知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和6(ワ)5586

この記事をはてなブックマークに追加

令和6(ワ)5586

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和8年1月29日
事件種別 民事
当事者 原告アイルフィットネストレーニング有限会社
被告A B
法令 民法709条1回
民法412条3項1回
キーワード 損害賠償10回
抵触1回
主文 1 原告の主位的請求をいずれも棄却する。
2 被告Bは、原告に対し、10万8000円及びこれに対する令和6年3月6日
3 原告のその余の予備的請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、
1を被告Bの負担とし、その余を原告の負担とする。
5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 本判決で用いる略称 (1) 原告店舗 :原告の運営するサロン「アイル イオン●●●●駅前店」 (2) 被告A店舗 :被告Aが開店した店名を「 C 」とするサ ロン (3) 被告B店舗 :被告Bが開店した店名を「 D 」 とするサロン (4) 被告ら新店舗 :被告らが開店した店名を「 E 」とするサ ロン (5) N :N (6) 原告顧客情報 :別紙「原告店舗における顧客情報目録」記載の情報 (7) 本件サイト :美容サロン店舗の検索予約ウェブサイトである「ホットペ ッパービューティー」 (8) 不競法: 不正競争防止法 2 原告の請求(訴訟物) (1) 主位的請求

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和8年1月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第5586号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和7年11月25日
判 決
原告 アイルフィットネストレーニング有限会社
代表者取締役
訴訟代理人弁護士 得能 吉裕
10 被告 A
(以下「被告A」という。)
被告 B
(以下「被告B」という。)
15 両名訴訟代理人弁護士 夏目 麻央
主 文
1 原告の主位的請求をいずれも棄却する。
2 被告Bは、原告に対し、10万8000円及びこれに対する令和6年3月6日
から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
20 3 原告のその余の予備的請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告に生じた費用の2分の1と被告Aに生じた費用を原告の負担
とし、原告に生じたその余の費用と被告Bに生じた費用はこれを20分し、その
1を被告Bの負担とし、その余を原告の負担とする。
5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。
25 事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 主位的請求
被告らは、連帯して、原告に対し、244万7112円及びこれに対する令和
5年11月30日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 予備的請求
5 被告らは、連帯して、原告に対し、244万7112円及びこれに対する令和
5年11月11日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本判決で用いる略称
(1) 原告店舗 :原告の運営するサロン「アイル イオン●●●●駅前店」
10 (2) 被告A店舗 :被告Aが開店した店名を「 C 」とするサ
ロン
(3) 被告B店舗 :被告Bが開店した店名を「 D 」
とするサロン
(4) 被告ら新店舗 :被告らが開店した店名を「 E 」とするサ
15 ロン
(5) N :N
(6) 原告顧客情報 :別紙「原告店舗における顧客情報目録」記載の情報
(7) 本件サイト :美容サロン店舗の検索予約ウェブサイトである「ホットペ
ッパービューティー」
20 (8) 不競法: 不正競争防止法
2 原告の請求(訴訟物)
(1) 主位的請求
ア 被告らが、原告の営業秘密である顧客情報を取得して使用したことが不
正競争(不競法2条1項4号又は7号)に該当することを前提とする、民
25 法709条、719条に基づく損害賠償金244万7112円の支払請求
イ 上記損害賠償金に対する被告A店舗及び被告B店舗を開設した日の月末
である令和5年11月30日から支払済みまでの民法所定の年3パーセン
トの割合による遅延損害金の支払請求
(2) 予備的請求
ア 被告らが、原告に無断で、被告A店舗及び被告B店舗並びに被告ら新店
5 舗を開設し、原告の顧客を奪って上記店舗に誘導したことは、雇用契約上
の競業避止義務違反及び業務委託契約上の義務違反であるとともに、共同
