ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和7(行ケ)10072 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和7年12月17日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告医療法人社団みなとあおば 被告Y |
| 法令 |
商標権 商標法3条1項4号9回 商標法4条1項11号8回 商標法4条1項10号8回 商標法3条1項6号8回 |
| キーワード | 審決26回 無効8回 無効審判4回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、愛知県安城市内において、 「あおば皮フ科クリニック」という名称 の診療所 (以下 「被告診療所」 という。 ) を開設している医師である。 |
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令和7年12月17日判決言渡
令和7年(行ケ)第10072号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年10月29日
判 決
原 告 医療法人社団みなとあおば
同訴訟代理人弁護士 山 本 友 也
被 告 Y
同訴訟代理人弁護士 山 谷 彰 宏
同 山 谷 奈 津 子
同 近 藤 沙 織
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2024-890033号事件について令和7年6月17日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 被告は、愛知県安城市内において、「あおば皮フ科クリニック」という名称の診療所(以下「被告診療所」という。)を開設している医師である。原告は、東京都港区内に「あおば皮フ科クリニック」及び「白金あおば皮フ科クリニック」という名称の診療所を開設している医療法人社団である。( 甲2、26、弁論の全趣旨)
⑵ 被告は、次の商標(以下「本件商標」という。)について、令和元年6月28日に商標登録を受けた(登録番号第6155848号)。(甲29~31)ア 商標の構成
5 あおば皮フ科クリニック (標準文字)イ 指定役務
第44類 医業
ウ 登録出願日 平成30年7月19日エ 登録査定日 平成元年5月20日オ 設定登録日 令和元年6月28日カ 登録番号 第6155848号
⑶ 原告は、令和6年6月25日、本件商標について商標登録無効審判を請求した(無効2024-890033号。以下「本件無効審判」という。)。
⑷ 特許庁は、令和7年6月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月27日に原告に送達された。
⑸ 原告は、令和7年7月24日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。
⑹ 原告は、本件無効審判において、本件商標の登録は、商標法3条1項4号、同項6号、同法4条1項10号又は同項11号に違反してされたものであるから、同法46条1項1号により無効にすべきものであると主張した。原告が、同法4条1項10号に該当すると主張して引用した標章は、次のア(ア)ないし(コ)のとおりであり(本件審決の第2の1〔審決書1、2頁〕に記載のとおり。以下、これらの標章を、ア(ア)ないし(コ)の各項に挙げたとおり、「使用標章1」ないし「使用標章10」という。)、いずれも「医業」について使用するものである。また、原告が、同項11号に該当すると主張して引用した商標は次のイ(ア)及び(イ)のとおりである(本件審決の第2の2〔審決書2、3頁〕に記載のとおり。以下、これらの商標を、イ(ア)及び(イ)の各項に記載のとおり、「引用商標1」、「引用商標2」という。)。ア 商標法4条1項10号に該当するとして引用する標章
5 (ア) 使用標章1a 標章の構成 あおば皮膚科クリニックb 標章の使用者 医療法人社団陽和会(イ) 使用標章2a 標章の構成 あおば皮ふ科b 標章の使用者 医療法人社団あおば会(ウ) 使用標章3a 標章の構成 医療法人あおばクリニックb 標章の使用者 医療法人あおばクリニック(エ) 使用標章4a 標章の構成 あおば内科クリニックb 標章の使用者 医療法人あおば内科クリニック(オ) 使用標章5a 標章の構成 医療法人社団泰晴会あおばこどもアレルギークリニックb 標章の使用者 医療法人社団泰晴会(以下、後記使用標章6ないし10につき、標章の使用者は使用標章5の使用者と同じ。)(カ) 使用標章6標章の構成 あおば眼科クリニック(キ) 使用標章7標章の構成 医療法人社団泰晴会あおば内科・総合診療クリニック(ク) 使用標章8標章の構成 医療法人社団泰晴会あおば眼科西新井駅クリニック(ケ) 使用標章9標章の構成 医療法人社団泰晴会五反野あおば眼科クリニック(コ) 使用標章10
5 標章の構成 医療法人社団泰晴会竹ノ塚あおば眼科クリニックイ 商標法4条1項11号に該当するとして引用する商標(ア) 引用商標1a 商標の構成b 指定役務
第44類 医業、医療情報の提供、健康診断、調剤、栄養の指導、
あん摩・マッサージ及び指圧、カイロプラクティック、きゅう、柔道整復、はり、介護c 登録出願日 平成21年9月29日d 設定登録日 平成22年2月26日e 登録番号 第5303913号(イ) 引用商標2a 商標の構成横浜青葉デンタルクリニック (標準文字)b 指定役務
第44類 歯科医業、医療情報の提供、栄養の指導
c 登録出願日 平成29年9月22日d 設定登録日 平成30年6月1日e 登録番号 第6048599号2 本件審決の理由の要旨
5 本件審決の理由の要旨は以下のとおりである。
