令和5(ワ)70731不正競争行為差止等請求事件
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| 裁判所 |
一部認容 東京地方裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和7年11月26日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告株式会社オービック 被告JapanOrbic合同会社
|
| 法令 |
不正競争
商標法36条1項1回
|
| キーワード |
差止23回 侵害14回 商標権12回
|
| 主文 |
1 被告は、その営業上の施設又は活動に、別紙被告標章目録記載1ないし11の
2 被告は、別紙請求目録「番号」1ないし6の「標章」欄記載の標章を同「対象」
3 被告は、別紙主文目録「番号」2の「標章」欄記載の標章を同「対象」欄記載
4 被告は、別紙請求目録「番号」7ないし12の「標章」欄記載の標章を同「対
5 被告は、別紙主文目録「番号」7ないし12-2の「標章」欄記載の標章を同
6 被告は、「Japan Orbic合同会社」の商号を使用してはならない。
7 被告は、別紙登記目録記載の商号の抹消登記手続をせよ。
8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の、その余は被告の負担とする。
10 この判決は、第1項、第2項、第4項及び第6項に限り、仮に執行すること |
| 事件の概要 |
1 事案の概要
本件は、原告が被告に対し、①被告による別紙被告標章目録記載1ないし11
の標章(以下「被告標章1」などといい、これらを「被告標章」と総称する。
)の
使用が、原告の有する4件の商標権の侵害、又は原告の商品等表示に係る不正競
争(不正競争防止法(以下「不競法」という。
)2条1項1号又は2号)に当たる
として、商標法36条1項及び2項又は不競法3条1項及び2項に基づく商品及
びその包装(以下「商品等」という。
)並びに広告及び取引書類(以下「広告等」
という。
)についての被告標章の使用の差止め及び廃棄、②被告による「Japa
n Orbic合同会社」との商号(以下「被告商号」という。
)の使用が、原告
の商品等表示に係る不正競争(同法2条1項1号又は2号)に当たるとして、同 |
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判決文
令和7年11月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第70731号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和7年9月17日
判 決
原 告 株 式 会 社 オ ー ビ ッ ク
同 訴 訟代 理 人 弁 護 士 横 山 経 通
堺 〇 有 光 子
10 瀧 山 侑 莉 花
Japan Orbic合同会社(本店所
在地:)訴訟承継人
被 告 Japan Orbic合同会社
主 文
1 被告は、その営業上の施設又は活動に、別紙被告標章目録記載1ないし11の
標章を使用してはならない。
20 2 被告は、別紙請求目録「番号」1ないし6の「標章」欄記載の標章を同「対象」
欄記載のものに付したものについて、同「行為」欄記載の行為をしてはならない。
3 被告は、別紙主文目録「番号」2の「標章」欄記載の標章を同「対象」欄記載
のものから抹消せよ。
4 被告は、別紙請求目録「番号」7ないし12の「標章」欄記載の標章を同「対
25 象」欄記載の商品若しくは役務に関する広告(パンフレット)若しくは取引書類
に付して、引き渡し、展示し、又は、これらを内容とする情報に同標章を付し
て、電磁的方法により提供してはならない。
5 被告は、別紙主文目録「番号」7ないし12-2の「標章」欄記載の標章を同
「対象」欄記載の商品又は役務に関するパンフレット、取引書類及び同「UR
5 L」欄記載のウェブサイトから抹消せよ。
6 被告は、「Japan Orbic合同会社」の商号を使用してはならない。
7 被告は、別紙登記目録記載の商号の抹消登記手続をせよ。
8 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
9 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の、その余は被告の負担とする。
10 10 この判決は、第1項、第2項、第4項及び第6項に限り、仮に執行すること
ができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主文1項、2項、4項、6項及び7項同旨
15 2 被告は、別紙請求目録「番号」2の「標章」欄記載の標章を同「対象」欄記載の
ものから抹消せよ。
3 被告は、別紙請求目録「番号」7ないし12の「標章」欄記載の標章を同「対
象」欄記載の商品又は役務に関するパンフレット、取引書類並びに同「URL」
欄記載のウェブサイトから抹消せよ。
20 4 被告は、その営業上の施設又は活動に、
「ORBIC」又は「Orbic」の文
字を含む標章及び商号を使用してはならない。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は、原告が被告に対し、①被告による別紙被告標章目録記載1ないし11
25 の標章(以下「被告標章1」などといい、これらを「被告標章」と総称する。)の
使用が、原告の有する4件の商標権の侵害、又は原告の商品等表示に係る不正競
争(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号)に当たる
として、商標法36条1項及び2項又は不競法3条1項及び2項に基づく商品及
びその包装(以下「商品等」という。)並びに広告及び取引書類(以下「広告等」
という。)についての被告標章の使用の差止め及び廃棄、②被告による「Japa
5 n Orbic合同会社」との商号(以下「被告商号」という。)の使用が、原告
の商品等表示に係る不正競争(同法2条1項1号又は2号)に当たるとして、同
法3条1項及び2項に基づく被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続、③上記
①及び②の不正競争につき、同条1項に基づき、営業上の施設又は活動への被告
標章の使用の差止め並びに「ORBIC」及び「Orbic」の文字を含む標章
10 及び商号の使用の差止めを求める事案である(①における商標権に基づく請求と
