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令和6(行ケ)10100審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年10月8日
事件種別 民事
当事者 原告ジョイーインターナショナルカンパニーリミテッド
被告サイベックスゲーエムベーハー
対象物 車両シートに取り付けるためのチャイルドセーフティシート又はベビーキャリア及びそのようなシートのためのサイドインパクトバー
法令 特許権
特許法134条の210回
特許法36条6項2号1回
特許法36条1項1回
特許法36条の21回
特許法184条の41回
特許法164条の21回
特許法126条6項1回
キーワード 審決207回
無効33回
進歩性23回
実施13回
新規性9回
無効審判2回
訂正審判1回
優先権1回
主文 1 特許庁が無効2019-800027号事件について令和6年7月
23日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 設定登録 被告は、発明の名称を「車両シートに取り付けるためのチャイルドセーフ ティシート又はベビーキャリア及びそのようなシートのためのサイドインパ クトバー」とする発明について、平成25年(2013年)6月13日(パ リ条約に基づく優先権主張外国庁受理、平成24年(2012年)6月18 日、 ドイツ国、 同年7月4日、 ドイツ国) を国際出願日とする特許出願をし、 平成30年4月27日、 特許第6328108号 (以下 「本件特許」

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判決文

令和7年10月8日判決言渡

令和6年(行ケ)第10100号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和7年7月28日

判 決

原 告 ジョイー インターナショナル

カンパニー リミテッド

同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二

同 大 野 浩 之

被 告 サイベックス ゲーエムベーハー

同訴訟代理人弁護士 平 田 憲 人

同 桑 原 秀 明

同 三 好 豊

同訴訟代理人弁理士 伊 東 忠 重

同 中 槇 利 明

同 島 村 暁

主 文

1 特許庁が無効2019-800027号事件について令和6年7月

23日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30

日と定める。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文第1項同旨

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 設定登録被告は、発明の名称を「車両シートに取り付けるためのチャイルドセーフティシート又はベビーキャリア及びそのようなシートのためのサイドインパクトバー」とする発明について、平成25年(2013年)6月13日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理、平成24年(2012年)6月18日、ドイツ国、同年7月4日、ドイツ国)を国際出願日とする特許出願をし、平成30年4月27日、特許第6328108号(以下「本件特許」という。請求項の数16。甲28)として設定登録を受けた。

⑵ 無効審判、前件訂正請求及び前件審決ア 原告は、平成31年4月3日、特許庁に対し、本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし16の発明を無効にすることを求めて審判の請求をした(無効2019-800027号。甲16)。イ 被告は、令和元年7月16日付けで訂正請求をした(以下、その訂正請求を「前件訂正請求」と、その訂正を「前件訂正」といい、これにより訂正されることになった場合の本件特許に係る発明を「前件訂正発明」という。甲18)。前件訂正請求は、特許請求の範囲については、請求項1の構成要件1F(後記2⑴)の記載中、「突出する方向に」及び「休止位置から、」の次に、それぞれ「前記チャイルドセーフティシートの」の記載を加え、請求項1を引用する請求項2ないし15もこれに連動して訂正されるとの訂正(訂正事項①)、請求項15にある「キノコ状又は円盤状端部」との記載を「キノコ状端部」に訂正するとの訂正(訂正事項②)を求めるものであった(甲18)。前件訂正請求は、明細書については、段落【0007】について誤訳の訂正を理由とする訂正を求める(訂正事項③)のみであった。この訂正は、段落【0007】の「特に、この課題は、車両のシート、より具体的には、側壁保護部を特徴とするシートシェルを持つ車両に取り付けられることになる、チャイルドセーフティシートによって解決され、このチャイルドセーフティシートは例えば、チャイルドセーフティシートの」という部分を「特に、この課題は、車両のシート、特に車両側シートに取り付けられることになる、シートシェルとシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部とを有する、チャイルドセーフティシートによって解決され、側面衝突保護部は例えば、チャイルドセーフティシートの」(下線は訂正箇所)と、「440mmの標準的な幅に位置することができ、休止位置から例えば標準的な幅の外側に位置する機能状態まで及びその反対で、側面衝突保護部は、特にシートシェルの両側部において、起こり得る横からの力が、チャイルドセーフティシートに置かれた子供の背の後ろに及びシートシェルに導かれるような方法で、配置される。」という部分を「440mmの、チャイルドセーフティシートの標準的な幅に位置する休止位置から、例えば標準的な幅の外側に位置する機能位置に、及びその反対に移動可能であり、側面衝突保護部は、特にシートシェルの両側部において、起こり得る横からの力が、チャイルドセーフティシートに置かれた子供の背の後ろに及びシートシェルに導かれるような方法で、配置される。」(下線は訂正箇所)と訂正するものであった(甲18)。ウ 特許庁は、令和2年3月27日、「特許第6328108号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「前件審決」という。)をした。原告は、令和2年7月27日、前件審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に前件審決の取消しを求める審決取消訴訟を提起した(同裁判所令和2年(行ケ)第10089号、甲31。以下「前訴」という。)。

⑶ 前訴判決による前件審決の取消し知的財産高等裁判所は、令和3年12月15日、後記5⑶の甲5に記載された発明に基づき、前件訂正発明が当業者において容易に発明できたものではないとした前件審決の判断には誤りがあるとして、前件審決を取り消す旨の判決(以下「前訴判決」という。)をし、同判決は確定した。

⑷ 再度の審判手続、2度にわたる訂正請求及び本件審決前訴判決の確定により事件が再び特許庁に係属したところ、被告は、令和4年3月9日、本件特許の特許請求の範囲を訂正する旨の訂正請求をした(甲46)。これにより、前訴判決が判決の基礎とした前件訂正請求(令和元年7月16日付け訂正請求)は、取り下げられたものとみなされた。しかし、同年8月4日付けで訂正拒絶理由通知を受けたことから、被告は、同年9月27日、意見書及び手続補正書を提出し、上記訂正請求に係る訂正事項の一部を削除するなどした(甲48、49)。その後、被告は、令和5年3月31日付けで審決の予告(甲50。上記令和4年3月9日付け訂正請求について、同年9月27日付け補正を認め、同補正後の訂正請求を認めた上で、請求項1及び同16等の一部の請求項に係る発明の特許を無効とし、その余の請求項に係る発明について請求は成り立たないとするもの。)を受け、特許法164条の2第2項に定める訂正の請求の機会を得たことから、令和5年7月4日、本件特許の特許請求の範囲(すべての請求項。一群の請求項である請求項1ないし15及び請求項16)及び明細書(段落【0007】、【0008】及び【0035】)を訂正する旨の訂正請求をした(以下、「本件訂正請求」といい、その訂正請求書(甲51)を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)。なお、本件訂正請求により、上記令和4年3月9日になされた訂正請求は、取り下げられたものとみなされた(以下、この令和4年3月9日になされた訂正請求(ただし、同年9月27日付け補正による一部訂正事項の削除前のもの)を「取下げみなし訂正請求」といい、取下げみなし訂正請求による訂正を「取下げみなし訂正」という。)。特許庁は、令和6年7月23日、本件訂正を認めた上、「特許第6328108号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕、16について訂正することを認める。特許第6328108号の請求項1~16に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(その内容は、別紙1審決書(写し)のとおり。以下「本件審決」という。附加期間90日)をし、その謄本は令和6年8月1日原告に送達された。原告は、本件審決の取消しを求めて、令和6年11月25日、本件訴訟を提起した。2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載本件訂正前の特許請求の範囲のうち請求項1及び16の記載は、下記のとおりである(以下、本件訂正前の請求項1の発明を「本件訂正前発明1」と、同請求項16の発明を「本件訂正前発明16」といい、本件訂正前の請求項1ないし16の発明の全体を包括して「本件訂正前発明」という。)。請求項1の構成要件には1Aないし1Hの符号を付す。その明細書(以下、図面と併せて「本件明細書等」という。)は甲28のとおりである。なお、前訴判決が判断の前提とした、前記1⑵イ記載の前件訂正の内容が分かるよう、前件訂正に係る訂正事項について、〔〕内に記載した。前記1⑷のとおり、令和4年3月9日付け訂正請求によって前件訂正請求は取り下げられたものとみなされたので、本件訂正前発明の請求項1には、〔〕内の記載はなかった。

⑴ 請求項1「車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、(1A)子供又は乳児を支持する支持部と、(1B)前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、(1C)前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる側面衝突保護部と、(1D)を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、(1E)前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に〔前記チャイルドセーフティシートの〕所定の幅の中に位置する休止位置から、〔前記チャイルドセーフティシートの〕前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、(1F)前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれるように、配置される、(1G)チャイルドセーフティシート。(1H)」

⑵ 請求項16「子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができ、前記折り畳み部分は、前記折り畳み部分が前記折り畳み部分の少なくとも一部が前記シートシェルの前記外側から突出する前記機能位置における所定位置でロックされるように、その上でロックバーが前記機能位置でロックする少なくとも1つの停止保持器を有し、さらに前記折り畳み部分の前記機能位置において前記所定位置でロックすることは、少なくとも1つの前記ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放スライダの作動によって解放され得る、側面衝突保護部。」3 本件訂正の内容及び本件訂正を認めた本件審決の判断理由本件訂正の内容は、本件審決第2の1(別紙1審決書(写し)3頁25行目ないし7頁2行目)に記載のとおりであり、本件訂正は、特許請求の範囲の請求項及び本件明細書等の記載に関し、訂正事項ⅠないしⅧ(以下、このうち訂正事項ⅠないしⅦをそれぞれ「訂正事項1」ないし「訂正事項7」という。)のとおり訂正するとするものである。本件訂正を認めた本件審決の判断理由は、本件審決第2の2(別紙1審決書(写し)7頁3行目ないし12頁9行目)に記載のとおりである。4 本件訂正後の特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲(本件訂正により訂正された請求項1ないし16)は、本件審決の第3(別紙1審決書(写し)12頁16行目ないし15頁8行目)に記載のとおりであるところ、このうち請求項1及び16の記載は、以下のとおりである(以下、本件訂正により訂正された請求項1ないし16に係る発明をそれぞれ「本件発明1」などといい、これらの全体を包括して「本件発明」という。なお、請求項1の構成要件には1Aないし1Hの符号を付す。下線は本件訂正による訂正箇所である。)。なお、前記1⑷の本件訂正後の明細書は、甲51中の訂正明細書記載のとおりであり、図面については甲28のとおりである。

⑴ 請求項1「車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、(1A)子供又は乳児を支持する支持部と、(1B)前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、(1C)前記支持部にではなく、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる側面衝突保護部と、(1D)を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、(1E)前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に前記チャイルドセーフティシートの所定の幅の中に位置する休止位置から、前記チャイルドセーフティシートの前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、(1F)前記側面衝突保護部は、力方向転換装置として、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、配置される、(1G)チャイルドセーフティシート。(1H)」

⑵ 請求項16「子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、力方向転換装置として、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができ、前記折り畳み部分は、前記折り畳み部分が前記折り畳み部分の少なくとも一部が前記シートシェルの前記外側から突出する前記機能位置における所定位置でロックされるように、その上でロックバーが前記機能位置でロックする少なくとも1つの停止保持器を有し、さらに前記折り畳み部分の前記機能位置において前記所定位置でロックすることは、少なくとも1つの前記ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放スライダの作動によって解放され得る、側面衝突保護部。」5 本件審決において、本件訂正後の本件発明に関して原告が主張した無効理由(無効理由4については取り下げられたので記載しない。)

⑴ 無効理由1(甲1記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)(本件審決第4の1⑴、別紙1審決書(写し)15ないし16頁)本件発明1、2、3、6ないし9及び14は、甲1(欧州特許出願公開第2384926号明細書)に基づいて、新規性を有さず、また仮に甲1に対して相違点が存在するとしても些細な微差にすぎず進歩性を有さないことから、甲1に基づいて無効とされるべきものである。本件発明4に係る発明は、甲1及び甲2(特表2008-515695号公報)に基づいて、進歩性を有さないことから、甲1及び甲2に基づいて無効とされるべきものである。本件発明5及び15は、甲1に基づいて進歩性を有さないことから、甲1に基づいて無効とされるべきものである。本件発明10ないし13及び16は、甲1及び甲3(特開平11-268565号公報、米国特許第6045183号明細書)に基づいて進歩性を有さないことから、甲1及び甲3に基づいて無効とされるべきものである。

