムを区別なく利用可能」(構成要件1A)か(争点1-1)(イ) 被告ゲームシステムは「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶する手段」(構成要件1B)を有するか(争点1-2)(ウ) 被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイ
5 テムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有するか(争点1-3)(エ) 被告ゲームシステムは「表示画面内において…第1の仮想アイテムの表示領域と…第2の仮想アイテムの表示領域とが区別」(構成要件1E)されているか(争点1-4)イ 無効論(ア) 乙2発明を主引例とする無効事由の有無(争点1-5)(イ) 乙3発明を主引例とする無効事由の有無(争点1-6)(ウ) サポート要件違反(争点1-7)(エ) 明確性要件違反(争点1-8)(オ) 実施可能要件違反(争点1-9)
⑵ 本件特許権2についてア 充足論(ア) 被告ゲームプログラムは「プレイヤに対応づけて、ゲームアイテムデータを記憶する記憶手段」(構成要件2A⑴)を有しているか(争点2-1)(イ) 被告ゲームプログラムは「獲得したゲームアイテムデータを取得する取得手段」(構成要件2A⑵)を有するか(争点2-2)(ウ) 被告ゲームプログラムは「前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが…同一種類であるか否かを判断する判断手段」(構成要件2A⑶)を有するか(争点2-3)(エ) 被告ゲームプログラムは「前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータ…を前記記憶手段に登録」し、「前記判断手段が同一であると判断した場合…前記ゲームアイテムデータを変更する変更手段」(構成要件2A⑷)を有するか(争点2-4)(オ) 被告ゲームプログラムは「同一種類であると判断された前記ゲームアイ
5 テムデータを…前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」(構成要件2B)といえるか(争点2-5)(カ) 被告ゲームプログラム及びこれを記憶したサーバ装置は「ゲームプログラム」(構成要件2C)及び「情報処理装置」(構成要件2A)といえるか(争点2-6)イ 無効論(ア) 乙6発明を主引例とする無効事由の有無(争点2-7)(イ) 乙7発明を主引例とする無効事由の有無(争点2-8)(ウ) 乙8発明を主引例とする無効事由の有無(争点2-9)(エ) 乙39発明を主引例とする無効事由の有無(争点2-10)(オ) サポート要件違反(争点2-11)(カ) 新規事項追加違反(争点2-12)(キ) 明確性要件違反(争点2-13)(ク) 実施可能要件違反(争点2-14)
⑶ 損害額(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1-1(被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテム、および…第2の仮
想アイテムを区別なく利用可能」(構成要件1A)か)
(原告の主張)
被告ゲームシステムには、有料ルビーと無料ルビーが存在するところ、ユーザーがルビーを購入すると、有料ルビー(以下「購入ルビー(有料ルビー)」という。)と無料ルビー(以下「購入ルビー(無料ルビー)」という。)が付与され、ユーザーがゲームをプレイすると、無料ルビー(以下「ゲーム実行ルビー」という。)が付与される。そして、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが、それぞれ該当する。ここにいう「区別なく利用可能」(構成要件1A)とは、本件明細書1【段落
5 0008】記載のとおり、遊技の実行、すなわちゲームの実行という観点から、
いずれを消費してもプレイができることを意味するものと解される。被告ゲームシステムにおいては、購入ルビー(有料ルビー)とゲーム実行ルビーは、何らの区別もなくハートやコインに交換してゲームをプレイすることができるから、両者は「区別なく利用可能」である。したがって、被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテム、および…第2の仮想アイテムを区別なく利用可能」(構成要件1A)である。
(被告の主張)
被告ゲームシステムのうち、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)及び購入ルビー(無料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが該当する。そして、「区別なく利用可能」(構成要件1A)とは、違いがなく消費可能であることを意味するものと解される。被告ゲームシステムにおいては、①購入ルビー(有料ルビー)は優先的に消費されるが、ゲーム実行ルビーを含む無料ルビーは優先的に消費されない点、②購入ルビー(有料ルビー)は払い戻しを行うが、ゲーム実行ルビーを含む無料ルビーは払い戻しを行わない点、③購入ルビー(有料ルビー)は有料コインと交換されるが、ゲーム実行ルビーを含む無料ルビーは無料コインと交換される点で区別されている。したがって、「第1の仮想アイテム、および…第2の仮想アイテムを区別なく利用可能」であるとはいえない。
2 争点1-2(被告ゲームシステムは「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶す
る手段」(構成要件1B)を有するか)
(原告の主張)
構成要件1Bの「数量」とは、その語義及び技術的意義(ゲーム開始に必要な単位以上の数量を記憶することで遊戯が無料化するという課題を生じさせる)か
5 らすれば、個数や分量をいうと解される。そして、被告ゲームシステムは、シス
テムが個々のゲーム実行ルビーの付与を認識し、かつ、その数量を蓄積しているから、ゲーム実行ルビーの個数を記憶している。したがって、被告ゲームシステムは、「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶する手段」(構成要件1B)を備えている。
(被告の主張)
構成要件1Bの「数量」とは、構成要件1Cの「保有」の有無を判断する前提であるから、その技術的意義に鑑み、総量をいうと解される。そして、被告ゲームシステムは、購入ルビー(無料ルビー)とゲーム実行ルビーを区別することなく、これらを無料ルビーとして記憶しており、その内訳を記憶していないから、「第2の仮想アイテム」に該当するゲーム実行ルビーの総量を記憶していない。
3 争点1-3(被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮
想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有するか)
(原告の主張)
上記1記載のとおり、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが該当する。そして、購入ルビー(有料ルビー)は、ゲーム実行ルビーに優先して消費される。したがって、被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有する。
(被告の主張)
上記1記載のとおり、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)及び購入ルビー(無料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが、それぞれ該当する。そして、購入ルビー(無料ルビー)は、ゲーム実行ルビーに優先して消費されるものではない。
5 したがって、被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮
想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有しない。
4 争点1-4(被告ゲームシステムは「表示画面内において…第1の仮想アイテ
ムの表示領域と…第2の仮想アイテムの表示領域とが区別」(構成要件1E)されているか)
(原告の主張)
上記1記載のとおり、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが該当する。そして、被告ゲームシステムでは、購入ルビー(有料ルビー)は表示画面内の「有料」の表示領域に、ゲーム実行ルビーは同画面内の「無料」の表示領域に、それぞれ振り分けられるから、両者の表示領域は区別されている。したがって、被告ゲームシステムは「表示画面内において…第1の仮想アイテムの表示領域と…第2の仮想アイテムの表示領域とが区別」(構成要件1E)されている。
(被告の主張)
上記1記載のとおり、「第1の仮想アイテム」には購入ルビー(有料ルビー)及び購入ルビー(無料ルビー)が、「第2の仮想アイテム」にはゲーム実行ルビーが、それぞれ該当する。そして、被告ゲームシステムは、購入ルビー(有料ルビー)と購入ルビー(無料ルビー)を合わせた数量や、ゲーム実行ルビーのみの数量が表示されることはない。したがって、被告ゲームシステムは「表示画面内において…第1の仮想アイテムの表示領域と…第2の仮想アイテムの表示領域とが区別」(構成要件1E)されていない。
5 争点1-5(乙2発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
5 ⑴ 新規性がないこと
乙2文献は、以下の構成を有する乙2発明を開示しているから、本件発明1は、新規性の欠如により、特許を受けることができない。【1a】 現金により購入することでユーザーに付与される有償Weキャッシュ、および、Wemade社のゲームにおいて行われる各種イベントの実行により無料で獲得することによりユーザーに付与されるボーナスキャッシュを有料コンテンツの利用料の決済に利用可能なWemade社のゲームを実行するゲームシステムであって、【1b】 前記ユーザーに対応付けて、前記有償Weキャッシュの数量と、前記ボーナスキャッシュの数量とをそれぞれ記憶する手段と、【1c】 前記ユーザーが前記有償Weキャッシュおよび前記ボーナスキャッシュの両方を保有している場合、ボーナスキャッシュに優先して有償Weキャッシュを差し引く手段と、【1d】 を備えたことを特徴とするゲームシステム【1e】 前記ゲームシステムの表示画面内において、「有償Weキャッシュ」の表示領域と「ボーナスキャッシュ」の表示領域とが区別されている、【1f】 構成1a~1dを備えたゲームシステム。
⑵
(原告の主張)
についてア 原告は、本件発明1の「第2の仮想アイテム」は「ゲームの実行により付与される」ものであるのに対し、乙2発明のボーナスキャッシュは、「ゲームの実行により付与される」ものであるかが不明である点が、相違点である旨主張する。しかしながら、乙2発明のボーナスキャッシュは、各種イベントにて獲得できるものであり、これはWemade社のゲームの実行を意味するから、「ゲームの実行により付与される」ものであり、本件発明1の「第2の仮想
5 アイテム」に当たる。
イ 原告は、本件発明1の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」は「区別なく利用可能」なものであるのに対し、乙2発明のボーナスキャッシュは有償Weキャッシュと比較してその利用できる場面に制限が付されている点が、相違点である旨主張する。しかしながら、乙2文献では、有償Weキャッシュとボーナスキャッシュとが合算して管理されてユーザーの選択の余地なく自動的に有償Weキャッシュが消費される仕組みになっており、両者の間にゲーム実行の観点から区別がないことは明らかである。ウ 原告は、本件発明1-2の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」の表示領域とが区別されているのに対し、乙2発明の有償Weキャッシュの表示領域とボーナスキャッシュの表示領域とが区別されているか否か不明である点が、相違点である旨主張する。しかしながら、Weキャッシュとボーナスキャッシュについて説明する記事(乙2-2)には、有償Weキャッシュの表示領域とボーナスキャッシュの表示領域とを区別する構成が開示されている。
⑶ 原告が主張する相違点があるとしても容易想到であること
ア 乙2発明のボーナスキャッシュが「ゲームの実行により付与される」ものであるかが不明である点が相違点であるとしても、Wemade社のゲームで行われるイベントにてボーナスキャッシュに相当するミルファン又は無料のWeキャッシュを獲得できることは、同社のゲームイベントに係る記事(乙4、5、24)に記載されているから、乙2発明にこれらを適用することで当業者が容易に想到できるか、又は周知の技術的事項であるというべきである。イ 乙2発明のボーナスキャッシュは有償Weキャッシュと比較して「区別なく利用可能」ではない点が相違点であるとしても、オンラインゲームの安定
5 的な収益を創出するという技術分野及び課題を同じくする「韓国コンピュー
ターゲーム学会論文誌Volume2.No.24」(以下「乙25文献」という。)には、ゲームプレイを通じて獲得できるゲームマネーと、プレイヤが現金を通じて購入できるゲームマネーが区別なく利用可能な構成が開示されているから、乙2発明に適用することで当業者が容易に想到できるというべきである。ウ 乙2発明の有償Weキャッシュとボーナスキャッシュの表示領域が区別されていない点が相違点であるとしても、乙2-1から認定される発明に乙2-2記載の技術的事項を適用することで当業者は容易に想到できるというべきである。
(原告の主張)
⑴ 新規性がないとはいえないこと
本件発明1の「第2の仮想アイテム」は「ゲームの実行により付与される」ものであるのに対し、乙2発明のボーナスキャッシュは、「ゲームの実行により付与される」ものであるかが不明である。また、本件発明1の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」は「区別なく利用可能」なものであるのに対し、乙2発明のボーナスキャッシュは有償Weキャッシュと比較してその利用できる場面に制限が付されているから「区別なく利用可能」ではない。さらに、本件発明1-2の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」の表示領域とが区別されているのに対し、乙2発明の有償Weキャッシュの表示領域とボーナスキャッシュの表示領域とが区別されているか否か不明である。したがって、本件発明1は、乙2文献に開示された乙2発明と同一であるとはいえない。
⑵ 容易想到であるとはいえないこと
5 ア 被告は、Wemade社のゲームイベントに係る記事(乙4、5、24)
