令和7(行ケ)10054行政訴訟 特許権
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| 裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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| 裁判年月日 |
令和8年2月9日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 当事者 |
原告ベーリンガーインゲルハイムインターナショナルゲゼルシャフトミッ 被告沢井製薬株式会社
日本ジェネリック株式会社
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| 対象物 |
DPPIVインヒビターの使用 |
| 法令 |
特許権
特許法29条2項1回 特許法148条1項1回
|
| キーワード |
審決29回 無効10回 実施10回 進歩性9回 特許権3回 無効審判3回 刊行物1回 分割1回 優先権1回
|
| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申立 |
| 事件の概要 |
以下の事実は、当事者間に争いがないか、又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる。 |
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判決文
令和8年2月9日判決言渡
令和7年(行ケ)第10054号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和7年12月9日
判 決
原 告 ベーリンガー インゲルハイム イン
ターナショナル ゲゼルシャフト ミッ
ト ベシュレンクテル ハフツング
同訴訟代理人弁護士 北 原 潤 一
同 梶 並 彰 一 郎
同訴訟代理人弁理士 日 野 真 美
15 同 西 澤 恵 美 子
被 告 沢 井 製 薬 株 式 会 社
(以下「被告沢井製薬」という。)
20 同訴訟代理人弁護士 森 本 純
同 芳 賀 彩
被 告 日本ジェネリック株式会社
(以下「被告日本ジェネリック」という。)
同訴訟代理人弁護士 古 城 春 実
同 牧 野 知 彦
同 平 井 佑 希
主 文
1 原告の請求を棄却する。
5 2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申立
てのための付加期間を30日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
10 特許庁が無効2023-800045号事件について令和7年3月19日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
以下の事実は、当事者間に争いがないか、又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる。
15 1 特許庁における手続の経緯等
(1) 原告は、発明の名称を「DPPIVインヒビターの使用」とする発明に係
る特許(特許第6143809号、請求項の数8。以下「本件特許」とい
う。)の特許権者である。本件特許は、平成27年6月16日に分割出願さ
れ(原出願日は平成19年5月3日。パリ条約による優先権主張は平成18
20 年5月4日。以下「本件優先日」という。)、平成29年5月19日に特許権
の設定登録がされた。
(2) 被告沢井製薬は、令和5年7月10日、本件特許について、無効審判請求
をした。特許庁は、これを無効2023-800045号事件として審理
し、被告日本ジェネリックは特許法148条1項により請求人としてこの審
25 判に参加した。
特許庁は、令和7年3月19日、「特許第6143809号の請求項1~
8に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」
という。)をし、その謄本は、同月31日、原告に送達された(付加期間9
0日)。
(3) 原告は、令和7年5月30日、本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起
5 した。
2 本件特許に係る発明の概要
(1) 特許請求の範囲
本件特許における特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、本
件特許の各請求項に係る発明を請求項番号に対応して「本件発明1」などと
10 いい、総称して「本件発明」という。)。
【請求項1】
経口投与用に5mg用量の1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチ
ル]- 3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペ
リジン-1-イル)キサンチン(判決注:以下「本件化合物」という。)を含
15 む、タイプ2糖尿病の治療用医薬組成物であって、1日に1回投与するため
の前記医薬組成物。
【請求項2】
医薬組成物が他の抗糖尿病薬と組み合わせて投与される、請求項1記載の
医薬組成物。
20 【請求項3】
他の抗糖尿病薬がメトホルミン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパ
グリニド、ピオグリタゾン、α-グルコシダーゼブロッカー、インシュリ
ン、インシュリン類似体、GLP-1及びGLP-1類似体から選ばれる、請
求項2記載の医薬組成物。
25 【請求項4】
他の抗糖尿病薬がメトホルミンである、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
他の抗糖尿病薬がスルホニルウレアである、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項6】
他の抗糖尿病薬がピオグリタゾンである、請求項2記載の医薬組成物。
5 【請求項7】
他の抗糖尿病薬がα-グルコシダーゼブロッカーである、請求項2記載の
医薬組成物。
【請求項8】
他の抗糖尿病薬がインシュリンまたはインシュリン類似体である、請求項
10 2記載の医薬組成物。
(2) 本件特許に係る明細書等の記載事項
本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。甲201)の抜粋
を、別紙「本件明細書等の記載事項(抜粋)」に掲げる。これによれば、本
件発明について、以下のとおりの事項が開示されているものと認められる
15 (【】内の4桁の数字は段落番号を表す。以下同じ。)。
ア 技術分野
生理的な機能障害の治療のため、及び潜在的に危険な状態にある患者に
おけるこのような機能障害の発生リスクを減少させるため、DPPⅣイン
ヒビター(酵素DPPⅣの働きを阻害する物質)を治療効果が達成できる
20 薬剤の調整のために使用すること。(【0001】)
イ 背景技術
DPPⅣインヒビターは、ペプチドGLP-1を含んだ生物活性ペプチ
ドの血漿レベルに影響し、糖尿病の治療を大いに促進する分子である
(【0002】)。いくつかの選択したDDPⅣインヒビターは、特に前糖
25 尿病、耐糖能障害、病的な空腹時グルコース、糖尿病性足病変、糖尿病が
誘発する潰瘍、糖尿病性高脂血症、糖尿病性異常脂質血症、新たに診断さ
れたタイプ1の糖尿病、妊娠性糖尿病、高血糖症、アドレナリン作動性の
食後の症状又は心不全から選択される医学的又は生理学的な機能障害であ
ると診断された患者の治療上の処置のための薬物の調製に特に適している
(【0009】)。これらの薬物は、治療にかかわらず患者が障害のあるグ
5 ルコース代謝、上昇したHbA1c値、障害のある空腹時グルコース値、
顕性タイプ2糖尿病、糖尿病性足病変、糖尿病が誘発する潰瘍、糖尿病性
高脂血症又は糖尿病性異常脂質血症に罹患するであろうこと、及び治療に
かかわらずインシュリン治療が必要となるか又は大血管性の合併症を起こ
すことのリスクを減少させるためにも使用される(【0010】)。
10 ウ 発明が解決しようとする課題