不競法の各号に基づく請求、②③における不競法の各号に基づく請求の関係は選
択的併合)。
被告は、第6回弁論準備手続期日に出頭したのを最後にその後の期日に出頭せ
ず、令和7年1月30日付け準備書面⑷を最後に主張書面の提出も提出しない。
15 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易
に認められる事実。書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)
⑴ 当事者
ア 原告は、コンピュータのシステムインテグレーション事業、システムサポ
ート事業等を営む株式会社であり、昭和43年4月に設立され、昭和49年
20 1月に商号を「株式会社オービック」に変更し、現在に至っている。(甲1)
イ 被告は、通信、信号、表示、評定及び制御に関する電気、電子及び光電子製
品及び設備、電子情報処理機器、測定機器及び遠隔監視機器及び設備、携帯
電話、移動体通信端末及び周辺機器等の製品の設計、製造、組立、試験、技術
認証等取得、販売、購入、輸入、輸出、代理販売等及び当該製品に関する工
25 事、請負、修理サービス、設計、技術指導その他サービスの提供等を目的す
る合同会社であり、令和6年10月1日、訴訟承継前の被告であるJapa
n Orbic合同会社(令和4年9月15日設立。会社法人番号。以下「承
継前被告」という。)を吸収合併するとともに、商号を「Japan Orb
ic合同会社」(被告商号)に変更し、現在に至っている。(甲2、28)
⑵ 原告の商標権
5 原告は、別紙商標権目録記載1ないし4の商標権を有する(以下「本件商標
権1」、その登録商標を「本件商標1」などといい、それぞれ「本件商標権」及
び「本件商標」と総称する。)。(甲3、29)
⑶ 被告の行為(甲16)
ア 被告(承継前被告を含む。)が販売・提供する商品及び役務並びにその販売・
10 提供開始時期は別紙被告商品役務目録のとおりである(以下、同目録記載1
ないし4については、その番号に従い、
「被告商品1」、
「被告商品2⑴」など
といい、被告商品2⑴及び⑵を総称するときは「被告商品2」といい、記載
5については「被告役務」といい、これらを「被告商品等」と総称する)。
イ 被告標章の商品等における使用は次のとおりである。
15 (ア) 被告標章1を被告商品1、2及び4の商品の包装に付して、販売、引き
渡し、販売又は引渡しのための展示、輸入及び電気通信回線を通じて提供
した(別紙請求目録「番号」1に対応。)。
(イ) 被告標章2を被告商品1ないし4の商品及びその包装に付して、上記
(ア)と同様の行為をした(同目録「番号」2に対応。)。
20 (ウ) 被告標章9を被告商品2⑴の、被告標章10を被告商品2⑵の商品の包
装に付して、販売、引き渡し、販売又は引渡しのための展示及び輸入をし
た(同目録「番号」3に対応。)。
(エ) 被告標章11を被告商品1の包装に付して、上記(ウ)と同様の行為をし
た(同目録「番号」5に対応。)。
25 (オ) 被告標章7を被告商品4⑴に、被告標章8を被告商品4⑵に付して電気
通信回線を通じて提供した(同目録「番号」6に対応。)。
(カ) 被告商品3の商品及びその包装に被告標章2を、その包装に被告標章5
を付しているが、被告商品3は未発売である(同目録「番号」2及び4に
対応)。
(キ) 被告標章3、4及び6は商品等に付していない。
5 ウ 被告標章の広告等における使用は次のとおりである。
(ア) 被告標章1及び2を被告商品等に関する広告等に付して、引き渡し、展
示し、又は、これらを内容とする情報に同標章を付して、別紙請求目録「番
号」7の「URL」欄記載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供
した(同目録「番号」7に対応。)。
10 (イ) 被告標章9を被告商品2⑴に関する広告等に付して、同目録「番号」8
の「URL」欄記載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供した(同
目録「番号」8に対応。)。
(ウ) 被告標章10を被告商品2⑵に関する広告等に付して、同目録「番号」
9の「URL」欄記載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供した
15 (同目録「番号」9に対応。)。
(エ) 被告標章5を被告商品3に関する広告等に付して、同目録「番号」10
の「URL」欄記載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供した(同
目録「番号」10に対応。)。
(オ) 被告標章11を被告商品1に関する広告等に付して、同目録「番号」1
20 1の「URL」欄記載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供した
(同目録「番号」11に対応。)。
(カ) 被告標章7を被告商品4⑴及び被告役務⑴の、被告標章8を被告商品4
⑵及び被告役務⑵の広告等に付して、同目録「番号」12の「URL」欄記
載のウェブサイトにおいて電磁的方法により提供した。
(同目録「番号」1
25 2に対応。)。
(キ) 被告標章3、4及び6は広告等に付していない(同目録「番号」8、9
及び11に対応)。
エ 被告は、令和6年10月1日、別紙登記目録記載のとおり被告商号を登記
し、同日以降、被告商号を使用している。(甲28)
3 争点
5 ⑴ 商品等及び広告等への被告標章の使用の差止め及び抹消請求の成否(争点1)
ア 不競法に基づく請求
(ア) 原告の表示は著名又は周知の商品等表示であるか(争点1-1)
(イ) 原告の表示と被告標章の類否(争点1-2)
(ウ) 混同を生じさせる行為の有無(争点1-3)
10 (エ) 営業上の利益を侵害されるおそれの有無(争点1-4)
イ 商標法に基づく請求
(ア) 本件商標と被告標章の類否(争点1-5)
(イ) 本件商標権の指定商品と被告商品等の類否(争点1-6)
⑵ 被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続請求の成否(争点2)
15 ⑶ 営業上の施設又は活動における被告標章の使用の差止請求の成否(争点3)
⑷ 営業上の施設又は活動における「ORBIC」又は「Orbic」の文字を
含む標章及び商号の使用の差止請求の成否(争点4)
4 争点に関する当事者の主張
⑴ 争点1(商品等及び広告等への被告標章の使用の差止め及び抹消請求の成否)
20 について
ア 争点1-1(原告の表示は著名又は周知の商品等表示であるか)について
