ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(行ケ)10052 審決取消請求事件
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年10月21日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告ウェーブリンク株式会社 被告マインドキネシスインベストメンツプライベートリミテッド |
| 法令 |
商標権 商標法50条1項2回 商標法50条2回 商標法3条1回 |
| キーワード | 審決11回 商標権6回 実施1回 |
| 主文 | 1 特許庁が取消2022-301095号事件について令和7年4 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を 30日と定める。 |
| 事件の概要 | 1 本件は、商標法50条1項に基づく登録商標の商標登録取消審判請求につい て、特許庁が商標登録を取り消した審決の取消しを求める事案である。 |
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令和7年10月21日判決言渡
令和7年(行ケ)第10052号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年9月11日
判 決
原 告 ウェーブリンク株式会社
被 告 マインド キネシス インベストメンツ プライベー
ト リミテッド
同訴訟代理人弁理士 山 口 真 二 郎
同 大 島 信 之
主 文
1 特許庁が取消2022-301095号事件について令和7年4
月10日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を
30日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、商標法50条1項に基づく登録商標の商標登録取消審判請求について、特許庁が商標登録を取り消した審決の取消しを求める事案である。争点は、同条2項所定の期間に日本国内において、登録商標の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが同請求に係る指定役務について登録商標の使用をしていたか否かである。2 特許庁における手続の経過等
⑴ 原告が商標権者である登録商標(登録第6203092号。令和元年11
5 月29日設定登録。以下「本件商標」という。)は、「Value Investing Academy」の文字を標準文字で表してなり、指定役務を第41類「技芸又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、図書及び記録の供覧、書籍の制作、放送番組の制作、写真の撮影」とする商標である。
⑵ 被告は、本件商標について、商標法50条1項に基づく商標登録取消審判請求(以下「本件審判請求」という。)をし、本件審判請求の登録は令和5年1月6日にされた(なお、同条2項所定の「審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年1月6日から令和5年1月5日まで〔以下「要証期間」という。〕である。)。
⑶ 特許庁は、本件審判請求を取消2022-301095号事件として審理し、令和7年4月10日、本件商標の商標登録を取り消すとの審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月24日原告に送達された。
⑷ 原告は、令和7年5月26日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。3 本件審決の理由の要旨
⑴ 商標法50条にいう「登録商標の使用」というためには、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要する。
⑵ 使用に係る役務及び行為研修室申込書(乙1、2)等からは、本件商標の商標権者が、要証期間内に「VIA復習会」と称するものの開催のために研修室の借室の予約をしたことがうかがえるが、実際に開催したことの客観的証拠はなく、仮に開催したとしても、具体的内容は不明であり、提供役務における本件商標の具体的な使用行為も確認できない。VIA復習会において本件商標が原告の登録商標である旨明示したと主張
5 する書面(乙7)も、請求に係る役務との関係での使用は明らかではなく、役務の出所を表示し自他役務を識別するものと取引者需要者において認識し得る態様で使用されたとは認められない。
⑶ 使用に係る商標「VIA復習会」又は「VIA」と本件商標は同一ではなく、社会通念上同一と認められる商標でもない。VIA復習会で本件商標が示されたとする書面(乙7)も、その使用の有無は明らかではなく、請求に係る役務に使用したことの証明はない。
⑷ よって、原告は、要証期間中に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していることを証明したとはいえない。
第3 審決取消事由に関する当事者の主張
1
(原告の主張)
原告は、要証期間において、次のとおり、指定役務に該当する投資セミナーにおいて、本件商標「Value Investing Academy」を使用した。
⑴ 原告は、令和2年2月19日から今日まで、フェイスブックにおいて、バ
リュー投資アカデミー日本(Value Investing Academy JAPAN)の表記とともに、原告代表者やAの写真、投稿記事を掲載してきた(甲5)。
⑵ 原告は、令和2年4月28日から令和3年8月27日まで、複数回、VI
A復習会を現実に開催し、延べ700人程度が受講した(甲4)。
⑶ 途中、Aが講師を辞めた際には、原告は、そのことをVIA受講者らに告
