ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(行ケ)10033 審決取消請求事件
| 裁判所 | 審決取消 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年9月25日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告アルスター・フェヒト-センター・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コ 被告特許庁長官 |
| 法令 |
商標権 商標法4条1項11号6回 |
| キーワード | 審決14回 拒絶査定不服審判1回 優先権1回 |
| 主文 | 1 特許庁が不服2023-650052号事件について令和6年1 2月16日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は、被告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本件は、本願商標に係る商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求につ いて、請求不成立とした本件審決の取消しを求める訴訟である。争点は、本願 商標の商標法4条1項11号該当性である。 |
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令和7年9月25日判決言渡
令和7年(行ケ)第10033号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年7月17日
判 決
原 告 アルスター・フェヒト-センター・ゲゼルシャフト・
ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コ
ンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
同代表者無限責任社員
アルスター・フェヒト-センター・フェヒトアーティ
クル・ウント・フェヒトアンラーゲン・ゲゼルシャフ
ト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
同訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫
同 平 田 慎 二
同訴訟代理人弁理士 江 崎 光 史
同 佐 久 間 洋 子
同 田 崎 恵 美 子
同 高 橋 正 宏
同訴訟復代理人弁護士 山 田 亮
被 告 特許庁長官
同指定代理人 須 田 亮 一
同 旦 克 昌
同 山 根 ま り 子
同 冨 澤 武 志
主 文
1 特許庁が不服2023-650052号事件について令和6年1
2月16日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
5 事 実 及 び 理 由
この判決で用いる主な略語は、他に本文中で定義するもののほか、次のとおりで
ある。
本件審決 :特許庁が不服2023-650052号事件について令和6年1
2月16日にした「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決
本願商標 :別紙「商標目録」記載の商標(乙1から3の2まで)
本願文字部分:本願商標のうち、下寄りの一部を白抜きの細い横線で装飾した赤
色の「allstar」の欧文字を横書きした部分
本願図形部分:本願商標のうち、本願文字部分の左側に配置された横線と円弧図
形を組み合わせたような赤色の図形
引用商標 :別紙「引用商標目録」記載の商標(甲1・商標登録第43166
0号の1)
第1 請求
本件審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は、本願商標に係る商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求につ
いて、請求不成立とした本件審決の取消しを求める訴訟である。争点は、本願
商標の商標法4条1項11号該当性である。
2 特許庁における手続の経過等
⑴ 本願商標は、別紙「商標目録」【商標】記載のとおり、下寄りの一部を白
抜きの細い横線で装飾した赤色の「allstar」の欧文字を横書きした本願文字
部分と、その左側に配置された横線と円弧図形とを組み合わせたような赤色
の本願図形部分の構成からなる。本願商標は、2019年(平成31年)2
月1日に欧州連合知的財産庁にされた商標登録出願に基づいてパリ条約4条
による優先権を主張し、2019年(令和元年)7月9日に国際商標登録出
願された。もともと、本願商標の指定商品は、第8類、第9類、第14類、
5 第25類、第27類及び第28類に属するものが、指定国を日本国とする国
際登録において指定商品として指定されていた(乙1)。
本願商標の指定商品は、2021年(令和3年)7月30日付け手続補正
書により補正された後(乙2)、2022年(令和4年)9月2日付けで一
部移転の通報があり(乙3。なお、枝番のある書証で枝番を掲げていない場
合は、全ての枝番を含む趣旨である。以下同じ。)、最終的に、第8類、第
25類、第27類及び第28類に属する商品であって、別紙「商標目録」
【指定商品】記載のとおりのものとなった。
⑵ 本願商標に係る商標登録出願については、令和5年3月15日付けで拒絶
査定がされたことから、原告は、同年6月27日、拒絶査定不服審判の請求
をした。
特許庁は、これを不服2023-650052号事件として審理し、令和
6年12月16日、請求不成立の本件審決をし、その謄本は同月20日に原
告に送達された。
⑶ 原告は、令和7年4月15日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起
