ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(行ケ)10106 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年10月21日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告株式会社カムイネット
ECOンビ工法研究会 被告中越製陶株式会社 有限会社リタッグ |
| 法令 |
特許権 特許法131条の22回 特許法29条1項1号1回 特許法132条2項1回 |
| キーワード | 実施244回 審決81回 無効25回 進歩性20回 新規性16回 特許権8回 無効審判6回 優先権3回 |
| 主文 | 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
| 事件の概要 | 本件は、無効審判請求を不成立とした本件審決の取消訴訟である。争点は、新 規性及び進歩性欠如の無効理由についての判断の誤りの有無である。 |
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令和7年10月21日判決言渡
令和6年(行ケ)第10106号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年10月2日
判 決
原 告 株式会社カムイネット
(以下「原告カムイネット」という。)
原 告 ECOンビ工法研究 会
(以下「原告ECOンビ」という。)
被 告 中 越 製 陶 株 式 会 社
(以下「被告中越製陶」という。)
同訴訟代理人弁護士 高 橋 淳
被 告 有 限 会 社 リ タ ッ グ
(以下「被告リタッグ」という。)
主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
(注)本判決で用いる略語の定義は、本文中で別に定めるほか、次のとおりである。また、特に断らない限り、枝番のある書証で枝番を表示していないものは、すべての枝番を含む趣旨である。
5 本件審決 :特許庁が無効2023-800029号事件について令和6年11月7日にした無効審判請求を不成立とした審決本件特許 :被告らを特許権者とする特許第4199803号(発明の名称:側溝及び桝。請求項の数:4。甲1)本件発明 :本件特許に係る発明の総称。各請求項に係る発明は、請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。本件明細書:本件特許に係る明細書及び図面(甲1)本件優先日:本件特許の優先権主張の日である平成16年6月15日甲2公報 :登録実用新案第3031035号公報(甲2)甲2発明 :甲2公報に記載された発明甲3公報 :特許第2514918号公報(甲3)甲3発明 :甲3公報に記載された発明甲12資料:平成8年4月8日付け「リボーン側溝工業会準備委員会 第一回会議」資料(甲12)甲12公然実施発明:甲12資料に記載された側溝に係る発明甲13資料:平成11年2月2日付け北本市長作成の「公文書任意的公開回答書(北建建発第352号)」(甲13)甲13公然実施発明:甲13資料に記載された側溝に係る発明甲15資料:リボーン側溝のパンフレット(甲15の1・2)甲15公然実施発明:甲15資料に記載された側溝に係る発明甲17資料:平成13年12月13日付け荒井コンクリート工業株式会社代表者作成の「証明書」(甲17)甲17公然実施発明:甲17資料に記載された側溝に係る発明甲18資料:平成8年4月1日付け三国コンクリート工業株式会社作成の側溝構造図(甲18)甲18公然実施発明1:甲18資料に記載された側溝に係る発明の一つ
5 甲18公然実施発明2:甲18資料に記載された側溝に係る発明の一つ甲21資料:リボーン側溝のカタログ(甲21)甲21公然実施発明:甲21資料に記載された側溝に係る発明
第1 請求
本件審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、無効審判請求を不成立とした本件審決の取消訴訟である。争点は、新規性及び進歩性欠如の無効理由についての判断の誤りの有無である。1 特許庁における手続の経緯等(甲1、弁論の全趣旨)
⑴ 本件特許は、平成16(2004)年10月20日を国際出願日として出願され(優先権主張日:同年6月15日、優先権主張国:日本)、平成20年10月10日、特許権の設定登録がされた。被告らは、本件特許に係る特許権の共有者である。
⑵ 原告らは、令和5年5月10日、本件特許につき無効審判を請求し(なお、原告ECOンビにつき、審判請求書及び本件審決の当事者欄には「ECOンビ工法研究会事務局」と記載されているが、資格証明書によれば、権利能力なき社団として当事者能力を有するのは「ECOンビ工法研究会」と認められるから、いずれも表示の誤りと認める。)、特許庁は、同事件を無効2023-800029号事件として審理した。
⑶ 特許庁は、令和6年11月7日、本件特許につき、「請求項1~4に係る発明についての審判の請求は成り立たない。」との本件審決をし、その謄本は、原告カムイネットに対しては同月18日、原告ECOンビに対しては同月15日、それぞれ送達された。
⑷ 原告らは、同年12月13日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。2 本件発明の内容等
5 ⑴ 本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(A~Oの分説の符号は、当裁判所が付した。以下、個別の構成を「構成要件A」のようにいう。)。【請求項1】A 蓋接面部と接する本体接面部が凹の曲面となっている側溝本体と、B 前記本体接面部と接する蓋接面部が凸の曲面となっている蓋とからなり、C 前記本体接面部が水平部分を有しない側溝において、D 前記本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が、11~25mmであり、E 前記本体接面部の曲率半径と前記蓋接面部の曲率半径とを等しくするとともに(以下「同一曲率半径構成」という。)、前記両接面部の曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れている(以下「曲率中心距離0.5~1.5mm構成」という。)F ことを特徴とする側溝。【請求項2】G 請求項1の側溝において、前記蓋がレジンコンクリート製又は繊維補強コンクリート製であることを特徴とする側溝。【請求項3】H 筒状の本体1と蓋2とからなり、I 蓋接面部と接する本体接面部が凹の曲面、J 前記本体接面部と接する前記蓋接面部が凸の曲面となっており、K 前記本体接面部が水平部分を有しない桝において、L 前記本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が、11~25mmであり、M 前記本体接面部の曲率半径と前記蓋接面部の曲率半径とを等しくするとともに、前記両接面部の曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れているN ことを特徴とする桝。【請求項4】
5 O 請求項3の桝において、前記蓋がレジンコンクリート製又は繊維補強コンクリート製であることを特徴とする桝。
⑵ 本件明細書本件明細書の記載は、別紙「特許公報」(甲1)の【発明の詳細な説明】及び各図面のとおりである。3 本件審決の理由本件審決は、原告ら主張の無効理由を以下の無効理由1~6に整理した上で、要旨、以下のとおり判断した。
⑴ 無効理由1(甲2発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)についてア 甲2発明について甲2公報には、次の甲2発明が記載されている。「 対向する各側溝壁2A、2B内面に形成された上部傾斜面部2a、2bと、これらの上部傾斜面部2a、2bに連続して下方に延設された湾曲面部3a、3bを有し、湾曲面部3a、3bは、凹の曲面である側溝躯体1と、上部傾斜面部2a、2bに対し微小間隔G1を有して対峙するように配置される蓋上部傾斜面部9a、9bと、これらの蓋上部傾斜面部9a、9bに連続して下方に延設されて、上記湾曲面部3a、3bに対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部10a、10bを有し、蓋湾曲面部10a、10bは、凸の曲面である側溝蓋8とからなり、側溝蓋8を側溝躯体1に嵌挿すると、その側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bが、これの湾曲(曲率)度より小さい湾曲度で湾曲する側溝躯体1の湾曲面部3a、3bに下端Pにて線接触するようにして支持され、側溝躯体1および側溝蓋8の、上部傾斜面部2a、2bと蓋上部傾斜面部9a、9bとの傾斜角、湾曲面部3aと蓋湾曲面部10a、10bとの線接触および湾曲度によって、これらの湾曲面部3a、3bおよび10a、
5 10bが相互に一方が他方に対し食い込むような楔効果を呈するため、上記線接触にも拘らず、側溝蓋8は側溝躯体1内において全くがたつきを生じることがなく、騒音公害の発生を確実に回避することができる、側溝構造。」イ 本件発明1との対比本件発明1は、甲2発明と、少なくとも次の点で相違する(なお、相違点として、本件発明1において「本体接面部」が「水平部分を有しない」のに対し、甲2発明の「湾曲面部3a、3b」にはそのような特定がされていない点(相違点1A)が認められるが、甲2発明の湾曲面部が水平部分という直線部分を有しないことは自明であるから、実質的な相違点ではない。)。<相違点2A>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲2発明は、「蓋湾曲面部10a、10b」の曲率が「湾曲面部3a、3b」の曲率よりも小さい(ママ)ものであり、曲率中心が相互に離れる距離も特定されていない点。ウ 相違点2Aの検討・判断(ア) 本件明細書の記載(段落【0010】~【0013】。以下、特に断らない限り、【 】は本件明細書の段落番号を、【図 】は本件明細書の図を、それぞれ示すものとする。)によれば、相違点2Aに係る本件発明1の構成は、次の技術的意味を有するものである。
① 「同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成になるように構成することで、「蓋を装着したときは、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生じず、蓋に積載荷重がかかると、
5 蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができる」。
② 曲率中心距離0.5~1.5mm構成の数値範囲は、「本体接面部と蓋接面部の曲率半径が異なると、積載荷重がかかったときの蓋と本体との接触面積が小さくなり、過度の応力が発生する可能性がある」から、「本体接面部の曲率中心O 1 と蓋接面部の曲率中心O 2 との距離は0.5~1.5mmが好ましい」ことから選択されたこと。
③ 「曲率半径」の数値範囲は、「本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を11~25mmに小さくすると、蓋掛かりの幅を小さくすることができるので、蓋の幅を小さくできると共に、側溝の側板部又は桝の周壁の外面をフラットにすることができ、接面部の曲率半径を小さくすると、蓋接面部が低い位置となるので、蓋の強度が向上し、蓋の厚さを薄くしても、十分な強度を保てるから、蓋を薄くできると共に、これに伴って本体の高さを低くすることができるものであり、曲率半径が25mmを超えると、蓋の幅を十分に狭くすることができず、側板部のコンクリート使用量を適正にした場合、側板部の外面をフラットにすることができない」ことから選択されたこと。(イ) これに対し、甲2発明は、「荷重がかかった際に『側溝躯体1および側溝蓋8』が広い曲面で接触し、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができるもの」でなく、甲2発明において「側溝蓋2」に積載荷重が加わった際の側溝の挙動を示唆する記載もなく、積載荷重が加わった際の挙動を考慮して変更を行うことが自明ともいえないから、甲2発明の「湾曲面部3aと蓋湾曲面部10a、10bとの線接触および湾曲度」について変更を行う動機があるとはいえない。
5 原告らが主張する甲9、15、16、21、23、24、27、30、31及び48(以下併せて「甲9等」という。)は、側溝において、蓋と側溝本体とに曲面を設けるものであるが、相違点2Aに係る本件発明1の構成を有するものではなく、積載荷重がかかると線接触していた蓋と本体が面接触となるように変更を加えることを示唆するものではない。(ウ) よって、甲2発明に上記各証拠に記載された技術を適用しても、相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。エ 本件発明1の新規性及び進歩性についての小括以上のとおり、相違点2Aは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明でない。また、本件発明1は、甲2発明及び甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。オ 本件発明2について本件発明2は、本件発明1の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるから、本件発明2は、甲2発明でなく、甲2発明及び甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。カ 本件発明3について本件発明3は、甲2発明と、少なくとも前記相違点2Aの点で相違し、その検討・判断は、本件発明1について前記ウに示したとおりである。すなわち、相違点2Aは実質的な相違点であるから、本件発明3は、甲2発明ではなく、甲2発明、並びに甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。キ 本件発明4について
5 本件発明4は、本件発明3の構成を全て有し、さらに限定を付加したものであるから、本件発明4は、甲2発明でなく、甲2発明及び甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
