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令和6(ワ)3910売買代金支払請求事件

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 令和8年2月6日
事件種別 民事
当事者 原告仏山市順徳区禾栄食品有限公司
被告株式会社BGIJAPAN
対象物 食品用台紙、及び真空パック包装品
法令 特許権
特許法2条3項1号2回
特許法102条3項1回
キーワード 特許権9回
実施9回
侵害7回
損害賠償6回
許諾1回
主文 1 被告は、原告に対し、71万3249.92米ドル及びこれに対する令和6
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告に対し、原告と被告との間で締結された別紙売買契約 一覧表記載のウナギ加工品の売買契約のうち、積荷日を令和4年9月7日及び 同年10月22日とする売買契約に基づき、売買代金合計71万3249.9 2米ドル及びこれに対する令和6年3月29日(訴状送達日の翌日)から支払 済みまで中国法所定の年4.485%の割合による遅延損害金の支払を求める 事案である。

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判決文

令和8年2月6日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和6年(ワ)第3910号 売買代金支払請求事件
口頭弁論終結日 令和7年11月26日
判 決
5 原 告 仏山市順徳区禾栄食品有限公司
(佛山市顺德区禾荣食品有限公司)
同訴訟代理人弁護士 石 田 卓 遠
吉 原 慎 一
岡 部 優 志
10 同訴訟復代理人弁護士 北 島 志 保
大 堀 健 太 郎
被 告 株式会社BGI JAPAN
同訴訟代理人弁護士 朝 野 哲 朗
主 文
15 1 被告は、原告に対し、71万3249.92米ドル及びこれに対する令和6
年3月29日から支払済みまで年4.485%の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
20 第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
本件は、原告が、被告に対し、原告と被告との間で締結された別紙売買契約
25 一覧表記載のウナギ加工品の売買契約のうち、積荷日を令和4年9月7日及び
同年10月22日とする売買契約に基づき、売買代金合計71万3249.9
2米ドル及びこれに対する令和6年3月29日(訴状送達日の翌日)から支払
済みまで中国法所定の年4.485%の割合による遅延損害金の支払を求める
事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(以下、書証番号は
5 特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴ 当事者等
ア 原告は、冷凍食品の生産と営業を行う中国の会社である。(甲1)
イ 被告は、ウナギ事業全般(稚魚、飼料製造、養殖、加工輸出入及び販売)
等を目的とする株式会社である。(甲2)
10 ⑵ 原告と被告との間の取引
ア 原告と被告は、原告が中国国内の工場において製造したウナギ加工品を
日本に所在する被告に対して販売する売買を繰り返していた。
イ 原告は、被告との間で、上記アの取引の一環として、別紙売買契約一覧
表記載のウナギ加工品の売買契約を締結し、中国国内の港において、同売
15 買契約の目的物であるウナギ加工品を船積みし、日本国内の港へ輸出する
方法で、被告にこれを引き渡した。(甲8~18)
ウ 原告は、被告に対し、別紙売買契約一覧表記載の売買契約のうち、積荷
日を令和4年9月7日とする売買契約(以下「本件売買契約1」という。)
について、同日付けで代金37万6012米ドルを請求した。
20 また、原告は、被告に対し、別紙売買契約一覧表記載の売買契約のうち、
積荷日を令和4年10月22日とする売買契約(以下、本件売買契約1と
併せて「本件各売買契約」という。)について、同日付けで代金33万7
237.92米ドルを請求した。(甲10、14)
⑶ 中国法における遅延損害金に関する規定等
25 ア 中国では、遅延損害金に関し、最高人民法院の売買契約に関する紛争裁
判の法律適用に関する解釈第18条において「売買契約において遅延損害
金またはその計算方法について合意しておらず、売主が買主の契約違反を
理由に遅延損害金の賠償を請求し、(中略)契約違反が2019年8月2
0日に発生した場合、債務不履行が2019年8月20日以降に発生した
場合、人民法院は、債務不履行発生時に中国人民銀行が認可した全国銀行
5 間取引金利センターが公表した標準的な1年間のローン市場相場金利(L
PR)に基づき、30~50%を加算して遅延損害金を計算することがで
きる。」と定められている。(甲6)
イ 令和4年における、中国人民銀行が認可した全国銀行間取引金利センタ
ーが公表した標準的な1年間のローン市場相場金利(LPR)は、年3.