に、同社のゲームで行われるイベントにてボーナスキャッシュに相当するミルファン又は無料のWeキャッシュを獲得できることが記載されている旨主張するが、これらの記事にボーナスキャッシュが獲得できる旨の記載はない。イ 被告は、乙2発明に乙25文献を適用することで容易想到である旨主張するが、乙2発明のボーナスキャッシュと有償Weキャッシュはゲーム実行の観点から区別があるため、利用者がボーナスキャッシュのみを用いて遊技をし続けられるという課題が生じないにもかかわらず、区別なく利用可能な構成を開示する乙25文献記載の技術的事項を適用することには、阻害要因がある。ウ 被告は、乙2-1から認定される発明に乙2-2記載の技術的事項を適用することで容易想到である旨主張するが、有償Weキャッシュとボーナスキャッシュに対応する乙2-2の表示は不明であり、これらの表示領域に係る構成が開示されているとはいえない。
6 争点1-6(乙3発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
⑴ 本件発明1-1について
ア 新規性がないこと乙3文献は、以下の構成を有する乙3発明を開示しているから、本件発明1-1は、新規性の欠如により、特許を受けることができない。【1a】 現金により購入することでユーザーに付与される有償ファン、および、ミルの伝説において行われる各種イベントの実行により無料で獲得することによりユーザーに付与されるボーナスファンを有料コンテンツの利用料の決済に利用可能なミルの伝説を実行するゲームシステムであって、
5 【1b】 前記ユーザーに対応付けて、前記有償ファンの数量と、前記ボー
ナスファンの数量とをそれぞれ記憶する手段と、【1c】 前記ユーザーが前記有償ファンおよび前記ボーナスファンの両方を保有している場合、ボーナスファンに優先して有償ファンを差し引く手段と、【1d】 を備えたことを特徴とするゲームシステムイ
(原告の主張)
について(ア) 原告は、本件発明1の「第2の仮想アイテム」は、「ゲームの実行により付与される」ものであるのに対し、乙3発明のボーナスファンは、「ゲームの実行により付与される」ものであるかが不明である旨主張する。しかしながら、乙3文献の記載自体から、乙3発明のボーナスファンがミルの伝説において行われる各種イベントで獲得できることは明らかである。また、乙3文献に接した当業者は、乙3文献と同じミルの伝説に係るニュース記事(乙4、5)を参照してその内容を理解するから、ミルの伝説のイベントの実行により、ボーナスファンを獲得できることは、乙3文献に実質的に開示されている。したがって、乙3発明のボーナスファンは、ミルの伝説という「ゲームの実行により付与される」ものであり、本件発明1の「第2の仮想アイテム」に当たる。(イ) 原告は、本件発明1の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」は「区別なく利用可能」なものであるのに対し、乙3発明のボーナスファンは区別なく利用可能なものではない点が、相違点である旨主張する。しかしながら、乙3文献では、有償ファンとボーナスファンとが合算して管理されてユーザーの選択の余地なく自動的に有償Weキャッシュが消費されるという仕組みになっており、両者の間にゲーム実行の観点から区別がないことは明らかである。
5 ウ 原告が主張する相違点があるとしても本件発明1-1が容易想到である
こと(ア) 乙3発明のボーナスファンが「ゲームの実行により付与される」ものであるかが不明である点が相違点であるとしても、ミルの伝説又はWemade社のゲームで行われるイベントにてボーナスファンに相当すると理解可能なミルファン、無料のファン又はWeキャッシュを獲得できることは、同社のゲームイベントに係る記事(乙4、5、24)に記載されている技術的事項である。したがって、乙3発明に対し、これらを適用し又は周知の技術的事項を適用することで、当業者が容易に想到できるというべきである。(イ) 乙3発明のボーナスファンは有償ファンと比較して「区別なく利用可能」ではない点が相違点であるとしても、オンラインゲームの安定的な収益を創出するという技術分野及び課題を同じくする乙25文献には当該技術的事項が開示されているから、これを乙3発明に適用することで当業者が容易に想到できるというべきである。
⑵ 本件発明1-2について
本件発明1-2は、乙3発明に乙2-2記載の技術的事項を適用することで、当業者が容易に想到できる構成にすぎないから、進歩性がない。すなわち、乙3発明の有償ファンとボーナスファンの表示領域が区別されていない点が相違点であるとしても、乙2-2には、有償Weキャッシュとボーナスキャッシュの表示領域を区別するという技術的事項が記載されているから、これを適用することで当業者は容易に想到できるというべきである。
(原告の主張)
⑴ 本件発明1-1について
ア 新規性がないとはいえないこと本件発明1の「第2の仮想アイテム」は、「ゲームの実行により付与され
5 る」ものであるのに対し、乙3発明のボーナスファンは、「ゲームの実行に
より付与される」ものであるかが不明である。また、本件発明1の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」は「区別なく利用可能」なものであるのに対し、乙3発明のボーナスファンは、一定のゲーム及びコンテンツに利用可能なものであって、その使用に一定の制限が付されているから、遊技の実行の観点から「区別なく利用可能」ではない。したがって、本件発明1は、乙3文献に開示された乙3発明と同一であるとはいえない。イ 容易想到であるとはいえないこと(ア) 被告は、Wemade社のゲームイベントに係る記事(乙4、5、24)にボーナスファンに相当すると理解可能なミルファン、無料のファン、Weキャッシュを獲得することができることが記載されている旨主張するが、これらの記事にボーナスファンが獲得できる旨の記載はなく、ミルファン及び無料のファンとは、「ファン」という単語が共通するに限られているから、これらがボーナスファンに相当するものと理解することはできない。したがって、上記記事には「ゲームの実行により付与される」との構成の開示がない。(イ) 被告は、乙3発明に乙25文献を適用することで容易想到である旨主張するが、乙3発明のボーナスファンと有償ファンはゲーム実行の観点から区別があり、利用者がボーナスファンのみを用いて遊技をし続けられるという課題が生じないにもかかわらず、区別なく利用可能な構成を開示する乙25文献記載の技術的事項を適用することには、阻害要因がある。
⑵ 本件発明1-2について
本件発明1-2の「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」の表示領域とが区別されているのに対し、乙3発明の有償ファンの表示領域とボーナ
5 スファンの表示領域とが区別されているか否か不明である。
そして、被告は、乙3発明に乙2-2記載の技術的事項を適用することで容易想到である旨主張するが、乙2-2には「ミルの伝説を除く」旨が明記されている上、乙3発明に乙2-2記載の技術的事項を適用する動機付けはない。
7 争点1-7(サポート要件違反)
(被告の主張)
本件発明1は、第2の遊技価値アイテムの数量情報のみをサーバと授受する構成が特定されていないところ、上記構成を採用しない実施の形態は、本件明細書1に記載も示唆もされていない。そして、本件明細書1によれば、収益を生みづらい構造を改良したゲーム装置等を提供するという課題は、上記構成を採用することによって解決されているところ、上記構成を採用しない本件発明1の構成によっては、何らかの課題が解決できることを認識することはできない。したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明の記載によりその課題を解決できると認識することができない。
(原告の主張)
本件発明1の課題を解決する手段は、第2の遊技価値アイテムの数量情報のみをサーバと授受する構成ではなく、第1の仮想アイテムが第2の仮想アイテムに優先して消費される構成であるから、当該構成が本件明細書1に記載されていれば、本件発明1の課題を解決できると認識できることになる。そして、第1の仮想アイテムが第2の仮想アイテムに優先して消費される構成は、本件明細書1の段落【0036】~【0038】に記載されている。したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されており、発明の詳細な説明の記載によりその課題を解決できると認識することができる。
8 争点1-8(明確性要件違反)
(被告の主張)
5 ⑴ 本件発明1は「第1の仮想アイテム、および、ゲームの実行によりユーザー
に付与される第2の仮想アイテムを区別なく利用可能」とされているものの、「区別なく利用可能」の意義が不明であるから、明確性要件を満たさない。
⑵ また、本件発明1の「数量」を総量ないし数量の合計値に限られないと解す
ると、本件発明1の「前記ユーザーに対応付けて、前記第1の仮想アイテムの数量と、前記第2の仮想アイテムの数量とをそれぞれ記憶する」という発明特定事項が果たす技術的意味を理解できないから、本件発明1は明確性要件を満たさない。
⑶ さらに、本件発明1の「表示領域」を数量が表示されるものに限られないと
解すると、本件発明1の「前記ゲームシステムの表示画面内において、前記第1の仮想アイテムの表示領域と前記第2の仮想アイテムの表示領域とが区別されている」という発明特定事項が果たす技術的意味を理解できないから、本件発明1は明確性要件を満たさない。
(原告の主張)
⑴ 本件明細書1の段落【0008】記載のとおり、「区別なく利用可能」とは、
ユーザーがゲームをプレイするという観点では、第1の仮想アイテムと第2の仮想アイテムとに区別がないという意味であるから、その意義は明確である。
⑵ また、本件発明1の「数量」とは、文字どおり個数や量を意味しているから、
その意義は明確である。
⑶ さらに、本件発明1の「表示領域」が数量の表示に限定されていないことは、
本件明細書1の【図4】【図6】で説明されており、
(被告の主張)
は前提を欠いている。
9 争点1-9(実施可能要件違反)
(被告の主張)
上記7記載のとおり、本件発明1は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲にはないから、本件発明1の目的を達成するためには、少なくとも過度の試
5 行錯誤を要することは明らかである。
(原告の主張)
上記7記載のとおり、当業者は、本件発明1の課題を解決できると認識することができるから、実施可能要件に違反しない。
10 争点2-1(被告ゲームプログラムは「プレイヤに対応づけて、ゲームアイテ
ムデータを記憶する記憶手段」(構成要件2A⑴)を有しているか)
(原告の主張)
⑴ ゲームをプレイする人は「プレイヤ」に、●(省略)●は「ゲームアイテム
データ」に、それぞれ該当し、●(省略)●はユーザーIDを識別子としてプレイヤに対応づけられているから、被告ゲームプログラムは、「プレイヤに対応づけて、ゲームアイテムデータを記憶する記憶手段」を有する。
⑵ 被告は、被告ゲームプログラムがユーザーIDに対応づけて●(省略)●を
記憶しているから、「プレイヤに対応づけて…記憶する記憶手段」を有しない旨主張するが、●(省略)●は、ユーザーIDを識別子としてプレイヤに対応づけられているから、「プレイヤに対応づけ」られている。
⑶ 被告は、「ゲームアイテムデータ」とは、遊戯進行の操作手段として用いる
物品(有体物)に係るデータに限られる旨主張するが、特許請求の範囲にも「ゲームアイテムデータ」を物品(有体物)に係るデータに限定する旨の記載はなく、かえって、本件明細書2の記載(段落【0025】【0028】【0032】【0138】)によれば、「ゲームアイテムデータ」にはキャラクタデータが含まれ、●(省略)●はこれに該当するから、
(被告の主張)
はその前提を欠く。
(被告の主張)
⑴ 被告ゲームプログラムは、ユーザーIDに対応付けてゲームアイテムデータ
を記憶しており、ユーザーIDは「プレイヤ」に該当しないから、「プレイヤに対応づけて…記憶」していない。
5 ⑵ 本件明細書2に記載された課題や例示(段落【0007】~【0010】【0
025】【0041】)によれば、本件発明2の「ゲームアイテムデータ」とは、遊戯進行の操作手段として用いる物品(有体物)に係るデータをいうものと解されるところ、被告ゲームプログラムのツムは、仮想的な存在であって、●(省略)●は、現実世界における遊戯進行の操作手段として用いる物品(有体物) に係るデータであるとはいえないから、「ゲームアイテムデータ」に該当しない。
11 争点2-2(被告ゲームプログラムは「プレイヤが金銭の支払に基づき獲得し
たゲームアイテムデータを取得する取得手段」(構成要件2A⑵)を有するか)
(原告の主張)
⑴ 「プレイヤが金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータ」
被告ゲームプログラムの●(省略)●が「ゲームアイテムデータ」に該当することは、上記10記載のとおりである。そして、プレイヤは、ゲーム内で●(省略)●ツムを仮想的に獲得するに当たり、●(省略)●を観念的に獲得しているから、「プレイヤが…獲得した」を充足する。また、ツム●(省略)●を獲得するためには、プレイヤは、金銭の支払により有料ルビーを購入し、これをコインに変換するから、「金銭の支払に基づき」を充足する。
⑵ 「獲得したゲームアイテムデータを取得する取得手段」
被告ゲームプログラムは、「プレイヤが金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータ」に該当する●(省略)●を「取得」する取得手段を有しているから、構成要件2A⑵の「取得手段」を備えている。また、被告ゲームプログラムでは、●(省略)●プレイヤが「獲得」(割当て予定)するとほぼ同時に、サーバ装置がこれを「取得」(割当て実行)する「取得手段」を備えている。本件発明2は、「獲得」と「取得」の前後関係を規定するものではなく、
5 ゲームアイテムデータの入手に関する動作をプレイヤ視点(「獲得」)とシス
テム視点(「取得」)から規定しているにすぎない。
(被告の主張)
⑴ 「プレイヤが金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータ」
ア 被告ゲームプログラムにおいて、プレイヤが獲得するのは、ツムであり、●(省略)●ではない。そして、ツムは「ゲームアイテムデータ」に該当しないから、「プレイヤが…獲得したゲームアイテムデータ」に該当しない。イ プレイヤが●(省略)●を獲得しているとしても、上記10記載のとおり、●(省略)●は「ゲームアイテムデータ」に該当しない。構成要件2A⑵において、「獲得」が先行し、その後に「取得」するものと別々に特定されているのは、プレイヤが獲得するのは有体物であるゲームアイテムであるため、情報処理装置がゲームアイテムデータを登録する前提として、当該ゲームアイテムに係るゲームアイテムデータを取得する必要があるからである。ウ また、本件明細書2の記載(段落【0125】)によれば、本件発明2の「金銭の支払」とは、それによってゲーム実行の準備がなされ、それによりゲームアイテムデータを取得することを意味するものと解される。そして、被告ゲームプログラムにおいて、金銭の支払によって購入できるのは有償ルビーであって、●(省略)●ではないから、「金銭の支払に基づき」を充足しない。
