ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(ネ)10039 各損害賠償等請求控訴事件
| 裁判所 | 控訴棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年10月30日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被控訴人楽天グループ株式会社 |
| 法令 |
商標権 商標法78条1回 商標法2条3項1号1回 |
| キーワード | 商標権15回 侵害11回 損害賠償4回 無効1回 抵触1回 |
| 主文 | 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 事案の要旨 本件は、被控訴人(原審第1事件及び第2事件被告)がインターネット上で 開設する楽天市場において、控訴人代表者(原審第1事件原告)及び控訴人 (原審第2事件原告)が販売した商品の一部である本件商品(コスプレ用衣装) が他社の商標権を侵害するものであったとして、控訴人代表者から楽天市場へ の出店契約である本件契約の契約上の地位を承継した控訴人が、被控訴人から 同契約を解除され、楽天市場において商品を販売することができなくなるとと もに、違約金として10万円を徴収されたことについて、控訴人が、本件契約 の解除は無効であり、違約金の支払義務もないと主張して、被控訴人に対し、 ①本件契約が有効に存続していることの確認、②債務不履行に基づく損害賠償 金等の支払、③不当利得に基づく違約金10万円相当額の返還等を求めた事案 である。 |
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令和7年10月30日判決言渡
令和7年(ネ)第10039号 各損害賠償等請求控訴事件
(原審・静岡地方裁判所浜松支部令和3年(ワ)第441号(第1事件)、同4年
(ワ)第242号(第2事件))
口頭弁論終結日 令和7年9月2日
判 決
控 訴 人 合 同 会 社 V e g a
被 控 訴 人 楽天グループ株式会社
同訴訟代理人弁護士 両 角 禎 憲
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
(略語は原判決の例による。)
第1 控訴の趣旨
1 原判決主文第2項を取り消す。2 A と被控訴人との間で令和元年9月に締結され、令和2年9月に控訴人と被控訴人との間に契約上の地位が承継された、楽天市場出店契約が有効に存続していることを確認する。3 被控訴人は、控訴人に対し、1169万3918円及びこれに対する令和4年6月21日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。4 被控訴人は、控訴人に対し、令和4年5月24日から本判決確定の日まで1か月64万0178円の割合による金員を支払え。5 被控訴人は、控訴人に対し、10万円及びこれに対する令和4年6月21日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
5 1 事案の要旨本件は、被控訴人(原審第1事件及び第2事件被告)がインターネット上で開設する楽天市場において、控訴人代表者(原審第1事件原告)及び控訴人(原審第2事件原告)が販売した商品の一部である本件商品(コスプレ用衣装)が他社の商標権を侵害するものであったとして、控訴人代表者から楽天市場への出店契約である本件契約の契約上の地位を承継した控訴人が、被控訴人から同契約を解除され、楽天市場において商品を販売することができなくなるとともに、違約金として10万円を徴収されたことについて、控訴人が、本件契約の解除は無効であり、違約金の支払義務もないと主張して、被控訴人に対し、
①本件契約が有効に存続していることの確認、②債務不履行に基づく損害賠償金等の支払、③不当利得に基づく違約金10万円相当額の返還等を求めた事案である。2 控訴人の請求前記第1の2から5までに記載のとおりである。【控訴人の請求の法的根拠】・ 前記第1の2の請求について本件契約が有効に存続していることの確認請求・ 前記第1の3の請求について・ 主請求:債務不履行に基づく損害賠償請求(令和2年11月16日から令和4年5月23日までの逸失利益)・ 附帯請求:遅延損害金請求(起算日は原審第2事件訴状送達の日の翌日、利率は民法所定)・ 前記第1の4の請求について債務不履行に基づく損害賠償請求(令和4年5月24日から判決確定の日までの逸失利益)・ 前記第1の5の請求について
5 ・ 主請求:不当利得に基づく利得金返還請求・ 附帯請求:利息金請求(起算日は原審第2事件訴状送達の日の翌日、利率は民法所定)3 原審は控訴人の請求(原審第2事件に係るもの)を全部棄却する判決をしたところ、これを不服とする控訴人が控訴を提起した。
第3 前提事実
