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令和5(ワ)70398特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 令和7年11月14日
事件種別 民事
当事者 原告松山毛織株式会社
被告岡本レース株式会社
対象物 ラップネット及びその製造方法
法令 特許権
特許法74条1項2回
特許法29条1項2号2回
特許法29条1項1号2回
特許法164条の22回
特許法102条2項2回
特許法38条1回
特許法36条6項2号1回
特許法123条1項2号1回
キーワード 実施33回
進歩性31回
特許権14回
無効12回
新規性6回
無効審判5回
審決5回
差止2回
損害賠償1回
刊行物1回
優先権1回
侵害1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 事案の概要 本件は、発明の名称を「ラップネット及びその製造方法」とする特許第58 92637号の特許(以下「本件特許」という。 )に係る特許権(以下「本件 特許権」という。 )の特許権者である原告が、別紙被告製品目録記載1ないし 3のベールネット(以下、これらを併せて「被告製品」という。 )が本件特許 の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明の技術的範囲に属し、被告に よる被告製品の製造販売等が上記各発明の実施に当たると主張して、被告に対 し、特許法100条に基づき被告製品の製造販売等の差止及び被告製品の廃棄 を求めるともに、民法709条に基づき2200万円(特許法102条2項に より算定された損害金2000万円及び弁護士費用200万円の合計)及びこ れに対する訴状送達の日の翌日である令和5年7月19日から支払済みまで民 法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和7年11月14日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70398号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和7年9月10日

判 決

原 告 松山毛織株式会社

同訴訟代理人弁護士 川 岸 弘 樹

被 告 岡本レース株式会社

同訴訟代理人弁護士 松 田 光 代

同補佐人弁理士 岡 倉 誠

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は、別紙被告製品目録記載1ないし3のベールネットを製造し、販売し、販売のために展示してはならない。2 被告は、別紙被告製品目録記載1ないし3のベールネットを廃棄せよ。3 被告は、原告に対し、2200万円及びこれに対する令和5年7月19日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等

1 事案の概要本件は、発明の名称を「ラップネット及びその製造方法」とする特許第5892637号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、別紙被告製品目録記載1ないし3のベールネット(以下、これらを併せて「被告製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明の技術的範囲に属し、被告に

5 よる被告製品の製造販売等が上記各発明の実施に当たると主張して、被告に対し、特許法100条に基づき被告製品の製造販売等の差止及び被告製品の廃棄を求めるともに、民法709条に基づき2200万円(特許法102条2項により算定された損害金2000万円及び弁護士費用200万円の合計)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5年7月19日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1) 当事者ア 原告は、各種織物サンプル及び反物の製造、産業用ネット・資材の研究、開発、製造、販売等を目的とする株式会社である。イ 被告は、編レースの製造及び販売、繊維原料の輸出入、繊維製品の販売等を目的とする株式会社である。

(2) 本件特許等ア 原告は、平成25年4月26日、発明の名称を「ラップネット」とする発明について特許出願(特願2013-093805号、以下「本件基礎出願1」という。)をした。(甲18、乙9の1)本件基礎出願1の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりであり、経糸に合成樹脂系繊維、緯糸にセルロース系繊維を使用したラップネットの発明である。【請求項1】編地の長さ方向に並列した合成樹脂系繊維からなる経糸群が、それぞれ、当該長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とするラッ

5 プネット。イ 原告は、平成25年7月22日、発明の名称を「ラップネット及びその製造方法」とする発明について特許出願(特願2013-151430号、以下「本件基礎出願2」という。)をした。(甲18、乙9の2)本件基礎出願2の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。【請求項1】編地の長さ方向に並列した経糸群が、それぞれ、当該長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと緯糸によって連結されてなる編地からなり、前記経糸及び前記緯糸は、いずれも、セルロース系繊維からなり、且つ、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とするラップネット。ウ 原告、被告及び農業用作業機などを製作する株式会社タカキタ(以下「タカキタ」という。)は、平成25年12月頃、ラッピング用ネット(ラップネット)の開発等について、共同開発契約(以下「本件開発契約」という。)を締結した。(甲18、19)エ 原告は、平成26年4月23日、本件基礎出願1及び2に記載された発明に基づき優先権を主張した上、原告を特許権者、原告の前代表者であるAi(以下「原告前代表者」という。)を発明者として、本件特許について特許出願(国際出願による特許出願。以下「本件出願」という。)をし、平成28年3月4日に特許第5892637号として本件特許権の設定登録(請求項の数11)を受けた(以下、本件特許に係る明細書及び図面を併せて「本件明細書」といい、本件明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと記載する。)。

5 (3) 本件特許の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。以下、本件特許の特許請求の範囲の各請求項を、順次、「請求項1」、「請求項2」といい、各請求項に係る発明を、順次、「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらの発明を併せて「本件各発明」という。(甲2)ア 請求項1編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなることを特徴とするラップネット。イ 請求項2前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とする請求項1に記載のラップネット。

(4) 本件各発明の構成要件の分説前記(3)の請求項1及び2は、次の構成要件に分説することができる(以下、各構成要件につき、頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。ア 本件発明1(請求項1)1A 編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、1B 前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなることを特徴とする1C ラップネット。イ 本件発明2(請求項2)請求項1に記載のラップネットにおいて、

5 2A 前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とする、ラップネット。

(5) 被告の行為被告は、遅くとも平成28年3月以降、別紙被告製品目録記載2のベールネットを販売している。また、被告は、少なくとも、別紙被告製品目録記載1及び3のベールネットを原告に販売した。(争いがない)

(6) 被告製品の構成要件充足性被告製品は、本件発明1に係る構成要件の全てを充足する。

(7) 先行文献等ア 本件各発明の優先日本件各発明は、本件基礎出願2に対応するものであるから、本件各発明の進歩性判断の基準日となる優先日は、本件基礎出願2の出願日である平成25年7月22日である。イ 先行文献上記優先日前に頒布された刊行物として、次のものがある。(乙6~8、21)(ア) 韓国特許第10-974071号公報(以下「乙6文献」といい、これに記載された発明を「乙6発明」という。)(イ) 実願昭57-90412号公開実用新案公報(以下「乙7文献」といい、これに記載された発明を「乙7発明」という。)(ウ) 韓国特許第10-1019465号公報(以下「乙8文献」といい、これに記載された発明を「乙8発明」という。)(エ) 特許第3342247号特許公報(以下「乙21文献」といい、これに記載された発明を「乙21発明」という。)

(8) 本件特許に関する無効審判請求及び本件訴訟の経過等ア 被告は、令和4年7月21日付けで、特許庁に対し、本件特許に係る無

5 効審判請求(無効2022-80068号事件、以下「本件無効審判請求事件」という。)をした。(乙1)イ 特許庁は、令和5年10月20日付けで、本件無効審判請求事件につき、請求項1、2、8~10に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をすることを予告した(以下「第一次審決予告」という。)。(乙31)ウ これを受けて、原告は、特許法164条の2第2項に規定する訂正を請求するための期間内に、令和5年12月26日付け訂正請求書により、特許請求の範囲の訂正の請求を行った(以下「第一次訂正請求」といい、

第一次訂正請求に係る訂正を「第一次訂正」という。)。原告は、第一次

訂正請求において、請求項1及び2を以下のとおり訂正請求した。(下線部分が訂正箇所である。以下、第一次訂正後の請求項2に係る発明を「本件第一次訂正発明2」という。)(甲48)(ア) 請求項1(削除)(イ) 請求項2(本件第一次訂正発明2)編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、前記経糸は、綿繊維からなる太番手の単糸、或いは、中番手から太番手の単糸を少なくとも2本以上合わせた糸と、同一の糸強度を有するセルロース系繊維であり、前記緯糸は、綿繊維からなる10番手~30番手の短繊維紡績糸条

5 の単糸と、同一の糸強度を有するセルロース系繊維であり、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とするラップネット。エ 原告は、令和6年 1 月31日付けの準備書面(2)において、上記ウの第一次訂正を内容とする訂正の再抗弁を主張した。(当裁判所に顕著な事実)オ 特許庁は、令和6年6月4日付けで、第一次訂正後の請求項11は請求項2の記載を引用するものであるところ、請求項2のうち「前記経糸は、綿繊維からなる太番手の単糸、或いは、中番手から太番手の単糸を少なくとも2本以上合わせた糸と、同一の糸強度を有するセルロース系繊維であり」及び「前記緯糸は、綿繊維からなる10番手~30番手の短繊維紡績糸条の単糸と、同一の糸強度を有するセルロース系繊維であり」との記載は、綿糸の番手から糸強度は特定できず、そのような糸強度と「同一の糸強度を有するセルロース系繊維」がどのような「セルロース系繊維」であるのか特定することができないから、請求項11に係る発明は、当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)がその権利範囲を判断することができず、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないとして、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条7項の規定に違反する請求項11に係る第一次訂正を認めない旨の訂正拒絶理由通知書及び職権審理結果通知書を発した。(甲60、乙34)カ 裁判所は、被告が、同年7月19日の第3回弁論準備手続期日において、現時点では、第一次訂正請求を維持する旨回答したため、同年9月24日の第4回弁論準備手続期日において、同年12月12日又は同月13日を技術説明会の候補日とすることとし、同年10月21日、技術説明会を開