⑵ 無効理由2(甲4記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)(本件審決第4の1⑵、別紙1審決書(写し)16頁)本件発明1ないし3、5、6、8、14及び15は、甲4(特開平7-69109号公報)に基づいて、新規性を有さず、また仮に甲4に対して相違点が存在するとしても些細な微差にすぎず進歩性を有さないことから、甲4に基づいて無効とされるべきものである。本件発明4は、甲4及び甲2に基づいて、進歩性を有さないことから、甲4及び甲2に基づいて無効とされるべきものである。本件発明7及び9は、甲4に基づいて進歩性を有さないことから、甲4に基づいて無効とされるべきものである。本件発明10ないし13及び16に係る発明は、甲4及び甲3に基づいて進歩性を有さないことから、甲4及び甲3に基づいて無効とされるべきものである。

⑶ 無効理由3(甲5記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)(本件審決第4の1⑶、別紙1審決書(写し)16頁)本件発明1ないし8、14及び15は、甲5(米国特許出願公開第2011/0012398号明細書)に対して新規性又は進歩性を有しておらず、又は甲5ないし甲7に対して進歩性を有しておらず、無効とされるべきものである。本件発明9は甲5及び甲6(ドイツ特許第19952777号明細書)、又は甲5ないし甲7(特開2009-126447号公報)に対して進歩性を有さず、無効とされるべきものである。本件発明10ないし13及び16の各々は甲5又は甲5、甲3、甲6及び甲7に対して進歩性を有さず、無効とされるべきものである。

⑷ 無効理由5(明確性要件違反)(本件審決第4の1⑷、別紙1審決書(写し)16頁)本件発明1の「チャイルドセーフティシートの所定の幅」とする記載は、権利範囲の外縁を不明確にするため、特許法36条6項2号の明確性要件に違反するものであり、無効とされるべきものである。6 本件審決の判断の概要とこれに対する本件訴訟における原告の認否

⑴ 本件審決は、本件訂正を認めるとしたところ、原告はその判断を争う(後記8の取消事由2)。

⑵ 本件審決は、上記無効理由1、2及び5について成り立たないとしたが、その判断を原告は争わない。本件審決は、無効理由3(甲5記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)についても成り立たないとしたところ、原告は、この無効理由3のうち進歩性欠如についての本件審決の認定及び判断を争う。(無効理由3のうち進歩性欠如についての本件審決の認定及び判断に関する取消事由、すなわち、甲5記載の発明に基づく進歩性判断の誤りについての取消事由を、後記8のとおり、枝番を含めて総称して「取消事由1」という。)。7 無効理由3(甲5記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)について本件審決が認定した甲5記載の発明と、本件発明1又は本件発明16との対比本件審決は、本件訂正を認めた上で、無効理由3(甲5記載の発明を主引用例とする新規性又は進歩性の欠如)を検討するに当たり、本件発明1と対比される甲5記載の発明として甲5発明1-1及び甲5発明1-2を認定し、本件発明16と対比される甲5記載の発明として甲5発明16-1及び甲5発明16-2を認定し、それぞれについて、本件発明1又は本件発明16との一致点・相違点を認定し、相違点について容易想到性を判断した。このように認定された甲5記載の発明と、本件発明1又は本件発明16との一致点・相違点は、別紙2「無効理由3について本件審決が認定した甲5記載の発明と、本件発明1又は本件発明16との対比」記載のとおりである。8 原告の主張する本件審決の取消事由

⑴ 取消事由1(甲5記載の発明に基づく進歩性判断の誤り)ア 甲5発明1-1を主引用例とする認定判断についての取消事由(ア) 取消事由1-1-1(甲5発明1-1の認定の誤り)(イ) 取消事由1-1-2(本件発明1と甲5発明1-1の一致点・相違点の認定の誤り)(ウ) 取消事由1-1-3(甲5発明1-1に基づく容易想到性の判断の誤り)イ 甲5発明1-2を主引用例とする認定判断についての取消事由(ア) 取消事由1-2-1(甲5発明1-2の認定の誤り)(イ) 取消事由1-2-2(本件発明1と甲5発明1-2の一致点・相違点の認定の誤り)(ウ) 取消事由1-2-3(甲5発明1-2に基づく容易想到性の判断の誤り)ウ 甲5発明16-1を主引用例とする認定判断についての取消事由(ア) 取消事由1-3-1(甲5発明16-1の認定の誤り)(イ) 取消事由1-3-2(本件発明16と甲5発明16-1の一致点・相違点の認定の誤り)(ウ) 取消事由1-3-3(甲5発明16-1に基づく容易想到性の判断の誤り)エ 甲5発明16-2を主引用例とする認定判断についての取消事由(ア) 取消事由1-4-1(甲5発明16-2の認定の誤り)(イ) 取消事由1-4-2(本件発明16と甲5発明16-2の一致点・相違点の認定の誤り)(ウ) 取消事由1-4-3(甲5発明16-2に基づく容易想到性の判断の誤り)

⑵ 取消事由2(本件訂正についての訂正要件の判断の誤り)

⑶ なお、本件審決は本件発明1についてしか実質的な判断をしていないところ、原告は、本件発明2ないし15についても取消事由1の各記載と同様の無効理由が存し、これを看過した本件審決にはそれにつき取消事由が存すると主張する。

第3 当事者の主張

1 取消事由1(甲5記載の発明に基づく進歩性判断の誤り)に含まれる枝番の

各取消事由に関する当事者の主張は、別紙3「取消事由1に関する当事者の主張」のとおりである。

2 取消事由2(本件訂正についての訂正要件の判断の誤り)

〔

(原告の主張)

〕

⑴ 本件明細書等の段落【0008】に対する訂正である訂正事項7は、

「誤訳の訂正」を目的とするものとは認められない。このため、本件審決は、本件訂正の訂正要件の判断にも誤りがある。「誤訳の訂正」に関し、審判便覧(甲55)では「『誤訳の訂正』とは、翻訳により外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、外国語書面における意味を表す記載に訂正することをいう。」とされている。つまり、誤訳の訂正としては、「外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、外国語書面における意味を表す記載に訂正する」ことだけが認められ、それ以外の内容で訂正することは認められない。被告は、後記〔

(被告の主張)

〕⑴にあるとおり、訂正前の内容が逐語訳であったことを認めるとともに(外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなってはいなかったことを認めるとともに)、前後の文脈を考慮し、意図的に意味内容を変更して翻訳したことを認めている。よって、被告が行った訂正は「誤訳の訂正」を目的としたものとはいえない。

⑵ 訂正事項7に係る「Auf diese Weise dient der Seitenaufprallschutz zum

einen als Knautschzone und darüber hinaus als Kraftumlenkvorrichtung,die bei einem Unfall etwaig auftretende Seitenkräfte nicht linear auf denKörper des Kindes, sondern linear am Körper des Kindes vorbei in dieSitzschale einleitet, die ihrerseits Dämpfungseigenschaften aufweist.」とのドイツ語の原文の記載は、仮に

(被告の主張)

する「力方向転換装置」という言葉を用いた場合でも、「このようにして、側面衝突保護部は一方ではクラッシュゾーンとしての役目を果たし、それに加えて、事故のときに発生する可能性があるサイドフォースを子供の身体へ直線的に導入するのでなく子供の身体のそばを直線的に通過させて、それ自体として緩衝特性を有するシートシェルへと導入する力方向転換装置としての役目を果たす。」と翻訳されるべきものであり、被告が述べるように翻訳されるものではない。

⑶ これらのことから、本件訂正の訂正事項7は、

「誤訳の訂正」という訂正の目的に合致するものではなく、本件審決は訂正要件の判断に誤りがあるから、違法として取り消されるべきである。〔

(被告の主張)

〕

⑴ 審判便覧に

(原告の主張)

する引用部分の記載があること及びドイツ語の引用部分が出願に係る原文に該当する「WO2013/189819」に存在することは認める。本件訂正に係る本件明細書等の段落【0008】についての訂正の目的は、誤訳の訂正である。被告は、段落【0008】に関する訂正事項7の一部として、「子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに」という記載を、「子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて」という記載に訂正した。これは「直線的」という単一の訳語のみに着目し、それ自体が誤訳だったために「直接的」という訳語に訂正したものではなく、この訂正は、全体として意味内容がより原文に忠実となることを目的としたものであり、この意味での誤訳の訂正である。すなわち、本件訂正請求書(甲51、15頁)に記載のとおり、本件明細書等の段落【0008】の該当部分の原文(WO2013/189819)は、①主文「Aufdiese Weise dient der Seitenaufprallschutz zum einen als Knautschzoneund darüber hinaus als Kraftumlenkvorrichtung, 」、②副文1「die beieinem Unfall etwaig auftretende Seitenkräfte nicht linear auf den Körperdes Kindes, sondern linear am Körper des Kindes vorbei in die Sitzschaleeinleitet,」、③副文2「die ihrerseits Dämpfungseigenschaften aufweist.」の三つに分けられる。このうち、①は「このように、側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力方向転換装置としても働き」を意味し、②は上記で問題となっている翻訳箇所であり、そして、③は「減衰特性を有するシートシェル内に導く。」を意味する。ここで、本件発明の「力方向転換装置」は、上記①、③に記載されているとおり、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体にそのまま伝えるのではなく(つまり、そのままの方向で進んでいたとしたら子供の体に伝わるはずの力の方向を変えることによって)、シートシェルに導くように力の方向を変えるように機能するものである。そして、かかる機能を明確に特定するためには、上記②の箇所を逐語訳的に「衝突の場合、発生し得る横からの力を子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに、」と翻訳するよりも、「衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて、」と翻訳した方が、前後(①、③)の文脈とも整合し、意味内容がより正確で、原文に忠実になる。したがって、上記のとおりの訂正としたものである。なお、上記で記載した「子供の体に直接的に伝達するのではなく」と同様の内容が、段落【0008】の他の部分、及び段落【0019】にも記載されている。

⑵ 本件訂正に係る訂正事項7には、上記①の「このように、側面衝突保護部

は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力方向転換装置としても働き」、上記③の「減衰特性を有するシートシェル内に導く。」も含まれている。本件訂正前の記載には、「方向転換」及び「シートシェル」に関する記載が存在しておらず、各単語の語順が異なるなど、明確な誤訳が存在していた。したがって、本件訂正はかかる誤訳を訂正する目的で行われたことは明白である。なお、被告が上記⑴で「逐語訳」と記載した趣旨は、かかる①及び③の訂正のみを行い、上記②に関し、例えば「linear」を「直線的」と翻訳する等の逐語訳的な訂正前の記載のままにした場合、①及び③の訂正と合わせて読むと「外国語書面における意味とは異なる意味を有する」こととなるから、訂正が必要であったとの趣旨である。そもそも外国特許を日本語に翻訳する場合においては、各単語を一つずつ逐語訳的に訳していたのでは日本語として不自然になる場合が多く考えられ、訂正前の記載が逐語訳であったからといって、「外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとはなっていなかったことを認め」ることにはならない。むしろ本件訂正前の記載のままでは意味内容が正確ではないことから、本件明細書等の段落【0008】の意味を原文に忠実になるように本件訂正を行ったものであり、

(原告の主張)

は誤りである。

第4 当裁判所の判断

1 本件訂正前発明の意義について本件明細書等(甲28)には、以下の記載があるところ、本件訂正前発明の意義は、次のとおりと認められる(下線は判決で付記)。

⑴ 技術分野本件訂正前発明は、側面衝突保護部が取り付けられたチャイルドセーフティシート、又は、側面衝突保護部に関するものである(段落【0001】及び【0002】)。

⑵ 背景技術チャイルドセーフティシートは、特に事故が発生した場合に、子供らに保護を提供する。このようなチャイルドセーフティシートを取り付ける手段は、シートの横方向への運動からチャイルドセーフティシートを十分に固定しないので、側面衝突において問題があり、従来から、チャイルドセーフティシートの側部に渡って伸びる、ストラップ又はエアクッションの形態のエネルギー吸収要素である、側面衝突保護部を備えていた(段落【0003】)。