(原告の主張)
原告は、原告の商号の略称「OBIC」及び標章「OBIC」、原告の商号
の略称「オービック」及び標章「オービック」を用いており、これらの表示
25 は、原告の事業活動及び広告宣伝活動により、遅くとも平成16年頃には、
全国の需要者に広く認識され、以来、原告、原告の子会社及び原告の関連会
社を表すものとして周知かつ著名である。このことは、東京地方裁判所平成
18年(ワ)第17357号平成19年5月31日判決において認められて
いることからも明らかである。
(被告の主張)
5 「OBIC」及び「オービック」の表示が原告のどのような「商品又は営
業」を表示するものか明らかでなく、商品等表示として特定されていない。
「OBIC」及び「オービック」の表示は、著名ではなく、また、統合業務
ソフトウェアを取り扱う業界における原告の商品及びサービスの利用者層以
外の一般の需要者の間で周知であるとはいえない。仮に平成16年頃に一般
10 の需要者の間で周知性を獲得していたとしても、その後の時間の経過や原告
の使用態様により、周知性を喪失している。
イ 争点1-2(原告の表示と被告標章の類否)について
(原告の主張)
(ア) 「オービック」と被告標章
15 被告標章1及び2の称呼は「オービック」であり、称呼が同一である。
被告標章3ないし11は、いわゆる結合商標であり、分離観察が許容さ
れるところ、いずれも「Orbic」の部分が商品又は役務の出所識別標
識として強く支配的な印象を与え、それ以外の部分は一般的な意味を有す
るにすぎないから、類似する。
20 (イ) 「OBIC」と被告標章
「OBIC」の称呼も「オービック」であるから、称呼が同一である。
外観も「オー」という称呼の部分を「O」と表記するか「Or」と表記す
るかの差異があるのみで類似する。
被告標章3ないし11は、前記(ア)と同様に分離観察が許容され、類似す
25 る。
(被告の主張)
(ア) 「オービック」と被告標章
両者は外観が大きく異なる。被告標章1は、被告の使用状況を踏まえる
と「オルビック」という称呼が生じるから、称呼も異なる。被告標章2は、
特定の称呼が生じないか、生じるとしても「オルビック」である。被告標
5 章3ないし11は一気呵成に発音可能であり、称呼の全体の語調や語感が
大きく異なる。被告標章3ないし11の「Orbic」の部分を分離観察
しても、「オルビック」という称呼が生じるから、称呼も異なる。
(イ) 「OBIC」と被告標章
両者は文字数や文字の相違等から外観が大きく異なる。称呼が異なるこ
10 とは前記(ア)のとおりである。
ウ 争点1-3(混同を生じさせる行為の有無)について
(原告の主張)
「OBIC」及び「オービック」の表示は、コンピューターシステム及び
ソフトウェアを利用し、クラウドサービス、スマートフォン及びタブレット
15 型携帯端末を利用する需要者の間で周知であるから、被告が上記の各表示と
類似する被告標章を使用して、被告商品等を販売又は提供すれば、その販売
主体又は営業主体は原告や原告と関連を有する会社であるとの混同を生じ
させるおそれがある。
(被告の主張)
20 原告の商品及びサービスの需要者は、大企業における大規模なシステム導
入に関与するシステム担当者や役員に限定されているのに対し、被告商品等
の需要者は、一般の消費者、それも初めてスマートフォンを使用するユーザ
ーであるから、需要者は重ならない。
したがって、被告が被告標章を被告商品等に使用したとしても、混同を生
25 じさせるおそれはない。
エ 争点1-4(営業上の利益を侵害されるおそれの有無)について
(原告の主張)
被告商品等は、商品役務目録記載の商品・役務に相当する。したがって、
別紙請求目録「番号」1ないし6の「標章」欄記載の標章を「対象」欄記載の
対象に付したものについて「行為」欄記載の行為により、原告の営業上の利
5 益を侵害されるおそれがあり、また、同目録「番号」7ないし12の「標章」
欄記載の標章を同「対象」欄記載の商品若しくは役務に関する広告(パンフ
レット)若しくは取引書類に付して、引き渡し、展示し、又は、これらを内容
とする情報に同標章を付して、電磁的方法により提供することにより、原告
の営業上の利益を侵害されるおそれがある。
10 (被告の主張)
争う。
オ 争点1-5(本件商標と被告標章の類否)について
(原告の主張)
(ア) 本件商標1と被告標章
15 本件商標1と被告標章1及び2の称呼は「オービック」で同一である。
外観も英語表記の「オー」という称呼の部分を「O」と表記するか「Or」
と表記するかの差異があるのみで類似する。被告標章3ないし11は、い
わゆる結合商標であり、分離観察が許容されるところ、いずれも「Orb
ic」の部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、それ
20 以外の部分は一般的な意味を有するにすぎないから、本件商標1と類似す
る。
(イ) 本件商標2と被告標章
本件商標2と被告標章1及び2の称呼は「オービック」で同一である。
外観も「オー」という称呼の部分を「O」と表記するか「Or」と表記する
25 かの差異があるのみで類似する。
被告標章3ないし11は、前記(ア)と同様に分離観察が許容され、類似す
る。
(ウ) 本件商標3及び4と被告標章
本件商標3及び4と被告標章1及び2の称呼は「オービック」で同一で
ある。被告標章3ないし11は、前記(ア)と同様に分離観察が許容され、類
5 似する。
(被告の主張)
(ア) 本件商標1と被告標章
両者は外観が大きく異なる。本件商標1は特定の称呼は生じないか、
「オ
ービック」に限定されない称呼を生じるのに対し、被告標章1は、被告の
10 使用状況を踏まえると「オルビック」という称呼が生じるから、称呼も異
なる。被告標章2は、特定の称呼が生じないか、生じるとしても「オルビ
ック」である。被告標章3ないし11は一気呵成に発音可能であり、本件
商標1に称呼が生じるとしても全体の語調や語感が大きく異なる。被告標
章3ないし11の「Orbic」の部分を分離観察しても、「オルビック」
15 という称呼が生じるから、称呼も異なる。
(イ) 本件商標2と被告標章
両者は外観が大きく異なる。本件商標2は特定の称呼は生じないか、
「オ
ービック」に限定されない称呼を生じるのに対し、被告標章1及び2の称
呼は前記(ア)のとおりであり、称呼も異なる。被告標章3ないし11は一気
20 呵成に発音可能であり、本件商標2に称呼が生じるとしても全体の語調や
語感が大きく異なる。被告標章3ないし11の「Orbic」の部分を分
離観察しても、「オルビック」という称呼が生じるから、称呼も異なる。