不法行為に該当することを前提とする、債務不履行又は民法709条、7
19条に基づく損害賠償金244万7112円の支払請求
イ 上記損害賠償金に対する被告らが顧客の誘導を遅くとも開始したとする
10 令和5年11月11日から支払済みまでの民法所定の年3パーセントの割
合による遅延損害金の支払請求
3 前提事実(争いのない事実及び証拠〔枝番を含む。以下同じ〕により容易に認
定できる事実)
(1) 当事者等
15 ア 原告は、トレーニング用器具の賃貸及び販売等を目的とする株式会社であ
り、大阪市●●区において、エステや脱毛、アイラッシュ等のサービスを提
供する原告店舗を運営している。
イ Nは、令和5年当時、原告店舗のマネージャーの地位にあった者である。
ウ 被告Aは、原告との雇用契約及び業務委託契約に基づき、原告店舗でエス
20 テ等の施術サービスを提供していた者である。
エ 被告Bは、原告との雇用契約及び業務委託契約に基づき、原告店舗でまつ
げエクステンション等の施術サービスを提供していた者である。
(2) 原告と被告らとの契約関係等
ア 被告A(甲2)
25 被告Aは、令和3年2月4日、原告に雇用され、以後、原告店舗において、
主としてマッサージの施術業務に従事した。被告Aは、令和5年8月23日、
原告と業務委託契約を締結し、契約期間を同月1日から令和7年8月1日ま
でとして、引き続き、原告店舗で上記業務を行った。
イ 被告B(甲3)
被告Bは、令和3年7月2日、原告に雇用され、以後、原告店舗において、
5 主としてまつげエクステンションの施術業務に従事した。被告Bは、令和5
年12月27日、原告と業務委託契約を締結し、契約期間を令和6年1月1
日から令和8年1月1日までとして、引き続き、原告店舗で上記業務を行っ
た。
(3) 被告らによるサロン店舗の開店(甲5、6、乙6)
10 被告らは、令和5年11月、大阪市●●区のマンションにて、被告Aにおい
ては、4階の一室にてマッサージの施術を提供する被告A店舗を、被告Bにお
いては、6階の一室にてまつげエクステンションの施術を提供する被告B店舗
を開店した。
被告らは、その後、被告A店舗及び被告B店舗を閉じるとともに、●●区内
15 にて新たな店舗を開いた(被告ら新店舗)。
(4) 被告らと原告との契約関係の終了
ア 被告A(甲2)
原告は、令和6年3月25日付けで、被告Aに対し、原告店舗への立入り
を禁止すると通知した。被告Aは、同月28日付け契約解除通知書をもって、
20 原告に対し、同月25日に業務委託契約を解約する旨通知し、これをもって
同契約は終了した。
イ 被告B(甲3、乙4)
原告は、代理人弁護士を介して、同年2月29日付け通知書により、被告
Bに対し、被告B店舗の開店が、従業員としての職務専念義務、業務委託契
25 約における競業避止義務及び守秘義務に反するとして113万5815円
の損害賠償金の支払を求め、業務上横領罪や背任罪等で刑事告訴する旨を通
知した。
被告Bは、代理人弁護士を介して、同年3月6日付け契約解除通知書をも
って、原告に対し、通知書受領日に業務委託契約を解約する旨を通知した。
被告Bは、実際には、同年4月10日まで原告店舗で業務を行ったが、同日
5 をもって、原告及び被告B間の業務委託関係は終了した。
4 争点
(1) 被告らの不正競争(不競法2条1項4号又は7号)の成否(争点1)
(2) 被告らの競業避止義務違反等の債務不履行及び共同不法行為の成否(争点2)
(3) 損害の有無及び額(争点3)
10 第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告らの不正競争(不競法2条1項4号又は7号)の成否)について
【原告の主張】
(1) 営業秘密該当性
原告顧客情報(別紙「原告店舗における顧客情報目録」記載の情報)は、本
15 件サイトの運営者がサイト上で管理している原告店舗へ来店予約した顧客の
情報であり、そのアクセスには、原告の設定した暗証番号やパスワードが必要
である。原告は、上記暗証番号やパスワードを従業員らに伝えているが、定期
的に又は従業員の退職の都度、暗証番号等を変更し、外部の者による原告顧客
情報の閲覧等の防止措置を講じている。また、原告は、暗証番号やパスワード
20 の変更の都度、従業員に対し、原告顧客情報が非常に重要であって、内外に漏
洩させてはいけないことを周知徹底し、業務受託者には契約書に同旨の文言を
付して周知しており、従業員らは、原告顧客情報が秘密情報であることを十分
認識できる状況にあった。よって、秘密管理性がある。
また、エステ等のサービスはリピート率が高いことから、原告顧客情報は、
25 原告にとって商業的に価値のある情報であり、有用性がある。
そして、原告顧客情報は、性質上、情報を保有する原告の管理下以外では一
般的に入手できない情報であるから、非公知性がある。
以上から、原告顧客情報は、営業秘密に該当する。
(2) 不正取得・使用
被告らは、業務遂行に必要がないにもかかわらず、上記サイトに暗証番号や
5 パスワードを入力してログインして原告顧客情報を不正に取得し、これを使用
して原告店舗の常連客を勧誘し、被告A店舗及び被告B店舗及び被告ら新店舗