⑶ 発明が解決しようとする課題これら従来の装置は、チャイルドセーフティシートの子供に直接衝撃を与え、チャイルドセーフティシートは衝撃を十分吸収できない、又は、消散させることができなかったため、子供に最大の安全を提供することができないことが明らかとなっている(段落【0003】)。そこで、本件訂正前発明の目的は、前述の欠点を回避するとともに改良された側面衝突保護部を提供することにある(段落【0005】)。

⑷ 課題を解決するための手段ア 本件訂正前発明1は、シートシェルの内側に子供又は乳児を支持する支持部を有し、シートシェルの外側でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部を有し、側面衝突保護部は、休止位置から、所定の幅の外側に位置する機能位置に、及びその反対に移動可能であり、特にシートシェルの側部において、衝突時に起こり得る横からの力が、シートシェルに導かれるような方法で、配置される構成を採用したものである(請求項1、段落【0007】及び【0031】)。そして、本件訂正前発明1の重要な態様は、伝達又は力又はエネルギーが子供の体に直接衝撃を与えないが、代わりに子供の体から離れて及びシートシェルに導かれるような方法でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部にあり、これを、チャイルドセーフティシートの座部領域より上や背部に、配置し、これにより、そのようにすることで、ベースに取り付けられるチャイルドセーフティシートの転倒が、効果的に防止され、また、子供は側面衝突の影響の到達範囲におらず、代わりに、チャイルドセーフティシートの構造要素、すなわちシートシェルがあり、したがって子供への直接のエネルギー伝達が構造的に回避されるものである(段落【0008】、【0018】、【0019】、【0031】及び【0035】)。イ 本件訂正前発明16は、側面衝突保護部であって、側面衝突保護部は、シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及びその逆に変更するために、前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができ、折り畳み部分は、シートシェルの外側から突出する機能位置における所定位置でロックされるように、ロックバーが前記機能位置でロックする停止保持器を有し、また、ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放スライダの作動によって解放されるものである(段落【0010】)。

2 本件訂正に関する事情⑴ 本件訂正に対する本件審決の判断本件訂正は、訂正事項1ないし7(訂正事項ⅠないしⅦ)に係るものを含む。本件審決(本件審決第2の2⑼)は、別紙1審決書(写し)12頁5ないし9行目記載のとおり、本件訂正に係る訂正事項はいずれも特許法134条の2第1項ただし書1ないし3号に規定することを目的とするものであり、同法134条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する旨判断した。⑵ 本件訂正の訂正事項と訂正事項に関する被告の主張ア 訂正事項7(ア) 本件訂正の訂正事項7(本件審決第2の1⑺、別紙1審決書(写し)5頁22行目ないし6頁5行目)は、本件明細書等の段落【0008】を訂正するものであり、本件訂正前の同段落の記載は、以下のとおりである(下線は本件訂正により訂正しようとする部分である)。「これに関連して、本発明の重要な態様は、伝達又は力又はエネルギが子供の体に直接衝撃を与えないが、代わりに子供の体から離れて及びシートシェルに導かれるような方法でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部にある。このように、側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力伝達装置としても働き、衝突の場合、発生し得る横からの力を子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに、導き且つ減衰させる特徴を示す。非常に有利には、これは、チャイルドセーフティシートの子供に衝撃を与えるエネルギを減少させるのに役立つので、子供の怪我のリスクは、現在知られているチャイルドセーフティシートに比べて大幅に減少する。」訂正事項7は、上記記載を、以下のとおりに訂正するとするものである(下線は本件訂正により訂正される部分である。)。「これに関連して、本発明の重要な態様は、伝達又は力又はエネルギが子供の体に直接衝撃を与えないが、代わりに子供の体から離れて及びシートシェルに導かれるような方法でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部にある。このように、側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力方向転換装置としても働き、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて、減衰特性を有するシートシェル内に導く。非常に有利には、これは、チャイルドセーフティシートの子供に衝撃を与えるエネルギを減少させるのに役立つので、子供の怪我のリスクは、現在知られているチャイルドセーフティシートに比べて大幅に減少する。」(イ) 被告は、本件訂正請求書(甲51)において、明細書の【0008】についての訂正事項7に係る訂正についての原文の記載は、「Auf dieseWeise dient der Seitenaufprallschutz zum einen als Knautschzoneund darüber hinaus als Kraftumlenkvorrichtung, die bei einem Unfalletwaig auftretende Seitenkräfte nicht linear auf den Körper desKindes, sondern linear am Körper des Kindes vorbei in die Sitzschaleeinleitet, die ihrerseits Dämpfungseigenschaften aufweist.」の部分(原文(WO2013/189819)の3頁9ないし13行目。以下、「本件該当原文」という。)であるとし、同記載によれば、「側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力方向転換装置としても働き、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて、減衰特性を有するシートシェル内に導く。」旨が明らかであるとしていた(甲51、15ないし16頁)。なお、被告は、本件審決においても、同趣旨の主張をしていた(本件審決第2の2⑵、別紙1審決書(写し)7頁下から5行目ないし9頁9行目)。(ウ) 本件審決は、訂正事項7が適法であることを示す箇所において、本件該当原文について、「『am Koerper des Kindes vorbei』は、『anvorbei』=『an』『dem Koerper des Kindes』 『vorbei』(「子供の体」の3格)であり、『子供の体のかたわらを通りすぎて』すなわち『子供の体のそばを通り過ぎて』となる(段落[0019]等において同じ)(下記根拠2参照)。」(本件審決第2の2⑵、別紙1審決書(写し)8頁31ないし35行目、本件審決はドイツ語の「ウムラウト」を「e」で代用している。)と説示し、被告は、本件訂正請求書において、訂正事項7の訂正の理由について、上記説示と同じ主張をしていた(甲51、15頁)。イ 訂正事項3(ア) 訂正事項3(本件審決第2の1⑶、別紙1審決書(写し)4頁4ないし13行目)は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の2⑴)にある「前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれるように、配置される」(1G)との記載を、「前記側面衝突保護部は、力方向転換装置として、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、配置される」(1G)(下線部は訂正部分。前記第2の4⑴)に、訂正するものである。請求項1を引用する請求項2ないし15についても同様の訂正をするものである。(イ) 本件訂正請求書において、訂正事項3は、本件訂正後の請求項1に係る発明における側面衝突保護部が「力方向転換装置」として「横からの力」を導く方向を「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように」とより具体的に特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法134条の2第1項ただし書1号)であるとされており(甲51、9ないし10頁)、本件審決でも同様の結論が主張されていた(本件審決第2の2⑸、別紙1審決書(写し)11頁1ないし14行目)。また、本件訂正請求書において、訂正事項3は、本件訂正事項7に係る本件明細書等の段落【0008】の訂正が認められることを前提として、本件訂正後の段落【0008】の記載、段落【0019】及び【0020】の記載を根拠に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法134条の2第9項、126条5項)であるとされていた(甲51、10頁)。本件訂正請求書において上記のとおり訂正の根拠とされていた本件明細書等の段落【0019】及び【0020】の該当部分(いずれも本件訂正の訂正事項に含まれていない。)の記載は以下のとおりである(甲51、10頁)。「起こり得る横からの力が、従来技術のチャイルドセーフティシートの場合のように側面衝突の場合にチャイルドセーフティシートの子供に直接影響を及ぼす、のではなく、そのかわりにその周りに迂回されシートシェルに導かれる」、「子供は側面衝突の影響の到達範囲におらず、代わりに、チャイルドセーフティシートの構造要素、すなわちシートシェルがあり、したがって子供への直接のエネルギ伝達が構造的に回避されるので、本発明による側面衝突保護部による最適な迂回が可能である」(段落【0019】)「側部要素は、例えば、異なる高さで車両の接触面と接触することができ、それによって、1つには、衝撃吸収領域が作られるが、側面衝突の場合のエネルギの迂回もまた向上され得る」(段落【0020】)ウ 訂正事項5(ア) 訂正事項5(本件審決第2の1⑸、別紙1審決書(写し)4頁17ないし24行目)は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項16(前記第2の2⑵)にある「前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され」との記載を、「前記側面衝突保護部は、力方向転換装置として、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され」(下線部は訂正部分。前記第2の4⑵)に訂正するものである。(イ) 本件訂正請求書において、訂正事項5は、本件訂正後の請求項16に係る発明における「側面衝突保護部」が「シートシェルに取り付けられる」態様を「力方向転換装置として、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように」と具体的に特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法134条の2第1項ただし書1号)であるとされており(甲51、12頁)、本件審決でも同様の結論が主張されていた(本件審決第2の2⑺、別紙1審決書(写し)11頁21ないし31行目)。また、本件訂正請求書において、訂正事項5は、本件訂正事項7に係る段落【0008】の訂正が認められることを前提として、本件訂正後の段落【0008】の記載、段落【0019】及び【0020】の記載を根拠に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正(特許法134条の2第9項、126条5項)であるとされていた(甲51、12頁)。本件訂正請求書において上記のとおり訂正の根拠とされていた本件明細書等の段落【0019】及び【0020】の該当部分は、前記イ(イ)のとおり訂正事項3について示されていた部分と同じであった。⑶ 取下げみなし訂正請求の訂正事項と訂正事項に関する被告の主張ア 被告は、令和5年に行われた本件訂正請求より前に、令和元年に前件訂正請求(前記第2の1⑵イ)を、令和4年3月9日に取下げみなし訂正請求(前記第2の1⑷)をそれぞれ行った。このうち取下げみなし訂正請求の内容は、訂正事項ⅠないしⅩⅢからなるところ、訂正事項ⅠないしⅩは特許請求の範囲の訂正を求めるものであり、訂正事項ⅩⅠは本件明細書等の段落【0007】、訂正事項ⅩⅡは本件明細書等の段落【0008】、訂正事項ⅩⅢは本件明細書等の段落【0035】の訂正を求めるものであった。そして、訂正事項ⅩⅡは、本件明細書等の段落【0008】の記載につき、誤訳の訂正を理由として、「これに関連して、本発明の重要な態様は、伝達又は力又はエネルギが子供の体に直接衝撃を与えないが、代わりに子供の体から離れて及びシートシェルに導かれるような方法でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部にある。このように、側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、また力伝達装置としても働き、衝突の場合、発生し得る横からの力を子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに、導き且つ減衰させる特徴を示す。非常に有利には、これは、チャイルドセーフティシートの子供に衝撃を与えるエネルギを減少させるのに役立つので、子供の怪我のリスクは、現在知られているチャイルドセーフティシートに比べて大幅に減少する。」を「これに関連して、本発明の重要な態様は、伝達又は力又はエネルギが子供の体に直接衝撃を与えないが、代わりに子供の体から離れて及びシートシェルに導かれるような方法でシートシェルに取り付けられる側面衝突保護部にある。このように、側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、さらに、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直線的に導くのではなく、直線的な子供の体の周りを迂回して、減衰特性を有するシートシェル内へと導く力偏向装置としても働く。非常に有利には、これは、チャイルドセーフティシートの子供に衝撃を与えるエネルギを減少させるのに役立つので、子供の怪我のリスクは、現在知られているチャイルドセーフティシートに比べて大幅に減少する。」(下線部は訂正箇所)と訂正するものであった(甲46、5頁、20頁)。なお、取下みなし訂正請求の訂正事項ⅩⅡは、令和4年8月4日付け訂正拒絶理由通知を受けて、同年9月27日付け手続補正書(甲48)により、同訂正事項は削除された(甲48、2頁、甲49、2頁)。そして、令和5年3月31日付け審決の予告(甲50)は、この削除に係る補正を認めていた。イ 被告は、取下みなし訂正請求書において、訂正事項ⅩⅡの訂正の理由について、「原文の3ページ9行目乃至13行目の記載(判決注:本件該当原文)によれば、『さらに、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直線的に導くのではなく、直線的な子供の体の周りを迂回して、減衰特性を有するシートシェル内へと導く力偏向装置としても働く』旨が明らかである。」と主張していた(甲46、22頁。下線は、訂正請求書(甲46)自体に付記されていた。)。ウ 上記ア、イによれば、被告は、誤訳の訂正を理由とする取下みなし訂正請求の訂正事項ⅩⅡにおいて、本件該当原文(前記2⑵ア(イ))の2か所の「linear」という文言を「直線的」と訳すことを内容に含む訂正を求めていたと認められる。⑷ 辞書に記載された語の意味辞書によれば、「linear」は、「1a)直線状の、線状の・・・b)⦅比⦆コンスタントな・・・2a)〘美〙線的な(線による形の表現を重視した).b)〘楽〙線的な(和声よりも各声部の自由な進行を重視した).3〘数〙線形の、一次の・・・」(小学館 独和大辞典〔第2版〕)との意味を有するとされている。他方、「直線」は、「①まっすぐのすじ。まっすぐな線。②〔数〕終始同一方向をもつ線、二点間を最短距離で結ぶ線・・・」((広辞苑第7版)、「まっすぐな線。二点を結ぶ最短の線。」(大辞林第4版)との意味を有し、「直接」は、「①中間に隔てるものがないこと。じかに接すること。」「②他のものを介さず、じかであること。」(広辞苑第7版。甲54の1)、「中間に他のものをはさまないで、ただちに接すること。じかに対象に関係することや、そのさま。時間的・空間的に、間をおかないで物事が進んだり、行動を起こしたりするさまを表し、副詞的にも用いる。」(精選版日本国語大辞典。甲54の2)との意味を有する。

