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令和7(ネ)10066商標権侵害差止請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年2月12日
事件種別 民事
当事者 被控訴人ゴイチマル株式会社
法令 商標権
商標法36条1項1回
キーワード 商標権9回
差止3回
侵害2回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3
0日と定める。
事件の概要 る。ただし、 「原告」は「控訴人」と、 「被告」は「被控訴人」と、 「別紙」は「原 判決別紙」とそれぞれ読み替える。 )

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判決文

令和8年2月12日判決言渡
令和7年(ネ)第10066号 商標権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁
判所令和6年(ワ)第70635号)
口頭弁論終結日 令和7年12月10日
5 判 決
控 訴 人 ヴェンガー エス アー

10 同訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾
同 寺 前 翔 平
同 丸 山 悠
被 控 訴 人 ゴ イ チ マ ル 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 中 野 博 之
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
20 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3
0日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
25 2 被控訴人は、原判決別紙被控訴人商品目録記載の各商品を譲渡し、引き渡し、
又は譲渡若しくは引渡しのため展示してはならない。
3 被控訴人は、原判決別紙被控訴人商品目録記載の各商品に関する宣伝用のパ
ンフレットほかの広告宣伝物に原判決別紙被控訴人標章目録記載の各標章を付
して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に同標章を付して
電磁的方法により提供してはならない。
5 4 被控訴人は、第2項の各商品及び前項の各標章を付した前項の広告宣伝物を
廃棄せよ。
5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要(以下、特に断らない限り、略語は原判決と同一のものを使用す
る。ただし、
「原告」は「控訴人」と、
「被告」は「被控訴人」と、
「別紙」は「原
10 判決別紙」とそれぞれ読み替える。)
1 本件は、控訴人が被控訴人に対し、被控訴人が原判決別紙被控訴人標章目録
記載の各標章(以下、
「被控訴人標章1」、
「被控訴人標章2」といい、これらを
総称して「被控訴人各標章」という。)を付した原判決別紙被控訴人商品目録記
載の各商品(以下、
「被控訴人商品1」、
「被控訴人商品2」といい、これらを総
15 称して「被控訴人各商品」という。)を販売することにより、控訴人の保有する
原判決別紙商標権目録記載の商標(以下「控訴人商標」という。)に係る商標権
(以下「控訴人商標権」という。)が侵害されていると主張して、商標法36条
1項及び2項に基づき、①被控訴人各商品を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若し
くは引渡しのために展示することの差止め、②被控訴人各商品の広告宣伝物に
20 被控訴人各標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情
報に被控訴人各標章を付して電磁的方法により提供することの差止め並びに③
被控訴人各商品及びその広告宣伝物の廃棄を求める事案である。
原審が、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が本件控訴を提起
した。
25 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記
3のとおり当審における控訴人の主な補充主張を付加するほかは、原判決の「事
実及び理由」中(以下、原判決を引用する場合に「事実及び理由」中との記載
を省略する。)、第2の2ないし4(原判決2頁17行目ないし8頁4行目)に
記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決3頁2行目の末尾の次を改行し、次のとおり加える。