した。
3 引用商標
引用商標は、別紙「引用商標目録」【商標】記載のとおりの構成から成り、
同目録【指定商品】記載とおり、第28類「運動用具(体育用器械器具・体操
用器械器具・スターターピストル・スケート靴を除く。)」を指定商品とする。
4 本件審決の理由の要旨
本願商標及び引用商標は、両者の外観を比較すると、その構成文字である
「allstar」と「all star」は、共通する語を表しており、記憶される印象におい
て互いに極めて似通ったものとなる。また、その構成文字に相応して、いずれ
も「オールスター」の称呼及び「オールスターの」程度の観念を生じる。
そうすると、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念を総合して全
5 体的に考察すると、同一又は類似の商品に使用するときは、出所について誤認
混同を生じるおそれがあるから、類似の商標と認められる。また、本願商標の
指定商品中第25類、第27類及び第28類は、引用商標の指定商品と同一又
は類似の商品を含む。
したがって、本願商標は、商標法4条1項11号に該当するから、これを登
録することができない。
第3 審決取消事由に関する当事者の主張
本願商標の商標法4条1項11号該当性について1
(原告の主張)
⑴ 分離観察について
本願商標のうち、本願図形部分の赤色の横線は、本願文字部分の白抜きの横線と一直線上に配置されており、本願図形部分と本願文字部分の白抜きの横線とは一連一体となって、フェンシングの関係者又はフェンシングに関心を持つ一般消費者に対し、フェンシングの剣を容易に想起させるものである。本願図形部分は、フェンシングの剣のガード(鍔)及びグリップ(柄)を模したものである。本願商標から本願図形部分を分離して観察したときは、白抜きの横線が入った本願文字部分が残ることになり、白抜きの横線を剣のブレード(刀身)に模したデザインの意図が失われる。したがって、本願文字部分と本願図形部分は、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているというべきである。
⑵ 外観について
本願商標から本願文字部分のみを分離して観察することは相当ではないが、仮に分離観察した場合でも、本願文字部分と引用商標の外観を比較すると、フェンシングの剣を模したロゴの有無、赤色と黒色という色の差異、「all」と「star」との間のスペースの有無、頭文字の大文字・小文字の違い、字体がポップ風か筆記体か、縦線と横線がそれぞれ均一か否かといった点につい
5 て明確な違いがあり、取引者及び需要者に与える印象において顕著な差異が
あるから、両者の外観は非類似である。
⑶ 称呼について
本願商標は、指定商品全般(フェンシングに関する商品)との関係において「アルスター」という称呼が生じる。需要者及び取引者として想定されるのは、指定商品に関する需要者であるところ、本願商標の指定商品は、フェンシングの分野に限定されているから、その需要者及び取引者は、フェンシングの関係者である。フェンシング業界の需要者及び取引者が、本願商標に接した場合「オールスター」ではなく、「アルスター」と呼称することは広く定着している(甲62~65)。このような実情を恒常的な取引の実情として斟酌すると、本願商標は「アルスター」という称呼を生ずるものであり、これと異なる本件審決の判断は誤りがある。
⑷ 観念について
本願商標は、フェンシングの剣を模した構成図形から「フェンシングのオールスター選手」「フェンシングのオールスターの」との観念が想起されるが、引用商標は、「(単なる)オールスター選手」「オールスターの」との観念が想起されるにとどまるから、両者は観念においても異なる。
⑸ 本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念が異なるから、総合的に観
察して非類似の商標である。仮に称呼が類似だとしても、外観が著しく異なり、前記のとおり観念も異なる。フェンシング関係者が引用商標と外見上顕著な特徴を有する本願商標とを混同することは考えられないから、商品の出所に誤認混同をきたすおそれはない。したがって、仮に「オールスター」という称呼が生じたとしても、本願商標と引用商標とは非類似の商標であるから、商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断は誤りである。
⑹ なお、原告は、本願商標の指定商品第28類中のフェンシング用の限定が
なかった「男性用カッププロテクター(運動用具)、女性用及び少女用の胸
5 部プロテクター(運動用具)、被服の下に着る胸当て(運動用具)」につい
て、本件口頭弁論終結前である令和7年7月7日、領域国日本について、これらの運動用具をフェンシング用品に限定する補正手続をWIPOに行った(甲74から76まで)。2
(被告の主張)
⑴ 本願商標の本願文字部分と本願図形部分とは、称呼や観念における関連性
はなく、間隔を空けて配置されており、視覚上分離して看取されるものであるから、分離して観察することが取引上不自然なほど不可分的に結合しているものではない。本願図形部分と本願文字部分における白抜き装飾部分が、フェンシングの剣を模した一体的な図形であると認識されるというべき事情は見当たらない。本願商標は、本願文字部分が需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、その文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することができる。
⑵ そうすると、本願商標は、要部である「allstar」の文字部分に相応し、引