DPPⅣインヒビターの使用により、生理的な機能障害を治療し、潜在
的に危険な状態にある患者における機能障害の発生リスクを減少させる。
さらに、対応する単離又は貯蔵媒体、及び使用する媒体に対してDPPⅣ
インヒビターを添加することによって、ランゲルハンス島又はβ細胞の活
15 力及び分泌能力を向上させる。(【0011】)
エ 課題を解決するための手段
【化3】~【化14】の化学式で特定されるDPPⅣインヒビターは、
構造的に類似するDPPⅣインヒビターから区別され、好ましい薬理学的
な特性、レセプター選択性及び好ましい副作用特性と優秀な効能及び長く
20 持続する効果を組み合わせ、又は他の医薬活性物質と組み合わせた場合
に、予想外の治療の利点又は改良をもたらす。また、異なる代謝機能障害
は多くの場合同時に発生するため、多くの異なる活性原理の組み合わせが
かなり頻繁に現れる。したがって、診断された機能障害によって、DPP
Ⅳインヒビターを他の抗糖尿病物質から選択した活性物質、特に血液中の
25 血糖レベル又は脂質レベルを低下させ、血液中のHDLレベルを上げ、血
圧を下げ又はアテローム性動脈硬化又は肥満の治療で指示される活性物質
と組み合わせた場合、改良した治療の結果が得られる。(【0017】【0
021】)
DPPⅣインヒビターの要求される投与量は、静脈投与される場合は
0.1mg~10mg、好ましくは0.25mg~5mgであり、経口投
5 与される場合は0.5mg~100mg、好ましくは2.5mg~50m
gであり、各場合において一日1~4回投与される。(【0018】)
実施例2として顕性タイプ2糖尿病の予防、実施例3としてタイプ2糖
尿病の治療、実施例13としてDPPⅣインヒビターとメトホルミンを組
み合わせたタイプ2糖尿病の治療について記載されているが(【003
10 7】【0038】【0049】)、具体的な試験結果は示されていない。
3 甲第1号証記載の発明について
(1) 甲第1号証の記載
被告沢井製薬が無効審判請求(前記1(2))において、本件発明の進歩性
欠如をいう無効理由において主引用例としたのは、本件優先日前に頒布され
15 た刊行物である特表2006-503013号公報(甲1、以下「甲1文
献」という。)であり、ここには別紙「甲第1号証の記載事項(抜粋)」のと
おりの記載がある。
(2) 本件審決が認定した甲1文献記載の発明
本件審決は、甲1文献記載の発明(以下「甲1発明」という。)を、以下
20 のとおり認定した。
「DPP-Ⅳ阻害活性を有する1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メ
チル]- 3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピ
ペリジン-1-イル)キサンチン(判決注:本件化合物)を含有する、タイプ
Ⅱ真性糖尿病を治療するための薬理組成物であって、本件化合物が経口経路
25 により投与される、前記薬理組成物。」
4 本件審決の理由の要旨
被告沢井製薬(請求人)は、本件発明に係る特許の無効理由として、本件発
明1~8に対する甲1発明及び技術常識に基づく進歩性欠如を主張したとこ
ろ、本件審決は、上記無効理由には理由があり、本件発明1~8に係る特許は
特許法29条2項に違反してされたものであるから無効とすべきであると判断
5 した。本件審決の理由の要旨は、以下のとおりである。
(1) 技術常識
本件優先日当時、以下の各技術常識が存在した。
ア 糖尿病は、慢性の高血糖状態を特徴とする代謝疾患であり、代謝異常が
長く続くと特有の合併症(網膜症、腎症、神経障害など)が起こることか
10 ら、糖尿病の治療目的は、血糖をコントロールすることにより、高血糖状
態を改善し、糖尿病の合併症の予防及び治療を行うことにあるところ、単
独の血糖降下薬の投与で血糖コントロールが不十分な場合には、作用機序
の異なる経口血糖降下薬を併用すること(以下「技術常識1」という。)。
イ DPPⅣ阻害薬は、2型糖尿病の経口投与可能な治療薬として使用可能
15 であること(以下「技術常識2」という。)。
ウ 医薬品の用量は、通常、非臨床試験の結果等を総合的に判断し、ヒトに
対して十分に安全と見込まれる用量を推定して初回投与量とし、段階的に
用量を増して安全用量の範囲を推定する第Ⅰ相試験から、第Ⅱ相試験、第
Ⅲ相試験へと順に進めていく手順を踏んで、最終的に決定されること(以
20 下「技術常識3」という。)。
エ 第Ⅰ相試験における初回投与量は、動物実験によって決定された量より
も相当程度減量して(50%致死量(LD₅₀)の1/600以下、50%
有効量(ED₅₀)の1/60以下、推定臨床用量の1/10~1/20、
無毒性量(NOAEL)のヒト等価用量(HED)の1/10など)、ヒト
25 に対する安全性を考慮して決定すること(以下「技術常識4」という。)。
(2) 本件発明1について
技術常識2を踏まえれば、甲1発明は上記3(2)のとおり認定され、本件
発明1と甲1発明との間には以下の相違点1が存在する。
【相違点1】
本件発明1においては、「5mg用量」「1日に1回投与する」と特定さ
5 れているのに対し、甲1発明においては、用量及び投与回数は特定されて
いない点。
技術常識3を踏まえれば、甲1発明を、相違点1に係る本件発明1の構成
を有するものとすることは、当業者が通常有する創作能力の範囲でなし得
る。また、本件発明1が甲1発明に対して顕著な効果を有するともいえな
10 い。したがって、本件発明1は、甲1発明及び技術常識に基づいて、当業者
が容易に想到することができたものである。
(3) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において「他の抗糖尿病薬と組み合わせて投与
される」と特定するものである。甲1文献に本件化合物と抗糖尿病薬を組み
15 合わせて使用することについて記載されていること(【0042】)及び技術
常識1によれば、本件発明2は、当業者が容易に想到することができたもの
である。
(4) 本件発明3~8について
本件発明3~8は、本件発明2の「他の抗糖尿病薬」を、「メトホルミ
20 ン、スルホニルウレア、ナテグリニド、レパグリニド、ピオグリタゾン、
α-グルコシダーゼブロッカー、インシュリン、インシュリン類似体、GL
P-1及びGLP-1類似体から選ばれる」(本件発明3)、「メトホルミン
である」(本件発明4)、「スルホニルウレアである」(本件発明5)、「ピオグ
リタゾンである」(本件発明6)、「α-グルコシダーゼブロッカーである」
25 (本件発明7)、「インシュリンまたはインシュリン類似体である」(本件発
明8)と特定するものである。これらの抗糖尿病薬はいずれも甲1文献に本
件化合物と組み合わされて使用される抗糖尿病薬として記載されていること
(【0042】)、及び技術常識1によれば、本件発明3~8は、当業者が容
易に想到することができたものである。
第3 原告の主張する取消事由及びこれに対する被告の主張
5 1 取消事由1(本件発明1についての甲1発明に基づく進歩性欠如の判断の誤
り)について
【原告の主張】
(1) 甲1発明の認定について
本件審決は、技術常識2の認定を誤り、その結果、甲1発明の認定を誤っ
10 て、本件発明1と甲1発明との相違点を看過した。
ア 本件優先日(平成18年5月4日)当時、DPPⅣ阻害薬は2型糖尿病
の治療に用いることができると期待されていたものの、未だ臨床試験段階
であり、治療薬として承認されておらず、実際に治療に使用されていなか
ったから、「2型糖尿病の経口投与可能な治療薬として使用可能であるこ
15 と」が技術常識であったとはいえない。
イ また、甲1文献には約7000にも上る膨大な数の化合物が開示されて
おり、それらが、極めて多数の疾患の治療に適する可能性があること、投
与経路は静脈内経路又は経口経路があることが記載されている。そのた
め、この中から、本件化合物を、タイプⅡ真性糖尿病を治療するため、経
20 口経路により投与することを、積極的あるいは優先的に選択すべき事情を
見いだすことはできない。
ウ 上記ア及びイを踏まえれば、甲1発明は、次のとおり認定されるべきで
ある。
「化学式(Ⅰ)で表される極めて多数の化合物のいずれかを含有する、D