10 45%であった。(甲7)
⑷ 被告が有する特許(乙1、14、15)
ア 被告は、発明の名称を「食品用台紙、及び真空パック包装品」とする特
許権(特許第7002166号。以下「本件特許」といい、本件特許に係
る特許権を「本件特許権」という。)を有している(本件特許出願の願書
15 に添付された明細書及び図面を「本件明細書」といい、本件明細書の発明
の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと記載する。)。
イ 本件特許の特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである(以
下、請求項1に記載された発明を「本件発明」という。)。
20 真空パック内で加熱済み食品を支持する食品用台紙であって、
矩形状の板紙と、
撥水性層を有する上面部及び下面部とを備え、
前記板紙の秤量は、960~1440g/㎡である、食品用台紙。
ウ 本件発明の構成要件の分説
25 本件発明は、次の構成要件に分説することができる(以下、各構成要件
につき、頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。
A 真空パック内で加熱済み食品を支持する食品用台紙であって、
B 矩形状の板紙と、撥水性層を有する上面部及び下面部とを備え、
C 前記板紙の秤量は、960~1440g/㎡である
D 食品用台紙。
5 ⑸ 原告の行為
原告は、京都府に所在する株式会社アイステーション(以下「アイステー
ション」という。)に対して、別紙原告製品目録記載1ないし3の食品用台
紙(以下、同目録記載の番号に応じて「原告製品1」などといい、これらを
併せて「原告製品」という。)を用いたウナギ加工品を販売している(販売
10 の始期及び販売先がアイステーション以外に存在するかは争いがある。)。
(乙4、5)
⑹ 相殺の意思表示
ア 被告は、令和6年8月20日の本件第2回弁論準備手続期日において、
原告に対し、原告による上記⑸の行為が本件特許権を侵害していることを
15 理由とする被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権
とし、本訴請求債権を受働債権として、対当額で相殺する旨の意思表示を
した。
イ 被告は、令和6年10月28日の本件第3回弁論準備手続期日において、
原告に対し、被告の原告に対する別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄
20 に記載の各売買契約の債務不履行に基づく損害賠償債権を自働債権とし、
本訴請求債権を受働債権として、対当額で相殺する旨の意思表示をした。
3 争点
⑴ 遅延損害金に適用される準拠法及び遅延損害金の利率(争点1)
⑵ 本件特許権侵害に基づく損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁の成否
25 (争点2)
ア 原告製品の本件発明の技術的範囲の属否(争点2-1)
イ 原告による原告製品の「譲渡等」の有無(争点2-2)
ウ 原告及びアイステーションの共同不法行為の成否(争点2-3)
エ 被告の損害額(争点2-4)
⑶ 債務不履行に基づく損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁の成否(争
5 点3)
ア 原告の債務不履行の有無(争点3-1)
イ 被告の損害額(争点3-2)
4 争点に対する当事者の主張
⑴ 争点1(遅延損害金に適用される準拠法及び遅延損害金の利率)について
10 (原告の主張)
ア 準拠法
本件各売買契約は、中国企業である原告と、日本企業である被告との取
引である。日本国及び中国は、いずれも国際物品売買契約に関する国際連
合条約(以下「ウィーン売買条約」という。)加盟国である。