用商標と同様、「オールスター」の称呼及び「オールスターの」の観念を生ずる。本願図形部分は、それ自体としては何らかの事物や客体を描いていると看取することができないから、本願商標から「フェンシングのオールスター選手」との観念は生ずることはない。また、外観においては、書体や色彩の差異はあるものの、引用商標と同じ「オールスター」の語を表したものと容易に理解される。文字の一部に白抜きで横線の装飾を施したデザインは、格別特徴のあるデザインとはいえず、商標の使用においては、状況に応じて色彩を変更することなどは一般的に行われており、原告の商品についても同様である。したがって、本願商標の要部と引用商標の比較における外観上の差異は、看者に対し、強い印象を与えるとまではいかないものであり、両商標は、外観において、記憶される印象において互いに極めて似通ったものとなる。
5 これらを総合して全体的に考察すれば、同一又は類似の商品に使用すると
きは、出所について誤認混同を生じるおそれがあり、本願商標は引用商標と類似の商標というべきである。
⑶ 本願商標の指定商品には、男性用カッププロテクター(運動用具)、被服
の下に着る胸当て(運動用具)等が含まれ、その用途、対象となる運動の種類はフェンシングに限定されていない。したがって、需要者又は取引者がフェンシング業界の関係者であることを前提とする
(原告の主張)
は、その前提において誤りがある。
⑷ 本願商標の称呼が「アルスター」に限られることが、フェンシング業界の
需要者及び取引者において広く定着しているということはできず、本願商標を付したフェンシング関係の商品について、現に「オールスター」と称呼されている事実(乙28~32)がある。仮に、本願商標がフェンシングに関する商品との関係で、現時点では「アルスター」と称呼されることがあるとしても、それは、本願商標に係る個別的な事情であり、本願商標と引用商標との類否判断に当たり考慮すべき一般的、恒常的な取引の実情ということはできない。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は、本願商標は、引用商標とその外観を大きく異にするものであり、
商標法4条1項11号の「他人の登録商標に類似する商標」には該当しないか
ら、本件審決は取り消されるべきものと判断する。
その理由は、次のとおりである。
判断枠組み
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、
商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであ
るが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等
によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、
しかもその商品の取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に
基づいて判断する必要がある。この場合において、商標の外観、観念又は称呼
の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させ
る一応の基準にすぎず、この三点のうちその一において類似するものでも、他
の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、何ら商品の
出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標
と解すべきではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27
日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、その指定商
品全般についての一般的、恒常的な事情を指すものであって、単に当該商標が
現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的な事情を指すものでは
ない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法廷判決
・判例秘書L02910388参照)。
商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されている
ものであるから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の
構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのもの
の類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出
所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以
外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合な
どを除き、許されない(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8
日第二小法廷判決・判タ1280号114頁、最高裁昭和37年(オ)第95
号同38年12月5日・民集17巻12号1621頁参照)。
以上を前提に検討する。
⑴ 本願商標の分離観察の可否について
本願商標は、本願文字部分と本願図形部分が結合してなる商標である。本
願図形部分は、本願文字部分の文字間隔と同様の間隔を空けて本願文字部分
の左側に配置されているが、文字とは異なり、それ自体で意味や音を表示す
るものではない。しかし、本願図形部分は、本願文字部分の左端に一文字分
の横幅をとって配置され、本願文字部分の欧文字を左から読む場合には、最
初に目につく部分であって、外形的にみて本願商標の特徴的な部分を構成し
ている。また、本願図形部分は、本願文字部分の白抜き部分と一体となって、
フェンシングの剣を模すデザインの一部であり、本願図形部分は、フェンシ