⑵ 「獲得したゲームアイテムデータを取得する取得手段」
ア ●(省略)●であって、●(省略)●を「取得」してない。イ 仮に●(省略)●を「取得」しているとしても、構成要件2A⑵は、特許請求の範囲の記載上、まず「プレイヤ」が「ゲームアイテムデータ」を獲得し、次に「取得手段」が「ゲームアイテムデータ」を取得するものであるのに対し、被告ゲームプログラムでは、●(省略)●ツムを獲得するのであるから(獲得)、獲得と取得の前後関係が逆転している。そのため、「獲得し
5 たゲームアイテムデータを取得する取得手段」を備えていない。
12 争点2-3(被告ゲームプログラムは「前記取得手段により取得したゲームア
イテムデータが…同一種類であるか否かを判断する判断手段」(構成要件2A⑶)を有するか)
(原告の主張)
●(省略)●が「ゲームアイテムデータ」に該当することは、上記10記載のとおりである。そして、被告ゲームプログラムが有する●(省略)●ことによってツムに係るデータが同一の種類であるか否かを判定していることにほかならないから、構成要件2A⑶の「判断手段」に該当する。
(被告の主張)
●(省略)●が「ゲームアイテムデータ」に該当しないことは、上記10及び11記載のとおりである。また、構成要件2A⑶の「判断手段」は、「取得したゲームアイテムデータ」が、「前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータ」と、同一種類であるか否かを判断するとされているのに対して、被告ゲームプログラムは、●(省略)●したがって、被告ゲームプログラムは、上記「判断手段」を有しない。
13 争点2-4(被告ゲームプログラムは「前記判断手段が同一種類でないと判断
した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータ…を前記記憶手段に登録」し、「前記判断手段が同一であると判断した場合…前記ゲームアイテムデータを変更する変更手段」(構成要件2A⑷)を有するか)
(原告の主張)
⑴ 判断手段が同一種類でないと判断した場合
被告ゲームプログラムが「判断手段」を有すること、●(省略)●が「ゲー
5 ムアイテムデータ」に該当し、●(省略)●が「前記取得手段により取得され
たゲームアイテムデータ」に該当することは、上記10~12記載のとおりである。したがって、被告ゲームプログラムは、「前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータ…を前記記憶手段に登録」する手段を有する。
⑵ 判断手段が同一であると判断した場合
被告ゲームプログラムが「判断手段」を有することは、上記12記載のとおりである。また、被告ゲームプログラムのツムに係るスキルレベルは「ゲームアイテムデータ」(構成要件2A⑷後段)に該当し、これが「変更手段」により「変更」される。これに対し、被告は、構成要件2A⑵ないし⑷の文言から、●(省略)●が構成要件2A⑵の「プレイヤが獲得したゲームアイテムデータ」に相当するならば、同2A⑷の「変更手段」が変更する対象も●(省略)●となる旨主張する。しかしながら、判断手段が同一種類であると判断した場合には、「プレイヤが獲得したゲームアイテムデータ」を記憶手段に登録することなく、プレイヤに既に対応づけて記憶されるゲームアイテムデータを変更の対象とするのであるから、変更手段が変更する対象は「プレイヤが獲得したゲームアイテムデータ」である●(省略)●ではない。さらに、被告は、「変更手段」は同一種類であると判断されたゲームアイテムデータを複数保有することなく変更するものと解されるとして、被告ゲームプログラムがこれに当たらないと主張する。しかしながら、被告ゲームプログラムは、同一種類のツムを別々に複数保有するものではない。
(被告の主張)
⑴ 判断手段が同一種類でないと判断した場合
被告ゲームプログラムが「判断手段」(構成要件2A⑶)を有しないこと、●(省略)●が「ゲームアイテムデータ」に該当しないこと、●(省略)●が
5 「前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータ」に該当しないこと、
以上は上記10~12記載のとおりである。
⑵ 判断手段が同一であると判断した場合
被告ゲームプログラムが「判断手段」(構成要件2A⑶)を有しないことは、上記12記載のとおりである。また、被告ゲームプログラムのツムに係るスキルレベルは、「ゲームアイテムデータ」(構成要件2A⑷)に該当しない。構成要件2A⑵ないし⑷の文言を前提とすると、「取得手段」が取得するのは、ユーザーが購入手続を行って●(省略)●であり、「判断手段」が判断する対象や「変更手段」が変更する対象も同様である。さらに、「変更手段」は、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータを複数保有している状態とすることなく変更するものと解すべきである。そして、被告ゲームプログラムは、同一種類のツムを複数保有するから、上記変更手段を充足しない。
14 争点2-5(被告ゲームプログラムは「同一種類であると判断された前記ゲー
ムアイテムデータを…前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」(構成要件2B)といえるか)
(原告の主張)
被告ゲームプログラムのツムに係るスキルレベルが「ゲームアイテムデータ」に該当することは、上記13記載のとおりである。そして、スキルレベルを上昇させるのに必要なツムの累計獲得数は決まっており、スキルレベルは●(省略)●の累計獲得数に応じて変更されるのであるから、被告ゲームプログラムが「累計獲得数に応じて変更」(構成要件2B)する構成を有することは明らかである。スキルチケットを使用すると、単にその分だけ●(省略)●を獲得しなくてもよいというだけであって、当該構成は付加的なものであるにすぎず、スキルレベ
5 ルと●(省略)●の累計獲得数との間に一定の関係があることは明らかである。
また、上記構成要件を「累計獲得数のみに応じて変更する」と限定解釈すべき根拠もない。そして、構成要件2Bの文言は、「判断手段が同一種類であると判断した場合…変更する」と記載されているにとどまり、必ず変更するとは記載されていない。
(被告の主張)
被告ゲームプログラムのツムに係るスキルレベルが「ゲームアイテムデータ」に該当しないことは、上記13記載のとおりである。また、構成要件2Bの「累計獲得数に応じて変更する」とは、少なくとも、「累計獲得数と一定の関係をもって変更する」ことを意味するものと解される。これに対し、被告ゲームプログラムは、●(省略)●したがって、被告ゲームプログラムは、本件発明2の「ゲームアイテムデータを…累計獲得数に応じて変更する」を充足しない。さらに、上記と同様の理由により、被告ゲームプログラムは、「判断手段が同一種類であると判断した場合…変更する」ものとはいえない。
15 争点2-6(被告ゲームプログラム及びこれを記憶したサーバ装置が「ゲーム
プログラム」(構成要件2C)及び「情報処理装置」(構成要件2A)といえるか)
(原告の主張)
被告ゲームプログラム及びこれを記憶したサーバ装置は、「ゲームプログラム」及び「情報処理装置」に該当する。したがって、特許請求の範囲の記載及び本件明細書2によれば、被告主張の限定解釈をすることはできない。
(被告の主張)
本件発明2は、業務用ビデオゲーム機の分野におけるものであり、「ゲームプログラム」及び「情報処理装置」も、これを前提として解釈されるべきである。そして、被告ゲームプログラムは、業務用ビデオゲームに係るものではないから、
5 「ゲームプログラム」及び「情報処理装置」を充足しない。
16 争点2-7(乙6発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
⑴ 乙6発明1及び2による新規性又は進歩性欠如について
ア 新規性がないこと乙6文献は、以下の構成を有する乙6発明1及び2を開示しているから、本件発明2は、新規性の欠如により、特許を受けることができない。【2a】 コンピュータを、【2a⑴】 プレイヤに対応づけて、選手カードの種類、調子、守備力などのデータを記憶する記憶手段、【2a⑵】 前記プレイヤがショップで買い入れることにより獲得した選手カードの種類、調子、守備力などのデータを取得する取得手段、【2a⑶】 前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得した選手カードの種類、調子、守備力などのデータが、前記プレイヤに既に対応づけられている選手カードの種類、調子、守備力などのデータと同一種類であるか否かを判断する判断手段、【2a⑷】 前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得された選手カードの種類、調子、守備力などのデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記選手カードの調子のデータを向上させる向上手段、として機能させ、【2b】 前記向上手段は、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記選手カードの調子のデータを、
5 同一種類であると判断された前記選手カードの種類、調子、守
備力などのデータの前記プレイヤによる1日中の獲得ごとに向上させることを特徴とする、【2c】 乙6ゲームのプログラム。イ
(原告の主張)
について原告は、本件発明2の変更手段は、ゲームアイテムデータを、ゲームアイテムデータの「累計獲得数に応じて変更」するのに対し、乙6発明1及び2の変更手段は、選手カードの調子を、選手カードに係るデータの累計獲得数に応じて変更しない旨主張する。しかしながら、乙6文献の記載によれば、「調子」には、絶好調、好調、普通、不調、絶不調の5種類があり、乙6-6文献の「すでに所持している選手カードを獲得した場合は、その選手の調子が上がり」との記載における「調子が上がり」とは、現時点の調子から1段階ずつ上がると解釈するのが自然であるから、乙6発明1及び2は、本件発明2の構成要件2Bに相当する構成を有している。ウ 原告が主張する相違点があるとしても容易想到であること乙6発明1及び2の変更手段が「累計獲得数に応じて変更」するものであるかが不明であるとしても、パラメータを1段階ずつ上げるようにすることは、乙26-1~26-3文献に記載された周知技術(以下「周知技術1」という。)であるから、これを乙6発明に適用することで当業者が容易に想到できるというべきである。
⑵ 乙6発明3による進歩性欠如について
ア 乙6発明3が●(省略)●を有していないとしても、パラメータの変更方法は乙26-1~26-3文献のとおり種々のものがあり、その中から「調子」を1つずつ向上させるという周知技術1の構成を採用することは、容易に想到できる。
5 イ また、ある時点における獲得数の総量に基づいてパラメータの変更を行う
ことは、乙8発明や乙27-1~27-4文献に記載された周知技術(以下「周知技術2」という。)である。そして、周知技術2においては獲得したアイテムとパラメータが向上するアイテムに異同があるとしても、「累計獲得数に応じて変更」することが容易想到か否かだけが問題であるから、周知技術2を乙6発明3に適用することによって、上記相違点は、当業者において容易に想到できるというべきである。
(原告の主張)
⑴ 乙6発明1及び2による新規性又は進歩性欠如について
ア 新規性がないとはいえないこと本件発明2の変更手段は、ゲームアイテムデータを、ゲームアイテムデータの「累計獲得数に応じて変更」するのに対し、乙6文献からは、現時点の調子が1段階ずつ上がることが開示されていると認めることはできないから、乙6発明の変更手段は、選手カードの調子を、選手カードに係るデータの「累計獲得数に応じて変更」しない。したがって、本件発明2は、乙6文献に開示された乙6発明と同一であるとはいえない。イ 容易想到であるとはいえないこと被告は、パラメータを1段階ずつ上げるようにすることは、乙26-1~26-3文献に記載された周知技術(周知技術1)であると主張するが、乙26-1~26-3文献に記載された技術は、単にパラメータが段階的に設定されているというものであり、同一種類のアイテムデータを取得した場合にそのアイテムデータを累計獲得数に応じて変更する技術ではない。また、乙6発明1及び2は、乙6発明3と同一のゲームに係る発明であるから、乙6文献に開示されていない事項は、乙6発明3に開示されている具体的な構成により認識されることになる。そして、乙6発明3は、●(省略)
5 ●というものであり、これに周知技術1を適用し、「調子」を1段階ずつ段
階的に上げていく構成にする動機付けがなく、かえって、●(省略)●という乙6発明3の技術的意義を失わせるから、阻害要因がある。
⑵ 乙6発明3による進歩性欠如について
被告は、ある時点における獲得数の総量に基づいてパラメータの変更を行うことは、乙27-1~27-4文献に記載された周知技術(周知技術2)である旨主張するが、乙27-1~27-4文献に記載された技術は、アイテムの獲得数に応じて別のアイテムのパラメータが変更されるというものであり、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータのパラメータを変更させるという構成を開示していない。仮に周知技術2が認められるとしても、上記⑴と同様、乙6発明3には、選手の調子を「累計獲得数に応じて変更する」という動機付けはなく、かえって、周知技術2を適用し、そのような変更を行うことは、乙6発明3の上記技術的意義を損なうという阻害要因が存在する。
17 争点2-8(乙7発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
⑴ 新規性がないこと
乙7文献は、以下の構成を有する乙7発明を開示しているから、本件発明2は、新規性の欠如により、特許を受けることができない。【2a】 ニンテンドーDSを、【2a⑴】 プレイヤに対応付けて、持っているソウルの種類、個数及びレベルを記憶する記憶手段、【2a⑵】 プレイヤが購入したゲームソフトをプレイすることにより入手したソウルの種類を取得する取得手段、【2a⑶】 入手したソウルと同一種類のソウルを既に持っているか判断する判断手段、
5 【2a⑷】 入手したソウルと同一種類のソウルを未だ持っていないと判断さ
