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令和7(行ケ)10067審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年12月23日
事件種別 民事
当事者 原告AFURI株式会社
被告吉川醸造株式会社
法令 商標権
キーワード 無効25回
審決15回
商標権8回
侵害4回
無効審判3回
差止1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に 顕著である。

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判決文

令和7年12月23日判決言渡
令和7年(行ケ)第10067号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年11月18日
判 決
原 告 A F U R I 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 山 下 功 一 郎
同訴訟代理人弁理士 橘 哲 男
10 佐 藤 大 輔
被 告 吉 川 醸 造 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 高 瀬 亜 富
15 市 橋 景 子
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 請求
特許庁が無効2023-890076号事件について令和7年5月28日に
した審決のうち、登録第6646765号の指定商品中、第32類「ビール」、
第33類「全指定商品」についての登録を無効とする部分を取り消す。
第2 事案の概要
25 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に
顕著である。)
(1) 原告が商標権を有する登録第6646765号商標(以下「本件商標」
という。)は、以下のとおり「阿夫利」の漢字を縦書きした構成からなり、
第32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造
用ホップエキス、乳清飲料」及び第33類「清酒、焼酎、合成清酒、白酒、
5 直し、みりん、洋酒、果実酒、酎ハイ、中国酒、薬味酒、日本酒、アルコー
ル飲料(ビールを除く。)」を指定商品として、令和4年7月15日に登録出
願し、同年11月30日に設定登録されたものである。

(2) 被告は、令和5年9月28日、特許庁に対し、本件商標が商標法(以下
10 「法」という。)3条1項3号又は4条1項16号、同項6号、11号、7
号及び8号に該当すると主張して、本件商標の商標登録を無効とする審判を
請求した(以下「本件審判請求」という。)。
特許庁は、本件審判請求を無効2023-890076号事件として審理
し、令和7年5月28日、「登録第6646765号の指定商品中、第32
15 類「ビール」、第33類「全指定商品」についての登録を無効とする。その
余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「本件
審決」という。)をし、その謄本は、同年6月10日、原告に送達された。
(3) 原告は、令和7年7月8日、本件審決のうち商標登録を無効とする部分
の取消しを求める本件訴えを提起した。
20 2 本件審決の理由の要旨
(1) 本件審決は、被告(請求人)の主張する無効理由のうち、法4条1項1
1号該当性について、本件商標は引用商標(登録第4651814号商標。
構成及び指定商品は別紙のとおり)に類似し、かつ、本件商標の指定商品の
うち第32類「ビール」及び第33類「全指定商品」(これらの指定商品を、
以下まとめて「無効対象指定商品」という。)は引用商標の指定商品と同一
5 又は類似であるから、本件商標の商標登録のうち無効対象指定商品に関する
部分は同号に該当して無効であるとし、その余の無効理由には該当しないと
判断した。同号該当性に関する理由のうち、両商標の類否の判断の要旨は、
後記(2)のとおりである。
(2) 本件商標は「阿夫利」の漢字を筆文字体で縦書きした構成からなるとこ
10 ろ、これより生ずる自然な称呼は「アフリ」であり、当該語は一般の辞書に
は掲載されていないから造語として認識・理解され、特定の観念は生じない
ものである。
これに対し、引用商標の称呼は「アフリオオヤマ」であり、その構成中、
「阿夫利」の文字部分から一義的には特定の観念を生じないとしても、「大
15 山」の文字部分との関係から、全体として「(神奈川県中部にある山)阿夫