⑴ 商標法3条1項4号該当性について著名な地理的名称やありふれた氏に業種名や会社の種別、屋号に慣用的に用いられる文字等を結合し、普通に用いられる方法で表示したものは、特定人による独占的使用になじまず、かつ、その表示だけでは自他識別力を欠くものというべきであるから、特段の事情のない限り「ありふれた名称」に当たると解するのが相当である。本件商標の構成中「皮フ科クリニック」の文字部分は、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」ほどの意味を表すものであって、「○○クリニック」(「○○」の部分は診療科の名称)の表示は、医業に関する分野において、業種名を表すものとして一般に慣れ親しまれているものである。一方、「あおば」の文字部分は、同音異義語として「青葉」及び「青羽(青翅)」(鳥や昆虫の青い羽。)が辞書上(広辞苑第七版)に掲載されているものの、「青葉」を表したものと理解されるというのが自然であるところ、「青葉」の文字は、「緑色の、若葉、新緑」などの辞書上の意味合いのほか、姓氏(名字)として使用される場合、あるいは、地名(またはその地名等の一部)に使用される場合があることなどから、その読みを表す平仮名「あおば」の文字のみをもって、いずれの意味合いで使用されているものであるか、直ちに認識させるものであるとはいえない。したがって、本件商標中の「あおば」の文字部分が地名を表すものであると直ちに理解されるものではない。また、「あおば」の文字部分が、「青葉」の姓氏を平仮名で表したものと理解される場合があるとしても、「青葉」の姓氏は、「全国順位」が5492位であって、「全国人数」もおよそ1800人程度であることから、「青葉」は、姓氏としてありふれたものであるとはいえない。したがって、本件商標中の「あおば」の文字部分は、ありふれた氏(姓氏)
5 を表したものであるとはいえない。そうすると、本件商標は、著名な地理的名称やありふれた氏に業種名や会社の種別、屋号に慣用的に用いられる文字等を結合したものであるとはいえないことから、「ありふれた名称」にあたるとはいえず、商標法3条1項4号に該当しない。
⑵ 商標法3条1項6号該当性について本件商標の構成中、「あおば」の文字部分は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する語であると理解されるところ、「医業」との関係において、その役務の質等を表すものではないことから、自他役務の出所識別標識としての機能を発揮し得る部分であるといえる。「あおば」の文字及びこれに通ずる「青葉」の文字が、医療機関等の名称の一部に使用されていることがうかがえるとしても、請求人により提出された証拠(甲1)からは、「あおば(青葉)」の文字に他の文字が結合されたものがほとんどであって、「あおば(青葉)」の文字のみが単独で名称として多数使用されているとはいえず、さらに、本件商標とほぼ同一の構成といえる「あおば皮フ科クリニック」、「あおば皮ふ科クリニック」及び「あおば皮膚科クリニック」の名称の使用例は少数であって、医業の分野において、これら同一の構成からなる名称が一般的に使用されているとはいえないことから、本件商標は、全体として自他役務の出所識別標識としての機能を発揮し得るものである。そうすると,本件商標は、これをその指定役務「医業」について使用しても、役務の出所識別標識としての機能を果たし得るものというべきであるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるとはいえず、商標法3条1項6号に該当しない。
⑶ 商標法4条1項10号該当性について使用標章3については、請求人(原告)からは、同標章が医療法人あおば
5 クリニックの業務(医業)に係る役務を表示するものとして使用されている実情を示す証拠が提出されておらず、これがどの程度の数及び範囲の需要者に認識されていたのか推し量ることはできない。使用標章1、2及び4ないし10については、当該標章を名称として使用する医療機関における来院者の数やその居住地、広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が不明であることから、本件商標の出願時及び査定時において、これらの商標がどの程度の数及び範囲の需要者に認識されていたのか推し量ることはできない。また、「医業」に関する需要者は、広く一般の需要者を含むものであって、本件商標の出願時及び査定時において、使用標章1、2及び5ないし10については、各医療機関の所在する都県を含む関東圏において、使用標章4については愛知県を含む中部地方において、上記各使用標章が、各使用標章の使用者(前記1⑹ア)の業務(医業)に関する役務を表示するものであると相当程度の需要者に知られていたとは認められない。以上のとおり、医業の分野における使用標章1ないし10の使用によっても、本件商標の出願時及び査定時に、使用標章1ないし10が他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものであると認めることができないから、他の要件を判断するまでもなく、本件商標は、商標法4条1項10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ず、同号に該当しない。
⑷ 商標法4条1項11号該当性についてア 本件商標と、引用商標1の要部である「AOBA MENTALCARE CLINIC」の欧文字及び「青葉こころのクリニック」の文字部分とは、観念において比較できないものの、外観においては明確に区別でき、称呼において明瞭に聴別できるものである。また、本件商標と、引用商標1の要部となり得る図形部分とを比較すると、称呼及び観念は比較できないものの、外観においては明確に区別でき
5 るものである。したがって、本件商標と引用商標1とは、両商標の外観、称呼、観念が与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は相紛れるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。イ 本件商標と、引用商標2とは、観念において比較できないものの、外観においては明確に区別でき、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、両商標が与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は相紛れるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。ウ したがって、本件商標と引用商標1、2とは相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標1、2の指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は商標法4条1項11号に該当しない。3 取消事由
⑴ 取消事由1商標法3条1項4号該当性についての判断の誤り
⑵ 取消事由2商標法3条1項6号該当性についての判断の誤り