3 原告の主張する取消事由2についての検討⑴ 事案に鑑み、取消事由2から判断する。本件特許の出願は、外国語でされた国際特許出願(外国語特許出願。特許法184条の4第1項)であり、本件訂正は、出願に際し提出された翻訳文に基づき登録された本件特許を訂正するとするものであって、誤訳の訂正を目的とする訂正(特許法134条の2第1項ただし書2号)を含むものである。誤訳の訂正を目的とする訂正は、平成6年法律第116号による特許法の改正において、外国語を日本語に翻訳する過程での誤訳があった場合に、外国語による記載内容をもとに誤訳を訂正することができないと発明の適切な保護が図れないとされる問題を解消するため、新たに導入された外国語書面出願制度(特許法36条の2)において、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更しないこと等を条件として認められたものであり、外国語特許出願についても同様に認められたものである。このように、誤訳の訂正を目的とする訂正を認めた趣旨に照らすと、誤訳の訂正とは、翻訳により生じた記載上の誤りを、原文の記載内容をもとに訂正するものをいい、その他特許法134条の2第9項で準用される同法126条5項、同条6項等の訂正要件を満たすものに限り、許されるものと解される。この点につき、特許庁作成の審判便覧の訂正要件の項においても、「『誤訳の訂正』とは、翻訳により外国語書面における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、外国語書面における意味を表す記載に訂正することをいう。」ものであって、「誤訳の訂正が認められるためには、設定登録時(既に確定した訂正がある場合は、その確定時)の明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載の意味が、外国語書面における意味とは異なることが必要である。」と記載されており、これは、上記外国語書面出願についての記載ではあるものの、外国語特許出願にも同様に当てはまるものと理解されているものと認められる(甲55、弁論の全趣旨)。外国語特許出願においては、国際出願日における願書が特許法36条1項により提出した願書とみなされるが、願書に添付して提出した明細書、(特許)請求の範囲及び図面とみなされるのは、その翻訳文である(特許法184条の4第1項、同法184条の6第1項及び第2項)。これらの事実を勘案すると、外国語特許出願に係る特許の無効審判請求における訂正請求において、特許法134条の2第1項ただし書2号に定める誤訳の訂正に当たるためには、①国際出願日における国際出願の明細書、(特許)請求の範囲又は図面(特許法184条の19。以下「原文」という。)の記載と、設定登録時(訂正審判による訂正があれば訂正後)の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の意味が、翻訳の誤り(誤訳)により異なること、②訂正後の記載は、原文の記載の意味を表すものとして、両記載の意味が一致すること、の二つの要件を満たすことが必要であると解される。⑵ これを本件についてみると、本件訂正に係る訂正事項7における訂正は、原文(「WO2013/189819」であることに当事者間に争いがない。)における「linear」が「直線的」と翻訳されていた本件訂正前の本件明細書等の段落【0008】の記載を、本件訂正により、誤訳の訂正を目的として「直接的」とする訂正事項を含むものであった(前記2⑵ア)。被告は、前記第3の2〔被告の主張〕⑴のとおり、上記訂正事項に関し、「直線的」という単一の訳語のみに着目し、それ自体が誤訳だったために「直接的」という訳語に訂正したものではなく、全体として意味内容が原文に忠実となることを目的としたものであると主張している。しかしながら、辞書によれば、「linear」は、「1a)直線状の、線状の」という意味を有すると認められる(前記2⑷)。そして、被告は、前件訂正請求(前記第2の1⑵イ)において、段落【0008】の上記「直線的」に係る記載を訂正の対象としていないどころか、前記2⑶のとおり、誤訳の訂正を理由とする取下みなし訂正請求の訂正事項ⅩⅡにおいて、本件該当原文(前記2⑵ア(イ))の2か所の「linear」という文言を「直線的」と訳すことを明示的に内容に含む訂正を求めており、それが原文の正しい翻訳である旨を主張していたところである。このような事情に鑑みれば、原文の「linear」という文言を明細書において「直線的」と訳した場合に、原文の記載と明細書の記載の意味が異なるとは認められない。他方、「直線」という語と「直接」という語は意味が異なるから(前記2⑷)、原文の「linear」という文言を明細書において「直線的」と訳す場合には、原文の記載と明細書の記載は意味が異なり、これらが一致するとは認められない。そうすると、訂正事項7(前記2⑵ア)においては、訂正前の本件明細書等の「直線的」の意味が、翻訳の誤りにより原文の「linear」の意味と異なるものということはできないから、上記⑴の要件の①を満たすものといえない上に、訂正後の記載が原文の記載の意味を表すものと一致するものともいえないから、同要件の②も満たさない。以上によれば、訂正事項7の訂正前の「直線的」との記載の原文は「linear」であるところ、これを「直接的」の誤訳であるとして、その訂正を求めることは、誤訳の訂正の要件を充足せず、訂正事項7は特許法134条の2第1項ただし書き2号に定める誤訳の訂正には当たらないと認められる。(なお、本件明細書等の段落【0008】には、本件訂正に係る「直接」の語のほかに、本件訂正と関連しない部分に「子供の体に直接衝撃を与えない」との記載があり、この部分の「直接」に該当する部分の原文は、「unmittelbar」である。また、被告が本件訂正請求書で訂正事項3及び訂正事項5について参照した(前記2⑵イ(イ)、同ウ(イ))段落【0019】に2か所ある「直接」の語、すなわち「子供に直接影響を及ぼす」と「子供への直接のエネルギ伝達」の「直接」は、いずれも「unmittelbar(e)」が原文であり、これらはいずれも本件訂正の対象となっていなかった。このように原文(WO2013/189819)の「unmittelbar(e)」を「直接(的)」、「linear」を「直線的」と訳していたものとして本件明細書等の記載は整合が取れていたものである。)。⑶ア この点につき、本件審決は、訂正事項7の判断において(本件審決第2の2⑵)、別紙1審決書(写し)8頁36ないし38行目においては、本件該当原文に「前記の力方向転換装置が、衝突の際に発生し得る横からの力、通常は子供の体に直線的に向いている力の方向を変えて、シートシェルの中に導入することが記載されている。」(下線は判決で付記)としながら、その一方で、同9頁5ないし9行目では、「以上により、原文の3ページ9行~13行(判決注:本件該当原文)の記載によれば、『側面衝突保護部は、一例として、クラッシュゾーンとして、または力方向転換装置としても働き、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて、減衰特性を有するシートシェル内に導く』ことは明らかである。」(下線は判決で付記)として訂正を認める判断をしている。しかし、本件審決の上記記載のうち前者は、子供の体に直線的に向いている力の方向を変えて、シートシェルの中に導入すること、すなわち力の方向を変えることを意味しているのに対し、後者は、力が、中間に隔てるものがなくじかに子供に伝わるのではなく、シートシェル内にじかに伝わること、すなわち力がじかに伝わる対象を変えることを意味していると認められ、両者の意味は異なる。したがって、前者の事項が本件該当原文に記載されているとしながら、本件該当原文には後者の事項が記載されているものとして、誤訳の訂正を理由に訂正を認めるのは、理由に齟齬があるというべきである(なお、被告は、本件訂正請求書(甲51、15頁)で、訂正事項7の訂正の理由中において、上記部分に関し、「通常は子供の体に直線的に向いている力の方向を変えて、シートシェルの中に導入することが記載されている。」(下線は判決で付記)と主張している。)。イ 本件審決は、訂正事項7が適法であることを示す箇所において、本件明細書等の段落【0019】の記載を参酌する旨説示し、被告は、本件訂正請求書において、訂正事項7の訂正の理由について、上記説示と同じ主張をしていた(前記2⑵ア(ウ))。上記説示中においては「(段落[0019]等において同じ)」と記載されているのみであり、具体的に本件明細書等の段落【0019】中のどの部分を参酌するかは示されていなかったが、上記説示において参酌されたのは、力が子供の体を迂回する旨を示す箇所であり、本件訂正請求書において訂正事項3の根拠とされた段落【0019】の部分(前記2⑵イ(イ))と同じ箇所であるものと認められる。しかし、特許法134条の2第1項ただし書2号に定める誤訳の訂正に当たるための要件は、前記⑴の①及び②であり、明細書の記載の訂正が誤訳の訂正に当たるか否かを判断するために必要なのは、訂正の対象となっている当該記載部分に該当する原文の記載部分の意味、訂正前の当該記載部分の意味及び訂正後の当該記載部分の意味であって、訂正の対象となっている当該記載部分以外の明細書の記載を参照する余地は基本的にないというべきであるし、訂正事項7が上記の要件①、②を満たすかどうかを判断するために、訂正の対象となっている当該記載部分以外に段落【0019】を参酌しなければならない特段の理由はない。本件明細書等の段落【0019】の記載の故に、本件該当原文に2か所ある「linear」の語が、「直線的」というその語の意味を離れて解釈される理由もない。したがって、本件審決及び被告の本件訂正請求書(甲51)が訂正事項7の訂正の根拠として参酌する本件明細書等の段落【0019】の記載は、そもそも参照すべきものではないと解される。仮に、本件訂正請求書において訂正事項3の根拠とされた段落【0019】の部分(前記2⑵イ(イ))と同じ箇所を参照するとしても、この部分の記載は、「子供に直接影響を及ぼす、のではなく」、「子供への直接のエネルギ伝達」(前記⑵のとおり、この部分の「直接」の語の原文はいずれも「unmittelbar(e)」であった。)とあるとおり、衝突の際の横からの力の向きについてのものではなく、上記2⑷の「直接」の意味からも明らかなとおり、力が「子供」にじかに伝わるか否かについてのものであるから、訂正事項7の誤訳の訂正を目的とする訂正の根拠となり得ないものと認められる。そうすると、本件審決の判断においては、誤訳の訂正を理由として訂正を認める相当な根拠が示されておらず、この点からも、本件審決の判断は誤りであるといえる。⑷ 加えて、訂正事項7は、被告の主張によれば、同訂正に係る「力方向転換装置」との関係で「直接的」と訂正することを意図するものであるところ、本件訂正前の「直線的」は、異なる構成間での力の伝わり方、即ち力の方向を規定するものであり、力の方向に係る装置(本件訂正前の「力伝達装置」。なお、取下げみなし訂正においては「力偏向装置」、本件訂正においては「力方向転換装置」。)と関連するものと理解できるところ、これを「直接的」と訂正することは、前記2⑷の「直接」の意味にも鑑みると、力の伝達経路の形態に関するものとして、力の伝達の態様に関する記載を追加するものと解される。すなわち、本件訂正前の段落【0008】に記載された「力伝達装置」(原文の記載は「Kraftumlenkvorrichtung」)は、子供の体に向かう力の方向をシートシェルに導く方向とすること、即ち、同装置が存することにより、力の伝達方向が異なることをいうものと解され、これに従い、同段落には、「子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに、導き且つ減衰させる」と記載されていたところ、これを「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」と訂正するのは、力の方向についての記載を力の伝達の態様に関する記載へと変えるものである。そのため、当該部分の表現を「直線的」とするのと「直接的」とするのでは、概念が異なるものであって、誤訳の訂正には当たらないほか、本件審決は否定しているものの(本件審決第2の2⑼、別紙1審決書(写し)12頁6ないし8行目)、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものにも当たり得る(特許法134条の2第9項の準用する同法126条6項)(ただし、特許法134条の2第9項の準用する同法126条6項の判断手法については後記5⑵参照)。