利山」の観念を生ずる。
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両商標は、「阿夫利」の部分の
外観に共通する部分があるといえる。称呼については、「オオヤマ」の音の
有無で相違するから、全体の称呼においては同一ではないとしても、称呼に
20 おける識別上、極めて重要な語頭において、「アフリ」の称呼を共通にする。
観念については、本件商標は特定の観念を生じず、一義的には両者の観念を
比較することはできないが、「阿夫利」の文字が、大山の異称である「阿夫
利山」の「山」を除いた部分に当たるものであり、他方、引用商標を構成す
る、「阿夫利大山」の文字からは、上述のとおり「阿夫利山」を想起させる
25 ものである。
以上のことを踏まえ、本件商標と引用商標の取引者・需要者に与える印
象、記憶、連想等を総合して全体的に考慮すれば、両商標は、互いに紛れる
おそれのある類似の商標というのが相当である。
3 原告の主張する取消事由
(1) 取消事由1(手続違背・請求人適格の欠如)
5 (2) 取消事由2(法4条1項11号に関する認定・判断の誤り)
第3 取消事由に関する当事者の主張
1 取消事由1(手続違背・請求人適格の欠如)
【原告の主張】
被告は、本件審判請求をするに足りる利害関係(請求人適格)を有しない。
10 原告が被告に対して提起した東京地方裁判所令和5年(ワ)第70297号
商標権侵害行為差止等請求事件(以下「別件訴訟」という。)は、本件商標
とは別個の登録第6245408号の商標権(「AFURI」の欧文字から
なる商標に係るもの。同商標を以下「別件商標」という。)に基づくもので
ある。また、被告は引用商標の権利者でもない。よって、被告は「法律上の
15 利益や権利的地位に直接の影響を受ける者」でないから、本件審判請求がで
きる法46条2項の「利害関係人」に該当しない。
【被告の主張】
原告は、本件審判請求において、被告の利害関係を争っておらず、請求人適
格に関する原告の主張は採用の余地がない。
20 この点をおくとしても、原告は、別件訴訟等において、被告が製造販売する
日本酒のラベルに付された標章「雨降(あふり)」が原告の別件商標に関する
権利を侵害すると主張する、被告が有する登録商標(「雨降」の漢字からなる
もの)について無効審判請求及び不正使用取消審判を請求するなどしており、
被告の事業を妨害する意図をもって、「アフリ」と称呼する本件商標に係る商
25 標権に基づき、被告の使用する標章「雨降」、その読み仮名としての「あふり」、
「AFURI」等に対し、何らの正当な根拠なく新たに商標権侵害訴訟等を提
起するおそれがある。
したがって、被告は、本件商標に係る商標権に基づく原告からの権利行使に
より、法律上の利益やその権利に対する法律的地位に影響を受ける可能性があ
り、「利害関係人」に該当することは明らかである。
5 2 取消事由2(法4条1項11号に関する認定・判断の誤り)
【原告の主張】
(1) 本件商標から生ずる観念についての認定の誤り
原告は、平成13年から二十数年間にわたって継続して本件商標を使用
しており、本件商標は、原告が提供する商品・役務(主にラーメンの提供)
10 を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く知られている。その結果、
本件商標は「AFURI(阿夫利)」ブランドとして確立し、一般の取引
者・需要者に受け入れられ、継続して高い評価を得ている。
また、原告は、本件商標を付した日本酒720ml瓶詰及びワンカップ
瓶詰の2種類を製造・販売し、国内外の顧客に提供している。
15 以上の結果、本件商標は、原告が提供する商品・役務の出所を示す強力
な識別標識として、取引者・需要者の間で広く定着している。したがって、
本件商標からは原告ブランド「AFURI」との強い関連性を示す観念が生
じるのであり、特定の観念は生じないとした本件審決の認定は誤りである。
本件商標から特定の観念は生じないとした本件審決の認定は誤りである。
20 (2) 引用商標から生ずる観念についての認定の誤り
本件審決は、引用商標について、全体として「(神奈川県中部にある山)
阿夫利山」の観念を生じると認定したが、一方で「阿夫利」については造語
であると認定している。これは、特定の造語にどのような語を結合しても造
語のままであるから、矛盾した判断である。引用商標に接する取引者・需要
25 者は、せいぜい漠然、かつ、曖昧な意味合いを認識するに止まり、『神奈川
県丹沢地東南端、大山の異称である「阿夫利山」』との観念を認識・理解す
る余地はない。
(3) 本件商標と引用商標の外観上の類否についての認定の誤り