⑵ 無効理由2(甲2発明に係る公然実施物に基づく新規性及び進歩性の欠如)についてア 甲12資料について甲12、13その他の甲号証を総合しても、甲12資料に記載された側溝が、公然実施されたとは認められない。仮に甲12資料に記載された側溝が実施されたものとして検討すると、次のとおりである。(ア) 甲12公然実施発明の認定「 蓋の厚さが100mmである側溝において、蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部の同様の部分に、それぞれの曲率半径が50mmである部分を有し、蓋と側溝本体の曲面部は下方の位置で接し、側溝本体の曲面部に水平な部分がないものであり、蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置のずれが水平方向で5mm、垂直方向で2.5mmである側溝。」(イ) 本件発明1との対比本件発明1は、甲12公然実施発明と次の点で相違し、その余の点で一致する。<相違点1B>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲12公然実施発明は「蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部の同様の部分に、それぞれの曲率半径が50mmであ
5 る部分を有し」、「蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置のずれが水平方向で5mm、垂直方向で2.5mmである」点。(ウ) 検討・判断相違点1Bに係る本件発明1の構成は、前記⑴ウ(ア)の技術的意味を有するところ、甲12公然実施発明は、曲率半径及び曲率中心の位置のずれ量の両者が本件発明1と異なっており、甲12資料及び他の甲号証の記載に照らしても、これを前記技術的意味を有するような数値に変更する動機があるとはいえない。(エ) 本件発明1の新規性及び進歩性についての小括よって、本件発明1は、甲12公然実施発明ではなく、また、甲12公然実施発明、甲2及び甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。イ 甲13資料及び甲15資料について(ア) 甲13資料には、次の甲13公然実施発明が記載されていると認められ、これと本件発明1を対比すると、少なくとも次の相違点が認められる。<甲13公然実施発明>蓋の厚さが100mmである側溝において、蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部を有する側溝。<相違点1C>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲13公然実施発明は、「蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部」のそれぞれの曲率半径の大きさ、及び、相互の長さの大小関係や曲率中心の位置関係が不明である点。(イ) 甲15資料には、次の甲15公然実施発明が記載されていると認めら
5 れ、これと本件発明1を対比すると、少なくとも次の相違点が認められる。<甲15公然実施発明>側溝において、蓋と凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部を有し、両曲面部が互いに接触し、蓋と側溝本体の曲面部の同様の部分の曲率半径が5(注:単位不明)であり、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量も分散され、音の発生を未然に防ぐ、側溝。<相違点2D>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲15公然実施発明は、「蓋と側溝本体の曲面部の同様の部分の曲率半径が5」であり、「曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量も分散され、音の発生を未然に防ぐ」ものであるが、「蓋と側溝本体の曲面部の同様の部分の曲率半径」における曲率中心の位置関係が特定されていない点。(ウ) 検討・判断相違点1C及び相違点2Dに係る本件発明1の構成は、前記⑴ウ(ア)の技術的意味を有するところ、前記アと同様、それぞれ、甲13資料、甲15資料及び他の甲号証の記載に照らしても、これを前記技術的意味を有するような構成とする動機があるとはいえない。ウ 本件発明2~4について本件発明1について示したところと同様である。
⑶ 無効理由3(甲2発明により公然知られた発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)について原告らの主張する、甲2発明により公然知られた発明は、前記⑴の甲2発
5 明及び前記⑵の各公然実施発明の技術的事項を超えるものとは認められないから、同様に、本件発明の新規性及び進歩性欠如を裏付けるものではない。
⑷ 無効理由4(甲3発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)についてア 甲3発明について甲3公報には、次の甲3発明が記載されている。「 接面部a5が全面にわたって曲面に成形加工された側溝蓋1と、前記側溝蓋1の接面部a5に対応する接面部b6が全面にわたって前記側溝蓋1の接面部a5の曲面に対して幾何学的に相似な曲面に成形加工された側溝2とからなり、接面部a5は凸の曲面であり、接面部b6は凹の曲面であり、幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着するものであり、側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着することにより車両等の通過騒音を解消し、側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増すものであり、側溝蓋に垂直加重がかかった場合、接触面が曲面であるために、力線が分散され、側溝蓋にかかる負担が軽減され耐用年数が延びるものであって、前記側溝蓋1と側溝2との密着性を高め、前記側溝蓋1にかかる垂直荷重が前記側溝蓋1及び側溝2の接面部a5、b6を介して分散されて側溝2に伝達される、騒音の発生しない側溝。」イ 本件発明1との対比本件発明1は、甲3発明と、少なくとも次の点で相違する。<相違点2E>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲3発明は、「幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置する
5 と、両者は側溝蓋1の自重により密着するもの」であって、「接面部a5」及び「接面部b6」の曲率半径の大きさが特定されておらず、それぞれの曲率中心の位置関係が特定されていない点。ウ 相違点2Eの検討・判断(ア) 本件明細書の記載(【0010】~【0013】)によれば、相違点2Eに係る本件発明1の構成は、「蓋を装着したときは、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生ず、蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができる」との技術的意味を有するものである。これに対し、甲3発明の「接面部a5」と「接面部b6」は、発明の構成に照らし、設置時に、密着性が高く、面接触した状態とするものであり、「幾何学的に相似な曲面に成形加工」されたものであって、同一の曲率半径を有するものであるから、それぞれの曲率中心の位置が一致しない限り、「前記側溝蓋1と側溝2との密着性を高め、前記側溝蓋1にかかる垂直荷重が前記側溝蓋1及び側溝2の接面部a5、b6を介して分散されて側溝2に伝達される」ものとはならないことは自明であるから、「それぞれの曲率中心の位置」を離すように設計する動機があるとはいえない。よって、甲3発明は、本件発明1の構成要件Eの構成により「蓋を装着したときは、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生」じないものではなく、そのように設計することを示唆する記載もない。(イ) 原告らが主張する甲9等は、荷重に応じて線接触又は面接触するよ
5 うにするための構成を示すものではなく、そのように構成することを示唆するものでもない。よって、甲3発明に上記各証拠に記載された技術を適用しても、相違点2Eに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。エ 本件発明1の新規性及び進歩性についての小括前記のとおり、相違点2Eは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明でない。また、本件発明1は、甲3発明及び甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。オ 本件発明2~4について本件発明1について示したところと同様である。
⑸ 無効理由5(甲3発明に係る公然実施物に基づく新規性及び進歩性の欠如)についてア 甲4~8、10、11について甲4~8は、甲3発明の側溝と同じものやその実施を示すものではなく、仮に甲3発明の実施を認定し得るとしても(以下「甲3実施発明A」という。)、甲3実施発明Aは、甲3発明の構成を有するものとして認定し得るものである。甲10、11は、甲3発明の実施を示すものではなく、仮に甲3発明の実施を認定し得るとしても(以下「甲3実施発明B」という。)、甲3実施発明Bは、甲3発明の構成を有するものとして認定し得るものである。したがって、前記⑷と同様に、本件発明は甲3実施発明A、Bではなく、甲3実施発明A、Bと、甲9等に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 イ 甲17資料、甲18資料及び甲21資料について(ア) 甲17資料には、次の甲17公然実施発明が記載されていると認められ、これと本件発明1を対比すると、少なくとも次の相違点が認められる。<甲17公然実施発明>蓋の厚さが101mmである側溝において、蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部の同様の部分において、蓋の凸の曲面部の曲率半径が45mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が50mmである部分を有し、蓋と側溝本体の曲面部は下方の位置で接し、側溝本体の曲面部に水平な部分がないものであり、蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置がずれている側溝。<相違点1F>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲17公然実施発明は、「蓋の凸の曲面部の曲率半径が45mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が50mmである部分を有し」、「蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置がずれている」が、どの程度ずれているか不明である点。(イ) 甲18資料には、甲17公然実施発明と同じ構成を有する甲18公然実施発明1のほか、次の甲18公然実施発明2が記載されていると認められ、これと本件発明1を対比すると、少なくとも次の相違点が認められる。<甲18公然実施発明2>蓋の厚さが103.9mmである側溝において、蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部の同様の部分において、蓋の凸の曲面部の曲
5 率半径が50mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が54.5mmである部分を有する側溝。<相違点1G>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲18公然実施発明2は、「蓋の凸の曲面部の曲率半径が50mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が54.5mmである部分を有」し、「蓋」と「側溝本体」の曲面部の曲率中心の位置関係が特定されていない点。(ウ) 甲21資料(発行日は不明であるが、同型の側溝の設計図(甲20)が平成8(1996)年に作成されている。)には、次の甲21公然実施発明が記載されていると認められ、これと本件発明1を対比すると、少なくとも次の相違点が認められる。<甲21公然実施発明>側溝本体において蓋が接触する位置の凹の曲面部の曲率半径が50mmであり、蓋において側溝本体が接触する位置の凸の曲面部の曲率半径が50mmであり、側溝本体と蓋が接触する位置の曲面部が水平部分を有しない側溝であって、側溝本体において蓋が接触する位置の凹の曲面部の曲率中心と、蓋において側溝本体が接触する位置の凸の曲面部の曲率中心が、水平方向に1mm及び垂直方向に1.7mmずれており、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量を分散し、音の発生源をなくしている側溝。<相違点1H>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲21公然実施発明は、「側溝本体において蓋が接触する位置の凹の曲
5 面部の曲率半径」及び「蓋において側溝本体が接触する位置の凸の曲面部の曲率半径」がともに「50mm」であり、「側溝本体において蓋が接触する位置の凹の曲面部の曲率中心と、蓋において側溝本体が接触する位置の凸の曲面部の曲率中心が、水平方向に1mm及び垂直方向に1.7mmずれており、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量を分散し、音の発生源をなくしている点。(エ) 検討・判断前記の各相違点に係る本件発明1の構成は、前記⑴ウ(ア)の技術的意味を有するところ、それぞれ、甲17資料、甲18資料、甲21資料及び他の甲号証の記載に照らしても、これを前記技術的意味を有するような構成とする動機や示唆があるとはいえない。ウ 本件発明2~4について本件発明1について示したところと同様である。
⑹ 無効理由6(甲3発明により公然知られた発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)について原告らの主張する、甲3発明により公然知られた発明は、前記⑷の甲3発明及び前記⑸の各公然実施発明の技術的事項を超えるものとは認められないから、同様に、本件発明の新規性及び進歩性欠如を裏付けるものではない。4 原告ら主張の審決取消事由
⑴ 本件発明1の新規性欠如又は進歩性欠如に係る、以下の各発明に係る発明の認定、相違点の認定及び容易想到性判断の誤りア 甲2発明(取消事由1)イ 甲12公然実施発明(公然実施されたか否かを含む)(取消事由2)ウ 甲13公然実施発明(取消事由3)エ 甲15公然実施発明(取消事由4)
5 オ 甲3発明(取消事由5)カ 甲3実施発明A(甲4~8)(取消事由6)キ 甲3実施発明B(甲10、11)(取消事由7)ク 甲17公然実施発明(取消事由8)ケ 甲18公然実施発明1(取消事由9)コ 甲18公然実施発明2(取消事由10)サ 甲21公然実施発明(取消事由11)
⑵ 本件発明2~4の新規性欠如又は進歩性欠如に係る前記⑴アないしサの判断の誤り(取消事由12)
第3 当事者の主張