25 PPⅣ活性の阻害によって影響される可能性のある疾患を治療することが
期待される薬理組成物であって、静脈内経路又は経口経路により投与され
る、前記薬理組成物。」
その結果、本件発明1においては、本件化合物をタイプ2糖尿病の治療
用医薬組成物という用途に5mg、1日1回経口投与という用量及び投与
経路で使用することが特定されているのに対し、甲1発明においては、こ
5 れらの点がいずれも特定されていないとの相違点が存在する。本件審決
が、この相違点を看過したことは、進歩性判断の結論に影響を及ぼす重大
な誤りである。
(2) 相違点1について
ア 本件審決が、技術常識4の認定根拠とした「新医薬品の臨床評価に関す
10 る一般指針について」(各都道府県衛生主管部局長あて厚生省薬務局新医
薬品課長通知。甲59)及び「臨床試験ハンドブック」(甲60)の記載
は、いずれも本件優先日から10年以上も前のものであり、当時の最新の
基準ではないから、技術常識4は誤りである。本件優先日当時、最新の基
準は米国食品医薬品局(FDA)のガイダンス(甲61)であり、これに
15 従って「各種実験動物を用いた動物実験において、対照群と比較して有害
事象が有意に増加しない最高用量レベルとして決定された無毒性量(NO
AEL)をヒト等価用量(HED)に換算し、その中で最も感受性の高い
生物種(すなわち、最も低いHEDを同定できる生物種)から得られたH
EDを安全係数(通常は10)で割って、初回投与量とすること」を技術
20 常識として認定すべきである。
イ 本件審決は、当業者は甲1文献における「好ましくは1~100mg」
という数値範囲(【0043】)の「1mg」という下限値も参考にしつ
つ、非臨床試験の結果などを総合的に判断し、ヒトに対して十分に安全と
見込まれる用量を推定して初回投与量とすると述べるが、上記数値範囲
25 は、本件化合物をタイプⅡ真性糖尿病治療に用いる際の用量として記載さ
れたものではなく、さらに甲1文献には製剤例により75mgという用量
も示唆されている。
また、本件化合物の非臨床試験結果は甲1文献にも記載されておらず、
公知ではなかったから、当業者は初回投与量を設定することができず、本
件発明1の用量に容易に想到することができたとはいえない。
5 仮に、甲1文献の記載から、上記アの正しい技術常識に従って初回投与
量を得るとすれば、その投与量は9.68mgであり、技術常識3によれ
ば最終的な用量は更に大きい値となるから、本件発明1の「5mg用量」
に想到することが容易であったということはできない。
【被告らの主張】
10 (1) 甲1発明の認定に関する原告の主張ついて
ア 本件審決における技術常識2の認定は、本件優先日前に、DPPⅣ阻害
薬(DPPⅣの働きを阻害することによってインクレチンの分解を防ぎ、
インクレチンの作用を増強することにより血糖値をコントロールする薬
剤)が2型糖尿病の経口投与可能な治療薬であるという技術事項が、当業
15 者に一般的に知られていたことを正当に認定したものであり、これは、医
薬品の製造販売承認制度(行政手続)において承認例が存在するか否かに
よって判断が左右されるものではない。
イ また、当業者であれば、甲1文献の記載から、特に強いDPPⅣ阻害活
性を有する6種類の化合物、さらにはその1つである本件化合物を、タイ
20 プⅡ真性糖尿病を治療するための経口投与用の薬理組成物として、積極
的・優先的に選択する。
ウ したがって、本件審決による甲1発明及び相違点1の各認定は相当であ
る。原告は、無効審判手続において甲1発明の認定を争っていなかったか
ら、本件訴訟において、審判段階と異なる主張をすることは禁反言の法理
25 によって許されない。また、禁反言に当たらないとしても、上記経緯は、
本件訴訟における原告の主張が説得力を欠くことの証左である。
(2) 相違点1に関する原告の主張について
ア 本件発明は日本国の特許権であり、日本国における進歩性が問題となっ
ている以上、標準的な指針とすべきは厚生労働省の指針(甲59)であ
る。また、本件審決が技術常識4の認定根拠とした「臨床試験ハンドブッ
5 ク」(甲60)は、本件優先日の直前である平成18(2006)年3月
30日に発行された文献であるから、これに基づく技術常識4の認定は相
当である。
イ 本件発明が定める本件化合物の用法用量は、本件明細書に記載された数
あるDPPⅣ阻害薬、及び幅のある用法用量の記載の中から、試験結果、
10 特有の効果や特段の技術的意義を示すことなくクレームアップされたもの
でしかなく、特定の疾病に対して顕著な効果を奏するものでもない。特定
の疾病に対して、薬効増大、副作用低減、服薬コンプライアンスの向上と
いった当業者によく知られた課題を解決するために、用法用量を好適化す
るといった程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮でしかないか
15 ら、相違点1は本件発明1の進歩性を基礎づけない。
2 取消事由2(本件発明2~8についての甲1発明に基づく進歩性欠如の判断
の誤り)について
【原告の主張】
本件審決が技術常識1の認定根拠とした証拠(甲2~4、6、20、21)
20 は、いずれもDPPⅣ阻害薬が2型糖尿病の治療に用いられる前のものである
から、技術常識1が当然にDPPⅣ阻害薬にも当てはまるとするのは不適切で
ある。また、甲1文献には、抗糖尿病薬だけでなく、その他の種類の薬も多数
挙げられているため、当業者が、甲1文献に開示された膨大な数の化合物の中
の本件化合物について、特に、抗糖尿病薬との併用を積極的あるいは優先的に
25 選択すべき事情を見出すことはできない。したがって、甲1文献から、本件発
明2~8に容易に想到し得たとはいえない。
【被告らの主張】
甲1文献には、本件化合物を含むDPPⅣ阻害薬と作用機序を異にする他の
抗糖尿病薬との組み合わせについて記載されており(【0042】)、当業者で
あれば、本件化合物と他の経口血糖降下薬とを組み合わせて投与することを合
5 理的に検討する。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件発明1についての甲1発明に基づく進歩性欠如の判断の誤
り)について
(1) 原告は、本件審決における甲1発明及び相違点1の各認定は誤りである旨
10 主張するため、まずこの点について検討する。
ア(ア) 本件優先日(平成18年5月4日)当時、①DPPⅣ阻害薬は、イン
クレチンのDPPⅣによる分解を防ぐ作用を有し、その結果、インス
リンの作用を増強し、高血糖状態を改善できることから、2型糖尿病
の経口投与可能な治療薬として様々な開発が進行しており、ヒトにお
15 ける第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験の臨床試験段階にあるDPPⅣ阻害薬が
2種(NVP DPP728、LAF237)知られていたこと(争い
なし、本件審決67頁参照)、②DPPⅣ阻害薬であるシタグリプチン
につき、2型糖尿病の治療薬として第Ⅲ相試験が行われていたこと
(乙A3)、③複数の製薬会社(シリックス インコーポレーテッド、
20 ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー、メルク エンド カン
パニー インコーポレーテッド)が、DPPⅣ阻害活性を有する化合物
を2型糖尿病の治療に使用する旨の発明につき特許を出願していたこ
と(甲49[請求項156]、50[請求項24]、51[請求項1
9])が認められる。
25 これらの事実からすれば、本件優先日当時、甲1発明の出願人である
原告以外にも、複数の製薬会社(当業者)が、DPPⅣ阻害薬によっ
て2型糖尿病を治療する発明につき特許出願を行い、複数のDPPⅣ
阻害薬につき2型糖尿病治療薬としての薬事承認に向けた臨床試験が
進められていたと認められる。そうすると、本件優先日当時、DPP
Ⅳ阻害薬一般が、DPPⅣ阻害活性に基づいてインスリンの作用を増
5 強することにより、2型糖尿病(タイプ2糖尿病)に対して治療効果
を有し、経口投与可能な治療薬として使用可能であることは、当業者
にとって技術常識であったとみることができる。
したがって、本件審決における技術常識2の認定に誤りはない。