5 催する弁論準備手続期日を同年12月12日午後2時と指定し、併せて技術説明会に関与させるために、3名の専門委員を選任した。(当裁判所に顕著な事実)キ 特許庁は、令和6年10月1日付けで、本件第一次訂正発明2についての特許を無効とする旨の審決の予告をした。(以下「第二次審決予告」という。乙46)ク 裁判所は、令和6年11月7日の進行協議期日において、既に指定した技術説明会のための弁論準備手続期日を取消すこととした。(当裁判所に顕著な事実)ケ 原告は、特許法164条の2第2項に規定する訂正を請求するための期間内に、令和6年12月6日付け訂正請求書により、特許請求の範囲の訂正の請求を行った(以下「第二次訂正請求」といい、第二次訂正請求に係る訂正を「第二次訂正」という。)。原告は、第二次訂正請求において、請求項1及び請求項2を以下のとおり訂正請求した。(下線部分が訂正箇所である。以下、本件第二次訂正後の請求項1に係る発明を「本件第二次訂正発明1」、本件第二次訂正後の請求項2に係る発明を「本件第二次訂正発明2」という。)(甲73)(ア) 本件第二次訂正発明1編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、前記経糸は、引張強さで14N/1本以上の糸強度を有する綿繊維からなる糸であり、前記緯糸は、引張強さで3N/1本以上の糸強度を有する綿繊維から

5 なる糸であり、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とするラップネット。(イ) 本件第二次訂正発明2編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなり、前記経糸は、綿繊維からなる太番手の短繊維紡績糸条の単糸、或いは、中番手から太番手の短繊維紡績糸条の単糸を少なくとも2本以上合わせた糸であり、前記緯糸は、綿繊維からなる10番手~30番手の短繊維紡績糸条の単糸であり、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とするラップネット。コ 原告は、令和6年12月25日付け準備書面(6)において、上記ケの第二次訂正に係る訂正の再抗弁を主張し(以下、同主張を、「第二次訂正の再抗弁」という。)、第二次訂正に伴い、第一次訂正に関連する訂正の再抗弁の主張を撤回した。(当裁判所に顕著な事実)サ 裁判所は、令和7年3月4日の第6回弁論準備手続期日において、上記

第二次訂正の再抗弁に係る主張及び同再抗弁に係る証拠を、時機に後れた

攻撃防御方法として却下した。(当裁判所に顕著な事実)シ 特許庁は、令和7年7月25日付けで、第二次訂正の請求のとおり訂正

5 することを認める旨の審決をした。(甲78)

(9) 関連する訴訟ア 被告は、平成30年、東京地方裁判所に対し、原告は、被告代表者等と原告の共有に係る特許を受ける権利について単独で特許出願をして本件特許権の設定の登録を受けたところ、被告は被告代表者等から本件特許権の持分を譲り受けたなどと主張して、原告に対し、特許法74条1項所定の移転請求権に基づき、本件特許権の持分2分の1の移転登録を求める訴訟を提起した(東京地方裁判所平成30年(ワ)第22338号特許法74条1項を原因とする特許権移転登録請求事件。以下、原告と被告との間の上記特許権移転登録請求訴訟を「関連訴訟」という。)。東京地方裁判所は、令和2年12月1日、被告代表者等は、本件特許に係る各発明の共同発明者であるとは認められないとして、被告の請求を棄却する判決をした。(甲18)イ 被告は、上記判断を不服として、知的財産高等裁判所に控訴した(知的財産高等裁判所令和2年(ネ)第10069号特許法74条1項を原因とする特許権移転登録請求控訴事件)が、同裁判所は、令和4年5月26日、被告による控訴を棄却し、その後同判決は確定した。(甲19、弁論の全趣旨)3 争点

(1) 被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか(争点1)

(2) 無効の抗弁の成否(争点2)ア 本件発明1(ア) 乙6文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2-1-1)(イ) 乙8文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2-1-2)(ウ) 乙7文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2-1-3)イ 本件発明2

5 (ア) 乙6文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2-2-1)(イ) 乙8文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2-2-2)ウ 本件発明1に係る公知発明による新規性欠如(争点2-3)エ 公然実施による新規性欠如(争点2-4)オ 共同出願違反の有無(争点2-5)

(3) 損害の発生及び額(争点3)4 争点に関する当事者の主張

(1) 争点1(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか)について(原告の主張)被告製品の経糸の糸強度(引張強さ)は18~19N、緯糸の糸強度(引張強さ)は8~9Nである。したがって、被告製品は、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいから、本件発明2の構成要件2Aを充足する。(被告の主張)否認ないし争う。原告が提出した成績書(甲8及び甲9)の試料が被告製品であるか否かは不明である。また、経編業界において糸の選定は番手で行うが、糸強度(引張強さ)は同じ番手であってもメーカー毎に異なる。したがって、経糸と緯糸の番手が同じ被告製品につき、経糸の糸強度が緯糸の糸強度より大きいとはいえない。もっとも、構成要件2Aの経糸は、引き揃え糸又は撚糸となったものを指す場合、被告製品が構成要件2Aを充足することは争わない。

(2) 争点2-1-1(乙6文献を主引用例とする進歩性欠如)について(被告の主張)ア 乙6文献に記載された発明乙6文献の翻訳文(乙6の2)の段落【0001】【0019】【0024】【0031】【0032】、図1及び図3に記載された内容から、乙6文献には、次の構成を有する発明(乙6発明)が記載されている。

5 a1 連結糸の2倍の太さの経糸14、或いは連結糸と同じ太さの350~450デニールの糸を2本撚って合糸した経糸14を1~1.4インチ間隔dで経糸と直交する方向に配置し、更に同一の経糸14によって複数のループが経糸方向に連続する鎖編を形成しており、b1 隣り合う鎖編の間ごとに350~450デニールのポリエチレン糸1本で形成された連結糸16を、下側のループのニードルループと上側のループのシンカーループの交絡点にジグザグに挿入して網目状に形成された梱包ラッピングサイト用網反物。イ 本件発明1と乙6発明との対比乙6発明における構成a1は、本件発明1の構成要件1A、乙6発明における構成b1は、本件発明1の構成要件1Bにそれぞれ相当する。ただし、本件発明1は、構成要件1Aにおいて「経糸にセルロース系繊維を用いている」点、構成要件1Bにおいて「緯糸にセルロース系繊維を用いている」点で乙6発明と相違する。ウ 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到可能であること(ア) 乙7文献を副引用例とする進歩性欠如当業者は、乙6発明に、乙7発明を組み合わせることによって、本件発明を容易に発明することができる。a 乙7文献の記載乙7文献には、以下の技術内容及び技術的知見(乙7発明)が記載されているといえる。

①農業用結束紐としての麻紐、ポリプロピレン樹脂で成形した紐(以下「PP紐」という。)は土中分解しないため、耕転機の故障や植物の毛細根の伸張を阻害する問題があること。

②PP紐やサイザル紐で結束した稲わらを切断して家畜の飼料にする

5 場合は消化不良の原因になったり食道に詰まる危険があったこと。

③稲わら等の結束資材の材料としてセルロース系繊維から成る紙や単糸を使用することで土中分解や家畜の消化性の問題が解消できること。

④上記紙素材は水に濡れる屋外で使用する場合には急速に紙力が低下してしまうため、耐水強度を有するセルロース系繊維の単糸を使用すること。

⑤上記セルロース系繊維の単糸としては、レーヨンやコットン等の紡績糸或いはレーヨンフィラメント束を使用でき、レーヨン、コットン等の紡績糸としては、5番手~40番手の太さのものを使用できること。b 容易想到性上記のとおり、乙7文献には、稲わら等の結束に用いる紙紐に関し、「廃棄後の土中分解」及び「家畜が食したときの消化不良の防止」を目的として「結束資材にセルロース系繊維を用いる」発明が開示されているところ、乙7発明の農業用紙紐は、乙6文献の段落【0005】【0006】に記載された「ロープ」に該当するから、乙7文献の技術内容を知る当業者が、技術分野(農業資材)及び用途(稲わら等の飼料の結束資材)が共通する乙6発明のラップネットに乙7発明で開示されているセルロース系繊維を使用することは容易であったといえる。また本件発明1の技術的課題は、主に(i)土中分解、(ii)家畜の消化不 良 の 防 止 、 (iii) バイ オ エ タ ノ ー ル 化 の3 点 で あ る と 考 え るが 、

(i)(ii)の課題と解決手段は乙7文献にも記載されており、(iii)の課題と解決手段も出願前から知られていたことからすれば、本件発明1に、従来技術にない本件発明1特有の有利な効果は存在しない。

5 以上に述べたことからすると、本件特許出願時において、ラップネットを取り扱う農業分野又は農業資材分野の当業者が、ラップネットの材料としてポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂繊維の代わりに、使用後又は廃棄後の土中分解の改善や家畜の消化不良の防止を目的として、セルロース系繊維を用いることは出願当時の技術水準からすれば容易に想到可能であったといえる。(イ) 乙21文献を副引用例とする進歩性欠如当業者は、乙6発明に、乙21文献に記載された技術(乙21発明)を組み合わせることによって、本件発明を容易に発明することができる。a 乙21文献に記載された技術内容乙21文献には、以下の技術内容及び技術的知見(乙21発明)が記載されている。

①樹脂製の長芋用ネットは堆肥として利用できず、焼却すると有毒ガスを発生し、大量に焼却すると環境汚染に繋がる。

②長芋用ネットに腐食性を有する綿繊維を使用することで、長芋の蔓及び枝葉等をネットから引き剥がすことなく他の堆肥材料と一緒に有機堆肥として使用することができる。

③無結節編網機又はラッセル編機で編んだネットに、2本の糸を撚って形成された糸を使用することができる。

④綿繊維の紐又は糸に直径0.5mmから2.5mm程度のものを使用することができる。b 容易想到性上記のとおり乙21文献には、長芋の蔓を絡ませて保持する農作物用ネットに関し、「腐食(生分解)による堆肥化」、「焼却による環境汚染の防止」を課題として、「長芋用のネットに綿繊維を使用する」発