れた場合、当該ソウルを新たに入手する入手手段、【2b】 入手したソウルの種類が「スケルトン・ボーイ」であり、同一種類の「スケルトン・ボーイ」を既に4個持っている場合(5個集まった場合)には、そのレベルをカツカレーにアップし、既に8個持っている場合(9個集まった場合)には、そのレベルをナンカレーにレベルアップするレベルアップ手段、として機能させる【2c】 乙7ゲームのゲームプログラム。
⑵
(原告の主張)
についてア 原告は、乙7発明は、①前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断し、②前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、③前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更するという一連の構成を有しない旨主張する。しかしながら、乙7発明は、入手したソウルと同一種類のソウルを既に持っているか判断し(上記①)、入手したソウルと同一種類のソウルを未だ持っていないと判断された場合、当該ソウルを新たに入手し(上記②)、入手したスケルトン・ボーイを既に4個持っている場合には、そのレベルをカツカレーにアップ(上記③)するものであり、上記一連の構成と何ら相違するところはない。イ 原告は、本件発明2の取得手段が金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータを取得するものである一方、乙7発明のソウルはゲーム実行の過程で獲得されるものにすぎず、金銭の支払に対応していない旨主張する。
5 しかしながら、本件発明2の「金銭の支払に基づき」とは、その支払とゲ
ームアイテムの取得に任意の因果関係があれば足りるのであり、乙7発明のソウルも金銭の支払によりゲームソフトを購入しなければ入手できないのであるから、「金銭の支払に基づき」獲得したゲームアイテムデータである。
⑶ 原告が主張する相違点があるとしても容易想到であること
ア 仮に前記⑵イの相違点が認められるとしても、武器等のアイテムを有償の抽選で取得できるゲームは、乙32-1及び乙32-2文献に記載された周知技術にすぎず、乙7発明のソウルを有償の抽選で取得するようにすることは、当業者であれば容易に想到できた事項にすぎない。イ また、仮に上記⑵イの相違点が認められるとしても、乙7発明は、少なくとも武器、防具、装飾といった装備品がショップで販売されているから、ソウルをショップで販売するようにすることは容易に想到できる。ウ さらに、仮に上記⑵イの相違点が認められるとしても、ゲーム運営者が収益を上げるための様々な課金方法が周知であるから、乙7発明に周知の課金方法を適用しようとすることは、当業者にとって当然の試みである。
(原告の主張)
⑴ 新規性がないとはいえないこと
ア 本件発明2の変更手段は、①前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断し、②前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、③前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更するという一連の構成を備えるのに対し、乙7発明は、乙7ゲームが、ゲームをプレイする際にその都度外部のサーバとデータの授受がされ
5 ないことから、プレイヤがゲームを開始した時点で既に全てのソウルに係る
データがプレイヤに対応づけられて保持されており、プレイヤがソウルを獲得した場合に、既に登録されているソウルの個数を1上げる処理を実行しているにすぎず、獲得されたソウルが既に対応付けられているソウルに係るデータと同一種類であるか否かを判断した上で、当該データをプレイヤに対応づけて登録したり、既に記憶されているソウルに係るデータを変更したりする構成を開示しているわけではない。イ また、本件発明2の取得手段は、金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータを取得するものであり、「金銭の支払に基づき」とは、「ゲームアイテムデータ」が「金銭の支払に起因」して獲得されているという意味をいうのに対し、乙7発明は、ゲームソフトの購入に当たって金銭を支払うものの、ゲーム実行の過程でソウルを獲得しているにすぎず、個別のソウルの獲得が上記金銭の支払に対応するものではない。ウ したがって、本件発明2は、乙7文献に開示された乙7発明と同一であるとはいえない。
⑵ 容易想到であるとはいえないこと
ア 被告は、武器等のアイテムを有償の抽選で取得する構成とすることは容易である旨主張するが、乙7発明は、インターネット接続を前提としないゲームであり、アイテム課金の方式を実装すること自体が想定されていないから、当該構成を採用する動機付けがない。かえって、当該構成を採用すれば、経済的対価を支払えば直ちにソウルを入手できることになり、ゲームの趣向性やプレイヤの満足度を損なうことになるから、そのような変更には阻害要因がある。イ 被告は、乙33文献に基づき、ソウルをショップで販売することは容易想到である旨主張するが、乙33文献はゲーム内の架空の通貨を用いて装備品を購入するというものにすぎず、「金銭の支払」に基づいて装備品を購入す
5 る構成を開示していない。また、上記アのとおり、乙7発明には、ソウルを
ショップで購入する構成とする動機付けはなく、かえって、そのような変更には明確な阻害要因がある。ウ 被告は、乙7発明に周知の課金方法を適用しようとすることは容易である旨主張するが、乙7発明は、ゲームソフトの販売により収益を図るものであるから、それ以外に収益向上を目的として周知の課金方法を適用する動機付けはない。
18 争点2-9(乙8発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
⑴ 乙8発明の構成
乙8公報は、以下の構成を有する乙8発明を開示している。【2a】 ゲーム機本体100を、【2a⑴】 プレイヤに対応付けて、自キャラクタが装備する武器の種類及びその残り弾数を記憶する記憶手段、【2a⑵】 プレイヤが入手した武器の種類を取得する取得手段、【2a⑶】 入手した武器が自キャラクタが装備している武器と同じ武器であるかを判別する判別手段、【2a⑷】 異なる武器であるときには、自キャラクタの武器を当該敵キャラクタから離脱した武器に切り換え、自キャラクタの装備武器とする切替手段、【2a⑸】 同じ武器であるときには、当該敵キャラクタから離脱した武器の弾数を、記憶手段にプレイヤに既に対応付けて記憶されている自キャラクタの武器の弾数に加算した弾数を自キャラクタの弾数とする加算手段、として機能させる、【2c】 乙8ゲームのプログラム。
⑵ 相違点
5 原告主張の相違点は争わない。しかしながら、乙8発明は、1体の敵キャラ
クタを倒して1つ目の武器を奪取すると、弾数が1回加算され、更にもう1度同じ武器を奪取すると、弾数が更に1回(合計2回)加算されるといったように、武器の累計奪取数に応じて弾数が加算される回数が変わるところ、加算される回数が変われば、加算される弾数の合計数も変わる。これは、ゲームアイテムデータの変更(弾数の加算回数ないし加算される弾数の合計数)が、ゲームアイテムデータの累計獲得数(武器の累計奪取数)に応じて行われるという後記
(原告の主張)
⑴ア記載の相違点に係る構成に相当するから、当該相違点
は実質的な相違点ではない。
⑶ 実質的な相違点であるとしても容易想到であること
ア 後記
(原告の主張)
⑴ア記載の相違点について
(ア) 乙8文献の段落【0058】には、「倒した敵キャラクタ…の数などに応じて得点を獲得させ」との記載があり、得点も武器の弾数も敵キャラクタを倒した時に獲得される点で共通するから、当該記載を示唆として、倒した敵キャラクタの数に応じて武器の弾数を加算するようにすることは、当業者であれば容易に想到できた事項にすぎない。(イ) 乙7発明のスケルトン・ボーイは、5個集めるとカツカレーにレベルアップし、9個集めるとナンカレーにレベルアップするという構成を有する。そして、乙8発明と乙7発明は敵を倒すことによってアイテムを入手できるゲームであるという点で技術分野及び作用・機能が共通している上、乙7文献の記載を踏まえると、ユーザーに収集欲を沸かせるために乙7発明を乙8発明に適用する動機付けがある。そうすると、乙7発明を乙8発明に適用することで、同一の武器を集めた個数(累計獲得数)に応じて武器のレベルをアップさせるという上記相違点に係る構成に到達するから、上記相違点は、乙7発明の適用により容易に想到できた事項にすぎない。(ウ) 仮に本件発明2の累計獲得数が、ある時点における獲得数の総量を意味
5 するとしても、ある時点における獲得数の総量に基づいてパラメータの変
更を行うことは周知技術(周知技術2)であるから、乙8発明において、武器を1個獲得するたびに変更処理を行うか、あるいは、武器の奪取総量が所定値になるたびに変更処理を行うかは適宜選択すればよい事項であり、当業者が容易に想到できるというべきである。イ 後記
(原告の主張)
⑴イ記載の相違点について
武器等のアイテムを有償の抽選で取得できることは、乙32-1及び乙32-2文献に記載された周知技術にすぎないから、乙8発明における武器を有償の抽選で取得するようにすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。
(原告の主張)
⑴ 相違点
ア 本件発明2の変更手段は、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更するのに対し、乙8発明では、そのような構成を有するか否かが不明である点が相違点である。この点につき、被告は、上記相違点が実質的な相違点ではない旨主張するが、本件発明2の累計獲得数は、ある時点における獲得数の総量に基づくのに対し、乙8発明の武器を1個奪取するたびに弾数を1回加算するという構成は、単に個々の武器の獲得に基づく変更処理にすぎず、ある時点における獲得数の総量に基づくものではない。イ 本件発明2の取得手段が金銭の支払に基づき獲得したゲームアイテムデータを取得するものである一方、乙8発明の奪取した武器の種類及びその残り段数は金銭の支払に対応していない点が相違点である。
⑵ 容易想到であるとはいえないこと
ア 前記⑴ア記載の相違点について
5 (ア) 被告は、乙8文献の段落【0058】の記載を示唆として、倒した敵キ
ャラクタの数に応じて武器の弾数を加算するようにすることは容易に想到できると主張するが、敵キャラクタを倒した数に応じて得点を獲得することが、武器の弾数を加算することに対する示唆になる理由付けは不明である。(イ) 被告は、乙8発明に乙7発明を適用することによって、容易想到であると主張するが、単に技術分野や作用・機能が共通しているだけでは動機付けがあることにはならない。また、乙8発明の武器の弾数は単に消費した分を充填することを前提とする個数にすぎないのに対し、乙7発明のソウルのレベルは個数に応じて変化するソウルの能力に関わるものであるから、変更される対象が全く異なる性質のものである。さらに、アイテムを切り換えることを前提とする乙8発明の武器に、切換えを前提としない乙7発明のソウルを組み合わせることは容易に想到し得ない。のみならず、乙8発明は敵キャラクタが使用することにより武器の特性を認識して入手させるものであり、乙8発明と乙7発明は、敵キャラクタによるアイテムの使用状況をプレイヤに認識させてプレイヤの判断に基づきそのアイテムを獲得させるのか、あるいは、敵キャラクタのアイテムを自動的に一定確率で獲得させるのかという点で、その技術内容を大きく異にしている。しかも、プレイヤの判断を経ることなく自動的にアイテム(ソウル)を取得する乙7発明の仕様は、プレイヤがアイテムの特性や威力を視覚的に認識した上で取得の有無を判断し、より効果的な武器を必要に応じて入手し、又は不用意に敵キャラクタの武器を取得してしまうことを防止するという乙8発明の目的自体に反するから、乙8発明に乙7発明を適用する阻害要因がある。イ 前記⑴イ記載の相違点について被告は、乙8発明に武器の獲得をアイテム課金方式に変更するという周知
5 技術を適用することにより、容易想到である旨主張する。しかしながら、武
器の獲得をアイテム課金方式に変更することは、乙8発明や乙32-1及び32-2文献に何らの記載も示唆もない。また、乙8発明は、プレイヤのプレイ(戦闘)が報酬(武器)と密接に関連することによって、ゲームの面白さや達成感を得ることができるものであるところ、乙8発明の武器をアイテム課金方式の抽選で取得するよう変更することは、どのような武器を入手するかを判断できないことになり、乙8発明の機能を損なうことになるから、そのような変更には阻害要因がある。
19 争点2-10(乙39発明を主引例とする無効事由の有無)
(被告の主張)
⑴ 乙39発明の構成
乙39文献は、以下の構成を有する乙39発明を開示している。【2a】 コンピュータを、【2a⑴】 プレイヤに対応づけて、パイロットの種類及び基本パラメータを記憶する記憶手段、【2a⑵】 基本料金の支払いによってゲーム開始時にプレイヤに与えられるチケットや、プレイヤが追加購入したチケットとの交換により、前記プレイヤが入手したパイロットを取得する取得手段、【2a⑶】 前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したパイロットが、前記プレイヤに既に対応づけられているパイロットと同一種類であるか否かを判断する判断手段、【2a⑷】 前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたパイロットの種類及び基本パラメータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断されたパイロットを
5 複数保有している状態とするとともに、当該パイロットの基本パ
ラメータを向上させる向上手段、として機能させる、【2c】 ゲームプログラム。
⑵ 相違点
ア 本件発明2は、判断手段により同一種類であると判断された場合、記憶手段にプレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータを、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更するのに対し、乙39発明では累計獲得数に応じて変更されるかどうかが不明である点が相違点である。しかしながら、乙39発明は、プレイヤがパイロットを複数回入手可能であり、同一種類のパイロットを複数回入手することが発生し、同一種類のパイロットを入手する度に基本パラメータを向上させる。そして、同一種類のパイロットを入手した回数(すなわち累計入手数)に応じて基本パラメータが向上する回数が変わることは、ゲームアイテムデータの変更(基本パラメータの向上回数ないし総向上量)が、ゲームアイテムデータの累計入手数(同一種類のパラメータを入手した回数)に応じて行われるという上記相違点に係る構成に相当するから、当該相違点は実質的な相違点ではない。イ 原告は、乙39発明が「プレイヤが既に対応づけられているゲームアイテムデータ」と同一種類であるか判断することなく、獲得されるゲームアイテムデータを一旦全て記憶手段に「登録」し、その後に、プレイヤが複数の同一の「パイロット」を保有している場合には、何らかの処理をして、その「パイロット」の基本パラメータを向上させているにすぎない旨主張する。しかしながら、「複数」であることを条件として基本パラメータが向上するのであるから、乙39発明において、取得したパイロットが取得済のパイロットと同一種類であるか否かを「判断」していることに変わりはない。