(イ) これに対し、原告は、本件優先日当時、DPPⅣ阻害薬が未だ2型糖
10 尿病の治療薬として薬事承認を得ておらず、実際の治療にも使用され
ていなかったことを指摘し、使用可能との技術常識までは存在しなか
ったと主張する。
しかしながら、薬事承認は、医薬品として製造販売することを承認す
る行政行為であり(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の
15 確保等に関する法律14条参照)、これを受けなければ実際の治療には
使用できないものであるが、このことと、当該医薬品が特定の疾病に
対して治療効果を有するかに係る当業者の認識は別個の問題である。
そして、上記(ア)の各事実からすれば、DPPⅣ阻害薬については、本
件優先日当時において、当業者の間に、上記技術常識が存在していた
20 と認められ、薬事承認の有無はこの点の判断を左右するものではな
い。
イ(ア) 次に、甲1文献の特許請求の範囲には、タイプⅡ真性糖尿病等を治療
するのに適した薬理組成物を製造するための、一般式Ⅰで表される化
合物のうち、本件化合物を含む30種類の化合物の使用についての発
25 明が記載されている(請求項1、17、20)。
また、発明の詳細な説明には、一般式Ⅰで表される化合物はDPPⅣ
阻害活性を有し、これにより特にタイプⅠまたはタイプⅡ真性糖尿病
を治療するために使用されること、このうち本件化合物を含む上記3
0種類の化合物が最も好ましい化合物であること(【0001】~【0
003】、【0025】~【0027】)、本件化合物は上記30種類の
5 うちDPPⅣ阻害活性が最も強い6種類の化合物に含まれること(【0
039】【表1】)、一般式Ⅰで表される化合物がその効果を達成するの
に必要な用量は、経口経路による場合には1~1000mgの範囲、
好ましくは1~100mgの範囲、1日当たり1~4回投与であるこ
と(【0043】)が、それぞれ記載されている。
10 これらの記載に接した当業者は、技術常識2を踏まえ、甲1文献に
は、本件審決が認定した甲1発明(前記第2の3(2))が記載されてい
ると認識すると認められる。
(イ) これに対し、原告は、上記一般式Ⅰで表される化合物は約7000に
も及ぶ上、甲1文献には治療可能性がある多数の疾患が記載されてい
15 るから、この中から、本件化合物を、タイプⅡ真性糖尿病を治療する
ため、経口経路により投与することを、積極的あるいは優先的に選択
すべき事情を見出すことはできないと主張する。
しかしながら、上記(ア)のとおり、甲1文献には、本件化合物が、D
PPⅣ阻害活性が最も高い6種類の化合物のうち1つとして記載され
20 た上、タイプⅡ真性糖尿病が、DPPⅣ阻害薬の使用によって治療で
きる疾患として強調して記載されている。これに加え、技術常識2の
存在を勘案すれば、当業者において、本件化合物及びタイプⅡ真性糖
尿病を積極的、優先的に選択することは自然な発想であるといえる。
したがって、原告の上記主張は採用できない。
25 ウ 以上によれば、本件審決における甲1発明及び相違点1の各認定に誤り
はない。
(2)ア 次に、原告は、本件審決が認定した相違点1につき、当業者が甲1文
献の記載から「5mg用量」「1日1回投与」に想到することが容易であ
ったとはいえない旨主張する。
そこで検討するに、上記(1)イ(イ)のとおり、甲1文献の発明の詳細な説
5 明には、一般式Ⅰで表される化合物がその効果を達成するのに必要な用量
は、経口経路による場合、好ましくは1~100mgの範囲であること、
1日当たり1~4回投与すること(【0043】)が記載されている。医薬
品の用量は、通常、非臨床試験の結果などを総合的に判断し、ヒトに対し
て十分に安全と見込まれる用量を推定して初回投与量とし、段階的に用量
10 を増して安全用量の範囲を推定する第Ⅰ相試験から、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相
試験へと順に進めていく手順を踏んで、最終的に決定されるとの技術常識
3に照らせば、甲1文献に接した当業者は、上記幅のある数値の下限値
(1mg、1日1回投与)を初回投与量の参考として用い、上記手順を踏
んで最終的な用量を決定すると認められ、本件発明1が特定する「5m
15 g」「1日1回投与」との用量は、上記手順を踏んだ結果、最終的に当業
者が選択し得るいくつかの用量に当然に含まれるとみることができる。
したがって、当業者が、「5mg」「1日1回投与」との用量に想到する
ことは容易であったと認められる。
イ これに対し、原告は、第Ⅰ相試験における初回投与量の決定は、米国食
20 品医薬品局(FDA)のガイダンス(甲61)が示す基準に従ってされる
のが技術常識であり、同基準によれば、最終的な用量は9.68mg以上
となり、本件発明1の「5mg用量」には到達しない旨主張する。
しかしながら、本件優先日当時、上記初回投与量の決定に関する基準
は、上記米国食品医薬品局(FDA)の基準以外にも複数存在したのであ
25 るから(甲59、60)、特定の基準によって初回投与量を決定するとの
技術常識が存在したと認めるに足りない。
また、原告は、甲1文献には実施例の製剤例として75mgという用量
が記載されていること(【0204】実施例4)から、この用量を初回投
与量として設定し、「5mg用量」に想到しないとも主張する。しかし、
技術常識3に照らせば、当業者が、甲1文献に好ましい投与量として示さ
5 れた「1ないし100mgの範囲」の下限値を大幅に超える75mgを、
ヒトに対して十分に安全と見込まれる初回投与量として設定する合理的な
理由があるとは解し難い。
ウ 以上によれば、当業者は、甲1発明に技術常識3を適用して、相違点1
を有する本件発明1を容易に想到し得たということができるから、本件審
10 決の判断に誤りはない。
(3) よって、原告の取消事由1に関する主張には理由がない。
2 取消事由2(本件発明2~8についての甲1発明に基づく進歩性欠如の判断
の誤り)について
原告は、本件審決が技術常識1を認定する上で根拠とした証拠はいずれも、
15 DPPⅣ阻害薬が2型糖尿病の治療に用いられる前のものであり、技術常識1
がDPPⅣ阻害薬にも当然に当てはまるとするのは適切でなく、また、甲1文
献には、抗糖尿病薬だけでなく、その他の種類の薬も多数挙げられているた
め、当業者が、本件化合物について、抗糖尿病薬との併用を積極的あるいは優
先的に選択すべき事情を見いだすことはできないと主張する。
20 しかしながら、技術常識1は、糖尿病治療一般につき、作用機序の異なる経
口血糖降下薬を併用することの有用性に関する技術常識であり、本件優先日当
時、これがDPPⅣ阻害薬について妥当しないことを示す事情が存在したとは
認められない。
また、甲1文献の発明の詳細な説明には、本件化合物を含む一般式Ⅰで表さ
25 れる化合物はDPPⅣ阻害活性を有し、これによって治療できる疾患としてタ
イプⅡ真性糖尿病が強調して記載されていること(前記1(1)イ(ア))、上記化
合物と併用に適した治療薬として、抗糖尿病薬が冒頭に挙げられていること
(【0042】)からすれば、当業者が、本件化合物と他の活性物質との併用を
検討する際、抗糖尿病薬を積極的、優先的に選択することは自然な発想である
といえる。
5 したがって、原告の上記主張は採用できず、当業者が、甲1文献及び技術常
識1に基づいて本件発明2~8を容易に想到し得たということができるとした
本件審決の判断(前記第2の4(3)、(4))に誤りがあるとは認められない。
3 結論
以上のとおり、本件審決についての原告の取消事由に関する主張は採用でき
10 ず、そのほかに本件において本件審決を取り消すべき事由は認められない。よ
って、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり
判決する。
知的財産高等裁判所第4部
15 裁判長裁判官
長 谷 川 浩 二
裁判官
岩 井 直 幸
裁判官
25 安 岡 美 香 子
(別紙)
本件明細書等の記載事項(抜粋)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
5 【0001】