(ウ) 本件商標3及び4と被告標章
両者は外観が大きく異なる。本件商標3及び4は特定の称呼は生じない
25 か、「オービック」に限定されない称呼を生じるのに対し、被告標章1及
び2の称呼は前記(ア)のとおりであり、称呼も異なる。被告標章3ないし1
1は一気呵成に発音可能であり、本件商標3及び4に称呼が生じるとして
も全体の語調や語感が大きく異なる。被告標章3ないし11の「Orbi
c」の部分を分離観察しても、「オルビック」という称呼が生じるから、称
呼も異なる。
5 カ 争点1-6(本件商標権の指定商品と被告商品等の類否)について
(原告の主張)
(ア) 本件商標権1ないし3
被告商品1及び2は指定商品「電子応用機械器具及びその部品、電気通
信機械器具」と、被告商品3は指定商品「電気通信機械器具」と、同一又は
10 類似であり、被告商品4は指定商品「電子応用機械器具及びその部品」と、
被告役務は指定商品「電子応用機械器具及びその部品」と、類似する。
(イ) 本件商標権4
被告商品1、2及び4は指定商品「電気通信機械器具、電子計算機(中
央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディ
15 スク・磁気テープその他の周辺機器を含む)及びその他の電子応用機械器
具及びその部品」と、被告商品3は、指定商品「電気通信機械器具」と同一
又は類似であり、被告役務は、指定商品「電気通信機械器具、電子計算機
(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気
ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)及びその他の電子応用機
20 械器具及びその部品」に類似する。
(被告の主張)
争う。
⑵ 争点2(被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続請求の成否)について
(原告の主張)
25 被告商号のうち、営業表示として強く支配的な印象を与えるのは「Orbi
c」の部分であるから、「OBIC」及び「オービック」の表示と類似する。上
記の各表示が著名又は周知の商品等表示であること、混同を生じさせるおそれ
があること、原告の営業上の利益を侵害されるおそれがあることは前記⑴アな
いしエ(原告の主張)と同様である。
(被告の主張)
5 争う。前記⑴アないしエ(被告の主張)のとおりである。
⑶ 争点3(営業上の施設又は活動における被告標章の使用の差止請求の成否)
について
(原告の主張)
被告は、前記⑴及び⑵(原告の主張)のとおり、「OBIC」及び「オービッ
10 ク」の表示と類似する被告標章及び被告商号を使用しているから、営業上の施
設又は活動に被告標章を使用して原告の営業上の利益を侵害するおそれがある。
(被告の主張)
否認ないし争う。
⑷ 争点4(営業上の施設又は活動における「ORBIC」又は「Orbic」の
15 文字を含む標章及び商号の使用の差止請求の成否)について
(原告の主張)
被告は、前記⑴及び⑵(原告の主張)のとおり、「OBIC」及び「オービッ
ク」の表示と類似する被告標章及び被告商号を使用しているから、営業上の施
設又は活動に「OBIC」及び「オービック」の表示と類似する「ORBIC」
20 又は「Orbic」の文字を含む標章及び商号を使用して原告の営業上の利益
を侵害するおそれがある。
(被告の主張)
否認ないし争う。原告は、被告が広く「ORBIC」又は「Orbic」の文
字を含む標章及び商号を使用するおそれがあることを基礎付ける事実関係を何
25 ら主張しておらず、そのようなおそれがあるということはできない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
⑴ 原告の沿革、業態及び売上げ等
5 ア 原告は、昭和43年4月、大阪市内を本店所在地として設立され、昭和4
9年1月、商号を現在の「株式会社オービック」に変更した。原告は、昭和4
6年11月から平成8年10月にかけて、東京支店(現東京本社)、名古屋支
店、福岡支店、静岡営業所及び広島サービスセンター(現広島営業所)、横浜
支店、北九州営業所(その後、福岡支店に統合)、千葉支店、京都支店、松本
10 出張所(現松本営業所)、北関東営業所(現北関東支店)、立川営業所及び厚
木営業所をそれぞれ開設した。
また、原告の連結子会社又は関連会社として、昭和47年8月設立の株式
会社オービーシステム(本店所在地は大阪市)、昭和54年11月設立の株式
会社オービックオフィスオートメーション(本店所在地は東京都)、昭和55
15 年12月設立の株式会社オービックビジネスコンサルタント(本店所在地は
東京都)がある。
イ 原告及びその連結子会社並びに関連会社は、主にコンピュータのシステム
インテグレーション事業(主要製品は統合基幹業務システム)、システムサポ
ート事業(統合基幹業務システムの運用支援及び保守等を行う。)、オフィス
20 オートメーション事業(主要製品はOA機器一般及びコンピュータサプライ
用品)及び業務用パッケージソフト事業(主要製品は財務会計等パッケージ
ソフト)を行っている。原告の販売する統合基幹業務システムは、小売・サ
ービス業等多岐にわたる業種を対象とし、会計情報システム、販売情報シス
テムその他のシステムを統合したものである。平成25年頃にクラウドサー
25 ビスの提供を開始し、インターネットを経由してスマートフォンやタブレッ
ト型携帯情報端末からも利用可能なサービスを提供している。
ウ 原告の主要販売先は会社その他の法人又は官公庁である。原告の売上げは、
昭和58年8月期に100億円、平成3年8月期に200億円、平成12年
3月期に300億円、平成20年3月期に400億円、平成28年3月期に
500億円、平成31年3月期に600億円、令和2年3月期に700億円、
5 令和4年3月期に800億円をそれぞれ超え、令和5年3月期の連結売上げ
は、約1001億円に達した。また、原告は、平成10年12月に東京証券
取引所の第二部に、平成12年3月に同取引所の第一部に株式を上場し、市
場区分が再編された令和4年4月以降は同取引所のプライム市場に移行した。
株式会社オービーシステムも、令和5年6月に東京証券取引所のスタンダー
10 ド市場に株式を上場した。(甲1、4~6、9~11)
⑵ 「オービック」の使用
原告は、商号を「株式会社オービック」に変更して以来、「オービック」を、
営業において自己を示す名称(商号)の略称として使用している(以下「原告
表示」という。)。(甲1、3、4、6、9、10)