5 また、本件発明2において、同一のゲームアイテムデータを複数保有する
状態となるか否かについて何ら特定されておらず、構成要件2A⑷は、同一種類であると判断された場合、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータをプレイヤが保有するものとして記憶手段に記憶する態様と、そうでない態様との両方を包含しているのであるから、乙39発明が同一種類であると判断されたパイロットを複数保有している状態とするとしても、それが本件発明2との相違点とはならない。
⑶ 実質的な相違点であるとしても容易想到であること
ア ある時点における獲得数の総量に基づいてパラメータの変更を行うことは、乙8発明又は乙27の1ないし乙27の4から認定される周知技術(周知技術2)であるから、同一のパイロットを所定数獲得した場合に基本パラメータを変更する構成を、「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて」とすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。イ 乙7発明のスケルトン・ボーイは、5個集めるとカツカレーにレベルアップし、9個集めるとナンカレーにレベルアップするという構成を有するから、上記相違点は、乙7発明を乙39発明に適用することにより容易に想到できた事項にすぎない。
(原告の主張)
⑴ 相違点
乙39文献には、同一パイロットを複数持っていると基本パラメータが向上するとアナウンスされているとの記載しかなく、乙39発明は、プレイヤがゲームアイテムデータを獲得する場合、「プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータ」と同一種類であるか否かを判断することなく、獲得されるゲームアイテムデータを一旦全て記憶手段に「登録」し、その後に、プレイヤが複数の同一の「パイロット」を保有している場合には、何らかの処理をし
5 て、その「パイロット」の基本パラメータを向上させているにすぎない。
そのため、本件発明2と乙39発明には、被告が自認する相違点に加え、以下の相違点がある。本件発明2の変更手段は、①前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断し、②前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、③前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更するという一連の構成を備えるのに対し、乙39発明では、プレイヤがパイロットを獲得すると、「プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータ」と同一種類であるか否かを判断することなく、取得されるゲームアイテムデータを記憶手段に「登録」し、その後に、プレイヤが複数の同一の「パイロット」を保有している場合には、何らかの処理により、その「パイロット」の基本パラメータを向上させており、上記一連の構成を備えていない点。
⑵ 相違点が容易想到ではないこと
ア 上記⑴記載の相違点について上記⑴記載の相違点は、被告主張の周知技術によって埋めることはできないから、当業者にとって容易想到ではない。イ 被告主張の相違点について(ア) 被告が周知技術2の根拠とする乙27の1ないし乙27の4は、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータを変更する構成を開示するものではないから、これらに基づく何らかの周知技術を乙39発明に適用して、被告主張の上記相違点を埋めることはできない。また、被告主張の上記相違点に係る構成は、乙39発明のゲームには最
5 終的に実装されなかったから、同一種類のパイロットを複数枚獲得した場
合にパラメータを向上させる構成は、技術的な観点又はゲーム性の観点から、好ましくないと判断されたことが合理的に推認される。そして、当該事実以外に、乙39発明と、被告主張の上記周知技術を組み合わせる動機付けを示唆等する記載も一切存在しないのであるから、乙39発明に上記周知技術を組み合わせることはできない。(イ) 被告は、乙39発明に乙7発明を適用することによって、容易想到である旨主張するが、適用できることの論理付けは明らかにされておらず、失当である。
20 争点2-11(サポート要件違反)
(被告の主張)
⑴ 本件発明2が発明の詳細な説明に記載されていないこと
ア 本件発明2の「ゲームアイテム」という用語は本件明細書2に記載がない一方、「アイテム」とは、段落【0025】【0041】の記載によれば、操作の対象となる媒体、すなわち有体物に限られることになる。これに対し、被告ゲームプログラムにおけるツムが本件発明2の「ゲームアイテム」に該当する旨の
(原告の主張)
を前提とすると、「ゲームアイテム」は無体物を包含することになるものの、そのようなことは、発明の詳細な説明には一切記載がない。イ 本件発明2の構成要件2A⑵の「取得手段」は、発明の詳細な説明には記載されておらず、特に「獲得」及び「取得」と、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明瞭である。また、本件発明2の構成要件2A⑶及び2A⑷前段では、取得したゲームアイテムデータがプレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類でないと判断した場合、取得されたゲームアイテムデータをプレイヤに対応付けて記憶手段に登録することが特定されているが、そのよう
5 な判断や登録について発明の詳細な説明には記載がない。
さらに、本件発明2の構成要件2A⑶、2A⑷後段及び2Bでは、同一種類であると判断した場合、同一種類であると判断されたゲームアイテムデータを、そのプレイヤによる累計獲得数に応じて変更することが特定されているが、そのような判断や変更について発明の詳細な説明には記載がない。ウ 本件発明2における「情報処理装置」という用語は本件明細書2には記載がない。また、本件発明2の「プログラム」に関し、本件明細書2には、「大型パネル制御部36」の「CPU42」によって実行される「制御プログラム」と、「端末装置16」の「CPU62」によって実行される「制御プログラム」とが記載されているが、いずれの「制御プログラム」が本件発明2における「プログラム」に対応するのかが不明瞭である。
⑵ 本件発明2の課題を解決できると認識することができないこと
ア 本件発明2の課題は、有体物としてのカード(操作媒体)を前提とし、カードを、使用感が残らないよう未使用のまま観賞用あるいは交換や売買等の取引用として保管したいという心理と、遊戯上の効果が高いカードをゲームに使用したいという心理のいずれか一方を犠牲にせざるを得ないこと、また、大量のカードを遊戯施設まで持ち歩かなければならないことであり、本件発明2は、当該課題を解決する手段として、代替操作媒体という新たな概念を導入するものである。しかしながら、代替操作媒体は、特許請求の範囲には一切記載なく、課題を解決するための手段が本件発明2に反映されておらず、当業者において課題を解決できると認識することができない。また、無体物が「ゲームアイテム」に含まれるとする
(原告の主張)
によれば、無体物たる「ゲームアイテム」においては、上記課題が生じ得ないことからすると、本件発明2は上記課題を認識し得ない構成を包含している。イ 本件発明2の課題を「獲得済みの選手カード20が払い出される時であっ
5 ても、遊戯者に一定の満足感を提供すること」と認定したとしても、本件発
明2の構成要件2A⑷は、ゲームアイテムデータをどのように変更するのか特定しておらず、遊戯者にとって不利にゲームアイテムデータを変更するという課題を解決し得ない態様をも包含しており、当業者において当該課題を解決できると認識することができない。
(原告の主張)
⑴ サポート要件を満たすこと
本件発明2は、既に獲得済みの選手カード20が払い出される時であっても、遊戯者に一定の満足感を提供するという課題を解決する(段落【0138】)ものであるところ、本件明細書2の記載(段落【0136】【0138】)によれば、本件明細書2には、本件発明2の発明特定事項である前記各構成要件の構成がいずれも記載されており、当該構成によって、本件発明2の課題を解決できるものと認識可能である。
⑵
(被告の主張)
に対する反論ア 本件発明2が発明の詳細な説明に記載されていること本件発明2の「ゲームアイテムデータ」が物品(有体物)に係るデータに限定されないことは、本件明細書2の段落【0025】【0028】【0032】【0138】等の記載から明らかである。また、構成要件2A⑵の「取得手段」は段落【0136】に明記されており、「獲得」はプレイヤが獲得し、また、「取得」は情報処理装置が取得することをいう旨が段落【0138】【0144】【0164】【0166】等に記載され、その対応関係は明確である。そして、構成要件2A⑶及び2A⑷前段に対応する構成は段落【0136】に明記され、構成要件2A⑶、2A⑷後段及び2Bに対応する構成は段落【0136】【0138】に明記されている。さらに、段落【0138】の「その排出率の高さから繰り返し同様のノーマルカードを獲得することでレアカードと同等のパラメータ値
5 となるように構成することができる」との記載を併せて読めば、段落【01
38】が「同様」(=同一種類)の選手カードが排出された場合におけるパラメータの変更処理の方法を開示していることは明らかである。また、「情報処理装置」は「ゲーム装置」として開示されている。そして、「プログラム」がその「ゲーム装置」上で処理されるプログラムであることは、技術常識である。イ 本件発明2の課題を解決できると認識することができること被告主張の課題は、本件発明2の親出願に係る発明に対応するものであり、本件発明2に対応する課題や解決原理を記載したものではない。そして、本件明細書2の段落【0138】には、遊戯者に一定の満足感を提供することが可能であると規定されているから、仮に不利になるようゲームアイテムデータが変更されたとしても、なお課題を解決できることは明らかである。
21 争点2-12(新規事項追加違反)
(被告の主張)
⑴ 補正要件違反
平成26年5月29日付け手続補正書(乙9)による補正後の請求項1の判断手段(構成要件2A⑶に対応)及び更新手段(同2A⑷に対応)、請求項3の同一種類であると判断された場合に累計獲得数に応じて変更する構成(同2Bに対応)は、本件発明2の出願当初の明細書等(乙19。以下「本件当初明細書等」という。)に記載されたものではないから、上記補正書による請求項1及び3の補正は新規事項を追加するものである。また、平成26年8月14日付け手続補正書(乙11)による補正後の請求項2のうち、ゲームアイテムデータ、取得手段(構成要件2A⑵)、同一種類でないと判断された場合に登録する構成(同2A⑶及び2A⑷前段)、同一種類であると判断された場合に累計獲得数に応じて変更する構成(同2A⑶、2
5 A⑷後段及び2B)は、本件明細書2に記載されたものではないことは、上記
20記載のとおりであるから、上記補正書による請求項2の補正は新規事項を追加するものである。したがって、本件特許2は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした出願に対してなされたものであり、同法123条1項1号に該当する無効事由がある。
⑵ 訂正要件違反
本件訂正に係る「金銭の支払に基づき」との構成は、本件当初明細書等に記載されていない。この点につき、段落【0125】には「コインの投入及びクレジットの投資」との記載があるが、「金銭の支払」との関係が説明されていない。仮に「コインの投入及びクレジットの投資」が金銭の支払いを意味するとしても、段落【0125】には「ゲーム実行の準備がなされる」との記載があるだけで、「ゲームアイテムデータ」を獲得することは記載されていない。したがって、本件特許2は、特許法126条5項に規定する要件を満たしていない訂正によるものであり、同法123条1項8号に該当する無効事由がある。
(原告の主張)
⑴ 補正要件違反
本件当初明細書等には上記20で言及した各記載があり、原告指摘の事項はいずれも記載されているから、補正要件違反はない。
⑵ 訂正要件違反
本件明細書2には、選手カード20(=キャラクタデータ)を獲得するために、プレイヤが「新たなコインの投入およびクレジットの投資」をすることが記載されている(段落【0125】)。そして、業務用ビデオゲーム機の分野において、「コイン」は100円玉や500円玉を意味し、「クレジット」は、ゲーム開始前に100円玉や500円玉をゲーム機に予め投入して貯めてお
5 き、その貯めた金額分をプレイ料金として利用できる仕組みを意味するから、
「コインの投入およびクレジットの投資」が「金銭の支払」を意味することは明らかである。さらに、本件明細書2の【図19】から明らかなとおり、「新たなコインの投入およびクレジットの投資」に基づいて、ゲームを開始・終了すると、新たに選手カード20のキャラクタデータ(ゲームアイテムデータ)が追加されたり(段落【0136】)、そのキャラクタデータのパラメータが変更されたりすることが記載されているから(段落【0138】)、「新たなコインの投入およびクレジットの投資」に基づいて「ゲームアイテムデータ」を獲得することが本件明細書2に記載された事項であることは明らかである。したがって、本件訂正に係る訂正事項は、本件当初明細書等の記載事項の範囲内(特許法126条5項)である。
22 争点2-13(明確性要件違反)
(被告の主張)
⑴ 「ゲームアイテムデータ」という用語は、一般的な技術用語ではなく、明細
書にも定義がない。そして、「ゲームアイテムデータ」は、特許請求の範囲において複数の箇所で用いられているものの、これが同一のものを指すのか否かが明らかではない。
⑵ プログラムは、RAMに記憶され、1台の装置のCPUによって処理(実行)
されるというのが技術常識であるところ、複数の装置によって実行される本件発明2の「プログラム」とは、いかなるものであるか不明確である。
⑶ 「前記プレイヤが獲得したゲームアイテムデータ」を、前記プレイヤが観念