ングの剣の鍔と柄を模したものであることが認められる。そうすると、本願
図形部分は、本願文字部分と一体となり、全体として一定の観念を想起させ
ることが予定されているものである。本願図形部分は、本願商標の特徴的な
部分を構成しているから、本願文字部分だけが取引者、需要者に対し商品の
出所識別標識として特に強く支配的な印象を与えるものとまでいうことはで
きない。また、本願図形部分はフェンシングの剣の鍔と柄を模したものであ
るから、本願図形部分からおよそ出所識別標識としての観念が生じないと認
めることもできない。一般に商標は、その構成部分全体によって他人の商標
と識別すべく考案されており、みだりに分離観察すべきではないことを踏ま
えると、本願商標における本願図形部分と本願文字部分とを分離することは、
取引上不自然であって、これを分離観察することは相当ではないというべき
である。
⑵ 外観について
本願商標と引用商標の外観を比較すると、本願商標には、本願図形部分が
存在し、本願図形部分と本願文字部分の白抜き部分が一体となってフェンシ
ングの剣を模した図形が含まれていること、 本願商標の本願文字部分は
「allstar」の「all」と「star」との間にスペースがない一語となり、かつ、全
て小文字になっているのに対し、引用商標においては「All」と「Star」との
間のスペースがあり、かつ、頭文字が大文字になっていること、本願文字部
分の字体はポップ体風で線の太さが均一なデザインで構成されているのに対
し、引用商標の欧文字の字体は手書きの筆記体風で線の太さも均一ではない
こと、本願文字部分にはカタカナのふりがなは付されていないが、引用商標
についてはカタカナのふりがなが付されていることといった差異があり、取
引者及び需要者に与える印象において顕著な差異があるものと認められる。
したがって、両者の外観が類似していないことは明らかである。
⑶ 称呼について
本願商標の allstar は一語であり、引用商標の All Star は二語から構成され
ている。研究社新英和大辞典(2008)第6刷には、「all」と「star」は、
それぞれ別語として掲載され、複合語の第1構成要素であることを示す「all-」
が用いられた「all-star」の項目で、「スターぞろいの」という意味の形容詞
が掲載されている一方、allstar の語は掲載されていない(甲4)。したがっ
て、allstar は一種の造語ということができる。
しかし、我が国において、「オールスター」は「オールスターゲーム」の
略語として広く親しまれている外来語(甲6、7)であり、allstar を英語と
して読むと、「オールスター」という称呼を生じ、これは引用商標のカタカ
ナのふりがなである「オール スター」と同一又は極めて類似した称呼であ
るということができる。
確かに、株式会社東京フェンシング商会のプライスリスト(甲3、63)
には、1987年当時から現在に至るまで、原告のフェンシング用品は「ア
ルスター」の名前で紹介されており、その中には、商品に本願商標と同じ文
字が付されている写真が掲載されているものもある(甲3の2)。また、公
益財団法人全国高等学校体育連盟フェンシング専門部のウェブサイト中のフ
ェンシング用具専門のショップ紹介ページには、東京フェンシング協会の取
扱いメーカーとして「allstar(アルスター)」との記載がされている(甲1
)ほか、原告の商品は、日本代表クラスの選手によって多く使用されてお
り(甲14~36)、オリンピックその他の世界大会のフェンシング競技で
メダルを獲得した日本人選手らが、フェンシング競技に関わる人間であれば、
「allstar」のロゴは「アルスター」と読み、「オールスター」と読むことは
ない等と陳述していることが認められる(甲60、61)。しかしながら、
一定程度フェンシングの知識を有すると思われる人物によるフェンシングの
紹介記事(乙32)にも、「Allstar(オールスター) ドイツのフェンシン
グ用品ブランド」などと記載されていることや、フェンシングウェアのオー
クション等でも「allstar オールスター」との表示がみられる(乙28~3
)。これらの事実に照らすと、「アルスター」との読み方はフェンシング
関係者の間では相当程度定着しているものとはいえ、これにより本願商標の
指定商品の需要者又は取引者の間で「allstar」に「オールスター」の称呼が
生じることを否定するに足りるものではない。
そうすると、本願商標は「アルスター」又は「オールスター」の二つの称
呼を生ずるものであり、このうち「オールスター」の称呼は、引用商標の称
呼と同一又は極めて類似するということができる。
⑷ 観念について
本願商標を分離観察することが相当でないことは、前記のとおりであると
ころ、本願商標の本願文字部分から「オールスター」との称呼を生ずる場合
には、これに対応して「オールスターの」という観念が生じ得る。そして、
本願図形部分からは、本願文字部分の白抜き部分と一体となって、「フェン
シングの剣」が想起されるから、結局、本願商標は全体として「フェンシン
グのオールスターの」という観念が生ずるというべきである。他方、引用商
標からは、「オールスターの」という観念が生ずるにとどまるから、本願商
標と引用商標は、その観念のすべてを共通にするものではない。
⑸ 取引の実情について
本願商標の指定商品の取引の実情として、商標の称呼は、商品の出所及び
その品質を認識するために重要であることは、前記株式会社東京フェンシン
グ協会のプライスリストに称呼のみが記載されている場合もあること等から
明らかである。また、この場合において、フェンシング関係者の間では、引
用商標と異なる称呼である「アルスター」が相当程度定着していると認めら
れることは前記のとおりである。しかし、本願商標の指定商品である運動用
具を購入する需要者又は取引者にとって、服やグローブ等の用具に商標が付