本件商標と引用商標は共にその構成中に「阿夫利」の文字を有するもの
ではあるが、以下のとおり、他のすべての構成要素、構成態様等が全く異な
5 り、誤認混同するおそれは極めて低い。
ア 本件商標は「阿夫利」の文字を縦書きに書したものであるのに対して、
引用商標は「阿夫利大山」の文字を縦書きに書したものである。
イ 引用商標はその構成中に「大山」の文字を有するのに対して、本件商標
には「大山」の文字は存在しない。
10 ウ 引用商標は、「阿」「夫」「利」「大」「山」の漢字5文字を筆文字風の書
体により一連で縦書きに表したものであり、その構成は視覚的に構成上
一体不可分なものとして認識される商標である。
(4) 本件商標と引用商標の称呼上の類否についての認定の誤り
引用商標について、その構成中の一部である「阿夫利」の文字部分を抽
15 出し、この一部だけを引用商標と比較してその類否を判断することは許され
ない。引用商標より生ずる称呼は、構成文字全体に相応した「アフリオオヤ
マ」のみと認定・判断すべきであり、本件商標の称呼と異なる。
(5) 本件商標と引用商標の観念上の類否についての認定の誤り
本件審決は、一方で、本件商標について特定の観念を生じないと認定し
20 つつも、他方で、「阿夫利」の文字より直ちに特定の意味合いが生じないと
しても、漠然と「阿夫利山」を暗示的に看取し得るなどと認定するが、これ
は論理的に両立し得ない結論であり、明らかに法的な合理性を欠く。
(6) 本件商標は4条1項11号に該当するとの認定の誤り
本件商標と引用商標とは、外観において判然と区別し得る相違を有し、
25 称呼においても顕著な差異があり、観念においても周知性等の具体的事実を
踏まえれば明確に異なるものである。そのため、取引の実際において両者が
商品の出所について誤認混同を生じさせる蓋然性は著しく低く、両商標の類
似性は否定されるべきである。
【被告の主張】
(1) 本件商標から生ずる観念についての認定の誤りの主張について
5 原告はラーメン業界においてすら周知著名性を獲得しておらず、ラーメ
ンとの関係性が極めて希薄な日本酒等の無効対象指定商品の取引者・需要者
が、本件商標から原告及び原告ブランド「AFURI」を想起することはあ
り得ない。
(2) 引用商標から生ずる観念についての認定の誤りについて
10 引用商標は「阿夫利」の文字と「大山」の文字の結合商標であるところ、
引用商標の「阿夫利」の部分は、一般に採択使用されることが想定し難い文
字列であって、日常的に触れる言葉ではなく、取引者・需要者に対し強く支
配的な印象を与える。その一方で、「大山」は一般的に使用されている言葉
であり、取引者・需要者が当該語によって特定の出所を識別することはない。
15 そのため、引用商標において、「阿夫利」の文字部分を抽出して類否判断を
行うことが許される。
そして、「阿夫利」は、日本国内においては、神奈川県伊勢原市に位置す
る「阿夫利山」及びその近郊地域にのみ用いられているから、取引者・需要
者は、引用商標から阿夫利山及び阿夫利山が存する近郊地域を想起するもの
20 である。
(3) 本件商標と引用商標の外観上の類否についての認定の誤りについて
ア 上記のとおり、引用商標においては、「阿夫利」の文字部分を抽出して
類否判断を行うことが許されるところ、本件商標と引用商標は、「阿夫利」
の漢字で構成されている点が共通し、外観において類似している。
25 イ 仮に、本件商標と引用商標の全体とで外観の類否判断を行うとしても、
「阿夫利」という出所識別標識として強く機能する部分が共通している
ため、構成文字、「大山」の有無及び書体という相違点は当該共通点によ
る印象を凌駕するほどの差異ではない。
(4) 本件商標と引用商標の称呼上の類否についての認定の誤りについて
引用商標では「阿夫利」の部分を抽出して類否判断することが許される
5 のであるから、引用商標からは「アフリ」の称呼が生じるものであり、本件
商標及び引用商標の称呼は共通する。
仮に、本件商標と引用商標の全体とで類否判断を行うとしても、語頭の
「アフリ」が共通しており、両者の称呼は類似している。
(5) 本件商標と引用商標の観念上の類否についての認定の誤りについて
10 本件商標の構成中の「阿夫利」の部分について、取引者・需要者は、阿
夫利山及び阿夫利山が存する近郊地域を想起する。
同様に、引用商標も、その「阿夫利」部分から、阿夫利山及び阿夫利山
が存する近郊地域を想起させる。
したがって、本件商標と引用商標は、観念において共通する。
15 (6) 本件商標は法4条1項11号に該当するとの認定の誤りについて