15 そして、本件各売買契約においては、ウィーン売買条約の適用を排除す
る特約がないことから、ウィーン売買条約が適用されるものの、ウィーン
売買条約には遅延損害金に関する定めがないため、遅延損害金については、
特徴的な給付を行う当事者の事業所の所在地が最も密接な関係がある地の
法(以下「最密接関係地法」という。)として適用される。
20 本件各売買契約における特徴的な給付は、目的物を引き渡す売主の給付
であることから、売主である原告の事業所が所在する中国法が準拠法とな
る。
イ 利率
中国法における遅延損害金の利率は、最高人民法院の売買契約に関する
25 紛争裁判の法律適用に関する解釈第18条により、債務不履行時に中国人
民銀行が認可した全国銀行間取引金利センターが公表した標準的な1年間
のローン市場相場金利(LPR)に基づき、30~50%を加算したもの
であるところ、本件の遅延損害金の利率は、本件各売買契約の債務不履行
があった令和4年時点でのローン市場相場金利(LPR)3.45%に3
0%を加算した年4.485%となる。
5 (被告の主張)
原告と被告との間では、本件各売買契約において、日本法を準拠法とする
旨の黙示の合意が存在している。
そのため、本件各売買契約の遅延損害金については、日本法が準拠法とな
る。
10 ⑵ 争点2-1(原告製品の本件発明の技術的範囲の属否)について
(被告の主張)
ア 原告製品の構成
原告製品は、以下の構成を有しているため、本件発明の技術的範囲に属
する。
15 a 真空パック内で加熱済み食品を支持する食品用台紙であって、
b 矩形状の板紙と、撥水性層を有する上面部及び下面部とを備え、
c 前記板紙の秤量は、960~1440g/㎡である、
d ことを特徴とする食品用台紙
イ 構成要件Bについて
20 (ア) 矩形状について
原告製品は、角部分が角丸形状に小さくカットされているが、全体的
に矩形状といえる。
(イ) 撥水性層について
原告製品の上面部及び下面部は撥水性層を有している。
25 ウ 構成要件Cについて
原告製品は、ウナギ加工品を製造する際、ウナギのたれや、蒸し器や湯
煎等の加工時の水分が原告製品に浸透し、また、冷凍後の解凍により水分
が浸透しやすくなることによって、その重量が加工前と比べて増加する。
原告製品の1㎡当たりの重量は、原告製品を用いたウナギ加工品が製造
される前のものを計測すべきであるところ、原告が計測した原告製品の1
5 ㎡当たりの重量はいずれも、ウナギ加工品が製造された後のものを用いた
ものであり、それをもって構成要件Cの充足性が否定されるものではない。
被告が、ウナギ加工品製造前の原告製品の1㎡当たりの重量を計測した
ところ、上記アのとおり960~1440g/㎡であったことから、原告
製品は構成要件Cを充足する。
10 (原告の主張)
ア 構成要件Bについて
(ア) 矩形状について
「矩形」とは、方形、長方形をいい、「矩」は直線・直角を表す字で
あり、「矩形状」とは、4つの辺が全て直線であり、かつ、4つの内角
15 が全て直角である長方形の形状をいう。
原告製品の4つの内角は、全て角丸形状であり、直角でなく、4つの
辺もその両端部分において直線ではない。
(イ) 撥水性層について
原告製品は、金色の上面部及び下面部を有するが、台紙の上面部と下
20 面部に「撥水性層」があるか否か不明である。
また、原告製品には、タレ・水分等が吸収されていることから、原告
製品は十分な撥水性能を有していないといえる。
よって、原告製品が「撥水性層を有する上面部及び下面部とを備え」
ているとは認められない。
25 (ウ) したがって、原告製品は「撥水性層を有する上面部及び下面部とを備
え」ておらず、また、「矩形状」であるともいえないことから、構成要
件Bを充足しない。
イ 構成要件Cについて
原告製品の1㎡当たりの重量は、概算で、約1505.19~1537.