本明細書は、生理的な機能障害の治療のため及び潜在的に危険な状態にある患者におけるこの
ような機能障害の発生リスクを減少させるために選択した、DPPⅣインヒビターの使用を記載
する。さらに、上記DPPⅣインヒビターを他の活性物質と合わせて使用することを記載し、こ
れを用いることにより向上した治療成果が達成できる。これら用途を対応する薬剤の調製のため
10 に使用しても良い。
【背景技術】
【0002】
名称CD26でも知られる酵素DPPⅣは、タンパク質のジペプチドのN末端でプロリン又は
アラニングループの開裂を促進するセリンプロテアーゼである。これによりDPP-Ⅳインヒビ
15 ターは、ペプチドGLP-1を含んだ生物活性ペプチドの血漿レベルに影響し、糖尿病の治療を
大いに促進する分子である。
(中略)
【0009】
(中略)
20 いくつかの選択したDDPⅣインヒビターは、特に前糖尿病、耐糖能障害(障害のある耐糖能)、
病的な空腹時グルコース(障害のある空腹時グルコース)、糖尿病性足病変、糖尿病が誘発する
潰瘍、糖尿病性高脂血症、糖尿病性異常脂質血症、新たに診断されたタイプ1の糖尿病(膵臓か
らのインシュリンの残りの分泌を維持するための)、妊娠性糖尿病(妊娠性糖尿病)、高血糖症、
アドレナリン作動性の食後の症状(反応性低血糖症)又は心不全から選択される医学的又は生理
25 学的な機能障害であると診断された患者の治療上の処置のための薬物の調製に特に適している。
【0010】
これらの薬物は、治療にかかわらず患者が障害のあるグルコース代謝、上昇したHbA1c値、
障害のある空腹時グルコース値、顕性タイプ 2 糖尿病、糖尿病性足病変、糖尿病が誘発する潰瘍、
糖尿病性高脂血症又は糖尿病性異常脂質血症に罹患するであろうこと、及び治療にかかわらずイ
ンシュリン治療が必要となるか又は大血管性の合併症を起こすことのリスクを減少させるために
5 も使用されるであろう。
この種の大きな血管の合併症の例は、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、
出血性又は虚血性脳卒中、末梢動脈閉塞障害(peripheral arterial occlusive disease)、心筋
症、左心不全、右心不全、全心不全(global heart insufficiency)、心拍障害及び血管再狭窄
である。これらの大血管性の合併症は当業者に知られており、及び標準的なテキストに詳細に記
10 載されている。
更に前記物質は、ランゲルハンス島又はβ細胞を移植した後の細胞の活力及び分泌の能力を向
上させ、それにより移植後の好ましい結果を確実とするために適切である。前記物質は、特定さ
れた物質を従来の単離又は貯蔵媒体に適切な濃度の1nmol/lから1μmol/l、好まし
くは1nmol/lから100nmol/lの濃度で添加することにより、ランゲルハンス島又
15 は β 細胞の単離及び移植相の間使用しても良い。これは移植される材料の品質における改良を
もたらす。品質における改良は、特に添加された量、好ましくは1-100nmol/lの濃度
のGLP-1(グルカゴン様ペプチド1)と組み合わせて得られる。対応する単離又は貯蔵媒体、
及び使用する媒体に対してDPPⅣインヒビターを添加することによるランゲルハンス島又はβ
細胞の活力及び分泌能力を向上する対応した方法が、本発明のさらなる目的である。
20 【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
生理的な機能障害の治療のため及び潜在的に危険な状態にある患者における機能障害の発生リ
スクを減少させるために選択した、DPPⅣインヒビターの使用を記載する。
25 対応する単離又は貯蔵媒体、及び使用する媒体に対してDPPⅣインヒビターを添加すること
によるランゲルハンス島又はβ 細胞の活力及び分泌能力を向上する対応した方法が、本発明の
さらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
最終的には、上記インヒビターは、種々の形態の関節炎の治療の適切であるが、特には関節リ
5 ューマチの治療に適している。
本発明の選択されたDPPⅣインヒビターは、以下の式(I)又は式(II)により記載できる
【化1】
【化2】
(中略)
【0013】
特に好ましいDPPⅣインヒビターは、以下の化合物及びこれらの治療的に活性な塩である:
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
15 -イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)キサンチン(cf. WO 2004/018468,
Example 2(142))
【化3】
・1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
-イル)-8-((R)3-3アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf. WO 2004/018468,
Example 2(252))
【化4】
・1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8
-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf.WO 2004/018468,Example 2(80))
【化5】
10 ・2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブタ-2-イニル)-5-(4-
メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3.5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジ
ン-4-オン(cf.WO 2004/050658, Example 136)
【化6】
15 【0014】
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン(cf. WO
2006/029769,Example 2(1))
【化7】
・1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-
イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン(cf. WO 2005/085246,
5 Example 1(30))
【化8】
1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3
-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (cf. WO 2005/085246, Example 1(39))
10 【化9】
【0015】
・1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン (cf. WO
15 2006/029769, Example 2(4))
【化10】
・1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-
イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (cf. WO 2005/085246,
5 Example 1(52))
【化11】
・1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (cf. WO 2005/085246,
10 Example 1(81))
【化12】
【0016】
・1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)-メチル]-3-メチル-7-(2-ブチ
15 ン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (cf. WO
2005/085246, Example1(82))
【化13】