⑶ 取消事由3商標法4条1項10号該当性についての判断の誤り
⑷ 取消事由4商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り
第3 取消事由に関する当事者の主張
1 取消事由1(商標法3条1項4号該当性についての判断の誤り)について
〔
(原告の主張)
〕商標審査基準によると、著名な地理的名称、ありふれた氏、業種名等やこれらを結合したものに、商号や屋号に慣用的に付される文字や会社等の種類名を
5 表す文字等を結合したものは、原則として、「ありふれた名称」に該当すると判
断するとされ、また、ありふれた氏又は名称をローマ字又は仮名文字で表示するものは、「普通に用いられる方法で表示する」ものに該当すると判断するとされている(商標審査基準 第1-六)。「あおば」に関し、「青葉」、「青葉町」、「青葉台」という地名は、「青葉」という青々と茂った木の葉を意味する一般名詞からくる若々しくさわやかな印象や、柔らかく親しみやすい語感、3音と短く言いやすいことなどから、日本中に広く地名として存在している。特に、仙台市青葉区、横浜市青葉区は、政令指定都市の区名であって、全国的に著名な地名である。中でも、仙台市における「青葉」の地名は、街の象徴である仙台城の別名「青葉城」、青葉城が鎮座する「青葉山」、中心部の大通りである「青葉通」、中心部にある地下鉄の「あおば通駅」、多くの観光客を集める「仙台青葉まつり」などにより、全国的に極めて著名となっている。また、「青葉」ないし「あおば」という言葉は、人の姓や名としても広く使われている言葉である。したがって、本件商標は、「あおば」という著名な地理的名称ないし人名に、「皮フ科」という業種名と、「クリニック」という診療所の名称として広く使用されている一般名詞を組み合わせたにすぎず、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法3条1項4号に該当する。〔
(被告の主張)
〕著名な地理的名称につき、原告は、「あおば」や「青葉」等の地名が存在することを主張するにすぎず、平仮名の「あおば」の文字のみで地名の意味合いで使用されていることを直ちに認識させることができるとする理由は明らかでない。仮に、平仮名の「あおば」の文字のみで地名の意味合いで使用されているこ
5 とを直ちに認識させることができたとして、
「あおば」、「青葉」は、著名な地理的名称ではない。商標審査基準では、著名な地理的名称の例として「日本」、「東京」、「薩摩」、「フランス」が挙げられているところ、「あおば」、「青葉」がこれらの例と同じレベルでないことは一見して明らかである。そもそも、原告の指摘するとおり、「青葉」という地名が付けられている場所が全国的に複数あるのであれば、「青葉」では特定の場所を想定することすらできず、およそ著名とはいいがたい。また、「あおば」がありふれた氏であるとも認められない。このように、「あおば」が著名な地理的名称でも、ありふれた氏でもないため、これに「皮フ科」や「クリニック」という業種名を結合したとしても、ありふれた名称にはならず、本件商標は商標法3条1項4号に該当しない。
2 取消事由2(商標法3条1項6号該当性についての判断の誤り)について
〔
(原告の主張)
〕
⑴ 商標法3条1項6号について、商標審査基準によると、
「商標が国内外の地理的名称として認識される場合」や、「商標が、指定役務において店名として多数使用されていることが明らかな場合」に本号に該当するとされている。
⑵ 前記1〔
(原告の主張)
〕のとおり、「あおば」ないし「青葉」は、地理的名称として認識されている。これについては、「あおば」ないし「青葉」を名称に用いる医業、歯科医業、薬局計594施設のうち、125施設が神奈川県に、48施設が宮城県に存在することからも明らかである。したがって、本件商標は商標法3条1項6号に該当する。
⑶ 「あおば」ないし「青葉」という言葉は、
「青葉」という青々と茂った木の葉を意味する一般名詞からくる若々しくさわやかな印象や、柔らかく親しみやすい語感、3音と短く言いやすいことなどから、様々な業種の店舗、事務所、施設等で用いられている。甲1は、全国の地方厚生局において保険医療機関として登録されているも
5 のを対象に、医療機関、歯科医、薬局について「あおば」ないし「青葉」の
名称を含むものを調査した結果であり、これによると、日本国内において、医療機関の名称に「あおば」を用いるものが100施設、「青葉」を用いるものが81施設、計181施設も存在する。被告が主張する開業日である平成24年6月6日よりも以前より保険医療機関として指定されていた医療機関のうち現存するものだけを数えても、「あおば」は35施設、「青葉」は48施設、計83施設も存在し、これに歯科医や薬局を加えるとその数は319施設にのぼる。甲3は、「あおば」が名称に入る法人登記(商業登記を除く。)を抽出したものであり、これによると、「あおば」が名称に入る法人(会社はこれに入らない。)の数は全国で143にのぼり、うち34法人が医療法人である。以上のとおり、「あおば」ないし「青葉」は医業において極めて多数使用されている。本件審決は、前記第2の2⑵のとおり判断した。しかし、上記のとおり、全国に「あおば」ないし「青葉」を用いる病院・診療所が181施設存在し、これらがほぼ全て地元では「あおば(青葉)クリニック」、「あおば(青葉)病院」、「あおば(青葉)医院」などと略称されていることとなる。そして、診療科名は、複数の診療科の診療所を経営する病院グループも多く存在するから、消費者には同系列と受け止められるものであって、診療科を含めて判断すべきではない。また、甲1について、皮膚科に限定し、かつ、「青葉台」などといった地名として「あおば(青葉)」を用いているものを除外しても、その数は40を超える。以上のとおり、医業の分野において、これら同一の構成からなる名称が一般的に使用されており、「商標が、指定役務において店名として多数使用されていることが明らか」であるから、本件商標は、全体として自他役務の出所
5 識別標識としての機能を有さず、商標法3条1項6号に該当する。
〔
(被告の主張)
〕
⑴ 原告は、本件商標について、
「あおば」が国内外の地理的名称として認識される場合に当たると主張するが、前記1〔
(被告の主張)
〕のとおり、平仮名の「あおば」の文字のみで地名の意味合いで使用されていることを直ちに認識させることができるとする理由が明らかでなく、本件審決の判断に対する反論となっていない。