5 「⑷ 被控訴人各商品は控訴人商標権の指定商品と同一ないし類似する商品
である。
⑸ 被控訴人は、原審における令和7年3月21日付け第1準備書面にお
いて、被控訴人標章1に関し、その外観は外周部を構成する金属光沢の
ある正方形の板部分しか明確に認識できず、正方形の内部の構造ははっ
10 きりしないため外観の判別は困難であって、控訴人商標とは外観が異な
る、そして、被控訴人標章1の構造がはっきり判別できず称呼及び観念
は生じないことから、控訴人商標とは称呼及び観念も異なる旨主張した。
これに対し控訴人は、原審における令和7年4月16日付け準備書面⑴
において、被控訴人商品の販売ページ(甲4)の写真1は不鮮明である
15 が、内側の四角形状の図形の内部(中央)に位置する幅広の十字ははっ
きりと看取でき、写真1から被控訴人標章1の外観上の特徴を看取でき
る旨主張した。控訴人は、令和7年4月23日に行われた第2回弁論準
備手続期日において、
『訴状別紙3被告標章目録記載の被告標章1につい
て、これを拡大した画像を主張立証する予定はない。』と述べ、同日弁論
20 準備手続は終結した。」
⑵ 原判決4頁10行目の「輸入会社」を「輸入会社であるTRAVELPL
US INTERNATIONAL株式会社(以下「輸入会社」という。)」
と改める。
⑶ 原判決7頁19行目の「写真に」の次に「輸入会社の商標である」を加え
25 る。
3 当審における控訴人の主な補充主張
⑴ 被控訴人標章1との類否について
ア 外観等の認定の誤り
原判決は、被控訴人標章1の外観は「①外側に配置された、直線状の縁
(辺)及び略直角の角を有する四角形の図形、②その内側に配置された①
5 と略相似形の四角形の図形並びに③その内部の略中央に上下に2つ左右
に2つ接着して配置された4つの不整形な円の集合体状の図形から成る。
外側の四角形と内側の四角形との間の部分(外縁部分)の幅は不整形の円
の直径と同程度であり、外縁部分及び不整形の円の集合体状の図形の部分
が銀色ないし白色で、その余の部分が黒色である」などと認定した。
10 しかし、被控訴人標章1は、原判決別紙被控訴人標章目録1に記載のと
おりであり、写真上明らかに十字の模様が看取できるのであって、四つの
不整形な円の集合体状の図形は全く看取できない。原審でも主張したとお
り、被控訴人標章1の写真は、被控訴人サイト(甲4)において最も大き
く表示されており、被控訴人標章2の写真よりも明らかに細部を看取でき
15 るように掲載されている。それにもかかわらず、原判決は被控訴人標章2
については被控訴人サイトの写真上では明らかに看取できない細部の構
成が看取できるなどと判示しており、この点だけを見ても原判決が恣意的
な認定をしていることは明白である。被控訴人標章1と被控訴人標章2は
どちらも被控訴人サイト上に表示された写真であり、その明瞭さに有意な
20 差はなく、被控訴人標章2の外観の特徴は看取可能だが、被控訴人標章1
の外観の特徴は看取不可能などという恣意的な認定はあり得ない。また、
被控訴人各標章の写真は被控訴人サイトにおいて連続して掲載されてい
るのだから、被控訴人標章1の写真だけでは十字部分が不整形な円の集合
体状の図形に見え得ると仮定したとしても、被控訴人標章2の写真に照ら
25 し合わせると、被控訴人標章1の中央部分の図形も十字であると考えるの
が極めて自然な見方であり、かえって被控訴人標章2の中心部の模様が十
字であるにもかかわらず、同一の被控訴人サイトに掲載されている被控訴
人標章1の中心部の模様だけが十字ではない、不整形な円の集合体状の図
形であると認定することは経験則に反する。
以上のとおり、原判決の被控訴人標章1の外観の認定は明白な誤りであ
5 り、内側の四角形の内部の中央に位置する十字が正しく認定されていれば、
被控訴人標章1からは「十字」又は「クロス」の観念及び「ジュウジ」又
は「クロス」との称呼が生じることは明らかである。
イ 類否の判断の誤り
原判決は、控訴人商標と被控訴人標章1の外観は、外側及び内側に四角
10 形が配置されている点、外縁部分及び内側の図形が淡色で、その余の部分
が黒色であるという点において共通すると認定し、これらの共通点が取引
者及び需要者が着目する図形の全体的構成に関わるものであると判示し
た。その一方で、原判決は、相違点として、①外側及び内側の四角形の四
辺に当たる縁(辺)が、外側に向けて湾曲しているか(控訴人商標)、直線
15 であるか(被控訴人標章1)、②外側及び内側の四角形の四隅が丸みを帯び
ているか(控訴人商標)、角であるか(被控訴人標章1)、③外縁部分の幅
が、控訴人商標の方が被控訴人標章1より狭い、④中央部分に配置された
図形が異なる、をそれぞれ認定し、相違点④が取引者及び需要者が着目す
る中央部分に位置する図形に関わるもので、識別力が高い部分に係る相違
20 点であるとして、控訴人商標と被控訴人標章1の外観は非類似であると判