前提事実は、以下のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第2の2(3頁~)に記載するとおりであるから、これを引用する。【原判決の補正】
1 原判決4頁23行目の「「【会社名・代表者名義変更用】出店申込書」」を
「「【会社名・代表者名変更用】出店申込書」」と改める(理由:誤記)。
2 原判決5頁25行目の「同日」を「令和2年11月16日」と改める(理
由:誤記)。
第4 争点及び争点に関する当事者の主張
1 争点
当審における本件の争点は、以下のとおりである。これに関する当事者双方の主張は、当審における控訴人の補充的主張を後記2のとおり加えるほか、原判決「事実及び理由」第2の3(2)(7頁)及び原判決別紙5「主張整理表」(27頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。【争点】
(1) 解除権行使制限特約の有無(争点1)
(2) 「継続的契約の法理」による解除権行使の制限の有無(争点2)
(3) 違約金を課す上で修正対応依頼が必要であったか(争点3)
(4) 損害(争点4)
2 争点に関する控訴人の補充的主張
(1) 争点1(解除権行使制限特約の有無)について
5 本件においては、被控訴人は、本件契約の内容を規定する違反点数ガイ
ドラインに修正対応依頼をすることが定められている(STEP2)にもかかわらず、被控訴人はこれをせず、出店者側に是正の機会を一切与えることなく、一方的に加点・契約解除をしており、到底許されるものではない。
(2) 争点2(「継続的契約の法理」による解除権行使の制限の有無)につい
てア 被控訴人は、控訴人や控訴人代表者が販売した商品について任意に調査購入を行い、同商品に付された「M」や「L」のマークが訴外会社(任天堂株式会社)の登録商標であるとの通知を同社から受けたとするが、同社は控訴人に対して警告書の送付や訴訟提起をしていない。本件商品が訴外会社の本件商標権を侵害するとの評価はあくまで同社の私的見解にすぎず、被控訴人が主張する商標権侵害も、同社の私的見解を鵜呑みにしたものである。イ また、本件商品は購入後いずれもキャンセル処理されており、社会に流通していない。商標権侵害となる「使用」に該当するためには、指定商品への表示・流通が必要であり 、本件ではこの点を欠くから、 商 標 の「使用」には当たらない。仮に違反行為があったとしても、それは軽微なものであり、本件契約の解除は、実質的流通・被害が存在しないにもかかわらずされたものであるから、比例原則違反、信義則違反の解除であって、正当なものではない。ウ 被控訴人は、控訴人代表者との間で、令和2年10月に本件契約の更新をしたにもかかわらず、そのわずか1か月後に本件契約を解除しており、背信的なものであるといえ、当該解除に正当な理由は認められない。なお、被控訴人は、控訴人に対し、違約金として10万円を請求しているが、制度上許される違約金の最大額は300万円であり、それにもかかわらず本件では10万円の請求にとどまっている。このことは、被控訴
5 人が本件の違反を重大なものとは理解していなかったことを表しており、
本件契約の解除の相当性が疑問であることの傍証になる。エ 本件契約の解除は、デジタルプラットフォーム取引の支配構造と出店者保護の欠如、優越的地位の濫用、下請法趣旨抵触、善管注意義務違反、憲法31条違反、営業の自由・財産権・人格的信用、適正手続・平等といった憲法上の法的利益の侵害などの観点から許されない。また、本件契約の解除の有効性を認めた原判決には、民事訴訟法上の手続的瑕疵、実体的審理義務の放棄(同法2条違反)、重大な事実誤認と合議体の機能不全(同法312条)、争点整理義務の履行欠如(同法164条)、判決理由の不備(同法253条)といった違法がある。
第5 当裁判所の判断
1 当裁判所は、本件出店規約26条1項に基づく解除をする場合において、
違反点数ガイドラインによって解除前に「修正対応期間」を設けることが解除権行使の制限特約として定められていたとは認められず、仮に、修正対応期間を設けることが必要であるとしても、本件においてはこれを不要とする「特段の事情」が認められ(以上、争点1)、本件契約の個別的事情に照らして、控訴人及び被控訴人間の信頼関係は破壊されたから、本件契約の解除に「正当な理由」があるといえ(争点2)、本件契約では、違約金を課す上でも修正対応依頼が要件とされているとは解されないから(争点3)、その余の点について検討するまでもなく、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。
2 争点1(解除権行使制限特約の有無)について
(1) 本件出店規約26条1項に基づく解除をする場合において、「修正対応
期間」を設けることが解除権行使の制限特約として定められていたとは認められないこと、仮に、解除権の行使要件として原則として修正対応期間を設けることが必要であるとしても、本件においては「特段の事情」が認められ