各取消事由に関する当事者の主張は、別紙「当事者の主張」のとおりである。
第4 当裁判所の判断
1 本件発明について
⑴ 本件明細書の記載(別紙「特許公報」参照)によれば、本件発明について、次の記載があることが認められる。ア 本件発明は、道路に沿って又は道路を横断して埋設設置される側溝及び側溝桝、雨水桝などとして埋設設置される桝に関する(【0001】)。イ 従来、車両などの通過騒音を解消する側溝としては、特開平6-248688号公報(注:甲3公報に係る公開特許公報)に開示されるように、蓋接面部及び側溝本体の蓋受部を曲面とし、両曲面を線接触させるものが知られている。この種の側溝は、蓋接面部の曲面及び側溝本体の蓋受部の曲面とが線状の接触となるために、製造誤差で曲面に多少の歪みがあってもこれが吸収され、蓋と側溝本体とが密着して騒音が発生しないという特徴を有する。また、側溝本体の蓋受部が水平部分を有しないので、騒音発生の二次要因である小石などの異物が蓋受部の上に溜まることがない(【0002】)。
5 ウ 上記の従来の側溝は、積載荷重(上を通る自動車の重量など)に耐える必要から、全体に肉厚に形成され、コンクリート使用量が多く、しかも重いため、製造コストが高くなるばかりでなく、保管、運搬、施工に不便で、作業性も悪かった。また、側板部4の上部外面が張出部8となっているので、設置する際の掘削量が多くなりコスト高となるばかりでなく、隣地境界に隣接する場所に設置するのが困難であった。さらに、側溝設置後に埋め戻し転圧を行うと張出部8の下側の転圧がしづらく、舗装が沈下する大きな要因の一つと考えられている。側板部の外面をフラットにしようとすると、本体上部の幅(全幅)を変えることはできないから、側板部の下部の肉厚を不必要に厚くしなければならず、きわめて不経済であるという課題があった。本件発明は、積載荷重に十分耐えることができながら、本体及び蓋の小型軽量化を実現し、しかも側板部の外面をフラットにできる音のしない測溝を開発することを課題としてなされたものである(【0004】、【0006】)。エ 本件発明は、上記課題を解決するために、本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が、11~25mmであり、前記本体接面部の曲率半径と前記蓋接面部の曲率半径とを等しくするとともに、前記両接面部の曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れていること、その他、本件発明1の構成を備えた側溝、又は本件発明3の構成を備えた桝であることを特徴とする(【0007】、【0008】)。オ 本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を11~25mmに小さくすると、蓋掛かりの幅、すなわち(蓋の幅w2-有効幅w1)/2、を小さくすることができるので、蓋の幅を小さくできると共に、側溝の側板部又は桝の周壁の外面をフラットにすることができる。また、接面部の曲率半径を小さくすると、蓋接面部が低い位置となるので、蓋の強度が向上し、蓋の厚さtを薄くしても、十分な強度を保てる。したがって、蓋を薄く
5 できると共に、これに伴って本体の高さを低くすることができる(【0010】)。カ 本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11mm未満であると、積載荷重が作用したときに蓋接面部に過大な応力が発生し、接面部が破壊するおそれがある。本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が25mmを超えると、蓋の幅を十分に狭くすることができず、側板部のコンクリート使用量を適正にした場合、側板部の外面をフラットにすることができない(【0011】)。キ 本体接面部の曲率半径と蓋接面部の曲率半径とを等しくするとともに、両接面部の曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れているように構成すると、蓋を装着したときは、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり(図4)、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生じない。蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し(図5)、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができる。本体接面部と蓋接面部の曲率半径が異なると、積載荷重がかかったときの蓋と本体との接触面積が小さくなり、過度の応力が発生する可能性がある。本体接面部の曲率中心O 1 と蓋接面部の曲率中心O 2 との距離が0.5mmよりも小さいと、図4に示す積載荷重のない状態において、寸法誤差の吸収が不十分となり、ガタツキを生じる可能性がある。1.5mmよりも大きいと、図5に示す積載荷重が作用した状態において、本体接面部と蓋接面部の接触が不十分となり、過度の応力が発生するおそれがある。したがって、本体接面部の曲率中心O 1と蓋接面部の曲率中心O 2 との距離は0.5~1.5mmが好ましい(【0012】【0013】)。ク 本件発明は、蓋掛かりが小さくなることで蓋の幅を狭く、厚みを薄くす
5 ることができ、したがって、有効溝幅を保ちながら側溝又は桝が小型、軽量化され、コンクリート使用量も低減し、コストダウンとなるばかりでなく、運搬・施工作業も軽減する。また、側溝又は桝の外面をフラットにすることができるので、設置する際の掘削量が少なく、隣地境界に接する場所に設置するのも容易であり、埋め戻し後の転圧も良好となるという効果を奏する(【0015】)。ケ 本件発明の側溝と桝は、本体接面部及び蓋接面部の構成を同じくすることで、同じ作用効果を奏するものである(【0009】)。【図4】側溝本体及び蓋接面部の説明図【図5】積載荷重作用時の側溝本体及び蓋接面部の説明図
⑵ 本件発明1の技術的意義前記の本件明細書の記載によれば、本件発明1には、以下の技術的意義(以下「本件技術的意義」という。)があることが認められる。
5 ア すなわち、本件発明1の「本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を11~25mm」とすること(構成要件D。本件発明3の構成要件Lも同じ。)の技術的意義は、①このような数値範囲に曲率半径を小さくすると、蓋掛かりの幅を小さくすることができるので、蓋の幅を小さくすることができると共に、コンクリート使用量を低減しつつ側溝の側板部(又は桝の周壁)の外面をフラットにすることができること、②曲率半径がこの数値範囲よりも大きい場合と比べ、蓋接面部が低い位置となるので、蓋の強度が向上し、蓋の厚さを薄くしても十分な強度を保てることにあり、数値範囲については、③曲率半径が11mm未満であると、積載荷重が作用したときに蓋接面部に過大な応力が発生し、接面部が破壊するおそれがあること、④曲率半径が25mmを超えると、蓋の幅を十分に狭くすることができないことから選択されたと認められる(前記⑴ウ、オ、カ、ク、ケ。以下「本件技術的意義D」という。)。イ また、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成(構成要件E。本件発明3の構成要件Mも同じ。)の技術的意義は、①本体接面部及び蓋接面部の曲率中心を離れたものとすることにより、同一曲
5 率半径構成としつつ蓋と本体の接触部分が線状の接触となり、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生じないようにすること(以下「本件技術的意義E1」という。)、②このように線状に接触している場合でも蓋に積載荷重がかかると蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触することを確保し、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができるようにすること(以下「本件技術的意義E2」という。)にあると認められる(前記⑴キ、ケ)。
2 取消事由1(甲2発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲2発明の認定についてア 甲2公報の記載(【0009】~【0011】、【0014】、【0016】、【図1】、【図3】)からは、本件審決が認定した甲2発明(前記第2の3⑴ア)を認定することができる。イ これに対し、原告らは、①甲3発明(蓋の曲面部を側溝本体の曲面部の接面部に幾何学的に相似な曲面で接触させて騒音防止をする構造)を甲2発明として認定していること、②甲2公報の【請求項1】、段落【0010】、【0011】、【0017】及び【0020】の記載事項と、【図1】から看取することができる「外板面がフラットな側溝」を認定していないことから、前記アの発明の認定は誤りである旨主張する。しかし、①については、甲2公報の記載事項から認定した甲2発明に、甲3発明の構成と共通する部分が仮にあったとしても、甲2発明の認定に誤りがあるとみるべき理由とはならない。また、②については、進歩性判断における引用発明の認定は、対象となる発明との対比及び判断を誤りなく行うため、その発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足りるものであって、原告ら指摘部分のうち甲2発明として認定されていない事項は、いずれも本件
5 発明1において具体的な発明特定事項とされておらず、本件発明1との対比及び判断のため必要な部分ではないから、発明の認定に誤りがあるとみるべき理由とはならない。したがって、原告らの主張には理由がない。⑵ 相違点2Aの認定についてア 本件発明1と甲2発明を対比すると、次の相違点2Aが認められる。<相違点2A>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲2発明は、「蓋湾曲面部10a、10b」の湾曲(曲率)度が側溝躯体の「湾曲面部3a、3b」の湾曲(曲率)度よりも大きいものであり、曲率中心が相互に離れる距離も特定されていない点。イ なお、本件審決は、相違点2Aについて「甲2発明は、『蓋湾曲面部10a、10b』の曲率が『湾曲面部3a、3b』の曲率よりも小さいものであり」と認定しているが、その前後の認定判断の内容からみて、正確には上記のとおり認定する趣旨と解されるから、相違点2Aの認定に実質的な誤りがあるとまではいえない。ウ これに対し、原告らは、相違点の認定において甲2発明の実施図面である甲12資料の記載を考慮すべきと主張する。しかし、甲12資料は、仮に、その作成の動機が甲2発明を実施することであったとしても、甲2公報には含まれていない図面であり、甲2公報とは別の資料であるから、甲12資料が別の公知発明(特許法29条1項1号)又は公然実施発明(同項2号)を裏付ける資料になり得ることは別として、甲12資料の記載により、甲2発明の内容を認定することはできない。すなわち、甲2公報の段落【0014】には、蓋湾曲部の曲率と側溝
5 躯体の湾曲部の曲率とが異なること(同一曲率半径構成をとらないこと)が明記されている。他方、後記のとおり、甲12資料には、曲率半径を「50mm」とする同一曲率半径構成が記載されていることが認められる。したがって、甲12資料の内容は、この点において甲2公報の内容とは異なるものであるから、甲12資料の内容をもって甲2公報に記載された発明すなわち甲2発明であると認定することはできないし、逆に、甲12資料が甲2発明の実施であるということもできない。また、原告らは、本件明細書【図4】は甲2公報の【請求項1】と合致しているから相違点はない、本件明細書【図4】の本件発明1の蓋曲面部の曲率と側溝本体の湾曲面部の曲率は異なるなどと主張する。しかし、本件発明1は、その請求項1及び3において、同一曲率半径構成をとることが明記されているのに対し、甲2公報の【請求項1】にはこの点についての記載はなく、甲2公報の段落【0014】には、後記⑶アのとおり、同一曲率半径構成をとらないことが記載されているのであるから、本件発明1と甲2発明との間に相違点がないということはできない。したがって、原告らの主張は、いずれも失当である。
⑶ 容易想到性判断についてア 相違点2Aに係る本件発明1の構成(構成要件D、構成要件E)には、その数値範囲を含め、前記の本件技術的意義が認められるところ、このうち、本件技術的意義E1に係る効果(蓋を装着したとき、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり、製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても蓋のガタツキが生じないこと)は、本件明細書【0002】において、従前技術として記載されているものである。しかし、甲2発明の側溝は、「側溝蓋8を側溝躯体1に嵌挿すると、その側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bが、これの湾曲(曲率)度より小さい湾曲度で湾曲する側溝躯体1の湾曲面部3a、3bに下端Pにて
5 線接触するようにして支持され(甲2公報【0014】)、側溝躯体1および側溝蓋8の、上部傾斜面部2a、2bと蓋上部傾斜面部9a、9bとの傾斜角、湾曲面部3aと蓋湾曲面部10a、10bとの線接触および湾曲度によって、これらの湾曲面部3a、3bおよび10a、10bが相互に一方が他方に対し食い込むような楔効果を呈するため、上記線接触にも拘らず、側溝蓋8は側溝躯体1内において全くがたつきを生じることがなく、騒音公害の発生を確実に回避することができる(同【0016】)」ものである。すなわち、甲2発明は、本体接面部の曲面と蓋接面部の曲面の線接触という点においては本件技術的意義E1と共通点があるものの、その実現方法として、側溝蓋8の曲率半径を側溝躯体1の曲率半径よりも小さくすることによって(曲率が曲率半径の逆数であることは技術常識である。また、曲率半径が異なる以上、接触する両曲面の曲率中心間の距離も異なることになる。)「線接触」を実現し、かつ、「相互に一方が他方に対し食い込むような楔効果」により、がたつきによる騒音発生を回避するという手段を採用したものであるから、これを、相違点2Aに係る本件発明1の同一曲率半径構成に変更する動機は認められず、むしろ、阻害要因があるというべきである。また、本件技術的意義E2に係る効果(「積載荷重が作用しないときは線接触を実現する一方、積載荷重が作用したときに蓋接面部に過大な応力を発生させないようにするため、蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触することを確保すること」)については、甲2公報には開示も示唆もなく、本件発明1の構成要件Eに係る構成との関連性を示す記載もない。さらに、同一曲率半径構成を前提とした構成要件Dに係る曲率半径の数値範囲(本件技術的意義D)について甲2公報に開示も示唆もないこと