示した。
しかし、上記アのとおり、被控訴人標章1の内側の四角形の内部の中央
に位置する図形は十字であり、それは被控訴人サイトに掲載されている被
控訴人標章1の写真から看取可能であるから、原判決の認定は前提におい
25 て誤りである。
また、原判決は、相違点①及び②が、相違点④とあいまって共通点から
全体として受ける類似の印象を凌駕するなどと判示しているが、被控訴人
サイトに掲載されている被控訴人標章1の写真をみても、相違点①及び②
は一見して看取できないし、これらが共通点から受ける類似の印象を凌駕
するものでないことは一目瞭然である。そもそも被控訴人標章1の写真は
5 被控訴人サイトに1枚しか掲載されていないが(大きさの異なる同一の写
真が2枚掲載されているが内容が同じであるためここでは1枚と表現す
る)、一体どのように見れば相違点①及び②が看取可能であり、十字が看取
不可能(四つの不整形な円の集合体状の図形が看取できる)などという認
定になるのか理解できない。このように原判決は被控訴人標章1の外観の
10 特徴を都合よく認定し、合理的理由もなく相違点が共通点から受ける類似
の印象を凌駕するなどと判示するものであるから、恣意的な判断である。
ウ 取引の実情の認定の誤り
原判決は、
「被告は、被告サイトで被告各商品を販売していたこと、被告
各商品の輸入会社であるTRAVELPLUS INTERNATIO
15 NAL株式会社は、『SWISSWIN(標準文字)』という登録商標に係
る商標権(商標登録第6026579号)を保有していること、被告は、
被告各商品を販売する被告サイトにおいて、冒頭に表示される被告商品1
の写真の上に、
『SWISSWIN』の文字から成る標章を同商品に付され
た被控訴人標章1より大きく付し、被告各商品についての商品名欄に『【送
20 料無料】SWISSWIN バックパック リュック リュックサッ
ク・・・』と、商品詳細欄に商品名として『SWISSWIN リュック』
と、商品仕様欄にブランド名として『SWISSWIN』と記載していた
ことの各事実が認められるところ(甲4、乙3及び弁論の全趣旨)、取引者
及び需要者において、被告商品1の出所について誤認混同が生じているこ
25 とをうかがわせる証拠は見当たらない。」などと認定した(原判決10頁)。
被控訴人サイトには輸入会社が商標権者である「SWISSWIN」な
る標章が付されていることは事実であるが、原判決は「SWISSWIN」
なる標章が付されているから被控訴人商品1の出所につき誤認混同が生
じていないと明示的に認定しているのではないため、「SWISSWIN」
なる標章の存在が誤認混同を否定する事情として考慮されたのかどうか
5 明らかでない。この点で原判決には理由不備があることは明白であるが、
「SWISSWIN」なる標章が出所の誤認混同を否定する事情として考
慮されたのだとすれば、それは明らかな事実誤認である。そもそも、
「SW
ISSWIN」との表示は、輸入会社(TRAVELPLUS INTE
RNATIONAL株式会社)が、控訴人商標を模倣した標章を付したか
10 ばん製品を販売する際に用いてきた表示であり、これは知的財産高等裁判
所令和2年(ネ)第10060号同3年4月21日判決(甲7)及びその
原審判決である東京地方裁判所令和元年(ワ)第26463号同2年9月
29日判決(甲8)が認定するとおりである。また、同社は、自らのかば
ん製品の商品名として「SWISSWIN SWISSGEAR デイパ
15 ック バックパック ウェンガー WENGER」などと表示してその商
品を販売していた(甲7の11頁)。これらの行為により、インターネット
上のショッピングサイトでは、かばん製品の販売業者がその商品情報とし
て「スイスの人気アウトドアブランドWENGERシリーズSWISSW
INから多機能&収納豊富でスタイリッシュなデザインのバッグの登場
20 です。」などと表示して、控訴人の「ヴェンガー」又は「WENGER」と、
輸入会社の「SWISSWIN」とを混同し(甲7の11頁、甲9の34
頁)、同じくかばん製品の販売業者が、販売するブリーフケースに係る商品
情報として、
「スイスの人気アウトドアブランドWENGER」、
「WENG
ER PROSPECTUS(ヴェンガー プロスペクタス)」、
「SWIS
25 SWIN スイスウィン」と表示して控訴人の「ヴェンガー」又は「WE
NGER」と輸入会社の「SWISSWIN」とを混同している(甲9の
34頁)など、インターネットショッピングサイトの販売業者において、
現に出所の誤認混同が生じている(甲7の11頁、甲9の34頁)。このよ
うに「SWISSWIN」なる表示は、控訴人商品と輸入会社のかばん製
品との出所の誤認混同に寄与してきたのであり、
「SWISSWIN」の表
5 示は出所の誤認混同を誘発する原因にこそなるが、出所の誤認混同を否定