・1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-
8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (cf. WO 2005/085246, Example
5 1(83))
【化14】
【0017】
これらのDDPⅣインヒビターは構造的に類似するDPPインヒビターから区別され、それは
10 これらが好ましい薬理学的な特性、レセプター選択性及び好ましい副作用特性と優秀な効能及び
長く持続する効果を組み合わせ、又は他の医薬活性物質と組み合わせた場合に予想外の治療の利
点又は改良をもたらすためである。これらの調製は記載した公報に開示されている。
異なる代謝機能障害は多くの場合同時に発生するため、多くの異なる活性原理の組み合わせが
かなり頻繁に現れる。従って、診断された機能障害によって、DPPⅣインヒビターを他の高糖
15 尿病物質から選択した活性物質、特に血液中の血糖レベル又は脂質レベルを低下させ、血液中の
HDLレベルを上げ、血圧を下げ又はアテローム性動脈硬化又は肥満の治療で指示される活性物
質と組み合わせた場合、改良した治療の結果が得られるであろう。
【0018】
DPPⅣインヒビターの要求される投与量は、静脈投与される場合は0.1mgから10mg、
20 好ましくは0.25mgから5mgであり、経口投与される場合は0.5mgから100mg、
好ましくは2.5mgから50mgであり、各場合において一日1~4回投与される。この目的
のため、化合物、任意で他の活性物質と組み合わせても良い化合物は、1以上の不活性な通常の
キャリアー及び/又は希釈剤、例えばトウモロコシデンプン、ラクトース、グルコース、微結晶
セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/
5 エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレン
グリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は脂肪物質、例えば
固い脂肪又はこれらの適切な混合物と合わせて処方して、従来のガレヌス製剤、例えば錠剤、被
覆錠剤、カプセル、粉末、懸濁液又は坐剤を形成しても良い。
従って、本発明のDPPⅣインヒビターは、先行技術に記載されたような許容された製剤賦形
10 剤を用いて当業者により処方される。このような賦形剤の例は、希釈剤、結合剤、キャリアー、
フィラー、滑剤、流動剤(flow agent)、血漿抑制剤、錠剤分解物質、可溶化剤、着色剤、pH 調
整剤、界面活性剤及び乳化剤である。
【0021】
上記のDDPⅣインヒビターは、他の活性物質と合わせて使用してもよく、それにより改良し
15 た治療効果を得ることができる。このような組み合わせた治療は、物質の遊離した組み合わせと
して、又は固定された組み合わせ、例えば錠剤又はカプセルの形態で得ても良い。これに対して
必要とされる組み合わせパートナーの医薬品は、医薬組成物として市場から得るか、又は通常の
方法を用いて当業者が処方しても良い。医薬組成物として市場で得られる活性物質は、先行技術
の多くの箇所、例えば年一回発行される医薬工業の連邦組織の“Rote Liste”の医薬品リスト、
20 又は“Physician's Desk Reference”として知られる処方薬における製造者の情報の年一回更新
される編集物中に記載される。
【0022】
抗糖尿病の組み合わせパートナーの例は、メトホルミン; スルホニルウレア、例えばグリベン
クラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド(glibornuride)
25 及びグリクラジド;ナテグリニド;レパグリニド;チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン
及びピオグリタゾン; PPARγ モジュレーター、例えばメタグリダーゼ;PPAR-γ アゴ
ニスト、例えばGI262570;PPAR-γ アンタゴニスト;PPAR-γ/α モジュレー
ター、例えばテサグリタザル、ムラグリタザル及びKRP297;PPAR-γ/α/デルタモ
ジュレーター;AMPK-アクティベーター、例えばAICAR;アセチル-CoAカルボキシ
ラーゼ(ACC1及びACC2)インヒビター;ジアシルグリセロール-アセチルトランスフェ
5 ラーゼ(DGAT)インヒビター;パンクレアチック β 細胞GFRPアゴニスト、例えばSMT
3-レセプター-アゴニスト及びGPR119;11β-HSD-インヒビター;FGF19ア
ゴニスト又は類似体;α-グルコシダーゼブロッカー、例えばアカルボーズ、ボグリボーズ及び
ミグリトール;α2-アンタゴニスト;インシュリン及びインシュリン類似体、例えばヒトイン
シュリン、インシュリンリスプロ、インシュリングルシリン、r-DNA-インシュリンアスパ
10 ルト、NPHインシュリン、インシュリンデテミール、インシュリンジンク懸濁液及びインシュ
リンゲラルギン;胃抑制ペプチド(GIP);プラムリンチド;アミリン又はGLP-1及びG
LP-1類似体、例えばエキセンジン-4;SGLT2-インヒビター、例えばKGT-125
1;タンパクチロシン-ホスファターゼのインヒビター;グルコース-6-ホスファターゼのイン
ヒビター;フルクトース-1、6-ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリ
15 ラーゼモジュレーター;グルカゴンレセプターアンタゴニスト;ホスホエノールピルベートカル
ボキシキナーゼ(phosphoenolpyruvatecarboxynase)(PEPCK)インヒビター;ピルベート
デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)インヒビター;チロシン-キナーゼのインヒビター(50
mgから600mg)、例えばPDGF-レセプター-キナーゼ(cf. EP-A-564409, WO 98/35958,
US 5093330, WO 2004/005281 及び WO 2006/041976);グルコキナーゼ/調整タンパクモジュレー
20 ターを含むグルコキナーゼアクティベーター;グリコーゲン合成キナーゼインヒビター;SH2
-ドメインを含むイノシトール5―ホスファターゼタイプ2(SHIP2)のインヒビター;I
KKインヒビター、例えば高投与量サリシレート;JNK1インヒビター;タンパクキナーゼC
-セタインヒビター;β3-アゴニスト、例えばリトベグロン、YM178、ソラベグロン、タ
リベグロン、N-5984、GRC-1087、ラファベグロン、FMP825;アルドースレ
25 ダクターゼインヒビター、例えばAS3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレ
スタット、ラニレスタット、NZ-314、CP-744809及びCT-112;SGLT-
1又はSGLT-2インヒビター;KV1.3チャンネルインヒビター;GPR40モジュレー
ター;SCD-1インヒビター;CCR-2アンタゴニスト;及び他のDPPⅣインヒビターで
ある。
【0037】
5 実施例2: 顕性タイプ 2 糖尿病の予防
病的な空腹時グルコース及び/又は障害のある耐糖能(前糖尿病)に罹患した患者の治療は、
顕性タイプ 2 糖尿病への移行を予防することのゴールを求めることでもある。治療の効果は、活
性物質か又は活性物質の組み合わせを用いるか、又はプラセボを用いるか、又は医薬品を用いな
い又は他の薬物を用いた治療を用いて前糖尿病患者を長期(例えば1-5年)に亘り治療する、
10 比較臨床試験で調査できる。治療の間及び治療の末期において、空腹時のグルコースを決定する
こと及び/又は負荷試験(例えばoGTT)により、チェックは、どの程度の数の患者が顕性タ
イプ2糖尿病を示すか、即ち>125mg/dlの空腹時グルコースレベル及び/又は>199
mg/dlのoGTTに従った2時間の値を示すことを決定することで行われる。治療の他の形
態の 1 つと比較して、活性物質又は活性物質の組み合わせを用いて治療した場合に、顕性タイプ