5 は同様である。イ 本件審決が検討した甲9等(甲9、15、16、21、23、24、27、30、31及び48)に加え、原告らが公然実施されていたと主張する甲12、17、18、20、35、56の各記載を検討しても、相違点2Aに係る本件発明1の構成である、「本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm」であること(構成要件D)並びに同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有すること(構成要件E)という条件を満たす側溝は、開示されておらず、これを示唆するような記載もない(甲9には、「特許第2514918号(甲3発明)」のリボーン側溝について「曲面の接触巾は自由に設計できます。」との記載があるものの、曲率半径や曲率中心距離についての具体的な数値範囲についての記載はない。甲12の図面の曲率半径及び曲率中心距離の各数値は、本件発明1の曲率半径の数値範囲外である。甲15、16には側溝と蓋が曲面で接し、かつ、側溝に張出部がない構造の側溝の写真が含まれているが、甲15の図の曲率半径の数値(R=5)は本件発明1の曲率半径の数値範囲外で、甲16には曲率半径の具体的な数値範囲の記載はなく、甲15及び16のいずれにも曲率中心距離の記載はない。甲17、18、20、21、23、24、27、35、56の各図面の曲率半径の数値はいずれも本件発明1の曲率半径の数値範囲外であり、曲率中心距離については、その有無が不明であるか(甲23、24、27、35、56)、又はその具体的数値については記載がないか(甲17、18、20)、記載があっても構成要件Eの数値範囲外である(甲21)。甲30、31、48の各図面又は写真における曲面の曲率半径の数値並びに曲率中心距離の有無及び数値はいずれも明らかではない。これらの各甲号証において、曲率半径や曲率中心距離の数値が記載されている場合も、その技術的意味(技術的な機序や効果)について
5 の記載や示唆があるものは見当たらない。)。また、相違点2Aに係る本件発明1の構成及びその数値範囲(構成要件D、構成要件E)には、前記の本件技術的意義が認められるところ、前記各甲号証には、甲2発明の構成を前提として、本件発明1の構成及びその数値範囲(構成要件D及び構成要件E)に至る具体的な示唆や教示が記載されているとは認められない。ウ したがって、甲2発明に前記各甲号証を組み合わせても、当業者において、甲2発明を相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることを容易に想到することができたとはいえない。エ 以上に対し、原告らは、甲2発明は本件発明1と酷似している、甲2発明は本件発明1を包含しており本件発明1に格別な効果はないとも主張するが、前記ア、イによれば、甲2発明は同一曲率半径構成を採用しておらず、曲率中心距離の有無及びその数値範囲も不明であるから、甲2発明が本件発明1を包含しているということはできない。その他、原告らは、曲率中心が離れた側溝は本件優先日前に公然実施されているとか、本件発明1は甲12公然実施発明、甲15公然実施発明の側溝の大きさを縮小させたものにすぎない等と主張するが、これらの主張は、仮にそのとおりだとしても、甲2発明以外に引用発明とすべきものがあることを主張するものにすぎず、いずれも前記した甲2発明及び相違点2Aに関する認定並びに容易想到性についての判断を左右するに足りるものではない。
⑷ 取消事由1についての結論以上のとおり、本件審決の甲2発明の認定、相違点の認定及び容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由1には理由がない。
3 取消事由2(甲12公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲12公然実施発明の認定について
5 ア 甲12資料の記載からは、本件審決が認定した甲12公然実施発明(前記第2の3⑵ア(ア))を認定することができる。イ 原告らは、甲12公然実施発明は甲2公報の【請求項1】のとおりに認定すべきであると主張する。しかし、甲12公然実施発明が甲2公報の【請求項1】のとおりなのであれば、甲12公然実施発明を甲2発明とは別に認定する必要はないし、甲2公報の【請求項1】の記載内容と甲12資料の記載内容との間に共通する部分があったとしても、甲12資料には、甲2公報と異なり、本件発明1の発明特定事項である曲率半径や曲率中心間の距離等の各部の寸法等が記載されている。したがって、本件発明1と対比し、検討する必要がある甲12公然実施発明は、甲12資料のこれらの記載により具体的に特定された発明であって、甲2公報の【請求項1】の発明ではないというべきであるから、原告らの主張を採用することはできない。⑵ 相違点の認定についてア 本件発明1と甲12公然実施発明を対比すると、本件審決が認定した相違点1Bが認められる。<相違点1B>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲12公然実施発明は「蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部の同様の部分に、それぞれの曲率半径が50mmである部分を有し」、「蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置のずれが水平方向で5mm、垂直方向で2.5mmである」点。イ これに対し、原告らは、相違点1Bの認定を争うと主張するものの、その内容は、相違点1Bが相違点であることを認めた上で、両発明の側溝本体と蓋が線接触する位置が異なる点も相違点であるとするものである。後
5 者の点は、本件発明1において相当する発明特定事項がないから、相違点とはならない。⑶ 容易想到性判断についてア 甲12公然実施発明は、同一曲率半径構成を有し、かつ、曲率中心距離が離れていること(したがって、本件技術的意義E1に係る構成を有し、その効果(蓋と本体の接触部分が「線接触」となり、蓋のガタツキが生じない)を奏することは認められる。)が認められるが、その曲率半径(50mm)及び曲率中心距離5.59mm(52+2.5 2 の平方根)の各数値範囲は、いずれも本件発明1の構成要件Dの数値範囲(11~25mm)及び構成要件Eの数値範囲(0.5~1.5mm)の各範囲外であることが認められる。甲12資料には、本件技術的意義E2に係る効果(「蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触することを確保すること」)については、何ら記載はなく、示唆もない。また、甲12公然実施発明において採用されている数値の技術的意味に関する記載はなく、相違点1Bに係る本件発明1の構成要件Dの曲率半径の数値範囲(11~25mm)及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成に変更することを示唆するような記載や、曲率半径や曲率中心距離に係る数値を決定する場合の技術常識に関する主張立証もない。そして、本件審決が検討した甲2及び甲9等の各記載を検討しても、前記2⑶ア、イと同様の理由から、甲12公然実施発明にこれらの甲号証を組み合わせても、当業者において、甲12公然実施発明を相違点1Bに係る本件発明1の構成に変更することを容易に想到することができたとはいえない。イ 甲2公報及び前記アの各甲号証を併せ考慮したとしても、この点は同様である。したがって、甲12資料及び前記各甲号証によっても、甲12公然実
5 施発明の曲率半径の数値を構成要件D(11~25mm)のように変更したり、曲率中心距離を変更して、曲率中心距離0.5~1.5mm構成(構成要件E)とし、相違点1Bに係る本件発明1の構成としたりする示唆や教示はなく、動機付けの存在は認められない。ウ なお、甲12公然実施発明が甲2発明を実施したものであるか否かは、以上の認定判断を何ら左右するものではない。⑷ 取消事由2についての結論以上のとおり、甲12公然実施発明が本件優先日前に公然実施されたか否かを検討するまでもなく、本件審決の甲12公然実施発明及び相違点の認定並びに容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由2には理由がない。
4 取消事由3(甲13公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲13公然実施発明の認定についてア 甲13資料の記載からは、本件審決が認定した甲13公然実施発明(前記第2の3⑵イ(ア))を認定することができる。イ 原告らは、甲13資料は、甲12資料の図面が実施されたものであるから、原告ら主張の甲12公然実施発明、すなわち甲2公報の【請求項1】のとおりに認定すべきであると主張する。しかし、仮に甲13公然実施発明が甲2発明又は甲12公然実施発明と同じ発明であるとすれば、認定すべき発明は前記2⑴又は3⑴のとおりであり、本件審決の認定判断に誤りがないことは、前記2⑵及び⑶又は3⑵及び⑶のとおりである。特許無効事由の有無を判断するための前提として、甲13公然実施発明を甲2公報の【請求項1】のとおりである旨認定する意味がないことも、前記3⑴イのとおりである。なお、甲13資料の番号S003-023の「消音側溝SH4-30」(重量1350kg)の図面は、甲12資料の番号S003-025の「消音側溝S
5 H4-40」(重量1580kg)の図面と、甲13資料の番号S004-001の「消音蓋 車道用 普通」(重量56kg)の図面は、甲12資料の番号S004-005の「消音蓋 車道用 手掛付」(重量54kg)の図面(いずれも「株式会社ウチコン」の記載がある。)と、それぞれほぼ共通しているが、図面に係る製品の名称、重量の違いのほか、甲12資料の「消音側溝SH4-40」の図面には、側溝本体の凹の曲面部に「R=50」の記載があるが甲13資料の「消音側溝SH4-30」の図面にはその記載がないなど、いくつかの違いがあるから、実施された発明が同一とは認められない。したがって、原告らの主張は、いずれにせよ理由がない。⑵ 相違点の認定についてア 本件発明1と甲13公然実施発明を対比すると、本件審決が認定した相違点1Cが認められる。<相違点1C>本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲13公然実施発明は、「蓋の凸の曲面部及び側溝本体の凹の曲面部」のそれぞれの曲率半径の大きさ、及び、相互の長さの大小関係や曲率中心の位置関係が不明である点。イ 原告らは、本件発明1と甲13公然実施発明の相違点は、甲12公然実施発明について原告らが主張する相違点(別紙「当事者の主張」2⑶)と同じであると主張するが、これは、甲13公然実施発明が甲12公然実施発明と同じ発明であって、かつ、甲2公報の【請求項1】と同じ発明であると認定すべきことを前提とする主張であり、前記のとおり、前提において採用することができない。⑶ 容易想到性判断について
5 ア 甲13公然実施発明における蓋及び側溝本体の曲面部それぞれの曲率半径の大きさ、同一曲率半径構成の有無、曲率中心間の距離の有無及びその数値はいずれも不明であり、甲13資料には本件技術的意義E1又は本件技術的意義E2を窺わせるような記載もない。各甲号証(本件明細書及び甲41~44を除く。以下同じ。)の記載を検討しても、相違点1Cに係る本件発明1の構成要件D及びEの構成を有する側溝は、開示され、又は示唆されていないこと、甲13資料を含め、これらの構成に至る具体的な示唆や教示が記載されていると認められないことは、前記2⑶ア、イと同様であり、甲13公然実施発明に前記各甲号証を組み合わせても、甲13公然実施発明を相違点1Cに係る構成に変更する動機付けの存在は認められないから、当業者において、これを容易に想到することができたとはいえない。イ 原告らは、甲13公然実施発明は、甲2発明及び甲12公然実施発明と同じ構成であり、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受けるものであるから(甲15)、側溝蓋受部の曲面の接面部に、接面部が曲面の蓋が載って線接触又は面接触する構成である旨主張する。しかし、甲2公報、甲12資料にも、本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmであり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成に至る具体的な示唆や教示が記載されていると認められないことは前記のとおりであり、甲15資料についても同様であるから、これらを考慮しても、曲率中心距離0.5~1.5mm構成に至る動機付けの存在は認められない。ウ 原告らは、相違点1Cのうち構成要件Dに係る構成(曲率半径が11~25mm)については、甲2発明の実施(甲12、15)、甲3発明の実施(甲17、18、20、21、23、24、27、35、38、41~44、56)により、従来技術の曲率半径は5~50mmの範囲内であり、
5 複数の業者が数々の曲率半径の技術を実施していたこと、構成要件Eに係る「曲率中心のずれ」についても、甲2発明の実施(甲12)、甲3発明の実施(甲17、18、20、21、23、24、27、56)のとおり、複数の業者が公然実施していると主張する。(ア) しかし、これらの甲号証のうち、甲38及び甲41~44以外の書証(甲12、15、17、18、20、21、23、24、27、35、56)について、曲率半径及び曲率中心距離の各数値が本件発明1の各数値範囲にある側溝は開示されておらず、数値の技術的意味についての記載もなく、このような数値範囲に設定し、又は変更する示唆も見当たらないことは、前記2⑶イのとおりである。(イ) また、甲38の図面の曲率半径(「R-50」及び「R-45」)は、本件発明1の構成要件Dの曲率半径の数値範囲外であり、同図面上、曲率中心位置の距離の数値は不明であるから、同様に、本件発明1の曲率半径11~25mm、曲率中心距離0.5~1.5mm構成の数値範囲に至る示唆はない。(ウ) 原告らは、甲41~44についても指摘するが、本件審決に係る審判手続において、甲41~44(本件訴訟と証拠番号は同じ。)に基づく無効理由を主張する請求の理由の補正は、令和6年3月27日の第1回口頭審理において、特許法131条の2第2項に基づき許可しないとされ、甲41~44の提出も許可されなかったものである(本件審決、甲66)。そうすると、甲41~44及びこれに基づく無効主張は、審判手続において審理判断されていなかった資料記載の発明との対比における無効
原因の存否を認定することを求めるものであるから、当裁判所において、
これを認定して審決の適法・違法を判断することはできない(最高裁昭
和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻
2号79頁参照)。
なお、甲43は、蓋及び側溝本体の曲面部の曲率半径がいずれも20
mmで、曲率中心の位置のずれが水平方向で0.5mm、垂直方向で0.