⑸ そうすると、訂正事項7に係る訂正を認めた本件審決の判断は誤りであり、訂正事項7が認められた後の本件明細書等の段落【0008】等の記載を根拠とし、願書に添付した明細書の記載の範囲内の訂正であることを理由とする訂正事項3(請求項1の訂正、前記2⑵イ)及び訂正事項5(請求項16の訂正、前記2⑵ウ)は、いずれも根拠を欠くものであり、請求項1(その記載を引用する請求項2ないし15を含む)及び請求項16の特許請求の範囲の記載の訂正を認めた本件審決の判断も誤りであるから、原告の主張する取消事由2は理由がある。

4 被告の主張について被告は、前記第3の2〔被告の主張〕⑴及び⑵のとおり、本件訂正事項について、翻訳文の全体として意味内容がより原文に忠実となることを目的としたものであり、この意味での誤訳の訂正である旨、具体的には、本件発明の「力方向転換装置」は、衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体にそのまま伝えるのではなく、シートシェルに導くように力の方向を変えるように機能するものであって、かかる機能を明確に特定するためには、「衝突の場合、発生し得る横からの力を子供の側部から直線的に離れて、子供の体に入る代わりに、」と翻訳するよりも、「衝突の際に発生し得る横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく、子供の体のそばを通り過ぎて、」と翻訳した方が、前後の文脈とも整合し、意味内容がより正確で、原文に忠実になる旨を主張する。しかし、被告の主張する上記内容は、原文に記載された事項ではなく、原文の記載に照らして被告が解釈した内容というほかない。しかも、被告は、取下げみなし訂正請求においては、前記2⑶のとおりの、上記とは全く異なる内容を、原文に記載された内容であると主張していたものである。そうすると、本件訂正事項は、原文の記載と異なる翻訳による誤りを訂正するものではなく、被告の現時点での解釈に沿うように訂正すること目的としたものといえ、誤訳の訂正として許容されるものとはいえない。また、被告が主張するような、訂正前の「直線的」とした場合には意味内容が不明瞭であり、訂正後の「直接的」とすることで明確で原文に忠実となるといえる事情も認められない。なお、被告主張のように、誤訳を訂正した際に、一部の文言に対して原文とは異なる意味の翻訳を採用しなければ、全体として意味内容が不明瞭となるとするのであれば、それは取りも直さず原文の記載自体に問題があることを意味し、そのような問題を解消する訂正は、翻訳の問題により生じる誤りを訂正することを目的とする誤訳の訂正の趣旨に沿うものとはいえない。したがって、被告の上記主張は採用することができない。

5 その他の点に係る本件審決の判断の当否について⑴ 本件は、前訴判決の確定後の再度の審決に係る審決取消訴訟であることに鑑み、その他本件において主張された内容と関連する本件審決の判断の当否についても簡潔に検討し、付言する。ア 本件審決の認定した、本件発明1と、甲5記載の発明のうちの甲5発明1-1(別紙2の1⑴)との相違点A(本件発明1では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置として」、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく」前記シートシェルに導くように、配置されるのに対して、甲5発明1-1では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられており、力方向転換装置についての特定はない点。別紙2の1⑵)に係る本件発明1の構成は、本件訂正後の請求項1の記載(同請求項1の全体の記載は前記第2の4⑴のとおり)及び「直接」の語の前記2⑷のとおりの辞書的意味からすると、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」が、「じかに」「子供の体に直接的に伝達するのではな」いことを意味するものと解される。イ 本件審決は、本件発明の意義に関して、本件訂正後の本件明細書等には、発明が解決しようとする課題を解決するために二つの解決手段が開示されているとし、解決手段2として、「側面衝突保護部自体が力方向転換装置として機能することで、衝突の際に発生し得る横からの力の方向を変え、方向を変えられた力は、子供の体のそばを通り過ぎて、すなわち、子供の体を迂回して、減衰特性を有するシートシェルに導かれるもの(【0008】)」と認定しているが(本件審決第5の2⑵ウ、別紙1審決書(写し)49頁)、本件審決が参照した本件訂正後の本件明細書等の段落【0008】の記載は、前記2⑵ア(ア)記載のとおりであって、力方向転換装置としても働く側面衝突保護部が、「力の方向を変え」、「方向を変えられた力」を「シートシェルに導く」ことの記載はなく、本件審決の認定した解決手段2は、本件訂正後の請求項1及び本件明細書等の記載事項に基づくものとはいえない。本件発明における課題解決手段は、本件訂正がされたことを前提とすると、前記1のとおりの本件訂正前発明の内容及び前記2⑵ア、イのとおりの訂正事項7、3の内容に照らせば、「側面衝突保護部(30)は、力方向転換装置として、前記チャイルドセーフティシート(10)が前記車両の前記シート(100)に取付けられた状態において、前記車両の側部(40)から前記チャイルドセーフティシート(10)に伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェル(20)に導くように、配置される」ことにあると解されるものであって、本件審決が行った解決手段2の認定は、前記のとおり訂正後の請求項1の記載に沿ったものとはいえない。ウ 甲5の段落[0051]には、「図3は、運搬用ハンドル8を備えた幼児運搬具7を示している。破線は、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2の取り付けが特に有利であるチャイルドシートの領域を示している。これらは、乳児運搬具における運搬用ハンドルの固定領域11、運搬用ハンドルのサイドアーム12及び乳児用運搬具の下側領域13である。領域13では、幼児用キャリアのキャリア材料がパッドで覆われていないので、この領域は、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2を組み込むのに特に適している。パッドで覆われているチャイルド安全シートの領域に、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2を位置付けることも基本的には可能である。」(本件審決第5の1⑶ア)との記載があることから、甲5記載の発明においては、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、乳児運搬具における運搬用ハンドルの固定領域11、運搬用ハンドルのサイドアーム12又は乳児用運搬具の下側領域13に取り付けられるものと認められ、特に乳児用運搬具の下側領域13は、幼児用キャリアのキャリア材料がパッドで覆われていないので、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2を組み込むのに特に適しているものと認められる。そのため、甲5記載の発明として、乳児用運搬具の下側領域13にエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が取り付けられたものを認定し、容易想到性に関して、そのような発明から、本件訂正後の本件発明1の「前記側面衝突保護部は、力方向転換装置として、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、配置される」(前記第2の4⑴の1G)との構成を容易に想到し得るかが検討されるべきものと解される。しかし、本件審決は、甲5記載の発明(甲5発明1-1、甲5発明1-2、甲5発明16-1、甲5発明16-2、別紙2の1⑴、2⑴、3⑴、4⑴)のいずれについても、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2が運搬用ハンドル8の固定領域11に配置された構成のみを認定しており、下側領域13にエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が取り付けられた発明の認定及びそのような発明からの容易想到性の判断がされておらず、この点は、相当とはいえない。エ 加えて、本件審決第5の2⑵イ、別紙1審決書(写し)50頁の「参考図1(図3に当審が説明文等を付した。)」における方向転換された力の認定について、参考図1の態様では、「方向転換された力」として図示されたように側面衝突保護部材30内で斜めに力が伝わることはなく、シートシェル(20)と接する側面衝突保護部材(30)の端部において、横からの力と同じ方向の力がシートシェル(20)にかかると考えるのが相当と思料される。本件審決の参考図1と参考図2(本件審決第5の4⑴ア(イ)、別紙1審決書(写し)54頁)の態様において、力の方向に関する差は生じないものと考えられるところである。⑵ また、本件審決は、前記2⑴のとおり、本件訂正は特許法134条の2第9項で準用する126条6項にも適合すると判断しているところ、同項への適合性に関し、訂正事項6について、原文等との比較検討をする以前の判断の冒頭に、「訂正事項Ⅵは、明細書の段落【0007】の記載について、誤訳を訂正することを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものには該当しない。」と記載するのみであり(本件審決第2の2⑴、別紙1審決書(写し)7頁)、訂正事項7についても、同様に、原文等との比較検討をする以前の判断の冒頭に、「訂正事項Ⅶは、明細書の段落【0008】の記載について、誤訳を訂正することを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものには該当しない。」と記載するのみである(本件審決第2の2⑵、別紙1審決書(写し)7頁)。しかし、誤訳の訂正を目的とする訂正が直ちに特許法126条6項の要件を満たすものではないから、本件審決が同項の要件に適合すると判断した根拠は不明といわざるを得ない。誤訳の訂正を目的とする訂正請求における126条

項の要件充足性の判断に際しては、知的財産高等裁判所平成27年(行ケ)

第10216号同28年8月29日判決(平成29年9月21日上告棄却及

び不受理決定)が参照されるべきである。

結論

以上によれば、本件訂正が訂正要件に適合するとして本件訂正を認めた本件

審決の判断は誤りである。そして、本件訂正を認めた本件審決の判断の誤りは、

発明の要旨認定の誤りに帰することになるから、この誤りが本件審決の結論に

影響を及ぼすことは明らかである。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由

は理由があり、本件審決は取消しを免れない。

よって、原告の請求を認容することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官

中 平 健

裁判官

今 井 弘 晃

裁判官

水 野 正 則

別紙1 省略

別紙2

無効理由3について本件審決が認定した甲5記載の発明と、本件発明1又は本件発明16との対比

1 甲5発明1-1関係⑴ 甲5発明1-1の内容(本件審決第5の1⑶ウ(ア)、別紙1審決書(写し)39ないし40頁)「側面衝撃保護付きチャイルド安全シート1であって、パッドで覆われるとともに子供を支持する背もたれ、座部と、からなるシート部分と、運搬用ハンドル8と、前記シート部分の外側(側部)においてチャイルド安全シート1の運搬用ハンドル8の固定領域11に取り付けたエネルギー吸収及び/又は伝達要素2と、を有し、前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、前記シート部分の前記外側(側部)から突出する方向に運搬用ハンドル8の固定領域11を含めた幅内に位置する休止位置から、前記運搬用ハンドル8の固定領域11を含めた幅外に位置する機能位置に、及び、前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、チャイルド安全シート1が前記車両のシートの一方に固定された状態で、チャイルド安全シート1に横方向に作用する力を支持要素に導入するか、横方向の動きから支持要素に運動エネルギーを伝達し、伝達されるエネルギーは、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2によってチャイルド安全シート1又はベース要素に伝達され、最終的には車体構造に伝達される、チャイルド安全シート1。」⑵ 本件発明1と甲5発明1-1との一致点及び相違点<一致点1-1>(本件審決第5の4⑴ア(ア)、別紙1審決書(写し)52ないし53頁)「車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、前記支持部にではない構成に取り付けられる側面衝突保護部と、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に前記チャイルドセーフティシートの所定の幅の中に位置する休止位置から、前記チャイルドセーフティシートの前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される、チャイルドセーフティシート。」<相違点A>(本件審決第5の4⑴ア(ア)、別紙1審決書(写し)53頁)本件発明1では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置として」、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく」前記シートシェルに導くように、配置されるのに対して、甲5発明1-1では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられており、力方向転換装置についての特定はない点。

2 甲5発明1-2関係⑴ 甲5発明1-2の内容(本件審決第5の1⑶オ、別紙1審決書(写し)41ないし42頁)「側面衝撃保護付きチャイルド安全シート1であって、パッドで覆われるとともに子供を支持する背もたれ、座部と、からなるシート部分と、運搬用ハンドル8と、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2と、を有し、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2としての円筒(シリンダ)301が、運搬用ハンドルの固定領域11に配置され、突出する方向に、内側に押し込まれた休止位置から外側の機能位置にシフトされ、案内ピン302が凹部の機能領域306に位置づけられることにより、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、機能位置4に固定され、チャイルド安全シート1が車両のシートに固定された状態で、チャイルド安全シート1に横方向に作用する力を支持要素に導入するか、横方向の動きから支持要素に運動エネルギーを伝達し、伝達されるエネルギーは、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2によってチャイルド安全シート1に伝達される、チャイルド安全シート1。」⑵ 本件発明1と甲5発明1-2との一致点及び相違点<一致点1-2>(本件審決第5の4⑴イ(ア)、別紙1審決書(写し)56頁)「車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、前記支持部にではない構成に取り付けられる側面衝突保護部と、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に前記チャイルドセーフティシートの所定の幅の中に位置する休止位置から、前記チャイルドセーフティシートの前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される、チャイルドセーフティシート。」<相違点C>(本件審決第5の4⑴イ(ア)、別紙1審決書(写し)57頁)本件発明1では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置として」、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく」前記シートシェルに導くように、配置されるのに対して、甲5発明1-2では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドルの固定領域11」に配置されており、力方向転換装置としての特定はない点。