知するため「Value Investing Academy商標登録生涯保証・フォローアップのご説明」と題する文書を作成し、令和2年6月
5 18日付けで受講者から署名を得た(甲2、3)。
⑷ 原告は、令和2年6月22日、原告代表者において、VIAセミナー、V
IAフォローアップ、生涯保証に関して講演し、その際、配布資料に本件商標を使用し、前記⑶の経緯等を説明した(甲1)。
⑸ Aと同一視できる被告は、原告の「Value Investing A
cademy」セミナーの重要なコンテンツの担当を反故にし、原告が商標不使用でないことを知りつつ、不使用による本件商標の商標登録取消審判請求をしており、信義則に反する。2
(被告の主張)
⑴ 原告が講演の際の配布資料と主張する文書(甲1)は、不可解なレイアウ
トであり、「R2 6月22日」の記載も配布日の日付として客観的に立証されていない。同日開催された講演の具体的内容も不明であり、本件商標の使用に係る役務の特定もできない。
⑵ 受講者が署名した書面(甲2、3)は、同人らがVIA復習会の受講者で
あったことを客観的に証明するものではなく、いかなる事項に同意したかも不明である。原告が主張するVIA復習会(甲4)も、開催の有無を含め、具体的内容が不明であり、本件商標の使用に係る役務を特定できない。本件商標が自他役務を識別するものとして取引者・需要者に認識し得る態様で使用されたと認めることもできない。
⑶ 原告は、被告への権利譲渡を前提として本件商標を取得している。また、
原告のフェイスブックの投稿(甲5)を見ても、本件商標に係る指定役務につき、本件商標と社会通念上同一の商標を使用しているのが、商標権者(原告)、専用使用権者又は通常使用権者のいずれであるかの証明もない。
⑷ 原告が提出する証拠はいずれも「VIA復習会」において本件商標が使用
されたことを客観的に証明するものではない。
第4 当裁判所の判断
5 1 原告は、本件審決には商標法50条に係る判断の誤りがあると主張する。そこで、検討すると、商標法上、商標の本質的機能は、自他商品又は役務の識別機能にあると解するのが相当であるから(商標法3条参照)、同法50条にいう「登録商標の使用」というためには、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると解するのが相当である(知財高裁令和3年〔行ケ〕第10076号同4年2月9日判決参照)。
2 本件において、証拠(甲1から3まで、乙1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、バリュー投資セミナー、VIA復習会等の名称で投資に関するセミナー等を開催してきているところ、令和2年6月22日には、「VIAフォローアップ」「VIA復習会」に係る講演をオンラインで実施し、受講者に対し、講師であるAが原告を退職したと伝えるとともに、今後はVIAフォローアップ、生涯保証に関しては原告でできる範囲で対応する方針であることを伝えたこと、当該講演の様子を伝える画面では、画面右上に講演者である原告の画像及び開催者である原告の会社名(WAVELINK)が表されるとともに、画面中央に資料が表示されていたこと、当該資料には、「【VIAフォローアップ】 R2 6月22日」との表題・日付のほか、本件商標である「Value Investing Academy」の表記が商標登録番号とともに表示されていたことがそれぞれ認められる。そうすると、原告は、少なくとも、令和2年1月6日から令和5年1月5日までの要証期間中の令和2年6月22日に、指定役務である「セミナーの企画・運営又は開催」に該当する上記講演において、本件商標を資料に表示するなどして使用したものと認められる。そして、本件商標は、同日の講演の主催者を表示する態様で使用されたものといえるから、本件商標が役務の出所を表示し、自他役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されたものと認めるのが相当である。
5 3 被告は、原告の提出する証拠(甲1)は不可解なレイアウトであり、日付も配布日の日付として客観的に立証されておらず、同日の講演の内容や役務も不明である等と主張する。しかしながら、証拠(甲1)は、上記講演の際の画面であり、講演者である原告の画像及び開催者である原告の会社名が表示されるとともに、講演資料が示されているのであるから、日付を含め、レイアウト及び内容において、必ずしも不可解ということはできない。よって、被告の主張を採用することはできない。その他、被告は、原告が被告への権利譲渡を前提として本件商標を取得している旨主張し、平成30年12月頃の原告関係者と被告との間のやり取り(乙11)には、これに沿うような記載があるが、同主張及び記載は、原告が要証期間中の令和2年6月22日に指定役務に該当する講演において、本件商標を資料に表示するなどして使用した旨の前記認定を覆すに足りるものではない。
4 以上によれば、原告は、要証期間に日本国内において、商標権者が本件審判請求に係る指定役務について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していたことを証明したということができる。したがって、その証明がないとして本件商標の商標登録を取り消すべきものとした本件審決の判断には誤りがある。そして、その他、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、上記認定判断を左右するような事由は認められない。
第5 結論
よって、本件審決は取り消されるべきものであるから、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 響
裁判官
菊 池 絵 理
裁判官
頼 晋 一
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