⑵ 原告は、
「あおば」ないし「青葉」の名称が医業を含めた様々な業種に使用されていることから、店名として多数使用されていることが明らかな場合に当たると主張するが、「あおば」という名称が「医業」との関係においてその役務の質等を表すものであるなど、医業と直接結びつくような親和性をもっていることについては触れていないため、反論となっていない。また、原告は、名称を略称することを前提に、本件商標とほぼ同一の構成である名称の使用例が少数であることに対して反論しているが、医業において需要者にとっては取扱分野が極めて重要であるところ、診療科を省略して名称を略称する実態があるとは考えられない。本件商標の設定登録日(令和元年6月28日)に近い同月末の医療施設(歯科診療所及び薬局を除く。)の数は11万0766施設であり(乙3)、仮にそのうちの83施設に「あおば」又は「青葉」が使用されていたとしても、割合はわずか約0.0749%であり、およそ指定役務において店名として多数使用されているとはいえない。加えて、甲1は、無効理由の基準時とは異なる令和6年5月1日現在の医療機関に関する資料であり、かつ、「○○薬局青葉店」など、「あおば」、「青葉」が施設の名称として使用されているといえないことが明らかなものまで含まれており、資料として適切でない。
3 取消事由3(商標法4条1項10号該当性についての判断の誤り)について
5 〔
(原告の主張)
〕前記2〔
(原告の主張)
〕⑶のとおり、本件商標と類似する商標・標章は多数存在するが、使用標章1ないし10は、一地方で被告の開業以前より広く認識されている標章であり、本件商標はこれらと同一ないし極めて類似している。使用標章1ないし10が使用されている医療機関は、いずれも、被告が主張する開業日である平成24年6月6日より前から開設されており、これらの標章は同日より前から使用されている。使用標章1は、本件商標とは、診療科である皮膚科の「膚」の文字を片仮名にするか漢字にするかの違いしかなく、ほぼ同一である。使用標章2は、本件商標とは、平仮名の「ふ」と片仮名の「フ」の違いしかない。「クリニック」の語の有無も異なるが、「クリニック」は診療所を意味する単語にすぎず、診療所であることは名前から明らかであるから、実質的な差異はない。使用標章3及び4が使用されている医療機関は、いずれも内科であって、被告の医療機関と診療科が異なるが、同じく医業を展開する「クリニック」であって「あおばクリニック」と略称される点においては被告の医療機関と共通しており、強い類似性がみられる。特に、使用標章4が使用されている医療機関は、被告と同じ愛知県三河地方である愛知県蒲郡市に所在するから、需要者の地域も共通している。使用標章5ないし10は、同じ法人によって運営されており、「あおばクリニック」グループと呼べるほどの地位を、東京都足立区及びその周辺において築いている。本件商標は、使用標章5ないし10を開設した法人によって開設された皮膚科クリニックであると誤認されるほどの類似性を有している。また、被告の医療機関はアレルギー科も診療科として挙げているところ、使用標章5が使用された医療機関と診療科名も重複している。以上によれば、本件商標は、商標法4条1項10号に該当する。
5 〔
(被告の主張)
〕原告は、使用標章1ないし10を使用していた施設が開院していたとか、ホームページを開設していたことを示す証拠を提出するにとどまり、これらの標章が需要者の間に広く認識されていることを証明する証拠は提出されていない。したがって、使用標章1ないし10が、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるとはいえない。
4 取消事由4(商標法4条1項11号該当性についての判断の誤り)について
〔
(原告の主張)
〕本件商標に類似する先願に係る他人の商標として、引用商標1及び2の二つの商標が存在する。いずれも、略称の音は「アオバクリニック」となり、呼称は類似している。そして、引用商標1の指定役務は「医業」であり、本件商標の指定役務と同一である。引用商標2の指定役務も「医業」に隣接する「歯科医業」を含むほか、「医療情報の提供」や「栄養の指導」は被告の「医業」にも当然含まれるものであり、重複している。以上の二つの商標の設定登録日は、本件商標の設定登録日より前である。したがって、本件商標は商標法4条1項11号に該当する。(判決注:原告は、商標法4条1項11号該当性に関して、本件商標と引用商標1及び2との外観及び観念の類否については、主張していない。)〔
(被告の主張)
〕本件審決は、本件商標と引用商標1及び2とは、外観、称呼について明確に区別ができること、「アオバクリニック」との略称が一般の需要者に認識されているとの特段の事情がないこと等を理由に、本件商標と引用商標1及び2とは非類似の商標であると判断したが、原告は、本件訴訟で、上記判断に対して特に反論しておらず、「アオバクリニック」との略称が一般の需要者に認識されていることの証明もされていない。したがって、本件商標と引用商標1及び2に
5 ついて、出所混同のおそれがあるとはいえず、両者は非類似の商標である。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法3条1項4号該当性についての判断の誤り)について
⑴ 本件商標の構成等及びこれに基づく判断ア 本件商標は、「あおば皮フ科クリニック」の文字を標準文字で表してなるものである。本件商標の指定役務は第44類「医業」であり、本件商標の指定役務の需要者は、医業による治療を受けており又はこれを受ける可能性のある一般の消費者であると認められる。イ 本件商標の構成中の「あおば」の文字部分に関し、広辞苑第七版には「あおば」に対応する語として、「青葉」のほか「青羽(青翅)」の語が掲載されているが(広辞苑第七版その他の辞書における用語の掲載及び用語の意味等の記載に関する本件審決の事実認定に不当な点は認められず、当事者もこの点に関する本件審決の事実認定を争っていないから、辞書における用語の掲載及び用語の意味等の記載に関しては、本件審決の認定に従う。以下同じ。)、「青羽(青翅)」の語は一般にはほとんど馴染みがないことから、本件商標の指定役務の需要者は、本件商標の構成中の「あおば」の文字は「青葉」を表したものと理解するといえる。「青葉」の文字は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する語であるが(広辞苑第七版)、このような辞書上の意味合いのほか、姓氏(名字)として使用される場合があり(乙1)、また、地名又は地名の一部に使用される場合がある。しかし、本件商標の構成中の平仮名の「あおば」の文字をもって、これが上記のいずれの意味合いで使用されているのか、明らかであるとはいえない。また、「青葉」の姓氏は、全国順位が5492位、全国人数が1800人程度にすぎず(乙1。乙1は「名字由来 net」というインターネット上の