5 明が開示されている。乙21発明の長芋用のネットは、本件特許のラップネットと用途が異なるものの、両者はどちらも資源循環を課題とする農業分野に属する技術であり、農業の耕畜連携分野とも関わりが深い技術である。また本件発明1の技術的課題として「そのまま土中に埋めて廃棄できる」「焼却処分にする場合でも新たにCO 2 を排出しない」(【0051】)があり、両者の課題は共通している。更に課題解決に利用されるセルロース系繊維の作用・機能も共通している。上記のとおり、乙21発明と本件発明1は、技術分野が関連性を有し、課題及び作用・機能の共通性が認められる。また、乙21発明の長芋用ネットは、飼料用ロールベールの梱包やバイオエタノールの原料に使用する資材ではないものの、乙6発明に乙21技術の綿糸を使用すれば本件発明1と同様の効果が得られることは明らかである。以上に述べたことからすれば、本件特許出願時において、ラップネットを取り扱う農業分野又は農業資材分野の当業者が、乙6発明のラップネットの材料として、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂繊維の代わりに廃棄時の処理の改善を目的としてセルロース系繊維を用いることは、出願当時の技術水準からすれば容易に想到可能であったといえる。エ 小括以上によれば、本件発明1は進歩性を欠いている。(原告の主張)ア 乙7文献を副引用例とする進歩性欠如(ア) 乙7発明の内容乙7文献には、「PP紐、サイザル紐で結束した稲藁を切断して家畜の飼料にする場合は消化不良の原因になったり食道に詰る危険さえあ

5 る。」(明細書2頁の第3段落)との課題を提示しているが、同課題を解決したという記載ないしそのことを示唆する記載もないから、乙7文献は、家畜の飼料に混入した際に、牛の胃で消化されることを示唆するものではない。したがって、乙7発明には、③家畜の消化性の問題が解消することができるとの開示はない。(イ) 容易想到性乙7発明の農業用紙紐は、あくまで農業の分野(植物栽培用)で使用される資材であって、本件発明1のラップネットのように、畜産業の分野で、大量の牧草を梱包するために使用されるものではない。したがって、畜産業の分野で使用される乙6発明(ラップネット)と農業の分野(植物栽培用)で使用される乙7発明(農業用紙紐)とは、技術分野及び用途が共通するものではない。また、本件発明1は、 (i)土中分解、(ii)家畜の消化不良の防止、(iii)バイオエタノール化の3点の技術的課題のみを解決するものではなく運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持、ラップネットの除去作業が容易、ラップネットの残渣が発酵原料に混入した場合でも発酵装置がトラブルを生じない、といった技術的課題を解決することを目的としている。これに対し、乙7文献には、(i)土中分解の課題と解決手段及び(ii)家畜の消化不良の防止の課題しか記載されておらず、それ以外の課題とその解決手段及び効果の記載はないから、本件特許は、乙6発明にない作用・効果を有するものである。さらに、乙7文献には「天然繊維を抄紙する際セルロース系繊維を加工した単糸叉は単糸から成るネットを抄(す)き込んでもよい」(明細書4頁の第3段落)との記載はあるものの、同記載は、結束に用いる紙紐を、セルロース系繊維を加工した単糸又は単糸から成るネットに置き換えるものではない。

5 以上によれば、本件特許出願時において、畜産業の分野のラップネット(乙6発明)に農業の分野の農業用紙紐(乙7発明)を適用する動機付けは存在しない。イ 乙21文献を副引用例とする進歩性欠如について乙21発明の長芋用のネットは、乙7発明の農業用紙紐と同様に農業分野に属する技術であって、畜産業に関する技術ではないから、本件特許とは技術分野を異にする。また、両者は用途が異なっており、これに伴い求められる編組織や編密度、編物の強度等が全く異なるものである。ウ 小括以上によれば、ラップネットを取り扱う畜産業の分野の当業者が、大量の牧草や枯草を梱包することが求められるラップネットの材料としてポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂繊維の代わりにセルロース系繊維を用いて、本件特許の目的を達成することが容易に想到可能であったとすることはできない。

(3) 争点2-1-2(乙8文献を主引用例とする進歩性欠如)について(被告の主張)ア 乙8文献に記載された発明の認定について乙8文献の翻訳文(乙8の2)の段落【0001】【0020】【0021】【0023】【0025】【0032】、図1及び図3に記載された内容から、乙8文献には、次の構成を有する発明(乙8発明)が記載されている。a2 350~450デニールのポリエチレン糸2本を引き揃えた経糸4を一定間隔で経糸方向と直交する方向に配置し、更に同一の経糸4によって複数のループが経糸方向に連続する鎖編を形成しており、b2 隣り合う鎖編の間ごとにフィルム糸又はフィラメント糸のいずれ

5 かで構成されたポリエチレン糸1本で形成された連結糸16を、下側のループのニードルループと上側のループのシンカーループの交絡点にジグザグに挿入して網目状に形成された梱包ラッピングサイト用網反物。イ 本件発明1と乙8発明との対比乙8発明における構成a2は、本件発明1の構成要件1A、乙8発明における構成b2は、本件発明1の構成要件1Bに相当する。ただし、本件発明1は、構成要件1Aにおいて「経糸にセルロース系繊維を用いている」点、及び構成要件1Bにおいて「緯糸にセルロース系繊維を用いている」点で乙8発明と相違する。ウ 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到可能であること(ア) 乙7文献を副引用例とする進歩性欠如上記(2)(被告の主張)ウのとおり、乙7文献には、稲わら等の結束に用いる紙紐に関し、「廃棄後の土中分解」及び「家畜が食したときの消化不良の防止」を目的として「結束資材にセルロース系繊維を用いる」発明が開示されている。また上記乙7発明の農業用紙紐は、乙8の1の段落【0005】【0006】に記載されたロープに該当する。このことから、乙7発明を知る当業者が、技術分野及び用途が共通する乙8発明の経糸及び連結糸(緯糸)にセルロース系繊維を用いることは容易であったといえる。(イ) 乙21発明を副引用例とする進歩性欠如上記(2)(被告の主張)ウのとおり、乙21文献には、長芋の蔓を絡ませて保持する農作物用ネットに関し、「腐食(生分解)による堆肥化」「焼却による環境汚染の防止」を課題として「長芋用のネットに綿繊維を使用する」発明が開示されているところ、乙21発明と本件発明1は、技術分野が関連性を有し、課題及び作用・機能の共通性が認められる。

5 したがって、本件特許出願時において、ラップネットを取り扱う農業分野又は農業資材分野の当業者が、乙8発明のラップネットに乙21発明の長芋用のネットのセルロース系繊維を適用する動機付けが存在することから、本件発明1は、出願当時の技術水準から容易に想到可能であったといえる。エ 小括以上によれば、本件発明1は進歩性を欠いている。(原告の主張)乙8発明は畜産業用資材に係るラップネットであるから、前記(2)(原告の主張)において述べたとおり、畜産業用資材である乙8発明のラップネットと、農業用資材である乙7発明ないし乙21発明は、用途が異なるのみならず、それに伴って求められる編組織や編密度、編物の強度等が全く異なるものである。したがって、本件特許出願時において、畜産業の分野の乙8発明のラップネットに農業の分野の乙7発明(農業用紙紐)又は乙21発明(長芋用ネット)を適用する動機付けは存在しない。以上によれば、ラップネットを取り扱う畜産業の分野の当業者が、大量の牧草や枯草を梱包することが求められるラップネットの材料としてポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂繊維の代わりにセルロース系繊維を用いて、本件特許の目的を達成することが容易に想到可能であったとすることはできない。

(4) 争点2-1-3(乙7文献を主引用例とする進歩性欠如)(被告の主張)ア 本件発明と乙7発明との対比上記(2)(被告の主張)ウのとおり、乙7文献には、稲わら等の結束材料としてセルロース系繊維から成る紐・糸(トワイン)を使用する発明が記載されているが、本件発明1の構成要件1A及び1Bに係るラップネ

5 ットの経編組織については記載されていない。イ 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到可能であること(ア) 乙6文献を副引用例とする進歩性欠如当業者は、乙7発明に乙6発明を組み合わせることによって、本件発明を容易に発明することができる。すなわち、セルロース系繊維などの天然材料繊維をネットに採用できることは公開特許公報(平2-207714、乙29の1)からも公知であること、トワインの巻き付けは梱包に時間がかかるが、ネットを使用することで梱包時間が短くなることが公開特許公報(特開2000-201527、乙29の2)に記載されていることからすると、本件特許出願時において、ラップネットを取り扱う農業分野又は農業資材分野の当業者が、乙7発明のセルロース系繊維から成るトワインを、ロールベーラによる梱包時間の短縮を目的としてネット化する際、乙6発明の構成a1・b1を採用することは、出願当時の技術水準からすれば容易に想到可能であった。(イ) 乙8文献を副引用例とする進歩性欠如上記(ア)で述べたことからすると、本件特許出願時において、ラップネットを取り扱う農業分野又は農業資材分野の当業者が、乙7発明のセルロース系繊維から成るトワインを、ロールベーラによる梱包時間の短縮を目的としてネット化する際、乙8発明の構成a1・b1を採用することは、出願当時の技術水準からすれば容易に想到可能であった。ウ 小括以上によれば、本件発明1は進歩性を欠いている。(原告の主張)前記(2)(原告の主張)のとおり、農業用資材である乙7発明と、技術畜