15 ⑶ 原告の広告宣伝等
原告の支出した広告宣伝費は、昭和55年8月期から平成17年3月期まで
は最も低額で年間約2億3000万円、最も高額で年間約8億8000万円で
あり、平成18年3月期から令和5年3月期までは最も低額で年間約9億10
00万円、最も高額で年間約11億4000万円である。
20 以下のとおり、原告は、テレビ、ラジオ、新聞等様々な媒体を通じて、原告及
びその提供する商品やサービスの宣伝を行い、あるいは、原告の経営方針等が
新聞等で報道された。(甲5、7、8、12~14)
ア テレビコマーシャル
原告は、昭和54年頃からテレビコマーシャルを放送しており、そのテレ
25 ビコマーシャルが放送された番組、放送日、放送局及び放送時間は、昭和5
7年1月から平成4年8月までに393回、平成10年4月から令和5年1
月までに275回である。原告のテレビコマーシャルが放送された番組は、
天気予報等のほか、ゴルフ、サッカー及び野球といったスポーツ中継や、ス
ポーツニュースが多い。
原告のテレビコマーシャルのうち代表的なものに、有名なプロゴルファー
5 (A氏)をCMキャラクターに起用したものがあり、
「システムインテグレー
タのオービックwww.obic.co.jp」という文字が大きく表示さ
れていた。
イ ラジオコマーシャル
原告は、昭和49年頃から平成20年頃まで、東海ラジオ、TBSラジオ
10 及びRKBにおいてコマーシャルを放送していた。
ウ 野球場の広告看板
原告は、以下のとおり、野球場に広告看板を設置しており、これらの広告
看板は、各野球場で行われた試合の観戦者やテレビ中継の視聴者らの目に触
れる状態にあった。
15 (ア) 阪神甲子園球場
a 昭和55年3月から平成16年2月まで3塁側観客席上部に設置され
ていた「コンピュータのオービック」又は「オービック」と記載した看
板
b 平成16年3月から令和6年2月(継続中)まで3塁側フェンスに掲
20 載されていた「システムインテグレータのオービック」と記載した看板
(イ) ナゴヤ球場
昭和58年4月から平成4年11月まで3塁側照明塔下脚部に設置され
ていた看板
(ウ) 横浜スタジアム
25 平成2年3月から令和4年12月まで3塁側カメラマン席下フェンスに
設置されていた「統合業務ソフトウェアオービック」と記載した看板
(エ) 東京ドーム
平成16年2月から令和6年2月(継続中)まで1塁側及び3塁側放送
室前フェンスに掲載されていた「オービック」と記載した看板
エ 新聞記事及び新聞広告等
5 (ア) 原告又は原告の連結子会社ないし関連会社の商品やサービス、支店等の
開設、代表取締役や業務方針等に関する記事が、日経産業新聞、日本経済
新聞、朝日新聞、日経金融新聞、毎日新聞、産経新聞及び東京読売新聞等
に掲載された。その掲載回数は、昭和60年1月から平成18年4月まで
の間で232回、昭和60年1月から令和5年10月末までの間で773
10 回にのぼる。
(イ) また、原告は、日本経済新聞、日経産業新聞、日経金融新聞、日経MJ、
朝日新聞、読売新聞、日経ビジネス、日経コンピュータ、日経BPイベン
ト、日経CNBC及び日経電子版等に、広告を掲載している。昭和62年
1月以降の掲載回数は、2500回を上回る。
15 2 争点1(商品等及び広告等への被告標章の使用の差止め及び抹消請求の成否)
について
⑴ 争点1-1(原告の表示は著名又は周知の商品等表示であるか)について
ア 前記認定のような原告の経営状況、宣伝広告の回数、その内容等に照らせ
ば、原告は、基幹業務システム及びソフトウェアに関連する事業を広く展開
20 する会社として全国的にその社名を広く認識されていたと認められ、原告が、
広告宣伝等において「オービック」の文字を継続的に使用していたことも併
せ考えると、原告の社名(商号)から株式会社の部分のみを省略した原告表
示についても、承継前被告が設立された令和4年9月よりも前に、全国の需
要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。
25 イ 被告は、①原告表示は原告のどのような「商品又は営業」を表示するもの
か明らかでなく、商品等表示として特定されていない、②原告表示は、統合
業務ソフトウェアを取り扱う業界における原告の商品及びサービスの利用者
層以外の一般の需要者の間で周知であるとはいえない、③仮に平成16年頃
に一般の需要者の間で周知性を獲得していたとしても、その後の時間の経過
や原告の使用態様により、周知性を喪失していると主張する。
5 しかしながら、上記①について、前記1に認定したところに照らせば、原
告表示は、前記1⑴のような事業活動の主体、商品やサービスの販売又は提
供主体が原告であることを示す営業表示であると認められ、商品等表示の特
定を欠くものとはいえない。
上記②③について、原告の商品又はサービスの直接的な需要者は、基幹業
10 務システム及びソフトウェアを利用する企業等であるが、原告の宣伝広告が
経済ニュース、経済紙、専門紙等の専門的なメディアにとどまらず、天気予
報やスポーツ中継、全国紙や一般紙といった広範な視聴者層、読者層に届く
と考えられるメディアに多数回にわたって掲載され、野球場にも原告の広告
看板が試合の観戦者や視聴者らの目に触れる状態で設置されていたこと(前
15 記1⑶ア、ウ、エ)等からすると、原告表示は、上記のような企業等の関係者
にとどまらず、一般の消費者の間で広く認識されていたと認めるのが相当で
ある。また、平成16年以降も原告の売上げは増加を続けており(同⑴)、上
記のような宣伝広告もそれ以前と同様に継続されていること(同⑶ア、ウ、
エ)からすると、現在までの間に原告表示の周知性が失われたということも
20 できない。
ウ したがって、原告表示は、原告の営業を示す表示として需要者の間に広く
認識されていたものと認められる。
⑵ 争点1-2(原告の表示と被告標章の類否)について
ア ある商品等表示が不競法2条1項1号所定の「他人の商品等表示」と類似
25 のものに当たるか否かについては、取引の実情の下において、取引者、需要
者が、両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を
全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断す
べきである(最高裁昭和57年(オ)第658号同58年10月7日第二小
法廷判決・民集37巻8号1082頁、最高裁昭和56年(オ)第1166
号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