的に獲得したゲームアイテムデータであるとする原告主張の解釈を前提とすると、「観念的に」に該当するか否かの外縁が定まらず、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
⑷ 「前記プレイヤが獲得したゲームアイテムデータを取得」における「獲得」
と「取得」は、その文言上、プレイヤにおいてゲームアイテムデータを獲得す
5 ることが先行することが明確に特定されている。このような特許請求の範囲の
記載にもかかわらず、「獲得」より「取得」が先行したり、又はこれらが同時に行われたりするとは、技術的に理解できないから、原告主張の解釈を前提とすると、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確となる。
⑸ 「金銭の支払」がどのタイミングで行われるのか不明であり、その発明の外
縁が不明確であるから、第三者に不測の不利益を及ぼすことは明らかである。
⑹ したがって、本件特許2は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たし
ておらず、同法123条1項4号に該当する無効事由がある。
(原告の主張)
⑴ 「ゲームアイテムデータ」とは、「位置検出データ」、「角度検出データ」、
「キャラクタデータ」、「固有操作媒体データ」、「所有権情報」、「カード獲得数情報」等をいうから(段落【0025】【0028】【0032】【0138】)、その概念は明確である。本件発明2の特許請求の範囲の「ゲームアイテムデータ」も、これらに該当するデータの一部又は全部を指すことが明らかであって、これらの情報が特許請求の範囲の中で同一にならない部分があるとしても、「ゲームアイテムデータ」という上位概念に属する情報であるから、そのような用語の使用方法に何ら不統一な点ではない。
⑵ 「プログラム」の意義が明確であることは、上記20記載のとおりである。
⑶ 「獲得したゲームアイテムデータを取得する」とはプレイヤが観念的に獲得
することになったゲームアイテムデータをサーバ装置2が取得することを意味しており、当業者であれば当然に理解可能である。また、原告は「獲得」より「取得」が先行する態様を包含するという主張をしておらず、
(被告の主張)
は前提を誤るものである。
⑷ 「金銭の支払」のタイミングは特定されていないから、他の構成要件を充足
する限り、任意のタイミングでよい。
5 ⑸ よって、本件発明2が不明確であるとはいえない。
23 争点2-14(実施可能要件違反)
(被告の主張)
本件明細書2の発明の詳細な説明は、複数の装置によって処理される「プログラム」を作成できる程度に記載されたものではないから、実施可能要件に違反する。
(原告の主張)
争う。
24 争点3(損害額)
(原告の主張)
被告は、被告ゲームシステム及び被告ゲームプログラムにより、令和3年5月30日から現在まで、575億円を下らない売上げを上げ、230億円の利益を得ている。そして、実施料率は3%を下らないから、この期間における実施料相当額は17億2500万円である。また、被告は、被告ゲームシステム及び被告ゲームプログラムにより、本件特許2の登録日である平成26年10月3日から本件訴訟提起の3年前の日である令和3年5月30日までの期間において、2678億円を下らない売上げを上げ、その実施料率は3%を下らないから、実施料相当額である80億3400万円を不当に利得した。なお、弁護士及び弁理士費用の相当額は上記記載の損害額及び利得額の10%である。
(被告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
被告ゲームシステムは、本件発明1の構成要件を充足しないから、本件発明1の技術的範囲に属するものとはいえず、その余の争点を判断するまでもなく、本
5 件発明1に関する原告の請求は理由がない。また、被告ゲームプログラムは、本件発明2の構成要件を充足しないから、本件発明2の技術的範囲に属するものとはいえないほか、本件発明2は、乙6発明及び乙39発明に基づき進歩性を欠くものといえる。その理由は、次のとおりである。
1 本件発明1の内容証拠(甲2)によれば、本件明細書1には、次のとおりの記載があることが認められる。
⑴ 技術分野「本発明は、ゲームシステムおよびゲームプログラムに関する。」(段落【0001】)
⑵ 背景技術「従来、ネットワーク上に仮想的な遊技場を開設して遊技者に提供するというサービスが行われている。サービスを利用する遊技者は、端末装置を用い、必要な支払い(現金の支払いの他、メダル、コイン、トークン(代用硬貨)による支払い、電子マネー、店舗等が発行するポイント等の電子的決済、クレジット決済など、経済的価値が化体した物のやり取りによって成立するあらゆる支払い形態を含む)をし、遊技価値を有するアイテム(例えば仮想的なメダル)と交換し、その遊技価値アイテムと引き換えに端末装置で遊技することができる…」(段落【0002】)
⑶ 発明が解決しようとする課題「しかしながら、上述のごとき従来のサービスにおいては、遊技者が経済的価値化体物と交換した遊技価値アイテムと、遊技結果に基づいて獲得した遊技価値アイテムとに区別がないため、遊技者は、遊技結果で獲得した遊技価値アイテムのみを用いて遊技をし続けることができ、そのため、遊技が無料化してしまい、仮想的な遊技場を営業するものにとっては収益を生みづらいものとなってしまっていた。」(段落【0004】)
5 「そこで、本発明は、遊技結果により獲得した遊技価値アイテムを用いて遊技をし続けることができる場合におけるような、収益を生みづらい構造を改良したゲーム装置およびゲームプログラムを提供することを目的とする。」(段落【0005】)
⑷ 課題を解決するための手段「本発明に係るゲーム装置においては、第1の遊技価値アイテムと第2の遊技価値アイテムという複数種類の遊技価値アイテムが設定されている。これらのうち、第1の遊技価値アイテムは経済的価値化体物と交換可能なアイテムであって、例えば金銭を支払うことにより遊技者に付与されるのに対し、第2の遊技価値アイテムは遊技の結果に基づいて遊技者に付与されるアイテムであって、例えば遊技中の当選結果に応じた数量が遊技者に付与されるものとして設定されている。遊技の実行という点に関していえば、第1、第2の遊技価値アイテムのいずれを消費しても実行することが可能であるのに対し、外部サーバとの情報授受という点に関していえば、これら第1、第2の遊技価値アイテムは異なるものとして取り扱われる。すなわち、本発明において、制御手段は、サーバとの間で第2の遊技価値アイテムの数量情報を授受するが、第1の遊技価値アイテムについては情報授受を行わない。このように、制御手段がサーバとの間で第2の遊技価値アイテムに関する数量情報の授受を行い、当該数量情報を同期させることで、サーバとの間で、当該第2の遊技価値アイテムの受け渡し(例えば預け入れや引き出し)を実施することが可能となる。さらには、別のゲームソフト(アプリケーション)においても同様の構成を適用して第2の遊技価値アイテムの数量情報を共有できるようにすれば、これら別のゲームソフト(アプリケーション)間において、所定の条件を満たすことを前提に、
第2の遊技価値アイテムの共有化を図ることができる。」(段落【0008】)
「…ソフトが異なる毎に必要なアイテム入手のための課金を強いるのではなく、無料の共通化アイテム(第2の遊技価値アイテム)を使って当該別のゲ
5 ームソフト(アプリケーション)を遊技できるようにすれば、課金に関して二の足を踏む因子がなくなり、いわば別のゲームソフト(アプリケーション)間の垣根が取り払われた状態となり、遊技者(サービスを利用する側)にとっては新規なゲームソフトを体験する機会が増える。そうなれば、体験した遊技者に、有料であるとしても別のアイテム(第1の遊技価値アイテム)を入手したいという誘因を起こさせ、サービス提供側からすれば、実際にアイテムを購入してもらう機会が増大することを見込むことができる。」(段落【0010】)「…遊技者が第1の遊技価値アイテムと第2の遊技価値アイテムの両方を保有しながら遊技している場合に、第1の遊技価値アイテムを優先的に消費(利用)させることにより、サーバとの間で数量情報を授受することが不可となっているアイテム(第1の遊技価値アイテム)の方を先に消費させ、早い段階で、
第2の遊技価値アイテムのみが保有されている状態とすることができる。」
(段落【0011】)
⑸ 発明の効果「本発明によれば、遊技結果により獲得した遊技価値アイテムを用いて遊技をし続けることができる場合におけるような、収益を生みづらい構造を改良することができる。」(段落【0019】)
⑹ 発明を実施するための形態「…本実施形態の管理サーバ50には、各遊技者のID(システム利用者を識別するための符号)、ニックネーム、アイコン(各遊技者が選択したアイコン)、アクセス履歴、遊技価値アイテムの預け入れ数、各種ゲームの遊技履歴、遊技中のゲーム状況、各種設定(ゲームに共通の設定)、さらには独自の指標
5 (当該ゲームの習熟度を表すレベルや経験値など)等の各種情報が蓄積され、管理されている。」(段落【0027】) 【図2】「このゲーム装置10を含むオンラインゲームシステムにおいては、有料の遊技価値アイテムであるメダル(以下、課金メダルといい、符号Mcを付して表す)のほか、遊技の結果(例えばスロットに当選した場合など)に基づいて遊技者に付与される遊技価値アイテムである無料のメダル(以下、無料メダルといい、符号Mfを付して表す)を設定している。本実施形態では、これら2種類のメダルのうち、特定のメダル(本実施形態の場合、無料メダルMf)については、管理サーバ50への預け入れ、該サーバ50からの引き出しを可能としている。したがって、無料メダルMfに関していえば、当該メダルを管理サーバ50に預け入れ、引き出すことができる態様はさながら実在のメダル預け入れ機(メダルバンク)のようである。」(段落【0029】)「なお、画面内において、これら課金メダルMcおよび無料メダルMfは、互いが識別可能なように表示されていることが好ましい。こうすることで、遊技者に対して各種類のメダルの保有枚数を認識しやすくすることができる。互いが識別可能なようにするための表示手段は、例えば…また、課金メダルMcの表示領域と無料メダルMfの表示領域を区分けしておき、それぞれのメダルを各表示領域内にて表示することも好ましい(図4、図6参照)。」(段落【0030】)
5 「なお、このようなゲーム装置10およびゲームシステムにおいて、ゲーム中の遊技者が課金メダルMcと無料メダルMfの両方を保有しながら遊技している場合には、課金メダルMcの方を優先的に消費(利用)させるようにしてもよい(図6参照)。こうすることにより、管理サーバ50への預け入れが不可となっているメダル(課金メダルMc)の方を先に消費させ、早い段階で、預け入れ可能な無料メダルMfのみが保有されている状態とすることができる。また、仮想的な遊技場を営業するサービス提供側の立場からすれば、直接的な収益に繋がる課金メダルMcを先に消費してもらうことで収益向上を図りやすいという利点もある。」(段落【0036】)【図4】 【図6】
2 本件発明1に係る構成要件充足性(争点1-2及び争点1-3)⑴ 争点1-2(被告ゲームシステムは「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶する手段」(構成要件1B)を有するか)被告ゲームシステムにおいては、次のとおり、ゲーム実行ルビーが「第2の
5 仮想アイテム」に該当するところ、ゲーム実行ルビーと購入ルビー(無料ルビー)の「総量」を記憶するにとどまる場合であっても、ゲーム実行ルビーの「数量」を記憶するといえるかどうかが問題となる。ア 「第2の仮想アイテムの数量」の意義特許請求の範囲の記載によれば、構成要件1Bの「第1の仮想アイテム」とは、構成要件1Aにおいて「購入手続きを行なうことでユーザーに付与される」ものであると規定され、構成要件1Bの「第2の仮想アイテム」とは、構成要件1Aにおいて「ゲームの実行によりユーザーに付与される」ものであると規定されている。その上で、構成要件1Cは、ユーザーが「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」の両方を保有している場合、「第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる」と規定している。そして、本件明細書1には、「預け入れている無料メダルMfを引き出した遊技者は、当該メダルを使って遊技することができる」(段落【0035】)、「ゲームシステムにおいて、ゲーム中の遊技者が課金メダルMcと無料メダルMfの両方を保有しながら遊技している場合には、課金メダルMcの方を優先的に消費(利用)させる」ことによって、「直接的な収益に繋がる課金メダルMcを先に消費してもらうことで収益向上を図りやすい」(段落【0036】)という記載があることが認められる。上記構成要件の文言及び本件明細書1の記載によれば、課金メダルMcが「第1の仮想アイテム」に、無料メダルMfが「第2の仮想アイテム」に、それぞれ該当するものであり、「第1の仮想アイテム」(課金メダルMc)を優先的に消費させるには、「第1の仮想アイテム」(課金メダルMc)と「第2の仮想アイテム」(無料メダルMf)をそれぞれ区別してその総量を記憶しておく必要があることからすると、構成要件1Bにいう「第2の仮想アイテムの数量」は、「第2の仮想アイテムの総量」を意味するものと解す
5 るのが相当である。イ 被告ゲームシステムの充足性(ア) 被告ゲームシステムの構成(弁論の全趣旨)a 被告ゲームシステムには、有料ルビーと無料ルビーが存在する。b ユーザーがルビーを購入すると、購入ルビー(有料ルビー)と購入ルビー(無料ルビー)がそれぞれ付与される。次に掲げる各図でいえば、ルビーを70個購入した場合、購入ルビー(有料ルビー)が65個、購入ルビー(無料ルビー)が5個付与される(図2の「ボーナス」が購入ルビー(無料ルビー)をいう。)。c ユーザーがゲームをプレイすることによって無料ルビーであるゲーム実行ルビーが付与される(図5の「ルビー」がゲーム実行ルビーをいう。)。d ユーザーの所持アイテムはマイデータに表示され、有料ルビーの総量と無料ルビーの総量がそれぞれ表示される。次に掲げる各図でいえば、有料ルビーを0個、無料ルビーを11個保有していたユーザーがルビーを70個購入すると、有料ルビーを65個(0+65)、無料ルビーを16個(11+5)、それぞれ保有することになる。【図1(購入前)】 【図2(購入時➀)】 【図3(購入時➁)】【図4(購入後)】 【図5】(イ) 充足性の判断上記認定事実によれば、被告ゲームシステムにおいては、ユーザーがルビーを購入することによって購入ルビー(有料ルビー)及び購入ルビー(無料ルビー)が付与され、また、ゲームをプレイすることによって無料ルビーであるゲーム実行ルビーが付与されることが認められる。これらのうち、購入ルビー(有料ルビー)が「第1の仮想アイテム」に、ゲーム実行ルビーが「第2の仮想アイテム」に、それぞれ該当することについては、当事者間に争いがない。そして、購入ルビー(無料ルビー)は、購入手続を行うことによってユ