に誘導した。
被告らには、上記不正取得及び使用について、不正競争(不競法2条1項4
号)が成立する。
10 仮に、被告らの不正取得が認められないとしても、営業秘密保有者である原
告から原告顧客情報を示され、不正の利益を得る目的で当該情報を使用してい
るから、被告らには不正競争(不競法2条1項7号)が成立する。
【被告らの主張】
否認ないし争う。
15 (1) 営業秘密該当性
原告は、顧客が口コミを投稿した際に施術者が返信するため、原告店舗の全
従業員に対して本件サイトへのログインに必要なパスワードを教えていたが、
パスワードは従業員が退職しても変更されないことがあった。また、本件サイ
トの運営側からパスワードの変更を要求された際、従業員全員が加入するLI
20 NEのグループに変更されたパスワードが通知された。このように、原告顧客
情報は、特に社内で秘密として管理されている事情はないことなどからすれば、
原告顧客情報には、秘密管理性がない。
また、原告顧客情報には、非公知性及び有用性もない。
(2) 使用
25 被告らは、原告顧客情報を使用していない。
2 争点2(被告らの競業避止義務違反等の債務不履行及び共同不法行為の成否)
について
【原告の主張】
被告らは、原告との雇用契約期間中、原告に対し、誠実に労務に服すべき義務
の一種として競業避止義務を負っており、原告の顧客を誘導して原告に不利益を
5 もたらす行為に及ばないようにする義務を負っていた。
また、被告らは、原告との業務委託契約期間中、原告店舗の「来店顧客情報の
扱いには十分な注意を払」わなければならず、原告の顧客「との個人同士の連絡
や金銭授受等は禁止」されており、これに違反した場合には、原告の被った損害
を負担しなければならなかった(以上につき、契約書6条)。
10 しかし、被告らは、原告店舗の近くに被告A店舗及び被告B店舗並びに被告ら
新店舗を開店し、料金が安いなどと原告の顧客に伝えて被告A店舗及び被告B店
舗に誘導し、原告の売上げを減少させ、上記競業避止義務や業務委託契約上の義
務に違反した。この点について、原告代表者やNが、被告らの独立を容認した事
実はなく、Nは労務管理や人事決定の権限を有していなかった。
15 よって、被告らは、原告との間の雇用契約に伴う競業避止義務及び業務委託上
の義務の不履行に基づく責任を負うものであるし、共同不法行為も成立する。被
告らが無断で原告のフロアスタンドを盗んで使用していることも、上記行為の違
法性を裏付ける。
【被告らの主張】
20 (1) 被告A
ア 被告A店舗及び被告B店舗の開店時期は、被告Aが業務委託契約を締結し
た後であるから、被告Aには、雇用契約上の競業避止義務違反は問題となら
ない。
イ 被告Aは、原告店舗のマネージャーとして労務管理及び人事決定権を有し
25 ていたNに対し、令和5年6月には、翌年春には独立したいと伝え、これを
理解して独立後の売上げを心配したNから、業務委託にすれば原告店舗と独
立後の店舗の両方で業務ができるとの提案を受け、同年8月23日に原告と
業務委託契約を締結し、その後、Nに逐一相談しながら、物件探しなどの開
業準備を進めた。そして、被告Aは、同年10月頃、Nから、原告の顧客に
独立の話をしてよいが「自分のところの方が安い」とは言わないように言わ
5 れ、同年11月以後、Nの了解の範囲で顧客に独立の話をした。
原告店舗と被告A店舗及び被告ら新店舗のマッサージの施術内容は、機械
使用の有無などの点で異なるから、顧客を取り合う関係にはない。また、被
告Aが顧客に話していた内容は、Nの了解を得た範囲内であった。
以上のとおり、被告AとNとの間では、被告Aの独立が当然の前提となっ
10 ており、被告Aは、原告との業務委託契約において禁止された行為は行って
いない。
なお、被告Aが、原告店舗への立入りを禁止された令和6年3月25日ま
で原告店舗で業務を行っていたのは、同年1月に突然、原告代表者から、被
告A店舗の存在を指摘された上で後輩の育成後に辞めるように言われ、後輩
15 の育成等に努めていたからである。
(2) 被告B
ア 被告Bは、勤務日が不規則であることや給料が労働時間に見合っていない
ことなどから原告への不満を抱いていたところ、被告Aが独立予定であるこ
とを知り、被告Aに相談の上、独立を考えるようになった。そして、被告B
20 は、令和5年9月頃、Nに対し、「1月くらいには本格的に独立したい。」と
伝えたところ、反対されず、1月から業務委託契約にすればよいことや独立
予定であることを顧客に話をしてよいが「自分のところの方が安い」とは言
わないように言われ、同年12月までの間、Nの了解の範囲で顧客に独立の
話をした。また、被告Bは、原告への配慮から、顧客に対し、原告店舗での
25 業務も継続するので被告B店舗へ来店しなくてもよい旨も併せて伝えていた。
このような被告Bの言動に照らせば、被告Bに、雇用契約に基づく競業避
止義務違反があるとはいえない。
イ 被告Bは、令和6年1月以降の業務委託契約期間中、原告の顧客に対して
自らが独立する話をしたことはないから、業務委託契約上の義務に違反して
いない。
5 3 争点3(損害の有無及び額)について
【原告の主張】