5 イ 原告表示
原告表示からは、
「オービック」の外観、
「オービック」という称呼を生じ、
特段の観念を生じない。
ウ 被告標章との類否
(ア) 被告標章1及び2
10 被告標章1は、
「Orbic」という文字の標章であり、英語読みの場合
には、「O」、「R」、「子音」の順の英単語は「ɔːr」と発音されること
が多いから、一般的には「オービック」という称呼を生じ(甲20等)、
「オ
ルビック」という称呼も生じ得る(甲16の6の2等)。また、被告標章2
は、別紙被告標章目録記載2のとおり一部がデザイン化されているものの、
15 「Orbic」という文字が十分に認識可能であるから、被告標章1と同
様の称呼を生じる。
原告表示と被告標章1及び2を対比すると、いずれも「オービック」と
いう同一の称呼を生じるものであり、また、いずれも観念が生じない点で
共通する。被告標章1及び2につき「オルビック」という称呼を生じ得る
20 としても、
「オ」、
「ビック」は共通であって、その違いは、
「オ」の次に「ル」
が付くかどうかにすぎないから、この場合の称呼も類似する。
そして、携帯情報端末や周辺機器、ソフトウェアの需要者において、
「O
rbic」の文字を含む被告標章1及び2に接した場合に、アルファベッ
トとカタカナという違いがあったとしても、同一又は類似の称呼を有する
25 原告表示を連想することは十分に考えられるから、被告標章1及び2は、
いずれも原告表示に類似するものと認められる。
(イ) 被告標章3ないし11
被告標章3ないし11は、①「Orbic」という文字と、②それに続
く「TAB8」
(同3)、
「TAB10R」
(同4)、
「Ear Buds」
(同
5)、
「FUN」
(同6)、
「Cloud」
(同7)、
「Gallery」
(同8)、
5 「TAB8 4G」
(同9)、
「TAB10R 4G」
(同10)及び「FUN
+ 4G」(同11)という文字によって構成される標章であるが、「Or
bic」以外の部分は、
「タブレット」の略語である「TAB」と型番を思
わせる数字や英字の組合せ(「TAB8」、
「TAB10R」)、通信規格(「4
G」)、イヤホン(「Ear Buds」)、インターネット上のアプリケーシ
10 ョンやサービスを意味する語(「Cloud」、
「Gallery」)、製品の
性質(「FUN」)などと理解され得るものであり、いずれも商品又は役務
の内容、性質等を記述的に記載したものというべきであるから、
「Orbi
c」の部分が需要者又は取引者に対してより強い印象を与えるものと認め
られる。
15 そして、原告表示と被告標章3ないし11を対比すると、両者は被告標
章3ないし11の冒頭の「Orbic」の部分において称呼が同一又は類
似であり、観念が生じない点で共通することは前記(ア)のとおりであるから、
被告標章3ないし11の末尾に付加部分があるとしても、共通点から生じ
る印象の強さが相違点から生じる印象の強さを上回り、需要者又は取引者
20 において、両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるという
べきである。
したがって、被告標章3ないし11は、いずれも原告表示に類似するも
のと認められる。
エ 被告は、原告表示と被告標章はいずれも類似しているとはいえないとし、
25 その理由として、①原告表示と被告標章は文字数や文字の相違等から外観が
大きく異なること、②被告標章2は特定の称呼が生じないこと、③被告標章
3ないし11は一気呵成に発音可能であり、原告表示の称呼とは全体の語調
や語感が大きく異なることなどを主張する。
しかしながら、原告表示と被告標章の文字数や文字の相違を踏まえても両
者の外観が類似すると認められること、被告標章2が「Orbic」という
5 文字として十分に認識可能であり、
「オービック」等の称呼を生じること、原
告表示と被告標章3ないし11の「Orbic」以外の部分に違いあるとし
ても類似性は左右されないことは前記ウ認定のとおりであって、被告の上記
主張は採用することができない。
⑶ 争点1-3(混同を生じさせる行為の有無)について
10 ア 不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には、他人の周知の商品
等表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一の商品
主体又は営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会
社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商
品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為をも包含す
15 ると解される(最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小
法廷判決・集民189号857頁、最高裁昭和56年(オ)第1166号同
59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。
イ そこで、原告表示と類似する被告標章を被告商品等の商品等及び広告等に
付す被告の行為(前記前提事実⑶イ及びウ)が混同を生じさせる行為といえ
20 るかについてみると、原告表示は、基幹業務システム及びソフトウェアの事
業に関する原告の営業を示す表示であるのに対し、被告商品等は、一般の消
費者を対象とするスマートフォン、タブレット型携帯情報端末、イヤホン、
アプリケーション及びコンピュータソフトウェアである(弁論の全趣旨)と
ころ、原告の提供する基幹業務システム及びソフトウェアは、インターネッ
25 トを経由してスマートフォンやタブレット型携帯情報端末からも利用可能で
あるから(前記1⑴)、原告の営業の内容と被告商品等とは技術的及び経済的
な関連性が認められる。そして、原告表示が、基幹業務システム及びソフト
ウェアを利用する企業等の関係者にとどまらず、一般の消費者の間で広く認
識されていたことは前記⑴のとおりである。以上によれば、原告表示と類似
する被告標章を被告商品等の商品等及び広告等に付せば、需要者又は取引者
5 において、被告商品等の販売・提供の主体が原告や原告と緊密な営業上の関
係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存する者であ
ると誤信するおそれがあるといえる。
よって、被告の上記行為は、「混同を生じさせる行為」(不競法2条1項1