5 ることについては、原判決「事実及び理由」第3の2(9頁~)に記載のと
おりであるから、これを引用する。
(2) 控訴人は、本件契約を解除するに際して修正対応依頼をして、出店者側
に是正の機会を与えるべきであったと主張するが、「修正対応期間」を設けることが解除権行使の制限特約として定められていたとは認められないことは上記のとおりである。また、控訴人は、本件において、実質的流通・被害が存在しないとか、比例原則・信義則に反するなどとも主張する。しかし、本件商品のうちの1点は実際に市場に一定期間流通しており、他人の商標権を侵害するおそれがあった以上、結果的に流通量が少なかったことは法令違反の重大性を考える上で重視すべきでないことは、前記引用に係る説示(原判決「事実及び理由」
第3の2(4)3段落目・13頁)に記載のとおりである。
よって、控訴人の主張はいずれも採用することができない。
3 争点2(「継続的契約の法理」による解除権行使の制限の有無)について
(1) 本件契約の当事者である控訴人と被控訴人との間の信頼関係が破壊され
たと認められ、継続的契約である本件契約の解除に「正当な理由」があるといえることについては、原判決「事実及び理由」第3の3(3)(15頁~)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2) これに対し、控訴人は、被控訴人が主張する商標権侵害は、訴外会社の
私的見解を鵜呑みにしたものにすぎないと主張する。しかし、本件商品に付された標章(甲8、乙3)と、本件商標権に係る商標の標章(原判決別紙4の商標権目録記載)が酷似していることは明白である。しかも、本件商標権の権利者である訴外会社が、楽天市場を開設する被控訴人に対し、本件商品が本件商標権を侵害するものであるとする鑑定結果報告書までわざわざ提出しているのであるから(前記引用に係る前提事実
(5)ア)、その商標権侵害の可能性は極めて高いといえる。本件における被
5 控訴人による商標権侵害の主張を、訴外会社の私的見解を鵜呑みにするもの
であるなどと軽視する控訴人の主張は、到底採用できない。
(3) 控訴人は、本件商品は購入後いずれもキャンセル処理されており、社会
に流通していないから、商標の「使用」には当たらず、被害もないなどと主張する。しかし、商標法2条3項は、その各号において同法における「使用」に当たる行為として、「商品・・・に標章を付する行為」(1号)、「商品・・・に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、・・・又は電気通信回線を通じて提供する行為」(2号)を定めており、控訴人代表者及び控訴人は、本件商標権に係る商標と類似した標章を本件商品に付し、これをインターネット上の楽天市場における本件店舗で販売したのであるから(前記引用に係る前提事実(4)イ)、当該付する行為は商標法2条3項1号に、当該販売行為は同項2号に該当することが明らかである。よって、商標権の「使用」に当たらないとする控訴人の上記主張は採用できない。
(4) また、控訴人は、令和2年10月に本件契約の更新をしたのに、そのわ
ずか1か月後に本件契約を解除することは背信的であるとか、違約金が最大300万円だったにもかかわらず、本件で10万円にとどまったことは、被控訴人が本件の違反を重大なものとは理解していなかったことを表すなどと主張する。しかし、商標権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、又は併科される重大な犯罪であること(令和4年法律第68号による改正前の商標法78条)を考慮すると、控訴人による本件商品の販売行為(前記引用に係る前提事実(4)イ)は重大な違反行為であるといえ、たとえ本件契約の更新の1か月後に本件契約が解除されたとしても、これをもって背信的であるなどとは到底いえない。同様の理由で、本件にお
5 いて被控訴人から請求された違約金が10万円にとどまったからといって、
上記判断は何ら左右されない。
(5) 以上のほかにも、控訴人はるる主張するが、いずれも独自の見解に基づ
くものであり、採用することができない。
4 争点3(違約金を課す上で修正対応依頼が必要であったか)について
本件契約では、違約金を課す上でも修正対応依頼が要件とされているとは解されないことは、原判決「事実及び理由」第3の4(16頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。
5 結論
以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官増 田 稔裁判官岩 井 直 幸裁判官安 岡 美 香 子
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