(1) 逸失利益
被告らの①不正競争、あるいは、②競業避止義務違反及び業務委託契約上の
義務違反又は共同不法行為により、被告A店舗及び被告B店舗が開店した令和
10 5年11月以降、原告店舗における被告らの施術に係る売上げが減少しており、
その損害額は、合計222万4648円である(=令和5年11月から令和6
年3月までの間における、原告店舗における被告らの実売上総額を「被告Aに
係る令和5年7月から10月までの売上平均月額60万1082円+被告Bに
係る同期間の売上平均月額31万3770円」×5か月分から控除した額)
15 (2) 弁護士費用
上記(1)の1割である22万2464円
【被告らの主張】
否認ないし争う。
原告では、従業員が定着せず、従前から原告の売上げは減少していたから、令
20 和5年11月以降の売上げの減少と被告らの退職との間の相当因果関係はない。
第4 判断
1 前記前提事実、証拠(甲1~6、9~11、13~15、乙1、2、4、6~
8、証人N、原告代表者、被告A本人、被告B本人)及び弁論の全趣旨によれば、
以下の事実が認められる。
25 (1) 原告と被告らとの契約関係と業務状況等
ア 原告は、複数の事業を行っている中で、エステ等のサービスを提供する店
舗も複数営んでおり、原告店舗もその1つである。原告店舗は、大阪市●●
区にあるイオンモール内に店舗を構えており、被告らが在籍していた令和5
年当時、施術者の人数は6~7名程度、月ごとの売上げは200~300万
円前後であった。原告店舗の営業に伴う経費は、その業務の性質及び立地か
5 ら、人件費と店舗賃料を主としていた。
Nは、平成25年7月から、原告店舗の店長を務めていたが、令和4年1
月からは、原告店舗のマネージャーという立場となり、原告の役員ではない
ながら、経理ほか、施術者のシフト管理、勤務実態の把握、採用面接の立会
い、契約条件の調整、給与計算、教育指導、金庫管理、備品発注、サービス
10 内容及び料金の設定など人的・物的な店舗運営業務を行いつつ、施術者の1
人としての業務も続けていた。他方、原告代表者は、原告店舗に日常的に在
籍し、業務を行っていたわけではなかった。
イ 被告Aは、令和3年2月4日、原告に雇用され、以後、原告店舗において、
主としてマッサージの施術業務に従事した。被告Aは、令和4年1月からは、
15 Nに代わって原告店舗の店長の立場となり、施術者としての業務を行いつつ、
マネージャーとなったNを補助するように原告店舗の運営にも一定関わる
ようになった。しかし、被告Aは、令和5年中頃には、プライベート上の問
題を理由に、雇用関係下での勤務が負担となったことから、業務量を減らす
べく、Nに対し、いわゆる歩合制となり、原告店舗に在籍すべき時間的拘束
20 も緩やかとなる業務委託契約関係への移行を要望し、Nもこれを受け入れた。
被告Aは、令和5年8月23日、原告との間で、契約期間を令和5年8月
1日から令和7年8月1日までとし、原告店舗にてエステ施術の業務を行い、
その売上の一定割合を報酬として受け取る旨の業務委託契約を締結し、これ
をもって、原告と被告Aとの雇用関係は終了した。ただし、その契約書に署
25 名押印をしたのは、被告Aのみで、原告代表者の欄は記名があるのみであっ
た。
上記業務委託契約書には、競業避止義務を定める条項はなく、6条には、
次の記載があった。
「甲(被告A)乙(原告)ともに、関係者や相手方に関するあらゆる情報及
び来店顧客情報の扱いには十分な注意を払い、内外を問わず漏洩させては一
5 切なりません。
また、甲は乙の顧客及びお客様との個人同士の連絡や金銭授受等は禁止と
します。
違反した場合は、事由を問わず相手方に対して、損害賠償等被った損害は
全額負担しなければなりません。
10 あわせて甲及び乙は守秘義務を遵守し、互いの秘密保持、紳士協定に反し、
相手方に損害を与えた場合は事由を問わず、全額損害を相手方に賠償しなけ
ればなりません。」
ウ 被告Bは、専門学校時代からの友人である被告Aの誘いを受けて、令和3
年7月2日、原告に雇用され、以後、原告店舗において、主としてまつげエ
15 クステンションなどの目元周辺の施術を行ういわゆるアイリストとして従
事していた。
被告Bは、令和5年12月27日には、原告との間で、契約期間を令和6
年1月1日から令和8年1月1日までとし、原告店舗にてエステ施術の業務
を行い、その売上の一定割合を報酬として受け取る旨の業務委託契約を締結
20 し、これをもって、原告と被告Bとの雇用関係は終了した。ただし、その契
約書に署名押印をしたのは、被告Bのみで、原告代表者の欄は記名があるの
みであった。
上記業務委託契約書にも、競業避止義務を定める条項はなく、6条には、
上記イの被告Aに係る契約と同じ記載があった。
25 (2) 被告らによる店舗の開店と原告店舗内での行為等
ア 被告らは、令和5年11月、原告店舗と同じ大阪市●●区内にあるマンシ
ョンにて、被告Aにおいては、4階の一室にてマッサージの施術を提供する
店舗(被告A店舗)を、被告Bにおいては、6階の一室にてまつげエクステ
ンションの施術を提供する店舗(被告B店舗)を開店した。