5 産業用資材である乙6発明ないし乙8発明は、用途が異なるのみならず、それに伴って求められる編組織や編密度、編物の強度等が全く異なるものである。したがって、本件特許出願時において、農業の分野の乙7発明の農業用紙紐に畜産業の分野の乙6発明ないし乙8発明のラップネットを適用する動機付けは存在せず、本件発明1が容易に想到可能であったとすることはできない。

(5) 争点2-2-1(乙6文献を主引用例とする進歩性欠如)について(被告の主張)乙6文献には、飼料を結束する際に大きな張力がかかる経糸の強度を緯糸よりも大きくすることが記載されており、力を沢山受ける経糸の太さを連結糸の2倍にすることについて記載されている(乙6の2の段落【0024】)。この課題は、飼料等の結束資材として用途が共通する本件特許のラップネットにおいても共通しており、本件発明2の構成を採用することで乙6発明と同じ作用・効果が得られるのは明らかである。つまり、乙6発明を知る当業者であれば、経糸に緯糸よりも強度の大きい糸を使用することに何ら困難性はないため、当業者が乙6発明と乙7発明又は乙21発明を組み合わせて本件発明2を想到することは容易である。以上によれば、本件発明2は進歩性を欠いている。(原告の主張)乙6発明の作用・効果は、経糸の太さを従来の2倍にし、かつ、経糸の配置間隔を2倍にすることにより、糸の重量を変えずに丈夫であり、生産率が高く、価格競争力に優れたラップネットを提供するというものである。これに対して、本件発明2の作用・効果は、経糸の糸強度を緯糸の糸強度より大きくすることにより、ラップネットの除去作業において、糸強度の小さい緯糸が適度に切断されて、糸強度の大きい経糸から成る鎖編の状態となり、ロールベールから容易に除去することができることによって、作業者が

5 誤って刃物により身体を傷つける事故や、作業者が機械に挟まれるという事故を防止することができるというものである。したがって、本件発明2と乙6発明とは、そもそも技術的思想、作用・効果を異にするものであって、乙6発明を知る当業者が本件特許の技術的思想を想到すること自体が容易ではなく、さらに、乙7発明(農業用紙紐)や乙21発明(長芋用のネット)のような用途が異なるのみならず、それに伴って求められる編組織や編密度、編物の強度等が全く異なる農業用資材に記載された技術を組み合わせて本件発明2を想到することは容易ではないというべきである。なお、経糸の強度は、従来のラップネットのポリエチレン糸を代替し得る程度の強度(運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持できる程度の強度)は確保し得るものであることは当然である。以上によれば、乙6文献を主引用例として、本件発明2の進歩性は否定されない。

(6) 争点2-2-2(乙8文献を主引用例とする進歩性欠如)について(被告の主張)乙8文献には、飼料を結束する際に大きな張力がかかる経糸の強度を緯糸よりも大きくすることが記載されており、力を沢山受ける経糸の太さを連結糸の2倍にすることについて記載されている(乙8の2の段落【0027】)。この課題は、飼料等の結束資材として用途が共通する本件特許のラップネットにおいても共通しており、本件発明2の構成を採用することで乙8発明と同じ作用・効果が得られるのは明らかである。つまり、乙8発明を知る当業者であれば、経糸に緯糸よりも強度の大きい糸を使用することに何ら困難性はないため、当業者が乙8発明と乙7発明又は乙21発明を組み合わせて本件発明2を想到することは容易である。以上によれば、本件発明2は進歩性を欠いている。

5 (原告の主張)乙8発明と乙6発明との違いは、乙6発明が経糸にポリエチレンフィルム糸を使用することに対して、乙8発明はポリエチレンモノフィラメント糸を使用する点であるところ、乙8発明の目的は、「従来のポリエチレンフィルム糸で製造された網反物に比べて十分な引張強度を得ることができるのみならず、製造コストが低廉であり、価格競争力の面において極めて優れた梱包ラッピングサイロ用網反物を提供」(乙8の2の【0010】)することにある。したがって、上記(5)(原告の主張)で述べた理由と同様に、乙8発明は、「経糸の糸強度を緯糸の糸強度より大きいものにして、ラップネットの除去作業を容易なものとする」という本件発明2の技術的思想とは全く異なるものであるから、乙8発明を知る当業者が本件特許の技術的思想を想到すること自体が容易ではない。以上によれば、乙8文献を主引用例として、本件発明2の進歩性は否定されない。

(7) 争点2-3(本件発明1に係る公知発明による新規性欠如)について(被告の主張)被告と原告は、平成24年9月頃から生分解フィルムを素材に用いたラップネットの共同開発を行っており、その共同開発の成果物として平成25年1月13日に共同出願を行い特許(特許第6033691号、以下「乙17特許」という。)を取得しているところ、乙17特許に係る明細書の段落【0056】ないし【0060】及び【図1】には、以下の技術内容が記載されている。「A 編地の長さ方向に並列した経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、B 前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと緯糸によって

5 連結されてなる編地からなるラップネット」上記共同開発にかかるラップネットは、経糸及び緯糸の素材にセルロース系繊維を用いていない点で本件発明1と異なるものの、原告と被告は、平成25年5月9日、タカキタ社から、経糸と緯糸の両方に綿糸を使用してはどうかと提案を受けたのを契機に綿製ラップネットの開発を始め、被告は、同月中に綿製ラップネットのサンプルを作製し、同月31日には、原告被告及びタカキタ社の3社で、綿製ラップネットの試作品評価及び開発会議を行った。そして、前提事実(9)の関連訴訟において、原告は、本件発明1は原告前代表者の単独発明であって、原告被告及びタカキタ社との間の本件開発契約の始期は平成25年9月以降であると主張していたことからすると、上記平成25年5月の時点では、原告被告及びタカキタ社の間に共同開発契約は存在せず、したがって開発内容の秘密保持義務も存在しなかったことになる。また、原告と被告との間で製造委託の契約関係は存在しなかった。上記に述べたことからすれば、本件特許出願前である上記平成25年5月9日の打合せ、及び平成25年5月31日の開発会議において、本件発明1は、秘密保持義務が課されていない第三者に開示されていたことになるから、本件発明1は出願前に公知となった発明であって、新規性を欠き、特許法29条1項1号により特許を受けることができないものである。(原告の主張)そもそも、本件開発契約の始期である平成25年9月以前においては、原告前代表者が原料となる綿糸を提供し、その指示・依頼に基づいて、被告が試作品の編立をし、タカキタ社が試作品の試験を行っていたにすぎず、三社が対等な関係で共同開発していたものではない。また、発明者のために秘密を保つべき関係は、社会通念上又は商慣習上、発明者側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、秘密扱いとすることが暗

5 黙のうちに求められ、かつ、期待される場合においても生ずるものであり、そのような関係にある者に対して開示しても公知となった発明には該当しないところ、本件においても、明示的な秘密保持契約等の締結こそなされていないものの、被告及びタカキタ社のいずれにおいても、発明者である原告側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、秘密扱いとすることが暗黙のうちに求められ、かつ、期待されている関係にあった。のみならず、自らも、発明者たり得るだけの創作的関与があったといえるかどうかはともかく、綿製ラップネットの開発に協力ないし参加しているとの認識であったことからすれば、本件においては、せいぜい、発明者である原告のために秘密を保つべき関係にある者に知られたにすぎず、特許法29条1項1号にいう「公然知られた」発明に該当しない。

(8) 争点2-4(公然実施による新規性欠如)について(被告の主張)ア 試作品評価による公然実施上記(7)に記載の事情に加えて、原告及び被告は、タカキタ社の協力により平成25年5月31日及び平成25年6月21日に、綿製ラップネットの試作品評価を屋外の試験場で実施したが、その際、関係者との間に秘密保持の約束等は何もなく、秘密保持契約や覚書等の書面も交わされなかった。したがって、本件発明1は本件特許出願前に公然実施された発明である。イ サンプルによる公然実施原告は被告に対し平成24年9月ころ、PE製のラップネットサンプルを交付し生分解フィルムによるラップネット製造の相談を行った。このラップネットサンプル(乙30)の経糸と緯糸は厚みが異なることにより経糸の糸強度が緯糸の糸強度より大きくなっているものである。そうすると「経糸の糸強度が緯糸の糸強度よりも大きい」ことを特徴と

5 するラップネットは本件発明2の出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明である。ウ 小括以上によれば、本件各発明は、出願前に公然実施された発明であるから、新規性を欠き、特許法29条1項2号により特許を受けることができないものである。(原告の主張)前記(7)(原告の主張)で述べたことからすれば、本件各発明は、特許法29条1項2号の「公然実施をされた発明」に該当しない。

(9) 争点2-5(共同出願違反の有無)について(被告の主張)原告、被告及びタカキタ社との間の本件開発契約に係る契約書8条2項には、「発明等が共同でなされたときは、当該発明に関与した当事者の共有とし、それぞれの持ち分を定めた共同出願契約を締結し、共同して当該発明等に係る出願を行うものとする。」と定めているところ、被告代表者であるBi氏は、平成25年5月31日に初めて綿ラップネットの試作品評価を3社で行って以降、本件基礎出願2に記載されていなかった綿製ラップネットの消化試験(本件特許明細書の段落番号【0099】~【0104】、【図2】【図3】)が行われるまでの間、綿製ラップネットの完成に大きく貢献したから、上記8条2項に基づき本件発明1の共同発明者に当たる。以上によれば、原告前代表者を発明者として出願された請求項1(本件発明1)は共同出願違反に該当することは明らかであるから、特許法38条の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法123条1項2号の無効理由を有する。(原告の主張)関連訴訟において、被告代表者は本件発明1の共同発明者ではないとして、