する事情には全くならない。
そもそも原判決は、
「取引者及び需要者において、被告商品1の出所につ
いて誤認混同が生じていることをうかがわせる証拠は見当たらない。」な
どと認定しているが、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の
10 商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずる「おそれ」
があるか否かによって決すべきであるというのが判例の立場である。実際
に出所の誤認混合が生じている事実は、誤認混同のおそれを推認させる事
実となり得るが、実際に誤認混同が生じていなければ商標の類似が認めら
れないと判示しているのではない。原判決の認定によれば、実際に出所の
15 誤認混同が生じている証拠を示さなければ類似性が否定されることにな
るが、それでは実際の誤認混同の事実を要求していることになり、判例の
立場に反する。
以上より、取引の実情に係る原判決の認定は客観的事実に反するばかり
か、自らが示した判例の立場にも反するものであるから破棄を免れない。
20 ⑵ 被控訴人標章2との類否について
ア 類否の判断の誤り
原判決は、控訴人商標と被控訴人標章2の外観は、外側及び内側に四角
形が配置されている点、その内部中央に幅広の十字が配置されている点に
おいて共通すると認定し、これらの共通点が取引者及び需要者が着目する
25 図形の全体的構成に関わるものであると判示した。その一方で、原判決は、
相違点として、①外側及び内側の略正方形の四辺に当たる縁(辺)が、外
側に向けて湾曲しているか(控訴人商標)、直線であるか(被控訴人標章2)、
②被控訴人標章2の十字が支持棒を有するが、控訴人商標は有しない、③
外縁部分の幅が、控訴人商標の方が被控訴人標章2より狭い、④被控訴人
標章2は、外縁部分並びに十字及び支持棒が、その余の部分より盛り上が
5 っているが、控訴人商標は平板である、⑤被控訴人標章2は、外縁部分の
四隅にはリベット頭部状部分及びそれを囲む円型凹部が、外縁部分の上下
左右には棒状凹部(棒状凹部の両端と四隅部分との間は湾曲した凹部で区
切られている。)が、十字部分には斜線状の溝が4本存在するが、控訴人商
標は平板である、⑥外縁部分及び十字が白色(控訴人商標)であるか銀色
10 であるか(被控訴人標章2。支持棒を含む。)、⑦⑥以外の部分が黒色(控
訴人商標)であるか赤色であるか(被控訴人標章2)、をそれぞれ認定し、
相違点①~⑤によって控訴人商標が平板でシンプルな印象を与えるのに
対し、被控訴人標章2は、より重厚かつ複雑な印象を与える、相違点⑥~
⑦によって被控訴人標章2は全体として控訴人商標の色彩と異なる印象
15 を与えるため、控訴人商標と被控訴人標章2の外観は非類似であると判示
した。
しかし、この認定も被控訴人標章1と同様に、取引の実情を考慮したも
のではなく不当である。被控訴人サイトに掲載されている被控訴人標章2
の写真は、原判決別紙被控訴人商品目録2に記載された商品画像でもなけ
20 れば、原判決別紙被控訴人標章目録2に記載された写真でもない。原判決
が引用する画像等は、控訴人が被控訴人商品2を実際に購入しその細部が
看取できるように間近で撮影したものであるから、この画像等から細部を
認定できるのは当たり前である。
被控訴人サイトに掲載された被控訴人標章2の写真を見れば明らかであ
25 るが、原判決が認定した形状の相違点①~⑤や色彩の相違点⑥は全く看取
できない。控訴人が提出した明瞭な写真を見て控訴人商標との相違点を認
定することは容易であろうが、控訴人が原審で主張したとおり、本件で問
題にすべきは、被控訴人サイトにおける被控訴人標章2の画像が不明瞭で
あるため、一見して相違点⑦以外の相違点は看取できないということであ
る。被控訴人商品2は被控訴人サイトで販売されており、取引者及び需要
5 者は、被控訴人サイトに掲載された被控訴人標章2の写真を唯一の判断材
料として被控訴人商品2を購入するかを決定しているのであり、現物を見
たり、控訴人が提出した明瞭な写真を見て判断しているのではない。原判
決はこのような取引の実情を全く考慮せずに明瞭な写真のみから相違点
を認定し、漫然と非類似と判断しており説得力のない判示である。被控訴
10 人標章1についてはそれが付された被控訴人商品1の現物がないから被
控訴人サイト上に掲載された写真だけで判断し、被控訴人標章2について
はそれが付された被控訴人商品2の現物が存在するから明瞭な写真をも
とに判断しているとしか思えないが、そのような判断が許される余地はな
い。原判決が掲げる最高裁判決は、商標の類否を判断するに当たっては、
15 「商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づ