イ 被告Aは、原告との契約関係が雇用ではなく、業務委託関係であったこと
5 もあり、このような店舗開店に問題はなく、原告店舗のマネージャーである
Nも了解しているとの認識であったため、原告店舗での施術時に、顧客との
間で、被告A店舗の開業やその店舗名を話題とすることがあったほか、令和
5年12月までの間には、被告A店舗のLINEアカウント等の情報を記載
した名刺を交付したこともあった。
10 また、被告Aは、被告A店舗の開店もあって、原告店舗での業務を減らし
ていこうとしていたが、Nから、令和5年11月中旬には、
「1月になったら
人員不足少し解消されると思うので、12月だけすみませんがご協力よろし
くお願いいたします。」といった依頼を受けるなどし、一定の業務量を保つ
ようにしていた。
15 被告AとNとの関係性は、令和5年12月までは良好なもので、被告Aも
Nからの求めに応じる形で後進の育成にも当たっていたが、令和6年1月上
旬になって、原告店舗を訪れた原告代表者から、被告Aが被告A店舗で営業
していることを突き止めたとして、これを問題視する発言を受けて以降、被
告AとNほか原告との関係は徐々に悪化していった。原告は、令和6年3月
20 25日付けで、被告Aに対し、原告店舗への立入りを禁止すると通知し、一
方で、被告Aは、同月28日付け契約解除通知書で、原告に対し、同月25
日をもって原告との業務委託契約を解約する旨通知し、これによって同契約
関係は終了した。
ウ 被告Bは、令和5年11月から12月までの時点では、原告との間で未だ
25 雇用関係にあったが、被告B店舗の開店に問題はなく、Nも了解してくれて
いるとの認識であったため、原告店舗での施術時に、顧客との間で、被告B
店舗の開業やその店舗名を話題とすることがあったほか、被告B店舗のLI
NEアカウント等の情報を記載した名刺を交付したこともあった。
しかし、被告Bは、令和5年12月下旬頃になって、上記(1)ウの内容の業
務委託契約を結んだほか、令和6年1月上旬には、被告Aによる被告A店舗
5 の営業が原告代表者から問題視されるという経緯もあったため、令和6年1
月以降、原告店舗において、顧客に対して、被告B店舗の話題をすることは
なくなった。
被告Bも、令和6年1月の顧客とのトラブルほか、被告B店舗の営業が原
告代表者の意に沿うものでなかったことから、原告との関係が悪化していっ
10 た。原告は、代理人弁護士を介して、同年2月29日付け通知書により、被
告Bに対し、被告B店舗の開店が、従業員としての職務専念義務、業務委託
契約における競業避止義務及び守秘義務に反するとして113万5815
円の損害賠償金の支払を求め、業務上横領罪や背任罪等で刑事告訴する旨を
通知した。被告Bは、代理人弁護士を介して、同年3月6日付け契約解除通
15 知書をもって、原告に対し、通知書受領日に業務委託契約を解約する旨を通
知した。被告Bは、実際には、原告店舗でのアイリストが被告Bのみであっ
たことから、同年4月10日まで原告店舗で業務を行ったが、同日をもって、
原告及び被告B間の業務委託関係は終了した。
エ 被告らは、原告との各業務委託契約関係が終了した後に、被告A店舗及び
20 被告B店舗を閉じるとともに、●●区内にて新たな店舗を開いた(被告ら新
店舗)。
2 争点1(被告らの不正競争(不競法2条1項4号又は7号)の成否)について
原告は、本件サイトを通じて予約を受けた顧客の情報については、同サイトに
係るサービスの一環として、店舗側からのみアクセス可能なものとして管理され
25 るもので、このように管理されていた原告顧客情報(別紙「原告店舗における顧
客情報目録」)は原告の営業秘密であり、被告らは、これらの情報を不正に取得し
て、顧客らの勧誘に使用したもので、不正競争行為に当たる旨主張する。
この点、証拠(甲9~11、15、被告A本人、被告B本人)及び弁論の全趣
旨によれば、原告顧客情報に記載されている元々原告店舗の顧客であった9名全
員が被告B店舗開店から間もない頃以降に被告B店舗で施術を受けたことは確
5 かである。
しかし、前記認定事実のとおり、被告らは、被告A店舗及び被告B店舗を開店
した令和5年11月から12月当時、原告店舗での施術時に、顧客との間で、そ
れら店舗を開店したことやその店名などの基本情報を話題とすることがあった
ものである。この点の法的問題については後の争点として検討するとして、本争
10 点との関係では、顧客にとっては、原告顧客情報を用いた勧誘を受けるまでもな
く、被告A店舗ないし被告B店舗を知る機会を持ち得たものといえる。他方、原
告が原告顧客情報として特定する情報は、原告店舗の利用予約をした9名の顧客
の「予約者名」
「性別」
「年代」
「職業」
「ニックネーム」
「対応スタッフ」にとどま
り、電話番号などの連絡先を含むものではなく、顧客の別店舗への勧誘に直結さ
15 せることのできる情報ではない。また、仮に、原告が営業秘密として特定する情
報が、別紙「原告店舗における顧客情報目録」記載の顧客に係る連絡先を含む趣
旨であったとしても、上記のとおり、顧客にとって、被告A店舗ないし被告B店
舗を知る機会が他にあり得たことを踏まえると、これとは別に、被告らが、その