15 2糖尿病を示す患者の数の顕著な減少は、前糖尿病の明らかな糖尿病への移行の防止における、
活性物質又は活性物質の組み合わせの効果を実証する。
【0038】
実施例3:タイプ 2 糖尿病の治療
グルコース代謝状況(glucose metabolic situation)における急速な改善の発生に加えて、本
20 発明の活性物質を用いたタイプ2糖尿病に罹患した患者の治療は長期間の代謝状況における悪化
を防ぐ。これは、長期間、例えば1-6年の間本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合
わせで患者を治療し、次いで他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較することで観察できる。空腹
時グルコース及び/又はHbA1c値における増加が無いか又はほんのわずかに増加したことが
観察される場合、他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較して治療が成功したことの証拠が存在す
25 る。他の薬物で治療された患者と比較して、本発明の活性物質又は本発明の活性物質の組み合わ
せで治療された患者の顕著により少ないパーセンテージが、グルコース代謝ポジション(glucose
metabolic position)における、付加的な経口の抗糖尿病薬を用いて、又はインシュリンを用い
て、又はインシュリン類似体を用いて、又は他の抗糖尿病薬(例えばGLP-1類似体)を用い
た治療が指示されるポイントへの悪化(例えばHbA1c値を>6.5%又は>7%まで増加さ
せること)に耐える場合に、治療の成功のさらなる証拠が得られる。
5 【0049】
実施例13:DPPⅣインヒビター-メトホルミンを用いた組み合わせた治療
タイプ2糖尿病又は前糖尿病を治療するため、本発明のDPPⅣインヒビターを、遊離した組
み合わせか又は錠剤中に固定した組み合わせで、抗糖尿病活性物質メトホルミンを組み合わせて
も良い。DPPⅣインヒビターの治療効量(例えば0.1から100mgの投与量)を、メトホ
10 ルミンの異なる投与量、例えば500mg、850mg又は1000mgの、メトホルミンの単
一の投与量として合計一日投与量のメトホルミン500-2850mg、又は遅延放出形態にお
ける500mg、1000mg、1500mg又は2000mgのメトホルミンと組み合わせて
も良い。メトホルミンとのこのような組み合わせの臨床効果は、臨床試験で試験できる。このた
め、タイプ2糖尿病又は前糖尿病に罹患した患者を、DPPⅣインヒビターそのままを用いてか、
15 又はメトホルミンそのままを用いてか、又はDPPⅣインヒビターとメトホルミンを組み合わせ
て治療する。治療は2週間から6年継続する。組み合わせが適切である証拠及び効果は、DPP
Ⅳインヒビターとメトホルミンの組み合わせが、DPPⅣインヒビター単独か又はメトホルミン
単独よりも、空腹時グルコース及び/又は空腹ではない場合のグルコース及び/又はHbA1c
値を非常に顕著に減少させた事実において見出すことができる。
(別紙)
甲第1号証の記載事項(抜粋)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5 以下の一般式 I で表される化合物:
【化1】
(中略)
【請求項2】
10 上記一般式Ⅰにおいて、R1が4-メトキシ-1-ナフチルメチル基;2-キノリニルメチル
基、4-キノリニルメチル基または6-キノリニルメチル基;1-イソキノリニルメチル基、3
-メチル-1-イソキノリニルメチル基、4-メチル-1-イソキノリニルメチル基または3-
イソキノリニルメチル基;または2-キナゾリニルメチル基、4-メチル-2-キナゾリニルメ
チル基または4-キナゾリニルメチル基を表し、
15 R2がメチル基を表し、かつ
R3が2-ブテン-1-イルまたは2-ブチン-1-イル基を表す、請求項 1 記載の一般式Ⅰ
の化合物、その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物およびその塩。
【請求項17】
以下に列挙するものから選択される、請求項1、5および11のいずれか1項に記載の化合物、
20 並びにその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物およびその塩:
(中略)
(13)1- [(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1
-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン;
(中略)
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物の、真性糖尿病タイプⅠおよびタイプⅡ、関節
炎、肥満、同種移植片による移植およびカルシトニン-誘発性オステオポローシスを治療するのに
5 適した、薬理組成物を製造するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の一般式 I で表される新規な置換されたキサンチン:
10 【0002】
【化1】
【0003】
その互変異性体、立体異性体、混合物、プロドラッグおよびその塩、特に無機または有機の酸
15 または塩基との生理的に許容される塩に係り、これらは特に、酵素:ジペプチジルペプチダーゼ
-Ⅳ(DPP-Ⅳ)の活性に及ぼす阻害作用を含む、薬理的に有益な諸特性を持ち、またこれらの
製造、高いDPP-Ⅳ活性と関連した、またはこのDPP-Ⅳ活性を減じることによって、予防
もしくは軽減できる疾患または状態、特にタイプⅠまたはタイプⅡ真性糖尿病を予防もしくは治
療するためのその使用、一般式(I)の化合物またはその生理的に許容されるその塩を含む薬理組
20 成物並びにその製法に関するものである。
(中略)
【0016】
本発明の第一の目的の、第一の好ましいサブグループ(亜群)は、上記一般式Ⅰにおいて、R1
が4-メトキシ-1-ナフチルメチル基;2-キノリニルメチル基、4-キノリニルメチル基ま
たは6-キノリニルメチル基;1-イソキノリニルメチル基、3-メチル-1-イソキノリニル
メチル基、4-メチル-1-イソキノリニルメチル基または3-イソキノリニルメチル基; また
は2-キナゾリニルメチル基、4-メチル-2-キナゾリニルメチル基または4-キナゾリニル
5 メチル基を表し、
R2がメチル基を表し、かつ
R3が2-ブテン-1-イルまたは2-ブチン-1-イル基を表す、上記一般式Ⅰの化合物、
その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物およびその塩を含む。
本発明の第一の目的の、第二の好ましいサブグループ(亜群)は、上記一般式Ⅰにおいて、R1
10 が[2-(メチルカルボニルアミノ)-フェニル]-カルボニルメチル基、[2- (エチルカルボニ
ルアミノ)-フェニル]-カルボニルメチル基または[2- (イソプロピルカルボニルアミノ)-フ
ェニル]-カルボニルメチル基であり、R2がメチル基を表し、かつ
R3が2-ブテン-1-イルまたは2-ブチン-1-イル基を表す、上記一般式Ⅰの化合物、
その互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物およびその塩を含む。
15 【0025】
特に、最も好ましくは、以下に列挙するものから選択される一般式Ⅰで示される化合物、並び
にその互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、混合物およびその塩である:
(中略)
(13)1- [(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-
20 イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン;
(中略)
【0038】
最終濃度100μMの、50μ1の基質溶液(AFC;AFCは、アミド-4-トリフルオロメ
チルクマリンである)を、黒色のマイクロタイタープレートに入れた。20μ1のアッセイバッフ