87g/㎡であることから、構成要件Cを充足しない。
5 ⑶ 争点2-2(原告による原告製品の「譲渡等」の有無)について
(被告の主張)
特許法2条3項1号の「譲渡等」は、特許製品の所有権の移転を指すとこ
ろ、海外事業者による侵害品の販売について、日本の需要者との間の売買契
約の締結を受け、侵害品が海外から日本国内に所在する需要者の手元に引き
10 渡される一連の行為を全体として譲渡と捉えることが可能である。
そうすると、原告によるアイステーションへの原告製品を含めたウナギ加
工品の販売という、一連の譲渡行為の少なくとも一部が日本国内で行われて
いるといえる。
そのため、原告によるアイステーションへの原告製品を含むウナギ加工品
15 の販売は「譲渡等」に該当する。
(原告の主張)
特許法は実施行為として「譲渡」という概念を「輸出」や「輸入」とは別
個の概念として規定していること及び属地主義の原則から、特許法2条3項
1号の「譲渡」とは、日本国内で行われる譲渡に限定される。海外事業者が
20 日本の顧客に製品を販売する行為は、海外における「輸出」にすぎず、日本
国内における「譲渡」には該当しない。
また、原告にとってアイステーションは中国国外の顧客の一つにすぎない
ため、原告とアイステーションの行為を一体として見るべき事情は存在しな
い。よって、原告のアイステーションへの原告製品を含むウナギ加工品の販
25 売について、原告とアイステーションの行為を一体として捉え、日本におけ
る「譲渡」に該当すると解する余地もない。
⑷ 争点2-3(原告及びアイステーションの共同不法行為の成否)
(被告の主張)
原告による「譲渡等」が認められないとしても、実施許諾を得ることなく
原告製品を含むウナギ加工品を原告より購入したアイステーションは、当該
5 購入及び日本国内における販売について不法行為責任を負うことになり、原
告は、その共同不法行為者としての責任を負う。
(原告の主張)
仮にアイステーションが原告からウナギ製品を輸入して日本国内で販売す
る行為が本件特許権を侵害するとしても、属地主義の原則から、日本の特許
10 権の効力は、中国における原告の行為には及ばない。
また、仮に原告が中国においてアイステーションの特許権侵害行為を誘引
したとしても、原告の誘因行為を違法として不法行為の成立を認めることは、
日本特許の効力をその領域外である中国に及ぼすのと実質的に同一の結果を
生じることになってしまうため、日本の特許法が採用する属地主義の原則に
15 反し、日本の特許法秩序の基本理念と相いれないため、妥当でない。
⑸ 争点2-4(被告の損害額)について
(被告の主張)
ア 実施料相当損害金(特許法102条3項)
原告が、令和4年12月1日から令和6年7月31日までの間に原告製
20 品を販売したことにより得た売上は96億円を下らない。
そして、本件発明の技術分野、原告製品の市場、コスト構造、実務慣行
に鑑みれば、本件発明の実施についての相当な実施料率は3%を下らない。
そのため、少なくとも2億8800万円が実施料相当損害金となる。
イ 弁護士費用
25 本件の訴訟追行のための相当な弁護士費用は、1440万円が相当であ
る。
(原告の主張)
否認ないし争う。
⑹ 争点3-1(原告の債務不履行の有無)について
(被告の主張)
5 中国では、加工前に死んでいるウナギを加工品に用いることは禁止されて
おり、本件各売買契約においても、生きているウナギを用いて加工品を製造
し、販売することが契約内容となっていた。
それにもかかわらず、原告は、別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄に
記載の各売買契約の目的物であるウナギ加工品を製造する際、その一部に死
10 んだウナギを用いていた。
当時、被告が取り扱うウナギ加工品は全て原告から輸入した製品であった
こと、被告が原告から輸入購入したウナギ加工品について、味がおかしい、
変な臭いがする、食感が悪い、形が悪い等のクレームが入り、特に令和4年
2月から頻繁に入るようになったところ、不良品は、死んだウナギを使用し
15 て製造したことが原因となっているものと考えられる。そして、死んだウナ
ギが原告の加工工場に搬入され保管されていることからすれば、原告が死ん
だウナギを用いてウナギ加工品を製造し、被告に譲渡したことが認められる。
(原告の主張)
原告が仕入れているウナギは仮死状態であり、死んだウナギを加工工場に
20 搬入しておらず、原告は死んだウナギを加工品に用いたことはない。
⑺ 争点3-2(被告の損害額)について
(被告の主張)