5 被告の原告に対する特許法第74条第1項に基づく本件特許権の持分2分の1の移転登録は認められないとの判決が確定しているから、請求項1(本件発明1)に係る出願は、共同出願違反ではない。

(10) 争点3(損害の発生及び額)について(原告の主張)被告は、遅くとも平成28年3月から現在に至るまで、原告の承諾なく被告製品を製造し、販売し、その販売数量は少なくとも1000本、そして1個あたりの利益額は2万円を下らない。よって、特許法102条2項により推定される損害額は2000万円を下らない。また、本件訴訟追行にあたって相当な弁護士費用は、上記損害賠償額の10%である200万円を下らない。(被告の主張)否認ないし争う。

第3 当裁判所の判断

1 本件明細書の記載事項等

(1) 本件明細書(甲2)には、以下の記載がある。

ア 【技術分野】【0001】本発明は、農畜産業などで使用されるラップネットに関するものであり、特に、干草や藁などの牧草、或いは、河岸整備で刈り取られた草木をロールベールとして保管・運搬する際に使用されるラップネットに関するものである。また、本発明は、これらのラップネットの製造方法に関するものである。【背景技術】【0002】従来から、畜産業においては、夏から秋にかけて収穫した干草や藁な

5 どの牧草を乾燥させた乾牧草や、この乾牧草を乳酸発酵させたサイレー

ジを家畜の冬用飼料として保管・活用している。干草や藁などを乾牧草やサイレージにする際には、まず、ロールベーダー装置で干草や藁などをロール状に巻込み、円柱形に成形してロールベールを形成する。次に、このロールベールの形状が崩れないように、ラップネットなどで被覆して数日間放置する。その後、適度な乾燥状態となったロールベールに対して、ラップネットの上からラップフィルムを用いて厳重に被覆して運搬・保管する。【0003】このようにして保管した牧草を飼料として使用する際には、ラップネット及びラップフィルムを除去し、攪拌機を用いて牧草を食べやすい状態の飼料とする。この際、除去されたラップネット及びラップフィルムは、産業廃棄物として処分されている。【0004】このように、ラップネットは、ロールベールの崩れを防止すると共に、通気性が高く牧草の乾燥に最適な資材である。一方、ラップフィルムは、牧草への空気や水分の浸入を防止すると共に、ロールベールの強度を向上させる最適な資材である。このようなラップネットとラップフィルムを利用してロールベールをラッピングする方法は、牧草の運搬・保管に適切であり、北海道をはじめ全国で普及し始めている。【0005】一方、近年では、干草や藁などを乾牧草やサイレージとして利用するのではなく、カーボンニュートラルな燃料であるバイオエタノールの発酵原料として利用する事業が始まっている。また、干草や藁などに限らず河岸整備などで刈り取られた草木などもバイオエタノールの発酵原料として利用しようと考えられている。このように、発酵原料として干草

5 や藁などを利用する場合にも、これらをロールベーダー装置でロール状

に巻込み、円柱形のロールベールに成形して処理工場に運搬・保管することが有効である。【発明が解決しようとする課題】【0008】ところで、(中略)ラッピングマシンで使用されるラップネットやラップフィルムには、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。また、ラップネットには、例えば、経済性などの点から、ポリエチレンフィルムを細長く裁断したスリットヤーンが使用されている。このスリットヤーンは、ラップネットの物性(特に強度)を維持するため延伸された高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムから形成されており、そのためラップネットの伸度は非常に小さなものである。【0009】実際の作業において、ロールベールにラップネットやラップフィルムをラッピングする際には、ラッピングマシンで大きな張力をかけてラッピングする。従って、ラップネット及びラップフィルムによりラッピングされたロールベールの外周には、大きな張力が掛かっており硬くしっかりと固定されている。【0010】このように、運搬・保管に有効なラップネットとラップフィルムによるラッピングであっても、その後にロールベールを飼料として利用する際には、ラップネット及びラップフィルムを切断・除去して牧草を解きほぐす作業を行う。その際に、ラップフィルムは、シート状であり扱い易く除去作業は容易である。これに対して、ラップネットは、伸度が小さなスリットヤーンが大きな張力で何本も重なってロールベールに巻き付いており、除去作業が難しいという問題があった。

5 【0011】

例えば、ラップフィルムを除去した後のロールベールからラップネットを切断除去する際には強い力が必要であり、作業者が誤って刃物により身体を傷つけるという事故が多発している。また、ラップネットの切り残しを牧草の攪拌時に発見し、これを取り除こうとした作業者が機械に挟まれるという事故も発生している。【0012】また、ラップネットの除去作業の難しさから、除去したラップネットの一部が家畜用飼料の中に混入するという問題があった。このように、家畜用飼料の中にラップネットの一部が混入すると、家畜が飼料と一緒に合成樹脂製のラップネットを食べてしまい、家畜が病気になり、或いは、死んでしまうという問題があった。【0013】更に、除去したラップネット及びラップフィルムには、上述のように、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。従って、これらを産業廃棄物として処分しなければならず、農畜産業者にとってその労力と処理コストが大きいという問題があった。【0014】一方、バイオエタノールの発酵原料として干草や藁など、或いは、河岸整備などで刈り取られた草木などをロールベールにして運搬・保管した場合でも、発酵作業に入るときには、同様にラップネットを切断・除去して干草や藁などを解きほぐす作業が必要である。上述のように、ラップネットには、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。これらの汎用合成樹脂は、バイオエタノールの発酵原料として利用することができない。【0015】

5 ラップネットの除去作業の難しさは、農畜産業の場合と同様であり、

除去したラップネットの一部がバイオエタノールの発酵原料の中に混入するという問題が生じる。このように、バイオエタノールの発酵原料の中にラップネットの一部が混入すると、発酵槽が詰まる、或いは、混合装置に絡まるなどのトラブルが考えられる。【0016】そこで、本発明は、以上のようなことに対処して、運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持し、且つ、ラップネットの除去作業が容易になり、ラップネットの残渣が飼料、或いは、発酵原料に混入した場合でも、家畜への影響が少なく、或いは、発酵装置がトラブルを生じないラップネットを提供することを目的とする。更に、本発明は、これらのラップネットの製造方法を提供することを目的とする。イ 【課題を解決するための手段】【0017】上記課題の解決にあたり、本発明者は、鋭意研究の結果、ラップネットの構造を検討し、ラップネットの素材としてセルロース系繊維からなる糸を組み合わせることにより、上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。【0018】即ち、本発明に係るラップネットは、請求項1の記載によると、編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなることを特徴とする。【0019】

5 また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載のラップ

ネットであって、前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とする。ウ 【発明の効果】【0029】上記請求項1の構成によれば、本発明に係るラップネットは、セルロース系繊維からなる経糸と緯糸とで編成された編地からなる。経糸は、編地の長さ方向に伸びる複数の独立鎖編を形成する。一方、緯糸は、独立鎖編の各ループと他の独立鎖編の他のループとを連結して編地を形成する。【0030】このように、経糸と緯糸が共にセルロース系繊維からなることにより、家畜が飼料と一緒にセルロース系繊維からなるラップネットの一部を食べてしまっても、干草や藁などと同様の成分であり、家畜の体内で消化され家畜への影響が出ることがない。また、セルロース系繊維からなるラップネットの一部が発酵原料に混入して発酵装置に入ってしまった場合でも、干草や藁などと同様に分解されてバイオエタノールの発酵原料となる。更に、ロールベールからラップネットを除去することなく、ロールベールと共にラップネットを細断して全量を家畜の飼料とし、或いは、発酵原料として利用することもできる。【0031】また、上記請求項2の構成によれば、経糸の糸強度を緯糸の糸強度より大きくしてもよい。このことにより、使用後のラップネットを除去する際に糸強度の弱い緯糸が優先的に切断され、ラップネットの除去作業が容易になる。よって、除去作業の作業者が誤って刃物により身体を傷つけるという事故が生じない。

5 【0045】

よって、本発明によれば、運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持し、且つ、ラップネットの除去作業が容易になり、ラップネットの残渣が飼料、或いは、発酵原料に混入した場合でも、家畜への影響が少なく、或いは、発酵装置がトラブルを生じないラップネットを提供することができる。更に、本発明は、これらのラップネットの製造方法を提供することができる。エ 【発明を実施するための形態】【0048】《第1実施形態》本第1実施形態は、セルロース系繊維からなる経糸と緯糸とで編成されるラップネットについて説明する。本第1実施形態においては、経糸及び緯糸に使用されるセルロース系繊維には、綿、麻などの天然セルロース系繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック又はテンセルなどの再生セルロース系繊維などが挙げられる。なお、麻繊維としては、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)などが挙げられる。【0049】本第1実施形態においては、経糸と緯糸が共にセルロース系繊維からなることにより、ロールベールからラップネットを除去する際にラップネットの一部が残渣となって干草や藁などに混入した場合にも、家畜への影響が少なく、或いは、発酵装置がトラブルを生じることがない。【0050】即ち、ロールベールを家畜の飼料として利用する場合に、家畜が飼料と一緒にセルロース系繊維からなるラップネットの一部を食べてしまっても、干草や藁などと同様の成分であり、家畜の体内で消化され家畜へ