5 記事を印刷した書面であり、乙1に係る証拠説明書の記載、及び乙1と同じく「名字由来 net」の記事を印刷した書面である乙2の記載内容に照らし、乙1は令和6年10月にインターネット上での検索及び印刷がされたものと認められる。)、「青葉」がありふれた姓氏であるとはいえないから、本件商標の構成中の「あおば」が姓氏として用いられているとしても、それはありふれたものとは認められない。さらに、「青葉」という地名又は「青葉」の語がその一部として使用されている地名が全国的に存在することは、原告が訴状において主張するとおりであるものの、「青葉」が特定の場所の地理的名称として著名なものであるとは認められないから、本件商標の構成中の「あおば」が地名として用いられているとしても、それは著名な地理的名称ではなく、ありふれた名称に当たらない。全国の病院、診療所、薬局(甲1)、法人(会社を除く。)(甲3)には、「あおば」又は「青葉」の名称を含むものがあるところ、そのうち、それらの施設等の所在地の地名に「青葉」が含まれるもの、開設者等の姓氏が「青葉」であるもの以外は、「あおば」又は「青葉」の名称が、「緑色の、若葉、新緑」などの辞書上の意味合いで用いられていると解する余地があり、そのような施設等は複数存在することが認められる。しかし、全国に存在する同種の施設(病院、診療所、薬局、法人(会社を除く。))の数に比して、そのような施設等の数の比率は少ないものと認められ(乙3によれば、歯科診療所及び薬局を除く医療施設だけでもその数は全国で11万を超えることが認められる。)、「あおば」との名称は、上記の辞書上の意味合いで用いられているとしても、ありふれた名称であるとは認められない。そうすると、本件商標の構成中の「あおば」は、ありふれた氏又は名称とは認められない。ウ 本件商標の構成中、「皮フ科」の文字部分は「皮膚科」の文字に通じる「皮
5 膚の疾患を研究・治療する医学の一分科」を意味する語であり、「クリニック」の文字部分は「診療所」の意味を有する語であって(いずれも広辞苑
第七版)、これらの意味を有する語であることは本件商標の指定役務の需
要者に容易に理解されるものである。そうすると、本件商標の構成中「皮フ科クリニック」の文字部分は、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」との意味を表すものとして本件商標の指定役務の需要者に理解されると認められる。そして、「皮フ科クリニック」の文字部分は、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」との意味を表すものとして一般に使用され得るものであるとしても、「あおば」という文字部分とともに使われる場合は、「あおば」という文字を名称に有する医療機関のうちで皮膚科の治療等を行う医療機関を指すことを意味し、その点で自他役務の識別機能に資するものと認められる。エ 上記イ及びウによれば、本件商標(「あおば皮フ科クリニック」)は、全体として、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとは認められず、本件商標が商標法3条1項4号に該当するとは認められない。
⑵ 原告の主張に対する判断原告は、前記第3の1〔原告の主張〕のとおり、本件商標は、「あおば」という著名な地理的名称ないし人名に、「皮フ科」という業種名と、「クリニック」という診療所の名称として広く使用されている一般名詞を組み合わせたにすぎず、ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である旨主張する。しかし、前記⑴で述べたところによれば、原告の上記主張は採用することができない。
⑶ 取消事由1に関する結論以上によれば、本件商標が商標法3条1項4号に該当しないとの本件審決
5 の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由1には理由がない。
2 取消事由2(商標法3条1項6号該当性についての判断の誤り)について⑴ 本件商標は、「あおば」の文字と「皮フ科クリニック」の文字とから成るものである。前記1⑴イのとおり、本件商標の構成中「あおば」の文字は、「青葉」を表したものと理解され、「青葉」の文字は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有するほか、姓氏(名字)として使用される場合、地名又は地名の一部に使用される場合がある。そして、「あおば」の文字は、本件商標の指定役務である医業の質等を表すなど、医業と密接な結び付きをもつ語であるとは認められない。そうすると、本件商標の構成中の「あおば」の文字は、上記のいずれの意味で用いられているとしても、役務を提供する特定の者(「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する「青葉」という言葉を名称とする者、「青葉」との姓氏(名字)を有する者、又は「青葉」という地名を有する場所に居る者)を示す表示として理解され、自他役務の出所識別機能を有するものと認められる。また、前記1⑴ウのとおり、本件商標の構成中「皮フ科クリニック」の文字部分は、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」との意味を表すものとして本件商標の指定役務の需要者に理解されると認められるが、「あおば」という文字部分とともに使われる場合は、「あおば」という名称を有する医療機関のうちで皮膚科の治療等を行う医療機関を指すことを意味し、その点で自他役務の識別機能に資するものと認められる。そうすると、本件商標は、全体として、自他役務の識別機能を有し、何人かの業務に係る役務であることを需要者に認識されるものと認められる。⑵ 原告は、前記第3の2〔原告の主張〕のとおり、「あおば」又は「青葉」が医業に関連する施設等の名称に多数使用されているから、本件商標は自他役務の出所識別機能を有さず、商標法3条1項6号に該当する旨主張する。