ア 本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念が共通するものであり、か
つ、本件商標の指定商品中、無効対象指定商品は、引用商標の指定商品
と同一又は類似の商品である。よって、本件商標は、無効審判対象指定
商品について付された場合、出所の混同が生じ、両者は類似するため、
20 法4条1項11号に該当する。
イ 仮に、本件商標と引用商標の全体によって類否を判断するとしても、外
観、称呼及び観念において共通する点があるから、類似する商標といえ
る。
第4 当裁判所の判断
25 1 取消事由1(手続違背・請求人適格の欠如)について
原告は、被告が本件審判請求についての利害関係(請求人適格)を有しない
と主張する。
そこで判断すると、法46条2項は、商標登録の無効の審判は利害関係人に
限り請求することができる旨を定めているところ、証拠(乙1、6、7。なお、
枝番の記載は省略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、別
5 件訴訟等において、被告が製造販売する日本酒のラベルに付された標章「雨降
(あふり)」が、原告の別件商標に関する権利を侵害すると主張していること、
原告は、被告が有する登録商標(「雨降」の漢字からなるもの)について無効
審判請求(無効2022-890068)をし、請求不成立審決がされるとこ
れに対して取消訴訟(当庁令和5年(行ケ)第10122号)を提起し、同訴
10 訟において請求が棄却されると、今度は同商標について不正使用取消審判(取
消2024-300477)を請求したことが認められる。
上記事実関係によれば、被告による上記登録商標に係る商標等の使用につい
て、原告が別件商標と称呼が同一である本件商標に係る商標権を行使する可能
性が十分に考えられる。そうすると、被告は、本件商標に係る商標権の存在に
15 よって法律上の利益に直接の影響を受ける可能性があり、本件審判請求をし得
る利害関係人であると認めるのが相当である。
したがって、取消事由1に関する原告の主張は、採用することができない。
2 取消事由2(法4条1項11号に関する認定・判断の誤り)について
(1) 本件商標と引用商標の観念上の類否について
20 ア 原告は、本件商標を構成する「阿夫利」の文字は、単なる造語として認
識・理解されるべきものではなく、原告が提供する商品・役務の出所を
示す強力な識別標識として認識されることを前提に、引用商標とは観念
が類似しない旨主張する。
そこで判断すると、証拠(甲3、4、33~38、59~70、72、
25 73)及び弁論の全趣旨によれば、原告が本件商標の「阿夫利」の文字
を店名に冠しつつ展開するラーメン事業については、国内外に三十前後
の店舗を構え、直近5年間の売上高は多いときで28億円を超えるもの
であり(令和6年度実績)、宣伝広告費についても2000万円以上を
計上する年があり、テレビや雑誌などで多数回にわたり紹介されている
ことが認められる。こうした点に鑑みれば、原告が展開するラーメン事
5 業に関しては、本件商標は、ラーメン事業に関する取引者・需要者の間
で一定の知名度を有していると認められる。
もっとも、無効対象指定商品との関係では、原告は、本件商標の「阿
夫利」の文字を瓶のラベルに貼った日本酒2種類を製造販売しているも
のの、令和4年までにわずかに合計360ケース製造しているのみであ
10 り、販売についても、国内4店舗、国外5店舗で販売し、ECサイトで
小売販売をしているのみである(弁論の全趣旨)。また、本件証拠を精
査しても、 上記日本酒の 販売にかけた宣伝広告費は不明であ るし、 メ
ディアやマスコミで紹介されたことを示す資料は見当たらない。そうす
ると、無効対象指定商品との関係で、原告が主張する原告ブランド「A
15 FURI」の知名度は不明といわざるを得ず、取引者・需要者において、
本件商標から当該ブランドの観念が生ずるということはできない。
イ 一方、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、自身のウェブサ
イトにおいて、そのラーメン事業につき「阿夫利山から生まれた、黄金
色の一杯」、「阿夫利山の恵みを受けて、生まれたAFURI」などと
20 紹介していること(甲4)、「阿夫利」の語は一般の辞書等に掲載され
ているものではないが、「阿夫利山」は神奈川県中部にある「大山」と
いう山の異称であり、その周辺地域を表す名称として「阿夫利」ないし
「あふり」の語が校歌、商品名等の一部に用いられていること(甲8~
11、15~17)が認められる。そうすると、本件商標に接する取引
25 者・需要者のうち少なくとも一部の者は、「阿夫利山」ないし「大山」