mm(曲率中心の距離は0.5 2+0.92 の平方根である1.03m
m)である側溝の図面であるから、相違点1Cに係る、本件発明1の構
成要件D(本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm)、構
成要件E(同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成)
を満たしているところ、本件において、例えば、甲2発明又は甲3発明
のような主引用発明との対比における本件発明1の無効原因の存否を認
定するに当たり、甲43に基づき、これらの発明の属する技術分野の当
業者の技術常識を認定することは許されると解される(最高裁昭和54
年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号
頁参照)。
しかし、甲43から認めることができるのは、構成要件D、Eの構成
を採用している蓋及び側溝の例が一つあることにすぎず、事例の数は
限られており、その数値が採用された根拠も明らかにされていないか
ら、甲43を引用例として新たな無効審判請求をするのであれば格別、
本件訴訟において、甲43の事例が存在するというだけでは、構成要
件D、Eの構成が、本件優先日における当業者の技術常識であったこ
とを認めるに足りないというべきである。
原告らは、さらに、甲41~44を採用しなかった審判手続は違法
である旨主張する。
しかし、原告らは、令和5年5月8日付け審判請求書(甲64)及び
同年7月25日付け手続補正書(甲65)の段階においては、甲1か
ら甲33までの証拠を提出し、甲41~44に基づく無効理由につい
て何ら主張していなかったところ、第1回口頭審理期日の約1か月前
である令和6年2月26日付けの口頭審理陳述要領書(甲50)にお
いて、甲41~44に基づく新たな無効理由を主張するとともに、甲
から甲48までの証拠を提出したことが認められる。
特許無効審判におけるこのような請求の理由の補正は、審判請求書の
要旨を変更するものであるから、原則として許されず(特許法131条
の2第1項柱書)、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないこ
とが明らかである等の所定の場合であって審判長が許可した場合に限り
許されるものである(同条2項、1項2号)。
本件において、甲41~44を採用しなかった審判長の行為が違法で
あるとみるべき理由はないから、原告らの上記主張は、採用することが
できない。
エ したがって、原告らの主張は、いずれも、前記認定判断を左右するもの
ではない。
⑷ 取消事由3についての結論
以上のとおり、本件審決の甲13公然実施発明の認定、相違点の認定及び
容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由3には理由がない。
取消事由4(甲15公然実施発明に係る認定判断の誤り)について
⑴ 甲15公然実施発明の認定について
ア 甲15資料の記載からは、本件審決が認定した甲15公然実施発明(前
記第2の3⑵イ(イ))を認定することができる。
イ 原告らは、原告らの主張する甲2発明又は甲12公然実施発明と同じ発
明を認定すべきであると主張するが、甲15公然実施発明は、甲15資
料に記載された曲率半径その他の記載により具体的に特定された発明と
して認定すべきものである。
甲2発明又は甲12公然実施発明に関する原告らの主張自体が採用する
ことのできないものであること、本件において、甲15公然実施発明を
甲2公報の【請求項1】のとおり認定することに意味がないことは、既
に甲12公然実施発明の認定のところで述べたことと同様である。
⑵ 相違点の認定について
ア 本件発明1と甲15公然実施発明を対比すると、少なくとも、本件審決
が認定した相違点2Dが認められる。
<相違点2D>
本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm
であり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成
を有するのに対し、甲15公然実施発明は、「蓋と側溝本体の曲面部
の同様の部分の曲率半径が5」であり、「曲面(R面)を採用するこ
とにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量も分散され、音の発
生を未然に防ぐ」ものであるが、「蓋と側溝本体の曲面部の同様の部
分の曲率半径」における曲率中心の位置関係が特定されていない点。
イ 原告らは、①両発明の側溝本体と蓋が線接触する位置が異なる点、②甲
公然実施発明は本体接面部及び蓋接面部の曲率中心が数mm離れて
いる点も相違点である旨主張するが、①の点は、本件発明1において相
当する発明特定事項がないから、相違点とはならないし、②の点につい
ては、甲15資料においては曲率中心の位置関係が特定されておらず、
数mm離れていることを裏付ける記載はない。
⑶ 容易想到性判断について
ア 甲15公然実施発明は、同一曲率半径構成(曲率半径5)を有し、かつ
「曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかか
る重量も分散され、音の発生を未然に防ぐ」ものであるから、蓋と本体
の接触部分が「線接触」となり、蓋のガタツキが生じないという本件技
術的意義E1に係る構成(同一曲率半径構成において、曲率中心間の距
離を離れたものとすること)を有するものと考えられる。
イ しかし、甲15の曲率半径は、構成要件Dの数値範囲外であり、その曲
率半径の数値(曲率半径5)の技術的意味及び曲率中心間の距離は不明で
あって、甲15資料には、本件技術的意義E2に係る効果(「蓋に積載荷
重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部
とが広い曲面で接触することを確保すること」)については、何ら記載は
なく、示唆もない。そして、各甲号証の記載を検討しても、本件発明1の
構成である、「本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm」で
あること(構成要件D)並びに同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5
~1.5mm構成を有すること(構成要件E)という条件を満たす側溝は、
開示されておらず、これを示唆するような記載もないことは、前記2⑶ア、
イと同様である。また、したがって、甲15公然実施発明に前記各甲号証
を組み合わせても、甲15公然実施発明を相違点2Dに係る構成に変更す
る動機付けの存在は認められないから、当業者において、これを容易に想
到することができたとはいえない。
ウ 原告らは、甲15資料にも記載されているNHKの放送番組(甲36)
において、①蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形
し(37番の映像)、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し(3
~38番の映像)、②蓋と本体に過度の応力が生じることがなく(3
番の映像)、積載荷重に十分に耐えることができる(38番の映像)
ことが示されていると主張する。
しかし、甲36には、原告らが指摘する34番から38番の映像を含め、
いずれの映像にも、本件技術的意義E2に係る効果(蓋に積載荷重がか
かった場合に、蓋と本体の側板部が僅かに変形すること及び蓋接面部と
本体接面部とが広い曲面で接触すること)が開示されているとはいえな
い。
⑷ 取消事由4についての結論
以上のとおり、本件審決の甲15公然実施発明の認定、相違点の認定及び
容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由4には理由がない。
取消事由5(甲3発明に係る認定判断の誤り)について
⑴ 甲3発明の認定について
ア 甲3公報の記載(【請求項1】、【0006】、【0008】~【00
】、【図2】、【図3】)からは、本件審決が認定した甲3発明
(前記第2の3⑷ア)を認定することができる。
イ 原告らは、①甲3公報の段落【0006】、【0008】及び【000
】の記載事項の一部と、②甲3発明が本件明細書の段落【0002】
【特許文献1】記載の従来の側溝であることを認定していないから、本
件審決の甲3発明の認定は誤りである旨主張する。
しかし、原告らが指摘する部分は、いずれも本件発明1において具体的
な発明特定事項とされておらず、本件発明1との対比及び判断のため必
要な部分ではないから、発明の認定に誤りがあるとみるべき理由とはな
らない。
⑵ 相違点の認定について
ア 本件発明1と甲3発明を対比すると、少なくとも、本件審決が認定した
相違点2Eが認められる。
<相違点2E>
本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mmで
あり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成を
有するのに対し、甲3発明は、「幾何学的に相似した曲面を持った側
溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着する
もの」であって、「接面部a5」及び「接面部b6」の曲率半径の大
きさが特定されておらず、それぞれの曲率中心の位置関係が特定され
ていない点。
イ 原告らは、認定すべき相違点は、①本件発明1は突起部9を設けない場
合の蓋との音のしない側溝であること(本件明細書【0018】)、②
(a)甲3発明が、曲率中心が相互に1~1.7mm離れ(甲21)、(b)
蓋と側溝本体との接面部は30°~60°の曲面の範囲βで接し(甲15、
、21、35~37)、(c)側溝と蓋の接面部の互いに相似な曲面に
より線接触し(甲36)、(d)側溝蓋1の自重により密着し(甲3公報
【0006】)、(e)側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す
(同【0009】)点であると主張する。
(ア) しかし、①の点は、本件明細書【0018】に実施例として記載があ
るものの本件発明1の発明特定事項ではなく、②(b)、(e)も本件発明
の発明特定事項ではない。
また、甲3公報には、甲3発明の曲率中心が相互に1~1.7mm離
れていること(②(a))は記載されておらず、②(d)の点は、相違点2
Eに含まれている。
(イ) 側溝と蓋の接面部が互いに相似な曲面により線接触すること(②(c))
については、甲3公報の記載によれば、甲3発明の側溝蓋の接面部a
及び側溝の接面部b6は、全面にわたって、幾何学的に相似な曲面
に成形加工されており(【請求項1】)、両者は側溝蓋1の自重によ
り密着するものであって(【0006】)、側溝蓋の接面部と側溝の
接面部が曲面で密着することにより車両等の通過騒音を解消し(【0
】)、側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増すもので
あり(【0009】)、側溝蓋に垂直加重がかかった場合、接触面が
曲面であるために、力線が分散され、側溝蓋にかかる負担が軽減され
耐用年数が延びる(【0010】)ものである。「密着」とは、通常、
ぴったりと付着するという意味であり、「曲面で密着」「接触面が曲
面」という表現は、面と面とがぴったりと付着し、接触している面が
曲面であることを意味するものである。甲3公報の図面を見ても、側
溝蓋と側溝の接面部の曲面全体が接するもの(【図面1】)のみが記
載されている一方、接面部が面ではなく線で接触することを示す記載
はない。すなわち、甲3発明の側溝蓋と側溝の曲面からなる接面部は、
蓋の自重により曲面で密着することが想定されているものであって、
線接触するものとは認められない。
本件明細書【0002】及び【特許文献1】には、蓋接面部及び側溝
本体の蓋受部の両曲面が線状の接触となる従来技術として、甲3公報
に係る公開特許公報の公報番号が記載されており、また、「リボーン
側溝」の広告(甲9)には甲3公報記載の特許の特許番号が記載され、
「リボーン側溝」のパンフレット(甲15資料)には「曲面(R面)
を採用することにより蓋の荷重を線で受けています。」との記載があ
る。しかし、これらの文献や資料の記載は、甲3公報には含まれてい
ない内容であり、甲3発明とは別に、本件優先日において蓋接面部及
び側溝本体の蓋受部の両曲面が線状で接触するような構造の側溝が存
在していたことを示すものではあっても、甲3発明が蓋接面部と側溝
本体とが「線状の接触」を含むものであることを認めるに足りるもの
ではない。また、甲3公報記載の特許の発明者(被告リタッグ代表者)
が出演した「リボーン側溝」のテレビ番組(甲36)中には、「側溝
と蓋の『曲面』の接触により、『点』ではなく『線』で接触している」
(番号32の映像)、「蓋の曲面が、側溝の曲面の…」「どこかで、
線で接触することになります」(番号41の映像)等の発言がされて
いることが認められるが、甲3公報の文言の解釈に当たり、甲3公報
外のテレビ番組内の発言を根拠とすることは相当ではなく、これらの
発言を理由に甲3公報中の「曲面で密着する」等の前記記載が、文言
の通常の意味とは異なる「線接触」を意味するものと解することはで
きないというべきである。
(ウ) したがって、本件審決の相違点2Eの認定に、誤りはない。
⑶ 容易想到性判断について
ア 前記のとおり、甲3発明の側溝蓋と側溝の曲面からなる接面部は、蓋の
自重により曲面で密着するものであって、技術常識からみて、その曲率中
心の位置は一致するものと認められるから、曲率中心距離0.5~1.5
mm構成(構成要件E)のように、蓋を装着したときに蓋と本体の接触部
分が線状の接触となるよう、ことさら両者の曲率中心の位置を相互に離す
ように変更する動機があるとは認められない。
イ 本件審決が検討した甲9等(甲9、15、16、21、23、24、2
、30、31及び48)、並びに、原告らが公然実施されていたと主
張する各甲号証のうち甲2、12~14、20、32、33、35、5
の記載を検討しても、相違点2Eに係る本件発明1の構成である、