5 ーザーに付与されるものであるから、構成要件1Aの文言どおり、「第1の仮想アイテム」に該当するものといえる。そうすると、被告ゲームシステムにおいて、「第2の仮想アイテム」に該当するものは、ゲーム実行ルビーのみとなる。他方、上記認定事実によれば、被告ゲームシステムは、購入ルビー(無料ルビー)及びゲーム実行ルビーの総量の和を、無料ルビーとしてユーザーに表示するにとどまり、被告ゲームシステムがその内訳を記憶していることの立証はないことからすると、被告ゲームシステムは、ゲーム実行ルビーの総量を記憶しているものとは認められない。そうすると、被告ゲームシステムは、「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの総量を記憶するものではない。したがって、被告ゲームシステムは、構成要件1Bの「第2の仮想アイテムの数量」を「記憶」するものではなく、構成要件1Bを充足するものとはいえない。⑵ 争点1-3(被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有するか)被告ゲームシステムにおいては、「第1の仮想アイテム」である購入ルビー(無料ルビー)及び「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの数量の和を記憶するにすぎないことは、前記において説示したとおりである。そうすると、被告ゲームシステムは、「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」を区分して記憶していない以上、構成要件1Cにいう「第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」を有しないものといえる。したがって、被告ゲームシステムは、構成要件1Cを充足するものとはいえない。
5 ⑶ 原告の主張に対する判断原告は、購入ルビー(無料ルビー)は、「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」のいずれにも当たらず、付加的構成にすぎない旨主張する。しかしながら、購入手続によって付与される購入ルビー(無料ルビー)が「第1の仮想アイテム」に該当することは、上記説示のとおりである。そうすると、被告ゲームシステムは、「第1の仮想アイテム」である購入ルビー(無料ルビー)と「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーを区分して把握していない以上、上記にいう優先的消費手段を有しないこととなる。そうすると、被告システムは、「第1の仮想アイテム」を優先的に消費させるという課題を解決するものとはいえず、本件発明1とは技術的思想が異なるものといえる。したがって、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえず、採用することができない。その他に、原告が主張する諸点を改めて検討しても、上記の解釈と異なる前提に立つものに帰し、本件発明1の技術的思想を正解するものとはいえず、原告の主張は、いずれも採用することができない。
3 本件発明2の内容証拠(甲4)によれば、本件明細書2には、次のとおりの記載があることが認められる。⑴ 技術分野「本発明は操作媒体(例えば、カード)をプレイフィールド上に並べることによりカードの裏面に記憶されたカードデータを自動的に読み取ってプレイフィールド上に載置されたカードデータの組合せに応じたゲーム内容で所定のビデオゲームを進行させるよう構成されたゲーム装置に関する。」(段落【0001】)⑵ 背景技術「特許文献1に開示されているゲーム装置によれば、プレイヤがプレイフィ
5 ールド上に載置した選手カードを、プレイフィールド上で擦ることで特定の選手カードの選択が可能であり、更に選手カードを擦りながら移動させることにより選手のポジションやフォーメーションを指示することができ、また、プレイヤがシュートボタンを操作することによりシュートが実行され、この演出画像がモニタに表示されるようになっている。そして、1ゲームが終了すると、新たな1枚の選手カードをゲーム装置のカード払出部から払い出すことで、プレイヤは新たな選手カードを1枚入手することができる。この新たな選手カードは、プレイヤが次回からのゲームを行う際に使用することができるので、選手選択や選手交代の幅が広がり、より戦略的なゲームを行うことができる。」(段落【0004】)⑶ 発明が解決しようとする課題「上記特許文献1に開示されているような従来のゲーム装置においては、実際のカードをゲーム進行の操作手段としているので、プレイヤが、単なるゲーム装置に設けられた操作ボタンや操作レバーを操作してゲームを進行させるものとは異なる興趣を与えている。」(段落【0006】)「この種のゲームの操作媒体となるカードには、一般的なカードに比べて発行枚数が極端に少なく希少価値の高いレアカード(アンコモンカード、プレミアカード等とも称されている)が存在する。そして、プレイヤは、これらのカードを使用してゲームを行うことに対する楽しみと、これらのカードを収集して観賞したり、交換したり、あるいは、売買したりする楽しみを味わうことができる。然しながら、実際のカードをゲームに使用すると、使用感が残ってしまうという課題がある。…」(段落【0007】)「一方、上記したレアカード等の希少価値の高いカードは、一般的なカードに比べて能力値や効果が高いものが多く、ゲームに使用するとゲームを有利に展開して勝率を上げることができるのも事実である。したがって、プレイヤには、未使用のまま観賞用、あるいは、交換や売買等の取引用として保管したい
5 という心理と、遊戯上の効果が高いためゲームに使用したいという、相反する心理が作用し、いずれかの心理を犠牲にして一方を選択せざるを得なかった。」(段落【0008】)「また、この種のゲームにおいては、非常に多種類のカードが用意されており、…プレイヤは、大量のカードを持ち歩かないと、例えば、遊戯施設に行くことができる空き時間が予期せず生じたようなときはゲームをすることができない。したがって、遊戯施設は知らぬ間に機会損失という問題を抱えている。」(段落【0009】)「本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、排出率が低い操作媒体であるレアカードに対して遊戯者に働く、相反する心理的課題を解消し、常に大量の操作媒体を携行していなくてもゲームを行うことが可能なゲーム装置を提供することを目的とする。」(段落【0010】)⑷ 課題を解決するための手段「本発明において「操作媒体」とは、カード、カードに人形や動物等のフィギュアが結合した物、直方体・立方体形状の物、円柱・角柱形状の物、円錐・角錐形状の物、蒲鉾型、ドーム型等の立体物、コイン形状の物でも遊戯進行の操作手段(プレイアイテム)となり得るものを含むものである。…」(段落【0025】)「…「所有権情報」には、その遊戯者が所有している操作媒体の種類と枚数、使用履歴、現物カードの払出情報等のデータが含まれており、遊戯者情報に紐付けられてデータベースに記憶されている。なお、「所有」とは、当該操作媒体をゲームで使用可能な状態を意味し、必ずしも、実物の操作媒体(カード等)を所持していない状態も含まれる。」(段落【0032】)⑸ 発明を実施するための形態「本実施形態におけるゲーム装置10では、サッカーゲームを行えるようになっており、サッカー以外のスポーツ競技(例えば、野球やラグビー、…)に
5 も適用できるのは勿論、…対戦ゲームに適用することも可能である。大型パネルディスプレイ12は、サッカー場の全体画像、全席の試合ダイジェスト、全席の試合結果などの画像が表示される。初めてゲームに参加するプレイヤは、最初にゲームに必要なスターターセット(アイテム)を購入して端末装置16a~16hが設置された各席に着座する。このスターターセットには、練習結果や試合結果等を記録する記録媒体として使用されるICカード(遊戯者情報記録媒体)18と、各サッカー選手の写真が印刷された11枚の選手カード(アイテム)20とが含まれる。なお、選手カード20は、本実施形態における通常カードである。本実施形態では、以下の説明において操作媒体・操作アイテムとしてカードを例に説明をするが、操作媒体はカードに限らず、…遊戯進行の操作手段(プレイアイテム)となり得る物品であれば本発明に適用可能である。」(段落【0041】)「選手カード20は、後述するように表面にそれぞれ異なる選手の写真が印刷され、裏面には表面に印刷された選手個人を識別するためのデータパターン(キャラクタデータ)が記録されている。また、ICカード18には、少なくとも当該プレイヤ22を特定することが可能な遊戯者情報が記憶されている。そのため、ICカード18に記憶された遊戯者情報を読み取り、メイン制御部14の記憶装置に格納されているデータベースを参照することにより、ゲームに必要なデータが得られるとともに、プレイヤ22がゲームに参加する資格を有していることを確認することができる。また、本実施形態においては、後述する代替カード21を使用してゲームを行うことができる。」(段落【0042】)【図1】 【図2】「次に、上記したように構成されたゲーム装置10の遊び方および制御処理
5 について説明する。図19は、本実施形態におけるゲーム装置10のメイン制御部14および端末装置16による基本的な遊戯処理を示すフローチャートである。」(段落【0124】)「ステップS201においてメイン制御部14のCPUは、各端末装置16a~16hに新たなゲームの開始を許可する処理を行う。すなわち、前回のゲームが進行中の場合は新たなゲーム実施の許可は行われず、前回のゲームの終了処理が全て完了すると、ゲーム実行許可処理を行い、各端末装置16a~16hを新規のゲームが実施可能な状態に制御する。…」(段落【0125】)「次に、ステップS202において【図19】ゲーム装置10は、本実施形態における遊戯者情報読み取り手段であるICカードリーダライタ28に挿入される
5 ICカード18に記憶されている遊戯者情報を読み取り、プレイヤ22にパスワードの入力を促す表示画面を端末装置16のモニタ26に表示する処理を行い、プレイヤ22の認証処理を行う。」(段落【0126】)「ステップS205においてメイン制御部14のCPUは、各端末装置16a~16bにエントリーしてきたプレイや(原文ママ)22同士、またはプレイヤ22とゲーム装置10に記憶されている仮想チームとのマッチング処理を行う。…」(段落【0129】)「次に、ステップS206において、プレイヤ22がプレイフィールド24上にセットした選手カード20または代替カード21を今回使用する選手として登録する処理を行う。…」(段落【0130】)「上記ステップS206の選手カード登録処理が終了すると、ステップS207において試合進行の処理が行われる。…」(段落【0131】)「1ゲームの進行処理が終了するとステップS209において、カード発行部20(原文ママ)の近傍に設置されている払出カードデータ読み取り手段が新たに払い出される予定の選手カード20のキャラクタデータを読み取り、続いて、本実施形態における選手カード20の所有権情報更新手段であるメイン制御部14のCPUは、読み取られたキャラクタデータに対応する選手カード20の所有権情報を、遊戯者情報に紐付けられた所有権情報に追加して、データベースに記憶されている所有権情報を更新して記憶する処理を行い(ステップS210)、次のステップS211に進む。」(段落【0136】)
5 「なお、遊技者情報に紐付けられた所有権情報に新たな選手カード20の所有権情報の追加処理を行う際に、所有権の有無だけではなく、これまでに累計何枚獲得したかというカード獲得数情報を記憶する処理を実行する構成としても良い。そして、カード獲得数情報に応じて、対応する選手カード20の各種パラメータに変更を加えることができるように構成しても良い。例えば、獲得数データの数値が大きいほど、対応する選手カード20のキャラクタの基本パラメータが上昇する構成とすることで、一般に排出率が高く、希少価値の低いノーマルカード(コモンカード)と呼ばれる選手カード20であっても、その排出率の高さから繰り返し同様のノーマルカードを獲得することでレアカードと同等のパラメータ値となるように構成することができる。これにより、既に獲得済みの選手カード20が払い出される時であっても、遊戯者に一定の満足感を提供することが可能である。」(段落【0138】)
4 本件発明2に係る構成要件充足性(争点2-5〔被告ゲームプログラムは「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを…前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」(構成要件2B)といえるか〕)被告ゲームシステムにおいては、次のとおり、●(省略)●が「累計獲得数」に相当するところ、●(省略)●「スキルチケットの使用回数」●(省略)●としても、「累計獲得数」に該当するといえるかどうかが問題となる。⑴ 構成要件2Bの解釈特許請求の範囲の記載によれば、構成要件2Bの「累計獲得数」は、プレイヤによる「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータ」(以下「本件同一種類データ」という。)に係る累計獲得数をいうものであり、本件明細書2の記載によっても、本件同一種類データに係る累計獲得数以外の数が、上記にいう「累計獲得数」に含まれる趣旨をいう記載はなく、これを示唆する記載も一切ない。上記構成要件の文言及び本件明細書2の記載によれば、上記にいう「累計獲
5 得数」は、本件同一種類データに係る累計獲得数以外の数値を含まないと解するのが相当である。⑶ 被告ゲームプログラムの充足性これを被告ゲームプログラムについてみると、「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータ」に該当する構成は、ユーザーIDを介してプレイヤに既に対応付けられている●(省略)●スキルレベルであり、「累計獲得数」に該当する構成は、●(省略)●であるというべきである。そして、弁論の全趣旨によれば、●(省略)●は、同一種類であると判断された●(省略)●スキルチケットの使用回数●(省略)●ことが認められ、この点については当事者間に争いがない。そうすると、スキルチケットの使用回数は、本件同一種類データに係る累計獲得数以外の数であるから、被告システムにおける「累計獲得数」に相当する構成には、構成要件2Bの「累計獲得数」以外の数値をも含むことになる。したがって、被告ゲームプログラムは、構成要件2Bの「累計獲得数」を充足するものとはいえない。⑶ 原告の主張に対する判断原告は、スキルチケットの構成が付加されたとしても、スキルチケットの使用がない限り、当該使用回数は「累計獲得数」に含まれないことになるから、被告ゲームプログラムは、構成要件2Bを充足する旨主張する。しかしながら、被告ゲームプログラムの●(省略)●は、同一種類であると判断された●(省略)●スキルチケットの使用回数●(省略)●ことは、上記において説示したとおりである。そして、スキルチケットの使用回数がゼロの場合であっても、被告ゲームプログラムの●(省略)●が、●(省略)●上記使用回数●(省略)●ことには相違がない。そうすると、原告の主張は、被告システムの構成には「累計獲得数」以外の数値が含まれるという、上記認定を左右するものとはいえない。