5 の影響が出ることがない。また、ロールベールをバイオエタノールの発

酵原料として利用する場合に、セルロース系繊維からなるラップネットの一部が発酵原料に混入して発酵装置に入ってしまった場合でも、干草や藁などと同様に分解されてバイオエタノールの発酵原料となる。更に、ロールベールからラップネットを除去することなく、ロールベールと共にラップネットを細断して全量を家畜の飼料とし、或いは、発酵原料として利用することもできる。【0051】また、経糸と緯糸が共にセルロース系繊維からなることにより、ロールベールから除去したラップネットは、そのまま土中に埋めて廃棄することができる。或いは、使用後のラップネットを焼却処分にする場合でも、従来の合成樹脂繊維に対して、カーボンニュートラルであり新たにCO 2 を排出することにはならない。よって、使用後のラップネットを廃棄する際の労力と処理コスト、及び、環境への影響が低減できる。【0052】なお、本第1実施形態においては、上述のセルロース系繊維の中でも、天然セルロース系繊維を使用することが好ましく、更に、綿繊維を使用することが特に好ましい。綿繊維は、汎用繊維であり様々な太さの紡績糸を安価、且つ、容易に入手することができるからである。【0053】本第1実施形態において、経糸に綿繊維からなる糸条を使用する場合には、太番手の単糸をそのまま使用するようにしてもよく、或いは、中番手から太番手の単糸を少なくとも2本以上合わせて使用するようにしてもよい。例えば、綿繊維の単糸を2本以上合わせて使用する場合には、5番手~20番手の短繊維紡績糸条の単糸の2本以上に撚りを掛けずに引き揃えた引き揃え糸として使用するようにしてもよい。また、5番手

5 ~20番手の短繊維紡績糸条の単糸の2本以上を撚り合わせた合撚糸と

して使用するようにしてもよい。【0058】本第1実施形態においては、経糸の糸強度が緯糸の糸強度より大きいことが要求される。このことにより、使用後のラップネットを除去する際に糸強度の弱い緯糸が優先的に切断され、ラップネットの除去作業がより容易になる。よって、除去作業の作業者が誤って刃物により身体を傷つけるという事故が生じない。【0059】ここで、経糸と緯糸が共に綿繊維からなる糸条からなるときには、上述のように、経糸には、中番手から太番手の単糸の糸強度を更に強くした引き揃え糸或いは合撚糸を使用し、一方、緯糸には単糸を使用して、経糸と緯糸との糸強度差を大きくすることが好ましい。このことにより、経糸と緯糸に共に綿紡績糸を使用した場合でも、糸強度の弱い緯糸が優先的に切断され、ラップネットの除去作業がより容易になる。【0060】ここで、経糸の糸強度に比べ緯糸の糸強度を小さくする理由について更に詳細に説明する。ラップネットの使用時の物性としては、編地の長さ方向の強度を経糸が維持し、ヨコ方向の連結を緯糸が維持している(編成については後述)。従って、ラッピング後のロールベールの外周をしっかりと固定するのは経糸の糸強度であり、緯糸には経糸ほどの糸強度が要求されない。【0061】従来のラップネットが経糸と緯糸を同じ糸条を使用しているのは、製造が簡単で安価に編成できるからである。これに対して、本第1実施形態においては、緯糸には経糸より糸強度の小さな糸を使用して、経糸と

5 緯糸に糸強度差を付ける。このことにより、使用後のラップネットの除

去作業において、糸強度の大きい経糸をロールベールから引き離す際に、これに連結している糸強度の小さい緯糸が切断される。【0062】このようにして緯糸が切断されると、ラップネットは、糸強度の大きい経糸からなる独立鎖編の状態(編成については後述)となる。これらの独立鎖編は、ロープ形状と同じでありロールベールから容易に除去することができる。このことにより、ラップネットの除去作業が容易になり、除去作業の作業者が誤って刃物により身体を傷つけるという事故が生じない。【0063】一方、除去作業で切断された緯糸の多くは、独立鎖編の経糸に伴って除去される。但し、一部の緯糸は、残渣となってロールベールの乾牧草やサイレージに混入することとなる。しかし、これらの残渣は、セルロース系繊維からなり干草や藁などと同様の成分であり、家畜の体内で消化され家畜への影響が出ることがない。また、ロールベールをバイオエタノールの発酵原料として利用する場合に、セルロース系繊維からなるラップネットの一部が発酵原料に混入して発酵装置に入ってしまった場合でも、干草や藁などと同様に分解されてバイオエタノールの発酵原料となる。更に、ロールベールからラップネットを除去することなく、ロールベールと共にラップネットを細断して全量を家畜の飼料とし、或いは、発酵原料として利用することもできる。【0067】ここで、本第1実施形態に係るラップネットの編成を具体的に説明する。図1は、本第1実施形態に係るラップネットの編成組織を示す概略図である。図1において、ラップネット(10)は、糸強度の強いセル

5 ロース系繊維からなる経糸(1)と糸強度の弱いセルロース系繊維から

なる緯糸(2)とからなり、この経糸(1)が編地の基礎を構成するループ(20)を形成する。【0068】図1においては、4ウェール(タテ方向の畝)×8コース(ヨコ方向の畝)のチェーンステッチからなる編地を示す。各ウェール(30)及び各コース40)は、更に上下左右方向に編成されて広幅長尺の編地を形成する。この図1においては、タテ方向に並列した4本の経糸(1)が、それぞれ、図示上方に延びながら連続したループ(20)を形成し、それぞれ独立鎖編からなるウェール(30)を構成する。【0069】この状態においては、各独立鎖編のウェール(30)は、それぞれが連結しておらず、編地を構成しない。そこで、セルロース系繊維からなる経糸群(1)が各独立鎖編のウェール(30)を形成すると共に、セルロース系繊維からなる緯糸(2)がウェール(30)の各ループ(20)と他のウェールの他のループ(20)とを連結するようにして経編ネットを編成する。

(2) 前記(1)の記載事項及び本件特許の特許請求の範囲の記載によれば、本件

明細書には、本件各発明に関し、以下のとおりの開示があると認められる。ア 農畜産業では、牧草や刈り取られた草木を円柱形に成形したロールベールを形成し、その形状が崩れないようにラップネットで被覆し、その上からラップフィルムを用いて被覆して運搬・保管することが行われるところ、従来、ラップネットやラップフィルムには、ポリエチレンなどの汎用合成樹脂が使用されている。このようにして運搬・保管されたロールベールを利用する際には、ラップネット及びラップフィルムを切断・除去して解きほぐす作業を行う必要があるが、ラップネットを切断

5 除去する際には強い力が必要なため、作業者が誤って刃物により身体を

傷つけるという問題や、除去したラップネットの一部が家畜用飼料の中に混入し、家畜が飼料と一緒に合成樹脂製のラップネットを食べてしまうことで、家畜が病気になり、あるいは死んでしまうという問題があった。また、除去したラップネット及びラップフィルムは産業廃棄物として処分しなければならず、農畜産業者にとってその労力と処理コストが大きいという問題があった。さらに、ロールベールをバイオエタノールの発酵原料として使用する場合、ラップネットに使用されるポリエチレンなどの汎用合成樹脂は、バイオエタノールの発酵原料として利用することができないため、バイオエタノールの発酵原料の中にラップネットの一部が混入すると、発酵槽が詰まる、あるいは混合装置に絡まるなどのトラブルが考えられた。(以上につき【0001】、【0002】、【0008】、【0010】ないし【0015】)イ 本件各発明は、前記アの課題に対して、運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持しつつ、ラップネットの除去作業が容易になり、ラップネットの残渣が飼料や発酵原料に混入した場合でも、家畜への影響が少なく、また、発酵装置にトラブルが生じないラップネットを提供することを目的とするものであり、そのための解決手段として、セルロース系繊維から成る糸を組み合わせる編地から成るラップネットとして、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る構成を採用したものである。(【0016】ないし【0019】)本件各発明によれば、経糸と緯糸が共にセルロース系繊維から成ることにより、家畜が飼料と一緒にセルロース系繊維から成るラップネットの一部を食べてしまっても、干草や藁などと同様の成分であるため、家畜の体内で消化され家畜への影響が出ることがないし、セルロース系繊維から成るラップネットの一部が発酵原料に混入して発酵装置に入ってし

5 まった場合でも、干草や藁などと同様に分解されてバイオエタノールの

発酵原料となる。また、ロールベールからラップネットを除去することなく、ロールベールと共にラップネットを細断して全量を家畜の飼料とし、あるいは、発酵原料として利用することもできるとの作用効果を奏する。さらに、経糸の糸強度を緯糸の糸強度より大きくすることにより、使用後のラップネットを除去する際に糸強度の弱い緯糸が優先的に切断され、ラップネットの除去作業が容易になるという作用効果も奏する。(以上につき【0029】ないし【0031】)

2 争点1(被告製品は本件発明2の技術的範囲に属するか)について

構成要件2Aは、「前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きいことを特徴とする、ラップネット」であるところ、同構成要件の「経糸」及び「緯糸」とは、ラップネットの編地を構成する「経糸」及び「緯糸」であることは、その文言上明らかである。そして、被告は、構成要件2Aの「経糸」が、引き揃え糸又は撚糸となったものを含む場合は、被告製品が、構成要件2Aを充足することは争っていないところ、請求項2が引用する請求項1の構成要件1Aは、「経糸」について何ら限定をしていないこと、本件明細書には、「本第1実施形態において、経糸に綿繊維からなる糸条を使用する場合には、太番手の単糸をそのまま使用するようにしてもよく、或いは、中番手から太番手の単糸を少なくとも2本以上合わせて使用するようにしてもよい。例えば、綿繊維の単糸を2本以上合わせて使用する場合には、5番手~20番手の短繊維紡績糸条の単糸の2本以上に撚りを掛けずに引き揃えた引き揃え糸として使用するようにしてもよい。また、5番手~20番手の短繊維紡績糸条の単糸の2本以上を撚り合わせた合撚糸として使用するようにしてもよい。」(【0053】)との記載があることからすれば、構成要件1A及びこれを引用する構成要件2Aの「経糸」は、引き揃え糸又は撚糸を含むと解するのが相当である。