を想起すると解することができる。
ウ 次に、引用商標から生ずる観念についてみると、引用商標はほぼ同じ大
きさ・書体の漢字5文字を縦書きに表記したものであるから、基本的に
はその全体をもって観念を認定すべきところ、「阿夫利大山」の文字が
一般の辞書等に掲載された用語であるとは認められない。しかし、証拠
5 (甲8、17、24、28、74)によれば、引用商標の構成中の「大
山」の文字は、「神奈川県中部にある山」、「雨降山(あふりやま)」、
「阿夫利山」を意味するものとして辞書に掲載されている用語であるこ
と、実際に、「阿夫利山」を意味するものとして「大山」の用語が用い
られている例があることが認められる。そうすると、引用商標の「阿夫
10 利大山」については、これが「阿夫利」と「大山」の2語からなるもの
であるとしても、「阿夫利大山」全体として、神奈川県中部にある大山
の異称である「阿夫利山」を観念として想起させるというのが相当であ
る。
エ 以上認定の本件商標及び引用商標のそれぞれから想起される観念に照ら
15 すと、両者は一定程度の類似性を有するということができる。
(2) 本件商標と引用商標の外観上の類否について
本件商標と引用商標は、その外観において「阿夫利」という漢字の文字
を共通にし、他方で、書体の違い及び「大山」の文字の有無において相違す
る。この点を踏まえて両者の類否について検討すると、引用商標については、
20 上記のとおり、基本的にはその全体をもって類否の判断をすべきものである
が、「阿夫利」の部分が一般に採用されることが想定し難い文字列であるの
に対し、「大山」の部分が平易な漢字であること、「大山」の語と他の語を
組み合わせた商品名が無効対象指定商品に用いられた例が複数あること(乙
12)を考慮すると、引用商標のうち「大山」の部分が取引者・需要者の注
25 意を強く引くとは考え難い。そうすると、両商標は、外観上、一定程度の類
似性を有するといえる。
(3) 本件商標と引用商標の称呼上の類否について
本件商標の称呼は「アフリ」であり、引用商標の称呼は「アフリオオヤ
マ」であるから、両商標は全体の称呼において「オオヤマ」の音の有無で相
違する。しかし、両商標は、語頭における称呼を共通にするものであり、こ
5 の共通性は識別上、重要であると考えられるから、称呼においても一定程度
の類似性を有するというのが相当である。
(4) 本件商標の法4条1項11号該当性について
ア 以上を踏まえると、本件商標と引用商標は、その構成中の「阿夫利」の
文字について共通し、観念、外観及び称呼のいずれについても一定程度
10 の類似性を有している。なお、本件の関係各証拠上、各商標を付した無
効対象指定商品についての誤認混同の有無など具体的な取引状況は明ら
かではない。こうした点に加え、両商標の外観上の共通部分である「阿
夫利」が一般に採用されることが想定し難い語であることを考えると、
無効対象指定商品の需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体
15 的に考慮すれば、本件商標は引用商標と互いに紛れるおそれがある商標
であると判断することが相当である。
これに対し、原告は両商標が非類似であることを主張するが、「阿夫利」
の語が無効対象指定商品との関係でも広く知られていることを前提とす
るものであり、以上に説示したところに照らし、これを採用することは
20 できない。
イ 本件商標の指定商品中、無効対象指定商品は、引用商標の指定商品であ
る第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」と同一又は類似
の商品である。
ウ そうすると、原告の取消事由2に関する主張は採用できず、本件商標の
25 法4条1項11号該当性に関する本件審決の判断は相当である。
3 結論
以上のとおり、本件審決についての原告の取消事由に関する主張は採用
できず、そのほかに本件において本件審決を取り消すべき事由は認められな
い。よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文
のとおり判決する。
5 知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
長 谷 川 浩 二
裁判官
岩 井 直 幸
15 裁判官
安 岡 美 香 子

(別紙)
引用商標

5 指定商品:
第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」

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