号)に当たるといえる。
10 ウ 被告は、原告表示が使用されている原告の商品及びサービスの需要者は、
大企業における大規模なシステム導入に関与するシステム担当者や役員に限
定されているのに対し、被告商品等の需要者は、一般の消費者、それも初め
てスマートフォンを使用するユーザーであり、需要者は重ならないと主張す
る。
15 しかしながら、被告商品等の需要者がスマートフォン等を使用する一般の
消費者であるとしても、そこには基幹業務システム及びソフトウェアを利用
する企業等の関係者も含まれるから、スマートフォン等を使用する消費者と
いう点で共通しており、需要者が重ならないということはできない。
⑷ 争点1-4(営業上の利益を侵害されるおそれの有無)について
20 前記⑴ないし⑶に説示したところによれば、被告による被告標章の使用は不
正競争に当たる。なお、被告標章3、4及び6の使用は認められない(前記前
提事実⑶イ(キ)及びウ(キ))が、被告が、これらの標章の末尾に「4G」ないし
「+ 4G」を付加した被告標章9ないし11をスマートフォン及びタブレッ
ト型携帯情報端末の商品等及び広告等に付して使用しているから、被告標章3、
25 4及び6についても、被告標章9ないし11と同様の態様でスマートフォン及
びタブレット型携帯情報端末の商品等及び広告等に付すおそれがあるといえる。
また、未発売の被告商品3(同イ(カ))について、将来、被告標章5を商品の包
装に付して、販売し、引き渡し、販売若しくは引渡しのために展示し、又は輸
入されるおそれがあるといえる。
そして、被告商品1ないし4はそれぞれ商品役務目録記載1ないし4の商品
5 であり、被告役務は同目録記載5の役務であるから、別紙請求目録「番号」1
ないし6の「標章」欄記載の標章を「対象」欄記載の対象に付したものについ
ての「行為」欄記載の行為により、原告の営業上の利益を侵害されるおそれが
あり、また、同目録「番号」7ないし12の「標章」欄記載の標章を同「対象」
欄記載の商品若しくは役務に関する広告(パンフレット)若しくは取引書類に
10 付して、引き渡し、展示し、又は、これらを内容とする情報に同標章を付して、
電磁的方法により提供することにより、原告の営業上の利益を侵害されるおそ
れがあるといえる(不競法3条1項)。
また、抹消請求については、被告が被告商品等に使用する限度(前記前提事
実⑶イ及びウ)で抹消を認めるのが相当である。
15 ⑸ 小括(争点1)
よって、不競法3条1項に基づく商品等及び広告等への被告標章の使用の差
止めは理由があり、同条2項に基づく抹消請求は主文3項及び5項の限度で理
由がある。
3 争点2(被告商号の使用の差止め及び抹消登記手続請求の成否)について
20 ⑴ 原告表示は、原告の営業を示す表示として需要者の間に広く認識されていた
ものと認められる(前記2⑴)から、原告表示と被告商号の類否を検討すると、
被告商号の「合同会社」や「Japan」は会社の形態や日本の会社であるこ
とを記述的に記載する部分であり、需要者又は取引者に対してより強い印象を
与えるのは「Orbic」の部分であると認められるところ、原告表示とこの
25 「Orbic」の部分において称呼が同一又は類似であり、観念が生じない点
で共通し、
「合同会社」や「Japan」の部分に違いがあるとしても、その共
通点から生じる印象の強さが相違点から生じる印象の強さを上回り、需要者又
は取引者において、両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあると
いうべきであることは前記2⑵と同様である。
したがって、被告商号は、原告表示に類似するものと認められる。
5 ⑵ また、原告の事業の内容、被告の事業の内容に照らせば、被告が原告表示と
類似する被告商号を使用することにより、需要者又は取引者において、被告商
号を使用する営業主体が原告や原告と関連を有する会社であるとの混同を生じ
させるおそれがあり、被告商号の使用は「混同を生じさせる行為」
(不競法2条
1項1号)に当たる。
10 ⑶ したがって、被告による被告商号の使用(前記前提事実⑶エ)は不正競争(不
競法2条1項1号)に当たり、原告の営業上の利益が侵害されるおそれがある
(同法3条1項)ということができる。
⑷ よって、不競法3条1項及び2項に基づく被告商号の使用の差止め及び抹消
登記手続請求は理由がある。
15 4 争点3(営業上の施設又は活動における被告標章の使用の差止請求の成否)に
ついて
前記2のとおり、被告は、原告の周知の商品等表示である商号の略称と類似す
る被告標章及び被告商号を使用し、これは不正競争(不競法2条1項1号)に当
たる。これによれば、その使用態様に照らし、将来、営業上の施設又は活動に被
20 告標章を使用することによって原告の営業上の利益が侵害されるおそれ(同法3
条1項)があるということができる。
よって、不競法3条1項に基づく営業上の施設又は活動における被告標章の使
用の差止請求は理由がある。
5 争点4(営業上の施設又は活動における「ORBIC」又は「Orbic」の
25 文字を含む標章及び商号の使用の差止請求の成否)について
原告は、被告が営業上の施設又は活動に「ORBIC」又は「Orbic」の
文字を含む標章及び商号を使用して原告の営業上の利益を侵害するおそれがある
と主張する。
しかしながら、前記2及び3の不正競争の内容(被告標章及び被告商号の使
5 用)を踏まえても、被告が「ORBIC」又は「Orbic」の文字を含む標章
及び商号を使用するおそれがあると直ちには認め難く、そのようなおそれがある
ことを示す具体的な事実関係も示されていない。また、「「ORBIC」又は「O
rbic」の文字を含む」標章及び商号として特定される差止めの対象は極めて
広範であり、原告表示と類似であるといえない標章及び商号を含むものといえ
10 る。
そうすると、「ORBIC」又は「Orbic」の文字を含む標章及び商号に
ついては、差止めの必要性を認めることができない。
よって、不競法3条1項に基づく営業上の施設又は活動における「ORBI
C」又は「Orbic」の文字を含む標章及び商号の使用の差止請求は理由がな
15 い。
第4 結論
以上によれば、原告の請求は主文掲記の限度において理由があるからこれらを
認容し、その余の請求は理由がないからこれらを棄却することとして、主文のと
おり判決する。なお、主文第3項、第5項及び第7項の仮執行宣言は、相当では
20 ないので、これを付さない。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 髙 橋 彩
裁判官 西 山 芳 樹