原告の債務不履行により、被告は、販売先からの不良品に関するクレーム
に対し、販売単価を減額する方法で対応しており、同減額分が被告の損害で
25 ある。別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄記載の各売買契約の減額分は、
同差額小計欄記載のとおりであり、その合計額である1944万7600円
に消費税8%(155万5808円)を含めた2100万3408円が被告
の損害である。
(原告の主張)
否認ないし争う。
5 第3 当裁判所の判断
1 争点1(遅延損害金に適用される準拠法及び遅延損害金の利率)について
⑴ 準拠法について
被告は、本件各売買契約において、日本法を準拠法とする旨の黙示の合意
があったと主張するが、原告と被告との間で、本件各売買契約に係る準拠法
10 の選択がされていたと認めるに足りる証拠はない。
また、証拠(甲3、5)及び弁論の全趣旨によれば、ウィーン売買条約に
は売買契約の遅延損害金に関する定めが存在しないと認められることから、
本件各売買契約における遅延損害金については、法の適用に関する通則法
(以下「通則法」という。)8条1項により、最密接関係地法が準拠法とな
15 る。
そして、前提事実⑵によれば、本件各売買契約は、ウナギ加工品を目的物
とする売買契約であり、目的物の引渡しという特徴的な給付を当事者の一方
である売主のみが行うものといえるから、通則法8条2項により、売主の常
居所地法が最密接関係地法と推定される。本件では、本件各売買契約の売主
20 は中国企業である原告であり(前提事実⑴ア及び⑵ウ)、常居所地法は中国
法となるから、同法が本件各売買契約の最密接関係地法と推定され、これを
覆す事情は認められない。
よって、本件各売買契約の遅延損害金に関する準拠法は、中国法となる。
⑵ 遅延損害金について
25 中国法における遅延損害金に関する規定は前提事実⑶アのとおりであると
ころ、同イによれば、本件各売買契約の履行期である令和4年における、中
国人民銀行が認可した全国銀行間取引金利センターが公表した標準的な1年
間のローン市場相場金利(LPR)は、年3.45%であると認められるか
ら、本件各売買契約に係る遅延損害金の割合は、同利率に30%を加算した
4.485%と認めるのが相当である。
5 2 争点2-1(原告製品の本件発明の技術的範囲の属否)
⑴ 本件特許に係る明細書等の記載事項等
本件明細書の「発明の詳細な説明」には、以下の記載がある(下記記載中
に引用する図1及び2については、別紙図面目録を参照)。
ア 【技術分野】
10 【0001】
本発明は、真空パック内で加熱済み食品を支持する食品用台紙、及び
加熱済み食品及び食品用台紙を含む真空パック包装品に関する。
イ 【背景技術】
【0002】
15 従来、加熱済み食品(鰻蒲焼等の魚類)の真空パックは、加熱済み食
品を真空パック用の袋に詰めて、袋から空気を抜いて密閉することによ
り製造されていた。このような加熱済み食品の真空パックを箱にいれて
低温で輸送する際に、輸送の際の衝撃や振動等で、加熱済み食品が割れ
たり傷つくことによって、ロスが発生していた。
20 【0003】
食品の真空パック内に、食品を支持する敷板等の台紙を配置すること
は、特許文献1~2に記載されている。特許文献1に記載された生鮮物
の包装台紙及び包装方法には、包装台紙に魚を載せて真空パックするこ
とが提案されている。この包装台紙は、約0.5~0.6mm厚のボー
25 ル紙の上下面に防水膜がコーティングされ、下面の防水膜にアルミ箔が
貼着され、上面の防水膜に吸水紙が貼着されたものである。
【0004】
特許文献2に記載された食品吸水台紙は、基材となる板紙において、
食品が接触する面に撥水性の印刷加工を施し、板紙の撥水性の印刷加工
を施していない部分、側面、及び裏側から食品のドリップを吸収するよ
5 うにしたものである。また、特許文献2の板紙の坪量は、150~85
0g/㎡とすることが記載されている。
ウ 【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空パックされた未加熱の食品(生鮮魚類等)は、輸送の際の衝撃や
10 振動等で、未加熱の食品が割れたり傷つく可能性が低いため、特許文献
1や2に記載されるような比較的薄い又は比較的小さい坪量の台紙を用
いてもロスが生じる可能性は低かった。
【0007】
これに対し、真空パックされた加熱済み食品(例えば、加熱済み魚類)
15 は、輸送の際の衝撃や振動等で、加熱済み食品が破損する可能性がある
ため、特許文献1や2に記載されるような比較的薄い又は比較的小さい
坪量の台紙を用いるとロスが生じる可能性が高くなるため、比較的薄い
又は比較的小さい坪量の台紙を用いることが困難であった。
【0008】
20 一方、真空パック内で加熱済み食品を支持する台紙表面が、金属光沢
を有することにより、加熱済み食品の購買意欲を高ることが要求されて
いる。しかしながら、台紙表面に金属光沢を与えるために金属を用いる
と、真空パック内に金属破片等が混入したことを金属探知機を用いて検
査できなくなるという問題が生じる。
25 【0009】
そこで、本発明は、加熱済み食品が衝撃や振動等で破損しにくい、食
品用台紙、及び加熱済み食品の真空パック包装品の提供を目的とする。
または、本発明は、金属光沢調を有しつつ、金属探知機を用いて検査可
能な食品用台紙、及び加熱済み食品の真空パック包装品の提供を目的と
する。
5 エ 【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は次の通りである。
[態様1]
真空パック内で加熱済み食品を支持する食品用台紙であって、
10 矩形状の板紙と、
撥水性層を有する上面部及び下面部とを備え、
前記板紙の秤量は、960~1440g/㎡である、食品用台紙。
オ 【発明の効果】
【0014】
15 本発明は、加熱済み食品が衝撃や振動等で破損しにくい、食品用台紙、
及び加熱済み食品の真空パック包装品を提供することができる。または、
本発明は、金属光沢を有しつつ、金属探知機を用いて検査可能な食品用
台紙、及び加熱済み食品の真空パック包装品を提供することができる。
カ 【発明を実施するための形態】
20 【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る食品用台紙10を図1~2を用いて説明する。図
1に示すように、食品用台紙10は、平面視で矩形状(長方形状)の平
坦な板である。この食品用台紙10は、好ましくは捌いた1匹の鰻蒲焼
25 を支持する大きさ(例えば、長辺30cm、短辺11cm)に形成され
ている。図2の側面拡大図に示すように、食品用台紙10の積層構造は、
ボール紙から形成される板紙(基材)12と、板紙12の上面に形成さ
れる上面部14と、板紙12の下面に形成される下面部16とから構成
される。
【0018】
5 板紙12は、好ましくは、加熱殺菌に耐えられる所定の耐熱性を有す
る素材から形成される。所定の耐熱性としては、例えば90℃で7分間
の加熱で紙板12が変形しなければよい。板紙12は、加熱済み食品と
共に真空パックされた状態で湾曲することなく、所定の重量の加熱済み
食品を支持可能な程度の剛性を有するために、所定の坪量(1㎡当たり
10 の用紙1枚の重量)及び/又は所定の厚さを有する必要がある。
【0019】
板紙12の所定の坪量は、好ましくは960~1440g/㎡、より
好ましくは1100~1300g/㎡、さらに好ましくは約1,200
g/㎡とすることができる。板紙12の所定の厚さは、好ましくは0.
15 9~2.1mm、より好ましくは1.3~1.7mm、さらに好ましく
は約1.5mmとすることができる。なお、板紙12は、坪量500~
600g/㎡及び0.8~1.0mm厚のボール紙を2枚張り合わせて
構成することもできる。加熱済み食品の所定の重量は、好ましくは10
0~300g、より好ましくは250~400gとすることができる。
20 なお、加熱済み食品は、好ましくは、焼き魚、または、魚の照焼とする
ことができ、より好ましくは、鰻蒲焼、鰻白焼、焼き穴子とすることが
できる。
【0020】
上面部14の積層構造は、図2に示すように、板紙12の上面側に設
25 けられ、所定の耐熱性を有する材料から形成される。上面部14は、板
紙12の上面に配置された接着層14dと、接着層14dの外側面(上
側面)に配置された白色層14cと、白色層14dの外側面(上側面)
に配置された金属光沢調層14bと、金属光沢調層14bの外側面(上
側面)に配置されたフィルム層(撥水性層)14aとから構成される。
【0021】
5 下面部16の積層構造は、図2に示すように、板紙12の下面側に設
けられ、所定の耐熱性を有する材料から形成される。下面部14は、板
紙12の下面に配置された接着層16dと、接着層16dの外側面(下
側面)に配置された白色層16cと、白色層16dの外側面(下側面)
に配置された金属光沢調層16bと、金属光沢調層16bの外側面(下
10 側面)に配置されたフィルム層16aとから構成される。
⑵ 前記⑴の記載事項及び本件特許の特許請求の範囲の記載によれば、本件明
細書には、本件発明に関し、以下のとおりの開示があると認められる。
ア 従前、食品の真空パック内に食品を支持する敷板等の台紙を配置するこ
とが提案されていたところ、真空パックされた加熱済み食品は、輸送の際
15 の衝撃や振動等で、当該食品が破損する可能性があるため、比較的薄い又
は比較的小さい坪量の台紙を用いるとロスが生じる可能性が高いという課
題があり、また、真空パック内で加熱済み食品を支持する台紙表面が、金
属光沢を有することにより、加熱済み食品の購買意欲を高めることが要求
されるものの、台紙表面に金属光沢を与えるために金属を用いると、真空
20 パック内に金属破片等が混入しているか金属探知機を用いて検査できなく
なるという課題があった。(【0002】、【0003】、【0006】
ないし【0009】)
イ 本件発明は、前記アの課題に対して、真空パック内の加熱済み食品が衝
撃や振動で破損しにくく、金属を用いずに金属光沢を有する食品用台紙を
25 提供するために、従前の食品用台紙より坪量の大きく、また、板材の上下
面に金属光沢調層及び撥水性層を形成するという手段を用いるものである。
(【0017】ないし【0021】)
⑶ 構成要件Cについて
ア 「板紙の秤量」の解釈
(ア) 「板紙」について
5 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「矩形状の板紙と、撥水
性層を有する上面部及び下面部とを備え、」(構成要件B)との記載が
ある。
また、本件明細書には、「上面部14の積層構造は、図2に示すよう
に、板紙12の上面側に設けられ、所定の耐熱性を有する材料から形成
10 される。上面部14は、板紙12の上面に配置された接着層14dと、
接着層14dの外側面(上側面)に配置された白色層14cと、白色層
14dの外側面(上側面)に配置された金属光沢調層14bと、金属光
沢調層14bの外側面(上側面)に配置されたフィルム層(撥水性層)
14aとから構成される。」(【0020】)、「下面部16の積層構
15 造は、図2に示すように、板紙12の下面側に設けられ、所定の耐熱性
を有する材料から形成される。下面部14は、板紙12の下面に配置さ
れた接着層16dと、接着層16dの外側面(下側面)に配置された白
色層16cと、白色層16dの外側面(下側面)に配置された金属光沢
調層16bと、金属光沢調層16bの外側面(下側面)に配置されたフ
20 ィルム層16aとから構成される。」(【0021】)との記載がある。
上記の各記載によれば、本件発明において、板紙と「上面部」及び
「下面部」はそれぞれ別の物として特定されていると認められることか
ら、構成要件Cの「板紙」とは、食品用台紙のうち、「撥水性層を有す
る上面部及び下面部」を含まないものと解するのが相当である。
25 (イ) 「秤量」について
構成要件Cは、本件発明の対象物である食品用台紙の特定方法として、
「秤量」との用語(単位)を使用しており、本件明細書においても、同
様の記載が見られる(【0010】参照)。もっとも、本件明細書中に
は、本件発明に相当する食品用台紙の特徴について、「坪量」(1㎡当
たりの用紙1枚の重量。【0018】参照)との用語(単位)を使用し
5 ている記載があり、「秤量」として記載されている部分も、その意味な
いし記載された単位(g/㎡)に照らして「坪量」を指すものとして記
載されていることが明らかである(【0018】、【0019】等)。
そうすると、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載における
「秤量」とは、その用語の当否はともかく、1㎡当たりの用紙1枚の重
10 量(本来の坪量の概念)を意味するものと解するのが相当である(当事
者双方の主張も、1㎡当たりの用紙1枚の重量を前提とするものであ
る。)。
(ウ) 以上によれば、構成要件Cの「板紙の秤量」とは、食品用台紙のうち、
「撥水性層を有する上面部及び下面部」を含まないものの坪量(1㎡当
15 たりの用紙1枚の重量)を意味するものと解される。
イ 原告製品の当てはめ
被告は、原告製品の板紙の坪量が構成要件Cにより特定された範囲内
(960~1440g/㎡)にあることから構成要件Cを充足する旨主張
し、原告製品の坪量を測定したとする証拠として、乙20、25ないし2
20 9を提出する。
しかしながら、原告は、乙25ないし27で測定に用いられた食品用台
紙が原告製品であることを否認しているところ、仮に事実であれば、被告
において当該食品用台紙の入手経路等を客観的に立証することは容易であ
るにもかかわらず、これらの食品用台紙が原告製品であることを裏付ける
25 証拠は、被告代表者の陳述書(乙35)における陳述にとどまり、客観的
裏付けに欠けるものといわざるを得ない。
また、この点をおくとしても、被告の主張によれば、乙20、25ない
し29に係る食品用台紙は、いずれも撥水性層を有する上面部及び下面部
を備えたものと認められ、上記上面部及び下面部の重量が不明であるから、
上記各証拠により計測された坪量が構成要件Cにより特定された範囲内に
5 あったとしても、その「板紙」についての坪量はなお不明といわざるを得
ない。その他、原告製品の坪量が960~1440g/㎡であることを認
めるに足りる的確な証拠はない。
よって、原告製品は、構成要件Cを充足しない。
⑷ 小括
10 以上によれば、原告製品が、本件発明の技術的範囲に属すると認めること
はできない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許権侵害に
基づく損害賠償債権を自働債権とする被告の相殺の抗弁は理由がない。
3 争点3-1(原告の債務不履行の有無)について
15 ⑴ 原告の債務不履行について
被告は、原告が、別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄に記載の各売買
契約の目的物であるウナギ加工品を製造する際、その一部について、死んだ
ウナギを加工品に用いていた旨主張し、被告代表者及び原告の元従業員であ
るAiも同旨を陳述する。
20 しかしながら、原告が死んだウナギを加工品に用いたことで、中国におい
て何らかの処分ないし処罰を受けたことを認めるに足りる証拠はない。また、
被告代表者やAiが陳述する内容をみても、原告が納品したものの中に不良
品が存在した旨や死亡したウナギを使用していた旨を抽象的又は断片的に指
摘するにとどまり、別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄に記載の各売買
25 契約の目的物について原告が死んだウナギを加工品に用いており、これによ
り被告に同差額欄に記載の損害が発生したことを、具体的かつ客観的に裏付
けるものということはできず、その他、原告の債務不履行の事実を認めるに
足りる的確な証拠はない。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
⑵ 小括
5 以上によれば、別紙不良品存在取引一覧表の売買契約欄に記載の各売買契
約の債務不履行に基づく損害賠償債権を自働債権とする被告の相殺の抗弁は
理由がない。
第4 結論
よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のと
10 おり判決する。
東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官
澁 谷 勝 海

裁判官
本 井 修 平

裁判官
浅 川 浩 輝
別紙
売買契約一覧表
積荷日 重量(kg) 代金(米ドル)
5 令和4年 4月 7日 19,483.60 194,555.45
令和4年 4月 8日 19,990.00 436,535.00
令和4年 4月12日 17,026.44 369,216.51
令和4年 5月10日 18,650.00 395,405.00
令和4年 5月26日 17,905.00 391,174.10
10 令和4年 6月 7日 17,062.00 402,390.00
令和4年 6月18日 20,072.00 424,610.84
令和4年 7月 1日 20,290.00 431,475.00
令和4年 7月21日 19,132.00 400,210.00
令和4年 8月11日 18,495.40 401,081.50
15 令和4年 9月 7日 17,988.00 376,012.00
令和4年10月22日 16,652.80 337,237.92
令和4年12月 7日 15,431.96 302,698.51
令和4年12月 7日 259.00 3,108.00
20 合計 金4,865,709.83米ドル
以上

別紙
原告製品目録
1 写真のウナギ加工品に用いられている食品用台紙

2 写真のウナギ加工品に用いられている食品用台紙

3 写真のウナギ加工品に用いられている食品用台紙

以上
別紙
図面目録
図1
図2

以上

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