されているという外観もまた重要であると考えられていることは、前記日本
代表クラスの選手の写真において、これらの用具に商標が目立つように付さ
れていることからも容易に推認することができる。したがって、本願商標の
指定商品が、広く専ら称呼のみによって取引が行われている実情にあるとま
では認められない。
⑹ 検討
以上によれば、本願商標は、引用商標と同一又は類似の称呼(オールスタ
ー)を生ずることはあるが、フェンシング関係者の間では、引用商標と異な
る称呼である「アルスター」が相当程度定着している。また、両者の外観は
大きく異なり、かつ、想起される観念についても、そのすべてを共通にする
ものではない。取引の実情としても、広く専ら称呼のみによって指定商品の
取引が行われているものと認めることはできず、出所の識別については、指
定商品に付された商標の外観が重要な役割を果たしていることが推認される。
したがって、これを全体的に考察すると、本願商標は、引用商標との関係で、
商品の出所に誤認混同をきたすおそれはないというべきであるから、引用商
標に類似する商標ということはできない。
小括
以上によれば、本願商標は、その余の点について判断するまでもなく、商標
法4条1項11号に掲げる商標登録を受けることができない商標に該当しない。
したがって、これと異なる本件審決の判断には誤りがある。
第5 結論
よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文の
とおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 響
裁判官
菊 池 絵 理
裁判官
頼 晋 一
(別紙)
商 標 目 録
【商標】【指定商品】(補正及び所有権一部移転後のもの)
第8類「Hand tools, namely stretchers for fencing pistes.」第25類「Fencing clothing for men, women and young people, foil fencingsuits (clothing), fencing jackets (clothing), fencing breeches (clothing), epee suits(clothing), sabre suits (clothing), sabre jackets (clothing), sabre breeches(clothing), fencing stockings (clothing), fencing shoes (clothing).」第27類「Metal fencing pistes (flooring - sports mats), fencing pistes of metal,of soft PVC and black rubber (flooring - sports mats).」第28類「Cup protectors for men (sports equipment), chest protectors forwomen and girls (sports equipment), plastrons for wear under clothing (sportsequipment); fencing masks for foil, epee and sabre; fencing gloves for foil, epeeand sabre; fencing weapons (sporting articles), including foils, epees and sabres;accessories for fencing weapons (included in class 28), namely fencing blades,fencing grips, fencing guards, fencing pads, body wires for fencing, plugs forfencing and fencing pommels, weapon bags; fencing articles (included in class28).」(参考訳)第8類「手持工具、すなわちフェンシング用ピスト用の伸張具」第25類「男性用・女性用及び若者用のフェンシング用被服,フェンシングのフルーレ用衣服(被服),フェンシング用ジャケット(被服),フェンシング用5 半ズボン(被服),フェンシングのエペ用衣服(被服),フェンシングのサーブル用衣服(被服),サーブル用ジャケット(被服),サーブル用半ズボン(被服),フェンシング用ストッキング(被服),フェンシング用靴(被服)」第27類「金属製のフェンシング用ピスト(床-スポーツ用マット),金属製・ソフトポリ塩化ビニル製及び黒色ゴム製のフェンシング用ピスト(床-スポーツ用マット)」第28類「男性用カッププロテクター(運動用具)、女性用及び少女用の胸部プロテクター(運動用具)、被服の下に着る胸当て(運動用具)、フルーレ用・エペ用及びサーブル用のフェンシング用マスク、フルーレ用・エペ用及びサーブル用のフェンシング用手袋、フェンシング用武器(運動用具)(フルーレ・エペ及びサーブルを含む。)、フェンシング用武器の付属品(第28類に属するもの。)、すなわちフェンシング用剣、フェンシング用グリップ、フェンシング用ガード、フェンシング用パッド、フェンシング用の身体用ワイヤー、フェンシング用プラグ及びフェンシング用柄頭、武器用バッグ、フェンシング用品(第28類に属するもの。)」以 上
(別紙)
引 用 商 標 目 録【登録番号】5 商標登録第431660号の1【商標】【指定商品】第28類 運動用具(体育用器械器具・体操用器械器具・スターターピストル・スケート靴を除く。)【登録出願日】昭和27年7月10日【設定登録日】昭和28年9月21日以 上
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