「本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm」であること
(構成要件D)並びに同一曲率半径構成としつつ曲率中心距離0.5~
.5mm構成(構成要件E)を有することという条件を満たす側溝は、
開示されておらず、これらを示唆するような記載もないことは、前記2
⑶ア、イのとおりである。
また、甲13資料及び各甲号証によっても、曲率半径の数値を構成要
件D(11~25mm)のように設定したり、曲率中心距離を設定して、
曲率中心距離0.5~1.5mm構成(構成要件E)に至ったりする動
機付けの存在は認められないことは、取消事由3の判断で述べたところ
と同様である。
なお、甲41~44については、審判手続において審理判断されなかっ
たものであるから、当裁判所において、これを審決を違法とする理由とし
て考慮することはできないことは、前記のとおりである。
ウ 原告らは、平成11年時点において、本件発明1の側溝構造及び発明の
効果は達成されていたと主張するが、その根拠とする甲36の放送番組
に本件技術的意義E2に係る効果の開示が認められないことは、前記5
⑶ウのとおりであり、甲37の放送番組についても同様である。
原告らは、本件発明1は従来技術の側溝(甲23、35、57)の大き
さを縮小させたものにすぎない旨主張するが、これらの側溝の曲率中心
距離の有無及び数値範囲は不明であるから、そのサイズを縮小するだけ
で本件発明1の構成となるかどうかは証拠上、明らかではない。また、
甲3発明を引用発明とした場合に、これらの甲号証と組み合わせたとし
ても、本件発明1の構成及び数値範囲に至るような示唆は見当たらず、
動機付けがないことは、既に述べたとおりである。
原告らは、本件発明1は、甲3発明の効果(甲3、36、37)をその
まま構成・効果に引用したもので、格別の効果はないと主張するが、甲
発明は、同一曲率半径構成を有するものであっても、側溝蓋と側溝の
曲面からなる接面部を蓋の自重により曲面で密着させる点において、側
溝蓋と側溝本体を線接触させる本件発明1とは構成を異にするものであ
る。本件発明1の効果と甲3発明の効果の異同及びその程度並びに両者
を比較する場合の前提条件は証拠上不明であり、仮に同様となる可能性
があったとしても、それだけでは甲3発明の構成を本件発明1の構成に
変更することが容易想到であると認める理由にはならない。同主張は採
用することができない。
⑷ 取消事由5についての結論
以上のとおり、本件発明1の新規性欠如又は進歩性欠如に係る、本件審決
の甲3発明の認定、相違点の認定及び容易想到性がないとした判断に誤りは
ないから、取消事由5には理由がない。
取消事由6(甲3実施発明A(甲4~8)に係る認定判断の誤り)及び取消
事由7(甲3実施発明B(甲10、11)に係る認定判断の誤り)について
甲4~6は側溝用溝ぶたと側溝用ブロックの各意匠公報、甲7及び8は「リ
ボーン側溝」「リボーン蓋」の各商標公報であるが、各意匠公報に記載された
側溝は、本体接面部及び蓋接面部の曲率半径の数値範囲、同一曲率半径構成の
有無、曲率中心距離の有無及び程度はいずれも不明であり、これらの形状や数
値範囲の技術的意味を窺わせるような記載もない。また、各商標公報には側溝
の形状に関する記載はない。甲10及び11は、いずれもリボーン側溝技術提
供契約書であるが、「リボーン側溝」として開示されているのは甲3公報の内
容である。したがって、甲4~8、10、11の各証拠により、原告ら主張の
甲3実施発明A及びBを認定することはできない。なお、これらの証拠は、本
件発明1と甲3発明との相違点2Eに関する前記6⑵の認定及び判断を覆すに
足りるものでもない。
そうすると、取消事由6、7は、いずれも理由がない。
取消事由8(甲17公然実施発明に係る認定判断の誤り)について
⑴ 甲17公然実施発明の認定について
ア 甲17資料の記載からは、本件審決が認定した甲17公然実施発明(前
記第2の3⑸イ(ア))を認定することができる。
イ これに対し、原告らは、甲17公然実施発明として、凸の曲面の接面部
を有した跳ね上がりを防止する突起部を設けた蓋、及び、凹の曲面の接
面部を有した側溝であること、接面部は7.85~23.55mm程度
とし、蓋と側溝本体の接面部は30°~60°の曲面の範囲の位置で接し、
騒音の発生しない側溝であることを認定すべきと主張する。
しかし、側溝本体が凹の曲面の接面部を有することは甲17公然実施発
明として認定されており、その余の点は、いずれも本件発明1において
具体的な発明特定事項とされておらず、本件発明1との対比及び判断の
ため必要な部分ではないから、発明の認定に誤りがあるとみるべき理由
とはならない。
⑵ 相違点の認定について
ア 本件発明1と甲17公然実施発明を対比すると、本件審決が認定した相
違点1Fが認められる。
<相違点1F>
本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm
であり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成
を有するのに対し、甲17公然実施発明は、「蓋の凸の曲面部の曲率
半径が45mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が50mmである
部分を有し」、「蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置がずれてい
る」が、どの程度ずれているか不明である点。
イ これに対し、原告らは、相違点1Fの認定を争うが、その内容は、相違
点1Fにおいて認定されている事項を除き、本件発明1において相当す
る発明特定事項がないか、甲17資料から認定できない事項を挙げるも
のであるから、理由がない。
⑶ 容易想到性判断について
ア 甲17公然実施発明は同一曲率半径構成ではなく、甲17資料に記載さ
れた曲率半径の数値はいずれも本件発明1の曲率半径の数値範囲外で、
曲率中心距離の具体的数値については記載がなく、その他甲17資料に
は本件技術的意義を窺わせるような記載もない。甲17公然実施発明を、
相違点1Fに係る本件発明1の構成要件D、Eの構成に変更することを、
当業者が容易に想到することができたとはいえず、そのように変更する
動機があるとも認められないことは、甲2発明(前記2⑶)、甲12公
然実施発明(前記3⑶)、甲13公然実施発明(前記4⑶)、甲15公
然実施発明(前記5⑶)及び甲3発明(前記6⑶)について、繰り返し
述べてきたところと同様である。
イ 原告らは、甲17公然実施発明は、甲3発明の技術の引用あるいは甲3
発明の側溝構造に基づく側溝構造であると主張するが、そもそも甲3発
明が本件発明1と異なる発明であって、甲3発明に基づく進歩性欠如の
主張に理由がないことは、前記6のとおりである。
⑷ 取消事由8についての結論
以上のとおり、本件審決の甲17公然実施発明の認定、相違点の認定及び
容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由8には理由がない。
取消事由9(甲18公然実施発明1に係る認定判断の誤り)について
甲18資料の4枚目の図面(本件審決30頁の「図面1」)は、甲17資
料の3枚目の図面(本件審決29頁の「図面2」)と同じ内容であるから、
本件審決が認定した甲17公然実施発明と同じ甲18公然実施発明1を認定
することができる。
そうすると、相違点の認定、その容易想到性の判断、及びこれらを争う原
告らの主張にいずれも理由がないことは、前記8のとおりである。
以上のとおり、本件審決の甲18公然実施発明1の認定、相違点の認定及
び容易想到性がないとする判断に誤りはないから、取消事由9には理由がな
い。
取消事由10(甲18公然実施発明2に係る認定判断の誤り)について
⑴ 甲18公然実施発明2の認定について
ア 甲18資料の5枚目の図面(本件審決31頁の「図面2」)及び6枚目
の図面(本件審決31頁の「図面3」)から、本件審決が認定した甲1
公然実施発明2(前記第2の3⑸イ(イ))を認定することができる。
イ これに対し、原告らは、甲18公然実施発明2として、凸の曲面の接面
部を有した跳ね上がりを防止する突起部を設けた蓋、及び、凹の曲面の
接面部を有した側溝であること、接面部は8.72~26.16mm程
度とし、蓋と側溝本体の接面部は20°~50°の曲面の範囲の位置で接
し、側溝本体の曲面部に水平な部分がなく、騒音の発生しない側溝であ
ることを認定すべきと主張する。
しかし、側溝本体が凹の曲面の接面部を有することは甲18公然実施発
明2として認定されており、その余の点は、いずれも本件発明1におい
て具体的な発明特定事項とされていないか、甲18資料からは看取でき
ない事項であるから、発明の認定に誤りがあるとみるべき理由とはなら
ない。
⑵ 相違点の認定について
ア 本件発明1と甲18公然実施発明2を対比すると、本件審決が認定した
相違点1Gが認められる。
<相違点1G>
本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm
であり、同一曲率半径構成及び曲率中心距離0.5~1.5mm構成
を有するのに対し、甲18公然実施発明2は、「蓋の凸の曲面部の曲
率半径が50mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が54.5mm
である部分を有」し、「蓋」と「側溝本体」の曲面部の曲率中心の位
置関係が特定されていない点。
イ これに対し、原告らは、相違点1Gの認定を争うが、その内容は、相違
点1Gにおいて認定されている事項を除き、本件発明1において相当す
る発明特定事項がないか、甲18資料から認定することができない事項
を挙げるものであるから、理由がない。
⑶ 容易想到性判断について
ア 甲18公然実施発明2は、同一曲率半径構成ではなく、甲18資料に記
載された曲率半径の数値はいずれも本件発明1の曲率半径の数値範囲外
で、曲率中心距離の数値は不明であり、その他甲18資料には本件技術
的意義を窺わせるような記載もない。これを相違点1Gに係る本件発明
1の構成要件D、Eの構成に変更することを、当業者が容易に想到する
ことができたとはいえず、そのように変更する動機があるとも認められ
ないことは、甲2発明(前記2⑶)、甲12公然実施発明(前記3⑶)、
甲13公然実施発明(前記4⑶)、甲15公然実施発明(前記5⑶)、
甲3発明(前記6⑶)及び甲17公然実施発明(前記8⑶)について、
繰り返し述べてきたところと同様である。
イ 原告らが挙げる甲52は、被告リタッグが審判事件において提出した答
弁書であるが、その内容は、前記アの認定判断を左右するものではない。
原告らが挙げる甲20、21、41~44については、前記2⑶、4⑶
で述べたとおりであり、前記アの認定判断を左右するものではない。
⑷ 取消事由10についての結論
以上のとおり、本件審決の甲18公然実施発明2の認定、相違点の認定及
び容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由10には理由が
ない。
取消事由11(甲21公然実施発明に係る認定判断の誤り)について
⑴ 甲21公然実施発明の認定について
ア 甲21資料の記載からは、本件審決が認定した甲21公然実施発明(前
記第2の3⑸イ(ウ))を認定することができる。
イ これに対し、原告らは、甲21公然実施発明として、①本体接面部の曲
率半径と蓋接面部の曲率半径は等しいこと、②蓋曲面の下端に1mm、
その下方に3.2mmの隙間を有すること、③積載荷重がかかったとき
に、蓋と側溝の接面部が30°~60°の曲面の範囲の広い面積で接して、
全体にかかる重量を分散すること、④跳ね上がり防止の突起部を設けた
蓋であることを認定すべきと主張する。
しかし、①の点は、いずれも曲率半径は同じ50mmであることを認定
しているから、本件審決の判断に相違はなく、②、④の点は、本件発明
1において具体的な発明特定事項とされていない。③の点は、甲21資
料(2枚目)には、「曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線
で受け、全体にかかる重量を分散」することが記載されているだけであ
るから、「積載荷重がかかったときに、蓋と側溝の接面部が30°~6
°の曲面の範囲の広い面積で接して、全体にかかる重量を分散する」こ
とは、甲21資料から看取することはできない。したがって、原告らの
主張は、いずれも理由がない。
⑵ 相違点の認定について
ア 本件発明1と甲21公然実施発明を対比すると、本件審決が認定した相
違点1Hを認めることができる。
<相違点1H>
本件発明1は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径が11~25mm
であり、曲率中心距離0.5~1.5mm構成を有するのに対し、甲
公然実施発明は、「側溝本体において蓋が接触する位置の凹の曲
面部の曲率半径」及び「蓋において側溝本体が接触する位置の凸の曲
面部の曲率半径」がともに「50mm」であり、「側溝本体において
蓋が接触する位置の凹の曲面部の曲率中心と、蓋において側溝本体が
接触する位置の凸の曲面部の曲率中心が、水平方向に1mm及び垂直
方向に1.7mmずれており(曲率中心の距離は12+1.7 2 の平方根
である約1.97mm)、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷
重を線で受け、全体にかかる重量を分散し、音の発生源をなくしてい
る」点。
イ これに対し、原告らは、相違点1Hの認定を争うが、その内容は、相違
点1Hにおいて認定されている事項を除き、本件発明1において相当す
る発明特定事項がないか、甲21資料から認定することができない事項
を挙げるものであるから、理由がない。
⑶ 容易想到性判断について
ア 甲21公然実施発明は、同一曲率半径構成を有し、かつ、曲率中心距離
が離れていることが認められるが、その曲率半径(50mm)及び曲率
中心距離(約1.97mm)の各数値範囲は、いずれも本件発明1の構
成要件Dの数値範囲(11~25mm)及び構成要件Eの数値範囲(0.