いて判断するのが相当である」と明確に示しているのであるから、具体的
な取引状況、すなわち被控訴人サイトに掲載されている写真の数、大きさ、
明瞭さなどを十分に考慮しなければならないことは当然であり、これらを
一切考慮することなく相違点を認定し、合理的理由も示さずに共通点から
20 受ける類似との印象を凌駕するなどと認定することは許されない。なお、
原判決14頁を見るに、原判決は被控訴人サイト上には被控訴人標章2の
写真が複数枚掲載されており、相違点①、③、④(指示棒を除く)、⑥及び
⑦が看取できるなどと認定しているが、一体どの写真を見ればこれらの相
違点が看取可能などと認定しているのか定かでない。
25 そして、相違点⑦に関しては、原審で主張したとおり、被控訴人サイト
中に最も大きく、かつ最初に表示されるのは黒色を基調とした被控訴人標
章1であり、被控訴人標章2はその色違いとして販売されているに過ぎな
い。商標権者が最も使用頻度が高い色彩又はモノクロで商標登録をし、登
録後に色違いのロゴを用いた商品を展開することはよく見られる営業戦
略であり、商標法は色違いごとに商標を登録しなくて済むように70条1
5 項を置いているのであるから、相違点⑦は識別力の高い相違点とはいえず、
上記共通点から全体として受ける類似との印象を凌駕するものではない。
イ 取引の実情の認定の誤り
原判決は、
「取引の実情に関し、前記2(3)ウに認定した事実が認めら
れるところ、取引者及び需要者において、被告商品2の出所について誤認
10 混同が生じていることをうかがわせる証拠は見当たらない。」と認定して
いるが、前述のとおり、商標の類否の判断に当たっては、対比される両商
標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同
を生ずる「おそれ」があるか否かによって決すべきであるというのが判例
の立場であるから、原判決は判例の立場に反し、破棄を免れない。そして、
15 控訴人商標と被控訴人標章2は外観において明らかに類似し、称呼及び観
念を同一にするから、全体として類似である。
よって被控訴人標章2にかかる原判決の認定も誤りであるから、直ちに
破棄されるべきである。
第3 当裁判所の判断
20 1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は、当審における控訴人の主な補充主張も踏まえ、次のとおり補正し、後記2
のとおり当審における控訴人の主な補充主張に対する判断を付加するほかは、
原判決の第3の1ないし3(原判決8頁5行目ないし14頁14行目)に記載
のとおりであるから、これを引用する。
25 ⑴ 原判決9頁2行目の「とおりであり、」の次に「必ずしもすべてが鮮明とは
いえないものの、」を加える。
同頁9行目の「観念について、」の次に「被控訴人標章1のうちでは比較的
鮮明な」を加え、同行目の末尾の次に「内部の略中央に配置された四つの不
整形な円の集合体状の図形は、不整形の故に、特定の典型的な図形を想起さ
せることがなく、特定の観念を生じない。」を加える。
5 同頁10行目の「称呼について、」の次に「被控訴人標章1のうちでは比較
的鮮明な」を加え、同行目の末尾の次に「内部の略中央に配置された四つの
不整形な円の集合体状の図形は、不整形の故に、特定の典型的な図形を想起
させることがなく、特定の称呼を生じない。」を加える。
⑵ 原判決10頁7行目の「取引の実情に関し」を「本件において」と改め、
10 同頁8行目の「被控訴人各商品の」から10行目の「保有していること」ま
でを「被控訴人各商品の輸入会社は、『SWISSWIN(標準文字)』とい
う、指定商品を第18類スイス製のバッグ、スイス製の旅行かばん等とする
登録商標に係る商標権(商標登録第6026579号)を保有していること」
と改める。
15 同頁21行目の「その外観、観念」から25行目末尾までを「その外観、
観念及び称呼によって取引者及び需要者に与える印象、記憶及び連想等を総
合して全体的に考察したとしても、観念及び称呼が異なり、外観において類
似するとはいえない控訴人商標と被控訴人標章1が、商品の出所について誤
認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。」と改める。
20 ⑶ 原判決13頁8行目の「取引の実情に関し」を「本件において」と改め、
同頁10行目の「そして」から同頁15行目の末尾までを削る。
同頁16行目の「そうすると、」を「そして、控訴人商標と被控訴人標章2
の外観は、前記のとおり大きく異なり、顕著な差異があることからすると、」
と改める。
25 同頁20行目の「その外観、観念」から24行目末尾までを「その外観、
観念及び称呼によって取引者及び需要者に与える印象、記憶及び連想等を総
合して全体的に考察したとしても、外観において顕著な差異がある控訴人商