25 ァー(夫々最終濃度50mMのTris-HCl、pH7.8、50mMのNacl、1% のD
MSO)を、ピペットで秤取り、これに加えた。この反応は、30μlの可溶化したCaco-2
タンパク(最終濃度:ウエル当たり、0.14μgのタンパク)を添加することにより開始させた。
検討すべきテスト物質は、典型的には予め希釈して20μlとして添加したが、結果としてアッ
セイバッファーの体積を、それに応じて減らした。この反応は、周囲温度にて60分間インキュ
ベートすることにより行った。次いで、蛍光を、ビクター1420マルチラベルカウンタ(Victor
5 1420 Multilabel Counter)を用いて、励起波長405nmおよび発光波長535nmにて測定し
た。ブランクの読み(活性0%に相当)を、如何なるCaco-2タンパクも含まない、混合物(所
定体積をアッセイバッファーで置換)について得、コントロール値(活性100%に相当)は、物質
を全く添加してない混合物について得た。IC50値で表した、問題とするテスト物質の能力は、
各場合に対して11個の測定点からなる用量/活性曲線から算出した。
【0039】
【表1】
【0040】
5 本発明によって製造される化合物は、例えば実施例2(80)の化合物10mg/kgを経口
経路でラットに投与した場合に、この動物における如何なる挙動変化も検出されなかったことか
ら、十分に許容性をもつものである。
これら化合物のDPP-Ⅳ活性を阻害する能力から、本発明による一般式Ⅰの化合物および対
応する製薬上許容されるその塩は、該DPP-Ⅳ活性の阻害によって影響される可能性のある全
10 てのこれら状態または疾病を治療するのに適したものである。従って、本発明の化合物は、疾患
または状態、例えばタイプⅠおよびタイプⅡ真性糖尿病、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、ネフ
ロパシーまたはニューロパシー)、代謝性アシドーシスまたはケトーシス、反応性低血糖、インシ
ュリン耐性、代謝性症候群(metabolic syndrome)、様々な器官の脂肪異常(dyslipidaemias)、関
節炎、アテローム性動脈硬化症および関連疾患、肥満、同種移植片移植およびカルシトニン-誘
発性オステオポローシスの予防並びに治療のために適したものであると予想される。更に、これ
ら物質は、B-細胞の変質、例えば膵臓B-細胞の断片化または壊死を防止することができる。
5 これらの物質は、また膵臓細胞の機能を改善しもしくは回復させ、また膵臓B-細胞の数および
そのサイズを増大させるためにも適している。更に、またグルカゴン-様ペプチド(Glucagon-
Like Peptides)、例えばGLP-1およびGLP-2およびそのDPP-Ⅳとの結合の役割に基
いて、本発明の化合物は、特に鎮静または不安-解消作用を達成するために、および手術あるいは
ホルモンストレス応答後の異化状態に有利に作用し、あるいは心筋梗塞後の、致死性または罹患
10 率を減じるのに適しているものと考えられる。これら化合物は、また上記の作用と関連するおよ
びGLP-1またはGLP-2によって媒介される、あらゆる状態を治療するためにも適してい
る。本発明による化合物は、また利尿剤または抗-高血圧剤として使用することも可能であり、ま
た急性腎不全を予防し、かつ治療するためにも適している。更に、本発明の化合物は、気道の炎
症性疾患を治療するのに使用することも可能である。これらは、更に慢性炎症性腸疾患、例えば
15 過敏性腸症候群(IBS)、クローン病または潰瘍性大腸炎および膵炎でさえも、予防し、かつ
治療するために適している。
【0042】
本発明の化合物は、また他の活性物質との組合せで使用することもできる。このような組合せ
として適した治療薬は、例えば抗-糖尿病薬、例えばメトホルミン、スルホニルウレア(例えば、
20 グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド)、ナテグリニド(nateglinide)、レパグリニド
(repaglinide)、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、ピオグリタゾン)、
PPAR-γ アゴニスト(例えば、GI262570)およびアンタゴニスト、PPAR-γ/α
モジュレータ(例えば、KRP297)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、フォ
グリボース(voglibose)、他のDPPⅣ阻害剤、α2アンタゴニスト、インシュリンおよびインシ
25 ュリン類似体、GLP-1およびGLP-2類似体(例えば、エキセンジン-4)またはアミリン
(amylin)を含む。また、SGLT2阻害剤、例えばT-1095、プロテインチロシンホスファ
ターゼ1の阻害剤、調節機能が失われた、肝臓におけるグルコース産生に影響する物質、例えば
グルコース-6-ホスファターゼまたはフルクトース-1、6-ビスホスファターゼグリコーゲ
ンホスホリラーゼ、グルカゴンレセプタアンタゴニストおよびホスホエノール-ピルベートカル
ボキシキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼまたはピルベートデヒドロキナーゼ、脂質低
5 下剤、例えばHMG-CoA-リダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチン、アトルバスタチン
(atorvastatin))、フィブレート(例えば、ベザフィブラート、フェノフィブラート)、ニコチン酸
およびその誘導体、PPAR-α アゴニスト、PPAR-δアゴニスト、ACAT阻害剤(例え
ば、アバシミブ(avasimibe)) 、またはコレ ステ ロール再 吸収阻害剤、 例えばエゼティミブ
(ezetimibe)、胆汁酸-結合物質、例えばコレスティラミン、回腸の胆汁酸輸送の阻害剤、HDL
10 -上昇化合物、例えばCETPの阻害剤またはABC1のレギュレータまたは肥満治療用の活性
物質、例えばシブトラミンまたはテトラヒドロリポスタチン(tetrahydrolipostatin)、デキスフ
ェンフルラミン、アキソカイン(axokine)、カンナビノイド 1 レセプタのアンタゴニスト、MCH
-1レセプタアンタゴニスト、MC4レセプタアンタゴニスト、NPY5またはNPY2アンタ
ゴニストまたは β3-アゴニスト、例えばSB-418790またはAD-9677並びに5H
15 T2cレセプタのアゴニストも使用できる。
【0043】
本発明の化合物を、高血圧を治療する薬物、例えばAIIアンタゴニストまたはACE阻害剤、
利尿剤、β-ブロッカー、Ca-アンタゴニスト等、あるいはこれらの組合せと併用することも
可能である。
20 このような効果を達成するのに必要な用量は、静脈内経路による場合、便宜上1~100mg
なる範囲、好ましくは1~30mgなる範囲、また経口経路による場合には、1~1000mg
なる範囲、好ましくは1~100mgなる範囲であり、何れの場合にも 1 日当たり1~4回投与
する。この目的に対しては、本発明により製造した一般式Ⅰの化合物は、場合により他の活性物
質との組合せで、1種またはそれ以上の公知の担体および/または稀釈剤、例えばコーンスター
25 チ、ラクトース、グルコース、ミクロクリスタリンセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポ
リビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビ
トール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、
カルボキシメチルセルロースまたは脂肪物質、例えば硬質脂肪または適当なその混合物と共に、
公知のガレノス製剤、例えば無垢のまたは被覆した錠剤、カプセル、散剤、懸濁液、または座剤
に配合することができる。
5 【0204】
(中略)
実施例4:75mgの活性物質を含む被覆錠剤:
1 錠剤コアは、以下の成分を含む:
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