~1.5mm)の各範囲外であることが認められる。甲21資料には、
本件技術的意義E2に係る効果(「蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体
の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触す
ることを確保すること」)については、何ら記載はなく、示唆もない。
また、甲21公然実施発明において採用されている数値の技術的意味に
関する記載はなく、相違点1Hに係る本件発明1の構成要件Dの曲率半
径の数値範囲(11~25mm)及び曲率中心距離0.5~1.5mm
構成に変更することを示唆するような記載や、曲率半径や曲率中心距離
に係る数値を決定する場合の技術常識に関する主張立証もない。したが
って、当業者が甲21公然実施発明から容易に本件発明1に想到するこ
とができたとはいえず、そのように変更する動機があるとも認められな
い。このことは、甲2発明(前記2⑶)、甲12公然実施発明(前記3
⑶)、甲13公然実施発明(前記4⑶)、甲15公然実施発明(前記5
⑶)、甲3発明(前記6⑶)及び甲17公然実施発明(前記8⑶)につ
いて、繰り返し述べてきたところと同様である。
イ 原告らは、相違点1Hの容易想到性判断を争うが、その内容は、構成要
件Dの数値範囲(曲率半径11~25mm)及び曲率中心距離0.5~
.5mm構成の数値範囲とすることや、その数値範囲の技術的意義に
関するものではない。
⑷ 取消事由11についての結論
以上のとおり、本件審決の甲21公然実施発明の認定、相違点の認定及び
容易想到性がないとした判断に誤りはないから、取消事由11には理由がな
い。
取消事由12(本件発明2~4に係る判断の誤り)について
以上のとおり、本件発明1の新規性欠如又は進歩性欠如に係る本件審決の認
定判断に誤りはないから、その判断の誤りを前提とする取消事由12には、い
ずれも理由がない。
結論
以上のとおり、原告ら主張の取消事由はいずれも認められないから、原告ら
の請求は理由がない(なお、特許権の有効・無効は特許権の共有者間で同一に
確定されるべきであり、共有に係る特許権の無効審判請求不成立審決の取消し
を求める本件訴訟は、必要的共同訴訟と解すべきである(特許法132条2項、
条ただし書参照)。したがって、本件特許に係る特許権の共有者の一人
である被告中越製陶が原告らの主張を争っている以上、他の共有者である被告
リタッグが原告らの主張を争っていないことは、原告らの請求に理由がない旨
の前記結論に影響を与えるものではない。)。
よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清 水 響
裁判官
菊 池 絵 理
裁判官
頼 晋 一
(別紙)
当事者の主張(原告らの主張)なお、原告ECOンビは、主張書面の一部を陳述していないが、原告らがすべての主張書
5 面を連名で提出していること、その他弁論の全趣旨により、原告カムイネットの主張を援用するものと認める。1 取消事由1(甲2発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲2発明の認定について本件審決の甲2発明の認定は、甲3発明(蓋の曲面部を側溝本体の曲面部の接面部に幾何学的に相似な曲面で接触させて騒音防止をする構造)を甲2発明として認定しているほか、甲2公報の【請求項1】、以下の重要部分(下線を付加した段落については下線部分)、及び外板面がフラットな側溝が【図1】に記載されていることを削除して認定しているから、誤りである(以下、この項において、【 】内の番号は甲2公報の【考案の詳細な説明】の段落番号を、【図 】は甲2公報の図を、それぞれ示す。)。【請求項1】対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部および該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隔を有して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部および該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隔を有して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備えたことを特徴とする側溝構造。【0010】「…これらの湾曲面部3a、3bに連続して下方に延設された下部垂直面部4a、4bと、これらの各下部垂直面部4a、4bに連続する水平面部5a、5bと、これらの各水平面部5a、5bに連続する溝壁部6a、6bと、これらの溝壁部6a、6bに共通に連続する底面部7とで形成される。」【0011】「…図3に示すような…」5 「…およびこれらの蓋湾曲面部10a、10bに連続して下方に延設されて、図3に示すように、上記下部垂直面部4a、4bに対して微小間隔G2を有して対峙される蓋下部垂直面部11a、11bとで形成される。」【図3】【0017】「…その側溝蓋8が跳ね上がろうとする場合があっても、その蓋下部垂直面部11a、11bが対向する下部垂直面部4a、4bに衝合することとなるため、それ以上の跳ね上がりが規制され、大事故を引き起こす恐れはない。」【0020】【考案の効果】「…車両等の走行重量に十分に耐える強度を持ちながら、側溝蓋の側溝躯体における嵌合状態をがたつきなく安定化させることができると共に、蓋の跳ね上がりやこれに伴う事故を未然に回避でき、さらに、側溝蓋の側溝躯体に対する開閉操作を容易に得えるという効果を奏する。」5 【図1】⑵ 相違点2Aの認定についてア 甲12資料が甲2発明の実施図面であることを考慮し(甲12公然実施発明に係る相違点(後記2⑶)参照)、甲2発明は「本体接面部の曲率半径は50mm、蓋接面部の曲率半径は50mmであり、前記両接面部の曲率中心が相互に数mm離れており、側溝本体の湾曲面部の下端Pにて線接触する点」と認定すべきである。イ 本件明細書【図4】は、甲2公報の【請求項1】と合致しており、相違点はない。ウ 本件明細書【図4】に「本体接面部5」と「蓋接面部6」が接触する曲面部の間にわずかな隙間がある(そのため「接合点7」で線接触する【0019】)。この隙間は、甲3発明の技術を引用し、蓋と側溝本体の曲面を「幾何学的に相似な曲面」としたため生じるものであり、当然に、本件発明1も「蓋曲面部の曲率が側溝本体の湾曲面部の曲率よりも小さいもの」となるので、相違点にならない。したがって、相違点2Aを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点2Aの容易想到性判断について仮に相違点2Aが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 本件発明1と甲2発明の側溝構造は酷似する。5 イ 曲率中心が相互に離れた側溝は、本件優先日前の平成8~9年ころに、リボーン側溝工業会(甲9)ら複数の企業により公然実施されており(甲12、15、17、18、20、21、35、56)、本件発明1の側溝構造は、甲12公然実施発明、甲15公然実施発明(甲35に同じ)を単に縮小させたにすぎないものであるから、当業者が容易に発明することができたものである。ウ 甲2発明は、「曲率半径」の大きさを定めず、曲率半径の大きさを除き、本件発明1をすべて包含しているから、本件発明1に格別な効果はない。2 取消事由2(甲12公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲12公然実施発明について甲12公然実施発明は、公然実施されており、これを認めなかった本件審決の認定は誤っている。⑵ 甲12公然実施発明の認定について甲2公報の【請求項1】のとおりに認定すべきである。⑶ 相違点1Bの認定について①本件発明1は、接合点7(【図4】参照)で線接触する点、②甲12公然実施発明は、(a)本体接面部及び蓋接面部の曲率半径がそれぞれ50mmである点、(b)前記両接面部の曲率中心が相互に水平方向で5mm、垂直方向で2.5mm離れている点、(c)側溝本体の湾曲面部の下端Pにて線接触する点と認定すべきである。したがって、相違点1Bを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点1Bの容易想到性判断についてア 仮に相違点1Bが認められるとしても、本件審決は、その容易想到性判断を誤っている。イ また、甲12公然実施発明は甲2発明の実施物であるから、これを認めなかった本件審決の認定は誤っている。3 取消事由3(甲13公然実施発明に係る認定判断の誤り)について5 ⑴ 甲13公然実施発明の認定について甲13資料は、甲12資料の図面が実施されたものであり、認定すべき発明は甲12公然実施発明(前記2⑵)に同じである。⑵ 相違点1Cの認定について甲12公然実施発明に係る相違点(前記2⑶)に同じ。⑶ 相違点1Cの容易想到性判断について仮に相違点1Cが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 本件審決は、「甲13公然実施発明は、荷重に応じて線接触又は面接触するようにするための構成を有するものでなく、」「甲13にそのような構成することを示唆する記載もなく」と判断した。しかし、甲13公然実施発明は、甲2発明及び甲12公然実施発明と同じ構成であり、「曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け」るものであるから(甲15)、側溝蓋受部の曲面の接面部に、接面部が曲面の蓋が載って線接触又は面接触する構成である。イ 本件審決は、「甲13公然実施発明における曲率半径及びその曲率中心の位置ずれを相違点1Cに係る本件発明1の構成のように、当業者が設計し得たものとまではいえない。」と判断した。しかし、相違点1Cに係る構成のうち、「曲率半径が、11~25mm」については、甲2発明に包含されるものであること、本件審決が認定する甲15公然実施発明は「曲率半径が5」であること、甲2発明の実施(甲12、15)、甲3発明の実施(甲17、18、20、21、23、24、27、35、38、41~44、56)により、従来技術において曲率半径が「5~50mm」であり、複数の業者が数々の曲率半径の技術を実施していたことから、当業者が容易になし得たことである。また、「曲率中心の位置のずれ」についても、甲2発明の実施(甲12)、甲35 発明の実施(甲17、18、20、21、23、24、27、56)のとおり、複数の業者が公然実施している。4 取消事由4(甲15公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲15公然実施発明の認定について認定すべき発明は甲2発明(前記1⑴)、甲12公然実施発明(前記2⑵)に同じ。⑵ 相違点2Dの認定について①本件発明1は、接合点7(【図4】参照)で線接触する点、②甲15公然実施発明は、(a)本体接面部及び蓋接面部の曲率半径がそれぞれR=5である点、(b)前記両接面部の曲率中心が相互に数mm離れている点、(c)側溝本体の湾曲面部の下端Pにて線接触する点、(d)曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受ける点と認定すべきである。したがって、相違点2Dを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点2Dの容易想到性判断について仮に相違点2Dが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 本件審決は、甲15資料その他の甲号証には、本件発明1の構成要件D、Eの奏する効果である、「蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し、蓋と本体に過度の応力が生じることがなく、積載荷重に十分に耐えることができる」ことを示したり、示唆したりする記載はないから、それに基づき、曲率半径や曲率中心の位置関係を設計する動機があるとはいえないと判断する。しかし、甲15公然実施発明は、甲15資料に記載のとおり、平成7年10月10日にNHK総合テレビで紹介されており(甲36)、同番組では、①蓋を装着した時は、蓋と本体の接触部分が線状の接触となり(甲36の31~32番、40~41番の映像)、②製造誤差によって接面部に多少の凹凸や歪みがあったとしても5 蓋のガタツキが生じず(41~43番の映像)、③蓋に積載荷重がかかると、蓋と本体の側板部が僅かに変形し(37番の映像)、蓋接面部と本体接面部とが広い曲面で接触し(34~38番の映像)、④蓋と本体に過度の応力が生じることがなく(37番の映像)、積載荷重に十分に耐えることができる(38番の映像)ことが示されているから、本件審決の判断は誤りである。イ 本件発明1は、前記アの内容を引用したものにすぎず、甲15公然実施発明に包含されている。