標と被控訴人標章2が、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある
とはいえない。」と改める。
2 当審における控訴人の主な補充主張に対する判断は、以下のとおりである。
5 ⑴ 控訴人は、前記第2の3⑴アのとおり、原判決の被控訴人標章1の外観等
の認定は誤りである旨を主張する。
しかし、被控訴人標章1は、補正の上で引用した原判決第3の2⑵アのと
おり、①外側に配置された、直線状の縁(辺)及び略直角の角を有する四角
形の図形、②その内側に配置された①と略相似形の四角形の図形並びに③そ
10 の内部の略中央に上下に二つ左右に二つ接着して配置された四つの不整形な
円の集合体状の図形(以下、「内部の図形」という。)から成る。外側の四角
形と内側の四角形との間の部分(外縁部分)の幅は不整形の円の直径と同程
度であり、外縁部分及び不整形の円の集合体状の図形の部分が銀色ないし白
色で、その余の部分が黒色であるものと認定できる。控訴人は、内部の図形
15 につき写真上明らかに十字の模様が看取できると主張するが、内部の図形の
中央部分は黒っぽく見え、控訴人主張に係る模様が見て取れるような鮮明な
写真も証拠として提出されていないから、上記のとおり、集合体状の図形で
あると認定すべきである。この点につき控訴人は、仮に被控訴人標章1の写
真からは不整形な円の集合体の図形に見えるとしても、被控訴人標章2の写
20 真に照らし合わせると被控訴人標章1の中央部分の部分図形も十字であると
考えるのが自然であると主張するが、内部の図形が不整形な円の集合体の図
形に見えるのに被控訴人標章2と敢えて照らし合わせる根拠を欠くものであ
るし、控訴人主張のように考えるべき経験則が存するとの証拠も提出されて
いない。
25 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑵ 控訴人は、前記第2の3⑴イのとおり、原判決の被控訴人標章1との類否
の判断は誤りである旨を主張する。
しかし、控訴人の主張は、被控訴人標章1の内部の図形が十字であること
を前提とするものであり、そのような認定ができないことについては前記⑴
で検討したとおりである。そして、補正の上で引用した原判決第3の2⑶の
5 とおり、控訴人商標と被控訴人標章1は類似するとはいえない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑶ 控訴人は、前記第2の3⑴ウのとおり、原判決の被控訴人標章1について
の取引の実情の認定は誤りである旨を主張する。
しかし、この点については、補正の上で引用した原判決第3の2⑶ウのと
10 おりであり、
「SWISSWIN」との登録に係る商標が付されて販売されて
いること、被控訴人商品1の出所について実際に誤認混同が生じていること
をうかがわせる証拠が見当たらないことについては、本件における事情とし
て認定することができる。その上で、控訴人商標と被控訴人標章1とが非類
似であることについて、補正の上で引用した原判決第3の2⑶エのとおりで
15 ある。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑷ 控訴人は、前記第2の3⑵アのとおり、原判決の被控訴人標章2との類否
判断は誤りである旨を主張する。
しかし、補正の上で引用した原判決第3の3⑴及び⑵のとおり、控訴人商
20 標と被控訴人標章2は類似するとはいえない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
⑸ 控訴人は、前記第2の3⑵イのとおり、原判決の被控訴人標章2について
の取引の実情の認定は誤りである旨を主張する。
しかし、この点については、補正の上で引用した原判決第3の3⑵ウのと
25 おりであり、被控訴人商品2について、実際に誤認混同が生じていることを
うかがわせる証拠が見当たらないことについては、本件における事情として
認定することができる。その上で、控訴人商標と被控訴人標章2とが非類似
であることについて、補正の上で引用した原判決第3の3⑵エのとおりであ
る。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
5 3 以上に認定判断したところは、当審における控訴人のその余の補充主張によ
っても、左右されるものではない。
4 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することと
して、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
中 平 健
裁判官
今 井 弘 晃
裁判官
水 野 正 則

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