5 しかし、医業の役務の需要者にとって診療科が重要であることを考慮すると、本件商標が被告診療所の名称に用いられる場合のように、医療機関の名称に診療科名が含まれる場合に、その医療機関の略称として診療科名を含まないものが一般的に用いられるとは解されない。本件商標をその名称に用いた被告診療所についても、その略称は診療科名である「皮フ科」(皮膚科)が入る「あおば皮フ科」などとされるのが通常であると考えられ、診療科名を除いた「あおばクリニック」の略称が用いられることが通常であると認めるに足りる証拠はない。そうすると、「あおば」又は「青葉」をその名称に用いている医療機関が存在するとしても、診療科名をその名称に含まない医療機関や、皮膚科以外の診療科名が名称に含まれる医療機関については、その名称が本件商標である「あおば皮フ科クリニック」と混同を生じるとは解されない。したがって、仮に、原告が第3の2〔原告の主張〕において主張するとおり、「あおば」又は「青葉」をその名称に用いる医療機関が全国で181施設あるとしても、そのことをもって直ちに本件商標が自他役務の出所識別機能を有しないことにはならない。そして、甲1によれば、本件商標と同一又はほぼ同一の構成といえる「あおば皮フ科クリニック」、「あおば皮ふ科クリニック」、又は「あおば皮膚科クリニック」の名称の使用例は極めて少数であり、「あおば」又は「青葉」の語と「皮フ科」、「皮ふ科」又は「皮膚科」の診療科名の両方が名称に用いられているものも少ないと認められる。以上によれば、「あおば」又は「青葉」が医業に関連する施設等の名称に多数使用されているために、本件商標が自他役務の出所識別機能を有しないとはいえず、原告の上記主張は採用することができない。その他、原告の主張を検討しても、本件商標が自他役務の出所識別機能を有しないと解すべき事情は認められない。
5 ⑶ 取消事由2に関する結論以上によれば、本件商標が商標法3条1項6号に該当しないとの本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由2には理由がない。
3 取消事由3(商標法4条1項10号該当性についての判断の誤り)について⑴ 後記各項に掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、使用標章1ないし10について、以下の事実が認められる。ア 使用標章1「あおば皮膚科クリニック」(前記第2の1⑹ア(ア))は、医療法人社団陽和会(同b)が茨城県日立市内に開設している診療所の名称として用いられており、同診療所は皮膚科及びアレルギー科を診療科目としている。(甲4~6)イ 使用標章2「あおば皮ふ科」(前記第2の1⑹ア(イ))は、医療法人社団あおば会(同b)が横浜市青葉区内に開設している診療所の名称として用いられており、同診療所は皮膚科、アレルギー科、美容皮膚科及び形成外科を診療科目としている。(甲7~9)ウ 使用標章3「あおばクリニック」(前記第2の1⑹ア(ウ))については、「コード内容別医療機関一覧表」(甲11)に、名称を「医療法人あおばクリニック」とする医療機関が掲載されており、開設者は医療法人あおばクリニック(前記第2の1⑹ア(ウ)b)と記載され、医療機関所在地として記載されている場所は大阪市淀川区内の住所である。(甲10、11)エ 使用標章4「あおば内科クリニック」(前記第2の1⑹ア(エ))は、医療法人あおば内科クリニック(同b)が愛知県蒲郡市内に開設している診療所の名称として用いられており、同診療所は内科、腎臓内科、アレルギー科等を診療科目としている。(甲12~15)オ 使用標章5ないし10(前記第2の1⑹ア(オ)ないし(コ))については、「コード内容別医療機関一覧表」(甲18~23)に、上記各使用標章を名称とする医療機関(ただし、使用標章6「あおば眼科クリニック」に関し
5 ては「医療法人社団泰晴会あおば眼科クリニック」が名称とされている。)が掲載されており、開設者はいずれも医療法人社団泰晴会(前記第2の1⑹ア(オ)b)と記載され、医療機関所在として記載されている場所はいずれも東京都足立区内の住所である。(甲17~25)⑵ 上記⑴のとおり、使用標章1ないし10については、これらの標章をその名称とする医療機関が開設されていることが認められる。しかし、使用標章1ないし10のいずれについても、これらを使用する各医療機関に関し、その来院者の数やその居住地、広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等が、本件で提出された証拠からは何ら明らかではない。このため、本件商標の出願時及び査定時において、これらの標章がどの程度の数及び範囲の需要者に認識されていたのかを認定することができず、当該医療機関の存在する場所の周辺の住民に認識されているにとどまらず、医療機関の名称として需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。したがって、使用標章1ないし10のいずれについても、これが商標法4条1項10号の「他人の業務に係る・・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」に当たるとは認められず、本件商標が同号に該当するとも認められない。本件審決は、原告が審判段階で提出した資料からは使用標章1ないし10の周知性は立証されていないと判断したところ(前記第2の2⑶)、原告は取消事由3に関して前記第3の3〔原告の主張〕のとおり主張するものの、原告が本件訴訟で上記各使用標章の周知性について主張する内容は、本件無効審判の段階で主張した内容(本件審決の第3の2⑶〔審決書6~8頁〕に摘示された内容)の繰り返しにとどまり、原告の主張を検討しても、上記周知性に関する本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。⑶ 取消事由3に関する結論以上によれば、本件商標が商標法4条1項10号に該当しないとの本件審
5 決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由3には理由がない。