5 取消事由5(甲3発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲3発明の認定について本件審決の甲3発明の認定は、甲3公報の重要部分(下記下線部分)、及び甲3発明が本件明細書の段落【0002】【特許文献1】記載の従来の側溝であることを記載せずに認定しているから、誤りである(以下、この項において、【 】は甲3公報の【発明の詳細な説明】の段落番号を示す。)。【0006】【作用】「 この様にして幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着する。」【0008】【発明の効果】「 この発明は側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着することに特徴が有る。これにより車両等の通過騒音を解消することが可能になり、側溝蓋、及び側溝の破損の発生をも防ぐ。」【0009】「 例えば、側溝に棚受け部が無いことから設置時に側溝蓋との底面接触が無くなり側溝蓋の接面部と側溝の接面部で支え合うことになり、底面に土、小石等の異物を挟み込むことが無くなった。また側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す。」⑵ 相違点2Eの認定について認定すべき相違点は、①本件発明1は突起部9を設けない場合の蓋との音のしない側5 溝であること(本件明細書段落【0018】)、②甲3発明及び甲3発明の実施を以て、(a)甲3発明が、曲率中心が相互に1~1.7mm離れ(甲21、56(甲21に同じ))、(b)蓋と側溝本体との接面部は30°~60°の曲面の範囲βで接し(甲15、20、21、35~37)、(c)側溝と蓋の接面部の互いに相似な曲面により線接触し(甲36)、(d)側溝蓋1の自重により密着し(【0006】)、(e)側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す(【0009】)点である。したがって、相違点2Eを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点2Eの容易想到性判断について仮に相違点2Eが認められるとしても、以下の事実から、本件発明3を相違点2Eに係る構成とする動機付けがあり、当業者が容易になし得たことは明らかであるから、本件審決はその容易想到性判断を誤っている。ア 被告中越製陶は、本件優先日前に、トヨタ工機株式会社から、先行図面(甲20、21、41、42)を基礎とした型枠図面(甲43、44)を譲渡され、甲3公報に係る特許の特許権者である被告リタッグとの間で、「リボーン側溝」と同一であることを認めた上で(甲10、19)、「RUG側溝」(甲31~33)として生産、譲渡等し、本件発明1を公然実施した。なお、特許庁は、審判手続において、型枠図面(甲41~44)を採用しない決定をしたが、この手続は違法である。イ 平成11年時点において、本件発明1の側溝構造及び発明の効果は達成されており(甲36、37)、本件発明1は公然実施されていた(甲2、12~16、23、30、35、57)。ウ 本件発明1は、従来技術の側溝(甲23、35、57)を単に縮小させ、曲率半径が11~25mmで、曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れたものとしたにすぎず、従来技術の寄せ集めである。エ 本件発明1は、甲3発明の効果(甲3、36、37)をそのまま構成・効果に引用5 したもので、格別の効果はない。
6 取消事由6(甲3実施発明A(甲4~8)に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲3実施発明Aの認定について甲3発明の認定(前記5⑴)に同じ。⑵ 相違点の認定について甲3発明に係る相違点の認定(前記5⑵)に同じ。⑶ 容易想到性判断について甲3発明に係る容易想到性判断(前記5⑶)に同じ。
7 取消事由7(甲3実施発明B(甲10、11)に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲3実施発明Bの認定について甲3発明の認定(前記5⑴)に同じ。⑵ 相違点の認定について甲3発明に係る相違点の認定(前記5⑵)に同じ。⑶ 容易想到性判断について甲3発明に係る容易想到性判断(前記5⑶)に同じ。
8 取消事由8(甲17公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲17公然実施発明の認定について認定すべき発明は、次のとおりである。「 厚さが101mmの凸の曲面の接面部を有した跳ね上がりを防止する突起部を設けた蓋(本件明細書【0018】の突起部9に相当)、及び、凹の曲面の接面部を有した側溝において、蓋の凸の曲面部の曲率半径が45mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が50mmである部分を有し、接面部は7.85~23.55mm程度とし、蓋と側溝本体の接面部は30°~60°の曲面の範囲の位置で接し(本件明細書【0018】の角度βに相当)、側溝本体の曲面部に水平な部分がなく、蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置がずれている、騒音の発生しない側溝。」⑵ 相違点1Fの認定について5 認定すべき相違点は、甲17公然実施発明は、①本体接面部の曲率半径が50mm及び蓋接面部の曲率半径が45mmで、②接面範囲の接面部は7.85~23.55mm程であり、③前記本体接面部の曲率半径と前記蓋接面部の曲率半径は異なり、④前記両接面部の曲率中心が相互に数mm離れており、⑤蓋曲面の下端側に数mmの隙間を有している点である。したがって、相違点1Fを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点1Fの容易想到性判断について仮に相違点1Fが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 甲17公然実施発明の「接面範囲の接面部は7.85~23.55mm程」であることは、本件発明1の「曲率半径が11~25mm」の蓋が接触する範囲に相当する。いずれも、30°~60°の範囲で曲面が接触する甲3発明の技術の引用であることに変わりはない。イ 甲17公然実施発明は、曲率半径の範囲(幾何学的に相似な曲面同士)を自由とした甲3発明の側溝構造に基づく側溝構造であるから、側溝と蓋が曲率半径の異なる曲面により「側溝蓋1の自重により密着し(甲3公報の段落【0006】)、側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す(同【0009】)、騒音の発生しない側溝(甲36、37)である。曲面部の曲率半径が相互に異なっているとしても、幾何学的に相似な曲面であるから、「蓋の自重により密着」することは当然である。
9 取消事由9(甲18公然実施発明1に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲18公然実施発明1の認定について甲17公然実施発明の認定(前記8⑴)にほぼ同じ。⑵ 相違点の認定について甲17公然実施発明に係る相違点の認定(前記8⑵)に同じ。5 ⑶ 容易想到性判断について甲17公然実施発明に係る容易想到性判断(前記8⑶)にほぼ同じ。
10 取消事由10(甲18公然実施発明2に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲18公然実施発明2の認定について認定すべき発明は、次のとおりである。「 厚さが103.9mmの凸の曲面の接面部を有した跳ね上がりを防止する突起部を設けた蓋(本件明細書【0018】の突起部9に相当)、及び、凹の曲面の接面部を有した側溝において、蓋の凸の曲面部の曲率半径が50mm、側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が54.5mmである部分を有し、接面部は8.72~26.16mm程度とし、蓋と側溝本体の曲面部は20°~50°の曲面の範囲の位置で接し(本件明細書【0018】の角度βに相当)、側溝本体の曲面部に水平な部分がなく、蓋と側溝本体の曲面部の曲率中心の位置がずれている、騒音の発生しない側溝。」⑵ 相違点1Gの認定について認定すべき相違点は、甲18公然実施発明2は、(a)本体接面部の曲率半径が54.5mm及び蓋接面部の曲率半径が50mmで、(b)接面範囲の接面部は8.72~26.16mm程であり、(c)前記本体接面部の曲率半径と前記蓋接面部の曲率半径は異なり、(d)前記両接面部の曲率中心が相互に数mm離れており、(e)蓋と側溝本体の接面部は20°~50°の曲面の範囲βの位置で接している点である。したがって、相違点1Gを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。⑶ 相違点1Gの容易想到性判断について仮に相違点1Gが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 本件発明1と甲18公然実施発明2の側溝構造は略同じであり、「曲率中心が相互に数mm離れていること」については、被告リタッグ代表者が甲18資料の型枠5 設計者である宝工業を紹介して、「曲率中心の位置関係が特定」された型枠が供給され、実施されている(甲52)。イ 甲18公然実施発明2を、「本件発明の機能」をなすように設計することは、平成8年以降、トヨタ工機株式会社からリボーン側溝工業会(甲9)に対し、図面(甲20、21、41~44)が型枠と共に譲渡され、実施されているから、動機付けも示唆も認められる。
11 取消事由11(甲21公然実施発明に係る認定判断の誤り)について⑴ 甲21公然実施発明の認定について認定すべき発明は、次のとおりである。「 側溝本体において、蓋の凸の曲面部の曲率半径が50mmであり、蓋が接触する側溝本体の凹の曲面部の曲率半径が50mmであり、前記本体接面部の曲率半径と蓋接面部の曲率半径は等しく、前記両接面部の曲率中心が相互に1~1.7mm離れており、側溝本体の曲面部に水平な部分を有しない側溝であって、蓋曲面の下端に1mm、その下方に3.2mmの隙間を有して、蓋曲面部の上部で側溝本体の曲面部に線接触し、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、積載荷重がかかったときに、蓋と側溝の接面部が30°~60°の曲面の範囲の広い面積で接して、全体にかかる重量を分散した、跳ね上がり防止の突起部を設けた蓋との騒音の発生しない側溝。」⑵ 相違点1Hの認定について認定すべき相違点は、甲21公然実施発明は、本体接面部の曲率半径が50mm及び蓋接面部の曲率半径が50mmで、接面範囲の接面部は8.72~26.16mm程であり、前記両接面部の曲率中心が相互に1~1.7mm離れており、蓋曲面の角度βに1mmの隙間、蓋曲面の角度αに3.2mmの隙間を有し、曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる重量を分散し(甲36)ている点である。したがって、相違点1Hを認定した本件審決は、相違点の認定を誤っているから、これを前提とする容易想到性の判断も誤っている。5 ⑶ 相違点1Hの容易想到性判断について仮に相違点1Hが認められるとしても、本件審決は、以下のとおり、その容易想到性判断を誤っている。ア 甲21資料は、表紙に甲3公報の特許番号が記載された甲3発明実施のカタログであり、「リボーン側溝」(甲7)のカタログであるから、蓋を乗せたときに線接触し、蓋の荷重又は積載荷重がかかったときは蓋の曲面と広い面積で接するものである(甲20)。イ 甲3発明は、甲21公然実施発明に限らず、各社各自が変更して自由にこれら側溝構造を実施されてきたものである。ウ 甲21公然実施発明の側溝は、幾何学的に相似の曲面であるから、設置すると蓋の自重により密着することは当然である。
12 取消事由12(本件発明2~4に係る判断の誤り)について前記のとおり、本件発明1の進歩性欠如に係る本件審決の判断は誤りであるから、同じ理由から他の本件発明の進歩性欠如を認めなかった本件審決の判断も、誤りである。(被告中越製陶の主張)1 取消事由に係る本件審決の認定判断に、いずれも誤りはない。2 甲12公然実施発明に係る相違点1Bについては、仮に、曲率中心の位置をずらす数値変更が各社で実施されていたとしても、「蓋と本体が広い曲面で接触し、蓋と本体に過度の応力が生じることなく、積載荷重に十分に耐え得る」という、本件発明特有の技術的効果が生じるように、曲率中心の位置をずらす数値変更についての示唆等は、原告ら提出の証拠を見ても見当たらず、そのような動機付けは存在しない。3 甲15公然実施発明については、「曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる荷重も分散され、音の発生を未然に防ぐ」ものであるから、前記2の本件発明の効果を奏するように構成を変更する動機付けはない。(被告リタッグの主張)被告リタッグは、本件口頭弁論期日その他の期日に出頭しないが、提出した答弁書には、訴状記載の請求原因を認める旨の記載がある。以 上
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