ような連絡先情報を用いて勧誘行為を行ったと認めるに足りる証拠があるとは
20 いえない。
したがって、被告らが原告顧客情報を不正に取得し、使用したとの事実を認め
ることはできない。原告顧客情報が原告の営業秘密に該当するかを検討するまで
もなく、被告らに不正競争行為があったとはいえず、原告の主張は採用できない。
3 争点2(被告らの競業避止義務違反等の債務不履行及び共同不法行為の成否)
25 について
(1) 被告Bについて
ア 前記認定事実のとおり、被告Bは、原告との雇用関係が継続している最中
である令和5年11月に、原告店舗と同じ大阪市●●区内のマンション一室
において、原告店舗とサービス内容が重複する被告B店舗を開店して営業を
始めた上、同年11月から12月までの間、原告店舗内での施術時に、顧客
5 との間で、自らが被告B店舗を開店したことやその店名などの基本情報を話
題にしたものであるし、被告B店舗のLINEアカウント等が記載された名
刺を交付することもあった。その結果、証拠(甲9~11、15、被告B本
人)及び弁論の全趣旨によれば、原告店舗の顧客のうち18名が、被告B店
舗が開店して間もない頃以降、被告B店舗に来店してその施術を受けるよう
10 になったことが認められるところ、被告Bが原告店舗での施術時に被告B店
舗のことを話題とした顧客は相応の人数であったものといえる。
そして、一般に、雇用契約関係にある労働者は、使用者に対して誠実義務
を負うものである(労働契約法3条4項)ところ、被告Bによる令和5年1
1月から12月にかけての上記競業等の行為は、原告との雇用契約関係に伴
15 う誠実義務に反するものというべきである。
これに対し、被告Bは、被告B店舗を開店することは、原告店舗のマネー
ジャーであるNの了承を得ていた旨主張、立証(乙8、被告B本人)するが、
被告Bの言い分を前提としても、Nから了承を得ていたのは、令和6年1月
以降の開店である。被告Bが、令和5年の段階で、Nとの間で、令和6年1
20 月以降に自らの店舗を開きたい旨の思いを話し、当時のNもこれに特段異を
述べなかったことは、原告と被告Bとの間の契約関係が、令和6年1月に雇
用から競業避止義務を伴わない業務委託に切り替えられていることからし
ても事実と認められる(証人Nは、そのような話を聞いていなかった旨供述
する一方で、契約関係の切り替えに至った事情について何ら説明ができてお
25 らず、採用できない。)が、このことは、雇用関係が継続していた令和5年1
1月から12月にかけての被告Bの上記誠実義務を免れさせるものではな
い。よって、被告Bの上記主張は採用できない。
イ 他方、被告Bは、令和6年1月以降の原告との業務委託契約下においては、
競業避止義務が規定されていたわけではないから、被告B店舗の営業を継続
していたことが、原告との関係で義務違反を問われるものではない。また、
5 被告Bが、令和6年1月以降にも、原告店舗での施術時に、被告B店舗のこ
とを話題にしたことを認めるに足りる証拠はなく、むしろ、前記認定事実の
とおり、業務委託契約の内容や、被告A店舗の開店につき原告代表者が問題
視したことを受けて、話題とするのを控えるようになったとの経過を事実と
認めるのが相当である。
10 したがって、被告Bは、雇用関係下で上記義務違反があったこととは異な
り、令和6年1月以降の業務委託契約下での義務違反は認められない。
(2) 被告Aについて
前記認定事実のとおり、被告Aは、原告との雇用関係を終了し、業務委託契
約関係とした後の令和5年11月に、原告店舗と同じ大阪市●●区内にあるマ
15 ンション一室において、原告店舗とサービス内容が重複する被告A店舗を開店
して営業を始めた上、同年11月から12月までの間、原告店舗内での施術時
に、顧客との間で、自らが被告A店舗を開店したことやその店名などの基本情
報を話題にしたものである。そして、証拠(甲15、被告A本人)及び弁論の
全趣旨によれば、原告店舗の顧客のうち7名が、被告A店舗が開店して間もな
20 い頃以降、被告A店舗に来店してその施術を受けるようになったことが認めら
れるところ、被告Aが原告店舗での施術時に被告A店舗のことを話題とした顧
客は一定の人数であったものとはいえる。
しかし、当時の被告Aは、原告と雇用契約関係にあったものではなく、その
ような契約に伴う競業避止義務を負っていたわけではないし、原告との業務委
25 託契約においても競業避止義務が規定されていたわけではないのであるから、
被告A店舗を開き、その営業を行っていたことが、原告との関係において、義
務違反を構成するものではない。
また、被告Aは、原告店舗と競業する被告A店舗を営業したというのみでは
なく、原告店舗で業務受託者として施術を行うに際し、被告A店舗の開店やそ
の店名などの基本情報を話題にしたことが認められるものではある。しかし、
5 業務委託契約上、そのような言動を明示的に禁じる規定はなかったこと、被告
Aが顧客に対し、被告A店舗の料金の方が安いなどの優位性のある情報を告げ
て積極的に勧誘したまでの事実を認めるに足りる証拠はないこと(証拠上も、
被告A店舗のサービス提供価格が原告店舗より低額であったことを認めるこ