3 甲5発明16-1関係⑴ 甲5発明16-1の内容(本件審決第5の1⑶ウ(イ)、別紙1審決書(写し)40頁)「パッドで覆われるとともに子供を支持する背もたれ、座部と、からなるシート部分と、運搬用ハンドル8と、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2と、を有する側面衝撃保護付きチャイルド安全シート1の運搬用ハンドル8の固定領域11に取り付けたエネルギー吸収及び/又は伝達要素2であって、前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、前記シート部分の外側(側部)で運搬用ハンドル8の固定領域11に取り付けられる弧状部分として形成され、前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、前記弧状部分を休止位置から前記機能位置に、及び、前記機能位置から前記休止位置に移動するために、前記弧状部分は、枢軸周りに回動される、前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2。」⑵ 本件発明16と甲5発明16-1との一致点及び相違点<一致点16-1>(本件審決第5の4⑶ア(ア)、別紙1審決書(写し)58頁)「子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、シートの部材の外側で前記チャイルドセーフティシートの一部に取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができる、側面衝突保護部。」<相違点B1>(本件審決第5の4⑶ア(ア)、別紙1審決書(写し)59頁)本件発明16では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置とし、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、」形成されるのに対し、甲5発明16-1では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられており、力方向転換装置についての特定はない点。<相違点B2>(本件審決第5の4⑶ア(ア)、別紙1審決書(写し)59頁)本件発明16では、「前記折り畳み部分は、前記折り畳み部分が前記折り畳み部分の少なくとも一部が前記シートシェルの前記外側から突出する前記機能位置における所定位置でロックされるように、その上でロックバーが前記機能位置でロックする少なくとも1つの停止保持器を有し、さらに前記折り畳み部分の前記機能位置において前記所定位置でロックすることは、少なくとも1つの前記ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放スライダの作動によって解放され得る」のに対して、甲5発明16-1では、「前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、前記弧状部分を休止位置から前記機能位置に、及び、前記機能位置から前記休止位置に移動するために、前記弧状部分は、枢軸周りに回動される」ものであり、前記弧状部分(折り畳み部分)についてそのような特定はなされていない点。

4 甲5発明16-2関係⑴ 甲5発明16-2の内容(本件審決第5の1⑶キ、別紙1審決書(写し)42ないし43頁)「パッドで覆われるとともに子供を支持する背もたれ、座部と、からなるシート部分と、運搬用ハンドル8と、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2と、を有する側面衝撃保護付きチャイルド安全シート1の運搬用ハンドル8の固定領域11に配置されたエネルギー吸収及び/又は伝達要素2であって、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は案内ピン302が配置されている円筒301の形状を有し、円筒(シリンダ)301は案内ピン302用の接続部材の形態の凹部304を含むシリンダガイド303内で案内され、前記円筒(シリンダ)301を休止位置3から機能位置4にシフトするために、前記円筒(シリンダ)301は、シリンダガイド303内で軸周りに回転されることができ、前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられ前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は機能位置4に固定され、前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2が固定される上記機能位置4は前記円筒(シリンダ)301が前記運搬ハンドル8の固定領域11の外側から突出する位置であり、前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が機能位置4に固定されることは、凹部グリップ310の操作によって開放され得る、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2。」⑵ 本件発明16と甲5発明16-2との一致点及び相違点<一致点16-2>(本件審決第5の4⑶イ(ア)、別紙1審決書(写し)60頁)「子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更する、側面衝突保護部。」<相違点D>(本件審決第5の4⑶イ(ア)、別紙1審決書(写し)60ないし61頁)本件発明16では、前記側面衝突保護部は、「力方向転換装置とし、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分」を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、「前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができ、前記折り畳み部分は、前記折り畳み部分が前記折り畳み部分の少なくとも一部が前記シートシェルの」前記外側から突出する前記機能位置「における所定位置でロックされるように、その上でロックバーが前記機能位置でロックする少なくとも1つの停止保持器を有し、さらに前記折り畳み部分」の前記機能位置において「前記所定位置で」ロックすることは、「少なくとも1つの前記ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放スライダ」の作動によって解放され得るのに対し、甲5発明16-2では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は「案内ピン302が配置されている円筒301の形状を有し、円筒(シリンダ)301は案内ピン302用の接続部材の形態の凹部304を含むシリンダガイド303内で案内され、前記円筒(シリンダ)301」を休止位置3から機能位置4にシフトするために、「前記円筒(シリンダ)301は、シリンダガイド303内で軸周りに回転されることができ、前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられ前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は」機能位置4に固定され、「前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が固定される上記機能位置4は「前記円筒(シリンダ)301が前記運搬ハンドル8の固定領域11の」外側から突出する位置であり、「前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられエネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が機能位置4に固定されることは、「凹部グリップ310」の操作によって開放され得る点。以 上