4 取消事由4(商標法4条1項11号該当性について)⑴ 判断基準商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品又は役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務の取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。⑵ 本件商標の構成等ア 外観本件商標は、「あおば皮フ科クリニック」を標準文字で表してなるところ、これらの文字を同書体、同大で、等間隔で一列で横書きにしてなるものである。イ 称呼上記アのとおり、本件商標は「あおば皮フ科クリニック」を同書体、同大で、等間隔で一列で横書きにしてなるものであるから、その文字全体から「アオバヒフカクリニック」の称呼を生ずる。ウ 観念前記1⑴イのとおり、「あおば」の文字部分は「青葉」を表したものと理解され、「青葉」の文字は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する語、姓氏又は地名としての意味を有し、役務を提供する特定の者を示す表示として理解される。また、前記1⑴ウのとおり、本件商標の構成中「皮フ科クリニック」の
5 文字部分は、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」との意味を表すものとして本件商標の指定役務の需要者に理解される。「あおば皮フ科クリニック」の文字は、構成文字の全体が辞書等に載録されているものではないが、本件商標は、上記の意味を有する「青葉」を平仮名で表した「あおば」の文字と、「皮膚の疾患の治療等を行う診療所」との意味を表す「皮フ科クリニック」の文字とを結合したものと認識され、「あおば」の文字が、本件商標の指定役務である医業の質等を表すなど、医業と密接な結び付きをもつ語であるとは認められないから、構成全体として、「『あおば皮フ科クリニック』という名称の皮膚科を診療科目とする特定の医療機関」との観念を生じる。⑶ 引用商標1の構成等ア 外観引用商標1の構成は、前記第2の1⑹イ(ア)aのとおりであり、図案化した木の葉又は樹木を描いた青色の図形と、その右上部分の、図案化した鳥を描いた黄色の図形(以下、これらの図形を併せて「引用1図形部分」という。)の下側に、「AOBA」の欧文字、「MENTALCARE CLINIC」の欧文字及び「青葉こころのクリニック」の文字をそれぞれ青色で3段に横書きしてなるものである(以下、これらの文字を併せて「引用1文字部分」という。)。引用1文字部分の文字のうち、2段目の「MENTALCARE CLINIC」の文字は、1段目及び3段目の文字に比しておよそ4分の1程度の大きさである。引用1図形部分と引用1文字部分は、相互に重なり合うことなく配置されており、それぞれが視覚上分離、独立した印象を与えるものである。イ 称呼引用1文字部分の構成中、1段目の「AOBA」の欧文字部分は、その文字から「アオバ」と発音されるものであり、「青葉」を表すものと理解さ
5 れる。また、2段目の「MENTALCARE」の文字部分は「メンタルケア」と発音される英語であり、「精神面での援助・介護」を意味する語であること、及び、「CLINIC」の文字部分は「クリニック」と発音する英語であり、「診療所」を意味する語であることは、一般的に理解されるものといえる。そうすると、引用1文字部分のうち1段目及び2段目の「AOBA MENTALCARE CLINIC」の文字部分は、3段目の「青葉こころのクリニック」の文字部分を英語で表したものと理解され、引用1文字部分は、「青葉こころのクリニック」の文字とそれを英語で表した「AOBA MENTALCARE CLINIC」の欧文字とを3段で表して配されたものと認識される。したがって、引用1文字部分は、「アオバメンタルケアクリニック」及び「アオバココロノクリニック」の称呼を生じる。引用1図形部分は、図案化した木の葉又は樹木の図形と、図案化した鳥の図形から成るところ、これに接する需要者が、具体的な植物又は鳥の品種名等を一見して明確に認識できる態様のものではないから、それに応じた特定の称呼が生じるものとは認めがたく、また、文字部分について上記のような特定の医療機関を示す称呼が生ずることから、それに加えて、図形部分から、ハ(葉)、キ(木)、トリ(鳥)などの一般的な名詞の称呼が生ずるとは考えがたい。以上によれば、引用商標1全体からは、引用1文字部分より生ずる「アオバメンタルケアクリニック」及び「アオバココロノクリニック」の称呼を生じるものと認められる。ウ 観念引用1文字部分につき、「MENTALCARE CLINIC(メンタルケアクリニック)」の文字は、上記イの「MENTALCARE」、「CLINIC」の文字が表す意味から、心療内科又は精神科の医療機関の名称
5 の一部として用いられるものと容易に理解され、「こころのクリニック」の文字についても、「こころ」に関する「クリニック」(診療所)を表すものであるから、心療内科又は精神科の医療機関の名称の一部として用いられるものと容易に理解される。そして、「青葉」又は「AOBA」が、医業の質等を表すなど、医業と密接な結び付きをもつ語であるとは認められないから、引用1文字部分の構成から、「『青葉こころのクリニック』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」及び「『AOBA MENTALCARE CLINIC』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」との観念を生じると認められる。引用1図形部分は、図案化した木の葉又は樹木の図形と、図案化した鳥の図形から成り、そこからは、葉又は樹木及び鳥の観念が生じる。以上によれば、引用商標1からは、「『青葉こころのクリニック』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」及び「『AOBA MENTALCARE CLINIC』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」との観念と、葉又は樹木及び鳥の観念が生じるものと認められる。
⑷ 引用商標2の構成等ア 外観引用商標2の構成は、前記第2の1⑹イ(イ)aのとおりであり、「横浜青葉デンタルクリニック」の文字を標準文字で表してなるものであって、これらの文字は、同書、同大、等間隔で、視覚上まとまりよく一体に表されているものである。イ 称呼引用商標2は、上記アのとおりの構成を有しており、その構成全体から「ヨコハマアオバデンタルクリニック」の称呼を生じる。ウ 観念