裁判官 瀧 澤 惟 子
(別紙)
被告標章目録
1 Orbic
5 2
3 Orbic TAB8
4 Orbic TAB10R
5 Orbic Ear Buds
6 Orbic FUN
10 7 Orbic Cloud
8 Orbic Gallery
9 Orbic TAB8 4G
10 Orbic TAB10R 4G
11 Orbic FUN + 4G
15 以 上
(別紙)
請求目録
番号 標章(別紙被 対象 行為 URL
告標章目録記
載の各番号)
1 1 別紙商品役務目録記載 販売、引渡し、 −−−−−−
1、2及び4の商品の 販売若しくは引
包装 渡しのための展
示、輸入、又は
電気通信回線を
通じて提供
2 2 同目録記載1ないし4 同上 −−−−−−
の商品及びその包装
3 3、4、9及 同目録記載2の商品の 販売し、引き渡 −−−−−−
び10 包装 し、販売若しく
は引渡しのため
に展示し、又は
輸入
4 5 同目録記載3の商品の 同上 −−−−−−
包装
5 6及び11 同目録記載1の商品の 同上 −−−−−−
包装
6 7及び8 同目録記載4の商品 電気通信回線を −−−−
通じて提供
7 1及び2 同目録記載1ないし5 −−−−−−― 別紙URL目録
の商品及び役務 記載1ないし5
のウェブサイト
8 3及び9 同目録記載2の商品 −−−−―― 同目録記載1、
2及び4のウェ
ブサイト
9 4及び10 同目録記載2の商品 ―――― 同目録記載1、
2及び5のウェ
ブサイト
10 5 同目録記載3の商品 ―――― 同目録記載1及
び2のウェブサ
イト
11 6及び11 同目録記載1の商品 ―――― 同目録記載1な
いし3のウェブ
サイト
12 7及び8 同目録記載4及び5の ―――― 同目録記載1及
商品及び役務 び2のウェブサ
イト
以 上
(別紙)
商品役務目録
1 スマートフォン
5 2 タブレット型携帯情報端末
3 イヤホン
4 コンピュータソフトウェア用アプリケーション
5 クラウドコンピューティング用のコンピュータソフトウェアの提供
以 上
(別紙)
URL目録
(以下、URLは省略)
5 1 被告公式ウェブサイト
2 被告公式SNSアカウント
⑴ Facebook
10 ⑵ Instagram
⑶ YouTube
⑷ Linkedin
3 Orbic FUN + 4Gに係るECサイト
⑴ XPRICE
①
②
20 ⑵ コジマネット
①
②
⑶ Sofmap.com
①
25 ②
⑷ ビックカメラ.com
①
②
⑸ www.yodobashi.com
①
5 ②
⑹ Rakuten Bic
⑺ Rakuten ブックス
①
10 ②
⑻ EcCrew
4 Orbic TAB8 4Gに係るECサイト
⑴ amazon.co.jp
⑵ ECJOY!
⑶ XPRICE
20 ⑷ ビックカメラ.com
⑸ www.yodobashi.com
⑹ Rakuten ブックス
⑺ EcCrew
5 Orbic TAB10R 4Gに係るECサイト
⑴ amazon.co.jp
5 ⑵ ECJOY!
⑶ ビックカメラ.com
⑷ www.yodobashi.com
⑸ Rakuten ブックス
以 上
(別紙)
主文目録
番号 標章(別紙被 対象 URL
告標章目録記
載の各番号)
2 2 別紙被告商品役務目 −−−−−−
録記載1ないし4の
商品及びその包装
7 1及び2 同目録記載1ないし 別紙URL目録記載1ないし5のウ
5の商品及び役務 ェブサイト
8 9 同目録記載2の商品 別紙URL目録記載1、2及び4の
ウェブサイト
9 10 同目録記載2の商品 別紙URL目録記載1、2及び5の
ウェブサイト
10 5 同目録記載3の商品 別紙URL目録記載1及び2のウェ
ブサイト
11 11 同目録記載1の商品 別紙URL目録記載1ないし3のウ
ェブサイト
12−1 7 同目録記載4⑴の商 別紙URL目録記載1及び2のウェ
品及び5⑴の役務 ブサイト
12−2 8 同目録記載4⑵の商 同上
品及び5⑵の役務
以 上
(別紙)
被告商品役務目録
1 商 品 名 Orbic FUN + 4G
5 販売開始時期 令和5年9月13日
2⑴ 商 品 名 Orbic TAB8 4G
販売開始時期 令和5年9月22日
⑵ 商 品 名 Orbic TAB10R 4G
販売開始時期 令和5年11月29日
10 3 商 品 名 Orbic Ear Buds
販売開始時期 未発売
4⑴ 商 品 名 Orbic Cloud
販売開始時期 令和5年6月1日
⑵ 商 品 名 Orbic Gallery
15 販売開始時期 令和5年11月22日
5⑴ 役 務 名 Orbic Cloud
提供開始時期 令和5年6月1日
⑵ 役 務 名 Orbic Gallery
提供開始時期 令和5年11月22日
20 以 上
(別紙)
登記目録
東京法務局新宿出張所
5 会社法人等番号
商 号 Japan Orbic合同会社
本 店
会社成立の年月日 令和4年3月1日
資 本 金 の 額
10 以 上
(別紙)
商標権目録
1 登 録 番 号 第2267160号
5 出 願 年 月 日 昭和62年9月3日
登 録 年 月 日 平成2年9月21日
存続期間の更新登録 令和2年9月8日
登 録 商 標
商品及び役務の区分 第9類
10 指 定 商 品 電子応用機械器具及びその部品、電気通信機械器具、その
他本類に属する商品
2 登 録 番 号 第2267161号
出 願 年 月 日 昭和62年9月3日
登 録 年 月 日 平成2年9月21日
15 存続期間の更新登録 令和2年9月8日
登 録 商 標
商品及び役務の区分 第9類
指 定 商 品 電子応用機械器具およびその部品、電気通信機械器具、そ
の他本類に属する商品
20 3 登 録 番 号 第3254140号
出 願 年 月 日 平成6年4月8日
登 録 年 月 日 平成9年1月31日
存続期間の更新登録 平成29年5月9日
登 録 商 標
商品及び役務の区分 第9類
5 指 定 商 品 電子応用機械器具およびその部品、電気通信機械器具、そ
の他本類に属する商品
4 登 録 番 号 第4585946号
出 願 年 月 日 平成13年2月22日
登 録 年 月 日 平成14年7月19日
10 存続期間の更新登録 令和4年7月5日
登 録 商 標
商品及び役務の区分 第9類
指 定 商 品 電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、その
他本類に属する商品
15 以 上
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