別紙3

取消事由1に関する当事者の主張1 取消事由1-1-1(甲5発明1-1の認定の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 本件訂正を認めた本件審決の判断を前提として論じる場合、まず、「直接」には「他のものを介さず、じかであること。」(甲54の1)、「中間に他のものをはさまないで、ただちに接すること。じかに対象に関係することや、そのさま。時間的・空間的に、間をおかないで物事が進んだり、行動を起こしたりするさまを表わし、副詞的にも用いる。」(甲54の2)との意味がある。このため、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく」という態様は、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」が「じかに」「子供の体に直接的に伝達するのではな」いことを意味し、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の少なくとも一部が分散された上で子供の体に伝達する態様を含んでいる。本件審決は、別紙2の⑴イ記載の一致点1-1において、「前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」と認めておきながら、「子供の体に直接的に伝達するのではな」い点を実質的な相違点(相違点A、別紙2の1⑵)として捉えている点で誤っている。一致点1-1で認定されているとおり、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」ことからすると、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の少なくとも一部が「チャイルドセーフティシート」に伝わることは明らかである。本件発明1では「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」と記載され、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の伝達について、①子供の体に直接的に伝達するのではなく、②前記シートシェルに導く、と記載されている。前記の「直接」の意味からすると、①の「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因は複数あるが、原因の一つとして、②の「前記シートシェルに導く」ことを限定しているものである。本件審決は、前訴判決と同様に、一致点1-1で「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことを認めている。このように「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」が「前記シートシェルに導」かれるということは、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の少なくとも一部がチャイルドセーフティシートに伝達され、当該「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」が子供の体に直接的に伝達されていないことを意味していることから、本件審決の認定は論理的にも破綻している。⑵ 前訴の技術説明会において、被告は以下のような図面(以下「被告作成図面」という。)を用いて本件発明1の効果と甲5における力の伝達経路を説明をしており(被告技術説明資料、甲29)、被告の当該主張を踏まえた上で、前訴判決(84頁)は判断しているのであるから、正確に判断を行った前訴判決の内容からして、本件審決の判断が誤っていることは明らかである。なお、上記技術説明会資料(甲29、17頁)では、被告実施品として PallasGi-Size が掲載されているが(甲10)、被告実施品とされている Pallas Gi-Size でも被告が「甲5における力の伝達経路」で示したのと同様の態様で衝撃が伝わっている(甲9)。被告が Pallas Gi-Size を被告実施品としていることからすると、被告主張によれば、このような被告実施品で示されるような態様(甲9)(つまり被告が甲5で示したような態様)も「子供の体に直接的に伝達するのではな」いという態様に含まれることなる。〔被告の主張〕⑴ 本件審決による一致点及び相違点の認定は正当であること本件審決第5の2⑵ウ(別紙1審決書(写し)49頁)が正しく認定しているとおり、本件発明1は、側面衝突保護部を備える既存のチャイルドセーフティシートでは、子供に直接衝撃を与え、衝撃を十分吸収することができないか、消散させることができないという課題に対し、以下の二つの解決手段を備えている。・解決手段1:側面衝突保護部を、子供の背の後ろのシートシェルに配置することで、衝突の際に発生し得る横からの力の方向をそのままシートシェルに導くようにするもの(明細書【0007】)・解決手段2:側面衝突保護部自体が力方向転換装置として機能することで、衝突の際に発生し得る横からの力の方向を変え、方向を変えられた力は、子供の体のそばを通り過ぎて、すなわち、子供の体を迂回して、減衰特性を有するシートシェルに導かれるもの(明細書【0008】)そして、本件審決第5の4⑴ア(ア)の<相違点A>(別紙1審決書(写し)53頁)が正しく認定しているとおり、甲5発明1-1における「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」は、「前記シート部分の外側(側部)においてチャイルド安全シート1の運搬用ハンドル8の固定領域11に取り付けた」構成のものであり、本件審決第5の4⑴ア(イ)(別紙1審決書(写し)54頁)の「参考図2(甲5の図5に当審が説明文等を付記した。)」(以下「参考図2」という)で示されるとおり、横からの力が同じ方向のままで固定領域11に伝達される。このため、「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」自体は横からの力の方向を変えるための手段ではない。よって、甲5発明1-1の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」は、それ自体が力方向転換装置として機能するものとは認められず、「解決手段2」を有するものとはいえない。かかる認定を前提に、本件審決は、本件発明1を正しく認定している。ここで、「子供の体に直接的に伝達するのではなく」とは、本件審決が「解決手段2」として認定している内容を言い換えたものであり、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにすることを意味する。これに対し、本件審決が本件発明1及び甲5発明1-1の一致点(一致点1-1。別紙2の1⑵)として認定している構成、すなわち「前記側面衝突保護部」が「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」とは、力方向転換にかかわらず、横からの力をシートシェルに導くことを意味する。前記のとおり甲5発明1-1の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」は、それ自体が力方向転換装置として機能するものではないから、本件審決が、本件発明1及び甲5発明1の一致点1-1、相違点Aをそれぞれ認定したことは正当であり、何らの誤りはない。⑵ 原告の主張の誤りア 原告は、「直接」の辞書的な意味を根拠に、「子供の体に直接的に伝達するのではなく」という態様は、横からの力の少なくとも一部が分散された上で子供の体に伝達する態様を含んでいると主張する。本件審決が認定した相違点Aは別紙2の1⑵のとおりであるところ、上記「子供の体に直接的に伝達するのではなく」とは、本件審決が「解決手段2」として認定している内容を言い換えたものであり、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにすることを意味する。このことは、本件審決第5の4⑴ア(イ)(別紙1審決書(写し)53頁)が「それ自体」(すなわち「側面衝突保護部」)「が力方向転換装置として機能することで、横からの力の子供への直接的な伝達を構造的に回避するものでもあって、解決手段1に加えて解決手段2も有するものである」と述べていることからも明らかである。実際に、本件発明1のチャイルドセーフティシートにおいては、横からの力は、力方向転換装置により斜め方向等に方向が転換されており、これによって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにしている。かかる仕組みは、本件審決第5の2⑴(別紙1審決書(写し)47頁)で引用されている明細書の「図3(Fig.3)」(甲28・13頁)にも示されている。「図3」は、30が側面衝突保護部、20がシートシェル、40が車両接触領域を示している。車両の側部からチャイルドセーフティシートに伝わる横からの力とは、車両接触領域40に垂直に入る力であるが、「図3」から明らかなとおり、側面衝突保護部30は、シートシェルに対して斜めに伸びている。このような構造とすることで、横からの力は、力方向転換装置の機能を有する側面衝突保護部30を通ることで斜め方向に変換される。このため、横からの力は、シートシェル20に到達する時点で、斜め方向の力となっており、横からの力がそのままの方向で子供の体に伝わることはない。相違点Aに含まれる「子供の体に直接的に伝達するのではなく」という態様は、上記のとおりの意味を有するのであるから、原告の主張する「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の少なくとも一部が分散された上で子供の体に伝達する態様は含まない。したがって、原告の上記主張は誤りである。イ 原告は、本件審決の一致点1-1の認定と相違点Aの認定が矛盾する趣旨を主張する。しかし、一致点1-1に含まれる「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」とは、力方向転換にかかわらず、横からの力をシートシェルに導くことを意味する。他方、相違点Aに含まれる「子供の体に直接的に伝達するのではなく」とは、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないことを意味する。甲5発明1-1(別紙2の1⑴)には、「力方向転換装置」により横からの力を、力方向転換によってシートシェルに導くことは開示されていないのであるから、審決がそのような甲5発明にない構成を本件発明1との相違点と認定したのは正当である。よって、原告の主張は失当である。ウ 本件発明1は「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因として「前記シートシェルに導く」ことを限定しているという原告の解釈は誤りである。本件審決が「それ自体」(側面衝突保護部)「が力方向転換装置として機能することで、横からの力の子供への直接的な伝達を構造的に回避する」(本件審決第5の4⑴ア(イ)、別紙1審決書(写し)53頁)と正しく認定するとおり、本件発明1において、横からの力が「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因は「力方向転換装置」により横からの力が方向転換されることにある。原告は、「直接」の辞書的な意味のみに依拠し、本件発明1の「子供の体に直接的に伝達するものではなく」の意味を不当に広く解釈し、その原因として考えられる事象が複数あると主張している。しかし、本件発明1の「子供の体に直接的に伝達するのではなく」とは、本件審決が「解決手段2」として認定している内容を言い換えたものであり、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにすることを意味する。すなわち、上記のとおり側面衝突保護部が力方向転換装置として機能することで、横からの力の子供への直接的な伝達を構造的に回避すると認定されているとおり、本件発明1において、「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因は、「力方向転換」として特定されている。したがって、「子供の体に直接的に伝達するのではな」くなることの原因が複数あること、及び、本件発明1が、原因の一つとして、「前記シートシェルに導く」ことを限定しているとの原告の解釈は全くの誤りである。このように、「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因は「力方向転換」として特定されているから、本件審決が「一致点1-1」として「前記シートシェルに導く」ことを認定しているからといって、論理的に、「子供の体に直接的に伝達するものではな」いことも一致点と認定しなければならないものではない。したがって、その余の原告の主張もまた誤りである。エ 原告は、被告実施品に関する主張をするが、被告実施品における横からの力の伝達態様は甲5とは異なる。本件審決の取消事由の有無の判断において被告実施品の伝達態様は直接関連しないから、本件審決の取消事由に関する主張において、被告実施品の議論には意味がない。なお、原告の主張する Pallas Gi-Size は、本件訂正前の本件発明1との関係で被告実施品であったが、本件訂正(後記訂正事項2及び3)後の本件発明1との関係では被告実施品ではない。本件訂正後の被告実施品は、Sirona(乙1)が挙げられる。Sirona の側面衝突保護部は斜め方向に延びており、衝突の際の横からの力を斜め方向に転換した上でシートシェルに導いている。甲5発明と被告実施品では、横からの力を方向転換しているか否かの点で力の伝達態様は全く異なるのであるから、被告実施品において、被告が「甲5における力の伝達経路」で示したのと同様の態様で衝撃が伝わっているとの原告の主張は誤りである。2 取消事由1-1-2(本件発明1と甲5発明1-1の一致点・相違点の認定の誤り)〔原告の主張〕⑴ 取消事由1-1-1で述べたとおり、本件審決は、甲5発明1-1の一致点・相違点の認定を誤っている。⑵ 一致点及び相違点は、以下のように認定されるべきである。<原告主張一致点1-1>車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、前記支持部ではない構成に取り付けられる側面衝突保護部と、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に前記チャイルドセーフティシートの所定の幅の中に位置する休止位置から、前記チャイルドセーフティシートの前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、配置される、チャイルドセーフティシート。<原告主張相違点A>本件発明1では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置」であることが明記されているのに対して、甲5発明1-1では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられている点、及び力方向転換装置であることが明記されていない点。〔被告の主張〕原告は、原告主張一致点1-1、原告主張相違点Aを主張しているが、これは既に反論したとおり、本件審決や「子供の体に直接伝達されない」との文言に関する誤った解釈を前提とするものであり、誤りである。一致点1-1及び相違点Aを認定した本件審決の判断に誤りはない。3 取消事由1-1-3(甲5発明1-1に基づく容易想到性の判断の誤り)〔原告の主張〕⑴ 前訴判決(86ないし87頁)で、相違点Aに係る本件発明1のような構成と成すことは容易に想到し得るものと認められると判示されているとおり、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2を甲5における「キャリア材料がパッドで覆われていない下側領域13やパッドで覆われているチャイルド安全シート(幼児用キャリア)の領域、すなわち、『シートシェル』の外側」に設けることは容易である。本件審決は、「本件発明1の『側面衝突保護部』は、それ自体が『力方向転換装置』として機能するものであるのに対し、甲5発明1-1の『エネルギー吸収及び/又は伝達要素2』は、それ自体が『力方向転換装置』として機能するものではなく、甲5発明1-1において、運搬用ハンドル8の固定領域11に換えて、キャリア材料がパッドで覆われていない下側領域13等のシートシェルの外側に『エネルギー吸収及び/又は伝達要素2』を設けても、それに横からの力が入力された場合、シートシェルの外側に対し、横からの力と同じ方向の力が伝達されるにすぎず、解決手段2にはならない」と判断しているが、この判断は誤りである。⑵ 前訴判決時における請求項1(前記第2の2⑴記載の、前件訂正の内容を反映したもの)と本件訂正後の請求項1(前記第2の4⑴)を比較すると、構成要件1Dに関して、「前記支持部にではなく、」という点を本件訂正で限定しているが、前訴判決(87頁)で「運搬用ハンドルの固定領域11に換えて、キャリア材料がパッドで覆われていない下側領域13やパッドで覆われているチャイルド安全シート(幼児用キャリア)の領域、すなわち、『シートシェル』の外側にエネルギー吸収及び/又は伝達要素2を設けることにより、相違点Aに係る本件発明1のような構成と成すことは容易に想到し得るものと認められる。」と判示されていることからしても、この点は容易想到な内容である。被告は、本件訂正により、構成要件1Gに関して「力方向転換装置として、」という点と、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように」という点を限定している。しかし、前訴判決(84頁)では、「甲5発明1-1における『エネルギー吸収及び/又は伝達要素2』は、本件発明1の『側面衝突保護部』に相当し、その配置は、本件発明1の『前記側面衝突保護部は、・・・前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれるように、配置される』(構成要件1G)という構成に相当する。」と明確に判示されている。この点は、本件審決第5の4⑴ア(ア)<一致点1-1>(別紙1審決書(写し)53頁)でも「前記側面衝突保護部は、・・・前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」と認定されているとおりである。そして、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれる」ことからすると、甲5発明1-1でも、以下の図で示すように力の方向が転換されており、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能していることは明らかである(下図参照)。このように甲5のエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能することは明らかであることから、仮に本件訂正を前提としても、本件発明1において「力方向転換装置」と明記されている点は、実質的な相違点ではないか、容易想到な構成である。更にいえば、容易想到な構成である、甲5発明1-1の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が「シートシェル」の外側に設けられた場合には、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2の配置位置は本件発明1と変わらない位置に位置付けられるところ、それにもかかわらず、本件発明1では、横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」のに対して、甲5発明1-1におけるエネルギー吸収及び/又は伝達要素2では、横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」ことにならないというのは、物理的な現象としてあり得ない。〔被告の主張〕⑴ 相違点Aのうち「力方向転換装置」について本件審決第5の4⑴ア(イ)(別紙1審決書(写し)53頁)が正しく認定するとおり、甲5発明1-1は力方向転換装置を有しておらず、かつ、他の証拠にも「力方向転換装置」は開示又は示唆されていない。以下、原告の個別の主張についてそれぞれ反論する。ア 「力方向転換装置」の構成が「容易想到である」との原告の主張が誤っていること本件発明1の請求項が、「前記側面衝突保護部が、力方向転換装置として・・・横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェル内に導く」と記載し、シートシェルの外側に取り付けられている側面衝突保護部の機能として「力方向転換」を記載していることからも明らかなとおり、本件発明1の「力方向転換」とは、横からの力がシートシェルに到達する前に起きる事象である。よって、横からの力がシート部分(本件発明1のシートシェルに相当)に伝えられた後で、シート部分の中を伝わっていくだけでは、「力方向転換」が起きているとはいえない。そして、甲5発明1-1における横からの力の伝わり方は、車両ドアに伝わった横からの力は「エネルギー吸収/伝達要素2」に伝達されるが、「エネルギー吸収/伝達要素2」は力方向転換装置を有しないため、「エネルギー吸収/伝達要素2」に伝わった力の方向のまま子供の体に伝わることとなる。一方で、本件発明1では、本件明細書等の図3(甲28)からもわかるとおり、側面衝突保護部30はシートシェル20に対して斜めに設置されている。側面衝突の場合、車両接触領域40に伝わる横からの力は、当該車両接触領域の接している側面衝突保護部30を経由して斜め方向の力に転換された後にシートシェル20に伝わるものである。このように、側面衝突保護部が「力方向転換装置」の役割を果たすことで、側面衝突保護部に伝わる横からの力を斜め方向に変換してシートシェルに導いている。以上のとおり、いずれにしても、甲5の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が「力方向転換装置」として機能していないから、原告の主張は失当である。原告は、容易想到な構成である、甲5発明1-1の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が「シートシェル」の外側に設けられた場合には、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2の配置位置は本件発明1と変わらない位置に位置付けられるところ、それにもかかわらず、本件発明1では、横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」のに対して、甲5発明1-1におけるエネルギー吸収及び/又は伝達要素2では、横からの力を「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」ことにならないというのは、物理的な現象としてあり得ない旨主張する。しかし、原告の主張は「子供の体に直接伝達するのではなく」に関する誤った解釈を前提としている。本件発明1の「子供の体に直接的に伝達するのではなく」とは、本件審決が「解決手段2」として認定している内容を言い換えたものであり、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにすることを意味する。そして、甲5発明1-1は、力方向転換装置を有しないから、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにするという仕組みを持たない。この点は、甲

5発明1-1の「エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」の配置をいくら工夫したところで同様である。したがって、原告の主張は誤りである。イ 前訴判決の引用部分は本件訂正前の構成について述べたものであり、本件訂正後の本件発明については妥当しないこと本件訂正後の請求項1の「子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」は、本件審決が「解決手段2」として認定している内容を言い換えたものであり、力方向転換によって、横からの力をそのままの方向で子供の体に伝えないようにし、シートシェルに導くことを意味する。この本件訂正により、請求項1では、「横からの力が、支持部(子供)には導かれず、シートシェルにのみ導かれる」ことが明らかになっている。したがって、原告の主張は誤りである。⑵ 相違点のうち、「側面衝突保護部は、『シートシェルの外側でシートシェル』に取り付けられる」との構成について(構成要件1D)本件審決は、「力方向転換装置」が容易想到ではないと判断し、相違点Aのその余の点の容易想到性については判断していない。もっとも、甲5発明1-1は、相違点Aに含まれる「側面衝突保護部は、『シートシェルの外側でシートシェル』に取り付けられる」との構成についても開示及び示唆しておらず、当該構成も当業者が容易に発明をすることができたものではない。この点について、前訴判決は当該構成が容易想到である旨の判断を行っているものの、当該判断は側面衝突保護部が、「前記支持部にではなく、前記シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられる側面衝突保護部」との訂正(後記訂正事項2)を含む本件訂正よりも前に行われた判断である。本件訂正後の本件発明1において、前訴判決の判断は妥当しない。したがって、原告の主張は失当である。4 取消事由1-2-1(甲5発明1-2の認定の誤り)〔原告の主張〕⑴ 甲5発明1-1で述べたのと同様の理由から、本件審決が一致点1-2