5 引用商標2の構成中、「横浜」の文字部分は、「神奈川県内の市。神奈川県の県庁所在地」の意味を有する語として認識される。また、「青葉」の文字部分は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する語、姓氏又は地名としての意味を有し、役務を提供する特定の者を示す表示として理解される。「デンタルクリニック」の文字部分は、「歯科医院」の意味を有する語である(三省堂「コンサイスカタカナ語辞典第5版」)から、歯科医院の名称の一部として用いられるものと容易に理解される。そして、「横浜」は、歯科医院の所在地を示す語であると理解され、「青葉」又は「AOBA」は、歯科医業の質等を表すなど、歯科医業と密接な結び付きをもつ語であるとは認められないから、引用商標2は、その構成の全体として、「横浜市内に存在する『横浜青葉デンタルクリニック』という名称の歯科を診療科目とする特定の医療機関」との観念を生じるといえる。
⑸ 本件商標と引用商標1の類否についてア 外観の比較本件商標の外観と引用商標1の外観とを比較すると、本件商標は文字のみからなる構成であるのに対し、引用商標1には文字からなる引用1文字部分とともに図形からなる引用1図形部分がある点で、相違する。また、本件商標(「あおば皮フ科クリニック」)と、引用商標1のうち引用1文字部分(「AOBA MENTALCARE CLINIC」の欧文字及び「青葉こころのクリニック」の文字)を比較すると、「クリニック」の文字を共通にするが、それ以外の文字については、共通する文字はなく、欧文字の有無、文字数の点でも異なる。したがって、本件商標と引用商標1は外観において相違しており、類似しない。イ 称呼の比較
5 本件商標から生じる称呼である「アオバヒフカクリニック」と、引用商標1から生じる称呼である「アオバメンタルケアクリニック」及び「アオバココロノクリニック」をそれぞれ比較すると、「アオバ」及び「クリニック」の部分の称呼は共通するが、全体の音数はいずれも異なり、「アオバ」と「クリニック」の間に存する文字の称呼(本件商標の「ヒフカ」と引用商標1の「メンタルケア」及び「ココロノ」)は、音数及び音の構成においていずれも少なからぬ相違があるから、本件商標全体の称呼と引用商標1の各称呼も相違し、混同を生ずるようなことはない。したがって、本件商標から生じる称呼である「アオバヒフカクリニック」と、引用商標1から生じる称呼である「アオバメンタルケアクリニック」及び「アオバココロノクリニック」は、いずれも称呼において相違しており、類似しない。ウ 観念の比較本件商標から生じる観念である「『あおば皮フ科クリニック』という名称の皮膚科を診療科目とする特定の医療機関」と、引用商標1から生じる観念である「「『青葉こころのクリニック』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」及び「『AOBA MENTALCARE CLINIC』という名称の心療内科又は精神科を診療科目とする特定の医療機関」、葉又は樹木及び鳥、とは相違しており、類似しない。エ 類否の判断上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標1は、その外観、称呼及び観念のいずれについても類似せず、これらを総合して全体的に考察しても、これらの商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。したがって、本件商標と引用商標1は、類似の商標であるとは認められない。
5 ⑹ 本件商標と引用商標2の類否についてア 外観の比較本件商標の「あおば皮フ科クリニック」の文字と、引用商標2の「横浜青葉デンタルクリニック」の文字とを比較すると、「クリニック」の文字は共通にするが、それ以外の文字は異なり、文字数も異なるから、その外観は相違しており、類似しない。イ 称呼の比較本件商標から生じる称呼である「アオバヒフカクリニック」と、引用商標2から生じる称呼である「ヨコハマアオバデンタルクリニック」とを比較すると、「クリニック」の称呼を共通にするものの、それ以外の部分の称呼は音数及び音構成において明らかに異なり、その称呼は相違しており、類似しない。ウ 観念の比較本件商標から生じる観念である「『あおば皮フ科クリニック』という名称の皮膚科を診療科目とする特定の医療機関」と、引用商標2から生じる観念である「横浜市内に存在する『横浜青葉デンタルクリニック』という名称の歯科を診療科目とする特定の医療機関」とは相違しており、類似しない。エ 類否の判断上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標2は、その外観、称呼及び観念のいずれについても類似せず、これらを総合して全体的に考察しても、これらの商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められない。したがって、本件商標と引用商標2は、類似の商標であるとは認められない。⑺ 原告の主張に対する判断
5 原告は、前記第3の4〔原告の主張〕のとおり、本件商標、引用商標1及び2のいずれも、略称が「アオバクリニック」であるから、称呼が類似するなどと主張する。しかし、前記2⑵で述べたとおり、医療機関の略称として診療科名を含まないものが一般的に用いられるとは解されず、本件商標をその名称に用いた被告診療所についても、その略称は診療科名である「皮フ科」(皮膚科)が入る「あおば皮フ科」などとされるのが通常であると考えられ、診療科名を除いた「あおばクリニック」の略称が用いられることが通常であると認めるに足りる証拠はなく、本件商標、引用商標1及び2のすべての略称が「アオバクリニック」であると認めるに足りる証拠もない。本件商標、引用商標1及び2の称呼は前記4⑵イ、⑶イ、⑷イに認定したとおりであり、これらがいずれも「アオバクリニック」の称呼を生ずるとは認められない。したがって、原告の主張は採用することができない。⑻ 取消事由4に関する結論以上によれば、本件商標が商標法4条1項11号に該当しないとの本件審決の判断に誤りがあるとは認められず、取消事由4には理由がない。
5 結論以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決について、これを取り消すべき違法はない。したがって、原告の請求は棄却されるべきである。よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
中 平 健
裁判官
今 井 弘 晃
裁判官
水 野 正 則
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