5 したがって、原告の主張は、採用することができない。
5 本件発明2に係る無効事由の有無(争点2-7及び争点2-8)以上によれば、その余の争点を判断するまでもなく、本件発明2に関する原告の請求は理由がないことになるが、本件事案及び審理経過に鑑み、本件の中核的争点の一つである争点2-7(乙6発明を主引例とする無効事由の有無)及び2-10(乙39発明を主引例とする無効事由の有無)に限り、念のため、以下簡潔に判断を示すこととする。⑴ 争点2-7(乙6発明を主引例とする無効事由の有無)ア 乙6発明3の構成証拠(甲15、乙6)及び弁論の全趣旨によれば、乙6発明3は、以下の構成を有することが認められる。【2a】 コンピュータを、【2a⑴】 プレイヤに対応づけて、選手カードの種類、調子、守備力などのデータを記憶する記憶手段、【2a⑵】 前記プレイヤがショップで買い入れることにより獲得した選手カードの種類、調子、守備力などのデータを取得する取得手段、【2a⑶】 前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得した選手カードの種類、調子、守備力などのデータが、前記プレイヤに既に対応づけられている選手カードの種類、調子、守備力などのデータと同一種類であるか否かを判断する判断手段、【2a⑷】 前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得された選手カードの種類、調子、守備力などのデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記選手カードの種類、調子、守備力などのデータのう
5 ち、調子を上げる向上手段、として機能させ、【2b】 前記向上手段は、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記選手カードの種類、調子、守備力などのデータのうち、●(省略)●を特徴とする、【2c】 乙6ゲームのプログラム。イ 相違点の認定乙6発明3が、本件発明2の構成要件2Bに相当する構成を除き、本件発明2と一致する構成を有していることについては、当事者間に争いがない。そこで、本件発明2の構成要件2Bに相当する構成について検討すると、乙6発明3の「向上手段」は、本件発明2の「変更手段」に相当し、「選手カードの種類、調子、守備力などのデータ」は、「ゲームアイテムデータ」に相当するものといえる。そして、乙6発明3の「同一種類であると判断された選手カードの種類、調子、守備力などのデータのうち、●(省略)●という構成は、遊戯者に一定の満足感を提供するという技術的意義を有するものである一方、本件発明2の「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」という構成は、既に獲得済みの選手カード20が払い出される場合であっても、遊戯者に一定の満足感を提供する(本件明細書2の段落【0138】)という技術的意義を有するものであることからすれば、上記技術的意義と同種のものであるといえる。そうすると、乙6発明3と本件発明2の上記各構成は、「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更する」という限度で一致するものと認めるのが相当である。したがって、本件発明2と乙6発明3の相違点は、「同一種類であると判
5 断された前記ゲームアイテムデータを変更すること」に関し、本件発明2の変更手段は、ゲームアイテムデータを、「同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」のに対し、乙6発明3の向上手段は、「同一種類であると判断された前記選手カードの種類、調子、守備力などのデータのうち、●(省略)●点であると認められる。ウ 容易想到性の判断証拠(乙27)によれば、シューティングゲームである「五月雨」のマニュアル(乙27の1。平成20年2月9日公開)には、敵を倒すことにより出現するアイテムを8個獲得すると、プレイヤのショットが1段階パワーアップし、以降、16個獲得するごとに1段階パワーアップする旨記載があること、シューティングゲームである「ドラゴンスピリット」に関するブログ記事(乙27の2。平成20年8月2日公開)には、ステージ上の赤い卵を破壊することで出現する赤アイテムを3個獲得すると、ドラゴンの火力が1段階アップし、最大2段階まで増加する旨記載があること、「ドラゴンスピリット」に係る上記事項は、昭和62年に発売された同ゲームにより実施されていたこと(乙27の3)、平成11年6月24日に発売されたシューティングゲームである「ショックトルーパーズセカンドスカッド」には、パワーアップアイテムを3個獲得すると、ショットのレベルが1段階アップし、最高2段階(レベル3)まで、パワーアップするという事項が実施されていたこと(乙27の4)、以上の事実が認められる。上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、ゲーム中のある時点における同一種類のアイテムの累計獲得数に応じて、プレイヤに満足感を与え得るようなパラメータの変更を行うことは、周知技術であると認めるのが相当である。そして、乙6発明3の「調子」を上げる構成と、上記周知技術の構成は、ゲームにおいてパラメータの変更によってプレイヤに満足感を与える作用
5 効果が共通である。これらの事情を踏まえると、乙6発明3に接した当業者には、作用効果において共通する周知技術を乙6発明3に適用するための動機付けがあるといえる。そうすると、乙6発明3に発明に接した当業者が乙6発明3から出発して上記相違点に係る構成に至ることは、容易であるといえる。したがって、本件発明2は、乙6発明3に基づき進歩性を欠くものといえる。エ 原告の主張に対する判断(ア) 原告は、上記周知技術は、アイテムの獲得数に応じてキャラクタのパラメータが変更されるものであるから、同一のアイテムのパラメータを変更する乙6発明3に適用すること自体が誤りである旨主張する。しかしながら、上記周知技術と乙6発明3は、獲得したアイテムとパラメータを変更するアイテムの異同にかかわらず、当該パラメータの変更によってプレイヤに満足感を与えるという共通の作用効果を奏するものであるから、当該異同が適用を妨げるとする原告の主張は、その前提を欠く。(イ) 原告は、仮に上記周知技術の適用があり得るとしても、累計獲得数に応じてパラメータを上げる構成は、●(省略)●乙6発明3の「調子」の上げ方に適用するには、阻害要因がある旨主張する。しかしながら、上記周知技術の適用によっても、同一種類のゲームアイテムデータを獲得したプレイヤに満足感を与えることができるのであるから、これと作用効果が共通する乙6発明3に適用するための阻害要因があるということはできない。(ウ) 以上によれば、原告の主張は、いずれも採用することができない。⑵ 争点2-10(乙39発明を主引例とする無効事由の有無)ア 乙39発明の構成
5 証拠(乙39)及び弁論の全趣旨によれば、乙39発明は、以下の構成を有することが認められる。【2a】 コンピュータを、【2a⑴】 プレイヤに対応づけて、パイロットの種類及び基本パラメータを記憶する記憶手段、【2a⑵】 基本料金の支払いによってゲーム開始時にプレイヤに与えられるチケットや、プレイヤが追加購入したチケットとの交換により、前記プレイヤが入手したパイロットの種類及び基本パラメータを取得する取得手段、【2b】 取得したパイロットの種類及び基本パラメータをプレイヤと対応づけて記憶し、プレイヤに同一種類のパイロットが複数対応づけられていると、当該パイロットの種類及び基本パラメータのうち、基本パラメータを向上させる手段、として機能させる、【2c】 ゲームプログラム。イ 相違点の認定(ア) 乙39発明が、本件発明2の構成要件2A⑶、2A⑷、2Bに相当する構成を除き、本件発明2と一致する構成を有していることについては、当事者間に争いがない。そこで、本件発明2の構成要件2A⑶、2A⑷、2Bに相当する構成について検討すると、乙39発明の「取得したパイロットの種類及び基本パラメータをプレイヤと対応づけて記憶し、プレイヤに同一種類のパイロットが複数対応づけられていると、当該パイロットの種類及び基本パラメータのうち、基本パラメータを向上させる」ことは、同一種類のパイロットが複数対応づけられていないパイロットの基本パラメータを変更しないことも意味するから、本件発明2の構成要件2A⑶、2A⑷、2Bと、「プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類でな
5 い取得したゲームアイテムデータについてはプレイヤに対応づけて記憶し、プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるゲームアイテムデータについてはこれを変更する」という限度で一致する。以上によれば、本件発明2と乙39発明の相違点は、以下のとおりであると認められる。(イ) 相違点1本件発明2は、ゲームプログラムが、「前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断する判断手段、前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更する変更手段、として機能させ」るのに対し、乙39発明は、ゲームプログラムが、パイロットの種類及び基本パラメータを取得してから、プレイヤに複数対応づけられた同一種類のパイロットの基本パラメータが向上される状態とするまでの具体的な処理の内容が不明である点(ウ) 相違点2本件発明2は、「前記変更手段は、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更する」のに対し、乙39発明は、「当該パイロットの基本パラメータを向上させる」ものの、具体的な向上のさせ方が不明である
5 点。ウ 容易想到性の判断(ア) 相違点1乙39発明において、プレイヤがパイロットを獲得するという契機が生じた場合において、プレイヤに複数対応付けられた同一種類のパイロットの基本パラメータが向上される状態を実現するためには、少なくとも①獲得したパイロットが登録されたパイロットと同一か否か判断する処理、②同一であれば基本パラメータを向上させる処理、③獲得したパイロットを登録する処理、以上を行う必要があることは当業者にとって自明である。そして、これらの3つの処理の先後関係は、当業者であれば適宜決定し得る設計事項であり、相違点1に係る本件発明2の構成とすることに格別の技術的意義を見出すこともできない。したがって、相違点1に係る構成は、当業者にとって容易想到である。これに対し、原告は、相違点1に係る乙39発明の構成は、現実には採用されなかったから、当該構成を採用して発展させるには障害があり、また、発展させる動機付けはない旨主張する。しかしながら、当該構成が現実には採用されなかったとしても、進歩性の論理付けにおいて直ちに障害があったとはいえず、かえって、当業者の創作能力の発揮として設計事項であるといえることは、上記において説示したとおりである。したがって、原告の主張は、採用することができない。(イ) 相違点2上記⑴ウ記載のとおり、ゲーム中のある時点における同一種類のアイテムの累計獲得数に応じて、プレイヤに満足感を与え得るようなパラメータの変更を行うことは、周知技術であると認められる。そして、乙39発明の基本パラメータを向上させる構成と、上記周知技術の構成は、ゲームにおいてパラメータの変更によってプレイヤに満足感
5 を与える作用効果が共通である。これらの事情を踏まえると、乙39発明に接した当業者には、作用効果において共通する上記周知技術を乙39発明に適用するための動機付けがあるといえる。そうすると、乙39発明に接した当業者が乙39発明から出発して相違点1及び2に係る構成に至ることは、容易であるといえる。したがって、本件発明2は、乙39発明に基づき進歩性を欠くものといえる。⑶ 小括以上によれば、本件発明2には、進歩性要件違反の無効事由がある。
第5 結論
よって、原告の請求は理由がないから、いずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
中 島 基 至
裁判官
松 川 春 佳
裁判官
坂 本 達 也
(別紙)
特許請求の範囲
1 本件特許15 ⑴ 本件発明1-1購入手続きを行なうことでユーザーに付与される第1の仮想アイテム、および、ゲームの実行によりユーザーに付与される第2の仮想アイテムを区別なく利用可能なゲームを実行するゲームシステムであって、前記ユーザーに対応付けて、前記第1の仮想アイテムの数量と、前記第2の仮想アイテムの数量とをそれぞれ記憶する手段と、前記ユーザーが前記第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段と、を備えたことを特徴とするゲームシステム。⑵ 本件発明1-2前記ゲームシステムの表示画面内において、前記第1の仮想アイテムの表示領域と前記第2の仮想アイテムの表示領域とが区別されている、請求項1に記載のゲームシステム。
2 本件特許2(本件訂正による訂正部分は下線部のとおりである。)情報処理装置を、プレイヤに対応づけて、ゲームアイテムデータを記憶する記憶手段、前記プレイヤが金銭の支払いに基づき獲得したゲームアイテムデータを取得する取得手段、前記記憶手段を参照し、前記取得手段により取得したゲームアイテムデータが、前記プレイヤに既に対応づけられているゲームアイテムデータと同一種類であるか否かを判断する判断手段、前記判断手段が同一種類でないと判断した場合、前記取得手段により取得されたゲームアイテムデータを前記プレイヤに対応づけて前記記憶手段に登録し、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを変更する変更手段、として機能させ、前記変更手段は、前記判断手段が同一種類であると判断した場合、前記記憶手段に前記プレイヤに既に対応づけて記憶される、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータを、同一種類であると判断された前記ゲームアイテムデータの前記プレイヤによる累計獲得数に応じて変更することを特徴とする、ゲームプログラム。
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