とはできない。)、Nと被告Aとの間でどの程度具体的なやりとりがされたかに
10 関する明確な証拠はないものの、原告店舗のマネージャーとしてその労務管理
等の実働を担っていたNが、原告店舗の施術者の独立開業について、比較的寛
容な、少なくとも、そのように受け取られるような言動をしていたものといえ
ること(乙7、8、被告A本人、被告B本人、弁論の全趣旨。被告Bに関して
前記(1)アで認定・説示したところは、その一環といえる。)からすると、被告
15 Aが顧客との間で上記のような話題をしたことをもって、業務委託契約上の義
務違反があったということはできない。原告は、被告Aのこのような行為をも
って、業務委託契約6条の「顧客及びお客様との個人同士の連絡や金銭授受等
は禁止します。」との規定に反する旨主張するものと解されるが、以上のよう
な経過で、顧客が被告A店舗にアクセスし、そこでサービスの提供及び対価の
20 支払があったとしても、顧客の選択によるものというほかなく、被告Aの義務
違反を構成するような被告Aの行為としての「連絡」や「金銭授受」に当たる
ものとまではいえない。
他方、被告Aは、一部の顧客には、被告A店舗のLINEアカウント等の情
報を記載した名刺を交付したことを認めている(被告A本人)ところ、このよ
25 うな行為は、顧客との個人同士の連絡を禁じる上記業務委託契約6条に抵触し
得るものであることは否定できない。しかし、原告店舗の顧客で、被告A店舗
に来店することとなった顧客のうち、被告Aが名刺を渡した者と証拠上認定で
きるのは1名にとどまる(被告A本人)上、名刺交付時期は、原告代表者から
令和6年1月上旬に苦言を呈される前の令和5年12月までのことであった
のに対し、当該顧客の原告店舗への来店は令和6年1月22日まで続いていた
5 (甲15の54番)。また、原告店舗の顧客は、被告Aから名刺を受け取ってい
なくても、被告Aから聞いた被告A店舗の店名などからインターネットで検索
した上で被告A店舗を予約し、来店することは可能であったことが認められる
(甲5、9、被告A本人)。そうすると、結局のところ、原告店舗と被告A店舗
のいずれで施術を受けるかは、名刺交付の有無によらず、顧客の選択によるも
10 のであったというほかなく、名刺の交付によって、原告に損害が生じたという
ことはできない。
以上より、被告Aには、原告との契約上の義務違反があったとは認められな
いし、仮に一部の行為を義務違反とみるとしても、これによって原告に損害が
生じたと認めることはできず、いずれにしても、債務不履行に基づく損害賠償
15 責任を負うものとはいえない。
(3) 共同不法行為の主張について
原告は、被告ら各人の契約上の義務違反をもって共同不法行為が成立すると
も主張するところ、そもそも義務違反が認められるのは、被告Bに関する前記
(1)アの限りであり、被告Bのその余の行為及び被告Aの行為については、不
20 法行為の主張の前提を欠くものである。
他方、被告Bに関する前記(1)アの行為についても、雇用契約上の誠実義務
違反が直ちに不法行為をも意味するものでなく、むしろ、契約上の義務違反が
あるとはいえ、営業秘密の不正取得や使用といった不正競争に該当するような
行為が認められるわけではないこと(前記2)、被告Bが、前記(1)アでの認定・
25 説示の範囲を超えて、被告B店舗の料金の方が安いなどの優位性のある情報を
告げて積極的に勧誘したまでの事実を認めるに足りる証拠はないこと(証拠上
も、被告B店舗のサービス提供価格が原告店舗より低額であることを認めるこ
とはできない。)からすると、被告Bの行為が不法行為に当たるものとまでは
いえず、他にこれを根拠づけるような事情を認めることはできない。
したがって、被告らの行為については、被告Bに関する前記(1)アの行為を
5 含めて、不法行為が成立するわけではなく、共同不法行為の主張もその前提を
欠くものといえる。
なお、被告らは、同じマンションの2室の店舗(被告A店舗、被告B店舗)
について、本件サイト上では両店舗の店名を組み合わせた表記( F )
をしていたものではある(甲5)ものの、被告らは、各人が一室ずつを別店舗
10 とし、各店舗で異なる施術を行っていたものである上、当然ながら、被告らに
とって、原告との契約関係は、個々別々のものだったのであるから、被告Bの
上記義務違反の責任を負うべきは、あくまで被告B個人であって、客観的関連
共同や共同不法行為といった法的構成のもとで、被告Aが連帯して責任を負う
べき理由はない。
15 また、原告は、被告らが原告店舗のフロアスタンドを無断で持ち出して利用
しているなどの主張もするが、原告の主張する損害ないし賠償請求との具体的
な関連が明らかでなく、判断を要するものではない。
以上より、いずれの観点からも、共同不法行為に関する原告の主張は採用で
きない。
20 4 争点3(損害の有無及び額)について
(1) 逸失利益
ア 証拠(甲9~11、15、被告B本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告店
舗の顧客であった者のうち18名が被告B店舗が令和5年11月に開店して