5 以上によれば、被告製品は、構成要件2Aを充足し、被告製品は、本件発明

2の技術的範囲に属するものと認められる。

3 争点2-1-1(乙6文献を主引用例とする進歩性欠如)について

(1) 乙6文献の記載事項について

ア 乙6文献には、その翻訳文である乙6の2によれば、次の記載がある(下記記載中に引用する図1、図3については別紙乙6図面目録を参照)。【0001】本発明は、畜産農家で家畜飼料用の枯草を貯蔵、保管する梱包ラッピングサイロに用いられる梱包ラッピングサイロ用網反物に関するものである。【0007】梱包ラッピングサイロの前段階に用いられる網反物は、ポリエチレンフィルム糸として350~450デニール1本の太さを有する経糸を1インチ間隔で配置し、経糸の間ごとにポリエチレンフィルム糸として350~450デニール1本の太さを有する連結糸をジグザグに編んで網目状に形成して構成する。【0008】しかし、かかる網反物は、経糸の間隔が細かく織り上げられて製織するのに時間が多くかかるのに比べ、外力を沢山受ける経糸が丈夫でなくて切れやすく、網反物が裂けるおそれがあり、これにより枯草を整える作業を円滑に行うことができない短所がある。【0009】したがって、本発明の目的は、・・・糸の重量に比べて丈夫でありながらも生産率が高く、価格競争力の面において極めて優れた梱包ラッピングサイロ用網反物を提供することにある。【0010】

5 上記の目的を達成するための本発明の実施例による梱包ラッピングサ

イロ用網反物は、ポリエチレン糸として350~450デニール2本の太さを有する経糸を1.5~3インチ間隔で配置し、前記経糸の間ごとにポリエチレン糸として350~450デニール1組の太さを有する連結糸をジグザグに編んで網目状に形成することを特徴とする。【0012】また、本発明の他の実施例による梱包ラッピングサイロ用網反物は、ポリエチレンフィラメント糸として350~450デニール2本の太さを有する経糸を1~1.4インチ間隔で配置し、前記経糸の間ごとにポリエチレンフィラメント糸として350~450デニール1本の太さを有する連結糸をジグザグに編んで網目状に形成することを特徴とする。【0013】また、本発明の他の実施例による梱包ラッピングサイロ用網反物は、ポリエチレンフィラメント糸として600~800デニール1本の太さを有する経糸を1~1.4インチの間隔で配置し、前記経糸の間ごとにポリエチレンフィラメント糸として350~450デニール1組の太さを有した連結糸をジグザグに編んで網目状に形成することを特徴とする。【0018】図1は本発明の実施例による網反物の斜視図であり、・・・図3は本発明の他の実施例による網反物の斜視図であり、・・・。【0019】図1ないし図4に示された本発明の実施例による網反物2、2aは、ポリエチレン糸からなる経糸4、4aを一定の間隔で配置した後、経糸4、4aの間ごとにポリエチレン糸からなる連結糸6をジグザグで編んで網目状に形成して製織する。【0020】

5 先ず、図1に示された本発明の実施例の網反物2は、350~450

デニールの糸2本を合糸して形成した経糸4を1.5~3インチ間隔dで配置し、経糸4の間ごとに350~450デニールの糸1本で合糸して形成した連結糸6をジグザグに編んで製織する。【0024】枯草を包んで一定の単位で束ねるとき、相対的に力を最も沢山受けるのは経糸方向である。したがって、本発明の実施例においては力を沢山受ける経糸4の太さを連結糸6の2倍にした。また、経糸4間の配置間隔dは1.5~3インチとすることができ、好ましくは2インチとして消耗される糸の重量は、背景技術において説明した従来の網反物と類似しつつ丈夫で、生産率は上がり、価格競争力の面において優れるようにした。【0031】先ず、図3に示された本発明の他の実施例による網反物10は、350~450デニールの糸2本を合糸して形成した経糸14を1~1.4インチ間隔dで配置し、経糸14の間ごとに350~450デニールの糸1本を合糸して形成した連結糸16をジグザグに編んで網目状に形成して製織する。【0032】本発明の他の実施例においては、力を多く受ける経糸14の太さは連結糸16の2倍とし、経糸14の配置間隔dは前記従来の網反物と類似に1~1.4インチとすることができ、好ましくは1インチとして強く丈夫な網反物10を製織するようにした。イ 乙6文献の図1、3の記載から、同一の経糸14から形成される複数のループが経糸方向に連続した鎖編が経糸方向と直行する方向に並んでおり、かつ鎖編は、各鎖編を構成するループによって連結されていない

5 こと、ジグザクに挿入された連結糸16によって隣り合う鎖編同士が連

結されていること、連結糸16が、経糸方向に連続するループ同士の交絡点に挿入されていることが記載されていると認められる。また図3の記載から、経糸14を形成する糸2本が撚ったものであることが記載されていると認められる。ウ 前記ア及びイの記載によれば、乙6文献には以下の発明(乙6発明)が記載されていると認められる。連結糸と同じ太さの350~450デニールのポリエチレン糸2本を撚って合糸して形成した経糸14を1~1.4インチ間隔dで配置し、経糸14の間ごとに350~450デニールのポリエチレン糸1本で形成した連結糸16をジグザグに編んで網目状に形成した梱包ラッピングサイロ用網反物10であって、同一の経糸14から形成される複数のループが経糸方向に連続した鎖編が経糸方向と直行する方向に並んでおり、ジグザクに挿入された連結糸16によって隣り合う鎖編同士が連結され、連結糸16が、経糸方向に連続するループ同士の交絡点に挿入されている梱包ラッピングサイロ用網反物10。

(2) 乙6発明と本件発明の構成の対比

乙6発明の「経糸14」は本件発明1の「経糸」に相当し、以下同様に、「連結糸」は「緯糸」に、「梱包ラッピングサイロ用網反物10」は「ラップネット」に、それぞれ相当する。そして、乙6発明において、「350~450デニールのポリエチレン糸2本を撚って合糸して形成した経糸14を1~1.4インチ間隔dで配置し」、「同一の経糸14から形成される複数のループが経糸方向に連続した鎖編が経糸方向と直行する方向に並んで」いることと、本件発明1において、「編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成」することとは、編地の長さ方向に並列した繊維から成

5 る経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立

鎖編を形成する点で一致し、また乙6発明において、「経糸14の間ごとに350~450デニールのポリエチレン糸1本で形成した連結糸16をジグザグに編んで網目状に形成」し、「ジグザクに挿入された連結糸16によって隣り合う鎖編同士が連結されており、連結糸16が、経糸方向に連続するループ同士の交絡点に挿入されて」いることと、本件発明1において、「前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなる」こととは、独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと緯糸によって連結されて成る編地から成る点で一致する。

(3) 乙6発明と本件発明1の一致点及び相違点

ア 一致点編地の長さ方向に並列した繊維から成る経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、前記独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと緯糸によって連結されて成る編地から成るラップネット である点。イ 相違点編地の長さ方向に並列した繊維から成る経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループと緯糸によって連結されて成る編地から成ることに関して、本件発明1は、経糸群及び緯糸がいずれもセルロース系繊維から成るのに対し、乙6発明は、経糸が350~450デニールのポリエチレン糸2本を撚って合糸して形成したもの、緯糸が350~450デニールのポリエチレン糸1本で形成したものである点。

(4) 相違点の容易想到性について

ア 各文献の記載事項

5 (ア) 実願昭57-173040公開実用新案公報(以下「乙12の1文

献」という。)及び実願昭57-90411公開実用新案公報(以下「乙12の2文献」という。)には、農林用資材として使用される縄類の一つであるポリプロピレン樹脂で成形した縄(以下「PP縄」という。)及び農業用結束紐の一つであるPP紐は、分解することなく形態を保持するため、耕転機の故障や植物の毛細根の伸張を阻害する問題があるほか、結束する稲葉と共に切断され家畜の飼料とした場合、消化不良の原因となったり、食道に詰まる危険があること、実願昭58-33831公開実用新案公報(以下、「乙12の3文献」という。)には、牧草用結束紐の一つであるPP紐は、家畜に牧草を与える際に、PP紐が取り除かれずに牧草に混入してしまうことにより、牛、馬の消化器中に上記繊維が蓄積して死亡する例が増加していることが記載されている。(イ) これらの記載からすると、ポリエチレンを用いた牧草用結束紐等は、土中で分解せず地中に堆積して問題を生じさせること、家畜の消化不良の原因となることが当業者における課題であったと認められるから、牧草用結束紐等と同様に、飼料となる牧草等を結束する乙6発明のポリエチレンを用いた経糸及び連結糸(緯糸)から成る梱包ラッピングサイロ用網反物についても、土中で分解せず地中に堆積して問題を生じさせること、家畜の消化不良の原因となることは、当業者にとって自明の課題であったといえる。イ 乙7文献の記載事項(ア) 乙7文献には以下の記載がある。a 実用新案登録請求の範囲セルロース系繊維の糸状あるいはフイラメント状物が、抄き込みあるいは貼り合わせにより天然繊維よりなる紙に、その巾1インチ当り1~4本存在するように紙が構成され、該紙が0.6~6.0g/m

5 の目付を有するように撚り加工されてなる農業用紙紐。(明細書1ペ

ージ4~10行)b 考案の詳細な説明本考案は、使用中は必要な強力を保持するが不要となつて土中に埋没した場合は分解して形態を失う農業用結束紐に関するものである。従来農業資材として使用されている紐類には稲等の結束、トマト、キウリ、エンドウなどの支柱を固定する紐、果樹の枝を矯正する紐、ソサイ類の蔓を誘導する吊り紐等がありこれらの紐は、主として麻紐、ポリプロピレン樹脂で成形した紐(以下PP紐と略記)が使用されているが、紙紐は湿潤強力不足のため全く使われていない。農業用結束紐としての麻紐、PP紐は、使用時の引張り強力は全天候に耐える力を有することで優れているが、使用后不要になつた紐が農地に落下した場合は長期に亘つて土中で形態を失わないので翌年の耕作期に耕転機の爪に引掛るトラブルが発生する。特にPP紐は地中に累積滞留して耕転機の爪にからみ、耕転機故障等を誘発し、作業能率を阻害するし、植物の毛細根の伸長を阻害する。又PP紐、サイザル紐で結束した稲藁を切断して家畜の飼料にする場合は消化不良の原因になつたり食道に詰る危険さえある。本考案者らは以上の欠点を解決するために種々検討を行つた結果、使用中は必要な性能を保有し、不要になつて土中に埋没した后は急速に分解消失する紙紐を考案したものである。(明細書1ページ12行~2ページ下から4行)本考案の目的は屋外で使用中必要な湿潤強力を保有し、土中に埋没した場合は分解消失する機能を付与した紙紐を得ることにあるが、このような紙紐は以下に述べるような構成とすることにより得られることが判明した。

5 即ち、天然繊維のみから成る紙に、エンドレスの単糸状物を添付

して使用時の耐水強度を付与し、土中に埋設した場合には天然繊維が腐蝕分解し消失するようになしたものである。(明細書4ページ1行~9行)この製造法としては天然繊維を抄紙する際セルロース系繊維を加工した単糸又は単糸から成るネツトを抄き込んでもよいし、一旦捲取つた天然繊維紙にセルロース系繊維からなる単糸又はネツトを貼り合せてもよい。・・・(明細書4ページ10行~14行)天然繊維のみから成る紙とは、木材パルプ、コツトンリンターパルプ、麻パルプ、レーヨン繊維等のセルロース系繊維状物であり、セルロース系繊維から成る単糸又は単糸から成るネツトとは、レーヨン、コツトン等の紡績糸で5番手~40番手のもの、及び500~3000デニール(dr)のレーヨンフイラメント束であつてもよいがこれを単体又はネツトに加工したものである。実施例木材パルプ(NUKP)を主原料とし、これに以下に示すレーヨン・綿混紡糸あるいはレーヨンフイラメント糸を抄紙時に抄合せ法で種々の割合に入るように紙を試作し、これを紙紐にして農場でテストした・・・。(明細書5ページ6行~下から1行)(イ) 上記(ア)の記載事項によれば、乙7文献には、農業用結束紐としての麻紐、PP紐は土中分解しないため、ポリプロピレン樹脂で成形した農業用結束紐に換えて、レーヨンやコットン等の紡績糸あるいはレーヨンフィラメント糸を抄合せ法で種々の割合に入るようにした紙や単糸を使用することで土中分解することができる発明が開示されていると認められる。ウ 検討

5 上記アのとおり、飼料となる牧草等を結束する乙6発明のポリエチレ

ンを用いた経糸及び連結糸(緯糸)から成る梱包ラッピングサイロ用網反物は、土中で分解せず地中に堆積して問題を生じさせること、家畜の消化不良の原因となることは、当業者にとって自明の課題であったといえるから、その課題の解決のため、ポリエチレンを、土中で分解することができ、家畜が消化可能な材料に換えようとする動機付けがある。そして、乙7文献には、ポリプロピレン樹脂で成形した農業用結束紐に換えて、レーヨンやコットン等の紡績糸あるいはレーヨンフィラメント糸を抄合せ法で種々の割合に入るようにした紙や単糸を使用することで、少なくとも土中に埋没した場合に土中で分解消失する発明が開示されているところ、上記レーヨン及びコットンはセルロース系繊維から成ることが周知の事項であるといえるから、当業者は、セルロース系繊維から構成された農業用の結束紐が土中で分解消失されることを理解することができる。そうすると、乙6発明のポリエチレン糸を、乙7発明の土中で分解消失されるセルロース系繊維に換えることは、当業者が容易に想到し得たものということができる。エ

(原告の主張)

について(ア) 原告は、乙7発明の農業用紙紐は、農業の分野(植物栽培用)で使用される資材であって、畜産業の分野で使用される乙6発明(ラップネット)と農業の分野(植物栽培用)で使用される乙7発明(農業用紙紐)とは、技術分野及び用途が共通するものではないから、乙6発明に乙7発明を適用する動機付けはないと主張する。しかしながら、農林用資材として使用されるPP縄及び農業用や牧草用の結束のために使用されるPP紐に係る乙12の1ないし3文献に、家畜の飼料とした場合、消化不良の原因となるなどの危険性がある旨、農業用結束紐に係る乙7文献に、PP紐、サイザル紐で結束した稲藁

5 を切断して家畜の飼料にする場合は消化不良の原因になったり食道に

詰る危険さえあるとの記載があることからすると、上記農業用資材は、家畜の飼料用とする農作物のために使用される場合があることを当然の前提としているといえるのであって、乙6発明と乙7発明は、技術分野において関連性があり、かつ用途においても共通するものといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。(イ) 原告は、本件特許が目的とする作用・効果には、運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持すること、ラップネットの除去作業が容易であること、ラップネットの残渣が発酵原料に混入した場合でも発酵装置がトラブルを生じないこと、ラップネットの廃棄が容易であることも含まれるところ、乙6発明及び乙7発明には、これらの課題は記載されていないから、乙6発明に乙7発明を適用することは容易でないと主張する。しかしながら、本件発明1は、経糸及び緯糸について、これらがセルロース系繊維から成る旨特定するものではあるものの、本件特許の特許請求の範囲に記載の請求項3及び4とは異なり、経糸と緯糸の番手の記載もなく、経糸と緯糸の強度を何ら特定していないものであるから、本件発明1は、運搬・保管に有効なラップネットによるラッピングのメリットを維持すること、ラップネットの除去作業が容易であること、という作用・効果を奏するものであるということはできない。また、ラップネットの残渣が発酵原料に混入した場合でも発酵装置がトラブルを生じない、ラップネットの廃棄が容易であるとの点については、証拠(乙16、乙24)によれば、セルロース系繊維を発酵させてバイオマス原料とすることは、当業者にとって周知の事項であるといえるから、これらの作用・効果は、乙6発明、乙7発明及び周知技術から予測し得ないものということはできない。

5 したがって、原告の上記主張は採用することができない。

(5) 小括

以上によれば、本件発明1は、乙6発明及び乙7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を欠くものである。

4 争点2-2-1(乙6文献を主引用例とする進歩性欠如)について

(1) 乙6文献の記載について

乙6文献の記載は、前記3(1)に記載のとおりであって、乙6文献には、「経糸14」を「350~450デニールのポリエチレン糸2本を撚って合糸して形成し」、「連結糸16」を「350~450デニールのポリエチレン糸1本で形成」することで、「相対的に力を最も沢山受けるのは経糸方向であ」って、「力を沢山受ける経糸4の太さを連結糸6の2倍」とすることで、「従来の網反物と類似しつつ丈夫」なものとするとの記載がある(【0024】【0032】)。上記記載からすれば、乙6文献に記載された梱包ラッピングサイロ用網反物の経糸14の糸強度は、連結糸16の糸強度よりも大きいことは明らかであるから、乙6文献には、「前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きい」ことが開示されていると認められる。

(2) 乙6発明と本件発明2の構成の対比並びに一致点及び相違点

上記(1)のとおり、乙6文献には、「前記経糸の糸強度が前記緯糸の糸強度より大きい」ことが開示されているから、乙6発明と本件発明2の構成要件2Aには、そもそも実質的な相違点はない。

(3) 容易想到性

上記(2)のとおり、乙6発明と本件発明2の構成要件2Aには、そもそも実質的な相違点はないから、構成要件2Aは、乙6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、前記3(争点2-1-1)で認定説示したとおり、本件発明2が引用する本件発明1は、乙6発明及び

5 乙7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

これに対し、原告は、乙6発明の作用・効果は、経糸の太さを従来の2倍にし、かつ、経糸の配置間隔を2倍にすることにより、糸の重量を変えずに丈夫であり、生産率が高く、価格競争力に優れたラップネットを提供するというものであるのに対し、本件発明2の作用・効果は、経糸の糸強度を緯糸の糸強度より大きくすることにより、ラップネットの除去作業において、糸強度の小さい緯糸が適度に切断されて、糸強度の大きい経糸から成る鎖編の状態となり、ロールベールから容易に除去することができることにあるから、本件発明2と乙6発明は、技術的思想、作用・効果を異にするものであって、乙6を知る当業者が本件特許の技術的思想を想到すること自体が容易ではないと主張するが、上記のとおり、経糸の糸強度が緯糸の糸強度より大きい点に関し、そもそも本件発明2と乙6発明に実質的に相違点はないから、相違点があることを前提とする原告の上記主張は前提を欠き、採用することができない。

(4) 小括

以上によれば、本件発明2は進歩性を欠くものである。

5 小括

以上によれば、その余の無効事由について検討するまでもなく、本件発明1及び本件発明2はいずれも進歩性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(特許法123条1項2号、29条2項)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。

第4 結論

よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官澁 谷 勝 海裁判官塚 田 久 美 子裁判官浅 川 浩 輝別紙被告製品目録

1 商品名:e-コットンネット

2 商品名:コットンラップ

3 商品名:天然素材の梱包用ベールネット

以上別紙乙6図面目録図1 図3

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