(別紙2の2⑵)で「前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シ

ートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」と認めておきながら、「子供の体に直接的に伝達するのではな」い点を実質的な相違点として捉えている点で誤っている。前述したとおり、本件発明1では「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」と記載され、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力」の伝達について、①子供の体に直接的に伝達するのではなく、②前記シートシェルに導くと記載されている。①の「子供の体に直接的に伝達するのではなく」なることの原因は複数あるが、原因の一つとして、②の「前記シートシェルに導く」ことを限定しているものである。⑵ 本件審決は、一致点1-2で「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことを認めているが、本件審決の認定は論理的にも破綻している。「直接」には前述したとおりの意味があることから(甲54の1・2)、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」ことは甲5発明1-2(別紙2の2⑴)において実質的に開示されている。この点は、前述したとおり、前訴の技術説明会資料(甲29、16及び18頁)における説明等からも明らかである。〔被告の主張〕原告は、取消事由1-1-1と同様の理由から、本件審決の認定が誤っている旨を主張している。しかし、前記の被告の反論と同様の理由で原告の主張は誤りであり、本件審決の甲5発明1-2の認定に誤りはなく、本件審決の一致点1-2、相違点C(別紙2の2⑴)の認定にも誤りはない。5 取消事由1-2-2(本件発明1と甲5発明1-2の一致点・相違点の認定の誤り)〔原告の主張〕⑴ 上記取消事由1-2-1で述べたことから、本件審決は、甲5発明1-2の一致点・相違点の認定を誤っている。⑵ 一致点及び相違点は、以下のように認定されるべきである。<原告主張一致点1-2>車両のシートに取り付けるための、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートであって、子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、前記支持部ではない構成に取り付けられる側面衝突保護部と、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にあり、前記側面衝突保護部は、前記シートシェルの前記外側から突出する方向に前記チャイルドセーフティシートの所定の幅の中に位置する休止位置から、前記チャイルドセーフティシートの前記所定の幅の外に位置する機能位置に、及び前記機能位置から前記休止位置に移動可能であり、前記側面衝突保護部は、前記チャイルドセーフティシートが前記車両の前記シートに取付けられた状態において、前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、配置される、チャイルドセーフティシート。<原告主張相違点C>本件発明1では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置」であることが明記されているのに対して、甲5発明1-2では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられている点、及び力方向転換装置であることが明記されていない点。〔被告の主張〕原告は、原告主張一致点1-2、原告主張相違点Cを主張しているが、これは前記で反論したとおり、本件審決や「子供の体に直接伝達されない」との文言に関する誤った解釈を前提とするものであり、誤りである。

6 取消事由1-2-3(甲5発明1-2に基づく容易想到性の判断の誤り)〔原告の主張〕既に述べたとおり、前訴判決での認定にも鑑みれば、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2を甲5における「キャリア材料がパッドで覆われていない下側領域13やパッドで覆われているチャイルド安全シート(幼児用キャリア)の領域、すなわち、『シートシェル』の外側」に設けることは容易である。前訴判決(84頁)で「甲5発明1-1における『エネルギー吸収及び/又は伝達要素2』は、本件発明1の『側面衝突保護部』に相当し、その配置は、本件発明1の『前記側面衝突保護部は、・・・前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれるように、配置される』(構成要件1G)という構成に相当する。」と明確に判示されており、この点は、本件審決第5の4⑴イ(ア)<一致点1-2>(別紙1審決書(写し)56頁)でも「前記側面衝突保護部は、・・・前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導くように、配置される」と認定されているとおりである。そして、「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれる」ことからすると、甲5発明1-2でも、以下の図で示すように力の方向が転換されており、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能していることは明らかである(前記3〔原告の主張〕⑵の図参照)。このように甲5のエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能することは明らかであることから、本件発明1において「力方向転換装置」と明記されている点は、実質的な相違点ではないか、容易想到な構成である。〔被告の主張〕原告は、取消事由1-1-3と同様の理由から、原告主張相違点Cの構成が容易想到であると主張している。しかし、原告は、容易想到であると主張するにもかかわらず、副引例との組み合わせや設計変更、先行技術の寄せ集め等の主張を行っておらず、主張自体失当であるし、前記の被告の反論と同様の理由で誤りである。

7 取消事由1-3-1(甲5発明16-1の認定の誤り)〔原告の主張〕相違点B1(別紙2の3⑵)に関しては、その内容に照らし、相違点Aについて述べたのと同様である。これまでに述べたとおり、「車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」ことは甲5発明16-1(別紙2の3⑴)において実質的に開示されている。なお本件審決は、本件発明1との対比とは異なり、一致点16-1(別紙2の3⑵)で「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことを認めていない点でも妥当性を欠いている。一致点1-1と同様、一致点16-1でも「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことが一致点として認定されるべきである。〔被告の主張〕原告は、取消事由1-1-1と同様の理由から、本件審決の認定が誤っている旨の主張をしている。しかし、前記の被告の反論と同様の理由で原告の主張は誤りであり、本件審決の甲5発明16-1の認定に誤りはなく、本件審決の一致点16-1、相違点B1の認定にも誤りはない。

8 取消事由1-3-2(本件発明16と甲5発明16-1の一致点・相違点の認定の誤り)〔原告の主張〕取消事由1-3-1で述べた理由から、本件審決は、甲5発明16-1の一致点・相違点の認定を誤っている。一致点及び相違点は、以下のように認定されるべきである。<原告主張一致点16-1>子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、シートの部材の外側で前記チャイルドセーフティシートの一部に取り付けられる折り畳み部分として形成され、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができる、側面衝突保護部。<原告主張相違点B1>本件発明16では、側面衝突保護部は、「シートシェルの外側でシートシェル」に取り付けられるとともに、「力方向転換装置」であることが明記されているのに対して、甲5発明16-1では、「運搬用ハンドル8の固定領域11」に取り付けられている点、及び力方向転換装置であることが明記されていない点。なお、本件審決が認定した相違点B2が存在することについて異論はない。〔被告の主張〕原告は原告主張一致点16-1、原告主張相違点B1を主張しているが、これは前記で反論したとおり、本件審決や「子供の体に直接伝達されない」との文言に関する誤った解釈を前提とするものであり、誤りである。

9 取消事由1-3-3(甲5発明16-1に基づく容易想到性の判断の誤り)〔原告の主張〕⑴ 相違点B1について、相違点Aについて述べたのと同様である。前訴判決(87頁)で「運搬用ハンドルの固定領域11に換えて、キャリア材料がパッドで覆われていない下側領域13やパッドで覆われているチャイルド安全シート(幼児用キャリア)の領域、すなわち、『シートシェル』の外側にエネルギー吸収及び/又は伝達要素2を設けることにより、相違点Aに係る本件発明1のような構成と成すことは容易に想到し得るものと認められる。」と判示されていることからしても、この点は容易想到な内容である。甲5のエネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能することは明らかであることから、本件発明16において「力方向転換装置」と明記されている点は、実質的な相違点ではないか、容易想到な構成である。⑵ 相違点B2について相違点B2(別紙2の3⑵)に関しては、前訴判決で判断されたときから、本件訂正前と本件訂正後において変更点は存在していない。そして、相違点B2が容易想到であることは、前訴判決(92ないし93頁)で判示されているとおりである。〔被告の主張〕⑴ 相違点B1について原告は、取消事由1-1-3と全く同様の理由から、原告主張相違点B1の構成が容易想到であると主張している。しかし、原告は、容易想到であると主張するにもかかわらず、副引例との組み合わせや設計変更、先行技術の寄せ集め等の主張を行っておらず、主張自体失当であるし、前記被告の反論と同様の理由で誤りである。⑵ 相違点B2について原告は相違点B2について、前訴判決(92ないし93頁)を単に引用し、相違点B2が容易想到であると主張する。しかし、甲5発明には、エネルギー吸収及び/又は伝達要素をロックするという技術思想は何ら開示されておらず、その必要性も示されていない。本件発明16のようなロックバー34、停止保持器33、開放ボタン37や開放スライダ38の具体的構成を何ら開示も示唆もしていない甲5発明16-1に基づいて、本件発明16に至ることは当業者にとって容易想到とはいえない。また、前件審決は、甲3、6、7の組み合わせによっても、相違点B2が容易想到であるとはいえないと判断している。

10 取消事由1-4-1(甲5発明16-2の認定の誤り)〔原告の主張〕既に述べたとおり、「車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導く」ことは甲5発明16-2(別紙2の4⑴)において実質的に開示されている。なお、本件審決は、本件発明1との対比とは異なり、一致点16-2で「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことを認めていない点でも妥当性を欠いている。本来であれば、一致点1-2と同様、一致点16-2(別紙2の4⑵)でも「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を前記シートシェルに導く」ことが一致点として認定されるべきである。〔被告の主張〕原告は、本件審決の相違点D(別紙2の4⑵)について、取消事由1-1-1と同様の理由から、本件審決の認定が誤りである旨を主張している。しかし、前記被告の反論と同様の理由で原告の主張は誤りであり、本件審決の甲5発明16-2の認定に誤りはなく、本件審決の一致点16-2、相違点Dの認定にも誤りはない。

11 取消事由1-4-2(本件発明16と甲5発明16-2の一致点・相違点の認定の誤り)〔原告の主張〕上記取消事由1-4-1で述べた理由から、本件審決は、甲5発明16-2の一致点・相違点の認定を誤っている。一致点及び相違点は、以下のように認定されるべきである。<原告主張一致点16-2>子供又は乳児を支持する支持部と、前記支持部のための構造要素としてのシートシェルと、を有し、前記支持部は前記シートシェルの内側にある、子供又は乳児用のチャイルドセーフティシートに取り付けられるように設計される側面衝突保護部であって、前記側面衝突保護部は、車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力を子供の体に直接的に伝達するのではなく前記シートシェルに導くように、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更する、側面衝突保護部。<原告主張相違点D>本件発明16では、前記側面衝突保護部は、「力方向転換装置」として 、シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられ、前記折り畳み部分を休止位置から機能位置に及び前記機能位置から前記休止位置に変更するために、「前記折り畳み部分は軸周りに回転されることができ、前記折り畳み部分は、前記折り畳み部分が前記折り畳み部分の少なくとも一部が前記シートシェルの」前記外側から突出する前記機能位置「における所定位置でロックされるように、その上でロックバーが前記機能位置でロックする少なくとも1つの停止保持器を有し、さらに前記折り畳み部分」の前記機能位置において「前記所定位置で」ロックすることは、「少なくとも1つの前記ロックバーに対して割り当てられる解放ボタン又は解放ライダ」の作動によって解放され得るのに対し、甲5発明16-2では、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は「案内ピン302が配置されている円筒301の形状を有し、円筒(シリンダ)301は案内ピン302用の接続部材の形態の凹部304を含むシリンダガイド303内で案内され、前記円筒(シリンダ)301」を休止位置3から機能位置4にシフトするために、「前記円筒(シリンダ)301は、シリンダガイド303内で軸周りに回転されることができ、前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられ前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2は」機能位置4に固定され、「前記エネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が固定される上記機能位置4は「前記円筒(シリンダ)301が前記運搬ハンドル8の固定領域11の」外側から突出する位置であり、「前記円筒(シリンダ)301の案内ピン302はシリンダガイド303の凹部の機能領域306に位置付けられエネルギー吸収及び/又は伝達要素2」が機能位置4に固定されることは、「凹部グリップ310」の操作によって開放され得る点。〔被告の主張〕原告は、原告主張一致点16-2、原告主張相違点Dを主張しているが、これは既に反論したとおり、本件審決や「子供の体に直接伝達されない」との文言に関する誤った解釈を前提とするものであり、誤りである。

12 取消事由1-4-3(甲5発明16-2に基づく容易想到性の判断の誤り)〔原告の主張〕「前記側面衝突保護部は、・・・シートシェルの外側で前記シートシェルに取り付けられ」る点については、相違点Aで述べたのと同様である。「前記車両の側部から前記チャイルドセーフティシートに伝わる横からの力が前記シートシェルに導かれる」ことからすると、甲5発明16-2でも、力の方向が転換されており、エネルギー吸収及び/又は伝達要素2が「力方向転換装置」として機能していることは明らかである。本件発明16において「力方向転換装置」と明記されている点は、実質的な相違点ではないか、容易想到な構成である。その他の点については、相違点B2と同様である。前訴判決(92ないし93頁)で前述したとおり判示されている内容からして、原告主張相違点Dのその他の点については、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用の範疇のものである。〔被告の主張〕原告は、容易想到であると主張するにもかかわらず、副引例との組み合わせや設計変更、先行技術の寄せ集め等の主張を行っておらず、主張自体失当であるし、既に述べたのと同様の理由で誤りである。相違点B2の構成も容易想到ではなく、原告の主張は誤りである。

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