間もない頃以降、被告B店舗で施術を受けることとなった一方、原告店舗に
25 来店しなくなったこと(①甲15及び被告B本人から認められる15名のほ
か、②被告ら準備書面4で開示された顧客のうち甲15と重複関係にない2
名、③さらにこれらのいずれにも表れていないものの、甲9から認定できる
1名の計18名)、原告店舗への最終来店日が令和5年10月から12月に集
中していることが認められる。
このような事情の一方で、被告Bによる前記義務違反があったのが、原告
5 との雇用関係終了間際である令和5年11月から12月までの2か月程度の
期間であったこと、令和6年1月以降は、被告B店舗の営業が原告に対する
義務違反を構成するものではなかったことのほか、証拠(甲15)上認められ
る原告店舗におけるそれら顧客の来店頻度を考慮すると、原告には、被告B
に上記義務違反がなかった場合と比して、18名の顧客の原告店舗への来店
10 が1回失われたことに相当する損害が発生したものと認められる。
イ そこで具体的な損害額を検討するに、証拠(甲4、15)及び弁論の全趣旨
によれば、それら顧客が原告店舗で被告Bから受けていた目元周辺の施術の
料金は、1回当たり5100円から9730円までの幅があったところ、原
告店舗における施術者ごとの売上げ管理上、被告Bの「客単価」
(甲4)は概
15 ね6500円前後で推移していたものである。
他方、原告店舗の営業上発生する費用は、人件費や店舗賃料といった固定
費が主なもので、被告Bが上記のような施術を行うに際して発生する変動費
は、数百円程度の仕入代ほか、一定の光熱費等程度にとどまるものといえる
(証人N、原告代表者)。
20 そうすると、上記アの枠組みのもと、原告は、顧客1名あたり6000円の
利益を逸失したもので、その18名分である10万8000円が、被告Bの
義務違反による原告の逸失利益としての損害と認めるのが相当である。
これに対し、原告は、原告店舗での被告Bに係る令和5年11月以降、令和
6年3月までの売上減少の全額(原告によれば、83万6465円)をもっ
25 て、原告の逸失利益である旨主張する。しかし、原告店舗での売上げの減少
(甲4)について、上記算定の範囲を超えて、被告Bの義務違反と因果関係の
ある損害があったと認めるに足りる証拠はない上、原告算定上の7割ほどを
占める令和6年1月以降の減少分に至っては、被告Bと原告との契約関係が
雇用から業務委託へと切り替えられたことに伴う側面が大きいとうかがわれ
るものでもある。よって、損害算定に係る原告の上記主張は採用することが
5 できない。
(2) 弁護士費用
原告は、弁護士費用をもって、被告Bの前記義務違反と相当因果関係のある
損害である旨主張するが、被告Bの行為について不法行為の成立まで認められ
るものではないなど本件事案の内容等に加え、上記(1)の損害算定額も踏まえ
10 れば、上記(1)に加えて、被告Bの上記義務違反と相当因果関係のある弁護士費
用を認めることはできない。
(3) 遅延損害金の起算日
本訴で認容されるべき原告の被告Bに対する債務不履行に基づく損害賠償
請求権は、期限の定めのない債権として、履行の請求を受けた時から遅滞の責
15 任が生じる(民法412条3項)ものであるところ、原告が被告Bに対してそ
の履行の請求をしたのは、令和6年2月29日付け通知書(乙4)によるもの
である。これが被告Bに到達した日は証拠上明確ではないながら、被告Bがこ
れに応答する形で原告に対して同年3月6日付け解除通知書を送付している
ことから、原告の上記通知書は同月5日には被告Bに到達したものと認められ、
20 遅延損害金の起算日は令和6年3月6日と認めるのが相当である。
第5 結論
よって、原告の請求は主文の限度で理由があるから、その限度で認容し、その余
を棄却することとし、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官
松 川 充 康
裁判官
阿 波 野 右 起
10 裁判官
島 田 美 喜 子


※別紙「原告店舗における顧客情報目録」は添付を省略した

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (3月2日~3月8日)

来週の知財セミナー (3月9日~3月15日)

3月12日(木) - オンライン

初めての方向け JDreamⅢ体験セミナー

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

かもめ特許事務所

横浜市中区本町1-7 東ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

芦屋国際特許事務所

659-0068 兵庫県芦屋市業平町4-1 イム・エメロードビル503 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

西川国際特許事務所

〒170-0013 東京都豊島区東池袋3丁目9-10 池袋FNビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング