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令和7(行ケ)10095審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年2月26日
事件種別 民事
当事者 原告積水ハウス株式会社
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法3条1項3号12回
商標法3条2項6回
商標法4条1項18号1回
キーワード 審決26回
拒絶査定不服審判1回
実施1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は、令和4年11月28日、以下の構成(後記「本願の『商標の詳細 な説明』 」によれば、商標登録を受けようとする部分は、立体的である住宅の 基礎コンクリート及び水切りの部分からなる立体商標であり、青色で示した 部分は商標を構成する要素ではない。以下、この商標登録を受けようとする 部分を「本願商標」という。 )からなり、後記⑵のとおり補正後の指定役務を 第36類「建物の売買」及び第37類「建設工事」とする商標について、商 標登録出願をした(商願2022-135735号、甲10。以下、その出 願を「本願」という。 ) 。 (本願商標) 【図1】

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判決文

令和8年2月26日判決言渡
令和7年(行ケ)第10095号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年1月20日
判 決
原 告 積 水 ハ ウ ス 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 三 村 量 一
同 山 田 知 司
10 同 宮 澤 真 志
被 告 特 許 庁 長 官
同 指 定 代 理 人 小 林 裕 子
同 旦 克 昌
15 同 阿 曾 裕 樹
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
20 第1 請求
1 特許庁が不服2024-11964号事件について令和7年8月21日にし
た審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要
25 1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は、令和4年11月28日、以下の構成(後記「本願の『商標の詳細
な説明』」によれば、商標登録を受けようとする部分は、立体的である住宅の
基礎コンクリート及び水切りの部分からなる立体商標であり、青色で示した
部分は商標を構成する要素ではない。以下、この商標登録を受けようとする
部分を「本願商標」という。)からなり、後記⑵のとおり補正後の指定役務を
5 第36類「建物の売買」及び第37類「建設工事」とする商標について、商
標登録出願をした(商願2022-135735号、甲10。以下、その出
願を「本願」という。)。
(本願商標)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

⑵ 原告は、令和5年8月16日付けの拒絶理由通知書(甲11)を受け、同
年9月29日、意見書(甲13)及び手続補正書(甲12)を提出し、商標
の詳細な説明を「商標登録を受けようとする商標(以下『商標』という。)は、
立体的である住宅の基礎コンクリート及び水切りの部分からなる立体商標で
10 あり『商標登録を受けようとする商標』欄に記載した各図1乃至4に示すと
おりである。図1は正面図、図2は背面図、図3は左側面図、図4は右側面
図である。この基礎コンクリート及び水切り部分は、住宅の4面に及んで全
体として立体を構成するとともに視認できるそれらの表面も、願書の商標記
載欄に示された図のように、塗装では表現できない、基礎の形状そのものが
大小の凹凸や溝とする立体的形状としたものである。なお、青色で示した部
分は、役務の提供の用に供する住宅の形状の一例を示したものであり、商標
5 を構成する要素ではない。また、図の右下隅に表示されている数字は、図の
番号を表したものであり、同様に商標を構成する要素ではない。」と補正した
が、令和5年11月6日付け通知書及び令和6年4月16日付け拒絶査定(甲
14)を受けた。
原告は、令和6年7月19日、拒絶査定不服審判請求をし(不服2024
10 -11964号、甲16)、同日手続補正書(甲15)を提出して、指定役務
を第36類「建物の売買」及び第37類「建設工事」と補正した。
⑶ 令和7年5月13日付けで原告に対し証拠調べ通知がされ、原告は、同年
6月30日付け意見書(甲17)を提出したが、特許庁は、同年8月21日、
「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下「本件審決」という。)
15 をし、その謄本は、同年9月9日に原告に送達された。
⑷ 原告は、令和7年10月1日、本件審決の取消しを求めて、本件訴えを提
起した。
2 本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は、要するに、本願商標をその指定役務に使用しても、これ
20 に接する需要者は、建物の基礎部分の立体的形状の一類型を表したものと認識
するにとどまり、単に役務の提供の用に供するものの形状を普通に用いられる
方法で表示する標章のみからなるものと認識するというのが相当であり、商標
法3条1項3号に該当する、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人か
の業務に係る役務であることを認識することができるものではなく、商標法3
25 条2項の要件を具備しない、というものである。
3 原告の主張する本件審決の取消事由
⑴ 取消事由1
商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り
⑵ 取消事由2
商標法3条2項該当性についての判断の誤り
5 第3 当事者の主張
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)について
〔原告の主張〕
⑴ 本願商標が自他商品識別力を有すること
ア 本件審決は、「別掲3」(本件審決10頁ないし16頁)記載の例の存在
10 を理由に、
「建物の基礎部分の機能又は美観向上のために、塗装や化粧モル
タル施工等を行い表面に装飾をすることは一般に行われており、その中に
は、縦線や横線を施したものや凹凸をつけたものも存在する」とした上で、
「本願商標の形状の特徴をもって、役務の出所を識別する標識として認識
させるものとはいえない」としたが、後記イ及びウのとおり、建物基礎の
15 表面形状は基礎の機能や美観とは無関係なものである上、後記エのとおり
の本願商標の特異性からすれば、本願商標に識別力があることは明らかで
ある。
イ 基礎の表面形状は機能を目的とするものでも、機能上の理由による選択
でもなく、機能とは無関係であること
20 (ア) 基礎自体の形状・構造と表面形状との差異について
建築物の基礎の形状、構造等は建築基準法等の法令の定めに従うもの
であり、当然ながらその機能に影響を与えるが、基礎表面の凹凸形状は
何ら法令による制限を受けず、自由に施工することができる。また、ベ
タ基礎か布基礎かなどの基礎そのものの形状は、建築物をどのように支
25 えるかによって強度という基礎にとって最重要な機能に直結し、床下の
通気性などの補完的機能にも影響するが、基礎の表面の凹凸形状は強度
を含め、基礎のいかなる機能にも影響せず、一般的な需要者が基礎の表
面形状に機能的価値があると思うことはあり得ない。
したがって、基礎の表面形状は基礎自体の機能と無関係である。
(イ) 特異な工程によるものであること
5 基礎の工事は、型枠を設置し、生コンクリートを打設し、アンカーボ
ルトを設置するなどして一連の施工を行うところ、本願商標のように、
その基礎の表面に特定の凹凸形状を施すためには、この型枠の中に、さ
らに凹凸のある枠を挿入し、それを取り外すなどの通常の基礎の工程に
はない追加の工程を要する(甲3~5)。すなわち、コストの観点からも、
10 敢えて工数を増やしてまで基礎の表面に凹凸をつけるなどということは、
通常は行われないことは普通に理解されることであることからも、基礎
の表面は平坦な形状とするのが一般的であるということが理解される。
したがって、凹凸形状を施す際の実際の工程に鑑みても、基礎表面の凹
凸形状は機能上不要なものであり、基礎自体の有する機能とは何ら無関
15 係である。
(ウ) 他の登録例の存在
登録第6018352号商標(指定役務:建物の管理、建物の売買)
は、建物の基礎部のデザインであるところ、そのデザインが「床下換気
口」
(機能的)であり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認
20 識することができないとして拒絶理由が通知されたが、これに対し出願
人が意見書を提出して「床下換気口」でないことなどを述べた結果、登
録に至った。上記商標は、
「多数の正方形図形を内包してなる横長長方形
状の図形」という比較的単純なデザインにより構成されているところ、
立体的な建物の基礎という位置において、機能的なものでないというこ
25 とができれば、上記のように単純なデザインであっても独占不適商標や
自他商品識別力欠如商標に該当しないとして登録が認められているので
ある。このことは、建物の基礎が、一般に、単純なデザインでも十分識
別力を発揮していると解されていることの証左である。
ウ 基礎の表面形状は美観を目的とするものでも、美観上の理由によるもの
でもなく、美観とは実質的に無関係であること
5 (ア) 基礎の表面形状の視認性について
「建物の売買」について、建物の基礎は、建物完成後は、塀や門、植
栽などのエクステリア(外構)に隠されて、敷地外にいる通行人等から
は視認できないことが普通である。敷地内でも、基礎は非常に低い位置
にあることや、玄関ポーチ、エアコン室外機や給湯器等を施工すること
10 で相当部分が隠れてしまうことも少なくないため視認しにくく、訪問者
がしげしげと見ることもなく、住人さえ普段は意識していない。このよ
うな意味で、建物の基礎は、住宅部分のように建物所有者がそのデザイ
ンセンスやステイタス・資力を外部に示す機能は全くない。実際、Google
で、
「住宅」、
「外観」のキーワードで画像検索をかけると、建築物の住宅
15 部分には形状や色を含め無数のデザインのバリエーションがあるのに対
し、基礎は単なる平坦なコンクリートでバリエーションがなく(甲1、
7)、これによっても需要者が基礎に美観を求めないことが裏付けられる。
もっとも、建物の取引時においては、外構が完成されていない場合も多
いから、建物の基礎は視認でき、そこに識別力をもたせる意義がある。
20 実際、原告は、建物の基礎に銘板を設けることで、当該建物が原告の
施工によるものであることを需要者に示している。したがって、取引時
の需要者も基礎を出所表示の位置であると認識している。また、原告は、
銘板を補い、建物という大きな物体をいかなる方向から見ても確実に識
別できるようにするため、本願に係る凹凸形状を採用したのであるから、
25 基礎の表面にデザインや凹凸形状があるということで識別力を否定する
ことは誤りである。
以上のとおり、本願商標は、建物の基礎という美観とは関係のない箇
所で出所識別のために表示される商標である。もちろん、見る人がいる
以上、本願商標も嫌悪感を抱かれないような形状となってはいるが、前
記のとおり美観が問題とされることはなく、実質的に美観とは無関係で
5 ある。
この点に関し、原告は既に「SI-COLLABORATION」と
いう新たな事業(以下「SI事業」という。)を行っている。この事業は、
原告は基礎及び躯体という住宅の骨組みを施工し、地域ビルダーである
パートナー企業(第三者)が、その骨組みを用いて住宅を建築するとい
10 うものである(甲18、19)。この事業では、住宅の基礎の大小の凹凸
ある形状を原告が基礎を施工した証として、施主(住宅の注文主)に住
宅を提供することになる。これも、建物の買主等や注文主等は、基礎の
施工の良否に関心が強く、基礎を点検しようとするため本願商標を見る
ことと、本願商標に識別力があることに依拠した事業である。
15 (イ) 住宅部分との差異について
建築物において、住宅部分は美観が要求されるため、需要者が各種建
築材料を選択し指定する際にそれらの素材、形状、色彩、模様等をどの
ようなものとするかについてのニーズは千差万別であるから、各ハウス
メーカーが住宅部分に統一したデザインや形状を用いることは非現実的
20 である。そのため、住宅部分に識別力をもたせることは困難である一方、
基礎は、建築物の最下部にあるため住宅の美観を損なわず、かつその最
下部という同じ場所には統一した形状等を施すことが可能であるため、
建築物の中で最も識別機能を発揮しやすい部分であるということができ
る。この点に関し、そもそも、商標審査便覧「立体商標の識別力に関す
25 る審査の具体的な取扱いについて」
(49.02)に記載されている建築
物の事例には、いずれも基礎部分の表示すら存在しない。このことから
も、建物の基礎は、一般に、建物そのものの立体形状とは異なるもので
あり、識別力を発揮するものである。
したがって、本願商標に接した需要者が、本願商標のような凹凸形状
を美観のためのものであると認識することはあり得ず、建築物の基礎は、
5 住宅部分と比較して、機能や美観と関係なく識別力を発揮するものとい
うことができる。
エ 本願商標の特異性について
(ア) 本願商標の特徴について
本願商標は、建築物の全体ではなく基礎に限定しており、美観や機能
10 などが考慮されて多種多様なデザインとなる住宅部分とは違って、正面、
背面、側面のいずれにも、かつ建築物をぐるりと囲むように(どこから
でも把握できるように)、同じ凹凸形状を用いており統一的な形状となっ
ている上、基礎の表面の凹凸形状は、文字や図形と異なり遠くからでも
需要者が識別しやすい。まさに基礎の表面の凹凸形状からなる本願商標
15 であるからこそ建築物に係る役務についての識別標識として機能するも
のである。
また、通常、住宅の基礎というのは、
「平坦なコンクリートの打ちっぱ
なし」であると認識されている。これは実際に流通している基礎などか
ら明らかである。現に、Google の検索で、「基礎」及び「住宅」をキー
20 ワードとして画像検索をすると、凹凸のないコンクリートの打ちっぱな
しからなる基礎ばかりが無数に見つかるのであり(甲7)、これが一般需
要者の基礎についての認識にほかならない。他方、本願商標は、前述し
た特異な工程を経ることで、本来平坦である基礎(コンクリートの打ち
っぱなし)そのものを敢えて凹凸の形状にしており、住宅の基礎として
25 は極めて特異な形状をしているから(甲20)、通常使用され得るものと
はいえず、識別標識として機能するものである。
(イ) 引用事例に示された表面形状との差異
① 塗装や化粧モルタル施工との差異について
本件審決は、「別掲3」の1記載の例の存在を理由に、「建物の基礎
部分の機能又は美観向上のために、塗装や化粧モルタル施工等を行い
5 表面に装飾をすることは一般に行われて」いると認定している。
しかしながら、
「別掲3」の1に記載されているような平坦な塗装や
基礎保護材の施工は、立体商標である本願商標とはその形状において
性質が全く異なる。そもそも本願商標は立体的商標であるから、これ
を平面形状である塗装や基礎保護材と同列に扱うこと自体が誤りであ
10 る。また、塗装や基礎保護材は、コンクリートにひびが入り、そこか
ら水が浸入して鉄筋が劣化することなどを防止する目的で施工されて
いるものであり、その目的が基礎の保護という機能的な側面にあるこ
とは素人でも分かる。これに対し、本願商標は、コンクリートの打ち
っぱなしであって、基礎そのものであるから、基礎の保護を趣旨とす
15 るものではなく、機能と無関係であることは明らかである。
さらにいえば、基礎のみにフォーカスして塗装などを行う事業と、
本願指定役務である建築物全体の売買や建築工事を行う事業とは、事
業者も需要者も全く異なる。
したがって、基礎表面の形状からしても、施工の目的(機能的側面)
20 からしても、需要者が、本願商標を塗装や基礎保護材と同様のものと
捉えることはあり得ない。
なお、本件審決は、
「別掲3」の1記載の例をもって塗装や化粧モル
タルの施工が「美観向上」のために行われていると認定しているもの
と思われるが、
「別掲3」の1(1)や(4)を見ても、塗装の目的と
25 して挙げられているのは、主として、
「基礎の吸水性を抑える」、
「防水
性が高まる」
、「コンクリートの中性化を抑える」という機能性向上の
観点であり、施主は機能性向上のために発注し費用を出しているので
あって、
「美観向上」の観点は付随的な事柄にすぎない。このような付
随的な事柄をもって、「建物の基礎部分の機能又は美観向上のために、
塗装や化粧モルタル施工等を行い表面に装飾をすることは一般に行わ
5 れて」いると認定することは、需要者の認識(施主が塗装や化粧モル
タルに費用を出す目的)と乖離するものであって誤りである。
また、仮に塗装や化粧モルタルの施工において基礎に美観を求める
という目的があったとしても、そうであれば上記各例のように単純に
塗装等をすれば良いだけであり、敢えて本願商標のような凹凸形状に
10 する必要性はない。敢えて塗装や化粧モルタルではなく凹凸形状を付
している以上、これを見る需要者は、本願商標の凹凸を美観のための
ものであるとは思わない。
② 縦線・横線や他の凹凸形状との差異について
本件審決は、
「別掲3」の2記載の例の存在を理由に、建物の基礎部
15 分に「縦線や横線を施したものや凹凸をつけたものも存在する」と認
定している。
しかしながら、本願商標に係る標章に識別力があるかどうかを検討
するに当たっては、抽象的な表現手法自体が一般的かどうかではなく、
具体的な形体として表された標章それ自体について見るべきである。
20 この点、
「別掲3」の2記載の(1)ないし(5)の写真に見られる
ような「縦線や横線」は、基礎の完成後に櫛や箒で線を引いたもので
あり、本件審決が「縦線」・「横線」と称していることからも明らかな
とおり、立体形状ではなく平坦な「模様」にすぎないから、本願商標
の立体形状たる「凹凸」とは形状も工法も全く異なるものというべき
25 であり、これを「基礎の表面形状」として抽象化して本願商標と同列
に扱うことは誤りである。また、仮に同じ「縦線」として比較すると
しても、本願商標の縦のラインは敢えて途中で途切れるように設計し
ているところ、
「別掲3」の2記載の例にはそのような例は一切見当た
らない。本願商標は、凹凸の立体形状と一体となった(途中で途切れ
るという)特異な縦のラインにより識別標識としての役割を果たして
5 いるのである。
さらに、
「別掲3」の2記載の(3)ないし(5)の写真については、
「凹凸の装飾がされた」との認定がされているが、そもそも該当写真
を見ても、「凹凸」が明確に視認できるような状態のものではない上、
(3)及び(4)に至っては、資料(ウェブサイト)中に「凹凸」と
10 いう表現すら用いられていない。また、施工方法の観点からも、(4)
の3枚目の写真の前に施行中の写真が掲載されている(甲21)こと
から分かるとおり、本件審決が「凹凸」と称する基礎の状態は、本願
商標のように特別な工程を経て仕上げたものではなく、塗装や化粧(モ
ルタル)を表面に施しているにすぎない。
15 したがって、
「別掲3」の2記載の(1)ないし(5)の例は、基礎
の表面に平坦な「模様」や「ざらつき」が存在するだけであり、やは
り立体形状とは評価できないものであるから、これを「基礎の表面形
状」として抽象化して本願商標と同列に扱うことは誤りである。
以上のとおり、仮に「別掲3」の1及び2記載の例が存在するとし
20 ても、基礎の完成後に塗装や化粧モルタルで平坦な「模様」を付した
もの又は単なる「ざらつき」にすぎず、それらは形状からも工法から
も、立体商標たる本願商標の「凹凸」とは全く異なるものである。
(ウ) 「別掲3」記載の各事例の評価について
上記(イ)の①及び②のほか、「別掲3」記載の各事例については、例え
25 ばむしろ美観を考慮しないのが通常であることが示されている(「別掲3」
の1(1))など、いずれも本願商標の識別力を否定する根拠とはなり得
ない。
また、
「別掲3」記載の各例については、いずれも事業規模が一切示さ
れていないから、上記各例の内容から一般的な需要者を想定することは
できない。インターネット検索が普及した現代において、時にはインタ
5 ーネット検索により「別掲3」以外にも特殊な事例を見つけることもあ
ると思われるが、当該検索結果が直ちに取引の常識を示すものではない。
他方、原告は、本件審決認定のとおり、2022年(令和4年)度に
おける「低層総販売戸数」が3万7050戸、年間売上が4兆円、累積
販売戸数も250万戸を超える大手ハウスメーカーである。そのような
10 事業規模にある原告が本願商標を付して役務提供した結果、本願商標が
実際に識別力を発揮していることは後記カで詳述するとおりである。事
業規模すら分からない上記各例の存在によって、基礎にデザインを付す
ことが一般的であると判断することは明らかに合理性を欠き、誤りであ
る。
15 以上によれば、建築物の基礎表面において、塗装や化粧モルタルが施
工されることや、縦線・横線や本願商標以外の凹凸形状が付されること
はむしろ稀であるということができる。
オ 他の登録例との対比
商標法3条1条3号に該当しないことを理由に登録を認められたと解さ
20 れる商標としては、例えば、登録第4210761号(指定商品:
「おもち
ゃ」)、登録第4281772号(指定商品:
「チョコレート飲料、その他の
ココア、プラリーヌ、チョコレート、その他の菓子及びパン」)、登録第4
694206号)指定商品:
「コンピュータ用ケース、電子応用機械器具用
ケース、理化学機械器具用ケース、写真機械器具用ケース、映画機械器具
25 用ケース、光学機械器具用ケース、携帯電話用収納ケース、電気通信機械
器具用ケース」)、登録第4925446号(指定商品:
「調味料または香辛
料用挽き器(電気式のものを除く)」)などがある。
これらは、いずれも商品の形状そのものであって、全体が一体的な形状
となっているのに対し、前述のとおり本願商標は建築物の基礎の表面のみ
の形状を示したものである。全体が一体となった商品そのものの形状であ
5 れば、商品を使用する際に必要となる機能によって形状に一定の制約が生
じ、また商品の購入意欲を喚起するために美観を向上させる観点から様々
なデザインが施されることから識別力を持たせることが難しい。これに対
し、本願商標は、前記のとおり機能及び美観のいずれの観点も無関係であ
り、また基礎の表面形状として、工法からも形状そのものとしても特異で
10 あるから、商標法3条1項3号に該当しないとされた上記の例と比較して
も、本願商標に識別力があることは明らかというべきである。
カ 長期の使用
原告は、木造住宅に加え、軽量鉄骨住宅の基礎に、本願商標を1999
年(平成11年)からおよそ25年間統一して用いている(甲3~5)。甲
15 3~5のマニュアルにおいては、住宅建築の際の基礎の施工には本願商標
の形状をかたどるためのパネルを用いることが明記されている。また、実
際に原告が建築した住宅の基礎の表面もマニュアルどおりに本願商標と
同じ基本形状を用いている(甲6)。これらの証拠により、原告が、本願商
標を25年間継続して統一的に使用してきていることが裏付けられる。こ
20 の点について本件審決は、「当該パネルを使用して施工すると本願商標の
立体的形状と同一の形状の基礎が出来上がるのか等、当該パネルと本願商
標の立体的形状との関係は不明である。」、「当該マニュアルによってどの
程度の建物が建築され・・・たのかは不明である。」などとするが、例えば、
甲3の33頁の「Dパネル」や「下部ストッパーの取り付け方」の絵を見
25 れば、本願商標のような凹凸が設けられていることは明らかであり、この
型枠にコンクリートを流し込めば、同様の凹凸ができることは当然である
し、原告は、本件審決認定のとおり2022年(令和4年)度における「低
層総販売戸数」3万7050戸である大手住宅メーカーであるところ、一
貫して本願商標を使用し続けているのである。
通常、住宅の外観・形状については、時代の流れにともなって流行する
5 デザインも変遷し需要者のニーズも多様で様々なバリエーションが提供
されるのに対し、基礎については、上記のとおり長年にわたって統一的な
形状が用いられているから、住宅部分とは全く取り扱いが異なる。本願商
標の対象である基礎に、美観の目的があるのであれば、住宅部分同様、原
告としても様々な形状や模様を取り揃えてお客様のニーズに応えるべき
10 ところ、これまで一切のバリエーションを有さず、原告のすべての木造戸
建住宅および軽量鉄骨住宅に統一して本願商標の基礎を用いてきた歴史
がある。これは、本願商標を出所識別標識として機能させるためのもので
あり、そのことは需要者にも十分理解されているというべきである。
また、原告が本願商標を統一して木造住宅及び軽量鉄骨住宅に用いてい
15 ることは周知の事実であり、使用の結果、本願商標が実際に識別力を発揮
していることは、ウェブサイト(甲22~24)を含め、現に需要者が認
めているところである。
以上のとおり、本願商標が識別機能を十分発揮していることは客観的に
明確になっており、また、木造住宅のスケルトン部分(基礎・構造躯体)
20 を原告グループが設計・施工して、パートナー企業に提供するという原告
のSI事業の拡大により、一層のその認識が高まることは確実というべき
である。
⑵ 独占不適商標に該当しないこと
上記⑴カで述べたとおり、原告は、木造住宅に加え、軽量鉄骨住宅の基礎
25 に、本願商標を1999年(平成11年)からおよそ25年間統一して用い
ており、原告のほかに本願商標のような凹凸形状を施している例は見られな
いことからすれば、これを原告に独占させることに何の不都合もなく、本願
商標は独占不適商標に該当しないことは明らかである。
また、既に述べたとおり、原告のSI事業では、住宅の基礎の大小の凹凸
ある形状が、原告が基礎を施工した証として、施主(住宅の注文主)に住宅
5 を提供することになるところ、これも、建物の買主等や注文主等は、基礎の
施工の良否に関心が強く、基礎を点検しようとするため本願商標を見ること
と、本願商標に識別力があることに依拠した事業である。それにもかかわら
ず、本願商標が権利化できない場合には、原告の基礎にフリーライドし、原
告の基礎の住宅であるかのように扮する詐欺的ビジネスが生ずることが危惧
10 される。特に、本願商標の作成にはコストがかかるのに、敢えてコストをか
けてでも、第三者がこのような立体形状を付すとすれば、その目的は、原告
の基礎の強度など、安全面の技術力の信頼を悪用するものにほかならないの
で、社会的・公益的視点からも、本願商標が商標登録されるべきである。
⑶ 本件の凹凸形状は機能又は美観上の理由による形状の選択として予測し
15 得ないものであること
上記のとおり、本願商標が独占不適商標及び自他商品識別能力欠如商標に
該当しないことは明らかであるが、仮に、本件審決が判示するように、商標
法3条1項3号に該当しないというためには「その機能又は美観上の理由か
ら採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情」を要する
20 と解釈した場合であっても、上記⑴イ及びウのとおり、そもそも基礎の表面
形状は機能や美観とは無関係なものであり、かつ上記⑴エのとおり、本願商
標は特異なものである。すなわち、美観を問題として見る人のいない建物の
基礎について塗装(基礎保護の機能を目的とするもの)ではなく、コンクリ
ート打ちっ放しで凹凸をつけるということは、「機能」上の理由でも「美観」
25 上の理由でも、一般には予測されないことであるから、本願商標について、
「その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状で
ある等の特段の事情」は存在する。
したがって、本願商標は商標法3条1項3号には該当しない。
⑷ 被告の主張に対する反論
ア 建物の外装材(外壁材)は基礎と無関係であること
5 被告は、石材及び石調の素材や塗材について、これら建物の外装材(外
壁材)の存在を理由として、本願商標が建物外装の美観を向上させるため
のデザインとして広く採択、採用されているパターンの一類型にすぎない
とするが、いわゆる建物の外装材(外壁材)とは、住宅の壁面(外壁)に
使われる表面の仕上げ材料や被覆材を指し、住宅を劣化・風雨などから守
10 り、また美観的に仕上げるためのものであり(甲29)、基礎に用いる必然
性がない。
「住宅部分の外壁」は、居住スペースを構成し、また、それを守るため
風雨をしのぎ、建築物の劣化を防ぐなど住宅の本質的な機能を有するもの
であり、住宅の購入や建築を検討する需要者において住宅の一部と認識す
15 るものである上、近年は高級感やデザイン性を含め多様な美観も重要であ
るとされている一方、
「基礎」は住宅の土台であり、専ら建築物の強度をつ
かさどるもので、美観とは本来無関係なものである。
したがって、建物の外装材(外壁材)の存在を理由として、本願商標の
立体形状を、建物外装の美観を向上させるためのデザインとして広く採択、
20 採用されているパターンの一類型にすぎないということはできない。
むしろ、被告が、建物の外装材(外壁材)において用いられている石材
や石調の素材・塗材についてのみ証拠提出し、基礎そのものに対して石材
や石調の素材・塗材が用いられていることについて何ら証拠提出していな
いこと自体が、基礎そのものに対して被告の主張する「石調の模様」すら
25 用いられていないことを物語っているというべきである。
イ 被告が引用する個々の建物の外装材(外壁材)について
被告は、
「凹凸により陰影のある素材感を出す手法がある」として、乙8
の石材の存在を主張するが、いずれも陰影が若干表現できる程度のもので
あり、本願商標のような立体形状ではない。被告も、「粗面」「自然の風合
い」
「凹凸感」などという表現を用いているから、これらが立体形状ではな
5 く平面の「質感」を示しているにすぎないことは自認しているに等しい。
また、被告は、
「表面に凹凸状の地模様(又は陰影)を施した石調の素材
や塗材」が広く採択、使用されているとして、乙9ないし22の存在を主
張するが、例えば「ケンチ石調マハール」
(乙10)や「グラニピエーレ」
(乙11)などは外壁材であり基礎に取り付けられるものではない上、そ
10 の他の「塗材」はあくまでも「平面の塗装」を施すものであって、
(万が一
凹凸のように見えることがあるとしても)立体形状としての凹凸は存在し
ない。そして、この平面的模様と立体的凹凸形状は、需要者にも全く別の
ものとし認識される。加えて、乙8ないし22はいずれも事業規模すら示
されていないものであるから、仮にこれらの証拠に示された工法が現に存
15 在するとしても、住宅取引の需要者の認識には影響を与えない。
ウ 基礎部分の装飾について
基礎部分の装飾について、塗装やモルタル施工については、そもそも本
願商標は立体的商標であるから、これを平面形状である塗装やモルタル施
工と同列に扱うこと自体が誤りであることは、既に述べたとおりである。
20 また、タイル貼りについても、塗装などと同様に、基礎に平坦な外装材
を張り付けるものであって立体形状ではない。なお、パネル貼りの際には
継ぎ目が生じ、そこにコーキングをして、各材料を接合しながらも、その
継ぎ目を目立たせないようにするという美観の視点を有するが、本願商標
の縦のラインは敢えて途中で途切れるように設計しており、そのような美
25 観の観点を有しない。
〔被告の主張〕
⑴ 本願商標は、本願図面及び本願説明を参酌すれば、
(ア)住宅建物下部の基
礎部分(上端部は、わずかに凸状に盛り上がった水切り状の構造を備える。)
の周縁4面に及ぶ、上下端の高さを水平方向に一定に揃えた立体的形状より
なるものであって、
(イ)その表面には、凹凸や溝により石調の陰影のある地
5 模様に、一定間隔の複数縦線と下端部の横線により枠状の模様を表してなる
立体商標である。
そして、本願商標は、上記構成及び以下の取引の実情を踏まえると、一見
して、上面視四角形の周縁表面に石調の模様を施した住宅建物の基礎相当部
分(水切り、立ち上がり部分)を表してなると認識、理解できる。
10 ⑵ 取引の実情について
ア 建物基礎の構造物及び形状
住宅建物には、建物を支える土台として、地中の構造物なども含めた基
礎(乙1)が設けられているところ、地盤(地面)から飛び出している部
分を基礎の立ち上がりという(乙2)。基礎は、建物を安定させるため、高
15 さは水平である必要があるから(乙3)、その立ち上がりの上部は、建物形
状に沿って一定の高さで揃えられることになる。
また、水切りとは、家の基礎部分である土台と外壁の間に設けられる、
水や湿気を遮断するための構造のこと(乙4)であり、多くの場合、凸状
に盛り上がった構造を備える細長い部材を、基礎の上端周縁に沿って取り
20 付けることになる(乙5、6)。
イ 建物外装の装飾
建物の外装は、建築物の外観デザインに大きな影響を与える要素である
ところ、外装材として、堅牢さや高級感を出すために、石材が用いられる
ことがある(乙7)。石材の表面加工には種々の方法があるが、(a)ジェ
25 ットバーナー(表面に火をあてて粗面にする仕上)、(b)ウォータージェ
ット(粗面で、色を濃く出す仕上)、(c)ビシャン(自然の風合いを出す
粗面の仕上)、(d)スクラブ(凹凸があって、石の地色を出す、荒々しい
表情の仕上)、(e)ノミ切り(挽板面をノミで削り、斫り面状に凹凸感を
出す仕上)などのように、凹凸により陰影のある素材感を出す手法がある
(乙8)。
5 そして、建物の外装材として、石材の表面を模したような、表面に凹凸
状の地模様(又は陰影)を施した石調の素材や塗材も、広く採択、使用さ
れている実情がある(乙9~22)。
また、建物の基礎部分も建物外装デザインの一部であり、その機能又は
美観向上のために、塗装や化粧モルタル施工(乙23~25)、タイル貼り
10 (乙26~29)等により、装飾を施すことも広く一般に行われている。
さらに、タイルを組み合わせると目地により必然的に枠状線が表れるこ
とになるし、住宅基礎やコンクリートに、溝や目地などによる線を用いた
意匠を施す手法も採択されている(乙30、2頁、乙31、5頁、乙32
~34)。
15 ⑶ 本願商標に係る需要者について
本願商標の指定役務「建物の売買」(第36類)及び「建設工事」(第37
類)の需要者は、住宅購入や建設工事を検討する一般消費者を含むから、本
件において考慮すべき主な需要者層は、他社サービスと比較しつつ住宅購入
や建設工事を検討する一般消費者であって、原告住宅を購入した者や、住宅
20 業界事情に精通する者に限られない。
⑷ 本願商標の識別性について
以上を踏まえると、本願商標は、石調の模様を施した住宅建物の基礎相当
部分に係る立体商標であるところ、その形状は、上端の高さを水平方向に揃
えることで建物土台を安定させる機能を備え、下端は基礎立ち上がりと地面
25 の境界に相当するもので、また、上端部の凸状構造も水切りとして機能を果
たすための場所にしかるべき形状の構造物を設置してなるものであるから、
いずれも建物基礎の立ち上がりや水切りの機能を発揮させるための形状や構
造として広く一般的に採択、採用されている範ちゅうのものにすぎない。さ
らに、石調の地模様や枠状線にしても、建物外装の美観を向上させるための
デザインとして広く採択、採用されているパターンの一類型にすぎず、それ
5 自体固有の図形や図柄などであるとの印象を与えるものではない。
そうすると、本願商標は、その形状及び模様をして、その指定役務に係る
取引者、需要者(一般消費者)によって、取引や施工対象となる建物外装の
一部構造及び装飾に相当するであろうと一般的に認識されるにすぎず、建物
の機能又は美観に資することを目的として採用されたもの、又は機能若しく
10 は美観上の理由による形状の選択として予測し得る範囲のものであるから、
その指定役務との関係において、役務の提供の用に供する物を普通に用いら
れる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当する。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性についての判断の誤り)
15 〔原告の主張〕
⑴ 本件審決は、①原告の社内の設計施工マニュアル(甲3~5)や木造住宅
のパンフレット(甲6)に本願商標の立体的形状と同一視できるものの掲載
は見当たらないこと、②上記マニュアルやパンフレットによって、どの程度
本願商標の立体的形状が自他役務の識別標識として需要者の目にとまり、ど
20 の程度請求人の業務に係る役務を表示するものとして認識されるに至ったか
は不明であること、③そのほか、本願商標の立体的形状と同一の形状を、本
願の指定役務について、実際に使用していたことを示す証拠は見当たらない
こと、④甲9に示された原告の売上げや販売戸数において、木造住宅及び軽
量鉄骨住宅がどの程度なのかは、何ら証拠の提出がなく不明である上、その
25 ほか、本願商標の立体的形状と同一の形状を用いた基礎部分を採用した建物
に関する役務の売上高や市場シェア等をうかがい知ることができるような証
拠は見当たらないことから、商標法3条2項該当性を否定した。
しかし、甲20からしても、原告が施工した基礎に本願商標が用いられて
いることは明らかであり、現に原告が本願商標を統一して木造住宅及び軽量
鉄骨住宅に使用した結果、本願商標が実際に識別力を発揮し、需要者が本願
5 商標の識別力を認識していることは、既に述べたとおりである。また、パン
フレット(甲6)にも本願商標は記載されているし、原告の事業規模からす
れば多数のパンフレットが需要者に配布されたことはいうまでもないことで
ある。
以上のとおり、本願商標が長年の使用により識別力を有するに至っている
10 ことは、提出済み証拠により立証されているものである。
よって、本件においては商標法3条2項の適用が認められるべきであって、
本件審決は同項の解釈・適用を誤った違法がある。
⑵ 被告の主張に対する反論
ア 被告は、少なくとも原告の提出証拠からは、本願商標と同一形状をした
15 住宅基礎は1件も確認できないから、原告施工の住宅には本願商標と同様
の石調模様と枠状線を基礎に施した住宅がある(甲20)ことは分かり、
本願商標と実質的に同一の形状を備えるものが存在する可能性も全く否定
はできないものの、それが具体的にどの程度あるのか不明であると主張す
る。
20 しかしながら、被告の引用する裁判例にも示されているとおり、
「使用に
係る商品の形状についてごく僅かに変更がされたことによって直ちに当
該商品の形状に係る商標が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥
当でな」いから、実質的に同一の形状が使用されていれば足りる。
被告は、原告が取り扱う住宅は、玄関部、部屋、構造物(階段、テラス
25 等)などが飛び出している又はへこんでいる住宅(甲2、30頁~41頁、
甲6、3葉目)もあり、本願商標のような周縁に何ら構造物のないすっき
りとした印象とは全く異なった外観となる、住宅の形状やそれに併せた基
礎の形状は極めて多様であり、施主側の都合である土地、建物の形状など
に合わせて変化するから、本願商標と同様の四角形状には必ずしもならな
いなどと主張する。
5 しかし、住宅の購入や建築を検討する需要者は、住宅における構造物の
飛び出しやへこみがあることで、商標としての形状が違うものと認識する
ことはない。仮に、そのような形状の変化が識別力に影響するのであれば、
被告が列挙した引用例も、同じ形状の住宅に用いられていない以上は何ら
本願商標の識別力を否定する根拠とはなり得ないこととなる。
10 本件では、建物(住居)を取り囲む形状のみならず、表面の凹凸形状に
顕著な特徴があり、相対的に見れば当該凹凸が主として識別標識となるの
であるから、住宅の形状変化による影響は極めて小さい。
イ 被告は、住宅建物の基礎相当部分は比較的注目されにくい箇所であるか
り、植栽や構造物(塀、段差、テラスなど)に遮られることも多く、その
15 形状や模様について特段注目されたりはしないことを前提とした上で、原
告は、そのような注目されにくい箇所における自社のこだわりとして本願
商標と同様の装飾を施工しているとしても、それを需要者に伝えるコミュ
ニケーションツールとなり得るカタログやパンフレット等において、住宅
基礎の形状や模様について出所識別標識であることを積極的に伝えたり、
20 目立たせるように掲載している様子はないばかりか、基礎形状や模様の確
認すら困難であると主張する。
しかしながら、建物(住宅)全体は大きく、また基礎自体も50センチ
程度の高さがあるから、(美観の追及が要求されるほどの視認性はないも
のの)建物全体を取り囲めば基礎は十分目につくものであり、カタログな
25 どには掲載していなくても、実際の建物を見れば分かる。特に住宅取引は
高額であり、取引者の注意力も大きいから、十分に識別力を持たせること
が可能である。
また、中古住宅の場合、自社のパンフレットを使わないケースもあるか
ら、誰が施工した建物であるかを、基礎で判断することの比重が大きいと
もいえる。特に、基礎は安全性の面で重要な機能を有するから、その品質
5 に注目され、識別力に加えて品質保証機能が発揮される。その意味で、住
宅の基礎は衣服のタグのようなものであり、目につかないところでも、需
要者がそれを確かめて買うことは常識になっている。
さらに、ブランド名やプレートに識別力があり、それらに依拠して取引
されることがあるとしても、それらと共に使用されている形状それ自体に
10 も識別標識としての機能があれば、当該形状の有する識別力が否定される
ことはない。本願商標は、プレートと一体になって、また補完しあって、
識別力は発揮される。特に、プレートの文字は遠くからの視認性に欠ける
だけでなく、住宅の一面にのみ取り付けるものであるので、本願商標のよ
うに建物をぐるりと取り囲むことに意義がある。
15 ウ 被告は、本願商標と実質的に同一の形状を備える住宅が、具体的にどの
程度あるか不明であるから、原告の事業実績のうち、どの程度が本願商標
の認知度の向上と関連するのか明らかではないと主張するが、原告が業界
のリーディングカンパニーとして、この基礎を用いた、戸建住宅事業、分
譲住宅事業を行っており、年間5千億円の規模で事業を継続していること
20 は甲13の6頁の表(有価証券報告書の記載)からも明らかである。
〔被告の主張〕
⑴ 同一形状の使用について
本願商標は、上面視四角形の周縁表面に石調の模様を施した住宅建物の基
礎相当部分であり、その基礎部分の周縁形状は、図面からも明らかなとおり、
25 四角形(特段の大きな飛び出しやへこみ部分はない。)である。
原告が取り扱う住宅は、玄関部、部屋、構造物(階段、テラス等)などが
飛び出している又はへこんでいる住宅(甲2、30頁~41頁、甲6、3葉
目)もあり、それらの基礎部分の周縁形状は、必然的に四角形とは異なる形
状(飛び出しやへこみが生じる。)になったり、本願商標のような周縁に何ら
構造物のないすっきりとした印象とは全く異なった外観となる。また、住宅
5 の形状やそれに併せた基礎の形状は極めて多様であり(甲1、7)、通常、施
主側の都合である土地、建物の形状などに合わせて変化するから、本願商標
と同様の四角形状には必ずしもならない場合がほとんどであると考えられる。
少なくとも原告の提出証拠からは、本願商標と同一形状をした住宅基礎は1
件も確認できない。
10 したがって、原告施工の住宅には本願商標と同様の石調模様と枠状線を基
礎に施した住宅がある(甲20)ことは分かり、本願商標と実質的に同一の
形状を備えるものが存在する可能性も全く否定はできないものの、それが具
体的にどの程度あるのか不明である。
⑵ 形状が需要者の目に付きにくく、強い印象を与えないこと
15 住宅建物の基礎相当部分は、外壁や内装などと比べても、住宅のデザイン
としては比較的注目されにくい箇所であるから需要者の目に付きにくいばか
りか、植栽や構造物(塀、段差、テラスなど)に遮られることも多く、通常、
その形状や模様について特段注目されたりはしない。
原告は、そのような注目されにくい箇所における自社のこだわりとして本
20 願商標と同様の装飾を施工しているとしても、それを需要者に伝えるコミュ
ニケーションツールとなり得るカタログやパンフレット等において、住宅基
礎の形状や模様について出所識別標識であることを積極的に伝えたり、目立
たせるように掲載している様子はないばかりか、基礎形状や模様の確認すら
困難である。例えば、植栽や構造物(塀、段差、テラスなど)に遮られて、
25 その表面模様自体が確認しにくいもの(甲2、30頁~41頁)、石調模様の
ある表面のごく一部を表示するも、
「デザイン基礎」のようにデザイン面を強
調するもの(甲19、2葉目)などは、本願商標の出所識別標識としての認
知度の向上に直ちにつながるものではない。
そうすると、本願商標に係る住宅基礎の立体的形状や模様は、それ自体が
注目されにくい箇所であるばかりか、原告による広告宣伝によっては特段需
5 要者に出所識別標識として注目されるような効果も期待できないから、依然
として、需要者の目に付きやすく、強い印象を与えるものではないことが分
かる。
ちなみに、原告の使用態様によれば、原告の住宅基礎には、
「SHAWOO
D」や「SEKISUI HOUSE」のプレート(甲23、24)が埋め
10 込まれるとのことであるから、実質的に商標として出所識別機能や品質保証
機能を果たすのは、それらブランド名であると考えられ、不動産という高額
な取引であることも相まって、住宅基礎の模様自体に依拠して取引されるこ
と自体が考えにくい。
そうすると、原告の住宅購入者や検討者であっても、原告のブランド名に
15 着目することがあるとしても、目に付きにくく、強い印象を与えるものでは
ない住宅基礎の形状や模様を出所識別標識たる特徴であると記憶すること自
体が考えにくい。
⑶ 原告の事業規模及び広告宣伝実績について
原告提出の証拠によっては、上記のとおり、本願商標と実質的に同一の形
20 状を備える住宅が、具体的にどの程度あるか不明であるから、原告の事業実
績のうち、どの程度が本願商標の認知度の向上と関連するのか明らかではな
い。
また、原告の広告宣伝実績についても、その広告宣伝費や広告宣伝手段が
不明であるばかりか、上記のとおり、原告による広告宣伝によっては、本願
25 商標に係る立体的形状や模様は、需要者の目に付きやすく、強い印象を与え
るものではなく、需要者に出所識別標識として注目されるような効果も期待
できない。
そうすると、原告による事業実績や広告宣伝実績が、本願商標の形状及び
模様について、その需要者である一般消費者の間における、出所識別標識と
しての認知度の向上に寄与する効果は極めて限定的である。
5 ⑷ 小括
以上のとおり、本願商標は、上面視四角形の周縁表面に石調の模様を施し
た住宅建物の基礎相当部分であるところ、実質的に同一の形状を備えた住宅
が具体的にどの程度あるのか不明であること、その立体的形状や模様は需要
者の目に付きにくく、強い印象を与えないこと、原告による事業実績や広告
10 宣伝実績が、本願商標の形状及び模様について、その需要者である一般消費
者の間における、出所識別標識としての認知度の向上に寄与する効果は極め
て限定的であることを踏まえると、原告の事業実績にかかわらず、本願商標
が我が国の需要者の間において原告固有の出所識別標識として広く知られて
いるものとは到底いえない。
15 したがって、本願商標は、原告により使用をされた結果、需要者が何人か
の業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとは
いえず、商標法3条2項の要件を具備しない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願商標が商標法3条1項3号該当性についての判断の誤り)
20 について
⑴ 判断基準
商標法3条1項3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、
用途、形状(包装の形状を含む。・・・)、生産若しくは使用の方法若しくは
時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供
25 の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、
数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
は、商標登録を受けることができない旨を規定する。その趣旨は、同号に該
当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としない
ものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠
き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される
5 (最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・
裁判集民事126号507頁参照)。
商標法上、商標登録を受けようとする商標が立体的形状からなる場合であ
っても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる(同法2条1
項、5条2項2号)。
10 しかし、商品(役務の提供の用に供する物を含む。以下、特に断らない限
り同様である。)の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的
に発揮させることや、商品の美観をより優れたものとすること等の目的で選
択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標
識として用いられるものではない。このように、商品の製造者、供給者の観
15 点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能
又は自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たす
ものとして採用するものとはいえない。また、商品の形状を見る需要者の観
点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示され
る標章とは異なり、商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと
20 認識するのであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別するために選択
されたものと認識する場合は多くない。
加えて、商品の機能又は美観に資することを目的とする形状は、同種の商
品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商
標登録出願したことのみを理由として特定人に当該形状の独占使用を認める
25 ことは、公益上適当でない。
そうすると、客観的に見て、商品の機能又は美観に資することを目的とし
て採用されると認められる商品の形状は、特段の事情のない限り、商品の形
状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法
3条1項3号に該当すると解される。
また、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品について、
5 機能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲
のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するも
のというべきである。
さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状であっても、当該
形状がもっぱら商品の機能向上の観点から選択されたものであり、機能を確
10 保するために不可欠な形状のみからなるときは、商品(役務にあっては、役
務の提供の用に供する物の立体的形状等)が当然に備える特徴のうち立体的
形状のみからなる商標については商標登録を受けることができない旨を規定
する商標法4条1項18号、同施行令1条の2の趣旨から、同法3条1項3
号に該当するとされる場合があるといえる。
15 ⑵ 本願商標の構成及び需要者
ア 本願商標は、前記第2の1⑴のとおりであり、その構成は、①住宅建物
下部の基礎部分(上端部は、わずかに凸状に盛り上がった水切り状の構造
(以下「水切り状の部分」という。)を備える。)の周縁4面に及ぶ、上下
端の高さを水平方向に一定に揃えた立体的形状よりなるものであって、②
20 その表面には、凹凸や溝により石調の陰影のある地模様に、一定間隔の複
数縦線と下端部の横線により枠状の模様を表してなる立体的形状よりなる
ものである。
水切り状の部分の色は金属光沢のある銅色であり、その中心よりやや上
には凹みを想起させる色の濃い部分があり、水切り状の部分以外の基礎部
25 分は灰色である(甲10)。
一般に、住宅建物には、建物を支える土台として、地中の構造物なども
含めた基礎が設けられるところ、この地盤と建物の間にある鉄筋コンクリ
ート部分を基礎といい(乙1、2)、地盤(地面)から飛び出している部分
の基礎を、「基礎の立ち上がり」という(乙2)。
また、水切りとは、家の基礎部分である土台と外壁の間に設けられる、
5 水や湿気を遮断するための構造のことであり、雨水や湿気が土台に侵入す
るのを防ぐことで、木材の腐食を防ぎ、家の寿命を長く保つため重要な役
割を担う(乙4)。
本願商標は、その構成や、上記のとおりの住宅一般についての知識等を
踏まえると、上面視四角形の周縁表面に石調の模様を施した住宅建物の基
10 礎相当部分(水切り状の部分及び立ち上がり部分)を表してなるものと理
解できる。
イ 本願の指定役務は、第36類「建物の売買」及び第37類「建設工事」
であるから、本願商標の需要者には、住宅の購入や、建設工事を検討する
一般消費者が含まれる。
15 そうすると、本願商標の需要者は、他社サービスと比較しつつ住宅購入
や建設工事を検討する一般消費者であって、原告の施工する住宅を購入し
た者や、住宅業界事情に精通する者に限られるものではない。
⑶ 本願商標の指定役務に関する取引の実情(本願商標の指定役務の提供の用
に供する物に関する取引の実情を含む。以下、同じ。)
20 以下に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本願商標の指定役務に関
連する取引の実情として、次の事実が認められる。
ア 本願商標に示された水切り状の部分と立ち上がり部分
水切りは、上記のとおり雨水や湿気が土台に侵入するのを防ぐことで、
木材の腐食を防ぎ、家の寿命を長く保つための役割を担うことから、多く
25 の場合、凸状に盛り上がった構造を備える細長い部材を、基礎の上端周縁
に沿って取り付けることとなる(乙5、6)。
建物を支える土台である基礎は、建物を安定させるため、その高さは完
全に水平である必要があるから(乙3)、その立ち上がりの上部は、建物形
状に沿って一定の高さで揃えられることになる。
イ 建物外装の装飾と石調の仕様
5 (ア) 外装材としての石材
建物の外装は、建築物の外観デザインに大きな影響を与える要素であ
るところ、外装材として、堅牢さや高級感を出すために、石材が用いら
れることがある(乙7)。石材の表面加工には種々の方法があるところ、
本願商標のような凹凸により陰影のある素材感を出す手法として、a ジ
10 ェットバーナー(表面に火をあてて粗面にする仕上)、b ウォータージェ
ット(粗面で、色を濃く出す仕上)、c ビシャン(自然の風合いを出す粗
面の仕上)、d スクラブ(凹凸があって、石の地色を出す、荒々しい表情
の仕上)、e ノミ切り(挽板面をノミで削り、斫り面状に凹凸感を出す仕
上)などがあり、その凹凸の様子を示す例として、以下のものがある(乙
15 8)。
a ジェットバーナー b ウォータージェット c ビシャン

20 d スクラブ e ノミ切り

(イ) a 外装材としての石調の素材や塗材
25 建物の外装材として、以下の(a)から(n)のとおり、石材の表面を模
したような、表面に凹凸状の地模様(又は陰影)を施した石調の素材
や塗材も、広く採択・使用されているとの実情が認められる。
(a) 「株式会社ハマキャスト」のウェブサイトにおいて、
「ドットラン
ド ハイライズストーン|御影石ノミ切り仕上げ調」の商品紹介記
事に、
「厚みのある自然石のノミ切り仕上げとその質感を再現。御影
5 石の本石をも凌駕する存在感と独創性を併せ持つ最高級の人造石で
す。」の記載とともに、以下の見本写真(D-504M)などが掲載
されている(乙9)。

(b) 「マハール」のウェブサイトにおいて、
「ケンチ石調マハール」の
商品紹介記事に、
「原石の持つ重厚感と荒々しさを軽量のマハールで
再現。」の記載とともに、「カラーバリエーション:全23色」とし
て、以下の見本写真(ケンチ506、510、512)などが掲載
15 されている(乙10)。
(ケンチ506) (ケンチ510) (ケンチ512)

(c) 「エスケー化研」のウェブサイトにおいて、
「グラニピエーレ」の
商品紹介記事に、
「グラニピエーレは、外壁や内装に天然石や天然木
と見紛うばかりの素材感を表現する薄型・軽量のシート建材です。」
及び「豊富な形状バリエーション 御影石調、たたき石調、ケンチ
25 石調、砂岩調、木目調の形状バリエーションが、デザインの幅を広
げます。」の記載とともに、
「形状バリエーション(全5種)」として、
以下の見本写真(たたき石調仕上げ、ケンチ石調仕上げ)などが掲
載されている(乙11)。

(たたき石調仕上げ) (ケンチ石調仕上げ)
(d) 「エスケー化研」のウェブサイトにおいて、「サンドプロテクト」
の商品紹介記事に、
「装飾仕上塗材」及び「石材調の重厚感のある仕
10 上げは基礎巾木を豪華に演出します。」の記載とともに、「標準色」
として、以下の見本写真(SDP-003)などが掲載されている
(乙12)。

(e) 「アイカ工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「『ジョリパッ
ト基礎コートⅡ』を発売」の見出しの下、
「アイカ工業株式会社(・・・)
は、住宅基礎コンクリートの耐久性向上と意匠性付与を実現する住
宅基礎コンクリート用意匠塗材『ジョリパット基礎コートⅡ』を、
20 2019年4月より受注開始しました。」及び「石目調のデザインを
付与する高意匠タイプ。従来品はフラットな石目調でしたが、凹凸
感を付加し高意匠化した石目調デザインです。」との記載とともに、
以下の見本写真が掲載されている(乙13)。

(f) 「秩父コンクリート工業株式会社」のウェブサイトにおいて、
「チ
チブFコート・3D」の商品紹介記事に、
「チチブFコート・3Dは、
自然石のようなボリューム感のある仕上がりの住宅基礎用トップコ
ートです。」、「住宅基礎コンクリートの自然石調基礎弾性美装塗材」
5 及び「ボリューム感のある自然石調の仕上がり。」との記載とともに、
以下の見本写真(シルバーグレー。一部)などが掲載されている(乙
14)。

10 (g) 「株式会社エヌ・エス・ピー」のウェブサイトにおいて、
「基礎巾
木に貼るだけで施工できる後貼りFシート」の見出しの下、
「Fシー
トの特徴 基礎巾木に貼るだけで施工できます」との記載とともに、
「外壁色に合わせたカラーバリエーション」として、見本写真(S
TONEグレー。一部)などが掲載されている(乙15)。
(h) 「山本窯業化工株式会社」のウェブサイトにおいて、
「ユーネック
20 ス御影びしゃん」の商品紹介記事に、
「びしゃん叩きによる御影石の
表面加工仕上。荒々しい質感の粗面模様が特長。」及び「ユーネック
スシートは、主原料がカラーセラミックス(有色陶磁器質骨材仕上
塗材)であり、また、色調の異なった塗材を組合わせ塗布加工した
ものです。」との記載とともに、「特注色」として、以下の見本写真
25 (UB-18)などが掲載されている(乙16)。
(i) 「TileLife」のウェブサイトにおいて、
「御影石 G60
5 3 400角 ビシャン仕上げ」の商品紹介記事に、
「規格サイズの
石材としては珍しいビシャン仕上げ。ジェットバーナー仕上げより
も凹凸が少なく、内外装問わずに幅広くご使用いただけます。」との
記載とともに、以下の見本写真が掲載されている(乙17)。

(j) 「日本ペイント株式会社」に係る「水性シリコン系石材調多彩模
様ローラー仕上げ塗材 ニッペ ジキトーンセラ アートSi」の
商品カタログにおいて、
「ローラーで施工可能な高耐候の石材調多彩
15 模様仕上げ塗材。」との記載とともに、以下の見本写真(NJSI-
01A)などが掲載されている(乙18)。

20 (k) 「LIXIL」のウェブサイトにおいて、
「ストーンタイプコレク
ション」の商品紹介記事に、
「天然石の持つ複雑な色合いや柄模様を
モチーフに、豊かな石の表情を表現したストーンタイプコレクショ
ン。」及び「石の脈、錆、表面の凹凸などを忠実に再現。大型形状だ
からこそできる表現で石の魅力を再現しています。」との記載ととも
25 に、以下の見本写真(HAL-420/STC-NQ2)などが掲
載されている(乙19)。
(l) 「旭化成建材」のウェブサイトにおいて、
「純正塗料 グランロッ
5 ク」の商品紹介記事に、
「グランロックは花崗岩をイメージして造ら
れた高級感のある仕上塗材です。肉厚感のある下塗材と、ゲル状多
彩チップが含まれた上塗材がバランス良く融合し、ダイナミックか
つ自然石風の趣ある意匠を形成します。」との記載とともに、「カラ
ーバリエーション」として、以下の見本写真(KG-411)など
10 が掲載されている(乙20)。

(m) 「エスケー化研」のウェブサイトにおいて、「エレガンストーン」
15 の商品紹介記事に、
「重厚で豪華な自然石調の風合いです。」及び「高
級自然石調新型装飾仕上塗材」との記載とともに、
「標準色」として、
以下の見本写真(MS-57)などが掲載されている(乙21)。

(n) 「大日本印刷株式会社(DNP)」のウェブサイトにおいて、「石
目柄|アートテック-アルミ外壁パネル・内外装建材」の商品紹介
記事に、
「アルミ外壁パネル『アートテック』の石目柄は、大理石柄、
玄昌石柄をはじめ、コンブリアストーン、ジュライエロー、オニキ
25 スなど多様な実績があります。」及び「リアルな石目表現です。」と
の記載とともに、以下の見本写真(グラニット柄)などが掲載され
ている(乙22)。

b 建物の基礎部分の装飾
また、建物の基礎部分も建物外装デザインの一部であり、以下の(a)
ないし(g)のように、その機能又は美観向上のために、塗装や化粧モル
タル施工(乙23~25)、タイル貼り(乙26~29)等により、装
10 飾を施すことも広く一般に行われていることが認められる。
また、以下の(d)ないし(g)のとおり、タイルを組み合わせると目地
により必然的に枠状線が表れ、住宅基礎やコンクリートに溝や目地な
どによる線を用いた意匠を施す手法なども一般に採られている(乙3
0、2頁、乙31、5頁、乙32~乙34)。
15 (a) 「大阪屋根・外壁塗装センター 情熱塗颱風」のウェブサイトに
おいて、
「プロが選ぶ、おしゃれな基礎塗装30選!外壁との組み合
わせや、メリットなどもご紹介」の見出しの下、
「あまり目立たない
お家の基礎ですが、基礎をおしゃれに塗装することで一気にお家の
魅力を底上げすることができます。」との記載とともに、塗装をした
20 住宅の基礎部分について、以下の写真などが掲載されている(本件
審決「別掲3」1の(1)。乙23)。

(b) 「金剛総合建築」のウェブサイトにおいて、
「お家の基礎化粧?『化
粧モルタル』」の見出しの下、
「【化粧モルタル】」の項に「『化粧モル
タル』や『基礎化粧工事』とも言われ、お家の基礎コンクリートの
表面を綺麗に仕上げるために行われる左官工事です。」との記載とと
もに、化粧モルタル施工を施した、以下の住宅の基礎部分の写真な
5 どが掲載されている(本件審決「別掲3」1の(2)。乙24)。

10 (c) 「有限会社テクノペイント」のウェブサイトにおいて、
「基礎塗装
工事」の見出しの下、
「地面と建物の間にあり、建物を支えている『基
礎』も塗装をすることが出来ます。」との記載とともに、塗装をした
住宅の以下の基礎部分の写真などが掲載されている(本件審決「別
掲3」1の(3)。乙25)。
(d) 「ALL・IN」のウェブサイトにおいて、
「ぬくもり感じるタイ
20 ル貼りの家」の見出しの下、
「玄関ポーチだけでなく、通常はコンク
リートのままの基礎部分もタイル貼りになっているのが特徴的で
す。」との記載とともに、基礎部分にタイル貼りをした、以下の住宅
の写真が掲載されている(乙26)。

(e) 「住工房株式会社」のウェブサイトにおいて、
「みよし市にて 基
礎タイル貼り工事」の見出しの下、
「外回りの基礎の汚れが目立つ為、
タイルを上から貼らせて頂きました。」との記載とともに、タイル貼
10 りをした以下の住宅の基礎部分の写真が掲載されている(乙27)。

15 (f) 「Ameba」のウェブサイトにおいて、
「基礎巾木のタイル仕上
げ」の見出しの下、「外壁の基礎部分にタイルが張られました。」と
の記載とともに、タイル貼りをした以下の住宅の基礎部分の写真が
掲載されている(乙28)。

(g) 「Forest Crew」のウェブサイトにおいて、
「店舗建築
としての北欧ログハウス」の見出しの下、
「基礎の立ち上がり部分に
25 は、北欧テイスト溢れる真っ白なブリックタイル。」との記載ととも
に、タイル貼りをした以下の住宅の基礎部分の写真などが掲載され
ている(乙29)。

⑷ 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
本願商標の構成は、前記⑵アのとおり、上面視四角形の周縁表面に石調の
模様を施した住宅建物の基礎相当部分(水切り状の部分及び立ち上がり部分)
を表してなり、建物下部の地面と接する部分の表面に凹凸をつけるとともに、
10 縦線と横線を配してなるところ、構成全体として、凹凸、縦線及び横線の装
飾を施した建物の基礎相当部分の形状を表している。このうちの建物部分の
基礎(立ち上がり部分)につき、建物の基礎部分の機能又は美観向上のため
に、石材を用いたり(前記⑶イ(ア))、塗装や化粧モルタル施工等を行い表面
に装飾をすることは一般に行われており、その中には、石調の素材等を使用
15 し、その質感・素材感を再現したり重量感・ボリューム感があることを謳う
ものや(前記⑶イ(イ)a など)、縦線や横線を施したもの(前記⑶イ(イ)a(a)な
ど)や目地による線を用いた意匠を施すもの、凹凸をつけたものなども存在
する(これら全体として前記⑶イ(イ))。また、乙5、6に示された一般の水
切りの形状に比して、本願商標のうちの水切り状の部分に、特段の特徴があ
20 るものとは認められない。
そうすると、本願商標の立体的形状は、建物の基礎部分について、機能又
は美観に資することを目的として採用されたと認められるものであり、建物
の基礎部分の形状として、本願商標の需要者において、機能の向上又は美観
の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲の
25 ものということができるから、それを超えて、本願商標の形状の特徴をもっ
て、役務の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。そして、
これら機能又は美観に資することを目的とした立体的形状の採用について、
特段の事情も認められない。
したがって、本願商標に係る立体的形状は、商品の形状を普通に用いられ
る方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当
5 するというべきである。
⑸ 原告の主張に対する判断
ア 原告は、本願商標に接した需要者が、本願商標のような凹凸形状を美観
のためのものであると認識することはあり得ず、建築物の基礎は、住宅部
分と比較して、機能や美観と関係なく識別力を発揮する旨を主張する。
10 しかし、建物の基礎部分についても、その機能又は美観向上のために、
石材を用いたり、塗装や化粧モルタル施工、タイル貼り等により、装飾を
施すことも広く一般に行われていることについては既に述べたとおりで
ある。本願商標の指定役務に係る需要者は、前記⑵イのとおり、住宅購入
や建設工事を検討する一般消費者を含み、原告住宅を購入した者や、住宅
15 業界事情に精通する者に限られないから、住宅建築や基礎工事に関する専
門的な知識は有しておらず、本願商標に係る模様の描写手法について、特
段の関心や知見を有しない者も含まれる。
そうすると、本願商標は、その形状及び模様をして、その指定役務に係
る取引者、需要者(一般消費者)によって、取引や施工対象となる建物外
20 装の一部構造及び装飾に相当するであろうと一般的に認識されるにすぎ
ず、建物の機能又は美観に資することを目的として採用されたもの、又は
機能若しくは美観上の理由による形状の選択として予測し得る範囲のも
のであるから、自他役務の出所識別標識としての機能を欠くものというこ
とができる。
25 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、本願商標は、凹凸のある型枠によりコンクリートを成型すると
いう特異な工程を経ることで、本来平坦である基礎(コンクリートの打ち
っぱなし)そのものを敢えて凹凸の形状にしており、住宅の基礎としては
極めて特異な形状をしているから、平面形状である塗装や基礎保護材と同
列に扱うこと自体が誤りである旨などを主張する。
5 しかし、本願商標の指定役務に係る主な需要者は、既に述べたとおり原
告住宅を購入した者や、住宅業界事情に精通する者に限られないから、本
願商標に係る模様の描写手法(工法)について、特段の関心や知見を有す
る者には限られないところ、原告が主張する本願商標を形成又は描写する
ための工法(基礎コンクリート工事の際の型枠により模様を凹凸で転写す
10 ることなど)は、本願商標の外観から直接認識できる要素ではない。した
がって、これら本願商標の特徴として原告が主張するもの(工法など)は、
本願商標の外観から解釈できる商標の構成要素ではないから、識別性の有
無の判断に影響するものではない。
そして、前記⑶イ(ア)のように、凹凸により陰影のある素材感を出した石
15 材や、前記⑶イ(イ)a に掲げた石調の素材や塗材のように、表面に凹凸状の
地模様ないし陰影を施した石調の素材や塗材が広く採択・使用されている
との取引の実情が存する。加えて、前記⑶イ(イ)b のように、建物の基礎部
分も建物外装デザインの一部として、その機能又は美観向上のために塗装
や化粧モルタル施工、タイル張り等により装飾を施すことも一般に行われ
20 ており、タイルを組み合わせることで必然的に枠状線が表れる(前記⑶イ
(イ)b(e)(g)など)ことになって、住宅の基礎やコンクリートに溝や目地な
どによる線を用いた意匠を施す手法も採択されているものと認められる
から、本願商標に接する取引者、需要者は、その形状は何らかの方法によ
り施工された、建物外装の構造ないし装飾であると認識する。
25 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は、他の登録例と対比することで、本願商標は特異であるから、識
別力が認められる旨などを主張する。
しかし、商標登録の可否は、商標の構成、指定商品又は指定役務、取引
の実情等を踏まえて、具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべき
ものであるから、原告が指摘するような例があるとしても、前記の結論が
5 左右されるものではない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、ウェブサイトの記事を引用するなどして、木造住宅に加え、軽
量鉄骨住宅の基礎に、本願商標をおよそ25年間統一して用いており、本
願商標が識別機能を十分機能していることは客観的に明確である旨を主張
10 する。
なるほど、原告が主張するようなインターネット上の一部書き込みには、
「どこのハウスメーカーの家か見分ける方法はありますか?」との質問に
対し、
「積水ハウスは基礎が独特です、、、薄~いブルーで表面がちょっと凸
凹して、でも滑らかで、まるで後で仕上げたような表面なんですが、基礎
15 の金枠を外した時からこの状態なんです、、、認識すれば、通りすがりでも
わかります、、、」「セキスイとかだったら、仕様がほぼ同じだし似たような
外観なのでわかりやすいですね。」との回答・コメントがなされている例
(甲22)、「積水ハウスの基礎は、コンクリートにデザインがあります。
この家、積水ハウスだ!一度覚えたら、誰もがそうわかる基礎での仕上がり
20 です。」「今の積水ハウスの家 基礎を見れば一目瞭然」「他にも種類があり
ますが、主に木造の壁のベルバーンと鉄骨の壁のダインコンクリートがほ
とんどです。なので、基礎を見た方がわかりやすい。」「他のメーカーの基
礎は?他のメーカーには、あまり特徴がありません。」との記載がある例
(甲23)、「このデザイン基礎は標準仕様で、街中でも積水ハウスの家は
25 一発で分かります。」との記載がある例(甲24)等がある。
しかし、原告は、本願商標の特徴を、(前記第3の1⑴エ(ア))、「正面、
背面、側面のいずれにも、かつ建築物をぐるりと囲むように(どこからで
も把握できるように)、同じ凹凸形状を用いており統一的な形状となって
いる」ことにあると主張しているところ、このように建築物の全周におい
て、どこからでも視認可能な態様で基礎部分が構成された完成建物に係る
5 証拠は、本件訴訟において、一つも提出されていない。本願商標は、上面
視四角形の周縁表面に石調の模様を施した住宅建物の基礎相当部分であ
るところ、上記原告の主張するような本願商標の特徴を備える住宅が、具
体的にどの程度あるのかは本件で提出された証拠からは全く不明である
上に、基礎部分の立体的形状や模様は、そもそも需要者の目には付きにく
10 く(原告提出に係る住宅基礎に係る証拠(甲1)を見ても、建物の全周を
外部から見渡せるものは極めて少ない。)、強い印象を与えないこと、原告
の事業実績や原告によりなされた広告宣伝が、本願商標の形状及び模様に
関して、その需要者である一般消費者の間における出所識別標識としての
認知度に、どの程度寄与しているのかも不明であることなどを踏まえると、
15 本願商標が、需要者の間において、原告の出所識別標識として広く知られ
ているものとは到底いえない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は、原告のほかに本願商標のような凹凸形状を施している例は見ら
れないことからすれば、これを原告に独占させることに何の不都合もなく、
20 本願商標は独占不適商標に該当しない旨を主張する。
しかし、本願商標は、石調の模様を施した住宅建物の基礎相当部分を含
む立体商標であるところ、同種形状及び模様が建物外装の形状や装飾とし
て広く一般に採択・採用されている取引の実情があることについては既に
述べたとおりであり、本願商標は、その指定役務との関係において、役務
25 の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみから
なる商標といえる。そのため、本願商標は、それに相当する形状や模様が
現実に他人によって使用されているか否かにかかわらず、商標法3条1項
3号に該当するものといえる。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
カ 原告は、本件の凹凸形状は機能又は美観上の理由による形状の選択とし
5 て予測し得ないものであり、本願商標は商標法3条1項3号に該当しない
旨を主張する。
しかし、本願商標は、石調の模様を施した住宅建物の基礎相当部分を含
む立体商標であるところ、その形状は、上端の高さを水平方向に揃えるこ
とで建物土台を安定させる機能を備え、下端は基礎立ち上がりと地面の境
10 界に相当するもので、また、上端部の凸状構造(水切り状の部分)も、水
切りとして機能を果たすための場所にしかるべき形状の構造物を設置し
てなるものであるから、いずれも建物基礎の立ち上がりや水切りの機能を
発揮させるための形状や構造として、広く一般的に採択・採用されている
範ちゅうのものにすぎない。さらに、石調の地模様や枠状線にしても、既
15 に述べたとおり、建物外装の美観を向上させるためのデザインとして広く
採択・採用されているパターンの一類型にすぎず、それ自体固有の図形や
図柄などであるとの印象を与えるものともいえない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑹ その他、原告は種々主張するが、上記⑴ないし⑸で説示した判断に反する
20 ところは、上記説示の理由により、いずれも採用することができない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性に関する判断の誤り)について
⑴ 商標法3条2項は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、
「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを
認識することができるもの」については、商標登録を受けることができる旨
25 を規定している。同条2項の趣旨は、同条1項3号から5号までに該当する
商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用
した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて自他商品識別力
又は自他役務識別力をもつに至ることが経験的に認められるので、このよう
な場合には商標登録を受けることができるとしたものと解される。
そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得した
5 かどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、
当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣
伝のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要
者の目に付き易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上
で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを
10 判断するのが相当である。
⑵ 認定事実
前記1において認定した事実、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原
告及び本願商標等に関し、以下の事実が認められる。
ア 原告は、木造住宅に加え、軽量鉄骨住宅の基礎に、本願商標を1999
15 年(平成11年)からおよそ25年間使用しているとする(甲3~5)。
原告の「設計施工技術マニュアル」
(甲3~5)には、住宅建築の際の基
礎の施工に、パネルを用いて本願商標の形状である建物の基礎部分の模様
を転写することが記載されている。
原告の2022年(令和4年)度の連結売上高は約2兆9288億円で
20 あり、2019年(令和元年)度ないし2022年(令和4年)度の売上
高は、戸建住宅事業について約3233億円ないし約3909億円、賃貸
住宅事業について約3587億円ないし約4261億円、分譲住宅事業に
ついて約1391億円ないし2382億円、マンション事業について約7
70億円ないし約1039億円)である(甲9の83頁、甲13の6頁)。
25 また、2022年(令和4年)度における原告の低層住宅の販売棟数は
1万1816棟で業界第2位(甲9の34頁)、戸建住宅の販売棟数(完工)
は8841棟で同第6位(甲9の36頁)、低層アパートの販売棟数(完工)
は2932棟で同第3位である(甲9の38頁)。
イ 一方、原告のカタログやパンフレット等において、住宅基礎の形状や模
様について出所識別標識であることを積極的に伝えたり、目立たせるよう
5 に掲載しているものはない。すなわち、植栽や構造物(塀、段差、テラス
など)に遮られて、その表面模様自体が確認しにくいもの(甲2、30頁
~41頁)、石調模様のある表面のごく一部を表示するも、
「デザイン基礎」
のようにデザイン面を強調するもの(甲19、2葉目)などがある。
また、原告が取り扱う住宅は、玄関部、部屋、構造物(階段、テラス等)
10 などが飛び出している又はへこんでいる住宅(甲2、30頁~41頁、甲
6、3葉目)もあり、それらの基礎部分の周縁形状は、必然的に四角形と
は異なる形状(飛び出しやへこみが生じる。)になり、本願商標のような周
縁に何ら構造物のないすっきりとした印象とは外観が異なり、住宅の形状
やそれに合わせた基礎の形状は極めて多様である(甲1、7)。
15 前記1⑸エのとおり、本願商標のように、建築物の全周において、どこ
からでも視認可能な態様で基礎部分が構成された完成建物に係る証拠は、
本件訴訟において、一つも提出されていない。
原告が提出したウェブサイト(甲24)にも「積水ハウスでは鉄骨は『S
ekisui House』、木造は『Shawood』と文字が入ったエ
20 ンブレムが基礎部分に取り付けられます。」とあるとおり、原告の施工した
住宅の基礎には、
「SHAWOOD」や「SEKISUI HOUSE」の
プレートが埋め込まれており(甲23、24)、実質的な商標として出所識
別機能や品質保証機能を果たすのは、これらのブランド名であると考えら
れる。
25 ⑶ 本願商標の商標法3条2項該当性について
上記⑵の事情を総合すれば、本願商標が付されたとする商品(本願の役務
の提供に供する物である建物の基礎。ただし、前述のとおり、本願商標のよ
うに、建築物の全周において、どこからでも視認可能な態様で基礎部分が構
成された完成建物に係る証拠は、本件訴訟において、一つも提出されておら
ず、そのように本願商標が表示された建築物が存在することやその数を認め
5 るに足りる証拠があるとはいえない。)の販売開始から約25年が経過してい
ること及び販売地域が全国であること、原告の事業規模や売上高等を考慮し
ても、原告による宣伝広告の態様は、本願商標の出所識別標識としての認知
度の向上に直ちにつながるものと認められないし、本願商標も、既に述べた
とおり、需要者の目に付き易く、強い印象を与えるものであったということ
10 もできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと
認めることはできない。
そうすると、本願商標の商標法3条2項該当性を否定した本件審決の判断
に誤りはないというべきである。
⑷ 原告の主張に対する判断
15 ア 原告は、本願商標が長年の使用により識別力を有するに至っていること
は、提出済み証拠により立証されている旨を主張する。
しかし、原告の提出するパンフレット(甲6)は、原告の施工するシャ
ーウッド構法を説明するものであり、本願商標のうちの建物の基礎部分の
一部が示されているものの、水切り状の部分については判然とせず、また、
20 それらの意匠的特徴に係る説明もない。原告の施工する木造住宅のパンフ
レット(甲2)にも、本願商標は一部の建物のごく一部に、本願商標に示
された基礎部分が写っているにすぎず、基礎部分に何らかの特徴等がある
旨の説明もないし、甲20に至っては一実施例の写真にすぎない。結局、
本願商標に関して、実質的に同一の形状を備えた住宅が具体的にどの程度
25 あるのか証拠上は全く不明であり、そもそもその立体的形状や模様は需要
者の目に付きにくく、強い印象を与えないこと、既に述べたとおり、原告
による事業実績や広告宣伝が、本願商標の形状及び模様について、需要者
である一般消費者における出所識別標識として認知度向上に資する効果
は極めて限定的であるとみられることを踏まえると、本願商標は、原告固
有の出所識別標識として広く知られているものとは到底認められないと
5 いうべきである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ その他、原告は種々主張するが、上記⑴ないし⑶で説示した判断に反す
るところは、既に述べたとおりの理由により、いずれも採用することがで
きない。
10 3 結論
以上によれば、原告の取消事由1及び2の主張はいずれも理由がなく、本件
審決にこれを取り消すべき違法はない。
よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
20 中 平 健

25 裁判官
今 井 弘 晃
5 裁判官
水 野 正 則

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